テロメライシン併用抗癌剤 技術分野
本発明は、 ヒ トテロメラーゼのプロモーター、 E1A遺伝子、 IRES配列及び E1B遺 伝子をこの順に含むポリヌクレオチドを含む組換えウィルスと、 抗腫瘍作用を有する 物質とを含む腫瘍の併用療法のための医薬組成物に関する。
明
背景技術
腫瘍細胞で選択的に増殖する組換えウィ田ルスは、腫瘍細胞の中でウィルス増殖が生 じ細胞死を誘導するため、 それのみでも抗腫瘍効果を有する。 しかし、 抗腫瘍効果を 有する物質と併用することで、 癌細胞の増殖を抑制し、 癌細胞内でのウィルス増殖の 時間的余裕を確保することができる。 また、 癌細胞内において増殖したウィルスが、 抗癌剤により破壊されることで、 ウィルス放出を促進され、 周辺癌細胞への急速なゥ ィルス拡散と顕著な抗腫瘍効果が期待できる。 さらに、 .ウィルスによる細胞死と従来 の抗癌剤による細胞死の作用機構は異なるため、併用した際にもそれぞれの抗腫瘍効 果が阻害される可能性は低いと推測される。 実際に、 腫瘍細胞で選択的に増殖するへ ルぺスウィルスは、 抗癌剤や放射線療法などの従来の抗癌治療との併用で、 前臨床的 および臨床的に抗腫瘍効果の増強が認められたと報告されている。 (Post DE, Fulci G, Chiocca A, Van Meir EG. Re iicative oncolytic nerpes simplex viruses in combination cancer therapies. Curr Gene Ther. 2004 Mar;4(l):41-51 及び
Bennett JJ, Adusumilli P, Petrowsky H, Burt BM, Roberts G, Delman KA, Zager JS, Chou TC, Fong Y. Up -re ulation of GADD34 mediates the synergistic anticancer activity of mitomycin C and a gammal34.5 deleted oncolytic herpes virus (G207). FASEB J. 2004 Jun;18(9):1001-3.) 発明の開示
本発明は、 抗癌活性がさらに増強された医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。そして、ヒ トテロメラ一 ゼのプロモーター、 E1A遺伝子、 IRES配列及び E1B遺伝子をこの順に含むポリヌク レオチドを含む組換えウィルスと従来の抗腫瘍作用を有する物質と併用すると、抗腫 瘍活性が高まることを見出し、 本発明を完成するに至った。
すなわち、 本発明は以下のとおりである。
( 1 ) ヒ トテロメラーゼのプロモーター、 E1A遺伝子、 IRES配列及び E1B遺伝子を この順に含むポリヌクレオチドを含む組換えウィルスと、 抗腫瘍作用を有する物質と を含む、 腫瘍の併用療法のための医薬組成物。
上記の医薬組成物のうち、 ヒ トテロメラーゼとしては、 えば hTERTがあげられ る。 また、 ウィルスとしてはアデノウイルスを例示できる。 抗腫瘍作用を有する物質 としては、 微小管阻害活性を有する物質、 トポイソメラーゼ I阻害活性を有する物質 のほか、 ヒストン^ァセチラーゼ阻害活性を有する物質や INGN-201を有する物質が あげられる。 さらに、 微小管阻害活性を有する物質としてはドセタキセル若しくはビ ノレルビン又はそれらの塩を例示でき、 トポィソメラ一ゼ I阻害活性を有する物質と してはィリノテカン又はその塩を例示でき、 ヒストンデァセチラ一ゼ阻害活性を有す る物質としては FR901228を例示できる。 なお、 腫瘍は、 特に限定されず、 例えば肺 癌、 大腸癌、 胃癌、 乳癌、 食道癌、 頭頸部癌、 肝臓癌、 膝臓癌、 胆嚢 ·胆管癌、 前立 腺癌、 膀胱癌、 子宮頸癌、 甲状腺癌、 卵巣癌、 白血病、 リンパ腫、 肉腫、 及び間葉系 腫瘍などがあげられる。
( 2 ) ヒ トテロメラ一ゼのプロモーター、 E1A遺伝子、 IRES配列及び E1B遺伝子を この順に含むポリヌクレオチドを含む組換えウィルスと、 抗腫瘍作用を有する物質と を併用することを特徴とする、 腫瘍細胞の増殖を抑制する方法。
( 3 ) ヒ トテロメラーゼのプロモータ一、 E1A遺伝子、 IRES配列及び E1B遺伝子を この順に含むポリヌクレオチドを含む組換えウィルスと、 抗腫瘍作用を有する物質と を併用することを特徴とする、 腫瘍の治療方法。
上記 (2 ) 及び (3 ) において、 ヒ ドテロメラーゼとしては、 例えば hTERTがあ げられる。 また、 ウィルスとしてはアデノウイルスを例示できる。 抗腫瘍作用を有す る物質としては、 微小管阻害活性を有する物質、 トポイソメラーゼ I阻害活性を有す る物質のほか、 ヒス トンデァセチラーゼ阻害活性を有する物質や INGN-201を有する
物質があげられる。 さらに、 微小管阻害活性を有する物質としてはドセタキセル若し くはビノレルビン又はそれらの塩を例示でき、 トポイソメラーゼ I阻害活性を有する 物質としてはィリノテカン又はその塩を例示でき、 ヒストンデァセチラーゼ阻害活性 を有する物質としては FR901228を例示できる。 なお、 腫瘍は、 特に限定されず、 例 えば肺癌、 大腸癌、 胃癌、 乳癌、 食道癌、 頭頸部癌、 肝臓癌、 腌臓癌、 胆嚢 *胆管癌、 前立腺癌、 膀胱癌、 子宮頸癌、 甲状腺癌、 卵巣癌、 白血病、 リンパ腫、 肉腫、 及び間 葉系腫瘍などがあげられる。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の組換えアデノウイルス (テロメライシン) の模式図を示す。 図 2は、 FR901228を示す。
図 3は、 CAR発現がアデノウイルス感染に及ぼす影響を示す図である。
図 4は、 テロメライシンと微小管阻害薬との併用効果を、 XTTアツセィを用いて解 析したグラフを示す。
図 5は、 テロメライシンと、 微小管阻害剤ビノレルビン及びトポイソメラーゼ I阻 害剤 SN-38 (CPT-11代謝産物) を用いて XTTァッセィを行ったグラフを示す。
図 6は、 抗癌剤が組換えウィルスの増殖に及ぼす影響を解析したダラフを示す。 図 7は、 テロメライシン及び微小管阻害薬が腫瘍細胞の細胞周期に及ぼす影響を示 すグラフである。
図 8は、 テロメライシン及び微小管阻害剤の H1299ヒ ト肺癌腫瘍におけるインビボ 抗腫瘍効果を示す。
図 9は、テロメライシン腫瘍内投与後の腫瘍組織及び肝臓における組織学的変化 (HE 染色) を示す写真である。
図 1 0は、 HDAC阻害剤 FR901228によるアデノウイルス受容体 CARの発現を示す グラフである。
図 1 1は、 HDAC阻害剤 FR901228によるアデノウイルス感染効率を示す写真であ る。
図 1 2は、 HDAC阻害剤 FR901228による OBP-401感染効率の増強を示すグラフで ある。
図 1 3は、 HDAC阻害剤 FR901228によるテロメライシン抗腫瘍効果の増強を示す グラフである。
図 1 4は、 Advexinの抗腫瘍効果を測定したグラフである。
図 1 5は、テロメライシン -Advexin同時投与による抗腫瘍効果を測定したグラフで ある。
図 1 6は、テロメラィシン- Advexin時間差投与による抗腫瘍効果を測定したダラフ である。
図 1 7は、テロメライシン- Advexin時間差投与による抗腫瘍効果を測定したグラフ である。
図 1 8は、テロメライシン- Advexin時間差投与による抗腫瘍効果を測定したグラフ である。 発明を実施するための最良の形態
本発明は、 ヒ トテロメラーゼのプロモーター、 E1A遺伝子、 IRES配列及び E1B遺 伝子をこの順に含むポリヌクレオチドを含む組換えウィルスと、 抗腫瘍作用を有する 物質とを含む腫瘍の併用療法のための医薬組成物に関する。 本発明の医薬組成物は、 上記の組換えウィルスと抗腫瘍作用物質を単独で腫瘍細胞に投与した場合に得られる 抗腫瘍効果よりも優れた効果が得られるだけでなく、 これらの物質を単独で用いた場 合には抗腫瘍作用を奏さない腫瘍 胞にも抗腫瘍効果を発揮する。 以下、 本発明を詳 細に説明する。
1 . 本発明の組換えウィルス
本発明の組換えウィルスは、 ヒ トテロメラーゼのプロモータ一、 E1A遺伝子、 IRES 配列及び E1B遺伝子をこの順に含むポリヌクレオチドがゲノムに組み込まれたウィル スをいう。 用いられるウィルスは特に限定されないが、 安全性等の点からアデノウィ ルスが好ましい。 また、 アデノウイルスの中でも、 使用の簡便さ等の点からタイプ 5 のアデノウィルスが特に好ましい。
本発明に使用される組換えウィルスは、 ヒ トテロメラーゼのプロモーターにより、 E1A遺伝子、 IRES配列及び E1B遺伝子が駆動される。 腫瘍細胞では正常細胞と比較
してテロメラ一ゼの発現が極めて高いた'め、 テロメラーゼが含ま Lる腫瘍細胞におい てはテロメラ一ゼプロモーターが発現し、 これにより本発明に含まれる組換えウィル スが増殖する。 このように、 本発明の医薬組成物に含まれる組換えウィルスは、 正常 細胞では増殖せず、 腫瘍細胞でしか増殖しないので、 癌細胞特異的およびテロメラー ゼ特異的に増殖 ·複製されることになる。 その結果、 腫瘍細胞内では、 ウィルス増殖 による細胞障害が起こり、 これにより、.本発明に使用される組換えウィルスは腫瘍細 胞を特異的に死滅させることができる。
「テロメラ一ゼのプロモータ一」 は、 テロメラーゼの転写開始部位を決定し、 その 頻度を直接的に調節する。 テロメラーゼとは、 真核生物染色体の複製時の短縮に拮抗 して、 テロメァ長を維持する酵素である。 このようなテロメラーゼのプロモータ一の 種類は、目的とする遺伝子の発現に用いるウィルスに対応しうる、適切なプロモータ一 であればいかなるものでもよく、 特に限定されるものではないが、 例えば、 ヒトテロ メラ一ゼ逆転写酵素 (hTERT) のプロモータ一が好ましい。 hTERTは、 その 5'末端 の上流 1.4kbpの領域で、多くの転写因子結合配列が確認されており、その領域が hTERT プロモーターと考えられるが、 中でも、 翻訳開始部位の上流 181bpの配列が下流の遺 伝子発現に重要なコア領域である。 本発明において、 このコア領域を含むものであれ ば、 限定されずに使用することができるが、 このコア領域を完全に含む上流 378bp程 度の配列を hTERTプロモーターとして使用するのが好ましレ、。この 378bp程度の配列 は、 181bpのコア領域単独の場合と比べて、 その遺伝子発現効率が同等であることが 確認されている。 455bpの長さの hTERTプロモーターの塩基配列を配列番号 1に示す。 hTERTプロモーターは、 配列番号 1に示される塩基配列のほか、 配列番号 1からな' る DNAに対し相補的な塩基配列よりなる DNAとストリンジェントな条件でハイプリ ダイズし、 かつ hTERTプロモーターとしての活性を有するヌクレオチドの塩基配列 も含まれる。 このようなヌクレオチドは、 配列番号 1で表される塩基配列からなるポ リヌクレオチド、又はその断片をプローブとして、コロニーハイブリダィゼーシヨン、 プラークハイブリダイゼーション、 サザンブ口ット等の公知のハイブリダイゼーショ ン法により、 cDNAライブラリー及びゲノムライブラリ一から得ることができる。 cDNA ライブラリ一の作製方法については、 「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.J (Cold Spring Harbor Press (1989)) を参照することができる。 また、 巿
販の cDNAライブラリー及びゲノムライブラリ一を用いてもよい。 上記ハイブリダィ ゼーションにおいてストリンジェントな条件としては、たとえば、 lxSSC〜2 xSSC、 0.1%〜0.5%SDS及び 42°C〜68°Cの条件が挙げられ、 より詳細には、 60〜68°Cで 30 . 分以上プレハイブリダィゼーシヨンを行った後、 2xSSC、 0.1%SDS中、 室温で 5〜: 15 分の洗浄を 4〜6回行う条件が挙げられる。ハイブリダィゼーション法の詳細な手順に つレヽ飞 f 、 「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.J (Cold Spring Harbor Press (1989);特に Section9.47-9.58) 等を参照することができる。 また、 配列 番号 1と 50%以上、 60%以上、 70%以上、 80%以上、 90%以上、 95%以上、 98%以 上又は 99%以上の相同性を有し、 かつ hTERTプロモータ一としての活性を有するヌ クレオチドの塩基配列も用いることができる。
本発明において、 E1A遺伝子、 IRES配列及び E1B遺伝子をこの順に含むこととし たのは、 IRES配列を E1A遺伝子と E1B遺伝子との間に挿入したものを使用すると、 . ウィルスが宿主細胞に感染した際に、 増殖能が高くなるためである。 なお、 E1A遺伝 子と E1B遺伝子は、 E1遺伝子に含まれる遺伝子であるが、 この E1遺伝子とは、 ウイ ルスの有する DNA複製に関する初期遺伝子 (early:E) と後期遺伝子 (late:L) のう ちの初期遺伝子の一つをレ、い、ウィルスゲノムの転写の制御に係わるタンパク質をコー ドしている。 E1A遺伝子 よりコードされる E1Aタンパク質は、 感染可能なウィルス • 産生に必要な遺伝子群 (E1B、 E2、 E4等) の転写を活性化する。 E1B遺伝子でコ一 ドされる E1Bタンパク質は、 後期遺伝子 (L遺伝子) の mRNAが、 感染した宿主細胞 の細胞質へ蓄積するのを助け、 宿主細胞のタンパク質合成を阻害することで、 ウィル スの複製を促進する。 E1A遺伝子、 E1B遺伝子の塩基配列を、 それぞれ配列番号 2及 び配列番号 3に示す。 .
E1A及び E1Bは、 それぞれ配列番号 2及び配列番号 3に示される塩基配列のほか、 • 配列番号 2及び配列番号 3からなる DNAに対し相補的な塩基配列よりなる DNAとス トリンジェントな条件でハイブリダィズし、 かつ各々 E1A及び E1Bとしての活性を有 するタンパク質をコードする塩基配列も含まれる。 このような塩基配列は、 それぞれ 配列番号 2及び配列番号 3で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、 又はその 断片をプローブとして、コロニーハイブリダィゼ一ション、プラークハイブリダィゼー ション、 サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、 cDNAライブ
ラリー及びゲノムライブラリ一から得ることができ 。 cDNAライブラリ一の作製方 法については、' 「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」 (Cold Spring Harbor Press (1989)) を参照することができる。 また、 市販の cDNAライブラリー及 びゲノムライブラリ一を用いてもよい。 上記ハイブリダィゼーションにおいてストリ ンジェントな条件としては、たとえば、 lxSSC〜 2 xSS 0.1%〜0.5%SDS及び 42°C 〜68°Cの条件が挙げられ、より詳細には、 60〜68°Cで 30分以上プレハイブリダィゼー シヨンを行った後、 2xSSC、 0.1%SDS中、 室温で 5〜: 15分の洗浄を 4〜6回行う条件 が挙げられる。 ハイブリダィゼーション法の詳細な手順については、 「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.J (Cold Spring Harbor Press (1989);特に Section9.47-9.58)等を参照することができる。また、配列番号 2又は 3と 50%以上、 60%以上、 70%以上、 80%以上、 90%以上.、 95%以上、 98%以上又は 99%以上の相 同性を有し、 かつ E1A及び E1Bとしての活性を有するヌクレオチドの塩基配列も用い ることができる。
IRESdnternal Ribosome Entry Site)とは、 ピコルナウィルス科に特異的なタンパ ク質合成開始シグナルであり、 18Sリボソーム RNAの 3'末端と相補的な配列があるた めリボソーム結合部位としての役割を果たすと考えられている。 ピコルナウィルス科 のウィルス由来 mRNAはこの配列を介して翻訳されることが知られている。 IRES酉己 列からの翻訳効率は高く、 mRNAの途中からでもキヤップ構造非依存的にタンパク質 合成が行われる。 したがって、 本ウィルスでは、 ヒ トテロメラ一ゼのプロモーターに より E1A遺伝子と IRES配列の下流にある E1B遺伝子の両方が独立に翻訳される。 IRES を使用すると、 テロメラーゼのプロモータ一の発現制御が E1A遺伝子、 E1B遺伝子に 独立して及ぶために、 E1A遺伝子あるいは E1B遺伝子のいずれか一方をテロメラーゼ のプロモーターで制御する場合に比べて; ウィルスの増殖をより厳格にテロメラ一ゼ 活性を有する細胞に限定することができる。 IRES配列を配列番号 4に示す。
また、 IRESは、 配列番号 4に示される塩基配列のほ力、 配列番号 4からなる DNA に対し相補的な塩基配列よりなる DNAとストリンジェントな条件でハイブリダィズ し、 力つ IRESとしての活性を有するタンパク質をコードする塩基配列も含まれる。 このような塩基配列は、 配列番号 4で表される塩基配列からなるポリヌクレオチド、 又はその断片をプローブとして、 コロニーハイブリダィゼーシヨン、 プラークハイブ
リダイゼ一ション、サザンブロット等の公知のハイブ.リダィゼーション法により、cDNA ライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることができる。 cDNAライブ リ一の 作製方法については、 「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.J. (Cold Spring Harbor Press (1989)) を参照することができる。 また、 市販の cDNAライブ ラリー及びゲノムライブラリーを用いてもよい。 上記ハイブリダィゼーシヨンにおい てストリンジェントな条件としては、たとえば、 lxSSC〜 2 xSSC、 0.1%〜0.5%SDS 及び 42°C〜68°Cの条件が挙げられ、 より詳細には、 60〜68°Cで 30分以上プレハイブ リダィゼーシヨンを行った後、 2xSSC、 0.1%SDS中、 室温で 5〜15分の洗浄を 4〜6 回行う条件が挙げられる。 ハイブリダィゼーション法の詳細な手順については、 「Mo丄 ecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.J (Cold Spring Harbor Press (1989);特に Section9.47-9.58) 等を参照することができる。 また、 配列番号 4と 50% 以上、 60%以上、 70%以上、 80%以上、 90%以上、 95%以上、 98%以上又は 99%以 上の相同性を有し、 力つ IRESとしての活性を有するヌクレオチドの塩基配列も用い ることができる。
また、 本発明において、 ヒ トテロメラーゼのプロモーターは、 E1遺伝子の上流に位 置する。テロメラ一ゼ活性を有する細胞内で増殖を促進することができるからである。 本発明の組換えウィルスに含まれる遺伝子は、 通常の遺伝子工学的手法により得る ことができる。 例えば、 遺伝子工学的手法として一般的に用いられている DNA合成 装置を用いた核酸合成法を使用することができる。 また、 鎵型となる遺伝子配列を単 離又は合成した後に、 それぞれの遺伝子に特異的なプライマーを設計し、 PCR装置を 用いてその遺伝子配列を増幅する PCR法 (Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987) Section 6.1-6.4)又はクローニングベクターを用いた遺伝 子増幅法を用いることができる。上記方法は、 Moleculer cloning 2nd Edt. Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等に従い、 当業者ならば容易に行うことができる。 得られた PCR産物の精製には公知の方法を用いることができる。 たとえば、 ェチジゥ ムブロマイ ドを用いる方法、 SYBR Gteenl (Molecular probes社) を用いる方法、 GENECLEAN (フナコシ) 、 QIAGEN (QIAGEN社) 等によるァガロースゲルを 用いる方法、 DEAE-セルロース濾紙を用いる方法、フリーズ &スクイーズ法、透析チュー ブを用いる方法等がある。 ァガロースゲルを用いる場合には、 ァガロースゲル電気泳
動し、 DNA断片をァガロースゲルより切り出して精製する。 必要に応じて、 慣用の 配列決定法により期待された遺伝子が得られていることを確認することができる。例 えば、ジデォキシヌクレオチドチェーンターミネーシヨン法(Sanger et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463) 等により行うことができる。 また、 適当な DNAシ一 クェンサ一 (例えば、 ABI PRISM (アプライ ドバイオシステムズ社) ) を利用して 配列を解析することも可能である。
その後、 上記のようにして得られた各々の遺伝子を所定の順序となるように連結さ せる。 まず、 上記各々の遺伝子を公知の制限酵素等で切断し、 切断した当該遺伝子の DNA断片を公知のベクターに公知の方法に従って挿入し、連!^する。公知のベクター としては、 脳心筋炎ウィルス (ECMV) の IRES (mRNA内部のリボソーム結合サイ ト)が含まれていて、 1種類の mRNAから 2箇所のオープンリ一ディングフレーム(ORF) を翻訳することが可能な pIRESベクタ一のほカ 大腸蓐由来のプラスミ ド (pCR4、 pCR2、 pCR2.1、 pBR322、 pBR325、 pUCl2、 pUCl3など) 、 枯草菌由来のプラス ミ ド(pUBllO、 pTP5、 pC194など) 、酵母由来プラスミ ド (pSHl9、 pSH15など) 、 λファージなどのバクテリオファージ、 レトロウイルス、 ワクシニアウィルス、バキュ ロウィルスなどの動物ウィルスなどの他、 pAl-ll、 pXTl、 pRc/CMV、 pRc/RSV, pcDNAI/Neoなどが用いられるが、 本発明の場合は、 pIRESベクターを用いると、 マ ルチクローニングサイ トに、 順次必要な遺伝子を挿入することにより、 「ヒ トテロメ ラ一ゼのプロモーター、 E1A遺伝子、 IRES配列及び E1B遺伝子」 をこの順に含む組 み換え遺伝子を作製することができるため、好ましレ、。 DNAの連結には、 DNAリガー ' ゼを用いることができる。 上記組換え遺伝子のウィルスへの組み込みは、 例えばエレ ク トロポレーシヨン法、 リボソーム法、 スフエロプラスト法、 酢酸リチウム法等を用 いることができる。
本発明において、 ヒ トテロメラ一ゼとして hTERTを用いる場合について以下に具 体的に説明する。
293細胞等の E1遺伝子を発現している細胞から E1A-S、 El A- AS, E1B-S、 E1B-AS 等のプライマーを用いて、 RT-PCR及び 又は DNA-PCRを行うことにより E1A遺伝 子及び E1B遺伝子を増幅し、 必要に応じて TAクローニング等の公知の方法を用いて 配列を確認した後、 公知の制限酵素で E1A及び E1Bの DNA断片を切り出すことがで
ぎる。
次に、 本発明に使用される hTERT-ElA-IRES-ΕΙΒからなる遺伝子は、 公知のべク ター (例えば pIRES等) に『E1A-IRES-E1B』 の順になるように各遺伝子を、 マルチ クロ一ニングサイ ト等を利用して挿入することにより作製することができる。次いで、 ■ Mlul、 Bgllll等の制限酵素で切り出した hTERTプロモーター配列を、 E1Aの上流に 挿入することができる。
なお、 必要に応じて、 pShuttleなどの公知ベクターに含まれるサイ トメガロウィル ス(CMV)プロモータ一を Mfel、 Nhel等の適当な制限酵素により取り除き、 その部位 に phTERT-ElA-IRES-ElBから制限酵素 Nhelおよび Notlで切り出した配列を挿入す ることができる。 このように、 本発明に使用される hTERT-ElA-IRES-ΕΙΒからなる カセット(図 1 )を組込んだアデノウィルスを、特に「テロメライシン」又は「Telomelysin」 とレ、う。 hTERTプロモーターの制御下にアデノウィルスの増殖に必要な E1遺伝子を 発現させることによって、 ウィルスを癌細胞特異的に増殖させることができる。
組換えウィルスを細胞に感染させるには、 例えば、 以下の方法で感染させることが できる。 まず、 ヒ ト大腸癌細胞 SW620、 ヒ ト肺癌細胞 A549、 H1299等の細胞を適当 な培養液が入った培養プレートに播き、 炭酸ガス存在下で、 37°Cで培養する。 培養液 は、動物細胞培養に一般的に使用される DMEM、 MEM、 RPM 1640などが採用され、 必要応じて血清、 抗生物質、 ビタミン等を添加することができる。 培養した細胞に一 定量の本ウィルス、例えば、 0.1〜: 10 ΜΟΙ、好ましくは、 0.:!〜 1 MOI (multiplicity of infection).を接種することにより感染させる。 MOIとは: 一定量の培養細胞に一定量 のウィルス粒子を感染させる場合のウィルス量 (感染単位) と細胞数の比をいい、 ゥ ィルスを細胞に感染させる際の指標として用いられる。
なお、 ウィルス増殖を確認するには、 ウィルス感染細胞を回収し、 DNAを抽出し、 本ウィルスが有する適当な遺伝子を標的とするプライマーを用いてリアルタイム PCR を行うことで定量的に解析することができる。 ' .
2 . 抗腫瘍作用を有する物質
本発明の抗腫瘍作用を有する物質とは、 生体の調節機構が乱れて細胞***を繰り返 し、 細胞が過剰増殖した結果、 腫瘍塊となるような腫瘍細胞 (癌細胞) の発育や増殖
を抑制する作用を有する物質をいい、 癌細胞の核酸合成を抑制し、 あるいは、 代謝を 阻害することにより増殖を阻止するような物質も含まれる。 具体的には、 癌細胞の核 酸タンパク質にアルキル基を導入して細胞障害を起こさせるようなアルキル化活性を ' .有する物質、 代謝過程で酵素に拮抗して、 細胞合成を阻害する代謝拮抗活性を有する 物質、 抗癌作用を有する抗生物質、 微小管に作用して抗腫瘍効果を示す微小管阻害活 性を有する物質、 トポイソメラーゼを阻害するトポィソメラーゼ阻害活性を有する物 質などがある。 トポイソメラーゼとは、 DNAに一時的に切れ目を入れて DNA鎖のリ ンキング数を変える反応を触媒する酵素である。各物質について以下に具体的に示す。 アルキル化活性を有する物質:カルボコン、 ブスルファン (マスタード薬) 、 二ムス チン (ニトロソゥレア類) など .
代謝拮抗活性を有する物質:メ トトレキサ一ト (葉酸系) 、 メルカプトプリン、 (プ リン系) 、 シタラビン (ピリミジン系) 、 フルォロウラシル、 テガフール、 カノレモフーノレなど
抗生物質:ァクチノマイシン D、 ブレオマイシン、 アドリアマイシン、 マイ トマイシ ン。など
微小管阻害活性を有する物質: ドセタキセル、 パクリタキセル (タキサン) 、 ビノレ ノレビン、 ビンクリスチン、 ビンブラスチン (アルカロイ ド系) など トポイソメラ一ゼ阻害活性を有する物質:ィリノテカン(トポイソメラ一ゼ I阻害薬)、 ポドフイロトキシン誘導体 (トポ 'イソメラーゼ II阻害薬)' 本発明においては、 上記抗腫瘍作用を有する物質の塩を用いることもできる。 本発 明に適する 「塩」 としては、.特に限定されないが、 例えば塩酸塩、 臭化水素酸塩、 硫 酸塩、 リン酸塩、 硝酸塩、 ピロ硫酸、 メタリン酸、 ョゥ化水素酸等の各種無機酸付加 . 塩;酢酸塩、.プ:口ピオン酸塩、 コハク酸塩、 グリコール酸塩、 乳酸塩、 リンゴ酸塩、 シユウ酸塩、 酒石酸塩、 クェン酸塩、 マレイン酸塩、 フマル酸塩、 メタンスルホン酸 塩、 ベンゼンスルホン酸塩、 p-トルエンスルホン酸塩、 ァスコルビン酸塩、 安息香酸 等の各種有機酸付加塩;ァスパラギン酸塩、 グルタミン酸塩、 等の各種ァミノ酸との 塩を挙げることができる。 また、 上記物質がフエノール性水酸基又はカルボキシル基
を有する場合には、 ナトリウム塩、 カリウム塩などのアルカリ金属塩として用いるこ ともできる。
また、 本発明においては、 上記物質の水和物又は非水和物などを用いることができ る。 非水和物としては、 アルコール (例えば、 メタノール、 エタノール、 n—プロパ ノール) 、 ジメチルホルムアミ ドなどを使用することができる。
上記物質は、 公知の化学合成により、 あるいは市販品としても得ることができる。 特に、 上記した抗癌剤のうち、 本発明における抗癌剤としては、 微小管阻害活性を 有する物質であるドセタキセル及びピノレルビン並びにトポイソメラーゼ阻害活性を 有する物質であるイリノテカンが好ましいがこれらに限定されない。
ドセタキセルとは、上記微小管阻害薬のうちのタキサン系に分類され、主に乳がん、 非小細胞肺癌の治療に適用される。 ドセタキセルは、 セィョウイチイ針葉抽出物から 半合成品として得られ、 チューブリンとの重合を促進して、 微小管形成と共に、 微小 管の脱重合を抑制するほか、 細胞の有糸***を停止させる機能を有する。
ビノレルビンとは、 上記微小管阻害薬のうちの植物 (ビン力) アルカロイ ド系に分 類され、 非小細胞肺がんの治療に適用されるほ力、 注射薬として乳がんに対する治験 が行われている。 ビノレルビンは、 神経毒性が低く、 チューブリンに選択的に作用し てその重合を阻害するほ力、細胞***を妨げることで細胞を死滅させる機能を有する。 イリノテカンとは、上記トポイソメラーゼ I阻害活性を有する物質として分類され、 大腸ガン、 いくつかの悪性リンパ腫並びに小細胞肺癌、 非小細胞肺癌、 子宮頸癌、 卵 巣癌、 胃癌 (手術不能又は再発) 、 結腸 ·直腸癌 (手術不能又は再発) 、 乳癌 (手術 不能又は再発) 、 有棘細胞癌、 及び悪性リンパ腫 (非ホジキンリンパ腫) といった癌 の治療に適用される。 イリノテカンは、 中国原産植物である喜樹から抽出されたビン 力アル力ロイ ドであるカンプトテシンであり、 細胞***に必要な要素の発達を妨げる ことによりガン細胞の成長を阻害する機能を有する。
また、 上記の分類には含まれていないが、 ヒストンデァセチラーゼ (HDAC) 阻害 活性を有する物質も本発明の医薬組成物に含まれる物質として有効である。 HDAC阻 害活性を有する物質とは、 ヒス トン脱ァセチル化を阻害するように作用する物質であ る。 HDAC阻害活性を有する物質は、 アデノウイルス受容体 (CAR) の発現を増強す ることで、 ある種のがん細胞においてテロメライシンと相乗的に抗腫瘍効果を発揮す
る。
HDACとは、 ヒス トンのァセチル化を調節する酵素の一種でヒス トンのァ チル化 を阻害するように作用する酵素である。 ヒス トンは、 ヌクレオソームのコアを形成す るタンパク質であり、 ヒストンの脱ァセチル化を触媒することにより、 クロマチンの 構造変化を促し、 遺伝子発現を抑制する機能を有する。 この HDACの作用を阻害し、 正常細胞及び腫瘍細胞においてヒストンがァセチル化されるように作用する物質が同 定され、 現在、 米国 NCI (米国国立癌研究所)を中心に HDAC阻害剤として臨床試験が 進行中である。 HDAC阻害活性を有する物質は、 細胞腫の分化、 もしくは細胞自体の 分化を誘導する物質であるため、 強力な化学療法をしなくても、 癌化した細胞を正常 細胞に戻すことができる。
HDAC阻害活性を有する物質の一例として、 FR901228 (FK228) という物質を挙 げることができる (図 2) 。 FR901228は、 米国国立癌研究所で NSC番号 630176とし て登録されており、 Mapouria mandrarensis由来のシクロぺプチドで、 分子式 C24H36N406S2の図 2に示すような化学式で表される。 FR901228は、 造血性細胞に おいて、 コクサツキ一ウィルス ·アデノウイルス受容体 (CAR) レベルや ανインテグ リンレベル及び Η3ヒス トンのァセチル化を促進し、 FR901228処理した造血性細胞で はアデノウィルスが感染しゃすくなるといわれてレ、る(Blood, 15 March 2002, vol. 99, No. 6, pp.2248-2251) 。
アデノウィルスは受容体 CARを介して細胞に感染 ·進入するが、 CARが陰性であ る癌細胞ではウィルス感染効率が'低下している。 そこで、癌細胞においても CARの発 現が増強されれば、 アデノウイルスは癌細胞に進入しやすくなる (図 3)。 FR901228 は、 癌細胞においても CARの発現を増強させることができるため、 FR901228.と本発 明の組換えアデノウィルスを併用して用いた場合、 FR901228は本来の抗腫瘍作用に 加え、 併用される組換えアデノウィルスの腫瘍細胞への感染効率を向上させる作用を も有し、 好ましい。 .
' ここで、 FR901228が腫瘍細胞中の CARの発現を增強しているか否かは、 フローサ ィ トメ トリ一を用いた以下の実験により確認することができる、 'すなわち、 各種腫瘍 細胞を適当な条件で培養した後、 FR90122を適当量添加して処理した後に、 フローサ ィ トメ トリーにて CAR発現を解析する。
さらに、 遺伝子治療に用いられる物質'も本発明の医薬組成物に含まれる物質として 有効である。 遺伝子治療とは、 癌抑制治療、 免疫増強活性や血管新生阻害作; fflを有す るタンパク質を体内で一過性に、 ある—いは持続的に発現させて腫瘍を治療する方法で ある。 このような遺伝子治療に用いられる物質として、 具体的には、 INGN-201 (Advexin; Introgen Therapeutics社) が挙げられるが、 これらに限定されない。 INGN-201は、 腫瘍抑制遺伝子である p53遺伝子をアデノウィルスに組み込んだ遺伝 子治療薬であり、 p53タンパク質を発現する複製不能のアデノウイルスである。 ある 種の腫瘍細胞においてテロメライシンと相乗的に抗腫瘍効果を発揮する。
INGN-201はテロメライシンと異なり、 癌細胞にアポトーシス細胞死を誘導するこ とで抗腫瘍効果を発揮する。 INGN-201とテロメライシンが同時に癌細胞に感染する と、テロメライシンによって産生される E1タンパク質を利用することにより、複製不 能な INGN-201も増殖することが可能となる。 · この INGN-201により p53タンパク質 が大量に産生されてアポトーシスが誘導されると共に、テロメライシンによる細胞死 も加わるため、 非常に強い殺細胞効果が期待される。
本発明の医薬組成物が作用する腫瘍(癌)細胞の種類は、限定されるものではなく、 あらゆる種類の腫瘍細胞を用いることができる。例えば、頭頸部、 胃、大腸、肺、肝、 前立腺、 膝、 食道、 膀胱、 胆嚢 *胆管、 ***、 子宮、 甲状腺、 卵巣等における固形癌、 あるいは白血病、 リンパ腫、 肉腫、 間葉系腫瘍等に有効である。 ヒ トの組織由来の腫 瘍細胞のほとんどはテロメラーゼ活性の上昇を示しており、 本発明の E薬組成物はそ のようなテロメラ一ゼ活性により増殖が活発になった腫瘍細胞に全般的に作用しうる。 特に、本発明で用いられる、抗腫瘍作用を有する物質(抗癌剤)が作用する大腸、肺、 胃、 食道、 肝臓、 前立腺、 頭頸部、 ***等に効果がある。
上記のように、 腫瘍細胞では正常細胞と比較してテロメラーゼの発現が極めて高い ため、 本発明の医薬組成物に含まれる組換えウィルスは、 正常細胞では増殖せず、 腫 瘍細胞のみで増殖す ため、結果として腫瘍細胞を特異的に死滅させることができる。
3 . 医薬組成物
本発明の医薬組成物は、 ヒ トテロメラーゼのプロモーター、 E1A遺伝子、 IRES配 列及び E1B遺伝子をこの順に含むポリヌクレオチドを含む組換えウィルスと、抗腫瘍
作用を有する物質とを併用することを特徴とする。
これは、 テロメライシン組換えウィルスが腫瘍細胞に及ぼす細胞死の作用機序が、 従来の抗がん剤によるアポト一シスの作用機序とは異なること、 さらに、 テロメラィ シン組換えウィルスは、 抗腫瘍作用を有する物質で腫瘍細胞が処理された場合でも、 何らその影響を受けずに、 その細胞内での増殖複製を行うことができるといった、 テ ロメライシンの性質により達成されたものである。
本発明の医薬組成物は、 そのまま患部に適用することもできるし、 あらゆる公知の 方法、 例えば、 静脈、'筋肉、 腹腔内又は皮下等の注射、 あるいは鼻腔、 口腔又は肺か らの吸入、 経口投与、 カテーテルなどを用いた血管内投与等により生体 (対象となる 細胞や臓器) に導入することもできる。 さらに、 本発明の医薬組成物に含まれる組換 えウィルスと、 抗腫瘍作用を有する物質とは、 同時に投与することもできるし、 一方 を投与後、一定時間経過後に他方を投与する方法により生体に導入することもできる。 また、 例えば凍結などの方法により扱いやすく した後、 そのまま用いてもよく、 あ るいは賦形剤、 増量剤、 結合剤、 滑沢剤等公知の薬学的に許容される担体、 公知の添 加剤 (緩衝剤、 等張化剤、 キレート剤、 着色剤、 保存剤、 香料、 風味剤、 甘味剤等が 含まれる。 ) などと混合することができる。 本発明の医薬組成物に含まれる組換えゥ イノレスと、 抗腫瘍作用を有する物質とを別個独立に投与する場合は、 各々に上記物質 を混合することもできる。
本発明の医薬組成物は、 錠剤、 カプセル剤、 散剤、 顆粒剤、 丸剤、 液剤、 シロップ 剤等の経口投与剤、 注射剤、 外用剤、 坐剤、'点眼剤等の非経口投与剤などの形態に応 じて、 経口投与又は非経口投与することができる。 好ましくは、 筋肉、 腹腔等への局 部注射、 静脈への注射等が例示される。
投与量は、 有効成分の種類、 投与経路、 投与対象、 患者の年齢、 体重、 性別、 症状 その他の条件により適宜選択されるが、 本発明に含まれるウィルスの一日投与量とし ては、 lOS lOuPFU (plaque forming units) 程度、 好ましくは 109〜: LOUPFU程度 とするのがよく、 1日 1回投与することもでき、 数回に分けて投与することもできる。 また、本発明のウイルスを使用する際には、公知の免疫抑制剤等を用レ、ることにより、 生体の免疫を抑制し、 該ウィルスが 染し易くすることもできる。 更に、 本発明のゥ ィルスは、公知の抗癌剤及び放射線からなる群から選ばれる少なくとも 1種の抗癌剤
を併用することもできる。
' 本発明の医薬組成物は、 以下の'理由で副作用が生じる可能性は極めて低い 考えら れ、 非常に安全な製剤であるということができる。
( 1 ) 正常の体細胞ではテ口メラ一ゼ活性がほとんどなく、 また、 造血細胞等の浮遊 細胞では本発明のウィルスは感染しにくい。
( 2 ) 本発明のウィルスは増殖能を有するので、 通常の遺伝子治療で用いられている 非増殖性ウィルスよりも低い濃度で使用することができる。
( 3 ) 本発明のウィルスが過剰に投与された場合であっても、 生体内の通常の免疫作 用によって抗ウィルス作用が働く。 本発明に含まれる抗腫瘍作用を有する物質の投与量も、有効成分の種類、投与経路、 投与対象、 患者の年齢、 体重、 性別、 症状その他の条件により適宜選択される。 例え ば、 ドセタキセルの場合は、 通常、 成人に 1日 1回、 60mgZm2 (体表面積) を 1時間 以上かけて 3〜4週間間隔で点滴静注する。 なお、症状により適宜増減することが可能 である。 ただし、 1回最高用量は 70mg/m2とする。
ピノレルビンの場合は、 例えば、 1回 2.0〜2.5mg/m2を 1週間間隔で静脈内に緩徐 に静注することができる。
イリノテカンの場合は、 例えば、 塩酸イリノテカンとして、 通常、 成人に 1日 1回、 150mgZm2を 2週間間隔で 3〜4回点滴静注し、 少なくとも 3週間休薬する。 これを 1 クールとして、.投与を繰り返す。'
FR9Q1228の場合は、 欧米にて臨床試験が進行中であり、 未だ至適容量や至適投与 経路が確立されていない。
INGN-201の場合は、 まだ臨床試験が進行中であり、 至適容量は確立されていない 力 本邦での臨床試験では 10" PFU (plaque forming units) まで、 また米国の臨床 試験でも 3 X 1012 VP (virus particles)までの投与で重篤な副作用はみられていない。 投与経路としては腫瘍内投与が好ましいがこれに限定されない。
本発明の医薬組成物の抗腫瘍作用は以下のように試験を行い検討することができる。
( 1 ) 組換えウィルスと抗腫瘍作用を有する物質の併用効果の検討
本発明の医薬組成物に含まれる組換えウィルスと抗腫瘍作用を有する物質を併用す ると、 これらを単独で使用した場合には効果がみられない腫瘍に対して抗腫瘍作用を 発揮する。 従って、 本発明の医薬組成物を用いることでより多様な腫瘍に対する治療 等が可能となる。
また、 腫瘍の種類によっては、 抗腫瘍作用を有する物質を低濃度で投与すると本発 明の医薬祖生物の抗腫瘍効果が発揮されるが、抗腫瘍作用を有する物質を高濃度で投 与すると本発明の医薬祖生物の抗腫瘍効果が発揮されない場合がある。 抗腫瘍作用を 有する物質の服用は、 副作用を伴うことが多いため、 当該投与量を少なくするのは、 患者の QOLの向上という側面からも好ましい。
本発明の医薬組成物が癌細胞に対して、 どの程度の抗腫瘍効果が認められるか解析 するには、 例えば、 XTTアツセィを行いることができる。
XTT (2,3-bis [2- Methoxy 4-nitro- 5-sulfophenyl ]- 2H- tetrazolium- 5- carboxyanilide inner salt) アツセィは、 生細胞中のミ トコンドリァの脱水素酵素に より生存細胞の活性を測定することを基本原理としており、インビト口における細胞 毒性をモニターするのに適した方法である。以下に XTTアツセィについて具体的に説 明する。
XTT溶液は、 フエノールレツドを含まない場合又は平衡塩溶液に溶解させた場合は 黄色を示す。 この XTT溶液が生存細胞と接触すると、 生存細胞のミ トコンドリアの脱 水素酵素が XTTのテトラゾリゥム環を切断し、水溶液に可溶の橙色のフオルマザン結 晶が生成する。 なお、 実際は XTTの'生物学的還元が不十分であるため、 還元促進剤と してフエナジンメ トサルフェート (PMS)等の電子共役物質が反応液に添加されるこ とが多い。 そして、 細胞数の増減によって、 生成するフオルマザン量が変化すること を利用し、 得られた橙色の溶液を比色法により測定することによって、 所望の物質の 細胞毒性を測定することができる。 本発明の医薬組成物の解析にあたっては、 本発明 の組換えウィルスをインビトロで培養中の種々の癌細胞に適当な濃度 (MOI:
multiplicity of infection) で感染させる。 上記細胞を適当な条件で培養後、 種々の濃 度の抗腫瘍作用を有する物質を上記ウィルス感染細胞培養液に投与する。 ウィルス感 染後、 適当な期間培養した後に、 上記 XTTアツセィを行い、 抗腫瘍効果を解析するこ とができる。
( 2 ) 抗腫瘍作用を有する物質が組換えウィルスの増殖に及ぼす影響 本発明の医薬組成物に含まれる組換えウィルスと抗腫瘍作用を有する物質を併用し ても、抗腫瘍作用を有する物質の存在によって組換えウィルスの増殖複製は何ら影響 を受けない。従って、本発明の医薬組成物に含まれる前記ウィルスは、併用されても、 単独で使用されるときに発揮される抗腫瘍効果が阻害されることはなレ、。
本発明の医薬組成物において併用される抗腫瘍作用を有する物質が組換えウイルス の標的細胞内における増殖にどのような影響を及ぼすのかについては、 例えば、 定量 的リアルタイム PCRを用いて以下のように測定することができる。 すなわち、 抗腫瘍 作用を有する物質を併用して組換えウィルスを適当な期間培養した後、 ウィルス感染 細胞を回収して DNAを抽出し、 本ウィルスが有する適当な遺伝子を標的とするブラ イマ一を用いてリアルタイム PCRを行うことで、本ウィルスが有する適当な遺伝子を 定量的に解析することができる。 このとき、 例えば、 本発明の組換えウィルスに蛍光 物質をコードする遺伝子などを組み込んでおくと、本ウィルスの増殖がみられる細胞 は、 励起光をあてることにより所定の蛍光 (例えば GFPの場合は緑色蛍光) を発する ため、 細胞内におけるウィルス増殖を可視化することができる。 例えば、 ウィルス感 染細胞を蛍光顕微鏡下に観察すると、 細胞で GFP蛍光発現が見られる。 また、 CCD カメラを用いて、 経時的に GFP蛍光発現を観察することで、 ウィルス感染細胞を経時 的に観察することもでき、 そのような組換えウィルスを生体内に投与すれば、 生体内 において細胞をリアルタイムで標識および検出することもできる。
( 3 )抗腫瘍作用を有する物質及び組換えウィルスが腫瘍細胞の細胞周期に及ぼす影 響
本発明の医薬組成物において併用される抗腫瘍作用を有する物質と組換えウイルス. が腫瘍細胞に及ぼす抗腫瘍効果は、 各々独立しており、 互いに影響を及ぼしあうよう なものではない。 組換えウィルスが腫瘍細胞に及ぼす抗腫瘍効果は、 抗腫瘍作用を有 する物質の抗腫瘍効果とは全く異なる作用機序によるものである。 従って、 組換えゥ ィルスが存在しても、 例えば、 抗腫瘍作用を有する物質が腫瘍細胞の細胞周期を阻害 し、 アポトーシスを誘導する機能が失われることはない。
本発明の医薬組成物において併用される抗腫瘍作用を有する物寳と組換えウィルス が標的とする細胞周期にどのような影響を及ばすのかについては、 例えば、 フローサ ィ トメ トリー (Flow cytometry) を用いて、 核を染色する PI (propidium iodide) に より細胞周期 (cell cycle) を解析することができる。
フローサイ ト トリーとは、 細胞浮遊液を高速で流動させて、 個々の粒子から発す る蛍光を測定することにより、 細胞集団中の個々の細胞の大きさ、 DNA含量等を測 定する方法をいう。 フローサイ トメ トリ一は、 細胞 1個 1個の相対的大きさや形状、 内 部構造の違いを解析できるばかりではなく、 さらに蛍光標識を行うことにより蛍光強 度や蛍光の種類を測定し、細胞の同定や細胞群を構成する種々の細胞の存在比を短時 間で解析することができる。
細胞膜は、 細胞死により、 その状態を保てなくなるため、 上記 PI等で容易に核が染 色される。 従って、 この PIによる核染色の結果から、 DNA量と細胞周期を判定する ことができる。 なお、.腫瘍細胞では、 細胞周期における S期及び G2/M期の割合が高い と悪性度が高いとされる。 従って、 G2/M期の割合が抑制されるような結果が得られ れば、 抗腫瘍効果が認められるといえる。
( 4 )抗腫瘍作用を有する物質及び組換えウィルス併用時におけるィンビボ抗腫瘍効 果
本発明の医薬組成物である抗腫瘍作用を有する物質及び組換えウィルスを併用した '—場合には、 組換え'ウィルスを単独投与した場合や、 抗腫瘍作用を有する物質を単独投 与した場合に比較して極めて髙レ、抗腫瘍効果を得ることができる。
抗腫瘍効果は、 例えば、 以下のように腫瘍径を計測することによって解析すること ができる。
第 5週齢ヌードマウス背部皮下に適当な腫瘍細胞、 例えば H1299を接種し、 腫瘍が 5~10mm大になった日寺点で、 適当な間隔をおいて、 テロメライシンを適当量腫瘍内に 投与し、 ドセタキセルを腹腔内に適当量投与する。 このとき、 対照として、 PBSを腫 ' 瘍内投与、 腹腔内投与するとよい。 投与後、 適当な期間をおいて腫瘍径を計測し、 コ ントローノレと比べて腫瘍の大きさに有意差が見られるかを解析する。
また、 本発明の医薬組成物は、 抗腫瘍作用を有する物質が、 組換えウィルスの感染
効率を増強させる作用を有する場合もありうる。 そのような作用があることを確認す るには、 例えば、 腫瘍細胞の培養液に抗腫瘍作用を有する物質を添カ卩した後'に、 組換 ぇゥイノレスを接種し、 そのウィルスが腫瘍細胞にどの程度感染したかを測定すること により、腫瘍細胞の培養液に抗腫瘍作用を有する物質を添加していない培養液に接種 したウィルスの感染状態と比較することにより確認することができる。
そのウィルスが腫瘍細胞にどの程度感染したかを確認するには、 例えば、 本発明の 非増殖型組換えウィルスのベクターに、 LacZ遺伝子を組み込んだ非増殖型 LacZ遺伝 子発現アデノウィルスを用いることができる。この方法を用いると、この非増殖型 LacZ 遺伝子発現アデノウィルスが細胞に感染し、增殖すると LacZ遺伝子が発現して青色に 発色するので、 ウィルス感染が確認しやすいからである。 別の方法としては、 本発明 の組換えウィルスゲノム中の適当部位に、 標識タンパク質、 例えば、 GFPをコードす る遺伝子を組み込んだ組換えウィルスを用いることもできる。 このような組換えウイ ルスを用いると、 ウィルスの增殖は、 GFPを定量することにより確認できるため好ま しい。
本発明の抗腫瘍作用を有する物質と組換えウイルスの併用効果を確認するためには、 例えば、 アイソボログラム (Isobologram) を用いた試験によって確認することもで きる。
アイソボログラムとは、 2つの物質の相乗効果の有無を解析するためシステムであ る。 具体的には、 ある薬剤とある薬剤の相乗効果の有無を、 MTTアツセィもしくはチ ミジンの取り込みをもとに腫瘍細胞の増殖の進行の有無を調べるものである。 MTT アツセィとは、 医薬組成物の感受性テストであり、 具体的には、 腫瘍細胞を各種抗癌 剤とともに適当な期間混合培養し、 培養終了時の生残腫瘍細胞の活性をミ ト ンドリ ァの Succinic dehydrogenase (SD) 活性を判定することにより抗癌剤に対する感受 性を判定することによって行う。 すなわち腫瘍細胞と SDの基質であるテトラゾリゥ ム塩 (MTT) とを反応させ、 析出するフオルマザン結晶を DMSOで溶解し、 紫色の —発色をマイクロプレートリーダーにより吸光度を測定する (MTT判定) 。 このように して生細胞活性を測定することで、 薬剤の効果を比色により判定することが可能とな るのである。 例えば、 本発明の抗腫瘍作用を有する物質と組換えウィルスを適当な腫 瘍細胞、 例えば、 ヒ ト肺癌細胞 H1299に投与して培養した後、 上記方法を用いて、
MTTァッセィをすることにより、 H1299に対する抗腫瘍活性を測定することができ る。
( 5 ) 本発明の医薬組成物の腫瘍内投与後の腫瘍組織及び肝臓の組織学的変化 (HE 染色)
本発明の医薬組成物は、 服用しても肝臓に影響を与えることがなく、 安全性が高い 優れた医薬組成物である。医薬組成物が体内に投与された場合に、肝臓、消化管粘膜、 腎臓等で分解 ·解毒される (代謝) 。 このとき、 最大の代謝器官が肝臓である。 本発 明の医薬組成物を生体内に投与した場合、標的とする腫瘍組織に抗腫瘍効果を及ぼし ても、 上記したような代謝器官である肝臓には何ら影響を及ぼさなレ、。 従って、 本発 明の医薬組成物は、 安全性が高レ、優れた医薬組成物といえる。
このような医薬組成物の安全性評価は、 例えば、 本発明における医薬組成物を腫瘍 内に投与した場合に、 腫瘍組織及び肝臓組織がどのように変化するかを解析すればよ レ、。 例えば、 へマトキシリン 'ェォジン (HE) 染色等の組織学的染色方法を用いて 確認することができる。
HE染色は基本的な組織染色方法で、 組織内の電荷の違いにより染まる色素が異な ることを利用したものである。例えば、核は青紫色に染まり、その他の細胞質、線維、 赤血球などは、 それぞれの性質に応じ濃淡各種の赤色に染まる。
具体的には、 本発明の医薬組成物を投与した腫瘍組織等の組織切片を脱パラフィン 処理後、 へマトキシリン液で処理した後、 ェォジン液で処理することによって腫瘍組 織等の組織学的変化を確認することができる。 例えば、 腫瘍細胞に抗腫瘍効果が見ら れた場合は、 腫瘍細胞が硝子化変性起こす。
4 . 本発明の医薬組成物を用いた腫瘍細胞の増殖を抑制する方法
本発明は、 上記テロメライシン組換えウィルスと、 抗腫瘍作用を有する物質とを組 み合わせて用いることを特徴とする、 腫瘍細胞の増殖を抑制する方法である。
腫瘍細胞の増殖を抑制するには、 例えば、 テロメライシンを投与した後に微小管阻 害薬を投与すればよい。 培養細胞を用いた実験から、 この方法により顕著な併用効果 が認められることが明らかである。 又は、 テロメライシンを腫瘍内に投与し、 同時に
微小管阻害薬を全身投与してもよい。 動物実験では、 上記のような同時投与により明 らかな併用効果が認められている。 一方、 HDAC阻害剤の場合は、 テロメライシンよ り先に HDAC阻害剤を用いてもよく、 このような方法により、 いっそう強い相乗効果 が得られる。 なお、 INGN-201とテロメライシンを併用する場合は、 腫瘍細胞の種類 によっては、 テロメライシン投与 24時間後に、 INGN-201を投与するといつた投与方 法が効果的な場合と、 同時投与でも同様の効果が得られる場合がある。 例えば、 肺癌 では、 テロメライシンを先行投与した方が効果的である一方で、 大腸癌では同時投与 でも同様の効果が得られる。 なお、 INGN-201とテロメライシンの併用投与はこれら の細胞に限定されない。 以下に、 本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。 但し、 本発明はこれら実 施例に限定されるものではない。
〔実施例 1〕
<組換えアデノウイルス(テロメライシン)の作製〉
ヒ ト胎児腎臓細胞 293細胞から抽出した RNAと、 以下の特異的なプライマー (E1A-S:配列番号 5、 E1A-AS:配列番号 6 ) を用いて以下の条件で RT-PCRを行 レ、、 897 bpの E1A遺伝子を増幅した。 E1A-S: 5'-ACA CCG GGA CTG AAA ATG AG-3' (配列番号 5 )
E1A-AS: 5,-CAC AGG TTT ACA CCT TAT GGC-3' (配列番号 6 )
PCR液組成: lxPCR バッファー
0.2mM各 dNTP
5mM MgCl2
2.5U AmpliTaq Gold
0.2μΜ 各プライマー
反応条件: 95°C 10分
(95°C 1分、 56。C 1分、 72°C 1.5分) x32サイクル
72°C 7分
4°C 5分 . ' 同様に、 293細胞から抽出した DNAより以下のプライマー (E1B-S:配列番号 7、 E1B-AS :配列番号 8 )を用いて DNA-PCRを行レ、、 1822bpの E1B遺伝子を増幅した。 PCR液組成、 反応条件 (サイクル、 温度) は E1A遺伝子の場合と同様に行った。
E1B-S: 5,-CTG ACC TCA TGG AGG CTT GG-3' (配列番号 7)
E1B AS: 5'-GCC CAC ACA TTT CAG TAC CTC-3' (配列番号 8)
それぞれの PCR産物の TA Cloning (TA Cloning Kit Dual Promoter; Invitrogen) を行い、 シークェンスを確認した後、 制限酵素 EcoRIにより、 各々 911bp (E1A) 、 1836bp (E1B) の DNA断片を切り出した。.
pIRESベクター (CLONTECH) の Mlul切断部位に E1Aを、 Sail部位に E1Bをそれ ぞれ順方向に挿入した (E1A-IRES-E1B). 。
制限酵素 Mlulおよび Bglllで切り出した 455bpの hTERTプ口モータ一配列を、 E1A-IRES-E1Bの E1A上流にある Xhol部位に順方向に挿入した
(phTERT-ElA-IRES-ElB) 。
pShuttleベクタ一に含まれるサイ トメガロウィルス (CMV) プロモーターを制限 酵素 Mfelおよび Nhel処理により取り除き、 その部位に phTERT-ElA-IRES-ElBより 制限酵素 Nhelおよび Notlで切り出した 3828bpの配列を挿入した (pSh-hAIB) 。 pSh-hAIBより制限酵素 I-Ceulおよび Pl-Scelにより 4381bpの配列を切り出し、 Adeno-X Expression System (CLONTECH) の Adeno'X Viral DNAに挿入した (AdenoX- AIB) 。 AdenoX-hAIBを制限酵素 Pacl処理で線状化した後、 293細胞に トランスフエクシヨンし、 感染性のある組換えアデノウイルスを作製した (テロメラ イシン; Telomelysin) 。 テロメライシンに組み込まれた複製カセットの模式図を図 1 に示す。
〔実施例 2〕
<テロメライシンと微小管阻害薬との併用効果の検討 >
テロメラィシンをインビトロで培養中の以下の種々の癌細胞にそれぞれ Mock、 0.
MOI、 又は 1MOI (MOI: multiplicity of infection) の濃度で感染きせた。 すなわち、 用いた細胞は'
ヒ ト肺癌細胞 (H1299、 A549、 H226Br) 、
ヒ ト大腸癌細胞 (SW620、 DLD-1) 、
ヒ ト胃癌細胞 (MKN28) 、
ヒ ト食道癌細胞 (TE8、 T.Tn) 、
ヒ ト肝臓癌細胞 (HepG2) 、
ヒ ト前立腺癌細胞 (LNCaP) である。
具体的には、 96ゥヱルプレートに l x 103個の上記細胞を蒔き、 24時間後に細胞数 をカウントして 0.1MOIあるいは 1MOIとなるような濃度のウィルスを培養液中に添加 した。
翌日、 種々の濃度 (コントロール、 0·1ηΜ、 1.0ηΜ、 10.0ηΜ、 ΙΟΟ.ΟηΜ) のドセ タキセルを上記ウィルス感染細胞培養液に投与した。
感染後 5日目にキット (ロシュ 'ダイァグノスティックス社) を用いて XTTアツセ ィを行った。 具体的には、 ゥエルから培養液を除去し、 XTT試薬を含む反応液を調整 した後に添加培養する。 約 4時間後にマイクロタイタープレート (ELISA) リーダー で吸光度を測定し、 生細胞数を算出、 抗腫瘍効果を確認した。 - その結果を図 4に示す。 図 4の上段の癌細胞株でテロメライシン 0.1MOIと低濃度の ドセタキセルとの間に併用効果が認められた。 中でも、 特に H1299細胞では併用効 果が顕著であった。 その一方で、 HepG2、 LNCaPのようにテロメライシンに対する 感^:性が高い細胞株や、 H226Br、 T.Tnのようにドセタキセルそのものに感受性があ る細胞株では、 明らかな併用効果はみられなかった。
<テロメライシンとその他の抗癌剤との併用効果の検討〉
併用する抗癌剤とレて微小管阻害剤ビノレルビン、 及びトポイソメラーゼ I阻害剤 SN-38 (CPT-11代謝産物) を用いて、 上記と同様の条件で XTTアツセィを行った。 その結果、 ビノレルビンはドセタキセルとほぼ同様の併用効果を示した。 いずれの細 胞株も SN-38に感受性があり、 SN-38が低濃度の場合に併用効果がみられた (図 5) 。
<抗癌剤が組換えウィルスの増殖に及ぼす影響〉
微小管作用型抗癌剤を併用した場合に、 テロメライシンの増殖がどのよう 影響を 受けるかについて、 定量的リアルタイム PCRを用いて解析した。
ヒ ト肺癌細胞 H1299及びヒ ト大腸癌細胞 SW620に 0.1MOIでテロメライシンを 2時間 感染させ、 さらに 2時間後にドセタキセルを投与した。 感染後から 12、 24、 36、 48、 及び 60時間後に細胞を回収し、 DNA内及び上清中の DNAをそれぞれ抽出した。 テロ メライシンが有する E1A遺伝子を標的とするプライマーを用いてリアルタイム PCRを 行い、. ウィルス増殖 '複製を定量的に解析した。 具体的には、 18μ1の PCR液に 2μ1の DNA抽出液を加え、 E1Aプライマ一を用いて以下の反応条件で PCRを行った。
E1Aプライマー配列:
(正方向) 5' - C CTGTGTCTAGAGAATGCAA -3' (配列番号 9 )
(逆方向) 5'-ACAGCTCAAGTCCAAAGGTT -3' (配列番号 1 0 )
PCR液組成: lxLC FastStart DNA Master SYBR Green I
3mM MgCl2
0.5μΜ 各プライマー
反応条件: 95°C 10分
. (95°C 10秒、 60。C 15秒、 72°C 8秒) x40サイクル
70°C 15秒
40°C 30秒
結果は以下の通りである (図 6 ) 。
a)細胞内ではテロメライシンは 12-24時間にかけて急速に増殖し、 ドセタキセル処理 を行っても、 同様の増殖効率を示した。
b)上清中に拡散したテロメライシンについても、 単独、 併用とも同等であった。 上清 をすベて回収して DNA抽出しているため、 細胞死により上清中に放出された全ウイ ルス量を反映していると考えられる。
以上より、 抗癌剤併用はテロメライシンの増殖複製に影響を与えず、 ウィルスの抗 腫瘍効果を阻害しないと考えられる (図 6) 。
<テロメライシン及び微小管阻害薬が腫瘍細胞の細胞周期に及ぼす影響〉
フロ一サイ トメ トリーを用いて、 PI (propidium iodide) により細胞周期を解析し た。 ' その結果、 治療後 12、 48時間において、 テロメライシンを濃度 0.1 MOIで単独処理 した場合は、 細胞周期に変化はみられなかった。
ドセタキセルを単独で投与した場合おょぴテ口メライシン/ドセタキセルを併用投与し た場合では、投与後 12時間でドセタキセル依存性に G2/M停止がみられるようになり、 次第に sub GO/G.lが増え、 ドセタキセルに依存すると思われるアポトーシス (DNA の断片化) がみられた (図 7) 。
以上より、 テロメライシンによる抗腫瘍効果は、 ドセタキセルによるアポト一シス とは異なる分子機構であると思われる。 くテロメラィシン及び微小管阻害剤の H1299肺癌腫瘍におけるインビボ抗腫瘍効果〉 第 5週齢ヌードマウス背部皮下に H1299を接種し、腫瘍が 5~10mm大になった時 点で、 テロメヲイシンを腫瘍内に各 lxl07pfu/50pl/体ずつ、 ドセタキセルを腹腔内に 12.5mg/kgずつ、 1、 3、 5日後の計 3回投与した。 対照として、 PBSを腫瘍内投与、 腹腔内投与した。 3日ごとに腫瘍径を計測した。
その結果、テロメライシン単独治療群でもコントロールに比較して有意な増殖抑制 . がみられたが、 併用群では、 コントロール群、 単独治療群に比べてさらに有意に抗腫 瘍効果が認められた (図 8) 。 くテロメライシン腫瘍内投与後の腫瘍組織及び肝臓における組織学的変化(HE染色)〉 第 5週齢ヌードマウス背部皮下に H1299を接種し、腫瘍が 5~10mm大になった時点 で、 テロメライシンを上記細胞腫瘍内に投与した後、 最終投与から 6日経過後の腫瘍 組織および肝臓を以下に従って、 組織 HE染色した。 すなわち、 組織切片を作製し、 脱パラフィン処理をした後、 水洗し、 蒸留水を通した。 これにへマトキシリン液を添 ■ カ卩し、 20分放置した後、 軽く水洗した。 これを、 1%塩酸 70%アルコ―ルで分別し、 色出しをして、. 10分間水洗したのち、 80%エタノ一ルに通した後、 ェォジン液に 10 分間つけた。 その後、 組織を軽く水洗し、 脱水し、 透徹して、 封入することによって HE染色を行った。
その結果、 テロメライシンを単独投与および併用投与した場合では、 腫瘍細胞の硝 子化変性が広範囲に認められた (図 9 「Telomelysin」 及び 「Combination」 のパネ ノレ) 。 肝組織ではいずれにおいても毒性は認められなかった (図 9) 。 [実施例 3 ]
く HDAC阻害剤 FR901228によるアデノウイルス受容体 CARの発現増強 >
各種ヒ ト肺癌細胞 (A549、 H358、 H460、 H1299) の培養液中に FR901228 (藤沢 薬品工業) を lng/mlの濃度で添加して 48時間処理した後に、 フローサイ トメ トリ一 にて CAR発現を解析した。
その結果、 A549、 H460細胞では CAR発現が増強していたが、 H358、 H1299では 変化が見られなかった (図 10) 。 く HDAC阻害剤 FR901228によるアデノウィルス感染効率の増強〉
次に、 A549肺癌細胞と非増殖型 LacZ遺伝子発現アデノウイルスを用いて、 HDAC 阻害剤 FR901228がアデノウィルス感染効率を増強するか否かを検討した。 A549肺癌 細胞の培養液中に FR901228を 0.1 ng/ml, 1 ng/mlの濃度で添加して 48時間処理した 後に、 非増殖型 LacZ遺伝子発現アデノウイルスを 1 M0I、 10MOIで感染させ、 細胞 の状態を観察した。
アデノウイルスが細胞に感染し、細胞内で増殖すると LacZ遺伝子が発現して青色に 発色することを利用して、 FR901228処理によるアデノウイルスの感染効率を確認し た。
その結果、 FR901228処理により濃度依存性に青色の斑点がみられたことから、 LacZ 発現が増強していることが示された。 従って、 アデノウイルスの感染効率が用量依存 的に増強することが確認された (図 11) 。 く HDAC阻害剤 FR901228によるテロメライシン感染効率の増強〉
次に、 A549肺癌細胞と非増殖型 LacZ遺伝子発現アデノウイルスを用いて、 HDAC 阻害剤 FR901228が本発明のテロメライシンの感染効率を増強するか否かを検討した。 なお、 実験に供したテロメライシンは、 さらに、 本発明の組換えアデノウイルスゲノ
ムの E3領域に、 標識タンパク質 GFPをコ一ドする遺伝子及び該遺伝子の発現を制御 するプロモーターが組み込まれた組換えウイルス OBP-401を用レ、た。 この OBP-401 を用いて GFP発現を指標として、 FR901228によるウィルス増殖の増強を確認した。
A549肺癌細胞の培養液中に FR901228を 0.5ng/ml、 lng/mlの濃度で添加して 48時 間処理した後に、 OBP-401を 0.1MOIで感染させた。
この OBP-401の感染後 72時間目に GFP発現をフローサイ トメ トリ一にて定量した。 その結果、 FR901228処理により用量依存性に GFP発現増強がみられ; FR901228が OBP-401の感染 ·増幅を増強することが確認された (図 12) 。 <HDAC阻害剤 FR901228によるテロメライシン抗腫瘍効果の増強〉
FR901228とテロメライシンの併用効果を確認するために、 2つの物質の相乗効果の 有無を解析するためのアイソボログラムを用いて FR901228とテロメライシンの相乗 効果を検討した。
実験には、 テロメライシンとして、標識タンパク質 GFPをコードする遺伝子及び該 遺伝子の発現を制御するプロモーターが組み込まれた組換えウィルス OBP-401と、 FR901228を用いた。 96ゥエルプレートで培養したヒ ト肺癌細胞 A549に、 テロメラィ シンを 0.1、 0.5、 1、 2、 5、 10、 100MOIで感染させ、 同時に FR901228を 0.01、 0.5、 1、 2、 5ng/mlの濃度で添加、 4日目の生細胞数を MTTアツセィにて測定した。 MTT アツセィは、 各ゥエルの培養液を除去後、 PBSで洗浄、 0.5mg/mlの MTT (Sigma社) を含む培養液を加えて 4時間培養した。 0.04N塩酸含有イソプロピルアルコールを加 えた後に、 マイクロプレートリーダ一で吸光度を測定した。 図 13の右上図はすべての 測定値をプロットした図である。 縦軸に生細胞率、 横軸にそれぞれの濃度をプロット した右下図で、 テロメライシンおよび FR901228の容量依存性の抗腫瘍効果が確認で きる。 それぞれの測定値を Steel及び Peckhamのアイソボログラム法 (Steel G. G., Peckham M. J. Exploitable mechanisms in combined
the concept of additivity. Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Physiol., 5: 85.91, 1979) にて 解析し、 左図を作成した。 モード 1の青線以下の領域が相乗効果領域であるが、 すべ ての測定値がその領域内にプロットされており、 FR901228とテロメライシンはヒ ト 肺癌細胞 H1299において相乗的に作用することが明らかとなった (図 13) 。
[実施例 4 ]
く遺伝子治療斉 ijINGN-20l(Advexin)の抗腫瘍効果の測定〉
INGN-201 (以下、 Advexinともいう、図面も同様)を、ィンビトロで培養中の H1299 細胞、 SW620細胞及び TE8細胞にそれぞれ Mock、 10 MOI、 50 MOI、 100 MOI、 500 MOI、 又は 1000 MOIの濃度で感染させた。 具体的には、 96ゥエルプレートに l x 103 個の上記細胞を蒔き、 24時間後に細胞数を力ゥントして上記の濃度の Advexinを培養 液中に添加した。 感染後 5日目にキット (ロシュ ·ダイァグノスティックス社) を用 いて XTTアツセィを行った。 具体的には、 ゥエルから培養液を除去し、 XTT試薬を含 む反応液を調整した後に添加し培養した。 約 4時間後にマイクロタイタープレート
(ELISA) リーダーで吸光度を測定し、 生細胞数を算出、 抗腫瘍効果を確認した。 5 日目の生細胞数の比率を、 無処置群を 1.0として表示した。
その結果を図 1 4に示す。 H1299細胞では 50MOIで顕著な抗腫瘍効果がみられた ものの、 SW620細胞では 500MOIになってはじめて抗腫瘍効果がみられた。 また TE8 細胞では、 50MOIで軽度増殖抑制が認められたものの、 やはり 500MOIではじめて明 らかな抗腫瘍効果が観察された。 したがって、 H1299は高感受性株、 SW620は低感 受性株、 TE8は中等度の感受性を有すると考えられる。 くテロメライシン- Advexin同時投与による抗腫瘍効果の測定〉
インビトロで培養中の H1299細胞及び SW620細胞に、 0 MOI、 1 MOI、 5 MOI、 又 は 10 MOIの濃度のテロメライシン、及び、 0 MOI、 10 MOI, 50 MOI, 又は 100 MOI の濃度の Advexinをそれぞれ組み合わせて感染させた。 具体的には、 96ゥエルプレー トに l x lO3個の上記細胞を蒔き、 24時間後に細胞数をカウントして上記の濃度のテロ メライシン及び Advexinを培養液中に添カ卩した。 感染後 5日目にキット (ロシュ 'ダ ィァグノスティックス社) を用いて XTTアツセィを行った。 具体的には、 ゥエルから 培養液を除去し、 XTT試 ¾を含む反応液を調整した後に添加し培養した。 約 4時間後 にマイクロタイタープレート (ELISA) リーダ一で吸光度を測定し、 生細胞数を算出 し、 抗腫瘍効果を確認した。
その結果を図 15及び図 16に示す。 H1299細胞においては、 1 MOIテロメライシン及
び 10 MOI Advexinを併用することにより、 生細胞数が顕著に減少し、 顕著な抗腫瘍 効果が見られた (図 15) 。 H1299細胞において、 Advexinを単独で使用した場合の抗 腫瘍効果は、 50 MOI程度の濃度であった (図 14) ことと比較すると、 H1299細胞に おいては、 テロメライシンと Advexinを併用することにより、 相乗的な抗腫瘍効果が 得られることが示された。 また、 SW620細胞においては、 1 MOIテロメライシン及び 50 MOI Advexinを併用することにより.、 生細胞数が顕著に減少し、 顕著な抗腫瘍効 果が見られた (図 16)。 SW620細胞において Advexinを単独で使用した場合の抗腫瘍 効果は、 500 MOI程度の濃度であった (図 14) ことと比較すると、 SW620細胞にお いては、 テロメライシンと Advexinを併用することにより、 相乗的な抗腫瘍効果が得 られることが示された。
<テロメライシン -Advexin時間差投与による抗腫瘍効果の測定〉
96ゥエルプレートに 1 X 103個の H1299細胞及び SW620細胞を蒔き、 インビトロで 培養して、 24時間後に細胞数を力ゥントし、 (i)テ口メライシン及び Advexinを培養液 中に同時投与し、 (ii)テロメライシンを投与後 24時間後に Advexinを投与し (テロメラ イシン先行投与) 、(iii)Advexinを投与後 24時間後にテロメライシンを投与(Advexin 先行投与) して、 感染させた。 比較に Mockをおいた。
具体的に、 組み合わせて用いたテロメライシン及び Advexinの濃度は以下の通りであ る。
H1299細胞: 1 MOIテロメライシン及び 5 MOI又は 10 MOI Advexin
SW620細月 : 1 MOIテロメライシン及び 10 MOI、 50 MOI又は 100 MOI
Advexin
最初の感染後から 5日目にキット (ロシュ ·ダイァグノスティックス社) を用いて XTTアツセィを行った。 具体的には、 ゥエルから培養液を除去し、 XTT試薬を含む反 応液を調整した後に ^加培養する。約 4時間後にマイクロタイタ一プレート (ELISA) リーダーで吸光度を測定し、 生細胞数を算出、 抗腫瘍効果を確認した。
その結果を、 図 17及び 18に示す。 H1299細胞においては、 上記 (i)〜(iii)のどの場合 も、 Mockに比して、 顕著な抗腫瘍効果が得られた (図 17) 、 中でもテロメライシ • ン先行投与の場合が最も抗腫瘍効果が高かつた。 SW620細胞においては、上記 (i)〜(iii)
のどの場合も抗腫瘍効果が示されたが、 に、(i)及び (ϋ)の場合の抗腫瘍効果は顕著で あつ 7こ 産業上の利用可能性
本発明により、 ヒ トテロメラーゼのプロモーター、 E1A遺伝子、 IRES配列及び E1B 遺伝子をこの順に含むポリヌクレオチドを含む組換えウィルスと、 抗腫瘍作用を有す る物質とを含む腫瘍の併用療法のための医薬組成物が提供される。本発明の医薬組成 物によれば、 上記の組換えウィルスと抗腫瘍作用物質を各々単独で腫瘍細胞に投与し た場合に得られる抗腫瘍効桌ょりも優れた効果が得られることにより、使用する薬剤 の用量を低減することができ、 結果として、 抗癌剤の服用による副作用を抑制するこ とができる。
さらに、 本発明の医薬組成物は、 上記の組換えウィルスと抗腫瘍作用物質を各々単 独で用いた場合にはそれほど抗腫瘍効果を奏さなレ、腫瘍細胞にも抗腫瘍効果を発揮す るため、 より多岐にわたる腫瘍に対する抗癌治療が可能となる。 配列表フリーテキスト
配列番号 5 :プライマー
配列番号 6 :プライマー
配列番号 7 :プライマー
配列番号 8 :プライマー
配列番号 9 :プライマー
配列番号 1 0 :プライマー