明 細 書
内燃機関の制御装置
技術分野
[0001] 本発明は、吸気弁のリフトであるバルブリフトを所定の限界リフトを超えないように規 制しながら変更する可変バルブリフト機構と、吸入空気量を変更する可変吸気量機 構とを備える内燃機関の制御装置に関する。
背景技術
[0002] 従来、この種の内燃機関の制御装置として、例えば特許文献 1に開示されたものが 知られている。この内燃機関(以下「エンジン」という)の可変バルブリフト機構は、気 筒ごとに設けられ、バルブリフトを所定の最小値と最大値の間で連続的に変化させる ものであり、クランクシャフトに連結された駆動軸と、制御軸を有している。この駆動軸 には、リンクアーム、および吸気弁を駆動する揺動カムが設けられており、これらのリ ンクアームおよび揺動カムは、制御軸に設けたロッカアームに連結されている。
[0003] 制御軸は、駆動軸と平行で、軸受に所定の角度範囲内で回転自在に支持されて いる。また、制御軸は、その径方向に突出するピンを有するとともに、回転駆動機構 に連結されており、上記の軸受には突起が形成されている。この回転駆動機構によ つて制御軸を回転させると、制御軸のロッカアームと上記揺動カムおよびリンクアーム との相対的な角度が変更され、それにより、バルブリフトが変更される。また、制御軸 が所定方向に回転すると、制御軸のピンが軸受の突起に当接することによって、制 御軸の回転が阻止される。さらに、内燃機関の吸気管には、スロットル弁が設けられ ている。
[0004] 上記従来の制御装置では、通常、スロットル弁を全開に制御するとともに、エンジン の運転状態に応じ、可変バルブリフト機構を介してバルブリフトを制御することによつ て、吸入空気量が制御される。また、エンジンが低負荷運転状態になったときには、 制御軸を、ピンが軸受の突起に当接するまで回転させ、ピンが突起に当接した状態 に保持することによって、バルブリフトを所定の最小値に保持し、その状態でスロット ル弁の開度を制御することによって、吸入空気量が制御される。
[0005] 上記従来の制御装置では、バルブリフトの制御において、エンジンが低負荷運転 状態になったときには、ピンが軸受の突起に当接するまで制御軸を回転させるので、 この当接の際の衝撃力により、ピンや突起が変形するおそれがある。これを回避すベ ぐ衝撃力を低減するために制御軸の回転速度を低下させることや、衝撃力の影響 を抑制するためにピンや突起に緩衝材を設けることなどが考えられる。しかし、前者 の場合には、ピンが突起に当接するまで制御軸を回転させるのに必要な時間、すな わちバルブリフトを最小値に制御するのに必要な時間が長くなり、その結果、吸入空 気量が適切な値に収束するのに時間が力かってしまい、その間、エンジンの運転状 態が不安定になり、ドライバピリティーが悪ィ匕するおそれがある。一方、緩衝材をピン や突起に設けた場合には、両者が当接した状態において得られるバルブリフトの最 小値がばらつきやすぐこのため、吸入空気量の制御を精度良く行うことができない。 また、緩衝材を付加する分、製造コストが上昇するとともに、そのためのスペースを確 保する必要が生じることで、設計の自由度が低下してしまう。
[0006] 本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、良好なドライバ ピリティーを確保しながら、可変バルブリフト機構の可動部が規制部に当接する際の 衝撃力を低減することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
[0007] 特許文献 1:特開 2003— 254100号公報
発明の開示
[0008] 上記の目的を達成するため、請求項 1に係る内燃機関の制御装置 1は、可動部(実 施形態における「以下本項において同じ」短アーム 65)を駆動することによって内燃 機関 3の吸気弁 4のリフトであるバルブリフト Liftinを変更するとともに、可動部が当接 することによってノ レブリフト Liftinを所定の限界リフト(最小値 Liftin— L)を超えな V、ように規制する規制部 (最小リフトストツバ 67a)を有する可変バルブリフト機構 50と 、内燃機関 3の吸入空気量を変更する可変吸気量機構 (スロットル弁機構 11)と、内 燃機関 3の運転状態を検出する運転状態検出手段 (クランク角センサ 20、水温セン サ 21、アクセル開度センサ 27、 ECU2)と、可動部が規制部に当接している力否かを 判定する当接判定手段 (ECU2、図 16のステップ 71、 74)と、当接判定手段により可 動部が規制部に当接していると判定されたときに、検出された内燃機関 3の運転状
態に応じて、可変吸気量機構を制御する制御手段 (ECU2、図 10のステップ 31、 32 、 37〜40、図 11〜13、図 21のステップ 80、 86〜90および 84)と、ノ ノレブリフト Lifti nを検出するノ レブリフト検出手段(回動角センサ 26、 ECU2)と、 目標ノ レブリフト L iftin— cmdを決定する目標バルブリフト決定手段 (ECU2、図 14のステップ 50、図 1 5)と、検出されたバルブリフト Liftinが決定された目標バルブリフト Lif tin— cmdに追 従するように、所定の制御アルゴリズムによって可変バルブリフト機構 50を制御する ための制御入力(リフト制御入力 ULiftin)を算出する制御入力算出手段 (ECU2、 図 14のステップ 54)と、を備え、所定の制御アルゴリズムは、可変バルブリフト機構 5 0に加えられる外乱の影響を抑制するための外乱抑制パラメータ (切換関数設定パラ メータ POLE— If)を含み、制御入力算出手段は、可動部が規制部に当接したと判 定されたときに、外乱抑制パラメータを、当該判定前よりも、外乱抑制パラメータによ る外乱の影響の抑制度合が小さくなるように設定する外乱抑制パラメータ設定手段( ECU2、図 16のステップ 73)を有することを特徴とする。
[0009] この内燃機関の制御装置によれば、 目標バルブリフト決定手段によって目標バル ブリフトが決定されるとともに、可変バルブリフト機構を制御するための制御入力を、 バルブリフトが目標バルブリフトに追従するように、制御入力算出手段によって所定 の制御アルゴリズムにより算出する。また、可動部が規制部に当接することによって、 バルブリフトが所定の限界リフトを超えないように規制される。これにより、 目標バルブ リフトが限界リフトを超えたときには、バルブリフトが限界リフトを超えないように規制さ れる。さらに、当接判定手段により可動部が規制部に当接している力否かを判定する とともに、可動部が規制部に当接していると判定されたときに、検出された内燃機関 の運転状態に応じ、可変吸気量機構を制御手段によって制御する。以上のように、 規制部への可動部の当接によりバルブリフトが限界リフトになっている状態では、内 燃機関の運転状態に応じ、可変吸気量機構を制御することによって吸入空気量が制 御される。
[0010] また、上記の所定の制御アルゴリズム力 可変バルブリフト機構にカ卩えられる外乱の 影響を抑制するための外乱抑制パラメータを含むとともに、可動部が規制部に当接 したと判定されたときに、外乱抑制パラメータを、この判定前よりも、これによる外乱の
影響の抑制度合が小さくなるように、外乱抑制パラメータ設定手段によって設定する
[0011] ノ レブリフトが目標バルブリフトに追従するように、所定の制御アルゴリズムにより制 御入力を算出する場合に、制御アルゴリズムが上記の外乱抑制パラメータを含むとき には、制御入力は、外乱抑制パラメータに応じ、次のようにして算出される。すなわち 、外乱抑制パラメータが外乱の影響の抑制度合が大きくなるように設定されると、制 御入力は、外乱の影響をより効果的に抑制しながら、目標バルブリフトへのバルブリ フトの追従性を確保するために、可動部の駆動力がより大きくなるように算出される。 一方、外乱抑制パラメータが外乱の影響の抑制度合が小さくなるように設定されると 、制御入力は、バルブリフトを目標バルブリフトに追従させるための可動部の駆動力 力 り小さくなるように算出される。
[0012] したがって、上述したように、可動部が規制部に当接したときに、外乱抑制パラメ一 タを、それによる外乱の影響の抑制度合がより小さくなるように設定することによって、 可動部が規制部に当接し始めた時に、可動部の駆動力が低減されるので、可動部 が規制部に当接する際の衝撃力を低減できる。それにより、可動部や規制部が変形 するのを回避できるので、可変バルブリフト機構の寿命を延ばすことができる。また、 可動部が規制部に当接するまでの間は、可動部の駆動力が確保されるので、可動 部の移動速度を低下させることなぐ吸入空気量を所望値に迅速に収束させることが できる。その結果、内燃機関の運転状態が安定することによって、良好なドライバピリ ティーを確保することができる。さらに、緩衝材を付加する必要がないので、緩衝材を 設けた場合と異なり、限界リフトにおけるバルブリフトのばらつきによる吸入空気量の ばらつきを回避することができる。また、緩衝材の付カ卩による製造コストの上昇や設計 の自由度の低下を回避することができる。
[0013] 請求項 2に係る発明は、請求項 1に記載の内燃機関の制御装置 1において、制御 手段は、可動部が規制部に当接したと判定された直後に、可変吸気量機構の制御 を開始する(図 21のステップ 80、 86〜90および 84)ことを特徴とする。
[0014] この構成によれば、可動部が規制部に当接したと判定された直後に、内燃機関の 運転状態に応じた可変吸気量機構の制御が開始される。これにより、バルブリフトが
限界リフトに達するのと同時に、可変吸気量機構による吸入空気量の制御を開始す ることによって、可変バルブリフト機構を主体とする吸入空気量の制御から、可変吸 気量機構を主体とする吸入空気量の制御への移行を、吸入空気量の制御の中断を 伴うことなぐ円滑に行うことができる。
[0015] 請求項 3に係る発明は、請求項 1または 2に記載の内燃機関の制御装置 1において 、制御手段は、可動部が規制部に当接していないと判定されたときには、可変吸気 量機構を、検出されたノ レブリフト Liftinに応じて制御する(図 21のステップ 80〜82 、 84および図 22)ことを特徴とする。
[0016] この構成によれば、可動部が規制部に当接しているときに、可変吸気量機構を内 燃機関の運転状態に応じて制御することに加え、可動部が規制部に当接していない ときには、バルブリフトに応じた可変吸気量機構の制御を実行する。これにより、バル ブリフトが限界リフトに達した時点では、可変吸気量機構の操作量がバルブリフトに 適した値にすでに制御されているので、バルブリフトが限界リフトに達するのに伴って 、内燃機関の運転状態に応じた可変吸気量機構の制御を開始した際に、可変吸気 量機構の操作量を、急激に大きく変化させることなぐその適正値に速やかに変化さ せることができる。これにより、吸入空気量を滑らかに変化させることができるので、内 燃機関のトルクや回転数を段差なく滑らかに変化させることができる。
[0017] 請求項 4に係る発明は、請求項 1ないし 3のいずれかに記載の内燃機関の制御装 置 1において、所定の制御アルゴリズムは、所定の 2自由度制御アルゴリズムを含む( 図 14のステップ 54)ことを特徴とする。
[0018] この構成によれば、制御入力が所定の 2自由度制御アルゴリズムを含む制御アル ゴリズムにより算出される。このため、 2自由度制御アルゴリズムとして、例えば目標値 フィルタ型 2自由度制御アルゴリズムを用いた場合、目標値フィルタアルゴリズムによ り、目標バルブリフトへのバルブリフトの追従速度を適切に設定することができるととも に、フィードバック制御アルゴリズムにより、目標バルブリフトへのバルブリフトの追従 挙動を適切に設定することができる。それにより、バルブリフトを、オーバーシュートの 発生を回避しながら、目標バルブリフトに精度良く追従させることができる。その結果 、可動部が規制部に当接する際の衝撃力を確実に低減することができる。
[0019] 請求項 5に係る発明は、請求項 1ないし 4のいずれかに記載の内燃機関の制御装 置 1において、可動部が規制部に当接したと判定された後にバルブリフト Liftinが所 定の限界リフトに保持された力否かを判定する保持判定手段 (ECU2、図 16のステツ プ 74)をさらに備え、外乱抑制パラメータ設定手段は、保持判定手段によりバルブリ フト Liftinが所定の限界リフトに保持されたと判定されたときに、外乱抑制パラメータ を、外乱抑制パラメータによる外乱の影響の抑制度合が増大するように設定する(図 16のステップ 66)ことを特徴とする。
[0020] この構成によれば、保持判定手段によって、可動部が規制部に当接した後にバル ブリフトが限界リフトに保持されたと判定されたときに、外乱抑制パラメータを、これに よる外乱の影響の抑制度合が増大するように設定する。これにより、可動部が規制部 に当接した後、前述したバルブリフトを目標ノ レブリフトに追従させるための可動部 の駆動力、すなわちバルブリフトを限界リフトに保持する力が増大する。その結果、規 制部に当接した後、可動部を、内燃機関の振動などで規制部力 乖離させることなく 、規制部に当接した状態に確実に保持できる。したがって、可動部の乖離による吸入 空気量の変動を防止しながら、可変吸気量機構による吸入空気量の制御を精度良く 行うことができる。
[0021] 請求項 6に係る発明は、請求項 1ないし 5のいずれかに記載の内燃機関の制御装 置 1において、外乱抑制パラメータ設定手段は、可動部が規制部に当接したと判定さ れた後に、 目標バルブリフト Liftin— cmdおよびバルブリフト Liftinの少なくとも一方 力 所定の限界リフトで規定される所定の範囲内にあり、かつ所定の限界リフト以外 の値になったときに、外乱抑制パラメータを、外乱抑制パラメータによる外乱の影響 の抑制度合が増大するように設定する(図 16のステップ 61および 66)ことを特徴とす る。
[0022] この構成によれば、可動部が規制部に当接した後に、 目標バルブリフトおよび Zま たはバルブリフトが、上記の所定の範囲内にあり、かつ限界リフト以外の値になったと きに、外乱抑制パラメータを、外乱の影響の抑制度合が増大するように設定する。こ れにより、規制部への可動部の当接に伴う可変吸気量機構の制御の実行中に、これ と並行して実行されるバルブリフトの制御により目標ノ レブリフトおよび Zまたはバル
ブリフトが上記のような値になったとき、すなわちー且、当接した可動部が規制部から 離れる方向にバルブリフトを制御するとき、および Zまたはバルブリフトが実際にその ように制御されたときに、バルブリフトを目標バルブリフトに追従させるための可動部 の駆動力を増大させることができるので、 目標バルブリフトへのバルブリフトの追従性 を向上させることができる。
[0023] したがって、例えば、可動部が規制部に当接し、バルブリフトが限界リフトになった 状態で、可動部が規制部力 離れる方向に吸入空気量を迅速に変化させるような過 渡時において、吸入空気量を所望の値に迅速に収束させることができるので、良好 なドライバピリティーを確保することができる。
図面の簡単な説明
[0024] [図 1]本発明の制御装置を適用した内燃機関の概略構成を示す模式図である。
[図 2]制御装置の概略構成を示すブロック図である。
[図 3]内燃機関の可変式吸気動弁機構および排気動弁機構の概略構成を示す断面 図である。
[図 4]可変式吸気動弁機構の可変バルブリフト機構の概略構成を示す断面図である
[図 5] (a)リフトァクチユエ一タの短アームが最大リフトストツバに当接している状態、お よび (b)最小リフトストツバに当接している状態を示す図である。
[図 6] (a)可変バルブリフト機構の下リンクが最大リフト位置にあるときの吸気弁の開弁 状態、および (b)最小リフト位置にあるときの吸気弁の開弁状態を示す図である。
[図 7]可変バルブリフト機構の下リンクが最大リフト位置にあるときの吸気弁のバルブリ フト曲線 (実線)と、最小リフト位置にあるときのバルブリフト曲線(2点鎖線)を示す図 である。
[図 8]制御装置の ECUによって行われる吸入空気量制御処理を含む処理を示すフ ローチャートである。
[図 9]図 8の過電流判定処理を示すフローチャートである。
[図 10]図 8の吸入空気量制御処理を示すフローチャートである。
[図 11]図 10の処理で用いられる目標吸入空気量の始動時用値 Gcyl— cmd— crkを
算出するためのテーブルの一例を示す図である。
[図 12]図 10の処理で用いられる目標吸入空気量の触媒暖機用値 Gcyl— cmd— ast を算出するためのマップの一例を示す図である。
[図 13]図 10の処理で用いられる目標吸入空気量の通常運転用値 Gcyl— cmd— drv を算出するためのマップの一例を示す図である。
[図 14]図 10のバルブリフト制御処理を示すフローチャートである。
[図 15]図 14の処理で用いられる目標バルブリフト Liftin_cmdを算出するためのマ ップの一例を示す図である。
[図 16]図 14の当接判定処理を示すフローチャートである。
[図 17]判定パラメータ算出部を示すブロック図である。
[図 18]第 1フィルタのゲイン特性および位相特性を示す図である。
[図 19]リフト偏差 DL (k)、第 1フィルタ値 DLf (m)、判定パラメータ WVliftin (k)のパ ワースベクトルを概略的に示す図である。
[図 20]当接判定処理の動作例を示す図である。
[図 21]図 10のスロットル制御処理を示すフローチャートである。
[図 22]図 21の処理で用いる目標スロットル弁開度の通常時用値 TH— cmd— opを算 出するためのマップの一例を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0025] 以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図 1は 、本発明の制御装置 1を適用した内燃機関 (以下「エンジン」という) 3の概略構成を 示している。図 1および図 3に示すように、エンジン 3は、車両(図示せず)に搭載され た、 4つの気筒 3aおよびピストン 3b (いずれも 1つのみ図示)を有する直列 4気筒 DO HC型のガソリンエンジンである。また、エンジン 3は、各気筒 3aの吸気ポートおよび 排気ポートをそれぞれ開閉する吸気弁 4および排気弁 7と、吸気弁 4を駆動するため の、吸気カムシャフト 5および吸気カム 6を有する可変式吸気動弁機構 40と、排気弁 7を駆動するための、排気カムシャフト 8および排気カム 9を有する排気動弁機構 30 を備えている。
[0026] 吸気弁 4のステム 4aは、ガイド 4bに摺動自在に嵌合しており、このガイド 4bは、シリ
ンダヘッド 3cに固定されている。吸気弁 4には、上下のスプリングシート 4c, 4dと、こ れらの間に配置されたバルブスプリング 4eが設けられており(図 4参照)、吸気弁 4は 、このバルブスプリング 4eによって、閉弁方向に付勢されている。
[0027] 吸気カムシャフト 5および排気カムシャフト 8はそれぞれ、図示しないホルダを介して 、シリンダヘッド 3cに回転自在に取り付けられている。また、吸気カムシャフト 5は、そ の一端部に吸気スプロケットが同軸に固定されており、この吸気スプロケットおよびタ イミングベルト(いずれも図示せず)を介して、クランクシャフト 3dに連結されている。こ れにより、吸気カムシャフト 5は、クランクシャフト 3dが 2回転するごとに 1回転する。吸 気カム 6は、気筒 3aごとに、吸気カムシャフト 5と一体に設けられている。
[0028] 可変式吸気動弁機構 40は、吸気カム 6の回転に伴って、各気筒 3aの吸気弁 4を開 閉するとともに、吸気弁 4のリフトを無段階に変更する。その詳細については後述する 。なお、本実施形態では、吸気弁 4のリフト(以下「バルブリフト」という) Liftinは、吸気 弁 4の最大ストロークを表すものとする。
[0029] 排気弁 7のステム 7aは、ガイド 7bに摺動自在に嵌合しており、このガイド 7bは、シリ ンダヘッド 3cに固定されている。また、排気弁 7には、上下のスプリングシート 7c, 7d と、これらの間に配置されたバルブスプリング 7eが設けられている。排気弁 7は、この バルブスプリング 7eにより、閉弁方向に付勢されている。
[0030] 排気カムシャフト 8は、その一端部に排気スプロケット(図示せず)が同軸に固定さ れており、この排気スプロケットおよび前記タイミングベルトを介して、クランクシャフト 3dに連結されており、それにより、クランクシャフト 3dが 2回転するごとに 1回転する。 排気カム 9は、気筒 3aごとに、排気カムシャフト 8と一体に設けられている。
[0031] 排気動弁機構 30は、ロッカアーム 31を有しており、このロッカアーム 31が排気カム 9の回転に伴って回動することによって、バルブスプリング 7eの付勢力に抗しながら、 排気弁 7を開閉する。
[0032] エンジン 3には、クランク角センサ 20 (運転状態検出手段)および水温センサ 21 (運 転状態検出手段)が設けられている。このクランク角センサ 20は、マグネットロータお よび MREピックアップで構成されており、クランクシャフト 3dの回転に伴い、いずれも パルス信号である CRK信号および TDC信号を、制御装置 1の後述する ECU2に出
力する。
[0033] CRK信号は、所定クランク角(例えば 10° )ごとに出力され、 ECU2は、この CRK信 号に基づき、エンジン 3の回転数 (以下「エンジン回転数」という) NEを算出する。 TD C信号は、各気筒 3aのピストン 3bが吸気行程の開始時の TDC位置よりも若干、手前 の所定のクランク角位置にあることを表す信号であり、 4気筒タイプの本例では、クラ ンク角 180°ごとに出力される。
[0034] 水温センサ 21は、例えばサーミスタなどで構成されており、エンジン水温 TWを表 す検出信号を ECU2に出力する。このエンジン水温 TWは、エンジン 3のシリンダブ ロック 3e内を循環する冷却水の温度を表すものである。
[0035] また、エンジン 3の吸気管 10には、上流側から順に、エアーフローセンサ 22、スロッ トル弁機構 11 (可変吸気量機構)、スロットル弁開度センサ 23、吸気管内絶対圧セン サ 24、吸気温センサ 25、および燃料噴射弁 12が設けられている。
[0036] エアーフローセンサ 22は、熱線式エアフローメータで構成されており、スロットル弁 機構 11のスロットル弁 1 laを通過する吸入空気量 (以下「TH通過吸入空気量」 t 、う ) Gthを検出し、それを表す検出信号を ECU2に出力する。
[0037] スロットル弁機構 11は、スロットル弁 11aおよびこれを開閉させる THァクチユエータ l ibを有している。スロットル弁 11aは、吸気管 10に回動自在に設けられており、この 回動の変化により吸入空気量を変化させる。 THァクチユエータ l ibは、モータにギ ャ機構 ( 、ずれも図示せず)を組み合わせたものであり、後述するスロットル制御入力 Uthに応じた駆動信号力 ¾CU2から入力されることにより駆動され、それにより、スロ ットル弁 1 laの開度(以下「スロットル弁開度」と!、う) THが制御される。スロットル弁開 度センサ 23は、スロットル弁開度 THを検出し、それを表す検出信号を ECU2に出力 する。
[0038] また、スロットル弁機構 11には、ロック機構(図示せず)が設けられており、このロック 機構により、スロットル制御入力 Uthが、後述する故障時用値 Uth— fsに設定されて いるときや、断線などによりスロットルァクチユエータ l ibに入力されないときには、ス ロットル弁機構 11の動作がロックされる。すなわち、スロットル弁機構 11によるスロット ル弁開度 THの変更が禁止され、スロットル弁開度 THが最小値 TH— Lに保持され
る。なお、この最小値 TH— Lは、バルブリフト Liftinが後述する最小値 Liftin— L (所 定の限界リフト)に保持されている場合において、所定の故障時用吸入空気量が確 保されるように設定されている。この故障時用吸入空気量は、停車中ではアイドル運 転やエンジン始動を適切に行うことができるとともに、走行中では低速走行状態を維 持できるように設定されて 、る。
[0039] 吸気管 10のスロットル弁 11aよりも下流側の部分は、サージタンク 10aになっており 、このサージタンク 10aに、吸気管内絶対圧センサ 24および吸気温センサ 25が設け られている。吸気管内絶対圧センサ 24は、例えば半導体圧力センサなどで構成され 、吸気管 10内の絶対圧 (以下「吸気管内絶対圧」という) PBAを検出し、それを表す 検出信号を ECU2に出力する。吸気温センサ 25は、サーミスタで構成されており、吸 気管 10内の温度(以下「吸気温」という) TAを検出して、その検出信号を ECU2に出 力する。
[0040] 燃料噴射弁 12は、燃料を吸気管 10内に噴射するものであり、その燃料噴射タイミ ングおよび噴射量は、 ECU2からの駆動信号によって制御される。
[0041] また、エンジン 3のシリンダヘッド 3cには、点火プラグ 13が取り付けられており、この 点火プラグ 13の点火時期もまた、 ECU2によって制御される(図 2参照)。
[0042] 次に、図 4〜図 7を参照しながら、前述した可変式吸気動弁機構 40について説明 する。この可変式吸気動弁機構 40は、吸気カムシャフト 5、吸気カム 6、可変バルブリ フト機構 50などで構成されて 、る。
[0043] この可変バルブリフト機構 50は、吸気カム 6の回転に伴って吸気弁 4を開閉するとと もに、バルブリフト Liftinを所定の最大値 Liftin— Hと最小値 Liftin—しとの間で無 段階に変更するものであり、気筒 3aごとに設けられた四節リンク式のロッカアーム機 構 51と、これらのロッカアーム機構 51を同時に駆動するリフトァクチユエータ 60を有 している。
[0044] 各ロッカアーム機構 51は、ロッカアーム 52および上下のリンク 53, 54などで構成さ れている。この上リンク 53の一端部は、シリンダヘッド 3cに固定されたロッカアームシ ャフト 56に回動自在に取り付けられるとともに、他端部は、上ピン 55を介して、ロッカ アーム 52の上端部に回動自在に取り付けられて!/、る。
[0045] また、ロッカアーム 52の上ピン 55には、ローラ 57が回動自在に設けられている。こ のローラ 57は、吸気カム 6のカム面に当接しており、吸気カム 6が回転する際、その力 ム面に案内されながら吸気カム 6上を転動する。これにより、ロッカアーム 52は上下 方向に駆動されるとともに、上リンク 53力 ロッカアームシャフト 56を中心として回動 する。
[0046] さらに、ロッカアーム 52の吸気弁 4側の端部には、アジャストボルト 52aが取り付けら れている。このアジャストボルト 52aは、吸気弁 4のステム 4aに当接しており、吸気カム 6の回転に伴ってロッカアーム 52が上下方向に移動すると、バルブスプリング 4eの付 勢力に抗しながら、ステム 4aを上下方向に駆動し、吸気弁 4を開閉する。
[0047] また、下リンク 54の一端部は、下ピン 58を介して、ロッカアーム 52の下端部に回動 自在に取り付けられており、下リンク 54の他端部には、連結軸 59が回動自在に取り 付けられている。下リンク 54は、この連結軸 59を介して、リフトァクチユエータ 60の後 述する短アーム 65 (可動部)に連結されて!、る。
[0048] リフトァクチユエータ 60は、 ECU2により駆動されるものであり、図 5に示すように、モ ータ 61、ナット 62、リンク 63、長アーム 64および短アーム 65を有している。このモー タ 61は、 ECU2に接続され、エンジン 3のヘッドカバー 3fの外側に配置されている。 モータ 61の回転軸は、雄ねじが形成されたねじ軸 61aになっており、このねじ軸 61a に、ナット 62が螺合している。リンク 63の一端部は、ピン 63aを介してナット 62に回動 自在に取り付けられ、他端部は、ピン 63bを介して長アーム 64の一端部に回動自在 に取り付けられている。また、長アーム 64の他端部は、回動軸 66を介して短アーム 6 5の一端部に固定されている。この回動軸 66は、断面円形に形成され、エンジン 3の ヘッドカバー 3fに回動自在に支持されている。長アーム 64および短アーム 65は、回 動軸 66を中心として、これと一体に回動する。
[0049] さらに、短アーム 65の回転軸 66と逆側の端部には、前述した連結軸 59が回動自 在に取り付けられており、これにより、短アーム 65は、連結軸 59を介して、下リンク 54 に連結されている。また、短アーム 65の付近には、最小リフトストッパ 67a (規制部)お よび最大リフトストッパ 67bが互いに間隔を存して設けられており、これらの 2つのスト ッパ 67a, 67bにより、短アーム 65の回動範囲が後述するように規制される。
[0050] 次に、以上のように構成された可変バルブリフト機構 50の動作について説明する。 この可変ノ レブリフト機構 50では、 ECU2からの後述するリフト制御入力 Uliftin (制 御入力)がリフトァクチユエータ 60に入力されると、モータ 61のねじ軸 61aが回転し、 それに伴うナット 62の移動により、長アーム 64および短アーム 65が回動軸 66を中心 として回動するとともに、この短アーム 65の回動に伴う連結軸 59の移動により、ロッカ アーム機構 51の下リンク 54力 下ピン 58を中心として回動する。すなわち、リフトァク チユエータ 60により、下リンク 54が駆動される。
[0051] 図 5 (a)に示すように、短アーム 65が同図の反時計回りに回動すると、短アーム 65 は、最大リフトストッパ 67bに当接し、係止される。それにより、下リンク 54も、図 4に実 線で示す最大リフト位置に係止される。一方、図 5 (b)に示すように、短アーム 65が同 図の時計回りに回動すると、短アーム 65は、最小リフトストッパ 67aに当接し、係止さ れる。それにより、下リンク 54も、図 4に 2点鎖線で示す最小リフト位置に係止される。
[0052] 以上のように、短アーム 65の回動範囲は、 2つのストッノ 67a, 67bにより、図 5 (a) に示す最大リフト位置と図 5 (b)に示す最小リフト位置との間に規制され、それにより、 下リンク 54の回動範囲も、図 4に実線で示す最大リフト位置と、 2点鎖線で示す最小リ フト位置との間に規制される。
[0053] 下リンク 54が最大リフト位置にある場合、ロッカアーム機構 51では、上ピン 55およ び下ピン 58の中心間の距離力 ロッカアームシャフト 56および連結軸 59の中心間の 距離よりも長くなるように構成されており、それにより、図 6 (a)に示すように、吸気カム 6が回転すると、これとローラ 57との当接点の移動量よりも、アジャストボルト 52aの移 動量の方が大きくなる。
[0054] 一方、下リンク 54が最小リフト位置にある場合、ロッカアーム機構 51では、上ピン 5 5および下ピン 58の中心間の距離力 ロッカアームシャフト 56および連結軸 59の中 心間の距離よりも短くなるように構成されており、それにより、図 6 (b)に示すように、吸 気カム 6が回転すると、これとローラ 57との当接点の移動量よりも、アジャストボルト 52 aの移動量の方が小さくなる。
[0055] 以上により、吸気弁 4は、下リンク 54が最大リフト位置にあるときには、最小リフト位 置にあるときよりも大きなバルブリフト Liftinで開弁する。具体的には、吸気カム 6の回
転中、吸気弁 4は、下リンク 54が最大リフト位置にあるときには、図 7の実線で示すバ ルブリフト曲線に従って開弁し、バルブリフト Liftinは、その最大値 Liftin— Hを示す 。一方、下リンク 54が最小リフト位置にあるときには、図 7の 2点鎖線で示すバルブリ フト曲線に従って開弁し、ノ レブリフト Liftinは、その最小値 Liftin— Lを示す。
[0056] 以上のように、この可変バルブリフト機構 50では、ァクチユエータ 60を介して、下リ ンク 54を最大リフト位置と最小リフト位置との間で回動させることにより、バルブリフト L iftinを、最大値 Liftin— Hと最小値 Liftin— との間で無段階に変更することができ る。
[0057] また、この可変ノ レブリフト機構 50には、ロック機構(図示せず)が設けられており、 このロック機構により、リフト制御入力 Uliftin力 後述する故障時用値 Uliftin— fsに 設定されているときや、断線などによりリフトァクチユエータ 60に入力されないときに は、可変バルブリフト機構 50の動作がロックされる。すなわち、可変バルブリフト機構 50によるバルブリフト Liftinの変更が禁止され、バルブリフト Liftinが最小値 Liftin— Lに保持される。なお、この最小値 Liftin— Lは、スロットル弁開度 THが前述した最 小値 TH— Lに保持されて ヽる場合にぉ ヽて、前述した故障時用吸入空気量が確保 されるように設定されている。
[0058] さらに、エンジン 3には、回動角センサ 26 (バルブリフト検出手段)が設けられており
(図 2参照)、この回動角センサ 26は、短アーム 65の回動角 Θ liftを検出し、それを 表す検出信号を ECU2に出力する。この短アーム 65の回動角 Θ liftは、短アーム 65 が最大リフト位置と最小リフト位置との間のどの位置にあるかを表すものであり、 ECU 2は、この回動角 Θ liftに基づき、バルブリフト Liftinを算出する。
[0059] また、図 2に示すように、 ECU2には、アクセル開度センサ 27 (運転状態検出手段) 力 アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(以下「アクセル開度」と!、う) APを表 す検出信号力 電流センサ 28からリフトァクチユエータ 60のモータ 61を実際に流れ る電流の値 (以下「電流値」 t 、う) Imotを表す検出信号が、それぞれ出力される。
[0060] さらに、車両には、イダ-ッシヨン.スィッチ(以下「IG' SW」という) 29が設けられて いる。この IG. SW29は、イグニッションキー(図示せず)の操作に応じ、その ONZO FF状態を表す信号を ECU2に出力する。
[0061] ECU2は、 CPU、 RAM, ROMおよび I/Oインターフェース(いずれも図示せず) などからなるマイクロコンピュータで構成されており、この RAMは、バックアップ電源 によって、記憶したデータを IG' SW29の OFF時にも保持するようになっている。また 、 ECU2は、前述した各種のセンサおよびスィッチ 20〜29の検出信号などに応じて 、エンジン 3の運転状態を判別し、ノ レブリフト Liftinおよびスロットル弁開度 THを制 御することによって、吸入空気量を制御する。なお、本実施形態では、 ECU2によつ て、運転状態検出手段、当接判定手段、制御手段、バルブリフト検出手段、 目標バ ルブリフト決定手段、制御入力算出手段、外乱抑制パラメータ設定手段および保持 判定手段が構成されている。
[0062] なお、上記の吸入空気量の制御は、エンジン 3の低〜高負荷運転時には、主として バルブリフト Liftinによって行われる。また、極低〜低負荷運転時には、吸入空気量 力 Sもともと小さく、これをきめ細力べ制御することが要求されるため、バルブリフト Liftin を最小値 Liftin— Lに保持した状態でスロットル弁開度 THを制御することによって、 吸入空気量の制御が行われる。
[0063] 次に、図 8を参照しながら、 ECU2で行われる上述した吸入空気量の制御を含む処 理について説明する。本処理は、所定の制御周期 ΔΤ (例えば 5msec)ごとに実行さ れる。まず、ステップ 1では、過電流判定処理を実行する。本処理は、可変バルブリフ ト機構 50における可動部品の固着や故障などに起因して、リフトァクチユエータ 60の モータ 61が過電流状態、すなわち過負荷状態にある力否かを判定するものである。 次いで、過電流判定処理の結果に応じ、吸入空気量制御処理を実行し (ステップ 2) 、本処理を終了する。
[0064] 次に、上記の過電流判定処理について、図 9を参照しながら説明する。まず、ステ ップ 10では、第 2過電流判定フラグ F— Imot— emg2が「1」であるか否かを判別する 。この答が NOのときには、電流値 Imotが所定の上限値 Imot— max以上であるか否 かを判別する (ステップ 11)。
[0065] この答が NOで、 Imotく Imot— maxのときには、リフトァクチユエータ 60が過電流' 過負荷状態にないとして、積算値 SImotを値 0に設定した (ステップ 12)後、本処理 を終了する。
[0066] 一方、ステップ 11の答が YESで、 Imot≥Imot— maxのときには、積算値 SImotを 次式(1)により算出し (ステップ 13)、 RAM内に記憶する。
[0067] SImot (k) = SImot (k 1 )
+Imot (k) - Stime ……(1)
[0068] 上記式(1)において、 Stimeは、サンプリング周期であり、この場合、前述した制御 周期 ΔΤに等しい。また、記号 (k)付きのデータは、制御周期 ΔΤに同期してサンプリ ング (または算出)された離散データであることを示しており、記号 kは各離散データ のサンプリングサイクルの順番を表している。例えば、記号 kは今回の制御タイミング でサンプリングされた値であることを、記号 k 丄は前回の制御タイミングでサンプリン グされた値であることをそれぞれ示している。この点は、以下の離散データにおいて も同様である。なお、以下の説明では、各離散データにおける記号 (k)などを適宜、 省略する。
[0069] 上記式(1)〖こ示すように、積算値 SImotは、電流値 Imotとサンプリング周期 Stime との積を積算することにより算出される。この場合、電流値 Imotは、リフトァクチユエ一 タ 60のモータ 61のトルクすなわち負荷と比例関係にあるので、積算値 SImotは、リフ トァクチユエータ 60における負荷の大きさとその継続時間を表す。
[0070] 次いで、積算値 SImotが所定の第 1判定値 SImot_[l以上である力否かを判別す る(ステップ 14)。この第 1判定値 SImot_[lは、リフトァクチユエータ 60が過電流'過 負荷状態に近い状況にある力否かを判定するためのしきい値である。この答が NOの ときには、本処理を終了する。一方、ステップ 14の答が YESで、 SImot≥SImot_[ 1のときには、リフトァクチユエータ 60が過電流'過負荷状態に近い状況にあるとして 、そのことを表すために、第 1過電流判定フラグ F— Imot— emglを「1」にセットし (ス テツプ 15)、 RAM内に記憶する。
[0071] 次に、積算値 SImotが所定の第 2判定値 SImot _[2以上である力否かを判別する
(ステップ 16)。この第 2判定値 SImot_[2は、リフトァクチユエータ 60の過電流'過 負荷状態にある力否力、すなわち可変バルブリフト機構 50が故障して 、るか否かを 判定するためのしきい値であり、上記第 1判定値 SImot _[1よりも大きな値に設定さ れている。
[0072] 上記ステップ 16の答が NOのときには、本処理を終了する。一方、上記ステップ 16 の答が YESで、 SImot≥SImot_[2のときには、リフトァクチユエータ 60が過電流' 過負荷状態にあり、可変バルブリフト機構 50が故障しているとして、そのことを表すた めに、第 2過電流判定フラグ F— Imot— emg2を「1」にセットし (ステップ 17)、 RAM 内に記憶する。次いで、本処理を終了する。
[0073] 上記のように、ステップ 17で第 2過電流判定フラグ F— Imot— emg2が「1」にセット されると、前記ステップ 10の答が YESとなり、その場合には、リセットフラグ F—RESE Tが「1」である力否かを判別する(ステップ 18)。このリセットフラグ F_RESETは、所 定の判定処理において、所定のリセット条件が成立したときに「1」にセットされる。より 具体的には、メンテナンス時において、外部診断機によるリセット動作が実行されたと き、またはバッテリキャンセル動作が実行されたときには、所定のリセット条件が成立 したと判定され、リセットフラグ F— RESETが「1」にセットされる。
[0074] このステップ 18の答が NOのときは、そのまま本処理を終了する。一方、ステップ 18 の答が YESのときには、積算値 SImotを値 0に、 2つのフラグ F— Imot— emgl, F — Imot— emg2を!、ずれも「0」にそれぞれリセットした (ステップ 19)後、前記ステツ プ 11以降を実行する。
[0075] 次いで、図 8のステップ 2の吸入空気量制御処理について、図 10を参照しながら説 明する。本処理は、吸入空気量を制御するために、リフト制御入力 Ulif tinおよびスロ ットル制御入力 Uthを算出するものである。まず、ステップ 30では、エンジン始動フラ グ F— ENGSTART力 「1」であるか否かを判別する。このエンジン始動フラグ F—E NGSTARTは、図示しない判定処理において、エンジン回転数 NEおよび IG' SW2 9の出力状態に応じて、エンジン始動中すなわちクランキング中と判定されたときに「 1」にセットされる。
[0076] 上記ステップ 30の答が YESで、エンジン始動中のときには、エンジン水温 TWに応 じ、図 11に示すテーブルを検索することによって、 目標吸入空気量の始動時用値 G cyl_cmd_crkを算出する(ステップ 31)。同図に示すように、このテーブルでは、 目 標吸入空気量の始動時用値 Gcyl— cmd— crkは、エンジン水温 TWが低いほど、大 きな値に設定されている。これは、エンジン水温 TWが低いほど、エンジン 3のフリクシ
ヨンが大きぐその始動がしにくいので、吸入空気量を大きくする必要があるためであ る。
[0077] 次いで、 目標吸入空気量 Gcyl— cmdを上記始動時用値 Gcyl— cmd— crkに設定 する (ステップ 32)。次に、後述するように、ノ レブリフト制御処理を実行する (ステツ プ 33)とともに、スロットル制御処理を実行した (ステップ 34)後、本処理を終了する。
[0078] 一方、前記ステップ 30の答が NOで、エンジン始動中でないときには、アクセル開 度 APが所定値 APREFよりも小さ ヽか否かを判別する (ステップ 35)。この答が YES で、アクセルペダルが踏み込まれていないときには、触媒暖機タイマの計時値 Teat が所定値 Tcatlmはりも小さいか否かを判別する (ステップ 36)。この触媒暖機タイマ は、触媒暖機制御処理の実行時間を計時するものであり、アップカウント式のタイマ で構成されている。なお、触媒暖機制御処理は、エンジン 3の排気管に設けられた排 ガス浄化用の触媒 ( 、ずれも図示せず)を活性化するために行われるものである。
[0079] このステップ 36の答が YESで、 Teatく Tcatlmtのとき、すなわち、触媒暖機制御 の実行中のときには、触媒暖機タイマの計時値 Teatおよびエンジン水温 TWに応じ 、図 12に示すマップを検索することによって、 目標吸入空気量の触媒暖機用値 Gcyl — cmd— astを算出する(ステップ 37)。同図において、 TW1〜TW3は、エンジン水 温 TWの第 1〜第 3の所定値 (TW1 <TW2<TW3)である。なお、 目標吸入空気量 の触媒暖機用値 Gcyl— cmd— astは、エンジン水温 Tが第 1〜第 3の所定値 TW1〜 TW3以外のときには、補間演算によって算出される。
[0080] また、 目標吸入空気量の触媒暖機用値 Gcyl— cmd— astは、エンジン水温 TWが 低いほど、より大きな値に設定されている。これは、エンジン水温 TWが低いほど、触 媒の活性ィ匕に要する時間が本来的に長くなるので、排気ガスボリュームを大きくする ことによって、触媒の活性ィ匕に要する時間をより短縮するためである。さらに、このマ ップでは、 目標吸入空気量の触媒暖機用値 Gcyl— cmd— astは、触媒暖機タイマの 計時値 Teatが小さい領域では、計時値 Teatが大きいほど、より大きな値に設定され 、計時値 Teatが大きい領域では、計時値 Teatが大きいほど、より小さな値に設定さ れている。これは、触媒暖機制御の実行時間が長くなるのに伴い、エンジン 3の暖機 が進むことで、フリクションが低下するので、その場合には、 目標吸入空気量 Gcyl—
cmdを低減しないと、エンジン回転数 NEを目標値に維持するために点火時期が過 剰にリタード制御された状態となり、燃焼状態が不安定になるためである。
[0081] 次いで、 目標吸入空気量 Gcyl— cmdを上記触媒暖機用値 Gcyl— cmd— astに設 定した (ステップ 38)後、前記ステップ 33以降を実行する。
[0082] 一方、前記ステップ 35または 36の答が NOのとき、すなわちアクセルペダルが踏み 込まれているとき、または Tcat≥Tcatlmtであるときには、 目標吸入空気量の通常運 転用値 Gcyl— cmd— drvを、エンジン回転数 NEおよびアクセル開度 APに応じ、図 13に示すマップを検索することによって算出する(ステップ 39)。同図において、 AP 1〜AP3は、アクセル開度 APの第 1〜第 3の所定値 (AP1 >AP2 >AP3)である。 なお、 目標吸入空気量の通常運転用値 Gcyl— cmd— drvは、アクセル開度 APが第 1〜第 3の所定値 AP1〜AP3以外のときには、補間演算によって算出される。
[0083] このマップでは、 目標吸入空気量の通常運転用値 Gcyl— cmd— drvは、エンジン 回転数 NEが高いほど、またはアクセル開度 APが大きいほど、より大きな値に設定さ れている。これは、エンジン回転数 NEが高いほど、またはアクセル開度 APが大きい ほど、エンジン 3の負荷が高いことで、より大きな吸入空気量が要求されるためである
[0084] 次いで、 目標吸入空気量 Gcyl— cmdを上記通常運転値 Gcyl— cmd— drvに設定 した (ステップ 40)後、前記ステップ 33以降を実行する。
[0085] 次に、図 10のステップ 33のバルブリフト制御処理について、図 14を参照しながら説 明する。本処理は、可変バルブリフト機構 50を制御するための前述したリフト制御入 力 Uliftinを算出するものである。まず、ステップ 50では、エンジン回転数 NE、およ び前記ステップ 32、 38または 40で設定した目標吸入空気量 Gcyl— cmdに応じ、図 15に示すマップを検索することによって、ノ レブリフト Liftinの目標値である目標バ ルブリフト Liftin— cmdを算出する。同マップにおいて、 Gcyl— cmdl〜Gcyl— cm d3は、 目標吸入空気量 Gcyl— cmdの第 1〜第 3の所定値(Gcyl— cmdl < Gcyl— cmd2く Gcyl— cmd3)である。なお、 目標バルブリフト Liftin— cmdは、 目標吸入 空気量 Gcyl— cmdが第 1〜第 3の所定値 Gcyl— cmdl〜Gcyl— cmd3以外のとき には、補間演算によって求められる。
[0086] また、上記のマップでは、 目標バルブリフト Liftin— cmdは、エンジン回転数 NEが 高いほど、または目標吸入空気量 Gcyl— cmdが大きいほど、より大きな値に設定さ れている。これは、エンジン回転数 NEが高いほど、または目標吸入空気量 Gcyl— c mdが大きいほど、エンジン 3に対する要求出力が大きいことで、より大きな吸入空気 量が要求されるためである。さらに、 目標吸入空気量 Gcyl— cmdが第 1所定値 Gcyl — cmdlで、かつエンジン回転数 NEが所定値 NEREF (例えば l lOOrpm)のときに は、 目標バルブリフト Liftin— cmdは、前述したバルブリフト Liftinの最小値 Liftin— Lよりも若干大きな所定値 Liftin— stbに設定されている。さらに、 Gcyl— cmd=Gcy 1— cmdlかつ NE< NEREFのとき、すなわちエンジン 3の極低〜低負荷運転状態 のときには、 目標バルブリフト Liftin— cmdは、最小値 Liftin— Lよりも小さな値に設 定されている。これは、短アーム 65や最小リフトストッパ 67aの量産による個体差や経 年変化にかかわらず、上記のような極低〜低負荷運転状態のときに、短アーム 65を 最小リフトストッパ 67aに確実に当接させることによって、バルブリフト Liftinを最小値 Liftin— Lに確実に保持するためである。
[0087] 次!、で、前述した第 2過電流判定フラグ F— Imot— emg2が「1」であるか否かを判 別する (ステップ 51)。この答が YESで、可変ノ レブリフト機構 50が故障しているとき には、リフト制御入力 U— Liftinを所定の故障時用値 U— Liftin— fsに設定した (ス テツプ 52)後、本処理を終了する。これにより、前述したように、バルブリフト Liftinが 最小値 Liftin— Lに保持され、それにより、停車中はアイドル運転やエンジン始動を 適切に実行できると同時に、走行中は低速走行状態を維持することができる。
[0088] 一方、ステップ 51の答が NOで、 F— Imot— emg2 = 0、すなわち可変バルブリフト 機構 50が正常であるときには、後述する当接判定処理を実行する (ステップ 53)とと もに、リフト制御入力 Uliftinを算出した (ステップ 54)後、本処理を終了する。
[0089] このリフト制御入力 Uliftinの算出は、バルブリフト Liftin、および前記ステップ 50で 算出した目標ノ レブリフト Liftin_cmdに基づき、次の式(2)〜(8)に示す目標値フ ィルタ型 2自由度スライディングモード制御アルゴリズムによって行われる。すなわち、 リフト制御入力 Uliftinは、バルブリフト Liftinを目標バルブリフト Liftin— cmdに追従 •収束させるための値として算出される。
[0090] [数 1]
Lifti n— cmd—f (k) = POLE— fj f -Lifti n_cmd_f (k-1)
+ (1+P0LE_f_lf) -Liftin_cmd(k) …… (2)
Ul iftin(k) = Ueq_lf (k)†Urch_lf (k)+Uadp_lf (k) …… (3)
Ueq_lf (k) =— 1— {(1-al_lf-P0LE_lf) -Liftin(k)
bl— I f
+ (P0LE_lf-a2_lf) - Liftin(k-1)-b2_lf -Ul iftin(k-l) + Lifti n_cmd_f (k) + (POLE— lf-1) -Lifti n— cmd—f (k-1)
-POLE_lf -Liftin.cmd (k-2)} …… (4)
Urch_lf(k) = - K^h {f - g_lf(k) ···.· (5) a_lf (k) = E_lf (k) + POLE_lf-E_lf (k-1) (6)
E_lf (k) = Liftin(k)-Liftin_cmd_f (k-1) (7)
Uadp_lf(k) = - K^pj|f ·∑ a_lf(i) '- (8)
[0091] この制御アルゴリズムでは、まず、式(2)に示す目標値フィルタアルゴリズムすなわ ち一次遅れフィルタアルゴリズムにより、目標バルブリフトのフィルタ値 Liftin— cmd —fが算出される。同式(2)において、 POLE— f— Ifは、目標値フィルタ設定パラメ タであり、上記ステップ 53の当接判定処理において、— KPOLE— f— Ifく 0の関 係が成立する値に設定される。
[0092] 次 、で、式(3) (8)に示すスライディングモード制御アルゴリズムにより、リフト制 御入力 Uliftinが算出される。すなわち、式(3)に示すように、リフト制御入力 Uliftin は、等価制御入力 Ueq— lf、到達則入力 Urch— Ifおよび適応則入力 Uadp— Ifの 総和として算出される。
[0093] 等価制御入力 Ueq— Ifは、式 (4)により算出される。同式 (4)において、 al— If, a2
If, bl If, b2 Ifは、後述する式(9)のプラントモデルのモデルパラメータを示し
ており、所定値にそれぞれ設定されている。また、 POLE— Ifは、切換関数設定パラ メータ (外乱抑制パラメータ)であり、当接判定処理において、 KPOLE— lf<0 の関係が成立する値に設定される。
[0094] また、到達則入力 Urch— Ifは、式(5)により算出される。同式(5)において、 Krch —Ifは、所定の到達則ゲインを表しており、 σ— Ifは、式 (6)のように定義される切換 関数である。同式 (6)の E_lfは、式(7)により算出される追従誤差である。さらに、適 応則入力 Uadp— Ifは、式(8)により算出される。同式において、 Kadp— Ifは、所定 の適応則ゲインを表して 、る。
[0095] 以上の式(2)〜(8)は次のようにして導出される。すなわち、プラントを、リフト制御 入力 Uliftinを入力とし、バルブリフト Liftinを制御量とする系として定義するとともに 、離散時間系モデルとしてモデルィ匕すると、次式(9)が得られる。この式(9)のモデ ルに基づき、バルブリフト Liftinが目標バルブリフト Liftin— cmdに追従'収束するよ うに、 目標値フィルタ型 2自由度スライディングモード制御理論を適用すると、前述し た式 (2)〜 (8)が導出される。
[0096] [数 2]
Liftin(k+1) = a1_lf -Lift in(k) + a2_lf -Lift in(k-1)
+ b1_lf -Ul iftin(k)†b2_lf -Ul iftin(k-l) (9)
[0097] 以上の目標値フィルタ型 2自由度スライディングモード制御アルゴリズムは、次のよ うな特性を有している。すなわち、 目標値フィルタ設定パラメータ POLE_f_lfを一 1 < POLE— f— If < 0の範囲内で変更することによって、 目標バルブリフト Liftin— cm dに対する目標バルブリフトのフィルタ値 Liftin— cmd—fの追従速度、すなわち目標 バルブリフト Liftin— cmdへのバルブリフト Liftinの追従速度が変化する。具体的に は、この追従速度は、 目標値フィルタ設定パラメータ POLE— f— Ifが値 1に近いほ ど、より低くなる。このため、 目標値フィルタ設定パラメータ POLE— f— Ifを値— 1によ り近 、値に設定することによって、バルブリフト Liftinを目標バルブリフト Liftin— cm dに追従させる際のリフト制御入力 Uliftinが小さくなり、その結果、電流値 Imotがより 小さくなるとともに、バルブリフト Liftinを目標バルブリフト Liftin— cmdに追従させる ための短アーム 65の駆動力がより小さくなる。
[0098] また、切換関数設定パラメータ POLE— Ifを 1く POLE— If < 0の範囲内で変更 することによって、値 0への追従誤差 E— Ifの収束速度および収束挙動、すなわち目 標バルブリフト Lif tin— cmdへのバルブリフト Lif tinの追従速度および追従挙動が変 化する。言い換えれば、リフトァクチユエータ 60にカ卩えられる外乱の影響の抑制度合 (以下、単に「外乱抑制度合」という)が変化する。具体的には、切換関数設定パラメ ータ POLE— Ifが値 1に近いほど、より大きな追従誤差 E— Ifの発生が許容され、 外乱抑制度合がより低くなる。このため、切換関数設定パラメータ POLE— Ifを値— 1 により近い値に設定することによって、追従誤差 E— Ifが発生した際のリフト制御入力 Uliftinが小さくなり、その結果、電流値 Imotがより小さくなるとともに、ノ レブリフト Li ftinを目標バルブリフト Liftin— cmdに追従させるための短アーム 65の駆動力がより 小さくなる。
[0099] 次に、図 16を参照しながら、図 14の前記ステップ 53の当接判定処理について説 明する。本処理は、可変バルブリフト機構 50の短アーム 65が最小リフトストッパ 67a に当接している力否かを判定するとともに、その判定結果に応じて、切換関数設定パ ラメータ POLE— Ifおよび目標値フィルタ設定パラメータ POLE— f— Ifを設定するも のである。
[0100] まず、ステップ 60では、判定パラメータ WVliftinを算出する。この判定パラメータ W Vliftinは、最小リフトストッパ 67aへの短アーム 65の当接の有無を判定するのに用 いられるものであり、リフト偏差 DL (k)に基づき、図 17に示す判定パラメータ算出部 7 0によって算出される。このリフト偏差 DL (k)は、バルブリフトの今回値 Liftin (k)と前 回値 Lif tin (k- 1)との偏差(= Lif tin (k) -Lif tin (k— 1) )である。なお、上記の判 定パラメータ算出部 70は、 ECU2で構成されている。
[0101] 判定パラメータ算出部 70は、第 1フィルタ 71、第 1ダウンサンプラ 72、第 2フィルタ 7 3、および第 2ダウンサンプラ 74を有している。
[0102] 第 1フィルタ 71は、ローパスフィルタであり、図 18に示すようなゲイン特性および位 相特性を有しており、前述した制御周期 ΔΤごとに、上記のリフト偏差 DL (k)をサン プリングし、フィルタリングすることによって、第 1フィルタ値 DLf (k)を生成し、第 1ダウ ンサンブラ 72に出力する。具体的には、リフト偏差 DL (k)のうち、リフト偏差 DL (k)の
サンプリング周波数の 1Z2の周波数に相当する所定の第 1周波数 ω以上の周波数 域の成分を除去する。また、リフト偏差 DL (k)のうちの第 1周波数 ωよりも低い所定周 波数 ω ref以下の低周波数域 L ω Αの成分に対するゲインは、値 1よりも大きな所定 値 GREFに設定されており、それにより、この低周波数域 L eo Aの成分が増幅される 。なお、第 1フィルタ値 DLf (k)は次式(10)によって算出(生成)される。
DLf (k) = a -DL (k) + a -DL (k- l) …… (10)
ここで、 αは所定値 (例えば 0. 7071)である。
[0103] 第 1ダウンサンブラ 72は、制御周期 ΔΤごとに入力された第 1フィルタ値 DLf (k)を 1 つおきにサンプリングすることによって間引き、サンプリングした第 1フィルタ値 DLf ( m)を、第 2フィルタ 73に出力する。
[0104] 第 2フィルタ 73は、第 1フィルタ 70とほぼ同様に構成されており、入力された第 1フィ ルタ値 DLf (m)をフィルタリングすることによって、第 2フィルタ値 DLf,(m)を生成し、 第 2ダウンサンブラ 74に出力する。具体的には、第 2フィルタ 73は、第 1フィルタ値 D Lf (m)のうちの、第 1フィルタ値 DLf (m)の入力の周期に対応する周波数の 1 Z2の 周波数、すなわち上記の第 1周波数 ωの 1Z2の周波数である所定の第 2周波数 ω Ζ2以上の周波数域の成分を除去する。また、第 1フィルタ値 DLf (m)のうちの、第 2 周波数 ω Z2よりも低い所定周波数以下の低周波数域に対するゲインは、値 1よりも 大きな所定値に設定されており、それにより、この低周波数域の成分が増幅される。 なお、第 2フィルタ値 DLf' (m)は、次式(11)によって算出(生成)される。
DLf (m) = a -DLf (m) + a -DLf (m- l) ……(11)
[0105] 第 2ダウンサンプラ 74は、入力された第 2フィルタ値 DLf,(m)を 1つおきにサンプリ ングすることによって間引き、判定パラメータ WVliftin(k)として出力する。
[0106] 以上のように、リフト偏差 DLに、上述したフィルタリング処理および間引き処理を繰 り返し施すことによって、判定パラメータ WVliftinが算出(生成)される。これにより、 図 19に示すように、判定パラメータ WVliftinは、高周波数域の成分に含まれるノイズ が除去されるとともにリフト偏差 DLの低周波数域の成分が増幅されるように算出され 、それにより、リフト偏差 DLの SN比を改善した値として得られる。また、上述したフィ ルタリング処理は、微分的機能を有しているため、以上のようにして算出された判定
パラメータ WVliftinは、バルブリフト Liftinの変化率の微分値、すなわち回動する短 アーム 65の加速度を表す。
[0107] 図 16に戻り、前記ステップ 60に続くステップ 61では、バルブリフト Liftin、および図
14の前記ステップ 50で算出した目標バルブリフト Liftin— cmdカ^、ずれも、前述し た所定値 Liftin— stb以下であるカゝ否かを判別する。
[0108] この答が NOのときには、ステップ 62、 63および 64において、低リフトフラグ F— low lift,保持フラグ F— pressmod、および当接開始フラグ F— contmodを、それぞれ「
0」にリセットする。次に、図 9の前記ステップ 15でセットされた第 1過電流判定フラグ F
— Imot— emglが「1」であるか否かを判別する(ステップ 65)。
[0109] この答が NOのときには、切換関数設定パラメータ POLE— Ifおよび目標値フィルタ 設定パラメータ POLE— f— Ifを、所定の通常時用値 POLE— baseおよび POLE— f
—base (例えばそれぞれ—0. 4、—0. 9)にそれぞれ設定した (ステップ 66)後、本 処理を終了する。
[0110] 一方、ステップ 65の答が YESで、 F— Imot— emgl = 1、すなわち、リフトァクチュ エータ 60が過電流 '過負荷状態に近い状況にあるときには、切換関数設定パラメ一 タ POLE— Ifおよび目標値フィルタ設定パラメータ POLE— f— Ifを、所定の過電流 時用値 POLE— imotおよび POLE— f— imotにそれぞれ設定した (ステップ 67)後 、本処理を終了する。
[0111] この過電流時用値 POLE— imotは、上記の通常時用値 POLE— baseよりも値 1 に近い値(一 1 < POLE— imotく POLE— base)に設定されており、例えば—0. 8 である。また、 目標値フィルタ設定パラメータの過電流時用値 POLE— f— imotは、 上記の通常時用値 POLE— f— baseよりも値— 1に近 、値(— 1く POLE— f— imot < POLE— f— base)に設定されており、例えば 0. 95である。このように設定する のは、前述したように、切換関数設定パラメータ POLE— Ifおよび目標値フィルタ設 定パラメータ POLE— f— Ifが値 1に近いほど、電流値 Imotがより小さくなるので、 このことを利用することによって、リフトァクチユエータ 60が過電流'過負荷状態に至 るのを回避するためである。
[0112] 一方、前記ステップ 61の答が YESで、バルブリフト Liftinおよび目標バルブリフト L
if tin— cmdがいずれも、所定値 Liftin— stb以下で非常に小さいときには、次のステ ップ 68以降において、最小リフトストッパ 67aへの短アーム 65の当接の有無を判定 する。まず、ステップ 68では、ノ レブリフト Liftinが低リフト側に制御されているとして 、そのことを表すために、低リフトフラグ F— lowliftを「1」にセットする。
[0113] 次いで、ステップ 69および 70において、保持フラグ F— pressmodおよび当接開始 フラグ F— contmodが「1」である力否かをそれぞれ判別する。これらの答が 、ずれも NOのときには、前記ステップ 60で算出した判定パラメータ WVliftin力 所定の第 1 判定値 WVcoll (例えば 3)以下であるか否かを判別する (ステップ 71)。
[0114] この答が NOのときには、前記ステップ 63以降を実行する。一方、ステップ 71の答 が YESで、判定パラメータ WVliftinが第 1判定値 WVcoll以下になったときには、 短アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接し始めたと判定する。このように判定する のは、前述したように判定パラメータ WVliftinは、回動する短アーム 65の加速度を 表すので、 WVliftin≤WVcollの成立によって、短アーム 65が最小リフトストッパ 67 aに当接し始めることで短アーム 65の加速度が減少し始めたと推定できるためである 。次に、短アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接し始めたことを表すために、当接 開始フラグ F_contmodを「1」にセットする (ステップ 72)。次に、この判定を受けて、 切換関数設定パラメータ POLE— Ifおよび目標値フィルタ設定パラメータ POLE— f —Ifを、所定の当接開始時用値 POLE— lowおよび POLE— f— lowにそれぞれ設 定した (ステップ 73)後、本処理を終了する。
[0115] この当接開始時用値 POLE— lowは、前述した過電流時用値 POLE— imo りも 値一 1に近 、値( 1く POLE— lowく POLE— imotく POLE— base)に設定され ており、例えば— 0. 99である。また、 目標値フィルタ設定パラメータの当接開始時用 値 POLE— f— lowは、前述した過電流時用値 POLE— f— imotよりも値— 1に近!ヽ 値(— 1く POLE— f— lowく POLE— f— imotく POLE— f— base)に設定されて おり、例えば 0. 97である。
[0116] 上記ステップ 72により当接開始フラグ F— contmodが「1」にセットされると、前記ス テツプ 70の答が YESとなり、その場合には、判定パラメータ WVliftinが第 2判定値 WVcol2 (例えば— 3)以上である力否かを判別する(ステップ 74)。
[0117] この答が NOのときには、前記ステップ 72以降を実行する。一方、この答が YESで 、判定パラメータ WVliftinが第 2判定値 WVcol2以上になったとき、すなわち第 1判 定値 WVcoll以下に低下していた判定パラメータ WVliftinが第 2判定値 WVcol2以 上に増加したときには、短アーム 65の加速度が減少のピークを過ぎていて、最小リフ トストツパ 67aへの短アーム 65の当接が終了し、バルブリフト Liftinが最小値 Liftin _Lに保持されたと判定する。次に、そのことを表すために、保持フラグ F_pressmo dを「1」にセットする (ステップ 75)。次いで、前記ステップ 64以降を実行する。また、 このステップ 75により保持フラグ F— pressmodが「1」にセットされると、前記ステップ 69の答が YESとなり、その場合には、前記ステップ 64以降を実行する。
[0118] 図 20は、上述した当接判定処理を行った場合の動作例を示している。なお、この 動作例は、前述した第 1および第 2の判定値 WVcoll, WVcol2を互いに同じ値に 設定するとともに、バルブリフト Liftinが目標バルブリフト Liftin— cmdに収束してい る状態から、 目標バルブリフト Liftin— cmdの減少に伴って最小値 Liftin— Lまでバ ルブリフト Liftinを制御する場合の動作を示している。
[0119] 同図に示すように、 目標バルブリフト Liftin— cmdが減少し始めると(時点 tl)、ノ ルブリフト Liftinは、 目標バルブリフト Liftin— cmdに収束するように減少する。そし て、バルブリフト Liftinが最小値 Liftin— Lに近 、値になると、判定パラメータ WVlift inは急激に減少し始める。さらに、ノ レブリフト Liftinが最小値 Liftin— Lまで減少し 、短アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接し始めた時に、判定パラメータ WVlifti n力 第 1判定値 WVcollを下回る(時点 t2)。したがって、 WVliftin≤ WVcollにな つたとき (ステップ 71 : YES)に、短アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接し始めた と判定することができる。また、これに伴って、それまで通常時用値 POLE— baseに 設定されていた切換関数設定パラメータ POLE_lfが、値— 1により近い当接開始時 用値 POLE_lowに設定される (ステップ 73)。
[0120] さらに、その後、最小リフトストッパ 67aへの短アーム 65の当接が終了し、バルブリフ ト Liftinが最小値 Liftin— Lに保持された時に、判定パラメータ WVliftinは、減少し た状態力 増加し、第 2判定値 WVcol2を上回る(時点 t3)。したがって、判定パラメ ータ WVliftin力 第 1判定値 WVcoll以下になった後、第 2判定値 WVcol2以上に
なったとき (ステップ 74 : YES)に、バルブリフト Liftinが最小値 Liftin— Lに保持され たと判定することができる。また、これに伴って、当接開始時用値 POLE— lowに設 定されて!/、た切換関数設定パラメータ POLE— If力 通常時用値 POLE— baseに設 定される (ステップ 66)。
[0121] 以上のように、上述した当接判定処理によれば、バルブリフト Liftinが所定値 Liftin — stbよりも大きいとき(ステップ 61 :NO)、すなわち、バルブリフト Liftinを最小値 Lif tin_Lに保持せずに、バルブリフト Liftinを主体として吸入空気量を制御する場合 には、切換関数設定パラメータ POLE— Ifおよび目標値フィルタ設定パラメータ POL E— f— If力 値 0に近 、通常時用値 POLE— baseおよび POLE— f— baseにそれぞ れ設定される(ステップ 66)。これにより、 目標バルブリフト Liftin— cmdへのバルブリ フト Liftinの良好な追従性が確保される。
[0122] また、短アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接し始めたと判定されたとき (ステツ プ 71: YES)には、切換関数設定パラメータ POLE— Ifおよび目標値フィルタ設定パ ラメータ POLE— f— Ifがそれぞれ、当接開始時用値 POLE— lowおよび POLE— f _lowに設定される(ステップ 73)。
[0123] 前述したように、これらの当接開始時用値 POLE— lowおよび POLE— f— lowは、 通常時用値 POLE— baseおよび POLE— f— baseよりもそれぞれ値— 1に近 、値に 設定されている。これにより、短アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接し始めたとき に、前述した目標値フィルタ型 2自由度スライディングモード制御アルゴリズムの特性 から明らかなように、バルブリフト Liftinを目標バルブリフト Liftin— cmdに追従させる ための短アーム 65の駆動力を低減することができる。その結果、短アーム 65が最小 リフトストツバ 67aに当接する際の衝撃力を低減できるので、短アーム 65や最小リフト ストッパ 67aの変形を回避でき、したがって、可変バルブリフト機構 50の寿命を延ば すことができる。
[0124] また、短アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接するまでの間は、短アーム 65の 駆動力が確保されるので、 目標バルブリフト Lif tin— cmdへのバルブリフト Lif tinの 追従速度を低下させることなぐ吸入空気量を適切な値に迅速に制御することができ る。その結果、安定したエンジン 3の運転状態を確保できることによって、良好なドライ
バビリティーを確保することができる。さらに、短アーム 65や最小リフトストッパ 67aに 緩衝材を付加する必要がないので、緩衝材を設けた場合と異なり、最小値 Liftin— L におけるバルブリフト Liftinのばらつきによる吸入空気量のばらつきを回避することが できるとともに、緩衝材の付カ卩による製造コストの上昇や設計の自由度の低下を回避 することができる。
[0125] また、短アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接したと判定された後、バルブリフト Liftinが最小値 Liftin— Lに保持されたと判定されたとき(ステップ 74 : YES)には、 切換関数設定パラメータ POLE— Ifおよび目標値フィルタ設定パラメータ POLE— f —Ifが、通常時用値 POLE— baseおよび POLE— f— baseにそれぞれ設定される( ステップ 66)。これにより、バルブリフト Liftinを目標バルブリフト Liftin— cmdに追従 させるための短アーム 65の駆動力、すなわちバルブリフト Liftinを最小値 Liftin_L に保持する力が増大する。その結果、最小リフトストツバ 67aに当接した後、短アーム 65を、エンジン 3の振動などで最小リフトストッパ 67aから乖離させることなぐ最小リフ トストツパ 67aに当接した状態に確実に保持できる。
[0126] さらに、最小リフトストッパ 67aへの短アーム 65の当接の開始後、その終了までの間 に、 目標バルブリフト Liftin— cmdが所定値 Liftin— stbよりも大きな値に設定され、 バルブリフト Liftinを増大させるように制御するときには、前記ステップ 61の答が NO となり、前記ステップ 66が実行される。その結果、切換関数設定パラメータ POLE— 1 fおよび目標値フィルタ設定パラメータ POLE— f— If力 通常時用値 POLE— base および POLE— f— baseにそれぞれ設定される。
[0127] これにより、前述したように、短アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接し始めた直 後に、運転者の加速要求などによりバルブリフト Liftinを増加させる場合に、短ァー ム 65の駆動力をそれまでの低減して 、る状態から、即座に増大させることができる。 その結果、 目標バルブリフト Liftin— cmdへのバルブリフト Liftinの追従性を向上さ せることができるので、吸入空気量を適切な値に迅速に増加させることができ、したが つて、良好なドライバピリティーを確保することができる。
[0128] また、最小リフトストッパ 67aへの短アーム 65の実際の当接状況に応じて変化する 短アーム 65の加速度を表す判定パラメータ WVliftinを用いて当接判定を行うので、
この判定を、センサなどで直接検出した短アーム 65の位置に基づいて行う場合と異 なり、短アーム 65や最小リフトストッパ 67aの量産による個体差や経年変化による摩 耗の影響を受けることなぐ精度良く行うことができる。さらに、前述したように、判定パ ラメータ WVliftin力 リフト偏差 DLの SN比を改善した値として得られるので、リフト偏 差 DLに含まれるノイズの影響を抑制しながら、当接判定をさらに精度良く行うことが できる。
[0129] 次に、図 21を参照しながら、図 10の前記ステップ 34のスロットル制御処理について 説明する。まず、ステップ 80では、前述した当接開始フラグ F— contmod、保持フラ グ F— pressmod、および第 2過電流判定フラグ F— Imot— emg2のいずれかが「1」 であるか否かを判別する。
[0130] この答が NOで、当接開始フラグ F— contmod、保持フラグ F— pressmod、および 第 2過電流判定フラグ F— Imot— emg2がいずれも「0」のとき、すなわち、短アーム 6 5が最小リフトストッパ 67aに当接しておらず、バルブリフト Liftinを主体とする吸入空 気量制御を実行して 、るときには、バルブリフト Liftinおよびエンジン回転数 NEに応 じ、図 22に示すマップを検索することによって、 目標スロットル弁開度の通常時用値 TH— cmd_opを算出する(ステップ 81)。同図において、 NE1〜NE3は、エンジン 回転数 NEの第 1〜第 3の所定値 (NE1 >NE2>NE3)である。なお、通常時用値 T H— cmd— opは、エンジン回転数 NEが第 1〜第 3の所定値 NE1〜NE3以外のとき には、補間演算によって算出される。
[0131] また、上記のマップでは、通常時用値 TH— cmd— opは、バルブリフト Liftinが大き いほど、またはエンジン回転数 NEが高いほど、より大きな値に設定されている。これ は、バルブリフト Liftinが大きいほど、またはエンジン回転数 NEが高いほど、ェンジ ン 3の負荷が高いことで、より大きな吸入空気量が要求されるためである。
[0132] 次いで、 目標スロットル弁開度 TH— cmdを、上記通常時用値 TH— cmd— opに設 定する(ステップ 82)。次に、スロットル故障フラグ F— THNGが「1」であるか否かを判 別する(ステップ 83)。このスロットル故障フラグ F_THNGは、故障判定処理(図示 せず)において、スロットル弁機構 11が故障していると判定されたときに「1」にセットさ れるものである。
[0133] このステップ 83の答が NOで、スロットル弁機構 11が正常であるときには、次式(12 ;)〜(15)に示す目標値フィルタ型 2自由度スライディングモード制御アルゴリズムによ つて、スロットル弁開度 THが目標スロットル弁開度 TH—cmdに追従 ·収束するように 、スロットル制御入力 Uthを算出した (ステップ 84)後、本処理を終了する。
[0134] [数 3]
k
Uth(k) = -Krch_th-a_th(k)-Kadp_th-∑ a_th(i) ( 1 2) i=0
a_th(k) = E_th(k)+pole_th-E_th(k-1) ( l 3)
E_th(k) = TH(k)-TH_cmd_f (k) ( 1 4)
TH_cmd_f (k) = -pol e— f— t h · TH_cmd_f (k- 1 ) + (1 + po I e_f_th)■ TH_cmd (k)
■■··· ( 1 5)
[0135] この式(12)にお!/、て、 Krch— thは所定の到達則ゲインを、 Kadp— thは所定の適 応則ゲインを表しており、 σ— thは、式(13)のように定義される切換関数である。ま た、式(13)において、 E— thは、式(14)により算出される追従誤差である。さらに、 式(14)において、 TH— cmd— fは、 目標スロットル弁開度 TH—cmdのフィルタ値で あり、式(15)に示す目標値フィルタアルゴリズム(一次遅れフィルタアルゴリズム)によ り算出される。
[0136] 一方、前記ステップ 83の答が YESで、 F— THNG= 1のとき、すなわちスロットル弁 機構 11が故障しているときには、スロットル制御入力 Uthを、前述した故障時用値 U th— fsに設定した (ステップ 85)後、本処理を終了する。これにより、前述したように、 スロットル弁開度 THが最小値 TH— Lに保持され、それにより、停車中はアイドル運 転やエンジン始動を適切に実行できると同時に、走行中は低速走行状態を維持する ことができる。
[0137] 一方、前記ステップ 80の答が YESで、当接開始フラグ F— contmod、保持フラグ F — pressmod、および第 2過電流判定フラグ F— Imot— emg2の!、ずれ力が「1」であ るとき、すなわち、短アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接し始めたとき、またはバ ルブリフト Liftinが最小値 Liftin Lに保持されているときには、アクセル開度 APお
よびエンジン回転数 NE力 アイドル判定用の所定値 AP— IDLEおよび所定値 NE _IDLEよりもそれぞれ小さ 、か否かを判別する(ステップ 86)。
[0138] この答が NOで、エンジン 3がアイドル以外の運転状態にあるときには、次式(16) 〜(19)に示す目標値フィルタ型 2自由度スライディングモード制御アルゴリズムによ つて、実吸入空気量 Gcylが図 10の前記ステップ 32、 38または 40で設定した目標吸 入空気量 Gcyl— cmdに追従 *収束するように、目標スロットル弁開度のリフト保持時 用値 TH— cmd— gcを算出する (ステップ 87)。次いで、目標スロットル弁開度 TH— cmdを、このリフト保持時用値 TH— cmd— gcに設定する (ステップ 88)した後、前記 ステップ 83以降を実行する。なお、実吸入空気量 Gcylは、前述した TH通過吸入空 気量 Gth、吸気管内絶対圧 PBA、および吸気温 TAを用いて、次式(20)により算出 される。
[0139] 画
k
TH_cmd_gc(k) = -Krch_gc-a_gc(k)-Kadp_gc-∑ a_gc(i) ( 1 6)
i=0
_gc (k) = E_gc (k) + po I e_gc - E_gc (k - 1 ) ( 1 7)
E_gc(k) = Gcyl (k)-Gcyl_cmd_f (k) ( 1 8)
Gcy I— cmd— f (k) = - po I e— f_gc · Gcy I _cmd_f (k-1)
+ (1+pole_f_gc) 'Gcyl— cmd(k) ( 1 9)
[0140] [数 5]
Gcy. (k) = Gth(k)- VB-[PBA(k ^BA(k-1)] ····· (20)
[0141] この式(20)において、 VBは吸気管内体積を表し、 Rは所定の気体定数を表してい る。また、上記式(16)において、 Krch— gcは所定の到達則ゲインを、 Kadp— gcは 所定の適応則ゲインを表しており、 σ— gcは、式(17)のように定義される切換関数 である。また、式(17)において、 E— gcは、式(18)により算出される追従誤差である 。さらに、式(18)において、 Gcyl— cmd— fは、目標吸入空気量 Gcyl— cmdのフィ ルタ値であり、式(19)に示す目標値フィルタアルゴリズム(一次遅れフィルタアルゴリ
ズム)により算出される。
[0142] 一方、前記ステップ 86の答が YESで、エンジン 3がアイドル運転状態にあるときに は、次式(21)〜(24)に示す目標値フィルタ型 2自由度スライディングモード制御ァ ルゴリズムによって、エンジン回転数 NEが所定の目標エンジン回転数 NE— cmd( 例えば 650rpm)に追従 *収束するように、 目標スロットル弁開度のアイドル時用値 T H— cmd— neを算出する(ステップ 89)。次いで、 目標スロットル弁開度 TH— cmdを 、このアイドル時用値 TH— cmd— neに設定した後(ステップ 90)、前記ステップ 83 以降を実行する。
[0143] [数 6]
k
TH_cmd_ne(k) = -Krch_ne- a_ne(k)-Kadp_ne-∑ a_ne(i) (2 1 ) i=0
σ_ηβ (k) = E_ne (k) + po I e_ne■ E_ne (k- 1) (2 2)
E_ne (k) = NE (k) -NE_cmd_f (k) (2 3)
NE_cmd_f (k) = -po I e_f— ne · E_cmd_f (k- 1) + (1 + po I e—f— ne) · NE_cmd (k)
····· (24)
[0144] この式(21)にお!/、て、 Krch— neは所定の到達則ゲインを、 Kadp— neは所定の 適応則ゲインを表しており、 σ— neは、式(22)のように定義される切換関数である。 また、式(22)において、 E— neは、式(23)により算出される追従誤差である。さらに 、式(23)において、 NE— cmd— fは、 目標エンジン回転数 NE— cmdのフィルタ値 であり、式(24)に示す目標値フィルタアルゴリズム(一次遅れフィルタアルゴリズム) により算出される。
[0145] 以上のように、バルブリフト Liftinが最小値 Liftin_Lになっているときには (ステツ プ 80: YES)、エンジン回転数 NEやアクセル開度 APに代表されるエンジン 3の運転 状態に応じて算出した目標吸入空気量 Gcyl— cmdに応じて、スロットル弁開度 TH が制御され (ステップ 87, 88および 84)、スロットル弁開度 THを主体とする吸入空気 量の制御が実行される。また、この吸入空気量の制御は、短アーム 65が最小リフトス トツパ 67aに当接し始めたと判定された直後 (ステップ 80: YES)に、開始される。した
がって、バルブリフト Liftinを主体とする吸入空気量の制御から、スロットル弁開度 T Hを主体とする吸入空気量の制御への移行を、その制御の中断を伴うことなぐ円滑 に行うことができる。
[0146] さらに、バルブリフト Liftinを主体とする吸入空気量制御の実行中には(ステップ 80 : NO)、これと並行して、スロットル弁開度 TH力 バルブリフト Liftinに応じて制御さ れる (ステップ 81, 82および 84)。このように、スロットル弁開度 THを主体とする吸入 空気量の制御を開始した時点では、スロットル弁開度 THがバルブリフト Liftinに適し た値にすでに制御されているので、この開始の際に、スロットル弁開度 THを急激に 大きく変化させることなぐその適正値に迅速に変化させることができる。これにより、 吸入空気量を滑らかに変化させることができるので、エンジン回転数 NEやエンジン 3 のトルクを段差なく滑らかに変化させることができる。
[0147] 以上のように、本実施形態によれば、リフト制御入力 ULiftin力 目標値フィルタ型 2自由度スライディングモード制御アルゴリズムにより算出されるので、 目標値フィルタ アルゴリズムにより、 目標バルブリフト Liftin— cmdへのバルブリフト Liftinの追従速 度を適切に設定することができるとともに、フィードバック制御アルゴリズムにより、 目 標バルブリフト Liftin— cmdへのバルブリフト Liftinの追従挙動を適切に設定するこ とができる。それにより、バルブリフト Liftinを、オーバーシュートの発生を回避しなが ら、 目標バルブリフト Liftin— cmdに精度良く追従させることができる。その結果、短 アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接する際の衝撃力を確実に低減することがで きる。
[0148] なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなぐ種々の態様で実施する ことができる。例えば、実施形態は、本発明を最小リフトストツバ 67aに適用した例で あるが、最大リフトストツバ 67bに適用してもよい。また、本発明を、規制部を最大側ま たは最小側に 1つ、あるいは 3つ以上有するタイプの可変バルブリフト機構に適用し てもよく、例えば、短アーム 65の移動範囲における最小リフトストッパ 67aと最大リフト ストッパ 67bとの中間位置に、出没可能なストッパを設けたものに適用してもよい。
[0149] さらに、実施形態では、可変吸気量機構として、スロットル弁機構 11を用いたが、吸 入空気量を変更できるものであれば、他の適当な機構を用いることもまた本発明の範
囲内である。また、実施形態は、バルブリフト Liftinが目標バルブリフト Liftin—cmd に追従するように、リフト制御入力 ULiftinを算出する所定の制御アルゴリズムとして 、 目標値フィルタ型 2自由度スライディングモード制御アルゴリズムを用 ヽた例である 力 所定の制御アルゴリズムはこれに限らず、バルブリフト Lif tinが目標バルブリフト L iftin— cmdに追従するようにリフト制御入力 ULiftinを算出できるものであればよ!、。 例えば、 PID制御アルゴリズムなどの一般的なフィードバック制御アルゴリズムを用い てもよい。
[0150] さらに、実施形態は、 2自由度制御アルゴリズムとして、 目標値フィルタ型 2自由度ス ライディングモード制御アルゴリズムを用いた例である力 2自由度制御アルゴリズム はこれに限らないことは言うまでもない。例えば、 2自由度制御アルゴリズムとして、 1 次遅れフィルタアルゴリズムなどの目標値フィルタアルゴリズムに、 PID制御アルゴリ ズムなどのフィードバック制御アルゴリズムを組み合わせたものを用いてもよ!、。
[0151] また、実施形態では、バルブリフト Liftinが最小値 Liftin— Lに保持されたと判定さ れた場合と、バルブリフト Liftinまたは目標バルブリフト Liftin— cmdが所定値 Liftin — stbよりも大き 、場合の!/、ずれにぉ 、ても、切換関数設定パラメータ POLE— Ifを 通常時用値 POLE— baseに設定した力 これに代えて、これを異なる値に設定して もよい。例えば、前者の場合には、バルブリフト Lif tinを最小値 Lif tin— Lに保持する ための駆動力はそれほど必要としないので、後者の場合よりも、切換関数設定パラメ ータ POLE— Ifを外乱抑制度合力 S小さくなるように設定してもよ 、。
[0152] さらに、短アーム 65が最小リフトストッパ 67aに当接したと判定された後に、切換関 数設定パラメータ POLE— Ifを外乱抑制度合が増大するように設定するために、バル ブリフト Liftinまたは目標バルブリフト Liftin— cmdと比較する判定値として所定値 Li ftin— stbを用いた力 これに代えて、最小値 Liftin— Lを用いてもよい。その他、本 発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
産業上の利用の可能性
[0153] 本発明の制御装置は、内燃機関において、良好なドライバピリティーを確保しなが ら、可変バルブリフト機構の可動部が規制部に当接する際の衝撃力を低減する上で 、極めて有用である。