JPWO2020080482A1 - 血液中のシスタチンc量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法 - Google Patents

血液中のシスタチンc量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法であって、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査を受けた対象の血液中のD−セリン量を測定する工程、D−セリン量と、所定の閾値とを比較する工程、及び、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を決定する工程、を含む、前記方法、並びに当該方法を実施する試料分析システム、及びプログラムを提供する。

Description

本発明は、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法、当該方法を実施する試料分析システム、及びプログラムに関する。
腎機能を表す指標として糸球体濾過量(GFR)が用いられている。糸球体濾過量は、糸球体で血液から1分間に濾過される液量を表し、その国際標準測定法はイヌリンクリアランスである。しかしながら、イヌリンクリアランスは、2時間にわたるイヌリンの持続点滴、及び複数回にわたる採尿及び採血と、正確な測定が必要であり、被験者及び実施者の負担が大きい。このようなことから、国際標準測定法としては確立されているものの、各国における医療の諸事情から、実地診療が導入されず、代替マーカーによる糸球体濾過量の決定が行われていることもある。日本では、イヌリンクリアランスによるGFRの測定は2006年に検査として保険適用されたものの、限定された状況でのみ行われるにとどまっており、日常の臨床現場では、他の腎機能マーカーを用いた推算式が用いられている。このように、糸球体濾過量のゴールドスタンダードであるイヌリンクリアランスが使用されない弊害として、腎機能の正確な判定や、それにともなう腎臓病の早期発見が難しくなっているという問題がある。
イヌリンクリアランスに代わる糸球体濾過量の決定方法として、イヌリン以外の物質のクリアランスに基づく方法、さらには血液中の腎機能マーカー値に基づく方法が開発されている。これらは、国際標準測定法であるイヌリンクリアランスに対する相関を調べることで、GFRの決定に用いられている。現在汎用されている腎機能マーカーであるシスタチンCは、体外からの物質の投与を必要としない点で優れており、年齢と性別情報を組み合わせた式により、推算糸球体濾過量(eGFR)が決定されている。
このように決定されたeGFRは、健康診断や医療現場で広く使用されている。しかしながら、eGFRは、腎機能の悪化についてのスクリーニングに用いることや、多数の対象者を比較するような疫学研究における簡便かつ客観的な評価を主眼として作成された指標であり、個別の患者の腎機能評価には、依然としてイヌリンを用いたイヌリンクリアランスを用いることが日本腎臓学会により推奨されている。
その理由として、そもそもシスタチンCの測定レンジの狭さが挙げられる。腎機能が高度に低下した状況では(たとえばGFR30以下)、血液中のシスタチンC量の上昇は鈍化し、本来のGFRからの乖離が大きくなるため、末期腎臓病では正確な腎機能評価が困難である。また、体格やステロイド、シクロスポリン等免疫系の薬剤の使用や、糖尿病、甲状腺機能亢進症、炎症、高ビリルビン血症、高トリグリセリド血症等の患者の状態によって精度が低下することが知られている。このように、シスタチン量やeGFRにより、腎機能についてスクリーニングを行うと、偽陽性と偽陰性の判定がされる恐れがある。
従来、哺乳類の生体には存在しないと考えられていたD−アミノ酸が、様々な組織に存在し、生理機能を担うことが明らかにされてきている。また、血液中のD−アミノ酸のうち、D−セリン、D−アラニン、D−プロリン、D−グルタミン酸、D−アスパラギン酸の濃度が、腎不全患者で変動し、シスタチンCと相関することから、腎不全の診断マーカーになり得ることが示されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。さらに、D−セリン、D−スレオニン、D−アラニン、D−アスパラギン、D−アロスレオニン、D−グルタミン、D−プロリン及びD−フェニルアラニンからなるグループから選択されるアミノ酸が、腎臓病の病態指標値とすることについて開示されている(特許文献1)。これらの文献では、健常者と比較して、腎臓病を患う患者の血液中のD−アミノ酸が変動していることから、これらの変動を指標にして腎臓病の診断が可能になる旨が開示されている。
その一方で、血液中のD−アミノ酸量によって、イヌリンクリアランスを基準とした糸球体濾過能力が決定できることについては何ら記載も示唆もされていない。なお、近年、腎臓病のマーカーとして、尿中L−FABP、血液中NGAL、尿中KIM−1等が開発されてきているが、腎臓病のマーカーであったとしても、必ずしも糸球体濾過能力の決定・推定できるものではない。
国際公開第2013/140785号
Fukushima,T.ら、Biol. Pharm. Bull. 18: 1130(1995) Nagata.Y Viva Origino Vol.18(No.2) (1990)第15回学術講演会講演要旨集 Ishidaら、北里医学 23:51〜62 (1993) Yong Huangら、Biol. Pharm. Bull. 21:(2)156-162(1998)
健康診断において、腎機能検査を目的として血液中のシスタチンC量や、血液中のシスタチンC量に基づく推算糸球体濾過量が算出されるが、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査では、体格の影響や、測定レンジの狭さに起因する精度の低下により、結果の判定において偽陽性及び偽陰性が含まれうる。本発明ではこうした偽陽性及び偽陰性を検定することを目的とする。
本発明者らは、血液中のD−セリンに着目し、GFR(イヌリンクリアランス)との相関を調べていたところ、驚くべきことに、現在汎用されている血液中のシスタチンC量よりも、血液中のD−セリン量が、GFR(イヌリンクリアランス)に相関が高いことを見出し、本発明に至った。
そこで、本発明は下記に関する:
[1] 血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法であって、
血液中シスタチンC量に基づく腎機能検査を受けた対象の血液中のD−セリン量を測定する工程、
D−セリン量と、所定の閾値とを比較する工程、
血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を決定する工程
を含む、前記方法。
[2] 腎機能検査結果の妥当性を検定する方法が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の偽陽性及び/又は偽陰性を判定する、項目1に記載の方法。
[3] 前記決定工程が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、腎機能低下と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値を超えた場合に、偽陽性と決定する、項目2に記載の方法。
[4] 前記決定工程が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、正常と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より低い場合に、偽陰性と決定する、項目2に記載の方法。
[5] 同一サンプルにおいて、D−セリン量及び血液中シスタチンC量が測定される、項目1〜4のいずれか一項に記載の方法。
[6] 前記対象が、免疫系の薬剤(ステロイド類、タクロリムス、抗CD20抗体、シクロヘキサミド、MMF、シクロスポリン等)を投与された対象である、項目1〜5のいずれか一項に記載の方法。
[7] 偽陰性又は真陰性と判定された対象に対し、治療介入が行われる、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
[8] 前記治療介入が、生活習慣改善、食事指導、血圧管理、貧血管理、電解質管理、尿毒素管理、血糖値管理、免疫管理及び脂質管理からなる群から選ばれる、項目7に記載の方法。
[9] 前記治療介入として、利尿薬、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、交感神経遮断薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン薬、ビグアナイド薬、α―グルコシダーゼ阻害薬、グリニド薬、インスリン製剤、NRF2活性化剤、免疫抑制剤、スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤、貧血治療薬、エリスロポエチン製剤、HIF−1阻害剤、鉄剤、電解質調整薬、カルシウム受容体作動薬、リン吸着剤、尿毒素吸着剤、DPP4阻害薬、EPA製剤、ニコチン酸誘導体、コレステロールトランスポーター阻害剤、およびPCSK9阻害剤からなる群から選ばれる少なくとも1の薬剤を前記対象に投与することを含む、項目7又は8に記載の方法。
[10] 記憶部と、入力部、分析測定部と、データ処理部と、出力部とを含み、シスタチンC量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する試料分析システムであって、
記憶部は、入力部から入力されたD−セリン量の閾値を記憶し、
記憶部は、入力部から入力された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を記憶し、
分析測定部は、血液試料中のD−セリンを分離定量し、
データ処理部は、D−セリン量を、記憶部に記憶されたD−セリン量の閾値と比較し、記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を判定し、
出力部が血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を出力する
を含む、前記試料分析システム。
[11] 記憶部と、入力部、分析測定部と、データ処理部と、出力部とを含み、シスタチンC量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する試料分析システムであって、
記憶部は、入力部から入力されたD−セリン量の閾値を記憶し、
記憶部は、入力部から入力された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を記憶し、
分析測定部は、血液試料中のD−セリンを分離定量し、
データ処理部は、D−セリン量を、記憶部に記憶されたD−セリン量の閾値と比較し、記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を判定し、
出力部が血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を出力する
を含む、前記試料分析システム。
[12] 腎機能検査結果の妥当性の判定が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の偽陽性及び/又は偽陰性を判定する、項目11に記載の試料分析システム。
[13] 前記判定が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、腎機能低下と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より低い場合に、偽陽性と判定する、項目12に記載の試料分析システム。
[14] 前記判定が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、正常と判定された一方で、D-セリン量が前記閾値より高い場合に、偽陰性と決定する、項目12に記載の試料分析システム。
[15] 同一サンプルにおいて、D−セリン量及び血液中のシスタチンC量が測定される、項目10〜14のいずれか一項に記載の試料分析システム。
[16] 入力部、出力部、データ処理部、記憶部とを含む情報処理装置に血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を決定させるプログラムであって、以下の:
入力部から入力されたD-セリン量の閾値を記憶部に記憶させ、
入力部から入力された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を記憶部に記憶させ、
入力部から入力された血液試料中のD−セリン量を記憶させ、
記憶部に記憶されたD−セリン量と、D−セリン量の閾値とを読み出し、データ処理部で比較して、閾値を上回るか下回るかについて比較の結果を記憶部に記憶させ、
記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果と、比較の結果を読み出し、腎機能検査の結果の妥当性を判定して、記憶部に記憶させ、
記憶された妥当性を出力部に出力させる
ことを前記情報処理装置に実行させるための指令を含む、前記プログラム。
[17] 入力部、出力部、データ処理部、記憶部とを含む情報処理装置に血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を決定させるプログラムであって、以下の:
入力部から入力された血液中のシスタチンC量の閾値を記憶部に記憶させ、
入力部から入力された血液試料中のシスタチンC量を記憶させ、
入力部から入力されたD-セリン量の閾値を記憶部に記憶させ、
入力部から入力された血液試料中のD−セリン量を記憶させ、
記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量と、血液中のシスタチンC量の閾値とを読み出し、データ処理部で比較して、シスタチンC量に基づく腎機能検査結果を記憶部に記憶させ、
記憶部に記憶されたD−セリン量と、D−セリン量の閾値とを読み出し、データ処理部で比較して、比較の結果を記憶部に記憶させ、
記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果と、比較の結果を読み出し、腎機能検査の結果の妥当性を判定して、記憶部に記憶させ、
記憶された妥当性を出力部に出力させる
ことを前記情報処理装置に実行させるための指令を含む、前記プログラム。
本発明は、血液中のシスタチンC量による腎機能判定にあわせて、よりGFR(イヌリンクリアランス)に対し相関の高いD−セリン量を用いることにより、血液中のシスタチンC量による腎機能判定の妥当性を判定することが可能になる。
図1は、血液中のD−セリン量(A)及びシスタチンC量(B)と、GFR(イヌリンクリアランス)(体表面積補正済み)との散布図を示したグラフである。 図2は、血液中のD−セリン量(A)及びシスタチンC量(B)と、GFR(イヌリンクリアランス)(体表面積補正無し)との散布図を示したグラフである。 図3は、血液中のD−セリン量(A)及びシスタチンC量(B)と、体表面積(BSA)との散布図を示したグラフである。 図4は、本発明の試料分析システムの構成図を示す。 図5は本発明のプログラムによる腎機能検査結果の妥当性を検定するための動作の例を示すフローチャートである。
本発明は、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法に関する。より具体的に、本発明の検定方法は、以下の:
血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査を受けた対象の血液中のD−セリン量を測定する工程、
D−セリン量と、所定の閾値とを比較する工程、
血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を決定する工程
を含む。
一の態様では、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法とは、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の偽陰性又は偽陽性を決定する方法に関する。偽陰性又は偽陽性を決定する工程は、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、腎機能低下と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より低い場合に、偽陽性と決定し、又は血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、正常と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より高い場合に、偽陰性と決定することができる。
本発明の別の態様では、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法とは、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の真陰性又は真陽性を決定する方法であってもよい。真陰性又は真陽性を決定する工程は、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、腎機能低下と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より高い場合に、真陽性と決定し、又は血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、正常と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より低い場合に、真陰性と決定することができる。
本発明において、指標として用いられるD−セリンは、タンパク質を構成するアミノ酸であるL−セリンの光学異性体である。D−セリン量は、主にセリンラセマーゼやD−アミノ酸オキシダーゼ等の代謝酵素によって、各組織や血液中で厳密に制御されている一方で、腎障害が生じた場合には血液中のD−セリン量が変動する。
本発明において「血液中のD−セリン量」とは、特定の血液量中のD−セリン量のことを指してもよく、濃度で表されてもよい。血液中のD−セリン量は、採取された血液において、遠心分離、沈降分離、あるいは分析のための前処理が行われた試料における量として測定される。したがって、血液中のD−セリン量は、採取された全血、血清、血漿等の血液に由来する血液試料における量として測定されうる。一例として、HPLCを用いた分析の場合、所定量の血液に含まれるD−セリン量は、クロマトグラムで表され、ピークの高さ・面積・形状について標準品との比較やキャリブレーションによる解析によって定量されうる。D−セリン濃度が既知のサンプルとの比較により、血液中のD−セリン量を測定することが可能であり、血液中のD−セリン量として、血液中のD−セリン濃度を用いることができる。また、酵素法では、標準品の検量線を用いた定量解析により、アミノ酸濃度を算出可能である。
補正のための式は、一例として、GFR(イヌリンクリアランス)への相関から決定しうる。イヌリンクリアランスと、血液中のD−セリン量との相関から算出された式又はグラフに、被験者のD−セリン量を代入することで決定することができる。イヌリンクリアランスは、体表面積補正済みのイヌリンクリアランスであってもよいし、体表面積補正前のイヌリンクリアランスであってもよい。体表面積補正前と補正後の糸球体濾過能力のどちらが必要かに応じて、選択することができる。
D−セリン量は、任意の方法によって測定することができ、例えばキラルカラムクロマトグラフィーを用いた測定や、酵素法を用いた測定、さらにはアミノ酸の光学異性体を識別するモノクローナル抗体を用いる免疫学的手法によって定量することができる。本発明における試料中のD−セリン量の測定は、当業者に周知ないかなる方法を用いて実施しても構わない。例えば、クロマトグラフィー法や酵素法(Y. Nagata et al., Clinical Science, 73 (1987), 105. Analytical Biochemistry, 150 (1985), 238., A. D'Aniello et al., Comparative Biochemistry and Physiology Part B, 66 (1980), 319. Journal of Neurochemistry, 29 (1977), 1053., A. Berneman et al., Journal of Microbial & Biochemical Technology, 2 (2010), 139., W. G. Gutheil et al., Analytical Biochemistry, 287 (2000), 196., G. Molla et al., Methods in Molecular Biology, 794 (2012), 273., T. Ito et al., Analytical Biochemistry, 371 (2007), 167. 等)、抗体法(T. Ohgusu et al., Analytical Biochemistry, 357 (2006), 15.,等 )、ガスクロマトグラフィー(GC)(H. Hasegawa et al., Journal of Mass Spectrometry, 46 (2011), 502., M. C. Waldhier et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 394 (2009), 695., A. Hashimoto, T. Nishikawa et al., FEBS Letters, 296 (1992), 33., H. Bruckner and A. Schieber, Biomedical Chromatography, 15 (2001), 166. , M. Junge et al., Chirality, 19 (2007), 228., M. C. Waldhier et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 4537. 等)、キャピラリー電気泳動法(CE)(H. Miao et al., Analytical Chemistry, 77 (2005), 7190., D. L. Kirschner et al., Analytical Chemistry, 79 (2007), 736., F. Kitagawa, K. Otsuka, Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3078., G. Thorsen and J. Bergquist, Journal of Chromatography B, 745 (2000), 389. 等)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(N. Nimura and T. Kinoshita, Journal of Chromatography, 352 (1986), 169., A. Hashimoto et al., Journal of Chromatography, 582 (1992), 41., H. Bruckner et al., Journal of Chromatography A, 666 (1994), 259., N. Nimura et al., Analytical Biochemistry, 315 (2003), 262., C. Muller et al., Journal of Chromatography A, 1324 (2014), 109., S. Einarsson et al., Analytical Chemistry, 59 (1987), 1191., E. Okuma and H. Abe, Journal of Chromatography B, 660 (1994), 243., Y. Gogami et al., Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3259., Y. Nagata et al., Journal of Chromatography, 575 (1992), 147., S. A. Fuchs et al., Clinical Chemistry, 54 (2008), 1443., D. Gordes et al., Amino Acids, 40 (2011), 553., D. Jin et al., Analytical Biochemistry, 269 (1999), 124., J. Z. Min et al., Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3220., T. Sakamoto et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 408 (2016), 517., W. F. Visser et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 7130., Y. Xing et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 408 (2016), 141., K. Imai et al., Biomedical Chromatography, 9 (1995), 106., T. Fukushima et al., Biomedical Chromatography, 9 (1995), 10., R. J. Reischl et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 8379., R. J. Reischl and W. Lindner, Journal of Chromatography A, 1269 (2012), 262., S. Karakawa et al., Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis, 115 (2015), 123., 等)がある。
本発明における光学異性体の分離分析系は、複数の分離分析を組み合わせてもよい。より具体的に、光学異性体を有する成分を含む試料を、移動相としての第一の液体と共に、固定相としての第一のカラム充填剤に通じて、前記試料の前記成分を分離するステップ、前記試料の前記成分の各々をマルチループユニットにおいて個別に保持するステップ、前記マルチループユニットにおいて個別に保持された前記試料の前記成分の各々を、移動相としての第二の液体と共に、固定相としての光学活性中心を有する第二のカラム充填剤に流路を通じて供給し、前記試料の成分の各々に含まれる前記光学異性体を分割するステップ、及び前記試料の成分の各々に含まれる前記光学異性体を検出するステップを含むことを特徴とする光学異性体の分析方法を用いることにより、試料中のD-/L-アミノ酸量を測定することができる(特許第4291628号)。HPLC分析では、予めo−フタルアルデヒド(OPA)や4−フルオロ−7−ニトロ−2,1,3−ベンゾキサジアゾール(NBD−F)のような蛍光試薬でD−及びL−アミノ酸を誘導体化したり、N−tert−ブチルオキシカルボニル−L−システイン(Boc−L−Cys)等を用いてジアステレオマー化する場合がある(浜瀬健司及び財津潔、分析化学、53巻、677−690(2004))。代替的には、アミノ酸の光学異性体を識別するモノクローナル抗体、例えばD−セリン、L−セリン等に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いる免疫学的手法によってD−アミノ酸を測定することができる。また、D体及びL体の合計量を指標とする場合、D体及びL体を分離して分析する必要はなく、D体及びL体を区別せずにアミノ酸を分析することもできる。その場合も酵素法、抗体法、GC、CE、HPLCで分離及び定量することができる。
本発明において検定対象であるシスタチンCは、全身の有核細胞から一定の割合で産生される分子量13kDaのタンパク質で、すべて糸球体で濾過された後に尿細管での再吸収を経て腎臓で分解される。濾過量に応じて血液から除去されることから腎機能の指標として、血液中のシスタチンC量、又は血液中のシスタチンC量から推算される糸球体濾過量が用いられる。日本では、イヌリンクリアランスを標準とした推算式が開発されている。しかしながら、体格の影響や、疾患や薬剤投与の有無により血液中シスタチンC量が変動することが知られている。また、血液中シスタチンC量は、高度に腎機能が低下した場合には上昇が頭打ちとなり、標準的な対象であっても、30mL/分/1.73m2以下の値では、正しい評価ができないことも知られている。
上述のように、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査について問題が報告されているものの、これまで汎用されてきた実績から、健康診断において腎機能検査として血液中のシスタチンC量及び/又は血液中のシスタチンC量に基づく推算糸球体濾過量が多く採用されている。例えば血液中のシスタチンC量の場合、男性であれば0.95mg/Lを閾値とし、女性であれば0.87mg/Lを閾値とされ、それを上回ると、腎機能が低下していると判定され、下回っていれば正常であると判定される。また、推算糸球体濾過量を用いる場合、日本では、イヌリンクリアランスを標準とした推算式に基づいて推算糸球体濾過量が計算され、閾値として60.0mL/分/1.73m2が用いられ、この閾値を下回ると腎機能が低下していると判定され、上回っていれば正常であると判定される。血液中のシスタチンC量及び推算糸球体濾過量において、腎機能の低下を示す閾値は、学会主導の調査等で変更されることがあり、上述の数値に捕らわれることを意図するものではない。体格の影響を直接受ける血液中のシスタチンC量はもちろんのこと、年齢と性別で補正された推算糸球体濾過量の場合であっても、疾病に罹患したり、薬剤を投与された特殊な被験者では、偽陽性の問題及び偽陰性の問題が生じることになる。健康診断等の一次スクリーニングの結果に、偽陰性の結果が含まれることにより、初期の腎臓病を見逃しているという実態がある。腎機能は基本的に一度失われると回復が見込めないことから、初期の腎臓病について、偽陰性を見逃さずに腎機能を判定することが好ましい。また、偽陽性が含まれていた場合、対象は通常2次検査を受診することになり、そこでほかの症候やマーカー等の値から総合的に腎臓病が判断されるが、個別の腎機能の確定にはイヌリンクリアランスの測定が推奨されており、対象のみならず、医療関係者への負担が大きい。上述の通りシスタチンCは、測定レンジが狭いことから、腎機能低下を示す対象において、陰性と判定してしまう可能性が高い。その一方で、血液中のD−セリン量は、腎機能低下についても、イヌリンクリアランスに対して軽度〜高度の広いレンジにおいて相関が高く、シスタチンC検査の偽陰性を判定できる。また、シスタチンC量は、体格による影響が大きいことも偽陰性・偽陽性を招く原因である一方で、血液中のD−セリンは、体表面積(BSA)への相関を示さず、どのような体格の対象においても偽陰性・偽陽性を招く可能性が低い。
本発明において、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査とは、血液中のシスタチンC量を用いた検査であってもよいし、血液中のシスタチンC量から導かれた数値を利用する検査であってもよい。血液中のシスタチンC量から導かれた数値としては、一例として推算糸球体濾過量であるが、これに限定されることを意図するものではない。血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査を受けた対象とは、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査を予め受けていてもよいし、同時に受けてもよい。腎機能検査を同時に受けるとは、同日に採取された同一血液試料又は異なる血液試料を用いて検査されてもよいし、異日に採取された血液試料を用いて検査されてもよい。
血液中のD−セリン量は、理論に限定されることを意図するものではないが、血液中シスタチンC量とは異なり体格による影響は少ないことに加えて、血液中のシスタチンC量に比較して、イヌリンクリアランスへの相関が高いことが利点である。したがって、血液中のD−セリン量を、従来の健康診断等で測定された血液中のシスタチンC量や、血液の中シスタチンC量に基づく推算糸球体濾過量に付随する偽陽性又は偽陰性の問題を解決することができる。
本発明において、偽陽性とは、第一種過誤のことを指す。具体的に、血液中のシスタチンC量及び/又は血液中のシスタチンC量に基づく推算糸球体濾過量による検査では陽性(すなわち、腎機能低下)と判定された一方で、実際は腎機能低下を患っていないことをいう。偽陰性とは、第二種過誤のことを指す。具体的に血液中のシスタチンC量及び/又は血液中のシスタチンC量に基づく推算糸球体濾過量による検査では陰性(すなわち、腎機能正常)と判定された一方で、実際は腎機能低下を患っているこということをいう。理論に限定されることを意図するものではないが、ステロイドやシクロスポリンのような免疫に作用する薬剤を投与された対象では、血液中のシスタチンC量及び/又は血液中シスタチンC量に基づく推算糸球体濾過量による検査において、偽陽性の可能性が増加する。偽陽性及び偽陰性、さらには真陽性及び真陰性については下記の表を参照することで容易に理解することができる。
Figure 2020080482
偽陽性の決定は、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、腎機能低下と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より低い場合に、偽陽性と決定することにより行われる。偽陰性の決定は、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、正常と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より高い場合に、偽陰性と決定することにより行われる。これらの閾値は、対象の要素、例えば性別、年齢、体重等の区分によらず1の値を用いてもよいし、区分にしたがってそれぞれ決定されてもよい。
本発明において、偽陽性又は偽陰性を検定する方法は、真陽性又は真陰性を検定する方法と換言することもできる。具体的に、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、腎機能低下と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値を超えた場合に、真陽性と決定することにより行われる。真陰性の決定は、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、正常と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より高いい場合に、真陰性と決定することにより行われる。
本発明の検定方法は、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査を受けた対象の血液試料について行われるが、かかる血液試料は、血液中のシスタチンC量を測定するために用いた血液試料と同一試料であってもよいし、血液中のシスタチンC量を測定するために用いた血液試料とは、異なる時点で採取された試料であってもよい。
本発明の妥当性の検定方法は、閾値との比較により行われることから医師による判断を含まない。本発明の検定方法の結果に基づくことで、医師は腎臓病をより正確に診断することができる。したがって、本発明の検定方法は、診断の予備的方法又は診断の補助方法である。本発明の方法は、医師以外の者、例えば血液の分析業者、健康診断業者、データ処理会社、分析システム、及び分析プログラム等により実施されうる。本発明のさらに別の態様では、本発明の妥当性の検討方法を利用し、腎機能又は腎臓病を診断する方法に関してもよい。
本発明の、偽陽性及び偽陰性の検定により、腎機能の低下と判定された場合、腎機能のさらなる悪化を防ぐために早期治療又は保健指導が特に有効である。保健指導は、主に、生活習慣改善、食事指導、血圧管理、血糖値管理、及び脂質管理等が、独立に又は組み合わせて指導される。食事指導としては、減塩及びタンパク質制限が行われる。血圧管理としては、130/80mmHg以下となるように、管理が行われうる。血糖値は、Hba1c6.9%未満に管理が行われる。脂質管理では、LDL−C120mg/dL未満となるよう管理される。生活習慣改善としては、禁煙及びBMI値の25未満への減量等が推奨される。
腎機能の低下が判定された場合、治療介入がされてもよい。治療介入としては、血圧管理、血糖値管理、貧血管理、電解質管理、尿毒素管理、免疫管理及び脂質管理等が、独立に又は組み合わせて行われる。この中でも特に、血圧管理、血糖値管理、貧血管理、電解質管理、尿毒素管理、免疫管理、脂質管理については、投薬による治療が行われうる。血圧管理としては、130/80mmHg以下となるように、管理され、場合により高血圧治療薬が投与されうる。高血圧治療薬としては、利尿薬(サイアザイド系利尿薬、例えばトリクロルメチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、サイアザイド系類似利尿薬、例えばメチクラン、インダバミド、トリバミド、メフルシド、ループ利尿薬、例えばフロセミド、カリウム保持性利尿薬・アルドステロン拮抗薬、例えばトリアムテレン、スピロノラクトン、エプレレノン)、カルシウム拮抗薬(ジヒドロピリジン系、例えばニフェジピン、アムロジピン、エホニジピン、シルニジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニルバジピン、バルニジピン、フェロジピン、ベニジピン、マニジピン、アゼルニジピン、アラニジピン、ベンゾチアゼピン系、ジルチアゼム)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(カプトプリル、エナラプリル、アセラプリル、デラプリル、シラザプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、イミダプリル、テモカプリル、キナプリル、トランドラプリル、ベリンドプリルエルブミン)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬、例えばロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン、イルベサルタン、アジルサルタン)、交感神経遮断薬(β遮断薬、例えばアテノロール、ビソプロロール、ベタキソロール、メトプロロール、アセプトロール、セリプロロール、プロプラノロール、ナドロール、カルテオロール、ピンドロール、ニプラジロール、アモスラロール、アロチノロール、カルベジロール、ラベタロール、ベバントロール、ウラピジル、テラゾシン、ブラゾシン、ドキサゾシン、ブナゾシン)等が用いられうる。貧血治療薬としてはエリスロポエチン製剤、鉄剤、HIF−1阻害剤等が用いられる。電解質調整薬としてカルシウム受容体作動薬(シナカルセト、エテルカルセチド等)、リン吸着剤が用いられる。尿毒素吸着剤として活性炭等が用いられる。血糖値は、Hba1c6.9%未満になるように管理され、場合により血糖降下薬が投与される。血糖降下薬として、SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン、ダパグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン等)、DPP4阻害薬(シタグリプチンリン酸、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン、テネリグリプチン、トレラグリプチン、アナグリプチン、オマリグリプチン)、スルホニル尿素薬(トルブタミド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリクロピラミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリド等)、チアゾリジン薬(ピオグリタゾン等)、ビグアナイド薬(メトホルミン、ブホルミン等)、α―グルコシダーゼ阻害薬(アカルボース、ボグリボース、ミグリトール等)、グリニド薬(ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニド)インスリン製剤、NRF2活性化剤(バルドキソロンメチル等)等が用いられる。免疫管理としては、免疫抑制剤(ステロイド類、タクロリムス、抗CD20抗体、シクロヘキサミド、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)等)が用いられる。脂質管理では、LDL−C120mg/dL未満となるよう管理され、場合により脂質異常症治療薬、例えばスタチン系薬剤(ロスバスタチン、ピタバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン等)、フィブラート系薬剤(クロフィブラート、ベザフィブラート、フェノフィブラート、クリノフィブラート)、ニコチン酸誘導体(ニコチン酸トコレロール、ニコモール、ニセリトロール)、コレステロールトランスポーター阻害剤(エゼチミブ)、PCSK9阻害剤(エボロクマブ等)、EPA製剤等が用いられる。いずれの薬剤も剤形は単剤でも合剤でもよい。腎機能の低下が著しく生命予後に危険が及ぶ場合は、腹膜透析、血液透析、持続的血液濾過透析、血液アフェレーシス(血漿交換、血漿吸着等)や腎移植のような腎代替療法が施される。
本発明の別の態様では、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法を実行する試料分析システム又はプログラムに関していてもよい。図4は、本発明の試料分析システムの構成図である。図4に示す試料分析システム10は、本発明の血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の偽陰性及び偽陽性を検定する方法を実施することができるように構成される。このような試料分析システム10は、記憶部11と、入力部12、分析測定部13と、データ処理部14と、出力部15とを含んでおり、血液試料を分析し、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果について、妥当性、すなわち真陰性、真陽性、偽陰性、又は偽陽性を出力することができる。
より具体的に、本発明の試料分析システム10において、
記憶部11は、入力部12から入力されたD−セリン量の閾値を記憶し、
記憶部11は、入力部12から入力された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を記憶し、
分析測定部13は、血液試料中のD−セリンを分離定量し、
データ処理部14は、D−セリン量を、記憶部に記憶されたD−セリン量の閾値と比較し、記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を判定し、
出力部15が血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を出力することができる。
さらに好ましい態様では、本発明の試料分析システムは、記憶部11が、入力部12から入力された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を記憶する工程に代えて、分析測定部13が、血液試料中のシスタチンC量を決定する工程を含んでもよい。この場合、さらにデータ処理部14が、血液試料中のシスタチンC量に基づいて、腎機能検査の結果を判定し、判定された結果を記憶部が記憶する工程を含んでもよい。この場合、記憶部11が入力部12から入力された血液中のシスタチンC量についての閾値を予め記憶し、データ処理部14が血液中のシスタチンC量と、記憶された血液中のシスタチンC量についての閾値とを比較することで腎機能検査の結果が判定される。
より具体的に、ある態様の本発明の試料分析システム10において、
記憶部11は、入力部12から入力された血液中のシスタチンC量の閾値を記憶し、
記憶部11は、入力部12から入力されたD−セリン量の閾値を記憶し、
分析測定部13は、血液試料中のシスタチンC量を測定し、
データ処理部14は、記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量の閾値と血液試料中のシスタチンC量とを比較し、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を判定し
分析測定部13は、血液試料中のD−セリンを分離定量し、
データ処理部14は、血液中のD−セリン量を、記憶部に記憶されたD−セリン量の閾値と比較し、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を判定し、
出力部15が血液中シスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を出力することができる。
血液中のシスタチンC量として、血液中のシスタチンC量から導かれた数値(例えば推算糸球体濾過量)を使用することもできる。一例として、血液中のシスタチンC量から導かれた数値を用いる場合、記憶部11は入力部12から入力された対象の年齢及び性別等のその他の要素を記憶し、さらに血液中のシスタチンC量から導かれた数値を算出する式又はグラフを記憶し、データ処理部14が、測定された血液中のシスタチンC量と、記憶部11に記憶された対象の年齢及び性別等のその他の要素と、血液中のシスタチンC量から導かれた数値を算出する式又はグラフとから数値を算出する工程を含んでもよい。推算糸球体濾過量の閾値としては、一例として60mL/分/1.73m2を用いることができる。
より具体的に、推算糸球体濾過量を用いる場合、本発明の試料分析システム10において、
記憶部11は、入力部12から入力された血液中のシスタチンC量に基づく推算糸球体濾過量の算出式を記憶し、
記憶部11は、入力部12から入力された被験者の年齢及び性別を記憶し、
記憶部11は、入力部12から入力された血液中のシスタチンC量に基づく推糸球体濾過量の閾値を記憶し、
記憶部11は、入力部12から入力されたD−セリン量の閾値を記憶し、
分析測定部13は、血液試料中のシスタチンC量を測定し、
データ処理部14は、血液中のシスタチンC量と、記憶部に記憶された被験者の年齢、性別と、推算糸球体濾過量の算出式から、推算糸球体濾過量を算出し、
データ処理部14は、記憶部に記憶された推算糸球体濾過量の閾値と算出された推算糸球体濾過量とを比較し、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を判定し、
分析測定部13は、血液試料中のD−セリンを分離定量し、
データ処理部14は、血液中のD−セリン量を、記憶部に記憶されたD−セリン量の閾値と比較し、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を判定し、
出力部15が血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を出力することができる。
データ処理部14において腎機能検査の結果の妥当性は、D−セリン量とその閾値との比較により、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性が決定される。具体的には、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、腎機能低下と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より低い場合に、偽陽性と決定し、D−セリン量が前記閾値より高い場合に、真陽性と決定することができる。一方で、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、正常と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より高い場合に、偽陰性と決定し、D−セリン量が前記閾値より低い場合に、真陰性と決定することができる。
記憶部11は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等のメモリ装置、ハードディスクドライブ等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。記憶部は、分析測定部で測定したデータ、入力部から入力されたデータ及び指示、データ処理部で行った演算処理結果等の他、情報処理装置の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース等を記憶する。コンピュータプログラムは、例えばCD−ROM、DVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体や、インターネットを介してインストールされてもよい。コンピュータプログラムは、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部にインストールされる。記憶部は、予め入力部12から入力されたD−セリン量の閾値、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を記憶することができる。さらには、腎機能検査のための血液中のシスタチンC量の閾値を記憶することができる。また、血液中のシスタチンC量の代わりに推算糸球体濾過量を用いる場合には、推算糸球体濾過量の閾値を記憶してもよく、さらには血液中のシスタチンC量に基づく推算糸球体濾過量の算出式を記憶し、また被験者の年齢、性別を記憶することができる。また、分析測定部13が測定した結果や、データ処理部14が行った処理の結果も記憶する。
入力部12は、インターフェイス等であり、キーボード、マウス等の操作部も含む。これにより、入力部は、分析測定部13で測定したデータ、データ処理部14で行う演算処理の指示等を入力することができる。また、入力部12は、例えば分析測定部13が外部にある場合は、操作部とは別に、測定したデータ等をネットワークや記憶媒体を介して入力することができるインターフェイス部を含んでもよい。
分析測定部13は、血液試料におけるD−セリンの測定工程を行う。したがって、分析測定部13は、アミノ酸のD体及びL体の分離及び測定を可能にする構成を有する。アミノ酸は、1つずつ分析されてもよいが、一部又は全ての種類のアミノ酸についてまとめて分析することができる。分析測定部13は、以下のものに限定されることを意図するものではないが、例えば試料導入部、光学分割カラム、検出部を備えたキラルクロマトグラフィーシステム、好ましくは高速液体クロマトグラフィーシステムであってもよい。特定のアミノ酸量のみを検出する観点では、酵素法や免疫学的手法による実施してもよい。分析測定部13は、試料分析システムとは別に構成されていてもよく、測定したデータ等をネットワークや記憶媒体を用いて入力部12を介して入力してもよい。さらに、別の態様では、分析測定部13は、血液中のシスタチンC量を測定することもできる。
データ処理部14は、記憶部に記憶しているプログラムに従って、分析測定部13で測定され記憶部11に記憶されたデータに対して、各種の演算処理を実行する。演算処理は、データ処理部に含まれるプロセッサ又はCPUによりおこなわれる。このプロセッサ又はCPUは、分析測定部13、入力部12、記憶部11、及び出力部15を制御する機能モジュールを含み、各種の制御を行うことができる。これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。データ処理部14は、D−セリン量を、記憶部に記憶されたD−セリン量の閾値と比較し、記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を判定する。別の態様では、データ処理部14は、血液中のシスタチンC量と、記憶部に記憶された被験者の年齢、性別と、推算糸球体濾過量の算出式から、推算糸球体濾過量を算出することができる。この場合、データ処理部14は、さらに、記憶部に記憶された推算糸球体濾過量の閾値と算出された推算糸球体濾過量とを比較し、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の判定も行うことができる。
出力部15は、データ処理部で判定された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性、すなわち真陰性、真陽性、偽陰性、又は偽陽性を出力するように構成される。さらに出力部15は、分析測定部13で測定されたD−セリン量、血液中のシスタチンC量、又はデータ処理部14で算出された推算糸球体濾過量を、上述の妥当性と併せて出力してもよい。出力部15は、演算処理の結果を直接表示する液晶ディスプレイ等の表示装置、プリンタ等の出力手段であってもよいし、外部記憶装置への出力又はネットワークを介して出力するためのインターフェイス部であってもよい。
図5は、本発明のプログラムによる糸球体濾過量を決定するための動作の例を示すフローチャートである。具体的に、本発明のプログラムは、入力部、出力部、データ処理部、記憶部とを含む情報処理装置に血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を決定させるプログラムである。本発明のプログラムは、以下の:
入力部から入力されたD−セリン量の閾値を記憶部に記憶させ、
入力部から入力された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を記憶部に記憶させ、
入力部から入力された血液試料中のD−セリン量を記憶させ、
記憶部に記憶されたD−セリン量と、D−セリン量の閾値とを読み出し、データ処理部で比較して、閾値を上回るか下回るかについて比較の結果を記憶部に記憶させ、
記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果と、比較の結果を読み出し、腎機能検査の結果の妥当性を判定して、記憶部に記憶させ、
記憶された妥当性を出力部に出力させる
ことを前記情報処理装置に実行させるための指令を含む。本発明のプログラムは、記憶媒体に格納されてもよいし、インターネット又はLAN等の電気通信回線を介して提供されてもよい。
腎機能検査の結果の妥当性は、腎機能検査の結果と、比較の結果に基づいて決定される。具体的には、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、腎機能低下と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より低い場合に、偽陽性と決定し、D−セリン量が前記閾値より高い場合に、真陽性と決定することができる。一方で、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、正常と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より高い場合に、偽陰性と決定し、D−セリン量が前記閾値より低い場合に、真陰性と決定することができる。
本発明のプログラムは、入力部12から血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を入力する代わりに、入力部12から血液中のシスタチンC量を入力することで、データ処理部14が、記憶部11に記憶された血液中のシスタチンC量の閾値と比較して、腎機能検査の結果を判定させる指令を含んでもよい。
より具体的に、本発明のプログラムは、入力部12から入力された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を記憶部11に記憶させる指令に代えて、以下の:
入力部12から入力された血液中のシスタチンC量の閾値を記憶部11に記憶させ、
入力部12から入力された血液中のシスタチンC量を記憶部11に記憶させ、
記憶部11に記憶された血液中のシスタチンC量と、血液中シスタチンC量の閾値とを読み出し、データ処理部14で比較して、閾値を上回るか下回るかにより、腎機能検査の結果を判定して、腎機能検査の結果を記憶部11に記憶させる
指令を含むプログラムであってもよい。
情報処理装置が、分析測定部13を備える場合に、入力部12から血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を入力する代わりに、分析測定部13に血液試料中のD−セリン量を分離定量させ、データ処理部14が、記憶部11に記憶された血液中のシスタチンC量の閾値と比較することで、腎機能検査の結果を判定する指令を含んでもよい。
より具体的に、本発明のプログラムは、入力部12から入力された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を記憶部11に記憶させる指令に代えて、以下の:
入力部12から入力された血液中のシスタチンC量の閾値を記憶部11に記憶させ、
分析測定部13を作動させて血液中シスタチンC量を測定し、記憶部11に記憶させ、
記憶部11に記憶された血液中のシスタチンC量と、血液中のシスタチンC量の閾値とを読み出し、データ処理部14で比較して、腎機能検査の結果を判定して、腎機能検査の結果を記憶部11に記憶させる
指令を含むプログラムであってもよい。
血液中のシスタチンC量に代えて、血液中のシスタチンC量から算出した推算糸球体濾過量を用いるプログラムを用いてもよい。この場合、さらに入力部から入力された推算糸球体濾過量を記憶部に記憶させる指令に代えて、
入力部12から入力された被験者の年齢、性別を記憶部11に記憶させ、
入力部12から入力された、血液中のシスタチンC量に基づく推算糸球体濾過量の算出式を記憶部11に記憶させ、
分析測定部13に血液試料中のシスタチンC量を測定させて、記憶部11に記憶させ、
データ処理部に、記憶部に記憶された年齢、性別、及び血液中のシスタチンC量を算出式に代入させて、推算糸球体濾過量を算出して、記憶部11に記憶させる
指令を含んでもよい。
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
被験者集合
診断及び/又は治療目的のために大阪大学医学部付属病院腎臓内科((Department of Nephrology,Osaka University Hospital))に、2016年〜2017年の間に入院した慢性腎臓病(CKD)患者からなるコホートから、11人の患者について、後ろ向き研究に用いた。それとは別に、国立医薬基盤・健康・栄養研究所で15名の20歳以上の健常ボランティアを採用した。試験プロトコルは、各施設における倫理委員会により承認され、かつすべての被験者から書類によるインフォームドコンセントを取得した。
健常者及び慢性腎臓病患者の情報は下記の通りである:
Figure 2020080482
イヌリン腎臓クリアランスの計測方法
被験者のイヌリンクリアランス(Cin)を、Clin Exp Nephrol 13,50−54(2009)に記載された標準方法に従い、血漿及び尿のイヌリン濃度、並びに尿体積から計算した。簡潔に記載すると、絶食、服薬延期、及び水負荷環境下で、1%のイヌリン(イヌリード注:株式会社富士薬品)を2時間の持続静脈内点滴の間に、血液及び尿サンプルを異なる3時点で採取した。被験者は、点滴の30分前に、経口で500mLの水を飲水した。水負荷を維持するために、イヌリン点滴の開始後、60mLの水を40、60、90分で飲水した。点滴の初期速度は、最初の30分間について、300mL/hであり、続いて90分について100mL/hとした。イヌリン点滴の開始後、45、75、及び105分において血液試料を採取した。被験者は、点滴開始後、30分で完全に膀胱を空にするように排尿した。次に、尿サンプルを、30分〜60分の間、60分〜90分の間、及び90〜120分の間で採取した。イヌリンは、酵素法を用いて計測した。3つのCin値の平均を、標準方法によるCin(Cin−ST)として用いた。
血液中D−アミノ酸の測定
サンプル調整
ヒト血漿からのサンプル調整を、下記のとおり行った:
20倍体積のメタノールを血漿に添加し、完全に混合した。遠心後、メタノールホモジェネートから得られた上清の10μLを褐色チューブに移し、減圧乾燥させた。残渣に対し、20μLの200mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)及び5μLの蛍光標識試薬(無水MeCN中に40mMの4−フルオロ―7−ニトロ−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール(NBD−F))を添加し、次いで60℃で2分加熱した。75μlの0.1%TFA水溶液(v/v)を加えて反応を止め、そして2μLの反応混合液を2次元HPLCに供した。
2次元HPLCによるアミノ酸光学異性体の定量
アミノ酸光学異性体を、以下の2次元HPLCシステムを用いて定量した。アミノ酸のNBD誘導体を、逆相カラム(KSAA RP、1.0mmi.d. ×400mm;株式会社資生堂)を用い移動相(5〜35%MeCN、0〜20%THF、及び0.05%TFA)で分離、溶出した。カラム温度は45℃、移動相の流速は25μL/分に設定した。分離したアミノ酸の画分を、マルチループバルブを用いて分取し、連続的にキラルカラム(KSAACSP−001S,1.5mmi.d.×250mm;資生堂)で光学分割した。移動相として、アミノ酸の保持に応じて、クエン酸(0〜10mM)又はギ酸(0〜4%)含むMeOH− MeCNの混合用液を用いた。NBD−アミノ酸は、470nmの励起光を用い、530nmで蛍光検出した。NBD−アミノ酸の保持時間は、アミノ酸光学異性体の標準品により同定し、検量線により定量した。
GFR(イヌリンクリアランス)との相関解析
(1)体表面積補正有
26名の被験者について、体表面積補正を行ったGFR(イヌリンクリアランス)と、血液中のD−セリン量(A)、シスタチンC量(B)とを散布図にプロットし、相関係数rとp値を算出した。結果を図1に示す。血液中のD−セリン量がGFR(イヌリンクリアランス)に対して、血液中のシスタチンC量と同等であることが示された。また、GFR(イヌリンクリアランス)100以下(n=21)のデータ解析において、血液中のD−セリン量と体表面積補正を行ったGFR(イヌリンクリアランス)との相関と、血液中のシスタチンC量と体表面積補正を行ったGFR(イヌリンクリアランス)との相関を解析した。GFR100以下においては血液中のD−セリン量とGFR(イヌリンクリアランス)との相関係数r値及びp値はそれぞれ−0.713及び0.00042であり、血液中のシスタチンC量とGFR(イヌリンクリアランス)との相関係数r値及びp値はそれぞれ−0.656及び0.0013であった。GFR100以下においては血液中のD−セリン量とGFR(イヌリンクリアランス)との相関は、血液中のシスタチンC量とGFR(イヌリンクリアランス)との相関よりも高いことが示された。
(2)体表面積補正無
26名の被験者について、体表面積補正を行っていないGFR(イヌリンクリアランス)と、血液中のD−セリン量(A)、シスタチンC量(B)とを散布図にプロットし相関係数rとp値を算出した。結果を図2に示す。血液中のD−セリン量が体表面積補正無しGFR(イヌリンクリアランス)に対して、血液中のシスタチンC量よりも相関が高いことが示された。
体表面積(BSA)との相関
健常者(GFR>70)のデータについて、体表面積(BSA)と、測定した血液中のD−セリン量及びシスタチンC量とを散布図に表し、相関係数r値及びp値を算出した。結果を図3に示す。シスタチンC量が、体表面積に相関するのに対し、血液中のD−セリン量は体表面積とは相関しなかった。

Claims (13)

  1. 血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する方法であって、
    血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査を受けた対象の血液中のD−セリン量を測定する工程、
    D−セリン量と、所定の閾値とを比較する工程、及び
    血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を決定する工程
    を含む、前記方法。
  2. 腎機能検査結果の妥当性を検定する方法が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の偽陽性及び/又は偽陰性を判定する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記決定工程が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、腎機能低下と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より低い場合に、偽陽性と決定する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記決定工程が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、正常と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より高い場合に、偽陰性と決定する、請求項2に記載の方法。
  5. 同一サンプルにおいて、D−セリン量及び血液中のシスタチンC量が測定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記対象が、免疫系に作用する薬剤を投与された対象である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 記憶部と、入力部、分析測定部と、データ処理部と、出力部とを含み、シスタチンC量に基づく腎機能検査結果の妥当性を検定する試料分析システムであって、
    記憶部は、入力部から入力されたD−セリン量の閾値を記憶し、
    記憶部は、入力部から入力された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を記憶し、
    分析測定部は、血液試料中のD−セリンを分離定量し、
    データ処理部は、D−セリン量を、記憶部に記憶されたD−セリン量の閾値と比較し、記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を判定し、
    出力部が血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を出力する
    を含む、前記試料分析システム。
  8. 腎機能検査結果の妥当性の判定が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査結果の偽陽性及び/又は偽陰性を判定する、請求項7に記載の試料分析システム。
  9. 前記判定が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、腎機能低下と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より低い場合に、偽陽性と判定する、請求項8に記載の試料分析システム。
  10. 前記判定が、血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査により、正常と判定された一方で、D−セリン量が前記閾値より高い場合に、偽陰性と決定する、請求項8に記載の試料分析システム。
  11. 同一サンプルにおいて、D−セリン量及び血液中のシスタチンC量が測定される、請求項7〜10のいずれか一項に記載の試料分析システム。
  12. 入力部、出力部、データ処理部、記憶部とを含む情報処理装置に血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を決定させるプログラムであって、以下の:
    入力部から入力されたD−セリン量の閾値を記憶部に記憶させ、
    入力部から入力された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果を記憶部に記憶させ、
    入力部から入力された血液試料中のD−セリン量を記憶させ、
    記憶部に記憶されたD−セリン量と、D−セリン量の閾値とを読み出し、データ処理部で比較して、閾値を上回るか下回るかについて比較の結果を記憶部に記憶させ、
    記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果と、比較の結果を読み出し、腎機能検査の結果の妥当性を判定して、記憶部に記憶させ、
    記憶された妥当性を出力部に出力させる
    ことを前記情報処理装置に実行させるための指令を含む、前記プログラム。
  13. 入力部、出力部、データ処理部、記憶部とを含む情報処理装置に血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果の妥当性を決定させるプログラムであって、以下の:
    入力部から入力された血液中のシスタチンC量の閾値を記憶部に記憶させ、
    入力部から入力された血液試料中のシスタチンC量を記憶させ、
    入力部から入力されたD-セリン量の閾値を記憶部に記憶させ、
    入力部から入力された血液試料中のD−セリン量を記憶させ、
    記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量と、血液中のシスタチンC量の閾値とを読み出し、データ処理部で比較して、シスタチンC量に基づく腎機能検査結果を記憶部に記憶させ、
    記憶部に記憶されたD−セリン量と、D−セリン量の閾値とを読み出し、データ処理部で比較して、比較の結果を記憶部に記憶させ、
    記憶部に記憶された血液中のシスタチンC量に基づく腎機能検査の結果と、比較の結果を読み出し、腎機能検査の結果の妥当性を判定して、記憶部に記憶させ、
    記憶された妥当性を出力部に出力させる
    ことを前記情報処理装置に実行させるための指令を含む、前記プログラム。
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