ところで、補助対象者に装着する運動補助装置では、アクチュエータの小型化や軽量化が図られているものの、このようなアクチュエータは、作動時の発熱による温度上昇が生じやすい。そして、該アクチュエータを補助対象者の表面から離れた位置に配置すると、該アクチュエータが補助対象者の運動の妨げとなりやすい。このため、該アクチュエータは、通常、補助対象者の表面に近接した状態、もしくは、ほぼ接触した状態で配置される。
従って、アクチュエータの温度があまり高くならないようにすることが望まれる。この場合、アクチュエータが発生可能な最大出力(定格出力)を低めの出力にするようにアクチュエータを構成しておくことが考えられる。しかるに、該アクチュエータでは、十分な補助力を発生することができなくなるため、運動補助装置の補助力発生能力が損なわれてしまう。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、補助力の発生能力が損なわれるのを極力防止しつつ、アクチュエータの昇温を適切に抑制することができる運動補助装置を提供することを目的とする。
本発明の運動補助装置は、上記の目的を達成するために、補助対象者の所定の運動を補助するための補助力を発生可能なアクチュエータを含み、該所定の運動を行う補助対象者に、該アクチュエータから補助力を伝達し得るように装着される運動補助装置であって、
前記補助対象者の所定の運動の実行中に、前記アクチュエータの発熱温度、又は該アクチュエータから前記補助対象者に伝達される温度である熱源側温度の観測値を取得し、該熱源側温度の観測値が所定温度よりも昇温したこと、又は、該熱源側温度の観測値が所定温度よりも昇温することが予測される状態になったことを検知する温度観測部と、
前記補助力を連続的又は間欠的に発生させるように前記アクチュエータの作動制御を行うアクチュエータ制御部とを備えており、
前記アクチュエータ制御部は、前記温度観測部により前記検知がなされた場合に、前記補助力を発生すべき期間のうちの少なくとも一部の期間において前記アクチュエータに実際に発生させる補助力を、前記検知がなされない場合よりも小さい大きさの補助力に制限するように該アクチュエータの作動制御を行うように構成されていることを特徴とする(第1発明)。
なお、本発明において、「アクチュエータから補助対象者に伝達される温度」というのは、詳しくは、アクチュエータから補助対象者への伝熱に伴い昇温する物体の温度を意味する。
また、前記熱源側温度(前記アクチュエータの発熱温度、又は該アクチュエータから前記補助対象者に伝達される温度)の「観測値」は、適宜の温度センサによる該熱源側温度の検出値、あるいは、該熱源側温度と一定の相関性を有する1つ以上の状態量のそれぞれの検出値から推定してなる該熱源側温度の推定値を意味する。
上記第1発明によれば、前記熱源側温度の観測値が所定温度よりも昇温したこと、又は、該熱源側温度の観測値が所定温度よりも昇温することが予測される状態になったことが前記温度観測部により検知された場合に、前記アクチュエータ制御部によりアクチュエータの作動制御によって、前記補助力を発生すべき期間のうちの少なくとも一部の期間においてアクチュエータに実際に発生させる補助力が、前記検知がなされない場合よりも小さい大きさの補助力に制限される。これにより、熱源側温度のさらなら昇温が抑制される。
また、前記温度観測部により熱源側温度に関する前記検知がなされていない場合には、アクチュエータに発生させる補助力の大きさに関する前記制限は行われない。
従って、第1発明によれば、補助力の発生能力が損なわれるのを極力防止しつつ、アクチュエータの昇温を適切に抑制することができる。
上記第1発明では、前記一部の期間は、前記補助力を発生すべき期間のうち、前記制限をせずに該補助力を発生させたと仮定した場合に、該補助力の大きさが所定の制限値を超える期間であり、前記アクチュエータ制御部は、前記補助力を発生すべき期間が当該一部の期間を含む場合に、少なくとも当該一部の期間において、前記アクチュエータに実際に発生させる補助力の大きさを前記制限値以下の大きさに制限するように構成されているという態様を採用し得る(第2発明)。
これによれば、前記温度観測部による前記検知がなされた場合には、前記アクチュエータに実際に発生させる補助力の大きさは、前記所定の制限値以下の大きさに制限される。このため、アクチュエータの発熱に伴い熱源側温度のさらなる昇温を効果的に抑制することが可能となる。
上記第2発明では、前記アクチュエータ制御部は、前記補助力を発生すべき期間のうち、前記一部の期間以外の期間では、前記アクチュエータに実際に発生させる補助力の大きさを、該一部の期間で該アクチュエータに実際に発生させる補助力よりも小さくするように、該アクチュエータの作動制御を行うように構成されていることが好ましい(第3発明)。
これによれば、前記温度観測部による前記検知がなされた場合に、前記補助力を発生すべき期間で実際に発生させる補助力の、前記一部の期間での大きさと、他の期間での大きさとの大小関係が、前記制限をせずに補助力を発生させたと仮定した場合に実現される本来の大小関係と逆になるのを防止することができる。ひいては、前記補助力を発生すべき期間で実際に発生させる補助力の経時的な大小変化を適切に行うことができる。
上記第1発明では、前記一部の期間は、前記補助力を発生すべき期間のうち、前記制限をせずに該補助力を発生させたと仮定した場合に、該補助力の大きさが所定の制限値を超える期間であり、前記アクチュエータ制御部は、前記補助力を発生すべき期間が当該一部の期間を含む場合に、該補助力を発生すべき期間において、前記アクチュエータに実際に発生させる補助力の大きさの最大値を、所定の制限値以下に制限すると共に、当該実際に発生させる補助力の経時変化の波形である制限有り波形が、前記制限をせずに補助力を発生させたと仮定した場合に得られる該補助力の経時変化の波形である制限無し波形と相似する波形になるように、前記アクチュエータの作動制御を行うように構成されているという態様を採用することもできる(第4発明)。
なお、本発明において、前記制限有り波形が、前記制限無し波形と相似するというのは、前記制限有り波形の補助力の発生期間での該補助力の経時変化を表す関数をf(t)、該発生期間での前記制限無し波形の補助力の経時変化を表す関数をg(t)と表記したとき、f(t)≒k・g(t)という関係が成立することを意味する。
上記第4発明によれば、前記補助力を発生すべき期間において、アクチュエータに実際に発生させる補助力の大きさの最大値が所定の制限値以下に制限されるので、前記第2発明と同様に、アクチュエータの発熱に伴う熱源側温度のさらなる昇温を効果的に抑制することが可能となる。
加えて、前記制限有り波形が、前記制限無し波形と相似する波形になるようにアクチュエータの作動制御が行われるので、前記制限を行った実際の補助力は、前記制限をせずに補助力を発生させたと仮定した場合に実現される本来の経時的な変化パターンと同様の変化パターンで変化する。このため、前記補助力を発生すべき期間で実際に発生させる補助力を、補助対象者の所定の運動を補助する上で、好適な変化パターンで経時的に変化させることができる。
上記第1〜第4発明では、前記アクチュエータが、前記補助対象者の特定の肢体の所定の方向への運動を補助するための第1方向補助力と、該所定の方向と逆方向への運動を補助するための第2方向補助力とを選択的に発生可能なアクチュエータである場合には、前記アクチュエータ制御部は、前記温度観測部により前記検知がなされた場合に、前記第1方向補助力の大きさと、前記第2方向補助力の大きさとを互いに独立に制限するように構成されているとう態様を採用し得る(第5発明)。
これによれば、アアクチュエータが発生する互いに逆方向の第1方向補助力と第2方向補助力とを各別に独立に制限できる。このため、前記温度観測部により前記検知がなされた場合に、第1方向補助力と第2方向補助力とが必要以上に制限されないようにしつつ、それぞれを適切に制限することが可能となる。
上記第1〜第5発明では、運動補助装置が、前記補助対象者の左右一対の肢体のそれぞれの互いに同一の関節での運動を補助する補助力をそれぞれ発生する一対の前記アクチュエータを備えている場合には、前記温度観測部は、前記一対のアクチュエータのそれぞれに対応する前記熱源側温度に関して前記検知を行うように構成されており、前記アクチュエータ制御部は、前記一対のアクチュエータのいずれか一方のアクチュエータに対応する前記熱源側温度に関して前記検知が前記温度観測部によりなされた場合に、該一方のアクチュエータに実際に発生させる前記補助力の大きさに関する前記制限と、他方のアクチュエータに実際に発生させる前記補助力の大きさに関する前記制限との両方を実行するように構成され得る(第6発明)。
これによれば、前記一対のアクチュエータのいずれか一方のアクチュエータに対応する前記熱源側温度に関して前記検知が前記温度観測部によりなされた場合に、両方のアクチュエータに対して、補助力の大きさに関する前記制限が行わるので、補助対象者の左側の肢体の関節での運動時に、該補助対象者に作用する補助力と、右側の肢体の関節での運動時に補助対象者に作用する補助力との相互のバランスが損なわれるのを防止することが可能となる。
本発明の一実施形態を図1〜図5Bを参照して以下に説明する。図1を参照して、本実施形態の運動補助装置1は、補助対象者Pの所定の運動の一例としての歩行運動を補助する装置である。なお、以降の説明では、「左」及び「右」は特にことわらない限り、それぞれ、補助対象者Pの正面に向かって左側、右側を意味する。そして、運動補助装置1の構成要素のうち、補助対象者Pの左側の構成要素の参照符号に「L」を付し、右側の構成要素の参照符号に「R」を付する。ただし、左右を区別する必要が無いときは、「L」、「R」の付記を省略する。
運動補助装置1は、本実施形態では、例えば、補助対象者Pの歩行運動における左右の脚の少なくとも一方の脚の股関節での屈曲動作又は伸展動作を補助する補助力を該脚の大腿部に付与し得るように構成された装置である。なお、本実施形態では、補助対象者Pの脚が本発明における肢体に相当する。
ここで、補助対象者Pの各脚の股関節での屈曲動作は、該脚の股関節の変位動作によって、該脚の大腿部が、補助対象者Pの上体(胴体)の体幹軸に対して前方側に傾いた状態(例えば図1の補助対象者Pの左側の脚の大腿部の傾き状態)になるように、上体に対してピッチ方向(補助対象者Pの左右方向の軸周り方向)に回転変位する動作である。また、各脚の伸展動作は、該脚の股関節の変位動作によって、該脚の大腿部が、補助対象者Pの上体の体幹軸に対して後方側に傾いた状態(例えば図1の補助対象者Pの右側の脚の大腿部の傾き状態)になるように、上体に対してピッチ方向に回転変位する動作である。
運動補助装置1は、図1に示すように、補助対象者Pに装着される装置である。該運動補助装置1は、補助対象者Pの腰部の背面に当接された状態でベルト等の適宜の取付け用部材2を介して該腰部に取付けられる腰当て部材3と、該腰当て部材3から補助対象者Pの左右の股関節部分の側方位置(詳しくは、左側の股関節部分の左側方位置と右側の股関節部分の右側方位置とのそれぞれ)まで延設された左右一対の上体側フレーム4L,4Rと、左右の上体側フレーム4L,4Rの先端部に各々取付けられたアクチュエータ5L,5Rと、補助対象者Pの左右の各脚の大腿部の下部寄りの前面部に当接された状態でベルト等の適宜の取付け用部材6L,6Rを介して該大腿部に取付けられた脚当て部材7L,7Rと、左右のそれぞれのアクチュエータ5L,5Rと脚当て部材7L,7Rとを接続する脚側フレーム8L,8Rとを備える。
なお、図1では、補助対象者Pの右側の上体側フレーム4R及びアクチュエータ5Rは、補助対象者Pの背後に隠れているため図示されていない。
各アクチュエータ5は、回転型のアクチュエータであり、例えば電動モータにより構成される。各アクチュエータ5は、自身と同じ側(左側又は右側)の脚の股関節部分の側面に近接した状態(もしくはほぼ接触した状態)で配置されている。そして、各アクチュエータ5は、自身と同じ側の脚の股関節での屈曲動作又は伸展動作に伴い、当該同じ側の上体側フレーム4に対して脚側フレーム8がピッチ方向に回転し得ると共に、該ピッチ方向の回転駆動力を脚側フレーム8に適宜、出力し得るように該脚側フレーム8に接続されている。なお、各アクチュエータ5と脚側フレーム8との間の動力伝達経路には、例えば減速機、クラッチ機構等の動力伝達要素を含み得る。
また、脚側フレーム8の下端部は、脚当て部材7に固定されている。従って、各アクチュエータ5から脚側フレーム8に回転駆動力を出力することによって、その回転駆動力が該脚側フレーム8と、脚当て部材7又は取付け用部材6とを介して該アクチュエータ5と同じ側の脚の大腿部に伝達されるようになっている。これにより、補助対象者Pの各脚の股関節での屈曲動作又は伸展動作を補助する補助力を、該脚と同じ側のアクチュエータ5から該脚の大腿部に付与することが可能となっている。
運動補助装置1はさらに、図2に示すように、補助対象者Pの左右の各股関節の回転変位量(詳しくは、上体に対する各脚の大腿部のピッチ方向の回転角。以降、股関節回転角という)を検出するための角度検出器10L,10Rと、各アクチュエータ5L,5Rの発熱温度を検出する温度センサ11L,11Rと、各アクチュエータ5L,5Rの作動制御を行う機能を有する制御装置12とを備えている。
各角度検出器10は、左右の各上体側フレーム4に対する脚側フレーム8のピッチ方向の回転角を、補助対象者Pの左右の各脚の股関節回転角として検出するものであり、各アクチュエータ5に組付けられている(図1を参照)。該角度検出器10は、例えばロータリーエンコーダ、レゾルバ、ポテンショメータ等により構成され得る。
各温度センサ11は、例えばサーミスタ等により構成され、各アクチュエータ5に内蔵されている。本実施形態では、各温度センサ11が検出する各アクチュエータ5の発熱温度が、本発明における熱源側温度に相当し、各温度センサ11の温度検出値が熱源側温度の観測値に相当する。
制御装置12は、例えばマイクロコンピュータ、メモリ、インターフェース回路、通信回路等を含む電子回路ユニットにより構成され、運動補助装置1の適所、例えば前記腰当て部材3に搭載されている。この制御装置12には、各角度検出器10及び各温度センサ11の検出信号が入力される。また、制御装置12は、外部端末20と無線通信を行うことが可能である。
そして、制御装置12は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)の両方又は一方により実現される機能として、各温度センサ11の温度検出値(各アクチュエータ5の発熱温度の検出値)が所定温度よりも昇温したことを検知する温度観測部12aとしての機能と、各アクチュエータ5の作動制御を行うアクチュエータ制御部12bとしての機能とを含む。
なお、制御装置12及び各アクチュエータ5の電源電力は、運動補助装置1の適所、例えば腰当て部材3に搭載された電池等の蓄電器(図示省略)から供給される。
外部端末20は、運動補助装置1の動作設定等を行うものであり、例えばスマートフォン、タブレット端末、モバイルパソコン等の携帯端末により構成される。なお、外部端末20は、携帯端末に限らず、例えば据置型のパソコン、ノート型のパソコン等であってもよい。
この外部端末20には、運動補助装置1用のアプリケーションがあらかじめインストールされており、該アプリケーション(以降、補助アプリケーションという)を起動した状態で、外部端末20が制御装置12と通信を行うことが可能となる。また、外部端末20は、補助アプリケーションを起動した状態で、運動補助装置1の左右の各アクチュエータ5により発生させる補助力の大きさ(強弱度合い)を制御装置12に対して設定したり、制御装置12から受信する種々の情報を、該外部端末20に備えられた表示器21に表示させる視覚的な報知情報、もしくは音声等による聴覚的な報知情報として出力することが可能である。
ここで、本実施形態の運動補助装置1が、補助対象者Pの歩行運動を補助するために左右の各アクチュエータ5L,5Rから出力する補助力の変化パターン(波形パターン)に関して説明しておく。
本実施形態では、運動補助装置1の制御装置12は、補助対象者Pの歩行運動時に、左右の各アクチュエータ5が発生する補助力を、例えば図4A又は図5Aに例示する如き波形パターンで周期的に(補助対象者Pの歩行運動に同期した周期で)変化させるように、各アクチュエータ5を制御することが可能である。
さらに詳細には、各アクチュエータ5は、制御装置12のアクチュエータ制御部12bによる制御によって、補助対象者Pの脚(各アクチュエータ5と同じ側の脚)の股関節の屈曲動作を補助する方向の回転駆動力としての屈曲側の補助力と、各脚の股関節の伸展動作を補助する方向(屈曲側と逆方向)の回転駆動力としての伸展側の補助力とを選択的に発生可能である。なお、屈曲側の補助力及び伸展側の補助力は、それぞれ本発明における第1方向補助力、第2方向補助力に相当する。
そして、各アクチュエータ5は、制御装置12のアクチュエータ制御部12bによる制御によって、屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のそれぞれを、例えば図4A又は図5Aに例示する如く、補助対象者Pの歩行運動に同期した周期で交互に発生し得る(換言すれば、屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のそれぞれを間欠的に発生し得る)と共に、屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のそれぞれの発生期間で、該補助力の大きさを正弦波状の波形パターン(もしくは、それに類似する波形パターン)で増減させるように該補助力を発生する。なお、図4A及び図5Aでは、屈曲側の補助力を正の補助力、伸展側の補助力を負の補助力として、屈曲側の補助力及び伸展側の補助力の経時変化の波形が記載されている。
この場合、制御装置12のアクチュエータ制御部12bは、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のそれぞれの発生開始タイミングと発生期間の時間幅(又は発生終了タイミング)とを、例えば、各角度検出器10による補助対象者Pの左右の各股関節回転角の検出値、又はその変化パターン等に応じて決定する。
また、本実施形態では、各アクチュエータ5毎に、屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のそれぞれの発生期間における該補助力のピーク値(最大値)の大きさ(以降、単に、補助力の強度という)の要求値を、屈曲側と伸展側とで各別に、前記補助アプリケーションを起動した外部端末20の操作によってあらかじめ可変的に設定しておくことが可能である。
例えば、図2に例示する如く、外部端末20の表示器21(ここでは、タッチパネル形式の表示器)には、左右の各アクチュエータ5の屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のそれぞれの強度の要求値を設定するための画面が、該外部端末20の所定の操作等に応じて表示され得る。この画面において、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のそれぞれ毎に、各補助力の強度の要求値を調整するためのタッチ操作部21aをスライド操作することで、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のそれぞれの強度の要求値が可変的に設定される。さらに、その設定された強度の要求値が外部端末20から運動補助装置1の制御装置12に指令される。
そして、制御装置12は、基本的には、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のそれぞれの発生期間において、該補助力を設定された強度の波形パターンで増減させるように各アクチュエータ5を制御する。例えば、図4Aでは、屈曲側の補助力の強度(要求値)がTa1、伸展側の補助力の強度(要求値)がTb1に設定された場合に、設定された強度に従って、アクチュエータ5に発生させる補助力の経時変化の波形を示し、図5Aでは、屈曲側の補助力の強度(要求値)がTa3、伸展側の補助力の強度(要求値)がTb3に設定された場合に、設定された強度に従って、アクチュエータ5に発生させる補助力の経時変化の波形を示している。
ただし、制御装置12は、後述する如く、各アクチュエータ5に実際に発生させる屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のそれぞれの強度を、外部端末20で設定された強度(以降、設定強度ということがある)よりも小さい強度に強制的に制限することも可能である。
なお、各アクチュエータ5の屈曲側及び伸展側のそれぞれの補助力の強度(要求値)の設定は、外部端末20のタッチパネル形式の表示器21での操作に限らず、外部端末20に備えられた操作ボタン等の操作部の操作、あるいは、運動補助装置1に備えられた操作部の操作によって実行し得るようになっていてもよい。
また、図4A及び図5Aでは、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力及び伸展側の補助力の両方を交互に発生する場合の補助力の波形を例示したが、例えば、各アクチュエータ5の屈曲側及び伸展側の一方の補助力の強度を最小値(ゼロ)に設定しておくことで、該アクチュエータ5に、該一方の補助力を発生させずに、他方の補助力だけを周期的に(間欠的に)発生させることも可能である。あるいは、左右いずれか一方側のアクチュエータ5L又は5Rの屈曲側の補助力及び伸展側の補助力の両方の強度を最小値(ゼロ)に設定しておくことで、一方側のアクチュエータ5L又は5Rに、屈曲側及び伸展側の両方の補助力を発生させずに、他方側のアクチュエータ5R又は5Lだけに、屈曲側の補助力及び伸展側の補助力の両方又は一方を周期的に発生させることも可能である。
また、図4A及び図5Aに例示した補助力の波形では、屈曲側の補助力の発生開始タイミングと、伸展側の補助力の発生終了タイミングとが一致すると共に、屈曲側の補助力の発生終了タイミングと、伸展側の補助力の発生開始タイミングとが一致するものを例示した。ただし、屈曲側の補助力の発生開始タイミングと、伸展側の補助力の発生終了タイミングとが時間差を有するタイミングであってもよい。同様に、屈曲側の補助力の発生終了タイミングと、伸展側の補助力の発生開始タイミングとが時間差を有するタイミングであってもよい。
次に、運動補助装置1の制御装置12が、前記温度センサ11R,11Lの温度検出値(各アクチュエータ5の発熱温度の検出値)に応じて実行する制御処理を図3を参照して説明する。
運動補助装置1を装着した補助対象者Pの歩行運動時に、各アクチュエータ5(あるいは、いずれか一方のアクチュエータ5)から屈曲側の補助力及び伸展側の補助力の両方もしくは一方を周期的に発生させるように該アクチュエータ5の作動制御を行っている状態で、制御装置12は、図3のフローチャートに示す処理を所定の制御処理周期で逐次実行する。
STEP1、2で制御装置12は、温度観測部12aの処理を実行する。STEP1では、制御装置12の温度観測部12aは、各温度センサ11の温度検出値Tsを取得する。さらに、STEP2において、温度観測部12aは、STEP1で取得した温度検出値Tsが、あらかじめ定められた所定温度Tthよりも高い温度に昇温したか否かを判断(検知)する。
本実施形態では、このSTEP2では、温度観測部12aは、左側の温度センサ11Lの温度検出値Tsと、右側の温度センサ11Rの温度検出値Tsとの両方が所定温度Tth以下である場合に、STEP2の判断結果が否定的であると判断し、左側の温度センサ11Lの温度検出値Tsと、右側の温度センサ11Rの温度検出値Tsとのうちのいずれか一方が所定温度Tthよりも高い場合に、STEP2の判断結果が肯定的であると判断する(温度検出値Tsが所定温度Tthよりも高い温度に昇温したことを検知する)。
そして、STEP2の判断結果が否定的である場合には、制御装置12は、次にSTEP3からの処理をアクチュエータ制御部12bにより実行する。このSTEP3では、制御装置12のアクチュエータ制御部12bは、各アクチュエータ5で実際に発生させる屈曲側及び伸展側のそれぞれ補助力の強度(以降、制御用強度という)として、外部端末20で設定された強度(設定強度)をセットする。
次いで、STEP4において、アクチュエータ制御部12bは、各アクチュエータ5に、STEP3でセットした制御用強度の補助力を発生させる制御を実行する。この場合、具体的には、アクチュエータ制御部12bは、例えば、各アクチュエータ5毎に、セットした制御用強度の補助力と、該補助力の開始タイミングからの経過時間とに基づいて、制御処理周期毎の該補助力の目標瞬時値を逐次決定する。そして、アクチュエータ制御部12bは、該目標瞬時値に従って、各アクチュエータ5の出力トルクを制御する。
これにより、各アクチュエータ5が発生する屈曲側の補助力及び伸展側の補助力は、外部端末20で設定された強度の波形パターンで(例えば図4A又は図5Aに例示する如き波形パターンで)周期的に変化するように制御される。そして、このように各アクチュエータ5が発生する補助力が補助対象者Pに付与される。なお、この場合、各アクチュエータ5は、屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のうち、強度の要求値が最小値(ゼロ)に設定されている補助力については、該補助力を発生せずに作動する。
一方、STEP2の判断結果が肯定的である場合には、制御装置12は、各アクチュエータ5の発熱温度(ひいては、各アクチュエータ5から補助対象者Pに伝達される温度)のさらなる昇温を防止するために、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力と伸展側の補助力とのそれぞれの制御用強度を適宜制限するようにセットする処理(STEP5からの処理)をアクチュエータ制御部12bにより実行する。
具体的には、アクチュエータ制御部12bは、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力と伸展側の補助力とのそれぞれ毎に、STEP5,6の処理、又はSTEP5,8の処理を実行する。STEP5では、アクチュエータ制御部12bは、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力と伸展側の補助力とのそれぞれに関して、外部端末20で設定された強度の要求値(設定強度)が、所定の制限強度Tlimを超えているか否かを判断する。
該制限強度Tlimは、本発明における制限値に相当するものである。そして、該制限強度Tlimは、それ以下の強度で各アクチュエータ5に屈曲側又は伸展側の補助力を発生させた場合には、各アクチュエータ5の発熱温度のさらなる昇温を防止し得るように、あらかじめ実験等に基づき定められた値である。なお、制限強度Tlimは、例えば補助対象者Pの運動環境の気温に応じて可変的に設定する(例えば気温が低いほど、制限強度Tlimを大きな値に設定する)ようにしてもよい。
そして、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力に関して、STEP5の判断結果が肯定的である場合(屈曲側の補助力に関する設定強度が上記制限強度Tlimを超えている場合)には、アクチュエータ制御部12bは、STEP6において、該アクチュエータ5の屈曲側の補助力の制御用強度として、上記制限強度Tlimをセットする。
同様に、各アクチュエータ5の伸展側の補助力に関して、STEP5の判断結果が肯定的である場合(伸展側の補助力に関する設定強度が上記制限強度Tlimを超えている場合)には、アクチュエータ制御部12bは、STEP6において、該アクチュエータ5の伸展側の補助力の制御用強度として、上記制限強度Tlimをセットする。
なお、STEP6では、例えば、制限強度Tlimよりも若干小さい強度を、屈曲側又は伸展側の補助力の制御用強度としてセットしてもよい。
そして、アクチュエータ制御部12bは、上記のように、各アクチュエータ5の屈曲側及び伸展側の一方又は両方の補助力の制御用強度として、制限強度Tlim(又はこれよりも若干低い強度)をセットした場合には、STEP7で、補助力の制御用強度を制限する旨の情報を外部端末20に通知する。このとき、外部端末20では、当該通知情報が、表示器21による視覚的な報知情報、あるいは、音声等による聴覚的な報知情報として出力される。
また、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力に関して、STEP5の判断結果が否定的である場合(屈曲側の補助力に関する設定強度が制限強度Tlim以下である場合)には、アクチュエータ制御部12bは、STEP8において、該アクチュエータ5の屈曲側の補助力の制御用強度として、設定強度をセットする。
同様に、各アクチュエータ5の伸展側の補助力に関して、STEP5の判断結果が否定的である場合(伸展側の補助力に関する設定強度が制限強度Tlim以下である場合)には、アクチュエータ制御部12bは、STEP8において、該アクチュエータ5の伸展側の補助力の制御用強度として、設定強度をセットする。
上記の如く、温度センサ11L,11Rの温度検出値Tsに関するSTEP2の判断結果が肯定的となった場合には、アクチュエータ制御部12bは、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のうち、設定強度が所定の制限強度Tlimを超えるものについては、STEP6において、該アクチュエータ5の補助力の制御用強度として、制限強度Tlim(又はこれよりも若干低い強度)をセットする。
例えば、図4Bに示す如く、屈曲側の補助力の設定強度Ta1が制限強度Tlimを超えている場合には、屈曲側の補助力の制御用強度Ta2として、設定強度Ta1よりも低い制限強度Tlimがセットされる。
また、例えば図5Bに示す如く、屈曲側の補助力の設定強度Ta3と伸展側の補助力の設定強度Tb3との両方が制限強度Tlimを超えている場合には、屈曲側及び伸展側のそれぞれの補助力の制御用強度Ta4,Tb4として、それぞれ設定強度Ta3,Tb3よりも低い制限強度Tlimがセットされる。
また、アクチュエータ制御部12bは、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力及び伸展側の補助力のうち、設定強度が制限強度Tlim以下に収まっているものについては、STEP8において、該アクチュエータ5の補助力の制御用強度として、設定強度をセットする。例えば図4Bに示す如く、伸展側の補助力の設定強度Tb1が制限強度Tlimよりも小さい場合には、伸展側の補助力の制御用強度Tb2として、設定強度Tb1がセットされる。
なお、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力及び伸展側の補助力に関して、設定強度が制限強度Tlim以下に収まっている場合に、STEP8において、制御用強度として、例えば、設定強度(又は、現在の制御用強度)よりも所定量又は所定割合だけ低い強度をセットしてもよい。
以上の如くSTEP6又は8で制御用強度をセットした後、アクチュエータ制御部12bは、STEP4において、各アクチュエータ5に、STEP6又はSTEP8でセットした制御用強度の補助力を発生させる制御を実行する。該制御は、STEP3で制御用強度をセットした場合と同様に行われる。これにより、各アクチュエータ5が発生する屈曲側の補助力及び伸展側の補助力は、前記制限強度以下の範囲でSTEP6又は8でセットされた制御用強度の波形パターンで(例えば、図4B又は図5Bに例示する如き波形パターンで)周期的に変化するように制御される。
なお、本実施形態では、STEP5からの処理の実行は、例えば温度センサ11L,11Rの温度検出値の両方が前記所定温度Tthよりも所定値ΔTだけ低い温度(=Tth−ΔT)以下の温度になったときに終了される。その後は、STEP2の判断結果に応じて、STEP3からの処理又はSTEP5からの処理が実行される。
また、本実施形態では、各アクチュエータ5の屈曲側又は伸展側の補助力の発生途中で、STEP2の判断結果が肯定的になった場合には、アクチュエータ制御部12bがSTEP6又は8でセットする制御用強度は、屈曲側又は伸展側の現在の補助力の発生を終了した後の補助力の発生時における制御用強度である。そして、各アクチュエータ5が発生中の屈曲側又は伸展側の補助力の制御用強度は、現状の強度に維持される。
補足すると、本実施形態では、STEP2の判断結果が肯定的になった状況で、各アクチュエータ5の屈曲側又は伸展側の補助力に関する設定強度が所定の制限強度Tlimよりも大きい場合に、該アクチュエータ5に実際に発生させる補助力(本実施形態では正弦波状の波形パターンの補助力)のピーク値(最大値)に相当する制御用強度が、制限強度Tlim(又はこれよりも低い強度)に制限される。このとき、その制限後の補助力の経時変化の波形(制限有り波形)は、STEP2の判断結果が否定的であると仮定した状況(STEP5からの制限処理を実行しない状況)での補助力の経時変化の波形である制限無し波形(制御用強度を設定強度に一致させた場合の補助力の経時変化の波形)と相似するものとなる。
より詳しくは、本実施形態では、各アクチュエータ5の屈曲側又は伸展側の補助力の制限有り波形の各時点(該補助力の発生期間内の各時点)での補助力(瞬時値)は、該補助力の制限無し波形における同一時点での補助力(瞬時値)に一定の比率(=制限強度Tlim/設定強度)で比例する。従って、上記制限有り波形を表す関数(ここでは三角関数)をf1(t)、上記制限無し波形を表す関数(三角関数)をg1(t)と表記すると、f1(t)=k・g1(t)(k=制限強度Tlim/設定強度)という関係が成立する。
なお、図4Bにおいては、屈曲側の補助力の発生期間Δt1の実線で示す波形が上記制限有り波形に相当し、二点鎖線で示す波形が上記制限無し波形に相当する。また、図5Bにおいては、屈曲側の補助力の発生期間Δt2の実線で示す波形、あるいは、伸展側の補助力の発生期間Δt3の実線で示す波形が上記制限有り波形に相当し、発生期間Δt2の二点鎖線で示す波形、あるいは、発生期間Δt3の二点鎖線で示す波形が上記制限無し波形に相当する。
さらに、本実施形態では、STEP2の判断結果が肯定的になった状況で、各アクチュエータ5の屈曲側又は伸展側の補助力に関する設定強度が所定の制限強度Tlimよりも大きい場合に、該アクチュエータ5に実際に発生させる補助力のピーク値に相当する制御用強度が、制限強度Tlim(又はこれよりも低い強度)に制限される。このため、結果的に、上記制限有り波形の補助力の発生期間のうち、上記制限無し波形の補助力が制限強度Tlimを超える期間としての一部の期間で、上記制限有り波形の補助力が制限強度Tlim以下に制限されると共に、該一部の期間以外の期間では、上記制限有り波形の補助力が、該一部の期間における補助力よりも小さい補助力に制御されることとなる。
以上説明した実施形態によれば、温度センサ11L,11Rのいずれかの温度検出値Tsが所定温度Tthよりも高い温度に昇温した場合(STEP2の判断結果が肯定的になった場合)に、各アクチュエータ5に関して、STEP5からの処理が実行される。このため、各アクチュエータ5が発生する屈曲側及び伸展側の補助力の強度(ピーク値)が制限強度以下に制限される。これにより、各アクチュエータ5の発熱温度のさらなる昇温が防止され、ひいては、各アクチュエータ5の発熱によって該アクチュエータ5から補助対象者Pに伝達される温度の昇温を抑制することができる。
また、本実施形態では、各アクチュエータ5の屈曲側又は伸展側の補助力に関する制御用強度を設定強度よりも低い制限強度Tlim(又はこれよりも低い強度)に制限した場合に、その制限後の補助力の波形(制限有り波形)は、前記した如く、制御用強度を設定強度に一致させた場合の補助力の波形(制限有り波形)に相似するものとなる。このため、制限後の補助力は、制限をしなかった場合の補助力と同様の変化パターンで変化するものとなる。従って、制限後の補助力を、補助対象者Pの歩行運動に適した変化パターンで変化させることができる。また、補助力の制限によって、補助対象者Pが違和感を覚えるのを防止することが可能となる。
また、本実施形態では、温度センサ11L,11Rのいずれかの一方の温度検出値Tsが所定温度Tthよりも高い温度に昇温すると、他方の温度検出値Tsが所定温度Tth以下に収まっていても、左右両方のアクチュエータ5L,5Rに関して、STEP5からの処理が実行される。
このため、例えば、屈曲側の補助力の設定強度又は伸展側の補助力の設定強度が、左右のアクチュエータ5L,5Rで同程度の強度に設定されている場合に、一方側のアクチュエータ5L又は5Rの補助力の制御用強度だけが、設定強度よりも低い制限強度Tlimに制限されるのを防止することができる。このため、左右のアクチュエータ5L,5Rで発生させる補助力(屈曲側又は伸展側の補助力)の強度の相互のバランスを保つことができる。
また、本実施形態では、STEP2の判断結果が肯定的になった場合に、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力と伸展側の補助力とは、互いに独立に制限される。このため、屈曲側の補助力と、伸展側の補助力とを必要以上に制限することを防止することができる。
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。以下に他の実施形態をいくつか説明する。
温度センサ11L,11Rのいずれかの温度検出値Tsが所定温度Tthを超えた場合(STEP2の判断結果が肯定的になった場合)の、屈曲側又は伸展側の補助力の制限の仕方は、前記実施形態で説明した態様に限られない。例えば、図6に例示する如き態様で、屈曲側又は伸展側の補助力を制限してもよい。
図6に示す例では、屈曲側又は伸展側の制御用強度を設定強度Tabに一致させた場合の補助力(二点鎖線の波形の補助力)が制限強度Tlimを超える期間Δt4において、実線で示す如く、アクチュエータ5に実際に発生させる補助力(制限後の補助力)が、制限強度Tlimで一定値に維持されるように制御される。そして、期間Δt4以外の期間では、アクチュエータ5に実際に発生させる補助力は、制御用強度を設定強度Tabに一致させた場合の波形(制限無し波形)と同じ波形で変化するように制御される。
なお、上記期間Δt4において、アクチュエータ5に実際に発生させる補助力(制限後の補助力)を、制限強度Tlimよりも低い強度で一定値に維持されるように制御してもよい。そして、この場合、期間Δt4以外の期間では、アクチュエータ5に実際に発生させる補助力は、例えば、期間Δt4よりも小さい補助力になると共に、制御用強度を設定強度Tabに一致させた場合の波形(制限無し波形)と同様の変化パターン(例えば、該制限無し波形に相似する波形パターン)で変化するように制御されることが好ましい。
また、前記実施形態では、温度センサ11L,11Rのいずれかの一方の温度検出値Tsが所定温度Tthよりも高い温度に昇温すると、他方の温度検出値Tsが所定温度Tth以下に収まっていても、左右両方のアクチュエータ5L,5Rに関して、STEP5からの処理が実行されるようにした。ただし、一方の温度検出値Tsに対応する温度センサ11L又は11Rと同じ側のアクチュエータ5L又は5Rについてだけ、STEP5からの処理を実行する(屈曲側又は伸展側の補助力を適宜制限する)ようにしてもよい。
また、STEP2の判断結果が肯定的になる状況で、各アクチュエータ5の屈曲側及び伸展側の補助力の少なくとも一方の補助力の設定強度が、制限強度を超える場合に、例えば、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力の制御用強度と、伸展側の補助力の制御用強度との比率を、該屈曲側の補助力の設定強度と、該伸展側の補助力の設定強度との比率に一致させるように、それぞれの制御用強度をセットして、各アクチュエータ5の作動制御を行うようにしてもよい。
また、STEP2の判断結果が肯定的になる状況で、各アクチュエータ5の屈曲側の補助力の設定強度と、伸展側の補助力の設定強度との両方が制限強度を超える場合に、例えば、該屈曲側の補助力と伸展側の補助力のうち、発生の必要性が相対的に低い方の補助力の制限度合いを、該必要性が相対的に高い方の補助力の制限度合よりも大きくするようにしてもよい。
また、各アクチュエータ5に発生させる屈曲側及び伸展側の補助力の波形は、正弦波状の波形に限らず、種々様々な波形を採用し得る。該波形は、例えば、三角波状の波形、台形状の波形、正規分布状の波形、あるいはこれらに類似する波形などを採用し得る。さらに、該波形は、例えば、凹凸を有する波形等、任意の波形であってもよい。また、該波形は、例えば、前記角度検出器10L,10Rのそれぞれの角度検出値(股関節回転角の検出値)の変化に応じて可変的に決定される波形であってもよい。
また、前記実施形態では、温度観測部12aは、前記STEP2において、各温度センサ11の温度検出値(各アクチュエータ5の発熱温度の検出値)が所定温度Tthよりも高い温度に昇温したか否かを判断(検知)した。ただし、例えば、各温度センサ11の温度検出値の時系列に基づいて、該温度検出値の将来の変化を予測し、該温度検出値が、近々(所定時間後のタイミングで)、所定温度より高い温度に昇温することが予測される状況であるか否かをSTEP2で判断するようにしてもよい。そして、当該予測の判断結果が肯定的になった場合に、STEP5からの処理を実行するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、温度観測部12aは、各温度センサ11の温度検出値である各アクチュエータ5の発熱温度の検出値を観測したが、該発熱温度の代わりに、各アクチュエータ5から補助対象者Pへの伝熱経路上の温度(例えば、各アクチュエータ5の補助対象者P側の側面部の温度等)を検出又は推定してもよい。そして、該温度の検出値又は推定値が、所定温度よりも高い温度に昇温したか否か、あるいは、所定温度よりも高い温度に昇温することが予測されるか否かをSTEP2で判断するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、運動補助装置1として、補助対象者Pの各脚の股関節での屈曲動作又は伸展動作を補助するものを例示した。ただし、本発明の運動補助装置は、各脚の股関節での運動の代わりに、又は該運動に加えて、膝関節及び足首関節の一方又は両方の運動を補助する補助力を連続的もしくは間欠的に発生するものであってもよい。あるいは、運動補助装置は、例えば、補助対象者の腕の運動を補助する補助力を連続的もしくは間欠的に発生するもの、あるいは、例えば、補助対象者の上体を起立させる方向(背中を伸ばす方向)の補助力を連続的に発生するもの等であってもよい。