JP2000345286A - 溶接熱影響部特性に優れた鋼材およびその製造方法 - Google Patents
溶接熱影響部特性に優れた鋼材およびその製造方法Info
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Abstract
る鋼材を提供する。 【解決手段】重量%で、C:0.015〜0.18%
、Si:1%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:
0.05%以下、S:0.008%以下、sol.Al:
0.0002〜0.0012%、Ti:0.003〜
0.02%、O(酸素):0.002〜0.005%、
B≦0.002%、N:0.007%以下を含有し、下
記式(1)を満足している鋼材、および連続鋳造時に、
バルジングさせて後圧下させたり、凝固前に電磁撹拌し
て前記鋼材を製造する方法。 0.3<O(酸素)/sol.Al 0.7<1.8 ・・・・・・・(1)
Description
J/cm以上の大入熱溶接から、溶接入熱40kJ/c
m以下の小入熱溶接に至る広い入熱条件におけるサブマ
ージアーク溶接、電子ビーム溶接およびレーザ溶接等に
より溶接した鋼材の溶接熱影響部の特性に優れた鋼材に
関する。なお、本発明では溶接熱影響部の特性とは、溶
接熱影響部の靱性、および耐食性をいい、耐食性は耐硫
化物応力腐食割れ性(以下、耐SSCと記す)をいう。
する溶接熱影響部(以下、HAZと記す)では、結晶粒
が粗大化して靱性が劣化することが知られている。特に
溶接金属と母材の境界部分(以下、ボンド部と記す)
は、組織の粗大化が最も著しく靱性が最も低下する。
で、しばしば小入熱溶接も実施される。小入熱溶接の場
合は、鋼材の成分、板厚および予熱条件等によっては溶
接後の溶接部の冷却速度が大きくなり、焼入れ状態にな
ってHAZは著しく硬化してしまう。HAZの硬化は、
溶接部の低温割れや耐食性(耐SSC性)の低下を招く
のみでなく靱性も劣化させる。
向性高エネルギービームによる溶接ではこの傾向が特に
顕著であるが、サブマージドアーク溶接でも、小入熱溶
接ではHAZ硬化は避けられない。
れを管理する指標として、Pcm がある。このPcm と鋼板
の板厚tおよび溶接金属中の水素量Hできまる溶接低温
割れ感受性指数 Pc値(Pc=Pcm+H/60+t/60
0)を制限することで、溶接部の低温割れを回避するこ
とができることは知られている。しかし、このPc値を制
限する方法は、合金成分の含有量を削減することにより
HAZ硬度を減じる方法であり、成分設計に対して強い
制限を与えるため、必ずしも満足できる方法ではない。
熱影響部靱性に優れた溶接構造用高張力鋼が開示されて
いる。この高張力鋼は、希土類元素,V,N,Oおよび
Bの規制によって、小入熱から大入熱溶接に至るまで、
HAZにおけるγ粒の成長抑制とγ粒内核生成による組
織微細化を図ったことを特徴としている。このγ粒の成
長抑制およびγ粒内核生成サイトの導入のどちらも焼き
入れ性を下げる効果があるため、同公報には記載されて
いないものの、HAZ硬化の抑制も期待できる。しか
し、この方法は高価な希土類元素を使用しなければなら
ず、鋼材のコスト面では必ずしも好ましい方法ではな
い。
属の靱性に優れた低合金高張力鋼の溶接方法が開示され
ている。この方法は、鋼板にTi酸化物を均一に分散さ
せておくことで、電子ビーム溶接時に溶接金属をTi酸化
物の働きで微細な針状フェライト組織にして、靱性を改
善することを特徴としている。
化され高靱化される。しかし、HAZには効果がない。
小入熱溶接のHAZの組織の微細化には、大入熱溶接に
比べて多数の酸化物粒子が分散している必要があり、Ti
酸化物では小入熱溶接の熱影響部を微細化するに足るだ
けの十分な分散密度が確保できない。
与するためには、Sを低減して粗大なMnS系介在物の
生成を防止する必要があるが、脱硫処理をおこないつつ
Ti酸化物の微細分散を図ることは著しく困難である。
脱硫元素は脱酸反応も起こし、一般にSよりもOの方が
反応性が高いため、脱硫処理はより強い脱酸処理とな
り、酸化物としての安定度が低いTi系酸化物は、還元
されて鋼中から失われてしまう。
加が有効なことが知られている(特開平4−34154
0号公報)。しかし、Crの添加は、不可避的にPcm値
を高め、小入熱溶接部における硬度を過度に高めてしま
う。
熱条件で溶接した熱影響部で過度の硬化が起らず、HA
Zの靱性および耐食性が優れた鋼材の開発が望まれてい
る。
入熱200kJ/cm以上の大入熱溶接から、40kJ
/cm以下の小入熱溶接に至る広い入熱条件の溶接にお
いて、特に電子ビーム溶接やレーザ溶接などの指向性高
エネルギービームによる溶接であっても、溶接熱影響部
の硬化が小さく良好な靱性を有し、かつ耐硫化物応力腐
食割れ性(以下、耐SSC性と記す)に優れた鋼材を提
供することである。
りである。
8% 、Si:1%以下、Mn:0.5〜2.5%、
P:0.05%以下、S:0.008%以下、sol.A
l:0.0002〜0.0012%、Ti:0.003
〜0.02%、O(酸素):0.002〜0.005
%、B:0.002%以下、N:0.007%以下を含
有し、下記式(1)を満足していることを特徴とする溶
接熱影響部特性に優れた鋼材。
造法にて鋳造するに際して、下記、(a)および(b)
のうちの一方、または双方の操作を加えて鋳造し、しか
る後に熱間圧延することを特徴とする溶接熱影響部特性
に優れた鋼材の製造方法。
ングを生じさせ、鋳片の凝固完了前にバルジング量相当
の圧下を加える。
を、電磁撹拌装置を用いて撹拌する。
た熱影響部が靱性や耐食性に優れた鋼材を開発するた
め、実験室および実製造ラインにて様々な試験をおこな
った結果、以下のような知見を得て本発明を完成するに
至った。
熱溶接をおこなった場合、HAZ部でγ粒内フェライト
析出による組織微細化が起こるが、小入熱のSAWや電
子ビーム溶接、レーザー溶接の場合のHAZでは、その
ような効果は観察されない。これは、小入熱溶接HAZ
でγ粒内フェライトを析出させるためには、大入熱溶接
の場合に比して、高い分散粒子密度が必要で、Ti酸化物
では十分な分散密度が確保できないためである。
て、凝固後のsol.Al量が0.0002〜0.00
12%となるように制御した場合、小入熱溶接したHA
Zにおいても粒内核生成組織が観察された。この効果に
より、小入熱溶接したHAZの靱性が向上するだけでな
く、HAZの硬さも低減された。また、小入熱HAZで
良好な特性が得られた場合、大入熱溶接HAZでも良好
な特性が得られた。ただし、sol.Al量の制限だけでは、
安定して好ましい特性の鋼材を得ることはできない。
鋼材中の全酸素量Oと、sol.Alとの関係を下記の
範囲に収めることで、安定して小入熱HAZ特性を確保
することができる。
と、鋼中には直径0.2〜3μm程度の微細なAl−T
i−Mn系複合酸化物粒子が多数形成され、これらの粒
子が小入熱溶接条件から大入熱溶接条件に至る広い入熱
条件でγ粒内におけるγ−α核生成サイトとして機能
し、組織が微細化される。
が、上記範囲から外れた場合、鋼中の酸化物はTi2O
3あるいはAl−Ti酸化物となって分散密度は減少
し、核生成の頻度も低下する。
囲にすると、Al−Ti−Mnが析出し、凝固組織が微
細化され、その結果MnSも微細化されて耐HIC性、
耐SSC性が改善できる。
は、Cr添加が有効であるが、CrはPcmを高めるため
通常はHAZ硬さを高める。しかし、Al−Ti−Mn
酸化物粒子からの粒内核生成効果によって、HAZ硬度
の上昇が抑制されて靱性劣化も回避される。
れた鋳片に対して一旦バルジングを起こさせ、鋳片中心
部の凝固完了直前に、圧下ロールによって鋳片に対して
バルジング量相当の圧下を加えることで、耐サワー特性
で最も問題になる鋳片中心部のMn偏析が大きく改善さ
れ、6)の効果と相まって、耐HIC性、耐SSC性が
改善される。
用いて未凝固溶鋼に対して撹拌を加えることで、やはり
鋳片中心部のMn偏析は大きく改善され、8)と同様の
効果が得られる。
限定した理由を説明する(以下、%表示は重量%を示
す)各成分の限定理由に付いて述べる。
%未満では必要とする強度を確保することができない。
望ましくは、0.02%以上である。一方、0.18%
を超えると、溶接した場合にHAZ、母材共に靱性を確
保することが難しくなる。望ましくは、0.16%未満
である。したがって、Cの含有量は、0.015〜0.
18%とした。
する。しかし、1%を超えて含有させた場合、靭性の低
下をもたらすため、1%を上限とする。また、鋼の脱酸
に支障を来さない限り、Siは幾ら少なくとも問題はな
い。
な成分である。含有量が0.5%未満では、焼入れ性の
不足によって強度および靱性が得られない。一方、2.
5%を超えて含有させると、偏析が増すと共に焼入れ性
が高まりすぎて溶接時にHAZ、母材共に靱性が低下す
る。従ってMnの含有量は0.3〜2.5%とした。
5%を超えると、粒界に偏析して靭性を低下させるのみ
ならず、溶接時に高温割れを招くため0.05%以下と
する必要がある。加えて、Pは延性破面率を悪化させ、
X70(API規格)以上の高強度で延性破面率の低下
をもたらす。したがって、X70以上の強度を得る場合
には、0.02%以下とすることが望ましい。
に存在してHICやSSCの原因となる。鋼材に耐HI
C性を要求しない場合は厳しく低減する必要はないが、
それでも0.008%を超えると母材靱性の劣化をもた
らすので、上限を0.008%とした。本発明鋼は、後
述するようにsol.Al含有量を微量調整することに
よりAl−Ti−Mn酸化物を鋼中に析出させたことを
特徴としているが、その酸化物により凝固組織が微細化
され、その結果粗大なMnSが形成されにくくなる。そ
のため、S含有量の影響が小さくなって比較的良好な耐
HIC性、耐SSC性を備える。それでも、耐HIC
性、耐SSC性が必要な用途に使用する場合は、S量は
0.006%未満にするのが好ましく、さらに望ましい
のは0.005%未満である。
ためにsol.Alの形で0.03%程度含有させる
が、本発明ではAl−Ti−Mn系複合酸化物を鋼中に
形成させる必要があるため、sol.Alはより低い値
に制御しなければならない。しかし、0.0002%未
満では、鋼中酸化物はTi酸化物あるいはTi−Si−
Mn酸化物となってしまうため、有効な酸化物が鋼中に
形成されない。一方、sol.Alが0.0012%を
超える場合は、鋼中酸化物はAl酸化物、あるいはTi
−Al酸化物となって鋼中に分散しなくなる。好ましく
は0.001%以下である。
成させるためには、sol.Al量は、下記式(1)の
関係も満足しなければならない。これ以外の範囲では、
微細分散する適正な酸化物は得られない。
低下する様相を示したが、0.2℃/分以上の冷却速度
で有れば、溶接HAZの靱性は良好であった。この冷却
速度は、連続鋳造で製造する場合には容易に得られる速
度である。
化物やTi酸化物に比べて融点が低く、鋳造時にはA
l、Ti、Mnを含む液相の酸化物として溶鋼から分離
してくると考えている。一般に液相−液相界面は、液相
−固相界面よりも界面エネルギーが低いため、Al−T
i−Mn系複合酸化物は、Al酸化物やTi酸化物に比
べて遙かに凝集しにくく微細分散し易い。Al−Ti−
Mn系複合酸化物は、Al、Ti、Mnの各酸化物以外
にMg、CaやSi等のような酸化物を微量含んでい
る。Al−Ti−Mn系複合酸化物の融体は凝固して固
体となるが、その際にTi2MO4やAl2MnO4(Gala
xite)にちかい組成を有する酸化物に分離する傾向があ
る。Ti Tiは、主に脱酸元素として利用するが、Al,Ti,
Mnからなる酸化物相を形成させる。この酸化物相を鋼
中に形成させるためには、鋼中のTiの総量は0.00
3%以上は必要であり、一方0.02%を超えて含有さ
せた場合には、形成される酸化物がTi酸化物、あるい
はTi−Al酸化物となって分散密度が低下し、特に小
入熱溶接部熱影響部における組織を微細化する能力が失
われる。このため、Ti含有量は0.02%未満でなく
てはならない。好ましくは0.017%である。
の重要な元素であり、、0.002%未満ではAl酸化
物やTi酸化物が形成され、十分な量のAl−Ti−M
n系複合酸化物を形成させることができなくなる。一方
0.005%を超えると清浄度が低下して靱性が劣化す
る。したがって、酸素含有量は0.002〜0.005
%とした。
は、0.0002%以上とするのが好ましく、0.00
2%%を超えると靱性の劣化をもたらす。
原因となる。通常は、鋼にTiを添加してTiNの形で
固定して無害化しているが、本発明においては、Tiは
上限が厳しく制限されている上に、Tiのほとんどの量
は酸化物の形成に消費されてしまい、TiNは殆ど形成
されない。そのため、Nは0.007%以下でなければ
母材、HAZとも靱性が劣化するのを避けることができ
ない。望ましくは、0.006%以下である。
な他の元素を含有させることができる。代表的な元素を
以下に示すが、それらに限定されるものではない。
させる。特に、pHの高い環境では鋼中への水素侵入を
抑制して母材の耐HIC性を向上させる作用を有する。
母材の耐HICを向上させるためには、0.5%以下の
含有量で効果を得ることができる。一方、強度向上に利
用する場合、0.5%以下でも効果があるが、それ以上
含有させると焼入れ−焼戻し処理をおこなった場合にC
u時効効果が得られ、一層強度が高まる。しかし、1.
5%を超えて含有させても、コスト上昇に見合った性能
の改善が見られない。
性を高める効果があるので、より優れた靭性を安定して
得る必要がある場合に含有させるのがよい。含有量を
0.05%以上とすると焼入性向上効果も得られるの
で、0.05%以上とすることが望ましい。特に、Cu
を添加する場合は圧延時のひび割れ(Cuチェッキン
グ)を防止するために、0.1%以上のNiを含有させ
る必要がある。しかし、4%を超えると合金コストの上
昇に見合った特性の向上が得られないので、上限は4%
とするのがよい。
のに有用である。Crのこの様な効果を積極的に利用し
ようとする場合、0.2%以上の含有量とするのがよ
い。しかし、2%を超えて含有させると、他の成分条件
を満足させても、HAZの硬化の抑制が難しくなる他、
耐炭酸ガス腐食性向上効果も飽和する。望ましくは、
1.5%以下である。
性を向上させる。また、細粒化によって母材の耐SSC
性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が0.
002%未満では前記効果が得られない。一方、0.1
%を超えると母材の性能向上効果が飽和する一方でHA
Zの靱性を著しく損なう。
向上させる。しかし、その含有量が0.002%未満前
記効果が得られない。一方0.15%を超えると母材の
性能向上効果が飽和し、靱性劣化を招く。
かし、含有量が0.03%未満では前記効果が得られな
く、また0.5%を超えると特にHAZの硬度が高まり
靱性と耐SSC性を損なう。
にて鋳造するに際して、下記の(a)および(b)のう
ちの一方、または双方の操作を加えて鋳造するのがよ
く、HAZに一層優れた耐SSC性を、また母材に耐H
IC性および耐SSC性を付与することができる。
ングを生じさせ、鋳片の凝固完了前にバルジング部に圧
下ロールによりバルジング量相当の圧下を加える。
を、電磁撹拌装置を用いて撹拌する。
終凝固部となる鋳片厚さ方向の中心部にMn、Sおよび
Pなどが偏析するのを防止するためである。偏析が生じ
ると偏析部分において靱性の低下や耐食性の劣化が生じ
やすい。
鋳型の下流側に配列されたガイドロールの鋳片厚さ方向
の間隔を、下流側に段階的に増加させるのがよい。ま
た、バルジングを発生させる位置は、鋳片中心部の固相
率が0.1以下の位置が好ましい。バルジング量は、鋳
片の厚さが200〜300mm程度の場合、鋳片の厚さ
(鋳型短辺の長さ)より20〜100mm厚くする量と
するのが適当である。
散させるためで鋳片中心部の固相率が0.8未満となる
凝固完了点の少し前の位置でおこなうのが好ましい。
未凝固部における固相の比率(体積比率)を意味する。
この固相率は、鋳片厚さ方向の一次元非定常伝熱解析に
より求めることができる。溶鋼の凝固中は潜熱が放出さ
れるので、固液共存域における潜熱の放出比率から固相
率を求めることができる。
電磁撹拌装置を用いて、鋳片内の未凝固溶鋼に対して撹
拌を加え偏析元素を分散させることも有効である。この
撹拌は、固相率0.05〜0.7の範囲の領域でおこな
うと効果的である。
連続鋳造設備による鋳片または真空溶解炉による150
kgインゴットとした。鋳片の寸法は、厚さ200m
m、長さ2000mmで、インゴットは真空溶解炉で溶
解して150kgインゴットとした。連続鋳造では、表
2に示すように、鋳型から引き抜かれた後鋳片内部が凝
固する前に鋳片をバルジングさせて圧下および/または
電磁撹拌をおこなった。バルジングさせた場合の圧下は
一対のロールによりおこなった。
鋳片と共に1100℃に加熱した後、表3に示す条件で
熱間圧延と熱処理を施して鋼板とした。溶接前の特性を
調べるため、得られた鋼板からJIS Z 2201号引
張試験片、JIS Z 2202に規定のVノッチシャル
ピー衝撃試験片および腐食試験片を製作した。腐食試験
は、耐HIC性、耐SSC性および耐炭酸ガス腐食性を
調べるため下記の方法でおこなった。
定されている方法で評価した。すなわち、NACE浴
(0.5%酢酸+5%食塩水,25℃,1気圧H2S飽
和)に96時間浸漬したときの割れ面積率(CAR)を
測定した。評価は、「CAR≦2%」のものが耐HIC
性に優れるとして○、2%を超えるものは耐HIC性に
劣るとして×印で示した。
の鋼板厚さ、幅:20mm、長さ:100mmとし、各
鋼板毎に3枚採取した。これの試験片を浸漬試験に供し
た後、超音波探傷法で断面のHIC面積(CRA)を下
記式で求め、3枚の平均値で評価した。
(試験片幅×試験片長)} なお、CARは、CLR(幅方向の割れ長さ)のほぼ3
分の1に対応していることが経験的に知られており、
「CAR≦2%」は「CLR≦5%」に対応する。
ための腐食試験片を採取した位置を示す図である。
で、斜線部は水素誘起割れした部分を示す。
規定されている方法で評価した。すなわち、、鋼板の板
厚中心部から平行部が6.35mm×25.4mmの丸
棒試験片を採取した後、これにNACE浴中で80%S
MYS(規格最小YS)の引張り応力を付与し、720
時間が経過するまでの間に破断が生ずるか否かを調べ
た。そして破断しなかったものを耐SSC性に優れると
して○印で、破断したものについては、耐SSC性が劣
るとして×印で表示した。
験片を、1気圧の炭酸ガスを飽和させた50℃の人工海
水中に96時間浸漬し、その際の腐食減量から計算した
腐食速度にて評価した。
番号10〜18の鋼は、1〜9の鋼に対応する比較例で
あり、主要な強化元素の含有量は同一であるが、Al、
TiおよびO(酸素)の含有量が異なっており、本発明
で規定する範囲外になっている。
は靱性、耐HIC性および耐SSC性ともに良好である
が、比較例10a〜12aおよび16aは耐HIC性お
よび耐SSC性の一方または双方とも好ましくない。比
較例の13a〜15aおよび17a、18aは、母材と
しての特性は良好であるが、後述するHAZの特性が好
ましくない。
は、本発明の方法により製造されたものである。これに
対して、鋼板番号4a、5aおよび6aは150kgイ
ンゴットから鋼板にしたものであり、インゴットのサイ
ズが比較的小さくMn、Sのの偏析が小さいため母材特
性は良好である。
は、表3に示すように耐HIC性、耐SSC性に加え
て、耐炭酸ガス腐食性も良好である。これに対し、Cr
を含まない鋼板1a、9aは、腐食速度が速く耐炭酸ガ
ス腐食性が好ましくない。
め、各鋼板から溶接用の縦:400mm、横:300m
mの試験片を切り出し、突き合わせ溶接をおこなった。
接およびSAWの3種類の方法とした。
mmのV開先に対して、20kJ/cmにて多層溶接をおこな
った。
レーザーを用い、大気圧Arガスシールド雰囲気で、ル
ートギャップ無しのI開先にて実施した。
電圧150kV、電流150mA、振幅0.8mmにて、ルー
トギャップ無しのI開先に対して、速度20cm/min〜8
0cm/minで溶接した。このレーザー溶接や電子ビーム溶
接の溶接入熱は、20kJ/cmか、あるいはそれよりも小
さな入熱に相当する。
は、X開先にて、内外面一層SAWの大入熱溶接も実施
して、大入熱HAZ特性を調査した。
度測定試験片、シャルピー衝撃試験片、引張試験片およ
び腐食試験片をそれぞれ切り出し、HAZの最高硬さ、
HAZ靱性、溶接部(溶接金属部およびHAZをいう)
の引張り強さおよび溶接部の耐SSC性を求めた。
0kgfにて測定した。
ルピー衝撃試験片および引張試験片を採取した位置を示
す図で、図1(a)はサブマージアーク溶接した鋼板の
場合、図1(b)は電子ビーム溶接およびレーザ溶接し
た場合の図である。
に、シャルピー衝撃試験片1は、溶接した鋼板2の溶接
金属5とHAZ6の境界であるボンド部にVノッチ4が
くるように採取した。試験片は、JISZ2202 V
ノッチ衝撃試験片とした。ただし、母材厚さが10mm
に満たない鋼材については、5mm厚のハーフサイズ試
験片で代用した。
1(b)に示すように、引張試験片3の平行部の中央に
溶接金属がくるように採取した。
引張り試験片を採取した同等の位置である板厚中心部か
ら溶接金属が中心に位置するようにSSC試験片を切り
出し、母材の場合と同様の試験をおこなってSSC性を
評価した。
でおこなった。これらの小入熱溶接した場合の試験結果
を表4に示す。
が、いずれの溶接方法にて溶接した場合でも優れたHA
Z靱性を示す。これに対し、比較例の10a〜18aの鋼
板のHAZ靱性は、軒並み好ましくない。
好であるが、比較例ではSを低減した13a〜15aの
鋼板で良好な結果が得られているものの、他の比較例の
鋼板では、HAZ硬さが高いことなどが影響して、耐S
SCも劣悪となっている。11aも比較的Sは低いが、
HAZ硬さが高いため、耐SSC性好ましくない。
AWにて溶接した場合の、HAZ特性を示す。
は入熱90kJ/cmという過酷な溶接条件に対しても、優れ
たHAZ靱性を示しているのに対して、sol.Al,
Tiおよび式(1)の値が異なる比較例においては、何
れもHAZ靱性が著しく劣っている。
発明の製造方法で製造した鋼材は、耐硫化物応力腐食割
れ性に優れており、溶接施工に対する制限を大きく緩和
し、腐食環境を含む多様な環境下で使用に耐える安全な
溶接構造物を構築することができる。
採取した位置を示す図である。
ある。
る。
3)
の製造方法
J/cm以上の大入熱溶接から、溶接入熱40kJ/c
m以下の小入熱溶接に至る広い入熱条件におけるサブマ
ージアーク溶接、電子ビーム溶接およびレーザ溶接等に
より溶接した鋼材の溶接熱影響部の特性に優れた鋼材に
関する。なお、本発明では溶接熱影響部の特性とは、溶
接熱影響部の靱性、および耐食性をいい、耐食性は耐硫
化物応力腐食割れ性(以下、耐SSCと記す)をいう。
する溶接熱影響部(以下、HAZと記す)では、結晶粒
が粗大化して靱性が劣化することが知られている。特に
溶接金属と母材の境界部分(以下、ボンド部と記す)
は、組織の粗大化が最も著しく靱性が最も低下する。
で、しばしば小入熱溶接も実施される。小入熱溶接の場
合は、鋼材の成分、板厚および予熱条件等によっては溶
接後の溶接部の冷却速度が大きくなり、焼入れ状態にな
ってHAZは著しく硬化してしまう。HAZの硬化は、
溶接部の低温割れや耐食性(耐SSC性)の低下を招く
のみでなく靱性も劣化させる。
向性高エネルギービームによる溶接ではこの傾向が特に
顕著であるが、サブマージドアーク溶接でも、小入熱溶
接ではHAZ硬化は避けられない。
れを管理する指標として、Pcm がある。このPcm と鋼板
の板厚tおよび溶接金属中の水素量Hできまる溶接低温
割れ感受性指数 Pc値(Pc=Pcm+H/60+t/60
0)を制限することで、溶接部の低温割れを回避するこ
とができることは知られている。しかし、このPc値を制
限する方法は、合金成分の含有量を削減することにより
HAZ硬度を減じる方法であり、成分設計に対して強い
制限を与えるため、必ずしも満足できる方法ではない。
熱影響部靱性に優れた溶接構造用高張力鋼が開示されて
いる。この高張力鋼は、希土類元素,V,N,Oおよび
Bの規制によって、小入熱から大入熱溶接に至るまで、
HAZにおけるγ粒の成長抑制とγ粒内核生成による組
織微細化を図ったことを特徴としている。このγ粒の成
長抑制およびγ粒内核生成サイトの導入のどちらも焼き
入れ性を下げる効果があるため、同公報には記載されて
いないものの、HAZ硬化の抑制も期待できる。しか
し、この方法は高価な希土類元素を使用しなければなら
ず、鋼材のコスト面では必ずしも好ましい方法ではな
い。
属の靱性に優れた低合金高張力鋼の溶接方法が開示され
ている。この方法は、鋼板にTi酸化物を均一に分散さ
せておくことで、電子ビーム溶接時に溶接金属をTi酸化
物の働きで微細な針状フェライト組織にして、靱性を改
善することを特徴としている。
化され高靱化される。しかし、HAZには効果がない。
小入熱溶接のHAZの組織の微細化には、大入熱溶接に
比べて多数の酸化物粒子が分散している必要があり、Ti
酸化物では小入熱溶接の熱影響部を微細化するに足るだ
けの十分な分散密度が確保できない。
与するためには、Sを低減して粗大なMnS系介在物の
生成を防止する必要があるが、脱硫処理をおこないつつ
Ti酸化物の微細分散を図ることは著しく困難である。
脱硫元素は脱酸反応も起こし、一般にSよりもOの方が
反応性が高いため、脱硫処理はより強い脱酸処理とな
り、酸化物としての安定度が低いTi系酸化物は、還元
されて鋼中から失われてしまう。
加が有効なことが知られている(特開平4−34154
0号公報)。しかし、Crの添加は、不可避的にPcm値
を高め、小入熱溶接部における硬度を過度に高めてしま
う。
熱条件で溶接した熱影響部で過度の硬化が起らず、HA
Zの靱性および耐食性が優れた鋼材の開発が望まれてい
る。
入熱200kJ/cm以上の大入熱溶接から、40kJ
/cm以下の小入熱溶接に至る広い入熱条件の溶接にお
いて、特に電子ビーム溶接やレーザ溶接などの指向性高
エネルギービームによる溶接であっても、溶接熱影響部
の硬化が小さく良好な靱性を有し、かつ耐硫化物応力腐
食割れ性(以下、耐SSC性と記す)に優れた鋼材を提
供することである。
りである。
8% 、Si:1%以下、Mn:0.5〜2.5%、
P:0.05%以下、S:0.008%以下、sol.A
l:0.0002〜0.0012%、Ti:0.003
〜0.02%、O(酸素):0.002〜0.005
%、B:0.002%以下、N:0.007%以下を含
有し、下記式(1)を満足していることを特徴とする溶
接熱影響部特性に優れた鋼材。
造法にて鋳造するに際して、下記、(a)および(b)
のうちの一方、または双方の操作を加えて鋳造し、しか
る後に熱間圧延することを特徴とする溶接熱影響部特性
に優れた鋼材の製造方法。
ングを生じさせ、鋳片の凝固完了前にバルジング量相当
の圧下を加える。
を、電磁撹拌装置を用いて撹拌する。
た熱影響部が靱性や耐食性に優れた鋼材を開発するた
め、実験室および実製造ラインにて様々な試験をおこな
った結果、以下のような知見を得て本発明を完成するに
至った。
熱溶接をおこなった場合、HAZ部でγ粒内フェライト
析出による組織微細化が起こるが、小入熱のSAWや電
子ビーム溶接、レーザー溶接の場合のHAZでは、その
ような効果は観察されない。これは、小入熱溶接HAZ
でγ粒内フェライトを析出させるためには、大入熱溶接
の場合に比して、高い分散粒子密度が必要で、Ti酸化物
では十分な分散密度が確保できないためである。
て、凝固後のsol.Al量が0.0002〜0.00
12%となるように制御した場合、小入熱溶接したHA
Zにおいても粒内核生成組織が観察された。この効果に
より、小入熱溶接したHAZの靱性が向上するだけでな
く、HAZの硬さも低減された。また、小入熱HAZで
良好な特性が得られた場合、大入熱溶接HAZでも良好
な特性が得られた。ただし、sol.Al量の制限だけでは、
安定して好ましい特性の鋼材を得ることはできない。
鋼材中の全酸素量Oと、sol.Alとの関係を下記の
範囲に収めることで、安定して小入熱HAZ特性を確保
することができる。
と、鋼中には直径0.2〜3μm程度の微細なAl−T
i−Mn系複合酸化物粒子が多数形成され、これらの粒
子が小入熱溶接条件から大入熱溶接条件に至る広い入熱
条件でγ粒内におけるγ−α核生成サイトとして機能
し、組織が微細化される。
が、上記範囲から外れた場合、鋼中の酸化物はTi 2O 3
あるいはAl−Ti酸化物となって分散密度は減少し、
核生成の頻度も低下する。
囲にすると、Al−Ti−Mnが析出し、凝固組織が微
細化され、その結果MnSも微細化されて耐HIC性、
耐SSC性が改善できる。
は、Cr添加が有効であるが、CrはPcmを高めるため
通常はHAZ硬さを高める。しかし、Al−Ti−Mn
酸化物粒子からの粒内核生成効果によって、HAZ硬度
の上昇が抑制されて靱性劣化も回避される。
れた鋳片に対して一旦バルジングを起こさせ、鋳片中心
部の凝固完了直前に、圧下ロールによって鋳片に対して
バルジング量相当の圧下を加えることで、耐サワー特性
で最も問題になる鋳片中心部のMn偏析が大きく改善さ
れ、6)の効果と相まって、耐HIC性、耐SSC性が
改善される。
用いて未凝固溶鋼に対して撹拌を加えることで、やはり
鋳片中心部のMn偏析は大きく改善され、8)と同様の
効果が得られる。
限定した理由を説明する(以下、%表示は重量%を示
す)各成分の限定理由に付いて述べる。
%未満では必要とする強度を確保することができない。
望ましくは、0.02%以上である。一方、0.18%
を超えると、溶接した場合にHAZ、母材共に靱性を確
保することが難しくなる。望ましくは、0.16%未満
である。したがって、Cの含有量は、0.015〜0.
18%とした。
する。しかし、1%を超えて含有させた場合、靭性の低
下をもたらすため、1%を上限とする。また、鋼の脱酸
に支障を来さない限り、Siは幾ら少なくとも問題はな
い。
な成分である。含有量が0.5%未満では、焼入れ性の
不足によって強度および靱性が得られない。一方、2.
5%を超えて含有させると、偏析が増すと共に焼入れ性
が高まりすぎて溶接時にHAZ、母材共に靱性が低下す
る。従ってMnの含有量は0.3〜2.5%とした。
5%を超えると、粒界に偏析して靭性を低下させるのみ
ならず、溶接時に高温割れを招くため0.05%以下と
する必要がある。加えて、Pは延性破面率を悪化させ、
X70(API規格)以上の高強度で延性破面率の低下
をもたらす。したがって、X70以上の強度を得る場合
には、0.02%以下とすることが望ましい。
に存在してHICやSSCの原因となる。鋼材に耐HI
C性を要求しない場合は厳しく低減する必要はないが、
それでも0.008%を超えると母材靱性の劣化をもた
らすので、上限を0.008%とした。本発明鋼は、後
述するようにsol.Al含有量を微量調整することに
よりAl−Ti−Mn酸化物を鋼中に析出させたことを
特徴としているが、その酸化物により凝固組織が微細化
され、その結果粗大なMnSが形成されにくくなる。そ
のため、S含有量の影響が小さくなって比較的良好な耐
HIC性、耐SSC性を備える。それでも、耐HIC
性、耐SSC性が必要な用途に使用する場合は、S量は
0.006%未満にするのが好ましく、さらに望ましい
のは0.005%未満である。
ためにsol.Alの形で0.03%程度含有させる
が、本発明ではAl−Ti−Mn系複合酸化物を鋼中に
形成させる必要があるため、sol.Alはより低い値
に制御しなければならない。しかし、0.0002%未
満では、鋼中酸化物はTi酸化物あるいはTi−Si−
Mn酸化物となってしまうため、有効な酸化物が鋼中に
形成されない。一方、sol.Alが0.0012%を
超える場合は、鋼中酸化物はAl酸化物、あるいはTi
−Al酸化物となって鋼中に分散しなくなる。好ましく
は0.001%以下である。
成させるためには、sol.Al量は、下記式(1)の
関係も満足しなければならない。これ以外の範囲では、
微細分散する適正な酸化物は得られない。
低下する様相を示したが、0.2℃/分以上の冷却速度
で有れば、溶接HAZの靱性は良好であった。この冷却
速度は、連続鋳造で製造する場合には容易に得られる速
度である。
化物やTi酸化物に比べて融点が低く、鋳造時にはA
l、Ti、Mnを含む液相の酸化物として溶鋼から分離
してくると考えている。一般に液相−液相界面は、液相
−固相界面よりも界面エネルギーが低いため、Al−T
i−Mn系複合酸化物は、Al酸化物やTi酸化物に比
べて遙かに凝集しにくく微細分散し易い。Al−Ti−
Mn系複合酸化物は、Al、Ti、Mnの各酸化物以外
にMg、CaやSi等のような酸化物を微量含んでい
る。Al−Ti−Mn系複合酸化物の融体は凝固して固
体となるが、その際にTi2MO4やAl2MnO4(Gala
xite)にちかい組成を有する酸化物に分離する傾向があ
る。Ti Tiは、主に脱酸元素として利用するが、Al,Ti,
Mnからなる酸化物相を形成させる。この酸化物相を鋼
中に形成させるためには、鋼中のTiの総量は0.00
3%以上は必要であり、一方0.02%を超えて含有さ
せた場合には、形成される酸化物がTi酸化物、あるい
はTi−Al酸化物となって分散密度が低下し、特に小
入熱溶接部熱影響部における組織を微細化する能力が失
われる。このため、Ti含有量は0.02%未満でなく
てはならない。好ましくは0.017%である。
の重要な元素であり、、0.002%未満ではAl酸化
物やTi酸化物が形成され、十分な量のAl−Ti−M
n系複合酸化物を形成させることができなくなる。一方
0.005%を超えると清浄度が低下して靱性が劣化す
る。したがって、酸素含有量は0.002〜0.005
%とした。
は、0.0002%以上とするのが好ましく、0.00
2%%を超えると靱性の劣化をもたらす。
原因となる。通常は、鋼にTiを添加してTiNの形で
固定して無害化しているが、本発明においては、Tiは
上限が厳しく制限されている上に、Tiのほとんどの量
は酸化物の形成に消費されてしまい、TiNは殆ど形成
されない。そのため、Nは0.007%以下でなければ
母材、HAZとも靱性が劣化するのを避けることができ
ない。望ましくは、0.006%以下である。
な他の元素を含有させることができる。代表的な元素を
以下に示すが、それらに限定されるものではない。
させる。特に、pHの高い環境では鋼中への水素侵入を
抑制して母材の耐HIC性を向上させる作用を有する。
母材の耐HICを向上させるためには、0.5%以下の
含有量で効果を得ることができる。一方、強度向上に利
用する場合、0.5%以下でも効果があるが、それ以上
含有させると焼入れ−焼戻し処理をおこなった場合にC
u時効効果が得られ、一層強度が高まる。しかし、1.
5%を超えて含有させても、コスト上昇に見合った性能
の改善が見られない。
性を高める効果があるので、より優れた靭性を安定して
得る必要がある場合に含有させるのがよい。含有量を
0.05%以上とすると焼入性向上効果も得られるの
で、0.05%以上とすることが望ましい。特に、Cu
を添加する場合は圧延時のひび割れ(Cuチェッキン
グ)を防止するために、0.1%以上のNiを含有させ
る必要がある。しかし、4%を超えると合金コストの上
昇に見合った特性の向上が得られないので、上限は4%
とするのがよい。
のに有用である。Crのこの様な効果を積極的に利用し
ようとする場合、0.2%以上の含有量とするのがよ
い。しかし、2%を超えて含有させると、他の成分条件
を満足させても、HAZの硬化の抑制が難しくなる他、
耐炭酸ガス腐食性向上効果も飽和する。望ましくは、
1.5%以下である。
性を向上させる。また、細粒化によって母材の耐SSC
性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が0.
002%未満では前記効果が得られない。一方、0.1
%を超えると母材の性能向上効果が飽和する一方でHA
Zの靱性を著しく損なう。
向上させる。しかし、その含有量が0.002%未満前
記効果が得られない。一方0.15%を超えると母材の
性能向上効果が飽和し、靱性劣化を招く。
かし、含有量が0.03%未満では前記効果が得られな
く、また0.5%を超えると特にHAZの硬度が高まり
靱性と耐SSC性を損なう。
にて鋳造するに際して、下記の(a)および(b)のう
ちの一方、または双方の操作を加えて鋳造するのがよ
く、HAZに一層優れた耐SSC性を、また母材に耐H
IC性および耐SSC性を付与することができる。
ングを生じさせ、鋳片の凝固完了前にバルジング部に圧
下ロールによりバルジング量相当の圧下を加える。
を、電磁撹拌装置を用いて撹拌する。
終凝固部となる鋳片厚さ方向の中心部にMn、Sおよび
Pなどが偏析するのを防止するためである。偏析が生じ
ると偏析部分において靱性の低下や耐食性の劣化が生じ
やすい。
鋳型の下流側に配列されたガイドロールの鋳片厚さ方向
の間隔を、下流側に段階的に増加させるのがよい。ま
た、バルジングを発生させる位置は、鋳片中心部の固相
率が0.1以下の位置が好ましい。バルジング量は、鋳
片の厚さが200〜300mm程度の場合、鋳片の厚さ
(鋳型短辺の長さ)より20〜100mm厚くする量と
するのが適当である。
散させるためで鋳片中心部の固相率が0.8未満となる
凝固完了点の少し前の位置でおこなうのが好ましい。
未凝固部における固相の比率(体積比率)を意味する。
この固相率は、鋳片厚さ方向の一次元非定常伝熱解析に
より求めることができる。溶鋼の凝固中は潜熱が放出さ
れるので、固液共存域における潜熱の放出比率から固相
率を求めることができる。
電磁撹拌装置を用いて、鋳片内の未凝固溶鋼に対して撹
拌を加え偏析元素を分散させることも有効である。この
撹拌は、固相率0.05〜0.7の範囲の領域でおこな
うと効果的である。
連続鋳造設備による鋳片または真空溶解炉による150
kgインゴットとした。鋳片の寸法は、厚さ200m
m、長さ2000mmで、インゴットは真空溶解炉で溶
解して150kgインゴットとした。連続鋳造では、表
2に示すように、鋳型から引き抜かれた後鋳片内部が凝
固する前に鋳片をバルジングさせて圧下および/または
電磁撹拌をおこなった。バルジングさせた場合の圧下は
一対のロールによりおこなった。
鋳片と共に1100℃に加熱した後、表3に示す条件で
熱間圧延と熱処理を施して鋼板とした。溶接前の特性を
調べるため、得られた鋼板からJIS Z 2201号引
張試験片、JIS Z 2202に規定のVノッチシャル
ピー衝撃試験片および腐食試験片を製作した。腐食試験
は、耐HIC性、耐SSC性および耐炭酸ガス腐食性を
調べるため下記の方法でおこなった。
定されている方法で評価した。すなわち、NACE浴
(0.5%酢酸+5%食塩水,25℃,1気圧H 2S飽
和)に96時間浸漬したときの割れ面積率(CAR)を
測定した。評価は、「CAR≦2%」のものが耐HIC
性に優れるとして0.2%を超えるものは耐HIC性に
劣るとして×印で示した。
の鋼板厚さ、幅:20mm、長さ:100mmとし、各
鋼板毎に3枚採取した。これの試験片を浸漬試験に供し
た後、超音波探傷法で断面のHIC面積(CRA)を下
記式で求め、3枚の平均値で評価した。
(試験片幅×試験片長)} なお、CARは、CLR(幅方向の割れ長さ)のほぼ3
分の1に対応していることが経験的に知られており、
「CAR≦2%」は「CLR≦5%」に対応する。
ための腐食試験片を採取した位置を示す図である。
で、斜線部は水素誘起割れした部分を示す。
規定されている方法で評価した。すなわち、、鋼板の板
厚中心部から平行部が6.35mm×25.4mmの丸
棒試験片を採取した後、これにNACE浴中で80%S
MYS(規格最小YS)の引張り応力を付与し、720
時間が経過するまでの間に破断が生ずるか否かを調べ
た。そして破断しなかったものを耐SSC性に優れると
して○印で、破断したものについては、耐SSC性が劣
るとして×印で表示した。
験片を、1気圧の炭酸ガスを飽和させた50℃の人工海
水中に96時間浸漬し、その際の腐食減量から計算した
腐食速度にて評価した。
番号10〜18の鋼は、1〜9の鋼に対応する比較例で
あり、主要な強化元素の含有量は同一であるが、Al、
TiおよびO(酸素)の含有量が異なっており、本発明
で規定する範囲外になっている。
は靱性、耐HIC性および耐SSC性ともに良好である
が、比較例10a〜12aおよび16aは耐HIC性お
よび耐SSC性の一方または双方とも好ましくない。比
較例の13a〜15aおよび17a、18aは、母材と
しての特性は良好であるが、後述するHAZの特性が好
ましくない。
は、本発明の方法により製造されたものである。これに
対して、鋼板番号4a、5aおよび6aは150kgイ
ンゴットから鋼板にしたものであり、インゴットのサイ
ズが比較的小さくMn、Sのの偏析が小さいため母材特
性は良好である。
は、表3に示すように耐HIC性、耐SSC性に加え
て、耐炭酸ガス腐食性も良好である。これに対し、Cr
を含まない鋼板1a、9aは、腐食速度が速く耐炭酸ガ
ス腐食性が好ましくない。
め、各鋼板から溶接用の縦:400mm、横:300m
mの試験片を切り出し、突き合わせ溶接をおこなった。
接およびSAWの3種類の方法とした。
mmのV開先に対して、20kJ/cmにて多層溶接をおこな
った。
レーザーを用い、大気圧Arガスシールド雰囲気で、ル
ートギャップ無しのI開先にて実施した。
電圧150kV、電流150mA、振幅0.8mmにて、ルー
トギャップ無しのI開先に対して、速度20cm/min〜8
0cm/minで溶接した。このレーザー溶接や電子ビーム溶
接の溶接入熱は、20kJ/cmか、あるいはそれよりも小
さな入熱に相当する。
は、X開先にて、内外面一層SAWの大入熱溶接も実施
して、大入熱HAZ特性を調査した。
度測定試験片、シャルピー衝撃試験片、引張試験片およ
び腐食試験片をそれぞれ切り出し、HAZの最高硬さ、
HAZ靱性、溶接部(溶接金属部およびHAZをいう)
の引張り強さおよび溶接部の耐SSC性を求めた。
0kgfにて測定した。
ルピー衝撃試験片および引張試験片を採取した位置を示
す図で、図1(a)はサブマージアーク溶接した鋼板の
場合、図1(b)は電子ビーム溶接およびレーザ溶接し
た場合の図である。
に、シャルピー衝撃試験片1は、溶接した鋼板2の溶接
金属5とHAZ6の境界であるボンド部にVノッチ4が
くるように採取した。試験片は、JISZ2202 V
ノッチ衝撃試験片とした。ただし、母材厚さが10mm
に満たない鋼材については、5mm厚のハーフサイズ試
験片で代用した。
1(b)に示すように、引張試験片3の平行部の中央に
溶接金属がくるように採取した。
引張り試験片を採取した同等の位置である板厚中心部か
ら溶接金属が中心に位置するようにSSC試験片を切り
出し、母材の場合と同様の試験をおこなってSSC性を
評価した。
でおこなった。これらの小入熱溶接した場合の試験結果
を表4に示す。
が、いずれの溶接方法にて溶接した場合でも優れたHA
Z靱性を示す。これに対し、比較例の10a〜18aの鋼
板のHAZ靱性は、軒並み好ましくない。
好であるが、比較例ではSを低減した13a〜15aの
鋼板で良好な結果が得られているものの、他の比較例の
鋼板では、HAZ硬さが高いことなどが影響して、耐S
SCも劣悪となっている。11aも比較的Sは低いが、
HAZ硬さが高いため、耐SSC性好ましくない。
AWにて溶接した場合の、HAZ特性を示す。
は入熱90kJ/cmという過酷な溶接条件に対しても、優れ
たHAZ靱性を示しているのに対して、sol.Al,
Tiおよび式(1)の値が異なる比較例においては、何
れもHAZ靱性が著しく劣っている。
発明の製造方法で製造した鋼材は、耐硫化物応力腐食割
れ性に優れており、溶接施工に対する制限を大きく緩和
し、腐食環境を含む多様な環境下で使用に耐える安全な
溶接構造物を構築することができる。
採取した位置を示す図である。
ある。
る。
Claims (2)
- 【請求項1】重量%で、C:0.015〜0.18%
、Si:1%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:
0.05%以下、S:0.008%以下、sol.Al:
0.0002〜0.0012%、Ti:0.003〜
0.02%、O(酸素):0.002〜0.005%、
B:0.002%以下、N:0.007%以下を含有
し、下記式(1)を満足していることを特徴とする溶接
熱影響部特性に優れた鋼材。 0.3<O(酸素)/sol.Al0.7<1.8 ・・・・・・・(1) - 【請求項2】請求項1記載の化学組成を有する鋳片を連
続鋳造法にて鋳造するに際して、下記の(a)および
(b)のうちの一方、または双方の操作を加えて鋳造
し、しかる後に熱間圧延することを特徴とする溶接熱影
響部特性に優れた鋼材の製造方法。 (a)鋳型から引き抜かれた鋳片にバルジングを生じさ
せ、鋳片の凝固完了前にバルジング量相当の圧下を加え
る。 (b)鋳型から引き抜いた鋳片の未凝固部を、電磁撹拌
装置を用いて撹拌する。
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JP16172199A JP4355866B2 (ja) | 1999-06-08 | 1999-06-08 | 溶接熱影響部特性に優れた鋼材およびその製造方法 |
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
US8668784B2 (en) | 2009-05-19 | 2014-03-11 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | Steel for welded structure and producing method thereof |
US8920713B2 (en) | 2009-05-21 | 2014-12-30 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | Steel for welded structure and producing method thereof |
-
1999
- 1999-06-08 JP JP16172199A patent/JP4355866B2/ja not_active Expired - Fee Related
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