JPWO2019097906A1 - 固体電解質組成物、固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、並びに、固体電解質含有シート及び全固体二次電池の製造方法 - Google Patents
固体電解質組成物、固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、並びに、固体電解質含有シート及び全固体二次電池の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
このような状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質及び正極の全てが固体からなり、有機電解液を用いた電池において課題とされる安全性と信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になるとされる。更に、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した積層構造とすることができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べて高エネルギー密度化が可能となり、電気自動車又は大型蓄電池等への応用が期待されている。
全固体二次電池の高エネルギー密度化には、固体電解質層、電極活物質層の積層化が必要とされる。この積層化は通常、加圧条件下で行われる。そのため、層を構成する固体粒子間の密着性が十分でないと、割れ等の欠陥が生じやすい。
固体電解質層及び電極活物質層を構成する固体粒子間の結着性の向上のために、各層の形成材料に、樹脂で構成されたバインダーを添加することが検討されている。しかし、バインダーは一般にイオン伝導性を有しない。それゆえ、バインダーを添加すると抵抗が上昇し、所望の伝導性を示す二次電池を得ることが難しくなる。
この問題に対処する技術として、例えば特許文献1には、無機固体電解質と、マクロモノマーを構成成分に有するポリマーで構成された特定粒径のバインダー粒子と、分散媒とを有する固体電解質組成物が記載されている。特許文献1記載の技術によれば、この固体電解質組成物を上記各層の形成に用いることにより、固体粒子間の結着性を高めながら、界面抵抗の上昇も抑制できるとされる。
そこで本発明は、より小さな屈曲半径で屈曲させても層中に欠陥(欠け、割れ、ヒビ又は剥がれ)を生じにくくすることができ、また、このような屈曲を経ても優れたイオン伝導度を示す層の形成を可能とする固体電解質組成物を提供することを課題とする。
また本発明は、より小さな屈曲半径で屈曲させても層中に欠陥を生じにくく、また、このような屈曲を経ても優れたイオン伝導度を示すことができる固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート、及び全固体二次電池、並びにこれらの製造方法を提供することを課題とする。
〔1〕
周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質(A)と、バインダー(B)と、分散媒(C)とを含む固体電解質組成物であって、
上記バインダー(B)は、上記分散媒(C)中で温度25℃、遠心力610000Gで1時間の遠心分離処理に付した場合に沈降する第1バインダー(B1)と、上記遠心分離処理に付しても沈降しない第2バインダー(B2)とを含み、
上記第1バインダー(B1)の含有量Xと上記第2バインダー(B2)の含有量Yが、質量基準で下記式を満たす、固体電解質組成物。
0.10≦Y/(X+Y)≦0.80
〔2〕
上記第2バインダー(B2)を構成するポリマーのガラス転移温度が−50℃〜10℃である、〔1〕記載の固体電解質組成物。
〔3〕
上記分散媒(C)が炭化水素溶媒を含む、〔1〕又は〔2〕記載の固体電解質組成物。
〔4〕
上記第1バインダー(B1)の粒径が10〜10000nmである、〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の固体電解質組成物。
〔5〕
上記固体電解質組成物が活物質(D)を含まない場合、上記第2バインダー(B2)の含有量Yと、上記無機固体電解質(A)の含有量Zが、質量基準で下記式を満たし、
上記固体電解質組成物が上記活物質(D)をさらに含む場合、上記第2バインダー(B2)の含有量Yと、上記無機固体電解質(A)の含有量及び上記活物質(D)の含有量の合計Zが、質量基準で下記式を満たす、〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の固体電解質組成物。
0.001≦Y/(Y+Z)≦0.1
〔6〕
活物質(D)をさらに含有する、〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の固体電解質組成物。
〔7〕
導電助剤(E)をさらに含有する、〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の固体電解質組成物。
〔8〕
上記無機固体電解質(A)が硫化物系無機固体電解質である、〔1〕〜〔7〕のいずれか記載の固体電解質組成物。
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか記載の固体電解質組成物を用いて形成した固体電解質含有シート。
〔10〕
周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質(A)と、バインダー(B)と、溶媒(C1)とを含む固体電解質含有シートであって、
上記バインダー(B)は、上記溶媒(C1)中で温度25℃、遠心力610000Gで1時間の遠心分離処理に付した場合に沈降する第1バインダー(B1)と、上記遠心分離処理に付しても沈降しない第2バインダー(B2)とを含み、
上記第1バインダー(B1)の含有量Xと上記第2バインダー(B2)の含有量Yが、質量基準で下記式を満たす、固体電解質含有シート。
0.10≦Y/(X+Y)≦0.80
〔11〕
〔9〕又は〔10〕記載の固体電解質含有シートを含む、全固体二次電池用電極シート。
〔12〕
正極活物質層と、負極活物質層と、上記正極活物質層及び上記負極活物質層の間の固体電解質層とを含む全固体二次電池であって、
上記正極活物質層、上記負極活物質層及び上記固体電解質層の少なくとも1層が、〔9〕又は〔10〕記載の固体電解質含有シートで構成された全固体二次電池。
〔13〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか記載の固体電解質組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程を含む、固体電解質含有シートの製造方法。
〔14〕
上記塗布膜を乾燥する工程を含む、〔13〕記載の固体電解質含有シートの製造方法。
〔15〕
〔13〕又は〔14〕記載の固体電解質含有シートの製造方法を含む全固体二次電池の製造方法。
本発明の固体電解質含有シート、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池は、より小さな屈曲半径で屈曲させても層中に欠陥を生じにくく、また、このような屈曲を経ても優れたイオン伝導度を示すことができる。
本発明の固体電解質含有シート及び全固体二次電池の製造方法によれば、上述した本発明の固体電解質含有シート及び全固体二次電池を得ることができる。
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、バインダー(B)と、分散媒(C)とを含む。
バインダー(B)は、分散媒(C)中に含有させた状態で超遠心分離処理したときに沈降するものと、沈降しないもの(上澄みに残留するもの)とを、特定の比で含んでいる。すなわちバインダー(B)は、バインダー(B)を分散媒(C)中に分散又は溶解し、温度25℃、遠心力610000Gで1時間の遠心分離処理(超遠心分離処理)に付した場合に、沈降する物性のバインダー(第1バインダー(B1))と、沈降せずに上澄み中に残留する物性のバインダー(第2バインダー(B2))とを含む。
本発明の固体電解質組成物中、第1バインダー(B1)の含有量Xと、第2バインダー(B2)の含有量Yとの関係が、質量基準で下記式を満たす。
0.10≦Y/(X+Y)≦0.80
本発明の固体電解質組成物は、所望により後述する活物質(D)を含むことができる。また、導電助剤(E)を含んでいてもよい。これらを含有する固体電解質組成物は、電極活物質層の形成材料とすることができる。
本発明において、無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液、又は、ポリマー中でカチオン及びアニオンが解離若しくは遊離している無機電解質塩(LiPF6、LiBF4、LiFSI、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば特に制限されず電子伝導性を有さないものが一般的である。
本発明の全固体二次電池が全固体リチウムイオン二次電池である場合、無機固体電解質はリチウムイオンのイオン伝導度を有することが好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
La1Mb1Pc1Sd1Ae1 式(I)
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。a1は1〜9が好ましく、1.5〜7.5がより好ましい。b1は0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。d1は2.5〜10が好ましく、3.0〜8.5がより好ましい。e1は0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(Li2S)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mで表される元素の硫化物(例えばSiS2、SnS、GeS2)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
無機固体電解質粒子の粒径は平均粒径を意味し、以下の通り決定することができる。
無機固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mLサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調整する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJIS Z 8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
無機固体電解質の、固体電解質組成物中の含有量は、特に制限されない。全固体二次電池に用いたときの界面抵抗の低減及び低減された界面抵抗の維持を考慮したとき、組成物中の固形成分100質量部中、無機固体電解質が5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることが特に好ましい。また同様の観点から、組成物中の固形成分100質量部中、無機固体電解質が99.9質量部以下であることが好ましく、99.5質量部以下であることがより好ましく、99質量部以下であることが特に好ましい。
本発明において、固形分(固形成分)とは、固体電解質組成物を、1mmHgの気圧下、窒素雰囲気下120℃で6時間乾燥処理したときに、揮発又は蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒以外の成分を指す。
本発明の固体電解質組成物は、バインダー(B)を含有する。組成物中に含まれるバインダー(B)は、各種の高分子(ポリマー)で構成することができる。バインダー(B)は、粒子状のものを含んでもよいし、非粒子状のものを含んでもよい。本発明の固体電解質組成物は後述のように、特定条件下における超遠心分離処理において、沈降成分となる物性のものと、上澄み成分となる物性のものを特定比で含む。
含フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニレンジフルオリド(PVdF)、ポリビニレンジフルオリドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF−HFP)が挙げられる。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンが挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂としては、各種の(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、及びこれらモノマーの2種以上の共重合体が挙げられる。
また、その他のビニル系モノマーとの共重合体(コポリマー)も好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチルとスチレンとの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとアクリロニトリルとの共重合体、(メタ)アクリル酸ブチルとアクリロニトリルとスチレンとの共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本願明細書において、コポリマーは、統計コポリマー及び周期コポリマーのいずれでもよく、ランダムコポリマーが好ましい。
その他の樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース誘導体樹脂等が挙げられる。
上記各種の樹脂は、市販品を用いることができる。また、常法により調製することもできる。
なお、上記で説明した有機樹脂は一例であり、本発明におけるバインダー(B)はこれらの形態に限定されるものではない。
(条件)
カラム:TOSOH TSKgel Super HZM−H(商品名)、TOSOH TSKgel Super HZ4000(商品名)、TOSOH TSKgel Super HZ2000(商品名)をつないだカラムを用いる。
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
0.10≦Y/(X+Y)≦0.80
つまり、固体電解質組成物に含まれるバインダー(B)を構成する高分子中、超遠心分離処理では沈降せずに上澄みに存在する物性の高分子の割合は、10〜80質量%である。換言すれば、バインダー(B)を構成する高分子中、超遠心分離処理によっても、分散媒中に溶解し、及び/又は、極小粒径の樹脂微粒子として分散媒中に存在する物性の高分子の割合は、10〜80質量%である。
他方、第1バインダー(B1)は、分散媒中において、通常は樹脂微粒子として存在する。
本発明の固体電解質組成物中において、第1バインダー(B1)と第2バインダー(B2)は、独立して存在していてもよいし、互いに相互作用(吸着等)した状態で存在していてもよい。
第1バインダー(B1)の含有量Xと、第2バインダー(B2)の含有量Yとの関係は、質量基準で下記式を満たすことが好ましく、
0.10≦Y/(X+Y)≦0.60
下記式を満たすことがより好ましく、
0.10≦Y/(X+Y)≦0.50
下記式を満たすことがさらに好ましく、
0.15≦Y/(X+Y)≦0.45
下記式を満たすことが特に好ましい。
0.20≦Y/(X+Y)≦0.40
これに対し、本発明の固体電解質組成物では、分散媒に難溶性で超遠心分離処理により沈降成分となる第1バインダー(B1)に加え、分散媒中に溶解し又は極小サイズの粒子状として存在し、超遠心分離処理により上澄み成分となる第2バインダー(B2)を特定量含有させる。つまり、単に微粒子ポリマーをバインダーとして用いる技術とは発想を異にする。これにより、固体粒子間の結着性を高度に高めることができ、かつ、界面抵抗の上昇については効果的に抑えることが可能となる。その結果、より小さな屈曲半径で屈曲させても層中に欠陥を生じにくく、イオン伝導性にも優れた層を形成することが可能となる。
第1バインダー(B1)は超遠心分離処理によって上記の挙動を示す。本発明の固体電解質組成物中において、第1バインダー(B1)は通常は粒子状である。第1バインダー(B1)の粒径は10〜10000nmが好ましく、50〜1000nmがより好ましく、100〜500nmがさらに好ましい。バインダー粒子の粒径は一次粒子の平均粒径を意味する。バインダー粒子の平均粒径の測定は無機固体電解質の粒径と同様にして決定することができる。バインダー粒子の粒径が上記装置の測定限界以下の場合は、必要によりバインダー樹脂粒子を乾固した後に、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により粒径を測定する。
第2バインダー(B2)は超遠心分離処理によって上記の挙動を示す。第2バインダー(B2)は、組成物を構成する分散媒に溶解性であるか、あるいは組成物を構成する分散媒中において極小粒径の粒子状として存在する高分子である。また、第2バインダー(B2)は第1バインダー(B1)と相互作用(吸着等)した状態で存在してもよい。
第2バインダー(B2)を構成する高分子の数平均分子量は、固体粒子間の初期接着性の向上の観点から1000〜500000が好ましく、3000〜100000がより好ましい。
Tgは、乾燥試料を用いて、示差走査熱量計「X−DSC7000」(商品名、SII・ナノテクノロジー社製)を用いて下記の条件で測定する。測定は同一の試料で2回実施し、2回目の測定結果を採用する。
測定室内の雰囲気:窒素(50mL/min)
昇温速度:5℃/min
測定開始温度:−100℃
測定終了温度:200℃
試料パン:アルミニウム製パン
測定試料の質量:5mg
Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度の小数点以下を四捨五入することでTgを算定する。
0.001≦Y/(Y+Z)≦0.1
なお、含有量Zは、固体電解質組成物が活物質(D)を含まない場合には、無機固体電解質(A)の含有量Z1を意味し、固体電解質組成物が活物質(D)を含む場合には、無機固体電解質(A)の含有量と活物質(D)の含有量との合計Z2を意味する。
上記式を満たす関係にあることにより、無機固体電解質間あるいは無機固体電解質と活物質間の界面抵抗の上昇がより生じにくく、より高いイオン伝導度を実現することが可能となる。
第2バインダー(B2)の含有量Yと、無機固体電解質(A)の含有量Z(固体電解質組成物が活物質(D)を含む場合には、無機固体電解質(A)の含有量と活物質(D)の含有量との合計を意味する。)との関係は、下記式を満たすことが好ましく、
0.002≦Y/(Y+Z)≦0.07
下記式を満たすことがより好ましく、
0.003≦Y/(Y+Z)≦0.05
下記式を満たすことがさらに好ましい。
0.003≦Y/(Y+Z)≦0.03
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第一族若しくは第二族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有してもよい。活物質としては、正極活物質及び負極活物質が挙げられる。活物質を含む固体電解質組成物は、全固体二次電池の電極活物質層の形成に好適に用いることができる。
本発明において、活物質(正極活物質又は負極活物質)を含有する固体電解質組成物を、電極用組成物(正極用組成物又は負極用組成物)ということがある。
正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、又は、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素や硫黄と金属の複合物などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素Ma(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素Mb(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はBなどの元素)を混合してもよい。Mbの混合量としては、遷移金属元素Maの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn2O4(LMO)、LiCoMnO4、Li2FeMn3O8、Li2CuMn3O8、Li2CrMn3O8及びLi2NiMn3O8が挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO4及びLi3Fe2(PO4)3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP2O7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類並びにLi3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、Li2FePO4F等のフッ化リン酸鉄塩、Li2MnPO4F等のフッ化リン酸マンガン塩及びLi2CoPO4F等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4及びLi2CoSiO4等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm2)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に制限されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫等の金属酸化物、酸化ケイ素、金属複合酸化物、リチウム単体及びリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、並びに、Sn、Si、Al及びIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm2)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に制限されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
正極活物質及び負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。表面被覆剤としてはTi、Nb、Ta、W、Zr、Al、Si又はLiを含有する金属酸化物等が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、ニオブ酸リチウム系化合物等が挙げられ、具体的には、Li4Ti5O12、Li2Ti2O5、LiTaO3、LiNbO3、LiAlO2、Li2ZrO3、Li2WO4、Li2TiO3、Li2B4O7、Li3PO4、Li2MoO4、Li3BO3、LiBO2、Li2CO3、Li2SiO3、SiO2、TiO2、ZrO2、Al2O3、B2O3等が挙げられる。
また、正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
更に、正極活物質又は負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
本発明の固体電解質組成物は、導電助剤を含有してもよい。導電助剤としては、特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェン若しくはフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でもよく、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体など導電性高分子を用いてもよい。
本発明において、負極活物質と導電助剤とを併用する場合、上記の導電助剤のうち、電池を充放電した際にLiの挿入と放出が起きず、負極活物質として機能しないものを導電助剤とする。したがって、導電助剤の中でも、電池を充放電した際に負極活物質層中において負極活物質として機能しうるものは、導電助剤ではなく負極活物質に分類する。電池を充放電した際に負極活物質として機能するか否かは、一義的ではなく、負極活物質との組み合わせにより決定される。
導電助剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
中でも、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブなどの炭素繊維類が好ましい。
導電助剤の粒径は平均粒径を意味し、無機固体電解質の粒径と同様の方法で行う。粒径が上記装置の測定限界以下の場合は、必要により導電助剤を乾固した後にTEM観察により粒径を決定する。
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質、活物質、導電助剤、バインダー粒子等を分散させる媒体である分散媒を含有する。
分散媒は、本発明の固体電解質組成物に含まれる各成分を分散させるものであればよく、例えば、各種の有機溶媒が挙げられる。分散媒の具体例としては、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物、アミン化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、脂肪族化合物、ニトリル化合物、エステル化合物等が挙げられる。
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、イソブチルプロピルケトン、sec−ブチルプロピルケトン、ペンチルプロピルケトン、ブチルプロピルケトンなどが挙げられる。
芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
脂肪族化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン、パラフィン、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油などが挙げられる。
ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
エステル化合物としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ペンタン酸ブチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、イソ酪酸イソプロピル、イソ酪酸イソブチル、ピバル酸プロピル、ピバル酸イソプロピル、ピバル酸ブチル、ピバル酸イソブチルなどが挙げられる。
非水系分散媒としては、上記芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒等が挙げられる。
固体電解質組成物に含有される分散媒は、1種であっても、2種以上であってもよい。分散媒が2種以上の化合物(溶媒)で構成される場合、これらは互いに相分離せずに相溶することが好ましい。
本発明において、CLogP値とは、1−オクタノールと水への分配係数Pの常用対数LogPを計算によって求めた値である。CLogP値の計算に用いる方法やソフトウェアについては公知のものを用いることができるが、特に断らない限り、PerkinElmer社のChemDrawを用いて構造を描画し、算出した値とする。
本発明の固体電解質組成物は分散剤を含有することも好ましい。分散剤を添加することで導電助剤、電極活物質及び無機固体電解質のいずれかの含有量が多い場合及び/又は電極活物質及び無機固体電解質の粒子径が細かく表面積が増大する場合においても、その凝集を更に抑制し、より均一な活物質層を形成することができる。分散剤としては、全固体二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができる。一般的には粒子吸着と立体反発及び/又は静電反発を意図した化合物が好適に使用される。
本発明の固体電解質組成物は、上記各成分以外の他の成分として、所望により、リチウム塩、イオン液体、増粘剤、架橋剤(ラジカル重合、縮合重合又は開環重合により架橋反応するもの等)、重合開始剤(酸又はラジカルを熱又は光によって発生させるものなど)、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤等を含有することができる。
本発明の固体電解質組成物は、第1バインダー(B1)と第2バインダー(B2)と無機固体電解質と、所望により活物質、導電助剤、添加剤等を、分散媒(C)の存在下で混合する(分散媒に分散させる)ことにより、調製することができる。本発明の固体電解質組成物において、第2バインダー(B2)は分散媒中に溶解させてもよい。本発明の固体電解質組成物は、好ましくはスラリーとして調製される。
固体電解質組成物のスラリーは、各種の混合機(分散機)を用いて上記各成分を混合することにより、調製することができる。混合機としては、特に制限されないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサー、ブレードミキサー、ロールミル、ニーダー、薄膜旋回型高速ミキサー、高速回転型撹拌機及びディスクミルが挙げられる。混合(分散)条件は特に制限されないが、例えば、ボールミルを用いた場合、150〜700rpm(rotation per minute)で1〜24時間混合することが好ましい。分散機は2つの分散機を2回以上の工程にわたって用いてもよい。
導電助剤、バインダーは、粒子状のまま混合されてもよいが、分散媒に予め分散させた分散液(バインダーの一部は分散媒に溶解していてもよい。)として混合されることが好ましい。これにより、導電助剤の二次凝集を防ぎ、粒径をコントロールすることができる。
本発明の固体電解質含有シートは、シート状成形体であって、無機固体電解質(A)と、バインダー(B)と、溶媒(C1)と、必要により活物質(D)、導電助剤(E)、各種添加剤等を含有する。無機固体電解質(A)、バインダー(B)、活物質(D)、導電助剤(E)、添加剤等は、本発明の固体電解質組成物において説明したものと同義である。
また溶媒(C1)は、本発明の固体電解質組成物における分散媒(C)と同義である。すなわち、本発明の固体電解質含有シートにおいて、バインダー(B)は、固体電解質含有シートを構成する溶媒(C1)中に分散させた状態で(一部が溶解してもよい)、温度25℃、遠心力610000Gで1時間の遠心分離処理(以下、単に「超遠心分離処理」とも称す。)に付した場合に、沈降する物性のバインダー(第1バインダー(B1))と、沈降せずに上澄み中に残留する物性のバインダー(第2バインダー(B2))とを、後述する特定比で含む。この超遠心分離処理に当たり、溶媒(C1)中のバインダーの含有量は、0.1〜10質量%とする。
0.10≦Y/(X+Y)≦0.80
下記式を満たすことが好ましく、
0.10≦Y/(X+Y)≦0.60
下記式を満たすことがより好ましく、
0.10≦Y/(X+Y)≦0.50
下記式を満たすことがさらに好ましく、
0.15≦Y/(X+Y)≦0.45
下記式を満たすことが特に好ましい。
0.20≦Y/(X+Y)≦0.40
本発明の固体電解質含有シートは、本発明の固体電解質組成物を用いて形成されることが好ましい。この場合、固体電解質含有シートを構成する溶媒(C1)は、固体電解質組成物を構成する分散媒(C)が、固体電解質含有シートの形成において揮発せずに残留した残留溶媒である。
本発明の固体電解質含有シートにおいて、固形分を構成する各成分の含有比の好ましい範囲は、本発明の固体電解質組成物における固形分を構成する各成分の好ましい含有比と同じである。また、本発明の固体電解質含有シート中、溶媒(C1)の含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
本発明の固体電解質含有シートは、全固体二次電池の固体電解質層又は電極活物質層として好適に用いることができる。
本発明の固体電解質含有シートは、基材、剥離シート等の他の部材を有していてもよい。また、本発明の固体電解質含有シートが活物質を含む場合、この固体電解質含有シートは金属箔上に形成された形態とすることができる。この場合、この固体電解質含有シートを用いて形成した全固体二次電池において、金属箔を集電体として機能させる形態とすることができる。すなわち、金属箔と、その上に形成された固体電解質含有シートとにより、全固体二次電池用電極シートを構成することができる。
さらに、上記の全固体二次電池用電極シートは、活物質を含む固体電解質含有シート上に、活物質を含まない本発明の固体電解質含有シートを有してもよい。このように、金属箔、活物質を含む固体電解質含有シート、及び活物質を含まない固体電解質含有シートにより構成された3層構造の積層体を、全固体二次電池用電極シートとして用いることもできる。
さらに、上記の全固体二次電池用電極シートは、上記の3層構造の積層体の、活物質を含まない固体電解質含有シート上に、活物質を含む固体電解質含有シート形成した形態とすることもできる。この場合、活物質を含まない固体電解質含有シートを挟んで形成された2つの固体電解質含有シートは、一方が正極活物質を含み、他方が負極活物質を含む形態とする。
なお、この3層又は4層構造の全固体二次電池用電極シートにおいて、活物質を含む固体電解質含有シート、及び活物質を含まない固体電解質含有シートの少なくとも一層を、本発明の固体電解質含有シートとは異なる構成とすることもできる。
また、全固体二次電池用電極シートは、例えば、基材(集電体を除く)、保護層(剥離シート)、集電体、コート層等の他の層を備えていてもよい。
電極シートを構成する各層の層厚は、後述の、本発明の全固体二次電池において説明する各層の層厚と同じである。
本発明の固体電解質含有シートの製造方法は、特に制限されない。例えば、本発明の固体電解質組成物を基材若しくは集電体上(他の層を介していてもよい。)に製膜(塗布乾燥)して、基材若しくは集電体上に活物質層(塗布乾燥層)を形成する方法が挙げられる。これにより、基材若しくは集電体と塗布乾燥層とを有する固体電解質含有シートを作製することができる。ここで、塗布乾燥層とは、本発明の固体電解質組成物を塗布し、分散媒を乾燥させることにより形成される層(すなわち、本発明の固体電解質組成物を用いてなり、本発明の固体電解質組成物から分散媒を揮発させた組成からなる層)をいう。ただし、分散媒のすべてを除去するのではなく、塗布乾燥層には残留溶媒を含まれている。
本発明の固体電解質含有シートの製造方法において、塗布、乾燥等の各工程については、下記全固体二次電池の製造方法において説明する。
また、本発明の固体電解質含有シートの製造方法においては、所望により、基材、保護層(特に剥離シート)等を剥離する工程を含んでもよい。
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層と、この正極活物質層に、固体電解質層を挟んで対向する負極活物質層とを有する。正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層の少なくとも1層は、本発明の固体電解質含有シートで構成される。すなわち、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層のうち1層が本発明の固体電解質含有シートで構成されている形態、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層のうち2層が本発明の固体電解質含有シートで構成されている形態、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層のうち3層が本発明の固体電解質含有シートで構成されている形態のいずれの形態も、本発明の全固体二次電池に包含される。
本発明の全固体二次電池は、用途によっては、上記構造のまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためには更に適当な筐体に封入して用いることが好ましい。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼等を構成材料とするものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、活物質層の成形材料、特に負極活物質層の成形材料として、好ましく用いることができる。また、本発明の固体電解質含有シートは、負極活物質層及び正極活物質層として好適である。
本明細書において、正極活物質層と負極活物質層をあわせて活物質層と称することがある。
全固体二次電池10においては、正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2の少なくとも一層が本発明の固体電解質組成物で形成され、又は本発明の固体電解質含有シートで構成されている。
正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2が含有する各成分は、それぞれ、互いに同種であっても異種であってもよい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理したもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理したものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金及びステンレス鋼がより好ましい。
集電体の厚みは、特に制限されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
全固体二次電池は、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層の少なくとも一層を本発明の固体電解質組成物で形成し、又は本発明の固体電解質含有シートで構成すること以外は、常法により製造できる。本発明の全固体二次電池の製造の一例について、以下に説明する。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用組成物として、正極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して乾燥することにより正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための固体電解質層形成用組成物を塗布して乾燥することにより、固体電解質層を形成する。更に、固体電解質層の上に、負極用組成物として、負極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して乾燥することにより、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。なお、上記の乾燥は、各層ごとに行う必要はなく、組成物を重層塗布した後に乾燥してもよい。全固体二次電池は必要によりこれを筐体に封入して所望の形態とすることができる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、固体電解質層形成用組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質含有シートを作製する。更に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
全固体二次電池の層形成における固体電解質組成物の塗布方法は、特に制限されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布及びバーコート塗布が挙げられる。
この場合、固体電解質組成物等は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に制限されず、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。また、乾燥温度は300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下が更に好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒を十分に揮発させ、固体状態(塗布乾燥層)にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。
また、塗布した固体電解質組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に制限されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。また、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化することが好ましい。初期化は、特に制限されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車(電気自動車等)、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
硫化物系無機固体電解質として、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.HamGa,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235及びA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873(いずれも非特許文献)を参照し、Li−P−S系ガラスを合成した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記の硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)に容器をセットし、温度25℃で、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行うことで、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li−P−Sガラス、Li−P−Sと表記することがある。)6.20gを得た。
<バインダーE−1溶液の調製>
300mL3つ口フラスコにトルエン53.7gを入れ、攪拌しながら80℃に昇温した(溶液A)。別途、100mLメスシリンダーにメタクリル酸メチル15.0g、ドデシルメタクリレート38.2g、3−メルカプトイソ酪酸0.54g、V−601(商品名、和光純薬社製)0.53gを加えて攪拌し、均一に溶解させた(溶液B)。溶液Aに溶液Bを80℃で2時間かけて滴下し、その後さらに80℃で2時間、95℃で2時間攪拌後、室温まで冷却した。この重合溶液をメタノールに流し入れて重合体を析出させ、溶媒を除く作業を2回繰り返した。その後、析出物にヘプタン107gを加えてヘプタン溶液を調製した。このヘプタン溶液をバインダーE−1溶液とした。バインダーE−1溶液の固形分濃度は43質量%であり、バインダーE−1溶液中の重合体の重量平均分子量(Mw)は10000、重量平均分子量(Mn)は5000であった。
V−601(商品名、和光純薬社製)を0.20gに変更した以外はバインダーE−1溶液の調製と同様にして、バインダーE−2溶液を得た。バインダーE−2溶液の固形分濃度は40質量%であった。また、バインダーE−2溶液中の重合体のMwは50000、Mnは20000であった。
ドデシルメタクリレートを、2−ヒドロキシエチルアクリレートに変更した以外は、バインダーE−1の調製と同様にして、バインダーE−3溶液を得た。バインダーE−3溶液の固形分濃度は41質量%であった。また、バインダーE−3溶液中の重合体のMwは12000、Mnは7000であった。
ドデシルメタクリレートを、アクリル酸エチルに変更した以外は、バインダーE−1の調製と同様にして、バインダーE−4の溶液を得た。バインダーE−4溶液の固形分濃度は43質量%であった。また、バインダーE−4溶液中の重合体のMwは12000、Mnは6000であった。
<バインダーB−1混合液の調製>
200mL3つ口フラスコに、バインダーE−1溶液を11.5gとヘプタン18.5gを入れ、攪拌しながら80℃に昇温した(溶液A)。別途、50mLメスシリンダーに2−ヒドロキシエチルアクリレートを10.0g、こはく酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)を1.68g、V−601(商品名、和光純薬社製)0.53gを加えて攪拌し、均一に溶解させた(溶液B)。溶液Aに溶液Bを80℃で2時間かけて滴下し、その後さらに80℃で2時間、90℃で2時間攪拌して重合した後、室温まで冷却した。こうして、バインダーの一部がヘプタン中に分散してなる分散液を得た。この分散液をバインダーB−1混合液とした。バインダーB−1混合液の分散質を構成する粒子状バインダーの体積平均粒子径は190nmであった。
このバインダーB−1混合液中には、種々の性状又は特性のポリマーが種々の状態で混在して存在する。例えば、バインダーB−1混合液において、バインダーE−1は分散媒(ヘプタン)中に溶解して存在したり、バインダーB−1混合液の調製における重合反応物の3次元構造の内部又は表面に吸着等して存在したりしている。また、バインダーB−1混合液において、バインダーB−1混合液の調製における重合反応物は多くが粒子状(分散状態)で存在する。しかし、低分子量の重合反応物などは、分散媒中に溶解して存在したり、極小粒径の微粒子として分散媒中に存在しているものもある。
すなわち、バインダーB−1混合液中に存在するポリマーは、溶解していたり、種々のサイズの粒子状で存在していたり、溶解性であっても粒子内部又は表面に吸着していたりする。また、バインダーB−1混合液中に存在するポリマーは分子量分布も広い。
このことは、後述のバインダーB−2〜B−4混合液についても同様である。
バインダーE−1溶液に代えてバインダーE−2溶液を用いたこと以外は、上記バインダーB−1混合液の調製と同様にして、バインダーB−2混合液を得た。バインダーB−2混合液の分散質を構成する粒子状バインダーの体積平均粒子径は150nmであった。
バインダーE−1溶液に代えてバインダーE−3溶液を用いたこと以外は、上記バインダーB−1混合液の調製と同様にして、バインダーB−3混合液を得た。バインダーB−3混合液の分散質を構成する粒子状バインダーの体積平均粒子径は220nmであった。
バインダーE−1溶液に代えてバインダーE−4溶液を用いたこと以外は、上記バインダーB−1混合液の調製と同様にして、バインダーB−4混合液を得た。バインダーB−4混合液の分散質を構成する粒子状バインダーの体積平均粒子径は200nmであった。
上記で調製したバインダーB−1〜B−4混合液をヘプタンで希釈し、重合体を総量で0.8質量%含有する希釈混合液を得た。この希釈混合液16g(重合体を0.128g含有する)をポリプロピレン製チューブ(日立工機社製)内に入れ、チューブシーラー(日立工機社製)で密封した。次いで、このチューブを小型超遠心機(商品名:himac CS−150FNX、日立工機製)のローターにセットし、100000rpm、25℃の条件で1時間、超遠心分離処理に付した。この超遠心分離処理の遠心力は610000Gとなる(この遠心力は、チューブの底にかかる遠心力である)。この処理により沈降したバインダーと、沈降せずに上澄み中に残留したバインダーとを分離した。
<バインダーS−1含有液の調製>
バインダーB−1混合液を上記[バインダー混合液の超遠心分離処理]に付して得た、沈降したバインダーa1(第1バインダー(B1))と、上澄み中に残留したバインダーa2(第2バインダー(B2))と、ヘプタンとを混合し、バインダーS−1含有液とした。具体的には、バインダーa1の量が0.11264g、バインダーa2の量が0.01536g、ヘプタンの量が1.152gとなるように3成分をバイアル管に入れ、ミックスローターを用いて30分間攪拌することにより、バインダーS−1含有液を調製した。バインダーS−1含有液において、第1バインダー(B1)は、粒径100〜300nm程度の粒子状となった。
バイアル管に入れたバインダーa1の量を0.08960g、バインダーa2の量を0.03840gとしたこと以外は、バインダーS−1含有液の調製と同様にして、バインダーS−2含有液を調製した。
バイアル管に入れたバインダーa1の量を0.06400g、バインダーa2の量を0.06400gを用いたこと以外は、バインダーS−1含有液の調製と同様にして、バインダーS−3含有液を調製した。
バイアル管に入れたバインダーa1の量を0.03200g、バインダーa2の量を0.09600gを用いたこと以外は、バインダーS−1含有液の調製と同様にして、バインダーS−4含有液を調製した。
バインダーB−2混合液を上記[バインダーの超遠心分離処理]に付して得た、沈降したバインダーb1(第1バインダー(B1))と、上澄み中に残留したバインダーb2(第2バインダー(B2))と,ヘプタンとを混合し、バインダーS−5含有液とした。具体的には、バインダーb1の量が0.10880g、バインダーb2の量が0.01920g、ヘプタンの量が1.152gとなるように3成分をバイアル管に入れ、ミックスローターを用いて30分間攪拌することにより、バインダーS−5含有液を調製した。バインダーS−5含有液において、第1バインダー(B1)は、粒径150〜230nm程度の粒子状となった。
バインダーB−3混合液を上記[バインダーの超遠心分離処理]に付して得た、沈降したバインダーc1(第1バインダー(B1))と、上澄み中に残留したバインダーc2(第2バインダー(B2))と,ヘプタンとを混合し、バインダーS−6含有液とした。具体的には、バインダーc1の量が0.08960g、バインダーc2の量が0.03840g、ヘプタンの量が1.152gとなるように3成分をバイアル管に入れ、ミックスローターを用いて30分間攪拌することにより、バインダーS−6含有液を調製した。バインダーS−6含有液において、第1バインダー(B1)は、粒径110〜190nm程度の粒子状となった。
バインダーB−4混合液を上記[バインダーの超遠心分離処理]に付して得た、沈降したバインダーd1(第1バインダー(B1))と、上澄み中に残留したバインダーd2(第2バインダー(B2))と,ヘプタンとを混合し、バインダーS−7含有液とした。具体的には、バインダーd1の量が0.08960g、バインダーd2の量が0.03840g、ヘプタンの量が1.152gとなるように3成分をバイアル管に入れ、ミックスローターを用いて30分間攪拌することにより、バインダーS−7含有液を調製した。バインダーS−7含有液において、第1バインダー(B1)は、粒径320〜410nm程度の粒子状となった。
バイアル管に入れたバインダーa1の量を0.11904g、バインダーa2の量を0.00896gとしたこと以外は、バインダーS−1含有液の調製と同様にして、バインダーT−1含有液を調製した。
バイアル管に入れたバインダーa1の量を0.01280g、バインダーa2の量を0.11520gとしたこと以外は、バインダーS−1含有液の調製と同様にして、バインダーT−2含有液を調製した。
上記で調製したバインダーB−1混合液をヘプタンで希釈し、重合体を総量で0.8質量%含有する希釈混合液を得た。この希釈混合液16g(重合体を0.128g含有する)をポリプロピレン製チューブ(日立工機社製)内に入れ、チューブシーラー(日立工機社製)で密封した。次いで、このチューブを小型超遠心機(商品名:himac CS−150FNX、日立工機製)のローターにセットし、50000rpm、25℃の条件で1時間、超遠心分離処理に付した。この超遠心分離処理の遠心力は305000Gとなる(この遠心力は、チューブの底にかかる遠心力である)。この処理により沈降したバインダーa1−2と、沈降せずに上澄み中に残留したバインダーa2−2とを分離した。
バインダーa1に代えてバインダーa1−2を用い、バイアル管に入れたバインダーa1−2の量を0.08960gとし、またバインダーa2に代えてバインダーa2−2を用い、バイアル管に入れたバインダーa2−2の量を0.03840gとしたこと以外は、バインダーS−1含有液の調製と同様にして、バインダーT−3含有液を調製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、下表に示す無機固体電解質と、上記で調製したバインダー(B)含有液と、分散媒としてのヘプタンとを投入した後に、フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、室温下、回転数300rpmで2時間混合して固体電解質組成物を調製した。
また、固体電解質組成物が導電助剤を含有する場合は、上記無機固体電解質と、上記で調製したバインダー(B)含有液と、導電助剤と、分散媒としてのヘプタンとを合わせてボールミルP−7により混合し、固体電解質組成物を調製した。
なお、固体電解質組成物が活物質を含有する場合は、活物質を投入してさらに室温下、回転数150rpmで5分間混合し、固体電解質組成物を調製した。
上記で調製した各固体電解質組成物を、集電体である厚み20μmのステンレス鋼(SUS)箔上にバーコーダーにより塗工した。SUS箔を下面としてホットプレート上に設置し、80℃で1時間加熱して分散媒を揮発させて除去し(この除去によっても、分散媒の一部は残留溶媒として残留する)、さらに300MPaで加圧プレスして、固体電解質含有シートを作製した。
上記調製例2で得た各固体電解質含有シートを3cm×14cmの長方形に切り出した。切り出したシートを、円筒形マンドレル試験機「商品コード056」(マンドレル直径10mm、Allgood社製)を用いて日本工業規格(JIS) K5600−5−1(耐屈曲性(円筒形マンドレル:タイプ2の試験装置を用いた試験)、国際標準規格(ISO)1519と同試験)に従って、屈曲させた。屈曲後、屈曲部分を含む3cm×8cmの範囲を目視観察し、欠陥の発生状態を調べた、欠陥の発生状態を下記評価基準に当てはめて、シートの強度を評価した。
A:欠陥(欠け、割れ、ヒビ、剥がれ)が全く見られなかった。
B:観測対象とした面積に占める欠陥部分の面積の割合が、0%越え10%以下
C:観測対象とした面積に占める欠陥部分の面積の割合が、10%越え30%以下
D:観測対象とした面積に占める欠陥部分の面積の割合が、30%越え50%以下
E:観測対象とした面積に占める欠陥部分の面積の割合が、50%越え
結果を下表に示す。
上記マンドレル試験後の各固体電解質含有シートについて、目視にて欠陥部分の無い範囲を直径14.5mmの円板状に2枚切り出した。切り出した2枚のシートの固体電解質層(活物質を含む場合には電極層)を貼り合わせてイオン伝導度測定用シートとし、スペーサーとワッシャー(図2に示していない。)を組み込んで、ステンレス製の2032型コインケース11に入れた。2032型コインケース11をかしめることで、8ニュートン(N)の力で締め付けられた、図2に示す構成のイオン伝導度測定用試験体を作製した。
上記で得たイオン伝導度測定用試験体を用いて、イオン伝導度を測定した。具体的には、30℃の恒温槽中、1255B FREQUENCY RESPONSE ANALYZER(商品名、SOLARTRON社製)を用いて、電圧振幅5mV、周波数1MHz〜1Hzまで交流インピーダンス測定した。これにより、貼り合わせた固体電解質含有シート(イオン伝導度測定用シート)の膜厚方向の抵抗を求め、下記式(1)により計算して、イオン伝導度を求めた。得られたイオン伝導度を下記評価基準に当てはめ、評価した。
イオン伝導度σ(mS/cm)=1000×試料膜厚(cm)/(抵抗(Ω)×試料面積(cm2))・・・式(1)
式(1)において、試料膜厚は固体電解質層又は電極層の厚さを意味する。
AA:0.65≦σ
A:0.60≦σ<0.65
B:0.50≦σ<0.60
C:0.40≦σ<0.50
D:0.30≦σ<0.40
E:0.20≦σ<0.30
F:σ<0.20
結果を下表に示す。
なお、下表に示す組成は、調製例1で得た固体電解質組成物の組成(質量基準)である。
(A):無機固体電解質
LLT:Li0.33La0.55TiO3(平均粒径3.25μm、豊島製作所製)
Li−P−S:上記で合成したLi−P−S系ガラス
(D):活物質
NMC:LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム)
NCA:LiNi0.85Co0.10Al0.05O2(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム)
(E):導電助剤
AB:アセチレンブラック
VGCF:商品名、昭和電工社製カーボンナノファイバー
また、これらの固体電解質含有シートは、マンドレル試験後、目視観察では欠陥を生じていない部分を選んで、イオン伝導度を測定しても、イオン伝導度に劣る結果となった(No.c11〜c15)。これは、屈曲させることによって、ミクロのレベルでは欠陥が多数生じていることを示す。
ここで、バインダーT−3含有液は、バインダーB−1混合液を超遠心で分離する際の超遠心条件が本発明の規定と異なる。この超遠心によってバインダーB−1混合液を処理した際に生じる沈降成分の量は、本発明で規定する超遠心分離条件でバインダー混合液B−1を処理した場合の沈降成分の量と、見た目には変わらず、上澄み成分の透明感も変わらなかった。しかし、上記表2に示すように評価結果は劣っていた。つまり、本発明の効果を奏するためには、本発明で規定する特定の超遠心分離処理によりバインダーを2つの物性のものに分けて、各バインダーの配合量を特定比とすることが重要であることがわかる。
これに対し、固体電解質含有シートに含まれ得るバインダー(B)の成分組成が本発明の規定を満たす場合には、マンドレル試験においても欠陥を生じにくく、また、屈曲させた後にイオン伝導度を測定しても、十分に高いイオン伝導度を示すことがわかった(No.11〜26)。
すなわち、全固体二次電池において、本発明の固体電解質含有シートを適用することにより、変形等の外力がかかってもイオン伝導度の経時低下の少ない全固体二次電池を提供することができる。
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 2032型コインケース
12 全固体二次電池用電極シート
13 全固体二次電池
〔1〕
周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質(A)と、
バインダー(B)と、
分散媒(C)とを含む固体電解質組成物であって、
上記バインダー(B)は、上記分散媒(C)中で温度25℃、遠心力610000Gで1時間の遠心分離処理に付した場合に沈降する第1バインダー(B1)と、上記遠心分離処理に付しても沈降しない第2バインダー(B2)とを含み、
前記バインダー(B)が、含フッ素樹脂、炭化水素系熱可塑性樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂及びセルロース誘導体樹脂からなる群より選択される1種の高分子であり、
上記第1バインダー(B1)の含有量Xと上記第2バインダー(B2)の含有量Yが、質量基準で下記式を満たす、固体電解質組成物。
0.10≦Y/(X+Y)≦0.80
〔2〕
上記第2バインダー(B2)を構成するポリマーのガラス転移温度が−50℃〜10℃である、〔1〕記載の固体電解質組成物。
〔3〕
上記分散媒(C)が炭化水素溶媒を含む、〔1〕又は〔2〕記載の固体電解質組成物。
〔4〕
上記第1バインダー(B1)の粒径が10〜10000nmである、〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の固体電解質組成物。
〔5〕
上記固体電解質組成物が活物質(D)を含まない場合、上記第2バインダー(B2)の含有量Yと、上記無機固体電解質(A)の含有量Zが、質量基準で下記式を満たし、
上記固体電解質組成物が上記活物質(D)をさらに含む場合、上記第2バインダー(B2)の含有量Yと、上記無機固体電解質(A)の含有量及び上記活物質(D)の含有量の合計Zが、質量基準で下記式を満たす、〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の固体電解質組成物。
0.001≦Y/(Y+Z)≦0.1
〔6〕
活物質(D)をさらに含有する、〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の固体電解質組成物。
〔7〕
導電助剤(E)をさらに含有する、〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の固体電解質組成物。
〔8〕
上記無機固体電解質(A)が硫化物系無機固体電解質である、〔1〕〜〔7〕のいずれか記載の固体電解質組成物。
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか記載の固体電解質組成物を用いて形成した固体電解質含有シート。
〔10〕
周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質(A)と、
バインダー(B)と、
溶媒(C1)とを含む固体電解質含有シートであって、
上記バインダー(B)は、上記溶媒(C1)中で温度25℃、遠心力610000Gで1時間の遠心分離処理に付した場合に沈降する第1バインダー(B1)と、上記遠心分離処理に付しても沈降しない第2バインダー(B2)とを含み、
前記バインダー(B)が、含フッ素樹脂、炭化水素系熱可塑性樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂及びセルロース誘導体樹脂からなる群より選択される1種の高分子であり、
上記第1バインダー(B1)の含有量Xと上記第2バインダー(B2)の含有量Yが、質量基準で下記式を満たす、固体電解質含有シート。
0.10≦Y/(X+Y)≦0.80
〔11〕
〔9〕又は〔10〕記載の固体電解質含有シートを含む、全固体二次電池用電極シート。
〔12〕
正極活物質層と、負極活物質層と、上記正極活物質層及び上記負極活物質層の間の固体電解質層とを含む全固体二次電池であって、
上記正極活物質層、上記負極活物質層及び上記固体電解質層の少なくとも1層が、〔9〕又は〔10〕記載の固体電解質含有シートで構成された全固体二次電池。
〔13〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか記載の固体電解質組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程を含む、固体電解質含有シートの製造方法。
〔14〕
上記塗布膜を乾燥する工程を含む、〔13〕記載の固体電解質含有シートの製造方法。
〔15〕
〔13〕又は〔14〕記載の固体電解質含有シートの製造方法を含む全固体二次電池の製造方法。
Claims (15)
- 周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質(A)と、バインダー(B)と、分散媒(C)とを含む固体電解質組成物であって、
前記バインダー(B)は、前記分散媒(C)中で温度25℃、遠心力610000Gで1時間の遠心分離処理に付した場合に沈降する第1バインダー(B1)と、前記遠心分離処理に付しても沈降しない第2バインダー(B2)とを含み、
前記第1バインダー(B1)の含有量Xと前記第2バインダー(B2)の含有量Yが、質量基準で下記式を満たす、固体電解質組成物。
0.10≦Y/(X+Y)≦0.80 - 前記第2バインダー(B2)を構成するポリマーのガラス転移温度が−50℃〜10℃である、請求項1記載の固体電解質組成物。
- 前記分散媒(C)が炭化水素溶媒を含む、請求項1又は2記載の固体電解質組成物。
- 前記第1バインダー(B1)の粒径が10〜10000nmである、請求項1〜3のいずれか1項記載の固体電解質組成物。
- 前記固体電解質組成物が活物質(D)を含まない場合、前記第2バインダー(B2)の含有量Yと、前記無機固体電解質(A)の含有量Zが、質量基準で下記式を満たし、
前記固体電解質組成物が前記活物質(D)をさらに含む場合、前記第2バインダー(B2)の含有量Yと、前記無機固体電解質(A)の含有量及び前記活物質(D)の含有量の合計Zが、質量基準で下記式を満たす、請求項1〜4のいずれか1項記載の固体電解質組成物。
0.001≦Y/(Y+Z)≦0.1 - 活物質(D)をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の固体電解質組成物。
- 導電助剤(E)をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の固体電解質組成物。
- 前記無機固体電解質(A)が硫化物系無機固体電解質である、請求項1〜7のいずれか1項記載の固体電解質組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項記載の固体電解質組成物を用いて形成した固体電解質含有シート。
- 周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質(A)と、バインダー(B)と、溶媒(C1)とを含む固体電解質含有シートであって、
前記バインダー(B)は、前記溶媒(C1)中で温度25℃、遠心力610000Gで1時間の遠心分離処理に付した場合に沈降する第1バインダー(B1)と、前記遠心分離処理に付しても沈降しない第2バインダー(B2)とを含み、
前記第1バインダー(B1)の含有量Xと前記第2バインダー(B2)の含有量Yが、質量基準で下記式を満たす、固体電解質含有シート。
0.10≦Y/(X+Y)≦0.80 - 請求項9又は10記載の固体電解質含有シートを含む、全固体二次電池用電極シート。
- 正極活物質層と、負極活物質層と、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の間の固体電解質層とを含む全固体二次電池であって、
前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記固体電解質層の少なくとも1層が、請求項9又は10記載の固体電解質含有シートで構成された全固体二次電池。 - 請求項1〜8のいずれか1項記載の固体電解質組成物を基材上に塗布して塗布膜を形成する工程を含む、固体電解質含有シートの製造方法。
- 前記塗布膜を乾燥する工程を含む、請求項13記載の固体電解質含有シートの製造方法。
- 請求項13又は14記載の固体電解質含有シートの製造方法を含む全固体二次電池の製造方法。
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