明 細 書
TLR4-MD-2複合体を標的としたエンドトキシンショック治療剤 技術分野
[0001] 本発明は、 TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識する抗 TLR4— MD—2モノクロ ーナル抗体や、 TLR4— MD— 2複合体を標的とした、抗 TLR4— MD— 2モノクローナ ル抗体カゝらなるエンドトキシンショックの治療剤や、 TLR4— MD— 2複合体を標的とし た、抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体によるエンドトキシンショックの治療方法に 関する。
背景技術
[0002] リポポリサッカライド(LPS ;lipopolysaccharide)はグラム陰性菌細胞壁外葉の主たる 構成成分で、免疫担当細胞ばかりでなぐ血管内皮細胞、線維芽細胞など様々な細 胞の活性化を誘導する。つまり、生体は分子或いは細胞レベルで LPSを認識するこ とによって、グラム陰性菌の侵入を察知している。 LPSを認識しシグナルを伝達する 分子は、長い間検索されてきた結果、最近になってようやく明らかにされた。 30年程 前に見つ力つた C3H/HeJマウスは LPS低応答性を示すミュータントマウスである。 同様な LPS低応答性を示すマウスとして C57BLZlOScCrも報告されて!、たが、こ れらのマウスの原因遺伝子がポジショナルクロー-ングによって TLR4 (Toll-like receptor 4)であると同定された(例えば、 Poltrak, A. et al., Science, 282,
2085-2088, 1998、 Qureshi, S. et al, J. Exp. Med., 189, 615-625, 1999参照)。
[0003] TLR4は、ショウジヨウバエにおいて真菌を認識し感染防御を誘導する分子 Tollの ヒト及びマウスホモローグである(例えば、 Medzhitov R, et al., Nature, 388, 394-397, 1997参照)。長い間探し求められてきた LPS認識分子は、ハエ力 ヒトにま で保存されている病原体認識分子の 1つであることが確認された。し力しながら、 LP S認識は多くの分子が関与するプロセスで、 TLR4単独では説明できないことが明ら 力にされている。本発明者は TLR4の LPS認識を制御する分子として、 RP105、 M D— 1、 MD— 2などを報告してきた。
[0004] LPS認識機構と TLRs (TolHike receptors)の関係につ!ヽても解明されてきた。 LP
Sの活性中心はリピド Aと呼ばれ、 Nァセチルダルコサミン 2分子に脂肪酸が結合した ものである。リピド Aにコア抗原、さらに O抗原とよばれる糖類がつながったものが LP Sである。 LPSは低い濃度でもマクロファージ、 B細胞、榭状細胞、好中球、血管内皮 細胞、線維芽細胞など実に様々な細胞の活性ィ匕を誘導する。つまりこれらの細胞は LPSを認識することができる。 LPS認識機構は多くの分子が関わる複雑なプロセスで ある(例えば、実験医学 Vol.l9(2001)No.5, P81参照)。菌体上にある LPSはまず、血 清中の LPS結合タンパク質 (LBP)によって外膜から遊離され、もう一つの LPS結合 タンパク質である CD14へ単体の形で転送される。(例えば、 Wright, S. D. et al., Science, 249, 1431-1433, 1990、 Pugen, J. et al, Immunity, 1, 509-516, 1994参照)。
[0005] CD14は血清タンパク質として血中に、或いは細胞表面タンパク質として単球、マク 口ファージ上に存在している。 CD14ZLPS複合体は LPS単独の場合に比べて、 10 0— 10, 000分の 1の低い濃度で細胞の活性ィ匕を誘導する(例えば、 Wright, S. D., J. Immunol, 155, 6-8, 1995参照)。し力し、 CD14は細胞質内ドメインをもたないため に LPSシグナルを細胞内へそれ自身では伝達することができな 、。そこで LPSシグ ナルを細胞内へ伝達するための新たなレセプター分子の存在が指摘され、検索が続 けられていた。最近ようやくその LPSレセプターの実体が TLR4であると同定された。
[0006] ハエの Tollレセプターは、個体発生の際に腹側への分化誘導シグナルを伝達する レセプター分子として発見されたが、その後真菌感染を察知して感染防御反応を誘 導する役割をもっていることが報告された(例えば、 Lemaitre, B. et al, Cell, 86, 973-983, 1996参照)。更に、 Tollによく似た分子 TLR(TolHike receptor)をマウスや ヒトももっていることが 1997年に明らかにされ、その 1つである TLR4が長い間謎であ つた LPSZエンドトキシン認識分子であった。ところが、細胞株を用いた実験で、 TL R4単独では LPSを認識できな 、と 、う結果が報告された。
[0007] マウス IL 3依存性細胞株 BaZF3ゃヒト腎臓由来 293細胞株はそれ自身 LPSに 応答しないし、これらの細胞にヒト TLR4を発現させたトランスフエクタントも LPSに対 する応答性は認められな 、。その理由として LPS応答には TLR4にカ卩えて他の分子 が必要である可能性が考えられた。本発明者は, Radioprotective 105 (RP105)の細胞 外ドメインの LRR (leucine-rich repeat)が TLR4のそれとよく似て!/、ることに注目し、
v-myb regulated geneの 1つである MD— 1が RP105と会合するところから、 TLR4も MD— 1と会合するのではないかと考えた。し力しながら両方の遺伝子を細胞株に発 現させ、免疫沈降で共沈降できるかどうかを調べたが有意な会合は検出できなかつ た。そこで、 TLR4に会合する MD— 1類似分子の存在を想定し、データベースで検 索を行い、ヒト妊娠子宫由来の遺伝子を得ることに成功した (例えば、 Shimazu, R. et al., J. Exo. Med., 189, 1777-1782, 1999及び特開 2000— 262290号公報参照)。
[0008] この分子はアミノ酸 160個力もなり、 MD—1とアミノ酸で約 23%—致していることか ら、 MD— 2という名前をつけた。ヒト MD— 2をマウス IL— 3依存性細胞株 BaZF3に単 独で発現させても細胞表面には検出されな 、が、 TLR4と共発現させると細胞表面 で検出されるようになり、し力もその分布を共焦点レーザー顕微鏡で比較したところほ ぼ一致していた。さらに、抗ヒト TLR4モノクローナル抗体(HTA125)で TLR4を免 疫沈降すると、 MD— 2が共沈された。これらの実験結果から、 RP105— MD— 1と同 様に TLR4— MD— 2複合体も細胞表面上に発現していることが確認された。
[0009] TLR4— MD— 2複合体による LPS認識、シグナル伝達の機構を明らかにするため に、 TLR4の LPS認識における MD— 2会合の役割が検討された。
[0010] マウス IL 3依存性細胞株 BaZF3にヒト TLR4単独、或いは TLR4— MD— 2複合 体を発現させ、 LPS刺激による NF— κ B活性ィ匕を、予め BaZF3細胞株に導入して おいた NF—κ Bレポーター遺伝子を用いたルシフェラーゼアツセィで調べた結果、 T LR4単独では LPS刺激による NF—κ Bの活性化は検出されなかった力 TLR4— M D— 2複合体を発現した細胞株は LPS応答性を示した。そこで、 MD— 2を共発現させ ることによって、獲得された LPS応答が TLR4を介しているかどうかを確認するために 、 TLR4に対するモノクローナル抗体 (HTA125)をカ卩えたところ、 LPS刺激による N F— κ B活性ィ匕が特異的に阻害された。(例えば、実験医学 Vol.l9(2001)、 No.5、 P83 参照)。したがって、 TLR4— MD— 2複合体力 SLPSを認識し、シグナルを伝達してい ることが明らかになった。
[0011] 上記するようなこれまでの結果は、全て細胞株を用いた実験であり、正常細胞にお V、て TLR4— MD— 2の発現やその LPS認識にっ 、て検討する必要があった。本発 明者は新たに、マウス TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗
体(MTS510)の確立に成功した(例えば、 Akashi, S. et al., J. Immunol, 164, 3471-3475, 2000参照)。この抗体を用いて腹腔マクロファージを染色したところ、 TL R4— MD— 2複合体の発現が確認された。また、 LPS刺激で誘導される腫瘍壊死因 子(tumor necrosis factor :TNF)の産生をこの抗体は特異的に抑制した。更に、 LPS で腹腔マクロファージを刺激すると、細胞表面上の TLR4 - MD - 2複合体の発現が 低下した。この発現低下は ngZmlという低濃度の LPS刺激でもみられるが、ぺプチ ドグリカンなど他の病原体由来の物質による刺激では認められな力つた。また CD14 など他の細胞表面分子では同様な発現低下は認められず、 TLR4— MD— 2に特異 的な現象であった(例えば、 Nomura, F. et al., J. Immunol., 164, 3476-3479, 2000参 照)。
[0012] これらの結果から、 TLR4—MD— 2は正常マクロファージ表面上にも発現しており、 LPSの認識やシグナル伝達を司って!/、ることが明ら力となった。 TLR4や MD— 2はと もに広範に発現されており、マクロファージば力りでなぐ線維芽細胞や血管内皮細 胞など、非免疫担当細胞にぉ ヽても TLR4— MD— 2複合体力 SLPS認識にかかわつ ている可能性がある。
[0013] 以上のとおり、近年、グラム陰性菌細胞壁外葉の構成成分である LPSを認識してグ ラム陰性菌の進入を察知し、応答する機構における、 TLR4及びその会合分子であ る MD— 2の役割については、徐々にその解明が進んできた。し力し、これまでの結果 は、遺伝子や細胞レベルの実験を主とするものであり、今後は解析の方向として、 TL R4の病原体認識機構を更に分子レベルで明らかにするとともに、生体レベルの更な る解明が期待されていた。本発明者は、 MD— 2遺伝子を欠損したマウスを構築し、そ のマウスが LPSに全く応答しないことから MD— 2が生体レベルでも LPS応答に必須 の分子であることを確認した (例えば、特開 2003— 319734号公報参照)。
[0014] 抗生物質を中心とした今日までの感染症治療は、感染の現場である宿主自身の侵 入細菌に対する免疫防御反応や、加えられた抗生物質および死滅した細菌に対す る宿主の反応性に関しては全く考慮されて 、なかった。このような宿主自身の免疫力 を考慮しない一律的な投与は多くの耐性菌ゃ菌交代現象を生み出し、病院内での 敗血症による死亡へとつながって!/ヽつた。このことから宿主の免疫監視機能に基づ!/、
た治療法への変換が求められてきて 、る。
[0015] 近年ハエの Tollのヒトホモログである TLRが発見されてから、 Tollは種を越えて存 在する病原体監視システムであることがわ力つてきた。この免疫システムは生体にと つて最大の危険である LPS (エンドトキシン)をはじめとする病原体由来の糖脂質をい ち早く察知し排除するために専門化された自然免疫システムであるだけでなぐさら に獲得免疫発動へとつなげて 、く掛け橋の役目も果たすと!、うまったく新 、認識分 子群であった。病原体侵入により体内に入り込んできた LPSをどうやって生体が認識 し危険であると 、うシグナルを伝えるのかに関してこれまでほとんど分かって 、なかつ た力 本発明者らは TLR4の会合分子 MD— 2を発見し、 TLR4— MD— 2複合体とな つて初めて LPS応答性が獲得されることを、独自に作製したモノクローナル抗体を用 いた研究にて明らかにしてきた。
[0016] 本発明の課題は、 TLR4— MD—2複合体を特異的に認識する抗 TLR4— MD—2モ ノクローナル抗体や、 TLR4— MD—2複合体を標的とした、抗 TLR4— MD—2モノクロ ーナル抗体カゝらなるエンドトキシンショック治療剤や、 TLR4— MD— 2複合体を標的と した、抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体によるエンドトキシンショック治療方法を 提供することにある。
[0017] 本発明者らは、マウス TLR4— MD— 2に対する 2種類のモノクローナル抗体、 MTS 510と Sal 5— 21を作製した。これらのモノクローナル抗体は互 ヽに異なるェピトープ を認識する。 LPS刺激による B細胞増殖、マクロファージのサイト力イン産生を抑制す る効果は、両方のモノクローナル抗体を同時に加えたとき力 Sもっとも強ぐ次に MTS5 10が強ぐ Sal5— 21による抑制効果は最も弱力つた。次に、エンドトキシンショックの マウスモデルを用いて、この 2つのモノクローナル抗体、 CD14に対するモノクローナ ル抗体の効果を調べた。モノクローナル抗体投与 2時間後に LPSとガラクトサミンを 加えて、マウスの生存を調べたところ、モノクローナル抗体無投与、抗 CD14モノクロ ーナル抗体、 MTS510では全部 24時間以内に死亡したのに対して、 Sal5— 21を 投与したマウスは、全く死ななカゝつた。 LPSで誘導される血中の腫瘍壊死因子 (TNF , Tumor necrosis factor)や IL— 12を測定したが、 Sal5— 21では抑制効果は全く認 められな力つた。インビトロでの LPS応答で、最も抑制効果を示した MTS510と Sal
5— 21との同時投与も、 MTS510単独と同様にほとんどエンドトキシンショック抑制効 果はな力つた。これらの結果は、 TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識するモノクロ ーナル抗体 Sal5— 21によるエンドトキシンショック抑制効果は、 LPSの作用を単独 に遮断して 、るわけではなぐまったく新たな作用機構でエンドトキシンショックを防 ヽ でいる可能性が考えられた。本発明は以上の知見に基づき完成するに至ったもので ある。
発明の開示
[0018] すなわち本発明は、(1)インビトロでの LPS刺激による、 B細胞の増殖抑制効果及 びマクロファージにおける TNF産生抑制効果を示さず、かつ、エンドトキシンショック に対して抑制効果を有することを特徴とする TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識 するモノクローナル抗体や、(2)エンドトキシンショックに対して、 TNF産生を亢進す ることを特徴とする(1)記載の TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識するモノクロ一 ナル抗体に関する。
[0019] また本発明は、(3) (1)又は(2)記載の TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識する モノクローナル抗体を含有することを特徴とする TLR4— MD— 2複合体を標的とした エンドトキシンショックの予防.治療剤や、(4) (1)又は(2)記載の TLR4— MD— 2複 合体を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いることを特徴とする TLR4— MD —2複合体を標的としたエンドトキシンショックの予防'治療方法に関する。
[0020] さらに本発明は、(5)マウス TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識する抗マウス T LR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21や、(6)マウスにエンドトキシンショックを 生起させる前後に、マウス TLR4 - MD - 2複合体を特異的に認識する抗マウス TLR 4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21と被検物質とをマウスに投与し、マウスのェ ンドトキシンショックの程度を評価することを特徴とするエンドトキシンショック抑制作用 の促進物質又は抑制物質のスクリーニング方法や、(7) (1)—(5)のいずれか記載 の TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体を含有することを 特徴とする TLR4— MD— 2複合体を標的としたエンドトキシンショックの予防 ·治療剤 や、(8) (1)一 (5)の 、ずれか記載の TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識するモ ノクローナル抗体を用いることを特徴とする TLR4— MD— 2複合体を標的としたエンド
トキシンショックの予防 ·治療方法や、(9)マウスにエンドトキシンショックを生起させる 前後に、マウス TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識する抗マウス TLR4— MD— 2 モノクローナル抗体 Sal 5—21と被検物質とをマウスに投与し、マウスのエンドトキシン ショックの程度を評価することを特徴とするエンドトキシンショック抑制作用の促進物 質又は抑制物質のスクリーニング方法に関する。
図面の簡単な説明
[図 1]第 1図は、本発明の抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21が、マウス TLR4— MD— 2複合体に特異的な抗体であることを示す図である。
[図 2]第 2図は、本発明の抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21と、抗 TLR 4 MD— 2モノクローナル抗体 MTS510とが異なる抗原決定基を認識することを示 す、クロスブロッキングの結果を示す図である。
[図 3]第 3図は、本発明の抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21が、 LPS 刺激によるマウス脾臓細胞における増殖抑制効果を示さない結果を示す図である。
[図 4]第 4図は、本発明の抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21が、 LPS 刺激によるマウスマクロファージにおける TNF産生抑制効果を示さない結果を示す 図である。
[図 5]第 5図は、本発明の抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21が、マウス エンドトキシンショックに対して、レスキュー効果を示す図である。
[図 6]第 6図は、マウスエンドトキシンショックに対して、抗 CD14モノクローナル抗体が 全くレスキュー効果を示さない結果の図である。
[図 7]第 7図は、本発明の抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21が、 LPSと ガラクトサミン投与後 1時間にお 、て、 TNFの産生量を 10倍近く亢進して 、ることを 示す図である。
[図 8]第 8図は、本発明の抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21が、マウス TLR4— MD— 2複合体におけるマウス TLR4の N末端側の抗原決定基を認識するこ と、及び本発明の抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 TF904が、ヒト TLR4— MD— 2複合体におけるヒト TLR4の N末端側の抗原決定基を認識することを示す図である
発明を実施するための最良の形態
[0022] 本発明の TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体としては、 インビトロでの LPS刺激による、 B細胞の増殖抑制効果及びマクロファージにおける TNF産生抑制効果を示さず、かつ、エンドトキシンショックに対して抑制効果を有す るモノクローナル抗体、好ましくはエンドトキシンショックに対して、 TNF産生を亢進す るモノクローナル抗体、より好ましくは TLR4— MD—2複合体における TLR4の N末端 側の抗原決定基を認識するモノクローナル抗体であれば特に制限されるものではな く、かかるモノクローナル抗体は、ハイプリドーマ法(Nature 256, 495-497, 1975)、トリ ォーマ法、ヒト B細胞ハイプリドーマ法(Immunology Today 4, 72, 1983)、 EBV—ノヽィ ブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, pp.77- 96, Alan R.Liss, Inc., 1985)など任意の方法を用いて作製することができる。
[0023] また、一本鎖抗体をつくるために、一本鎖抗体の調製法 (米国特許第 4, 946, 778 号、米国特許第 5, 260, 203号、米国特許第 5, 091, 513号、米国特許第 5, 455 , 030号)を用いることができ、ヒト化抗体をつくるために、ヒト化抗体の調製法 (米国 特許第 5, 585, 089号、 Nature, 321, 522-525, 1986、 Protein Engineering, 4, 773-783, 1991)を用いることができ、キメラ抗体をつくるために、キメラ抗体の調製法( 米国特許第 4, 816, 567号、 Science, 229, 1202-1207, 1985、 BioTechniques, 4, 214, 1986、 Nature, 312, 643-646, 1984、 Nature, 314, 268.270, 1985)を用いること ができる。
[0024] 例えば、ハイプリドーマ法により本発明の TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識す るモノクローナル抗体を作製するには、ヒト、マウス等に由来する TLR4— MD— 2を細 胞表面に発現する細胞又はその細胞膜断片を感作抗原とし、カゝかる抗原を用いて、 由来抗原とは異種のマウス、ラット等の哺乳動物に公知の免疫法により免疫し、免疫 した動物力 得られる脾細胞等の免疫細胞とマウス等のミエローマ細胞とを公知の細 胞融合法により細胞融合させ、公知のクローユング技術により目的とするモノクローナ ル抗体産生ハイブリドーマをクローユングし、このハイプリドーマを培養することにより 作製することができる。上記ヒト、マウス等に由来する TLR4— MD— 2を細胞表面に発 現する細胞又はその細胞膜断片としては、例えば、 LPS刺激あるいは遺伝子導入に
より、ヒト、マウス等に由来する TLR4及び MD— 2を共発現させた細胞株やその細胞 膜断片を例示することができ、また、上記マウスのミエローマ細胞としては、 8—ァザグ ァニン耐性株を用いるのが有利であり、公知のものとしては、 BALB/Cマウスの P3 X 65Ag8株、 P3— NS1/1— Ag4— 1株、 P3 X 63AgUl株、 SP2Z〇Agl4株、 P3 X 63Ag8. 6. 5. 3株、 MPC11— 45. 6. TG1. 7株、 SP— 1株等を伊示すること力 S できる。
[0025] 上記細胞融合は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウィルス (HVJ) 等の融合促進剤の存在下に行われるが、融合効率を高めるためにジメチルスルホキ シド等の補助剤を使用することもできる。免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、 例えば、ミエローマ細胞に対して、免疫細胞を 1一 10倍程度とするのが好ましい。ま た、細胞融合に用いる培地としては、例えば、ミエローマ細胞株の増殖に好適な RP Ml— 1640培地、 MEM培地等のこの種の細胞培養に使用される通常の培地が使用 することができる。細胞融合は、免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培地内 でよく混合し、予め 37°C程度に加温した PEG溶液、例えば、平均分子量 1, 000— 6 , 000程度の PEGを、通常、培地に約 30— 60% (WZV)の濃度で添カ卩し、混合す ることによって行われる。続いて、適当な培地を逐次添加し、遠心して上清を除去す る操作を繰り返すことにより目的とするモノクローナル抗体を産生するハイプリドーマ を作出することができる。
[0026] クローンィ匕されたノ、イブリドーマから、本発明のモノクローナル抗体を採取するには 、当該ノ、イブリドーマを常法に従って培養し、その培養上清力も得る方法や、あるい はハイブリドーマをこれと適合性のある哺乳動物に投与して増殖させその腹水力 得 る方法などを例示することができる。こうして得られたモノクローナル抗体は、了フィニ ティークロマトグラフィー、塩析、ゲル濾過等の通常の精製手段を用いることにより高 純度に精製することができる。
[0027] 本発明の TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体には、本 発明の抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体のほ力 便宜上当該抗体の Fab断片や F (ab')断片等も含まれ、例えば、 Fab断片は抗体をパパイン等で処理することにより
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、また F (ab')断片はペプシン等で処理することにより調製することができる。
[0028] また上記抗 TLR4—MD— 2モノクローナル抗体に、例えば、 FITC (フルォレセイン イソシァネート)又はテトラメチルローダミンイソシァネート等の蛍光物質や、 125i、 32P、
"C、 35S又は3 H等のラジオアイソトープや、アルカリホスファターゼ、ペルォキシダー ゼ、 j8—ガラクトシダーゼ又はフィコエリトリン等の酵素で標識したものや、グリーン蛍 光タンパク質 (GFP)等の蛍光発光タンパク質などを融合させた融合タンパク質を用 いること〖こよって、上記 TLR4— MD— 2複合体の機能解析を行うことができる。また免 疫学的測定方法としては、 RIA法、 ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法 、血球凝集反応法、ォクタ口-一法等の方法を挙げることができる。
[0029] 本発明の TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体として、具 体的には、マウス TLR4— MD— 2複合体におけるマウス TLR4の N末端側の抗原決 定基を特異的に認識する抗マウス TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21や、 ヒト TLR4の N末端側の抗原決定基を特異的に認識する抗ヒト TLR4モノクローナル 抗体 TF904を挙げることができる。モノクローナル抗体 Sal5— 21は、 LPS (リピド A) であら力じめ刺激しておいたマウスの TLR4— MD— 2複合体を発現する正常ラット腎 臓細胞を用いて、ラットの脚パッドにおいて免疫し、 1週間後、リンパ節から得た免疫 細胞と SP2Z0ミエローマ細胞とを融合させ、その培養上清力 マウスの TLR4— MD 2を発現するマウス IL 3依存性細胞株 BaZF3と特異的に反応するハイブリドーマ を選択し、例えば、この選択したハイプリドーマをヌードマウスの腹腔に投与し、得ら れた腹水力も力プリル酸を用いて精製することにより、モノクローナル抗体 Sal5— 21 を得ることができる。またモノクローナル抗体 TF904は、 LPS (リピド A)であら力じめ 刺激しておいたヒト TLR4-MD-2複合体を発現するマウス IL-3依存性細胞株 Ba ZF3を用いてマウス腹腔に 3回免疫したのち脾臓力も得た免疫細胞と SP2Z0ミエ口 一マ細胞とを融合させ、その培養上清力 ヒトの TLR4— MD—2を発現するマウス IL 3依存性細胞株 BaZF3と特異的に反応するハイブリドーマを選択し、例えば、この 選択したノ、イブリドーマをヌードマウスの腹腔に投与し、得られた腹水力も力プリル酸 を用いて精製することにより、モノクローナル抗体 TF904を得ることができる。なお、 モノクローナノレ抗体 TF904産生ノヽイブリドーマ (Mouse anti-human hybridoma TF904)は、 2004年 9月 7日に受領番号 FERM 八 ?—10118として、国際寄託当
局である独立行政法人産業技術総合研究所 特許性物寄託センターに受託されて いる。
上記抗マウス TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21と同様なェピトープ、 すなわち TLR4— MD— 2複合体における TLR4の N末端側の抗原決定基を特異的 に認識するヒト型モノクローナル抗体、例えば抗ヒト TLR4モノクローナル抗体 TF90 4を用いると、全く新しいタイプのエンドトキシンショックの予防 ·治療方法が可能となる
[0030] すなわち、本発明の TLR4—MD— 2複合体を標的としたエンドトキシンショックの予 防'治療剤は、カゝかる本発明のヒト型抗ヒト TLR4モノクローナル抗体、例えば抗ヒト T LR4モノクローナル抗体 TF904を含有するものであり、本発明の TLR4—MD— 2複 合体を標的としたエンドトキシンショックの予防'治療方法は、力かる本発明のヒト型抗 ヒト TLR4モノクローナル抗体、例えば抗ヒト TLR4モノクローナル抗体 TF904を用い ることを特徴とする。
[0031] 上記本発明の TLR4— MD— 2複合体を特異的に認識するモノクローナル抗体、例 えば抗マウス TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21や抗ヒト TLR4モノクロ一 ナル抗体 TF904を用いると、エンドトキシンショック抑制作用の促進物質や抑制物質 を有利にスクリーニングすることが可能になる。例えば、マウスに、モノクローナル抗 体 Sal5— 21を腹腔内投与し、 2時間後にガラ外サミンと LPSを腹腔内投与してェン ドトキシンショックを誘導し、マウスの生存数をモノクローナル抗体 Sal5— 21未投与 の対照と比較することにより、あるいは、マウスに、モノクローナル抗体 Sal 5—21を腹 腔内投与し、 2時間後にガラ外サミンと LPSを腹腔内投与し、 LPSとガラ外サミン投 与後 1時間の血中の TNFを ELISAで測定し、血中 TNF濃度を Sa 15— 21未投与の 対照と比較することにより、エンドトキシンショック抑制作用の促進物質や抑制物質を 有利にスクリーニングすることができる。
[0032] 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこ れらの例示に限定されるものではない。
実施例 1
[0033] (試薬、マウス)
大腸菌由来のリポ多糖 (LPS)、サルモネラ 'ミネソタ由来のリピド A、 D ガラクトサミ ンは Sigma (St. Louis, MO)から購入した。マウスは日本 SLCから BALB/cマウス(5 —10週齢で使用)を購入した。ハイプリドーマ増殖用の ICR ヌードマウス (CD— 1 (I CR) -nu)は、 日本チャールズリバ一より購入した。
[0034] (モノクローナル抗体の構築)
マウス TLR4— MD— 2、ヒト TLR4—MD— 2及び CD 14に対するモノクローナル抗体 を構築した。免疫源として用いる、マウス TLR4とマウス MD— 2、並びにマウス CD14 を共発現する正常ラット腎臓細胞と、ヒト TLR4とヒト MD— 2を共発現するマウス IL 3 依存性細胞株 BaZF3とを文献(Current Protocols in Molecular Biology, 9.3.1)記載 の方法に準じてそれぞれ作製した。 1 μ g/mlのリピド Αであら力じめ刺激しておいた 、マウス CD14及びマウス TLR4— MD— 2を発現する正常ラット腎臓細胞ラットの脚パ ッドにおいて免疫し、 1週間後、リンパ節から得た免疫細胞と SP2Z0ミエローマ細胞 とを融合させ、その培養上清力 マウスの TLR4— MD— 2又は CD14を発現するマウ ス IL-3依存性細胞株 BaZF3と特異的に反応するハイプリドーマを選択し、抗マウス TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 21及び抗マウス CD14モノクローナル抗 体 Sa2— 8 (ラット IgG2aZk)を得た。またモノクローナル抗体 TF904は、 LPS (リピド A)であらかじめ刺激してお!、たヒト TLR4—MD— 2複合体を発現するマウス IL—3依 存性細胞株 BaZF3を用いてマウス腹腔に 3回免疫したのち脾臓力も得た免疫細胞 と SP2Z0ミエローマ細胞とを融合させ、その培養上清力 ヒトの TLR4—MD— 2を発 現するマウス IL 3依存性細胞株 BaZF3と特異的に反応するハイプリドーマ (Mouse anti-human hybridoma TF904;FERM ABP— 10118)を選択し、抗ヒト TLR4モノ クローナル抗体 TF904を得た。また、これらモノクローナル抗体は、選択したハイブリ ドーマを ICRヌードマウス(CD— 1 (ICR)— nu、 日本チャールズリバ一より購入)の腹 腔に投与し、得られた腹水力 力プリル酸を用いて精製した。
[0035] (エンドトキシンショックの誘導)
マウスに D—ガラクトサミン 25mgと LPS500ngを腹腔に投与し、その生存を経時的 にモニターした。各モノクローナル抗体は D—ガラクトサミンと LPSの併投与の 2時間 前に腹腔に投与した。
[0036] (B細胞精製、活性化)
マウス脾臓 B細胞は Dynaビーズ (DYNAL)に抗 CD43抗体 S7をつけたものを用 いて T細胞を除去することで精製した。精製した B細胞は 96穴プレートに 2 X 105/ゥ エルで蒔き、 LPSで刺激した。培養 3日目にトリチウム標識のサイミヂンを加え、 6時 間皿に培養した後にその DNAをグラスフィルターに回収し、取り込まれたトリチウム のカウントを測定することで、増殖反応を測定した。
[0037] (サイト力イン産生)
サイト ·イン産生を、 ELIS A (Enzyme- linked lmmunoadsoroent assay)は Biosource Internationalのキットを用いて測定した。
[0038] (細胞の染色)
細胞は抗体で染色した後にフローサイトメーター(ベタトンディッキンソン、 FACScan )を用いて解析した。
[0039] (Sal5— 21はマウス TLR4— MD— 2複合体に特異的な抗体である)
マウス TLR4— MD— 2に対する新たに確立した抗体 Sa 15— 21抗原特異性を調べ た。 TLR4— MD— 2及び TLR4— MD— 2をそれぞれ発現した細胞株 BaZF3を、モノ クローナル抗体 Sal5— 21を用いて染色した後、フローサイトメーターを用いて解析し た。結果を図 laに示す。図 laにおいて、白抜きのヒストグラムは Sal5— 21をカ卩えて Vヽな 、サンプルの結果を示す。 TLR4 (上段)及び MD— 2 (中段)を発現する細胞に おいては、 Sal5— 21抗体による染色は認められなかった力 TLR4—MD—2 (下段) を発現させた細胞株の表面のみが Sal5— 21抗体で染色され、モノクローナル抗体 S a 15— 21が TLR4— MD— 2複合体に特異的な抗体であることを確認した。
[0040] 次に、 TLR4、 TLR4— MD— 2、 CD14と TLR4、 CD14と TLR4— MD— 2をそれぞ れ発現する細胞株 BaZF3をフラッグに対する抗体 (上段)、あるいは Sal5— 21 (下 段)で免疫沈降し、電気泳動後、沈降した TLR4を TLR4に対するポリクローナル抗 体で検出した。結果を図 lbに示す。これら免疫沈降の結果は、モノクローナル抗体 S al5— 21が TLR4— MD— 2複合体に特異的な抗体であることを示している。
[0041] (抗マウス TLR4— MD—2抗体、 MTS510と Sal5—21はそれぞれ異なる抗原決定 基に結合する)
本発明者らが、すでに確立して 、る抗マウス TLR4— MD—2モノクローナル抗体 M TS510と、今回新しく確立した抗マウス TLR4— MD— 2モノクローナル抗体 Sal5— 2 1とが、認識する抗原決定基の異同を、 TLR4— MD— 2を発現する細胞表面でのクロ スブロッキング(cross- blocking)〖こより調べた。前処理なし(上段)、あるいは MTS 51 0 (中段)か Sal5— 21 (下段)で前処理した、 TLR4-MD-2を発現する細胞株 BaZ F3を、ピオチン化した MTS510 (左)又は Sal5— 21 (右)で染色した。結果を図 2に 示す。図 2において、白抜きのヒストグラムはピオチン化抗体を加えていないサンプル の結果を示す。どちらのモノクローナル抗体も互 、の結合を前処理でブロックできな V、ことから、互いに異なる抗原決定基を認識して 、ることがわ力つた。
[0042] (LPS刺激によるマウス脾臓細胞増殖に対する抗体の効果)
インビトロでの LPS応答に対する Sa 15-21の影響を調べるために、 LPS刺激によ る B細胞の増殖を調べた。 B細胞をリピド A(lOOngZml)存在下又は非存在下で培 養し、 B細胞に取り込まれたトリチウムのカウントを測定することで、その増殖を測定し た。結果を図 3に示す。リピド A非存在下で培養した場合、脾臓 B細胞の増殖は誘導 されなかった。 LPS刺激による B細胞増殖の抑制は、 Sal5— 21単独では認められな かったが、 MTS510単独では弱い抑制効果が認められた。また、 MTS510と Sal5 —21の併用で最も強 、抑制効果が認められた。
[0043] (LPS刺激による、マウスマクロファージ細胞の TNF産生に及ぼすモノクローナル抗 体の効果)
インビトロでの LPS応答に対する Sa 15-21の影響を調べるために、 LPS刺激によ るマウスマクロファージ細胞(RAW264. 7)における TNF産生量を調べた。リピド A( IngZml)でマクロファージ細胞を刺激し、又は刺激せず、その上清中の TNFを ELI SAで測定した。結果を図 4に示す。リピド Aで刺激しなカゝつた場合、マウスマクロファ ージによる TNF産生はほとんど認められなかった。 LPSでマウスマクロファージを刺 激した場合、 Sal5— 21や MTS510それぞれ単独ではそれほどの TNF産生抑制効 果は認められなかった力 MTS510と Sal5— 21の併用や MTS510と抗 CD14抗 体の併用で、マウスマクロファージによる TNF産生抑制効果が認められた。
[0044] (マウスエンドトキシンショックに対する抗体の効果 1)
インビボにおける抗 TLR4—MD— 2モノクローナル抗体の効果を明らかにするため に、エンドトキシンショックをガラクトサミンと LPSで誘導し、抗体の効果を調べた。マウ ス一匹あたり抗体 100 gずつ腹腔内投与し、 2時間後にガラクトサミン 25mgと LPS 500ngを腹腔内投与してエンドトキシンショックを誘導し、マウスの生存数の経時変 化により、マウスエンドトキシンショックに対する抗体の効果を調べた。結果を図 5に示 す。 MTS510、 MTS510と Sal5— 21の併用など、 LPS抑制効果がインビトロで認 められた抗体ではわずかなレスキュー効果しか認められなかった。しかしながら LPS 抑制効果のない Sal 5—21単独投与で、すべてのマウスがエンドトキシンショックから 救われることがわかった。
[0045] (マウスエンドトキシンショックに対する抗体の効果 2)
CD14に対する抑制効果もエンドトキシンショックを抑制する効果があることが報告 されている。そこでインビボにおける抗 CD14モノクローナル抗体の効果を明らかに するために、エンドトキシンショックをガラクトサミンと LPSで誘導し、抗体の効果を調 ベた。マウス一匹あたり抗体 100 /z gずつ腹腔内投与し、 2時間後にガラクトサミン 25 mgと LPS500ngを腹腔内投与してエンドトキシンショックを誘導し、マウスの生存数 の経時変化により、マウスエンドトキシンショックに対する抗体の効果を調べた。結果 を図 6に示す。その結果、抗 CD14モノクローナル抗体は、全くレスキュー効果を認 めなかった。
[0046] (ガラクトサミンと LPS投与一時間後のマウス血清中の TNF産生)
抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体によるエンドトキシンショック抑制効果の作用 機序を明らかにするために、 LPSとガラクトサミン投与後 1時間の血中の TNFを測定 した。マウスに、 Sal5— 21を腹腔内投与し、 2時間後にガラクトサミンと LPSを腹腔内 投与し、 LPSとガラクトサミン投与後 1時間の血中の TNFを ELISAで測定した結果 を図 7に示す。インビトロでの LPS刺激によるマウスマクロファージ細胞における TNF 産生の抑制は Sal5— 21でもほかの抗体でもほとんど認められなかった(図 4)力 ィ ンビボにおいては Sal5— 21のみが TNFの産生量を 10倍近く亢進していることがわ かった。
[0047] これらの結果は、 TLR4— MD— 2に対する抗体 Sal 5—21がエンドトキシンショックを
はじめ、 LPSが関与する疾患の治療に有効であることを示している。またその作用機 序は単なる LPS応答の抑制ではなぐまつたく新たな機序によることが予想される。
[0048] (抗 TLR4— MD— 2モノクローナル抗体の抗原決定基)
抗マウス TLR4— MD— 2抗体 Sa 15— 21及び MTS 510の抗原決定基、並びに抗ヒ ト TLR4— MD—2モノクローナル抗体 TF904の抗原決定基のロケーションについて 調べた。 293T細胞株(human kidney cell-line with T- antigen)に、リポフエクタミン( lipofectamine)により TLR4及び MD— 2を一過性にトランスフエクシヨンした細胞を用 いて各抗体で染色した結果を図 8に示す。図 8中、最上段は(1)マウス TLR4全長及 びマウス MD— 2を、 2段目は(2)マウス TLR4N末端側 ·ヒト TLR4C末端側キメラ cD NA (Cytoplasmic deleted)及びマウス MD— 2を、 3段目は(3)ヒト TLR4N末端側 ·マ ウス TLR4C末端側キメラ cDNA (Cytoplasmic deleted)及びマウス MD— 2を、 4段目 は(4)ヒト TLR4全長及びヒト MD— 2を、それぞれトランスフエタトした結果を示して!/ヽ る。 Sal5— 21及び MTS510はピオチン化抗体で、 TF904はハイブリドーマ上清を 用いて染色した。
[0049] 図 8において、白抜きのヒストグラムは、モノクローナノレ抗体 Sal 5— 21、 MTS510、 T F904を加えて!/ヽな 、サンプルの結果を示す。抗マウス TLR4— MD— 2モノクローナ ル抗体 Sal5— 21は、上記(1)及び(2)と反応し、(3)及び (4)とは反応しないことか ら、マウス TLR4— MD— 2複合体におけるマウス TLR4の N末端側の抗原決定基を 認識することがわかる。これに対して、抗マウス TLR4—MD— 2モノクローナル抗体 M TS510は、上記(1)及び(3)と反応し、(2)及び (4)とは反応しないことから、マウス T LR4— MD— 2複合体におけるマウス TLR4の C末端側の抗原決定基を認識すること がわかる。また、抗ヒト TLR4モノクローナル抗体 TF904は、上記(3)及び (4)と反応 し、(1)及び(2)とは反応しないことから、ヒト TLR4の N末端側の抗原決定基を認識 することがゎカゝる。
産業上の利用可能性
[0050] 本発明によると、 TLR4—MD— 2に対するモノクローナル抗体をあら力じめ投与して おくと、 LPSによるエンドトキシンショックを回避できる。 LPSレセプターに対するモノ クローナル抗体がエンドトキシンショックを回避できるという知見は抗体による治療法
となるとともに、抗体によるエンドトキシンショック回避機構を解析することで、従来考 慮されなかった新たなエンドトキシンショック治療の標的分子の同定につながることが 期待される。さらには免疫賦活剤である LPSの認識防御機構の解析が生体内免疫 賦活機構の解明に直結することから、免疫監視の基盤とその維持 ·制御と 、う当領域 の研究に資することができる。
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A2U-05PCT
PCT
紙面による写し(注意:電子データが原本となります)
[この用紙は、国際出願の一部を構成せず、国際出願の用紙の枚数に算入しない]
1 下記の表示は癸明の詳細な説明中に記載
された微生物又は生物材料に関連している
1-1 段落番号 0029
寄託の表示
寄託機関の名称 I P0D 独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄 託センター(I P0D)
寄託機関のあて名 〒305-8566 日本国茨城県つくぱ市東 1丁目 1番地 1 中央第 6
寄託の B付 2004年 09月 07日 (07. 09. 2004)
受託番号 I P0D FERM ABP-10118
1-5 この表示を行うための指定国 すべての指定国 受理官庁記入欄
0-4 この用紙は国際出願とともに受理した
(はい/いいえ)
0-4-1 権限のある職員 国際事務局記入欄
0-5 この用紙が国際事務局に受理された日
0-5-1 権限のある職員
替え用 ¾ (幾則 26)