JP2001225105A - 高炭素クロム鋼線の製造方法及び機械構造部品 - Google Patents

高炭素クロム鋼線の製造方法及び機械構造部品

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JP2001225105A
JP2001225105A JP2000035586A JP2000035586A JP2001225105A JP 2001225105 A JP2001225105 A JP 2001225105A JP 2000035586 A JP2000035586 A JP 2000035586A JP 2000035586 A JP2000035586 A JP 2000035586A JP 2001225105 A JP2001225105 A JP 2001225105A
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wire
steel wire
area
reduction
carbon chromium
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JP2000035586A
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Norimasa Ono
訓正 小野
Shoji Nishimura
彰二 西村
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】内部にクラックを生ずることなく、1回の球状
化焼鈍で良好な球状化組織を有する高炭素クロム鋼線の
製造方法及び軸受や各種のシャフトなど耐摩耗性や耐疲
労特性に優れた機械構造部品を提供する。 【解決手段】(1)C≧0.7%、Cr≧0.5%を含有する熱
間圧延後の線材に、Ac1変態点以下の温度で総減面率30
〜80%の延伸加工を行って所定の形状に仕上げた後、球
状化焼鈍する。前記線材に、Ac1変態点以下の温度で減
面率30%以上の延伸加工を行い、更にDRを伸線加工の減
面率、TRを延伸加工と伸線加工を合わせた総減面率
(%)として、DR≦0.0011×TR2 −0.3603×TR+21.701
を満たすとともに総減面率TRが80%以下となる減面率で
伸線加工を行って所定の形状に仕上げた後、球状化焼鈍
してもよい。(2)C≧0.7%、Cr≧0.5%を含有し、上
記(1)に記載の方法で製造された鋼線を素材とする機
械構造部品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高炭素クロム鋼線の
製造方法及び機械構造部品に関する。詳しくは、軸受や
各種のシャフトなど耐摩耗性や耐疲労特性に優れた機械
構造部品及びその素材となる高炭素クロム鋼線の製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、JIS G 4805で規格化されたSUJ
1〜SUJ5を初めとする高炭素クロム鋼を母材とする
直径が5.0mm以下の鋼線は、図2に示す工程で製造
されてきた。つまり、熱間圧延された線材に球状化熱処
理(球状化焼鈍)が施され、次いで、穴ダイスを用いた
中間伸線加工(以下、穴ダイスを用いた伸線加工を単に
「伸線加工」という)と再度の球状化熱処理が行われた
後、仕上げ伸線加工が施されていた。
【0003】これは、高炭素クロム鋼を母材とする熱間
圧延線材には、硬くて脆い初析セメンタイト(つまり、
旧オーステナイト粒界に沿うセメンタイト)が析出して
いるため、熱間圧延組織のままで伸線加工を行うと、後
述の図3で詳しく述べるように旧オーステナイト粒界間
に微細なクラックが発生し、そのクラックを起点に伸線
加工時に断線を生じたり、断線を生じないまでも鋼線に
は内部欠陥が残ってしまうからである。
【0004】しかしながら、上記の従来法は、繰り返し
の球状化焼鈍を必要とするので、工程が複雑になり処理
時間も長くなって、コスト面で不利であった。加えて、
長時間の熱処理(焼鈍処理)のために、線材の表面には
脱炭や厚いスケールが生成する場合もあった。更に、高
炭素クロム鋼線は、軸受や各種のシャフトなど耐摩耗性
や耐疲労特性が要求される構造部品の素材として用いら
れるため、表面疵の発生を避ける必要があるが、工程が
多い場合には、工程間の搬送時に疵が発生することがあ
り、品質管理面での問題もあった。
【0005】一方、最近では軸受メーカーで部品加工の
前に仕上げ伸線加工を行うことも試みられており、した
がって、軸受メーカーに納入する前の寸法精度として、
従来の鋼線のような仕上げ加工精度が必ずしも要求され
ない場合が生じている。又、球状化熱処理後に表面潤滑
した鋼線を軸受メーカーでそのまま部品に加工すること
も試みられるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑みなされたもので、1回の球状化熱処理(球状化焼
鈍)で、鋼線内部にクラックを生ずることなく、従来の
2回の球状化焼鈍を行った場合と同等の球状化組織を有
するJIS G 4805のSUJ1〜SUJ5を初めとする高炭
素クロム鋼を母材とする鋼線の製造方法、及び、当該方
法で製造された高炭素クロム鋼線を素材とする軸受や各
種のシャフトなど耐摩耗性や耐疲労特性に優れた機械構
造部品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)、(2)に示す高炭素クロム鋼線の製造方法及び
(3)に示す機械構造部品にある。
【0008】(1)質量%で、C:0.7%以上、C
r:0.5%以上を含有する熱間圧延後の線材に、Ac1
変態点以下の温度で総減面率30〜80%の延伸加工を
行って所定の形状に仕上げた後、球状化焼鈍することを
特徴とする高炭素クロム鋼線の製造方法。
【0009】(2)質量%で、C:0.7%以上、C
r:0.5%以上を含有する熱間圧延後の線材に、Ac1
変態点以下の温度で減面率30%以上の延伸加工を行
い、次いで、下記 (1)式を満たすとともに延伸加工と合
わせた総減面率が80%以下となる減面率で伸線加工を
行って所定の形状に仕上げた後、球状化焼鈍することを
特徴とする高炭素クロム鋼線の製造方法。
【0010】 DR≦0.0011×TR2 −0.3603×TR+21.701・・・(1) ここで、DRは伸線加工の減面率(%)、TRは延伸加
工と伸線加工を合わせた総減面率(%)を指す。
【0011】(3)上記(1)又は(2)に記載の方法
で製造された鋼線を素材とする機械構造部品。
【0012】なお、「線材」とは、棒状に熱間圧延され
た鋼で、コイル状に巻かれた鋼材を指し、所謂「バーイ
ンコイル」を含むものである。
【0013】「延伸加工」とは、ローラダイスを用いた
引き抜き加工、所謂「2ロール圧延機」、「3ロール圧
延機」や「4ロール圧延機」を用いた圧延加工を指し、
通常の穴ダイスを用いた伸線加工を除いたものである。
【0014】本発明者らは、球状化焼鈍の回数を減らし
ても従来と同等の球状化組織を高炭素クロム鋼線に付与
でき、しかも旧オーステナイト粒界間に内部欠陥(クラ
ック)を残さない加工方法について調査・研究を重ね
た。その結果、下記の知見を得た。
【0015】(a)図3に示すように、伸線加工の場
合、被加工材1には伸線方向(長手方向)に垂直な方向
の圧縮応力Cと長手方向の大きな引張応力Tが働き、相
当応力は被加工材1の内部にまで浸透しない。なお、相
当応力とはすべての応力が合成されたものをいう。した
がって、被加工材1、つまり、初析セメンタイトが存在
する高炭素クロム鋼の線材を熱間圧延組織のままで、穴
ダイス2を用いて伸線加工すれば、低い加工度、例え
ば、30%にも満たない減面率で、旧オーステナイト粒
界間に微細なクラック3が発生する。このため、伸線加
工を続けるとそのクラック3を起点に断線を生じたり、
断線を生じないまでも鋼線には内部欠陥が残ってしま
う。なお、図3には伸線加工前後の組織を模式的に示し
た。 (b)延伸加工はロールやローラーダイスによって被加
工材1をその半径方向に圧縮する加工であるため、伸線
加工に比べて被加工材1を内奥まで均一に塑性変形させ
ることができる。つまり、延伸加工では、相当応力を被
加工材1の内奥まで浸透させることができる。例えば、
図1に示すように、ロール4を用いた延伸加工の場合、
被加工材1には垂直方向の圧縮応力Cに加えて長手方向
にも圧縮応力Cが働くので、相当応力は被加工材1の内
奥にまで浸透する。ローラーダイスを用いた延伸加工の
場合、被加工材1には伸線方向(長手方向)に垂直な方
向の圧縮応力Cと長手方向の引張応力Tが働くが、中心
部での長手方向の引張応力Tは僅かなものであるため相
当応力は被加工材1の内奥にまで浸透する。このため、
被加工材1、つまり、初析セメンタイトが存在する高炭
素クロム鋼の線材を、熱間圧延組織のままで加工しても
旧オーステナイト粒界間に微細なクラックが発生するこ
とがない。なお、図1にも延伸加工前後の組織を模式的
に示した。
【0016】(c)高炭素クロム鋼を母材とする熱間圧
延線材のミクロ組織は、パーライトを主体とするもので
あり、これを単に球状化焼鈍しても粒径の細かい炭化物
からなる球状化組織しか得られない。しかし、上記の組
織を有する高炭素クロム鋼の線材に、Ac1変態点以下の
温度で総減面率30〜80%の延伸加工を施せば、パー
ライト組織中のセメンタイトが破砕され、更に、加工歪
が導入される。したがって、高炭素クロム鋼の線材に上
記の延伸加工を施してから球状化焼鈍を行えば、その加
熱過程でセメンタイトの固溶が促進されるとともに、冷
却の初期段階に析出した微細な炭化物を核にして炭化物
が凝集する。このため、1回の球状化焼鈍で、仕上げ加
工前に、従来法のように2回の球状化焼鈍を施した場合
と同等の球状化組織(つまり、比較的大きな炭化物から
なり、球状化率も同程度の組織)とすることができる。
更に、上記(b)で述べたように鋼線内部にクラックが
生じることはない。
【0017】(d)パーライトを主体とする高炭素クロ
ム鋼を母材とする熱間圧延線材に、Ac1変態点以下の温
度で減面率30%以上の延伸加工を行い、次いで、前記
(1)式を満たすとともに延伸加工と合わせた総減面率が
80%以下となる減面率で伸線加工を行った場合にも、
鋼線内部にクラックを生じさせることなく、パーライト
組織中のセメンタイトの破砕と加工歪の導入が行える。
したがって、高炭素クロム鋼の線材に上記の延伸加工と
伸線加工を施してから球状化焼鈍を行えば、その加熱過
程でセメンタイトの固溶が促進されるとともに、冷却の
初期段階に析出した微細な炭化物を核にして炭化物が凝
集する。このため、1回の球状化焼鈍で、仕上げ加工前
に、従来法のように2回の球状化焼鈍を施した場合と同
等の球状化組織とすることができる。
【0018】なお、「球状化率」とは、顕微鏡観察した
時、「その視野における炭化物(セメンタイト)に対し
ての(短径)/(長径)の比が0.5以上である炭化物
の割合(%)」を意味する。
【0019】本発明は、上記の知見に基づいて完成され
たものである。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の各要件について詳
しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質
量%」を意味する。 (A)線材の化学組成 本発明が対象とする高炭素クロム鋼線は、所定の形状に
加工された後、最終工程で焼入れ焼戻しなどの熱処理が
施されて、所望の特性(硬さ、耐摩耗性、耐疲労特性な
ど)が付与される。この最終製品(機械構造部品)にお
ける特性の付与のために鋼線に加工する線材の化学成分
としてC量、Cr量のみを下記の範囲に限定する。
【0021】C:0.7%以上 Cは、硬さを確保して耐摩耗性を得るのに有効な元素で
ある。しかし、その含有量が0.7%未満では充分な硬
さが得られない。Cの含有量の上限は特に規定しなくて
もよい。しかし、Cの含有量が多すぎると鋼材が硬質化
し、室温近傍で延伸加工、又は、延伸加工と伸線加工を
組み合わせた加工を行う場合、加工性の低下を招く場合
があり、特に、C含有量が1.3%を超えると、前記加
工時の加工性が大きく低下する場合があるので、Cの含
有量の上限は1.3%とすることが好ましい。なお、C
含有量の上限は1.1%とすることが一層好ましい。 Cr:0.8%以上 Crは、鋼の焼入れ性を高めて強度、靱性、耐摩耗性を
高める作用がある。しかし、その含有量が0.8%未満
では添加効果に乏しい。Crの含有量の上限は特に規定
しなくても良い。しかし、多量のCrを含有させても前
記の効果が飽和してコストが嵩むし、転動疲労特性が低
下する場合があるので、Crの含有量の上限は1.7%
とすることが好ましい。なお、Cr含有量の上限は1.
6%とすることが一層好ましい。
【0022】本発明が対象とする高炭素クロム鋼線のC
及びCr以外の他の化学成分の組成に関しては、特別な
限定を加える必要はない。最終製品(機械構造部品)に
おいて要求される特性の付与が可能な成分範囲でありさ
えすれば良い。
【0023】具体的には、例えば、CとCr以外の元素
としてSi:0〜1.0%、Mn:0〜1.0%、C
u:0〜0.5%、Ni:0〜0.5%、Mo:0〜
1.0%、W:0〜1.0%、V:0〜0.4%、N
b:0〜0.05%、B:0〜0.005%を含有し、
残部がFeと不可避不純物からなり、不純物としてのP
が0.05%以下、Sが0.03%以下、Tiが0.0
1%のものであれば良い。
【0024】なお、最終製品における特性向上を目的
に、CとCr以外の上記した元素を追加含有させる場
合、各元素の含有量はそれぞれ、Si:0.1〜1.0
%、Mn:0.1〜1.0%、Cu:0.05〜0.5
%、Ni:0.05〜0.5%、Mo:0.05〜1.
0%、W:0.05〜1.0%、V:0.05〜0.4
%、Nb:0.002〜0.05%、B:0.0003
〜0.005%とすることが好ましい。不純物としての
P、S、Tiの含有量は、Pが0.02%以下、Sが
0.015%以下、Tiが0.005%以下とすること
が好ましい。 (B)熱間圧延後の線材の加工 本発明においては、高炭素クロム鋼の線材に、Ac1変態
点以下の温度で総減面率30〜80%の延伸加工を行う
か、減面率30%以上の延伸加工を行い、次いで、前記
(1)式を満たすとともに延伸加工と合わせた総減面率が
80%以下となる減面率で伸線加工を行う必要がある。
【0025】上記した加工の温度と延伸加工における下
限の減面率(30%)の両方ともが満足されない場合に
は、パーライト組織中のセメンタイトが破砕され難い
し、加工歪も導入され難い。特に、線材を加工する際の
温度がAc1変態点を超えるような高い温度である場合に
は、パーライト組織中のセメンタイトの一部はオーステ
ナイト中に固溶するし、導入された加工歪も解放されて
しまう。したがって、高炭素クロム鋼の線材を加工した
後で球状化焼鈍を行っても、所望の球状化組織、つま
り、従来法のように2回の球状化焼鈍を施した場合と同
等の球状化組織が得られない。したがって、線材を加工
する際の温度をAc1変態点以下とし、延伸加工における
下限の減面率を30%とした。なお、線材を加工する際
の温度の下限は特に規定しなくてもよい。室温で加工し
てもよい。
【0026】高炭素クロム鋼の線材に、Ac1変態点以下
の温度で延伸加工だけを施す場合、延伸加工の総減面率
が80%を超えると鋼線内部にクラックが生じる場合が
あるので、延伸加工の総減面率は80%以下とする必要
がある。高炭素クロム鋼の線材に、Ac1変態点以下の温
度で延伸加工と伸線加工を合わせて施す場合、先ず減面
率30%以上で延伸加工してから伸線加工する必要があ
るのは、減面率30%未満の延伸加工に続けて伸線加工
を行うと、鋼線内部にクラックが生じる場合があるため
である。
【0027】一方、減面率30%以上の延伸加工に続け
て伸線加工を行う場合に、延伸加工と伸線加工を合わせ
た総減面率が80%を超えると、同様に鋼線内部にクラ
ックが生じる場合がある。
【0028】減面率30%以上の延伸加工に続けて伸線
加工を行う場合、延伸加工と伸線加工を合わせた総減面
率TRが80%以下であっても、伸線加工の減面率DR
が前記 (1)式を満たさなければ、図4に示すように鋼線
の内部にクラックが発生してしまう。なお、図4は、通
常の方法で製造したSUJ2鋼(JIS G 4805(1990))の
5.5mm線材を用いて減面率を種々変化させて延伸加
工と伸線加工を行い、伸線加工の減面率DRと、延伸加
工と伸線加工とを合わせた減面率TRとが鋼線の内部ク
ラックの発生に及ぼす影響を調査した結果を整理した一
例である。
【0029】上記の理由から、本発明においては、熱間
圧延した高炭素クロム鋼の線材に対して、Ac1変態点以
下の温度で総減面率30〜80%の延伸加工を行うか、
減面率30%以上の延伸加工を行い、次いで、前記 (1)
式を満たすとともに延伸加工と合わせた総減面率が80
%以下となる減面率で伸線加工を行うように規定した。 (C)球状化焼鈍 前記(A)項の化学組成を有し(B)項の加工を受けた
鋼線は次に球状化焼鈍される。この球状化焼鈍の方法は
特に限定されるものでなく、通常の条件で行われるもの
でよい。
【0030】本発明が対象とする高炭素クロム鋼線は、
例えば、前記(A)項の化学組成を有する鋼を通常の方
法で溶製して鋼片に加工した後、通常の方法で熱間圧延
して線材に加工し、この線材に、(B)項の加工、
(C)項の球状化焼鈍を施して製造される。このように
して製造された鋼線は、例えば通常の方法で脱スケール
や潤滑の処理を受けた後、所定形状に加工され、更に、
最終工程としての焼入れ焼戻しなどの熱処理を受けて、
所望の特性を有する機械構造部品に仕上げられる。
【0031】以下、実施例により本発明を詳しく説明す
る。
【0032】
【実施例】表1に示す化学組成のSUJ2鋼(JIS G 48
05(1990))を供試鋼として直径5.5mmの線材を熱間
圧延した。
【0033】
【表1】
【0034】上記の直径5.5mmの線材に機械的なデ
スケーリング(メカニカルデスケーリング)処理を施
し、次いで、室温で3ロール圧延機を用いた通常の延伸
加工(圧延加工)を行った。一方、前記の直径5.5m
mの線材に通常の酸洗によるデスケーリングを行ってか
ら潤滑処理して室温で伸線加工することも行った。表2
に、前記の延伸加工、伸線加工におけるパススケジュー
ルの詳細を示す。なお、表2に示した減面率は直径5.
5mmからの総減面率であり、減面率30%以上は延伸
加工と伸線加工とで同じパススケジュールとした。
【0035】
【表2】
【0036】表2の各パス毎にサンプルを採取し、鋼線
の長手方向縦断面(鋼線の加工方向に平行に、その中心
線を通って切断した面)を顕微鏡観察するとともに、試
料数を20以上とした引張試験を行って、鋼線の内部欠
陥(クラック)発生の有無を調査した。なお、表2には
この内部欠陥の発生の有無も併せて示した。
【0037】表2において、伸線加工では減面率30%
で内部欠陥が認められるが、延伸加工の場合には減面率
80%の加工でも内部欠陥が認められない。つまり、延
伸加工することで、SUJ2のような高炭素クロム鋼の
線材を旧オーステナイト粒界間に微細なクラックを発生
させることなくサイズダウンできることが明らかであ
る。次いで、前記の減面率で30〜80%の延伸加工を
施した鋼線に、図5に示すヒートパターンで球状化焼鈍
SA1を施し、球状化焼鈍後の球状化率及び平均炭化物
粒径を調査した。
【0038】又、直径5.5mmの線材に機械的なデス
ケーリング(メカニカルデスケーリング)処理を施し、
次いで、600℃で3ロール圧延機を用いた通常の温間
延伸加工(圧延加工)を行った後、この鋼線に、上記の
球状化焼鈍SA1を施し、球状化焼鈍後の球状化率と平
均炭化物粒径とを調査した。
【0039】比較のために、従来法と同様に2回の球状
化焼鈍を施した場合の球状化率と平均炭化物粒径も調査
した。すなわち、直径5.5mmの線材に図6に示すヒ
ートパターンで球状化焼鈍SA2を行い、次いで、通常
の方法で酸洗・潤滑処理した後、減面率で30〜80%
の伸線加工を施し、更に、図7に示すヒートパターンで
球状化焼鈍SA3を行い、球状化焼鈍後の球状化率及び
平均炭化物粒径を調査した。
【0040】表3に、球状化率及び平均炭化物粒径の調
査結果を示す。なお、表3には、直径5.5mmの線材
をそのまま図4に示すヒートパターンで球状化焼鈍した
場合の球状化率と平均炭化物粒径及び硬さも併記した。
【0041】
【表3】
【0042】表3から、本発明に係る方法で処理された
鋼線が、従来法と同様に2回の球状化焼鈍を施した鋼線
と同等の球状化組織(つまり、同等の平均炭化物粒径と
同等の球状化率)を有する。なお、本実施例における球
状化焼鈍はバッチ処理としたが、この球状化焼鈍は、例
えば、所定の形状に仕上げた後にループレイヤを取り付
け、鋼線をリング状に展開した後、連続的に焼鈍処理す
る方法で行っても良い。表2に示した30〜80%の減
面率で延伸加工した鋼線を、更に室温で伸線加工するこ
とも行った。表4に、延伸加工及び伸線加工におけるパ
ススケジュールの詳細を示す。なお、表4に示した総減
面率TRは延伸加工と伸線加工を合わせた直径5.5m
mからの減面率であり、伸線加工の減面率DRは、延伸
加工した鋼線から伸線加工した場合の減面率を示す。な
お、総減面率TRに占める伸線加工の減面率DRの割合
を括弧内に併せて示した。表4の各条件毎にサンプルを
採取し、鋼線の長手方向縦断面を顕微鏡観察するととも
に、試料数を20以上とした引張試験を行って、鋼線の
内部欠陥(クラック)発生の有無を調査した。なお、表
4にはこの内部欠陥の発生の有無も併せて示した。表4
において内部に欠陥(クラック)のない鋼線について
は、前記図5に示すヒートパターンで球状化焼鈍SA1
を施し、球状化焼鈍後の球状化率及び平均炭化物粒径も
調査した。
【0043】
【表4】
【0044】表4から、延伸加工と伸線加工の両方を本
発明で規定する条件で施された鋼線には内部欠陥が認め
られず、しかも、従来法と同様に2回の球状化焼鈍を施
した鋼線(表3参照)と同等の球状化組織を有すること
が明らかである。
【0045】
【発明の効果】本発明の方法によれば、高炭素クロム鋼
線の内部にクラックを生ずることなく、球状化熱処理
(球状化焼鈍)を1回に削減することができる。本発明
の機械構造部品の素材となる高炭素クロム鋼線は、本発
明の方法によって比較的容易に低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】初析セメンタイトが存在する高炭素クロム鋼の
線材を熱間圧延組織のままで延伸加工した場合の応力状
況と加工後の組織状況を模式的に示す図である。
【図2】高炭素クロム鋼線の従来の製造方法を示す図で
ある。
【図3】初析セメンタイトが存在する高炭素クロム鋼の
線材を熱間圧延組織のままで伸線加工した場合の応力状
況、加工後の組織状況及び旧オーステナイト粒界間に微
細なクラックが発生する状況を模式的に示す図である。
【図4】通常の方法で製造したSUJ2鋼(JIS G 4805
(1990))の5.5mm線材を用いて、減面率を種々変化
させて延伸加工と伸線加工を行った場合に、伸線加工の
減面率DRと、延伸加工と伸線加工とを合わせた総減面
率TRとが鋼線の内部クラックの発生に及ぼす影響を調
査した結果の一例を示す図である。
【図5】実施例で行った球状化焼鈍SA1のヒートパタ
ーンを示す図である。
【図6】実施例で行った球状化焼鈍SA2のヒートパタ
ーンを示す図である。
【図7】実施例で行った球状化焼鈍SA3のヒートパタ
ーンを示す図である。
【符号の説明】
1:被加工材、 2:穴ダイス、 3:クラック、 4:ロール、 S:剪断応力、 C:圧縮応力

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、C:0.7%以上、Cr:0.
    5%以上を含有する熱間圧延後の線材に、Ac1変態点以
    下の温度で総減面率30〜80%の延伸加工を行って所
    定の形状に仕上げた後、球状化焼鈍することを特徴とす
    る高炭素クロム鋼線の製造方法。
  2. 【請求項2】質量%で、C:0.7%以上、Cr:0.
    5%以上を含有する熱間圧延後の線材に、Ac1変態点以
    下の温度で減面率30%以上の延伸加工を行い、次い
    で、下記 (1)式を満たすとともに延伸加工と合わせた総
    減面率が80%以下となる減面率で伸線加工を行って所
    定の形状に仕上げた後、球状化焼鈍することを特徴とす
    る高炭素クロム鋼線の製造方法。 DR≦0.0011×TR2 −0.3603×TR+21.701・・・(1) ここで、DRは伸線加工の減面率(%)、TRは延伸加
    工と伸線加工を合わせた総減面率(%)を指す。
  3. 【請求項3】請求項1又は2に記載の方法で製造された
    鋼線を素材とする機械構造部品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN101983787A (zh) * 2010-09-14 2011-03-09 江苏赛福天钢绳有限公司 一种低强度低硬度钢丝的制备方法

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