JP2000290412A - 親水性薄膜層を有する成形体及びその製造方法 - Google Patents

親水性薄膜層を有する成形体及びその製造方法

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JP2000290412A
JP2000290412A JP11100663A JP10066399A JP2000290412A JP 2000290412 A JP2000290412 A JP 2000290412A JP 11100663 A JP11100663 A JP 11100663A JP 10066399 A JP10066399 A JP 10066399A JP 2000290412 A JP2000290412 A JP 2000290412A
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substrate
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hydrophilic thin
layer
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JP11100663A
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English (en)
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Akiko Miyagawa
晶子 宮川
Toru Nakamura
徹 中村
Kazunori Ohashi
一記 大橋
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Nikon Corp
Original Assignee
Nikon Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 劣化した親水性薄膜層の防曇性能、親水性を
回復する。 【解決手段】 本発明の成形体の成膜方法は、基材上に
防曇性能を有する親水性薄膜層を形成し、該親水性薄膜
層に波長が300nm以下の短波長の紫外線を照射する
ものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防曇性能を有する
親水性薄膜を備えた成形体及びその製造方法に関するも
のである。特に親水性薄膜層に特定波長の紫外線を照射
することにより、その防曇性能を向上または復活させる
ことを特徴とするものである。
【0002】
【従来の技術】ミラー、レンズ、プリズム等の光学部品
を使用した光学機器や眼鏡レンズ、建造物の窓、自動車
の窓やミラー、浴室や洗面台に設置された鏡等が曇るの
は、日常頻繁に見られる現象である。曇りは、基材の表
面温度が露点以下に下がった場合、雰囲気中の水分が微
小な水滴となって表面に付着し、この水滴が光を散乱す
ることにより起こる。そして、曇りは、あらゆる所で起
こる現象であるため、これを防ぐために多くの試みがな
されてきた。
【0003】これらの曇りを防止する試みは、1)基材
表面を撥水性にして水の付着を防ぐ方法と、2)基材表
面を親水性にして基材の全面を濡れやすくし、水滴の発
生を抑える方法の2つに大別できる。しかしながら、前
記1)の基材表面を撥水性にする方法では、完全に水の
付着を防止する様な優れた技術は実現できておらず、一
般に撥水処理した表面には球状の微小水滴が付着し、か
えって曇り易くなることが多かった。
【0004】これまで、不完全ながら防曇効果が認めら
れてきたのは、前記2)の基材表面を親水性にする方法
である。その中でも最も簡単な方法は、界面活性剤を基
材表面に塗布して親水性を付与する方法であり、これは
既に曇り防止スプレーとして実用化されている。また、
これらの他に加熱により曇りを除去する方法があり、こ
の方法は、自動車のリアウインドウなどで実用化されて
いる。
【0005】防曇効果を持続させる技術としては、親水
性のポリマーを基材表面に成膜することも行われてき
た。また、耐擦傷性に優れた防曇性薄膜としては、酸化
珪素等の無機酸化物からなる防曇性薄膜が知られてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、防曇効
果が見られた前記2)の基材表面を親水性にする方法で
は、界面活性剤を基材表面に均一に塗布することが難し
く、基材表面の光学特性を劣化させる問題点があった。
更に、塗布した界面活性剤は取れ易く、その都度繰り返
し塗布しなければ効果が持続しない不都合な点があっ
た。またこの方法では、成膜された膜の表面硬度が不十
分であり、耐擦傷性が低いという問題点もあった。
【0007】更に、前記加熱により曇りを除去する方法
では、加熱用の電源が必要であり、適用範囲が限られて
しまう問題点があった。更に、この方法では電熱線が必
要になるため、完全な透明性を要求される自動車のフロ
ントガラスや眼鏡レンズ等には適用が困難である問題点
があった。そして、従来のいずれの防曇性を有する親水
性薄膜層で問題となってきたのは、防曇効果の持続性で
あった。初期に優れた防曇性を示す防曇性物品は既に数
多く存在するが、その効果が長期間に亘って確実に持続
し、長期間使用可能なものは、残念ながら皆無に等しい
というのが実状である。
【0008】
【発明を解決するための手段】本発明者等は、従来の親
水性薄膜層に共通の問題点である、防曇効果の持続性に
ついて鋭意研究を重ねた結果、波長が300nm以下の
紫外線の照射が防曇性能に影響を与えることを見出し
た。そして、一旦低下した防曇性能は前記波長の紫外線
の照射により回復することを見出した。
【0009】しかしながら、紫外線の照射は、同時に基
材の劣化をまねくこともあった。特に基材がプラスチッ
クの場合には、波長が300nm以下の紫外線の照射に
より基材が黄変する問題点も生じることがあった。本発
明者等は、更に紫外線の照射による基材の変色を防ぎつ
つ防曇性能を回復する手段について検討した。その結
果、親水性薄膜層と基材の間に紫外線吸収層を設けるこ
とが有効であることを見出した。
【0010】このように本発明は、防曇性が一旦低下し
ても、簡単な処理により再び元の防曇性を回復すること
が可能であり、更に長期間に亘って優れた防曇性能が得
られる防曇性薄膜を提供することを目的とする。そこで
本発明は第一に、「基材上に防曇性能を有する親水性薄
膜層を形成し、該親水性薄膜層に波長が300nm以下
の短波長の紫外線を照射することを特徴とする防曇性能
を有する成形体の製造方法(請求項1)」を提供する。
第2に「前記成形体の製造方法において、前記紫外線
は、防曇性能が劣化した親水性薄膜層に照射することを
特徴とする請求項1に記載の防曇性能を有する成形体の
製造方法(請求項2)を提供する。第3に「前記親水性
薄膜層がスパッタリング法で形成されることを特徴とす
る請求項1または2に記載の成形体の製造方法(請求項
3)」を提供する。第4に「前記スパッタリング法は、
基材上に金属原子を付着させる工程と、前記金属原子を
酸化させ酸化物を形成し親水性薄膜層を形成する工程を
有することを特徴とする請求項3に記載の製造方法(請
求項4)」を提供する。第5に「基材と、該基材上に3
00nm以下の波長の紫外線が照射された防曇性能を有
する親水性薄膜層を有することを特徴とする成形体(請
求項5)」を提供する。第6に「前記基材と、前記親水
性薄膜層との間に紫外線吸収層を有することを特徴とす
る請求項5に記載の成形体(請求項6)」を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明では、親水性薄膜層の上方
から波長が300nm以下の紫外線を照射することによ
り防曇性能を持続または回復することができる。特に2
00nm以下の波長の紫外線を照射すると防曇性能の回
復、向上効果が顕著になる。本発明では、前記波長の光
を含む紫外線を照射することが有効であるが、前記波長
以外の光を含んだ紫外線でもよい。
【0012】本発明に関わる波長の紫外線を発生させる
光源は、特に限定されないが低圧水銀灯が好ましい。こ
の他、300nm以下の光を照射するための光源として
はキセノンランプ、メタルハライドランプ等も使用可能
であり、また照射条件を制御すればエキシマレーザやエ
キシマランプ等も使用可能である。防曇性能の維持、回
復効果は、照射する紫外線の波長に依存するが、照射時
間にはそれほど強く依存しない。しかし、実使用を考え
た場合、防曇性能の維持、回復手段としての紫外線照射
時間は短い程生産性が高く、有利であることは当然であ
る。従って、紫外線の照射時間は数秒から10分以内に
留めるのが好ましい。
【0013】本発明の親水性薄膜層に紫外線を照射する
と、親水性薄膜層表面の水の接触角が低下する。通常、
優れた防曇効果を得るためには、水の接触角は10度以
下であることが望ましい。一般に親水性薄膜層の成膜直
後の接触角は10度以下であり、最初、優れた防曇性能
を有していた薄膜も、長期間の使用により徐々にその防
曇性は低下する。しかしながら本発明の親水性薄膜層
は、特定波長の紫外線を照射することにより、他の特性
を一切低下させることなく防曇性能を維持、回復するこ
とが可能である。防曇性能が低下した表面に適用した場
合、水の接触角は20度以上の値を示すが、紫外線照射
により接触角は再び10度以下に低下し、防曇性能が回
復する。
【0014】特定波長の紫外線の照射は、親水性薄膜層
の防曇効果が低下したときに行えば十分であるが、防曇
効果が低下する前(つまり親水性薄膜層を有する成形体
の製造直後で使用前の時期)に照射してもよく、この場
合、防曇性能がより持続する成形体を製造してもよい。
このように紫外線照射により水の接触角が低下し、防曇
性能が回復するメカニズムの詳細は不明であるが、特定
波長の紫外線の照射により生成したオゾンが親水性薄膜
層の表面に付着した有機物を分解、除去する為ではない
かと推察される。ESCAによる親水性薄膜層表面の元
素分析によれば、防曇性能の劣化した表面にはC元素が
存在し、紫外線の照射により防曇性能が回復した親水性
薄膜層の表面には、C元素は確認されなかった。従っ
て、本発明に関わる、紫外線が照射された親水性薄膜層
の表面には、炭素元素が殆ど存在しないものである。
【0015】本発明に関わる親水性薄膜層を構成する材
料に特別の制限は無いが、珪素酸化物を用いた場合に、
紫外線照射による防曇性の持続、回復効果が特に顕著で
あることが明らかになった。珪素酸化物としては一般式
SiO2-x(ただし、0≦x<2)で表される珪素酸化
物を用いることができるが、この中でも二酸化珪素を用
いることが好ましい。
【0016】珪素酸化物による親水性薄膜層の形成方法
は、スパッタリング法、真空蒸着法、ゾルーゲル法等一
般的に知られた方法を用いることができる。またスパッ
タリング法の中でも、まず基材上に金属原子を付着さ
せ、次にこの金属原子を酸化させ、酸化物を形成させる
方法が好ましい。このような方法で得られた親水性薄膜
層は成膜しただけで親水性を示すことが多いが、更に優
れた親水性を付与する目的で、アルカリ水溶液への浸せ
きやプラズマ処理などを行っても良い。
【0017】また、スパッタリング法により形成された
親水性薄膜層に対して紫外線を照射すると、より優れた
防曇性能の持続、回復効果が得られることも判明した。
この理由は明らかになっていないが、スパッタリングに
より形成された膜は柱状構造を取り易いことから、この
構造と何らかの関係があると推察される。前記した通り
本発明の親水性薄膜層は、300nm以下の波長の紫外
線の照射によりその防曇性能を持続、回復させ、長期間
に亘って優れた性能を維持することが特徴であり、短波
長の紫外線を照射した方が、その効果は顕著になる。
【0018】しかし、紫外線の照射により他の性能、例
えば基材の透明性等が失われない様にすることも大切で
ある。そのため、親水性薄膜層と基材との間に紫外線吸
収層を設けることがより好ましい構造である。本発明の
親水性薄膜層を有する成形体のより好ましい構造は、親
水性薄膜層が形成される基材上に紫外線吸収層を形成
し、更にその上に親水性薄膜層を備えたものである。防
曇性能の持続、回復のために照射される紫外線は親水性
薄膜層で一部が吸収され残りは透過し基材に達する。し
かし、前記構成をとれば、透過した紫外線は基材と親水
性薄膜層との間に形成された紫外線吸収層で吸収される
ため、紫外線は基材には到達しない。そして紫外線吸収
層は、基材の変色を起こす紫外線を実質的に略全て吸収
することが必要である。
【0019】従って、前記構造をとれば、紫外線照射に
よる基材の変色を避けながら防曇性能の回復を繰り返し
行うことが可能であり、長期間に亘って優れた防曇性能
を持続し、基材の変色が発生しない親水性薄膜層を得る
ことができる。紫外線吸収層を構成する物質に特別の制
限はなく、紫外線吸収剤として一般に知られる物質群が
広く使用可能である。
【0020】これら紫外線吸収剤の例としては、2,4
−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−
メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクト
キシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベ
ンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジ
メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラ
ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アリ
ルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−
(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾ
トリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−5’−
ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール等のベ
ンゾトリアゾール類、エチル−2−シアノ−3,3’−
ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シ
アノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等のジフェニ
ルアクリレート類、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウ
ム等の無機酸化物、及びこれらの混合物等を挙げること
ができる。
【0021】これら紫外線吸収剤は単独では透明薄膜と
することが困難であるので、マトリックス成分に溶解ま
たは分散した状態で用いることが好ましい。マトリック
ス成分としては、光学的に透明であり、かつ紫外線吸収
剤を良好に溶解または分散させるものであれば、あらゆ
る物質が使用可能である。一例を挙げると、ポリビニル
アセタール、ポリビニルアルコール、ウレタン(メタ)
アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリビ
ニルピロリドン、ポリエン化合物と多官能チオール化合
物の重付加反応生成物、あるいは金属アルコキシドの加
水分解生成物を縮合反応することによる所謂ゾルーゲル
法により形成される無機酸化物層等を挙げることができ
る。更に、エポキシシランのような有機珪素化合物を用
いることも可能であり、この場合、耐擦傷性の向上も実
現することもできる。
【0022】本発明の紫外線吸収層の形成方法に特別の
制限は無く、スパッタリング法や真空蒸着法等の乾式
法、またはスピンコートやディップコート等の湿式法な
どが使用可能である。一般的には、紫外線吸収剤をマト
リックス成分に溶解または分散したものを湿式法で基材
に塗布した後に乾燥する方法が用いられる。本発明の親
水性薄膜層が形成可能な基板に特別な制限はなく、防曇
性を要求されるものであれば、ガラス、透明プラスチッ
ク等あらゆる素材から成る基板に適用可能である。
【0023】親水性薄膜層の膜厚は、0.001〜10
0μmが好ましく、紫外線吸収層の膜厚は、0.01〜
10μmが好ましい。また親水性薄膜層は、眼鏡レンズ
に適用すことが可能である。眼鏡レンズに使用する場
合、基材上にハードコート膜を形成することが可能であ
る。
【0024】ハードコート膜は、下記一般式(I)で表
わされる有機ケイ素化合物またはその加水分解物が好ま
しい。 一般式(I): R1 a2 bSi(OR34-(a+b) (但し、式中、R1は、官能基を有する有機基又は不飽
和2重結合を有する有機基であり、R2は、炭化水素基
又はハロゲン化炭化水素基でり、R3はアルキル基、ア
ルコキシアルキル基又はアシル基あり、a及びbは、そ
れぞれ0又は1であり、かつa+bは、1又は2であ
る。またR1は、炭素数1〜14、R2は、炭素数1〜
6、R3は炭素数1〜4であることが好ましい)。
【0025】一般式(I)の化合物のうち、R1 が官能
基としてエポキシ基を有するものは、エポキシシランと
も呼ばれる。エポキシシランの具体例としては、例え
ば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ
−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリ
シドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グ
リシドキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−グリシ
ドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシド
キシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−
エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランな
どが挙げられる。
【0026】また、一般式(I)の化合物のうち、R1
が官能基としてエポキシ基を有すもの以外(a=0のも
のを含む)の例としては、例えば次のものが使用され
る。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシ
ラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシ
シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメト
キシエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリ
メトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、3
−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロ
ピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラ
ン、フェニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピル
トリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエト
キシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメ
トキシシランなどの各種トリアルコキシシラン、トリア
シロキシシランあるいはトリアルコキシアルコキシシラ
ン化合物。
【0027】これら組成物を使用した場合、硬度向上、
干渉縞の防止、帯電防止効果の付与のために無機微粒子
を添加することも可能である。無機微粒子としては、例
えば、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化
チタニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ベリリ
ウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化セリウ
ム、酸化鉄、酸化スズと酸化タングステンの複合微粒子
等の無機微粒子の微粒子が使用可能である。
【0028】また、これらの微粒子は、単独で使用する
だけでなく、必要に応じて2種以上を混合または固溶体
または複合体の状態、またはこれらが共存する状態で使
用することも可能である。本発明での混合物としては、
異なった物質からなる複数のものが、各々の物質の構造
を保ったまま存在している状態を言い、固溶体とは、異
なった複数の物質同士が新たな化学結合を形成して存在
するものを称している。
【0029】特に、酸化チタニウム、酸化アンチモン、
酸化タングステン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、
酸化スズを使用した場合には、組成物の屈折率を高くす
ることができ、基材に高屈折率のものを用いた場合、干
渉縞の発生を抑止することが可能となる。微粒子の粒子
径は、1〜200nmのものが用いられ、特に5〜10
0nmのものが好ましい。これより小さいと製造が困難
であり、微粒子自身の安定性も悪く、かつ添加する効果
も小さい。これより大きいと、コーティング組成物の安
定性、塗膜の透明性、平滑性などが低下する。
【0030】また前記したハードコート膜上又は基材上
に真空蒸着法により形成された無機酸化物からなる反射
防止膜を形成すれば反射防止効果が優れ、外観に優れた
レンズを製造することができる。反射防止膜に用いられ
る材料としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコ
ニウム、酸化アルミニウム等がある。更にレンズ基材と
ハードコート膜の間に密着性や耐衝撃性を向上させるプ
ライマー層を形成すれば、更に耐衝撃性の優れたプラス
チックレンズが製造できる。プライマー層の材料として
は、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール
樹脂などが好ましい。また、架橋されたポリビニルアセ
タールからなるプライマー層を形成することも可能であ
る。
【0031】プライマー層の膜厚は、熱硬化後の段階で
0.1〜5μm、好ましくは0.2〜3μmである。プ
ライマー層の膜厚が0.1μmより薄いと耐衝撃性の改
善が十分でなく、また5μmより厚いと耐衝撃性の点で
は問題がないが、耐熱性と面精度が低下する。また、プ
ライマー溶液には前記ハードコート膜に添加したような
無機微粒子を含んでもよい。これら無機微粒子として
は、水又は有機溶媒に分散した市販されている微粒子を
そのまま用いることができる。
【0032】無機微粒子又はこれらの無機酸化物の複合
体の平均粒子径は1〜300nmであり、好ましくは1
〜50nmがよい。平均粒子径が300nmを越えると
光の散乱によるレンズの曇りが生ずる。このようなハー
ドコート膜、プライマー層、反射防止膜に紫外線吸収剤
を添加し、これを紫外線吸収層と兼用させてもよい。
【0033】
【実施例】[実施例1] 1. 紫外線吸収層コート液の形成 ポリビニルブチラール(和光純薬(株)製)700重量
部にn−ブタノール630重量部を溶解した後、メタノ
ール400重量部、水100重量部、さらに架橋剤とし
てテトラメトキシシラン4.2重量部を添加して均一に
なるまで撹拌した。硬化触媒としてp−トルエンスルホ
ン酸1.2重量部を加えた後、酸化セリウム系紫外線吸
収剤(ニードラールW−100、多木化学(株)製)7
0重量部を添加して1時間撹拌後、3μmのメンブラン
フィルターで濾過した。 2. 紫外線吸収層の成膜 アクリル製基板に前記1で作製したコート液をディッピ
ング法により塗布した後、100℃で20分間の加熱処
理を行い硬化させ、紫外線吸収層を形成した。紫外線吸
収層の膜厚は、2μmとした。 3.親水性薄膜層の形成 前記2で形成した紫外線吸収層の上に親水性薄膜層とし
て、珪素酸化物からなる薄膜をRFスパッタリング法に
より成膜した。すなわち、ターゲットには二酸化珪素を
用い、RFパワー800W、Arガス流量100scc
m、設定圧力0.5Pa、成膜時間10分の条件で、膜
厚1000Åの珪素酸化物層を形成した。 4.親水性及び防曇性能の評価 前記3で形成した親水性薄膜層の水の接触角を成膜翌日
に計測したところ約5度であり、この膜が優れた親水性
を有していることが明らかになった。
【0034】また、防曇性能は以下の様に評価した。即
ち、前記3までの工程で親水性薄膜層を形成したガラス
基板を5℃雰囲気中(冷蔵庫中)に1時間保管後、25
℃85%RH雰囲気中に瞬時に移した時の様子を目視に
て観察した。この結果、本実施例の親水性薄膜層をつけ
たガラス基板は、全く曇りを発生することなく、優れた
防曇性能を有することが明らかになった。
【0035】前記の通り、成膜翌日に親水性と防曇性能
を評価した本実施例のアクリル製基板を1年間、室内で
保管した。そして、1年後の親水性を知るために前記と
同じ方法で水の接触角を測定したところ、約22度であ
った。また、1年後の防曇性能を前記と同様の方法で評
価したところ、25℃85%RHに移した途端曇りが生
じ、防曇性能が劣化していることが明らかになった。
5.親水性及び防曇性能の回復前記4で1年後の防曇性
能の劣化が認められた本実施例のアクリル製基板の防曇
性能を復活させる目的で、以下の通り紫外線照射を行っ
た。即ち、200Wの低圧水銀灯を用い、主に照射光の
波長は185nm及び254nmの光を主成分とするも
のである。基板とは40cmの距離で離し5分間照射し
た。
【0036】前記処理を行った直後に水の接触角を測定
すると約3度であり、親水性が回復していることが明ら
かになった(表1参照)。また、前記と同様の方法で防
曇特性を評価したところ、曇りは全く観察されず、初期
の防曇性能が回復していることが明らかになった。ま
た、本実施例1との比較のため、以下のような方法で防
曇性能の回復を試みた。
【0037】防曇性能の回復のために親水性薄膜層に高
圧水銀灯を用い、波長が主に300nm以上の紫外線を
照射した例(表1の1)と、低圧水銀灯を用いフィルタ
ーを通すことにより200nm以上の波長の紫外線を照
射した例(表1の2)と、波長が低圧水銀灯により20
0nm以下の紫外線を含む紫外線を照射した本実施例1
(表1の3)について、接触角の経時変化を表1に示
す。
【0038】
【表1】
【0039】これから判るように、高圧水銀灯を用いた
例では、紫外線の照射前と直後とを比較すると、防曇性
能が回復しているものの、その接触角の回復効果は小さ
いことが判る。これは、高圧水銀灯を用いたため、30
0nmを超える波長の紫外線を主成分とする光が照射さ
れたため効果が小さかったものである。低圧水銀灯から
の紫外線をフィルターを通して照射した例では、照射直
後の接触角は22度から15度になっており、高圧水銀
灯で紫外線を照射した例と比較すると、防曇性能がより
改善されることが判る。これは、低圧水銀灯を用いたた
め、波長が300nm以下の紫外線が主に照射される
が、フィルター処理され200nmよりも単波長の紫外
線は照射されないために、高圧水銀灯を用いた場合より
も効果は優れているものの、表1の3のもの(低圧水銀
灯を用いフィルター処理せず)よりは効果が劣る結果と
なったものである。
【0040】そして、本実施例1の場合では、紫外線を
照射してから14日後も6度の接触角を維持しており、
非常に優れた防曇性能の回復、維持効果があることが判
る。 [実施例2]本実施例では、図1及び図2に示すスパッ
タリング装置を用い、親水性薄膜層を形成した。図1
は、本実施例に関わる装置の概略の上面図であり、図2
は、本実施例に関わる装置の概略の正面図である。
【0041】このスパッタリング装置は、まず薄膜の原
料となる金属材料単体を基材上に付着させ、その後、付
着した金属材料と反応ガスとを反応させ、この結果生成
した反応生成物を主成分とする薄膜を形成するものであ
る。本実施例では、酸化珪素系物質の単一物質からなる
薄膜を形成することから、成膜室としては図1の成膜室
12のみを使用する。成膜速度を速くしたい場合、図1
の成膜室20にターゲット19を設置することも可能で
ある。また図1の22の領域を反応室として用いること
も可能である。また、18は各部屋を仕切る隔壁であ
る。
【0042】本実施例では、ガラス基板を使用した。金
属ターゲット13、19には多結晶Siを使用し、酸化
珪素系物質を主成分とする親水性薄膜層をガラス基板上
に直接に成膜することにした。真空槽内の圧力は、3.
2×10-3Torrに設定し、スパッタリングガスとし
ては、アルゴンガスを用い、流量を390sccmに設
定し、導入口11から成膜室12に導入した。導入した
アルゴンガスをグロー放電によりイオン化し、多結晶S
iターゲット13に入射させた。スパッタリング電力は
3.75kWに設定した。
【0043】アルゴンイオンの入射によりスパッタリン
グされたSi原子は、高速で回転する基板ホルダー14
に保持されたガラス基板15の表面上に数原子層程度の
厚さで沈着する。本実施例において、成膜室12を1回
通過したときのSi原子の沈着した層の膜厚は10Å以
下であった。このときの基板の温度は室温程度である。
基板ホルダー14の回転速度は100rpmに設定し
た。
【0044】前記の工程により成膜室12において、数
原子程度の膜厚でSi原子が沈着した基板15は、高速
で回転する基板ホルダー14と共に反応室17に移動す
る。反応室17には反応ガスである酸素が導入口16か
ら導かれ、高周波放電により反応ガスがプラズマ状にな
る。このときのプラズマ電力は1.2kWとした。Si
原子が沈着された基板は、反応室17を通過するときに
酸素プラズマに暴露される。ここで酸素プラズマと基材
15表面上に沈着したSi原子が反応し、酸化珪素系薄
膜が成膜される。この酸化珪素系薄膜の膜厚は、先に基
板上に沈着したSi原子の成す膜と略同じ膜厚であっ
た。
【0045】前記のように酸化珪素系の薄膜が形成され
た基板15は、高速で回転する基板ホルダー14と共に
反応室17から出て、再び成膜室12に移動する。以上
のような成膜室から反応室への基板の移動により、数原
子程度の膜の形成を行うことができ、これを複数回繰り
返すことにより所望の膜厚の親水性薄膜を形成すること
も可能である。
【0046】本実施例で得られた酸化珪素系親水性薄膜
の水に対する静止接触角を測定した。測定には協和界面
科学株式会社製の接触角測定装置を用いた。その結果、
水の静止接触角は3度であり、良好な親水性を有してい
ることが明らかになった。また、親水性薄膜層の防曇性
能を評価するため、試料を5℃に設定した冷蔵庫内に1
時間保管し、取り出した後直ちに吐息をかけてみたが、
曇りは全く観察されず、優れた防曇性能が確認された。
【0047】更に本発明者等は、親水性薄膜を基板上に
成膜してから1年後に前記と同様の測定方法で静止接触
角を測定した。その結果、成膜後1年後の測定結果は2
2度で、親水性が劣化していることが示された。成膜直
後と同様な方法で防曇性能を試験したところ曇りを生
じ、防曇性能が劣化していることが確認された。この薄
膜に紫外線を照射し、親水性の復活を試みた。すなわ
ち、200W低圧水銀灯の光を40cmの距離で5分間
照射した。本実施例でも前記の如く、低圧水銀灯を用い
ていることから、照射光の波長は185nm及び254
nmの光(200nm以下の波長の光もカットせずに)
を主成分とするものである。照射直後の試料の水の静止
接触角を測定したところ3度であり、親水性が復活し
た。照射2週間後、同様に接触角を測定したが、6度で
非常に優れた親水性が持続していた。
【0048】また防曇性能を同様に調べた結果、照射直
後、照射14日後ともに曇りが全く観察されず、紫外線
照射により防曇性能が復活し、しかも長時間持続してい
ることが示された。 [実施例3]本実施例においても実施例1と同様に、図
1に示すスパッタリング装置を用いて親水性薄膜層を形
成した。基板は実施例2と同じものを用いた。そして本
実施例では、低屈折率の層と高屈折率の層とを積層した
親水性薄膜層を形成する。そのため、金属ターゲット1
3には多結晶Ta、19には多結晶Siを設置し、酸化
珪素系薄膜と酸化タンタル薄膜からなる親水性薄膜層を
プラスチックレンズ基板上に直接に成膜することにし
た。
【0049】(1)酸化タンタル薄膜の形成 真空槽内の圧力は、3.0×10-3Torrに設定し、
スパッタリングガスとしては、アルゴンガスを用い、流
量を350sccmに設定し、導入口11から成膜室1
2に導入した。導入したアルゴンガスをグロー放電によ
りイオン化し、多結晶Taターゲット13に入射させ
た。スパッタリング電力は3.00kWに設定した。基
板ホルダー14の回転速度は、100rpmに設定し
た。
【0050】アルゴンイオンの入射によりスパッタリン
グされたTa原子は、高速で回転する基板ホルダー14
に保持されたガラス基板15の表面上に数原子層程度の
厚さで沈着する。このときの基板の温度は室温程度であ
る。前記の工程により成膜室12において、数原子程度
の膜厚でTa原子が沈着した基板15は、回転する基板
ホルダー14と共に反応室17に移動する。反応室17
には反応ガスである酸素が反応ガス導入口16から導か
れ、反応ガスは高周波放電によりプラズマ状になる。こ
のときの酸素ガスの流量は、70sccm、プラズマ電
力は2.0kWとした。
【0051】Ta原子が沈着された基板は、反応室17
を通過するときに酸素プラズマに暴露される。ここで酸
素プラズマと基材15表面上に沈着したTa原子が反応
し、酸化タンタル薄膜が成膜される。この酸化タンタル
薄膜の膜厚は、先に基板上に沈着したTa原子の成す膜
と略同じ膜厚であった。本実施例においてもTaターゲ
ット13からの沈着工程と反応室17での酸化タンタル
薄膜成膜工程を繰り返すことにより所望の膜厚の酸化タ
ンタル薄膜を形成することができる。
【0052】(2)酸化珪素系薄膜の形成 前記の工程により酸化タンタル薄膜が形成された基板1
5は、高速で回転する基板ホルダー14と共に反応室1
7から出て、成膜室20に移動する。成膜室20には多
結晶Siターゲット19が設置されている。真空槽内の
圧力は、3.0×10-3Torrである。スパッタリン
グガスとしては、アルゴンガスを用い、流量を250s
ccmに設定し、導入口21から成膜室20に導入し
た。導入したアルゴンガスをグロー放電によりイオン化
し、多結晶Siターゲット19に入射させた。スパッタ
リング電力は3.00kWに設定した。基板ホルダー1
4の回転速度は、100rpmに設定した。
【0053】アルゴンイオンの入射によりスパッタリン
グされたSi原子は、高速で回転する基板ホルダー14
に保持されたガラス基板15の表面上に数原子層程度の
厚さで沈着する。このときの基板の温度は室温程度であ
る。前記の工程により成膜室20において、数原子程度
の膜厚でSi原子が沈着した基板15は、回転する基板
ホルダー14と共に再び反応室17に移動する。反応室
17には反応ガスである酸素が導入口16から導かれ、
高周波放電により反応ガスはプラズマ状になる。このと
きの酸素ガスの流量は、80sccm、プラズマ電力は
2.0kWとした。
【0054】酸化タンタル薄膜上にSi原子が沈着され
た基板は、反応室17を通過するときに酸素プラズマに
暴露される。ここで酸素プラズマと酸化タンタル薄膜上
に沈着したSi原子とが反応し、酸化珪素系薄膜が成膜
された。この酸化珪素系薄膜の膜厚は、先に酸化タンタ
ル薄膜上に沈着したSi原子の成す膜と略同じ膜厚であ
った。ここでもSiターゲット19からの沈着工程と反
応室17での酸化珪素系物質からなる層の形成工程を繰
り返すことにより所望の膜厚の酸化珪素系物質からなる
層を形成することができる。
【0055】本実施例では、前記のように酸化タンタル
薄膜を成膜した後に酸化珪素系薄膜を成膜し、再び基板
15の酸化珪素系薄膜上に成膜室12でイオン化された
アルゴンガスのスパッタリングによりタンタル原子を沈
着させる。これを反応室17に移動させ酸化タンタル層
を形成する。更に上記の酸化珪素系薄膜の成膜時と同じ
条件で酸化タンタル層上に酸化珪素系薄膜を成膜した。
従って、本実施例での防曇性薄膜は、基板側から酸化タ
ンタル層、酸化珪素層、酸化タンタル層、酸化珪素層か
らなるものである。各々の層の膜厚は、基板側から0.
06λ、0.05λ、0.5λ、0.25λ(λ=52
0nm)とした。
【0056】本実施例で得られた酸化珪素系親水性薄膜
の水に対する静止接触角を測定した。測定には協和界面
科学株式会社製の接触角測定装置を用いた。その結果、
水の静止接触角は3度であり、良好な親水性を有してい
ることが明らかになった。また、親水性薄膜層の防曇性
能を評価する為、試料を5℃に設定した冷蔵庫内に1時
間保管し、取り出した後直ちに吐息をかけてみたが、曇
りは全く観察されず、優れた防曇性能が確認された。
【0057】更に本発明者等は、親水性薄膜層を基板上
に成膜してから1年後に前記と同様の測定方法で静止接
触角を測定した。その結果、成膜後1年後の測定結果は
22度で、親水性が劣化していることが示された。成膜
直後と同様な方法で防曇性能を試験したところ曇りを生
じ、防曇性能が劣化していることが確認された。この薄
膜に紫外線を照射し、親水性の復活を試みた。紫外線の
照射条件は、実施例1及び2と同様にした。即ち、20
0W低圧水銀灯の光を40cmの距離で5分間照射し
た。
【0058】照射直後の試料の水の静止接触角を測定し
たところ3度であり、親水性が復活した。照射2週間
後、同様に接触角を測定したが、6度で良好な親水性が
持続していた。防曇性能を同様に調べた結果、照射直
後、照射14日後ともに曇りが全く観察されず、紫外線
照射により防曇性能が復活し、しかも長時間持続してい
ることが示された。
【0059】[実施例4]実施例2、3と同様に図1に
示すスパッタリング装置を用いて親水性薄膜層を形成
し、基板も同様なものを用いた。本実施例では、実施例
3のようにターゲットに用いる物質を2種類用意し、各
々交互に積層することにし、本実施例で得られる積層物
は、防曇性と反射防止性の両者を兼ね備えた性質を有す
るようにした。従って本実施例では、この積層物を親水
性反射防止膜と称する。
【0060】本実施例では、積層物中の最上層は酸化珪
素系薄膜で形成する。ターゲット13には、低屈折率用
金属ターゲットとして多結晶Siを使用し、ターゲット
19には、高屈折率用金属ターゲットとして多結晶Zr
を使用した。スパッタリングガスとして用いるアルゴン
ガスは導入口11および21から成膜室12、20にそ
れぞれ導かれイオン化される。このときのアルゴンガス
の流量は、390sccmに設定した。
【0061】本実施例では、最初に基板15上に酸化ジ
ルコニウムからなる薄膜を形成させる。まずグロー放電
により、成膜室20内にイオン化されたアルゴンガスを
発生させる。このアルゴンイオンを多結晶Zrターゲッ
ト19に入射させる。アルゴンイオンの入射によりスパ
ッタリングされたZr原子は、基板ホルダー14に保持
されたガラス基板15上に沈着する。本実施例では、沈
着による形成された膜の膜厚を数原子程度とした。沈着
時の基板の温度は室温程度とした。またZrターゲット
19のスパッタリング電力は2.60kWとした。また
Zr原子を数原子層だけ沈着させるために基板ホルダ1
4を100rpmで回転させた。この回転により、成膜
室20から反応室17への基板15の移動を行うことが
可能となり、また回転速度が高速であるため、沈着する
膜の膜厚を非常に薄くすることが可能となる。
【0062】反応ガスである酸素は、導入口16から反
応室17に導かれた後、高周波放電によりプラズマ状に
なる。このときのプラズマ電力を1.2kWとし、酸素
ガスの流量は120sccm、真空槽内の圧力は3.2
×10-3Torrとした。Zr原子が数原子程度の膜厚
で沈着した基板15は、100rpmで回転している基
板ホルダ14と共に回転し、成膜室20を出て反応室1
7に入り、反応室17を高速で通過していく。このと
き、反応室17内に存在している酸素プラズマに暴露さ
れ、酸素プラズマとZr原子が反応することにより酸化
ジルコニウム薄膜が形成される。この酸化ジルコニウム
薄膜の膜厚は、酸化前の金属Zrの沈着した状態での膜
厚と略同じであった。
【0063】本実施例では、前記の酸化ジルコニウム薄
膜の形成を繰り返すことにより、ガラス基板上に所定の
膜厚の酸化ジルコニウム薄膜を形成することができる。
言うまでもなく、酸化ジルコニウムの形成回数を多くす
れば、膜厚の厚い膜を得ることが可能となる。次に、前
記工程により基板15上に形成された酸化ジルコニウム
薄膜上に酸化珪素系薄膜からなる薄膜を形成する。まず
成膜室12に導入されたアルゴンガスをグロー放電によ
りイオン化されたアルゴンガスにする。そして、アルゴ
ンイオンを多結晶Siターゲット13に入射する。アル
ゴンイオンの入射によりスパッタリングされたSi原子
は、基板15上に形成されている酸化ジルコニウム薄膜
上に沈着する。
【0064】このときのSiターゲット13のスパッタ
リング電力は3.75kWである。また数原子層だけ沈
着させるために基板ホルダは100rpmで回転してい
る。反応ガスである酸素は、導入口16から反応室17
に導かれた後、高周波放電によりプラズマ状になる。こ
のときのプラズマ電力は1.2kWとし、酸素ガスの流
量は120sccmであり、真空槽内の圧力は3.2×
10-3Torrである。Si原子が沈着された基板15
が反応室17を通過するとき、基板15上に沈着された
Si原子が酸素プラズマに暴露されることにより、Si
原子と酸素プラズマが反応し酸化珪素系薄膜となる。
【0065】このような工程により基板15上に酸化ジ
ルコニウム薄膜と酸化珪素系薄膜を交互に積層させるこ
とができた。このようにして得られた親水性反射防止膜
の膜構成及び膜厚は、ガラス基材側から酸化ジルコニウ
ム薄膜が約130Å、酸化珪素系薄膜が約180Å、酸
化ジルコニウム薄膜が約1280Å、酸化珪素系薄膜が
約870Åとした。
【0066】本実施例で得られた酸化珪素系親水性薄膜
の水に対する静止接触角を測定した。測定には協和界面
科学株式会社製の接触角測定装置を用いた。その結果、
水の静止接触角は3度であり、良好な親水性を有してい
ることが明らかになった。また、親水性薄膜の防曇性能
を評価する為、試料を5℃に設定した冷蔵庫内に1時間
保管し、取り出した後直ちに吐息をかけてみたが、曇り
は全く観察されず、優れた防曇性能が確認された。更に
本発明者等は、親水性薄膜層を基板上に成膜してから1
年後に前記と同様の測定方法で静止接触角を測定した。
その結果、成膜後1年後の測定結果は22度で、親水性
が劣化していることが示された。成膜直後と同様な方法
で防曇性能を試験したところ曇りを生じ、防曇性能が劣
化していることが確認された。この薄膜に紫外線を照射
し、親水性の復活を試みた。本実施例でも、実施例1、
2、3と同様の紫外線の照射条件で行った。即ち、20
0W低圧水銀灯の光を40cmの距離で5分間照射し
た。
【0067】照射直後の試料の水の静止接触角を測定し
たところ3度であり、親水性が復活した。照射2週間
後、同様に接触角を測定したが、6度で良好な親水性が
持続していた。防曇性能を同様に調べた結果、照射直
後、照射14日後ともに曇りが全く観察されず、紫外線
照射により防曇性能が復活し、しかも長時間持続してい
ることが示された。
【0068】尚、本実施例では酸化珪素系物質との表現
を用いたが、これは一酸化珪素、二酸化珪素を総称した
意味である。従って、酸化珪素系薄膜の成分は、一酸化
珪素または二酸化珪素が単独で存在する状態や両者の混
合物である。
【0069】
【発明の効果】以上の様に本発明によれば、長期間の使
用により防曇性能が劣化しても特定波長の紫外線の照射
により防曇性能が回復し、更に長期間使用可能な防曇性
能を有する親水性薄膜層を提供することができる。また
防曇性能が劣化する前に紫外線を照射すれば、防曇性能
の劣化を遅延させることができ、より長期間使用可能な
親水性薄膜層を有する成形体が得られる。
【0070】また本発明の防曇性能を有する親水性薄膜
層は、特定の波長の紫外線照射による劣化がないため
に、防曇性能を何回でも回復させる事ができる。更に基
材と親水性薄膜層との間に紫外線吸収層を設けることに
より、防曇性能の回復のために照射する紫外線による基
材の劣化等の問題を防止することができ、更に性能の優
れた防曇性能を具えた親水性薄膜層を有する成形体が得
られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本実施例に関わるスパッタリング装置の概
略の上面図である。
【図2】は、本実施例に関わるスパッタリング装置の概
略の正面図である。
【符号の説明】
11、21・・・スパッタリングガス導入口 12、20・・・成膜室 13、19・・・ターゲット 14・・・・・・基板ホルダー 15・・・・・・基板 16・・・・・・反応ガス導入口 17・・・・・・反応室 18・・・・・・隔壁 22・・・・・・反応室として使用可能な領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C09K 3/18 G02B 1/10 Z Fターム(参考) 2K009 BB02 BB14 CC03 CC24 CC26 DD02 DD04 DD17 EE00 EE02 4F006 AA22 AB20 AB76 BA03 BA10 CA05 DA01 4F073 AA14 BA00 BB01 CA45 4G059 AA11 AC07 AC21 EA01 EA04 EA05 EB04 FA07 FA13 FA15 FA17 FA21 FA29 FB01 FB03 4H020 AA01 AB02

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上に防曇性能を有する親水性薄膜層
    を形成し、該親水性薄膜層に波長が300nm以下の短
    波長の紫外線を照射することを特徴とする防曇性能を有
    する成形体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記成形体の製造方法において、前記紫
    外線は、防曇性能が劣化した親水性薄膜層に照射するこ
    とを特徴とする請求項1に記載の防曇性能を有する成形
    体の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記親水性薄膜層がスパッタリング法で
    形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の
    成形体の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記スパッタリング法は、基材上に金属
    原子を付着させる工程と、前記金属原子を酸化させ酸化
    物を形成し親水性薄膜層を形成する工程を有することを
    特徴とする請求項3に記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 基材と、該基材上に300nm以下の波
    長の紫外線が照射された防曇性能を有する親水性薄膜層
    を有することを特徴とする成形体。
  6. 【請求項6】 前記基材と、前記親水性薄膜層との間に
    紫外線吸収層を有することを特徴とする請求項5に記載
    の成形体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2003255107A (ja) * 2001-12-28 2003-09-10 Hoya Corp ハイブリッド薄膜、それを用いてなる反射防止膜、光学部材及びハイブリッド薄膜の防曇性能復元方法
WO2013065591A1 (ja) * 2011-11-02 2013-05-10 大阪有機化学工業株式会社 防曇性プラスチックレンズ

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