JP2000312830A - 光触媒複合材およびその製造方法 - Google Patents

光触媒複合材およびその製造方法

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JP2000312830A
JP2000312830A JP11122642A JP12264299A JP2000312830A JP 2000312830 A JP2000312830 A JP 2000312830A JP 11122642 A JP11122642 A JP 11122642A JP 12264299 A JP12264299 A JP 12264299A JP 2000312830 A JP2000312830 A JP 2000312830A
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layer
oxide
aluminum
metal oxide
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JP11122642A
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English (en)
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Yasuhiro Masaki
康浩 正木
Tadashi Yao
正 矢尾
Haruhiko Kajimura
治彦 梶村
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】光触媒活性が損なわれず、その光触媒が本来有
している活性が十分に発揮される光触媒複合材、および
その製造方法を提供する。 【解決手段】アルミニウムまたはアルミニウムを含有す
る金属からなる基材1と光触媒層2の間に、光触媒層か
ら基材方向への酸素の拡散を抑止する金属酸化物層3を
有する光触媒複合材。金属酸化物層は、基材に酸化処理
を施すことによって形成されたアルミニウム酸化物であ
ってもよい。この光触媒複合材は、基材表面に、金属酸
化物の微粒子を含むゾル液を塗布し、または金属酸化物
の前駆物質を含む溶液を塗布し、焼成して金属酸化物層
を形成させた後、その表面に光触媒層を形成させること
により製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒複合材とそ
の製造方法に関し、特に、光の照射によって、前記複合
材表面への付着物質の分解、脱臭、抗菌、有害物質の分
解等の機能を発現する光触媒複合材およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体に光が照射されると、その照射面
に強い還元作用をもつ電子と、強い酸化作用をもつ正孔
が生じる。このような状態の半導体の表面に有害物質等
が接触すると、その物質は半導体の強い酸化還元作用を
受けて分解される。
【0003】最近、このような半導体の光触媒作用を、
空気中や水中に含まれる有害物質の分解や無害化、生活
空間等における防臭、防汚、殺菌等、様々な環境浄化に
利用する技術の開発が精力的に進められている。このよ
うな目的に使用される半導体光触媒(以下、単に光触媒
という)には、比較的高い光触媒活性を有し、安全性に
優れ、また化学的にも安定な酸化チタン(TiO2 )が
最も多用されている。
【0004】光触媒を上述の環境浄化に適用する場合に
は、酸化チタンなどの光触媒を金属、ガラス、セラミッ
クス等の材料からなる基材の表面に薄膜状に固定した状
態で使用するのが一般的である。
【0005】光触媒を基材へ固定化するには、主とし
て、1)光触媒粒子を結着剤を用いて基材に塗布した
後、200℃以下の比較的低温で焼成する方法と、2)
光触媒の前駆体物質を基材に塗布した後、300℃以上
の比較的高温で焼き付ける、いわゆるゾルゲル法などの
方法が用いられている。
【0006】従来、ステンレス鋼などの金属やガラス等
の基材に光触媒をゾルゲル法などの方法によって高温で
焼き付けする場合、基材から、不純物元素(例えば、ス
テンレス鋼では、クロムや鉄、ガラスなどでは、ナトリ
ウム)が光触媒に拡散し、光触媒活性を低下させること
があった。そのため、光触媒と基材の間にバリア層を設
ける方法が採られてきた(例えば、特開平9−3101
85号公報)。
【0007】一方、アルミニウム系の基材については、
軟化点、融点が低いため、結着剤を利用するものがほと
んどであり(例えば、特開平9−59041号、特開平
10−216528号の各公報)、500℃以上の高温
で焼き付けることはなく、したがって、不純物元素の光
触媒への拡散が問題になることはなかったが、上記のゾ
ルゲル法等を適用することができれば、より優れた光触
媒活性を有し、かつ強度の高い光触媒層を形成させるこ
とが可能となる。しかしながら、ゾルゲル法によってア
ルミニウム基材表面に酸化チタン等の光触媒を固定させ
ると、石英ガラス上に固定させた場合に比べ、光触媒活
性が低下することがあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アルミニウ
ムまたはアルミニウムを含有する金属を基材としてそれ
に光触媒を固定させた光触媒複合材であって、光触媒活
性が損なわれず十分に発揮される光触媒複合材、および
その製造方法を提供することを課題としてなされたもの
である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)および(2)の光触媒複合材、ならびに(3)お
よび(4)のその製造方法にある。
【0010】(1)アルミニウムまたはアルミニウムを
含有する金属からなる基材と光触媒層の間に、光触媒層
から基材方向への酸素の拡散を抑止する金属酸化物層を
有する光触媒複合材。
【0011】(2)基材がアルミニウムを主成分とする
金属であり、金属酸化物層が前記基材に酸化処理を施す
ことによって形成されたアルミニウム酸化物からなる層
である上記(1)に記載の光触媒複合材。
【0012】(3)基材表面に、金属酸化物の微粒子を
含むゾル液を塗布し、または、金属酸化物の前駆物質を
含む溶液もしくはこの溶液に加水分解処理を施したもの
を塗布し、焼成して金属酸化物層を形成させた後、その
表面に光触媒層を形成させる上記(1)に記載の光触媒
複合材の製造方法。
【0013】(4)基材に下記式を満たす条件下で酸
化処理を施して金属酸化物層を形成させた後、その表面
に光触媒層を形成させる上記(2)に記載の光触媒複合
材の製造方法。
【0014】 T>590t-0.06 ・・・ ここで、T:酸化処理温度(K) t:処理時間(s) 上記(1)の光触媒複合材において、金属酸化物層が、
酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウムおよび
酸化マグネシウムのうちの1種以上の酸化物からなる層
であれば、光触媒層の光触媒性能をより効果的に発揮さ
せることができる。また、金属酸化物層が、その酸化物
の最安定構造の化学式を基準として酸素欠損割合が20
%以下の酸化物からなる層であれば、光触媒性能の低下
を抑えることができる。
【0015】本発明者らは、前述した課題を解決するた
め研究を重ねた結果、ゾルゲル法などによってアルミニ
ウムまたはアルミニウムを含有する金属からなる基材上
に酸化チタン等の光触媒層を直接形成させようとする
と、高温での焼成の際、アルミニウムの還元作用によっ
て酸化チタンが還元(脱酸素)され、基材上に形成させ
た層は光触媒活性が極めて低い酸素欠陥構造となること
を知見した。なお、従来から、金属酸化物が溶融状態あ
るいは粉末の状態にある場合はそれがアルミニウムによ
り還元されることはよく知られていたが、上記のように
薄膜の状態にある金属酸化物にアルミニウムの還元作用
が及ぶということはあまり知られていなかった。
【0016】これは、アルミナの生成エネルギーが酸化
チタンのそれよりも低いことによるものである。すなわ
ち、光触媒活性の低下は、前述したステンレス鋼などの
金属やガラス等からなる基材の場合は、不純物元素の基
材から光触媒への拡散によるのに対して、アルミニウム
またはアルミニウム含有金属からなる基材の場合は、ア
ルミニウムの脱酸素性に基づく光触媒から基材への酸素
の拡散によるものである。
【0017】さらに、この光触媒層から基材への酸素の
拡散は、アルミニウムまたはアルミニウム含有金属から
なる基材と光触媒層の間に、酸素の拡散を抑止する金属
酸化物からなる層を設けることにより阻止することがで
き、優れた光触媒作用を有する光触媒複合材を提供でき
ることを知見した。
【0018】上記本発明は、これらの知見に基づきなさ
れたものである。
【0019】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の光触媒複合体お
よびその製造方法について説明する。
【0020】図1は、本発明の光触媒複合体の構成を模
式的に示す断面図である。図示するように、この光触媒
複合体は基材1と光触媒層2の間に光触媒層2から基材
1への酸素の拡散を抑止する金属酸化物層3が設けられ
ている。
【0021】(a)基材 基材としては、アルミニウムまたはアルミニウムを含有
する金属を使用することができる。アルミニウムとは、
製造中に不可避的に混入する極微量の不純物を含む程度
の純アルミニウムを言い、アルミニウムを含有する金属
とは、アルミニウム合金、およびアルミニウムを合金元
素として含有する各種の金属材料を意味する。アルミニ
ウム合金としては、JIS H4000に規定される合
金番号1000番台から7000番台のもの、および5
N01、7N01等の種々の合金を用いることができ
る。また、アルミニウムを合金元素として含有する金属
材料としては、例えば、ステンレス鋼でもよいし、ニッ
ケル、銅、チタン等であってもよい。なお、この場合の
アルミニウムの望ましい含有量の下限は、0.2重量%
(以下、単に「%」と記す)である。
【0022】ただし、上記(2)に記載した光触媒複合
材にあっては、アルミニウムまたはアルミニウムを含有
する金属のうちアルミニウムを主成分とするものを使用
する。アルミニウムを主成分とするものとは、アルミニ
ウムを50%以上含有するものである。アルミニウムの
含有量が50%未満では、酸化処理により酸素の拡散を
効果的に抑止する金属酸化物層が形成されにくいからで
ある。好ましくは90%以上、より好ましくは95%以
上である。具体的には、純アルミニウムや、前記の合金
番号1000番台から7000番台のもの、および5N
01、7N01等の種々の合金を用いることができる。
【0023】基材の形状は、用途などに応じて決めるの
がよい。厚板、薄板等の板状や、箔状、ビーズのような
球状、網状、フィン状、さらには、そのまま製品として
使用される複雑な形状であってもよい。また、より効果
的な光触媒作用を得るために、光触媒複合材を製造した
後、任意の形に成形してもよい。板などの基材の厚さに
ついては何ら制限はない。また、基材の表面は、多孔質
でも緻密質でもよい。
【0024】(b)金属酸化物層 金属酸化物層は、光触媒層から基材方向への酸素の拡散
を抑止する役割を担う。
【0025】前述したように、通常、アルミニウム基材
に酸化チタンなどの光触媒層を形成させようとしても、
高温で焼成する際、アルミニウムの還元作用によって、
酸素が酸化チタンなどの光触媒から基材へ拡散し、光触
媒には多数の酸素欠陥が生じるため、光触媒の活性が低
下する。基材上に光触媒層を形成させた後、室内に放置
した状態等でも少しづつ酸素が拡散し、活性が徐々に低
下する場合もある。特に、ゾルゲル法などにより光触媒
層を形成させる場合、300℃以上の比較的高温での焼
成が必要となるため、その活性の低下は顕著である。こ
のため、基材と光触媒層の間に金属酸化物層を設けて酸
素の拡散を阻止し、光触媒の活性の低下を防いで本来の
光触媒性能を発揮させるのである。
【0026】金属酸化物層を構成する金属酸化物として
は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、
酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化銅、
酸化鉄等が利用できる。これらの金属酸化物が重量比率
で50%以上含まれていれば酸素拡散の阻止効果がみら
れるが、金属酸化物のみで構成される金属酸化物層がよ
り好ましい。
【0027】光触媒層の光触媒性能をより効果的に発揮
させるには、金属酸化物として、酸化アルミニウム、酸
化珪素、酸化ジルコニウムおよび酸化マグネシウムのう
ちの1種、または2種以上を主成分とするものが好まし
い。2種以上の場合は、それらが単に混合したものでも
よいし、例えば、アルミノシリケートのような複合酸化
物が少なくとも一部含有されたものでもよい。
【0028】金属酸化物の形態は、非晶質でも結晶質で
もよいし、これらが混在したものでもよい。その結晶形
態も、どのようなものであってもよい。また、水酸化物
でもよいし、結晶水が大部分除去された酸化物でもよ
い。例えば、アルミニウム酸化物の場合は、AlOOH
やAl23 のいずれであってもよい。また、次に述べ
るように、上記の金属酸化物層が、その酸化物の最安定
構造(酸素の欠損のない構造をいう)の化学式を基準と
して酸素欠損割合が20%以下の酸化物からなる層であ
れば、金属酸化物層の上に形成される光触媒層の光触媒
性能の低下を抑え、その性能をより効果的に発揮させる
ことができる。
【0029】基材表面に金属酸化物層が形成される際、
焼成中に、基材に含まれる脱酸素性の強いアルミニウム
やマグネシウム等の影響や、酸素が十分供給されなかっ
たこと等により金属酸化物自体が酸素の欠損した酸素欠
陥型になることがあり、酸素欠損割合が高いと、その上
に光触媒層を形成させても、光触媒層から金属酸化物層
への酸素の拡散が起こって光触媒性能が低下する傾向が
認められる。この場合、酸素欠損割合が金属酸化物の最
安定構造の化学式を基準として20%以下であれば、金
属酸化物層の上に光触媒層を形成させても光触媒層から
金属酸化物層への(すなわち、基材方向への)酸素の拡
散が起こりにくく、高い光触媒活性を保持することがで
きるので、好ましい。
【0030】酸素欠損割合が20%以下の金属酸化物と
しては、例えば、金属酸化物が酸化アルミニウムの場
合、Al(3-y) (yは0.6以下)であり、金属
酸化物が珪素酸化物、ジルコニウム酸化物、マグネシウ
ム酸化物の場合は、それぞれSiO(2-z) (zが0.4
以下)、ZrO(2-v) (vが0.4以下)、MgO
(1-w)(wが0.2以下)であればよい。なお、これら
の金属酸化物の酸素欠損割合は、蛍光X線法や二次イオ
ン質量分析法などの元素分析法、光電子分光分析法(E
SCA)やオージェ分光法など表面分析法などの方法に
より知ることができる。
【0031】金属酸化物層は、それがアルミニウム酸化
物からなる層であるときは、前記のアルミニウムを主成
分とする基材に後述する酸化処理を施すことによって形
成されたアルミニウム酸化物であってもよい。このよう
にして得られたアルミニウムの酸化物は、基材そのもの
が酸化され酸化物層を形成しているので、基材への密着
性が極めてよく、剥離やピンホールなどの欠陥のない酸
化物層となっており、その上に光触媒層を形成させた
後、曲げ加工を施しても剥がれたりすることがない。
【0032】この場合、アルミニウム酸化物層の厚さ
は、光触媒層から基材方向への酸素の拡散を効果的に阻
止できるように、2nm以上であるのが好ましい。厚さ
の上限は特に規定しないが、厚すぎると、加工の際、ア
ルミニウム酸化物層の基材からの剥離やクラックなどが
生じやすくなり、また経済的にも不利になるので、10
μm以下が好ましい。より好ましくは、2.0nmから
5.0μmであり、更に好ましくは、5.0nmから
2.0μmである。
【0033】(c)光触媒層 光触媒層を形成する光触媒については、酸化チタン、酸
化亜鉛、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化
鉄、酸化ビスマスなどの公知の半導体光触媒を単独でま
たは2種類以上を組み合わせて用いることができる。ま
た、前記の光触媒を光触媒作用を持たない物質、例えば
シリカ、アルミナ、ゼオライトなどの物質上に担持させ
たものでもよい。
【0034】酸化チタンは、活性が比較的高く、安全性
にも優れ、入手も容易であることから、光触媒層を形成
する光触媒として好ましい。酸化チタンの形態として
は、非晶質、結晶質のいずれでもよく、これらが混合し
たものでもよい。また、結晶質の場合は、アナターゼ
型、ルチル型、あるいはそれらが混在したもののいずれ
であってもよい。
【0035】さらに活性の高い光触媒複合材を得るに
は、ジルコニウム酸化物、珪素酸化物およびアルミニウ
ム酸化物のいずれかまたは2種類以上を含有するチタン
系酸化物を用いるとよい。このチタン系酸化物は、ジル
コニウム、珪素、アルミニウムの酸化物の所定量を酸化
チタン中に含むもので、その形態は各々の酸化物と酸化
チタンが混合したものであってもよいし、各々の酸化物
と酸化チタンが反応して形成された複合酸化物が少なく
とも部分的に含有されたものでもよい。この際、母体と
なる酸化チタンの結晶形態は非晶質であってもよいし、
結晶質であってもよい。また、含有される金属酸化物
や、複合酸化物についても、その結晶形態は非晶質、結
晶質のいずれであってもよい。
【0036】前述の光触媒層を形成する光触媒には、そ
の内部および/または表面に、V、Fe、Zn、Ru、
Rh、Pt、Ag、PdおよびCuのうちの少なくとも
1種の金属および/または金属化合物を含有させること
もできる。これらの成分を含有させることにより光触媒
性能はさらに高められ、また、光触媒にこれらの成分自
体の機能(例えば、Zn、Ag、Cuでは抗菌性)を付
与することができる。なお、前記の金属化合物として
は、例えば、金属の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化
物、硝酸塩、ハロゲン塩等が挙げられる。
【0037】光触媒層の厚さは、20nm〜5.0μm
が好ましい。厚さが20nm未満の場合には、十分な光
触媒活性が得られず、逆に厚さが5.0μmを超えると
光触媒層にクラックが生じたり剥離を起こすことがあ
る。層厚が上記の範囲内であれば、高い光触媒活性を示
し、割れ、剥離などの少ない良好な光触媒複合材を容易
に製造することができる。
【0038】(d)光触媒複合材の製造方法 上述した光触媒複合材は、基材表面に金属酸化物の微粒
子を含むゾル液を塗布し、焼成して金属酸化物層を形成
させた後、その表面に光触媒層を形成させることによっ
て製造することができる。基材表面に金属酸化物の前駆
物質を含む溶液を塗布し、または前記の前駆物質を含む
溶液に加水分解処理を施した後、それを塗布し、焼成す
る、いわゆるゾルゲル法により金属酸化物層を形成さ
せ、その表面に光触媒層を形成させることによって製造
する方法を用いてもよい。なお、前記の金属酸化物の前
駆物質としては、例えば、その酸化物を構成する金属を
含む有機金属などを用いればよい。
【0039】まず、金属酸化物層の形成方法について述
べる。
【0040】金属酸化物層を形成する際の、金属酸化物
の微粒子を含むゾル液、または金属酸化物の前駆物質を
含む溶液もしくはその溶液に加水分解処理を施したもの
の塗布方法としては、スピンコーティング、ディップコ
ーティング、スプレーコーティング、バーコーティン
グ、ロールコーティング、あるいはスプレー吹き付け等
の方法が挙げられる。いずれの方法を採用するかは、塗
布液の性状を考慮し、基材の形状に合わせて決定すれば
よい。
【0041】焼成温度については、塗布液の特性、金属
酸化物の形態等に合わせて決めればよいが、アルミニウ
ムまたはアルミニウムを含有する金属からなる基材が軟
化したり、熔解したりしない温度を上限とする必要があ
る。
【0042】上記の方法の他、さらにCVDやスパッタ
リング等の方法を利用してもよい。
【0043】一方、金属酸化物層が、アルミニウムを主
成分とする基材に酸化処理を施すことによって形成され
たアルミニウム酸化物からなる層であるときは、基材に
下記式を満たす条件下で酸化処理を施して金属酸化物
層を形成させた後、その表面に光触媒層を形成させるこ
とによって製造する。
【0044】 T>590t-0.06 ・・・ ここで、T:酸化処理温度(K) t:処理時間(s) 式は、後述する実施例4の酸化処理試験の結果に基づ
いて導き出されたものである。
【0045】この酸化処理を行うときの雰囲気の酸素分
圧は、40kPa〜5kPaとするのが好ましい。この
範囲内では、酸化処理条件を設定するに当たって上記
式を適用することができ、また、酸化処理雰囲気の調整
も比較的容易である。酸素分圧が40kPaを超える場
合は、酸素の供給のためにコストが嵩み、一方、5kP
aよりも低いと、十分な厚さの金属酸化物層を得るため
に高温かつ長時間の処理が必要となり、いずれも経済上
不利である。
【0046】この酸化処理によりアルミニウム酸化物を
形成する方法によれば、金属酸化物層の塗布過程を省略
することができるので、製造上有利である。
【0047】なお、基材を陽極酸化してアルミナ被膜を
形成させて金属酸化物層とする方法を採ってもよい。陽
極酸化によるアルミナ被膜は酸化アルミニウムの微細孔
を多数有する多孔質の層となるので、その上に形成させ
る光触媒層との密着性がよく、表面積の増大による光触
媒活性の向上が見込める。
【0048】次に、光触媒層の形成方法について述べ
る。
【0049】光触媒層の形成は、上記のように形成させ
た金属酸化物層の上に、有機金属などの光触媒の前駆体
物質を溶かした溶液を、必要に応じて部分的に加水分解
などの操作を施して塗布した後、焼成する、いわゆるゾ
ルゲル法で行ってもよいし、光触媒の前駆体物質を含む
懸濁液を塗布した後、焼成する方法や、CVDやスパッ
タリング等の方法を利用してもよい。
【0050】その中でも、300℃以上の高温で焼き付
けを行うゾルゲル法を用いるのが最も好ましい。光触媒
活性および光触媒層の強度の大きい光触媒を提供できる
からである。光触媒が酸化チタン系の場合は、それに加
え、透明性に優れた光触媒を提供できる。また、酸化チ
タンの塗布液には一般に触媒として塩酸、硝酸などの酸
が含まれるが、これを塗布して300℃以下の低温で焼
成すると、酸が光触媒中に残留するため基材が腐食し、
外観が損なわれるばかりでなく、光触媒層自体の密着
性、さらには光触媒性能が低下する。300℃以上の高
温で焼き付けを行うゾルゲル法では、酸が揮散、消失す
るので、長期にわたり健全な状態を維持できる。
【0051】特に、前記のアルミニウムを主成分とする
基材に酸化処理を施すことによって形成されたアルミニ
ウム酸化物からなる層の上に上述したゾルゲル法を用い
て光触媒層を形成させた光触媒複合材は、基材と金属酸
化物層との密着性が極めてよい上に、光触媒活性が高
く、優れた複合材である。
【0052】なお、ゾルゲル法によって酸化チタンのみ
で光触媒層を形成する場合は、アルコール等の溶媒中
に、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド等のチ
タンアルコキシド、硫酸チタン、四塩化チタン、チタン
アセチルアセトネート等の前駆体物質を加え、必要に応
じて少量の酸、水を加え、加水分解処理を施して得られ
るゾル液を用いればよい。
【0053】塗布方法については、スピンコーティン
グ、ディップコーティング、スプレーコーティング、バ
ーコーティング、ロールコーティング、あるいはスプレ
ー吹き付け等の方法があり、いずれの方法を用いるか
は、塗布液の性状、基材の形状に合わせて決定すればよ
い。
【0054】焼成温度は、塗布液の特性、金属酸化物の
形態に合わせて決めればよいが、基材が軟化したり、熔
解したりしない温度を上限とする必要がある。
【0055】上述した本発明の光触媒複合材は、光触媒
層を形成する光触媒のバンドギャップより高いエネルギ
ーの光が照射されると光触媒作用を発現し、様々な有害
物質、付着物質などの分解、除去、無害化などに優れた
効果を発揮する。前記の有害物質には、NOx 、SO
x 、フロン、アンモニア、硫化水素などの大気中に含ま
れるガスや、アルデヒド類、アミン類、メルカプタン
類、アルコール類、BTX(ベンゼン、トルエン、キシ
レン)、フェノール類等の有機化合物、トリハロメタ
ン、トリクロロエチレン、フロン等の有機ハロゲン化合
物、除草剤、殺菌剤、殺虫剤等の種々の農薬、蛋白質や
アミノ酸等の種々の生物学的酸素要求物質、界面活性剤
のほか、シアン化合物、硫黄化合物等の無機化合物、種
々の重金属イオン、さらには細菌、放線菌、菌類、藻類
等の微生物、および上記物質のうち水中に含まれるもの
が挙げられる。
【0056】付着物質には、光触媒複合材の表面に直接
付着するものが対象となり、例えば、大腸菌、ブドウ球
菌、緑濃菌、カビ等の菌類、油、タバコのヤニ、指紋、
雨筋、泥などがある。
【0057】光触媒複合材に照射される光としては、太
陽光や、蛍光灯、ブラックライト、水銀灯、キセノン灯
などからの光が利用できる。光の照射量や照射時間など
は、処理する対象の物質の量などによって最適な条件を
選択するのがよい。
【0058】
【実施例】(実施例1)本発明の光触媒複合材5種類
(試験No.1〜試験No.5)および比較のための複
合材2種類(試験No.6および試験No.7)を以下
の条件で製造した。
【0059】試験No.1:市販の高純度アルミニウム
板(ニラコ製:厚さ2mm、純度99.999%)を試
験材(基材)として、それにアルミナ微粒子ゾル(日産
化学製、固形分20重量%)にアルコールを同量加えて
調製した塗布液をディップ塗布した(引き上げ速度10
0mm/分)。次いで、100℃で30分間乾燥し、大
気雰囲気下450℃で20分間焼成することによって、
アルミニウム板にアルミナからなる金属酸化物層を形成
させた。このアルミニウム基材について、二次イオン質
量分析法(SIMS)による金属酸化物層の深さ分析を
行い、アルミナ層の厚さを測定した。なお、後述する他
の基材についても同様に金属酸化物層の厚さを測定し
た。
【0060】さらに、このアルミナ層を形成させたアル
ミニウム基材に、ゾルゲル法により、光触媒層(酸化チ
タン膜)を形成させた。すなわち、チタンテトラブトキ
シド10部をアルコール15部に溶かした溶液に、硝酸
0.4部、水1.0部とアルコール15部の混合液を滴
下して、酸化チタンゾル液を調製し、これを前記の基材
にディップ塗布し、110℃で30分間乾燥し、大気雰
囲気下450℃で20分間焼成することによって、アル
ミニウム基材と酸化チタン光触媒層の間にアルミナから
なる金属酸化物層を有する本発明の光触媒複合材を作製
した。
【0061】試験No.2:市販のアルミニウム合金板
(JIS H4000に規定されるA3003、厚さ
0.3mm)を試験材(基材)として、それを5%水酸
化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水洗し、続い
て5%硝酸溶液中で2分間浸漬した後、水洗し、真空下
で乾燥させた。この前処理を行ったアルミニウム合金基
材上に試験No.1に記載の方法で、アルミナおよび酸
化チタンをそれぞれ金属酸化物層および光触媒層として
形成させた。
【0062】試験No.3:試験No.2に記載の方法
で前処理したアルミニウム合金板(同上A3003、厚
さ0.3mm)を試験材(基材)として、酸素分圧20
KPaの気相雰囲気下、200℃で180分間酸化処理
を施し、基材表面にアルミナ層を形成させた。このアル
ミナ層を形成させた基材に試験No.1に記載の方法で
酸化チタン光触媒層を形成させた。
【0063】試験No.4:試験No.2に記載の方法
で前処理したアルミニウム合金板(同上A3003、厚
さ0.3mm)を試験材(基材)として、それに硝酸マ
グネシウム6水和物5部を水100部に溶解させた溶液
をディップ塗布した(引き上げ速度50mm/分)。次
いで、100℃で30分間乾燥した後、大気雰囲気下5
00℃で1時間焼成することによって、アルミニウム合
金基材上に酸化マグネシウムからなる金属酸化物層を形
成させた。続いて、この金属酸化物層を形成させた基材
に試験No.1に記載の方法で酸化チタン光触媒層を形
成させた。
【0064】試験No.5:試験No.1で用いた市販
の高純度アルミニウム板を試験材(基材)として、チタ
ンテトラブトキシド10部にジルコニウムイソプロポキ
シド0.4部を加える以外は試験No.1に記載の方法
と同じ方法で光触媒ゾル液を調製した。このゾル液を用
い、試験No.1に記載の方法で基材表面にアルミナ層
を形成させ、その上にさらに酸化ジルコニウムを含有す
る酸化チタン光触媒層を形成させた。
【0065】試験No.6:試験No.1で用いた市販
の高純度アルミニウム板を試験材(基材)として、アル
ミナ層の形成は行わず、それ以外は試験No.1に記載
の方法と同じ方法で、アルミニウム基材に直接光触媒層
を形成させた光触媒複合材を製造した。
【0066】試験No.7:試験No.2で用いた市販
のアルミニウム合金板を試験材(基材)として、アルミ
ナ層の形成は行わず、それ以外は試験No.2に記載の
方法と同じ方法で、アルミニウム合金基材上に直接光触
媒層を形成させた光触媒複合材を製造した。
【0067】上記の本発明の光触媒複合材(試験No.
1〜5)および比較のための複合材(試験No.6およ
び7)について、アセトアルデヒドの分解試験を行って
その光触媒性能を評価した。
【0068】アセトアルデヒドの分解試験は以下のよう
に行った。すなわち、上記各複合材から切り出した評価
用サンプル(50mm角)を石英製反応セルに入れ、閉
鎖循環ラインに接続した(合計内体積約1.0リット
ル)。空気で希釈したアセトアルデヒド(約120pp
m)を系内に導入し、循環させながら250Wの高圧水
銀灯から、UVフィルター(東芝製UV−31)を通し
て光照射を行った。このとき評価用サンプル表面のUV
強度は0.4mW/cm2 であった。濃度の定量はガス
クロマトグラフを用いて行った。光触媒性能は1時間後
のアセトアルデヒドの除去率により評価した。
【0069】表1に各複合材の構成(基材、金属酸化物
層および光触媒層)と光触媒性能評価試験の結果(アセ
トアルデヒドの除去率)を示す。
【0070】表1に示すように、本発明の光触媒複合材
(試験No.1〜5)では、いずれもアセトアルデヒド
の除去率は80%以上で、高い光触媒性能を示した。
【0071】一方、比較のための複合材(試験No.6
および7)では、アセトアルデヒドの除去率は40%以
下と不良であった。この原因は、アルミニウム基材また
はアルミニウム合金基材に酸素の拡散を抑止する金属酸
化物層を設けずに光触媒層を形成させると、光触媒層か
ら基材への酸素の拡散が起こるため、光触媒には多数の
酸素欠陥が生じ、光触媒活性が低下したことにある。
【0072】なお、酸化チタンの構造はTiO(2-x)
表されるが、比較例(試験No.6および7)の場合、
酸化チタン層は着色しており、xは1に近い構造となっ
ていた。一方、本発明の光触媒複合材(試験No.1〜
5)では、酸化チタン層は無色あるいは僅かに白色で、
xは0に極めて近く、通常の光触媒に用いられる酸化チ
タン構造(TiO2 )が維持されていた。
【0073】
【表1】
【0074】(実施例2)本発明の光触媒複合材(試験
No.8および試験No.9)を以下の条件で製造し
た。
【0075】試験No.8:市販のアルミニウム製網
(材質:JIS H4040に規定されるA5056、
mesh42)から試験材を切り出して基材とし、実施
例1の試験No.2と同様の方法で前処理を行った。こ
れを、アルミナ微粒子ゾル(日産化学製、固形分20重
量%)1部に対してアルコール3部を加えた塗布液に浸
漬し、引き上げた後、ブロワーで余分な塗布液を除去
し、100℃で20分間乾燥した後、450℃で20分
間焼成して、基材表面にアルミナ層を形成させた。この
焼成後の基材の一部について、オージェ分光法によりア
ルミナの組成分析を行った。
【0076】続いて、このアルミナ層を形成させた基材
に、実施例1の試験No.1に記載の酸化チタンゾル液
を同じ方法で塗布し、110℃で20分間乾燥した後、
450℃で20分間焼成して、酸化チタン光触媒層を形
成させ、光触媒複合材とした。
【0077】試験No.9:上記の試験No.8で用い
た市販のアルミニウム製網から試験材を切り出して基材
とし、アルミナ微粒子ゾルの塗布液に浸漬した後の焼成
を600℃で1時間とする以外は試験No.8に記載の
方法と同じ方法で、基材表面にアルミナ層、酸化チタン
光触媒層を順次形成させ、光触媒複合材とした。なお、
焼成後の基材の一部について、オージェ分光法によって
アルミナの組成分析を行った。
【0078】上記の本発明の光触媒複合材(試験No.
8および9)から光触媒活性評価用サンプル(60mm
角)を切り出し、実施例1と同様の方法でアセトアルデ
ヒドの分解試験を行ってその触媒性能を評価した。
【0079】表2に試験に供した複合材の構成(基材、
アルミナ層および光触媒層)とアセトアルデヒドの除去
率を示す。
【0080】アルミナ層の組成は、試験No.8ではA
22.89、試験No.9ではAl22.14であり、酸
素欠損割合はそれぞれ3.7%、28.6%であった。
【0081】光触媒性能については、試験No.8の光
触媒複合材は試験No.9のそれよりも高いアセトアル
デヒド除去率を示した。これは、酸素欠損割合が20%
を超えると、その上に形成される酸化チタン光触媒層か
らアルミナ層への酸素の拡散が起こりやすくなり、酸化
チタンの光触媒の性能が幾分低下したことによるもので
ある。この結果から、金属酸化物層は金属酸化物の酸素
欠損割合が20%以下の酸化物からなる層であるのが好
ましいといえる。なお、アセトアルデヒドの除去率が実
施例1に比べて相対的に低いのは、基材として網を用い
ているため受光面積が平板に比べると狭く、分解の効率
が悪かったことによるものである。
【0082】
【表2】
【0083】(実施例3)基材として、純度99.99
%の高純度アルミニウム板を用い、5%水酸化ナトリウ
ム水溶液でアルカリ洗浄し、5%硝酸水溶液で酸洗し、
よく水洗した。その後、酸素分圧20kPa(一部10
kPa)の気相中で、温度350Kで10000秒、5
00Kで100秒、または700Kで1000秒の酸化
処理を行った。なお、酸化処理後の基材の一部について
SIMSによる分析を行い、上記の処理で形成された酸
化物層の厚さを測定した。
【0084】次いで、酸化処理後の基材表面に以下に述
べるゾルゲル法により酸化チタン光触媒層を形成させ
た。すなわち、基材に、チタンブトキシドのアルコール
溶液に硝酸および水を少量加えた酸化チタンゾル液をデ
ィップコーティング法で塗布した後、823Kで30分
間保持して、その表面に酸化チタン光触媒層を形成させ
た。この光触媒層の厚さは150nmであった。
【0085】上記のように作製した光触媒複合材につい
て、メチレンブルーの分解試験を行ってその光触媒性能
を評価した。
【0086】メチレンブルーの分解試験は以下のように
行った。すなわち、上記の光触媒複合材から光触媒活性
評価用サンプル(8mm×40mm×2mm)を切り出
して基材とし、これをパイレックス製反応器に入れ、そ
れにメチレンブルー水溶液(メチレンブルー:8pp
m)を4cc加えて酸素を10分間吹き込み、蓋をした
後、500Wの超高圧水銀灯から光照射を行った。メチ
レンブルー濃度の定量は分光光度計を用いて波長530
nmでの吸光度を測定することにより行った。光触媒性
能は1時間後のメチレンブルーの分解率により評価し
た。
【0087】表3に、各試験材の酸化処理条件、酸素分
圧、アルミナ層厚およびメチレンブルーの分解率を示
す。なお、前記の式から求めた酸化処理温度Tも併せ
て示した。
【0088】表3に示すように、酸化処理を行わなかっ
た場合(試験No.10)、メチレンブルーの分解率は
極めて低かった。一方、酸化処理を行って基材表面にア
ルミナ層を形成させた場合(試験No.11〜14)
は、層厚の増加とともにメチレンブルーの分解率が上昇
し、特に、アルミナ層厚が2nm以上ではメチレンブル
ーの分解率が高かった。酸化処理により基材表面にアル
ミナ層を形成させる場合は、アルミナ層厚を2nm以上
とするのが好ましい。
【0089】
【表3】
【0090】(実施例4)基材として、アルミニウム合
金板(JIS H4000に規定されるA3003)を
用い、実施例3に記載の方法で前処理を施した後、酸素
分圧が20kPaの気相中で、温度300〜700Kで
20〜700000秒の酸化処理を行った。
【0091】次いで、この酸化処理した後の基材表面に
同じく実施例3に記載の方法で酸化チタン光触媒層を形
成させた。
【0092】このように作製した光触媒複合材につい
て、実施例3と同様の方法でメチレンブルーの分解試験
を行ってその触媒性能を評価した。
【0093】図2に、酸化処理条件と光触媒性能の関係
を示す。図中に示したように、メチレンブルーの分解率
が50%以上であれば良好(○印で表示)とした。本発
明例に該当する。
【0094】図示したように、処理温度が低く、短時間
の処理では十分なアルミナ層が形成されないため、メチ
レンブルーの分解率が20%に達せず、十分な光触媒性
能が発揮されなかった。一方、高温で長時間の処理を行
うとメチレンブルーの分解率は上昇した。その境界は、
処理温度をT(K)、処理時間をt(s)とすると、T
=590t-0.06 で表される。酸化処理温度がこの温度
よりも高ければ、基材表面に光触媒の性能が損なわれな
い十分な層厚をもったアルミナ層の形成が可能である。
【0095】
【発明の効果】本発明の光触媒複合材は、アルミニウム
またはアルミニウムを含有する金属を基材とし、光触媒
活性が損なわれず、その光触媒が本来有している光触媒
作用、すなわち、光触媒のバンドギャップより高いエネ
ルギーの光が照射されると、様々な有害物質、付着物質
などの分解、除去、無害化などに対する優れた光触媒作
用が十分に発揮される複合材である。この光触媒複合材
は、本発明の方法により容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光触媒複合体の構成を模式的に示す断
面図である。
【図2】基材の酸化処理条件と得られる光触媒複合材の
光触媒性能の関係を示す図である。
【符号の説明】
1:基材 2:光触媒層 3:金属酸化物層
フロントページの続き (72)発明者 梶村 治彦 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号住 友金属工業株式会社内 Fターム(参考) 4F100 AA17C AA20C AA27C AB10A AB31A BA03 BA07 BA10A BA10B EH46 EH462 GB07 JC00 JD02C JL08B JM01C YY00B 4G069 AA03 AA08 AA11 BA01A BA01B BA02A BA04A BA04B BA05A BA05B BA06A BA06B BA18 BA37 BA48A BB04A BC25A BC35A BC60A BC66A CA01 CA10 CA11 CA17 EA07 EA11 EB15Y EC22Y EC27 EC28 FA04 FB08 FB14 FB15 FB17 FB23 FB24 FB30 FB40 FC07

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウムまたはアルミニウムを含有す
    る金属からなる基材と光触媒層の間に、光触媒層から基
    材方向への酸素の拡散を抑止する金属酸化物層を有する
    ことを特徴とする光触媒複合材。
  2. 【請求項2】金属酸化物層が、酸化アルミニウム、酸化
    珪素、酸化ジルコニウムおよび酸化マグネシウムのうち
    の1種以上の酸化物からなる層である請求項1に記載の
    光触媒複合材。
  3. 【請求項3】金属酸化物層が、その酸化物の最安定構造
    の化学式を基準として酸素欠損割合が20%以下の酸化
    物からなる層である請求項1または2に記載の光触媒複
    合材。
  4. 【請求項4】基材がアルミニウムを主成分とする金属で
    あり、金属酸化物層が前記基材に酸化処理を施すことに
    よって形成されたアルミニウム酸化物からなる層である
    請求項1に記載の光触媒複合材。
  5. 【請求項5】基材表面に、金属酸化物の微粒子を含むゾ
    ル液を塗布し、または、金属酸化物の前駆物質を含む溶
    液もしくはこの溶液に加水分解処理を施したものを塗布
    し、焼成して金属酸化物層を形成させた後、その表面に
    光触媒層を形成させることを特徴とする請求項1に記載
    の光触媒複合材の製造方法。
  6. 【請求項6】基材に下記式を満たす条件下で酸化処理
    を施して金属酸化物層を形成させた後、その表面に光触
    媒層を形成させることを特徴とする請求項4に記載の光
    触媒複合材の製造方法。 T>590t-0.06 ・・・ ここで、T:酸化処理温度(K) t:処理時間(s)
  7. 【請求項7】金属酸化物層の表面に光触媒の前駆体物質
    を含む溶液またはこの溶液に加水分解処理を施したもの
    を塗布し、焼成することにより光触媒層を形成する請求
    項6に記載の光触媒複合材の製造方法。
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