JP2001082480A - 歯車装置 - Google Patents

歯車装置

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JP2001082480A
JP2001082480A JP26299099A JP26299099A JP2001082480A JP 2001082480 A JP2001082480 A JP 2001082480A JP 26299099 A JP26299099 A JP 26299099A JP 26299099 A JP26299099 A JP 26299099A JP 2001082480 A JP2001082480 A JP 2001082480A
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学 甲斐
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H57/00General details of gearing
    • F16H57/08General details of gearing of gearings with members having orbital motion
    • F16H2057/085Bearings for orbital gears

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  • General Details Of Gearings (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 たとえば遊星歯車式自動変速機においては、
複数の遊星歯車が遊星枠に固定された軸部に転がり軸受
を介して回転支持されており、通常、動作時に回転部分
に潤滑油が供給されている。ところが、一連の動作時に
おいて、潤滑油切れが発生し、とくに遊星歯車を回転支
持する軸部が摩耗するという問題がある。 【解決手段】 軸部により回転支持された歯車を有する
歯車装置において、軸部の表面に耐摩耗膜が形成されて
いることを特徴とする。好ましくは、耐摩耗膜は、たと
えば、TiN、TiCその他の広義のセラミックス材の
膜、硬質カーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン
膜などからなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、たとえば自動変
速機に使用される遊星歯車装置などのように、軸部によ
り回転支持された歯車を有する歯車装置に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば遊星歯車式自動変速機において
は、複数の遊星歯車が遊星枠に固定された軸部に転がり
軸受を介して回転支持されており、通常、動作時に回転
部分に潤滑油が供給されている。ところが、一連の動作
時において、潤滑油切れが発生し、とくに遊星歯車を回
転支持する軸部が摩耗するという問題がある。
【0003】上記のような遊星歯車装置以外でも、歯車
が軸部により回転支持されている歯車装置には、同様の
問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、上
記の問題を解決し、歯車を回転支持する軸部の摩耗を防
止して、耐久性を向上させることができる歯車装置を提
供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段および発明の効果】この発
明による歯車装置は、軸部により回転支持された歯車を
有する歯車装置において、上記軸部の表面に耐摩耗膜が
形成されていることを特徴とするものである。
【0006】好ましくは、耐摩耗膜は、たとえば、Ti
N、TiCその他の広義のセラミックス材の膜、硬質カ
ーボン膜またはダイヤモンドライクカーボン膜などから
なる。
【0007】潤滑油切れが発生しても、耐摩耗膜によ
り、歯車を回転支持する軸受などと軸部の母材同志の直
接接触が防止されるため、軸部の摩耗が防止されて、歯
車装置の耐久性が向上する。
【0008】すなわち、この発明の歯車装置によれば、
上記のように、歯車を回転支持する軸部の摩耗を防止し
て、歯車装置の耐久性を向上させることができる。
【0009】たとえば、上記耐摩耗膜の表面に、フッ素
系潤滑剤からなる潤滑薄膜が形成されている。
【0010】このようにすれば、潤滑油切れが発生して
も、潤滑薄膜により、潤滑が補助され、また、耐摩耗膜
により、軸受などと軸部の母材同志の直接接触が防止さ
れるため、軸部の摩耗が防止されて、歯車装置の耐久性
が向上する。
【0011】好ましくは、潤滑薄膜は、たとえば、官能
基を有する含フッ素重合体からなるゲル状の潤滑薄膜、
含フッ素ポリウレタン高分子化合物からなる固体状の潤
滑薄膜などである。
【0012】官能基を有する含フッ素重合体からなるゲ
ル状の潤滑薄膜は、流動性を有し、潤滑性が高く、従来
の固体潤滑剤のコーティング膜などとは異なり、剥離や
欠落が生じにくく、それ自体の発塵量も少ない。すなわ
ち、発塵性および潤滑性の両方について優れていて、膜
切れを起こさない。そして、潤滑油切れが発生しても、
軸受などと軸部表面の耐摩耗膜が、官能基を有する含フ
ッ素重合体からなる潤滑薄膜を介して摺接することにな
り、この潤滑薄膜は上記のように潤滑性と発塵性に優れ
ていて膜切れを起こさないものであるから、これにより
軸受などと軸部との間の潤滑が確保される。また、仮に
潤滑薄膜に部分的な膜切れが発生した場合でも、耐摩耗
膜により軸受などと軸部の母材同志の直接接触が防止さ
れるため、軸部の摩耗が防止され、耐久性が向上する。
すなわち、潤滑油切れが発生しても、軸受などと軸部と
の間の潤滑を確保して、軸部の摩耗を防止でき、耐久性
を向上することができる。
【0013】上記の官能基を有する含フッ素重合体から
なる潤滑薄膜の膜厚は、0.2μm以下でその近傍に設
定されるのが好ましい。この場合、潤滑薄膜は、パーフ
ルオロポリエーテル(PFPE)またはその誘導体との
混合物を希釈溶媒で0.25質量%にまで希釈した潤滑
油により形成することができる。
【0014】このようにすると、潤滑薄膜の発塵性と潤
滑性の両方について優れた結果が得られる。この潤滑薄
膜の膜厚については、潤滑薄膜を形成するベースとなる
潤滑油を特定すれば、容易に設定できるようになる。
【0015】潤滑薄膜が含フッ素ポリウレタン高分子化
合物からなる固体状の潤滑薄膜からなる場合、たとえ
ば、潤滑薄膜は分子間がウレタン結合した3次元の網状
組織を有している。
【0016】含フッ素ポリウレタン高分子化合物からな
る固体状の潤滑薄膜は、発塵性および潤滑性について優
れていて、膜切れを起こさない。したがって、前記の官
能基を有する含フッ素重合体からなる潤滑薄膜と同様の
作用効果が奏される。とくに、この固体状の潤滑薄膜
は、分子間が密に詰まった均質な構造であるので、潤滑
作用が長期的に継続する。
【0017】たとえば、上記固体状の潤滑薄膜は、流動
可能な含フッ素重合体が分散添加されているものであ
る。この流動可能な含フッ素重合体は、官能基を有して
いないもの、たとえば官能基なしのパーフルオロポリエ
ーテルなどの含フッ素重合体とするのが好ましい。
【0018】このようにすると、流動可能な含フッ素重
合体が潤滑薄膜の表面から滲み出て潤滑作用に寄与する
ので、潤滑性を一層向上することができる。
【0019】硬質カーボン膜またはダイヤモンドライク
カーボン膜からなる耐摩耗膜は、官能基を有する含フッ
素重合体からなるゲル状の潤滑薄膜あるいは含フッ素ポ
リウレタン高分子化合物からなる固体状の潤滑薄膜との
ぬれ性が高く、したがって、高速回転時においても、潤
滑薄膜の部分的な膜切れが発生しにくく、潤滑薄膜によ
り軸受などと軸部との間の潤滑が確保される。
【0020】
【発明の実施形態】以下、図面を参照して、この発明を
自動変速機の遊星歯車装置に適用した実施形態について
説明する。
【0021】図1および図2は第1実施形態であって、
図1は遊星歯車装置の要部を示し、図2はさらにその一
部を詳細に示している。
【0022】図1に示すように、歯車装置は、相対的に
回転しうるように同軸に配置された太陽歯車(1)、内歯
歯車(2)および遊星枠(3)ならびに遊星枠(3)に取り付け
られて両歯車(1)(2)とかみ合う複数の遊星歯車(4)を備
えている。図2に詳細に示すように、各遊星歯車(4)
は、遊星枠(3)に固定された軸部(5)に針状ころ軸受(6)
を介して回転支持されている。
【0023】図2に詳細に示すように、軸部(6)の表面
のうち、少なくとも軸受(6)のころと接触する部分に、
耐摩耗膜(7)が形成されている。
【0024】歯車装置には、動作時に、公知の適宜な手
段により、回転部分に潤滑油が供給されている。動作中
に潤滑油切れが発生しても、耐摩耗膜(7)により、軸受
(6)と軸部(5)の母材同志の直接接触が防止されるため、
軸部(6)の摩耗が防止されて、歯車装置の耐久性が向上
する。
【0025】耐摩耗膜(7)は、たとえばDLC膜(ダイ
ヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon)膜)
からなる。耐摩耗膜(7)を構成するDLC膜は、たとえ
ば化学蒸着(CVD)法、プラズマCVD法、イオンビ
ーム形成法、イオン蒸着法などにより形成することがで
きる。
【0026】CVD法でDLC膜を形成する場合は、た
とえばCH4などの炭素源またはこれに水素などを混合
した混合ガスに、必要に応じてキャリアガスとして適量
の不活性ガスを加え、これを1〜10−3Torr程度で、
200〜1100℃程度に加熱された対象部品である軸
部(5)に対して流通する。このとき、軸部(5)に適宜マス
キングを施しておく。これにより、軸部(5)の必要部位
に炭素が付着されてDLC膜が生成されることになる。
このとき、DLC膜の膜厚は、たとえば0.1〜1μm
程度に管理され、また、表面粗さは、Ra(中心線平均
粗さ)で0.01μm以下に管理される。
【0027】とくに、母材である軸部(5)を鋼材とする
場合には、母材そのものに含まれる炭素に対して上述し
たDLC膜の炭素が結合することになり、そのために、
DLC膜の母材に対する密着性がきわめて高くなる。し
かも、DLC膜を構成する炭素原子相互の結合力が強い
ので、DLC膜の摩耗や損傷が発生しにくくなる。
【0028】図3は、第2実施形態であって、軸部(5)
の表面部を示している。
【0029】第2実施形態の場合、軸部(5)の表面の少
なくとも軸受(6)のころと接触する部分に、第1実施形
態の場合と同様の耐摩耗膜(7)が形成され、さらにその
表面に、フッ素系潤滑剤からなる潤滑薄膜(8)が形成さ
れている。図3には軸部(5)の表面部だけが示されてい
るが、他は第1実施形態の場合と同様である。
【0030】歯車装置の動作中に潤滑油切れが発生して
も、潤滑薄膜(8)により、潤滑が補助され、また、耐摩
耗膜(7)により、軸受(6)と軸部(5)の母材同志の直接接
触が防止されため、軸部(5)の摩耗が防止されて、歯車
装置の耐久性が向上する。
【0031】潤滑薄膜(8)は、たとえば、官能基を有す
る含フッ素重合体からなる潤滑薄膜である。この官能基
付きの含フッ素重合体としては、フルオロポリエーテル
重合体またはポリフルオロアルキル重合体が好ましい。
フルオロポリエーテル重合体は、−CX2X−O−とい
う一般式(Xは1〜4の整数)で示される単位を主要構
造単位とし、いずれも平均分子量が1000〜5000
0の重合体とするものが挙げられる。ポリフルオロアル
キル重合体としては、次の化学式1に示すものが挙げら
れる。また、前述の官能基は、金属に対して親和性の高
いもの(たとえばエポキシ基、アミノ基、カルボキシル
基、水酸基、メルカプト基、スルフォン基またはエステ
ル基など)が好ましく、たとえば次の化学式2、3に示
すものが挙げられる。このような含フッ素重合体は、単
独で用いるか、または2種以上を併用してもよい。その
場合は、より耐摩耗性の優れた薄膜が得られるように、
組み合わされた基が互いに反応して重合体をより高分子
量化させるように配慮するのが望ましい。
【0032】
【化1】
【化2】
【化3】 前述の官能基付きの含フッ素重合体として、より詳しく
は、PFPE(パーフルオロポリエーテル)あるいはそ
の誘導体との混合物、具体的には、たとえばモンテカチ
ーニ社の商品名フォンブリン(FONBLIN)Yスタンダー
ド、フォンブリンエマルジョン(FE20、EM04など)また
はフォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DEAL、FONBLIN Z
DIAC、FONBLIN Z DISOC、FONBLIN Z DOL、FONBLIN Z DO
LTX2000、FONBLIN Z TETRAOLなど)が好適に用いられ
る。ここに例示したものは、いずれも濃度が濃く、金属
に対する親和性がきわめて悪いので、そのままでは膜状
に付着させることが困難である。そのため、潤滑薄膜
(8)は、下記のような方法で形成するのが好ましい。
【0033】次に、上記の潤滑薄膜(8)の形成方法の1
例を説明する。
【0034】(a1) 前述のように耐摩耗膜(7)を形成した
軸部(5)に適宜マスキングを施し、用意した溶液中に軸
部(5)を浸漬して、軸部(5)の耐摩耗膜(7)の表面に液状
膜を付着させる(付着処理)。この溶液の付着は、スプ
レーを用いて行うこともできる。ここで用意する溶液
は、たとえばフォンブリンエマルジョンFE20(フォンブ
リン濃度20質量%)を適当な希釈溶媒でフォンブリン
濃度を0.25質量%にまで希釈したものである。な
お、上記の希釈溶媒は、メタノール溶液、アルコール溶
液や水などの揮発性のものとすることができる。
【0035】(a2) 液状膜を付着した軸部(5)全体を40
〜50℃で約3分間加熱し、液状膜に含まれる溶媒を除
去する(乾燥処理)。
【0036】(a3) この後、歯車装置の使用環境での雰
囲気温度を考慮して、たとえば80〜300℃で1〜2
0時間加熱する(仕上げ乾燥処理)。これにより、歯車
装置の動作時に溶媒や油成分などの不要な発塵がない流
動性を有する潤滑薄膜(8)が得られる。
【0037】上記の方法によれば、軸部(5)の耐摩耗膜
(7)の表面に潤滑薄膜(8)を好適な膜厚で形成することが
できる。なお、(a1)および(a2)の処理は、必要に応じて
数回繰り返すようにしてもよく、最終的には潤滑薄膜
(8)の膜厚を0.2μm以下に設定する。ただし、使用
潤滑油の性状、薄膜の形成方法や生成後の膜厚などは、
適宜に設定すればよい。
【0038】官能基を有する含フッ素重合体からなるゲ
ル状の潤滑薄膜(8)は、前述のように、流動性を有し、
発塵性および潤滑性の両方について優れていて、膜切れ
を起こさない。
【0039】歯車装置の動作中に潤滑油切れが発生して
も、軸受(6)と軸部(5)が、官能基を有する含フッ素重合
体からなる潤滑薄膜(8)を介して摺接することになり、
この潤滑薄膜(8)は上記のように潤滑性と発塵性に優れ
ていて膜切れを起こさないものであるから、これにより
軸受(6)と軸部(5)との間の潤滑が確保される。また、仮
に潤滑薄膜(8)に部分的な膜切れが発生した場合でも、
耐摩耗膜(7)により軸受(6)と軸部(5)との直接接触が防
止されるため、軸部(5)における摩耗の発生が防止さ
れ、歯車装置の耐久性が向上する。また、DLC膜より
なる耐摩耗膜(7)は、官能基を有する含フッ素重合体か
らなる潤滑薄膜(8)とのぬれ性が高く、したがって、高
速回転時においても、潤滑薄膜(8)の部分的な膜切れが
発生しにくく、潤滑薄膜(8)により軸受(6)と軸部(5)と
の間の潤滑が確保される。
【0040】潤滑薄膜(8)は、次のような固体状の潤滑
薄膜であってもよい。図4は、固体状の潤滑薄膜の構造
を模式的に表わした構造図である。
【0041】この固体状の潤滑薄膜(8)は、含フッ素ポ
リウレタン高分子化合物からなる。含フッ素ポリウレタ
ン高分子化合物は、−CX2X−O−という一般式(X
は1〜4の整数)で示される単位を主要構造単位とし、
いずれも平均分子量が数百万以上で硬化反応により分子
間がウレタン結合した3次元の網状構造を有している。
3次元の網状構造とは、化学構造上の表現であって、膜
の断面が網状になっているのではなく、分子間が網のよ
うに連続してつながって密に詰まった均質な構造になっ
ていることを意味している。このような化合物として
は、次の化学式4に示すような末端がイソシフネートの
官能基付き含フッ素重合体を用いて、化学構造を変化さ
せたものとすることができる。上記の末端がイソシアネ
ートの官能基付き含フッ素重合体としては、PFPEの
誘導体、具体的には、たとえばモンテカチーニ社の商品
名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DISOC)が好適に
用いられる。
【0042】
【化4】 次に、上記の固体状の潤滑薄膜(8)の形成方法の1例を
説明する。
【0043】(b1) 固体状の潤滑薄膜(8)を得るための溶
液を用意し、この溶液を用いて、前記同様に、軸部(5)
の耐摩耗膜(7)の表面に液状膜を付着させる(付着処
理)。ここで用意する溶液は、末端がイソシアネートの
官能基付き含フッ素重合体〔フォンブリンZ誘導体(FO
NBLIN Z DISOC)〕を希釈溶液(フッ素系溶剤SV90
D)で含フッ素重合体の濃度を1質量%にまで希釈した
ものである。
【0044】(b2) 液状膜を付着した軸部(5)を40〜5
0℃で約1分間加熱し、液状膜に含まれる溶媒を除去す
る(乾燥処理)。この時点では、液状膜のままであり、
流動性を有している。
【0045】(b3) この後、軸部(5)をたとえば80〜2
00℃で1〜20時間、加熱する(硬化処理)。これに
より、液状膜の化学構造が変化することにより硬化反応
して固体状の潤滑薄膜(8)が得られる。ちなみに、この
硬化処理では、液状膜に存在している官能基付き含フッ
素重合体の個々について、次の化学式5〜8に示すよう
な4種の硬化反応でもって末端のイソシアネート(NC
O)が消失し、各官能基付き含フッ素重合体が互いにウ
レタン結合することにより3次元の網状構造となる。ウ
レタン結合は、化学式5、6に示すような硬化反応でも
って、図4(a)に模式的に示すように直線的に架橋する
とともに、化学式7、8に示すような硬化反応でもっ
て、図4(b)に模式的に示すように3次元方向で架橋す
る。なお、図4では、下記の化学式9に示すように、上
記化学式4を簡略化して模式的に表わしている。
【0046】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】 上記の方法によれば、軸部(5)の耐摩耗膜(7)の表面に固
体状の潤滑薄膜(8)を好適な膜厚で形成することができ
る。なお、(b1)および(b2)の処理は必要に応じて数回繰
り返すようにしてもよく、最終的には、潤滑薄膜(8)の
膜厚をたとえば0.2μm以下に設定する。
【0047】ここで、(b1)で用意した溶液を濃縮乾燥し
ただけの状態(流動性がある状態)と、(b1)で用意した
溶液を試料に付着して硬化した状態とについて、その性
状を分析したので、その結果について説明する。
【0048】前者は、FT−IR法(フーリエ変換−赤
外分析、液膜法)で分析した。その結果は、フッ素系の
ピーク以外にNH(3300cm−1)、N=C=O
(2279cm−1)、N(H)C=O(1712cm
−1、1546cm−1)、ベンゼン(1600cm
−1)などのピークが見られ、ベンゼン環、ウレタン結
合、イソシアネートが官能基として存在していることが
確認できた。ここでは、薄膜と厚膜との場合についてそ
れぞれ調べているが、膜厚に関係なく分析が行えた。後
者は、FT−IR法(フーリエ変換−赤外分析、高感度
反射法)で分析した。その結果は、ベンゼン環やウレタ
ン結合のピークが見られるが、イソシアネートのピーク
が見られなかった。これらの結果に基づき、上記化学式
5〜8に示す硬化反応による官能基の化学構造変化が確
認された。
【0049】上記の固体状の潤滑薄膜(8)は、それ自体
が3次元の網状構造をもって、被覆対象上に緻密に被覆
されるとともに自己潤滑性を有するため、さらに一層長
期にわたって優れた潤滑特性を発揮できるようになる。
【0050】この実施形態において、上記(b3)の硬化処
理については、加熱に代えて、紫外線、赤外線、γ線、
電子線などの電磁波(光)のエネルギを利用することも
できる。また、(b2)の乾燥処理は、省略してもよい。
【0051】上記の固体状の潤滑薄膜(8)の場合、含フ
ッ素ポリウレタン高分子化合物中に、フルオロポリエー
テルなどの含フッ素重合体を流動可能に分散添加した構
造とすることもできる。この場合、具体的には、前記形
成方法の(b1)の付着処理において、用意する溶液を、末
端がイソシアネートの官能基付き含フッ素重合体〔たと
えば商品名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN Z DISOCな
ど)〕と、含フッ素重合体として官能基なし含フッ素重
合体〔たとえば商品名フォンブリンZ誘導体(FONBLIN
Z-60など)〕とを所定の割合で混合したものとすればよ
い。この場合は、(b3)の硬化処理において、官能基なし
含フッ素重合体が、官能基付き含フッ素重合体と結合し
ないので、これが、固体状の潤滑薄膜(8)の内部におい
て流動可能となり、潤滑薄膜(8)表面から滲み出るなど
して潤滑作用を発揮することになる。なお、含フッ素重
合体としては、前述の官能基なし含フッ素重合体に限定
されず、化学式10、11、12に示すような官能基付
き含フッ素重合体とすることができる。
【0052】
【化10】
【化11】
【化12】 耐摩耗膜(7)は、TiN、TiCその他の広義のセラミ
ックス材の膜、カーボン膜などにより形成されてもよ
い。そうしても、上記と同様の作用効果が奏される。
【0053】遊星歯車装置の各部の構成は、上記実施形
態のものに限らず、適宜変更可能である。
【0054】また、この発明は、自動変速機以外の歯車
装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の第1実施形態を示す自動変
速機の要部の正面図である。
【図2】図2は、図1の遊星歯車の部分を拡大して示す
縦断面図である。
【図3】図3は、この発明の第2実施形態を示す軸部表
面部の拡大断面図である。
【図4】図4は、潤滑薄膜を構成する固体状の潤滑薄膜
の構造を模式的に表わした構造図である。
【符号の説明】
(4) 遊星歯車 (5) 軸部 (7) 耐摩耗膜 (8) 潤滑薄膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3J011 QA04 QA05 SC04 SD01 SE02 SE05 3J027 FA23 FB01 GD03 GE25 3J101 AA13 AA52 AA62 AA72 BA70 EA41 EA47 EA52 FA31 GA11

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】軸部により回転支持された歯車を有する歯
    車装置において、 上記軸部の表面に耐摩耗膜が形成されていることを特徴
    とする歯車装置。
  2. 【請求項2】上記耐摩耗膜がセラミックス材からなるこ
    とを特徴とする請求項1の歯車装置。
  3. 【請求項3】上記耐摩耗膜が硬質カーボン膜またはダイ
    ヤモンドライクカーボン膜からなることを特徴とする請
    求項1の歯車装置。
  4. 【請求項4】上記耐摩耗膜の表面に、フッ素系潤滑剤か
    らなる潤滑薄膜が形成されていることを特徴とする請求
    項1〜3のいずれか1項の歯車装置。
JP26299099A 1999-09-17 1999-09-17 歯車装置 Expired - Fee Related JP3931269B2 (ja)

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