明細書
スパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸およびその製造方法
技術分野
本発明は、 スパン糸が有するような毛羽や嵩高性を有し、 織物にしたとき柔ら かでしっとりした高級な手触り感を有する合成繊維マルチフィラメント糸条から なる加工糸およびその製造方法に関する。
背景技術
従来、 スパン糸が有するような毛羽や嵩高性を合成維維マルチフィラメント糸 条に付与することを試み、 フィラメント糸を毛羽加工した糸の提案が多数ある。 従来の毛羽加工したフィラメント糸は、 マルチフィラメント糸条をブレードで擦 過しながら、 仮ヨリ加工または撚糸する方法により得られるものがあるが、 この 方法はブレードが経時的に磨耗するため、 糸長手方向における毛羽数や糸強力が 経時的に変化して糸筋が不均一になるという欠点があった。
このような不均一性を解決する毛羽加工したフィラメント糸として、 特開平 3 - 6 4 5 4 6号公報は、 下ョリと上ョリを施したマルチフィラメント糸条をガイ ドに卷きかけ、 このガイ ドに向かう往路側の糸条と復路側の糸条とを交錯させて 両糸条に捩りとしごきとを与えることにより毛羽加工する方法を提案している。 しかし、 この方法によって得られた毛羽糸は、 上述した糸長手方向における毛 羽数および糸強力の経時的変化を改善できるものの、 毛羽長さが 1 m m以下と短 いため嵩高性が十分でなく、 織物にしたときに柔らかでしっとりした高級な手触 り感を得ることはできなかった。 また、 下ヨリと上ヨリを施した後のマルチフィ ラメント糸条に対して交錯処理を行っているため、 十分に高い糸強度を得ること ができなかった。
また、 上述した従来の毛羽加工したフィラメント糸を縫糸として用いた場合に は、 次のような問題があった。
従来より、 木綿縫糸は可縫性に優れ、 家庭用縫糸ばかりでなく、 工業用縫糸と しても広く使用されている。 しかし、 強力が弱く、 染色堅牢度も十分でない。 さ らには、 寸法変化を受けやすく縫い目の仕立て映えが悪いなどの欠点を有する。 一方、 鏠糸市場の半分以上のシェアを占めるポリエステルスパン縫糸は木綿に近 い可鏠性を有し、 強力、 染色堅牢度や寸法安定性も良好であるが、 紡績糸から製 造されるため、 太さのバラツキが大きく、 ノッ 卜が存在するなど品質上の問題が ある。 さらには、 高級衣料の縫製には外観不良のため使用されていないのが現実
である。
一方、 絹ゃポリエステル、 ポリアミ ドのフィラメント糸から製造される縫糸は、 木綿ゃポリエステルスパン鏠糸の欠点をカバーする縫糸として広く使用されてい る。 従来のフィラメント鏠糸は下ョリを施した単糸を複数本引き揃えて上ョリを 施すことで製造され、 その単糸の繊度と鏠糸の総繊維繊度に応じた物理特性が得 られ、 安定した品質を有する。
しかし、 従来のフィラメント縫糸は、 通常の縫製すなわち本縫いミシンでの前 進縫いでは問題なく縫製できるが、 後進縫いでは縫糸の上ヨリが解撚される方向 の力が加わるため、 ヨリ割れが起こり糸切れし、 後進縫いの比率が高い自動機縫 製には適用できないという致命的欠点がある。 また、 工業用ミシンで高速縫製し た場合には、 フイラメント鏠糸の側面の摩擦抵抗が大きいことに起因するミシン 針の熱と生地に対する貫通抵抗のため、 糸切れを生じやすい。
そこで、 これら従来のスパン鏠糸ゃフィラメント縫糸の欠点を改良した鏠糸が いくつか提案されている。 フイラメン卜とスパンの芯鞘構造によるコア一縫糸が 特公昭 6 3 - 3 9 7 7号公報で提案され、 スパンとフイラメン卜の交撚による可 縫性を改良した縫糸が特開平 2— 3 3 3 4 1号公報で提案されている。 しかしな がら、 これらの縫糸は紡績工程を経るためノッ トゃ太さムラのある縫糸になり、 縫製中に糸切れしやすいという欠点を有する。
フイラメン卜に流体加工^施しループを付与させたスパン糸の様なフィラメン ト加工糸とすることにより可鏠性を改良することが、 特開平 2— 1 0 4 7 3 3号 公報、 特開平 5— 1 0 6 1 3 4号公報で提案されている。 しかし、 これらフィラ メン卜の加工糸からなる縫糸はスパンまたはスパンとフィラメン卜の混合縫糸に 比較し、 均質ではあるが高速可鏠性が不十分であり、 仕立て映えが悪いという問 題があった。
また、 従来の毛羽加工したフィラメント加工糸の欠点を改善すべく、 糸一糸自 己擦過処理を用いた毛羽加工により、 スパン糸のようなフィラメント加工糸を提 供することを、 本出願人は、 先に特開平 1一 2 7 2 8 4 0号公報、 特開平 2— 9 1 2 3 6号公報、 特開平 2 - 2 1 6 2 3 3号公報、 特開平 3 - 2 7 1 4 4号公報、 特開平 3— 6 4 5 4 6号公報、 特開平 4 - 9 1 2 4 5号公報で提案した。
しかし、 これらフィラメント加工糸は、 糸長て方向における毛羽の均一性を改 善することができたものの、 スパン糸のような毛羽や嵩高性を有するフィラメン 卜加工糸としては十分満足できるものではなかった。
本発明の目的は、 スパン糸が有するような毛羽や嵩高性を有し、 織物にしたと きに柔らかでしっとりした高級な手触りを与えることができるスパン糸のような 毛羽を有するフィラメント加工糸およびその製造方法を提供することにある。
発明の開示
上記目的を達成する本発明のスパンライク毛羽糸は、 次の構成を有する。
すなわち、 下ョリを有する複数本のマルチフィラメント糸条が引き揃えられて 上ョリが施され、 前記マルチフィラメント糸条を構成する単フィラメントの一部 が短繊維化され、 その短繊維の少なくとも一端が下ョリまたは上ョリにより拘束 されて糸条表面に毛羽として突出した毛羽糸であって、 前記毛羽が長さ 1〜 5 m mの毛羽 1 00〜4 00個/ /01、 長さ 1. 5~5 mmの毛羽 30個 / m以上から なり、 かつ糸条強度が 4. 7〜6 g/dであるスパン糸のような毛羽を有するフ イラメント加工糸である。
このように毛羽の長さが 1 ~ 5 mmであり、 かつその長さ 1. 5〜 5 mmの毛 羽を多数有するのでスパン糸が有するような毛羽や嵩高性を有し、 織物にしたと きに柔らかでしっとりした高級な手触り感を与えることができる。
また上記スパンライク毛羽糸の製造方法は、 次の構成を有する。
すなわち、 下ョリエ程で下ョリを与えたマルチフィラメント糸条を 2糸条以上 引き揃えてガイ ドに往復巻き掛け、 その往路側の糸条と復路側の糸条とを互いに 交錯させることにより捩りとしごきとを与えて毛羽加工し、 次いでこの毛羽加工 されたマルチフィラメント糸条を上ョリエ程において上ョリを掛けることを特徴 とするスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸の製造方法である。 このように下ョリを施した段階のマルチフィラメント糸条を 2糸条以上引き揃 えた状態で交錯処理し、 その後で上ヨリを施すようにしているので、 比較的長い 毛羽を与えやすくなると共に、 高い糸条強度を得ることができる。
本発明によるフィラメント加工糸は、 長さ 1〜 5 mmの毛羽が 1 00~4 00 個/ m、 長さ 1. 5〜5 mmの毛羽が 3 0個/ m以上と極めて多数であり、 かつ 糸強度が 4. 7~6 gZdと高く、 図 2の比較例 3に示したように、 通常のスパ ン糸が有するような毛羽や風合いに極めて近いものとなる。 そのため衣料用に供 した場合には、 柔らかく しっとりした手触りの高級な風合いを呈することができ る。
また、 スパン糸に比較して糸強度が高く、 糸筋が均一であることから、 縫糸ま たはミ シン糸用に供した場合には、 縫い目の強力が向上し、 縫い目が破れにく く
なるという利点を有する。
さらにまた、 このミシン糸はフィラメント糸からなる縫糸にもかかわらず、 自 動機縫製すなわち前進縫いだけでなく後進縫いも問題なくでき、 その上高速可縫 性にも優れた可縫性を有する鏠糸である。
図面の簡単な説明
図 1は、 本発明に係るスパン糸のような毛羽を有するフィ ラメ ン ト加工糸の一 例を示す模式図である。
図 2は、 本発明に係るスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸の一 例である実施例 1 (後述する実施例 1で得られるフィラメント加工糸) 、 従来の 毛羽加工したフィラメント加工糸である比較例 1 (後述する比較例 1で得られる フイラメント加工糸) 、 従来の毛羽加工したフィラメント加工糸の他の例である 比較例 2 (後述する比較例 2で得られるフィラメ ン ト加工糸) 、 およびスパン糸 (後述する比較例 3 ) について、 毛羽長と毛羽数の関係を示したものである。 図 3は、 ァップツイスタを用いた場合の本発明に係る製造方法の一例を示すェ 程図である。
図 4は、 本発明に係る製造方法における糸一糸自己擦過装置の一例を示す工程 図である。
図 5は、 ダウンツイスタを用いた場合の本発明に係る製造方法の一例を示すェ 程図である。
図 6は、 下ョリと上ョリを同一撚糸機上で連続的に実施する場合の本発明に係 る製造方法の一例を示す工程図である。
図 7は、 本発明に係るスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸の一 例の繳維長分布を示すものである。
図 8は、 本発明に係るスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸の他 の例の維維長分布を示すものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明に係るスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸は、 下ョリを 有する複数本のマルチフィラメント糸条に上ョリが施され、 前記マルチフィラメ ント糸条を構成する単フィラメントの一部が短繊維化され、 その短繊維の少なく とも一端が下ョリと上ョリにより拘束されて糸条表面に毛羽として突出した毛羽 糸であって、 前記毛羽が長さ 1〜 5 m mの毛羽 1 0 0〜4 0 0個 01、 長さ 1 . 5〜5 m mの毛羽 3 0個 Z m以上からなり、 かつ糸条強度が 4 . 7 - 6 g / dで
あるスパン糸のような毛羽を有するフィラメン卜加工糸である。
本発明に係るスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸の一例を図 1 に示した。 図 1において、 γ κ はスパン糸のような毛羽を有するフィ ラメ ン ト加 ェ糸を示し、 Υは下ヨリが施されたマルチフィラメント糸条を示し、 Α, Βはそ れぞれ毛羽を示す。
図 1において、 スパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸 Υ κ は、 下 ョリを有するマルチフィラメント糸 Υが、 複数本引き揃えられて上ョリが施され 撚り合わされた構成になっている。 各マルチフィラメント糸 Υは、 複数本の単フ イラメン卜から構成されるマルチフィラメントであり、 その単フィラメントの一 部が長手方向にランダムに切断されて短繊維化されている。 それら短繊維の端部 は下ョリゃ上ョリに拘束され、 一端が糸条表面に開放されて突出して毛羽 Αとな つてものや、 ループ状に糸条表面に突出して毛羽 Bとなっているものもある。 こ れら毛羽 A、 Bは、 いずれもクリンプをもたず、 実質的にス ト レートな形状にな つていることが好ましい。
毛羽糸 Υ κ の表面に突出する毛羽 Α、 Βは、 1〜 5 m mの長さを有する毛羽の 数が 1 0 0〜 4 0 0個/ mであり、 かつ 1 . 5〜 5 m mの長さを有する毛羽の数 が 3 0個 / m以上となっている。 このように毛羽糸 Υ κ が、 l〜5 m mの毛羽長 の毛羽が 1 0 0個/ m以上であり、 かつ長さ 1 . 5 ~ 5 m mの比較的長い毛羽が 3 0個 m以上というように多数存在していることにより、 先に特開平 3 - 6 4 5 4 6号公報で提案された従来の毛羽加工したフィラメント加工糸では得られな かつた、 一層スパン糸に近い極めて柔らかな手触り感のスパンライク風合いを呈 するものになる。
本発明に係るフィラメント加工糸の毛羽に関する特徴を、 図 2を用いて詳細に 説明する。
図 2は、 本発明に係るスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸の一 例である実施例 1 (後述する実施例 1で得られるフィラメント加工糸) 、 従来の 毛羽加工したフィラメント加工糸である比較例 1 (後述する比較例 1で得られる フイラメント加工糸) 、 従来の毛 ¾加工したフィラメント加工糸の他の例である 比較例 2 (後述する比較例 2で得られるフィ ラメ ン ト加工糸) 、 およびスパン糸 (比較例 3、 東洋紡株式会社製のスパン鏠糸、 C100 #60) について、 毛羽長と毛 羽数の関係を示したものである。
なお、 図 2は、 東レエンジニアリング社製の HA I RNESS COUNTER MODEL DT- 104
を用いて糸走行速度 6 0 m /分にて測定して得たものである。 図 2は、 横軸に示 された数値以上の長さを有する毛羽の総数が、 縦軸における毛羽数と表されてい る。
図 2からわかるように、 毛羽長 1 m m以上の毛羽数は、 比較例 3のスパン糸が 1 6 0個/ m、 本発明のフィラメント加工糸の一例 (実施例 1 ) が 1 4 0個/ m、 比較例 1および比較例 2は 3 0個 Z m以下のレベルである。 さらに、 毛羽長 1 . 5 m m以上の毛羽数は、 比較例 3のスパン糸、 および本発明例 (実施例 1 ) が 5 0個/ mであるのに対し、 比較例 1および比較例 2は 5個/ m以下となる。
すなわち、 本発明に係るフィ ラメ ン ト加工糸の毛羽の存在分布は、 図 2に示さ れるように、 毛羽長 1 m m以上の毛羽数がスパン糸に極めて近いものであるため、 フィラメント糸からなる加工糸でありながらスパン糸の有する風合いを呈するも のと考えられる。
なお、 ここでいう毛羽数とは、 前記したような端部が切断されて糸表面上に開 放されて突出している毛羽 (毛羽 Aのようなもの) 、 端部が糸表面上に現れない でループ状を形成している毛羽 (毛羽 Bのようなもの) 、 およびタルミを全て含 む数を総計したものをいう。 より具体的に言えば、 毛羽総数は東レエンジニアリ ング社製の HAI RNESS COUNTER MODEL DT- 104 を用いて糸走行速度 6 O m Z分にて 測定して得ることができるものである。
毛羽長 1〜 5 m mの毛羽の毛羽数が 1 0 0個/ m未満、 長さ 1 . 5〜 5 m mの 毛羽が 3 0個/ m未満になるとスパン糸のような風合いが得られなくなる。 また、 毛羽数が 4 0 0個/ mよりも多くなると、 織物または編物に用いた場合にはピリ ングの発生原因になったり、 縫糸として用いた場合には針の通りが不良になるな どの問題を発生するようになる。
このスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸 Υ κ は、 その毛羽が後 述する製造方法で説明するように、 マルチフィラメント糸条に下ョリエ程で付与 されているので糸強力が高く、 切断強度にして 4 . 7〜 6 g / dを有している。 このように高い糸強力を有するため、 特にミシン糸に用いたとき高速可縫性ゃ自 動縫製性を極めて良好にすることができる。
一般に、 毛羽加工してない高強力タイプのフィラメント糸 (下ヨリ、 上ヨリを 施したョリ糸) では切断強度にして 6〜 7 gノ dを有するが、 特にミシン糸に使 用したとき高速可縫性や自動縫製性は極めて不良になる。 この理由は、 毛羽を有 していないため糸一針間の摩擦抵抗が高く、 そのことによって針の発熱が高くな
り、 その熱で溶融が起こり糸切れが多発するからである。 なお、 本発明でいう強 度とは、 J IS L- 1073の規定により測定したものである。
本発明のスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸を構成する複数本 のマルチフィラメント糸は、 それぞれ単繊維繊度の同一のフィラメント群から構 成されている場合と、 単繊維繊度が異なる少なくとも 2種類のフィラメント群が 組み合わされて構成される場合とがある。
前者のマルチフィラメント糸の場合は、 毛羽加工によってフィラメント群が均 等に短維維化されるのに対し、 後者のマルチフィラメント糸の場合は、 単維維繊 度の小さいフィラメン卜群の方が選択的に短繊維化され、 単繊維繊度の大きいフ イラメント群はほとんど短繊維化されないという特徴がある。 そのため、 後者の マルチフィラメント糸の場合は、 単繊維繊度の小さいフィラメント群が主に短繊 維化されて毛羽数に、 単維維繊度の大きいフィラメント群が強力にそれぞれ作用 し、 毛羽数を多くかつ高い強力を保持することができる。
マルチフィラメント糸を、 単繊維繊度が異なる 2種類のフィラメント群で構成 する場合の例としては、 単繊維維度の小さいフィラメント群の単繊維繊度を 0 . 1 〜 1 . 5デニール、 単繊維維度の大きいフィラメント群の単繊維繊度を 3 . 5 ~ 1 0デニールの範囲にして組み合わせるとよく、 かつそれらのデニール差とし て 2デニール以上とすることが好ましい。
マルチフィラメント糸を構成するフィラメン卜の本数は、 十分な毛羽を発現せ しめることにより柔らかいしっとりとした手触りの風合いの織物または編物を得 る観点から、 マルチフィラメント糸 1本当たり 3 0本以上とすることが好ましく、 糸条表面においてネップの発生や糸面の乱れを防ぐ観点からマルチフィラメント 糸 1本当たり 3 0 0本以下とすることが好ましい。
本発明のスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸を構成するフィラ メント糸の素材としては、 合成繊維であれば特に限定されるものではないが、 好 ましくはポリエステル、 ナイロンなどの熱可塑性合成繊維フィラメント糸であつ て、 かつ低伸度の高強力タイプを使用するのがよい。
また、 マルチフィラメント糸の総繊維繊度としては 5 0 - 5 0 0デニールが好 ましい。 ミシン糸用の場合は、 マルチフィラメント糸の総繊維繊度として 1 0 0 〜 3 0 0デニール、 フイラメン卜の構成本数を 5 0〜 2 5 0本にすることが好ま しい。
単フイラメン卜の断面形状は円形が一般的であるが、 衣料用として用いる場合
には、 三角形、 Y形、 五角形、 中空、 扁平などの異形断面であってもよい。 また、 高光沢、 低光沢などの特殊な品種も用いることができる。
また、 マルチフィラメ ン ト糸の構成において、 少なくとも 2種類の単繊維繊度 の異なるフィラメント群からなる場合は、 短繊維化されるものと短繊維化されな いものとの糸強力差を、 前述のように単繊維繊度の差を設けて得るようにしても よいが、 単繊維繊度は同じで単フィラメン卜の素材や加工方法等により強力差あ るいは伸度差を設けたりして得るようにしてもよい。
単繊維維度の異なるフィラメント群は 2種または 3種が好ましいが、 4種以上 であっても差し支えない。 この単繊維繊度が異なる 2種以上のフィラメント群は、 生産性の観点から、 紡糸工程において、 同一ポリマーから同一口金で溶融紡糸さ れることが好ましいが、 単維維繊度の小さいフィラメント群と単繊維繊度の大き ぃフイラメント群とが別々に紡糸された後、 合糸されてなるものでも差し支えな い。
次に、 本発明のスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸の製造方法 について説明する。
下ョリを施したマルチフィラメント糸を複数本引き揃えてガイ ドに往復卷き掛 けるようにし、 そのガイ ドに向かう往路側の糸条と戻る復路側の糸条とを互いに 交錯せしめ毛羽加工を施し、 さらにこれらマルチフィラメント糸条に上ョリを施 すようにする。 特に、 下ヨリを施した糸条を複数本引き揃えた状態で強い捩りと しごきとを同時に与えて毛羽加工することが重要である。
下ヨリ工程で下ヨリを与えるための撚糸機として、 アップツイス夕、 カバーリ ング機、 イタリ式撚糸機、 ダウンツイス夕、 ダブルツイスタなどと呼ばれる撚糸 機を使用することができる。 また、 これらの撚糸機を用いて毛羽加工する場合は、 下ョリを施した糸条をタテ取りあるいはョコ取りにより解除した糸条を複数本引 き出し、 それらを引き揃え中あるいは巻き取り前などの糸が走行する部分で実施 することである。
図 3は、 アップツイスタによって下ョリを施した糸条を 3糸条引き揃えて連続 的に毛羽加工する工程の一例を示す。 図 3において、 l a , 1 b, l cはボビン を、 2 a, 2 b, 2 cはスピンドルを、 3はベルトを、 4 a , 4 b , 4 cはフィ —ドローラを、 5はガイ ドローラを、 6はフィードローラを、 7はチーズを、 8 はテイクアップローラを、 9はガイ ドローラを、 1 0はピンを、 1 1はガイ ド口 ーラを、 Y a , Y b , Y cは下ヨリが施されたマルチフィラメント糸条を示す。
ボビンに巻き上げられたマルチフィラメント糸条 Y a, Y b, Y cは、 ボビン l a, l b, 1 cに巻かれてスピンドル 2 a, 2 b, 2 cに仕掛けられ、 ベルト 3により回転駆動されるようになつている。 スピンドルを回転させながらマルチ フィ ラメ ン ト糸条 Y a, Yb, Y cがボビン l a, l b, l cの軸方向に引き出 されると、 そのマルチフィラメント糸条 Y a, Y b, Y cにフィードローラ 4 a, 4 b, 4 cとの間で S方向または Z方向に下ヨリが加えられ、 次いで下ヨリが挿 入されたマルチフィラメント 3本のマルチフィラメント糸条 Y a, Yb, Y cは 引き揃えられながら上方のフィードローラ 6との間で緊張された状態で、 ガイ ド ローラ 5とピン 1 0で構成された糸一糸自己擦過装置により毛羽加工される。 図 4は、 本発明のスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸の製造方 法に用いられる糸一糸自己擦過装置の一例を示す外観図である。 Y。 は往路側の 糸条を、 Υ。 ' は復路側の糸条を、 Ρは糸条の交錯点を示す。
この毛羽加工は、 図 4に示すようにマルチフィラメント糸条 Y a, Y b, Y c をガイドローラ 5に往復卷き掛けるに当たり、 そのガイ ドローラ 5に向かう往路 側の糸条丫。 と戻る復路側の糸条丫。 ' とをピン 1 0において交錯せしめ、 その 交錯点 Pで両糸条 Υ。 , Υ。 ' に強い捩りとしごきとを与えるとき、 マルチフィ ラメン ト糸条 Y a, Yb, Y cを構成する単フィ ラメ ン ト群の一部を短繊維化し て毛羽を発生させるようにしている。
このようにして毛羽を発生したマルチフィラメント糸条 Y a, Yb, Y cはフ イードローラ 6からテイクアップローラ 8を介してチーズ 7に巻き上げられる (図 3参照) 。 このチーズ 7は、 次いで上ヨリ機に掛けられ上ヨリを施す。
毛羽加工は、 図 4に示すように、 糸自身が自ら擦過されるものである。 図 4に 示す例では、 往路側の糸条丫。 は復路側の糸条丫。 ' と図 4のように交錯するこ とにより約 90° の捩りが与えられ、 また復路側の.糸条丫。 ' にも往路側の糸条 Y o と交錯することにより約 90° の捩りが与えられる。 したがって、 マルチフ イラメント糸条が交錯点 Ρを往復して通過することにより、 合計して約 180° の捩りが与えられることになる。
また、 この毛羽加工において、 交錯点 Ρでの捩りとしごき作用を安定化させる には、 交錯点 Ρの内側に図 4に示すようなピン 1 0またはローラを配置すること が好ましく採用できる。 さらに好ましくは、 交錯点 Ρの供給側に図 4に示すよう な案内用のローラ 9またはピン、 および出側に案内用のローラ 1 1またはピンを 配置する。 出側のローラ 1 1またはピンを糸道を横切るように矢印方向に移動さ
せて、 糸の入り側と出側とのなす入出角 0を調整するようにすれば、 捩りとしご きの程度を変えることができ、 それによつて毛羽数を調整することができる。
この交錯による擦過処理をするときの張力としては、 復路側、 往路側とも 0. 3 g/d以上であることが好ましい。 また、 交錯によって付与する捩りは、 Θが 1 80° 以上、 好ましくは 3 60。 以上にすることである。 0力、' 1 8 0° 以上の 捩りを与えることによって、 糸条外周の半周以上を相手側の糸条と接触させて擦 過処理することができる。
交錯の捩り方向は S, Zいずれの方向であってもよいが、 毛羽数を多くする観 点から、 下ヨリ方向と同じ方向に捩りながら交錯することが好ましい。 また、 毛 羽長は下ョリ数を多く挿入すると短くなり、 少なく挿入すると長くすることがで きる。 このような調整により毛羽長さを 1〜 5 mmの範囲になるようにする。 このような擦過処理をするに当たり、 擦過による摩擦熱が大きく発生すること によるフィラメントの脆化、 削れ等による糸強力低下、 擦過部分の淡染化、 ある いは白紛発生を防ぎつつ、 生産性を向上させるという観点から、 糸走行速度は 3 ~ 1 00 mノ分とすることが好ましい。
図 5は、 ダウンツイスタを用いた場合の本発明に係る製造方法の一例を示すェ 程図である。 図 5において、 1 2はフィードローラを、 1 3は糸—糸自己擦過装 置を、 1 4はフィードローラを、 1 5はボビンを、 1 6はスピンドルを示す。 図 5において、 下ョリが施された巻取ボビンにいったん卷かれたマルチフィラ メ ント糸条 Y a, Y b, Y cは、 ョコ取り方法により解除され引き揃えられなが らフィードローラ 1 2に引き取られる。 次いで、 連続するフイードローラ 1 2, 1 4間で、 緊張状態下、 糸—糸自己擦過装置 1 3により毛羽加工を行うのである。 次いで、 この毛羽加工されたマルチフィラメント糸条 Y a, Yb, Y cは、 フィ 一ドローラ 1 4からボビン 1 5にスピンドル 1 6を回転させながら卷き取ること により、 本発明に係るスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸が得ら れる。
図 6は、 下ョリと上ョリを同一撚糸機上で連続的に実施する場合の本発明に係 る製造方法の一例を示す工程図である。 図 6において、 1 7 a, 1 7 b, 1 7 c はスピンドルを、 1 8はベルトを、 1 9はガイ ドを、 20はガイ ドを、 2 1はフ イードローラを、 22は糸一糸自己擦過装置を、 23はフィードローラを、 24 はボビンを、 25はベルトを、 26はスピンドルを示す。
図 6において、 ボビンに巻かれたマルチフィラメント糸条 Y a, Y b, Y cは,
ベルト 1 0に駆動されたスピンドル 1 7 a, 1 7 b , 1 7 cにより下ヨリが施さ れ、 糸条 Y a, Y b, Y cが引き揃えられながら、 ガイ ド 1 9 , 2 0を介してフ イードローラ 2 1に引き取られる。 連続するフイードローラ 2 1 , 2 3間で緊張 状態下、 糸一糸自己擦過装置 2 2により毛羽加工を行うのである。 この毛羽加工 されたマルチフィラメント糸条 Y a, Y b , Y cを、 フィードローラ 2 3からボ ビン 2 4にスピンドル 2 6をベルト 2 5の駆動により回転させながら巻き取るこ とにより、 本発明に係るスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸を得 ることができる。
本発明の製造方法において、 上ヨリを与える前の下ョリ工程で引き揃えられる 本数は 2本以上であればよいが、 2〜7本とすることが好ましく、 バランスをよ くする観点から、 衣料用では 2本、 ミ シン糸用には 3本あるいは 7本とすること がさらに好ましい。
また、 引き揃えるマルチフィラメント糸条の下ョリ数は互いに異なっていても よく、 また下ョリ方向が互いに異なっていてもよい。
上ョリ数と下ョリ数との関係は、 本発明のスパン糸のような毛羽を有するフィ ラメント加工糸にしたときのョリ トルクのバランスを保つようにョリ方向とョリ 数を設定することが好ましく、 下ヨリ方向と上ョリ方向とは互いに相反する方向 であって、 上ョリ数は下ョリ数の 6 0 %〜9 0 %にすることが好ましい。
本発明に係るフイラメント加工糸を縫糸またはミシン糸に用いる場合には、 縫 糸またはミシン糸としての収束性を良好として十分な可鏠性を得る観点から、 下 ョリ数をョリ係数として表すならばョリ係数 kが 4000以上を付与することが好ま しく、 一方、 縫糸またはミシン糸が硬くなることを防止するとともに燃加工費を 低減する観点から、 下ョリはョリ係数 kが 12000 以下となるよう付与することが 好ましい。 ここで、 ヨリ係数 kは T · D 1 / 2 ( T : 1 m当たりヨリ数, D :繊度) である。 下ヨリのヨリ係数 kが 7000〜1 1000 の範囲であることはより好ましい。 そして、 上ヨリは Z方向に下ヨリ数の 60〜90%とすることが好ましい。 通常、 縫 糸またはミシン糸は原糸を施撚後、 必要に応じてョリ止めセッ 卜され、 その後、 染色 ·仕上加工される。 染色は、 一般的には、 かせ巻きまたはチーズ形状で行わ れる。
本発明のフィラメント加工糸を用いてなる鏠糸またはミシン糸は、 番手すなわ ち縫糸の太さが特に限定されるものでないが、 衣料用としては、 # 8 0 ( 40デニ 一ルの三子ヨリ) , # 6 0 ( 50デニールの三子ヨリ) , # 5 0 ( 70デニールの三
子ヨリ) などが汎用縫糸またはミ シン糸として使用でき、 産業資材用途にこれよ り太いものが使用できる。 縫糸またはミシン糸を構成する原糸のフィラメント数 は単繊維の太さに応じて適宜設定すればよい。
実施例
なお、 実施例においてフィ ラメ ン ト加工糸の繊維長および本数の測定 (図 7、 図 8 ) は、 以下のようにして求めたものである。
すなわち、 長さ 300mm の鏠糸の中央一点を把持し、 縫糸のヨリを解撚 ·分解す る。 続いて、 把持されていない単繊維を引き抜き除去した。 一点を把持して残つ た単繊維を繊維の太さ別に 1本づっ並べ測長し 25議ごとに単繊維の長さと本数の ヒストグラムを作成した。
また、 実施例における縫糸の可鏠性の評価 (表 1 ) は、 次の評価結果を示すも のである。 なお、 表 1において比較例 3はスパン糸の縫糸 (東洋紡株式会社製の 鏠糸 C100 #60 ) 、 比較例 4は毛羽加工されていないフィラメン卜糸の縫糸 (東 レ株式会社製の縫糸 PET70D/3- 48f) を評価したものである。
( a ) バック縫性 (%) 対スパン糸
本縫いミ シン機を用いて木綿ブロード 4枚重ねを 4000spm でバック縫いし、 縫 糸が切れるまでの長さ (m ) についてスパン糸を 1 0 0としたときの比率 (%) で表した。 なお、 ここで使用したミ シン機は JUK I DLU-491 - 5、 ミ シン針はオルガ ン DB- 1 #1 1である。
( b ) 高速可鏠性 (%) 対スパン糸
本縫いミシン機を用いて木綿ブロード 8枚重ねを 4000spni で縫い上げ、 縫糸が 切れるまでの長さ (m ) についてスパン糸を 1 0 0としたときの比率 (%) で表 した。 なお、 ここで使用したミシン機は JUK I DLU-49卜 5、 ミシン針はオルガン DB- 1 #1 1である。
( c ) 縫製後の糸強力保持率 (%)
縫製後の縫糸を解きほぐし、 元糸に対する強力保持率を表した。
[実施例 1 ]
図 3に示すようなアップツイスタを使用する下ヨリ工程に従って、 7 . 5 g / dを有する高強力タイプのポリエステルマルチフィラメント糸 ( 7 0デニール一 4 8フィラメント、 単繊維繊度 1 . 4 6デニール) に、 S方向 9 6 6 T , mの下 ョリを施し、 この糸を 3糸条引き揃え ( 2 1 0デニール一 1 4 4フィラメント) 、 糸走行速度 1 0 m 分、 往路側 1 6 0 ~ 1 7 5 g、 復路側 4 0 0〜4 2 5 gの張
力下でガイ ドローラ 5に巻き掛け、 その往路側の糸条と復路側の糸条とを下ヨリ と同じ方向の S方向に交錯させることにより、 約 3 60° の捩りとしごきとを与 え毛羽加工した。
次いで、 得られた引き揃え状態にある 3糸条の毛羽糸をダウンツイスタにて Z 方向に 709 T, mの上ヨリを施してフィラメント加工糸を作製した。 このフィ ラメント加工糸の特性は次の通りであった。
毛羽長 l〜5mmの毛羽数 1 8 5個/ 01
毛羽長 1. 5〜5mmの毛羽数 6 0個/ ^
強力 1 1 20 g (強度 4. 9 g /' d )
上記した毛羽加工において、 フィラメントは、 図 7に示す緞維長および本数の ように、 48本とも短繊維化されていたが、 各短繊維の繊維長のフィラメント数 は比較的揃っていた。
得られたスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸を用いて平織物と したところ、 柔らかく しっとりとした高級な手触りの風合いを有する織物を得た。
—方、 このスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸をミシン糸用に 加工するため、 1 80ての乾熱処理を行った後、 ソフ トワイン ドしたチーズを高 圧チーズ染色しミ シン糸用のボビンに巻き返し仕上げた。 その結果、 ミシン糸用 のボビンにおける染め差は肉眼では認められなく、 さらに高速自動ミシン機によ る縫製性を評価したところ、 高速可縫性および自動縫製性は良好であり、 かつ縫 い上がりの縫い目の見栄えが良好であった。
表 1に可縫性の評価結果を示した。
[実施例 2]
毛羽数と強力の関係について、 実施例 1と同様のフィラメント糸を用いて、 下 ョリ数、 上ョリ数および糸走行速度を同一としフィードローラの緊張度合いのみ を変更して往路側の張力を 2 1 0〜238 g、 1 34〜 1 4 1 gにそれぞれ設定 して毛羽加工を行い、 スパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸を作製 した。 このフイラメント加工糸の特性は次の通りであった。
往路側の張力が 2 1 0〜 2 38 gのスパンライク毛羽糸
毛羽長 l〜5mmの毛羽数 3 9 5個/ m、
毛羽長 1. 5〜5mmの毛羽数 8 2個 01、
強力 990 g (強度 4. 7 g /' d )
往路側の張力が 1 34〜 1 4 1 gのスパンライク毛羽糸
毛羽長 1〜5 m mの毛羽数 1 0 5個, 01、
毛羽長 1 . 5〜5 m mの毛羽数 3 1個/ 01、
強力 1 2 6 9 g (強度 5 . 4 g / d )
このスパン糸のような毛羽を有するフィラメン卜加工糸を実施例 1と同様にミ シン糸として評価したところ、 いずれも高速可縫性および自動縫製性は良好であ りかつ縫い上がりの縫い目の見栄えが良好であった。
[実施例 3 ]
実施例 1と同様に、 図 3に示すようなァップツイスタを使用する下ョリ工程に 従って、 単繊維繊度の異なるフィラメン卜群からなるポリエステルマルチフィラ メント糸 7 0デニ一ルー 4 2フィラメント (単繊維繊度 6デニールのフィラメン ト力、' 6本、 単繊維繊度 1デニールのフィラメントが 3 6本) に S方向 9 6 6 T / mの下ヨリを施し、 この糸を 3糸条を引き揃えながら糸走行速度 1 O m 分、 往 路側 1 6 3〜 1 7 2 g、 復路側 4 1 0〜4 3 6 gの張力下でガイ ドローラに巻き 掛け、 その往路側の糸条と復路側の糸条とを S方向に交錯させることにより約 3 6 0度の捩りとしごきとを与え毛羽加工した。
次いで、 得られた毛羽糸をァップツイスタにて Z方向に 7 0 9 T / mの上ョリ を施してスパン糸のような毛羽を有するフィラメン卜加工糸を作製した。 このフ イラメント加工糸の特性は次の通りであった。
毛羽長 1〜 5 m mの毛羽数 2 1 2個/ m、
毛羽長 1 . 5〜5 m mの毛羽数 4 8個/ 01、
強力 1 2 4 0 g (強度 5 . 5 g d )
上記した毛羽加工において、 フィラメントは図 8に示すように、 分解した 1糸 条あたり単繊維維度 6デニールのフィラメントは 6本とも短繊維化されていなか つたが、 単繊維繊度 1デニールのフィラメントは 3 6本とも短繊維化されていた c 得られたスパン糸のような毛羽を有するフィラメント加工糸を用いて平織物と したところ、 柔らかく しっとりとした手触りと張り ·腰のある風合いを有する織 物を得た。
また、 このスパン糸のような毛羽を有するフイラメント加工糸をミ シン糸とし て評価したところ、 高速可縫性および自動縫製性は良好でありかつ縫い上がりの 縫い目の見栄えが良好であった。 なお、 実施例 2は実施例 1に比較して、 同一の 毛羽加工条件においては毛羽数が多く強力も高いものであった。
[比較例 1 ]
図 3に示すようなアップツイスタを使用する下ョリエ程に従って、 7 0デニー ル一 48フィラメン卜のポリエステルマルチフィラメント糸に、 S方向 9 6 6 T Zmの下ヨリを施し、 その糸を 3本引き揃え、 Z方向に 709 TZmの上ヨリを 施し、 糸走行速度 1 0 m ,分、 往路側 1 1 2 ~ 1 24 g、 復路側 290〜 3 20 gの張力下でガイ ドローラに卷き掛け、 その往路側の糸条と復路側の糸条とを S 方向に交錯させることにより、 約 36 0度の捩りとしごきとを与え毛羽加工して フィラメント加工糸を製造した。 このフィラメント加工糸の特性は、 図 2の比較 例 1に示す毛羽存在分布を有し、 次の通りであった。
毛羽長 l〜5mmの毛羽数 5個/ m、
毛羽長 1. 5〜5mmの毛羽数 0個/ m、
強力 1 000 g (強度 4. 5 g /' d )
上記毛羽加工において、 フィラメントは 4 8本とも短繊維化されていたが、 各 繊維長のフィラメント糸本数は不揃いで長い繊維長のフィラメント糸が多かった。 得られた毛羽糸を用いて平織物にしたところ、 手触りは生糸のフィラメン卜糸 のようなヌメリ感の強い風合いを有していた。
また、 このフィラメント加工糸をミシン糸として評価したところ、 実施例 1〜 3に比べて可鏠性は低いものであった。
表 1に可縫性の評価結果を示した。
[比較例 2]
図 3に示すようなアップツイスタを使用する下ョリエ程に従って、 70デニー ルー 48フィラメントの 1本のポリエステルマルチフィラメント糸に、 S方向 9 66 T ' mの下ョリを施し、 糸走行速度 1 0 m/'分、 往路側 34〜 38 g、 復路 側 1 20〜 1 4 3 gの高張力下でガイ ドローラに卷き掛け、 その往路側の糸条と 復路側の糸条とを S方向に交錯させることにより、 約 36 0度の捩りとしごきと を与え毛羽加工した。
次いで、 得られたフィラメント加工糸を 3本引き揃え、 Z方向に 7 09 T/ m の上ョリを施してフィラメント加工糸を作製した。 このフィラメント加工糸の特 性は、 図 2の比較例 2に示す毛羽存在分布を有し、 次の通りであった。
毛羽長 l〜5mmの毛羽数 4 5個 Zm、
毛羽長 1. 5〜5 mmの毛羽数 4個 Zm、
強力 1 0 1 5 g (強度 4. 6 d)
上記毛羽加工において、 フィ ラメ ン トは 4 8本とも短繊維化されていたが、 各
繊維長のフィラメ ン ト糸本数は不揃いで長い繊維長のフィラメ ン ト糸が多かった。 得られたフィラメ ント加工糸を用いて平織物にしたところ、 手触りは生糸のフ イラメント糸のようなヌメ リ感の強い風合いを有していた。
また、 このフイラメ ン ト加工糸をミ シン糸として評価したところ、 実施例 1 〜 3に比べて可縫性は低いものであった。
表 1に可縫性の評価結果を示した。
産業上の利用可能性
本発明のスパン糸のような毛羽を有するフィラメ ント加工糸は、 スパン糸が有 するような毛羽や嵩高性を有し、 織物または編物にしたときに柔らかでしっとり した高級な手触り感を与えることができる。
また、 従来のスパン糸または毛羽加工したフィラメン ト加工糸に比べて高い糸 強力を有し、 かつスパン糸のような風合いを有するので、 高速可縫性に優れた縫 糸として用いることができる。
表 1 抨価項目 実施例 1 比較例 1 比餃例 2 比餃例 3 比絞例 4
(a)バックほ性 { % ) 95-98 85-90 90-95 10-20 対 スパン糸
(b)高速可ほ性 (¾ ) 50-70 40~60 40~60 20~40 対 スパン糸
(c)a製後の糸強力 80~85 70-75 70-75 90~95 50-70 保持率 (%)