JP2000001752A - 耐食性および疲労強度に優れた溶接継手 - Google Patents

耐食性および疲労強度に優れた溶接継手

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JP2000001752A
JP2000001752A JP16976398A JP16976398A JP2000001752A JP 2000001752 A JP2000001752 A JP 2000001752A JP 16976398 A JP16976398 A JP 16976398A JP 16976398 A JP16976398 A JP 16976398A JP 2000001752 A JP2000001752 A JP 2000001752A
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rust
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Naoki Saito
直樹 斎藤
Akira Usami
明 宇佐見
Koji Tanabe
康児 田辺
Yukio Tomita
幸男 冨田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 海浜地区や融雪塩散布などの塩害が懸念され
る地区における橋梁や鉄塔をはじめとする鋼構造物に対
して、優れた耐食性と高い溶接部疲労強度とを兼備する
溶接継手を提供する。 【解決手段】 重量%にてC:0.02〜0.20%、
Si:0.1〜1.6%未満、Mn:0.3〜2.0
%、Cu:0.3〜1.5%、Ni:1.0〜5.5
%、Ti:0.03超〜0.20%、Al:0.005
〜0.070%、N:0.002〜0.01%を含有
し、0.30≦Ceq(%)≦0.65〔ただし、Ce
q(%)=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(M
o+V)/5+Nb/3〕であり、残部がFeおよび不
可避的不純物から成り、不可避的不純物のうちP:0.
030%以下、S:0.01%以下、Cr:0.1%以
下である鋼材を母材とし、溶接熱影響組織のベイナイト
分率が60%以上である溶接継手。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海浜地区や融雪塩
を散布する地区など、高飛来海塩粒子環境で塩害が懸念
される大気環境にさらされる橋梁、鉄塔などの鋼構造物
などにおいて、優れた耐食性と疲労強度を兼備した高性
能な溶接継手に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、橋梁などの溶接構造物において、
建造コストの低減だけでなく、長年に渡る保守点検費用
も含めたコスト管理の重要性が問題になりつつある。そ
れに伴い、腐食および疲労破壊に対する溶接構造物の長
期間の信頼性向技術が注目を浴びるようになった。
【0003】すなわち、海岸地帯などの塩害が発生する
場所で使用する鋼構造部材の防食としては、普通鋼材の
塗装使用、めっき鋼板の使用、溶射やモルタルライニン
グなどの表面被覆の使用、ステンレスやチタンなどの高
合金高耐食材料の使用が挙げられる。しかしながら、近
年、鋼構造物の維持管理費を低減する技術目的で耐候性
鋼材(JISG3141溶接構造用耐候性鋼)を無塗装
で使用することが検討されている。
【0004】耐候性鋼材は、無塗装使用の場合、使用後
数年〜10年で鋼材表面に防食性に優れた緻密な安定さ
びが形成し、この安定さびがその後の鋼材の腐食の進行
を防ぐという鋼材である。鋼構造物には、溶接性を考慮
した耐候性溶接構造用鋼が、橋梁や建築物を中心にこれ
まで多く使用されてきた。しかしながら、「無塗装耐候
性橋梁の設計・施工要領(改訂案):建設省土木研究
所、鋼材倶楽部、日本橋梁建設協会、平成5年3月」に
示されるように、海浜地区や融雪塩を散布する地区など
飛来海塩粒子量が多い地域では、鋼材表面に付着した塩
分によって保護性に優れた安定さびの形成が阻害される
ため、無塗装使用に適さないといった問題点があった。
【0005】耐候性鋼の海浜地区での耐候性向上につい
ては、例えば特公昭56−9356号公報の発明では、
含P(0.03〜0.20%)で溶接性に優れ、かつ海
水が関与した腐食現象や一般大気環境で優れた耐候性を
有する鋼材が開示されている。また、特開平2−125
839号公報に記載の発明では、低Si−P−Cu−N
iの複合添加にCaとAlの複合酸化物の添加が有効で
あるとしている。また、特開平3−238952号公報
の発明では、酸化物を鋼材中に徹細分散させて鋼材表面
のpH低下を抑制することが有効であるとしている。ま
た、特開平6−59342号公報に記載の発明では、N
i−Cr−Alの複合添加が有効であるとしている。
【0006】このように、従来の耐候性鋼の欠点である
海浜地区での耐候性が優れた鋼材は開発されているが、
もう一つの課題である疲労破壊に対する信頼性の向上を
図らねばならない。特に、溶接継手部は応力集中や溶接
欠陥の存在などから多くの場合、疲労破壊の発生起点と
なる。 これまで、疲労破壊強度向上に関する技術が多
数公開されているが、そのほとんどは薄鋼板の母材、あ
るいは、スポット溶接部の疲労強度向上に関するもので
ある。例えば、特開昭61−96057号公報において
溶接郎のベイナイトの面積比率を5〜60%とすること
で疲労強度向上が図れることが記載されている。
【0007】溶接熱影響部のミクロ組織と疲労強度の関
係はこれまではとんど明らかにされていないが、特開平
5−34592号公報ではHAZ組織の疲労強度は島状
マルテンサイトの生成により向上することが明らかにさ
れている。すなわち、硬質の島状マルテンサイトがHA
Z組織中に存在すると、一旦発生したミクロな疲労き裂
は伝播を阻止あるいは遅延され、実質的に疲労強度が向
上することが記載されている。
【0008】また本発明者等は溶接部の疲労き裂発生・
伝播と、そのミクロ組織依存性に関する系統的な実験を
実施した結果、疲労き裂の発生と伝播を最も効果的に抑
制するHAZミクロ組織はフェライトであることを明ら
かにし、すなわち、炭素当量値(以下Ceq)を限定す
ることによりHAZフェライト組織分率を増加させて溶
接触手部の疲労強度を向上させ得る方法を先に提案して
いる(特開平8−73983号公報)。
【0009】さらに本発明者等は60〜80kgf/m
2 級高張力鋼のようにHAZ組織がベイナイトとなる
場合、疲労き裂発生・伝播の抑制は、Si添加とCeq
の限定が有効であることを明らかにしている。すなわち
Si添加はマルテンサイト変態を抑えつつベイナイト中
のフェライトを固溶強化してラス境界を強化する効果が
あり,Ceqの限定はベイナイト全体を強化することに
よって溶接郎の疲労強度を向上できることを提案した
(特開平8−209295号公報)。さらに、高Nb添
加も効果があることを明らかにしている。
【0010】しかしながら、これらの発明では耐食性に
ついては何ら言及しておらず、無塗装での使用の可否は
定かではない。このように、従来は、海浜地区において
も無塗装で使用可能で、かつ高い疲労強度を有する溶接
継手は得られていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明で解決す
べき課題は、塩害が懸念される環境で安定さびを形成し
て優れた耐候性を示すと同時に、溶接HAZが疲労破壊
に対して高い信頼性を有する溶接継手を提供することを
目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、耐候性鋼
が飛来海塩粒子の多い大気環境で、耐食性に優れた保護
さび膜を形成しにくいことに着目し、従来の耐候性鋼の
低合金鋼の成分系を基にして、研究を重ねてきた。その
結果、飛来海塩粒子の少ない内陸部においては鋼材の耐
候性向上に有効であるCrは、海浜地区や融雪塩を散布
する地区などの高飛来海塩粒子環境では、耐候性に村し
て顕著な悪影響があることが判明した。
【0013】また、種々の合金元素について耐候性向上
の検討を実施した結果、Cu−Niの複合添加が海浜地
区での安定さび生成に顕著に作用することが明らかにな
った。さらに、Cu−Ni系の適用限界(安定さびが十
分形成する上限の年平均飛来海塩粒子量)は、Ni添加
量ではぼ整理できることが判明した。Niは高価な添加
元素であることから、この知見によって腐食環境の厳し
さに応じて最も経済性に優れた鋼材を提供することが可
能となることを見いだした。
【0014】さらに、溶接HAZの疲労強度の向上に関
して、発明者らは多くの実験による検証の結果、鋼Nb
添加と同様にTiをある一定以上添加することで、同様
に溶接HAZの疲労強度が上昇することを見いだし、さ
らに耐候性を確保するために必要なNiを添加しても、
HAZ組織をベイナイト主体とすることでその効果は何
ら支障がないことも確認した。
【0015】本発明は上記の知見に基づくものであっ
て、その要旨とすることろは下記の通りである。 (1)重量%にて、C :0.02〜0.20%、S
i:0.1〜1.6%未満、Mn:0.3〜2.0%、
Cu:0.3〜1.5%、Ni:1.0〜5.5%、T
i:0.03超〜0.20%、Al:0.005〜0.
070%、N :0.002〜0.01%、を含有し、 0.30≦Ceq(%)≦0.65 〔ただし、Ceq(%)=C+Mn/6+(Cu+N
i)/15+(Mo+V)/5+Nb/3〕 であって、残部がFeおよび不可避的不純物から成り、
かつ該不可避的不純物のうち、P、SおよびCrが、P
:0.030%以下、S :0.01%以下、Cr:
0.1%以下、である鋼材を母材とし、溶接継手部の熱
影響組織のベイナイト分率が60%以上であることを特
徴とする耐食性および疲労強度に優れた溶接継手。
【0016】(2)前記母材としての鋼材が、重量%に
て、 Mo:0.1〜1.0% V :0.005〜0.07% Nb:0.005〜0.04% の一種または二種以上を更に含有することを特徴とする
(1)記載の溶接継手。
【0017】(3)前記母材としての鋼材が、重量%に
て、Ca :0.0005〜0.0100%、Mg :
0.0005〜0.0100%、REM:0.0005
〜0.0100%、の一種または二種以上を含有するこ
とを特徴とする(1)または(2)記載の溶接継手。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施する形態につ
いて説明する。まず、本発明の鋼における化学組成の限
定理由とその作用について述べる。Cは、構造材料とし
ての強度を確保するために必要であり、0.02%以上
添加するが、0.20%を超えて含まれると溶接HAZ
組織がベイナイト化できないため、その上限を0.20
%とした。
【0019】Siは、脱酸のための必須元素であり、か
つ疲労強度を向上させる元素であり0.1%以上添加す
るが、1.6%を超えて添加すると、靱性が著しく低下
するために、その上限を1.6%とした。Mnは、脱
酸、強度調整の効果に加え、不純物であるSをMnSと
して固定し、Sによる熱間脆性の防止の効果があり、
0.3%以上の添加が必要であるが、2.0%を超えて
添加すると溶接性が阻害されるので、その範囲を0.3
〜2.0%とした。
【0020】Cuは、鋼中Feと共に溶出し、さび層の
形成時にさび粒子の結晶化・粗大化を抑制し、さびの緻
密さを保持するため、飛来海塩粒子の多い環境での耐候
性を向上させるのに必須の元素であり、0.30%以上
の添加で有効である。その効果は含有量が多いほど大き
くなるが、1.5%を超えると溶接性低下や熱間加工に
おける割れが問題となるので、その範囲を0.3〜1.
5%とした。
【0021】Niは、さび層中に0.5%以上含まれる
と鋼中Feと共に溶出し、さび層中に均一に含まれるこ
とにより、さび層表面に飛来海塩粒子として付着したC
lイオンのさび層/地鉄界面への浸透を抑制し、さび層
内部を低Cl環境としてさび粒子の結晶化・粗大成長を
抑制することにより、さび層の緻密さを保持する作用が
ある。また、鋼中Ni添加量の増加に従って、Clイオ
ンを含む水溶液中での乾湿繰り返し腐食環境で鋼材の耐
食性が向上する。本発明者らの研究によれば、さび層中
に0.5%以上Niが含まれるためには、1.0%以上
のNi添加が有効であることが明らかとなった。また、
5.5%を超えるとコスト高となるので、1.0%〜
5.5%とした。
【0022】Tiは、窒化物として鋼中に分布すること
で結晶粒を細粒化する元素として知られているが、その
細粒化効果と同時に、HAZ近傍では固溶による強化に
より疲労強度の向上を図ることができる元素であり、有
効に活用するためには、0.03%を超えた添加が必要
であるが、0.20%を超えると炭化物の著しい生成に
よりHAZ硬さの上昇を招くために、その範囲を0.0
3%超〜0.20%とする。
【0023】Alは、脱酸元素として0.005%以上
必要であるが、添加量が多いと介在物が増加するため、
上限を0.070%とする。Nは、Tiをともに鋼中に
存在すると、TiNを析出し結晶粒の微細化に効果があ
るため、0.002%以上含まれることが必要である
が、0.008%以上現有すると、HAZの靱性が低下
するためにその範囲を0.002〜0.01%とする。
【0024】本発明鋼は以上の元素を必須成分として含
有し、残部は実質的にFeおよび不可避的不純物であ
る。不可避的不純物のうち特にP、S、Crは、鋼材の
特性に影響を及ぼす量で存在する可能性が大きいため、
その含有量を以下のように限定する。Pは、一般に鋼材
の耐候性を向上するのに有効な元素であるが、溶接母材
としての鋼材においては、0.030%を超えて含まれ
ると母材および溶接HAZの靱性が低下し、構造物とし
ての性能を損なうため、その範囲を0.030%以下と
した。
【0025】Sは、鋼材の靭性や耐候性を劣化させる不
可避的不純物であり、少ないはど好ましい。特に0.0
1%を適えて含まれると介在物が増加すると共に、溶接
HAZの靭性を著しく低下させるので、その範囲を0.
01%以下とした。Crは、Feよりも卑な金属のた
め、数%の添加では海塩粒子の多い環境中での耐候性を
阻害する他、溶接性を阻害するため、少なければ少ない
はどよい。0.1%以下であれば、耐候性や溶接性への
阻害作用はほぼ無視できるので、その範囲を0.1%以
下とした。
【0026】以上が本発明における基本成分系である
が、さらに本発明においては上記成分の添加量と溶接熱
影響郎のCeqとの間に、0.30≦Ceq(%)≦
0.65を満足せしめることを重要な骨子としており、
これにより溶接部の疲労強度を向上させるものである。
すなわち、Ceqが0.30%未満ではHAZ組織にお
けるベイナイト中のセメンタイトラスとラス境界の強度
差が大きくなり、ラス境界での疲労き裂が容易に発生す
る。従ってCeqは高いはどよいが、0.65%を超え
るとベイナイトからマルテンサイト主体の組織になって
疲労強度が低下する。従ってその範囲を0.30〜0.
65%に限定した。
【0027】選択的に添加するMo、V、Nbの中で、
Mo,Vは焼入れ性を高めCeqを高める元素であり、
基本成分に一種あるいは二種以上含有することが効果的
である。Nbは強度靱性の改善に有効な元素である。以
下に、各元素の強度及びその他の効果に対する成分限定
理由を述べる。Moは、強度を高める他、焼戻し脆性を
防止する。また未再結晶温度域を拡大して低温圧延によ
る細粒化効果を助長する。これ等の効果は0.1%未満
では十分に現れない。また、1.5%を超えると粗大な
炭化物を生成して靭性を低下させる他:HAZを著しく
硬化させる。従って、その添加量を0.1〜1.5%と
する。
【0028】Vは、焼戻し時に炭・窒化物を生成して析
出硬化により強度を上昇させる。そのため0.005%
以上の添加が必要であるが、0.07%を超えるとHA
Z靭性を低下させる。従って、その添加量を0.005
〜0.07%とする。Nbは、制御圧延時に未再結晶温
度を上昇させ、圧延生産性を向上できると同時に、析出
強化により母材強度の上昇が図れる元素であり、有効に
活用するためには、0.005%以上の添加が必要であ
るが、過剰な添加は母材靱性を低下することがあるの
で、その範囲を0.005〜0.04%とする。
【0029】CaおよびMgは、必要に応じて添加する
ものであり、これらを添加すると、鋼中に酸化物または
硫化物として存在し、地鉄から溶出することにより、C
a(OH)2 やMg(OH)2 などを形成して、さびコ
ロイド粒子生成初期の成長を抑制するため、さび粒子の
微細析出、凝集を促進する。その効果は0.05%以上
の添加で有効であり、.0.0100%で飽和するの
で、それらの元素の含有量を0・0005%〜0.01
00%とした。
【0030】REMも、必要に応じて添加するものであ
り、介在物の形態を制御して板厚方向の引張特性を改善
し、ラメラーティアの軽減や低温靭性の向上に有効であ
る。このために0.0005%以上含有するが、添加量
が多すぎると介在物が増加するため、上限を0.010
0%とした。本発明の溶接継手は、上記の化学組成を有
する鋼板を母材とし、かつ溶接熱影響部(HAZ)のミ
クロ組織のベイナイト分率を60%以上とする。ベイナ
イト分率を60%以上とすることにより高い疲労強度が
確保される。ここで、本発明において規定するベイナイ
ト分率とは、下記の測定方法により求めた値である。
【0031】〔ベイナイト分率測定方法〕ベイナイト分
率は、倍率200倍の光学顕微鏡写真において5mm間隔
のメッシュを用いたポイントカウント法により200個
以上の測定ポイントに対するベイナイト組織の割合とし
て求めた。本発明の溶接継手は、前記化学組成の鋼材を
母材として各種の溶接方法により形成することができ
る。すなわち、例えば手溶接(SMAW)、炭酸ガス溶
接、各種自動溶接(SAW、GTAW、CES)などで
あり、その他、それに替わり得る物で有れば、本発明に
は何ら差し支えはない。本発明範囲の鋼材を母材として
通常の溶接方法を用いれば、溶接HAZ組織のベイナイ
ト分率がおおよそ60%以上となることが、発明者らの
研究から明らかになっている。しかしながら、溶接入熱
よりHAZ組織は影響を受けるので、本発明の狙いとす
る溶接HAZの高疲労強度化を図るためには、熱影響組
織のベイナイト分率が60%以上になるように溶接条件
を調整することが望ましい。
【0032】さらに、本発明による鋼材は、塗装や溶射
などの防食被覆された状態でも、普通鋼や従来の耐候性
鋼に比較して、遥かに優れた皮膜耐久性を有することが
判明した。これは、皮膜の局所的な欠陥部から下地鋼板
の腐食が進行しても、生成したさびが緻密で保護性に優
れるため、防食皮膜の更なる剥離や皮膜下腐食の進展を
抑制するものと准察される。この場合、溶接HAZの疲
労強度には何ら影響は認められず、耐候性と高疲労強度
を両立することが可能である。
【0033】
【実施例】表1に示す化学成分を有する鋼を溶製し、熱
間圧延まま、あるいは圧延後に熱処理を施して、板厚2
0mmの鋼板を製造した。これらの供試鋼を用いて、下
記に示す耐食性試験および溶接継手部の疲労試験を実施
した。すなわち、耐食性を表す指標として、5年間千葉
県富津市臨海部(0.5〜0.8mg/100cm2/
day)において暴露された無塗装表面のさびの外観評
点1〜4によって評価した。外観評点とは、4が最も良
好で安定さびを形成し、1が層状の剥離さびが認められ
さびの安定化および腐食進展の防止が期待できない状態
を示す指標であり、詳しくは下記のとおりである。
【0034】〔外観評点〕 1:全面赤色の剥離さび 2:黒色のさびに赤色のさびが面積率30%を超えて存
在 3:黒色のさびに赤色のさびが面積率30%以下存在 4:全面黒色の緻密なさび (注)「黒色」とは、黒褐色、チョコレート色を含む。
【0035】また、溶接部疲労強度は、CO2 半自動溶
接[入熱:18kJ/cm]によりT字隅肉継手を製作
し、図1に示す3点曲げ疲労試験片を用いて、繰り返し
の最大荷重と最小荷重の比(応力比)が0.1であるよ
うな応力条件で試験を行い、106 回疲労強度として評
価を行った。上記各試験の結果を表2に示す。同表には
鋼板の母材引張強さおよびHAZ組織についても合わせ
て示した。
【0036】表2の結果から、本発明鋼A〜Gは106
回疲労強度がすべて280MPa以上と高く、かつさび
の評点がすべて4であり良好な耐食性を有していること
が分かる。それに対し、化学組成が本発明の範囲から逸
脱している比較鋼H〜Nは、下記のように特性が劣って
いた。
【0037】すなわち、比較鋼HはC量が本発明範囲を
超えて0.22%と過剰に添加された例であり、HAZ
における焼入れ性の上昇のために、HAZのベイナイト
組織の割合が40%と低下しており、疲労強度も200
MPaと低い。比較鋼I、J、およびKは耐食性に関わ
る化学成分が本発明の範囲を逸脱した例である。すなわ
ち、比較鋼IはCu添加量が0.05%、比較鋼JはN
iが0.65%といずれも低く添加された例であり、比
較鋼KはCrが0.19%と本発明の範囲を超えて過剰
に添加された例である。これらの鋼を用いた溶接継手の
疲労強度は良好であるものの、耐食性はすべて低下して
いる。
【0038】更に、比較鋼LはTiが0.019%と本
発明の範囲より低い例であり、耐食性は良好であるが、
疲労強度が180MPaと低い。比較鋼M,Nはいずれ
もCeqの範囲が本発明範囲を超えているもので、比較
鋼Mは0.23%と低く、比較鋼Nは0.67%と高
い。その結果、耐食性は両者ともに良好であるが、HA
Zベイナイト分率がそれぞれ60%以上を満たしておら
ず、疲労強度はそれぞれ200,220MPaと本発明
鋼より低くなっている。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
海浜地区や融雪塩散布などの塩害が懸念される地区にお
ける橋梁や鉄塔をはじめとする鋼構造物に対して、優れ
た耐食性と高い溶接部疲労強度とを兼備する溶接継手が
提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、T字隅肉継手の3点曲げ疲労試験方法
を示す正面図である。
フロントページの続き (72)発明者 田辺 康児 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 冨田 幸男 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4E081 AA08 DA84 FA14 YB10 YX20

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、 C :0.02〜0.20%、 Si:0.1〜1.6%未満、 Mn:0.3〜2.0%、 Cu:0.3〜1.5%、 Ni:1.0〜5.5%、 Ti:0.03超〜0.20%、 Al:0.005〜0.070%、 N :0.002〜0.01%、を含有し、 0.30≦Ceq(%)≦0.65 〔ただし、Ceq(%)=C+Mn/6+(Cu+N
    i)/15+(Mo+V)/5+Nb/3〕 であって、残部がFeおよび不可避的不純物から成り、
    かつ該不可避的不純物のうち、P、SおよびCrが、 P :0.030%以下、 S :0.01%以下、 Cr:0.1%以下、である鋼材を母材とし、溶接継手
    部の熱影響組織のベイナイト分率が60%以上であるこ
    とを特徴とする耐食性および疲労強度に優れた溶接継
    手。
  2. 【請求項2】 前記母材としての鋼材が、重量%にて、 Mo:0.1〜1.0% V :0.005〜0.07% Nb:0.005〜0.04%の一種または二種以上を
    更に含有することを特徴とする請求項1記載の溶接継
    手。
  3. 【請求項3】 前記母材としての鋼材が、重量%にて、 Ca :0.0005〜0.0100%、 Mg :0.0005〜0.0100%、 REM:0.0005〜0.0100%、の一種または
    二種以上を含有することを特徴とする請求項1または2
    記載の溶接継手。
JP16976398A 1998-06-17 1998-06-17 耐食性および疲労強度に優れた溶接継手 Withdrawn JP2000001752A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2199422A1 (en) * 2008-12-15 2010-06-23 Swiss Steel AG Low-carbon precipitation-strengthened steel for cold heading applications
CN104419871A (zh) * 2013-09-05 2015-03-18 鞍钢股份有限公司 耐海洋环境腐蚀性能优良的焊接结构用钢及其制造方法
CN110656285A (zh) * 2019-09-10 2020-01-07 南京钢铁股份有限公司 一种一钢多级用结构钢坯料生产方法

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