JP6868878B2 - 糸球体濾過能力の決定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、糸球体濾過能力の決定方法、及び糸球体ろ過能力を決定する血液分析システムに関する。
腎機能を表す代表的な指標として糸球体濾過量(Glomerular Filtration Rate:GFR)がある。糸球体濾過量は、糸球体で血液から1分間に濾過される液量を表し、イヌリンクリアランスの測定はその国際的な標準(ゴールドスタンダード)とされている。しかしながら、イヌリンクリアランスの測定は、2時間にわたるイヌリンの持続点滴、及び複数回にわたる採尿及び採血が必要であり、被験者及び実施者の負担が大きい。したがって、日常臨床においてイヌリンクリアランスの測定は生体腎移植の際のドナーのような限られた状況でのみ実施されるに留まっており、クレアチニンのような他のマーカーの測定で代替されることが大半である。多くのマーカーの値はゴールドスタンダードであるイヌリンクリアランス等の実際の糸球体濾過量との乖離が大きく、腎臓病の正確な診断の障害となっている。
クレアチニンは、腎機能の指標として臨床現場で汎用的に測定される。クレアチニンは筋肉の収縮に必要なクレアチンの最終代謝物である。肝臓で生成されたクレアチンは筋細胞に取り込まれ、一部が代謝されてクレアチニンとなり、血液を介して腎臓へ運ばれ、糸球体で濾過された後、尿細管で再吸収されることなく尿中へ***される。糸球体濾過能力が低下した場合に排出が障害され、血液中に留まって数値が上昇することで尿毒素蓄積の有益な指標となるため、腎機能の評価に利用される。しかし、血液中のクレアチニン量は、GFRが50%以上低下しないと明らかな異常値を示さず、鋭敏なマーカーとはいえない。
シスタチンCは全身の有核細胞から一定の割合で産生される分子量13.36kDaのタンパク質で、すべて糸球体で濾過された後に尿細管での再吸収を経て腎臓で分解されることから、濾過量に応じて血液中から除去されると考えられ、血液中の量がGFRの指標となる。しかし、腎機能が高度に低下した時には血液中のシスタチンC量の上昇は鈍化し、末期の腎臓病では正確な腎機能評価が困難である。
以上のように、被験者・患者に大きな負担をかけることなく、採血のみで早期から末期の広いレンジで個別患者の正確な糸球体濾過量を測定したいという臨床現場の要求に十分応えることのできるバイオマーカーは存在していなかった。
従来、哺乳類の生体内には存在しないと考えられていたD−アミノ酸が、様々な組織に存在し、生理機能を担うことが明らかにされてきている。また、血液中のD−セリン、D−アラニン、D−プロリン、D−グルタミン酸、D−アスパラギン酸の量が、腎不全患者で変動し、クレアチニンと相関することから腎不全のマーカーになり得ることが示されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。さらに、D−セリン、D−スレオニン、D−アラニン、D−アスパラギン、D−アロスレオニン、D−グルタミン、D−プロリン及びD−フェニルアラニンからなるグループから選択されるアミノ酸が、腎臓病の病態指標値とすることについて開示されている(特許文献1)。これらの文献では、健常者と比較して、腎臓病を患う患者の血液中のD−アミノ酸が変動していることから、これらの変動を指標にして腎臓病の診断が可能になる旨、あるいは単に対象における血液中のD−セリン量が、クレアチニン量又はクレアチニン量を補正した推算値との相関が開示されているに過ぎず、血液中のD−アミノ酸量が直接的にゴールドスタンダードであるイヌリンクリアランスに相関し糸球体濾過能力が決定(推定)できることについては何ら記載も示唆もされていない。なお、近年、腎臓病のマーカーとして、尿中L−FABP、血液中NGAL、尿中KIM−1等が開発されてきているが、それらは糸球体濾過能力と相関するものではない。
国際公開第2013/140785号
Fukushima,T.ら、Biol. Pharm. Bull. 18: 1130(1995) Nagata.Y Viva Origino Vol.18(No.2) (1990)第15回学術講演会講演要旨集 Ishidaら、北里医学 23:51〜62 (1993) Yong Huangら、Biol. Pharm. Bull. 21:(2)156-162(1998)
現在までに知られている血液中のクレアチニン量等の腎機能マーカーと比較して、より広い範囲で正確に、被験者の糸球体濾過能力を決定する方法が望まれている。
本発明者らは、血液中のD−セリンに着目し、GFR(イヌリンクリアランス)との関係を解析したところ、驚くべきことに、健常から早期〜末期のステージにある腎臓病患者の血液検体において、クレアチニン量やシスタチンC量よりも、血液中のD−セリン量が全てのステージにおいてGFR(イヌリンクリアランス)に対して高い相関を示すことを見出し、本発明に至った。
そこで、本発明は下記に関する:
[1] 血液中のD−セリン量に基づく、糸球体濾過能力の決定方法。
[2] 前記糸球体濾過能力が、イヌリンクリアランスと、血液中のD−セリン量との相関から算出された式に基づき決定される糸球体濾過量である、項目1に記載の方法。
[3] 前記血液が、既存の検査により腎臓病の疑いがあると判定された対象の血液である、項目1又は2に記載の方法。
[4] 糸球体濾過能力の低下が判定された対象に対して、治療介入が行われる、項目1〜3のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記治療介入が、生活習慣改善、食事指導、血圧管理、貧血管理、電解質管理、尿毒素管理、血糖値管理、免疫管理及び脂質管理からなる群から選ばれる、項目4に記載の方法。
[6] 前記治療介入として、利尿薬、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、交感神経遮断薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン薬、ビグアナイド薬、α―グルコシダーゼ阻害薬、グリニド薬、インスリン製剤、NRF2活性化剤、免疫抑制剤、スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤、貧血治療薬、エリスロポエチン製剤、HIF−1阻害剤、鉄剤、電解質調整薬、カルシウム受容体作動薬、リン吸着剤、尿毒素吸着剤、DPP4阻害薬、EPA製剤、ニコチン酸誘導体、コレステロールトランスポーター阻害剤、PCSK9阻害剤からなる群から選ばれる少なくとも1の薬剤を前記対象に投与することを含む、項目4又は5に記載の方法。
[7] 記憶部と、分析測定部と、データ処理部と、糸球体濾過能力出力部とを含む、血液分析システムであって、
前記記憶部は、D−セリン量と糸球体濾過能力との相関式を記憶し;
前記分析測定部は、前記血液中のD−セリン量を分離し定量し;
前記データ処理部は、D−セリン量を、記憶部に記憶された相関式にあてはめて、糸球体濾過能力を算出し;
前記病態情報出力部は糸球体濾過能力についての情報を出力する、血液分析システム。
[8] 前記糸球体濾過能力が、イヌリンクリアランスと、血液中のD−セリン量との相関から算出された式に基づき決定される糸球体濾過量である、項目7に記載の血液分析システム。
[9] 前記血液が、既存の検査により腎臓病の疑いがあると判定された対象の血液である、項目7又は8に記載の血液分析システム。
本発明の糸球体濾過能力の決定方法において用いる血液中のD−セリン量は、GFR(イヌリンクリアランス)に対し血液中のクレアチニン量及びシスタチンC量よりも優れた相関を有する。
図1は、対象において測定された血液中のD−セリン量(A)、クレアチニン量(B)、及びシスタチンC量(C)と、GFR(イヌリンクリアランス)(体表面積補正済み)との散布図である。 図2は、対象において測定された血液中のD−セリン量(A)、クレアチニン量(B)、及びシスタチンC量(C)と、GFR(イヌリンクリアランス)(体表面積補正無し)との散布図である。 図3は、健常者群(GFR>70)のデータにおける血液中のD−セリン量(A)、クレアチニン量(B)、及びシスタチンC量(C)と、体表面積(BSA)との散布図である。 図4は、全データ(All)、GFR(イヌリンクリアランス)100以下、G3a以下(GFR(イヌリンクリアランス)60以下);G3b以下(GFR(イヌリンクリアランス)45以下);G4以下(GFR(イヌリンクリアランス)30以下);及びG5以下(GFR(イヌリンクリアランス)15以下)に分類し、各分類における血液中のD−セリン量(A)、クレアチニン量(B)、及びシスタチンC量(C)と、GFR(イヌリンクリアランス)(体表面積補正済み)との相関を示したグラフである。 図5は、本発明の試料分析システムの構成図を示す。 図6は、本発明のプログラムによる糸球体濾過量を決定するための動作の例を示すフローチャートである。
本発明は、血液中のD−セリン量に基づく、糸球体濾過能力の決定方法に関する。
本発明において、糸球体濾過能力は、糸球体が血液を濾過する能力を指す。一の態様では、糸球体濾過量(GFR)により表されるが、実質糸球体濾過量に限られず、任意の単位で糸球体濾過能力を決定することができる。一例として、血液中のD−セリン量をそのまま、又は場合により任意の数値で補正して、糸球体濾過能力として表すこともできる。本発明において、糸球体濾過能力は、体表面積補正をされた糸球体濾過能力であってもよいし、体表面積補正を行っていない糸球体濾過能力であってもよい。体格により必要とされる糸球体濾過能力は異なることから、比較、統計処理、又はスクリーニング診断に用いる場合には、体表面積補正が行われる場合がある。
糸球体濾過量とは、糸球体で血液から1分間に濾過される液量を指し、「mL/分」という単位で表される。体格により必要とされる糸球体濾過量は変化するため、統計処理や、比較、スクリーニング診断に用いる場合には、標準体表面積1.73m2当りの糸球体濾過量に補正がされて、「mL/分/1.73m2」という単位が用いられる。腎機能の比較やスクリーニング診断には、体表面積による補正値を用いることが一般的である一方で、個別の腎機能診断や腎***性の薬物の投薬量の決定に利用する場合、体表面積未補正値を用いる。糸球体濾過量は、臨床的にイヌリン、チオ硫酸ナトリウム、クレアチニン、イオタラム酸、シニストリン等のクリアランスから求められている。本発明は、血液中D−セリン量とGFR(イヌリンクリアランス)との相関を基に糸球体濾過能力を決定している。
本発明において、指標として用いられるD−セリンは、タンパク質を構成するアミノ酸であるL−セリンの光学異性体である。D−セリン量は、主にセリンラセマーゼやD−アミノ酸オキシダーゼ等の代謝酵素によって、各組織や血液中で厳密に制御されている一方で、腎障害が生じた場合には血液中のD−セリン量が変動する。
本発明において「血液中のD−セリン量」とは、特定の血液量中のD−セリン量のことを指してもよく、濃度で表されてもよい。血液中のD−セリン量は、採取された血液において、遠心分離、沈降分離、あるいは分析のための前処理が行われた試料における量として測定される。したがって、血液中のD−セリン量は、採取された全血、血清、血漿等の血液に由来する血液試料における量として測定されうる。一例として、HPLCを用いた分析の場合、所定量の血液に含まれるD−セリン量は、クロマトグラムで表され、ピークの高さ・面積・形状について標準品との比較やキャリブレーションによる解析によって定量されうる。D−セリン濃度が既知のサンプルとの比較により、血液中のD−セリン濃度を測定することが可能であり、血液中のD−セリン量として、血液中のD−セリン濃度を用いることができる。また、酵素法では、標準品の検量線を用いた定量解析により、アミノ酸濃度を算出可能である。
D−セリン及びL−セリン量は、任意の方法によって測定することができ、例えばキラルカラムクロマトグラフィーや、酵素法を用いた測定、さらにはアミノ酸の光学異性体を識別するモノクローナル抗体を用いる免疫学的手法によって定量することができる。本発明における試料中のD−セリン及びL−セリン量の測定は、当業者に周知ないかなる方法を用いて実施しても構わない。例えば、クロマトグラフィー法や酵素法(Y. Nagata et al., Clinical Science, 73 (1987), 105. Analytical Biochemistry, 150 (1985), 238., A. D'Aniello et al., Comparative Biochemistry and Physiology Part B, 66 (1980), 319. Journal of Neurochemistry, 29 (1977), 1053., A. Berneman et al., Journal of Microbial & Biochemical Technology, 2 (2010), 139., W. G. Gutheil et al., Analytical Biochemistry, 287 (2000), 196., G. Molla et al., Methods in Molecular Biology, 794 (2012), 273., T. Ito et al., Analytical Biochemistry, 371 (2007), 167. 等)、抗体法(T. Ohgusu et al., Analytical Biochemistry, 357 (2006), 15.,等 )、ガスクロマトグラフィー(GC)(H. Hasegawa et al., Journal of Mass Spectrometry, 46 (2011), 502., M. C. Waldhier et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 394 (2009), 695., A. Hashimoto, T. Nishikawa et al., FEBS Letters, 296 (1992), 33., H. Bruckner and A. Schieber, Biomedical Chromatography, 15 (2001), 166. , M. Junge et al., Chirality, 19 (2007), 228., M. C. Waldhier et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 4537. 等)、キャピラリー電気泳動法(CE)(H. Miao et al., Analytical Chemistry, 77 (2005), 7190., D. L. Kirschner et al., Analytical Chemistry, 79 (2007), 736., F. Kitagawa, K. Otsuka, Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3078., G. Thorsen and J. Bergquist, Journal of Chromatography B, 745 (2000), 389. 等)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(N. Nimura and T. Kinoshita, Journal of Chromatography, 352 (1986), 169., A. Hashimoto et al., Journal of Chromatography, 582 (1992), 41., H. Bruckner et al., Journal of Chromatography A, 666 (1994), 259., N. Nimura et al., Analytical Biochemistry, 315 (2003), 262., C. Muller et al., Journal of Chromatography A, 1324 (2014), 109., S. Einarsson et al., Analytical Chemistry, 59 (1987), 1191., E. Okuma and H. Abe, Journal of Chromatography B, 660 (1994), 243., Y. Gogami et al., Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3259., Y. Nagata et al., Journal of Chromatography, 575 (1992), 147., S. A. Fuchs et al., Clinical Chemistry, 54 (2008), 1443., D. Gordes et al., Amino Acids, 40 (2011), 553., D. Jin et al., Analytical Biochemistry, 269 (1999), 124., J. Z. Min et al., Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3220., T. Sakamoto et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 408 (2016), 517., W. F. Visser et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 7130., Y. Xing et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 408 (2016), 141., K. Imai et al., Biomedical Chromatography, 9 (1995), 106., T. Fukushima et al., Biomedical Chromatography, 9 (1995), 10., R. J. Reischl et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 8379., R. J. Reischl and W. Lindner, Journal of Chromatography A, 1269 (2012), 262., S. Karakawa et al., Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis, 115 (2015), 123., 等)がある。
本発明における光学異性体の分離分析系は、複数の分離分析を組み合わせてもよい。より具体的に、光学異性体を有する成分を含む試料を、移動相としての第一の液体と共に、固定相としての第一のカラム充填剤に通じて、前記試料の前記成分を分離するステップ、前記試料の前記成分の各々をマルチループユニットにおいて個別に保持するステップ、前記マルチループユニットにおいて個別に保持された前記試料の前記成分の各々を、移動相としての第二の液体と共に、固定相としての光学活性中心を有する第二のカラム充填剤に流路を通じて供給し、前記試料の成分の各々に含まれる前記光学異性体を分割するステップ、及び前記試料の成分の各々に含まれる前記光学異性体を検出するステップを含むことを特徴とする光学異性体の分析方法を用いることにより、試料中のD-/L-アミノ酸量を測定することができる(特許第4291628号)。HPLC分析では、予めo−フタルアルデヒド(OPA)や4−フルオロ−7−ニトロ−2,1,3−ベンゾキサジアゾール(NBD−F)のような蛍光試薬でD−及びL−アミノ酸を誘導体化したり、N−tert−ブチルオキシカルボニル−L−システイン(Boc−L−Cys)等を用いてジアステレオマー化する場合がある(浜瀬健司及び財津潔、分析化学、53巻、677−690(2004))。代替的には、アミノ酸の光学異性体を識別するモノクローナル抗体、例えばD−セリン、L−セリン等に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いる免疫学的手法によってD−アミノ酸を測定することができる。また、D体及びL体の合計量を指標とする場合、D体及びL体を分離して分析する必要はなく、D体及びL体を区別せずにアミノ酸を分析することもできる。その場合も酵素法、抗体法、GC、CE、HPLCで分離及び定量することができる。
本発明との比較で用いられる血液中のクレアチニン量は、その由来から筋肉量の影響を強く受けるため、スポーツ選手、先端巨大症の患者や肉の大量摂取時には高値を示し、神経筋疾患(筋ジストロフィー等)や羸痩、長期臥床、フレイル、サルコペニア、ロコモーティブシンドローム、anputationのある患者やタンパク質摂取制限時には低値を示すため、正確な腎機能を反映できない。また、血液中のクレアチニン量には朝に高値を示す10%程度の日内変動が認められるため、その扱いには注意が必要である。軽度の腎機能低下時には、血液中のシスタチンC量のほうが血液中のクレアチニン量よりも鋭敏に上昇するため、初期の腎機能障害の発見によいとされている。しかし、ステロイドやシクロスポリンの使用や、糖尿病、甲状腺機能亢進症、炎症、高ビリルビン血症、高トリグリセリド血症等、患者の状態によって量に影響を及ぼすことが知られている。よって、腎臓病の診察にあたっては、他のマーカー、例えば尿素窒素(BUN)や尿タンパク等の数値を合わせて複合的に診断することが必要となる。
血液中のクレアチニン量をはじめとしたこれまでの腎機能マーカーに基づいて決定された糸球体濾量の正確性は低く、一方で、ゴールドスタンダードのイヌリンクリアランスは正確に糸球体濾過量の測定ができるものの、その手技が煩雑であり、被験者及び医療従事者の負担が大きいため、実施場面が限定されていた。本発明の糸球体濾能力の決定方法は、少なくとも血液中のクレアチニン量よりも、正確に糸球体濾能力を決定することができ、また血液中のシスタチンC量よりも、正確に糸球体濾能力を決定することができる。また、糸球体濾量に応じて分類された群においてイヌリンクリアランスとの相関解析をした場合に、D−セリンは、すべての群で、血液中のシスタチンC量及びクレアチニン量の両方に比較して相関係数r値が高く、イヌリンクリアランスに対する相関が高いことが示された。また、その正確性については、今後の実験により明らかにされるべきものであるが、国際標準測定法であるイヌリンクリアランスによる糸球体濾過量決定方法に匹敵又は凌駕する性能を有しうる。したがって、本発明の別の態様では、血液中のD−セリン量をイヌリンクリアランスの代用マーカーとしての使用することができる。代用マーカーとは、最終評価との関連を科学的に証明できるマーカーのことをいう。したがって、イヌリンクリアランス代用マーカーとは、血液中のD−セリン量を用いて、イヌリンクリアランスによる評価との関連が統計的に示された結果、イヌリンクリアランスに基づくGFR決定方法に代えて、D−セリン量に基づいて糸球体濾過量を決定することができることをいう。
D−セリンは、理論に限定されることを意図するものではないが、筋肉量による影響を受けないため、血液中のクレアチニンのように体格による補正が必要でないという利点がある。本発明の1の態様では、本発明の糸球体濾過量決定方法では、体格に関連する性別、年齢、及び筋肉量からなる群から選ばれる少なくとも1の要因に基づく補正を行わないことを特徴とする。
血液中のクレアチニン量(p=0.0074)、シスタチンC量(p=0.043)は体表面積(BSA)との相関が観察されたが、D−セリン量(p=0.17)は、BSAと相関しなかった(実施例3)。これは、クレアチニンとシスタチンCが筋肉量をはじめとする体格に何らかの影響を受けており、正確な糸球体濾過能力を測定するためには人種、年齢、性別、体表面積等で補正する必要性を示している。一方でD−セリン量より判定される糸球体濾過能力は、高齢者のように筋肉の衰えた体格に影響を受けない正確な値を提供できることを意味している。体表面積は、既知の手法により決定することができ、一例として下記の式:
Figure 0006868878
が用いられる。
本発明の一の態様において、糸球体濾能力は、イヌリンクリアランスと、血液中のD−セリン量との相関から算出された式、対応表又はグラフに、被験者の血液中のD−セリン量を代入することで決定することができる。イヌリンクリアランスとD−セリン量との相関は、イヌリンクリアランスと、血液中のクレアチニン量との相関と比較して、高いことが示されており、イヌリンクリアランスと、血液中のD−セリン量との相関から算出された式、対応表又はグラフに、被験者のD−セリン量を代入することで決定された糸球体濾過能力は、従来の血液中のクレアチニン量に基づいて決定された糸球体濾過量に比較して、より正確である。相関の解析に用いるイヌリンクリアランスは、体表面積補正済みのイヌリンクリアランスであってもよいし、体表面積補正前のイヌリンクリアランスであってもよい。体表面積補正前と補正後の糸球体濾過能力のどちらが必要かに応じて、選択することができる。イヌリンクリアランスと、血液中のD−セリン量との相関から算出された対応表には、あるD−セリン量に対応している糸球体濾過能力の数値が記載されていてもよいし、数値範囲に応じた腎臓病の重症度分類が記載されていてもよい。
慢性腎臓病(CKD)の重症度分類では、糸球体濾過量の数値範囲に応じて、G1、G2、G3a、G3b、G4、及びG5の6つの重症度に分類する。すなわち、90mL/分/1.73m2以上を正常又は高値(G1)、60〜89mL/分/1.73m2を正常又は軽度低下(G2)、45〜59mL/分/1.73m2を軽度から中程度低下(G3a)、30〜44mL/分/1.73m2を中等度から高度低下(G3b)、15〜29mL/分/1.73m2を高度低下(G4)、15mL/分/1.73m2未満を末期腎不全(G5)と定義する(日本腎臓学会ガイドライン)。
体格との相関が観察された血液中のクレアチニン量やシスタチンC量については、関連する人種や年齢、性別について大規模な患者データを用いてそれを補正して糸球体濾過量を推算する各種の式が考案されてきた。主な糸球体濾過量の推算式として Cockcroft−Gault式、MDRD式、CKD−EPI式があり、現在日常診療で主に使用されている日本人用の推算式(eGFR)は下記の通りである。
Figure 0006868878
ただし、このように決定されたeGFRは、健康診断におけるスクリーニングや、多数の対象者を比較するような疫学研究における簡便な評価を主眼として作成された指標であり、平均的な体格に補正された値の算出を目的としているため、特に痩せた高齢者等個別の患者の正確な腎機能評価には、依然としてイヌリンクリアランスを用いることが推奨されている。(日本腎臓学会ガイドライン)。
本発明の判定方法により、糸球体濾過能力が決定されると、それに基づき腎臓病の重症度の分類が可能になる。一例として、慢性腎臓病患者の分類であるG1、G2、G3a、G3b、G4、及びG5の6つの重症度に則して分類することができる。G2〜G5に対応する分類に分類された対象に対して、治療介入がされる。各分類に応じて治療介入は適宜選択することができる。治療介入は、生活習慣改善、食事指導、血圧管理、貧血管理、電解質管理、尿毒素管理、血糖値管理、免疫管理、及び脂質管理等が、独立に又は組み合わせて指導される。生活習慣改善としては、禁煙及びBMI値の25未満への減量等が推奨される。食事指導としては、減塩及びタンパク質制限が行われる。この中でも特に、血圧管理、貧血管理、電解質管理、尿毒素管理、血糖値管理、免疫管理、脂質管理については、投薬による治療が行われうる。血圧管理としては、130/80mmHg以下となるように、管理され、場合により高血圧治療薬が投与されうる。高血圧治療薬としては、利尿薬(サイアザイド系利尿薬、例えばトリクロルメチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、サイアザイド系類似利尿薬、例えばメチクラン、インダバミド、トリバミド、メフルシド、ループ利尿薬、例えばフロセミド、カリウム保持性利尿薬・アルドステロン拮抗薬、例えばトリアムテレン、スピロノラクトン、エプレレノン等)、カルシウム拮抗薬(ジヒドロピリジン系、例えばニフェジピン、アムロジピン、エホニジピン、シルニジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニルバジピン、バルニジピン、フェロジピン、ベニジピン、マニジピン、アゼルニジピン、アラニジピン、ベンゾチアゼピン系、ジルチアゼム等)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(カプトプリル、エナラプリル、アセラプリル、デラプリル、シラザプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、イミダプリル、テモカプリル、キナプリル、トランドラプリル、ベリンドプリルエルブミン等)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬、例えばロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン、イルベサルタン、アジルサルタン等)、交感神経遮断薬(β遮断薬、例えばアテノロール、ビソプロロール、ベタキソロール、メトプロロール、アセプトロール、セリプロロール、プロプラノロール、ナドロール、カルテオロール、ピンドロール、ニプラジロール、アモスラロール、アロチノロール、カルベジロール、ラベタロール、ベバントロール、ウラピジル、テラゾシン、ブラゾシン、ドキサゾシン、ブナゾシン等)等が用いられうる。貧血治療薬としてはエリスロポエチン製剤、鉄剤、HIF−1阻害剤等が用いられる。電解質調整薬としてカルシウム受容体作動薬(シナカルセト、エテルカルセチド等)、リン吸着剤が用いられる。尿毒素吸着剤として活性炭等が用いられる。血糖値は、Hba1c6.9%未満になるように管理され、場合により血糖降下薬が投与される。血糖降下薬として、SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン、ダパグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン等)、DPP4阻害薬(シタグリプチンリン酸、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン、テネリグリプチン、トレラグリプチン、アナグリプチン、オマリグリプチン等)、スルホニル尿素薬(トルブタミド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリクロピラミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリド等)、チアゾリジン薬(ピオグリタゾン等)、ビグアナイド薬(メトホルミン、ブホルミン等)、α―グルコシダーゼ阻害薬(アカルボース、ボグリボース、ミグリトール等)、グリニド薬(ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニド等)インスリン製剤、NRF2活性化剤(バルドキソロンメチル等)等が用いられる。免疫管理としては、免疫抑制剤(ステロイド類、タクロリムス、抗CD20抗体、シクロヘキサミド、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)等)が用いられる。脂質管理では、LDL−C120mg/dL未満となるよう管理され、場合により脂質異常症治療薬、例えばスタチン系薬剤(ロスバスタチン、ピタバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン等)、フィブラート系薬剤(クロフィブラート、ベザフィブラート、フェノフィブラート、クリノフィブラート等)、ニコチン酸誘導体(ニコチン酸トコレロール、ニコモール、ニセリトロール等)、コレステロールトランスポーター阻害剤(エゼチミブ等)、PCSK9阻害剤(エボロクマブ等)EPA製剤等が用いられる。いずれの薬剤も剤形は単剤でも合剤でもよい。腎機能の低下の度合いによっては、腹膜透析、血液透析、持続的血液濾過透析、血液アフェレーシス(血漿交換、血漿吸着等)や腎移植のような腎代替療法が施される。
本発明の別の態様では、糸球体濾過能力を決定する方法を実行する試料分析システム、プログラムに関していてもよい。図4は、本発明の試料分析システムの構成図である。図4に示す試料分析システム10は、本発明の糸球体濾過能力の判定方法を実施することができるように構成される。このような試料分析システム10は、記憶部11と、入力部12、分析測定部13と、データ処理部14と、出力部15とを含んでおり、血液試料を分析し、糸球体濾過能力を出力することができる。
より具体的に、本発明の試料分析システム10において、
記憶部11は、入力部12から入力されたイヌリンクリアランスと血液試料中のD−セリン量との相関から算出された式、対応表又はグラフを記憶し、
分析測定部13は、血液試料中のD−セリンを分離定量し、
データ処理部14は、D−セリン量を、イヌリンクリアランスと血液試料中のD−セリン量との相関から算出された式に代入するか、又は対応表やグラフから読み出すことで、糸球体濾過能力を決定し、
出力部15が糸球体濾過能力を出力することができる。
さらに好ましい態様では、本発明の試料分析システムは、記憶部11が、入力部12から入力された閾値を記憶する工程、及びデータ処理部14が、分離定量されたD−セリン量と閾値とを比較する工程をさらに含んでもよい。この場合、D−セリン量が閾値より低い場合に、出力部15は、糸球体濾過能力が高い旨を出力する。D−セリン量が閾値より高い場合、データ処理部14は、D−セリン量を、イヌリンクリアランスと血液試料中のD−セリン量との相関から算出された式に代入するか、又は対応表又はグラフから読み出すことで、糸球体濾過能力を決定し、出力部15が糸球体濾過能力を出力する。
記憶部11は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等のメモリ装置、ハードディスクドライブ等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。記憶部は、分析測定部で測定したデータ、入力部から入力されたデータ及び指示、データ処理部で行った演算処理結果等の他、情報処理装置の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース等を記憶する。コンピュータプログラムは、例えばCD−ROM、DVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体や、インターネットを介してインストールされてもよい。コンピュータプログラムは、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部にインストールされる。記憶部は、予め入力部12から入力されたイヌリンクリアランスと血液試料中のD−セリン量との相関から算出された式、対応表又はグラフについてのデータを記憶する。また、糸球体濾過量に応じた腎機能分類を記憶することもできる。
入力部12は、インターフェイス等であり、キーボード、マウス等の操作部も含む。これにより、入力部は、分析測定部13で測定したデータ、データ処理部14で行う演算処理の指示等を入力することができる。また、入力部12は、例えば分析測定部13が外部にある場合は、操作部とは別に、測定したデータ等をネットワークや記憶媒体を介して入力することができるインターフェイス部を含んでもよい。
分析測定部13は、血液試料におけるD−セリンの測定工程を行う。したがって、分析測定部13は、アミノ酸のD体及びL体の分離及び測定を可能にする構成を有する。アミノ酸は、1つずつ分析されてもよいが、一部又は全ての種類のアミノ酸についてまとめて分析することができる。分析測定部13は、以下のものに限定されることを意図するものではないが、例えば試料導入部、光学分割カラム、検出部を備えたキラルクロマトグラフィーシステム、好ましくは高速液体クロマトグラフィーシステムであってもよい。特定のアミノ酸量のみを検出する観点では、酵素法や免疫学的手法による定量を実施してもよい。分析測定部13は、試料分析システムとは別に構成されていてもよく、測定したデータ等をネットワークや記憶媒体を用いて入力部12を介して入力してもよい。
データ処理部14は、測定されたD−セリン量から、イヌリンクリアランスと血液試料中のD−セリン量との相関から算出された式に代入することで、又は対応表又はグラフから読み出すことで糸球体濾過能力を決定することができる。イヌリンクリアランスと血液試料中のD−セリン量との相関から算出された式、対応表又はグラフが、さらに他の補正値、例えば年齢、体重、性別、身長等を必要とする場合、そのような情報は、予め入力部より入力されて、記憶部に記憶される。データ処理部は、糸球体濾過量を算出する際に、かかる情報を呼び出し、式に代入するか、又は対応表又はグラフから読み出すことで、糸球体濾過量を算出することができる。データ処理部14は、決定した糸球体濾過能力から、腎臓病や腎機能分類を決定することもできる。データ処理部14は、記憶部に記憶しているプログラムに従って、分析測定部13で測定され記憶部11に記憶されたデータに対して、各種の演算処理を実行する。演算処理は、データ処理部に含まれるCPUによりおこなわれる。このCPUは、分析測定部13、入力部12、記憶部11、及び出力部15を制御する機能モジュールを含み、各種の制御を行うことができる。これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
出力部15は、データ処理部で演算処理を行った結果である糸球体濾過能力を出力するように構成さる。出力部15は、演算処理の結果を直接表示する液晶ディスプレイ等の表示装置、プリンタ等の出力手段であってもよいし、外部記憶装置への出力又はネットワークを介して出力するためのインターフェイス部であってもよい。糸球体濾過能力と併せて、又は独立して、D−セリン量及び/又は腎機能分類を出力することもできる。
図5は、本発明のプログラムによる糸球体濾過量を決定するための動作の例を示すフローチャートである。具体的に、本発明のプログラムは、入力部、出力部、データ処理部、記憶部とを含む情報処理装置に糸球体濾過量を決定させるプログラムである。本発明のプログラムは、以下の:
入力部から入力されたD-セリン量を記憶部に記憶させ、
記憶部に予め記憶されたイヌリンクリアランスと血液試料中のD−セリン量との相関から算出された式、対応表又はグラフと、D−セリン量とを読み出し、データ処理部に糸球体濾過能力を決定させ、
決定された糸球体濾過能力を記憶部に記憶させ、そして
記憶された糸球体濾過能力を出力部に出力させる
ことを前記情報処理装置に実行させるための指令を含む。本発明のプログラムは、記憶媒体に格納されてもよいし、インターネット又はLAN等の電気通信回線を介して提供されてもよい。
情報処理装置が、分析測定部を備える場合、入力部からD−セリン量の値を入力させる代わりに、分析測定部が、血液試料から当該値を測定し記憶部に記憶させることを情報処理装置に実行させるための指令を含んでもよい。
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
被験者集合
診断及び/又は治療目的のために大阪大学医学部付属病院腎臓内科(Department of Nephrology,Osaka University Hospital))に、2016年〜2017年の間に入院した慢性腎臓病(CKD)患者からなるコホートから、11人の患者について、後ろ向き研究に用いた。それとは別に、国立医薬基盤・健康・栄養研究所では15名の20歳以上の健常ボランティアを採用した。試験プロトコルは、各施設における倫理委員会により承認され、かつすべての被験者から書類によるインフォームドコンセントを取得した。
健常者及び慢性腎臓病患者の情報は下記の通りである:
Figure 0006868878
イヌリンクリアランスの計測方法
被験者のイヌリンクリアランス(Cin)を、Clin Exp Nephrol 13,50−54(2009)に記載された標準方法に従い、血液及び尿中のイヌリン濃度、並びに尿体積から計算した。簡潔に記載すると、絶食、服薬延期、及び水負荷環境下で、1%のイヌリン(イヌリード注:株式会社富士薬品)を2時間の持続静脈内点滴の間に、血液及び尿サンプルを異なる3時点で採取した。被験者は、点滴の30分前に、経口で500mLの水を飲水した。水負荷を維持するために、イヌリン点滴の開始後、60mLの水を40、60、90分で飲水した。点滴の初期速度は、最初の30分間について、300mL/hであり、続いて90分について100mL/hとした。イヌリン点滴の開始後、45、75、及び105分において血液試料を採取した。被験者は、点滴開始後、30分で完全に膀胱を空にするように排尿した。次に、尿サンプルを、30分〜60分の間、60分〜90分の間、及び90〜120分の間で採取した。イヌリンは、酵素法を用いて計測した。3つのCin値の平均を、標準方法によるCin(Cin−ST)として用いた。
血液中D−アミノ酸の測定
サンプル調製
ヒト血漿からのサンプル調製を、下記のとおり行った:
20倍体積のメタノールを血漿に添加し、完全に混合した。遠心後、メタノールホモジネートから得られた上清の10μLを褐色チューブに移し、減圧乾燥させた。残渣に、20μLの200mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)及び5μLの蛍光標識試薬(無水MeCN中に40mMの4−フルオロ―7−ニトロ−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール(NBD−F))を添加し、次いで60℃で2分加熱した。75μLの0.1%TFA水溶液(v/v)を加えて反応を止め、そして2μLの反応混合液を2次元HPLCに供した。
2次元HPLCによるアミノ酸光学異性体の定量
アミノ酸光学異性体を、以下の2次元HPLCシステムを用いて定量した。アミノ酸のNBD誘導体を、逆相カラム(KSAA RP、1.0mmi.d. ×400mm;株式会社資生堂)を用い移動相(5〜35%MeCN、0〜20%THF、及び0.05%TFA)で分離、溶出した。カラム温度は45℃、移動相の流速は25μL/分に設定した。分離したアミノ酸の画分を、マルチループバルブを用いて分取し、連続的にキラルカラム(KSAACSP−001S,1.5mmi.d.×250mm;資生堂)で光学分割した。移動相として、アミノ酸の保持に応じて、クエン酸(0〜10mM)又はギ酸(0〜4%)含むMeOH− MeCNの混合用液を用いた。NBD−アミノ酸は470nmの励起光を用い、530nmで蛍光検出した。NBD−アミノ酸の保持時間は、アミノ酸光学異性体の標準品により同定し、検量線により定量した。
GFR(イヌリンクリアランス)との相関解析
(1)体表面積補正有
26名の被験者について、体表面積補正を行ったGFR(イヌリンクリアランス)と、血液中のD−セリン量(A)、クレアチニン量(B)、及びシスタチンC量(C)とを散布図にプロットし、相関係数r値とp値を算出した。結果を図1に示す。血液中のD−セリン量はGFR(イヌリンクリアランス)に対して、血液中のシスタチンC量と同等の相関を示した。
(2)体表面積補正無
26名の被験者について、体表面積補正を行っていないGFR(イヌリンクリアランス)と、血液中のD−セリン量(A)、クレアチニン量(B)、及びシスタチンC量(C)とを散布図にプロットし、相関係数r値とp値を算出した。結果を図2に示す。血液中のD−セリンが体表面積補正無しGFR(イヌリンクリアランス)に対して、最も高い相関を示した。
体表面積(BSA)との相関
健常者(GFR>70)のデータについて、体表面積(BSA)と、測定した血液中のD−セリン量、シスタチンC量、及びクレアチニン量とを散布図に表し、相関係数r値及びp値を算出した。結果を図3に示す。血液中のクレアチニン量やシスタチンC量が、体表面積に相関するのに対し、血液中のD−セリン量は体表面積とは相関しなかった。
GFRの分類に基づく比較
26名の被験者を、イヌリンクリアランスによるGFRに基づいて、以下の群に分類した(全データ(All);GFR100以下;G3a以下:GFR60以下;G3b以下:GFR45以下;G4以下:GFR30以下;G5以下:GFR15以下)。GFR100以下は21名、G3a以下は8名、G3b以下は5名、G4以下は4名、G5以下は3名であった。各データにおける、体表面積補正を行っていないGFR(イヌリンクリアランス)と、血液中のD−セリン量(A)、クレアチニン量(B)、及びシスタチンC量(C)との、相関係数r値とp値を算出した。結果を図3に示す。群分けした場合に、各群において、D−セリン量はGFR(イヌリンクリアランス)への相関が高いことが示された。特に、血液中のクレアチニン量は、G3a以下やG3b以下では比較的良好な相関を示しているものの、全データ(All)やGFR100以下では相関が低いことが示されており、これは腎機能低下が軽度の場合は反映しないというクレアチニンの欠点を示す結果となった。一方シスタチンC量は、GFR100以下、G3a以下等、比較的腎機能が優れているデータにおいてはGFR(イヌリンクリアランス)への相関が高かった一方で、G3b以下のように、腎機能が悪化するに従いGFR(イヌリンクリアランス)への相関が低下していくことが示された。血液中のD−セリン量は、各群において、良好にGFR(イヌリンクリアランス)と相関することが示された。

Claims (6)

  1. 対象における血液中のD−セリン量基づく、糸球体濾過測定方法。
  2. ヌリンクリアランスと、血液中のD−セリン量との相関から算出された式に、対象における血液中のD−セリン量を前記式にあてはめることによって測定される請求項1に記載の方法。
  3. 前記対象が、既存の検査により腎臓病の疑いがあると判定された対象ある、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 記憶部と、分析測定部と、データ処理部と、糸球体濾過能力出力部とを含む、血液分析システムであって、
    前記記憶部は、血液中のD−セリン量と糸球体濾過との相関から算出された式を記憶し;
    前記分析測定部は、対象における血液中のD−セリン量を分離し定量し;
    前記データ処理部は、前記対象における血液中のD−セリン量を、記憶部に記憶された前記式にあてはめて、前記対象の糸球体濾過能量を算出し;
    前記病態情報出力部は、前記対象の糸球体濾過量に基づいて糸球体濾過能力についての情報を出力する、血液分析システム
  5. 前記が、イヌリンクリアランスと、血液中のD−セリン量との相関から算出された式ある、請求項4に記載の血液分析システム。
  6. 前記対象が、既存の検査により腎臓病の疑いがあると判定された対象ある、請求項4又は5に記載の血液分析システム。
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