明 細 書
熱硬化性樹脂、及びそれを含む熱硬化性組成物、並びにそれから得ら れる成形体
技術分野
[0001] 本発明は、低誘電率、低誘電損失の優れた誘電特性を持ち、同時に、優れた耐熱 性な!/ヽしは柔軟性を兼ね備えた熱硬化性榭脂、及びそれを含む熱硬化性組成物、 並びにそれから得られる成形体、硬化体、硬化成形体、電子機器用基板材料、及び 電子機器に関する。
背景技術
[0002] 従来から、フエノール榭脂、メラミン榭脂、エポキシ榭脂、不飽和ポリエステル榭脂、 ビスマレイミド榭脂等の熱硬化性榭脂は、その熱硬化性という性質に基づき、耐水性 、耐薬品性、耐熱性、機械強度、信頼性等が優れているので広い産業分野で使用さ れている。
[0003] しかし、フエノール榭脂及びメラミン榭脂は硬化時に揮発性の副生成物を発生する 、エポキシ榭脂及び不飽和ポリエステル榭脂は難燃性が劣る、ビスマレイミド榭脂は 非常に高価である等の欠点がある。
[0004] これらの欠点を解消するために、ジヒドロベンゾキサジン環構造を分子中に含むジ ヒドロベンゾキサジンィ匕合物、および、ジヒドロベンゾキサジン環構造を主鎖中に含む ジヒドロベンゾキサジン重合体が研究されてきた。(上記ジヒドロベンゾキサジン化合 物とジヒドロベンゾキサジン重合体を、以下、ベンゾキサジン重合体と略する。 ) 上記ベンゾキサジン重合体では、重合体中のジヒドロベンゾキサジン環が開環重合 反応するため、問題となるような揮発分の発生を伴わずに熱硬化する。
ベンゾキサジン重合体は、上記のような熱硬化性榭脂が有する基本的な特徴に加 え、保存性に優れており、溶融時には比較的低粘度であり、分子設計の自由度が広 V、等の様々な利点を有する榭脂である。
[0005] また、近年の電子機器'部品の高密度化 (小型化)、及び伝達信号の高速化に対 応すべぐ誘電特性の改善 (低誘電率化及び低誘電損失化)による信号伝達速度や
咼周波特性の向上が求められている。
また、電子機器用基板材料としては、低誘電率化、低誘電損失化に加え、はんだ 接合に耐え得る耐熱性、内部ひずみや外部応力などによるクラック発生に耐え得る 柔軟性、を同時に満たす必要がある。フレキシブル基板などに用いる場合はより一層 の柔軟性を満たす必要がある。
[0006] このような優れた誘電特性を有する熱硬化性榭脂の原料材料として、下記式(1)や 式(2)で表されるベンゾキサジン重合体が知られて 、る(例えば、非特許文献 1及び 2参照)。
[0007] [化 1]
P
式 (1 )
[0008] [化 2]
式 (2 )
[0009] 力かるベンゾキサジン重合体のベンゾキサジン環が開環重合して得られる榭脂は、 熱硬化時に揮発成分の発生を伴うこともなぐまた、難燃性や耐水性にも優れるもの である。
[0010] また、ジヒドロベンゾキサジン環構造を有する熱硬化性榭脂 (特許文献 1、 2参照)、
ァリール基で置換されたベンゾキサジン (非特許文献 3参照)、ポリベンゾキサジン前 駆体 (非特許文献 4参照)等が提案されて!ヽる。
特許文献 1 :特開平 8— 183835号公報
特許文献 2 :特開 2003— 64180号公報
非特許文献 1:小西化学工業株式会社ホームページ [平成 17年 7月 29日検索]、ィ ンターネット < URL : http://www.konishi— chem.co.jp/cgi— data/ jp/pdf/ pdf_2.pdf > 非特許文献 2 :四国化成工業株式会社ホームページ [平成 17年 7月 29日検索]、ィ ング. ~~ ット LTRL : http://www.shikoku.co.jp/chem/labo/benzo/main.html
特干文献 3: The curing reaction of 3-aryl substituted benzoxazine 'High Perform . Polym. 12 (2000) 237-246.
非特許文献 4: "Synthesis and thermal cure of high molecular weight polybenzoxazine precursors and the properties of the thermosets 、 [Available online 8 November 20 05]、インターネットく URL: 1159164768086— 0 >
[0011] しかし、上記従来のベンゾキサジン重合体は、上述の如ぐ熱硬化性榭脂のなかで は誘電特性に優れるものの、最近の更なる電子機器 '部品の高性能化に応じて更に 高い誘電特性が望まれている。例えば、メモリや論理プロセッサ等の ICのパッケージ を構成する多層基板の榭脂材料に対しては、非特許文献 1には誘電率 4. 4の材料 1S また、非特許文献 2には誘電率 3. 44,誘電正接 0. 0066であるベンゾキサジン 榭脂が開示されているが、さらなる低誘電率材料および低誘電正接材料が求められ ている。
[0012] また、今後予想される技術動向からすれば、更に低い誘電体損失が要求される傾 向にある。すなわち、誘電体損失は、通常、周波数と材料の誘電正接に比例する傾 向にある一方で、電子機器,部品で用いられる周波数はますます高くなる傾向にある ため、誘電正接が低い材料への要求が更に高くなつている。
[0013] 一方、基板の周辺で用いられる材料に対する要求特性として、はんだ耐熱特性が 挙げられる。これについても、今後は鉛フリーはんだを用いた場合への適応性が必 要とされてくるため、従来よりも耐熱性に対する要求が厳しくなる傾向にある。通常の 材料設計では、誘電特性に優れる構造、たとえば脂肪族骨格のベンゾォキサジンに
すると耐熱性が犠牲となりやすい。また、耐熱性に優れる構造、たとえば芳香族骨格 のべンゾォキサジンにすると誘電率が犠牲になりやすい。
このように、従来のベンゾキサジン重合体では、誘電特性と耐熱性との両立は困難 であった。
[0014] さらに、成形した際の柔軟性についても一層の向上が望まれるが、通常の材料設 計では、柔軟性に優れる構造にすると耐熱性が犠牲となりやすぐ誘電特性、耐熱性 、及び柔軟性の両立は困難であった。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0015] そこで、本発明は、誘電特性、特に誘電率と誘電体損失が従来に比して更に改善 され、かつ耐熱性が改善された熱硬化性榭脂、及びそれを含む熱硬化性組成物、 並びにそれから得られる成形体、硬化体、硬化成形体、電子機器用基板材料、電子 機器を提供することを目的とする。
[0016] また、本発明は、ジヒドロベンゾキサジン環開環重合組成物の優れた誘電特性を保 持しつ、耐熱性、及び柔軟性を兼ね備えた熱硬化性榭脂、及びそれを含む熱硬化 性組成物、並びにそれから得られる成形体、硬化体、硬化成形体、電子機器用基板 材料、電子機器を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0017] 本発明者は、鋭意検討の結果、特定のベンゾキサジン重合体が、前記目的を達成 し得ることの知見を得た。本発明は力かる知見に基づくものである。すなわち本発明 の構成は以下の通りである。
[0018] 1.下記一般式 (I)で示される、ジヒドロベンゾキサジン環構造を主鎖中に有する熱硬 化性榭脂。
[化 3]
一般式(
〔式 (I)において、 Ar1は、 4価の芳香族基を示し、 R1は、縮脂環式構造を有する炭化 水素基であり、 nは、 2〜500の整数を示す。〕
2. R1が下記 (i)又は (ii)で示される基である、前記 1に記載の熱硬化性榭脂。
( i )
〔式 (0中、 *印は Nへの結合部位を示す。また、シス—トランス異性体を含む。〕 [化 5]
( ii )
〔式 (ii)中、 *印は Nへの結合部位を示す。また、シス—トランス異性体を含む。〕
3. Ar1が、下記 (iii)、 (iv)、 (v)のいずれかの構造で示される、前記 1に記載の熱硬 化性榭脂。
[化 6]
( iii ) ( iv) ( v )
〔式 (iii)〜(v)中、 *印は OHへの結合部位、もう一方はォキサジン環 4位のメチレン基 への結合部位を示す。
また、各芳香環の水素は、炭素数 1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素 基、又は置換もしくは無置換フエニル基で置換されて 、てもよ 、。
式 (m)における Xは、直接結合手 (原子もしくは原子団が存在しない)、またはへテ 口元素もしくは官能基を含んで ヽても良 ヽ脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水
素基を示す。〕
4. Ar1が、上記 (iii)の構造で示され、該構造 (iii)中の Xが、下記群 Aから選択され る少なくとも一つである、前記 3に記載の熱硬化性榭脂。
[化 7]
群 A
〔各式中、 *印は前記構造 (m)における芳香環への結合部位を示す。〕
5.下記一般式 (Π)で示される、ジヒドロベンゾキサジン環構造を主鎖中に有する熱 硬化性榭脂。
[化 8]
〔式 (II)において、 Ar1は、 4価の芳香族基を示し、 R1は、縮脂環式構造を有する炭 化水素基であり、 R2は、脂肪族炭化水素基であり、 m+nは、 2〜500の整数を示す o ]
[0023] 6. R2が直鎖状の脂肪族炭化水素基である、前記 5に記載の熱硬化性榭脂。
[0024] 7. R2が炭素数 6〜12の脂肪族炭化水素基である、前記 5に記載の熱硬化性榭脂
[0025] 8. R
1が下記 (i)又は (ii)で示される基である、前記 5に記載の熱硬化性榭脂。
( i )
〔式 (0中、 *印は Nへの結合部位を示す。また、シス—トランス異性体を含む。〕 [化 10]
( ii )
〔式 (ii)中、 *印は Nへの結合部位を示す。また、シス—トランス異性体を含む。〕
9. Ar1が、下記 (iii)、 (iv)、 (v)のいずれかの構造で示される、前記 5に記載の熱硬 化性榭脂。
[化 11]
( iii ) ( iv) ( v )
〔式 (iii)〜(v)中、 *印は OHへの結合部位、もう一方はォキサジン環 4位のメチレン基 への結合部位を示す。
また、各芳香環の水素は、炭素数 1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素 基、又は置換もしくは無置換フエニル基で置換されて 、てもよ 、。
式 (iii)における Xは、直接結合手 (原子もしくは原子団が存在しない)、またはへテ 口元素もしくは官能基を含んで ヽても良 ヽ脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水 素基を示す。〕
10. Ar1が、上記 (m)の構造で示され、該構造 (iii)中の Xが、下記群 Aから選択さ れる少なくとも一つである、前記 9に記載の熱硬化性榭脂。
[化 12]
群 A:
〔各式中、 *印は前記構造 (m)における芳香環への結合部位を示す。〕
[0028] 11. (1) NH— R2— NHで表される脂肪族ジァミン (R2は、脂肪族炭化水素基で
2 2
ある)と、
(2) OH—Ar2—OH (Ar2は、芳香族基である)と、
(3) NH— R1— NH (R1は、縮脂環式構造を有する炭化水素基である)と、
2 2
(4)アルデヒド化合物と、
を反応させることにより得られる、ジヒドロベンゾキサジン環構造を主鎖中に有する 熱硬化性榭脂。
[0029] 12.前記 5、 11の何れかに記載の熱硬化性榭脂を少なくとも含む熱硬化性組 成物。
[0030] 13.分子内に少なくとも一つのジヒドロベンゾキサジン構造を有する化合物を含む 、前記 12に記載の熱硬化性組成物。
[0031] 14.前記 5、 11の何れかに記載の熱硬化性榭脂より得られる成形体。
[0032] 15.前記 12に記載の熱硬化性組成物より得られる成形体。
[0033] 16.前記 5、 11の何れかに記載の熱硬化性榭脂を硬化させて得られる硬化体。
[0034] 17.前記 12に記載の熱硬化性組成物を硬化させて得られる硬化体。
[0035] 18.前記 14に記載の成形体を硬化させて得られる硬化成形体。
[0036] 19.前記 15に記載の成形体を硬化させて得られる硬化成形体。
発明の効果
[0037] 本発明によれば、誘電率と誘電体損失等の誘電特性及び耐熱性とが顕著に優れ た熱硬化性榭脂、及びそれを含む熱硬化性組成物、成形体等が提供される。
また、本発明によれば、誘電特性、耐熱性、及び柔軟性を兼ね備えた熱硬化性榭 脂、及びそれを含む熱硬化性組成物、成形体等が提供される。
発明を実施するための最良の形態
[0038] 以下、本発明について、その好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
〔熱硬化性榭脂〕
本発明の熱硬化性榭脂は、下記一般式 (I)で示される、ジヒドロベンゾキサジン環 構造を主鎖中に有する重合体力 なるものである。
〔式 (I)において、 Ar1は、 4価の芳香族基を示し、 R1は、縮脂環式構造を有する炭化 水素基であり、 nは、 2〜500の整数を示す。〕
本明細書において、「縮脂環式構造」とは、橋かけ環式炭化水素(「有機化合物命 名の手引き:化学同人」による)の構造に相当し、脂肪族炭化水素で 2個以上の原子 を共有している 2個以上の環力もなる構造である。具体的には明細書の〔ィ匕 4〕や〔ィ匕 5〕に示される構造などがあげられる。
[0039] 本発明の熱硬化性榭脂は、カゝかる構成カゝらなるため、誘電特性および耐熱性を兼 ね備える。本発明の熱硬化性榭脂は、前記の通りの重合体力もなるものであるため、 フィルムやシート等への加工性に優れ、硬化前にも十分な成形性を有する。
また、本発明の熱硬化性榭脂は、そのジヒドロベンゾキサジンの開環重合反応によ り、有害な揮発性物質を伴わずに硬化させることが可能である。
[0040] 上記一般式 (I)にお 、て、 R1は、低誘電率化に有効である点から、炭素数を 8以上
有することが好ましい。
上記一般式 (I)において、 R1は、さらに前記特性に加え、より耐熱性を向上可能で ある点から、縮環構造を有することが好ましい。
[0041] 本発明の熱硬化性榭脂は、 (1) NH -R2-NHで表される脂肪族ジァミン (R2は
2 2
、脂肪族炭化水素基である)と、(2) OH— Ar2— OH (Ar2は、芳香族基である)と、 ( 3) NH R1— NH (R1は、縮脂環式構造を有する炭化水素基である)と、(4)アル
2 2
デヒド化合物と、を反応させることにより得られる、ジヒドロベンゾキサジン環構造を主 鎖中に有するものである。
[0042] 本発明の熱硬化性榭脂は、力かる構成力もなるため、 R1が通常の脂肪環のものより も柔軟性に優れるものである。本発明の熱硬化性榭脂は、前記の通りの重合体から なるものであるため、フィルムやシート等への加工性に優れ、硬化前にも十分な成形 性を有する。
また、本発明の熱硬化性榭脂は、そのジヒドロベンゾキサジンの開環重合反応によ り、有害な揮発性物質を伴わずに硬化させることが可能である。
[0043] 上記熱硬化性榭脂は、下記一般式 (Π)で示されるものであることが好ま U、。
[化 14]
〔式(Π)において、 Ar1は、 4価の芳香族基を示し、 2価の Ar2由来のジヒドロべンゾキ サジン環の一部であり、 m+nは、 2〜500の整数を示す。〕
[0044] 上記式 (II)にお!/、て、 m及び nは重合度を示し、モノマー構成単位の付加モル数 であり、成形時の流動性向上の観点から、 m+nは 2〜500の整数であることが好まし く、 2〜: L00であることが一層好ましい。
重合度力 のモノマー構成単位 (式 (Π)中左記の単位)と、重合度が mのモノマー 構成単位 (式 (Π)中右記の単位)とは、ランダム重合又は交互重合により互いに結合 していてもよぐまた、各構成単位のみ力もなる単一重合体が含まれていてもよい。
[0045] 上記脂肪族ジァミンは、柔軟性の一層の向上の観点から、 R2が直鎖状の脂肪族炭 化水素基であることが好まし 、。
また、 R2は炭素数 4〜24の脂肪族炭化水素基であることが好ま 、。
より好ましくは、 R2は炭素数 6〜12の脂肪族炭化水素基である。
[0046] 上記にぉ 、て、 R1は、縮環構造を有する脂環式炭化水素基であるため、入手が容 易、反応速度、得られる重合体および最終的な硬化体の電気特性などの特性を有 するとともに、より耐熱性を向上可能である。
上記 R1は、下記 (i)で示される基であると、得られる榭脂の電気特性と耐熱性が非 常に良好である。
( i )
〔式 (0中、 *印は Nへの結合部位を示す。また、シス—トランス異性体を含む。〕 また、上記 R1は、下記 (ii)で示される基であると、得られる榭脂の電気特性と耐熱性 が非常に良好である。
〔式 (ii)中、 *印は Nへの結合部位を示す。また、シス—トランス異性体を含む。〕 上記において、 Ar1は、 4価の芳香族基を示し、特に、入手の容易さ、反応性の点 から、下記 (iii)、(iv)、(v)のいずれかの構造で示されるものが好ましい。
( iii ) ( iv ) ( v )
〔式 (iii)〜(v)中、 *印は OHへの結合部位、もう一方はォキサジン環 4位のメチレン基 への結合部位を示す。
また、各芳香環の水素は、炭素数 1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素 基、又は置換もしくは無置換フエニル基で置換されて 、てもよ 、。
式 (m)における Xは、直接結合手 (原子もしくは原子団が存在しない)、またはへテ 口元素もしくは官能基を含んで ヽても良 ヽ脂肪族、脂環式もしくは芳香族の炭化水 素基を示す。〕
[0049] また、中でも式 (iii)で示される構造であると、要求特性に応じた榭脂の構造設計が 容易であるためにさらに好ましい。
[0050] Ar1が前記構造 (m)である場合にぉ 、て、該構造 (m)中の Xが、下記群 Aから選択 される少なくとも一つであるとさらに好ましい。
このような構造のものであると、入手が容易であり、重合体の機械的、電気的特性 等が優れるため非常に好ましい。
[0051] [化 18]
群 A:
〔各式中、 *印は前記構造 (m)における芳香環への結合部位を示す。〕
[0052] また、群 Aの中でも特に下記群 Bで示される構造のものは、電気特性、耐熱性に優 れるため特に好ましい。
[化 19]
〔各式中、 *印は前記構造 (m)における芳香環への結合部位を示す。〕
上記において、 Ar1は、特に、入手の容易さ、硬化体の電気特性および耐熱性の 点から、下記群 Cより選択される少なくとも一つの構造で示されるものも好ましい。
〔各式中、両端部における *印は前記(2)の OHへの結合部位、もう一方は前記(1) 〜 (4)を反応させて得られる反応物のォキサジン環 4位のメチレン基への結合部位を 示す。
また、各芳香環の水素は、炭素数 1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素 基、又は置換もしくは無置換フエニル基で置換されていてもよい。 ]
[0054] Ar1が上記群 Cより選択される少なくとも一つである場合にも、 Ar1が前記 (m)、 (iv) 、(v)のいずれかの構造で示される場合と同様に、同様の理由から、脂環式構造を有 する炭化水素基を示す R1は、縮環構造を有する脂環式炭化水素基が好ましぐ中で も、前記 (i)で示される基、または前記 (ii)で示される基がより好ましい。
[0055] 本発明の熱硬化性榭脂は、 (1) NH -R2-NHで表される脂肪族ジァミン (R2は
2 2
、脂肪族炭化水素基である)と、(2) OH— Ar2— OH (Ar2は、芳香族基である)と、 ( 3) NH R1— NH (R1は、縮脂環式構造を有する炭化水素基である)と、(4)アル
デヒド化合物と、を適当な溶媒中で加熱して反応させることにより得られる。
[0056] 前記例の合成方法に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、原料の フエノールイ匕合物やアミンィ匕合物及び生成物である重合体の溶解性が良好なものの 方が高重合度のものが得られやすい。このような溶媒としては、例えば、トルエン、キ シレン等の芳香族系溶媒、クロ口ホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒、 THF、 ジォキサン等のエーテル系溶媒、等が挙げられる。
[0057] 反応温度、反応時間についても特に限定されないが、通常、室温から 120°C程度 の温度で数十分から数時間反応させればよい。本発明においては、特に 30〜: L 10 °Cで、 20分〜 9時間反応させれば、本発明に係る熱硬化性榭脂としての機能を発現 し得る重合体へと反応は進行するため好まし ヽ。
[0058] また、反応時に生成する水を系外に取り除くのも反応を進行させる有効な手法であ る。反応後の溶液に、例えば多量のメタノール等の貧溶媒を加えることで重合体を析 出させることができ、これを分離、乾燥すれば目的の重合体が得られる。
[0059] 前記例の合成方法に用いられる脂肪族ジァミンとしては、特に限定されるものでは ないが、好ましくはへキサメチレンジァミン、 1, 8—オクタンジァミン、 1, 10 デカン ジァミン、 1, 11—ゥンデカンジァミン、 1, 12 ドデカンジァミン、 1, 18—ォクタデカ ンジァミン等が挙げられる。
[0060] また、前記例の合成方法に用ぃられる011—八1:2— 011 (八1:2は、芳香族基である)と しては、特に限定されるものではないが、好ましくは上記における Ar2の好ましい前記 構造(iii)〜(v)の構造において、 *印に OH基が結合し、もう一方の結合手に Hが結 合したような化合物である。
[0061] このような化合物の具体例としては、(iii)の構造: 4, 4,ービフエノール、 2, 2,ービ フエノール、 4, 4'ージヒドロキシジフエニルエーテル、 2, 2,ージヒドロキシジフエニル エーテノレ、 4, 4'ージヒドロキシジフエ二ノレメタン、 2, 2'ージヒドロキシジフエ二ノレメタ ン、ビスフエノール A、ビスフエノール S、 4, 4'—ジヒドロキシジフエ-ルスルフイド、 4 , 4, 一ジヒドロキシベンゾフエノン、 1, 1—ビス(4 ヒドロキシフエ-ル)ェタン、 1, 1 ビス(4 ヒドロキシフエ-ル)プロノ ン、 1, 1 ビス(4 ヒドロキシフエ-ル)ブタン、 2, 2 ビス(4 ヒドロキシフエ-ル)ブタン、 1, 1—ビス(4 ヒドロキシフエ-ル)一 2
—メチルプロパン、 1, 1—ビス(4 ヒドロキシフエ-ル)シクロへキサン、 1, 1—ビス( 4 ヒドロキシフエ-ル)シクロペンタン、 1, 1—ビス(4 ヒドロキシフエ-ル)一 1—フ ェ-ルェタン、ビス(4 ヒドロキシフエ-ル)ジフエ-ルメタン、 4, 4,一[1, 4 フエ- レンビス(1ーメチルーェチリデン)]ビスフエノール(三井化学製 ビスフエノール P、 東京化成では「ひ, α,一ビス(4 ヒドロキシフエ-ル) 1, 4 ジイソプロピルベン ゼン」の化合物名で販売)、 4, 4,ー[1, 3 フエ-レンビス(1ーメチルーェチリデン) ]ビスフエノール(三井化学製 ビスフエノール Μ)、 9, 9 ビス(4ーヒドロキシフエ- ル)フルオレン、 2, 2 ビス(4 ヒドロキシフエ-ル)へキサフルォロプロパン、 1, 3— ビス(4ーヒドロキシフエノキシ)ベンゼン、 1, 4 ビス(3 ヒドロキシフエノキシ)ベンゼ ン、 2, 6 ビス((2 ヒドロキシフエ-ル)メチル)フエノール(a= lの化合物)等のよう に、連結部 Xを除いて、分子内にベンゼン環を二つ有し、ベンゼン環一つに対して O H基が一つ結合して 、る化合物、
(iv)の構造: 1, 3 ジヒドロキシナフタレン、 1, 4ージヒドロキシナフタレン、 1, 5 ジ ヒドロキシナフタレン、 1, 6 ジヒドロキシナフタレン、 1, 7 ジヒドロキシナフタレン、 2 , 6 ジヒドロキシナフタレン、 2, 7 ジヒドロキシナフタレン、のように、分子内に一つ のナフタレン環を有し、ナフタレン環に対して二つの OH基が結合した化合物、 (V)の構造: 1, 2 ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、 1, 3 ジヒドロキシベンゼン( レゾルシノール)、 1, 4ージヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)のように分子内に一つの ベンゼン環を有し、ベンゼン環に対して OH基が二つ結合した化合物、等が挙げられ る。
上記の例示としては OH基の結合している芳香環において、 OH基と連結部 X( (iii) の構造の場合)以外は無置換のものを挙げた力 V、ずれも OH基のオルト位の 、ず れか一つが置換可能な Hであればよぐ芳香環のその他の部位は種々の置換基、た とえば炭素数 1〜10の直鎖状あるいは分岐を含む脂肪族炭化水素基や脂環式炭化 水素基、置換もしくは無置換の芳香族基で置換されていてもよい。また、連結部 Xに 芳香環を含む場合においても、この芳香環は種々の置換基、たとえば炭素数 1〜10 の直鎖状あるいは分岐を含む脂肪族炭化水素基や脂環式炭化水素基等で置換さ れていてもよい。
[0063] 芳香環が置換されたものの簡単な例示としては、
(iii)の構造: 2, 2 ビス(4 ヒドロキシ一 3—メチルフエ-ル)プロパン、 2, 2 ビス( 4 -ヒドロキシ - 3—メチルフエ-ル)メタン、
(V)の構造: 2—メチルレゾルシノール、 2, 5 ジメチルレゾルシノール
等が挙げられるが、当然これに限定されるものではない。
[0064] なお、上記の重合体の合成に際して、得ようとする本発明の熱硬化性榭脂の特性 を損なわな 、範囲で、単官能フエノールイ匕合物や 3官能フエノールイ匕合物を使用す ることもできる。単官能フエノールを使用すると重合度を調節することができ、三官能 フ ノールを使用すると、分岐のある重合体が得られることになる。これらは分子内に 2個のフエノール性水酸基を有する化合物と同時に反応させてもょ 、し、あるいは反 応の順序を考慮して後で反応系に添加して反応させてもょ 、。
[0065] また、前記例の合成方法に用いられる NH— R1— NH (R1は、縮脂環式構造を有
2 2
する炭化水素基である)における縮脂環式炭化水素基 R1の中でも、特に前記式 (i) や前記式 (ii)で示されるような縮環構造を有するものである場合、既述の通り、得られ る榭脂の電気特性と耐熱性が非常に良好であるため好適に使用される。このような 縮環構造を有する脂環式炭化水素基において 1級ァミノ基が結合したような化合物 の具体例としては、例えば、 3 (4) , 8 (9) , ビス (アミノメチル)トリシクロ [5, 2, 1, 02' デカン、 2, 5 (6)—ビス(アミノメチル)ビシクロ [2, 2, 1]ヘプタン、又は、 1, 3 ジ アミノアダマンタン等が挙げられる。 3 (4) , 8 (9) , —ビス(アミノメチル)トリシクロ [5, 2 , 1, 02'6]デカンは Celanese社から「TCD Diamine」の製品名で販売されているも のを使用することができ、 2, 5 (6)—ビス(アミノメチル)ビシクロ [2, 2, 1]ヘプタンは 三井ィ匕学から「NBDA」の製品名で販売されているものを使用することができる。これ らは単独で用いられても複数を併用してもよ!/ヽ。
[0066] また、前記「NH— R2— NHで表される脂肪族ジァミン」は、長鎖型や、長鎖分岐
2 2
型であってもよい。
[0067] なお、本発明のベンゾキサジン重合体の特性を損なわない範囲で、単官能アミン 化合物や三官能アミン化合物を使用することもできる。単官能アミンを使用すると重 合度を調節することができ、三官能アミンを使用すると、分岐のある重合体が得られる
ことになる。これらはジァミン化合物と同時に反応させてもよいし、あるいは反応の順 序を考慮して後で反応系に添加して反応させてもょ 、。
[0068] また、前記例の合成方法に用いられるアルデヒド化合物としては、特に限定されるも のではないが、ホルムアルデヒドが好ましぐ該ホルムアルデヒドとしては、その重合 体であるパラホルムアルデヒドや、水溶液の形であるホルマリン等の形態で使用する ことが可能である。また、その他のアルデヒド化合物としてァセトアルデヒド、プロピオ ンアルデヒド、ブチルアルデヒド等も用いることができる。
[0069] 前述のようにして得られる重合体力 なる本発明の熱硬化性榭脂は、特に誘電特 性、耐熱性、及び柔軟性の両立という点で非常に優れた特性を有するが、その他、 耐水性、耐薬品性、機械強度、信頼性、等に優れ、硬化時における揮発性副生成物 やコストの面でも問題がなぐまた保存性に優れており、分子設計の自由度が広い等 の様々な利点を有する榭脂であり、フィルムやシート等にも容易にカ卩ェすることがで きる。
[0070] 〔熱硬化性組成物〕
本発明の熱硬化性組成物は、上記熱硬化性榭脂を少なくとも含むものである。
[0071] 上記熱硬化性糸且成物は、好ましくは、さらに分子内に少なくとも一つのジヒドロベン ゾキサジン構造を有する化合物を含むものである。すなわち、上記熱硬化性榭脂を 主成分として含み、且つ、副成分として、分子内に少なくとも一つのジヒドロべンゾキ サジン構造を有する化合物を含む熱硬化性榭脂が好ま ヽ。 このような熱硬化性 組成物とすることにより、ベンゾキサジン樹脂の有する優れた誘電特性を最大限に発 現するのに効果的である。
[0072] 本明細書において、「分子内に少なくとも一つのジヒドロベンゾキサジン構造を有す る化合物」としては、例えば以下のもが挙げられる。
[化 21]
[0073] このような化合物は、分子内にフエノール性水酸基を有し、かつそのオルト位の一 つが Hであるような化合物と、分子内に 1級アミノ基を有する化合物とホルムアルデヒ ドとの縮合反応により得ることができる。このとき、フエノール性水酸基を分子内に複 数有する化合物を用いる場合には、 1級アミノ基を分子内に一つのみ有する化合物 を使用し、 1級アミノ基を分子内に複数有する化合物を使用する場合には、フエノー ル性水酸基を分子内に一つのみ有する化合物を使用する。この分子内に少なくとも 1つのジヒドロベンゾキサジン環を有する化合物は、 1種のみを用いてもよぐ 2種以 上が併用されてもよい。
[0074] 上記熱硬化性組成物は、好ましくは、さらに、前記熱硬化性榭脂と異なる他の熱硬 化性榭脂又は熱可塑性榭脂を含むものである。すなわち、上記熱硬化性榭脂を主 成分として含み、且つ、副成分として、他の熱硬化性榭脂又は熱可塑性榭脂を含む ものが、成形体の誘電特性 ·耐熱性 ·柔軟性に優れる点で好まし ヽ。
[0075] gii成分としての、他の熱硬化性榭脂又は熱可塑性榭脂としては、例えば、エポキシ 系榭脂、熱硬化型変性ポリフエ-レンエーテル榭脂、ポリイミド榭脂、熱硬化型ポリイ ミド榭脂、ケィ素榭脂、メラミン榭脂、ユリア榭脂、ァリル樹脂、フエノール榭脂、不飽 和ポリエステル榭脂、ビスマレイミド系榭脂、アルキド榭脂、フラン榭脂、ポリウレタン 榭脂、ァ-リン榭脂等が挙げられる。
これらの中では、本発明に係る熱硬化性組成物から形成される成形体の耐熱性を より向上させ得る観点から、エポキシ系榭脂、フエノール榭脂、ポリイミド榭脂、熱硬化 型ポリイミド榭脂がより好ましい。これらの他の熱硬化性榭脂は、単独で用いられても よぐ 2種以上が併用されてもよい。
[0076] 更に、上記他の熱硬化性榭脂又は熱可塑性榭脂の中でも、成形体の柔軟性が向 上する点からは、エポキシ系榭脂が好ましい。ここでいうエポキシ系榭脂としては、具 体的には、ビスフエノール A型エポキシ榭脂、ビスフエノール F型エポキシ榭脂、臭素 化エポキシ榭脂、ビフエ-ル型エポキシ榭脂、置換ビスフエノール A型エポキシ榭脂 、クレゾ一ルノボラック型エポキシ榭脂、トリスフエノールメタン型エポキシ榭脂、ジシク 口ペンタジェン型エポキシ榭脂、ナフタレン型エポキシ榭脂、フエノールビフエ二レン 型エポキシ榭脂、フエノキシ榭脂等のグリシジルエーテル型エポキシ榭脂、 3, 4—ェ
ポキシシクロへキシノレメチノレー 3' , 4' エポキシシクロへキサン力ノレボキシレート、ビ ス(3, 4-エポキシシクロへキシルメチル)アジペート等の環式脂肪族エポキシ榭脂、 アジピン酸ジグリシジルエステル型、フタル酸ジグリシジルエステル型等のグリシジル エステル型エポキシ榭脂、ジグリシジルァ二リン型、ァミノフエノール型、脂肪族ァミン 型、ヒダントイン型等のグリシジルァミン型エポキシ榭脂、ヒドロキシ安息香酸型エステ ル型、 α—メチルスチルベン型等の液晶エポキシ榭脂、感光性、分解性等の機能を 有するエポキシ榭脂、トリグリシジルイソシァヌレート、チイラン変性エポキシ榭脂等が 挙げられる。さらに必要に応じて、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリア ミン等のポリアミン系硬化剤、ポリアミノアミド、ァミン一エポキシァダクト、マイケル付加 ポリアミン、マン-ッヒ反応物、尿素又はチォ尿素との反応物、ケチミン、シッフ塩基 等の変性ポリアミン系硬化剤、イミダゾール類、 2—フエ-ルイミダゾリン、三級アミン( DBU等)、トリフエ-ルホスフィン、ホスホ-ゥム塩、有機酸ヒドラジン等の塩基性硬化 剤、無水フタル酸、へキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリ ット酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物系硬化剤、フエノールノボラック、キシリレンノ ボラック、ビフエ二ルノボラック、ジシクロペンタジェンフエノールノボラック等のポリフエ ノール型硬化剤等を配合することが出来る。
また、上記他の熱硬化性榭脂又は熱可塑性榭脂の中でも、耐熱性と柔軟性の向上 の点からは、ポリイミド榭脂が好ましい。
本ポリイミド榭脂は、通常、テトラカルボン酸の二無水物とジァミンィ匕合物を反応さ せて得られるものが用いられる。ポリイミド榭脂は単独で用いられてもよぐ 2種以上が 併用されてもよい。
ポリイミド榭脂の一方の原料であるテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、無 水ピロメリット酸、 3, 3,, 4, 4,—ビフエ-ルテトラカルボン酸二無水物、 2, 3, 3,, 4, ービフエ-ルテトラカルボン酸二無水物、 2, 2' , 3, 3,ービフエ-ルテトラカルボン酸 二無水物、 2, 3' , 3, 4,一べンゾフエノンテトラカルボン酸二無水物、 3, 3' , 4, 4, ージフエ-ルスルホンテトラカルボン酸二無水物、 3, 3' , 4, 4,ージフエ-ルエーテ ルテトラカルボン酸二無水物、 1, 4, 5, 8 ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等、 シクロペンタン 1, 2, 3, 4—テトラカルボン酸二無水物等を挙げることが出来るが、
必ずしもこれに限定するものではなぐ種々のテトラカルボン酸二無水物を用いること ができる。これらは単独で使用されても、二種以上を組み合わせて用いても良い。 ポリイミド榭脂のもう一方の原料であるジァミンィ匕合物としては、分子内にアミノ基を 二個以上有する化合物であれば限定することなく用いることができる。その具体例と しては、 p—フエ二レンジァミン、 m—フエ二レンジァミン、 4, 4'ージアミノジフエニルェ 一テル、 4, 4'ージアミノジフエニルメタン、 3, 4'ージアミノジフエニルメタン、 4, 4' ジアミノジフエニルスルフォン、 3, 4'ージアミノジフエニルスルフォン、 4, 4'ージァミノ ジフエ-ルスルフイド、 3, 4,一ジアミノジフエ-ルスルフイド、ビス [4— (3—ァミノフエ ノキシ)フエ-ル]スルホン、 1, 3 ビス(4 アミノフエノキシ)ベンゼン、等が挙げられ る力 必ずしもこれに限定するものではなぐ種々のジァミンィ匕合物を用いることがで きる。これらは単独で使用されても、二種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明で用いるポリイミド榭脂は熱可塑性でも熱硬化性でも良ぐまた、溶剤等を用 Vヽて溶液状に加工されたものでも良!、。
一方、本発明に用いるポリアミック酸は、上記テトラカルボン酸の二無水物とジアミ ン化合物とを反応させて得られるものであり、その後加熱することにより脱水と共に閉 環しポリイミド榭脂を生成する。ポリアミック酸は、通常、溶剤中で合成されそのまま塗 液とする。用いられる溶剤は、例えば、 N—メチルピロリドン、ジメチルホムアミド、ジメ チルァセトアミド、 1, 3 ジメチルー 2 イミダゾリジノン、ジメチルスルフオキサイド、 y ブチロラタトン、 1, 2—ジエトキシェタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル 、ジエチレングリコールジェチルエーテル、シクロへキサノン等である。
[0078] 主成分としての上記熱硬化性榭脂(前記一般式 (I)で示される、ジヒドロベンゾキサ ジン環構造を主鎖中に有する重合体)と、副成分としての他の熱硬化性榭脂又は熱 可塑性榭脂との配合比 (前者 Z後者の重量比)は、好ましくは 1Z99〜99Z1、更に 好まし <は 5Z95〜95Z5である Q
[0079] また、本発明に係る熱硬化性組成物は、必要に応じて、難燃剤、造核剤、酸ィ匕防 止剤 (老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃助剤、帯電 防止剤、防曇剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、着色剤等の各種添加剤を含有していて もよい。これらはそれぞれ単独で用いられてもよぐ 2種以上が併用して用いても構わ
ない。また本発明に係る熱硬化性組成物を調製する際に、反応性あるいは非反応性 の溶剤を使用することもできる。
[0080] 〔成形体〕
本発明に係る成形体は、上記熱硬化性榭脂、又はそれを含む熱硬化性組成物を 成形して得られるものである。本発明の成形体としては、前述した熱硬化性榭脂が硬 化前にも成形性を有しているため、いったん硬化前に成形した後に熱をかけて硬化 させたもの (硬化成形体)でも、成形と同時に硬化させたもの (硬化体)でもよい。また 、その寸法や形状は特に制限されず、例えば、シート状 (板状)、ブロック状等が挙げ られ、さらに他の部位 (例えば粘着層)を備えていてもよい。また、この形成体は、熱 硬化性能をもち、フィルム状、板状、塊状等のものであってもよい。
[0081] その硬化方法としては、従来公知の任意の硬化方法を用いることができ、一般には 120〜260°C程度で数時間加熱すればよいが、加熱温度がより低かったり、加熱時 間が不足したりすると、場合によっては、硬化が不十分となって機械的強度が不足す ることがある。また、加熱温度がより高すぎたり、加熱時間が長すぎたりすると、場合に よっては、分解等の副反応が生じて機械的強度が不都合に低下することがある。よつ て、用いる熱硬化性ィ匕合物の種類に応じた適正な条件を選択することが望まし 、。
[0082] また、硬化を行う際に、適宜の硬化促進剤を添加してもよ!ヽ。この硬化促進剤として は、ジヒドロベンゾキサジンィ匕合物を開環重合する際に一般的に使用されている任意 の硬化促進剤を使用でき、例えば、カテコール、ビスフエノール A等の多官能フエノ ール類、 ρ—トルエンスルホン酸、 p—フエノールスルホン酸等のスルホン酸類、安息 香酸、サリチル酸、シユウ酸、アジピン酸等のカルボン酸類、コバルト(II)ァセチルァ セトネート、アルミニウム (III)ァセチルァセトネート、ジルコニウム(IV)ァセチルァセト ネート等の金属錯体、酸化カルシウム、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化鉄等 の金属酸化物、水酸化カルシウム、イミダゾール及びその誘導体、ジァザビシクロウ ンデセン、ジァザビシクロノネン等の第三級ァミン及びこれらの塩、トリフエ-ルホスフ イン、トリフエ-ルホスフィン'ベンゾキノン誘導体、トリフエ-ルホスフィン'トリフエ-ル ボロン塩、テトラフエ-ルホスホ -ゥム 'テトラフエ-ルポレート等のリン系化合物及び その誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよぐ 2種以上を混合して用いても
よい。
[0083] 硬化促進剤の添加量は特に限定されな!、が、添加量が過多となると、成形体の誘 電率ゃ誘電正接が上昇して誘電特性が悪化したり、機械的物性に悪影響を及ぼし たりする場合があるので、一般に、前記熱硬化性榭脂 100重量部に対し硬化促進剤 を好ましくは 5重量部以下、より好ましくは 3重量部以下の割合で用いることが望まし い。
[0084] 上記熱硬化性榭脂または上記熱硬化性組成物より得られる成形体であって、重合 体構造中に基 R1で表されるような縮脂環式炭化水素基を有するものは、主として分 子間隙の増大による低密度化、及びそれ以外の何らかの要因、更には分子内のベ ンゼン環の立体配置分布の影響により、極めて優れた誘電特性を実現することがで き、さらに優れた耐熱性を実現することができる。
[0085] 上記熱硬化性榭脂がより剛直な縮環式の脂環式炭化水素基を有する場合には、 得られる成形体は、ベンゾキサジンの特性である優れた誘電特性に加え、柔軟性の 付与を実現することができる。
[0086] 上記熱硬化性榭脂または上記熱硬化性組成物より得られる成形体であって、重合 体構造中に基 R1で表されるような縮脂環式炭化水素基と、基 R2で表されるような脂 肪族基を有するものは、主として分子間隙の増大による低密度化、及びそれ以外の 何らかの要因、更には分子内のベンゼン環の立体配置分布の影響により、極めて優 れた誘電特性を実現することができ、さらに優れた耐熱性、及び柔軟性を実現するこ とがでさる。
[0087] また、上記成形体は、前記熱硬化性榭脂または前記熱硬化性組成物の有する熱 硬化性という性質に基づいて信頼性、難燃性、成形性、美観性等に優れており、しか もガラス転移温度 (Tg)が高いので、応力が力かる部位や可動部にも適用することが 可能であり、且つ、重合時に揮発性の副生成物を発生しないので、そのような揮発性 の副生成物が成形体中に残存せず衛生管理上も好まし ヽ。
[0088] 本発明の成形体は、電子部品'電子機器及びその材料 (電子機器用材料基板材 料等)、特に優れた誘電特性が要求される多層基板、積層板、封止剤、接着剤等の 用途に好適に用いることができ、その他、航空機部材、自動車部材、建築部材、等の
用途にも使用することができる。
[0089] 本明細書にぉ 、て、「電子機器」には、例えば、 ICカード、携帯電話、ビデオカメラ 、コンピュータ、ファックス装置、デジタルカメラ、車載用機器 (GPS、カーナビゲーシ ヨン装置等)、 PDA,電子手帳等が含まれる。 上記電子機器用材料基板材料は、コ ンピュータにおいては、高周波動作を行う回路基板として、携帯電話においては、高 周波動作を行う回路基板又はそれを含む回路基板として、車載機器においては、 G PSゃ測距レーダに用いられる高周波用回路基板として、用いることができる。
高周波用回路基板にお!、ては、高速動作のためには遅延時間の短縮が必要であ り、基板が低誘電率であることが要求される。また、高周波では周波数に比例して損 失が増えるため、低誘電損失が望まれる。さらに、 GPSゃ側距レーダにおいてもアン テナ利得の面で低誘電損失が望まれる。上記電子機器用基板材料を用いることによ つて、これらの所望の特性に優れた電子機器を提供することができる。
[0090] 以下に本発明における代表的な実施例を示すが、本発明はこれによって何ら限定 されるものではない。
[0091] 実施例 A
(実施例 1)
クロ口ホルム中に、ビスフエノール A (東京化成製、 99%) 18. 45g (0. 08mol)、 3 ( 4) , 8 (9) , —ビス (アミノメチル)トリシクロ [5, 2, 1, 02'6]デカン (東京化成製、 97%) 16. 03g (0. 08mol)、ノラホノレムァノレデヒド(禾ロ光純薬製、 94%) 10. 22g (0. 32m ol)を投入し、還流下で 6時間反応させた。反応後の溶液を多量のメタノールに投じ て重合体を析出させた。その後、ろ別により重合体を分離し、メタノールで洗浄した。 その後、減圧乾燥により重合体を得た。 GPCによる分子量の測定では、標準ポリスチ レン換算で重量平均分子量は 4, 600であった。
[0092] (実施例 2)
ビスフエノール Aの代わりに、 1, 1—ビス(4—ヒドロキシフエ-ル)シクロへキサン(東 京化成製、 99%) 21. 69g (0. 08mol)を用いた以外は、実施例 1と同様にして重合 体を合成した。重量平均分子量は 3, 800であった。
[0093] (実施例 3)
クロ口ホルム中に、 ひ、 ひ ' ビス(4ーヒドロキシフエ二ル)一 1, 4 ジイソプロピルべ ンゼン(ビスフエノール Pと同一化合物、東京化成製、 98%) 22. 99g (0. 065mol)、 3 (4) , 8 (9) , —ビス (アミノメチル)トリシクロ [5, 2, 1, 02'6]デカン (東京化成製、 97 %) 13. 02g (0. 065mol)、 ノラホノレムァノレデヒド(禾ロ光純薬製、 94%) 8. 31g (0. 2 6mol)を投入し、還流下で 6時間反応させた。反応後の溶液を多量のメタノールに投 じて重合体を析出させた。その後、ろ別により重合体を分離し、メタノールで洗浄した その後、減圧乾燥により重合体を得た。 GPCによる分子量の測定では、標準ポリスチ レン換算で重量平均分子量は 5, 700であった。
[0094] (実施例 4〜6)
実施例:!〜 3で得られた重合体を 140°C、 160°C、 180°Cで各 1時間保持する熱プ レス法によりシート状に成形し、厚さ 0. 5mmのシート状の硬化成形体を得た。
[0095] 得られた成形体につ!、て、誘電率測定装置 (AGILENT社製、商品名「RFインピ 一ダンス マテリアル アナライザ E4991AJ )を用いて容量法により、 23°C、 100 MHz及び 1GHzにおける誘電率及び誘電正接を測定した。
また得られたシートを細力べ裁断し、島津製作所製、商品名「DTG— 60」を用いて TGA法により、 10°C/minの昇温速度で 5%重量減少温度 (Td5)を評価した。 測定'評価結果を表 1に示す。
[0096] [表 1]
表 1に示す通り、実施例 4〜6の硬化成形体は、いずれも誘電率が 3以下であり、誘 電正接も 0. 005以下と良好な誘電特性を示した。また、実施例 4〜6の硬化成形体 はいずれも Td5が 308°C〜350°Cと非常に良好な値を示した。
[0098] (実施例 7)
ビスフエノール Aの代わりに、 2, 2—ビス(4—ヒドロキシ一 3—メチルフエ-ル)プロ パン (東京化成製、 98%) 20. 93g (0. 08mol)を用いた以外は、実施例 1と同様に して重合体を合成した。重量平均分子量は 4, 300であった。
[0099] (実施例 8)
クロ口ホルム中に、 2, 2—ビス(4—ヒドロキシフエ-ル)へキサフルォロプロパン(東 京ィ匕成製、 99%) 22. 08g (0. 065mol)、 3 (4) , 8 (9) , —ビス(アミノメチル)トリシク 口 [5, 2, 1, 02,6]デカン(東京ィ匕成製、 97%) 13. 02g (0. 065mol)、 ノ ラホノレムァ ルデヒド (和光純薬製、 94%) 8. 72g (0. 27mol)を投入し、還流下で 6時間反応さ せた。反応後の溶液を多量のメタノールに投じて重合体を析出させた。その後、ろ別 により重合体を分離し、メタノールで洗浄した。その後、減圧乾燥により、重合体を得 た。 GPCによる分子量の測定では、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量は 5, 9 00であった。
[0100] (実施例 9)
2, 2—ビス(4—ヒドロキシフエ-ル)へキサフノレオ口プロパンの代わりに 9, 9—ビス( 4ーヒドロキシフヱ-ル)フルオレン(東京化成製、 98%) 23. 24g (0. O65mol)、を 使用した以外は、実施例 8と同様にして重合体を合成した。 GPCによる分子量の測 定では、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量は 7, 000であった。
[0101] (実施例 10)
クロ口ホルム中に、ビスフエノール A (東京化成製、 99%) 18. 45g (0. 065mol)、 2 , 5 (6) , —ビス(アミノメチル)ビシクロ [2, 2, 1]ヘプタン(三井化学製、 99. 8%) 12 . 37g (0. 08mol)、 ノ ラホノレムァノレデヒド(禾ロ光純薬製、 94%) 10. 73g (0. 34mol )を投入し、還流下で 6時間反応させた。反応後の溶液を多量のメタノールに投じて 重合体を析出させた。その後、ろ別により重合体を分離し、メタノールで洗浄した。そ の後、減圧乾燥により、重合体を得た。 GPCによる分子量の測定では、標準ポリスチ レン換算で重量平均分子量は 5, 600であった。
[0102] (実施例 11)
ビスフエノール Aの代わりに、 1, 1—ビス(4—ヒドロキシフエ-ル)シクロへキサン(本
州化学製、 99. 9%) 21. 49g (0. 08mol)を用いた以外は、実施例 10と同様にして 重合体を合成した。 GPCによる分子量の測定では、標準ポリスチレン換算で重量平 均分子量は 5, 000であった。
[0103] (実施例 12)
2, 2 ビス(4 ヒドロキシフエ-ル)へキサフノレオ口プロパンの代わりに 1, 1—ビス( 4 ヒドロキシフヱ-ル)— 1—フエ-ルェタン(東京化成製、 98%) 18. 89g (0. 065 mol)を使用した以外は、実施例 8と同様にして重合体を合成した。 GPCによる分子 量の測定では、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量は 4, 900であった。
[0104] (実施例 13)
ビスフエノール Aの代わりに、 1, 1 ビス(4ーヒドロキシフエ-ル)ェタン(東京化成 製、 98%) 17. 49g (0. 08mol)を用いた以外は、実施例 1と同様にして重合体を合 成した。重量平均分子量は 5, 200であった。
[0105] (実施例 14)
2, 2 ビス(4 -ヒドロキシフエ-ル)へキサフノレオ口プロパンの代わりにビスフエノー ル M (三井化学製、 99. 5%) 22. 63g (0. 065mol)を使用した以外は、実施例 8と 同様にして重合体を合成した。 GPCによる分子量の測定では、標準ポリスチレン換 算で重量平均分子量は 6, 100であった。
[0106] (実施例 15)
3 (4) , 8 (9) , —ビス(アミノメチル)トリシクロ [5, 2, 1, 02'6]デカンの代わりに、 2, 5 (6) , ビス(アミノメチル)ビシクロ [2, 2, 1]ヘプタン(三井化学製、 99. 8%) 10. 0 5g (0. O65mol)を用いた以外は、実施例 3と同様にして重合体を合成した。重量平 均分子量はで 6, 600であった。
[0107] (実施例 16)
実施例 1で得られた重合体 100重量部、ェピコート # 1007 (ジャパンエポキシレジ ン製、ビスフエノール A型エポキシ榭脂) 50重量部を THF100重量部に溶解して熱 硬化性組成物の溶液を調整した。これを PETフィルム上にキャストし、 THFを乾燥さ せて除去し、厚さ 150 mの熱硬化性組成物力もなるフィルムを得た。
[0108] (実施例 17)
実施例 16で得られたフィルムをオーブン中で、 140°Cで 1時間、 160°Cで 1時間、 1 80°Cで 1時間加熱することにより、硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムの誘電 特性を評価したところ、 100MHzでは誘電率 2. 95、誘電正接 0. 013、 1GHzでは 誘電率 2. 90、誘電正接 0. 012と比較的良好な誘電特性を示した。また、実施例 4 で得られたフィルムは 180° の屈曲試験にて白化したことに対し、実施例 16で得ら れたフィルムでは柔軟性が付与されており、 180° の屈曲試験でも折り目が付くだけ で白化せずフィルムとしては透明なままで問題がな力つた。屈曲試験では、サンプル フィルムを幅 10mmとし、 2つ折りにして、 3kgfの力で両側から押さえた後にフィルム を広げ、折り目が付いているのみで透明:〇、フィルムが白化している:△、フィルムが 割れる: X、の評価を行って 、る。
[0109] (実施例 18)
ェピコート # 1007の配合比を 100重量部、 200重量部とした以外は実施例 16と同 様の操作を行い、未硬化フィルムを作製し、ついで 140, 160, 180°C各一時間熱処 理を行うことにより硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムの誘電特性 (誘電率 ε 、誘電損失 tan δ )を評価し下記の結果を得た。
[0110] 評価結果
at 100MHz at 1GHz
実施例 18- a (100重量部配合) ε 3.00 tan δ 0.017 ε 2.94 tan δ 0.015 実施例 18- b (200重量部配合) ε 3.08 tan δ 0.021 ε 2.98 tan δ 0.019 また、上記に記載の屈曲試験は両者とも〇であった。
[0111] (実施例 al)
〔ポリアミック酸の合成〕
モレキュラーシーブス 4Aにて脱水した N—メチル 2 ピロリドン 3762gに以下の モノマーを添加して溶解させ、窒素気流下、撹拌機を用いて 150rpmの撹拌速度で 3時間均一に撹拌することによってポリアミック酸溶液を得た。
•無水ピロメリット酸 218g (lモル)
• 4、 4,—ジアミノジフエ-ルエーテル 200g (lモル)
[0112] 〔板状成形体の作製〕
上記により調製したポリアミック酸溶液に対し、実施例 1で得られた重合体を固形分 比として 10wt%となるようにカ卩え、その後よく攪拌 '振とうして均一な溶液とした。 得られた混合溶液を、アプリケータを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)のシ ート上に塗布した後、窒素雰囲気下 100°Cで 1時間保ち大部分の溶剤を除去した。 その後、 150°Cで 1時間、 200°Cで 1時間の順に加熱することによってベンゾォキサ ジンの重合とポリアミック酸の閉環によるポリイミドの生成を同時に行い、厚さ 50 m の板状成形体を作製した。
[0113] 〔誘電率および誘電正接の測定〕
上述の実施例及び比較例で得られた板状成形体から試験片を切り出し、下記の要 領に沿って物性測定を行った。
得られた厚さ 50 μ mの板状成形体から 15mm X 15mmの試験片を切り出し、これ を誘電率測定装置(HEWLETT PAKARD社製、品番「HP4291B」)に供給し 23 °Cで測定を行い、 100MHzにおける誘電率および誘電正接を読み取った。誘電率 は 3. 21,誘電正接は 0. 0038の結果を得た。また、上記に記載の屈曲試験はいず れのフィルムも〇であつた。
また、同一のサンプルにおいて誘電率測定装置 (AGILENT社製、商品名「RFィ ンピーダンス Zマテリアノレ アナライザ E4991AJ )を用いて容量法により、 23°C、 1 OOMHz及び 1GHzにおける誘電率及び誘電正接を再測定したところ、誘電率 3. 2 1,誘電正接 0. 0037の結果を得た。
[0114] (実施例 19)
ェピコート # 1007に変えて NC3000H (日本ィ匕薬製、ビフエ-ル型エポキシ榭脂) をそれぞれ 20重量部、 50重量部、 100重量部とした以外は実施例 16と同様の操作 を行い、未硬化フィルムを作製し、ついで 140, 160, 180°C各一時間熱処理を行う ことにより硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムの誘電特性を評価し下記の結 果を得た。
[0115] 評価結果
at 1 OOMHz at 1GHz
実施例 19- a ( 20重量部配合) ε 3.04 tan δ 0.006 ε 3.01 tan δ 0.006
実施例 19- b ( 50重量部配合) ε 3.08 tan δ 0.009 ε 3.04 tan δ 0.009 実施例 19- c ( 100重量部配合) ε 3.21 tan δ 0.012 ε 3.14 tan δ 0.015 また、上記に記載の屈曲試験は V、ずれのフィルムも〇であった。
[0116] (実施例 20、 21)
実施例 10および 15で得られた重合体を用レ、、熱プレス法により 180°Cで 1時間保 持して、厚さ 0. 5mmのシート状の硬化成形体を得た。
得られた成形体について、実施例 4〜6と同様にして誘電率、誘電正接および TG A法による熱分解特性を評価した。結果をまとめて表 2に示す。
[0117] [表 2]
前記一般式 (Π)において、 Rがー(CH )—、 Rが下記 (i)で示される基、
2 2 i 1
mが下記式で示される割合(%)である場合に、 i及び mを種々の組合せで変化させ た以下の各実施例における CTE、 Td、及び屈曲試験について評価した。
5
さらに、誘電率、誘電正接についても測定した。
( i )
〔数 1〕
m (%) = [Rのモル数 のモル数 +R
2 Z(R のモル数)〕 X 100
1 2
[0119] [CTE (ppm/°C) (CTEは温度に対する材料の線膨張率である)の測定]
サンプルを 75〜: LOO /z m厚、幅 4mmにして、 SII社(エスアイアイナノテクロジ一社
)の TMA (熱機械分析装置) DMS6100で温度に対するのびを 23〜100°Cで測定 した。
〔屈曲試験〕
屈曲試験では、サンプルフィルムを幅 10mm、厚み 75 μとし、 2つ折りにして、 3kgf の力で両側力も押さえた後にフィルムを広げ、折り目が付いているのみで透明:〇、 フィルムが白化して ヽる:△、フィルムが割れる: X、の評価を行った。
〔誘電率、誘電正接の測定〕
実施例 22〜33で得られた重合体を熱プレス法によりシート状に成形し、 140°C、 1 60°C、 180°Cで各 1時間保持し、厚さ 0. 5mmのシート状の硬化成形体を得た。 得られた成形体について、誘電率測定装置 (AGILENT社製、商品名「RFインピ 一ダンス/マテリアル アナライザ E4991AJ )を用いて容量法により、 23°C、 100 MHz及び 1 GHzにおける誘電率及び誘電正接を測定した。
〔5%重量減少温度 (Td )の測定〕
5
また得られたシートを細カゝく裁断し、島津製作所製、商品名「DTG— 60」を用いて TGA法により、 10°CZminの昇温速度で 5%重量減少温度 (Td )を評価した。
5
以上の結果を次に示す。
i m (%) CTE Td 屈曲 厚み 誘電率 tan S
5
(ppm/°C) 試験 [ ] (100MHz) 実施例 22 2 50 58 284 X 82 2.85 0.003
実施例 23 4 50 58 311 X 83 2.78 0.003
実施例 24 6 50 59 321 〇 84 2.79 0.005
実施例 25 8 50 77 326 〇 82 2.80 0.006
実施例 26 12 50 125 331 〇 88 2.77 0.005
実施例 27 6 0 57 337 Δ 82 2.69 0.002
実施例 28 6 10 68 331 Δ 83 2.77 0.004
実施例 29 6 25 67 324 〇 85 2.84 0.004
実施例 30 6 50 59 321 〇 84 2.79 0.005
実施例 31 6 75 64 320 〇 88 2.73 0.007
実施例 32 6 90 70 311 〇 80 2.95 0.008 実施例 33 6 100 72 312 O 85 2.84 0.006
[0121] 以上の結果より、次のことがわ力る。
CTEの面からは、 C (炭素数)が 8以下、さらに 6以下が望ましい。
Tdの面からは、 C6以上が望ましぐ Cが 6の場合に mが 75%以下、さら〖こ 50%以
5
下が望ましい。
われ (屈曲試験)の面からは、 Cが 6の場合に mが 10%以上、さらに 25%以上が望 ましい。
[0122] 実施例 B
〔実施例 B - 1〕
クロ口ホルム中に、ビスフエノール A (東京化成製、 99%) 18. 45g (0. 08mol)、 3 ( 4) , 8 (9) , —ビス (アミノメチル)トリシクロ [5, 2, 1, 02'6]デカン (東京化成製、 97%) 8. 01g (0. 04mol)、 1, 12—ドデカンジァミン(和光純薬製、 97%) 8. 26g (0. 04 mol)、パラホルムアルデヒド(和光純薬製、 94%) 10. 73g (0. 34mol)を投入し、還 流下で 6時間反応させた。反応後の溶液を多量のメタノールに投じて重合体を析出 させた。その後、ろ別により重合体を分離し、メタノールで洗浄した。その後、減圧乾 燥により、重合体を得た。 GPCによる分子量の測定では、標準ポリスチレン換算で重 量平均分子量は 16, 600であった。
[0123] 〔実施例 B— 2〕
クロ口ホルム中に、 ひ、 ひ,一ビス(4—ヒドロキシフエ-ル)一 1, 4—ジイソプロピル ベンゼン(東京ィ匕成製、 98%) 22. 98g (0. O65mol)、 3 (4) , 8 (9) , —ビス(アミノメ チル)トリシクロ [5, 2, 1, 02'6]デカン (東京化成製、 97%) 6. 51g (0. O325mol)、 1 , 12—ドデカンジァミン(和光純薬製、 97%) 6. 71g (0. O325mol)、パラホルムァ ルデヒド (和光純薬製、 94%) 8. 72g (0. 27mol)を投入し、還流下で 6時間反応さ せた。反応後の溶液を多量のメタノールに投じて重合体を析出させた。その後、ろ別 により重合体を分離し、メタノールで洗浄した。その後、減圧乾燥により、重合体を得 た。 GPCによる分子量の測定では、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量は 12, 200であった。
[0124] 〔実施例 B— 3〕
α、 α,一ビス(4—ヒドロキシフエ-ル)一 1, 4—ジイソプロピルベンゼンの代わりに 、ビスフエノール Μ (三井化学製、 99. 5%) 22. 63g (0. 065mol)を用いた以外は、 実施例 B— 2と同様にして重合体を合成した。得られた重合体の重量平均分子量は 24, 500であった。
[0125] 〔実施例 B— 4〕
クロ口ホルム中に、ビスフエノール A (東京化成製、 99%) 18. 45g (0. 08mol)、 3 ( 4) , 8 (9) , —ビス (アミノメチル)トリシクロ [5, 2, 1, 02'6]デカン (東京化成製、 97%) 16. 03g (0. 08mol)、ノ ラホノレムァノレデヒド(禾ロ光純薬製、 94%) 10. 22g (0. 32m ol)を投入し、還流下で 6時間反応させた。反応後の溶液を多量のメタノールに投じ て重合体を析出させた。その後、ろ別により重合体を分離し、メタノールで洗浄した。 その後、減圧乾燥により、下記構造を有する重合体を得た。 GPCによる分子量の測 定では、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量は 4, 600であった。
[0126] 〔実施例 B— 5〕
ビスフエノール Aの代わりに、 1, 1—ビス(4—ヒドロキシフエ-ル)シクロへキサン(東 京化成製、 99%) 21. 69g (0. 08mol)を用いた以外は、実施例 B—1と同様にして 重合体を合成した。重量平均分子量は 3, 800であった。
[0127] 〔実施例 B— 6〕
クロ口ホルム中に、ひ、 ひ,一ビス(4—ヒドロキシフエ-ル)一 1, 4—ジイソプロピル ベンゼン(ビスフエノール Pと同一化合物、東京化成製、 98%) 22. 99g (0. 065mol )、 3 (4) , 8 (9) , —ビス (アミノメチル)トリシクロ [5, 2, 1, 02'6]デカン (東京化成製、 9 7%) 13. 02g (0. 065mol)、 ノ ラホノレムァノレデヒド(禾ロ光純薬製、 94%) 8. 31g (0. 26mol)を投入し、還流下で 6時間反応させた。反応スキームを以下に示す。反応後 の溶液を多量のメタノールに投じて重合体を析出させた。その後、ろ別により重合体 を分離し、メタノールで洗浄した。その後、減圧乾燥により、下記構造を有する重合体 を得た。 GPCによる分子量の測定では、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量は 5, 700であった。
[0128] 〔誘電率、誘電正接の測定〕
実施例 B— 2、 4〜6で得られた重合体を熱プレス法によりシート状に成形し、 140 。C、 160°C、 180°Cで各 1時間保持し、厚さ 0. 5mmのシート状の硬化成形体を得た 得られた成形体について、誘電率測定装置 (AGILENT社製、商品名「RFインピ 一ダンス/マテリアル アナライザ E4991AJ )を用いて容量法により、 23°C、 100 MHz及び 1 GHzにおける誘電率及び誘電正接を測定した。
[0129] 〔5%重量減少温度 (Td5)の測定〕
また得られたシートを細カゝく裁断し、島津製作所製、商品名「DTG— 60」を用いて TGA法により、 10°CZminの昇温速度で 5%重量減少温度 (Td5)を評価した。
[0130] 〔屈曲試験〕
実施例 B—2、 4〜6で得られた重合体を用い、屈曲試験では、サンプルフィルムを 幅 10mm、厚み とし、 2つ折りにして、 3kgfの力で両側から押さえた後にフィル ムを広げ、折り目が付いているのみで透明:〇、フィルムが白化している:△、フィルム が割れる: X、の評価を行った。
測定 ·評価結果を表 3に示す。
[0131] [表 3]
以上のように、実施例 B— 2の硬化成形体は、誘電率が 3以下であり、誘電正接も 0 . 005以下と良好な誘電特性を示し、 Td5が 316°Cと非常に良好な値を示し、さらに 、柔軟性にも優れていることが分力つた。
また、実施例 B—4〜6で得られたフィルムは 180° の屈曲試験にて白化したのに
対して、実施例 B— 2で得られたフィルムは柔軟性が付与されており、 180° の屈曲 試験でも折り目が付くだけで白化せずフィルムとしては透明なままで問題がな力つた 産業上の利用可能性
本発明は、優れた誘電特性、及び耐熱性を兼ね備えた熱硬化性榭脂、あるいは、 優れた誘電特性、耐熱性、及び柔軟性を兼ね備えた熱硬化性榭脂、並びにそれを 含む熱硬化性組成物、それから得られる成形体、硬化体、硬化成形体が提供され、 産業上の利用可能性を有する。