JP2001239393A - 溶接用ワイヤ - Google Patents

溶接用ワイヤ

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JP2001239393A JP2000050349A JP2000050349A JP2001239393A JP 2001239393 A JP2001239393 A JP 2001239393A JP 2000050349 A JP2000050349 A JP 2000050349A JP 2000050349 A JP2000050349 A JP 2000050349A JP 2001239393 A JP2001239393 A JP 2001239393A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 銅メッキが施されていないワイヤであって
も、スパッタの発生を抑制できる溶接用ワイヤを提供す
る。 【解決手段】 (002)回折線のピーク位置から求め
た面間隔d002が0.3353nm乃至0.3372n
mである黒鉛がワイヤの表面上又は表面直下にワイヤ1
0kg当たり0.05乃至5g存在する。また、粒径が
0.1乃至30μmであるMoS2がワイヤの表面上又
は表面直下にワイヤ10kg当たり0.01乃至2g存
在することが好ましい。更に、植物油、動物油、鉱物油
及び合成油からなる群から選択された少なくとも1種以
上の油が総量でワイヤの表面にワイヤ10kg当たり
0.2乃至3g存在することが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼等のアーク溶接
に使用され、且つワイヤの表面に銅メッキ等が施されて
いない溶接用ワイヤに関し、特に、スパッタ発生量の低
減を図った溶接用ワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アーク溶接用ワイヤのなかでも、
特に、ソリッドワイヤ及びシームレスフラックス入りワ
イヤは伸線途中で銅メッキを施している。この銅メッキ
は、最終製品において送給性及び防錆性等を向上させる
役割を担っている。また、銅メッキは、それ自体が優れ
た固体潤滑剤として作用し、伸線性の向上にも寄与して
いる。
【0003】しかしながら、銅メッキをワイヤの表面に
施すためには、メッキ処理前に電解酸洗等の方法でワイ
ヤの表面(鋼地表面)を活性化し、銅メッキが付着しや
すい表面を準備する必要がある。この銅メッキを行う方
法としては、置換メッキ方法又は電気メッキ方法等があ
る。しかし、銅メッキ工程においては、メッキ液の濃度
管理並びに銅及び対電極の管理等の煩雑なライン管理が
必要である。このため、銅メッキ工程はワイヤの製造コ
ストを考慮すると、極めてコストの負担がかかる重荷な
工程である。更に、作業雰囲気中に酸ミストを撒き散ら
し廃液処理及び産業廃棄物処理を伴う銅メッキ工程は、
環境への配慮からも除きたい工程である。
【0004】一方、従来、アーク溶接用ワイヤの送給性
を向上又は安定させることを目的として、ワイヤの表面
に塗布する潤滑剤としては、MoS2、WS2、PTF
E、C、フッ化黒鉛又は金属石鹸が提案されている(特
開平6−285678号公報、特開平9−70684号
公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、銅メッ
キ工程はワイヤの製造において負担になる工程である
が、単純に銅メッキ工程を除去してアーク溶接用のソリ
ッドワイヤ又はフラックス入りワイヤを生産しようとす
ると、ワイヤの伸線時の生産性及び製品としてのワイヤ
の品質に問題点がある。
【0006】ワイヤの伸線時の生産性に関しては、近
時、上述の如く、良好な伸線潤滑剤が開発され、伸線時
の生産性の問題点は解決されつつある。一方、製品とし
てのワイヤの品質の問題点としては、スパッタが発生す
ることである。即ち、ワイヤの表面に銅メッキが施され
ていないと、溶滴の揺動が大きなり、スパッタ発生量が
増加するという問題点がある。
【0007】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、銅メッキが施されていないワイヤであって
も、スパッタの発生を抑制できる溶接用ワイヤを提供す
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る溶接用ワイ
ヤは、(002)回折線のピーク位置から求めた面間隔
002が0.3353nm乃至0.3372nmである
黒鉛がワイヤの表面上又は表面直下にワイヤ10kg当
たり0.05乃至5g存在することを特徴とする。
【0009】この場合、粒径が0.1乃至30μmであ
るMoS2が前記ワイヤの表面上又は表面直下にワイヤ
10kg当たり0.01乃至2g存在することが好まし
い。
【0010】また、植物油、動物油、鉱物油及び合成油
からなる群から選択された少なくとも1種以上の油が総
量で前記ワイヤの表面にワイヤ10kg当たり0.2乃
至3g存在することが好ましい。
【0011】本発明においては、本願発明者等は銅メッ
キを施していないワイヤのスパッタの発生状況を観察す
るために、アーク溶接時に溶滴移行の安定性を観察した
結果、ワイヤの表面に(002)回折線のピーク位置か
ら求めた面間隔d002が0.3353nm乃至0.33
72nmである結晶性が良好な黒鉛を含有する黒鉛が一
定量存在すると、スパッタ発生量を極めて低減できるこ
とを見出した。
【0012】また、ワイヤの表面にMoS2が一定量存
在すると共に、油が存在すると、より一層スパッタ発生
量が低減する。更に、スパッタ発生量を低減するには適
正な油量が存在し、これがワイヤ10kg当たり0.2
乃至0.3gである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例に係る溶接
用ワイヤについて詳細に説明する。溶接用ワイヤの組成
物、組成物の粒径及び組成物の量の限定理由について説
明する。
【0014】黒鉛 本願発明者等はスパッタ発生量を低減することを目的と
して、ワイヤの表面近傍の付着物の作用効果を検討する
と共に、付着物の量、付着状態、組成及び粒径の適正化
を行った。この結果、ワイヤの表面近傍に存在し、効果
的にスパッタ発生量を低減することができる物質として
は、天然に産出する結晶性が高い鱗状若しくは鱗片状黒
鉛又は人造黒鉛のなかでも結晶性が高い黒鉛であること
を明らかにした。また、黒鉛の炭素の純度が97質量%
以上であるとき、スパッタ発生量を低減する効果が良好
である。更に、黒鉛は灰分等の不純物を20質量%程度
含んでいても、スパッタの発生を効果的に防止すること
ができる。更にまた、面間隔d002が0.3353nm
乃至0.3372nmである結晶性が良好な黒鉛がワイ
ヤ10kg当たり0.05乃至5gワイヤの表面近傍に
存在していれば、スパッタの発生を防止することができ
る。
【0015】なお、結晶性が高い黒鉛を含有しているこ
とについては、ワイヤの表面を有機溶媒等で洗浄し、洗
浄液をろ紙で濾過し、このろ紙上に存在する黒鉛の粉末
の回折ピークをX線回折法により測定する。この結果、
回折角2θが約26.5°の位置に明確なピークが存在
するかにより黒鉛の結晶性の高さを区別することができ
る。
【0016】ワイヤ表面に2θ=26.5°の近傍に明
確な回折ピークを有する黒鉛以外の物質が存在する場合
には、2θ=26.5°よりも高角度側に存在する回折
ピークの有無で、黒鉛以外の物質と黒鉛とを区別するこ
とができる。即ち、26.5°よりも高角度側の回折角
2θを有する回折ピークがあれば、黒鉛以外の物質が存
在する。
【0017】また、2θ=26.5°に回折ピークを有
する黒鉛以外の物質と黒鉛とがワイヤ表面に存在する場
合には、ワイヤ表面の付着物を捕集した後、酸又はアル
カリ等の水溶液を使用して、黒鉛以外の付着物を溶解
し、フィルタによりろ過して黒鉛のみを捕集することが
できる。このようにして黒鉛のみを捕集して黒鉛のX線
回折ピークを得ることができる。
【0018】黒鉛の量:ワイヤ10kg当たり0.05
乃至5g 結晶性が高い黒鉛がワイヤ10kg当たり0.05乃至
5gワイヤの表面近傍に存在していれば、スパッタの発
生を防止することができる。この黒鉛の量がワイヤ10
kg当たり0.05g未満では、スパッタ発生量を低減
する効果がない。一方、この黒鉛の量がワイヤ10kg
当たり5gを超えると、溶滴の離脱が阻害され、アーク
が不安定になり、逆にスパッタ発生量が増加する。ま
た、黒鉛の量がワイヤ10kg当たり5gを超えて、ワ
イヤの表面に塗布されて存在すると、溶接金属中のCの
含有量が0.05質量%程度増加し、溶接金属の強度の
設計値からずれるという問題が生じる。従って、黒鉛の
量はワイヤ10kg当たり0.05乃至5gとする。
【0019】また、黒鉛のワイヤへの付着状態について
は、黒鉛がワイヤの表面近傍に存在していればよいこと
が分かった。即ち、伸線潤滑剤として、黒鉛又は黒鉛と
他の潤滑剤とを混合して使用することができる。この他
の潤滑剤としては、例えば金属石鹸、ワックス、油脂、
グリース及び水等である。この伸線潤滑剤を使用して、
伸線工程でワイヤの表面の凹部に黒鉛を埋め込んだ場合
でも、また、ワイヤの表面直下に更に黒鉛を埋め込ん
で、その後、伸線工程で表面が薄い鋼皮で覆われた場合
であっても、スパッタ発生量を低減する効果に差異は見
られない。具体的には、黒鉛はワイヤの表面からその中
心方向に向かって100μmよりもその表面に近い位置
に存在していれば、スパッタ発生量を低減することがで
きる。
【0020】伸線工程においては、穴ダイス、ローラダ
イス又はマイクロミルを使用することができる。いずれ
の装置を使用した場合においても、黒鉛がワイヤの表面
近傍に残留すれば、スパッタ発生量を低減することがで
きる。黒鉛は伸線工程又はワイヤを最終製品径にする直
前のスキンパス工程において、ワイヤの表面に塗布して
もよい。また、最終製品径のワイヤの表面に黒鉛を粉体
として塗布するか、又は、その表面に水分散液又は油分
散液として塗布してもスパッタ発生量は低減される。更
に、必要に応じて、黒鉛は、ワイヤの表面に黒鉛を固着
させるためのノリ剤と一緒に使用し、ワイヤの表面に塗
布してもよい。この場合においても、スパッタ発生量を
低減することができる。
【0021】(002)回折線のピーク位置から求めた
面間隔d002 :0.3353nm乃至0.3372nm スパッタの発生を効果的に低減するには黒鉛の量と共
に、黒鉛の結晶性が重要である。黒鉛のうち、特に、天
然の鱗状又は鱗片状の黒鉛粒子の形状は扁平のものが多
い。本願発明者等は鋭意研究の結果、黒鉛粒子の結晶性
が重要であることを明らかにした。結晶性が悪い、例え
ば石油系の人造黒鉛又は石炭系の人造黒鉛等をのみを使
用してワイヤを試作したが、この人造黒鉛では天然黒鉛
である鱗状若しくは鱗片状黒鉛又は人造黒鉛の中でも結
晶性が高い黒鉛のようなスパッタの低減効果は認められ
なかった。一方、スパッタの低減効果が認められたの
は、X線回折の結果、回折角2θが約26.5°の位置
に明確なX線回折ピークが認められる程度に結晶性が高
い黒鉛が、結晶性が低い黒鉛に含まれている場合、又は
結晶性が高い黒鉛がワイヤの表面に存在する場合であ
る。
【0022】粒径が0.1乃至30μmであるMoS2
の量:ワイヤ10kg当たり0.01乃至2g 上述の黒鉛の場合と同様にして、銅メッキを施していな
いワイヤのスパッタ発生量とMoS2の粒径及び付着量
との関係について調査した。この結果、MoS2の存在
位置は黒鉛と同様にワイヤの表面近傍であればスパッタ
発生を抑制できることがわかった。そして、黒鉛とMo
2とがワイヤの表面に同時に存在する場合に、スパッ
タ発生量を低減する効果は黒鉛が単独でワイヤの表面に
存在する場合と比較して、著しく向上する。MoS2
粒径が0.1乃至30μmであると、MoS2のワイヤ
の表面への付着性が良好になる。また、MoS2の粒径
が0.1μm未満又は30μmを超えると、MoS2
ワイヤ表面への付着性が悪くなり、スパッタ発生量の低
減効果が小さくなる。また、粒径が0.1乃至30μm
であるMoS2の量がワイヤ10kg当たり0.01乃
至2g存在すると、スパッタ発生量の低減効果が顕著で
あった。従って、粒径が0.1乃至30μmであるMo
2の量はワイヤ10kg当たり0.01乃至2gであ
ることが好ましい。
【0023】油の含有量:総量でワイヤ10kg当たり
0.2乃至3g 上述の黒鉛の場合と同様にして、銅メッキを施していな
いワイヤのスパッタ発生量と油の粒径及び付着量との関
係について調査した。この結果、黒鉛とMoS 2とが適
正量存在するワイヤの表面に油がワイヤ10kg当たり
0.2g乃至3g存在すると、スパッタ発生量がより一
層低減することがわかった。この油としては、植物油、
動物油、鉱物油及び合成油からなる群から選択された少
なくとも1種以上の油を含有していればよい。従って、
植物油、動物油、鉱物油及び合成油からなる群から選択
された少なくとも1種以上の油を総量でワイヤ10kg
当たり0.2乃至3gが存在することが好ましい。
【0024】以下、本発明におけるワイヤの表面に存在
する黒鉛の結晶性の分析方法並びに黒鉛、MoS2及び
油の量の測定方法について説明する。
【0025】黒鉛の量の測定方法について説明する。先
ず、ワイヤを有機溶媒(エタノール、アセトン又は石油
エーテル等)で洗浄する。洗浄液をガラスフィルタで濾
過した後、このガラスフィルタを乾燥させる。そして、
ガラスフィルタごと黒鉛の炭素量を測定する。この測定
量を(a)とする。この黒鉛の炭素量の測定には、堀場
社製のEMIA−520FA等の高周波燃焼赤外線吸収
法を使用した。
【0026】一方、ワイヤをエタノールで洗浄した後、
このワイヤを硝酸溶液(濃硝酸が1、水が2の割合で混
合した水溶液)に120秒間浸漬し、ワイヤの表面のみ
を溶解し、溶液をガラスフィルタで濾過する。その後、
このガラスフィルタを乾燥させる。そして、ガラスフィ
ルタをそのままの状態で捕集された黒鉛の炭素量を測定
する。この測定量を(b)とする。
【0027】上述の各工程で使用される各ガラスフィル
タについて、測定前に炭素量を測定し、これをブランク
値(c1、c2)とし、各測定値から差し引く。これに
より、ワイヤの表面に存在していた黒鉛だけの量が測定
される。なお、ワイヤ中に固溶している炭素はフィルタ
に捕集されず、濾液に溶解している。即ち、ワイヤの表
面に付着又はワイヤの表面直下に埋め込まれた遊離黒鉛
のみがフィルタに捕集される。従って、ワイヤの表面に
付着又は表面直下に埋め込まれた黒鉛の総量(D)は下
記数式1により算出することができる。
【0028】
【数1】 (D)=((a)+(b))−((c1)+(c2))
【0029】この黒鉛の総量(D)をワイヤの質量で除
することにより、ワイヤ10kg当たりの黒鉛の量を算
出することができる。
【0030】次に、黒鉛の結晶性の分析方法について説
明する。先ず、CuKα線を使用し、走査速度を0.2
5°/分として粉末X線回折を行う。回折角度の補正は
高純度のシリコンをメノウ製の乳鉢にて325標準篩以
下に粉砕し、この粉末を黒鉛に10乃至20質量%添加
し、シリコンの(111)回折ピークを使用して補正し
た。回折角2θが約26.5°のピーク位置はバックグ
ランドから図形高さの2/3の位置でバックグランドに
平行線を引き、その図形により区切られた線分の中点と
する。なお、バックグランドは2θ=29°付近を基準
として、ベースラインに対して接線を引く。この(00
2)回折線のピーク位置から黒鉛の面間隔d002を求め
る。また、測定に際しては、無反射試料板を使用する。
試料が少ない場合、試料の信号がベースライン上に乗っ
てくるので、無反射試料板を使用すると、試料が少ない
場合であっても、黒鉛の面間隔を測定することができる
ので好ましい。
【0031】X線回折の測定には、黒鉛が0.05乃至
0.1g程度必要である。この黒鉛はワイヤを10kg
程度上記方法で洗浄し、洗浄液で濾過することにより、
捕集できる。また、下記に示す方法によりワイヤ表面か
ら黒鉛を捕集することもできる。先ず、溶接で使用する
スプリングライナを3m程度準備し、このライナをアセ
トン等の有機溶媒で脱脂洗浄する。次に、このライナを
8字に曲げ、ワイヤを連続的にこのライナ内を通過させ
る。このとき、スプリングライナ内部にはワイヤ表面か
ら黒鉛が剥離し、堆積する。次に、この堆積物及びスプ
リングライナを有機溶媒で超音波洗浄し、洗浄液を濾過
する。そして、ろ紙に残留した黒鉛を捕集すれば容易に
0.1g程度のワイヤ付着物を得ることができ、これを
X線回折に供することができる。
【0032】図1は横軸に回折角度をとり、縦軸に回折
強度をとって、捕集された黒鉛の測定結果を示す回折
図、図2は横軸に回折角度をとり、縦軸に回折強度をと
って、捕集された他の黒鉛の測定結果を示す回折図であ
る。なお、図1及び図2において、縦軸は任意単位であ
る。
【0033】図1に示す黒鉛の測定は、理学電機製RI
NT−1500を使用して、ターゲットをCu、強度を
40kV−200mA、スリット発散の幅を1/2°、
散乱スリットの幅を1/2°、受光スリットの幅を0.
15mm、モノクロメータの受光スリット幅を0.6m
m、走査速度を0.25°/分及びサンプリング幅を
0.01°とした測定条件で測定した。なお、黒鉛の量
は0.1gである。図1に示すように、回折角が28.
5°における回折ピークはSiの(111)のピークで
ある。この場合、黒鉛の面間隔d002は0.33553
8nmであった。
【0034】また、図2は、図1に示す黒鉛と同じ測定
条件により測定した他の黒鉛のX線回折結果である。図
2に示すように、図2に示す黒鉛は結晶が悪い黒鉛を含
んでいるのものの、ピーク位置を特定することができ
る。この場合、この黒鉛の面間隔面間隔d002は0.3
35414nmであった。一部に、このような結晶性が
悪い黒鉛が存在しても、明らかに黒鉛のピーク位置を同
定することができる程度の結晶性を有する黒鉛が含まれ
ていれば、スパッタを低減する効果は、結晶性が高い黒
鉛と同程度であった。
【0035】次に、MoS2の量の測定方法について説
明する。先ず、ワイヤを有機溶媒(エタノール、アセト
ン及び石油エーテル等)で洗浄し、洗浄液をろ紙で濾過
した後、ろ紙を乾燥させる。このろ紙を混合水溶液(硫
酸(濃硫酸:水が1:1)が1、濃過塩素酸が1、濃硝
酸が1の割合で混合した水溶液)によりろ紙とMoS 2
とを分解(白煙処理)し、MoS2を溶解する。そし
て、原子吸光法によりMoを定量化する。この測定量を
(e)とする。
【0036】また、ワイヤを有機溶媒(エタノール、ア
セトン及び石油エーテル等)で洗浄し、その後、ワイヤ
を塩酸溶液(濃度が35質量%の塩酸10ミリリットルが1、
水が1の割合で混合した水溶液)に浸漬して溶解し、ワ
イヤからMoS2を遊離させる。そして、濾液をろ紙で
濾過した後、ろ紙を乾燥させる。このろ紙を混合水溶液
(硫酸(濃硫酸:水が1:1)が1、濃過塩素酸が1、
濃硝酸が1の割合で混合した水溶液)によりろ紙とMo
2とを分解し、MoS2を溶解させる。その後、原子吸
光法によりMoの量を測定し、Moの量を定量化する。
この測定量を(f)とする。従って、ワイヤの表面に付
着又は表面直下に埋め込まれたMoの総量(G)は下記
数式2により算出することができる。
【0037】
【数2】(G)=(e)+(f)
【0038】次に、Moの総量(G)を、MoS2に換
算し、ワイヤの質量で除することにより、ワイヤ10k
g当たりのMoS2の量を算出することができる。
【0039】次に、MoS2の粒径の測定方法について
説明する。MoS2の粒径については、上述の如く、ワ
イヤを有機溶媒で洗浄し、洗浄液をろ紙で濾過した後、
ろ紙を乾燥させる。この後、走査型電子顕微鏡でMoS
2の結晶粒を観察し、その粒径を測定する。
【0040】一方、ワイヤの表面直下に埋め込まれたM
oS2の粒径については、上述の如く、ワイヤを有機溶
媒(エタノール、アセトン及び石油エーテル等)で洗浄
し、その後、ワイヤを塩酸溶液(塩酸が1、水が1の割
合で混合した水溶液)に浸漬して溶解し、ワイヤからM
oS2を遊離させる。そして、濾液をろ紙で濾過した
後、ろ紙を乾燥させる。この後、走査型電子顕微鏡でM
oS2の結晶粒を観察し、その粒径を測定する。
【0041】次に、油量の測定方法について説明する。
油量の測定方法については、ワイヤの表面を四塩化炭素
で洗浄した後、赤外線吸収法により油量を定量測定す
る。
【0042】
【実施例】本発明の範囲に入る溶接用ワイヤの実施例に
ついて、その特性を比較例と比較した結果について具体
的に説明する。
【0043】第1実施例 JIS Z3312のYGW11に相当する銅メッキ無
しソリッドワイヤを使用し、このワイヤの伸線工程で使
用する潤滑剤の中に黒鉛及びMoS2を混入させ、ワイ
ヤの表面に積極的に黒鉛及びMoS2を埋め込んだ。更
に、直径が最終製品径であるワイヤの表面に黒鉛及びM
oS2を油に分散させて塗布し、実施例及び比較例のワ
イヤを試作した。
【0044】このワイヤの表面又は表面直下に存在する
黒鉛の面間隔、黒鉛の量(黒鉛塗布量)、MoS2の粒
径、MoS2の量(MoS2塗布量)及び油量を上述の測
定方法により測定した。そして、溶接電流が300A、
溶接電圧が37V、ワイヤの突き出し長さが25mm、
溶接速度が30cm/分の溶接条件でビードオンプレー
ト溶接を行った。溶接の際に、溶接ビードの左右に飛散
する全てのスパッタを銅製の容器で捕集し、1分間当た
りに発生したスパッタ質量を測定した。ここで、銅メッ
キ無しソリッドワイヤの直径は1.2mmである。これ
らの結果を下記表1及び表2に示す。なお、表1及び表
2に示す「Tr.」は、その量が微量であることを示
す。但し、カーボンブラックの場合、通常入手できる黒
鉛の面間隔は0.344nm程度であり、石油系、石炭
系コークスの面間隔は0.344〜0.343nmであ
る。これを2000乃至3000℃の温度で熱処理する
ことにより、その面間隔を種々変えることができ、表2
に示す比較例No.21乃至27のワイヤに塗布された黒
鉛はこのようにして面間隔を調整したものである。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】上記表1及び表2に示すように、実施例N
o.1乃至13は、スパッタ発生量が少なかった。
【0048】一方、上記表2に示すように、比較例No.
27は、黒鉛の面間隔が本発明の上限値を超え、黒鉛塗
布量が本発明の下限値未満であるので、スパッタ発生量
が多かった。
【0049】比較例No.28は、黒鉛の面間隔が本発明
の上限値を超えているので、スパッタ発生量が多かっ
た。
【0050】比較例No.29は、黒鉛の面間隔及び黒鉛
塗布量が本発明の上限値を超えているので、スパッタ発
生量が多かった。
【0051】比較例No.30は、黒鉛の面間隔が本発明
の上限値を超え、黒鉛塗布量が本発明の下限値未満であ
るので、スパッタ発生量が多かった。
【0052】比較例No.31は、黒鉛の面間隔が本発明
の上限値を超えているので、スパッタ発生量が多かっ
た。
【0053】比較例No.32は、黒鉛の面間隔が本発明
の上限値を超えているので、スパッタ発生量が多かっ
た。
【0054】比較例No.33は、黒鉛の面間隔が本発明
の上限値を超えているので、スパッタ発生量が多かっ
た。
【0055】第2実施例 JIS Z3313のYFW−C50DMに相当する銅
メッキ無しフラックス入りワイヤを使用し、このワイヤ
の伸線工程で使用する潤滑剤の中に黒鉛及びMoS2
混入させ、ワイヤの表面に積極的に黒鉛及びMoS2
埋め込んだ。更に、直径が最終製品径であるワイヤの表
面に黒鉛及びMoS2を油に分散させて塗布し、実施例
及び比較例のワイヤを試作した。
【0056】このワイヤの表面及び表面直下に存在する
黒鉛の面間隔、黒鉛の量(黒鉛塗布量)、MoS2の粒
径、MoS2の量(MoS2塗布量)及び油量を上述の測
定方法により測定した。そして、溶接電流が300A、
溶接電圧が37V、ワイヤの突き出し長さが25mm、
溶接速度が30cm/分の溶接条件でビードオンプレー
ト溶接を行った。溶接の際に、溶接ビードの左右に飛散
する全てのスパッタを銅製の容器で捕集し、1分間当た
りに発生したスパッタ質量を測定した。ここで、銅メッ
キ無しフラックス入りワイヤの直径は1.2mmであ
り、そのフラックス率は13.5%である。これらの結
果を下記表3及び表4に示す。なお、表3及び表4に示
す「Tr.」は、その量が微量であることを示す。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】上記表3及び表4に示すように、実施例N
o.14乃至26は、スパッタ発生量が少なかった。
【0060】一方、上記表4に示すように、比較例No.
34は、黒鉛の面間隔が本発明の上限値を超えているの
で、スパッタの発生量が多かった。
【0061】比較例No.35は、黒鉛の面間隔が本発明
の上限値を超えているので、スパッタの発生量が多かっ
た。
【0062】比較例No.36は、黒鉛の面間隔及び黒鉛
塗布量が本発明の上限値を超えているので、スパッタの
発生量が多かった。
【0063】比較例No.37は、黒鉛の面間隔が本発明
の上限値を超え、黒鉛塗布量が本発明の下限値未満であ
るので、スパッタの発生量が多かった。
【0064】比較例No.38は、黒鉛の面間隔が本発明
の上限値を超えているので、スパッタの発生量が多かっ
た。
【0065】比較例No.39は、黒鉛の面間隔が本発明
の上限値を超えているので、スパッタの発生量が多かっ
た。
【0066】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、ワ
イヤの表面上又は表面直下に存在する黒鉛の面間隔及び
その量を適切に規定したので、銅メッキが表面に施され
ていないワイヤであっても、スパッタ発生量を低減する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】横軸に回折角度をとり、縦軸に回折強度をとっ
て、捕集された黒鉛の測定結果を示す回折図である。
【図2】横軸に回折角度をとり、縦軸に回折強度をとっ
て、捕集された他の黒鉛の測定結果を示す回折図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清水 弘之 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株 式会社神戸製鋼所藤沢事業所内 (72)発明者 浅井 法廣 神奈川県藤沢市宮前字裏河内100番1 株 式会社神戸製鋼所藤沢事業所内 Fターム(参考) 4E084 AA31 AA33 BA05 CA24 DA09 EA04 EA07

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (002)回折線のピーク位置から求め
    た面間隔d002が0.3353nm乃至0.3372n
    mである黒鉛がワイヤの表面上又は表面直下にワイヤ1
    0kg当たり0.05乃至5g存在することを特徴とす
    る溶接用ワイヤ。
  2. 【請求項2】 粒径が0.1乃至30μmであるMoS
    2が前記ワイヤの表面上又は表面直下にワイヤ10kg
    当たり0.01乃至2g存在することを特徴とする請求
    項1に記載の溶接用ワイヤ。
  3. 【請求項3】 植物油、動物油、鉱物油及び合成油から
    なる群から選択された少なくとも1種以上の油が総量で
    前記ワイヤの表面にワイヤ10kg当たり0.2乃至3
    g存在することを特徴とする請求項2に記載の溶接用ワ
    イヤ。
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