JP2001192258A - セラミックス焼結体とその製造方法、及びそれを用いた摺動部材、ベアリングボール、ベアリング - Google Patents
セラミックス焼結体とその製造方法、及びそれを用いた摺動部材、ベアリングボール、ベアリングInfo
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Abstract
ス焼結体の提供。 【解決手段】 破壊靭性値M1 を有する外層部と、破壊
靭性値M2 を有する内層部とを具備し、前記外層部の破
壊靭性値M1 が6MPa・m0.5 以上であり、かつ前記
内層部の破壊靭性値M2 が前記外層部の破壊靭性値M1
より5%以上小さく、かつ表面部における任意の100
μm×100μmの部分に存在する偏析及び気孔の数が
5個以下であるセラミックス焼結体。
Description
に係り、特に耐衝撃性、摺動特性に優れるセラミックス
焼結体とその製造方法、及びそれを用いた摺動部材、ベ
アリングボール、ベアリングに関するものである。
性、耐食性に優れているため様々な場所に応用されてい
る。このなかでも窒化ケイ素をはじめとするセラミック
スよりなるものは、特に高温強度、耐摩耗性に優れてい
る。そのため、このようなセラミックス焼結体はベアリ
ング等の強度及び耐摩耗性が要求される部品に用いられ
ている。
が小さく、高速回転する機器に用いるのに適しており、
例えばハードディスクドライブの回転体を支持する軸受
のベアリングボールのようなものに用いられるようにな
っている。
のようにして作製される。
めのイットリア、アルミナ等の焼結助剤を添加して調合
し、造粒粉を作製する。次に、この造粒粉をプレス加工
等により所定の形状の成形体に加工し、脱脂を施した
後、さらに焼成を施しセラミックス焼結体を作製する。
性を向上させるために、焼結助剤の種類や量を変えて用
いたり、プレス加工の方法を変えて成形を行ったり、さ
らに焼結後、再度HIP処理等を行うことも行われてい
る。
ングボールのようなものに用いる場合には、より一層の
靭性、強度等が求められている。また、ハードディスク
ドライブ等には高精度の回転が求められるが、携帯型の
コンピュータに用いられるハードディスクドライブに
は、衝撃がかかることが多く、高精度の回転を維持する
ことが難しく、このようなものに用いられるベアリング
ボールには、耐衝撃性等も要求される。
り、プレス加工の方法を変えて成形を行ったり、さらに
焼結後、再度HIP処理等を行ったりしているが、必要
十分な特性は得られていない。また、諸特性を向上させ
るために、特別な装置や方法を用いることは、工程の複
雑化につながり、生産性の向上があまり期待できず、比
較的簡単な方法で特性の向上が可能な方法が求められて
いる。
めになされたものであり、耐衝撃性、靭性に優れたセラ
ミックス焼結体の提供を目的としている。また、本発明
は前記したような特性に優れたセラミックス焼結体を製
造するための方法を提供することを目的としている。
結体は、破壊靭性値M1 を有する外層部と、前記外層部
の破壊靭性値M1 より低い破壊靭性値M2 を有する内層
部とを具備することを特徴とするものである。前記外層
部の破壊靭性値M1 は6MPa・m0.5 以上であり、か
つ前記内層部の破壊靭性値M2 が前記外層部の破壊靭性
値M1 よりも5%以上小さいことが好ましい。なお、本
願発明で用いる破壊靭性値はK1Cで表される新原法(N
IIHARA’S method)ですべて測定された
ものである。具体的には、K1C=623.8a0.8/c
1.5、a=mean half diagonal value(m)、c=mean half
tip-to-tip crack length (μm)で表す。
おける任意の100μm×100μmの部分に存在する
偏析及び気孔の数は5個以下であることが好ましく、主
として窒化ケイ素からなるものであるとより好ましい。
動部材やベアリングボールとして用いることができる。
ベアリングボールとして用いる場合は、外層部を前記ベ
アリングボールの表面から半径の2/3以上の領域まで
とすることが望ましい。また、本発明のベアリングボー
ルは、例えば電子機器に用いることができる。
は、セラミックス粉末を予備成形する工程と、前記予備
成形体に、静水圧加圧を少なくとも2回以上行い成形体
を作製する工程と、前記成形体を焼成する工程とを具備
することを特徴とするものである。
水圧加圧は、1回目の静水圧加圧と同じ圧力或いはそれ
以上の圧力で行うことが好ましい。また、前記静水圧加
圧は、少なくとも80MPaの圧力で行うことが好まし
い。
0以上のゴム型を用い、乾式静水圧成形により行うこと
が好ましい。より好ましくは、ゴム硬度(Hs)が40
以上のゴム型を用いることである。
を常圧焼結した後に、HIP処理を行うことが好まし
い。
ス粉末は、主として窒化ケイ素からなるものであること
が好ましい。
破壊靭性値M1 を、内層部の破壊靭性値M2 より高くし
たものであり、耐衝撃性等に優れるものである。
の破壊靭性値M1 を6MPa・m0. 5 以上とし、かつ前
記セラミックス焼結体の内層部の破壊靭性値M2 を外層
部の破壊靭性値M1 よりも5%以上小さくすることによ
って、より耐衝撃性等を向上させることができる。
100μmの部分に存在する偏析及び気孔の数を5個以
下とすることによって、摺動特性、耐摩耗性等を向上さ
せることができる。
化ケイ素を用いることによって、破壊靭性等に優れるセ
ラミックス焼結体とすることができる。
動部材として用いることで、耐衝撃性に優れる摺動部品
を作製することができる。
えばベアリングボールとして用いることで、耐衝撃性、
耐摩耗性等に優れ、損傷しにくいベアリングボールを作
製することができる。
ングボールを用いたものであり、耐衝撃性、耐摩耗性に
優れるとともに、高精度な回転を行うことができる。
面から半径の2/3以上の範囲までとすることによっ
て、ベアリングボールの耐衝撃性と衝撃吸収性を両立さ
せることができる。
ばハードディスクドライブのベアリング部分に用いるこ
とによって、ベアリング部分の耐衝撃性を高めるととも
に、回転部分の高速化及び安定化を向上させることがで
きる。
方法は、予備成形した後、さらに静水圧加圧を少なくと
も2回以上施すことによって、セラミックス焼結体の表
面部に偏析及び気孔が発生することを抑制し、かつ外層
部の破壊靭性値を内層部の破壊靭性値よりも高くするこ
とができる。このような方法により、摺動特性、耐摩耗
性及び耐衝撃性に優れたセラミックス焼結体を作製する
ことができる。
回目の静水圧加圧と同じ圧力或いはそれ以上の圧力で行
うことによって、より一層表面部における偏析及び気孔
の発生を抑制し、かつ外層部の破壊靭性値を内層部の破
壊靭性値よりも十分に高くすることができ、衝撃吸収能
力を向上させることができる。
することによって、セラミックス焼結体を十分に緻密化
させることができる。
が30以上のゴム型を用い、乾式静水圧成形を行うこと
で、表面部の偏析及び気孔の発生をより一層抑制すると
ともに、外層部の破壊靭性値を内層部の破壊靭性値より
も十分に高くすることができ、衝撃吸収能力を向上させ
ることができる。このとき、ゴム型内におけるセラミッ
クス原料粉の体積占有率(%)を50%以上、さらには
60〜90%になるようにすることが好ましい。通常
は、体積占有率を100%にして成形するが、体積占有
率が100%であると2度以上の静水圧成形を行った際
に外層内層の靭性値に差がつきにくくなる。一方、体積
占有率が50%未満であると成形圧力が伝わりにくくな
るので好ましくない。
を常圧焼結した後に、さらにHIP処理を行うことによ
って、緻密化を促進させ、破壊靭性値等を向上させるこ
とができる。
して窒化ケイ素からなるものを用いることで、強度、耐
摩耗性等に優れたセラミックス焼結体を作製することが
できる。
て説明する。
例であるベアリングボール1を示したものである。
されるように、外層部2と内層部3とからなる2重構造
となっている。ここで、本発明のベアリングボール1
は、外層部2の破壊靭性値M1 を内層部3の破壊靭性値
M2 よりも高くしたものである。
で、破壊靭性値の低い部分で衝撃を吸収するとともに、
破壊靭性値の高い部分で衝撃による破壊を抑制すること
ができる。また、外層部2の破壊靭性値1 を内層部3の
破壊靭性値M2 よりも高くすることで、外部から加えら
れた衝撃により全体が破壊するのを抑制し、かつ効率的
に衝撃を内層部3に吸収させることができる。
は、外層部2の破壊靭性値M1 を6MPa・m0.5 以上
とすることが好ましい。また、内層部3の破壊靭性値M
2 を外層部2の破壊靭性値M1 よりも5%以上小さくす
ることが好ましい。これらによって、通常加えられる衝
撃に十分に耐えられるものとすることができる。外層部
2の破壊靭性値M1 を6MPa・m0.5 以上としたの
は、外層部2の破壊靭性値M1 が6MPa・m0.5 未満
であると、外部からの衝撃により破壊又は損傷する恐れ
があるからである。また、内層部3の破壊靭性値M2 を
外層部2の破壊靭性値M1 よりも5%以上小さくするこ
ととしたのは、外層部2の破壊靭性値M1 と内層部3の
破壊靭性値M2 とがほとんど違わない場合、外部から加
えられた衝撃が効率的に吸収されないため、セラミック
ス焼結体自身が破壊され易くなるとともに、相手部材に
も損傷を与える場合があるからである。
好ましくは外層部2の破壊靭性値M 1 よりも5〜20%
小さくすることがより好ましい。内層部3の破壊靭性値
M2を前記範囲内にすることによって、衝撃吸収能力を
向上させることができる。ここで、20%以内と規定し
たのは、これ以上内層部3の破壊靭性値M2 を低くする
と、衝撃により破壊しやすくなるなるからである。
ば図1に示すベアリングボールを例にとって説明する
と、外層部2の形成範囲は、表面から半径の1/3以
上、好ましくは2/3以上の範囲にまで、設けることが
好ましい。つまり、外層部2の半径をRとし、外層部2
の厚さをTとした場合、外層部2の厚さTは T≧(1/3)・R 好ましくは T≧(2/3)・R とすることがよい。また、内層部3は、上記外層部2の
内側全体に設けられることが好ましい。従って、上記外
層部の形成範囲との関係より、内層部の形成範囲は、内
層部の半径をrとすると、 r ≦ (2/3)・R 好ましくは r ≦ (1/3)・R とすることがよい。
外部からの衝撃により外層部2が破壊されるのを抑制
し、さらに内層部3で前記衝撃を効率的に吸収すること
ができる。つまり、外層部2及び内層部3の形成範囲を
上記のような範囲とすることによって、破壊抑制効果と
衝撃吸収効果とを両立させることができる。
び内層部の最適な形成範囲について述べたが、本発明の
セラミックス焼結体は、ベアリングボール以外のセラミ
ックス焼結体にも適用することができる。他の焼結体、
例えば板状のセラミックス焼結体については、衝撃が加
えられる方向の厚さをWとし、外層部の厚さをTとする
と、以下の式で示される範囲の外層部を設けることが好
ましく、また外層部、内層部の破壊靭性値に関しては、
上記ベアリングボールの外層部及び内層部の破壊靭性値
を適用することが好ましい。
の100μm×100μmにおける偏析及び気孔の数を
5個以下とすることが好ましい。このようにすること
で、摺動特性を向上させ、かつ摩耗を抑制させることが
できる。従って、ベアリングボール等に適用した場合、
より高回転させることができ、かつ長期間使用すること
が可能となる。
イ素、サイアロン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウ
ム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等から
なるものであることが好ましい。また、本発明のセラミ
ックス焼結体を摺動部材として用いる場合には、窒化ケ
イ素、サイアロン、酸化ジルコニウム等からなるもので
あることが好ましい。
ているため本発明のセラミックス焼結体を構成するもの
として適している。窒化ケイ素を用いる場合には、焼結
助剤を20重量%以下含むものであることが好ましく、
より好ましくは希土類化合物10重量%以下、酸化アル
ミニウム6重量%以下、窒化アルミニウム5重量%以下
であるものがよい。
リングボールとして用いると、その効果が発揮されるも
のである。次に、本発明のベアリングボールを使用した
ベアリングについて、一例を挙げて説明する。
受に使用した一例を示したものである。本発明のベアリ
ングは、軸受ケース5の両側面6、7でベアリング1を
案内する。軸受ケース5の両側面6、7は、例えば圧縮
変形する等して内周に凸部を設けて、ベアリング1が脱
離しないようにしてもよい。また、ベアリング1は、軸
8の円周部と接触している。このようなベアリングに、
本発明のベアリングボール1を用いることによって、軸
8からの衝撃をベアリングボール1が吸収するため、軸
8を安定して回転させることができる。また、ベアリン
グボール1自身が衝撃を吸収し、かつ摺動性に優れてい
るため、軸8を傷をつけたり、摩耗させることが少なく
なり、長期間安定して使用することができる。以上、ベ
アリングとして、玉軸受について説明したが、本発明の
ベアリングは玉軸受に限定されることはなく、他の軸受
でも効果を有するものである。
ードディスクドライブ等の高速回転する機構を有する電
子機器に用いた場合について、一例を挙げて説明する。
なるベアリングボールをハードディスクドライブのベア
リング部分に用いた場合を示したものである。ハードデ
ィスクドライブの台9の中央部には軸10が固定されて
おり、さらに軸10から一定の距離をおいてステータ1
1が複数固定されている。また、回転体12は外筒部及
び内筒部を有しており、外筒部内側にはマグネット13
が配置され、内筒部には、ベアリングボール1を介して
軸10が嵌め込まれている。回転体12はマグネット1
3とステータ11との磁気的作用により、軸10を中心
として自由に回転することができる。
リングボールに本発明のセラミックス焼結体を用いるこ
とによって、ハードディスクドライブに衝撃が加えられ
ても、ベアリングボールが衝撃を吸収するため、精度の
高い回転を維持することができる。また、ベアリングボ
ールが衝撃を吸収するため、ベアリングボール自身の破
損を抑制するとともに、相手部材である軸等を損傷する
ことも抑制することができ、信頼性を向上させることが
できる。さらに、本発明のセラミックス焼結体は、摺動
特性及び耐摩耗性に優れているため、ハードディスク等
の高速化に寄与することができる。
アリングボールに限られるものではなく、他の摺動部材
等に対しても適用可能なものである。また、本発明のベ
アリングボール、ベアリングは、ハードディスクドライ
ブに限定されるものではなく、他の機器においても使用
が可能である。
法について説明する。
ては、例えば窒化ケイ素、サイアロン、酸化ジルコニウ
ム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム
等のセラミックス粉末を用いることができる。例えば、
摺動部材を作製する場合には、前記したもののうち、窒
化ケイ素、サイアロン、酸化ジルコニウムを用いること
が好ましい。また、窒化ケイ素を用いる際には、焼結助
剤を20重量%以下の範囲で加えることが好ましく、こ
のようなものとしては、例えば希土類化合物10重量%
以下、酸化アルミニウム6重量%以下、窒化アルミニウ
ム5重量%以下加えるものであることが好ましい。
μm以下の造粒粉とすることが好ましい。このようにす
ることによって焼成した後のセラミックス焼結体におけ
る偏析や気孔の発生を抑制することができる。より好ま
しくは平均粒径が60μm以下の造粒粉を用いることが
よい。なお、造粒紛の平均粒径の最小値は特に限定され
るものではないが、好ましくは10μm以上、さらに好
ましくは20μm以上である。造粒紛の平均粒径が10
μm未満であると、パッキング性が悪くなり、焼結体の
気孔の数が増える等の弊害がある。
力を加え予備成形体とする。さらに、この予備成形体に
静水圧成形を行い成形体を作製する。
場合について図4を参照して説明する。静水圧成形は、
例えば、ベアリングボール形状の予備成形体14を静水
圧成形用のゴム型15、16に挿入して、乾式静水圧成
形等により断続的に2回以上加圧することにより行われ
る。静水圧成形を断続的に2回以上行うことによって、
外層部と内層部とを有し、外層部の破壊靭性値と内層部
の破壊靭性値が異なるセラミックス焼結体を作製するこ
とが可能となる。また、表面部の偏析や気孔の発生も抑
制することが可能となる。
以上であることが好ましく、また後に行う静水圧成形の
圧力を先に行った静水圧成形の圧力と同等或いはそれ以
上で行うことが好ましい。また、静水圧成形に用いられ
るゴム型は、ゴム硬度(Hs)が30以上のゴム型を用
い、乾式静水圧成形により行われることが好ましい。よ
り好ましくはゴム硬度(Hs)が40以上のゴム型を用
いることがよい。このようなゴム型を用いることによっ
て、より一層外層部の破壊靭性値と内層部の破壊靭性値
が異なるセラミックス焼結体を作製することが可能とな
る。なお、ここでいうゴム硬度は、JIS K6253
に基づくものである。このとき、ゴム型内におけるセラ
ミックス原料紛の体積占有率を50%以上、好ましくは
50〜90%にすることにより、外層と内層の破壊靭性
値が異なるセラミックス焼結体を得やすくなる。
焼成することによって、本発明のセラミックス焼結体を
得ることができる。焼成は好ましくは、常圧焼結を行っ
た後、HIP処理することがよい。このようにすること
で、セラミックス焼結体の破壊靭性値を向上させ、表面
部の偏析及び気孔の発生を抑制することができる。
実施例を参照して説明する。
化アルミニウム3重量%、及び窒化アルミニウム2重量
%からなる粉末を混合し、平均粒径60μmに造粒した
後、金型を用いて予備成形を行った。さらに、この予備
成形体に静水圧成形を行った。静水圧成形は合計2回行
い、各回の静水圧成形における圧力は表1に示すように
して行った(実施例1〜7)。この際、ゴム型中に原料
が占める占有率は表1に示すとおりである。
造粒を施した後、金型を用いて予備成形を行った。さら
に、この予備成形体に表1に示す圧力で静水圧成形を1
回のみ行った(比較例1、2)。この際、ゴム型中に原
料が占める占有率は表1に示すとおりである。
水圧成形が施された成形体を1700℃、4時間で常圧
焼結を行い、続けて1700℃、1時間のHIP処理を
行いベアリングボール(直径2mm、表面粗さグレード
3)を作製した。さらに、これらのベアリングボールの
外層部及び内層部の破壊靭性値の測定を行った、その結
果を表1に示す。なお、破壊靭性値の測定は、図5
(a)に示すように、作製したベアリングボール1の周
囲を、フェノール樹脂17で固めた後、図5(b)に示
すように、ベアリングボール1の半径の2/3の部分ま
で研磨して破壊靭性値を測定し、これを外層部の破壊靭
性値とした。さらに、図5(c)に示すように、ベアリ
ングボール1の中心部まで研磨を行い破壊靭性値を測定
し、これを内層部の破壊靭性値とした。
は、いずれも内層部より外層部の破壊靭性値が大きくな
り、その差も比較例に比べて大きくなることがわかっ
た。また、2回目の静水圧成形の圧力を、1回目の静水
圧成形の圧力よりも高くしたものは、外層部及び内層部
の破壊靭性値を大きく向上させることができることがわ
かった。さらに、ゴム型に占める粉末の割合を高くする
ことによって、外層部及び内層部の破壊靭性値を向上さ
せられることがわかった。
果より、予備成形体の作製後に静水圧成形を複数回行う
ことによって、破壊靭性値を向上させるとともに、外層
部と内層部の破壊靭性値に差を設けることができること
が確認された。
化アルミニウム3重量%、及び窒化アルミニウム2重量
%からなる粉末を混合し、造粒を施した後、金型を用い
て予備成形を行った。さらに、この予備成形体に、ゴム
型を用いて静水圧成形を2回行った。この静水圧成形が
施された成形体を1700℃、4時間で常圧焼結を行
い、続けて1700℃、1時間のHIP処理を行い、外
層部の破壊靭性値が異なる直径2mmのベアリングボー
ル(表面粗さグレード3)を作製した(実施例7〜1
0)。実施例7〜10の外層部の破壊靭性値の調整は、
ゴム型における粉末の占有比率60〜90%を変化させ
て行った。
み行ったもの(比較例3)、及び常圧焼結のみでHIP
処理を行わなかったもの(比較例4)を作製した。な
お、比較例3及び4において、他の工程は実施例7〜1
0と同じとした。
各ベアリングボールについて、図5(a)に示すように
フェノール樹脂で外周を覆い、図5(b)に示されるよ
うに半径の2/3の部分まで研磨或いは切断し、その研
磨面を金属顕微鏡により200倍に拡大し、偏析及び気
孔の数を測定した。なお、偏析及び気孔の数は、実質的
な面積が100μm×100μmである任意の3個所を
測定し、それらを平均することによって得た。
水圧成形を2回行ったものは、偏析及び気孔の総数が1
00μm×100μmの面積中に5個以下となってお
り、特に破壊靭性値が6.5MPa・m0.5 以上のもの
では、偏析及び気孔はほぼなくなることがわかる。
(比較例4)は、破壊靭性が低く、偏析及び気孔の数も
多くなることがわかった。これは成形及び常圧焼結だけ
では、図6に示されるような造粒粉の粒界中に存在する
偏析及び気孔が除去されないためであると推測される。
従って、本実施例のように少なくとも2回の静水圧成形
を行うことによって造粒粉の粒界中に存在する偏析及び
気孔を除去し、さらにHIP処理を行うことによって、
偏析及び気孔部に液層を適切に充填し、それにより実質
的に焼結体中の偏析及び気孔をなくすことが可能となる
と考えられる。
ボールは摺動特性に優れており、かつ各ベアリングボー
ルにおける耐摩耗性、寿命等のばらつきも少なくするこ
とができる。
体について、衝撃吸収能力等の比較を行った。
して行った。窒化ケイ素90重量%、酸化イットリウム
5重量%、酸化アルミニウム3重量%、及び窒化アルミ
ニウム2重量%からなる粉末を混合し、造粒を施した
後、金型を用いて予備成形を行った。さらに、この予備
成形体に、ゴム型を用いて静水圧成形を複数回行った。
この静水圧成形が施された成形体を1700℃、4時間
で常圧焼結を行い、続けて1700℃、1時間のHIP
処理を行い、外層部と内層部の破壊靭性値が異なる直径
2mmのベアリングボール(表面粗さグレード3)を作
製した(実施例11〜15)。各実施例の詳細な条件に
ついては、表3に示す。なお、造粒紛の平均粒径は実施
例11が10μm、実施例12が20μm、実施例13
と14が60μm、実施例15が100μmとした。
て、静水圧成形を1回のみ行ったもの(比較例5)、静
水圧成形を1回のみ行い、その後HIP処理をしたもの
(比較例6、7)を作製した。なお、焼結条件、HIP
処理の条件は上記実施例と同じとした。これら実施例及
び比較例の、外層部及び内層部の破壊靭性値を合わせて
表3に示す。なお、比較例5乃至7の造粒紛の平均粒径
はいずれも60μmとした。
能力及び耐破壊性を測定した。その結果を表4に示す。
なお、衝撃吸収能力及び耐破壊性の測定は、図7に示さ
れるような装置を用いて行った。
ボールを台座上に1個載置し、圧力荷重部を圧砕値比荷
重1300N/mm2 、クロスヘッドスピード5mm/
minで圧砕した場合の各ベアリングボールの破壊の有
無を測定することにより行った。
につきそれぞれ100個行った。このとき1個でも破壊
が認められた場合は破壊「有」と表記した。
は、相違点の無い比較例7と実施例14のベアリングボ
ールを用い耐磨耗試験として電子機器であるハードディ
スク用軸受に適用し、連続200時間稼動させたところ
比較例7の方がベアリングボールの表面の磨耗が激しい
ことが分かった。これは表面の偏析及び気孔量の差、並
びに靭性値の差であると思われる。
2層構造とすることで極めて衝撃吸収能力を高くできる
ことがわかった。また、本発明の実施例では、表面部の
任意の100×100μmにおける偏析及び気孔を5個
以下とすることで、耐磨耗性も向上させられることがわ
かった。また、衝撃吸収能力が高いため破壊に対する抵
抗力も高いことがわかった。特に、1回目の静水圧成形
の圧力よりも、2回目の静水圧成形の圧力を高くするこ
とによって、衝撃吸収能力及び耐破壊性を向上させられ
ることがわかった。
をもつ2重構造とし、かつ外層部の破壊靭性値を内層部
の破壊靭性値よりも高くすることによって、外部から加
えられた衝撃を効率的に吸収し、かつ衝撃による破壊を
抑制することが可能となる。
及び気孔を少なくすることによって摺動特性、耐摩耗
性、寿命等を向上させることができる。
例えばベアリングボールとして用いた場合には、外部か
らの衝撃による回転の精度悪化及び破壊を抑制するとと
もに、優れた摺動特性、耐摩耗性等により高回転化、長
寿命化が可能となる。
方法を用いることによって、上記したような優れた特性
を持つセラミックス焼結体を製造することが可能とな
る。
面図。
いた一例を示した断面図。
例を示した断面図。
図。
Claims (15)
- 【請求項1】 破壊靭性値M1 を有する外層部と、前記
外層部の破壊靭性値M1 より低い破壊靭性値M2 を有す
る内層部とを具備することを特徴とするセラミックス焼
結体。 - 【請求項2】 前記外層部の破壊靭性値M1 が6MPa
・m0.5 以上であり、かつ前記内層部の破壊靭性値M2
が前記外層部の破壊靭性値M1 より5%以上小さいこと
を特徴とする請求項1記載のセラミックス焼結体。 - 【請求項3】 前記セラミックス焼結体の表面部におけ
る任意の100μm×100μmの部分に存在する偏析
及び気孔の数が5個以下であることを特徴とする請求項
1又は2記載のセラミックス焼結体。 - 【請求項4】 前記セラミックス焼結体は、主として窒
化ケイ素からなることを特徴とする請求項1乃至3のい
ずれか1項記載のセラミックス焼結体。 - 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項記載のセ
ラミックス焼結体を用いたことを特徴とする摺動部材。 - 【請求項6】 請求項1乃至4のいずれか1項記載のセ
ラミックス焼結体を用いたことを特徴とするベアリング
ボール。 - 【請求項7】 前記ベアリングボールを構成するセラミ
ックス焼結体の前記外層部は、前記ベアリングボールの
表面から半径の2/3以上の領域にまで設けたことを特
徴とする請求項6記載のベアリングボール。 - 【請求項8】 請求項6又は7記載のベアリングボール
を具備することを特徴とするベアリング。 - 【請求項9】 電子機器用であることを特徴とする請求
項8記載のベアリング。 - 【請求項10】 セラミックス粉末を予備成形する工程
と、 前記セラミックス粉末の予備成形体に、静水圧加圧を少
なくとも2回以上施して、成形体を作製する工程と、 前記成形体を焼成する工程とを具備することを特徴とす
るセラミックス焼結体の製造方法。 - 【請求項11】 前記静水圧加圧工程において、2回目
以降の静水圧加圧は、1回目の静水圧加圧と同じ圧力或
いはそれ以上の圧力で行うことを特徴とする請求項10
記載のセラミックス焼結体の製造方法。 - 【請求項12】 前記静水圧加圧は、80MPa以上の
圧力で行うことを特徴とする請求項10又は11記載の
セラミックス焼結体の製造方法。 - 【請求項13】 前記静水圧成形は、ゴム硬度(Hs)
が30以上のゴム型を用い、乾式静水圧成形により行っ
たことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項
記載のセラミックス焼結体の製造方法。 - 【請求項14】 前記成形体の焼成工程で、前記成形体
を常圧焼結した後に、HIP処理を行うことを特徴とす
る請求項10乃至13のいずれか1項記載のセラミック
ス焼結体の製造方法。 - 【請求項15】 前記セラミックス粉末は、主として窒
化ケイ素からなることを特徴とする請求項10乃至14
のいずれか1項記載のセラミックス焼結体の製造方法。
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