JPWO2018159431A1 - 間葉系幹細胞及び肝疾患治療剤 - Google Patents

間葉系幹細胞及び肝疾患治療剤 Download PDF

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Abstract

本発明は、肝疾患の新規治療剤を提供することを目的とする。本発明は、組織因子経路インヒビター(TFPI)が高発現であることを特徴とする、間葉系幹細胞である。上記間葉系幹細胞は他家由来であること、脂肪組織由来であることが好ましい。また、本発明は、上記間葉系幹細胞を含有する肝疾患治療剤も含む。

Description

本発明は、間葉系幹細胞及び肝疾患治療剤に関する。
肝硬変は、顕著な線維化と再生結節形成を示す種々の肝疾患の終末像であり、病理学的には、肝小葉改築による偽小葉の形成と肝内及び肝外の血行動態異常が特徴であり、その結果、肝細胞機能の低下が生じる(非特許文献1参照)。肝硬変ではまた、慢性的な炎症により、肝細胞の変性・壊死と肝再生が繰り返され、その過程で肝臓内に細胞外基質が過度に蓄積され、線維化が生じることが知られている。
肝硬変の病因としては、肝炎ウイルスへの持続感染、アルコール過剰摂取、肥満、インスリン抵抗性、自己免疫(原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎)、遺伝性、薬物性等(非特許文献2参照)が挙げられるが、中でも、肝炎ウイルスによるものが多く、特にC型肝炎ウイルス(以下「HCV」と言う)による割合が最も高い。HCVのキャリアは、全世界で1億7,000万人、国内で150万〜200万人存在すると推定されており、HCV感染者の約70%で感染が持続、慢性肝炎へと移行する。慢性化した場合、ウイルスの自然排除は年率0.2%と稀であり、HCV感染による炎症の持続により肝線維化が惹起され、肝硬変や肝細胞癌へと進展する(非特許文献3参照)。
肝硬変の代償期から、更に高度な線維化を伴う非代償期へ進行した場合、既存の薬剤・治療法では十分に対処することができない。そのため従来とは作用機序の異なる新規治療薬の開発が望まれている。
間葉系幹細胞は、Friedenstein(1982)によって初めて骨髄から単離された多分化能を有する前駆細胞である(非特許文献4参照)。間葉系幹細胞は、骨髄、臍帯、脂肪等の様々な組織に存在することが明らかにされており、間葉系幹細胞移植は、様々な難治性疾患に対する新しい治療方法として、期待されている(特許文献1〜2参照)。最近では、脂肪組織、胎盤、臍帯、卵膜等の間質細胞に同等の機能を有する細胞が存在することが知られている。従って、間葉系幹細胞を間質細胞(Mesenchymal Stromal Cell)と称することもある。
特開2012−157263号公報 特表2012−508733号公報
渡辺明治、肝硬変 病態と治療ハンドブック、メディカルレビュー社、2007年4月20日発行、p.12 日本消化器病学会編集、肝硬変診療ガイドライン2015、株式会社南江堂、2015年10月発行、P.2 Kiyosawa K. et. al., Hepatology,(1990), 12(4 Pt 1), pp.671−675 Pittenger F.M.et al.Science ,(1999),284,pp.143−147
本発明は、上述のような状況の中、肝疾患の新規治療剤を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明者らは、組織因子経路インヒビター(Tissue factor pathway inhibitor;TFPI)を高発現する間葉系幹細胞(mesenchymal stem(stromal) cell;MSC)が、肝疾患の治療に有効であることを見出し、本発明を完成させた。本発明によれば、肝疾患の治療のために有効な治療剤を提供できる。すなわち本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]組織因子経路インヒビター(TFPI)が高発現であることを特徴とする、間葉系幹細胞。
[2]他家由来である、[1]に記載の間葉系幹細胞。
[3]脂肪組織由来である、[1]又は[2]に記載の間葉系幹細胞。
[4][1]から[3]のいずれかに記載の間葉系幹細胞を含有する肝疾患治療剤。
[5]上記肝疾患が、肝組織の線維化を伴う肝疾患である、[4]に記載の肝疾患治療剤。
[6]組織因子経路インヒビター(TFPI)が高発現である間葉系幹細胞を使用することを特徴とする、肝疾患の治療方法。
[7]上記間葉系幹細胞が他家由来である、[6]に記載の肝疾患の治療方法。
[8]上記間葉系幹細胞が脂肪組織由来である、[6]又は[7]に記載の肝疾患の治療方法。
本発明によると、肝疾患の新規治療剤を提供することができる。
図1は、rTFPIの、肝星細胞中の線維化関連遺伝子ACTA2の発現抑制効果を示す図である。 図2は、rTFPIの、肝星細胞中の線維化関連遺伝子COL1A1の発現抑制効果を示す図である。 図3は、本発明の間葉系幹細胞におけるTFPImRNAの発現を、その他の細胞と比較した結果を示す図である。 図4は、本発明の間葉系幹細胞におけるTFPImRNAの発現を、その他の細胞(従来の培養条件下の間葉系幹細胞)と比較した結果を示す図である。 図5は、本発明の間葉系幹細胞におけるTFPIタンパクの発現量を、その他の細胞(従来の培養条件下の間葉系幹細胞)と比較した結果を示す図である。 図6は、本発明の間葉系幹細胞におけるTFPIタンパクの分泌量を、その他の細胞(従来の培養条件下の間葉系幹細胞)と比較した結果を示す図である。 図7は、本発明の間葉系幹細胞の、線維化関連遺伝子ACTA2の発現抑制効果を、その他の細胞(従来の培養条件下の間葉系幹細胞)と比較した結果を示す図である。 図8は、本発明の間葉系幹細胞の、線維化関連遺伝子COLIA1の発現抑制効果を、その他の細胞(従来の培養条件下の間葉系幹細胞)と比較した結果を示す図である。
以下、本発明の間葉系幹細胞、肝疾患治療剤について詳細に説明する。
[間葉系幹細胞]
本発明の間葉系幹細胞は、TFPI(Tissue factor pathway inhibitor;組織因子経路インヒビター)が高発現であることを特徴とする。
TFPIは分子量約42,000の糖蛋白質で、活性型第X因子を介してTF−活性型第VII因子に結合してその血液凝固活性を抑制すると考えられているクニッツ型プロテアーゼインヒビターである[Broze,G.J., Proc.Natl.Acad.Sci.,84, p1886(1987)]。TFPIは主に血管内皮細胞に発現し、細胞膜上に結合しているが、トロンビン、MMPs、ヘパリン等により結合が切断され遊離することが知られている。
なお、TFPIが高発現であるとは、TFPIのmRNA発現が高発現であること、若しくはTFPIタンパク質が高発現であること、又はその両方が高発現であることを含む。
また、本発明の間葉系幹細胞は、他の細胞に比べ、TFPIを高発現していればよいが、具体的には、本発明の間葉系幹細胞は、従来の培養条件下(例えば、10%FBS含有DMEM培地による培養)で得られる間葉系幹細胞に比べて、TFPIを高発現していればよい。好ましくは従来の培養条件下で得られる間葉系幹細胞に比べ1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上、特に好ましくは5倍以上発現している。
本発明の間葉系幹細胞は、皮膚線維芽細胞、平滑筋細胞、上皮細胞に比べて、TFPIを高発現していればよい。好ましくは皮膚線維芽細胞、平滑筋細胞、上皮細胞のいずれかに対して1.1倍以上、より好ましくは1.15倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上発現している。特に好ましくは皮膚線維芽細胞、平滑筋細胞、上皮細胞のうちの2種以上の細胞に対して1.1倍以上、よりさらに好ましくは1.15倍以上、より特に好ましくは1.2倍以上発現している。さらに特に好ましくは皮膚線維芽細胞、平滑筋細胞、上皮細胞のうちの3種以上の細胞に対して1.1倍以上、最も好ましくは1.15倍以上、より最も好ましくは1.2倍以上発現している。
本発明において間葉系幹細胞とは、間葉系に属する一種以上の細胞(骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、腱細胞、脂肪細胞など)、好ましくは二種以上の細胞、より好ましくは三種以上の細胞への分化能を有し、当該能力を維持したまま増殖できる細胞を意味する。本発明において用いる間葉系幹細胞なる用語は、間質細胞と同じ細胞を意味し、両者を特に区別するものではない。また、単に間葉系細胞と表記される場合もある。間葉系幹細胞を含む組織としては、例えば、脂肪組織、臍帯、骨髄、臍帯血、子宮内膜、胎盤、羊膜、絨毛膜、脱落膜、真皮、骨格筋、骨膜、歯小嚢、歯根膜、歯髄、歯胚等が挙げられる。例えば脂肪組織由来間葉系幹細胞とは、脂肪組織に含有される間葉系幹細胞を意味し、脂肪組織由来間質細胞と称してもよい。これらのうち、肝疾患の治療に対する有効性の観点、入手容易性の観点等から、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、胎盤由来間葉系幹細胞、歯髄由来間葉系幹細胞が好ましく、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞がより好ましい。
本発明における間葉系幹細胞は、処置される対象(被検体)と同種由来であってもよいし、異種由来であってもよい。本発明における間葉系幹細胞の種として、ヒト、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ラビット、マウス、ラットが挙げられ、好ましくは処置される対象(被検体)と同種由来細胞である。本発明における間葉系幹細胞は、処置される対象(被検体)に由来、すなわち自家細胞(同種同系)であってもよいし、同種の別の対象に由来、すなわち他家細胞(同種異系)であってもよい。好ましくは他家細胞(同種異系)である。
間葉系幹細胞は同種異系の被験体に対しても拒絶反応を起こしにくいため、あらかじめ調製されたドナーの細胞を拡大培養して凍結保存したものを、本発明の疾患治療剤における間葉系幹細胞として使用することができる。そのため、自己の間葉系幹細胞を調製して用いる場合と比較して、商品化も容易であり、かつ安定して一定の効果を得られ易いという観点から、本発明における間葉系幹細胞は、同種異系であることがより好ましい。
本発明において間葉系幹細胞とは、間葉系幹細胞を含む任意の細胞集団を意味する。当該細胞集団は、少なくとも20%以上、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、96%、97%、98%又は99%が間葉系幹細胞である。
本発明において脂肪組織とは、脂肪細胞、及び微小血管細胞等を含む間質細胞を含有する組織を意味し、例えば、哺乳動物の皮下脂肪を外科的切除又は吸引して得られる組織である。脂肪組織は、皮下脂肪より入手され得る。後述する脂肪組織由来間葉系幹細胞の投与対象と同種動物から入手されることが好ましく、ヒトへ投与することを考慮すると、より好ましくは、ヒトの皮下脂肪である。皮下脂肪の供給個体は、生存していても死亡していてもよいが、本発明において用いる脂肪組織は、好ましくは、生存個体から採取された組織である。個体から採取する場合、脂肪吸引は、例えば、PAL(パワーアシスト)脂肪吸引、エルコーニアレーザー脂肪吸引、又は、ボディジェット脂肪吸引などが例示され、細胞の状態を維持するという観点から、超音波を用いないことが好ましい。
本発明において臍帯とは、胎児と胎盤を結ぶ白い管状の組織であり、臍帯静脈、臍帯動脈、膠様組織(ウォートンジェリー;Wharton’s Jelly)、臍帯基質自体等から構成され、間葉系幹細胞を多く含む。臍帯は、本発明の疾患治療剤を使用する被験体(投与対象)と同種動物から入手されることが好ましく、本発明の疾患治療剤をヒトへ投与することを考慮すると、より好ましくは、ヒトの臍帯である。
本発明において骨髄とは、骨の内腔を満たしている柔組織のことをいい、造血器官である。骨髄中には骨髄液が存在し、その中に存在する細胞を骨髄細胞と呼ぶ。骨髄細胞には、赤血球、顆粒球、巨核球、リンパ球、脂肪細胞等の他、間葉系幹細胞、造血幹細胞、血管内皮前駆細胞等が含まれている。骨髄細胞は、例えば、ヒト腸骨、長管骨、又はその他の骨から採取することができる。
本発明において、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞とは、それぞれ脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞を含む任意の細胞集団を意味する。当該細胞集団は、少なくとも20%以上、好ましくは、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、93%、96%、97%、98%又は99%が、脂肪組織由来間葉系幹細胞、臍帯由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞といった各組織由来間葉系幹細胞である。
本発明における間葉系幹細胞は、上記TFPIを高発現することに加えて、例えば、成長特徴(例えば、継代から老化までの集団倍加能力、倍加時間)、核型分析(例えば、正常な核型、母体系統又は新生児系統)、フローサイトメトリー(例えば、FACS分析)による表面マーカー発現、免疫組織化学及び/又は免疫細胞化学(例えば、エピトープ検出)、遺伝子発現プロファイリング(例えば、遺伝子チップアレイ;逆転写PCR、リアルタイムPCR、従来型PCR等のポリメラーゼ連鎖反応)、miRNA発現プロファイリング、タンパク質アレイ、サイトカイン等のタンパク質分泌(例えば、血漿凝固解析、ELISA、サイトカインアレイ)、代謝産物(メタボローム解析)、本分野で知られている他の方法等によって、特徴付けられてもよい。
(間葉系幹細胞の調製方法)
TFPI高発現の間葉系幹細胞の調製方法は特に限定されないが、例えば以下のようにして調製することができる。すなわち、脂肪組織、臍帯、骨髄等の組織から、当業者に公知の方法に従って、間葉系幹細胞を分離、培養し、TFPIに特異的に結合する抗TFPI抗体を用いて、TFPI高発現細胞をセルソーター、磁気ビーズ等で分離することにより取得することができる。また、特定の培地を用いた培養により、間葉系幹細胞におけるTFPI発現を誘導することで、TFPI高発現の間葉系幹細胞を取得することもできる。この誘導によって得られる細胞集団において、細胞集団の50%以上がTFPI高発現であることが好ましく、70%以上がTFPI高発現であることがより好ましく、80%以上がTFPI高発現であることがさらに好ましく、90%以上がTFPI高発現であることが特に好ましく、実質的にTFPI高発現の均一な細胞集団であることが最も好ましい。以下に、TFPI高発現の間葉系幹細胞の調製方法を具体的に説明する。
間葉系幹細胞は、当業者に周知の方法により調製することができる。以下に、一つの例として、脂肪組織由来間葉系幹細胞の調製方法を説明する。脂肪組織由来間葉系幹細胞は、例えば米国特許第6,777,231号に記載の製造方法によって得られて良く、例えば、以下の工程(i)〜(iii)を含む方法で製造することができる:
(i) 脂肪組織を酵素による消化により細胞懸濁物を得る工程;
(ii) 細胞を沈降させ、細胞を適切な培地に再懸濁する工程;ならびに
(iii) 細胞を固体表面で培養し、固体表面への結合を示さない細胞を除去する工程。
工程(i)において用いる脂肪組織は、洗浄されたものを用いることが好ましい。洗浄は、生理学的に適合する生理食塩水溶液(例えばリン酸緩衝食塩水(PBS))を用いて、激しく攪拌して沈降させることによって行い得る。これは、脂肪組織に含まれる夾雑物 (デブリとも言い、例えば損傷組織、血液、赤血球など)を組織から除去するためである。したがって、洗浄及び沈降は一般に、上清からデブリが総体的に除去されるまで繰り返される。残存する細胞は、さまざまなサイズの塊として存在するので、細胞そのものの損傷を最小限に抑えながら解離させるため、洗浄後の細胞塊を、細胞間結合を弱めるか、又は破壊する酵素(例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ又はトリプシンなど)で処理することが好ましい。このような酵素の量及び処理期間は、使用される条件に依存して変わるが、当技術分野で既知である。このような酵素処理に代えて、又は併用して、細胞塊を、機械的な攪拌、超音波エネルギー、熱エネルギーなどの他の処理法で分解することができるが、細胞の損傷を最小限に抑えるため、酵素処理のみで行うことが好ましい。酵素を用いた場合、細胞に対する有害な作用を最小限に抑えるために、適切な期間をおいた後に培地等を用いて酵素を失活させることが望ましい。
工程(i)により得られる細胞懸濁物は、凝集状の細胞のスラリー又は懸濁物、ならびに各種夾雑細胞、例えば赤血球、平滑筋細胞、内皮細胞、及び線維芽細胞を含む。従って、続いて凝集状態の細胞とこれらの夾雑細胞を分離、除去してもよいが、後述する工程(iii)での接着及び洗浄により、除去可能であることから、当該分離、除去は割愛してもよい。夾雑細胞を分離、除去する場合、細胞を上清と沈殿に強制的に分ける遠心分離によって達成しえる。得られた夾雑細胞を含む沈殿は、生理学的に適合する溶媒に懸濁させる。懸濁状の細胞には、赤血球を含む恐れがあるが、後述する個体表面への接着による選択により、赤血球は除外されるため、溶解する工程は必ずしも必要ではない。赤血球を選択的に溶解する方法として、例えば、塩化アンモニウムによる溶解による高張培地又は低張培地中でのインキュベーションなど、当技術分野で周知の方法を使用することができる。溶解後、例えば濾過、遠心沈降、又は密度分画によって溶解物を所望の細胞から分離してもよい。
工程(ii)において、懸濁状の細胞において、間葉系幹細胞の純度を高めるために、1回もしくは連続して複数回洗浄し、遠心分離し、培地に再懸濁してもよい。この他にも、細胞を、細胞表面マーカープロファイルを基に、又は細胞のサイズ及び顆粒性を基に分離してもよい。
再懸濁において用いる培地は、間葉系幹細胞を培養できる培地であれば、特に限定されないが、このような培地は、基礎培地に、血清を添加する、及び/又は、アルブミン、トランスフェリン、脂肪酸、インスリン、亜セレン酸ナトリウム、コレステロール、コラーゲン前駆体、微量元素、2−メルカプトエタノール、3’−チオールグリセロール等の1つ以上の血清代替物を添加して作製してもよい。これらの培地には、必要に応じて、さらに脂質、アミノ酸、タンパク質、多糖、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類等の物質を添加してもよい。
上記基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle’s Minimum Essential Medium(EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)培地、Ham’s F12培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、MCDB201培地及びこれらの混合培地等が挙げられる。
上記血清としては、例えば、ヒト血清、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清、仔ウシ血清、ヤギ血清、ウマ血清、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、ラット血清等が挙げられるがこれらに限定されない。血清を用いる場合、基礎培地に対して、5v/v%から15v/v%、好ましくは、10v/v%を添加してもよい。
上記脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、リノレイン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸、パルミトイル酸、パルミチン酸、及びステアリン酸等が例示されるが、これらに限定されない。脂質は、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン等が例示されるが、これらに限定されない。アミノ酸は、例えば、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン、L−システイン、L−シスチン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−グリシンなどを含むがこれらに限定されない。タンパク質は、例えば、エコチン、還元型グルタチオン、フィブロネクチン及びβ2−ミクログロブリン等が例示されるが、これらに限定されない。多糖は、グリコサミノグリカンが例示され、グリコサミノグリカンのうち特に、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸等が例示されるが、これらに限定されない。増殖因子は、例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β)、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、結合組織増殖因子(CTGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等が例示されるが、これらに限定されない。本発明において得られる脂肪由来間葉系幹細胞を細胞移植に用いるという観点から、血清等の異種由来成分を含まない(ゼノフリー)培地を用いることが好ましい。このような培地は、例えば、PromoCell社、Lonza社、Biological Industries社、Veritas社、R&D Systems社、Corning社及びRohto社などから間葉系幹細胞(間質細胞)用として予め調製された培地として提供されている。
続いて、工程(iii)では、工程(ii)で得られた細胞懸濁液中の細胞を分化させずに固体表面上で、上述の適切な細胞培地を使用して、適切な細胞密度及び培養条件で培養する。本発明において、「固体表面」とは、本発明における脂肪組織由来間葉系幹細胞の結合・接着を可能とする任意の材料を意味する。特定の態様では、このような材料は、その表面への哺乳類細胞の結合・接着を促すように処理されたプラスチック材料である。固体表面を有する培養容器の形状は特に限定されないが、シャーレやフラスコなどが好適に用いられる。非結合状態の細胞及び細胞の破片を除去するために、インキュベーション後に細胞を洗浄する。
本発明では、最終的に固体表面に結合・接着した状態で留まる細胞を、脂肪組織由来間葉系幹細胞の細胞集団として選択することができる。
選択された細胞について、本発明における脂肪組織由来間葉系幹細胞であることを確認するために、表面抗原についてフローサイトメトリー等を用いて従来の方法で解析してもよい。さらに、各細胞系列に分化する能力について検査してもよく、このような分化は、従来の方法で行うことができる。
本発明における間葉系幹細胞は、上述の通り調製することができるが、次の特性を持つ細胞として定義してもよい;
(1)標準培地での培養条件で、プラスチックに接着性を示す、
(2)表面抗原CD44、CD73、CD90が陽性であり、CD31、CD45が陰性であり、及び
(3)培養条件にて骨細胞、脂肪細胞、軟骨細胞に分化可能。
上記工程(iii)によって得られた間葉系幹細胞から、TFPIタンパクを高発現している細胞を、セルソータ―、磁気ビーズ等を用いた免疫学的手法により選択的に分離することで、TFPIタンパクを高発現している間葉系幹細胞を取得することができる。また、 TFPIの発現を誘導できる特定の培地による培養を行うことにより、間葉系幹細胞におけるTFPI発現を誘導し、効率的にTFPI高発現の間葉系幹細胞を取得することもできる。一例として、セルソータ―を用いた免疫学的手法による選択的分離の具体的方法を以下に説明する。
上記調製した間葉系幹細胞をトリプシン・EDTA溶液等により処理して得られた細胞懸濁液を遠心(室温、400G、5分)して上清を除去する。細胞にStaining Buffer(1%BSA−PBS)を加え、1×10cells/500uLとなるように調製し、ピペッティングにより細胞懸濁液濃度を均一にした後、新しい1.5mLマイクロチューブに50uLずつ分注する。分注した細胞懸濁液に1次抗体(Mouse anti human TFPI、Sekisui diagnostics社製、ADG4903)を5〜20μg/mLの濃度で添加し懸濁した後に、遮光・冷蔵下で30分間〜1時間反応させる。Staining Buffer1mLで3回洗浄を行った後に、Staining Bufferを加え50uLとし、2次抗体(Anti Mouse IgG alexar488、Thermofisher scientific社製、A21202)を1〜10μg/mLの濃度で添加し懸濁した後に、遮光・冷蔵下で30分間〜1時間反応させる。Staining Buffer1mLで3回洗浄を行った後に、PI Buffer(Staining buffer14.4mLにPropidium iodide solution(SIGMA社製、P4864)28.8μLを添加して調製)300uLを加えてよく懸濁し、セルストレーナ付チューブに通し、fluorescence activated cell sorting(FACS)で分離を行うことができる。
(間葉系幹細胞の凍結保存)
本発明における間葉系幹細胞は、疾患治療効果を備えていれば、適宜、凍結保存及び融解を繰り返した細胞であってもよい。本発明において、凍結保存は、当業者に周知の凍結保存液へ間葉系幹細胞を懸濁し、冷却することによって行い得る。懸濁は、細胞をトリプシンなどの剥離剤によって剥離し、凍結保存容器に移し、適宜、処理した後、凍結保存液を加えることによって行い得る。
凍結保存液は、凍害防御剤として、DMSO(Dimethyl sulfoxide)を含有していてもよいが、DMSOは、細胞毒性に加えて、間葉系幹細胞を分化誘導する特性を有することから、DMSO含有量を減らすことが好ましい。DMSOの代替物として、グリセロール、プロピレングリコール又は多糖類が例示される。DMSOを用いる場合、5%〜20%の濃度、好ましくは5%〜10%の濃度、より好ましくは10%の濃度を含有する。この他にも、WO2007/058308に記載の添加剤を含んでもよい。このような凍結保存液として、例えば、バイオベルデ社、日本ジェネティクス株式会社、リプロセル社、ゼノアック社、コスモ・バイオ社、コージンバイオ株式会社、サーモフィッシャーサイエンティフィック社などから提供されている凍結保存液を用いてもよい。
上述の懸濁した細胞を凍結保存する場合、−80℃〜−100℃の間の温度(例えば、−80℃)で保管することで良く、当該温度に達成しえる任意のフリーザーを用いて行い得る。特に限定されないが、急激な温度変化を回避するため、プログラムフリーザーを用いて、冷却速度を適宜制御してもよい。冷却速度は、凍結保存液の成分によって適宜選択しても良く、凍結保存液の製造者指示に従って行われ得る。
保存期間は、上記条件で凍結保存した細胞が融解した後、凍結前と同等の性質を保持している限り、特に上限は限定されないが、例えば、1週間以上、2週間以上、3週間以上、4週間以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、1年以上、又はそれ以上が挙げられる。より低い温度で保存することで細胞障害を抑制することができるため、液体窒素上の気相(約−150℃以下から−180℃以下)へ移して保存してもよい。液体窒素上の気相で保存する場合、当業者に周知の保存容器を用いて行うことができる。特に限定されないが、例えば、2週間以上保存する場合、液体窒素上の気相で保存することが好ましい。
融解した間葉系幹細胞は、次の凍結保存までに適宜、培養してもよい。間葉系幹細胞の培養は、上述した間葉系幹細胞を培養できる培地を用いて行われ、特に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃の培養温度で、CO含有空気の雰囲気下で行われてもよい。CO濃度は、約2〜5%、好ましくは約5%である。培養において、培養容器に対して適切なコンフルエンシー(例えば、培養容器に対して、50%から80%を細胞が占有することが挙げられる)に達した後に、細胞をトリプシンなどの剥離剤によって剥離し、別途用意した培養容器に適切な細胞密度で播種して培養を継続してもよい。細胞を播種する際において、典型的な細胞密度として、100細胞/cm〜100,000細胞/cm、500細胞/cm〜50,000細胞/cm、1,000〜10,000細胞/cm、2,000〜10,000細胞/cmなどが例示される。特定の態様では、細胞密度は2,000〜10,000細胞/cmである。適切なコンフルエンシーに達するまでの期間が、3日間から7日間となるように調整することが好ましい。培養中、必要に応じて、適宜、培地を交換してもよい。
凍結保存した細胞の融解は、当業者に周知の方法によって行い得る。例えば、37℃の恒温槽内又は湯浴中にて静置又は振とうすることによって行う方法が例示される。
本発明の間葉系幹細胞は、いずれの状態の細胞であってもよいが、例えば培養中の細胞を剥離して回収された細胞でもよいし、凍結保存液中に凍結された状態の細胞でもよい。拡大培養して得られる同ロットの細胞を小分けして凍結保存したものを使用すると、安定して同様の作用効果が得られる点、取扱い性に優れる点等において好ましい。凍結保存状態の間葉系幹細胞は、使用直前に融解し、凍結保存液に懸濁したまま輸液もしくは培地等の溶液に直接混合してもよい。また、遠心分離等の方法により凍結保存液を除去してから輸液もしくは培地等の溶液に懸濁してもよい。ここで、本発明における「輸液」とは、ヒトの治療の際に用いられる溶液のことをいい、特に限定されないが、例えば、生理食塩水、日局生理食塩液、5%ブドウ糖液、日局ブドウ糖注射液、リンゲル液、日局リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、1号液(開始液)、2号液(脱水補給液)、3号液(維持液)、4号液(術後回復液)等が挙げられる。
[肝疾患治療剤]
本発明の肝疾患治療剤は、上述した本発明のTFPI高発現の間葉系幹細胞を含有する。本発明の肝疾患治療剤によると、肝臓の線維化を効果的に抑制することができる。本発明の肝疾患治療剤が含む間葉系幹細胞については、上記間葉系幹細胞の項の説明を適用できる。
本発明の肝疾患治療剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記間葉系幹細胞以外に、その用途や形態に応じて、常法に従い、薬学的に許容される担体や添加物を含有させてもよい。このような担体や添加物としては、例えば、等張化剤、増粘剤、糖類、糖アルコール類、防腐剤(保存剤)、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、安定化剤、キレート剤、油性基剤、ゲル基剤、界面活性剤、懸濁化剤、結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、発泡剤、流動化剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、溶解補助剤、抗酸化剤、甘味剤、酸味剤、着色剤、呈味剤、香料又は清涼化剤等が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な成分として例えば次の担体、添加物等が挙げられる。
担体としては、例えば、水、含水エタノール等の水性担体が;等張化剤(無機塩)としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が;多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が;増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等が;糖類としては、例えば、シクロデキストリン、ブドウ糖等が;糖アルコール類としては、例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等(これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい)が;防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、トロメタモール、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、塩酸ポリヘキサニド(ポリヘキサメチレンビグアニド)等)、グローキル(ローディア社製商品名)等が;pH調節剤としては、例えば、塩酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、硫酸マグネシウム、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム等が;安定化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等が;油性基剤としては、例えば、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油、ゴマ油、綿実油等の植物油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が;水性基剤としては、例えば、マクロゴール400等が;ゲル基剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ガム質等が;界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート80、硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、セスキオレイン酸ソルビタン等が;懸濁化剤としては、例えば、サラシミツロウや各種界面活性剤、アラビアゴム、アラビアゴム末、キサンタンガム、大豆レシチン等が;結合剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が;賦形剤としては、例えば、ショ糖、乳糖、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が;滑沢剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、タルク等が;崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム等が;発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム等が;流動化剤としては、例えば、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、軽質無水ケイ酸等が、それぞれ挙げられる。
本発明の肝疾患治療剤は、目的に応じて種々の形態、例えば、固形剤、半固形剤、液剤等の様々な剤形で提供することができる。例えば、固形剤(錠剤、粉末、散剤、顆粒剤、カプセル剤等)、半固形剤[軟膏剤(硬軟膏剤、軟軟膏剤等)、クリーム剤等]、液剤[ローション剤、エキス剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、注射剤(輸液剤、埋め込み注射剤、持続性注射、用時調製型の注射剤を含む)、透析用剤、エアゾール剤、軟カプセル剤、ドリンク剤等]、貼付剤、パップ剤等の形態で利用できる。また、本発明の肝疾患治療剤は、油性又は水性のビヒクル中の溶液又は乳液等の形態でも利用できる。さらに、本発明の肝疾患治療剤は噴霧により、患部に適用することもでき、本発明の肝疾患治療剤は噴霧した後に患部でゲル化もしくはシート化される形態でも利用できる。本発明の肝疾患治療剤は上記間葉系幹細胞をシート状または立体構造体とした後に、患部に適用することもできる。
本発明の肝疾患治療剤は、生理食塩水、日局生理食塩液、5%ブドウ糖液、日局ブドウ糖注射液、リンゲル液、日局リンゲル液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液、1号液(開始液)、2号液(脱水補給液)、3号液(維持液)、4号液(術後回復液)等の輸液、又は、DMEM等の細胞培養培地を用いて、懸濁もしくは希釈して用いることができ、好ましくは生理食塩液、5%ブドウ糖液、1号液(開始液)で、より好ましくは5%ブドウ糖液、1号液(開始液)で懸濁もしくは希釈して用いることができる。
本発明の肝疾患治療剤が液剤である場合、肝疾患治療剤のpHは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではないが、一例として、2.5〜9.0、好ましくは3.0〜8.5、より好ましくは3.5〜8.0となる範囲が挙げられる。
本発明の肝疾患治療剤が液剤である場合、肝疾患治療剤の浸透圧については、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されない。本発明の組成物の浸透圧比の一例として、好ましくは0.7〜5.0、より好ましくは0.8〜3.0、さらに好ましくは0.9〜1.4となる範囲が挙げられる。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール、糖アルコール、糖類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十五改正日本薬局方に基づき286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500〜650℃で40〜50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
本発明の肝疾患治療剤の対象への投与経路は、経口投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、髄腔内投与、腹腔内投与、舌下投与、経直腸投与、経腟投与、眼内投与、経鼻投与、吸入、経皮投与、インプラント、肝表面への噴霧及びシート等の貼付による直接投与等が挙げられるが、本発明の肝疾患治療剤の有効性の観点から、好ましくはインプラント、肝動脈内投与、静脈内投与及び肝表面への噴霧及びシート等の貼付による直接投与であり、対象者の負担の軽減の観点から、より好ましくは静脈内投与である。
本発明の肝疾患治療剤において、その用量(投与量)は、患者の状態(体重、年齢、症状、体調等)、及び本発明の肝疾患治療剤の剤形等によって異なりうるが、十分な肝疾患治療剤の治療効果を奏する観点からは、その量は多い方が好ましい傾向にあり、一方、副作用の発現を抑制する観点からはその量は少ない方が好ましい傾向にある。通常、成人に投与する場合には、細胞数として、1x10〜1x1012個/回、好ましくは1x10〜1x1011個/回、より好ましくは1x10〜1x1010個/回、さらに好ましくは5x10〜1x10個/回である。また、患者の体重あたりの投与量としては、1x10〜5x1010個/kg、好ましくは1x10〜5x10個/kg、より好ましくは1x10〜5x10個/kg、さらに好ましくは1x10〜5x10個/kgである。なお、本用量を1回量として、複数回投与してもよく、本用量を複数回に分けて投与してもよい。
本発明の肝疾患治療剤は、1又は2以上の他の薬剤と共に投与してもよい。他の薬剤としては、肝臓の治療薬として用いることができる任意の剤を薬剤が挙げられ、たとえば、B型肝炎治療薬(ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、テノホビル等)、インターフェロン製剤(インターフェロンα、インターフェロンα−2b、インターフェロンβ、ペグインターフェロンα−2a、ペグインターフェロンα−2b等)、C型肝炎治療薬(リバビリン、テラピレビル、シメプレビル、バニプレビル、ダクラタスビル、アスナプレビル、ソホスブビル等)、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム等)、抗凝固剤(乾燥濃縮人アンチトロンビンIII、ガベキサートメシル酸塩、トロンボモデュリンα等)、解毒剤(エデト酸カルシウム二ナトリウム水和物、グルタチオン、ジメチカプロール、チオ硫酸ナトリウム水和物、スガマデスクナトリウム等)、人血清アルブミン、肝臓抽出エキス、ウルソデオキシコール酸、グリチルリチン酸、アザチオプリン、ベザフィーブラート、アミノ酸(グリシン、L−システイン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−バリン、L−トレオニン、L−セリン、L−アラニン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トリプトファン、L−リシン、L−ヒスチジン、L−アルギニン及びこれらの塩等)、ビタミン(トコフェロール、フラビンアデニンジヌクレオチド、リン酸チアミンジスルフィド、ピリドキシン、シアノコバラミン及びこれらの塩等)、抗生物質(スルバクタムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、メロペネム水和物、塩酸バンコマイシン等)等が挙げられる。
本発明の間葉系幹細胞は様々な肝疾患、肝障害に用いることができるが、具体的疾患としては、自己免疫性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease(NAFLD))、非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis(NASH))、非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver (NAFL))、肝線維症、肝硬変、肝癌、脂肪肝、薬剤アレルギー性肝障害、ヘモクロマトーシス、ヘモジデローシス、ウィルソン病、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、胆道閉鎖、肝膿瘍、慢性活動性肝炎、慢性持続性肝炎等の肝疾患が挙げられる。中でも、本発明の間葉系幹細胞は線維化抑制効果があることから、肝線維症、肝硬変等の肝組織の線維化を伴う疾患に対して好適に用いることができる。
<肝疾患の治療方法>
本発明のさらに別の側面によれば、本発明は、組織因子経路インヒビター(TFPI)が高発現である間葉系幹細胞を使用することを特徴とする、肝疾患の治療方法も含む。すなわち、本発明によると、組織因子経路インヒビター(TFPI)が高発現である間葉系幹細胞を肝疾患の患者に投与することにより、肝疾患、特に繊維化を伴う肝疾患を治療、改善することができる。なお、本発明の治療方法に用いられる間葉系幹細胞については、上述の[間葉系幹細胞]の項及び[肝疾患治療剤]の項における説明を適用できる。
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
1.rTFPIのヒト肝星細胞株に対する線維化抑制効果の検討
[ヒト肝星細胞株の培養]
凍結保存していたヒト肝星細胞株(Human Hepatic Stellate Cells (HHSteC)、ScienCell Research Laboratories社製、品番:5300)の細胞懸濁液を37℃の恒温槽に浸して融解した。融解したHHSteC懸濁液に、総量が2mLとなるようにStellate Cell Medium(ScienCell Research Laboratories社製、品番:5301)を加え、HHSteC懸濁液15μLを分取し、等量のTrypan Blue Solution(0.4%)と混合して生細胞数及び死細胞数を計測した。播種に必要な細胞懸濁液量を新しい15mL遠沈管(住友ベークライト社製)に分取した。分取したHHSteC懸濁液に総量が30mLとなるようにStellate Cell Mediumを加え、10mLずつ3枚のPOLY−L−Lysine coated 100mm dish(以下、「100mm dish」、IWAKI社製、品番:4020‐040)に播種した。細胞を播種した100mm dishをCOインキュベーター内(37℃、5%CO)に入れ、1日後に新しいStellate Cell Mediumで培地交換し、培養を継続した。HHSteCを播種してから4日目に100mm dishから培地を除去し、PBS10mLでdish内を洗浄した。PBSを除去後、StemPro Accutase Cell Dissociation Reagent(Thermo Fisher Scientific社製、A11105−01、Lot.1750154)2mLを各100mm dishに加え、COインキュベーター内で5分間インキュベートした。HHSteC懸濁液を50mL遠沈管に移した後、各100mm dishにStellate Cell Medium10mLを加え、残存するHHSteCを同50mL遠沈管に回収し、室温、300×gで5分間遠心(Eppendorf社製、5702)した。上清を除き、HHSteCをStellate Cell Medium 10mLに再懸濁し、15μLを分取し、等量のTrypan Blue Solution(0.4%)と混合し生細胞数及び死細胞数を計測した。播種に必要な細胞懸濁液量を算出した後、Stellate Cell Mediumでメスアップし、濃度が7.6×10cells/mLとなるようにHHSteC懸濁液を調製した。poly−L−lysine coated microplate 12 well(以下、「12ウェルプレート」、IWAKI社製、品番:4815−040)に1ウェル当たり1mL(7.6×10cell)ずつHHSteCを播種して、COインキュベーター(37℃、5%CO)内に入れ培養を開始した。
[rTFPIによる線維化関連遺伝子発現の抑制]
培養を開始してから1日後、HHSteCを播種した12ウェルプレートをCOインキュベーターから取り出し、群番号1に対応するウェルの培地を除去し、Stellate Cell Mediumを1mL(Control群)を添加した。群番号2に対応するウェルの培地を除去し、Recombinant TFPI(R&D Systems社製、2974−PI−010)1ng/mL及びStellate Cell Medium(TFPI 1ng/mL添加群)を添加した。群番号3に対応するウェルの培地を除去し、Recombinant TFPI 1,000ng/mL及びStellate Cell Medium(TFPI 1,000ng/mL添加群)を添加した。COインキュベータ―に入れ、一日間培養した後、HHSteCのtotal RNAを回収し、線維化関連因子であるACTA2及びCOL1A1のmRNA発現量を定量PCRで測定した。プライマーは下記表に記載したものを用いた。結果を図1(ACTA2)及び2(COL1A1)に示した。
Figure 2018159431
図1及び2に示すとおり、HHSteCにおけるACTA2及びCOL1A1のmRNA発現は、rTFPI処理により抑制された。
2.各種細胞株におけるTFPI発現量の比較
ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(L−ADSC、Lonza社製)、ヒト皮膚線維芽細胞(hDFa、Human Dermal Fibroblasts,adult、Thermo Fisher Scientific社製)、ヒト大動脈平滑筋細胞(hASMS、Human Aortic Smooth Muscle Cells、Thermo Fisher Scientific社製)、Hela細胞(Hela、社製)を、6ウェルプレート(Corning,#3335)に5,000cells/cmで播種し、それぞれの細胞に適した培地である間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)、Cascade Biologics Medium106+LSGS(Thermo Fisher Scientific,#M−106−500)、10%FBS DMEM培地(Sigma,#D5796)、Smooth muscle cell growth medium(promocell,#C−22062)で3日間培養を行った後、totalRNAを回収し、TFPIのmRNA発現を定量PCRで確認した。プライマーは下記表に記載したものを用いた(リアルタイムPCR用カスタムプライマー(ユーロフィンジェノミクス株式会社製))。結果を図3に示す。
Figure 2018159431
図3に示すとおり、Rohto社の培地で培養した間葉系幹細胞は、その他の細胞(ヒト皮膚線維芽細胞(hDFa)、ヒト大動脈平滑筋細胞(hASMS)、Hela細胞)と比較して、TFPIのmRNAが高発現であることがわかった。具体的には、Rohto社の培地で培養した間葉系幹細胞におけるTFPIのmRNAの発現は、hDFaに対しては1.34倍、hASMSに対しては1.65倍、Hela細胞に対しては2.14倍と高発現であった。
3.脂肪由来間葉系幹細胞のTFPI発現の増強
[脂肪由来間葉系幹細胞の調製]
ヒトドナーから同意を得た後、脂肪吸引法で得た皮下脂肪組織を生理食塩液で洗浄した。細胞外基質の破壊、及び細胞の単離を達成するために、コラゲナーゼ(Roche diagnostics社)(溶媒は生理食塩液)を添加し、37℃で90分間振倒し、分散した。続いて、この上記懸濁液を800gで5分間、遠心分離して間質血管細胞群の沈殿を得た。上記細胞の沈殿に間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)を加え、当該細胞懸濁液を400gで5分間遠心分離し、上清除去後に間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)に再懸濁し、フラスコに細胞を播種した。細胞を37℃で数日間、5%CO中で培養した。数日後に培養物をPBSで洗浄して、培養液中に含まれていた血球や脂肪組織の残存等を除去し、プラスチック容器に接着している間葉系幹細胞を得た。
[細胞表面マーカーの解析(フローサイトメトリー)]
脂肪組織由来間葉系幹細胞上の種々の表面マーカーの評価は、フローサイトメトリーによって実施した。脂肪組織由来間葉系幹細胞を、FACS染色用バッファーに再懸濁した。FACS分析に用いた抗体は、FITC(蛍光イソシアニン)又はPE(フェコエリスリン)標識のマウス抗ヒト抗体CD45、CD73、CD90、及び相当するマウスIgG1アイソタイプコントロール抗体であった。細胞は室温で30分間染色し、次に洗浄し、BDFADSCantoII(BD Biosciences、San Jose、CA)を用いて解析した。データは、BD FACSDiva SoftwCre(BD Biosciences)を用いて分析した。その結果、脂肪組織由来間葉系幹細胞(以下「ADSC」)は、CD45は陰性、CD73、CD90は陽性であった。
[脂肪組織由来間葉系幹細胞の凍結保存]
得られたADSCを、トリプシンを用いて剥離し、遠沈管に移し、400×gで5分間、遠心分離し細胞の沈殿を得た。上清を除去した後、細胞凍結保存液(STEM−CELLBANKER(ゼノアック社))を適量加え懸濁した。当該細胞懸濁溶液を、クライオチューブに分注した後、フリーザー内で−80℃にて保存後、液体窒素上の気相に移し、保存を継続した。
[脂肪由来間葉系幹細胞のTFPI発現の増強]
ADSCをP2からP4までそれぞれ間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)、ProAD(Procal;Rohto社製)、無血清培地(Lonza社製)、10%FBS血清培地で培養し、凍結ストックを作製した。それぞれのP4細胞を起眠し、6ウェルプレートに5,000cells/cmで播種し、4種類それぞれの培地で3日間培養した後、Total RNA、タンパク質、培養上清を回収した。TFPIのmRNA発現及びタンパク質発現を、それぞれ定量PCR(図4)及びウェスタンブロット法(図5)を用いて検出した。培養上清中のTFPI濃度をHuman TFPI Quantikine ELISA Kit(R&D systems,#DTFP10)を用いて測定した(図6)。
10%FBS血清培地に比べ、いずれの無血清培地でも、有意にTFPIのmRNA発現量(図4)、及びTFPIのタンパク発現(図5)が高いことがわかった。また図6に示すとおり、10%FBS血清培地に比べ、いずれの無血清培地でも、培養上清中に分泌されたTFPI量が有意に高いことがわかった。具体的には、Rohto社の間葉系幹細胞用無血清培地で培養した間葉系幹細胞におけるTFPIのmRNAの発現は、Procal培地で培養した場合に比べて1.16倍、Lonza社培地で培養した場合に比べて2.64倍、10%FBS血清培地で培養した場合に比べて6.92倍と高発現であった。また、培養上清中に分泌されたTFPI量については、Rohto社の間葉系幹細胞用無血清培地の培養上清中に分泌されたTFPI量(pg/mL)は、Procal培地での培養上清に比べて2.54倍、Lonza社培地での培養上清に比べて5.43倍、10%FBS血清培地での培養上清に比べて5.83倍であった。
4.脂肪由来間葉系幹細胞の抗線維化活性の増強
上記3と同様にADSCをP2からP4までそれぞれ間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)、Lonza社製無血清培地(Lonza社製)、10%FBS血清培地で培養し、凍結ストックを作製した。
凍結保存されたADSCを37℃の恒温槽に浸して細胞懸濁液を融解した後、15mL遠沈管に分取し、それぞれ間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)、無血清培地(Lonza社製)、10%FBS血清培地で10mLまでメスアップし、室温、400×gで5分間遠心した(Eppendorf社製、5702)。遠心後、上清を除き、各培地を6mL加え、細胞懸濁液15μLを分取し、等量のTrypan Blue Solution(0.4%)と混合し生細胞数及び死細胞数を計測した。播種に必要な細胞を新しい15mL遠沈管に分取し、各培地を加え、生細胞濃度が1.52×10cells/mLとなるよう調製した。12ウェルプレートの各ウェル上にトランスウェルインサート(corning、#3460)を設置し、下部コンパ―トメントには各培地1mLを加え、トランスウェルインサートには生細胞濃度1.52×10cells/mLで調整した各ADSCを0.5mLずつ加え、細胞を播種した。COインキュベーター(37℃、5%CO)内に入れ、培養を開始した。培養を開始してから1日後にCOインキュベーター(37℃、5%CO)から細胞を播種したプレートを取り出し、下部コンパートメント内の培地を捨て、PBS 1mLで洗浄した後、PBSを除去し、Stellate Cell Medium1mLを加えた。各トランスウェルインサート内の培地を捨て、PBS0.5mLで2回洗浄した後、PBSを除去し、Stellate Cell Medium0.5mLを加えた。
上記1と同様に、HHSteCを播種して1日培養した12ウェルプレートをCOインキュベーターから取り出し、各ウェルの培地を除去した後、Stellate Cell Medium 1mLを加えた。群番号1(Control群)に対応するウェル上に空のトランスウェルインサートを設置し、Stellate Cell Medium 0.5mLを加えた。群番号2〜4に対応するウェル上に、それぞれ間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社、Rohto群)、無血清培地(Lonza社製、Lonza群)、10%FBS血清培地(10%FBS群)で培養したADSCを播種したトランスウェルインサートを設置した。トランスウェルインサートを設置したプレートをCOインキュベーター(37℃、5%CO)内に入れ、HHSteCとADSCの共培養を開始した。共培養を開始してから1日後に、HHSteCのtotal RNAを回収し、線維化関連因子であるACTA2及びCOL1A1のmRNA発現量を定量PCRで測定した。結果を図7(ACTA2)及び8(COL1A1)に示す。
HHSteCにおけるACTA2及びCOL1A1のmRNAの発現は、ADSCとの共培養により有意に抑制された。また、抑制効果は、血清培地で培養したADSCと比較して、間葉系幹細胞用無血清培地(Rohto社)で培養したADSCが有意に高いことが確認された。
本発明により、新規な間葉系幹細胞及びそれを含有する肝疾患治療剤が提供される。

Claims (5)

  1. 組織因子経路インヒビター(TFPI)が高発現であることを特徴とする、間葉系幹細胞。
  2. 他家由来である、請求項1に記載の間葉系幹細胞。
  3. 脂肪組織由来である、請求項1又は2に記載の間葉系幹細胞。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の間葉系幹細胞を含有する肝疾患治療剤。
  5. 上記肝疾患が、肝組織の線維化を伴う肝疾患である、請求項4に記載の肝疾患治療剤。
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