JP7322932B2 - 厚鋼板およびその製造方法ならびに構造物 - Google Patents
厚鋼板およびその製造方法ならびに構造物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP7322932B2 JP7322932B2 JP2021147499A JP2021147499A JP7322932B2 JP 7322932 B2 JP7322932 B2 JP 7322932B2 JP 2021147499 A JP2021147499 A JP 2021147499A JP 2021147499 A JP2021147499 A JP 2021147499A JP 7322932 B2 JP7322932 B2 JP 7322932B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- phase
- steel plate
- area ratio
- less
- temperature
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Description
(1)熱間圧延が終了し、冷却された後の厚鋼板には、冷却偏差に起因する組織のバラツキが存在するが、この組織のバラツキは、2相域の温度以上に再加熱することによって解消できる。
(2)板厚が薄い場合であっても、再加熱熱処理後の冷却パターンを制御することにより、全長に亘って高強度であり全厚での伸び特性と耐疲労き裂伝播特性を両立できる。
(3)さらに、パーライト相をベイナイト相よりも多く生成させることによって、靭性値を改善できる。
(4)Wの含有が、塗膜下でのさび生成を顕著に抑制し、塗膜膨れおよび塗膜剥離の防止に有効である。
(5)熱間圧延が終了し、冷却する過程において、冷却速度を適切に制御することにより、組織のバラツキが解消され、全長に亘って、高強度であり、全厚での伸び特性と耐疲労き裂伝播特性を両立できる。
[1]質量%で、
C:0.05~0.20%、
Si:0.01~0.50%、
Mn:0.50~2.00%、
P:0.05%以下、
S:0.02%以下、
W:0.005~1.00%
を含有し、かつSn:0.005~0.500%、Sb:0.005~0.200%の少なくとも1種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
ミクロ組織は、板厚方向に、表面から表面下100μmまでの範囲において、面積率で80%以上のフェライト相を含み、
板厚方向に、表面下100μmから板厚1/4位置の範囲において、
面積率で80%以下のフェライト相を含み、
残部がパーライト相、またはパーライト相とベイナイト相との混合相からなり、かつ前記パーライト相の面積率が前記ベイナイト相の面積率よりも多い厚鋼板。
[2]前記成分組成が、さらに、質量%で、
Cu:0.01~1.00%、
Ni:0.01~1.00%、
Cr:0.01~1.00%、
Mo:0.01~1.00%、
V:0.005~0.100%、
Ti:0.005~0.10%、
B:0.0001~0.0050%、
Ca:0.0001~0.020%、
Mg:0.0001~0.020%、および
REM:0.0001~0.020%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、[1]に記載の厚鋼板。
[3]表面に塗膜を備える、[1]または[2]に記載の厚鋼板。
[4]前記塗膜が、防食下地層、下塗り層、中塗り層および上塗り層を含み、
前記防食下地層が無機ジンクリッチペイント、前記下塗り層がエポキシ樹脂塗料、前記中塗り層がふっ素樹脂上塗り塗料用の中塗り塗料、前記上塗り層がふっ素樹脂上塗り塗料をそれぞれ用いてなる[3]に記載の厚鋼板。
[5]前記[1]または[2]に記載の成分組成を有する鋼素材を900~1200℃に加熱し、
加熱された前記鋼素材に累積圧下率50%以上の熱間圧延を施して熱延板とし、
前記熱延板を冷却し、
次いで、Ac1変態点以上Ac3変態点未満の再加熱温度に再加熱し、
前記Ac1変態点以上Ac3変態点未満の温度に再加熱された鋼板を2~7℃/sの平均冷却速度で350~600℃の冷却停止温度まで冷却し、
前記350~600℃の冷却停止温度まで冷却された鋼板に焼入れを施す、厚鋼板の製造方法。
[6]前記[1]または[2]に記載の成分組成を有する鋼素材を900~1200℃に加熱し、
加熱された前記鋼素材に累積圧下率50%以上の熱間圧延を施して熱延板とし、
前記熱延板を冷却し、
次いで、Ac3変態点以上950℃以下の再加熱温度に再加熱し、
前記再加熱温度に30分以下の保持時間の間保持し、
前記Ac3変態点以上950℃以下の温度に再加熱された鋼板を2~7℃/sの平均冷却速度で350~600℃の冷却停止温度まで冷却し、
前記350~600℃の冷却停止温度まで冷却された鋼板に焼入れを施す、厚鋼板の製造方法。
[7]前記[1]または[2]に記載の成分組成を有する鋼素材を900~1200℃に加熱し、
加熱された前記鋼素材に累積圧下率50%以上の熱間圧延を施して熱延板とし、
次いで、
前記Ar1変態点以上Ar3変態点以下の温度まで冷却された鋼板を2~7℃/sの平均冷却速度で350~600℃の冷却停止温度まで冷却し、
前記350~600℃の冷却停止温度まで冷却された鋼板に焼入れを施す、厚鋼板の製造方法。
[8]前記[1]~[4]のいずれかに記載の厚鋼板を用いてなる構造物。
[9]前記構造物が橋梁である[8]に記載の構造物。
本発明の厚鋼板の成分組成について、その限定理由を以下に説明する。なお、以下の説明における「%」は、特に断らない限り「質量%」を表すものとする。
Cは、基地相(マトリクス)硬さを増加させ、強度を向上させる効果を有する元素である。また、セメンタイト相の集合であるパーライト相を生成させる効果があるため、耐疲労特性が高まる。このような効果を得るためには、C含有量を0.05%以上とすることが必要である。一方、C含有量が0.20%を超えると、基地相の硬度が過度に上昇し、全厚での伸びが劣化する。このため、C含有量は0.20%以下とする。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、鋼中に固溶して固溶強化により基地相の硬さを増加させる元素である。このような効果を得るためには、Si含有量を0.01%以上とする必要がある。一方、Si含有量が0.50%を超えると、全厚での伸び、靭性が低下する。このため、Si含有量は0.50%以下とする。
Mnは、基地相の硬さを増加させ、強度を向上させる効果を有する元素である。このような効果を得るためには、Mn含有量を0.50%以上とする必要がある。一方、Mn含有量が2.00%を超えると、溶接性が低下することに加えて、介在物であるMnSが過剰に偏析し靭性が悪化する。このため、Mn含有量は2.00%以下とする。
Pは、不可避的不純物として鋼に含まれる元素である。Pは、粒界に偏析し、母材および溶接部の靱性を低下させるなど、悪影響を及ぼすため、できるだけ低減することが好ましいが、0.05%以下の含有は許容できる。このため、P含有量は0.05%以下とする。一方、P含有量の下限は限定されないが、過度の低減は精錬コストの高騰を招くため、P含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Sは、不可避的不純物として鋼に含まれる元素である。Sは、MnS等の硫化物系介在物として鋼中に存在し、脆性破壊の発生起点となり靭性が劣化するため、できるだけ低減することが好ましいが、0.02%以下の含有は許容できる。このため、S含有量は0.02%以下とする。S含有量は0.01%以下とすることが好ましい。一方、S含有量の下限は限定されないが、過度の低減は精錬コストの高騰を招くため、S含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
Wは厚鋼板のアノード反応に伴って溶出し、さび層中にWO4 2-として分布することによって、腐食促進因子の塩化物イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを静電的に防止する。さらに、厚鋼板表面にWを含む化合物が沈殿することで、厚鋼板のアノード反応を抑制する。そして、Wは、Si量を適正な範囲に調整した上で、Sn、Sb、さらにはCuやNiとともに複合添加することで、これらの元素との相乗効果によって、厚鋼板の塗装耐久性を大きく向上させる。このような効果を十分に得るためには、Wを0.005%以上含有させる必要がある。好ましくは、0.010%以上、より好ましくは、0.030%以上、さらに好ましくは、0.050%である。一方、W含有量が1.00%を超えると、合金コスト上昇を招く。したがって、W含有量は1.00%以下とする。好ましくは、0.70%以下、より好ましくは、0.50%以下である。さらに好ましくは0.30%以下である。
本発明では、Sn、Sbの少なくとも1種を含有させることにより、厚鋼板の塗装耐久性を向上させる。
Snは、地鉄表面近傍においてさび層中に存在し、さび粒子を微細化することで腐食促進因子である塩化物イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを防止する。また、Snは、鋼材表面においてアノード反応を抑制する。そして、SnはWとともに複合添加することで、これらの元素との相乗効果によって、厚鋼板の塗装耐久性を大きく向上させる。Snを含有させる場合、前記効果を十分に得るためには、Snを0.005%以上含有させる必要がある。好ましくは、0.010%以上、より好ましくは、0.020%以上である。一方、Sn含有量が0.500%を超えると、鋼の延性や靭性の劣化を招く。したがって、Sn含有量は、0.50%以下とする。好ましくは、0.300%以下、より好ましくは、0.200%以下、さらに好ましくは0.050%未満である。
Sbは、地鉄表面近傍においてさび層中に存在し、さび粒子を微細化することで腐食促進因子である塩化物イオンがさび層を透過して地鉄に到達するのを防止する。また、Sbは、厚鋼板表面においてアノード反応を抑制する。そして、SbはWとともに複合して含有することで、これらの元素との相乗効果によって、厚鋼板の塗装耐久性を大きく向上させる。Sbを含有させる場合、前記効果を十分に得るためには、Sbを0.005%以上含有させる必要がある。好ましくは、0.010%以上、より好ましくは、0.020%以上である。一方、Sb含有量が0.200%を超えると、鋼の延性や靭性の劣化を招く。したがって、Sb含有量は0.200%以下とする。好ましくは、0.150%以下、より好ましくは、0.100%以下である。
Cuは、固溶により強度をさらに上昇させ、また耐候性を向上させる効果を有する元素である。加えて、Cuは緻密なさび層を形成することにより、腐食促進因子である酸素や塩化物イオンの地鉄への透過を抑制する効果を有する。そして、Cuは、Wとともに含有することで、厚鋼板の塗装耐久性をさらに大きく向上させる。Cuを含有する場合、前記効果を得るため、Cu含有量を0.01%以上とする。一方、Cu含有量が1.00%を超えると、溶接性が損なわれ、また、厚鋼板の製造時に疵が生じやすくなる。そのため、Cuを含有する場合、1.00%以下とし、好ましくは0.70%以下、より好ましくは0.40%以下とする。
Niは、低温靭性を向上させる効果を有する元素であり、Cuを含有した場合の熱間脆性を改善する。また、Niは、緻密なさび層を形成することにより、腐食促進因子である酸素や塩化物イオンの地鉄への透過を抑制する効果を有する。そして、Niは、Wとともに含有することで、厚鋼板の塗装耐久性をさらに大きく向上させる。Niを含有する場合、前記効果を得るために、Ni含有量を0.01%以上とする。一方、Ni含有量が1.00%を超えると溶接性が損なわれ、鋼材コストが上昇する。そのため、Niを含有する場合、1.00%以下とし、好ましくは0.70%以下、より好ましくは0.40%以下とする。
Crは、強度を向上させる効果を有する元素である。また、Crはセメンタイト生成を促進する元素であり、耐疲労特性に有利なパーライト相の生成を促進する。Crを含有する場合、前記効果を得るために、Cr含有量を0.01%以上とする。好ましくは0.10%以上とする。一方、Cr含有量が1.00%を超えると溶接性や靭性が損なわれる。そのため、Crを含有する場合は、1.00%以下とする。好ましくは0.80%以下、より好ましくは、0.50%以下とする。
Moは、基地相の硬さを増加させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に添加することができる。Moを含有する場合、この効果を得るために、Mo含有量を0.01%以上とする。しかし、Mo含有量が1.00%を超えると溶接性と靭性が損なわれるので、含有する場合は、Mo含有量を1.00%以下とする。
Vは、Nbと同様、熱間圧延時におけるオーステナイトの再結晶を抑制して細粒化するとともに、熱間圧延後の空冷過程において析出することで強度を上昇させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に含有することができる。前記効果を得るために、Vを含有する場合、V含有量を0.005%以上とする。しかし、V含有量が0.200%を超えるとVCが多量に析出し、靭性が損なわれる。そのため、Vを含有する場合は、V含有量を0.100%以下とする。
Tiは、窒化物形成傾向が強く、Nを固定して固溶Nを低減するため、母材および溶接部の靭性を向上させる効果を有する。また、Bを含有する場合には、Tiを合わせて含有することにより、TiがNを固定し、BがBNとして析出してしまうことを抑制できる。その結果、Bの焼入れ性向上効果を助長して、強度をさらに向上させることができる。そのため、所望する特性に応じて任意に含有することができる。前記効果を得るために、Tiを含有する場合、0.005%以上とする。しかし、Ti含有量が0.10%を超えるとTiCが多量に析出し、靭性が損なわれる。そのため、Tiを含有する場合は、Ti含有量を0.10%以下とする。
Bは、微量の含有でも焼入れ性を著しく向上させ、強度を上昇させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて含有することができる。前記効果を得るために、Bを含有する場合、0.0001%以上とする。しかし、B含有量が0.0050%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、溶接性を低下させるため、Bを含有する場合は、B含有量を0.0050%以下とする。
Caは、Sと結合し、圧延方向に長く伸びるMnS等の形成を抑制して、硫化物系介在物が球状を呈するように形態制御し、溶接部等の靭性向上に寄与するため、所望する特性に応じて含有することができる。Caを含有する場合、この効果を得るために、Ca含有量を0.0001%以上とする。しかし、Ca含有量が0.020%を超えるとその効果が飽和するだけでなく、鋼の清浄度が低下し、表面疵が多発し表面性状が低下する。このため、Caを含有する場合は、Ca含有量を0.020%以下とする。
Mgは、結晶粒の微細化を介して靭性を向上させる効果を有する元素である。Mgを含有する場合、前記効果を得るために、Mg含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。一方、Mg含有量が0.020%を超えると、その効果が飽和する。そのため、Mgを含有する場合、Mg含有量は0.020%以下とする。
REM(希土類金属)は、靭性を向上させる効果を有する元素である。REMを含有する場合、前記効果を得るために、REM含有量を0.0001%以上とする。一方、REM含有量が0.020%を超えると、その効果が飽和する。そのため、REMを含有する場合、REM含有量は0.020%以下とする。
次に、厚鋼板のミクロ組織の限定理由について説明する。なお、ミクロ組織の説明における「%」は、特に断らない限り面積率を指すものとする。また、以下の説明における厚鋼板の「先端」とは、鋼板の圧延方向先端より尾端側へ100mm入った位置と定義する。同様に、厚鋼板の「尾端」とは、鋼板の圧延方向尾端より先端側へ100mm入った位置と定義する。また、厚鋼板の「中央」とは、鋼板の圧延方向(長手方向)中央の位置と定義する。
本発明の厚鋼板における、板厚方向に、表面から表面下100μmまでの範囲(以下、単に「表層部」という場合がある)におけるミクロ組織を、面積率で80%以上のフェライト相を含むものとする。Ac1変態点以上Ac3変態点未満とする二相域では、表層脱炭反応で、表層部に80%以上のフェライトを生成させて厚鋼板の表層を軟化させることにより、全厚での伸び特性を顕著に向上させることができる。この表層脱炭反応は、再加熱過程で二相域を通過もしくは二相域に保持することで起きる。表層部におけるフェライト相の面積率が80%未満であると、ベイナイト相、パーライト相、マルテンサイト相、またはそれらの混合相からなる硬質な残部組織が多く存在することになる。その結果、表層部の硬度が増大して所望の全厚での伸び特性を得ることができない。また、引張強さが過大となる場合がある。
本発明の厚鋼板における、板厚方向に、表面下100μmから板厚1/4位置までの範囲(以下、単に「板厚内部」という場合がある)におけるミクロ組織を、面積率で80%以下のフェライト相を含むものとする。板厚内部のミクロ組織が前記条件を満たすことにより、所望の強度および耐疲労き裂伝播特性を得ることができる。
なお、本発明の厚鋼板の残部は、先端、中央および尾端における、表層部および板厚内部の残部を指す。すなわち、厚鋼板の圧延方向全長に亘って、ミクロ組織の残部は、パーライト相、またはパーライト相とベイナイト相との混合相からなり、かつパーライト相の面積率がベイナイト相の面積率よりも多い。
[全厚伸び]
厚鋼板の全厚伸びは、特に限定されないが、板厚16mm超えの場合19%以上、板厚16mm以下の場合、15%以上であることが好ましい。本発明においては、厚鋼板の圧延方向における先端、中央および尾端において、上記全厚伸びの条件を満たすことが好ましい。なお、通常は、先端、中央および尾端が前記条件を満たしていれば、厚鋼板の圧延方向全長に亘って前記条件を満たしている。また、全厚伸びは、実施例に記載の方法で測定することができる。
厚鋼板の引張強度(TS)は、特に限定されないが、490MPa以上であることが好ましい。また、TSの上限も特に限定されないが、例えば、JISにおける490MPa(50kgf/mm2)級とする場合には、TSを610MPa以下とすればよい。また、JISにおける570MPa(60kgf/mm2)級とする場合には、TSの上下限をそれぞれ570MPaおよび720MPaとすればよい。本発明においては、厚鋼板の圧延方向における先端、中央および尾端において、上記TSの条件を満たすことが好ましい。なお、通常は、先端、中央および尾端が前記条件を満たしていれば、厚鋼板の圧延方向全長に亘って前記条件を満たしている。また、TSは、実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明の厚鋼板は、上記成分組成とミクロ組織を有する結果、優れた靭性を備える。本発明の厚鋼板の靭性はとくに限定されないが、試験片厚10mmの場合、靭性の指標の一つである、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE0を100J以上とすることが好ましく、130J以上とすることがより好ましく、150J以上とすることがさらに好ましく、200J以上とすることが最も好ましい。一方、vE0の上限についても限定されないが、例えば、400J以下であってよく、300J以下であってよく、270J以下であってよい。試験片厚5mmの場合、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーvE0を50J以上とすることが好ましい。一方、vE0の上限についても限定されないが、200J以下であってよく、150J以下であってよく、135J以下であってよい。なお、vE0は実施例に記載した方法で測定することができる。
本発明の厚鋼板は、上記成分組成とミクロ組織を有する結果、優れた疲労き裂伝播特性を備えることができる。疲労き裂伝播特性の指標としては、疲労き裂伝播速度(da/dN)を用いることができる。疲労き裂伝播速度の値はとくに限定されないが、本発明においては、ΔK=25MPa√mでの疲労き裂伝播速度4.25×10-8m/cycle以下が好ましい。
本発明における「厚鋼板」とは、本技術分野における通常の定義に従い、厚さ6mm以上の鋼板を指すものとする。一方、本発明における厚鋼板の板厚の上限は特に限定されず、任意の値とすることができる。しかし、先に述べたように鋼板先尾端での温度偏差が大きくなりやすく、また全厚での伸び特性が優れることが求められる薄物において、本発明の効果は特に顕著となる。そのため、厚鋼板の板厚は、25mm以下とすることが好ましく、20mm以下とすることがより好ましい。
本発明の厚鋼板は、表面に塗膜を備えていてもよい。塗膜としては、特に限定されることなく任意の塗膜を用いることができる。
本発明の厚鋼板を、橋梁などの屋外の大気腐食環境下、特には飛来塩分量の多い海上や海岸近傍などの厳しい腐食環境下で使用される橋梁などの構造物に用いることにより、かような構造物のメンテナンスコスト、ひいてはライフサイクルコストを低減することが可能となり、さらには、火災時の強度特性低下を防止し、高い安全性を確保することが可能となる。
本発明の厚鋼板は、上述した成分組成を有する鋼素材に対し、加熱、熱間圧延、冷却、再加熱、冷却、焼入れの処理を順次施す方法、あるいは加熱、熱間圧延、冷却、焼入れの処理を順次施す方法によって得ることができる。まず、加熱、熱間圧延、冷却、再加熱、冷却、焼入れの処理を順次施す方法について説明する。
本発明の鋼素材としては、上記成分組成を有し、熱間圧延が可能なものであれば任意のものを用いることができるが、通常は鋼スラブとすればよい。例えば、上記の成分組成を有する溶鋼を、転炉等の手段により溶製し、連続鋳造法等の鋳造方法で、スラブ等の鋼素材とすることができる。また、造塊-分解圧延法によりスラブ等の鋼素材とすることもできる。
上記成分組成を有する鋼素材を、900~1200℃に加熱する。加熱温度が900℃未満であると、次の熱間圧延工程における鋼素材の変形抵抗が高くなり、熱間圧延機への負荷が増大し、熱間圧延が困難になる。そのため、加熱温度は900℃以上とする。加熱温度は950℃以上とすることが好ましい。一方、加熱温度が1200℃を超えると、靭性が低下する。そのため、加熱温度は1200℃以下とする。加熱温度は1150℃以下とすることが好ましい。
次いで、加熱された鋼素材を熱間圧延して熱延板とする。その際、製品鋼板の基本性能である靭性を確保するため、累積圧下率を50%以上とする。累積圧下率が50%未満の場合は、板厚内部のフェライト粒が粗大化して局所的に脆性が低い領域が発生し、脆性き裂が発生しやすくなり靭性が悪化する。熱間圧延工程に関する他の条件は特に限定されない。
次に、熱間圧延終了後の鋼板を冷却する(第1の冷却工程)。冷却工程では、室温まで冷却することが好ましい。なお、冷却は、任意の方法、例えば、空冷または加速冷却により行うことができる。また、冷却条件については特段制限されない。
次いで、冷却後の鋼板を、Ac1変態点以上950℃以下に再加熱する。再加熱温度は好ましくはAc3変態点未満とする。このようにAc1変態点以上950℃以下のオーステナイト相を含む温度域に加熱することにより、冷却偏差に起因するミクロ組織のバラツキを解消することができ、その結果、機械的特性のバラツキを解消することができる。再加熱温度がAc3変態点未満であれば、再加熱前の組織を損なうことがないため、好ましい。
再加熱温度が950℃を超えると、二相域通過時の表層脱炭反応により生成した表層フェライト相がオーステナイト相に逆変態する反応が促進され、表層部におけるフェライト相の面積率が80%未満となる。その結果、表層部の硬度が増大して所望の全厚での伸び特性を得ることができない。
また、再加熱温度がAc3変態点以上、950℃以下である場合は、板厚内部のオーステナイト相の結晶粒径は、再加熱温度がAc3変態点未満である場合に比べ、粗大化するものの、靭性を過度に劣化させないことがわかった。さらに、この温度域では板厚内部のオーステナイト相への逆変態が進行する速度が上昇する。このため、短い加熱時間で所望の母相組織となるため、所定時間に製造可能な厚鋼板の枚数が増加するので生産性が向上する。
一方で、950℃を超えると、板厚内部で逆変態したオーステナイト相が成長して粗大化し、その結果、局所的に靭性が低い領域が発生して靭性が低下する。
一方、再加熱温度がAc1変態点未満であると、オーステナイト相に逆変態する反応が起きず、冷却後の板厚内部のフェライト相、パーライト相およびベイナイト相が所望の面積率とならない。その結果、疲労特性(き裂伝播特性)が悪化する。さらに、熱間圧延後の冷却工程における冷却偏差に伴う機械的特性のバラツキを解消することができない。
Ac1(℃)=723+29.1×Si-10.7×Mn-16.9×Ni+16.9×Cr…(1)
また、Ac3変態点は、例えば、下記(2)式により求めることができる。
Ac3(℃)=961.6-311.9×C+49.5×Si-36.4×Mn+438.1×P-2818×S+12.7×Al-51×Cu-29×Ni-8.7×Cr+13.5×Mo+308.1×Nb-140×V+318.9×Ti+611.2×B-969×N…(2)
ここで、上記(1)、(2)式における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味し、当該元素が含有されていない場合にはゼロとする。
なお、上記再加熱処理においては、再加熱温度まで加熱した後、当該温度に保持することが好ましい。再加熱温度がAc1変態点以上、Ac3変態点未満の場合、保持時間が10分未満であると、オーステナイト相への逆変態が鋼板全長に亘って開始されず、一部の領域で焼入性が著しく低下する場合がある。そのため、保持時間は10分以上とすることが好ましい。特に保持時間の上限は設けないが、製造における能率の観点から保持時間は10時間以下とすることが好ましい。一方、再加熱温度がAc3変態点以上、950℃以下の場合、保持時間が30分を超えると、オーステナイト相が成長して粗大化する。そのため、保持時間は30分以下とする。好ましくは、Ac3変態点以上950℃以下の場合、再加熱温度での保持時間は20分以下である。
上記再加熱工程で再加熱された鋼板を、350~600℃の冷却停止温度まで冷却する(第2の冷却工程)。その際、平均冷却速度を2~7℃/sとする。平均冷却速度は低い方がよりパーライト変態が促進されるため靭性改善の点で好ましい。しかし、平均冷却速度が2℃/s未満であると、フェライトの粒成長が過剰となり、粗粒化するため、靭性が悪化する。そのため、平均冷却速度は、2℃/s以上とする。
一方、平均冷却速度が7℃/sを超える場合、鋼板内部のミクロ組織においてパーライト変態が十分に進行せず、ベイナイト変態やマルテンサイト変態が進行しやすくなる。この場合はベイナイト相やマルテンサイト相の分率が多くなるため、全厚での伸び特性および靭性が悪化する。そのため、平均冷却速度は、7℃/s以下とする。平均冷却速度は、好ましくは5℃/s以下、より好ましくは4℃/s以下、さらに好ましくは3℃/s未満とする。
また、冷却停止温度が350℃未満の場合は、板厚内部においてフェライトが過剰に生成するため鋼板全体が軟質化し、所望の引張強度を得ることが出来ない。そのため、冷却停止温度は350℃以上とする。一方、冷却停止温度が600℃を超える場合、未変態オーステナイトが多量に残留したまま焼き入れられるので、硬質なベイナイトやマルテンサイトが過剰に生成する。その結果、全厚での伸び特性が低下し、靭性も悪化する。そのため、冷却停止温度は600℃以下とする。
上記冷却停止温度まで冷却された鋼板に焼入れを施す。したがって、焼入れ温度は、350~600℃の範囲となる。焼入れは、特に限定されることなく、任意の条件で行うことができるが、Ms点以下の温度、好ましくは200℃以下まで水冷することが好ましい。なお、Ms点は、例えば、下記(3)式により求めることができる。
Ms(℃)=517-300×C-11×Si-33×Mn-17×Ni-22×Cr-11×Mo…(3)
ここで、上記(3)式における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味し、当該元素が含有されていない場合にはゼロとする。
熱間圧延後の冷却は、まず、Ar1変態点以上Ar3変態点以下の温度まで冷却し、Ar1変態点以上Ar3変態点以下の温度(冷却開始温度)から、2~7℃/sの平均冷却速度で350~600℃の冷却停止温度まで冷却する。冷却開始温度をAr1変態点以上Ar3変態点以下(二相域)の温度とする理由は、二相域に特有の脱炭反応が進行し、表層部におけるフェライト相の面積率を80%以上とすることができるためである。
また、その後の平均冷却速度を2~7℃/sとする理由としては以下のような理由が挙げられる。平均冷却速度が2℃/s未満であると、フェライトの粒成長が過剰となり、粗粒化するため、靭性が悪化する。そのため、平均冷却速度は、2℃/s以上とする。一方、平均冷却速度が7℃/sを超える場合、鋼板内部のミクロ組織においてパーライト変態が十分に進行せず、ベイナイト変態やマルテンサイト変態が進行しやすくなる。この場合はベイナイト相やマルテンサイト相の分率が多くなるため、全厚での伸び特性および靭性が悪化する。そのため、平均冷却速度は、7℃/s以下とする。平均冷却速度は、好ましくは5℃/s以下、より好ましくは4℃/s以下、さらに好ましくは3℃/s未満とする。
また、冷却停止温度を350~600℃とする理由は以下の理由が挙げられる。冷却停止温度が350℃未満の場合は、板厚内部においてフェライトが過剰に生成するため鋼板全体が軟質化し、所望の引張強度を得ることが出来ない。そのため、冷却停止温度は350℃以上とする。一方、冷却停止温度が600℃を超える場合、未変態オーステナイトが多量に残留したまま焼き入れられるので、硬質なベイナイトやマルテンサイトが過剰に生成する。その結果、全厚での伸び特性が低下し、靭性も悪化する。そのため、冷却停止温度は600℃以下とする。
以降の焼入れについては、上記で説明した焼入れと同じ方法で実施することができる。
なお、Ar1変態点は、例えば、下記(4)式により求めることができる。
Ar1=712-17.8×C-19.1×Ni+20.1×Si+11.9×Cr+9.8×Mo…(4)
また、Ar3変態点は、例えば、下記(5)式により求めることができる。
Ar3=910-310×C-80×Mn-20×Cu-15×Cr-55×Ni-80×Mo…(5)
ここで、上記(4)、(5)式における元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味し、当該元素が含有されていない場合にはゼロとする。
以下の手順でミクロ組織を観察した。
・表層部におけるフェライト相の面積率、板厚内部におけるフェライト相の面積率、板厚内部におけるパーライト相およびベイナイト相の面積率
まず、得られた厚鋼板から、観察面が圧延方向に垂直な断面(板厚方向断面)となるように組織観察用試験片を採取し、鏡面となるまで研磨した後、腐食液(硝酸メタノール溶液)で腐食し、光学顕微鏡(倍率:400倍)を用いて、鋼板表面から板厚方向に板厚1/4位置まで観察し、画面が連続するように撮像した。得られた組織写真を用い、画像解析により相を同定し、(a)厚鋼板の、表面から表面下100μmまでの範囲におけるフェライト相の面積率の平均値、(b)表面下100μmから板厚1/4位置までの範囲におけるフェライト相の面積率の平均値、および(c)表面下100μmから板厚1/4位置までの範囲におけるパーライト相およびベイナイト相の面積率を求めた。
厚鋼板の幅中央部から板幅方向が引張方向と一致するように採取したJIS Z 2201 1A号の全厚試験片を用いて引張試験を実施し、引張強度(TS)および全厚伸びを求めた。引張強度は490MPa以上を合格とした。伸び特性は板厚16mm以下の場合は15%以上、板厚16mmを超える場合は19%以上を合格とした。
図1に示す片側切欠単純引張型疲労試験片を用いて疲労き裂伝搬試験を行い、板厚方向にき裂が進展する時の疲労き裂伝播挙動を評価した。試験条件は、ASTM E647に準拠し、応力比0.1、周波数10Hzとし、室温大気中で実施した。本発明では溶接構造物において溶接部などから発生したき裂が鋼材中を進展するときの伝播速度を低減することが目的であるため、このような状況を想定し、応力拡大係数範囲(ΔK)が10~30MPa√mの範囲で試験を行った。ΔK=25MPa√mでの疲労き裂伝播速度4.25×10-8m/cycle以下を合格とした。
厚鋼板の板厚中心部から、圧延方向(L方向)に平行にシャルピー衝撃試験片を採取した。試験片厚は板厚10mm以上の場合は試験片厚10mmとし、10mm未満の場合は試験片厚5mmとした。試験はJIS Z 2202に準拠してシャルピー衝撃試験を0℃で行い、吸収エネルギーvE0を測定した。試験片厚10mmの試験片は吸収エネルギーが100J以上を合格とした。試験片厚5mmの試験片は吸収エネルギーが50J以上を合格とした。
得られた厚鋼板について、70mm×50mm×5mmtの試験片を採取し、塗装耐久性の評価を行った。具体的には、まず、ISO 8501-1に規定される除錆度Saが2.5となるよう、試験片の表面にショットブラストを施した。次いで、試験片をアセトン中で5分間超音波脱脂し、その後、風乾した。次に、試験片の一方の面に、下記(a)~(d)の塗料を順次塗布して、防食下地層、下塗り層、中塗り層、および上塗り層からなる塗膜を形成した。各層の厚さを以下に併記する。
(a)防食下地層:無機ジンクリッチペイント(関西ペイント社製 SDジンク1500A)、厚さ:75μm
(b)下塗り層:エポキシ樹脂塗料(関西ペイント社製 エポマリンHB(K))、厚さ:120μm
(c)中塗り層:ふっ素樹脂上塗り塗料用の中塗り塗料(関西ペイント社製 セラテクトF中塗)、厚さ:30μm
(d)上塗り層:ふっ素樹脂上塗り塗料(関西ペイント社製 セラテクトF上塗料)、厚さ:25μm
塗膜を形成した後、試験片の他方の面および端面を、溶剤型のエポキシ樹脂塗料にてシールし、さらにシリコーン系のシール剤にて被覆した。試験片に形成した塗膜の中央部に、初期欠陥として、地鉄に到達する幅:1mm、長さ:40mmの直線状のカットを入れた。次いで、以下に示す条件にて腐食試験を実施した。
・腐食試験
試験片表面の人工海塩の付着量が6.0g/m2となるように、人工海塩を純水で所定の濃度に希釈した溶液をスプレーし、試験片に人工海塩を付着させた。次いで、この試験片を用いて、下記のサイクル(合計8時間)を1200サイクル繰り返す腐食試験を実施した。なお、人口海塩の付着は1週間に1回行った。
(サイクル)
・条件1:温度60℃、相対湿度35%、保持時間3時間
・条件1から条件2への移行:1時間
・条件2:温度40℃、相対湿度95%、保持時間3時間
・条件2から条件1への移行:1時間
腐食試験終了後、初期欠陥部からの塗膜膨れ面積を測定し、塗装耐久性の指標とした。塗装の膨れ面積が480mm2以下を合格とした。
Claims (9)
- 質量%で、
C:0.05~0.20%、
Si:0.01~0.50%、
Mn:0.50~2.00%、
P:0.05%以下、
S:0.02%以下、
W:0.005~1.00%
を含有し、かつSn:0.005~0.500%、Sb:0.005~0.200%の少なくとも1種を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
ミクロ組織は、板厚方向に、表面から表面下100μmまでの範囲において、面積率で80%以上のフェライト相を含み、
板厚方向に、表面下100μmから板厚1/4位置の範囲において、
面積率で80%以下のフェライト相を含み、
残部がパーライト相、またはパーライト相とベイナイト相との混合相からなり、かつ前記パーライト相の面積率が前記ベイナイト相の面積率よりも多い厚鋼板。 - 前記成分組成が、さらに、質量%で、
Cu:0.01~1.00%、
Ni:0.01~1.00%、
Cr:0.01~1.00%、
Mo:0.01~1.00%、
V:0.005~0.100%、
Ti:0.005~0.10%、
B:0.0001~0.0050%、
Ca:0.0001~0.020%、
Mg:0.0001~0.020%、および
REM:0.0001~0.020%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1に記載の厚鋼板。 - 表面に塗膜を備える、請求項1または2に記載の厚鋼板。
- 前記塗膜が、防食下地層、下塗り層、中塗り層および上塗り層を含み、
前記防食下地層が無機ジンクリッチペイント、前記下塗り層がエポキシ樹脂塗料、前記中塗り層がふっ素樹脂上塗り塗料用の中塗り塗料、前記上塗り層がふっ素樹脂上塗り塗料をそれぞれ用いてなる請求項3に記載の厚鋼板。 - ミクロ組織は、板厚方向に、表面から表面下100μmまでの範囲において、面積率で80%以上のフェライト相を含み、
板厚方向に、表面下100μmから板厚1/4位置の範囲において、
面積率で80%以下のフェライト相を含み、
残部がパーライト相、またはパーライト相とベイナイト相との混合相からなり、かつ前記パーライト相の面積率が前記ベイナイト相の面積率よりも多い厚鋼板の製造方法であって、
請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を900~1200℃に加熱し、
加熱された前記鋼素材に累積圧下率50%以上の熱間圧延を施して熱延板とし、
前記熱延板を冷却し、
次いで、Ac1変態点以上Ac3変態点未満の再加熱温度に再加熱し、
前記Ac1変態点以上Ac3変態点未満の温度に再加熱された鋼板を2~7℃/sの平均冷却速度で350~600℃の冷却停止温度まで冷却し、
前記350~600℃の冷却停止温度まで冷却された鋼板に焼入れを施す、厚鋼板の製造方法。 - ミクロ組織は、板厚方向に、表面から表面下100μmまでの範囲において、面積率で80%以上のフェライト相を含み、
板厚方向に、表面下100μmから板厚1/4位置の範囲において、
面積率で80%以下のフェライト相を含み、
残部がパーライト相、またはパーライト相とベイナイト相との混合相からなり、かつ前記パーライト相の面積率が前記ベイナイト相の面積率よりも多い厚鋼板の製造方法であって、
請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を900~1200℃に加熱し、
加熱された前記鋼素材に累積圧下率50%以上の熱間圧延を施して熱延板とし、
前記熱延板を冷却し、
次いで、Ac3変態点以上950℃以下の再加熱温度に再加熱し、
前記再加熱温度に30分以下の保持時間の間保持し、
前記Ac3変態点以上950℃以下の温度に再加熱された鋼板を2~7℃/sの平均冷却速度で350~600℃の冷却停止温度まで冷却し、
前記350~600℃の冷却停止温度まで冷却された鋼板に焼入れを施す、厚鋼板の製造方法。 - ミクロ組織は、板厚方向に、表面から表面下100μmまでの範囲において、面積率で80%以上のフェライト相を含み、
板厚方向に、表面下100μmから板厚1/4位置の範囲において、
面積率で80%以下のフェライト相を含み、
残部がパーライト相、またはパーライト相とベイナイト相との混合相からなり、かつ前記パーライト相の面積率が前記ベイナイト相の面積率よりも多い厚鋼板の製造方法であって、
請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を900~1200℃に加熱し、
加熱された前記鋼素材に累積圧下率50%以上の熱間圧延を施して熱延板とし、
次いで、
前記熱延板をAr1変態点以上Ar3変態点以下の温度まで冷却し、前記Ar1変態点以上Ar3変態点以下の温度まで冷却された鋼板を2~7℃/sの平均冷却速度で350~600℃の冷却停止温度まで冷却し、
前記350~600℃の冷却停止温度まで冷却された鋼板に焼入れを施す、厚鋼板の製造方法。 - 請求項1~4のいずれか一項に記載の厚鋼板を用いてなる構造物。
- 前記構造物が橋梁である請求項8に記載の構造物。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020153466 | 2020-09-14 | ||
JP2020153466 | 2020-09-14 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022048121A JP2022048121A (ja) | 2022-03-25 |
JP7322932B2 true JP7322932B2 (ja) | 2023-08-08 |
Family
ID=80781349
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2021147499A Active JP7322932B2 (ja) | 2020-09-14 | 2021-09-10 | 厚鋼板およびその製造方法ならびに構造物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7322932B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7424551B1 (ja) * | 2022-06-03 | 2024-01-30 | Jfeスチール株式会社 | 熱延鋼板、角形鋼管、それらの製造方法および建築構造物 |
Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009046751A (ja) | 2007-08-22 | 2009-03-05 | Jfe Steel Kk | 船舶用耐食鋼材およびその製造方法 |
JP2010196166A (ja) | 2009-01-30 | 2010-09-09 | Jfe Steel Corp | 原油タンク用耐食鋼材とその製造方法ならびに原油タンク |
JP2011231365A (ja) | 2010-04-27 | 2011-11-17 | Jfe Steel Corp | 船舶用熱間圧延形鋼およびその製造方法 |
JP2014001450A (ja) | 2012-05-23 | 2014-01-09 | Jfe Steel Corp | 耐食性および母材靭性に優れた船舶用鋼材 |
JP2017150003A (ja) | 2016-02-22 | 2017-08-31 | 新日鐵住金株式会社 | バラストタンク用耐食鋼材 |
-
2021
- 2021-09-10 JP JP2021147499A patent/JP7322932B2/ja active Active
Patent Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009046751A (ja) | 2007-08-22 | 2009-03-05 | Jfe Steel Kk | 船舶用耐食鋼材およびその製造方法 |
JP2010196166A (ja) | 2009-01-30 | 2010-09-09 | Jfe Steel Corp | 原油タンク用耐食鋼材とその製造方法ならびに原油タンク |
JP2011231365A (ja) | 2010-04-27 | 2011-11-17 | Jfe Steel Corp | 船舶用熱間圧延形鋼およびその製造方法 |
JP2014001450A (ja) | 2012-05-23 | 2014-01-09 | Jfe Steel Corp | 耐食性および母材靭性に優れた船舶用鋼材 |
JP2017150003A (ja) | 2016-02-22 | 2017-08-31 | 新日鐵住金株式会社 | バラストタンク用耐食鋼材 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2022048121A (ja) | 2022-03-25 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5418047B2 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP5531937B2 (ja) | 耐水素誘起割れ性、脆性亀裂伝播停止特性および耐食性に優れた厚鋼板 | |
JP2010065272A (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP2009046750A (ja) | 船舶用耐食鋼材およびその製造方法 | |
JP4924774B2 (ja) | 耐疲労亀裂進展特性および耐食性に優れた鋼材並びにその製造方法 | |
JP2009046749A (ja) | 高強度船舶用耐食鋼材およびその製造方法 | |
JP2002180187A (ja) | 日陰耐候性に優れた高強度・高靱性耐候性鋼 | |
JP5644522B2 (ja) | 海洋構造物用厚鋼板およびその製造方法 | |
JP2013241636A (ja) | 低降伏比型高強度溶融亜鉛めっき鋼板、低降伏比型高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板、低降伏比型高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法、および低降伏比型高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 | |
JP4676923B2 (ja) | 耐食性および溶接強度に優れた高強度高延性溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 | |
JP2009046751A (ja) | 船舶用耐食鋼材およびその製造方法 | |
JP5655358B2 (ja) | 耐海水腐食性に優れた鋼材 | |
JP2011058038A (ja) | 耐食性に優れる船舶用熱間圧延形鋼およびその製造方法 | |
JP7322932B2 (ja) | 厚鋼板およびその製造方法ならびに構造物 | |
JP5008879B2 (ja) | 強度および低温靭性の優れた高張力鋼板および高張力鋼板の製造方法 | |
JP5862166B2 (ja) | 船舶艤装用耐食鋼材 | |
JP2020019995A (ja) | 厚鋼板およびその製造方法ならびに溶接構造物 | |
JPH1121623A (ja) | 耐候性に優れた低降伏比溶接構造用鋼材の製造方法 | |
JP5213307B2 (ja) | 表面性状に優れる高延性高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 | |
KR20230041060A (ko) | 후강판 및 그 제조 방법 | |
JP7327444B2 (ja) | 厚鋼板、厚鋼板の製造方法、および構造物 | |
JP2023130323A (ja) | 厚鋼板、構造物および厚鋼板の製造方法 | |
JP7405246B2 (ja) | H形鋼 | |
JP7261364B1 (ja) | 鋼板 | |
JP7350705B2 (ja) | 伸び特性と耐食性に優れた低強度の厚鋼板 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20220425 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20230412 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20230418 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20230509 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20230530 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20230627 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20230710 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7322932 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |