JPWO2018062409A1 - 磁心 - Google Patents

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Abstract

磁心は、平均結晶粒径100nm以下の結晶構造を有する複数の鉄基軟磁性合金板と、複数の鉄基軟磁性合金板の一つと他の一つとの間に設けられた絶縁層と、を具備する。磁心における複数の鉄基磁性合金板の占積率は、65%以上であり、周波数100kHzにおける初透磁率は、25000以上である。

Description

実施形態は、磁心に関する。
高周波領域で使用される従来のスイッチングレギュレータ等の磁心は、パーマロイやフェライト等の結晶質材料を含む。しかしながら、パーマロイは比抵抗が小さいので高周波領域での鉄損が大きい。フェライトは、高周波領域での鉄損が小さいが、磁束密度が低く、500ガウス(G)程度である。そのため、大きな動作磁束密度での使用時に飽和に近づき鉄損が増大する。これに対し、平均結晶粒径50nm以下の微細結晶構造を有する鉄基軟磁性合金が開発されている。上記鉄基軟磁性合金の周波数1kHzでの透磁率μは約100000である。
スイッチングレギュレータに使用される電源トランス、平滑チョークコイル、コモンモードチョークコイル等の部品は、磁心の小型化を必要とする。同様に、ノイズフィルタやアンテナ等の部品も磁心の小型化を必要とする。
スイッチングレギュレータは、スイッチング電源の一種である。スイッチング電源は、商用電源の電力変換装置等として広く利用されている。スイッチング電源は、フィードバック回路によって半導体スイッチング素子のオン・オフ時間比率(デューティ比)を制御することにより出力を安定させる電源装置である。スイッチング電源は、医療機器、産業機器、鉄道、通信機器等の様々な機器に用いられている。半導体スイッチング素子の高性能化に伴い動作周波数が50kHz以上と高い。周波数1kHzでの透磁率μが100000である磁心において、周波数100kHzでの透磁率μは20000程度しかない。このため、周波数50kHz以上の高周波領域での磁心の小型化は困難である。
特開平10−008224号公報
本発明が解決しようとする課題は、磁心の透磁率を向上させることである。
実施形態の磁心は、平均結晶粒径100nm以下の結晶構造を有する複数の鉄基軟磁性合金板と、複数の鉄基軟磁性合金板の一つと他の一つとの間に設けられた絶縁層と、を具備する。磁心における複数の鉄基磁性合金板の占積率は、65%以上であり、周波数100kHzにおける初透磁率は、25000以上である。
券回型磁心の構造例を示す断面模式図である。 積層型磁心の構造例を示す断面模式図である。 鉄基軟磁性合金板と絶縁層との境界の一例を示す断面図である。
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面は模式的であり、例えば各構成要素の厚さ、幅等の寸法は実際の構成要素の寸法と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付け、説明を省略する場合がある。
図1は、巻回型磁心の構造例を示す断面模式図である。図2は積層型磁心の構造例を示す断面図模式図である。図1および図2に示す磁心1は、鉄基軟磁性合金板2と、絶縁層3と、を具備する。
図1に示す磁心1は、券回型磁心であり、絶縁層3を挟んで複数の鉄基軟磁性合金板2の一つと他の一つとを積層し、当該積層体を巻回することにより形成される巻回体である。券回型磁心はトロイダルコアとも呼ばれている。図1に示す磁心1は、磁心1の中心に中空部4を有する。
図2に示す磁心は、積層型磁心であり、複数の鉄基軟磁性合金板2の一つと他の一つとを間に絶縁層3を挟んで積層することにより形成される積層体である。
図1および図2に示す磁心1にコイルが巻き付けられていてもよい。磁心1は、必要に応じてケースに収納してもよい。磁心1をケースに収納してから、コイルを巻いてもよい。
鉄基軟磁性合金板2は、例えば鉄(Fe)を50原子%以上含む軟磁性合金薄板により構成される。鉄基軟磁性合金板2は、平均結晶粒径100nm以下の微細結晶構造を有する。平均結晶粒径が100nmを超えると軟磁気特性が低下する。このため、平均結晶粒径は100nm以下、さらには50nm以下であることが好ましい。また、平均結晶粒径は10nm以上30nm以下、さらには10nm以上30nm未満であることがより好ましい。
平均結晶粒径は、X線回折(X−ray Diffraction:XRD)分析により求められる回折ピークの半値幅からシェラー(Scherrer)の式により求められる。シェラーの式は、D=(K・λ)/(βcosθ)、で示される。ここでDは平均結晶粒径、Kは形状因子、λはX線の波長、βはピーク半値全幅(FWHM)、θはブラッグ角である。形状因子Kは0.9とする。ブラッグ角は回折角2θの半分である。XRD分析は、Cuターゲット、管電圧40mV、管電流40mA、スリット幅(RS)0.20mmの条件下で行われる。
鉄基軟磁性合金板2の組成は、例えば下記一般式(組成式)により表される。
一般式:FeCuM’M”Si
(式中、Mは周期表の4族元素、5族元素、6族元素および希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、M’はMn、Alおよび白金族元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、M”はCoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、aはa+b+c+d+e+f+g=100原子%を満足する数であり、bは0.01≦b≦8原子%を満足する数であり、cは0.01≦c≦10原子%を満足する数であり、dは0≦d≦10を満足する数であり、eは0≦e≦20原子%を満足する数であり、fは10≦f≦25原子%を満足する数であり、gは3≦g≦12原子%を満足する数である。)
Cuは耐食性を高め、結晶粒の粗大化を防ぎ、鉄損、透磁率等の軟磁気特性の改善に有効である。Cuの含有量は0.01原子%以上8原子%以下(0.01≦b≦8)であることが好ましい。含有量が0.01原子%未満では添加の効果が小さく、8原子%を超えると磁気特性が低下する。
Mは、周期表の4族元素、5族元素、6族元素、および希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である。4族元素の例は、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)等を含む。5族元素の例は、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等を含む。6族元素の例は、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)等を含む。希土類元素の例は、Y(イットリウム)、ランタノイド元素、アクチノイド元素等を含む。M元素は、結晶粒径の均一化や温度変化に対する磁気特性の安定化に有効である。M元素の含有量は0.01原子%以上10原子%以下(0.01≦c≦10)であることが好ましい。
M’は、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)、および白金族元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である。白金族元素の例は、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)等を含む。M’元素は、飽和磁束密度等の軟磁気特性の向上に有効である。M’元素の含有量は0原子%以上10原子%以下(0≦d≦10)であることが好ましい。
M”元素はCo(コバルト)およびNi(ニッケル)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である。M”元素は飽和磁束密度等の軟磁気特性の向上に有効である。M”元素の含有量は0原子%以上20原子%以下(0≦e≦20)であることが好ましい。
Si(珪素)およびB(ホウ素)は、製造時における合金の非晶質化または微結晶の析出を助成する。SiおよびBは、結晶化温度の改善や、磁気特性向上のための熱処理に対して有効である。特に、Siは微細結晶粒の主成分であるFeに固溶し、磁歪や磁気異方性の低減に有効である。Siの含有量は10原子%以上25原子%以下(10≦f≦25)であることが好ましい。Bの含有量は3原子%以上12原子%以下(3≦g≦12)であることが好ましい。
上記一般式を満たす場合、FeSi相が形成される。平均結晶粒径100nm以下の微細結晶は、主に、α−Fe相、FeSi相、およびFeB相からなる群より選ばれる少なくとも一つの相を有する。各結晶は、一般式を満たす構成元素を含んでいてもよい。
FeSi結晶相に対して平行方向には引っ張り応力、垂直方向には圧縮応力が生じていることが好ましい。引っ張り応力および圧縮応力の有無の解析は、XRDの残留応力解析手法を用いて行われる。平行方向は、鉄基軟磁性合金板2の長手方向である。つまり、ロール急冷法で作製した薄帯の長手方向である。垂直方向とは薄帯の幅方向である。
XRD分析による残留応力解析は、以下の手法で行われる。XRD分析は、Cuターゲット、管電圧40mV、管電流40mA、スリット幅(RS)0.20mmの条件で行われる。
回折角(2θ)が140度以上180度以下の範囲に現れる一番大きなピークを基準とする。X線の照射角度を15度単位で45度までずらしながら測定する。このピークの位置が向かって右側にずれると引っ張り応力、左側にずれると圧縮応力となる。
FeSi結晶相への引っ張り応力および圧縮応力の発生は、鉄基軟磁性合金板が磁気異方性を有していることを示す。前述のとおり、Fe(鉄)、Si(珪素)、B(ホウ素)を構成元素として含有する鉄基軟磁性合金板2は、α−Fe、FeSi、およびFeBからなる群より選ばれる少なくとも一つの結晶相を有する。従来の微細結晶を有する磁性材料は、磁気異方性を無くすことにより軟磁気特性を付与することができる。この方法ではこれ以上の初透磁率の向上は困難である。
実施形態の磁心は、FeSi結晶相に磁気異方性を付与することにより、初透磁率を大きくすることができる。特に、周波数100kHzの初透磁率を25000以上、さらには30000以上と大きくすることができる。磁気異方性を付与することにより、熱処理後の磁心の直流保磁力を大きくすることができる。
鉄基軟磁性合金板2の平均厚さは、30μm以下であることが好ましい。鉄基軟磁性合金板2が厚くなると渦電流損失が大きくなる。渦電流損失Xは、式:X=B/ρにより表される。Bは磁心1の磁束密度を表し、fは磁心1の周波数を表し、dは鉄基軟磁性合金板2の平均厚さを表し、ρは磁心1の電気抵抗率を表す。鉄基軟磁性合金板2の平均厚さは20μm以下、さらには18μm以下であることがより好ましい。平均厚さは、鉄基軟磁性合金板2の断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を使用して観察したとき、任意の5ヶ所の厚さの平均値により定義される。
鉄基軟磁性合金板2の密度の実測値に対する当該密度の計算値の比Ksは、1.00≦Ks≦1.50を満足する数であることが好ましい。密度の計算値は、鉄基軟磁性合金板2の組成から求められる理論値である。鉄基軟磁性合金板2の組成が式:Fe73CuNbSi15により表されるときの密度の計算値は以下のとおり算出される。Feの密度を7.87g/cmとし、Cuの密度を8.96g/cmとし、Nbの密度を8.56g/cmとし、Siの密度を2.33g/cmとし、Bの密度を2.37g/cmとしたとき、鉄基軟磁性合金板2の密度の計算値は、7.87×0.73+8.96×0.01+8.56×0.04+2.33×0.15+2.37×0.07=6.6925g/cm(≒6.69g/cm)である。また、密度の実測値は以下のとおり算出される。鉄基軟磁性合金板2から面積1cm分だけ切り取り、密度を測定する。密度の実測値は、測定された密度を鉄基軟磁性合金板2の平均厚さで割った値である。Ksが1.00に近いほど密度の実測値が理論値に近いことを示す。
Ksが1.50を超えることは、鉄基軟磁性合金板2の表面の凹凸が大きいまたは凸部が多いことを示す。表面凹凸が大きすぎると、磁心1における複数の鉄基軟磁性合金板2の占積率を大きくすることが困難となる。後述するように、鉄基軟磁性合金板2と絶縁層3との間の空隙を小さくすることも困難となる。Ksは1.00以上1.30以下であることがより好ましい。
鉄基軟磁性合金板2の組成の情報を有していれば、磁心1をそのまま用いてKsを算出することができる。後述するように、例えば酸化物により形成された厚さ10μm以下の絶縁層3を有する場合、磁心1をそのまま用いて密度の実測値を測定してもよい。薄い酸化物層からなる絶縁層3であれば、磁心1の質量に対する絶縁層3の質量の割合が3%以下であるため絶縁層3の質量を考慮せずにKsを算出してもよい。磁心1をそのまま用いて測定されたKsを磁心1全体から求めたKsとみなすことができる。磁心1全体から求められたKsは1.00以上1.50以下であることが好ましい。Ksは1.1以上1.3以下であることがより好ましい。
磁心1全体から求められたKsをKsとしたとき、鉄基軟磁性合金板2の平均厚さは、20μm以下であり、Ksは、1.00≦Ks≦1.50を満足する数であることが好ましい。また、Ksが1.00≦Ks≦1.50を満足する数であり、磁心1を4等分して得られる4つの分割片のそれぞれにおける密度の実測値に対する計算値の比KsをKsとしたとき、KsとKsとの差は、±0.2以内であることが好ましい。Ks、Ksは、以下のように算出される。磁心1を4等分し、4つの分割片のそれぞれの密度を測定して得られる密度の実測値をKsする。また、Ksは4つの分割片におけるKsの平均値により定義される。上記差を算出することにより、磁心1の部分的なばらつきの有無を確認できる。Ksの部分的なばらつきを小さくすることにより、薄い絶縁層3を設けることができ、磁心1における複数の鉄基軟磁性合金板2の占積率を大きくすることができる。
磁心1は、絶縁層3を有するともに、複数の鉄基軟磁性合金板2の占積率が65%以上であることが好ましい。絶縁層3を設けない場合、(1)鉄基軟磁性合金板2同士が接触する構造、(2)鉄基軟磁性合金板2同士の間隔が大きい構造、の2つが考えられる。鉄基軟磁性合金板2同士が直接接触すると透磁率が低下する。鉄基軟磁性合金板2同士の間隔が大きいと鉄基軟磁性合金板2の占積率が下がるため、透磁率が下がる。つまり、透磁率を上げるには、鉄基軟磁性合金板2同士が直接接触しないように鉄基軟磁性合金板2の間を絶縁したうえで、占積率を高くすることが必要である。占積率は、75%以上であることがより好ましい。占積率の上限は特に限定されないが95%以下であることが好ましい。占積率が95%を超えると、層間絶縁が不十分になる場合がある。
占積率の測定方法について以下に説明する。まず、磁心1の任意の断面をSEM観察して、観察像における鉄基軟磁性合金板2の合計面積を求める。断面のSEM観察により単位面積500μm×500μmの5ヶ所の領域の占積率を算出し、その平均値を磁心の占積率(%)とする。
絶縁層3の厚さは、0.1μm以上であることが好ましい。絶縁層3の厚さが0.1μm未満であると、部分的に層間絶縁が不十分となる箇所が生じる場合がある。絶縁層3の厚さは、10μm以下であることが好ましい。絶縁層3の厚さが10μmを超えると、占積率を大きくすることが困難である。すなわち、絶縁層3の厚さは、0.1μm以上10μm以下、さらには0.5μm以上3μm以下であることが好ましい。絶縁層3の厚さは、磁心1の任意の断面において測定される。この作業を任意の5ヶ所で行い、その平均値を絶縁層の厚さ(平均厚さ)とする。
絶縁層3は、平均粒径0.001μm以上(1nm以上)の絶縁性微粒子を堆積することにより形成される絶縁膜であることが好ましい。絶縁性微粒子を堆積することにより、鉄基軟磁性合金板2に応力が加わらないようにすることができる。絶縁性微粒子としては、酸化物が好ましく、絶縁性微粒子の例は、酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)等の酸化物、樹脂粉末を含む。酸化珪素(SiO)を用いることが特に好ましい。酸化物は乾燥の際に収縮を伴わないため、応力の発生を抑制することができる。特に、酸化珪素は鉄基軟磁性合金板2とのなじみがよいので透磁率のばらつきを低減することができる。これは、酸化珪素と鉄基軟磁性合金板2が共に、必須の構成元素として珪素を含有しているためであると考えられる。
絶縁性微粒子の平均粒径は0.001μm以上0.1μm以下であることが好ましい。絶縁性微粒子の平均粒径が0.1μm(100nm)を超えると、絶縁性微粒子同士の隙間が広くなるため、占積率を向上させることが困難である。前述のように、鉄基軟磁性合金板2の表面に微小な凹凸があった場合に、鉄基軟磁性合金板2と絶縁層3の境界に隙間が形成されやすくなってしまう。絶縁性微粒子を用いる場合は、絶縁性微粒子を含有した溶液に鉄基軟磁性合金板2を浸漬し、乾燥させる方法により絶縁層3を形成することができる。この方法であれば、絶縁材料の収縮を伴わないため鉄基軟磁性合金板2に応力が加わらない。このため、絶縁性微粒子の平均粒径は、0.001μm以上0.1μm以下、さらには0.005μm以上0.05μm以下(5nm以上50nm以下)であることが好ましい。堆積された絶縁性微粒子を含む絶縁層3であるか否かは、例えばSEM観察等により得られる拡大写真により判別可能である。
図3は、鉄基軟磁性合金板2と絶縁層3との境界の一例を示す断面模式図である。後述するように鉄基軟磁性合金板2は、ロール急冷法により作製される非晶質鉄基合金薄帯を原材料として用いて形成される。ロール急冷法で作製した薄帯は、冷却ロール表面の微小な凹凸が薄帯表面の表面性に影響を与える。このため、ミクロに拡大すると鉄基軟磁性合金板2の表面には微小な凹凸が形成されている。絶縁性微粒子を用いると、磁性薄帯の微小な凹凸を埋めるように絶縁層3を設けることができる。一方、樹脂ペーストの場合、加熱により固化する際に樹脂層の収縮を伴うため、鉄基軟磁性合金板2に応力が生じてしまう。鉄基軟磁性合金板2に応力が生じると透磁率の低下につながる。
鉄基軟磁性合金板2と絶縁層3との境界において、単位長さLが100μmあたりの空隙5の合計長さPが5μm以下(ゼロ含む)であることが好ましい。鉄基軟磁性合金板2と絶縁層3の境界の空隙(隙間)を小さくすることにより、薄い絶縁層3で占積率を向上させることができる。この結果、透磁率を向上させることができる。図3では空隙5が1個の例を示すが、複数個の場合もある。その合計長さが5μm以下であれば占積率を向上させることができる。
鉄基軟磁性合金板2と絶縁層3との境界の空隙の割合(面積割合)は、SEM観察により得られる断面写真により測定される。SEM観察像において、空隙5は、鉄基軟磁性合金板2および絶縁層3とコントラストが異なる。空隙の割合は、例えば5%以下、さらには2%以下であることが好ましい。
以上のような磁心は、周波数100kHzにおける初透磁率μが25000以上である。さらに、周波数100kHzにおける初透磁率μを30000以上とすることができる。初透磁率μの測定方法はインピーダンスアナライザにて、室温、1turn、1Vとする。インピーダンスアナライザは日本ヒューレットパッカート社YHP4192Aとする。
従来の微細結晶構造を有する鉄基軟磁性合金を用いた磁心は、動作周波数50kHz以上の領域では小型化に限界がある。この原因は、微細結晶構造を有する鉄基軟磁性合金板の透磁率が低く、さらに、占積率が低いことであると考えられる。
実施形態に係る磁心は、鉄基軟磁性合金板の占積率を65%以上と高くしつつ損失を抑制し、周波数100kHzにおける初透磁率μが高く25000以上である。これにより、磁心1を小型化することができる。
近年は、半導体素子(半導体スイッチング素子)の高性能化に伴い、動作周波数が50kHz以上と高い。半導体素子の動作周波数は400kHzまで高くなっている。実施形態に係る磁心は、周波数100kHzにおける初透磁率を25000以上としている。このため、動作周波数50kHz以上400kHz以下の半導体素子を有する電子機器に搭載する磁心として優れた特性を示す。
動作周波数50kHz以上400kHzの半導体素子を有する電子機器は、スイッチング電源、アンテナ装置、インバータ等が挙げられる。電子機器は、通信基地局、太陽光発電所、電気自動車(Electric Vehicle:EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid−Electric Vehicle:HEV)、プラグインハイブリッド自動車(Plug−in Hybrid Vehicle:PHV)のような自動車、産業機器等に使用される。これ以外にも、パソコンやサーバ等のオフィスオートメーション(OA)機器に使うこともできる。
実施形態の磁心は、AL値を大きくすることができる。AL値は、式:AL値∝μ×Ae/Leの関係を満たす。μは初透磁率を表し、Aeは平均磁路長を表し、Leは有効断面積を表す。AL値は、磁心1の性能を示す指標である。AL値が高いほど、インダクタンス値が高いことを示す。
磁心のサイズ(Ae/Le)が同じとき、初透磁率μが大きいほどAL値は高くなる。有効断面積Leを小さくすること、または、平均磁路長Aeを大きくすることによりAL値は大きくなる。平均磁路長Aeを長くすることによりAL値は大きくなる。有効断面積Leを小さくすることにより、AL値は大きくなる。
磁心1を大型化すればAL値は大きくなる。一方で、磁心1の大型化は電子機器内の配置スペースの問題が生じる。実施形態にかかる磁心は、初透磁率μを大きくし、かつ、鉄基軟磁性合金板の占積率を大きくしている。占積率を向上させると、鉄基軟磁性合金板の使用量が同じであれば、磁心の体積を小さくすることができる。これにより、磁心の有効断面積Leを小さくすることができる。占積率を向上させると、磁心のサイズが同じであるとき、鉄基軟磁性合金板2の使用量が増えるため平均磁路長Aeを長くすることができる。実施形態にかかる磁心は、初透磁率、占積率の両方が高いため、AL値を高くすることができる。AL値の向上が磁心の小型化を可能とする。これにより、磁心の軽量化と電子機器への配置スペースを確保しやすくなる。よって、電子機器内の設計の自由度を向上させることができる。例えば、周波数100kHzにおける初透磁率μが17000の磁心と30000の磁心を比較した場合、初透磁率30000の磁心の直径は約20%小型化できる。
磁心1を小型にすると、磁心1を構成する材料が少なくて済むのでコストダウンも可能である。巻線回数を減らしても、同等の特性を得ることができる。巻線回数の減少は、巻線の使用量を減らすことができるためコストダウンにつながる。さらに、巻線回数を減らすことにより、巻線工程中に磁心が破損する確率を減らすことができる。このため、巻線工程での歩留りを向上させることができる。巻線回数を減少させると、巻き線の発熱量を低減できる。
磁心1の小型化は軽量化にもつながる。つまり、磁心1の特性が従来の磁心の特性と同等の場合、小型軽量化が可能となる。磁心1の小型軽量化は、スイッチング電源、アンテナ装置、インバータ等の電子機器の小型軽量化につながる。
次に、実施形態に係る磁心1の製造方法について説明する。磁心1の製造方法は、上記構成を磁心1が有していれば特に限定されないが、歩留り良く得るための方法として次の方法が挙げられる。
まず、鉄基非晶質合金薄帯を作製する。鉄基非晶質合金は前述の一般式(組成式)を満たすように、各構成成分を混合した原料粉末を調製する。次に、この原料粉末を溶解して原料溶湯を作製する。原料溶湯を用いてロール急冷法により、長尺の鉄基非晶質合金薄帯を作製する。ロール急冷法を行う際に、冷却ロールの表面粗さRaを1μm以下にすることが好ましい。冷却ロールの表面を平坦にすることにより、得られた鉄基非晶質合金薄帯の表面にある凹凸を小さくすることができる。これにより、Ksを1.00以上1.30以下にすることができる。表面凹凸を小さくするためには、不活性雰囲気中で行うことも有効である。不活性雰囲気としてはアルゴンが好ましい。冷却ロールの回転速度や雰囲気の温度等を制御することにより平均厚さを制御することができる。
次に、絶縁層3を形成する。絶縁層3は、例えば平均粒径0.001μm以上0.1μm以下の絶縁性微粒子を用いて形成される。絶縁性微粒子は、酸化物または樹脂を用いて形成されることが好ましい。特に、酸化珪素、酸化マグネシウム、および酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの酸化物を含むことが好ましい。絶縁性微粒子を含有する溶液中に鉄基非晶質合金薄帯から形成された合金板を浸漬する。その後、乾燥させて合金板上に絶縁層3を設ける。必要に応じ、浸漬と乾燥を交互に繰り返してよい。絶縁層3を形成する工程は、予め合金板を目的とする磁心のサイズに切断してから行ってもよいし、長尺の磁性薄帯のまま行ってもよい。
次に、磁心1を作製する。巻回型磁心の場合は、絶縁層を設けた長尺の磁性薄帯(鉄基軟磁性合金板2)を巻回していく。券回の最外周をスポット溶接、接着剤で固定する。絶縁層3の厚さを4μm以下に調整しておけば、巻回工程で絶縁層が剥がれ難い。
積層型磁心の場合は、絶縁層3が設けられた長尺の磁性薄帯(鉄基軟磁性合金板2)を積層してから、必要なサイズに切断する方法が挙げられる。絶縁層3が設けられた長尺の磁性薄帯を必要なサイズに切断してから積層してもよい。積層体の側面を接着剤で固定する。磁心の表面に樹脂をコーティングすることが好ましい。樹脂コーティングにより、磁心の強度を向上させることができる。
次に、合金板を熱処理して微細結晶を析出させて、鉄基軟磁性合金板2を形成する。巻回型磁心の場合は巻回してから熱処理することが好ましい。積層型磁心の場合は、積層してから熱処理してもよし、予め熱処理した鉄基軟磁性合金板2を積層してもよい。鉄基非晶質合金板は微細結晶を析出させることにより脆くなるので、磁心を作製してから熱処理することが好ましい。
熱処理温度は結晶化温度近傍の温度またはそれよりも高い温度であることが好ましい。結晶化温度の−20℃よりも高い温度が好ましい。前述の一般式を満たす鉄基軟磁性合金板2であれば、結晶化温度は500℃以上515℃以下である。このため、熱処理温度は480℃以上600℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは510℃以上560℃以下であることが好ましい。
熱処理温度は磁心1の温度が480℃以上600℃以下になるように制御する。例えば、電気炉である場合、電熱器の温度を調整することにより磁心の温度を制御することができる。電熱器に近いところと遠いところでは温度に差が生じる。複数の磁心1を配置して熱処理すると、炉内の温度ばらつきが生じる。磁心1の熱処理温度を制御するためには、熱処理中の磁心1の温度を温度センサを用いて測定することが好ましい。例えば、熱電対を使って磁心1の温度を直接測定する方法が有効である。
炉の温度ばらつきが抑制できる個数の磁心1を熱処理することにより熱処理温度を制御しやすくすることができる。炉内の電熱器を複数個所設けることにより熱処理温度を制御してもよい。炉内の雰囲気を循環させることにより熱処理温度を制御しやすくすることができる。大型の熱処理炉を使うことにより熱処理温度を制御してもよい。炉内を熱伝導率が高い材料で囲み、放熱性を均一にすることにより熱処理温度を制御しやすくすることができる。
熱処理時間は30時間以下であることが好ましい。熱処理時間とは、磁心の温度が480℃以上600℃以下であるときの時間である。30時間を超えると微細結晶粒の平均粒径が100nmを超える場合がある。熱処理時間は20分以上20時間以下であることがより好ましい。熱処理時間は1時間以上10時間以下であることがより好ましい。この範囲であれば平均結晶粒径を50nm以下に制御しやすい。
結晶化温度時点での昇温速度は7℃/分以上30℃/分以下であることが好ましい。この範囲であれば前述の引っ張り応力および圧縮応力を付与しやすい。昇温速度が30℃/分を超えると急激な粒成長が起きて磁気特性が低下する場合がある。昇温速度の下限は特に限定されないが、1℃/分以上であることが好ましい。1℃/分未満であると、昇温時間が長すぎて量産性が低下する。このため、結晶化温度時点での昇温速度は7℃/分以上30℃/分以下、さらには10℃/分以上20℃/分以下であることが好ましい。
以上のような熱処理を行うことにより、磁心1の直流保磁力を2A/m以上4A/m以下にすることができる。従来の磁心は、熱処理後の直流保磁力が1A/m程度である。保磁力を2A/m以上4A/m以下にすることにより、初透磁率を大きくすることができる。直流保磁力が4A/mを超えると軟磁気特性が低下する。
次に、必要に応じ、磁場中での熱処理をさらに行ってもよい。磁場中での熱処理では、磁場を鉄基軟磁性合金板2の短辺方向に印加することが好ましい。巻回型磁心では、鉄基軟磁性合金板2の幅方向に磁場を印加する。積層型磁心では、鉄基軟磁性合金板2の短辺側方向に磁場を印加する。鉄基軟磁性合金板2の短辺方向に磁場を印加しながら熱処理を行うことにより、鉄基軟磁性合金板2の磁壁を消失させることができる。磁壁を低減させることにより損失が低減されるため透磁率が向上する。印加する磁場は80kA/m以上、さらには100kA/m以上であることが好ましい。熱処理温度は200℃以上700℃以下であることが好ましい。磁場中熱処理の熱処理時間は、20分以上10時間以下であることが好ましい。磁場中熱処理は、前述の微細結晶析出のための熱処理と一つの工程で行ってもよい。必要に応じ、磁心をケースに収納してもよい。各種電子機器に搭載する際は、必要に応じ、巻線処理を施してもよい。
以上のような製造方法であれば、占積率を向上させるとともに、周波数100kHzにおける初透磁率μを25000以上、さらには30000以上にすることができる。占積率、微細結晶析出のための熱処理、磁場中熱処理を1つまたは2つ以上組み合わせることにより、周波数100kHzでの初透磁率μを25000以上、さらには30000以上と大きくすることができる。
(実施例1〜8、比較例1〜2)
ロール急冷法を用いて鉄基非晶質合金薄帯を作製した。ロール急冷法の条件を変えることにより平均厚さおよびKsを変えた。この作業により、試料1〜4に係る鉄基非晶質合金板を用意した。鉄基非晶質合金板の平均厚さ、Ksは表1に示すとおりである。試料1〜4の結晶化温度は500℃以上515℃以下である。
Figure 2018062409
次に、鉄基非晶質合金板の表面に絶縁層を形成した。実施例1〜8、比較例1では、表2に示すように試料1〜4のいずれかの合金板の表面に酸化珪素(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、または酸化アルミニウム(Al)の絶縁性微粒子を用いて前述の方法により絶縁層を形成した。比較例2では試料1の合金板の表面に樹脂ペーストを塗布して絶縁層を形成した。絶縁性微粒子の材質、平均粒径、絶縁層の厚さを表2に示す。
Figure 2018062409
絶縁層を形成した後に合金板を巻回して巻回型磁心を作製した。その後、微細結晶を析出させるための第1の熱処理と、磁場中での第2の熱処理と、を行った。これにより、実施例1〜8および比較例1〜2にかかる巻回型磁心を作製した。実施例および比較例に係る磁心のサイズは、外径12mm×内径10mm×幅2mmに統一した。第1の熱処理および第2の熱処理の条件を表3に示す。第1の熱処理後に磁心の保磁力を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2018062409
第1の熱処理では、磁心の温度を熱電対で測定した。実施例1〜8では、熱処理温度が磁心の結晶化温度近傍であった。表3の範囲内になるように「電気容量が大きい炉」を用いて熱処理温度を制御した。実施例では第1の熱処理後の保磁力が2A/m以上4A/m以下であった。
一方、比較例1、2では、昇温速度が50℃/分であり、好ましい範囲から外れている。実施例および比較例にかかる巻回型磁心について、微細結晶構造の平均結晶粒径およびFeSi結晶相の応力について測定した。微細結晶構造の平均結晶粒径は、前述のとおりXRDにより求められる回折ピークの半値幅からシェラーの式で求めたものである。FeSi結晶相の応力はXRDの残留応力解析法で行った。FeSi結晶相の長手方向成分に引っ張り応力および垂直方向成分に圧縮応力の両方が観察されたものを「○(Good)」とし、そうでないものを「×(Bad)」とした。長手方向とは鉄基軟磁性合金板の長手方向、垂直方向とは鉄基軟磁性合金板の幅方向のことである。その結果を表4に示す。
Figure 2018062409
表からわかるとおり、実施例にかかる磁心の平均結晶粒径は50nm以下であった。XRD分析による残留応力解析でも長手方向に引っ張り応力、垂直方向に圧縮応力が付与されていることが確認された。比較例の平均結晶粒径は50nm以下であった。しかしながら、引っ張り応力および圧縮応力の両方の付与は確認されなかった。
実施例および比較例にかかる巻回型磁心に対して、占積率(%)、初透磁率μ、損失(kW/m)を測定した。占積率は、磁心の任意の断面をSEM観察し、単位面積500μm×500μmを5ヶ所で鉄基軟磁性合金板の面積割合を測定し、鉄基軟磁性合金板の面積割合の平均値を占積率(%)とした。
初透磁率μの測定方法は、インピーダンスアナライザ(日本ヒューレットパッカート社YHP4192A)にて、室温、1turn、1V、で行った。初透磁率μについては周波数10kHzでの初透磁率と周波数100kHzでの初透磁率を測定した。
損失は、BHアナライザ(岩崎通信機株式会社SY−8216)を用いて、室温、1次側2turn、2次側2turn、周波数100kHz、200mT、として測定した。結果を表5に示す。
Figure 2018062409
表からわかるとおり、実施例に係る磁心の周波数100kHzにおける初透磁率μは25000以上、さらには30000以上であった。占積率、第1の熱処理、第2の熱処理を好ましい条件にすることにより、周波数100kHzでの初透磁率μを大きくできることがわかる。これに対し、比較例のように絶縁材が厚い磁心では占積率が大きく低下し、併せて透磁率も低下した。実施例にかかる磁心は損失に関してもいずれも低い値であった。比較例にかかる磁心の周波数10kHzにおける初透磁率は高く、90000以上95000であった。しかしながら、周波数100kHzにおける初透磁率は低下した。
実施例1と比較例1の周波数1kHzにおける初透磁率μを測定したところ、実施例1は63000、比較例1は100000とあまり大きな差は無かった。このため、動作周波数を50kHz以上と高くする場合には、特に有効であることがわかる。
磁心の断面をSEM観察し、鉄基軟磁性合金板と絶縁層の境界にある空隙の存在割合を測定した。任意の断面における単位長さ100μm中の空隙の長さを測定した。結果を表6に示す。磁心全体から求めたKs、磁心を4等分(1/4サイズに切断)した試料から求めたKsを測定した。磁心を4等分した試料から求めたKsと、4つのKsの中から最小値と最大値とを表6に示す。
Figure 2018062409
表からわかるとおり、実施例に係る磁心は鉄基軟磁性合金板と絶縁層の境界にある空隙が小さかった(ゼロ含む)。このことから空隙を低減することにより占積率を向上させることができることがわかる。
(実施例9、比較例3)
外形37mm×内径23mm×幅15mmにした以外は比較例1と同じ磁心を比較例3として作製した。また、同サイズ(外形37mm×内径23mm×幅15mm)にした以外は実施例7と同じ磁心を実施例9として作製した。周波数100kHzの初透磁率μは、比較例3が17000、実施例9は35000であった。
比較例3の磁心に巻線を8ターン巻いたもののL値は1.2mHであった。それに対し、実施例9の巻線を6ターン巻いた磁心のL値は1.4mHであった。磁心サイズが同じであった場合、周波数100kHzの初透磁率μの大きい実施例9の方が巻線数が少ないにも関わらず、L値が大きくなった。このため、周波数100kHzの初透磁率を大きくすることにより、巻線数を減らすことができる。
(実施例10、比較例4)
比較例4の磁心(外形37mm×内径23mm×幅15mm、巻線数8ターン、L値1.2mH)を用意した。巻線後の磁心のL値が同じ1.2mHとなるように実施例9(周波数100kHzの初透磁率μが35000)の磁心サイズを変えた以外は実施例9と同様の磁心を実施例10として作製した。実施例10の磁心サイズは、外形29mm×内径23mm×幅15mmと小型化できた。比較例4の磁心の質量は57gであったのに対し、実施例10は21gであった。このように周波数100kHzの初透磁率μを大きくした場合、同じ性能を求めると小型化ができることがわかる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。

Claims (13)

  1. 平均結晶粒径100nm以下の結晶構造を有する複数の鉄基軟磁性合金板と、
    前記複数の鉄基軟磁性合金板の一つと他の一つとの間に設けられた絶縁層と、を具備する磁心であって、
    前記磁心における前記複数の鉄基磁性合金板の占積率は、65%以上であり、
    周波数100kHzにおける初透磁率は、25000以上である、磁心。
  2. 前記平均結晶粒径が50nm以下である、請求項1に記載の磁心。
  3. 前記絶縁層の厚さは、0.1μm以上である、請求項1に記載の磁心。
  4. 前記複数の鉄基軟磁性合金板のそれぞれの平均厚さは、30μm以下である、請求項1に記載の磁心。
  5. 前記複数の鉄基軟磁性合金板のそれぞれの組成は、
    式:FeCuM’M”Si
    (式中、Mは周期表の4族元素、5族元素、6族元素、および希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表し、M’はMn、Al、および白金族元素からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を表し、M”はCoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表し、aはa+b+c+d+e+f+g=100原子%を満足する数であり、bは0.01≦b≦8原子%を満足する数であり、cは0.01≦c≦10原子%を満足する数であり、dは0≦d≦10原子%を満足する数であり、eは0≦e≦20を満足する数であり、fは10≦f≦25原子%を満足する数であり、gは3≦g≦12原子%を満足する数である)により表される、請求項1に記載の磁心。
  6. 前記磁心の密度の実測値に対する前記密度の計算値の比Ksは、1.00≦Ks≦1.50を満足する数である、請求項1に記載の磁心。
  7. 前記磁心を4等分したとき、4つの分割片のそれぞれの密度の実測値に対する前記密度の計算値の比Ksと前記Ksの値との差は、±0.2以内である、請求項6に記載の磁心。
  8. 前記初透磁率は、30000以上である、請求項1に記載の磁心。
  9. 前記鉄基軟磁性合金板と前記絶縁層との境界において、単位長さ100μmあたりの空隙の合計長さは、0μm以上5μm以下である、請求項1に記載の磁心。
  10. 動作周波数が50kHz以上である、請求項1に記載の磁心。
  11. 前記絶縁層は、平均粒径0.001μm以上0.1μm以下の絶縁性微粒子を含み、
    前記絶縁性微粒子は、酸化珪素、酸化マグネシウム、および酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの酸化物を含む、請求項1に記載の磁心。
  12. 前記絶縁性微粒子は、前記酸化珪素を含む、請求項11に記載の磁心。
  13. 前記結晶構造は、FeSi相を有する、請求項1に記載の磁心。
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