WO2006090779A1

WO2006090779A1 - グリース組成物および軸受

Info

Publication number: WO2006090779A1
Application number: PCT/JP2006/303270
Authority: WO
Inventors: Yuji Ohnuki; Toshiaki Endo
Original assignee: Kyodo Yushi Co., Ltd.
Priority date: 2005-02-23
Filing date: 2006-02-23
Publication date: 2006-08-31
Also published as: EP1878785A1; EP1878785A4; EP1878785B1; JP4883920B2; JP2006232921A

Abstract

　基油としてパーフルオロポリエーテル油を含有し、増ちょう剤としてグリース組成物の全質量に対して少なくとも１０質量％のメラミンシアヌレートを含有するグリース組成物；およびこれを封入した軸受を提供する。本発明のグリース組成物を封入した軸受は、高温下においても、充分満足出来る長寿命を得ることが出来る。

Description

明細書

グリース組成物および軸受

技術分野

[0001] 本発明は、グリース組成物に関し、さらに詳細には、転がり軸受用として好適なダリース組成物およびこれを封入した軸受に関する。

背景技術

[0002] 高温で使用される軸受としては、例えば、自動車産業では特に潤滑箇所が発熱体であるエンジンに直結あるいは近傍に位置している電装品等の転がり軸受、電機産業ではクリーナモータなど高速 ·高温回転で使用される家庭電ィ匕製品等の転がり軸受、製鉄産業では連続铸造設備等の高温で潤滑される転がり軸受、製紙産業では、コルゲータマシン等の転がり軸受、事務機器ではコピーマシンのヒートローラ用転がり軸受等がある。

これらの軸受に封入、使用されるグリース組成物としては、種々の高温用転がり軸受用グリースが使用されている。例えば、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、アイドラプーリ、中間プーリ、電動ファンモータ、流体継手、水ポンプ、ディストリビュータ、スタータワンウェイクラッチなどの自動車電装品に使用される高温用転がり軸受用グリースとしては、耐熱性に優れたジゥレア化合物を増ちよう剤とし、合成潤滑油を基油としたグリースが使用されてきた (例えば、特許文献 1)。しかし、最近では特に使用温度が高くなる傾向にあり、軸受温度が 200°C前後で使用される場合がある。このような場合、ジゥレア化合物を増ちよう剤とし、合成潤滑油を基油とした従来のダリースでは、早期に軸受の焼付きを起こし、満足する性能が得られない。

また、他の高温用転がり軸受用グリースとしては、増ちよう剤としてポリテトラフルォロエチレンを使用し、基油にパーフルォロポリエーテル油を使用したいわゆるフッ素ダリースが使用されてきた (例えば、特許文献 2)。し力しながら、このフッ素グリースも高温下においては、充分満足出来る寿命を得ることは困難である。

[0003] また、上記自動車電装品は、エンジンルームの下部に取り付けられることが多いことから、走行中、雨水などが力かりやすぐこれらの部品に使用される転がり軸受に封入されるグリースには、優れた鲭止め性能が要求される。グリースに鲭止め性能を付与するには、鲭止め剤を添加することが一般的である。高温用転がり軸受用フッ素グリースの鲭止め剤の成分としては無機不働態化剤が使用されることが多ぐとりわけ亜硝酸ナトリウムが最も効果的な鲭止め剤として使用されている。し力しながら、亜硝酸ナトリウムは第二級ァミンと酸性条件下で反応して N— -トロソァミンを生成することが知られている。ニトロソァミンは環境負荷物質であることから亜硝酸ナトリウムに代わりうる鲭止め剤が求められている。

[0004] 特許文献 1：特許第 2764724号

特許文献 2：特許第 3572987号

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0005] 本発明の目的は、新規なグリース組成物を提供することである。

本発明の他の目的は、転がり軸受に封入した場合に、高温下においても、充分満足出来る寿命を得ることが出来るグリース組成物を提供することである。

本発明のさらに他の目的は、上記グリース組成物を封入した軸受、特に、転がり軸受を提供することである。

課題を解決するための手段

[0006] 本発明は以下のグリース組成物を提供するものである。

1.基油としてパーフルォロポリエーテル油を含有し、増ちよう剤としてグリース組成物の全質量に対して少なくとも 10質量⁰ /₀のメラミンシァヌレートを含有するグリース組成物。

2.増ちよう剤として、さらにポリテトラフルォロエチレン、カーボンブラック、およびァェロジルカなる群力選ばれる少なくとも 1種を含有する上記 1記載のグリース組成物

3.メラミンシァヌレートの含有量力グリース組成物の全質量に対して 10〜30重量 %である上記 1または 2記載のグリース組成物。

4.さらに鲭止め剤を含有する上記 1〜3のいずれ力 1項記載のグリース組成物。

5.鲭止め剤がセバシン酸ナトリウムである上記 4記載のグリース組成物。 6.転がり軸受用である上記 1〜 5の、ずれ力ゝ 1項記載のダリース組成物。

7.上記 1〜6のいずれか 1項記載のグリース組成物を封入した転がり軸受。

発明の効果

[0007] 本発明のグリース組成物は、基油にパーフルォロポリエーテル油を用いたいわゆるフッ素グリースにおいて、増ちよう剤としてメラミンシァヌレートを使用しているため、高温下での苛酷な潤滑条件下で使用される軸受に封入して使用した場合、軸受寿命を顕著に延長することが可能である。また、鲭止め剤を含有する場合には、自動車電装品用軸受等に封入された場合にも軸受寿命を顕著に延長することが可能であり、特に、鲭止め剤としてセバシン酸ナトリウムを使用すると人体や環境に悪影響を及ぼすことがなぐ長寿命かつ優れた防鲭性を発揮する。

発明を実施するための最良の形態

[0008] 本発明に使用される基油は、パーフルォロポリエーテル油を必須成分として含有する。本発明に使用されるパーフルォロポリエーテル油の具体例としては、下記の式で表されるものが挙げられる。

(CF CF CF O) n (1)

2 2 2

平均分子量： 1900〜8400

(CF CF O) m (CF O) n (2)

2 2 2

平均分子量： 4000〜 13000

(CF (CF ) CF O) m (CF O) n (3)

3 2 2

平均分子量： 1500〜7250

(CF (CF ) CF O) n (4)

3 2

平均分子量： 1850〜8250

基油中のパーフルォロポリエーテル油の含有量は、好ましくは 80質量％以上、さらに好ましくは 90質量％以上、最も好ましくは 100質量％である。基油中のパーフルォ口ポリエーテル油の含有量が 80質量％未満では、基油の耐熱性が劣り、早期に軸受の焼付きを起こし、満足する性能が得られない傾向がある。

本発明に使用される基油は、パーフルォロポリエーテル油以外の基油を含むことができる。併用可能な基油としては、鉱油、ジエステル、ポリオールエステルに代表されるエステル系合成油、ポリ _αーォレフイン、ポリブテンに代表される合成炭化水素油、アルキルジフエ-ルエーテル、ポリプロピレングリコールに代表されるエーテル系合成油、シリコーン油、フッ素化油など各種合成油が挙げられる。

[0009] 本発明に使用されるメラミンシァヌレートは、メラミンとイソシァヌル酸のほぼ 1： 1の有機付加体で、外観は白色の粉末であり、通常は 1次粒子径 0. 5〜5 /ζ πιの結晶性の高い物質として市販されている。メラミンシァヌレートは、耐熱性が高ぐ 300°Cでも長期間安定である。メラミンシァヌレートは、金属材料の滑り部において、耐荷重性が優れ、摩耗防止効果があり、また、同様に榭脂などの軟らかい材料に対しても摩擦や摩耗を促進することなぐ優れた潤滑効果を示す。

従来、鉄鋼、造船、セメント等の重厚長大産業において使用される潤滑剤において、高温、低速、高荷重という要求を満たすために、二硫ィ匕モリブデンやグラフアイトが主として使用されていた。しかし、作業環境汚染や製品汚染を防止するという観点から、白色製品の要求が強くなり、メラミンシァヌレートは、二硫ィ匕モリブデンやグラファイトに代替し得る固体潤滑剤として広く使用されている。メラミンシァヌレートの固体潤滑剤としての使用形態としては、グリース、ペースト、ドライフィルム等が多い。

このように、メラミンシァヌレートは、グリースにおいて、金属材料等の滑り部の耐荷重性向上を目的に、添加剤として使用されてきたため、そのグリース中の含有量は通常 1〜3質量％程度であり、多くとも 5質量％以下であった。

また、これまでに、メラミンシァヌレートをグリースの増ちよう剤として用いることについては全く知られておらず、従って、メラミンシァヌレートを増ちよう剤として用いたダリースカ高温で使用される転がり軸受の寿命を大幅に延長するということを示唆する報告ゃ開示は皆無である。

[0010] 本発明はメラミンシァヌレートを増ちよう剤として使用することを特徴とするものであり、本発明のグリース組成物中のメラミンシァヌレートの含有量は、少なくとも 10質量⁰ /₀ であり、好ましくは 10〜30質量％、さらに好ましくは 15〜30質量％、最も好ましくは、 15〜25質量％である。

10質量％未満では、増ちよう能力が無ぐグリースが軸受力漏洩し、軸受が短寿命となり、また 30質量％を超えると、グリースによる攪拌抵抗が大となり、発熱により寿命低下を自ら導いてしまう傾向がある。

[0011] 本発明のグリース糸且成物の増ちよう剤は、メラミンシァヌレートを必須成分とするが、他の増ちよう剤を混合使用しても良い。このような他の増ちよう剤としては、例えば、 N a、 Ca、 Li、 Al、 Baなどの金属石けん系増ちよう剤、カーボンブラック、ァエロジル、ベントン、テレフタラメート、ゥレア、フタロシアニン、ポリテトラフルォロエチレンなどの非石けん系増ちよう剤などが挙げられる。本発明のグリース組成物に含まれる増ちよう剤の全質量に対するメラミンシァヌレートの割合は、好ましくは 50質量％以上、さらに好ましくは 60質量％以上、最も好ましくは 70〜： LOO質量％である。

[0012] 本発明のグリース組成物は、鲭止め剤を含有することが好ましい。好ましい鲭止め剤としては、例えば、既知のカルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ァミン、エステル等が挙げられ、さらに好ましくは、脂肪酸、二塩基酸、ナフテン酸、ラノリン脂肪酸、ァルケ-ルコハク酸、ァルケ-ルコハク酸誘導体等のカルボン酸またはカルボン酸塩が挙げられる。最も好ましくは、セバシン酸ナトリウム等の二塩基酸のカルボン酸塩である。本発明のグリース組成物中の鲭止め剤の含有量は、好ましくは 1質量％以上、より好ましくは 2〜： LO質量％、さらに好ましくは 3〜： LO質量％、最も好ましくは 4〜 10質量％である。 1質量％未満では鲭止め効果が充分でなぐ 10質量％を超えると、グリースによる攪拌抵抗が大となり、発熱による寿命低下を自ら導いてしまう傾向がある。

本発明のグリース組成物には、グリース組成物に通常使用される他の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属腐食防止剤、油性剤耐摩耗剤、極圧剤、固体潤滑剤などを必要に応じて添カ卩してもよい。

本発明のグリース組成物は、種々の用途に使用できるが、特に高温に暴露される被潤滑箇所の潤滑に好適に使用される。最も好適な使用形態は、軸受であり、特に高温用転がり軸受である。

このような軸受が使用される部品の例として、例えば、自動車電装品が挙げられ、その代表例としては、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、アイドラプーリ、中間プーリ、電動ファンモータ、流体継手、水ポンプ、ディストリビュータ、スタータワンゥエイクラッチなどが挙げられる。 [0013] 実施例及び比較例

以下の表 1及び 2に示す増ちよう剤、基油、添加剤を、表 1及び 2に示す割合 (質量部）でよく混ぜ、 3本ロールミルで混練し、グリース組成物を調製した。得られたダリース組成物を以下の試験方法により評価した。結果を表 1及び 2に示す。

軸受潤滑寿命試験（ASTM D 3336mod.)

軸受 6204に試験グリースを 3. 6g充填して、両側に鋼板のシールド板をかしめ、その軸受の外輪温度を 200°Cに保ち、荷重 Fa=Fr=67Nの条件下、 lOOOOrpmで内輪を連続運転させる。軸受の回転トルクが過大になり、過電流 (4アンペア超）を生じるまで、または軸受温度が 15°C以上上昇するまでの時間のいずれか短い方を軸受潤滑寿命時間 (単位:時間）とした。

混和ちよう度: JIS K2220 7.

鲭止め性： Emcor防鲭試験 (IP220)

[0014] [表 1]

[0015] [表 2] 比較例比較例比較例比較例比較例

1 2 3 4 5 基油 1 パーフルォロポリ 78 73 73 95 75 エーテ/レ油（* 1 )

基油 2 パーフルォロポリ ― ― ― ― ―

エーテル油（*2)

增ちょう剤 1 メラミンシァヌレ 5 5 一ト (*3)

增ちょう剤 2 ポリテトラフルォ 22 22 22 20 口エチレン (*4)

锖止め剤 1 セバシン酸ナトリ ― 5 ― ― ―

ゥム (*5)

锖止め剤 1 亜硝酸ナトリウム 5

(6* )

混和ちよう度 280 280 280 400 < 280 軸受潤滑寿命 700 700 300 900 時間

E m c o r 5 0 0 5

(*1)：式（3)で表される平均分子量 4100のもの

(*2)：式（2)で表される平均分子量 8000のもの

(*3)：三菱化学株式会社製 MCA

(*4)：ダイキン工業株式会社製ルブロン L - 5F

(*5)：豊国製油株式会社製

(*6)：三菱化学株式会社製

メラミンシァヌレートを増ちよう剤とし、基油にパーフルォロポリエーテル油を用いた実施例 1および 2のグリース組成物は、ポリテトラフルォロエチレンを増ちよう剤とし、メラミンシァヌレートを含まない比較例 1のグリース糸且成物と比べ高温下の軸受潤滑寿命が、はるかに長いことがわかる。また、メラミンシァヌレートの含有量が 5質量％の比較例 2の糸且成物は混和ちよう度が高くグリースとして使用できな力つた。

Claims

請求の範囲

[1] 基油としてパーフルォロポリエーテル油を含有し、増ちよう剤としてグリース組成物の全質量に対して少なくとも 10質量⁰ /₀のメラミンシァヌレートを含有するグリース組成物。

[2] 増ちよう剤として、さらにポリテトラフルォロエチレン、カーボンブラック、およびァエロジルカなる群力選ばれる少なくとも 1種を含有する請求項 1記載のグリース組成物

[3] メラミンシァヌレートの含有量力グリース組成物の全質量に対して 10〜30重量⁰ /₀ である請求項 1または 2記載のグリース組成物。

[4] さらに鲭止め剤を含有する請求項 1〜3のいずれ力 1項記載のグリース組成物。

[5] 鲭止め剤がセバシン酸ナトリウムである請求項 4記載のグリース組成物。

[6] 転がり軸受用である請求項 1〜5のいずれか 1項記載のグリース組成物。

[7] 請求項 1〜6のいずれか 1項記載のグリース組成物を封入した転がり軸受。