JP2001262273A - 溶接性に優れた耐候性鋼管 - Google Patents

溶接性に優れた耐候性鋼管

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JP2001262273A
JP2001262273A JP2000078970A JP2000078970A JP2001262273A JP 2001262273 A JP2001262273 A JP 2001262273A JP 2000078970 A JP2000078970 A JP 2000078970A JP 2000078970 A JP2000078970 A JP 2000078970A JP 2001262273 A JP2001262273 A JP 2001262273A
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weldability
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Yoshio Terada
好男 寺田
Akihiko Kojima
明彦 児島
Teruhisa Takamoto
照久 高本
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶接性が良好で、かつ海浜地区において優れ
た耐候性を有する鋼管を提供する。 【解決手段】 鋼管母材として、Ni−Cu系成分を適
用し、MgとAlから成る酸化物を内包する微細なTi
Nを含有し、溶接金属として、海浜地区での耐候性およ
び高温割れ防止の観点からC量、P量、S量およびNi
量を適正な範囲に限定した溶接鋼管。 【効果】 溶接性が良好で、海浜地区において優れた耐
候性を有する鋼管の提供が可能となった。その結果、鋼
構造物の製造コストが大幅に低減されると共に、保守管
理費用の削減が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は海浜地区や融雪塩を
散布する地区など、高飛来海塩粒子環境で塩害が懸念さ
れる大気環境における橋梁、鉄塔などの鋼構造物に使用
される溶接性の良好な耐候性鋼管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、海岸地帯などの塩害が発生する場
所で使用する鋼構造部材の防食として、普通鋼材の塗装
使用、めっき鋼板、溶射やモルタルライニングなどの表
面被覆、ステンレスやチタンなどの高合金高耐食材料が
使用されている。さらに、鋼構造物の維持管理費を低減
する技術として、耐候性鋼材(JIS G3141 溶接構造用耐
候性鋼)の無塗装使用がある。
【0003】塗装の場合、塗り替えが必要となるので、
維持管理費が高くなる。また、めっきの場合、構造体の
溶融めっきでは熱応力による変形やめっきの剥離があ
る。溶射やモルタルライニングの場合も、防食皮膜の剥
離や劣化などの問題がある。さらに、高合金の耐食材料
の場合は材料コストが高く、主要構造部材として広く使
えないという問題がある。
【0004】耐候性鋼材は、無塗装使用の場合は使用後
数年から10年程度で鋼材表面に防食性に優れた緻密な
安定さびが形成し、この安定さびがその後の鋼材の腐食
の進行を防ぐ鋼材である。鋼構造物には、橋梁や建築物
を中心に溶接性を考慮した耐候性溶接構造用鋼が、これ
まで多く使用されてきた。しかしながら、「無塗装耐候
性橋梁の設計・施工要領(改訂案):建設省土木研究
所、鋼材倶楽部、日本橋梁建設協会、平成5年3月」に
示されるように、海浜地区や融雪塩を散布する地区など
飛来海塩粒子が多い地域では、鋼材表面に付着した塩分
によって保護性に優れた安定さびの形成が阻害されるた
め、無塗装使用に適さないといった問題点があった。
【0005】耐候性鋼の海浜地区での鋼材の耐候性向上
について、例えば特公昭56−9356号公報では、P
を0.03〜0.20%含有し、溶接性に優れ、かつ海
水が関与した腐食環境や一般大気環境で優れた耐候性を
有する鋼材が開示されている。また特開平2−1258
39号公報には、低Si−P−Cu−Niの複合添加に
CaとAlの複合酸化物の添加が有効であることが記載
されている。また特開平5−51668号公報では、酸
化物を鋼材中に微細分散させて、鋼材表面のpHの低下
を抑制することが有効である旨開示されている。このよ
うに、従来の耐候性鋼の欠点である海浜地区での耐候性
に優れた鋼材が開発されている。
【0006】近年、橋梁の建設コストに大きな比重を占
める部材の溶接を省略するために、鋼管を橋梁桁に使用
することが提案されている。橋梁桁として使用される鋼
管は、主としてUOEやBR(ベンディングロール)で
製造される大径の溶接鋼管である。これらの鋼管はサブ
マージドアーク溶接(SAW)により製造されるが、N
iを多く含む場合は溶接時に高温割れ(凝固割れ)が発
生する。また溶接熱影響部(HAZ)の硬さが上昇し、
水素による低温割れが発生する。このため溶接性が良好
で、海浜地区での耐候性に優れた鋼管が強く望まれてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は溶接性が良好
で、かつ海浜地区での耐候性に優れた鋼管を提供するも
のである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、質量%
で、 C :0.03〜0.15、 Si:0.6以下、 Mn:0.3〜2.0、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Cu:0.3〜1.0、 Ni:1.0超〜5.5、 Cr:0.1以下、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.001〜0.050、 Mg:0.0001〜0.0050、N :0.001〜0.006、 O :0.001〜0.006を含有し、 必要に応じて、さらに Mo:0.1〜1.0、 Nb:0.005〜0.1、 V :0.01〜0.1、 B :0.003〜0.002、 Ca:0.001〜0.005のうち一種または二種以
上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、
MgとAlから成る酸化物を内包する0.01〜0.5
μmのTiNが10000個/mm2 以上含有する母材
と、質量%で C :0.02〜0.07、 Si:0.6以下、 Mn:0.3〜2.0、 P :0.01以下、 S :0.005以下、 Cu:0.1〜1.0、 Ni:1.0超〜3.5、 Cr:0.1以下、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.09以下、 N :0.001〜0.006、 O :0.02〜0.06を含有し、 必要に応じて、さらに Mo:0.1〜1.0、 Nb:0.005〜0.1、 V :0.01〜0.1、 B :0.0003〜0.002、 Ca:0.001〜0.005、 Mg:0.0001〜0.0050の うち一種または二種以上を含有し、残部が鉄および不可
避的不純物からなり、さらにNi量が前記母材の2.0
%少ない領域から0.2%多い領域の範囲にある溶接金
属部を有することを特徴とする溶接性に優れた耐候性鋼
管である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明の溶接性が良好で、
かつ海浜地区での耐候性に優れた鋼管について詳細に説
明する。従来、飛来海塩粒子の少ない内陸部において、
耐候性の向上にはCrが有効であることが知られてい
る。しかしながら、海浜地区や融雪塩を散布する地区な
どの高飛来塩粒子環境では、Crは耐候性に対して悪影
響を及ぼすことが判明した。また、種々の合金元素につ
いて耐候性を向上させるための検討を行った結果、Cu
−1%以上のNiの複合添加が海浜地区での安定さび生
成に有効であることが明らかとなった。さらに、Cu−
Ni系の適用限界(安定さびが十分に形成する上限の年
平均飛来海塩粒子量)はNi添加量でほぼ整理できるこ
とが判明した。
【0010】一方、溶接鋼管において、海浜地区におい
て優れた耐候性を有し、かつ溶接品質に優れた溶接金属
成分について鋭意検討した結果、溶接金属のNi量が母
材の少なくとも2.0%少ない領域以上であれば、良好
な耐候性が得られることを見出した。さらに、溶接金属
のNi量が母材Ni+0.2%以下で、かつ3.5%以
下であること、および溶接金属中のC、P、S量を限定
することにより、多量のNiを含有する場合でも高温割
れが発生しないことを見出した。
【0011】さらに、母材に多量のNiを含有した場
合、HAZの硬さが著しく上昇し、低温割れが発生しや
すくなるため、HAZ硬さを低減する方法について鋭意
検討した結果、母材にMgとAlから成る酸化物を内包
する微細なTiNを含有すれば、溶融線近傍の高温に再
加熱された領域でもγ粒径の成長が抑制され、微細なγ
からのα変態となるので、γ→α変態温度が上昇し、H
AZ硬さが低減されることを見い出し、本発明に至っ
た。
【0012】すなわち、本発明の特徴は、鋼管母材とし
て、Ni−Cu系成分を適用し、MgとAlから成る酸
化物を内包する微細なTiNを含有し、溶接金属として
海浜地区での耐候性および高温割れ防止の観点からC
量、P量、S量およびNi量を適正な範囲に限定するこ
とにより、溶接性が良好で、かつ海浜地区での耐候性に
優れた鋼管を提供するものである。
【0013】まず、再加熱時のγ粒成長抑制によるHA
Z硬さ低減について説明する。溶融線近傍のHAZでは
1400℃以上となるので、TiN等の炭窒化物が溶解
・粗大化してγ粒界の移動を抑制する力が著しく低下
し、γ粒の成長を避けることはできなかった。このため
溶接後の冷却中に、溶融線近傍では粗大化したγからα
変態するため、変態温度が低下し、硬さが著しく上昇し
た。特にNiを多量に含有する本発明鋼では硬さの上昇
が著しくなり、低温割れが発生する。
【0014】耐候性の確保の観点からNi量を低減でき
ないため、γ→α変態時のγ粒径の微細化によるγ→α
変態温度の上昇を通じて硬さを低減する方法として、1
400℃以上の高温でも化学的に安定である酸化物によ
る粒成長抑制効果を検討した。その結果、微量のMgと
Alを含有させることで、0.01〜0.1μmの大き
さの従来にない極めて微細な(Mg、Al)酸化物が多
量に生成することを見出した。さらに0.01以上0.
5μm未満の大きさの微細なTiNがこの(Mg、A
l)酸化物上に複合析出し、1400℃以上の高温で従
来にない非常に強力な粒成長抑制効果を発揮することを
明らかにした。この時、鋼中に含有する0.01〜0.
5μmのTiNが10000個/mm2 未満の場合には、
γ粒の粗大化抑制効果が不十分となり、良好なHAZ靱
性を得ることができない。また0.5μm以上のTiN
はγ粒成長の抑制効果が少ないので、必要とするTiN
の大きさの上限を0.5μmとした。なお、TiNの大
きさの下限は分析の精度の観点から0.01μm以上と
した。以上、述べた知見をもとに溶融線近傍のHAZ硬
さが低減し、低温割れを防止できることを明らかにし
た。
【0015】次に、鋼管母材の成分限定理由について説
明する。Cは母材および溶接部の強度を確保するために
必要な元素であり、その下限は0.03%(質量%、以
下同じ)である。しかしながら、C量が多すぎると低温
靱性、溶接性が劣化するので、その上限の値を0.15
%とした。
【0016】Siは脱酸や強度向上のため添加する元素
であるが、多く添加すると溶接熱影響部(HAZ)靱性
を劣化させるので、上限を0.6%とした。鋼の脱酸は
AlやTiのみでも十分であり、Siは必ずしも添加す
る必要はない。
【0017】Mnは強度、低温靱性を確保する上で不可
欠な元素であり、その下限は0.3%である。しかしM
nが多過ぎると鋼の焼入性が増加して溶接性を劣化させ
るだけでなく、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、低温
靱性も劣化させるので上限を2.0%とした。
【0018】Pは耐候性を向上させる元素であるが、
0.03%を超えると低温靱性、溶接性が劣化するの
で、その上限の値を0.03%とした。とくに溶接部の
高温割れを防止するためには、0.015%以下が好ま
しい。
【0019】Sは鋼管の靱性や耐候性を劣化させる不可
避的不純物であるので、少ないほど好ましい。特に、
0.01%を超えると低温靱性が劣化するので、0.0
05%以下が好ましい。
【0020】Cuはさび層の形成時にさび粒子の結晶・
粗大化を抑制し、さびの緻密さを保持するため、飛来海
塩粒子の多い環境での耐候性を向上させる元素であり、
この効果を発揮させるためには0.3%以上の添加が必
要である。しかし、1.0%を超えると析出硬化により
母材、HAZの靱性劣化や熱間圧延時にCu−クラック
が発生するために、その上限の値を1.0%とした。
【0021】Niはさび層表面に飛来海塩粒子として付
着したClイオンのさび層/地鉄界面への浸透を抑制
し、さび層内部を低Cl環境として、さび粒子の結晶化
・粗大成長を抑制することにより、さび層の緻密さを保
持する効果を有する。この効果を発揮させるためには、
1.0%超の添加が必要である。しかし、5.5%超の
添加は鋼板表面にひび割れが発生するため、その上限を
5.5%とした。
【0022】Crは鉄よりも卑な金属であるため、数%
の添加では海塩粒子の多い環境中での耐候性や溶接性を
阻害するため、少なければ少ないほど好ましい。特に、
0.1%を超えると耐候性が劣化するので、上限の値を
0.1%とした。
【0023】Tiは微細なTiNを形成し、スラブ再加
熱時およびHAZのγ粒の粗大化を抑制し、ミクロ組織
を微細化して、母材およびHAZの低温靱性、HAZ硬
さを改善し、本発明において必須の元素である。この効
果を発揮させるためには0.005%以上の添加が必要
である。また多すぎるとTiNの粗大化やTiCによる
析出硬化が生じて低温靱性を劣化させるので、その上限
の値を0.03%に限定した。
【0024】Alはγ粒成長を抑制する粒子である複合
析出物TiNの析出核である0.01〜0.1μmの
(Mg、Al)酸化物を制御するうえで重要である。A
lが0.001%未満の場合、(Mg、Al)酸化物の
個数が10000個/mm2 未満となり、複合析出Ti
Nの個数が不足することでγ粒が十分に細粒化されず、
HAZ硬さの低減が得られない。一方、Al量が0.0
50%を超えるとAl系非金属介在物が増加して、鋼の
清浄度を劣化させるので、上限を0.050%とした。
【0025】Mgは本発明の重要な役割を有する元素で
ある。Mgを適量含有することにより、本発明における
酸化物の分散状態を達成することができる。Mgが0.
0001%未満の場合、TiNの析出核である(Mg、
Al)酸化物が不足する。一方、酸化物として消費され
るMgは0.0050%あれば十分である。Mgは蒸気
圧が高く、酸化力が強い非常に活性な元素であることか
ら、必要以上に鋼中に含有させることは製造コストの上
昇を招き、好ましくない。
【0026】NはTiNを形成し、スラブ再加熱時およ
びHAZのγ粒の粗大化を抑制して母材、HAZの低温
靱性を向上させる。このために必要な最小量は0.00
1%である。しかし、N量が多すぎるとスラブ表面きず
や固溶NによるHAZ靱性の劣化の原因となるので、そ
の上限の値は0.006%に抑える必要がある。
【0027】OはTiNの析出核である(Mg、Al)
酸化物の個数を確保するうえで必要である。Oが0.0
01%未満の場合、微細酸化物の個数が不足し、γ粒成
長抑制効果が発揮されない。一方、Oが0.006%を
超える場合、鋼の清浄度が低下して靱性などの機械的性
質が劣化する。
【0028】次に、母材成分として更にMo、Nb、
V、B、Caを添加する理由について説明する。基本成
分に、必要に応じてさらにこれらの元素を添加する主た
る目的は本発明鋼の特徴を損なうことなく、強度・低温
靱性などの特性の向上を図るためである。したがってそ
の添加量は自ら制限されるべき性質のものである。
【0029】Moは母材および溶接部の強度を上昇させ
る元素であるが、1.0%を超えると母材、HAZの靱
性および溶接性を劣化させる。また0.1%未満の添加
ではその効果が薄い。
【0030】Nbは制御圧延時にγの再結晶を抑制して
結晶粒を微細化するだけでなく、析出硬化や焼入れ性の
増大にも寄与し、鋼を強靱化する作用を有する。この効
果を得るためには最低0.005%のNbが必要であ
る。しかしながら、Nb量が多すぎるとHAZ靱性が劣
化するので、その上限の値を0.1%に限定した。
【0031】VはほぼNbと同様の効果を有するが、そ
の効果はNbに比較して格段に弱い。その効果を発揮さ
せるためには0.01%以上の添加が必要である。また
上限は現地溶接性、HAZ靱性の点から0.1%まで許
容できる。
【0032】Bは極微量で鋼の焼入れ性を飛躍的に高
め、良好な強度と靱性が得られる。この効果を発揮させ
るためには0.0003%以上の添加が必要である。ま
た多すぎるとHAZ靱性を劣化させるので、その上限の
値を0.002%に限定した。
【0033】Caは硫化物(MnS)の形態を制御し、
低温靱性を向上(シャルピ−試験における吸収エネルギ
−の増加など)させる。0.001%未満ではその効果
が少なく、また0.005%を超えて添加すると、Ca
O−CaSが大量に生成してクラスタ−、大型介在物と
なり、鋼の清浄度を害するだけでなく現地溶接性にも悪
影響をおよぼす。このためCa添加量を0.001〜
0.005%に制限した。
【0034】次に溶接金属の成分限定理由について説明
する。良好な耐候性を有する、Niを多量に含有する鋼
を大入熱で溶接する場合、高温割れが発生する。そこ
で、溶接金属の高温割れ防止および良好な耐候性確保の
ためには、C:0.02〜0.07%、P:0.01%
以下、S:0.005%以下、Ni:1.0超〜3.5
%、かつNi量が母材のNi量より2.0%少ない領域
から0.2%多い領域の範囲に限定する必要がある。
C、P、SおよびNi量を限定することにより、高温割
れを防止することができる。このため、C、P、S量の
上限をそれぞれ0.07%、0.01%および0.00
5%に限定した。
【0035】さらに、溶接金属のNi量が母材Ni量+
0.2%以下で、かつ3.5%以下であれば、高温割れ
を防止できる。なお、溶接金属のNi量が母材Ni量よ
り2.0%超少ない領域以上であれば良好な耐候性が得
られるので、下限の値を1.0%超で、かつ母材Ni量
の2.0%少ない量とした。また、Cは溶接部の強度を
確保するために必要な元素であり、その効果を発揮させ
るために下限の値を0.02%に限定した。
【0036】Siは脱酸や強度向上のため添加する元素
であるが、多く添加すると低温靱性を劣化させるので、
上限を0.6%とした。
【0037】Mnは強度、低温靱性を確保する上で不可
欠な元素であり、その下限は0.3%である。しかし、
Mnが多すぎると鋼の焼入れ性が増加して低温靱性を劣
化させるので、上限を2.0%とした。
【0038】Cuはさび層の形成時にさび粒子の結晶・
粗大化を抑制し、さびの緻密さを保持するため、飛来海
塩粒子の多い環境での耐候性を向上させる元素であり、
溶接金属においてこの効果を発揮させるためには、0.
1%以上の添加が必要である。しかし、1.0%を超え
ると析出硬化により靱性が劣化するため、その上限を
1.0%とした。
【0039】Crは鉄よりも卑な金属であるため、数%
の添加では海塩粒子の多い環境中での耐候性を阻害する
ため、少なければ少ないほど好ましい。特に、0.1%
を超えると耐候性が劣化するので、その値未満とした。
【0040】Tiは微細なTiNやTiOを形成し、ミ
クロ組織を微細化して溶接金属の低温靱性を改善する。
この効果を発揮させるためには0.005%以上の添加
が必要である。また多すぎるとTiCによる析出硬化が
生じ、低温靱性を劣化させるので、その上限の値を0.
03%に限定した。
【0041】Alは通常脱酸元素として効果を有する。
しかし、Al量が0.09%を超えるとAl系非金属介
在物が増加して鋼の清浄度を劣化させるので、上限を
0.09%とした。鋼の脱酸はTiのみでも十分であ
り、Alは必ずしも添加する必要はない。
【0042】NはTiNを形成し、ミクロ組織を微細化
して、低温靱性を向上させる。このために必要な最小量
は0.001%である。しかし、N量が多すぎると固溶
Nによる靱性の劣化の原因となるので、その上限の値は
0.006%に抑える必要がある。
【0043】Oは溶接金属中において酸化物を形成し、
粒内変態フェライトの核として作用し、組織の微細化に
効果がある。しかし、多すぎると溶接金属の低温靱性が
劣化するとともに、スラグ巻き込みなどの溶接欠陥を起
こす。このためO量の下限を0.02%、上限を0.0
6%とした。
【0044】次に、溶接金属として更にMo、Nb、
V、B、Ca、Mgを添加する理由について説明する。
基本となる成分にさらに、必要に応じてこれらの元素を
添加する主たる目的は本発明鋼の優れた特徴を損なうこ
となく、溶接金属の強度・低温靱性などの特性の向上を
はかるためである。したがって、その添加量は自ら制限
されるべき性質のものである。
【0045】Moは溶接部の強度を上昇させる元素であ
るが、1.0%を超えると低温靱性を劣化させる。また
0.1%未満の添加ではその効果が薄い。
【0046】Nbは結晶粒を微細化するだけでなく、析
出硬化や焼入れ性の増大にも寄与し、鋼を強靱化する作
用を有する。この効果を得るためには最低0.005%
のNbが必要である。しかしながら、Nb量が多すぎる
とHAZ靱性が劣化するので、その上限の値を0.1%
に限定した。
【0047】VはほぼNbと同様の効果を有するが、そ
の効果はNbに比較して格段に弱い。その効果を発揮さ
せるためには0.01%以上の添加が必要である。また
上限は低温靱性の点から0.1%まで許容できる。
【0048】Bは極微量で鋼の焼入れ性を飛躍的に高
め、良好な強度と靱性が得られる。この効果を発揮させ
るためには0.0003%以上の添加が必要である。ま
た多すぎると低温靱性を劣化させるので、その上限の値
を0.002%に限定した。
【0049】Caは硫化物(MnS)の形態を制御し、
低温靱性を向上(シャルピ−試験における吸収エネルギ
−の増加など)させる。0.001%未満ではその効果
が少なく、また0.005%を超えて添加すると、Ca
O−CaSが大量に生成してクラスタ−、大型介在物と
なり、鋼の清浄度を害する。このためCa添加量を0.
001〜0.005%に制限した。
【0050】Mgは溶接金属中において酸化物を形成
し、凝固組織の微細化や粒内変態フェライトの核として
作用し、組織の微細化に効果がある。しかし、多すぎる
と溶接金属の低温靱性が劣化する。このためMg量の下
限を0.0001%、上限を0.0050%とした。
【0051】
【実施例】本発明の実施例について述べる。種々の鋼成
分の鋼板を用いて、鋼管を製造し、諸性質を調査した。
鋼管溶接部の品質(溶接欠陥の有無)は内外面1層のS
AW(サブマ−ジドア−ク溶接)を実施した後、超音波
探勝傷装置を用いて評価した。試作鋼管は離岸距離(平
均飛来海塩粒子量)がそれぞれ、5m(1.3md
d)、50m(0.8mdd)、200m(0.5md
d)、800m(0.2mdd)の地点で暴露試験に供
した。高海塩粒子環境での耐候性は、さびのイオン透過
抵抗および腐食量から求めた平均板厚減少量から評価し
た。さびのイオン透過抵抗測定では、交流インピーダン
ス法によるさびのイオン透過抵抗値を測定し、3kΩ以
上のものを緻密な安定さび形成と判断した。平均板厚減
少量は4カ所での腐食−時間曲線から50年後の推定板
厚減少量を求め、無塗装橋梁使用の基準である腐食量
0.4mm/50年を無塗装使用可否の目安とした。
【0052】表1に本発明鋼管の成分を示す。表2(表
2−1)、表3(表2−2)に比較鋼管の成分を示す。
表4(表3−1)、表5(表3−2)に上記測定値を示
した。本発明溶接鋼管の鋼No.1〜10は、母材およ
び溶接部において優れた溶接性および耐候性を有する。
【0053】これに対して比較鋼の鋼No.11〜27
は、化学成分が適切でなく、いずれかの特性が劣る。鋼
11は母材のC量が多すぎるため母材の低温靱性が劣る。
鋼12は母材のP量が多すぎるため母材の低温靱性が劣
る。鋼13は母材のS量が多すぎるため母材の低温靱性が
劣る。鋼14は母材のCu量が少ないため母材の耐候性が
劣る。鋼15は母材のNi量が少ないため母材の耐候性が
劣る。鋼16は母材のNi量が多すぎるため母材にひび割
れが発生した。鋼17は母材のCr量が多すぎるため母材
の耐候性が劣る。鋼18は母材のMg量が少ないため低温
割れが発生した。
【0054】鋼19は母材において(Mg, Al)酸化物
を内包する0.01以上0.5μm未満のTiN個数が
少ないため低温割れが発生した。鋼20は溶接金属のC量
が多すぎるため溶接金属において高温割れが発生した。
鋼21は溶接金属のP量が多すぎるため溶接金属において
高温割れが発生した。鋼22は溶接金属のS量が多すぎる
ため溶接金属において高温割れが発生した。鋼23は溶接
金属のNi量が少ないため溶接金属の耐候性が劣る。鋼
24は溶接金属のNi量が多すぎるため溶接金属において
高温割れが発生した。鋼25は溶接金属のCr量が多すぎ
るため溶接金属の耐候性が劣る。鋼26は溶接金属のNi
量が母材のNi量よりも2.0%を超えて少なすぎるた
め、溶接金属の耐候性が劣る。鋼27は溶接金属のNi量
が母材のNi量よりも0.2%を超えて多すぎるため、
溶接金属において高温割れが発生する。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【発明の効果】本発明による海浜地区での優れた溶接性
と耐候性を有する鋼管を橋梁などの鋼構造物の部材とし
て採用することにより、鋼構造物の製造コストが低減さ
れると共に、保守管理の簡略化、管理費用の大幅な低減
が可能となった。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.03〜0.15、 Si:0.6以下、 Mn:0.3〜2.0、 P :0.03以下、 S :0.005以下、 Cu:0.3〜1.0、 Ni:1.0超〜5.5、 Cr:0.1以下、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.001〜0.050、 Mg:0.0001〜0.0050、N :0.001〜0.006、 O :0.001〜0.006 を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、M
    gとAlから成る酸化物を内包する0.01〜0.5μ
    mのTiNが10000個/mm2 以上含有する母材
    と、質量%で、 C :0.02〜0.07、 Si:0.6以下、 Mn:0.3〜2.0、 P :0.01以下、 S :0.005以下、 Cu:0.1〜1.0、 Ni:1.0超〜3.5、 Cr:0.1以下、 Ti:0.005〜0.03、 Al:0.09以下、 N :0.001〜0.006、 O :0.02〜0.06 を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、さ
    らにNi量が前記母材の2.0%少ない領域から0.2
    %多い領域の範囲にある溶接金属部を有することを特徴
    とする溶接性に優れた耐候性鋼管。
  2. 【請求項2】 母材成分がさらに、質量%で Mo:0.1〜1.0、 Nb:0.005〜0.1、 V :0.01〜0.1、 B :0.0003〜0.002、 Ca:0.001〜0.005のうち一種または二種以
    上を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接性
    に優れた耐候性鋼管。
  3. 【請求項3】 溶接金属部がさらに、質量%で Mo:0.1〜1.0、 Nb:0.005〜0.1、 V :0.01〜0.1、 B :0.0003〜0.002、 Ca:0.001〜0.005、 Mg:0.0001〜0.0050の うち一種または二種以上を含有することを特徴とする請
    求項1または2に記載の溶接性に優れた耐候性鋼管。
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