JP2000316966A - カテーテルチューブ及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ＰＴＦＥ樹脂から成る内層樹脂層及び外層樹
脂層あるいはこれ等と金属線を用いた補強層を有するカ
テーテルにおいて、ＰＴＦＥ樹脂の外層樹脂層あるいは
これと補強層に対する接着性を増大・付与すること。 【解決手段】 ＰＴＦＥ樹脂から成る内層樹脂層を放射
線照射し、その上に外層樹脂層あるいは補強層及び外層
樹脂層を施す。これによって、カテーテルの使用に際し
ての操作性も改善される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は医療用カテーテルチ
ューブ及びその製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、患者の肉体的・時間的負担を軽減
するために診察・治療方法にカテーテルを用いる例が増
えている。一般に、カテーテルは細い血管や尿管などを
利用して生体内に挿入し、途中の血管壁や生体器官など
を傷つけることなく正確に所定部位に到達させるための
全体的な高い操作性と安全性の要求に加えて、その内層
樹脂が形成するチューブ内腔を通して患者の生体内の所
定部位に外部から薬液や造影剤等を注入したり、生体内
の体液等を排出したり、他のカテーテル等の挿入のため
のより広い内腔の維持と内腔表面（内層樹脂層の内表
面）とその中を通過する薬剤あるいは治療器具等との潤
滑性の付与が大きな課題となっている。

【０００３】従来のカテーテルは、上記の如き挿入にお
ける要求に対して、例えば、血管、生体器官を傷付けず
に挿入するための曲げやすく弾力性に富んだ先端部と、
この先端部と連続し、先端部を所定の箇所まで確実に到
達させるためのトルク伝達性を保持したトルク伝達部
（本体部）を有せしめられている。また、トルク伝達部
（本体部）は、トルク伝達性を高めるために、金属素線
を用いた補強層が内層チューブ上に設けられたり、硬い
材料で構成されたりしている。また先端部は、曲げやす
く弾力性に富んだものとする為、柔らかい材料で構成さ
れたり、本体部（トルク伝達部）に先端部として金属線
を含む補強層がないチューブを接続して構成されたりし
ている。

【０００４】そして、従来のカテーテルの製造方法とし
ては、先ず丸線（心線）外周上に内層樹脂層を設け、得
られた内層樹脂層の外周上に必要に応じて耐食性の金属
線によって補強を施し、内層樹脂層チューブあるいはこ
れと補強を覆うように外層樹脂層を設け、得られる多層
チューブ体から丸線を引抜く製造方法が知られている。

【０００５】さらに、カテーテルの内層樹脂層、殊に内
腔表面に関する上記の如き課題に対応するため、多種多
様なカテーテルチューブの開発が試みられているが、内
層樹脂層の構成材料として、フッ素樹脂特にＰＴＦＥ樹
脂を用いる例が多い。内層樹脂層にＰＴＦＥ樹脂を用い
たカテーテルチューブは、治療あるいは診察に用いる器
具や薬品等の内腔通過が短時間的には容易なる点で効果
がもたらされる。この場合、造影剤を配合したり、強度
や先端の加工性を維持するために、外層樹脂層の構成材
料としては、ポリアミドやポリウレタン樹脂等が用いら
れ、又、カテーテルの外径を小さくし、且つ内層樹脂層
の内腔内径を大きくするためには、ＰＴＦＥ樹脂から成
る内層樹脂層を極めて薄く形成することが要求される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ＰＴＦ
Ｅ樹脂の表面エネルギーは非常に低く、非粘着性である
ため、ＰＴＦＥ樹脂から成る内層樹脂層と、その上に設
けられた外層樹脂層あるいはこれと金属線から成る補強
（補強材、補強層）との接着が非常に困難であって、剥
離してしまうという問題があった。

【０００７】従来において、かかる難接着、剥離発生の
問題に対して、内層樹脂層の外周に接着剤を塗付してか
ら外層樹脂層を施す方法、あるいは、ＰＴＦＥ樹脂から
成る内部樹脂層の外表面を化学薬品を用いて処理し、改
質する方法等が試みられて来た。しかしながら、前者の
方法の場合には、接着剤を塗付してから外層を押出成形
等することが必要となるので、カテーテル製造の工数が
増え、作業性が低下する上に、接着剤の生体に対する安
全性の問題とともに、接着剤の経時的な劣化や接着力の
安定性欠如及び接着剤による内層の肉厚化の問題が有
り、後者の方法の場合には、改質用の化学薬品の人体に
対する安全性の問題とともに、作業中の危険が不可避的
であって、課題の解決に至らなかった。

【０００８】そこで、本発明はこのような課題を有効に
解決するために案出されたものである。

【０００９】本発明の目的は、外層樹脂層あるいはこれ
と金属線を用いた補強（補強材、補強層）に対する接着
性が付与されたＰＴＦＥ樹脂から成る内層樹脂層を有す
る操作性に優れたカテーテルチューブ及びその製造方法
を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明は、内層樹脂層及び上記内層樹脂層上に形成さ
れた外層樹脂層を具備するか、あるいは内層樹脂層、上
記内層樹脂層上に施された金属線で構成された補強層及
び上記補強層上に形成された外層樹脂層を具備するカテ
ーテルチューブにおいて、上記内層樹脂層をＰＴＦＥ樹
脂によって構成し、且つ、上記ＰＴＦＥ樹脂で構成され
た上記内層樹脂層の外周表面を放射線照射することによ
って、内層樹脂層の外周側と外層樹脂層あるいはこれと
金属線で構成された補強層との接着性が向上した内層樹
脂層とする。

【００１１】同様に、本発明のカテーテルチューブの製
造方法は、内層樹脂層を形成する工程及び上記内層樹脂
層上に外層樹脂層を形成する工程を有するか、あるい
は、内層樹脂層を形成する工程、上記内層樹脂層上に金
属線を用いて補強を施す工程及び上記内層樹脂層と上記
補強の上に外層樹脂層を設けて一体となった構成とする
工程を有するカテーテルチューブの製造方法において、
上記内層樹脂層を形成する工程において上記内層樹脂層
をＰＴＦＥ樹脂で構成する如くにし、且つＰＴＦＥ樹脂
で構成された上記内層樹脂層の外表面を放射線照射する
ステップを設ける如くにする。

【００１２】本発明の方法は、例えば、内層樹脂層を形
成する工程において、金属線（心線）とその上に形成さ
れたＰＴＦＥ樹脂層から成る金属線が挿入された状態の
ＰＴＦＥ樹脂製内層もしくはチューブ状に形成されたＰ
ＴＦＥ樹脂に放射線を照射することでＰＴＦＥ樹脂表面
を改質し、内層樹脂層の内面、即ちＰＴＦＥ樹脂チュー
ブの内腔面の潤滑性を損なうことなくその外表面の非接
着性のみを接着性に改質して、外層樹脂層と、あるい
は、これと金属線から成る補強との接着性を飛躍的に高
めることを可能とする。

【００１３】上記金属線（心線）は、銅、アルミニウ
ム、鉄、銀、白金、金等のいずれでもよく、又、これ等
の合金、さらに又、これ等に錫、亜鉛等を加えた合金で
あってもよい。また、金属導体（金属線、心線）はチュ
ーブ内面の平滑性の観点から単線が好ましいが、必要に
応じて撚線でもよく、素線ごと、あるいは一括メッキし
た物でもよい。

【００１４】本発明における放射線照射としては、電子
線、Ｘ線等のＰＴＦＥ樹脂に照射することによりＰＴＦ
Ｅ樹脂にラジカルを発生しうるものであれば良く、これ
を特に規定しない。

【００１５】上記の如き外層樹脂層の構成材料として
は、ポリアミド（ナイロン等）、ポリアミドエラストマ
（ナイロン系エラストマ等）等の医療用器具に用いるこ
との出来る樹脂であれば特にこれを規定しないが、好適
実施例としては、ポリアミドエラストマの使用が挙げら
れる。

【００１６】

【発明の実施の形態】本発明によるカテーテルチューブ
の製造の一形態は、所望の直径を有する金属線（心
線）、例えば銀メッキ銅線上に、ＰＴＦＥ樹脂の分散体
から成るＰＴＦＥ樹脂分散塗料を塗付し、次いで焼付け
るステップを繰返して所望厚のＰＴＦＥ樹脂から成る内
層樹脂層を形成し、得られる金属線及び内層樹脂層から
成る被覆体を放射線照射、例えば電子線照射して、その
表面にラジカルを発生させ、外層樹脂層あるいはこれと
必要に応じて施される金属線を用い補強（補強材、補強
層）に対する接着性を付与する如くに改質し、次いで、
必要に応じて金属線（補強用金属線）、例えばＳＵＳ素
線を用いて補強を施し、又は施すことなく、外層樹脂層
を、例えば造影剤等を含有し、あるいは含有しないポリ
アミド系樹脂乃至樹脂組成物を所望の外径となる如くに
押出し被覆して形成し、得られた外層被覆体から金属線
（心線）を除去してチューブ体とすることによって実施
される。

【００１７】上記の如きＰＴＦＥ樹脂分散体乃至分散液
としては、その分散媒が水である如き分散体乃至分散液
あるいは、有機溶媒である如き分散体乃至分散液が含ま
れる。又、かかる分散体乃至分散液は、必要に応じて分
散剤、安定剤等の添加剤を含んでいても良い。

【００１８】又、上記の如きポリアミド系樹脂として
は、ナイロン１２、ナイロン１１、ナイロン６１０、ナ
イロン６１２、ナイロン６等のポリアミド樹脂、ポリエ
ーテルブロックアミド等のポリアミドエラストマあるい
はこれ等の混合物を用いることが出来る。

【００１９】

【実施例】以下、本発明の具体的実施例を比較例と対比
して説明する。

【００２０】実施例及び比較例中に得られる金属線（心
線）を除去する前の、外層樹脂層及び内層樹脂層によっ
て被覆された金属線（心線）から成る被覆体を試料とし
て、引抜き試験により、内層ＰＴＦＥ樹脂外表面と外層
樹脂層内表面の間の密着力を測定して比較評価した。

【００２１】（実施例１）０．８５ｍｍの銀メッキ軟銅
線にＰＴＦＥ分散液の塗付・焼付を３回行うことで３０
μｍの被覆を行い、その後に線速１００ｍ／分、酸素濃
度９０％以上、室温で５ＭＲａｄの電子線を照射し、こ
の上にポリアミドエラストマを３００μｍの厚さで押出
し、外径１．５ｍｍのチューブを得た。

【００２２】（比較例１）０．８５ｍｍの銀メッキ軟銅
線にＰＴＦＥ分散液の塗付・焼付を３回行うことで３０
μｍの被覆を行い、この上にポリアミドエラストマを３
００μｍの厚さで押出し、外径１．５ｍｍのチューブを
得た。

【００２３】（密着力評価）図１に示されるジグを用い
て密着力評価を行った。

【００２４】実施例１及び比較例１中で得られる夫々１
０ｃｍの、金属線（心線）引抜き前の被覆体を試料と
し、先ず５ｃｍの外層樹脂層（外層被覆）を剥し、図１
の如き構成のジグ装置を用いて、密着力を測定した。

【００２５】グリップ１により、外層樹脂層を剥がして
成るＰＴＦＥ樹脂層を被覆された金属線２の頭部を固定
し、ジグ３により、ＰＴＦＥ樹脂層に圧力を加えずに外
層樹脂層（外層被覆）を剥されていない試料部分４か
ら、上記の外層樹脂層（外層被覆）を剥した試料部分
（ＰＴＦＥ樹脂層を被覆された金属線）２を引抜く際の
荷重を測定し、以って密着力とした。測定結果は、下記
の如くであった。

【００２６】実施例１の密着力：１．８５ｋｇ。但し、
この荷重で金属線とＰＴＦＥ層が剥離し、これ以上の荷
重は不可能であった。

【００２７】比較例１の密着力：０．３５ｋｇ。

【００２８】上記の如き実施例１及び比較例１の密着力
の比較によって明らかな如く、放射線照射されたＰＴＦ
Ｅ樹脂層の密着力は顕著に増大し、本発明の実施例にお
ける内層ＰＴＦＥ樹脂層と外層樹脂層とは優れた密着性
を示し、所期の目的が達せられた。

【００２９】

【発明の効果】以上要するに本発明によれば、内層樹脂
層としてその外表面の接着性、密着性が付与されたＰＴ
ＦＥ樹脂層を有し、これによって、内層樹脂層及びその
上の外層樹脂層等との接着性、密着性が優れたカテーテ
ル及びその製造方法が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】引抜き試験装置の概略説明図である。

【符号の説明】

１ ＰＴＦＥ樹脂層を被覆された金属線固定グリップ ２ ＰＴＦＥ樹脂層を被覆された金属線（試料の部分） ３ 引抜きジグ ４ ２の上に外層樹脂層を被覆された金属線（試料の部
分）

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内層樹脂層及び上記内層樹脂層上に形成
   された外層樹脂層を具備するか、あるいは内層樹脂層、
   上記内層樹脂層上に施された金属線で構成された補強層
   及び上記補強層上に形成された外層樹脂層を具備するカ
   テーテルチューブにおいて、上記内層樹脂層がＰＴＦＥ
   樹脂によって構成され、且つ上記ＰＴＦＥ樹脂で構成さ
   れた上記内層樹脂層の外周表面が放射線照射されている
   ことを特徴とするカテーテルチューブ。
2. 【請求項２】 内層樹脂層を形成する工程及び上記内層
   樹脂層上に外層樹脂層を形成する工程を有するか、ある
   いは、内層樹脂層を形成する工程、上記内層樹脂層上に
   金属線を用いて補強を施す工程及び上記内層樹脂層と上
   記補強の上に外層樹脂層を設けて一体となった構成とす
   る工程を有するカテーテルチューブの製造方法におい
   て、上記内層樹脂層を形成する工程において上記内層樹
   脂層がＰＴＦＥ樹脂で構成される如くにされ、且つＰＴ
   ＦＥ樹脂で構成された上記内層樹脂層の外表面を放射線
   照射するステップを有せしめられることを特徴とするカ
   テーテルチューブの製造方法。