JP3909939B2 - 伸びフランジ性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸びフランジ性に優れた中・高炭素鋼板を得るための、焼鈍方法に特徴のある製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼中のC含有量が概ね0.1〜0.8質量%の、いわゆる中・高炭素鋼板は、焼入れ強化が可能であるとともに、焼入れ前の焼鈍状態ではある程度の加工性も有しているため、自動車部品をはじめ各種機械部品や軸受け部品の素材として広く使用されている。部品の製造にあたっては、一般的には打抜加工や曲げ成形が施され、さらに比較的軽度な絞り加工,伸びフランジ成形が施されることもある。また、部品形状が複雑な場合は、二ないし三部品を溶接して製造される場合も多い。そしてこれらの加工部品は熱処理を経て各種用途の部品に仕上げられていく。
【0003】
ところが近年、部品の製造コストを低減すべく、部品の一体成形や、部品加工の工程簡略化が進められている。このことは素材側から見ればより加工率の高い(=塑性変形量の大きい)加工に耐えなくてはならないことを意味する。つまり、加工技術の高度化に伴い、素材である中・高炭素鋼板自体にもより高い加工性が要求されるようになってきた。特に昨今では、打抜加工や曲げ加工のみならず、伸びフランジ成形加工(例えば穴拡げ加工等)といった局所的な延性が要求される高度な加工にも耐え得る鋼板素材のニーズが高まりつつある。
【0004】
こうした中、特公昭61−15930号公報,特公平5−70685号公報,および特開平4−333527号公報には、加工方法あるいは熱処理方法を工夫することによって棒鋼中の炭化物を球状化し、棒鋼線材の加工性を改善する技術が紹介されている。しかし、これらはいずれも棒鋼線材を対象とするものであり、素材が板材である場合に問題となる伸びフランジ性や穴拡げ性の改善方法は明らかにされていない。
【0005】
また、特開平8−3687号公報には、Cを0.3mass%以上含有し、炭化物の占める面積率が20%以下で、粒径1.5μm以上の炭化物の割合が30%以上である加工用高炭素鋼板が示されており、その製造方法として仕上熱延機出側温度を750〜810℃とし、10℃/sec以下で冷却して仕上温度とコイル巻取り温度との差を300℃以下として巻取り、720℃×20時間の球状化焼鈍を施し、26℃/Hrの冷却速度で100℃まで冷却した後空冷して常温まで冷却する方法が開示されている。しかし、この技術は鋼板の加工性を改善するものであるが、伸びフランジ性といった局部的な延性が要求される高度な加工性を改善する方法については明らかにされていない。また、炭化物粒径を1.5μm以上に粗大化させるため、部品加工後の焼入れ処理におけるオーステナイト温度域の加熱で炭素を十分固溶させるには長時間を要する。このため、例えば高周波焼入れのような短時間加熱による焼入れ処理の適用が難しくなる。
【0006】
さらに特開平8−120405号公報には、C:0.20〜0.60%の他、Si,Al,N,B,Ca等の黒鉛化を促進する元素を含有し、C含有量の10〜50%が黒鉛化しており、断面の鋼組織が3μm以上の黒鉛粒子を特定量含んだ球状化セメンタイトの分散したフェライト相になっている加工性に優れた薄鋼板が示されている。その製造方法として、仕上温度750〜900℃で熱間圧延し、450〜650℃で巻取り、冷間圧延後に600〜720℃で焼鈍する方法等が示されている。この薄鋼板は穴拡げ性と二次加工性に優れているという。しかし、含有炭素の黒鉛化を利用するものであるから、黒鉛化を促進する元素の添加が必要となり、一般的な市販の中・高炭素鋼種に広く適用できるものではない。加えて3μm以上の粗大な黒鉛粒子の存在は、先の例と同様、部品加工後の焼入れ処理の加熱において炭素の十分な固溶化を遅らせ、短時間加熱による焼入れ処理の適用を困難にする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、加工性の中でも特に「伸びフランジ性」を改善した中・高炭素鋼板のニーズが高いにもかかわらず、一般的な中・高炭素鋼種の鋼板素材においてそれらの特性を改善する手法は未だ明らかにされていない。また、加工性を重視した場合、加工後の焼入性をある程度犠牲にせざるを得ないのが現状である。
【0008】
そこで本発明は、特殊な元素を添加することなく一般的な中・高炭素鋼の鋼種において、昨今特に重要視されつつある伸びフランジ性を安定的に改善することができ、かつ、部品加工後の焼入性をも十分に確保することができる中・高炭素鋼板素材の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、請求項1の発明、すなわち、質量%において、C: 0.1 0.8 %,Si: 0.15 0.40 %,Mn: 0.3 1.0 %,Cr: 1.2 %以下,Mo: 0 0.3 %(無添加を含む),Cu: 0 0.3 %(無添加を含む),Ni: 0 2.0 %(無添加を含む)を含有し、Pを 0.03 %以下,Sを 0.01 %以下,T . Alを 0.1 %以下の含有量に制限し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼の熱延鋼板に対して、Ac1−50℃〜Ac1未満の温度範囲で0.5時間以上保持する1段目の加熱を行った後、Ac1〜Ac1+100℃の温度範囲で0.5〜20時間保持する2段目の加熱およびAr1−80℃〜Ar1の温度範囲で2〜60時間保持する3段目の加熱を連続して行い、かつ、2段目の保持温度から3段目の保持温度への冷却速度を5〜30℃/hとする3段階焼鈍を施す伸びフランジ性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法によって達成できる。ここで、Ac1は昇温過程における鋼のA1変態点(℃)、Ar1は降温過程におけるA1変態点(℃)を意味する。
【0012】
請求項2の発明は、3段階焼鈍に供する熱延鋼板として特に、金属組織におけるベイナイト相の存在率が20体積%以下(0%を含む)の鋼板を使用するものである。ベイナイト相の存在率は、例えば鋼板断面の走査電子顕微鏡による金属組織観察によって求めることができる。
【0013】
請求項の発明は、3段階焼鈍に供する熱延鋼板として、巻取温度を550〜700℃とした熱間圧延を経て得られた鋼帯を使用するもの、請求項の発明は同様に、仕上圧延の最終パス温度を750〜850℃とした熱間圧延を経て得られた鋼帯を使用するもの、請求項の発明は同様に、仕上圧延の全圧下率を85%以上、仕上圧延の最終パスの圧下率を15%以上とした熱間圧延を経て得られた鋼帯を使用するものである。ここで、仕上圧延とは、タンデム圧延機を使用する場合にあっては一連のタンデムスタンドの第1段目から巻取り前の最終段までの圧延を意味し、リバース圧延機のみを使用する場合にあっては最後の幅方向圧延の次のパスから最終パスまでの圧延を意味する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、一般的な中・高炭素鋼の加工性を改善する手段について詳細に検討してきた。その結果、▲1▼一般的な打抜加工性や曲げ加工性が向上する場合でも、伸びフランジ性が改善されるとは限らないこと、▲2▼炭化物を単に球状化させるだけでは伸びフランジ性の安定した改善は図れないこと、そして、▲3▼伸びフランジ性は、鋼板中における炭化物の分散形態に大きく依存し、具体的には炭化物のより一層の球状化と、平均炭化物間距離を大きくすることによって改善し得ることを知見した。さらにその場合、焼入性を阻害しない程度の炭化物粒径の範囲において伸びフランジ性の改善が実現できることもわかった。
【0015】
伸びフランジ性の改善挙動が、他の加工性の挙動と必ずしも一致しない理由について現時点では不明な点が多いが、次のようなことが考えられる。すなわち、伸びフランジ性は一般に穴拡げ試験で評価される特性であり、具体的には例えば、円板に予め設けた直径d0の穴にポンチを押し込んで穴を押し拡げていき、穴縁に板厚を貫通する割れが発生したときの穴直径dを測定し、そのときの穴径拡大率(d−d0)/d0で評価される。穴径拡大率は穴縁の円周方向ひずみの公称値を意味することから、伸びフランジ性は、穴縁にくびれあるいは割れが発生し始めるときの円周方向ひずみの限界値によって評価し得る特性であり、これは、局部的に高い応力が集中する場合の成形性を表していることになる。このようなくびれや割れは、加工変形中に生じる非常に局所的な欠陥によって敏感に引き起こされるものと考えられる。中・高炭素鋼板においては、そのような欠陥の生成原因として、炭化物(セメンタイト)を起点として生じたミクロボイドの成長(連結)が挙げられる。このため、中・高炭素鋼板の伸びフランジ性を改善するには、加工変形時における上記ミクロボイドの生成・成長ができるだけ抑制されるような金属組織にしておくことが重要であると考えられる。伸びフランジ性が他の一般的な加工性と異なる挙動を示すのは、他の加工性には影響を及ぼさないようなミクロ的な欠陥が、伸びフランジ性に対しては敏感に影響するためであると推察される。
【0016】
このような考察に基づいたとき、鋼板中の平均炭化物間距離を長くすることができれば、個々の炭化物を起点として生成したミクロボイドの連結を抑制でき、伸びフランジ性の改善が期待できる。本発明者らの研究によれば、実際に平均炭化物間距離と伸びフランジ性の間には密接な関係があることが確かめられた。一方、個々の炭化物の球状化率を高めることもミクロボイドの生成を抑制するうえで効果的であることがわかった。
本発明者らは、そのような金属組織を、特殊な元素の添加によらず、しかも加工後の焼入性を阻害しない範囲で達成するための方法について詳細な実験を重ね、本発明に係る製造方法を提案するに至ったのである。
以下、本発明を特定するための事項について説明する。
【0017】
本発明では、C:0.1〜0.8質量%を含有する亜共析鋼を対象とする。Cは炭素鋼においては最も基本となる合金元素であり、その含有量によって焼入れ硬さおよび炭化物量が大きく変動する。C含有量が0.1質量%以下の亜共析鋼では、各種機械構造用部品に適用するうえで十分な焼入れ硬さが得られない。一方、C含有量が0.8質量%を超えると、熱間圧延後の靭性が低下して鋼帯の製造性・取扱い性が悪くなるとともに、焼鈍後においても十分な延性が得られないため、加工度の高い部品への適用が困難になる。したがって、本発明では適度な焼入れ硬さと加工性を兼ね備えた素材鋼板を提供する観点から、C含有量が0.1〜0.8質量%の範囲の鋼を対象とする。なお、C含有量が低くなるほど伸びフランジ性は一層改善される。このため、伸びフランジ性を特に重視する用途ではC含有量が0.1〜0.5質量%の鋼を使用することが望ましい。
【0018】
Sは、MnS系介在物を形成する元素である。この介在物の量が多くなると局部延性が劣化するので、鋼中のS含有量はできるだけ低減することが望ましい。本発明ではS含有量を特別に低減していない一般的な市販鋼に対しても伸びフランジ性の向上効果は得られる。しかし、C含有量が0.8質量%近くまで高くなった場合でも、後述するElv値およびλ値がそれぞれ例えば35%以上,40%以上といった高い伸びフランジ性を安定して確保するためには、S含有量を0.01質量%以下に低減した鋼を使用することが望ましい。さらにElv値およびλ値をそれぞれ40%以上,55%以上にまで高めた非常に優れた伸びフランジ性を有する鋼板素材を安定して得るためには、前述のようにC含有量を0.1〜0.5質量%としたうえで、S含有量を0.005質量%以下に低減した鋼を用いるのがよい。
【0019】
Pは、延性や靭性を劣化させるので、0.03質量%以下の含有量とすることが望ましい。
Alは溶鋼の脱酸剤として添加されるが、鋼中のT.Al量が0.1質量%を超えると鋼の清浄度が損なわれて鋼板に表面疵が発生しやすくなるので、T.Al含有量は0.1質量%以下とすることが望ましい。
【0020】
Siは、局部延性に対して影響の大きい元素の1つである。Siを過剰に添加すると固溶強化作用によりフェライトが硬化し、成形加工時に割れ発生の原因となる。またSi含有量が増加すると製造過程で鋼板表面にスケール疵が発生する傾向を示し、表面品質の低下を招く。そこでSiを添加するに際しては0.40質量%以下の含有量となるようにする。加工性を特に重視する用途ではSi含有量は0.1質量%以下とすることが望ましい。
Mnは、鋼板の焼入れ性を高め、強靭化にも有効な添加元素である。十分な焼入れ性を得るためには0.3質量%以上の含有が望ましい。しかし、1.0質量%を超えて多量に含有させるとフェライトが硬化し、加工性の劣化を招く。そこで、Mnは0.3〜1.0質量%の範囲で含有させることが望ましい。
【0021】
また本発明では必要に応じてCr,Mo,Cu,Ni等の元素を添加して各特性の改善を図った鋼を使用できる。
Crは、焼入れ性を改善するとともに焼戻し軟化抵抗を大きくする元素である。しかし、1.2質量%を超える多量のCrが含まれると3段階焼鈍を施しても軟質化しにくく焼入れ前のプレス成形性や加工性が劣化するようになる。したがってCrを添加する場合は1.2質量%以下の範囲とする。
Moは、少量の添加でCrと同様に焼入れ性・焼戻し軟化抵抗の改善に寄与する。しかし、0.3質量%を超える多量のMoが含まれると3段階焼鈍を施しても軟質化しにくく焼入れ前のプレス成形性や加工性が劣化するようになる。したがってMoを添加する場合は0.3質量%以下の範囲とする。
Cuは、熱延中に生成する酸化スケールの剥離性を向上させるので、鋼板の表面性状の改善に有効である。しかし、0.3質量%以上含有させると溶融金属脆化により鋼板表面に微細なクラックが生じやすくなるので、Cuは0.3質量%以下の範囲で添加できる。Cu含有量の好ましい範囲は0.10〜0.15質量%である。
Niは、焼入れ性を改善するとともに低温脆性を防止する合金成分である。またNiは、Cu添加によって問題となる溶融金属脆化の悪影響を打ち消す作用を示すので、特にCuを約0.2%以上添加する場合にはCu添加量と同程度のNiを添加することが極めて効果的である。しかし、2.0質量%を超える多量のNiが含まれると3段階焼鈍を施しても軟質化しにくく焼入れ前のプレス成形性や加工性が劣化するようになる。したがってNiを添加する場合は2.0質量%以下の範囲とする。
【0022】
本発明は、中・高炭素鋼板において、炭化物の球状化率を高め、かつ平均炭化物間距離を大きくした金属組織を得るために、鋼板に対しそのA1変態点を挟んだ3段階の温度範囲で順次加熱する「3段階焼鈍」を施す点に大きな特徴がある。
一般的に、鋼をAc1点以上の温度に加熱すると炭化物のうち微細なものはオーステナイト中に固溶し、その後Ar1点以下の温度に冷却すると再び炭化物として析出する。その際、Ac1点以上の温度域で未溶解炭化物をある程度多く残存させることができた場合には、冷却速度を遅くすると、オーステナイト中に固溶したCはパーライトを生成せずに未溶解炭化物を核として析出するので、焼鈍後の炭化物の球状化率は高くなる。またこの場合、Ac1点以上の加熱によって炭化物の数は焼鈍前より減少し、しかも冷却速度が遅いときは冷却時に新たに核生成しないので、結果的に焼鈍後の炭化物数は焼鈍前より減少する。トータル炭素量は一定だから、炭化物数の減少は炭化物平均粒径の増大を意味する。そして特に、Ac1点以上の段階で核となる未溶解炭化物が場所的に均一に残存していたときには炭化物間距離も長くなる。
【0023】
しかしながら、Ac1点以上の温度域は、平衡的には亜共析鋼の炭化物はすべて固溶する領域である。このため、通常はAc1点以上の温度域に加熱すると未溶解炭化物の個数は少なくなり、その後Ar1点以下の温度への冷却過程で、オーステナイト中に固溶したCはラメラ間隔の広い再生パーライトとして析出する。その結果、炭化物の球状化率は極めて低くなり、伸びフランジ性の優れた鋼板は得られない。
【0024】
そこで、本発明者らは検討を重ねた結果、鋼板をAc1点以上へ加熱する前に、予めAc1点未満の特定温度域で一定時間以上加熱する処理を行えば、亜共析鋼であっても、Ac1点以上の温度域において未溶解炭化物を適切量残存させることが可能であることを知見した。加えて、Ar1点以下への冷却後に特定温度域で特定時間保持することによって、伸びフランジ性を高く維持するために必要な、適切な炭化物分散形態を得ることが可能になることもわかった。このような知見に基づいて規定した本発明の3段階焼鈍の条件について次に説明する。
【0025】
〔1段目の加熱〕
1段目の加熱の目的は、Ac1点未満の温度に鋼板を保持し、熱間圧延で生成したパーライトを分断して、炭化物(セメンタイト)の球状化を図ることである。分断された炭化物は比較的細かいものの、球状化の進行より炭化物単位体積当たりの表面積が減少するので、結果的に2段目のAc1点以上の加熱時に、炭化物/オーステナイト界面面積の減少効果で炭化物の固溶を遅らせることができる。熱延パーライトの分断・球状化反応促進のためにはAc1点未満の範囲でなるべく高温が望ましい。Ac1−50℃より低温では球状化が十分に進まない。一方、Ac1点以上になると界面面積の大きい熱延パーライトは容易にオーステナイトに固溶してしまうので目的が達成できない。したがって1段目の加熱温度はAc1−50℃〜Ac1未満の温度範囲とした。また、その温度範囲での保持時間が0.5時間未満では球状化が十分に図れないので、1段目の加熱保持時間は0.5時間以上とした。保持時間の上限は特に規定する必要はないが、工業的な実施を考慮したとき8時間以内とすることが望ましい。
なお、この1段目の加熱を行った後は、そのまま昇温して2段目の加熱を実施してもよいし、一旦常温まで冷却したのち改めて昇温して2段目の加熱に供してもよい。設備の都合等により1回の加熱で0.5時間以上の保持時間を確保できないときは、この1段目の加熱を複数回に分けて行ってもよい。その場合は上記温度範囲内での保持時間がトータル0.5時間以上となるようにする。
【0026】
〔2段目の加熱〕
2段目の加熱の目的は、1段目の加熱を経た鋼板をAc1点以上の温度に保持し、オーステナイト化した部分において微細な炭化物を固溶・消失させるとともに比較的大きな球状炭化物を未溶解のまま残すこと、および、フェライトが存在する場合にはその部分の炭化物をオストワルド成長させることである。つまり、続く3段目の加熱で炭化物析出の核となるべき未溶解炭化物の数および分散状態を決定付ける工程である。加熱温度がAc1点未満ではオーステナイトが生成しない。一方、Ac1+100℃の温度を超えると、1段目の加熱で炭化物が球状化されていても、その多くはオーステナイト中に固溶・消失し、未溶解炭化物の数が少なくなりすぎるか、または存在しなくなる。そうなると3段目への冷却過程で再生パーライトが生成し、伸びフランジ性を十分改善するに足る高い炭化物球状化率と長い平均炭化物間距離が実現できない。加熱保持時間が0.5時間未満ではオーステナイト中への微細炭化物の固溶が不十分であり、20時間を超える長時間加熱ではより平衡状態に近づくため未溶解炭化物の数が減少しすぎる。したがって、2段目の加熱はAc1〜Ac1+100℃の温度範囲で0.5〜20時間保持することとした。
【0027】
〔3段目の加熱〕
3段目の加熱の目的は、1段目〜2段目の加熱を経た鋼板をAr1点以下の温度に保持し、2段目の温度からの冷却でオーステナイト→フェライト変態に伴ってオーステナイトから吐き出されるCを未溶解炭化物を核として析出させるとともに、これらの炭化物をオストワルド成長させることである。つまり、炭化物の数は2段目の加熱で残存させた未溶解炭化物の数をほぼそのまま維持し、かつ炭化物の球状化率を高める工程である。保持温度がAr1点以下でないとオーステナイト→フェライト変態が起こらない。また、保持温度がAr1−80℃より低温の場合や、保持時間が2時間未満では、オストワルド成長が十分進まない。ただし、保持時間が60時間を超えてもその効果が飽和し、工業的なメリットはない。したがって、3段目の加熱はAr1−80℃〜Ar1の温度範囲で2〜60時間保持することとした。
【0028】
〔2段目の保持温度から3段目の保持温度への冷却速度〕
この冷却速度が速いとオーステナイトの過冷度が大きくなり、再生パーライトが生成しやすくなる。再生パーライトの生成を十分抑制するためには冷却速度を30℃/h以下とする必要がある。一方、冷却速度を5℃/hより遅くしても再生パーライト抑制効果は飽和し、工業的メリットがない。したがって、当該冷却速度は5〜30℃/hに規定した。
【0029】
ところで、本発明の3段階焼鈍に供する鋼板は、その金属組織(熱延組織)においてベイナイトの存在率が極めて低いものであることが望ましく、皆無であるのが最も良い。ベイナイトは羽毛状あるいは針状の微細な組織であり、その中で炭化物(セメンタイト)はさらに微細に分布している。このため、ベイナイト中にあった炭化物は1段目の加熱後も非常に微細であり、これらはほとんど全て2段目の加熱でオーステナイト中へ固溶・消失してしまう。本発明は前述のように、1段目の加熱でパーライト中のラメラ状炭化物を分断し球状化することを前提として2段目の加熱後に残存する未溶解炭化物の数を適切にコントロールするものである。したがって、ベイナイトの存在率が多くなりすぎると、予定通りに未溶解炭化物の数を確保することができなくなり、最終的な炭化物分散状態を適切にコントロールすることが困難になる。本発明者らの実験の結果、3段階焼鈍に供する鋼板中のベイナイトの存在率が20体積%以下の鋼板を使用することが工業的な操業において望ましいことが明らかになった。
【0030】
また、鋼板の金属組織は熱間圧延条件の影響を受けて大きく変化する。本発明を工業的規模での大量生産に適用する場合、次のような条件での熱間圧延を経て得られた鋼帯を使用して3段階焼鈍を行うことが望ましい。
【0031】
〔熱延巻取温度:550〜700℃〕
鋼帯の熱延巻取温度が550℃未満になると熱延組織にベイナイトが混在するようになる。一方、700℃を超えるとパーライトが粗大化し、パーライト中の板状の炭化物は厚くなって炭化物の分断化が進みにくくなるため、1段目の加熱において球状化しにくくなる。したがって、熱延巻取温度を550〜700℃とした熱間圧延を経て得られた鋼帯を使用するのが望ましい。
【0032】
〔仕上圧延の最終パス温度:750〜850℃〕
鋼帯の最終パス温度が750℃を下回ると変形抵抗が極めて高くなり、鋼種によってはフェライト+オーステナイト2相域圧延となるので、鋼帯の寸法精度の劣化や、フェライト粒の粗大化などで金属組織の均一性劣化が生じやすい。一方、850℃を超えるとオーステナイト粒径が粗大化し、熱延材の靭性が低下するとともに、加工されたオーステナイトが再結晶しやすくフェライト変態が遅れる。したがって、仕上圧延の最終パス温度を750〜850℃とした熱間圧延を経て得られた鋼帯を使用するのが望ましい。
【0033】
〔仕上圧延の全圧下率:85%以上,最終パスの圧下率:15%以上〕
仕上圧延の全圧下率が85%未満の場合や、最終パスの圧下率が15%未満の場合は、オーステナイト粒径が粗大化し、熱延材の靭性が低下するとともに、加工されたオーステナイトが再結晶しやすくフェライト変態が遅れる。したがって、仕上圧延の全圧下率を85%以上,かつ最終パスの圧下率を15%以上とした熱間圧延を経て得られた鋼帯を使用するのが望ましい。
【0034】
以上のようにして、伸びフランジ性を高く維持するための金属組織が得られる。具体的には例えば、炭化物の球状化率が90%以上であり、かつ平均炭化物間距離が0.8μmであるような金属組織が望ましい。また、加工後の焼入れ性を良好に維持するためには、例えば平均炭化物粒径を0.4〜1.0μmの範囲とすることが望ましい。また、フェライト粒径があまり小さいと材料の局部延性が低下する傾向があり、例えばフェライト粒径を平均20μm以上とすることが望ましい。本発明によってこのような望ましい金属組織を得ることが可能である。
【0035】
ここで、炭化物の球状化率は、鋼板断面の金属組織観察(例えば走査電子顕微鏡観察)において炭化物の最大長さaとその直角方向における最大長さbの比(a/b)が3未満のものを「球状化した炭化物」としてカウントし、測定炭化物総数に対する前記「球状化した炭化物」の割合で表したものを意味する。ただし、観察視野は炭化物総数が300個以上となる領域とする。
【0036】
平均炭化物粒径は、鋼板断面の金属組織観察において、観察視野内の個々の炭化物について測定した円相当径を全測定炭化物について平均した値を意味する。ただし、観察視野は炭化物総数が300個以上となる領域とする。
【0037】
平均炭化物間距離は、鋼板のC含有量から求めた炭化物の面積率f、および測定によって求めた上記平均炭化物粒径Dから、次のような仮定に基づいて計算によって求めたものを意味する。すなわち、炭化物は全て球形で同一粒径であり、均一に分布していると仮定する。そして、この仮定の炭化物粒径が測定によって求めた求めた平均炭化物粒径Dと等しいとして、隣接する炭化物の表面間距離Lを次式によって算出する。
L=((π/(4×f))(1/2)−1)×D
このLの値を平均炭化物間距離とする。
ここで、炭化物の面積率fは、鋼板のC含有量をC(質量%)とするとき、次式、
f=C/6.67
で求まる値である。
πは円周率である。
【0038】
【実施例】
〔実施例1〕
表1に、供試鋼板の化学成分,Ac1変態点,Ar1変態点,および焼入れ硬さを示す。Ac1変態点およびAr1変態点は、直径5mm×長さ10mmの供試鋼試験片を「10℃/hで昇温→900℃で10分間保持して完全にオーステナイト化→10℃/hで冷却」というヒートパターンで加熱・冷却しながら試験片の収縮・膨張を測定し、その収縮・膨張曲線の変化から求めた。焼入れ硬さは、熱延材をそのままAc1変態点以上である850℃で5分間保持した後水焼入れした場合の硬さを示した。この焼入れ硬さは一般的な焼入れ処理によって鋼材本来の硬度を比較したものであり、本発明に係る3段階焼鈍後の焼入性を表すものではない。
【0039】
【表1】
Figure 0003909939
【0040】
表1のうちA鋼は、C含有量が0.07質量%と低いので、焼戻しを行っていない焼入れ後の段階でも硬さが低く、機械部品として必要な硬度が得られないものであった。そこで、A鋼を除く鋼について、仕上パス温度880℃,仕上熱延での全圧下率80%,仕上圧延における最終パスの圧下率10%,巻取温度720℃の条件で熱間圧延を行って厚さ2.3mmの熱延鋼帯を製造し、酸洗した後、各鋼板を種々の条件で焼鈍した。焼鈍後の鋼板について、引張試験,切欠引張試験,穴拡げ試験を実施し、加工性を調べた。
【0041】
引張試験は、JIS 5号引張試験片を用い、平行部の標点間距離を50mmとして行った。
切欠引張試験は、JIS 5号引張試験片の平行部長手方向中央位置における幅方向両サイドに開き角45°,深さ2mmのVノッチを形成した試験片を用いて引張試験を行う方法で行った。Vノッチを含む標点間距離5mmに対する伸び率を破断後に求め、その伸び率を切欠引張伸びElvとした。
穴拡げ試験は、150mm角の鋼板の中央部にクリアランス20%にて10mm(d0)の穴を打抜いた後、その穴部について、50mmφ球頭ポンチにて押し上げる方法で行い、穴周囲に板厚を貫通する亀裂が発生した時点での穴径dを測定して、次式で定義される穴拡げ率λ(%)を求めた。
λ=(d−d0)/d0×100
これらElv値およびλ値は局部延性を表す指標であり、伸びフランジ性を定量的に評価し得るものである。
これらの試験結果を焼鈍条件と併せて表2・表3に示す。
【0042】
【表2】
Figure 0003909939
【0043】
【表3】
Figure 0003909939
【0044】
C含有量が0.8質量%を超えているE鋼は、焼鈍条件を本発明で規定する範囲内としても、Elv値は29%以下,λ値は33%以下にしかならず、伸びフランジ性は劣っていた(No.3,7,11)。一方、C含有量が本発明規定範囲内であるB鋼,C鋼,D鋼,F鋼,G鋼,H鋼は、本発明で規定する条件で焼鈍した場合、Elv値39%以上,λ値52%以上と、優れた伸びフランジ性を示した。C含有量が本発明規定範囲にあり、かつS含有量が0.01質量%以下に抑えられているF鋼は、C含有量が同等であるB鋼と比べてもさらに高いElv値・λ値を示しており、非常に優れた伸びフランジ性を有することがわかる。
【0045】
次に、C含有量が本発明規定範囲であるB鋼(No.16〜24)を例に、焼鈍条件の影響について述べる。1段目の保持温度が本発明規定範囲外である場合(No,16,17)、2段目の保持温度が本発明規定範囲より高い場合(No.19)、および2段目の加熱時間が本発明規定範囲より長い場合(No.20)は、いずれも2段目の加熱保持が終了する時点での未溶解炭化物が極めて少なくなり、その結果再生パーライトが生成したため、Elv値,λ値ともに低くなった。2段目の保持温度から3段目の保持温度への冷却速度が本発明の規定より速い場合(No.21)、および3段目の保持温度が本発明規定範囲より高い場合(No.22)でも、再生パーライトが生成したため、Elv値,λ値ともに低くなった。3段目の保持温度が本発明規定範囲より低い場合(No.23)、および3段目の加熱保持時間が本発明規定範囲より短い場合(No.24)は、3段目の加熱段階で炭化物の球状化が進まなかったため、Elv値,λ値ともに低くなった。また、Ac1点より低い温度の加熱のみの焼鈍の場合(No.18)も、Elv値,λ値ともに低くなった。
【0046】
図1は、B鋼の試験結果(表2のデータ)について、引張試験によるトータル伸び率T.El値と伸びフランジ性の指標であるElv値・λ値の関係をプロットしたものである。焼鈍条件が本発明規定範囲内にある場合(本発明例)、および、それ以外の場合(比較例)とも、T.El値の向上に伴ってElv値・λ値も向上する傾向にあることがわかる。しかしここで注目すべきは、本発明例と比較例においてT.El値が同等レベルのものを比較すると、本発明例のものは比較例のものよりElv値およびλ値が顕著に向上しているという点である。このように、本発明は、伸びフランジ性という特定の加工性を飛躍的に改善させる方法であることが確認された。
【0047】
〔実施例2〕
表1のB鋼を用いて、3段階焼鈍後のElv値,λ値に及ぼす熱間圧延条件の影響を調査した。熱延巻取温度650℃または720℃,仕上圧延の最終パス温度800℃または880℃,仕上圧延の全圧下率90%,最終パスの圧下率10%または20%の条件で板厚2.3mmの熱延鋼帯とした後、酸洗して、3段階焼鈍に供し、実施例1と同様の手法によりElv値およびλ値を求めた。表4に、これらの熱延条件,焼鈍条件,Elv値およびλ値を示す。
【0048】
【表4】
Figure 0003909939
【0049】
焼鈍条件が本発明規定範囲を外れる場合は、熱延条件を望ましい範囲としてもElv値・λ値は向上せず、むしろ表3の例では低下している(No.17とNo.17-1の比較、およびNo.18とNo.18-1の比較)。しかしながら、焼鈍条件を本発明規定範囲とした場合には、熱延条件を前記の好ましい範囲とすることによって、Elv値およびλ値はより一層向上することがわかる(No.4とNo.4-1の比較、およびNo.8とNo.8-1の比較)。
【0050】
〔実施例3〕
次に、3段階焼鈍に供する鋼板中のベイナイト存在率と、3段階焼鈍後のElv値・λ値の関係を調べた一例を示す。供試材として表1のC鋼を用い、熱延条件(主として巻取温度)を変化させてベイナイト量を調整し、表2におけるNo.5と同一条件で3段階焼鈍を施した後、実施例1と同様の手法によりElv値およびλ値を求めた。ベイナイト存在率は鋼板断面の金属組織を走査電子顕微鏡観察して求めた。その結果は次のとおりであった。
・(試料a)熱延巻取温度:650℃,ベイナイト存在率:0体積%,Elv値:43%,λ値:57%。
・(試料b)熱延巻取温度:550℃,ベイナイト存在率:13体積%,Elv値:40%,λ値:54%。
・(試料c)熱延巻取温度:450℃,ベイナイト存在率:24体積%,Elv値:37%,λ値:49%。
このうち試料cは2段目の加熱後における未溶解炭化物の数が著しく少なくなったため、再生パーライトが生成したものである。以上の結果は、3段階焼鈍に供する鋼板中のベイナイト存在率は低く抑えることが重要であり、その値は20体積%以下に抑えることが望ましいことを示している。
【0051】
〔実施例4〕
次に、3段階焼鈍後の金属組織(炭化物球状化率,平均炭化物間距離)の及ぼすElv値・λ値への影響を調べた一例を示す。サンプルとして、表2のNo.1,No.8,No.23を用い、3段階焼鈍後の鋼板断面の金属組織の走査電子顕微鏡観察し、先に述べた手法で炭化物球状化率および平均炭化物間距離を求めた。その結果は次のとおりであった。
・(No.1)炭化物球状化率:97%,平均炭化物間距離1.39μm,Elv値:47%,λ値:63%。
・(No.8)炭化物球状化率:93%,平均炭化物間距離0.91μm,Elv値:43%,λ値:59%。
・(No.23)炭化物球状化率:86%,平均炭化物間距離0.67μm,Elv値:28%,λ値:38%。
以上の結果は、炭化物球状化率が高く、かつ平均炭化物間距離が長いほど、伸びフランジ性の向上効果が大きいことを示している。
【0052】
〔実施例5〕
次に、3段階焼鈍後の鋼板における高周波焼入性を調査した一例を示す。サンプルとして、表2のNo.4,No.12を用い、3段階焼鈍後の鋼板を高周波加熱により900℃で5秒間保持したのち水焼入れし、焼入後の硬さを測定した。この焼入れ硬さによって部品加工後の焼入性を評価できると考えてよい。併せて、鋼板断面の金属組織の走査電子顕微鏡観察し、先に述べた手法で平均炭化物粒径を求めた。その結果は次のとおりであった。
・(No.4)平均炭化物粒径:0.66μm,高周波焼入後の硬さ:Hv609。
・(No.12)平均炭化物粒径:0.54μm,高周波焼入後の硬さ:Hv611。
以上の結果は、本発明方法によって高周波焼入性にも優れるものが得られることを示している。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、中・高炭素鋼板の焼鈍に際しA1変態点を挟んだ特定条件の3段階焼鈍を採用することによって、伸びフランジ性を安定的に改善することを可能にした。さらに、その3段階焼鈍に供する鋼板として、ベイナイトの存在率を低く抑えたものを用い、また、特定条件範囲での熱間圧延を経て製造されたものを用いることによって、より一層伸びフランジ性が向上できることを明らかにした。しかも、本発明方法は一般的な中・高炭素鋼の鋼種に広く適用でき、いずれの鋼種においても伸びフランジ性の改善効果が得られる。加えて、本発明方法によって伸びフランジ性を改善した鋼板は、従来技術ではある程度犠牲にせざるを得なかった高周波焼入等の短時間処理による焼入性をも十分兼ね備えている。このように本発明は、中・高炭素鋼板の伸びフランジ性・高周波焼入性を同時に改善して、その用途拡大に貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】表1のB鋼におけるT.El値とElv値・λ値の関係を表すグラフである。

Claims (5)

  1. 質量%において、C:0.1〜0.8%,Si:0.15〜0.40%,Mn:0.3〜1.0%,Cr 1.2%以下,Mo:0〜0.3%(無添加を含む),Cu:0〜0.3%(無添加を含む),Ni:0〜2.0%(無添加を含む)を含有し、Pを0.03%以下,Sを0.01%以下,T.Alを0.1%以下の含有量に制限し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼の熱延鋼板に対して、 c 1 50 ℃〜A c 1 未満の温度範囲で 0.5 時間以上保持する1段目の加熱を行った後、A c 1 〜A c 1 100 ℃の温度範囲で 0.5 20 時間保持する2段目の加熱およびA r 1 80 ℃〜A r 1 の温度範囲で 2 60 時間保持する3段目の加熱を連続して行い、かつ、2段目の保持温度から3段目の保持温度への冷却速度を 5 30 ℃/hとする3段階焼鈍を施す伸びフランジ性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法。
  2. 3段階焼鈍に供する熱延鋼板はベイナイト相の存在率が20体積%以下(0%を含む)のものである、請求項1に記載の伸びフランジ性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法。
  3. 3段階焼鈍に供する熱延鋼板は巻取温度を550〜700℃とした熱間圧延を経て得られた鋼帯である、請求項1または2に記載の伸びフランジ性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法。
  4. 3段階焼鈍に供する熱延鋼板は仕上圧延の最終パス温度を750〜850℃とした熱間圧延を経て得られた鋼帯である、請求項1〜3のいずれかに記載の伸びフランジ性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法。
  5. 3段階焼鈍に供する熱延鋼板は、仕上圧延の全圧下率を85%以上、仕上圧延の最終パスの圧下率を15%以上とした熱間圧延を経て得られた鋼帯である、請求項1〜4のいずれかに記載の伸びフランジ性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法。
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