JP3550947B2 - 光触媒多機能部材の製造方法および使用方法 - Google Patents

光触媒多機能部材の製造方法および使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化チタン光触媒の形成剤である酸化チタン光触媒用ゾルから光触媒作用を持つ多機能部材を製造する方法およびこの多機能部材の持つ光触媒作用を利用する多機能部材の使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体に光が照射されると、その照射面に強い還元作用を持つ電子と強い酸化作用を持つ正孔が生じる。物質がこのような状態の半導体の表面に接触すると、半導体の強い酸化還元作用を受けて分解される。
【0003】
近年、上述の半導体の光触媒作用が、空気中および水中に含まれる有害物質の分解または無害化、生活空間等における防臭、防汚、殺菌等、様々な環境浄化技術に利用されるようになってきた。光触媒用の半導体としては、主に酸化チタンが用いられている。
【0004】
従来、光触媒として利用する場合には、酸化チタン等の粉末を溶液に懸濁させて、その状態(以下、酸化チタンゾルと記す)で使用してきた。しかし、取り扱いの容易さ、幅広い応用性の観点からは、光触媒を支持体に固定化した状態で使用する方が有利である。したがって、実用性を考慮して、支持体に光触媒を固定して用いる方法が開発されている。
【0005】
支持体に酸化チタンを固定化する方法としては、酸化チタンゾルを支持体に付着させ、その後支持体とともに加熱し、焼成する方法が一般的である。しかし、酸化チタンゾルに含まれる酸化チタンの微粒子は、焼成の際に粒成長を起こしやすい。そのために、光触媒反応の反応性に重要な影響を及ぼす比表面積が低下し、その結果、光触媒としての性能が著しく低下するということが起こる。
【0006】
焼成の際の粒成長を防止する対策として、支持体に塗布する前に、酸化チタンゾルを水熱処理することによって、ゾル中の酸化チタンの微粒子を結晶化させる方法が提案されている(特開平6−293519号公報)。十分に結晶化した酸化チタン粒子は焼成の際に粒成長を起こしにくく、また光照射により生成した電子と正孔の分離効率が高いので、比較的高い光触媒活性が得られるとされている。しかし、水熱処理は高温高圧下での処理であるとともに、溶液濃度、温度、圧力、PH等に微妙なコントロールが要求されるため、光触媒の量産には不向きであった。
【0007】
このほか、酸化チタンゾルに新たな物質を添加する方法も提案されている(特開平8−99041号公報)。この方法の場合には、酸化チタンゾルにポリエチレングリコールを添加し、そのゾルを支持体に付着させ、加熱焼成する処理が採られている。焼成後の酸化チタン膜の性状は、多孔質状とされている。しかし、この方法では、光触媒として十分な活性を得るためには膜の多層化が必要である。また、焼成温度の上限が700℃に制限されているので、高温度での焼成ができない。そのために、酸化チタン膜の強度を高くすることができないので、光触媒としての耐久性に乏しい等の問題点がある。
【0008】
本発明は、焼成により酸化チタン膜を形成する際に、酸化チタンの粒成長を防止することが可能な酸化チタン光触媒用ゾルから優れた光触媒作用を持つ多機能部材を製造する方法および得られた多機能部材の使用方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の酸化チタン光触媒用ゾルを用いた光触媒作用を持つ多機能部材の製造方法および多機能部材の使用方法の特徴は、それぞれ下記(1)および(2)のとおりである。
【0010】
(1)支持体の表面に、ポリビニルピロリドンとチタン化合物を含む酸化チタン光触媒用ゾルを付着させた後焼成することにより、支持体の表面に酸化チタン膜を形成させる光触媒作用を持つ多機能部材の製造方法
【0011】
前記の酸化チタン光触媒用ゾルは、ポリビニルピロリドンとチタン化合物の化学反応によって形成された有機チタン錯体を含んでいてもよい。また、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、珪素化合物、ハフニウム化合物、アルミニウム化合物およびほう素化合物のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0013】
)上記()の方法によって得られる多機能部材により、光照射下で大気中または水中の物質を処理する多機能部材の使用方法。
【0014】
なお、本発明で用いるゾルは、チタン化合物およびポリビニルピロリドンの基本構成成分のほかに、これらの成分を溶解するための溶媒を含んでいる。
【0015】
本発明では、下記の▲1▼〜▲3▼により、焼成により酸化チタン膜を形成する際に、酸化チタンの粒成長を防止し、比表面積が大きく、光触媒作用に優れた酸化チタン膜を得ている。
【0016】
▲1▼ ゾルに、酸化チタン源として、酸化チタンの前駆体物質であるチタン化合物を配合し、おもに加水分解を起こさせて酸化チタンまたは水酸化チタンとした状態で、ポリビニルピロリドンと共存させる。そのために、微細な酸化チタンなどの粒子がポリビニルピロリドンに保持された状態で、均一に分散したゾルが得られる。
【0017】
▲2▼ チタン化合物とポリビニルピロリドンとの反応によって、ゾル中に有機チタン錯体が生成する場合もある。この有機チタン錯体は、チタン化合物がポリビニルピロリドンのピロリドン基に結合した状態にあるため、ゾル中で細かく分散して存在する。
【0018】
▲3▼ ポリビニルピロリドンは、400℃程度まで熱分解を起こさない。したがって、ゾルが支持体に塗布された状態で焼成された場合、酸化チタン等の微粒子は約400℃まで加熱される間に、微粒子状のまま酸化チタンとして結晶化する。約400℃を超える温度から粒成長が始まるため、その結果として、粒が極めて微細で、比表面積が大きい酸化チタン膜が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について具体的に説明する。
【0020】
本発明で用いるゾルは、前述のように、おもに加水分解を起こした酸化チタン等のチタン化合物、ポリビニルピロリドンおよび溶媒で構成される。このゾルは、水、アルコール等の溶媒中で前駆体物質としてのチタン化合物とポリビニルピロリドンとをよく混合し、必要に応じて加熱することによって調製することができる。本発明で用いるゾルは、水に対する安定性に優れているので、取り扱いが容易という特徴がある。
【0021】
上記の構成の本発明で用いるゾル中には、有機チタン錯体が存在する場合がある。この錯体は、焼成の際の酸化チタンの粒成長の抑制に効果的である。ただし、有機チタン錯体が存在しない場合でも、実用上十分に比表面積が大きい酸化チタンを得ることができる。
【0022】
本発明で用いるゾルに配合されるチタン化合物としては、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド等のチタンアルコキシド、硫酸チタン、4塩化チタン、チタンアセチルアセトネート等、加水分解などによって容易に酸化チタンに変わる化合物が適当である。このほか、TiO2で表されるアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、非晶質酸化チタンのほか、水酸化チタン、含水酸化チタン等の微粒子、さらには前駆体物質の反応基(例えば、チタンアルコキシドではアルコキシド部分)が加水分解などを起こし、酸化チタン粒子としてネットワークを作った後も、その表面には未反応の反応基が残った状態の酸化チタン粒子なども好適である。
【0023】
ポリビニルピロリドンとチタン化合物とを共存させるためには、これらのチタン化合物単独または2種類以上を混合して用いてもよい。
【0024】
ゾル中のチタン化合物の含有率は、0.01mol/l以上、2mol/l以下が好ましい。チタン化合物の含有率が0.01mol/l未満の場合には、
ゾルを1回塗布した後の焼成では、光触媒活性を発揮させるのに十分な膜厚の酸化チタン膜が得られない。そのため、多層化が必要となり生産性が低下する傾向がある。一方、2mol/lを超えると、通常の塗布法では、焼成後の酸化チタン膜にクラックが発生したり、くもりが生じることがある。
【0025】
ゾル中のポリビニルピロリドンの含有率は、0.1重量%以上、溶媒への溶解度以下が望ましい。0.1重量%未満の場合には、ポリビニルピロリドンの効果が得られないので、焼成後の酸化チタンの比表面積が十分大きくならない。そのために、光触媒活性の高い酸化チタンが得られない。ポリビニルピロリドンの含有率が溶解度を超える場合には、ゾル内に不溶のポリビニルピロリドンが生じ凝集するために、製膜性が悪くなること、焼成後の酸化チタン膜にむらやクラックが生じやすいことなどの問題が起こる。
【0026】
ポリビニルピロリドンの分子量は、120万以下が望ましい。分子量が120万を超えると、ゾルの粘度が高くなりすぎるので、支持体への塗布に支障をきたす。また、支持体とともにゾルを焼成し酸化チタン膜を得る際に、ポリビニルピロリドンの分解、揮発が起こりにくいので、酸化チタン膜の中に有機物が残留しやすい。その結果、光触媒としての性能が低下する。ポリビニルピロリドンのより好ましい分子量は10万以下である。分子量の下限は約1千とするのがよい。ただし、分子量が低い場合には、十分な光触媒活性を得るためにはゾル中のポリビニルピロリドンの割合を高くする必要があるので、経済性の観点から1万以上がより好ましい。上記の範囲内の分子量の場合には、ゾルの粘度も高くないので取り扱い性にも優れ、焼成後の酸化チタンの光触媒活性も高い。
【0027】
なお、チタン化合物とポリビニルピロリドンの組成比は、ポリビニルピロリドンの含有率からモノマー部分をモル換算した値に対して、チタン化合物はモル比で0.1から10までの範囲が好ましい。この範囲内の場合には、ゾルの焼成により、高い光触媒活性を持った酸化チタンを得るのが容易である。
【0028】
また、本発明で用いる酸化チタン光触媒形成用ゾルには、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、珪素化合物、ハフニウム化合物、アルミニウム化合物およびほう素化合物のうちの少なくとも1種の金属化合物を含有させてもよい。これらの金属化合物は、焼成後の酸化チタンの光触媒活性を向上させる作用を持っている。これらの金属化合物には、粒径30nm以下の微粒子状の酸化物または酸化物の前駆体となるアルコキシド類、塩化物、硝酸塩などが適している。その中でも、高い光触媒活性を得るには、チタン化合物と最もよく混合するアルコキシド類が好ましい。
【0029】
上記の金属化合物のゾル中の含有率は、チタン化合物に対して、モル比で 0.01〜0.5が望ましい。0.01未満では金属化合物の効果が十分に発揮されない。また、0.5を超えると、焼成の際酸化チタンの結晶化が起こりにくくなること、酸化チタンの構造が失われることなどのために、光触媒としての性能が低下しやすい。
【0030】
これらの金属化合物をゾルに添加する場合には、均一な組成のゾルにするために、加熱し環流処理を施すことが好ましい。
【0031】
さらに、本発明で用いるゾルには、必要に応じてジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類や、1,3−プロパンジオール、アセチルアセトン等のゾル自体の乾燥の抑制およびゾルに含まれる酸化チタン微粒子の凝集の抑制等に効果のある添加剤を含有させてもよい。これらの添加剤の量は、チタン化合物のモル比に対して0.1〜2.0程度が適当である。
【0032】
(b)焼成
上記のゾルを支持体に塗布し、加熱焼成することによって光触媒作用を持つ多機能部材を製造する方法について説明する。
【0033】
支持体の材質としては、ステンレス鋼、炭素鋼、めっきされた鋼、アルミニウム、チタン等の金属材料、セラミック、陶磁器、ガラス、石英等の無機材料などが適している。また、これらの材料で構成された複合材料でもよい。支持体の形状は、多機能部材としての用途等に応じて決めるのがよい。厚板、薄板などの板状、ビーズのような球状またはそのまま製品として使用されるような複雑な形状であってよい。なお、支持体の表面性状は多孔質でも緻密質でもよい。
【0034】
ゾルを支持体に塗布する方法には、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、バーコーティング、ロールコーティング等の方法がある。塗布した後、オーブン加熱、温風等により必要に応じて強制的に乾燥させるのもよい。
【0035】
上述のような方法で支持体にゾルを塗布した後、支持体とともに加熱、焼成し、支持体の表面に酸化チタン膜を固定する。
【0036】
焼成温度は、酸化チタン粒子が十分に結晶化を起こす温度で、さらにゾルに含まれる有機化合物が速やかに分解、揮発する温度とするのがよい。具体的には400℃以上、1000℃以下が好ましい。400℃未満では分解、揮発すべき溶媒、ポリビニルピロリドン等の有機物が酸化チタン膜内に残留しやすい。そのために、光触媒活性が不十分になりやすく、外観的にも透明で均一な膜質の酸化チタン膜を得にくい。一方、焼成温度が1000℃を超えると、酸化チタンの粒成長が著しく、酸化チタンの比表面積が低下するので、十分に高い光触媒活性が得られない。焼成温度のより好ましい範囲は、500℃以上、800℃以下である。
【0037】
焼成温度が上記の範囲の場合には、酸化チタンの結晶構造は光触媒として有効なアナターゼ型となり、結晶粒も微細なため、光触媒活性に優れた機能性部材が得られる。
【0038】
酸化チタン膜の膜厚は、20nmから2μm程度が好ましい。膜厚が20nm未満の場合には、十分な光触媒活性が得られないことがある。膜厚が2μmを超えると光透過性が低下し、膜の機械的強度が低下するする傾向がある。ただし、本発明で用いるゾルの場合には、スピンコーティング、ディップコーティング等厚膜が形成しにくい塗布法でも、1回の操作で十分な光触媒活性を持つ膜厚の酸化チタン膜が得られる。
【0039】
焼成温度までの加熱速度は、20℃/分以下が好ましい。急速に加熱すると、光触媒性能の上ではほとんど問題にはならないが、有機物の分解、揮発が同時に、かつ急激に起きるため、酸化チタン膜に光沢むらやクラックが発生することがある。
【0040】
(c)多機能部材の使用方法
上記の方法で得られる光触媒作用を有する多機能部材は、太陽光や蛍光灯、ブラックライト、水銀灯、キセノン灯等からの光によって、光触媒作用を発現する。この触媒作用によって、様々な有害物質、付着物質などの分解、除去、無害化に優れた効果を発揮する。本発明の方法で得られる多機能部材のおもな用途としては、空気中または水中に含まれる有害物質および汚染物質の分解、除去がある。その対象となる物質は、空気中に含まれるNOX、SOX、フロン、アルデヒド類、アミン類、メルカプタン類、アルコール類、BTX、フェノール類等の有機化合物、アンモニア、硫化水素など、水中に含まれるトリハロメタン、トリクロロエチレン、フロン等の有機ハロゲン化合物、除草剤、殺菌剤、殺虫剤等の種々の農薬、蛋白質やアミノ酸等の種々の生物学的酸素要求物質、界面活性材、アルデヒド類、アミン類、メルカプタン類、アルコール類、BTX、フェノール類等の有機化合物、シアン化合物、硫黄化合物等の無機化合物、種々の重金属イオン等、さらには細菌、放線菌、菌類、藻類等の微生物などである。さらに、本発明の多機能部材の具体的用途としては、大腸菌、ブドウ球菌、緑濃菌、カビ等の様々な菌類に対する抗菌、アルデヒド、メルカプタン、アンモニア、硫化水素等の臭気の防止、油、タバコのヤニ、指紋、雨垂れ、泥などへの防汚等があげられる。
【0041】
【実施例】
(実施例1)
酸化チタン光触媒用ゾルを調製し、ゾル中に存在する化合物を調査した。
【0042】
ゾルは次の方法で調製した。試験aおよび試験b(いずれも本発明例)では、チタン−n−ブトキシド68g(0.2mol)を脱水エタノール(98ml)に加えた混合液を30分間室温で撹拌した後、氷浴を用いて冷却した。その後、エタノール(98ml)、水(2.6ml)、硝酸(1ml)の混合液をゆっくりと滴下、1時間撹拌した後、氷浴を除いて室温に戻し、12時間撹拌を続けた。さらに、この反応液100mlに、試験aの場合は分子量約4万、試験bの場合は分子量約120万のポリビニルピロリドンを10g加え、室温下で1時間撹拌した。この操作により、黄色に着色した酸化チタン光触媒用ゾルが得られた。
【0043】
また、比較例(試験c)として、ポリビニルピロリドンを用いないこと以外は、上記試験aおよびbと同じ条件で酸化チタン光触媒用ゾルを調製した。その結果、透明な酸化チタンゾルが得られた。
【0044】
これらの酸化チタンゾルを自記分光光度計によって分析し、それぞれの液の吸収スペクトルを測定した。図1にその結果を示す。
【0045】
試験aおよびbの吸収スペクトル(それぞれa、b)は、試験c(比較例)の吸収スペクトル(c)に比べて長波長側にシフトしている。また、試験aと試験bの吸収量と試験cの吸収量の差を求めることによって得られる差スペクトル(曲線dおよび曲線e)は、ポリビニルピロリドンの吸収スペクトル(f、g)に比べると波形がまったく異なっており、360nm付近にピークが認められる。このスペクトルは、チタン−n−ブトキシドとポリビニルピロリドンとから生じた有機チタン錯体に由来するものであることを示している。
【0046】
この結果から、本発明で用いる酸化チタン光触媒用ゾル(試験aおよび試験b:本発明例)には、配合原料であるチタン化合物、ポリビニルピロリドンおよびこれらの反応によって生成した有機チタン錯体が存在することが確認された。
【0047】
(実施例2)
酸化チタン光触媒用ゾルを支持体に被覆し、触媒としての性能を調査した。
【0048】
支持体としては、石英板、陶器製の白色タイルおよびステンレス鋼板(JIS SUS304)の3種類を用いた。支持体の大きさは、縦横40mm、厚さは、石英板およびステンレス鋼板は1mm、タイルは5mmである。
【0049】
これらの支持体の表面に、酸化チタン光触媒用ゾルをディップコーティング法(引き上げ速度:100mm/分。ただし、試験No.3は10mm/分)によって塗布した。次に、100℃で30分間乾燥した後、電熱炉を用いて10℃/分の昇温速度で加熱し、最終温度550℃または700℃で30分間焼成した。この処理によって、酸化チタンが薄膜状に固定された試験材が得られた。
【0050】
実施例2における試験No.1〜11の試験材の製造条件を表1にまとめて示す。なお、ゾルの調製法は、基本的には実施例1の場合と同様とした。ただし、試験によっては酸化チタン生成用のチタン化合物、ポリビニルピロリドンの分子量およびその他の添加剤を変えているので、それらの条件については、表1に併記した。
【0051】
なお、試験No.7、9および10については、ゾルの調製の際にアセチルアセトンを用いたために、次の方法で調製を行った。
【0052】
チタンイソプロポキシド56.8g(0.2mol)と、硝酸亜鉛4.54g(0.024mol)(試験No.7)またはハフニウムエトキシド8.6g(0.024mol)(試験No.9)またはアルミニムイソプロポキシド4.9g(0.024mol)(試験No.10)、アセチルアセトン30gを脱水エタノール(196ml)に加えた液を2時間環流した。冷却後、この反応液100mlに分子量約4万のポリビニルピロリドンを10g加え、室温下で1時間撹拌することにより、黄色に着色した酸化チタン光触媒用ゾルを得た。
【0053】
【表1】
Figure 0003550947
【0054】
試験No.1(本発明例)および試験No.3(比較例)については、X線回折法によって、支持体に形成された酸化チタン膜の結晶構造および結晶粒径を調査した。
【0055】
その結果、結晶構造はいずれもアナタース型であったが、Scherrerの式から求めた酸化チタンの結晶粒径は、試験No.1の場合は約15nm、試験No.3の場合は約21nmであり、本発明例の方が微細であることが確認された。
【0056】
次に、光触媒としての性能を調査するために、各試験材について、強い毒性と臭気をもつアセトアルデヒドの分解試験を行った。分解試験方法は次のとおりである。
【0057】
石英性反応セル(容量100cm )に試験材を入れ、閉鎖循環ラインに接続した(合計内容積870cm )。次に、空気で希釈したアセトアルデヒド(約250ppm)を系内に導入し、循環させながら250W超高圧水銀灯から減光フィルターおよびUVフィルターを通して光照射を行った。この時、試験材表面の紫外線強度(波長:366nm)は15mW/cmであった。光照射を行いながらラインに接続したガスクロマトグラフを用いて、アセトアルデヒドの濃度を経時的に定量した。
【0058】
図2に、試験No.1および3について、光照射時間とアセトアルデヒドの濃度の関係を調査した結果を示した。比較例の試験No.3に比べて、本発明例の試験No.1の場合には、アセトアルデヒドが短時間に減少した。
【0059】
表1に、各試験で求められたアセトアルデヒドの分解速度定数を示した。ポリビニルピロリドンを含まないゾルによって製造した多機能部材を用いた比較例の試験No.3については、分解速度定数が0.025であった。それに対して、その他の本発明例については、0.036〜0.138で比較例に比べて明らかに高い値であった。また、分解速度定数に対する支持体の材質の影響も認められなかった。
【0060】
また、ジルコニウム、亜鉛、珪素、ハフニウム、アルミニウム、ほう素のそれぞれ化合物を含む試験No.6〜11についても、高い分解速度定数が得られた。
【0061】
以上の結果から、本発明で用いる酸化チタン光触媒用ゾルを支持体に付着させ、焼成して薄膜状の酸化チタンを固定した部材は、空気中の有害物質の分解および防臭に優れた効果を発揮する機能部材として使用できることが明らかになった。
【0062】
(実施例3)
本発明の製造方法で得られる多機能部材を用いて、地下水を汚染して問題となっているテトラクロロエチレンの分解試験を行った。
【0063】
焼成温度を700℃としたこと以外は、実施例2における試験No.1と同じ条件で、酸化チタンを薄膜状に固定した石英基板(試験材)を作製した。濃度30ppmのテトラクロロエチレンの水溶液40mlを石英製反応セルに入れ、その中に試験材を浸漬し酸素を20分間バブリングした後、250Wの超高圧水銀ランプの光をUVフィルターを通して照射した。4時間後反応液に含まれるテトラクロロエチレンの量をガスクロマトグラフを用いて定量した。
【0064】
その結果、テトラクロロエチレンの量は2ppmに減少していた。この結果から、本発明のゾルを支持体に塗布し、焼成して得られる多機能部材は、水中の汚染物質の分解、無害化にも有効であることが確認された。
【0065】
(実施例4)
本発明の製造方法で得られる多機能部材の抗菌効果を確認した。大腸菌(Escherichia coli W3110株)に対する抗菌性を、次の方法で調査した。
【0066】
多機能部材としては、実施例2における試験No.1で調製した試験材を用いた。その表面を予め70%エタノールで殺菌した後、大腸菌を2.5×10 個/ml含む生理食塩水0.2ml(大腸菌数:5×10 個)を、0.025mlづつ8滴に分けて試験材の表面に滴下した。次いで、相対湿度95%の条件下で250W超高圧水銀灯から、減光フィルター、UVフィルターを通じて30分間光照射を行った(紫外線強度1mW/cm )。その後、試験材の表面の菌液を生理食塩水9.8mlで洗い流し、回収した液を標準寒天培地に希釈沫塗し、35℃で48時間培養後、生育したコロニーを計数することによって生菌数を測定した。その結果、生存している大腸菌は1.5×10 個に減少していた。 また、比較例として、酸化チタンがコーティングされていない石英板および上記の実施例2における試験No.1で調製した試験材の表面に、それぞれ大腸菌を2.5×10 個/ml含む生理食塩水を滴下した後、前者には30分間光照射し、後者は30分間暗所に置いた場合の試験を行った。上記の場合と同様な方法で生存している生菌数を測定した結果、それぞれ4.3×10 個、4.6×10 個であった。
【0067】
これらの結果から、本発明のゾルを用いて製造された多機能部材は、優れた抗菌性を備えていることが明らかになった。
【0068】
(実施例5)
本発明の製造方法で得られる多機能部材の防汚効果を確認した。1例として、多機能部材である試験材の表面に付着させたタバコのヤニを除去する効果を調査した。
【0069】
実施例2における試験No.4で作製した試験材の表面にタバコ1本分のヤニを強制的に付着させた後、250W超高圧水銀灯から、減光フィルター、UVフィルターを通して光照射を行った(紫外線強度5mW/cm )。ヤニの減少は、色差計を用いて、黄色の目安となるb値の変化で評価した。
【0070】
その結果、b値は光照射前の16.2から、2時間の光照射でほぼ0となり、視覚的にも支持体として用いたタイルの色(白色)に蘇っていた。
【0071】
一方、酸化チタン膜が固定化されていないタイルを用いて、同様に試験を行ったところ、b値は13.4から、2時間の光照射では8.2に減少したにすぎなかった。視覚的にも、ヤニがかなり残っていると認められた。
【0072】
これらの結果から、本発明のゾルを用いて製造された多機能部材は、たばこのヤニを効果的に除去する性能、すなわち防汚性を備えていることが確認された。
【0073】
本発明で用いる酸化チタン光触媒用ゾルを支持体に塗布し焼成して得られる酸化チタン膜は、優れた光触媒作用を持っている。また、この酸化チタンゾルの原料は、比較的安価であり、このゾルを用いる多機能部材の製造にも特別な設備や操作を必要としないので、製造コストが比較的安い。
【0074】
このように前記のゾルを用いて製造される本発明の多機能部材は、大気中、水中などに存在する有害物質、汚染物質などを効果的に分解、除去する作用を持っており、防臭効果も大きい。また、抗菌作用、防汚作用にも優れているので、広い分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において、本発明例のゾル、比較例のゾルおよびポリビニルピロリドンの光吸収スペクトルを自記分光光度計により測定した結果を示す図である。
【図2】実施例2において、石英の支持体に固定した酸化チタン膜により、アセトアルデヒドの光分解を行った際のアセトアルデヒドの経時変化を測定した結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 支持体の表面に、ポリビニルピロリドンとチタン化合物を含む酸化チタン光触媒用ゾルを付着させた後焼成することにより、支持体の表面に酸化チタン膜を形成させることを特徴とする光触媒作用を持つ多機能部材の製造方法。
  2. 支持体の表面に、ポリビニルピロリドンとチタン化合物の化学反応によって形成された有機チタン錯体を含む酸化チタン光触媒用ゾルを付着させた後焼成することにより、支持体の表面に酸化チタン膜を形成させることを特徴とする光触媒作用を持つ多機能部材の製造方法。
  3. 支持体の表面に、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、珪素化合物、ハフニウム化合物、アルミニウム化合物およびほう素化合物のうちの少なくとも1種を含む請求項1または2に記載の酸化チタン光触媒用ゾルを付着させた後焼成することにより、支持体の表面に酸化チタン膜を形成させることを特徴とする光触媒作用を持つ多機能部材の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の方法によって得られる多機能部材により、光照射下で大気中または水中の物質を処理することを特徴とする多機能部材の使用方法。
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