以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
[第1実施形態]
まず、図1を参照して、第1実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法について説明する。図1は、第1実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法のフローを示す図である。図1に示すように、第1実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク工程S201、解析工程S401、及び評価工程S601を含む。
デュアルタスク工程S201では、被験者が、所定の時間、デュアルタスクを遂行する。デュアルタスクは、運動タスクと知能タスクとを含む。運動タスクは、所定の運動を被験者に課す。知能タスクは、所定の回答を被験者に課す。デュアルタスク工程S201において、被験者は、運動タスクと知能タスクとを同時に遂行する。デュアルタスク工程S201では更に、デュアルタスクを遂行している被験者による回答が検出される。
運動タスクが被験者に課す所定の運動は、例えば、「直線歩行」である。あるいは、所定の運動は、「足踏み」、「スキップ」、又は「走行」であり得る。知能タスクが被験者に課す問題は、例えば、計算問題である。あるいは、知能タスクが被験者に課す問題は、「言葉」を回答する問題であり得る。
計算問題は、例えば、「連続引き算」である。あるいは、計算問題は、「1ケタの数と1ケタの数とを用いた計算」、「1ケタの数と2ケタの数とを用いた計算」、又は「2ケタの数と2ケタの数とを用いた計算」であり得る。「言葉」を回答する問題は、例えば、「五十音のうちから任意に選択された音(文字)から始まる言葉(例えば、単語)を挙げていく問題」、又は「しりとり」であり得る。あるいは、「言葉」を回答する問題は、「アルファベットのうちから任意に選択された文字から始まる言葉(例えば、単語)を挙げていく問題」であり得る。
解析工程S401では、知能タスクに対する被験者の回答が解析される。具体的には、第1実施形態では、被験者による回答のスコアが算出される。回答のスコアは、例えば、誤答も含めた回答数、正答数(言い換えると、正解の回答数)、又は正答率であり得る。以下、誤答も含めた回答数は、全回答数と記載する場合がある。正答率は、全回答数と正答数との比を示す。なお、「言葉」を回答する場合、文字数が多い程、加算する点数を高くしてもよい。
評価工程S601では、解析工程S401において得られた解析の結果に基づいて、被験者のデュアルタスク遂行能力が評価される。具体的には、第1実施形態では、解析工程S401において得られた回答のスコアに基づいて、被験者のデュアルタスク遂行能力を示す評価データが生成される。
評価工程S601において評価されるデュアルタスク遂行能力は、被験者の精神障害の程度、認知能力、又は脳の健康度を示す。例えば、デュアルタスク遂行能力は、MMSE(Mini Mental State Examination)スコアや長谷川式簡易知能評価スケールのような一般的な知能評価スケールに対応する。
知能評価スケールは、回答のスコアに基づいて、以下の式(1)から算出することができる。式(1)において、「x」は回答のスコアである。またf(x)は、回答のスコアに関する任意の関数である。
知能評価スケール=f(x) (1)
例えば、知能評価スケールを算出する式として、以下の式(2)で示す1次多項式を採用し得る。
知能評価スケール=a×(x)+b (2)
式(2)に含まれる係数「a」及び「b」は、運動タスク及び知能タスクの難易度によって変化し得る。また、知能評価スケールとしてMMSEスコアを算出する場合、式(2)は、以下の式(3)となる。つまり、関数「a×(x)+b」によって求められる値と、数値「30」とのうち、小さい方の値がMMSEスコアとして算出される。
MMSEスコア=min{a×(x)+b,30} (3)
例えばデュアルタスクとして、1分間の直線歩行(運動タスク)と、100から1ずつ引いていく連続引き算(知能タスク)とを被験者に課した場合、式(3)の係数「a」は「0.17」である。また、係数「b」は「17.6」である。したがって、式(3)は、以下の式(4)となる。但し、この場合、関数「0.17×x+17.6」は、27未満のMMSEスコアに対応する。
MMSEスコア=min{0.17×x+17.6,27} (4)
続いて、図2を参照して、第1実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価システム1aについて説明する。図2は、デュアルタスク遂行能力評価システム1aの構成を示すブロック図である。図1に示すデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク遂行能力評価システム1aを利用して実行される。図2に示すように、デュアルタスク遂行能力評価システム1aは、情報処理装置3と、回答検出部4とを備える。
情報処理装置3は、処理部31、記憶部32、音声出力部33、入力部34、及び表示部35を備える。情報処理装置3は、例えばパーソナルコンピューターによって構成され得る。あるいは、情報処理装置3は、スマートフォン、又はタブレット端末のような情報の処理が可能な機器によって構成され得る。なお、回答検出部4は、情報処理装置3に組み込まれてもよい。
処理部31は、記憶部32に記憶されたプログラムを実行することによって、数値計算や情報処理、機器制御のような様々な処理を行う。処理部31は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)を含み得る。
記憶部32は、プログラム及び設定情報などを記憶する。記憶部32は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)が備える磁気ディスク、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)によって構成され得る。
また、処理部31は、記憶部32に記憶された音声データに基づいて、音声出力部33から音声を出力させることができる。音声出力部33は、例えばスピーカーであり得る。
入力部34は、ユーザーによって操作されて、処理部31に対して様々な情報を入力する。処理部31は、入力部34から入力された情報に基づいて、各種の処理を実行する。入力部34は、例えばキーボード及び/又はタッチパネルを含み得る。
表示部35は、処理部31によって制御されて、各種の画像を表示することができる。表示部35は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイであり得る。
回答検出部4は、被験者2による回答を検出する。第1実施形態では、回答検出部4はマイクロフォンである。したがって回答検出部4は、知能タスクを遂行する被験者2が発声した声(回答)を電気信号に変換する。処理部31は、回答検出部4(マイクロフォン)が生成した電気信号(アナログ信号)を、所定の形式のデジタル信号に変換して、音声データを生成する。記憶部32は、処理部31が生成した音声データを記憶する。
続いて、デュアルタスク遂行能力評価システム1aを用いて被験者2のデュアルタスク遂行能力を評価する方法について説明する。具体的には、被験者2の知能評価スケールを判定(算出)する方法について説明する。被験者2の知能評価スケールを判定する際には、ユーザーは、まず、情報処理装置3と回答検出部4とを用いて、デュアルタスク(例えば、直線歩行と計算問題)を所定の時間遂行している被験者2が発声した声に対応する音声データを、記憶部32に記憶(記録)させる。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、記憶部32に記憶された音声データに対応する音声を、音声出力部33から出力させる。換言すると、デュアルタスクの遂行中に被験者2が発声した声を再生する。ユーザーは、再生された声に基づいて、被験者2による回答のスコアを算出する。換言すると、被験者2による回答が解析される。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、回答のスコア(解析結果)を示すデータを入力する。第1実施形態において、記憶部32は、上記の式(1)を記憶している。処理部31は、式(1)と回答のスコアとに基づいて、被験者2の知能評価スケールを示すデータを生成する。そして、処理部31は、知能評価スケールに対応する画像を生成して表示部35に表示させる。このように、処理部31は、被験者2のデュアルタスク遂行能力を示す評価データとして、被験者2の知能評価スケールを示すデータを生成する。したがって、処理部31は、評価データを生成する評価データ生成部として機能する。以下では、評価データに対応する画像を、評価結果画像と記載する。
以上のように、第1実施形態によれば、被験者がデュアルタスクを遂行することにより、知能評価スケールに対応するデュアルタスク遂行能力を評価することができる。よって、MMSEのような問診又は知能検査テストによる認知症の診断と比べて、より簡便に、またより短時間で認知症の程度を評価することができる。
また、知能評価スケールに対応するデュアルタスク遂行能力を評価するためのシステムを、パーソナルコンピューターのような情報処理装置3と、マイクロフォンのような回答検出部4とによって構成することができる。したがって、磁気共鳴画像法やコンピューター断層撮影法のような神経画像処理技術を利用して認知症のような精神障害を診断する場合と比べて、システムを簡素化することができる。
また、デュアルタスク遂行能力評価システム1aを使用することにより、被験者2が個々に、知能評価スケールに対応するデュアルタスク遂行能力を評価することができる。したがって、被験者2は、認知症のような精神障害の進み具合を日々記録することができる。これによって、認知症のような精神障害の悪化傾向などを早期に発見し、適切なリハビリや治療を行うことが可能となる。その結果、認知症のような精神障害の進行を緩和又は防止することが可能となる。
なお、第1実施形態では、デュアルタスク遂行能力評価システム1aが、パーソナルコンピューターのような情報処理装置3と、マイクロフォン(回答検出部4)とによって構成されたが、デュアルタスク遂行能力評価システム1aを構成する要素はそれらに限定されない。例えば、音声データを記録する機能を実現する要素として、ICレコーダーやスマートフォンのような機器を使用してもよい。あるいは、評価データ生成部の機能を実現する要素として、例えば、スマートフォンやタブレット端末のような情報の処理が可能な機器を使用してもよい。
また、情報処理装置3に含まれる表示部35(データ出力部)に評価結果画像が表示されたが、評価結果画像は、例えば、情報処理装置3に外部機器として接続されたディスプレイ(データ出力部)に表示されてもよい。また例えば、情報処理装置3に外部機器として接続されたプリンター(データ出力部)によって、評価結果画像が記録媒体に印字されてもよい。
また、ユーザーが、再生された音声を聞いて、被験者2による回答のスコアを算出する形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、回答のスコアとして全回答数を計数する場合、処理部31が、音量を時系列に沿って示すデータを生成して、そのデータに対応する画像を表示部35に表示させてもよい。これにより、ユーザーは、表示部35に表示された画像(ピーク値)に基づいて、全回答数を計数することができる。あるいは、処理部31が、音声認識処理によって全回答数を計数してもよい。即ち、処理部31が解析部として機能して、被験者2による回答(音声)を解析し、全回答数を示すデータ(解析結果を示すデータ)を生成してもよい。なお、処理部31が解析部として機能する場合、ユーザーは解析結果を示すデータを入力する必要はない。
また、第1実施形態では、知能タスクは、発声による回答を課すタスクであったが、知能タスクは、動作による回答を課すタスクであり得る。例えば、運動タスクとして足踏みが採用される場合に、検査者の指示に応じて足踏みの位置を変えるという知能タスクが採用されてもよい。あるいは、デュアルタスクは、検査者の指示に応じて両腕又は一方の腕を上げ下ろしする知能タスクを含んでもよい。あるいは、デュアルタスクは、検査者の指示に応じて視線の方向を変える知能タスクを含んでもよい。あるいは、デュアルタスクは、被験者が両手にそれぞれスイッチを持ち、検査者の指示に応じてスイッチを押す知能タスクを含んでもよい。あるいは、デュアルタスクは、被験者が一方の手にスイッチを持ち、検査者の指示に応じてスイッチを押す知能タスクを含んでもよい。
また、第1実施形態では、デュアルタスク遂行能力評価システム1aが回答検出部4としてマイクロフォンを備える形態について説明したが、デュアルタスク遂行能力評価システム1aの構成はこれに限定されない。
例えば、知能タスクが、動作による回答を課すタスクである場合、デュアルタスク遂行能力評価システム1aは、回答検出部4として、被験者2の動作を検出する動作検出部を備える。具体的には、動作検出部は、例えば撮像装置又はモーションキャプチャ装置であり得る。撮像装置は、例えばデジタルビデオカメラである。モーションキャプチャ装置は、モーションキャプチャ技術により、被験者2の各部の動きを補足(検出)する。
回答検出部4(動作検出部)が撮像装置である場合、回答検出部4は、撮像装置によって撮像された被験者2の画像データを生成する。この場合、処理部31は、撮像装置によって撮像された被験者2の画像を、例えば表示部35に表示させる。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1aのユーザーは、被験者2の動作を確認して、被験者2による回答のスコアを算出することができる。
また、回答検出部4(動作検出部)がモーションキャプチャ装置である場合、回答検出部4は、被験者2の動作が反映されたモーションキャプチャデータを生成する。この場合、処理部31は、モーションキャプチャデータに基づき、被験者2の動作にしたがって動く人体骨格モデルを示すデータを生成する。以下、人体骨格モデルを示すデータを人体骨格モデルデータと記載する場合がある。処理部31は、人体骨格モデルデータに基づき、人体骨格モデルの画像を生成して、例えば表示部35に表示させる。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1aのユーザーは、被験者2の動作(人体骨格モデルデータ)を確認して、被験者2による回答のスコアを算出することができる。
デュアルタスク遂行能力評価システム1aがモーションキャプチャ装置を備える場合、処理部31が解析部として機能して、被験者2による回答のスコアを算出してもよい。即ち、処理部31は、人体骨格モデルデータ又はモーションキャプチャデータを解析し、回答のスコアを示すデータ(解析結果を示すデータ)を生成してもよい。
知能タスクが、検査者の指示に応じて視線の方向を変えるタスクである場合、デュアルタスク遂行能力評価システム1aは、回答検出部として、被験者2の視線の方向を検出する視線方向検出部を備える。
視線方向検出部には、公知の視線方向検出技術を採用できる。例えば、視線方向検出部は、近赤外LED、撮像装置、及び処理部31によって構成され得る。近赤外LEDは、被験者2の目に近赤外線を照射する。撮像装置は、被験者2の目を撮像する。処理部31は、撮像装置によって撮像された画像もしくはデータを解析して、被験者2の瞳孔の位置(視線の方向)を示すデータを生成する。これにより、処理部31は、被験者2の視線の方向を示すデータに対応する画像を生成して、例えば表示部35に表示させることができる。したがって、デュアルタスク遂行能力評価システム1aのユーザーは、被験者2の視線の方向(視線の方向を示すデータ)を確認して、被験者2による回答のスコアを算出することができる。なお、以下では、視線の方向を示すデータを、視線方向データと記載する場合がある。
デュアルタスク遂行能力評価システム1aが視線方向検出部を備える場合、処理部31が解析部として機能して、被験者2による回答のスコアを算出してもよい。即ち、処理部31は、視線方向データを解析し、回答のスコアを示すデータを生成してもよい。
知能タスクが、検査者の指示に応じて1つ又は2つのスイッチを押すタスクである場合、デュアルタスク遂行能力評価システム1aは、回答検出部4として、1つ又は2つのスイッチを備える。
回答検出部4が1つのスイッチを含む場合、回答検出部4は、被験者2によってスイッチが押されたか否かを示す信号を生成する。処理部31は、回答検出部4の出力に基づき、例えば、被験者2がスイッチを押したタイミングを示すデータを生成する。具体的には、処理部31は、被験者2がスイッチを押したタイミングを時系列に沿って示すデータを生成する。これにより、処理部31は、被験者2がスイッチを押したタイミングを時系列に沿って示す画像を生成して、例えば表示部35に表示させることができる。したがって、デュアルタスク遂行能力評価システム1aのユーザーは、被験者2がスイッチを押したタイミング(スイッチが押されたか否かを示す信号)を確認して、被験者2による回答のスコアを算出することができる。
デュアルタスク遂行能力評価システム1aが1つのスイッチを備える場合、処理部31が解析部として機能して、被験者2による回答のスコアを算出してもよい。即ち、処理部31は、被験者2によってスイッチが押されたか否かを示す信号を解析し、回答のスコアを示すデータを生成してもよい。
回答検出部4が2つのスイッチを含む場合、回答検出部4は、例えば、被験者2によってどちらのスイッチが押されたかを示す信号を生成する。処理部31は、回答検出部4の出力に基づき、例えば、被験者2がどちらのスイッチを押したかを時系列に沿って示すデータを生成する。これにより、処理部31は、被験者2がどちらのスイッチを押したかを時系列に沿って示す画像を生成して、例えば表示部35に表示させることができる。したがって、デュアルタスク遂行能力評価システム1aのユーザーは、被験者2がどちらのスイッチを押したか(どちらのスイッチが押されたかを示す信号)を確認して、被験者2による回答のスコアを算出することができる。
デュアルタスク遂行能力評価システム1aが2つのスイッチを備える場合、処理部31が解析部として機能して、被験者2による回答のスコアを算出してもよい。即ち、処理部31は、被験者2がどちらのスイッチを押したかを示す信号を解析し、回答のスコアを示すデータを生成してもよい。
[第2実施形態]
続いて図3〜図6を参照して第2実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法、デュアルタスク遂行能力評価システム1b、及び、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを用いてデュアルタスク遂行能力を評価する方法について説明する。但し、第1実施形態と異なる事項を説明し、第1実施形態と同じ事項についての説明は割愛する。第2実施形態は、デュアルタスクを遂行する被験者の運動状態に基づいてデュアルタスク遂行能力を評価する点で第1実施形態と異なる。
図3は、第2実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法のフローを示す図である。図3に示すように、第2実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法は、運動タスク工程S102、デュアルタスク工程S202、解析工程S402、及び評価工程S602を含む。
運動タスク工程S102では、被験者が、所定の時間、所定の運動を被験者に課す運動タスクのみを遂行する。運動タスク工程S102では更に、被験者の動作が検出される。
デュアルタスク工程S202では、被験者が、所定の時間、デュアルタスクを遂行する。デュアルタスク工程S202では更に、被験者の動作が検出される。運動タスク工程S102とデュアルタスク工程S202とにおいて、被験者は、同じ運動タスクを遂行する。なお、運動タスク工程S102とデュアルタスク工程S202との順序は入れ替え可能である。
解析工程S402では、運動タスク工程S102の遂行時における被験者の運動状態と、デュアルタスク工程S202の遂行時における被験者の運動状態とが解析される。具体的には、第2実施形態では、被験者の運動状態を示す所定の評価項目が評価される。更に、被験者の運動状態が、所定の評価項目において、運動タスク工程S102とデュアルタスク工程S202との間で一致するか否かが判定される。
評価工程S602では、解析工程S402において得られた解析の結果(判定の結果)に基づいて、被験者のデュアルタスク遂行能力が評価される。なお、評価工程S602において、デュアルタスク遂行能力を示す評価データが生成され得る。
評価工程S602において評価されるデュアルタスク遂行能力は、例えばMMSEスコアや長谷川式簡易知能評価スケールのような一般的な知能評価スケールに対応する。第2実施形態では、評価工程S602において、被験者の知能評価スケールが所定の値以上であるか否かが判定される。所定の値は、運動タスク及び知能タスクの難易度に応じて変化し得る。
例えば、運動タスクとして1分間の足踏みが採用され、知能タスクとして、「か」から始まる言葉を挙げていく問題が採用された場合、足踏みの速さ(所定の評価項目)が、運動タスク工程S102とデュアルタスク工程S202との間で一致するか否かによって、被験者のMMSEスコアが27以上であるか否かが判定される。即ち、足踏みの速さが運動タスク工程S102とデュアルタスク工程S202との間で一致する場合、被験者のMMSEスコアは、27以上であると判定される。また、足踏み中の歩隔(所定の評価項目)が、運動タスク工程S102とデュアルタスク工程S202との間で一致するか否かによって、被験者のMMSEスコアが24以上であるか否かが判定される。即ち、足踏み中の歩隔が運動タスク工程S102とデュアルタスク工程S202との間で一致する場合、被験者のMMSEスコアは、24以上であると判定される。なお、歩隔とは、両足(踵)の左右幅(間隔)のことである。
続いて、図4を参照して、第2実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価システム1bについて説明する。図4は、デュアルタスク遂行能力評価システム1bの構成を示すブロック図である。図3に示すデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを利用して実行される。図4に示すように、デュアルタスク遂行能力評価システム1bは、情報処理装置3と、動作検出部5とを備える。
情報処理装置3は、処理部31、記憶部32、入力部34、及び表示部35を備える。情報処理装置3は、第1実施形態と同様に、例えばパーソナルコンピューターによって構成され得る。あるいは、情報処理装置3は、スマートフォン、又はタブレット端末のような情報の処理が可能な機器によって構成され得る。なお、動作検出部5は、情報処理装置3に組み込まれてもよい。
動作検出部5は、被験者2の動作を検出する。第2実施形態において、動作検出部5は、撮像部51と、モーションキャプチャ部52とを備える。即ち、動作検出部5は、モーションキャプチャ装置である。
撮像部51は、被験者2を撮像する。撮像部51は、例えばCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ、又は測域センサ(レンジセンサ)を含み得る。モーションキャプチャ部52は、撮像部51で撮像された被験者2の動作を検出する。詳しくは、モーションキャプチャ部52は、被験者2の各部の動きをベクトルデータに変換して、被験者2の各部の動き(被験者2の動作)を反映したモーションキャプチャデータを生成する。
処理部31は、動作検出部5の出力(モーションキャプチャデータ)に基づき、撮像部51によって撮像された被験者2の動作にしたがって動く人体骨格モデルを示すデータを生成する。図5は、人体骨格モデルを示す図である。人体骨格モデル6は、図5に示すように、人体の構造をリンク構造(ツリー構造)で表す。
続いて、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを用いて被験者2のデュアルタスク遂行能力を評価する方法について説明する。具体的には、被験者2の知能評価スケールを判定する方法について説明する。
被験者2の知能評価スケールを判定する際には、ユーザーは、まず、運動タスクのみを所定の時間遂行している被験者2を撮像部51によって撮像する。この結果、処理部31により、運動タスクのみを遂行している被験者2の動作にしたがって動く第1人体骨格モデルを示すデータが生成される。第1人体骨格モデルデータは、記憶部32に記憶される。
次に、ユーザーは、デュアルタスクを所定の時間遂行している被験者2を撮像部51によって撮像する。この結果、処理部31により、デュアルタスクを遂行している被験者2の動作にしたがって動く第2人体骨格モデルを示すデータが生成される。第2人体骨格モデルデータは、記憶部32に記憶される。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、処理部31に、第1人体骨格モデルデータと第2人体骨格モデルデータとを合成した合成データを作成させる。そして、ユーザーは、入力部34を操作して、表示部35に合成データに対応する画像を表示させる。
図6は、表示部35に表示される人体骨格モデルを示す図である。詳しくは、図6は、表示部35に、2体の人体骨格モデル61、62の画像が表示された状態を示している。第2実施形態において、2体の人体骨格モデル61、62は、第1人体骨格モデルデータ、及び第2人体骨格モデルデータにそれぞれ対応する。
図6に示すように、表示部35が有する画面35aに、2体の人体骨格モデル61、62の画像が同時に表示される。これにより、ユーザーは、運動タスクのみを遂行している被験者2に対応する第1人体骨格モデルデータ、及び、デュアルタスクを遂行している被験者2に対応する第2人体骨格モデルデータを認識することができる。
ユーザーは、第1人体骨格モデルデータ及び第2人体骨格モデルデータに基づいて、被験者2の運動状態が、所定の評価項目において、運動タスクのみを遂行している被験者2と、デュアルタスクを遂行している被験者2との間で一致しているか否かを判定する。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、判定の結果(解析結果)を示すデータを入力する。第2実施形態において、記憶部32は、所定の評価項目と知能評価スケールとを対応づけた評価テーブルを記憶している。処理部31は、判定の結果を示すデータと、評価テーブルとに基づいて、被験者2の知能評価スケールが所定の値以上であるか否かを判定する。
また、処理部31は、被験者2の知能評価スケールが所定の値以上であるか否かを示す評価結果画像を生成して表示部35に表示させる。このように、処理部31は、被験者2のデュアルタスク遂行能力を示す評価データとして、被験者2の知能評価スケールが所定の値以上であるか否かを示すデータを生成する。したがって、処理部31は、評価データを生成する評価データ生成部として機能する。
なお、ユーザーが、第1人体骨格モデルデータ及び第2人体骨格モデルデータに基づいて、被験者2の知能評価スケールが所定の値以上であるか否かを判定してもよい。
以上のように、第2実施形態によれば、被験者が運動タスク(シングルタスク)、及びデュアルタスクを遂行することにより、知能評価スケールに対応するデュアルタスク遂行能力を評価することができる。よって、MMSEのような問診又は知能検査テストによる認知症の診断と比べて、より簡便に、またより短時間で認知症の程度を評価することができる。
また、知能評価スケールに対応するデュアルタスク遂行能力を評価するためのシステムを、パーソナルコンピューターのような情報処理装置3と、モーションキャプチャ装置のような動作検出部5とによって構成することができる。したがって、磁気共鳴画像法やコンピューター断層撮影法のような神経画像処理技術を利用して認知症のような精神障害を診断する場合と比べて、システムを簡素化することができる。
更に、第2実施形態によれば、運動タスク(運動課題)の達成度から、被験者の身体機能(運動機能)を評価することができる。換言すると、身体能力を評価することができる。また、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを使用することにより、被験者2が個々に、知能評価スケールに対応するデュアルタスク遂行能力とともに身体能力を評価することができる。よって、被験者2は、認知症のような精神障害の程度とともに身体能力の評価を日々記録することができる。これによって、認知症のような精神障害、及び身体機能の悪化傾向などを早期に発見し、適切なリハビリや治療を行うことが可能となる。その結果、認知症のような精神障害の進行や身体機能の悪化を緩和又は防止することが可能となる。
なお、第2実施形態では、デュアルタスク遂行能力評価システム1bが、パーソナルコンピューターのような情報処理装置3と、モーションキャプチャ装置(動作検出部5)とによって構成されたが、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを構成する要素はそれらに限定されない。例えば、評価データ生成部の機能を実現する要素として、スマートフォンやタブレット端末のような情報の処理が可能な機器を使用してもよい。
また、情報処理装置3に含まれる表示部35(データ出力部)に人体骨格モデルの画像が表示されたが、人体骨格モデルの画像は、例えば、情報処理装置3に外部機器として接続されたディスプレイ(データ出力部)に表示されてもよい。
また、ユーザーが、人体骨格モデルデータを解析する形態について説明したが、処理部31が解析部として機能してもよい。即ち、処理部31が、モーションキャプチャデータ又は人体骨格モデルデータを解析して、被験者2の運動状態が所定の評価項目において運動タスク工程とデュアルタスク工程との間で一致するか否かを判定してもよい。
また、デュアルタスク遂行能力評価システム1bが動作検出部5としてモーションキャプチャ装置を備える形態について説明したが、デュアルタスク遂行能力評価システム1bの構成はこれに限定されない。例えば、デュアルタスク遂行能力評価システム1bは、動作検出部5として、振動検出センサ、撮像装置、又はマット状の感圧スイッチを備え得る。
動作検出部5として、被験者2の振動を検出する振動検出センサが使用される場合、動作検出部5は、被験者2の運動によって振動が発生したタイミングを示す信号を生成する。
処理部31は、動作検出部5の出力に基づいて、例えば、振動が発生したタイミングを時系列に沿って示すデータを生成する。これにより、処理部31は、例えば表示部35に、被験者2の運動によって振動が発生したタイミングを時系列に沿って示す画像を表示させることができる。したがって、デュアルタスク遂行能力評価システム1bのユーザーは、被験者2の運動状態を解析することができる。例えば、運動タスクとして足踏みが採用された場合、ユーザーは、振動が発生したタイミングを時系列に沿って示す画像(振動が発生したタイミングを示す信号)を確認して、被験者2の足踏みの速さを認識することができる。
デュアルタスク遂行能力評価システム1bが振動検出センサを備える場合、処理部31が解析部として機能してもよい。即ち、処理部31が、振動検出センサ(動作検出部5)の出力に基づいて、被験者2の運動状態を解析してもよい。例えば、運動タスクとして足踏みが採用された場合、処理部31は、振動検出センサの出力に基づいて、足踏みの速さを測定し得る。
振動検出センサには、例えばスマートフォンに実装されているセンサを利用することができる。したがって、被験者2がスマートフォンを携帯して運動タスク及びデュアルタスクを遂行することにより、被験者2の運動状態を示すデータを得ることができる。
動作検出部5として、撮像装置が使用される場合、動作検出部5は、撮像装置によって撮像された被験者2の画像データを生成する。この場合、処理部31は、撮像装置によって撮像された被験者2の画像を、例えば表示部35に表示させる。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1bのユーザーは、撮像された被験者2の画像を観察することにより、被験者2の運動状態を解析することができる。
動作検出部5としてマット状の感圧スイッチが使用される場合、動作検出部5は、被験者2がマットを踏むタイミングを示す信号を生成する。処理部31は、動作検出部5の出力に基づいて、例えば、被験者2がマットを踏むタイミングを時系列に沿って示すデータを生成する。これにより、処理部31は、例えば表示部35に、被験者2がマットを踏むタイミングを時系列に沿って示す画像を表示させることができる。したがって、デュアルタスク遂行能力評価システム1bのユーザーは、被験者2の運動状態(マットが踏まれたタイミングを示す信号)を解析することができる。
デュアルタスク遂行能力評価システム1bがマット状の感圧スイッチを備える場合、処理部31が解析部として機能してもよい。即ち、処理部31が、マット状の感圧スイッチ(動作検出部5)の出力に基づいて、被験者2の運動状態を解析してもよい。例えば、運動タスクとして足踏みが採用された場合、処理部31は、マット状の感圧スイッチの出力に基づいて、足踏みの速さを測定し得る。
[第3実施形態]
続いて図4、図7、及び図8を参照して第3実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法、デュアルタスク遂行能力評価システム1b、及び、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを用いてデュアルタスク遂行能力を評価する方法について説明する。但し、第1実施形態及び第2実施形態とは異なる事項を説明し、第1実施形態及び第2実施形態と同じ事項についての説明は割愛する。第3実施形態は、被験者が運動タスクを遂行するとともに、複数種類のデュアルタスクを遂行する点で第1実施形態及び第2実施形態と異なる。
図7は、第3実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法のフローを示す図である。図7に示すように、第3実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法は、運動タスク工程S103、デュアルタスク工程S203、解析工程S403、及び評価工程S603を含む。
運動タスク工程S103では、被験者が、所定の時間、運動タスクのみを遂行する。運動タスク工程S103では更に、運動タスクを遂行している被験者の動作が検出される。
デュアルタスク工程S203は、第1デュアルタスク工程S203aと、第2デュアルタスク工程S203bとを含む。第1デュアルタスク工程S203aでは、被験者が、所定の時間、第1デュアルタスクを遂行する。第1デュアルタスク工程S203aでは更に、第1デュアルタスクを遂行している被験者の動作が検出される。第2デュアルタスク工程S203bでは、被験者が、所定の時間、第2デュアルタスクを遂行する。第2デュアルタスク工程S203bでは更に、第2デュアルタスクを遂行している被験者の動作が検出される。
第1デュアルタスク工程S203aと、第2デュアルタスク工程S203bとは、知能タスクの難易度が異なる。具体的には、第2デュアルタスク工程S203bに含まれる知能タスクは、第1デュアルタスク工程S203aに含まれる知能タスクよりも難易度が高い。また、運動タスク工程S103と、デュアルタスク工程S203(第1デュアルタスク工程S203a、及び第2デュアルタスク工程S203b)とにおいて、被験者は、同じ運動タスクを遂行する。なお、運動タスク工程S103とデュアルタスク工程S203との順序は入れ替え可能である。
解析工程S403では、運動タスク工程S103の遂行時における被験者の運動状態と、第1デュアルタスク工程S203aの遂行時における被験者の運動状態と、第2デュアルタスク工程S203bの遂行時における被験者の運動状態とが解析される。具体的には、第3実施形態では、被験者の運動状態を示す複数の評価項目が評価される。更に、複数の評価項目中に、運動タスク工程S103(運動タスク)、第1デュアルタスク工程S203a(第1デュアルタスク)、第2デュアルタスク工程S203b(第2デュアルタスク)の順序で評価が小さくなる項目が2つ以上あるか否かが判定される。複数の評価項目は、例えば、運動の大きさを評価する項目、機敏性を評価する項目、及び、安定性を評価する項目を含み得る。
評価工程S603では、解析工程S403において得られた解析の結果(判定の結果)に基づいて、被験者のデュアルタスク遂行能力が評価される。なお、評価工程S603において、デュアルタスク遂行能力を示す評価データが生成され得る。
評価工程S603において評価されるデュアルタスク遂行能力は、例えばMMSEスコアや長谷川式簡易知能評価スケールのような一般的な知能評価スケールに対応する。第3実施形態では、評価工程S603において、被験者の知能評価スケールが所定の値であるか否かが判定される。所定の値は、運動タスク及び知能タスクの難易度に応じて変化し得る。
例えば、運動タスクとして1分間の足踏みが採用され、第1デュアルタスクの知能タスクとして連続引き算が採用され、第2デュアルタスクの知能タスクとして、「か」から始まる言葉を挙げていく問題が採用された場合、被験者のMMSEスコアが27又は26であるか否かが判定される。即ち、運動タスク工程S103、第1デュアルタスク工程S203a、第2デュアルタスク工程S203bの順序で評価が小さくなる評価項目が2つ以上ある場合、被験者のMMSEスコアは26又は27であると判定される。なお、被験者が足踏みをする場合、運動の大きさとして、例えば、足の上げの大きさ、膝の高さ、及び、腕の振りの大きさが評価され得る。また、機敏性として、例えば、足踏みの速さ(周期)が評価され得る。また、安定性として、例えば、歩隔の狭さ、及び、上半身のブレの少なさが評価され得る。
続いて、図4を参照して、第3実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価システム1bについて説明する。図7に示すデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを利用して実行される。
第3実施形態では、撮像部51は、運動タスクのみを遂行する被験者2の動作、第1デュアルタスクを遂行する被験者2の動作、及び、第2デュアルタスクを遂行する被験者2の動作をそれぞれ撮像する。また、モーションキャプチャ部52は、運動タスクのみを遂行する被験者2の動作を反映したモーションキャプチャデータを生成する。更に、モーションキャプチャ部52は、第1デュアルタスクを遂行する被験者2の動作を反映したモーションキャプチャデータ、及び、第2デュアルタスクを遂行する被験者2の動作を反映したモーションキャプチャデータをそれぞれ生成する。
処理部31は、動作検出部5の出力(モーションキャプチャデータ)に基づき、第3人体骨格モデルを示すデータ、第4人体骨格モデルを示すデータ、及び第5人体骨格モデルを示すデータをそれぞれ生成する。第3人体骨格モデルは、運動タスクのみを遂行する被験者2の動作にしたがって動く。第4人体骨格モデルは、第1デュアルタスクを遂行する被験者2の動作にしたがって動く。第5人体骨格モデルは、第2デュアルタスクを遂行する被験者2の動作にしたがって動く。更に、処理部31は、第3人体骨格モデルデータ、第4人体骨格モデルデータ、及び第5人体骨格モデルデータを合成した合成データを生成する。
続いて、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを用いて被験者2のデュアルタスク遂行能力を評価する方法について説明する。具体的には、被験者2の知能評価スケールを判定する方法について説明する。
被験者2の知能評価スケールを判定する際には、ユーザーは、まず、運動タスクのみを所定の時間遂行している被験者2を撮像部51によって撮像する。この結果、処理部31により、第3人体骨格モデルデータが生成される。第3人体骨格モデルデータは、記憶部32に記憶される。
次に、ユーザーは、第1デュアルタスクを所定の時間遂行している被験者2を撮像部51によって撮像する。この結果、処理部31により、第4人体骨格モデルデータが生成される。第4人体骨格モデルデータは、記憶部32に記憶される。
次に、ユーザーは、第2デュアルタスクを所定の時間遂行している被験者2を撮像部51によって撮像する。この結果、処理部31により、第5人体骨格モデルデータが生成される。第5人体骨格モデルデータは、記憶部32に記憶される。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、処理部31に、第3人体骨格モデルデータ、第4人体骨格モデルデータ、及び第5人体骨格モデルデータを合成した合成データを作成させる。そして、ユーザーは、入力部34を操作して、表示部35に合成データに対応する画像を表示させる。
図8は、表示部35に表示される人体骨格モデルを示す図である。詳しくは、図8は、表示部35に、3体の人体骨格モデル61、62、63の画像が表示された状態を示している。第3実施形態において、3体の人体骨格モデル61、62、63は、第3人体骨格モデルデータ、第4人体骨格モデルデータ、及び第5人体骨格モデルデータにそれぞれ対応する。
図8に示すように、表示部35が有する画面35aに、3体の人体骨格モデル61、62、63の画像が同時に表示される。これにより、ユーザーは、運動タスクのみを遂行している被験者2に対応する第3人体骨格モデルデータ、第1デュアルタスクを遂行している被験者2に対応する第4人体骨格モデルデータ、及び、第2デュアルタスクを遂行している被験者2に対応する第5人体骨格モデルデータを認識することができる。
ユーザーは、第3人体骨格モデルデータ、第4人体骨格モデルデータ、及び第5人体骨格モデルデータに基づいて、被験者の運動状態を、複数の評価項目において評価する。具体的には、ユーザーは、第3人体骨格モデルデータ(運動タスク)、第4人体骨格モデルデータ(第1デュアルタスク)、第5人体骨格モデルデータ(第2デュアルタスク)の順序で評価が小さくなる評価項目が2つ以上あるか否かを判定する。複数の評価項目は、例えば、足上げの大きさ、膝の高さ、腕の振りの大きさ、足踏みの速さ、歩隔の狭さ、及び上半身のブレの少なさを含む。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、判定の結果(解析結果)を示すデータを入力する。処理部31は、判定の結果を示すデータに基づいて、被験者2の知能評価スケールが所定の値であるか否かを判定する。例えば、運動タスクとして1分間の足踏みが採用され、第1デュアルタスクの知能タスクとして連続引き算が採用され、第2デュアルタスクの知能タスクとして、「か」から始まる言葉を挙げていく問題が採用された場合、被験者2のMMSEスコアが26又は27であるか否かを判定することができる。
また、処理部31は、被験者2の知能評価スケールが所定の値であるか否かを示す評価結果画像を生成して表示部35に表示させる。このように、処理部31は、被験者2のデュアルタスク遂行能力を示す評価データとして、被験者2の知能評価スケールが所定の値であるか否かを示すデータを生成する。したがって、処理部31は、評価データを生成する評価データ生成部として機能する。
なお、ユーザーが、第3人体骨格モデルデータ、第4人体骨格モデルデータ、及び第5人体骨格モデルデータに基づいて、被験者2の知能評価スケールが所定の値であるか否かを判定してもよい。
以上のように、第3実施形態によれば、被験者が運動タスク(シングルタスク)と、2種類(複数種類の一例)のデュアルタスクとを遂行することにより、知能評価スケールに対応するデュアルタスク遂行能力を評価することができる。よって、MMSEのような問診又は知能検査テストによる認知症の診断と比べて、より簡便に、またより短時間で認知症の程度を評価することができる。
また、第3実施形態によれば、第2実施形態と同様に、神経画像処理技術を利用して認知症のような精神障害を診断する場合と比べて、システムを簡素化することができる。
更に、第3実施形態によれば、第2実施形態と同様に、運動タスク(運動課題)の達成度から、被験者の身体機能(運動機能)を評価することができる。また、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを使用することにより、被験者2が個々に、認知症のような精神障害の程度とともに身体能力を評価することができる。
なお、第3実施形態では、第2実施形態と同様に、デュアルタスク遂行能力評価システム1bが、パーソナルコンピューターのような情報処理装置3と、モーションキャプチャ装置(動作検出部5)とによって構成されたが、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを構成する要素はそれらに限定されない。例えば、評価データ生成部を実現する要素として、スマートフォンやタブレット端末のような情報の処理が可能な機器を使用してもよい。
また、情報処理装置3に含まれる表示部35(データ出力部)に人体骨格モデルの画像が表示されたが、人体骨格モデルの画像は、例えば、情報処理装置3に外部機器として接続されたディスプレイ(データ出力部)に表示されてもよい。
また、ユーザーが、人体骨格モデルデータを解析する形態について説明したが、処理部31が解析部として機能してもよい。即ち、処理部31が、モーションキャプチャデータ又は人体骨格モデルデータを解析して、運動タスク工程(運動タスク)、第1デュアルタスク工程(第1デュアルタスク)、第2デュアルタスク工程(第2デュアルタスク)の順序で評価が小さくなる評価項目が2つ以上あるか否かを判定してもよい。
また、動作検出部5が、モーションキャプチャ技術により、被験者2の各部の動きを補足(検出)する形態について説明したが、デュアルタスク遂行能力評価システム1bの構成はこれに限定されない。例えば、デュアルタスク遂行能力評価システム1bは、動作検出部5として、撮像装置を備え得る。
動作検出部5として、撮像装置が使用される場合、動作検出部5は、撮像装置によって撮像された被験者2の画像データを生成する。この場合、処理部31は、撮像装置によって撮像された被験者2の画像を、例えば表示部35に表示させる。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1bのユーザーは、撮像された被験者2の画像を観察することにより、被験者2の運動状態を解析することができる。
[第4実施形態]
続いて図4、図6、及び図9を参照して第4実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法、デュアルタスク遂行能力評価システム1b、及び、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを用いてデュアルタスク遂行能力を評価する方法について説明する。但し、第1実施形態〜第3実施形態とは異なる事項を説明し、第1実施形態〜第3実施形態と同じ事項についての説明は割愛する。第4実施形態は、被験者が複数種類のデュアルタスクのみを遂行する点で第1実施形態〜第3実施形態と異なる。
図9は、第4実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法のフローを示す図である。図9に示すように、第4実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク工程S204、解析工程S404、及び評価工程S604を含む。
デュアルタスク工程S204は、第1デュアルタスク工程S204aと、第2デュアルタスク工程S204bとを含む。第1デュアルタスク工程S204aでは、被験者が、所定の時間、第1デュアルタスクを遂行する。第1デュアルタスク工程S204aでは、第1デュアルタスクを遂行している被験者の動作が検出される。第2デュアルタスク工程S204bでは、被験者が、所定の時間、第2デュアルタスクを遂行する。第2デュアルタスク工程S204bでは、第2デュアルタスクを遂行している被験者の動作が検出される。
第1デュアルタスク工程S204aと、第2デュアルタスク工程S204bとは、知能タスクの難易度が異なる。具体的には、第2デュアルタスク工程S204bに含まれる知能タスクは、第1デュアルタスク工程S204aに含まれる知能タスクよりも難易度が高い。また、第1デュアルタスク工程S204aと、第2デュアルタスク工程S204bとにおいて、被験者は、同じ運動タスクを遂行する。
解析工程S404では、第1デュアルタスク工程S204aの遂行時における被験者の運動状態と、第2デュアルタスク工程S204bの遂行時における被験者の運動状態とが解析される。具体的には、第4実施形態では、被験者による運動の継続性(被験者による運動が、所定の時間、継続したか否か)が判定される。即ち、第1デュアルタスクの遂行中、もしくは、第2デュアルタスクの遂行中に、被験者が運動タスク(所定の運動)を中断したか否かが判定される。
評価工程S604では、解析工程S404において得られた解析の結果(判定の結果)に基づいて、被験者のデュアルタスク遂行能力が評価される。なお、評価工程S604において、デュアルタスク遂行能力を示す評価データが生成され得る。
評価工程S604において評価されるデュアルタスク遂行能力は、例えばMMSEスコアや長谷川式簡易知能評価スケールのような一般的な知能評価スケールに対応する。第4実施形態では、評価工程S604において、被験者の知能評価スケールが所定の値以下であるか否かが判定される。所定の値は、運動タスク及び知能タスクの難易度に応じて変化し得る。
例えば、運動タスクとして1分間の足踏みが採用され、第1デュアルタスクの知能タスクとして連続引き算が採用され、第2デュアルタスクの知能タスクとして、「か」から始まる言葉を挙げていく問題が採用された場合、被験者のMMSEスコアが24以下であるか否かが判定される。即ち、第1デュアルタスクの遂行中、もしくは、第2デュアルタスクの遂行中に、被験者が運動タスク(所定の運動)を中断した場合、被験者のMMSEスコアは24以下であると判定される。
続いて、図4を参照して、第4実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価システム1bについて説明する。図9に示すデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを利用して実行される。
第4実施形態では、撮像部51は、第1デュアルタスクを遂行する被験者2の動作、及び、第2デュアルタスクを遂行する被験者2の動作をそれぞれ撮像する。また、モーションキャプチャ部52は、第1デュアルタスクを遂行する被験者2の動作を反映したモーションキャプチャデータ、及び、第2デュアルタスクを遂行する被験者2の動作を反映したモーションキャプチャデータをそれぞれ生成する。
処理部31は、動作検出部5の出力(モーションキャプチャデータ)に基づき、第6人体骨格モデルを示すデータ、及び第7人体骨格モデルを示すデータをそれぞれ生成する。第6人体骨格モデルは、第1デュアルタスクを遂行する被験者2の動作にしたがって動く。第7人体骨格モデルは、第2デュアルタスクを遂行する被験者2の動作にしたがって動く。更に、処理部31は、第6人体骨格モデルデータ、及び第7人体骨格モデルデータを合成した合成データを生成する。
続いて、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを用いて被験者2のデュアルタスク遂行能力を評価する方法について説明する。具体的には、被験者2の知能評価スケールを判定する方法について説明する。
被験者2の知能評価スケールを判定する際には、ユーザーは、まず、第1デュアルタスクを所定の時間遂行している被験者2を撮像部51によって撮像する。この結果、第6人体骨格モデルデータが生成される。第6人体骨格モデルデータは、記憶部32に記憶される。
次に、ユーザーは、第2デュアルタスクを所定の時間遂行している被験者2を撮像部51によって撮像する。この結果、第7人体骨格モデルデータが生成される。第7人体骨格モデルデータは、記憶部32に記憶される。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、処理部31に、第6人体骨格モデルデータ、及び第7人体骨格モデルデータを合成した合成データを作成させる。そして、ユーザーは、入力部34を操作して、表示部35に合成データに対応する画像を表示させる。この結果、図6に示すように、表示部35が有する画面35aに、2体の人体骨格モデル61、62の画像が同時に表示される。
第4実施形態において、2体の人体骨格モデル61、62は、第6人体骨格モデルデータ、及び第7人体骨格モデルデータにそれぞれ対応する。これにより、ユーザーは、第1デュアルタスクを遂行している被験者2に対応する第6人体骨格モデルデータ、及び、第2デュアルタスクを遂行している被験者2に対応する第7人体骨格モデルデータを認識することができる。
ユーザーは、第6人体骨格モデルデータ及び第7人体骨格モデルデータに基づいて、第1デュアルタスクの遂行中、もしくは、第2デュアルタスクの遂行中に、被験者2が運動タスク(所定の運動)を中断したか否かを判定する。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、判定の結果(解析結果)を示すデータを入力する。処理部31は、判定の結果を示すデータに基づいて、被験者2の知能評価スケールが所定の値以下であるか否かを判定する。例えば、運動タスクとして1分間の足踏みが採用され、第1デュアルタスクの知能タスクとして連続引き算が採用され、第2デュアルタスクの知能タスクとして、「か」から始まる言葉を挙げていく問題が採用された場合、被験者2のMMSEスコアが24以下であるか否かを判定することができる。
また、処理部31は、被験者2の知能評価スケールが所定の値以下であるか否かを示す評価結果画像を生成して表示部35に表示させる。このように、処理部31は、被験者2のデュアルタスク遂行能力を示す評価データとして、被験者2の知能評価スケールが所定の値以下であるか否かを示すデータを生成する。したがって、処理部31は、評価データを生成する評価データ生成部として機能する。
なお、ユーザーが、第6人体骨格モデルデータ及び第7人体骨格モデルデータに基づいて、被験者2の知能評価スケールが所定の値以下であるか否かを判定してもよい。
以上のように、第4実施形態によれば、被験者が2種類(複数種類の一例)のデュアルタスクのみを遂行することにより、知能評価スケールに対応するデュアルタスク遂行能力を評価することができる。よって、MMSEのような問診又は知能検査テストによる認知症の診断と比べて、より簡便に、またより短時間で認知症の程度を評価することができる。
また、第4実施形態によれば、第2実施形態及び第3実施形態と同様に、神経画像処理技術を利用して認知症のような精神障害を診断する場合と比べて、システムを簡素化することができる。
更に、第4実施形態によれば、第2実施形態及び第3実施形態と同様に、運動タスク(運動課題)の達成度から、被験者の身体機能(運動機能)を評価することができる。また、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを使用することにより、被験者2が個々に、認知症のような精神障害の程度とともに身体能力を評価することができる。
なお、第4実施形態では、2体の人体骨格モデル61、62の画像が同時に表示される形態について説明したが、2体の人体骨格モデル61、62の画像は個別に表示されてもよい。
また、第4実施形態では、第2実施形態及び第3実施形態と同様に、デュアルタスク遂行能力評価システム1bが、パーソナルコンピューターのような情報処理装置3と、モーションキャプチャ装置(動作検出部5)とによって構成されたが、デュアルタスク遂行能力評価システム1bを構成する要素はそれらに限定されない。例えば、評価データ生成部の機能を実現する要素として、スマートフォンやタブレット端末のような情報の処理が可能な機器を使用してもよい。
また、ユーザーが、人体骨格モデルデータを解析する形態について説明したが、処理部31が解析部として機能してもよい。即ち、処理部31が、モーションキャプチャデータ又は人体骨格モデルデータを解析して、被験者による運動の継続性を判定してもよい。
また、デュアルタスク遂行能力評価システム1bが動作検出部5としてモーションキャプチャ装置を備える形態について説明したが、デュアルタスク遂行能力評価システム1bの構成はこれに限定されない。例えば、デュアルタスク遂行能力評価システム1bは、動作検出部5として、例えば、振動検出センサ、撮像装置、又はマット状の感圧スイッチを備え得る。
動作検出部5として、被験者2の振動を検出する振動検出センサが使用される場合、動作検出部5は、被験者2の運動によって振動が発生したタイミングを示す信号を生成する。
処理部31は、動作検出部5の出力に基づいて、例えば、振動が発生したタイミングを時系列に沿って示すデータを生成する。これにより、処理部31は、例えば表示部35に、被験者2の運動によって振動が発生したタイミングを時系列に沿って示す画像を表示させることができる。したがって、デュアルタスク遂行能力評価システム1bのユーザーは、被験者の運動状態を解析することができる。即ち、被験者が運動を中断したか否かを認識することができる。例えば、運動タスクとして足踏みが採用された場合、ユーザーは、振動が発生したタイミングを時系列に沿って示す画像(振動が発生したタイミングを示す信号)を確認して、被験者2が足踏みを中断したか否かを認識することができる。
デュアルタスク遂行能力評価システム1bが振動検出センサを備える場合、処理部31が解析部として機能してもよい。即ち、処理部31が、振動検出センサ(動作検出部5)の出力に基づいて、被験者2の運動状態を解析してもよい。例えば、運動タスクとして足踏みが採用された場合、処理部31は、振動検出センサの出力に基づいて、被験者2が足踏みを中断したか否かを判定し得る。
振動検出センサには、例えばスマートフォンに実装されているセンサを利用することができる。したがって、被験者2がスマートフォンを携帯してデュアルタスクを遂行することにより、被験者2による運動の継続性を示すデータを得ることができる。
また、動作検出部5として、撮像装置が使用される場合、動作検出部5は、撮像装置によって撮像された被験者2の画像データを生成する。この場合、処理部31は、撮像装置によって撮像された被験者2の画像を、例えば表示部35に表示させる。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1bのユーザーは、撮像された被験者2の画像を観察することにより、被験者2による運動の継続性を解析することができる。
動作検出部5としてマット状の感圧スイッチが使用される場合、動作検出部5は、被験者2がマットを踏むタイミングを示す信号を生成する。処理部31は、動作検出部5の出力に基づいて、例えば、被験者2がマットを踏むタイミングを時系列に沿って示すデータを生成する。これにより、処理部31は、例えば表示部35に、被験者2がマットを踏むタイミングを時系列に沿って示す画像を表示させることができる。したがって、デュアルタスク遂行能力評価システム1bのユーザーは、被験者2による運動の継続性を解析することができる。
デュアルタスク遂行能力評価システム1bがマット状の感圧スイッチを備える場合、処理部31が解析部として機能してもよい。即ち、処理部31が、マット状の感圧スイッチ(動作検出部5)の出力に基づいて、被験者2の運動状態を解析してもよい。例えば、運動タスクとして足踏みが採用された場合、処理部31は、マット状の感圧スイッチの出力に基づいて、被験者2が足踏みを中断したか否かを判定し得る。
[第5実施形態]
続いて図10、図11、及び図12を参照して第5実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法、デュアルタスク遂行能力評価システム1c、及び、デュアルタスク遂行能力評価システム1cを用いてデュアルタスク遂行能力を評価する方法について説明する。但し、第1実施形態〜第4実施形態とは異なる事項を説明し、第1実施形態〜第4実施形態と同じ事項についての説明は割愛する。第5実施形態は、被験者の動作の継続性、及び、被験者による回答の継続性に基づいてデュアルタスク遂行能力を評価する点で、第1実施形態〜第4実施形態と異なる。
図10は、第5実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法のフローを示す図である。図10に示すように、第5実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク工程S205、解析工程S405、及び評価工程S605を含む。
デュアルタスク工程S205では、被験者が、所定の時間、デュアルタスクを遂行する。デュアルタスク工程S205では更に、デュアルタスクを遂行している被験者による動作及び回答が検出される。
解析工程S405では、デュアルタスクを遂行している被験者による動作及び回答の継続性が解析される。具体的には、デュアルタスク工程S205において、被験者が運動タスク(所定の運動)を中断し、且つ、所定の時間の経過前に知能タスク(回答)を終了したか否かが判定される。
評価工程S605では、解析工程S405において得られた解析の結果(判定の結果)に基づいて、被験者のデュアルタスク遂行能力が評価される。なお、評価工程S605において、デュアルタスク遂行能力を示す評価データが生成され得る。
評価工程S605において評価されるデュアルタスク遂行能力は、例えばMMSEスコアや長谷川式簡易知能評価スケールのような一般的な知能評価スケールに対応する。第5実施形態では、デュアルタスク遂行能力として、被験者の知能評価スケールが所定の値以下であるか否かが判定される。所定の値は、運動タスク及び知能タスクの難易度に応じて変化し得る。
例えば、運動タスクとして1分間の直線歩行が採用され、知能タスクとして、「か」から始まる言葉を挙げていく問題が採用された場合、被験者のMMSEスコアが23以下であるか否かが判定される。即ち、デュアルタスクの遂行中に、歩行動作(所定の動作)が中断し、且つ、1分間(所定の時間)が経過する前に、知能タスクで課された問題に対する回答を被験者が終了した場合、被験者のMMSEスコアは23以下であると判定される。
続いて、図11を参照して、第5実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価システム1cについて説明する。図11は、デュアルタスク遂行能力評価システム1cの構成を示すブロック図である。図10に示すデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク遂行能力評価システム1cを利用して実行される。
図11に示すように、デュアルタスク遂行能力評価システム1cは、情報処理装置3と、回答検出部4と、動作検出部5とを備える。情報処理装置3は、例えばパーソナルコンピューターによって構成され得る。あるいは、情報処理装置3は、スマートフォン、又はタブレット端末のような情報の処理が可能な機器によって構成され得る。第5実施形態において、回答検出部4はマイクロフォンを含む。また、動作検出部5は、モーションキャプチャ装置を含む。なお、回答検出部4及び動作検出部5のうちの少なくとも一方が、情報処理装置3に組み込まれてもよい。
第5実施形態において、情報処理装置3に含まれる処理部31は、モーションキャプチャデータに基づき、被験者2による運動の継続性を示すデータを生成する。具体的には、第5実施形態では、処理部31は、被験者2の足が地面に着くタイミングを示すデータを生成する。また、処理部31は、被験者2による回答の継続性を示すデータを生成する。具体的には、第5実施形態では、処理部31は、被験者2による回答のタイミングを示すデータを生成する。更に、処理部31は、被験者2による運動の継続性を示すデータに対応する画像、及び、被験者2による回答の継続性を示すデータに対応する画像を生成する。
図12は、表示部35に表示される画像を示す図である。詳しくは、図12は、被験者2の足が地面に着くタイミングと、被験者2による回答のタイミングとを示す画像の一例を示している。図12において、横軸は時間を示す。また、図12において、高さの高い細線が、被験者2の足が地面に着くタイミングを示し、高さの低い太線が、被験者2による回答のタイミングを示す。
続いて、デュアルタスク遂行能力評価システム1cを用いて被験者2のデュアルタスク遂行能力を評価する方法について説明する。具体的には、運動タスクとして1分間の直線歩行を採用し、知能タスクとして、「か」から始まる言葉を挙げていく問題を採用して、被験者2のMMSEスコアを判定する場合を例に、知能評価スケールを判定する方法を説明する。
被験者2のMMSEスコア(知能評価スケール)を判定する際には、ユーザーは、まず、デュアルタスクを1分間(所定の時間)遂行している被験者2が発声した声に対応する音声データを、記憶部32に記憶(記録)させる。更に、この間、被験者2を撮像部51によって撮像する。これにより、デュアルタスクを遂行している被験者2の足が地面に着くタイミングを示すデータが生成される。このデータは、記憶部32に記憶される。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、記憶部32に記憶された音声データに対応する音声を、音声出力部33から出力させる。換言すると、デュアルタスクの遂行中に被験者2が発声した声を再生する。更に、ユーザーは、表示部35に、再生開始からの経過時間を表示させる。ユーザーは、再生された音声と、表示された経過時間とに基づいて、被験者2による回答のタイミング(再生開始からの経過時間)を計測する。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、回答のタイミングを示すデータを入力する。この結果、処理部31により、被験者2による回答のタイミングを示すデータが生成される。その後、ユーザーは、入力部34を操作して、被験者2の足が地面に着くタイミングを示す画像に、被験者2による回答のタイミングを示す画像が追加された画像を、処理部31に作成させる。この結果、図12に示すように、表示部35が有する画面35aに、被験者2の足が地面に着くタイミングと、被験者2による回答のタイミングとを示す画像が表示される。
このように、処理部31は、動作検出部5によって検出された被験者2の動作に基づいて、被験者2の足が地面に着くタイミングを示すデータを生成する。更に、処理部31は、回答検出部4によって検出された被験者2による回答に基づいて、被験者2による回答のタイミングを示すデータを生成する。
ユーザーは、被験者2の足が地面に着くタイミングと、被験者2による回答のタイミングとを示す画像(被験者2の足が地面に着くタイミングを示すデータ、及び、被験者2による回答のタイミングを示すデータ)に基づき、デュアルタスクの遂行中に、歩行動作(所定の動作)が中断し、且つ、1分間(所定の時間)が経過する前に被験者による回答が終了したか否かを判定する。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、判定の結果(解析結果)を示すデータを入力する。処理部31は、判定の結果を示すデータに基づいて、被験者2のMMSEスコアが23以下であるか否かを判定する。
また、処理部31は、被験者2のMMSEスコアが23以下であるか否かを示す評価結果画像を生成して表示部35に表示させる。このように、処理部31は、被験者2のデュアルタスク遂行能力を示す評価データとして、被験者2の知能評価スケールが所定の値以下であるか否かを示すデータを生成する。したがって、処理部31は、評価データを生成する評価データ生成部として機能する。
なお、ユーザーが、被験者2の足が地面に着くタイミングと、被験者2による回答のタイミングとに基づき、被験者2の知能評価スケールが所定の値以下であるか否かを判定してもよい。
以上のように、第5実施形態によれば、被験者がデュアルタスクのみを遂行することにより、知能評価スケールに対応するデュアルタスク遂行能力を評価することができる。よって、MMSEのような問診又は知能検査テストによる認知症の診断と比べて、より簡便に、またより短時間で認知症の程度を評価することができる。
また、第5実施形態によれば、第1実施形態〜第4実施形態と同様に、神経画像処理技術を利用して認知症のような精神障害を診断する場合と比べて、システムを簡素化することができる。
更に、第5実施形態によれば、第2実施形態〜第4実施形態と同様に、運動タスク(運動課題)の達成度から、被験者の身体機能(運動機能)を評価することができる。また、デュアルタスク遂行能力評価システム1cを使用することにより、被験者2が個々に、認知症のような精神障害の程度とともに身体能力を評価することができる。
なお、第5実施形態では、デュアルタスク遂行能力評価システム1cが、パーソナルコンピューターのような情報処理装置3と、マイクロフォン(回答検出部4)と、モーションキャプチャ装置(動作検出部5)とによって構成されたが、デュアルタスク遂行能力評価システム1cを構成する要素はそれらに限定されない。例えば、音声データを記録する機能を実現する要素として、ICレコーダーやスマートフォンのような機器を使用してもよい。更に、評価データ生成部の機能を実現する要素として、例えば、スマートフォンやタブレット端末のような情報の処理が可能な機器を使用してもよい。
また、情報処理装置3に含まれる表示部35(データ出力部)に、被験者2による運動の継続性を示す画像(被験者2の足が地面に着くタイミングを示す画像)と、被験者2による回答の継続性を示す画像(被験者2による回答のタイミングを示す画像)とを合成した合成画像が表示されたが、この合成画像は、例えば、情報処理装置3に外部機器として接続されたディスプレイ(データ出力部)に表示されてもよい。また例えば、情報処理装置3に外部機器として接続されたプリンター(データ出力部)によって、被験者2による運動の継続性を示す画像と、被験者2による回答の継続性を示す画像とを合成した合成画像が記録媒体に印字されてもよい。
また、被験者2による運動の継続性を示す画像と、被験者2による回答の継続性を示す画像とを合成した合成画像を表示又は印字する形態について説明したが、被験者2による運動の継続性を示す画像、及び、被験者2による回答の継続性を示す画像は、個別に表示又は印字されてもよい。
また、ユーザーが、再生された音声を聞いて、被験者2による回答のタイミングを計測する形態について説明したが、例えば処理部31が音声認識処理によって回答のタイミングを計測してもよい。あるいは、処理部31が、音量を時系列に沿って示すデータを生成して、そのデータに対応する画像を表示部35に表示させてもよい。この場合、ユーザーは、表示部35に表示された画像(ピーク値)に基づいて、回答のタイミングを認識することができる。更に、この場合、ユーザーは、表示部35に表示された画像(ピーク値)に基づいて、回答の継続性(被験者2による回答が、所定の時間、継続したか否か)を評価してもよい。
また、ユーザーが、被験者2による回答のタイミングを示す画像を見て、回答の継続性を評価する形態について説明したが、被験者2による回答のタイミングを示す画像を生成することなく、再生された音声のみから、回答の継続性が判定されてもよい。
また、ユーザーが、被験者2の足が地面に着くタイミングを示す画像を見て、運動の継続性を評価する形態について説明したが、処理部31が、モーションキャプチャデータに基づいて運動の継続性(被験者2による動作が、所定の時間、継続したか否か)を判定してもよい。即ち、処理部31が、解析部として機能してもよい。
また、デュアルタスク遂行能力評価システム1cが動作検出部5としてモーションキャプチャ装置を備える形態について説明したが、第4実施形態で説明したように、デュアルタスク遂行能力評価システム1cは、被験者2による運動の継続性を判定するために、動作検出部5として、例えば、振動検出センサ、撮像装置、又はマット状の感圧スイッチを備え得る。
例えば、動作検出部5として、振動検出センサが使用される場合、動作検出部5は、被験者2の運動によって振動が発生したタイミングを示す信号を生成する。また、動作検出部5として、マット状の感圧スイッチが使用される場合、動作検出部5は、被験者2がマットを踏むタイミングを示す信号を生成する。これらの信号はいずれも、被験者2の足が着地したタイミングを示す。デュアルタスク遂行能力評価システム1cが振動検出センサ、又はマット状の感圧スイッチを備える場合、処理部31は解析部として機能して、被験者2による運動の継続性を判定し得る。
また、被験者2による運動の継続性を示すデータが、被験者2の足が地面に着くタイミングを示すデータである形態について説明したが、被験者2による運動の継続性を示すデータはこれに限定されない。例えば、処理部31が、被験者2による運動の継続性を示すデータとして、人体骨格モデルデータを生成してもよい。人体骨格モデルデータは、モーションキャプチャデータに基づいて生成し得る。この場合、処理部31が、人体骨格モデルデータに基づいて、被験者2による運動の継続性を判定してもよい。即ち、処理部31が解析部として機能してもよい。
また、第5実施形態では、デュアルタスク遂行能力評価システム1cが、回答検出部4としてマイクロフォンを備える形態について説明したが、デュアルタスク遂行能力評価システム1cの構成はこれに限定されない。知能タスクが、動作による回答を課すタスクである場合、デュアルタスク遂行能力評価システム1cは、動作検出部5を用いて被験者2による回答を検出し得る。
具体的には、処理部31は、被験者2による運動及び回答の継続性を示すデータとして、例えば、人体骨格モデルデータを生成し得る。したがって、デュアルタスク遂行能力評価システム1cは、人体骨格モデルの画像を例えば表示部35に表示させることができる。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1cのユーザーは、被験者2の動作(人体骨格モデルデータ)を確認して、被験者2による運動及び回答の継続性を評価することができる。
被験者2による運動及び回答の継続性を示すデータとして、人体骨格モデルデータが生成される場合、処理部31が解析部として機能して、人体骨格モデルデータを解析してもよい。即ち、処理部31が、人体骨格モデルデータに基づいて、被験者2による運動及び回答の継続性を判定してもよい。
また、知能タスクが、動作による回答を課すタスクである場合、回答検出部4及び動作検出部5として、例えばマイクロフォン付きの撮像装置を使用し得る。
また、知能タスクが、検査者の指示に応じて視線の方向を変えるタスクである場合、デュアルタスク遂行能力評価システム1cは、回答検出部として、被験者2の視線の方向を検出する視線方向検出部を備える。この場合、処理部31は、被験者2による回答の継続性を示すデータとして、視線方向データを生成する。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1cは、被験者2の視線の方向を示す画像を例えば表示部35に表示させることができる。したがって、デュアルタスク遂行能力評価システム1cのユーザーは、被験者2の視線の方向(視線方向データ)を確認して、被験者2による回答の継続性を評価することができる。
デュアルタスク遂行能力評価システム1cが視線方向検出部を備える場合、処理部31が解析部として機能して、視線方向データを解析してもよい。即ち、処理部31が、視線方向データに基づいて、被験者2による回答の継続性を判定してもよい。
また、知能タスクが、検査者の指示に応じて1つのスイッチを押すタスクである場合、デュアルタスク遂行能力評価システム1cは、回答検出部4として、1つのスイッチを備える。この場合、回答検出部4は、被験者2によってスイッチが押されたか否かを示す信号を生成する。この信号は、被験者2による回答の継続性を示す。
処理部31は、回答検出部4の出力に基づき、例えば、被験者2がスイッチを押したタイミングを時系列に沿って示すデータを生成する。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1cは、被験者2がスイッチを押したタイミングを時系列に沿って示す画像を表示部35に表示させることができる。したがって、デュアルタスク遂行能力評価システム1cのユーザーは、被験者2がスイッチを押したタイミング(スイッチが押されたか否かを示す信号)を確認して、被験者2による回答の継続性を評価することができる。
デュアルタスク遂行能力評価システム1aが1つのスイッチを備える場合、処理部31が解析部として機能してもよい。即ち、処理部31は、被験者2によってスイッチが押されたか否かを示す信号を解析して、被験者2による回答の継続性を判定してもよい。
また、知能タスクが、検査者の指示に応じて2つのスイッチを押すタスクである場合、デュアルタスク遂行能力評価システム1cは、回答検出部4として、2つのスイッチを備える。この場合、回答検出部4は、被験者2によってどちらのスイッチが押されたかを示す信号を生成する。この信号は、被験者2による回答の継続性を示す。
処理部31は、回答検出部4の出力に基づき、例えば、被験者2がどちらのスイッチを押したかを時系列に沿って示すデータを生成する。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1cは、被験者2がどちらのスイッチを押したかを時系列に沿って示す画像を表示部35に表示させることができる。したがって、デュアルタスク遂行能力評価システム1cのユーザーは、被験者2がどちらのスイッチを押したか(どちらのスイッチが押されたかを示す信号)を確認して、被験者2による回答の継続性を評価することができる。
デュアルタスク遂行能力評価システム1aが2つのスイッチを備える場合、処理部31が解析部として機能してもよい。即ち、処理部31は、被験者2がどちらのスイッチを押したかを示す信号を解析して、被験者2による回答の継続性を判定してもよい。
[第6実施形態]
続いて図2、及び図13を参照して第6実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法、デュアルタスク遂行能力評価システム1a、及び、デュアルタスク遂行能力評価システム1aを用いてデュアルタスク遂行能力を評価する方法について説明する。但し、第1実施形態〜第5実施形態とは異なる事項を説明し、第1実施形態〜第5実施形態と同じ事項についての説明は割愛する。第6実施形態は、デュアルタスクを遂行する被験者による回答の時間間隔のバラツキに基づいてデュアルタスク遂行能力を評価する点で、第1実施形態〜第5実施形態と異なる。
図13は、第6実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法のフローを示す図である。図13に示すように、第6実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク工程S206、解析工程S406、及び評価工程S606を含む。
デュアルタスク工程S206では、被験者が、所定の時間、デュアルタスクを遂行する。デュアルタスク工程S206では更に、デュアルタスクを遂行している被験者による回答が検出される。
解析工程S406では、知能タスクに対する被験者の回答が解析される。具体的には、第6実施形態では、被験者による回答の時間間隔のバラツキが解析される。例えば、回答の時間間隔のバラツキとして、回答の時間間隔の標準偏差が算出され得る。
評価工程S606では、解析工程S406において得られた解析の結果に基づいて、被験者のデュアルタスク遂行能力が評価される。具体的には、第6実施形態では、解析工程S406において得られた回答の時間間隔のバラツキに基づいて、被験者のデュアルタスク遂行能力が評価される。
評価工程S606において評価されるデュアルタスク遂行能力は、例えばMMSEスコアや長谷川式簡易知能評価スケールのような一般的な知能評価スケールに対応する。第6実施形態では、被験者の知能評価スケールが所定の値以下であるか否かが判定される。所定の値は、運動タスク及び知能タスクの難易度に応じて変化し得る。
例えば、運動タスクとして1分間の直線歩行が採用され、知能タスクとして、100から1ずつ引いていく連続引き算が採用された場合、被験者のMMSEスコアが23以下であるか否かが判定される。具体的には、被験者による回答の時間間隔の標準偏差の値が所定の値(例えば、1秒)よりも大きい場合、被験者のMMSEスコアは23以下であると判定される。
続いて、図2を参照して、第6実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価システム1aについて説明する。図13に示すデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク遂行能力評価システム1aを利用して実行される。
第6実施形態では、回答検出部4はマイクロフォンである。また、処理部31は、被験者による回答のタイミングを示すデータに基づいて、回答の時間間隔の標準偏差を算出する。即ち、処理部31は、被験者2による回答を解析する解析部として機能する。また、処理部31は、回答の時間間隔の標準偏差の値を示す画像を生成する。
続いて、デュアルタスク遂行能力評価システム1aを用いて被験者2のデュアルタスク遂行能力を評価する方法について説明する。具体的には、被験者2の知能評価スケールを判定する方法について説明する。
被験者2の知能評価スケールを判定する際には、ユーザーは、まず、デュアルタスクを所定の時間遂行している被験者2が発声した声に対応する音声データを、記憶部32に記憶(記録)させる。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、記憶部32に記憶された音声データに対応する音声を、音声出力部33から出力させる。つまり、デュアルタスクの遂行中に被験者2が発声した声を再生する。更に、ユーザーは、表示部35に、再生開始からの経過時間を表示させる。ユーザーは、再生された音声と、表示された経過時間とに基づいて、被験者2による回答のタイミング(再生開始からの経過時間)を計測する。
次に、ユーザーは、入力部34を操作して、回答のタイミングを示すデータを入力する。これにより、処理部31が、回答の時間間隔の標準偏差を算出して、回答の時間間隔の標準偏差の値を示すデータを生成する。そして、処理部31は、回答の時間間隔の標準偏差の値を示す画像を表示部35に表示させる。
ユーザーは、表示部35(画面35a)に表示された回答の時間間隔の標準偏差の値に基づいて、被験者2の知能評価スケールを判定する。例えば、運動タスクとして1分間の直線歩行が採用され、知能タスクとして、100から1ずつ引いていく連続引き算が採用された場合、被験者2のMMSEスコアが23以下であるか否かを判定することができる。
以上のように、第6実施形態によれば、被験者がデュアルタスクを遂行することにより、知能評価スケールに対応するデュアルタスク遂行能力を評価することができる。よって、MMSEのような問診又は知能検査テストによる認知症の診断と比べて、より簡便に、またより短時間で認知症の程度を評価することができる。
また、第6実施形態によれば、第1実施形態と同様に、神経画像処理技術を利用して認知症のような精神障害を診断する場合と比べて、システムを簡素化することができる。
また、第1実施形態と同様に、デュアルタスク遂行能力評価システム1aを使用することにより、被験者が個々に認知症のような精神障害の診断を行うことができる。
なお、第1実施形態と同様に、音声データを記録する機能を実現する要素として、例えば、ICレコーダーやスマートフォンのような機器を使用してもよい。
また、情報処理装置3に含まれる表示部35(データ出力部)に、標準偏差の値を示す画像が表示されたが、この画像は、例えば、情報処理装置3に外部機器として接続されたディスプレイ(データ出力部)に表示されてもよい。また例えば、情報処理装置3に外部機器として接続されたプリンター(データ出力部)によって、標準偏差の値を示す画像が記録媒体に印字されてもよい。
また、ユーザーが、再生された音声を聞いて、被験者2による回答のタイミングを計測する形態について説明したが、例えば処理部31が音声認識処理によって回答のタイミングを計測してもよい。あるいは、処理部31が、音量を時系列に沿って示すデータを生成して、そのデータに対応する画像を表示部35に表示させてもよい。この場合、ユーザーは、表示部35に表示された画像(ピーク値)に基づいて、回答のタイミングを認識することができる。
また、ユーザーが、標準偏差の値を見て、被験者2のMMSEスコアのような知能評価スケールを判定する形態について説明したが、処理部31が、標準偏差の値と所定の値(例えば、1秒)とを比較して、被験者2の知能評価スケールを判定してもよい。即ち、処理部31が、被験者2のデュアルタスク遂行能力を示す評価データとして、被験者2の知能評価スケールが所定の値以下であるか否かを示すデータを生成してもよい。つまり、処理部31は、評価データを生成する評価データ生成部として機能し得る。この場合、処理部31は、被験者2の知能評価スケールを示す評価結果画像を生成して、表示部35に表示させる。
また、第6実施形態では、知能タスクは、発声による回答を課すタスクであったが、第1実施形態で説明したように、知能タスクは、動作による回答を課すタスクであり得る。あるいは、知能タスクは、検査者の指示に応じて視線の方向を変えるタスク、又は、検査者の指示に応じてスイッチを押すタスクであり得る。
また、第6実施形態では、デュアルタスク遂行能力評価システム1aが回答検出部4としてマイクロフォンを備える形態について説明したが、デュアルタスク遂行能力評価システム1aの構成はこれに限定されない。
例えば、知能タスクが、動作による回答を課すタスクである場合、デュアルタスク遂行能力評価システム1aは、回答検出部4として、被験者2の動作を検出する動作検出部を備える。具体的には、動作検出部は、例えば撮像装置又はモーションキャプチャ装置であり得る。
回答検出部4(動作検出部)が撮像装置である場合、第1実施形態で説明したように、デュアルタスク遂行能力評価システム1aは、撮像装置によって撮像された被験者2の画像を例えば表示部35に表示させる。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1aのユーザーは、被験者2の動作を確認して、被験者2による回答のタイミングを計測することができる。
また、回答検出部4(動作検出部)がモーションキャプチャ装置である場合、第1実施形態で説明したように、デュアルタスク遂行能力評価システム1aは、例えば、人体骨格モデルの画像を表示部35に表示させる。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1aのユーザーは、被験者2の動作(人体骨格モデルデータ)を確認して、被験者2による回答のタイミングを計測することができる。又は、処理部31が、モーションキャプチャデータ又は人体骨格モデルデータに基づいて、被験者2による回答のタイミングを測定してもよい。
知能タスクが、検査者の指示に応じて視線の方向を変えるタスクである場合、デュアルタスク遂行能力評価システム1aは、回答検出部として、被験者2の視線の方向を検出する視線方向検出部を備える。この場合、第1実施形態で説明したように、デュアルタスク遂行能力評価システム1aは、視線方向データを生成して、被験者2の視線の方向を示す画像を表示部35に表示させる。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1aのユーザーは、被験者2の視線の方向(視線方向データ)を確認して、被験者2による回答のタイミングを計測することができる。又は、処理部31が、視線方向データに基づいて、被験者2による回答のタイミングを測定してもよい。
知能タスクが、検査者の指示に応じて1つ又は2つのスイッチを押すタスクである場合、デュアルタスク遂行能力評価システム1aは、回答検出部4として、1つ又は2つのスイッチを備える。この場合、回答検出部4は、被験者2によってスイッチが押されたか否かを示す信号を生成する。処理部31は、回答検出部4の出力に基づき、被験者2がスイッチを押したタイミングを示すデータを生成する。そして処理部31は、被験者2がスイッチを押したタイミングを示す画像を表示部35に表示させる。これにより、デュアルタスク遂行能力評価システム1aのユーザーは、被験者2がスイッチを押したタイミング(スイッチが押されたか否かを示す信号)を確認して、被験者2による回答のタイミングを測定することができる。又は、処理部31が、被験者2によってスイッチが押されたか否かを示す信号を解析して、被験者2による回答のタイミングを測定してもよい。
[第7実施形態]
続いて図14〜図16を参照して第7実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価システム1dについて説明する。但し、第1実施形態〜第6実施形態とは異なる事項を説明し、第1実施形態〜第6実施形態と同じ事項についての説明は割愛する。第7実施形態は、被験者2が遂行すべきタスクを提示する第1タスク提示部7aを備える点で、第1実施形態〜第6実施形態と異なる。
図14は、デュアルタスク遂行能力評価システム1dの構成を示す図である。図14に示すように、デュアルタスク遂行能力評価システム1dは、第1タスク提示部7aとシステム制御部8とを備える。第1タスク提示部7aは、被験者2が遂行すべきタスクを提示する。第7実施形態において、第1タスク提示部7aは、液晶ディスプレイのような表示部である。第1タスク提示部7aは、システム制御部8によって制御されて、被験者2が遂行すべきタスクを表示(提示)する。システム制御部8は、例えばパーソナルコンピューターであり得る。
また、デュアルタスク遂行能力評価システム1dは、第1回答検出部4a、第2回答検出部4b、及び第3回答検出部4cを備える。第1回答検出部4a〜第3回答検出部4cは、知能タスクに対する被験者2の回答を検出する。なお、デュアルタスク遂行能力評価システム1dは、第1回答検出部4a〜第3回答検出部4cのうちの少なくとも1つを含み得る。
第1回答検出部4aは、第7実施形態では指向性マイクである。第1回答検出部4a(指向性マイク)は、知能タスクを遂行する被験者2が発声した声(回答)を電気信号に変換して、システム制御部8へ送信する。
第2回答検出部4bは、第7実施形態では視線方向検出装置である。例えば、第2回答検出部4bは、近赤外LED、及び撮像装置を含む。近赤外LEDは、被験者2の目に近赤外線を照射する。撮像装置は、被験者2の目を撮像する。システム制御部8は、撮像装置によって撮像された画像もしくはデータを解析して、被験者2の瞳孔の位置(視線の方向)を示すデータを生成する。
第3回答検出部4cは、第7実施形態では回答用スイッチである。被験者2は、両方の手にそれぞれ第3回答検出部4cを持ってタスクを遂行する。システム制御部8は、例えば、被験者2がどちらのスイッチを押したかによって、知能タスクに対する被験者2の回答を解析する。
デュアルタスク遂行能力評価システム1dは更に、第1動作検出部5a、及び第2動作検出部5bを備える。第1動作検出部5a、及び第2動作検出部5bは、被験者2の動作を検出する。第7実施形態において第1動作検出部5aはモーションキャプチャ装置であり、第2動作検出部5bは、マット状の感圧スイッチである。なお、デュアルタスク遂行能力評価システム1dは、第1動作検出部5a及び第2動作検出部5bのうちの少なくとも1つを含み得る。
第1動作検出部5a(モーションキャプチャ装置)は、被験者2の各部の動作を反映したモーションキャプチャデータを生成する。システム制御部8は、モーションキャプチャデータに基づいて、被験者2の運動状態を示すデータを生成する。なお、デュアルタスク遂行能力評価システム1d(システム制御部8)は、モーションキャプチャデータに基づいて、知能タスクに対する被験者2の回答に関するデータを生成してもよい。
第2動作検出部5b(感圧スイッチ)は、被験者2の足の動きに応じた信号を出力する。システム制御部8は、第2動作検出部5bの出力に基づいて、被験者2の運動状態を示すデータを生成する。なお、デュアルタスク遂行能力評価システム1d(システム制御部8)は、第2動作検出部5bの出力に基づいて、知能タスクに対する被験者2の回答に関するデータを生成してもよい。
デュアルタスク遂行能力評価システム1dは更に、第2タスク提示部7bを備え得る。第7実施形態において、第2タスク提示部7bはスピーカーである。デュアルタスク遂行能力評価システム1dは、第2タスク提示部7bを用いて、被験者2が遂行すべきタスクを知らせる音声を出力することができる。
図15は、デュアルタスク遂行能力評価システム1dが被験者2に提示するタスクの一例を示す図である。具体的には、図15は、運動タスク(シングルタスク)に続けてデュアルタスクを被験者2に課す場合に第1タスク提示部7a(表示部)が提示(表示)する知能タスクの一例を示している。図15に示す例では、知能タスクとして計算問題が提示されている。
図15に示すように、まず、第1タスク提示部7aは、被験者2が遂行すべき運動タスク(足踏み)を提示する。即ち、第1タスク提示部7a(表示部)に、被験者2が遂行すべき運動タスクが表示される。そして、所定の時間(シングルタスク遂行期間)が経過した後、第1タスク提示部7aは、被験者2が回答すべき問題(計算問題)を提示する。即ち、第1タスク提示部7a(表示部)に、被験者2が遂行すべき知能タスク(問題)が表示される。第1タスク提示部7aは、所定のタイミングで問題の提示を終了する。即ち、第1タスク提示部7a(表示部)から問題が消える。
その後、第1タスク提示部7aは、複数(図15では、2つ)の回答の候補を提示する。即ち、第1タスク提示部7a(表示部)に、複数の回答の候補が表示される。被験者2は、両方の手にそれぞれ持っている第3回答検出部4c(回答用スイッチ)を用いて、回答を選択する。あるいは、被験者2は、視線によって回答を選択する。
被験者2が回答を選択すると、次の問題として、今回回答した問題とは異なる問題が第1タスク提示部7aによって提示される。以降、所定のデュアルタスク遂行時間が経過するまで、被験者2が回答すべき問題の提示が繰り返される。
システム制御部8は、第3回答検出部4c又は第2回答検出部4bの出力に基づいて、例えば、全回答数、正答数、正答率、平均回答時間間隔、及び回答時間間隔の標準偏差のうちの少なくとも1つを解析(算出)する。
一方、第1動作検出部5a(モーションキャプチャ装置)は、運動タスク(シングルタスク)及びデュアルタスクを遂行している被験者2の各部の動作を反映したモーションキャプチャデータを生成する。又は、システム制御部8は、モーションキャプチャデータに基づいて、人体骨格モデルデータを生成する。
また、第2動作検出部5b(感圧スイッチ)は、運動タスク(シングルタスク)及びデュアルタスクを遂行している被験者2による足踏みのタイミングを示す信号を生成する。システム制御部8は、第2動作検出部5bの出力に基づいて、被験者2の動作を解析する。
例えば、システム制御部8は、第1動作検出部5aの出力、又は第2動作検出部5bの出力に基づいて、第2実施形態で説明したように、被験者2による足踏みの周期(足踏みの速さ)を示すデータを生成する。
以上説明した第7実施形態によれば、被験者2による回答の正誤をリアルタイムで判定することができる。したがって、被験者2に課す知能タスクの難易度をリアルタイムで調整することが可能となる。例えば、知能タスクの難易度は、回答候補の選択肢の数の増減によって調整することが可能である。あるいは、計算問題自体の難易度が調整されてもよい。
なお、第1タスク提示部7aが提示する知能タスクは計算問題に限定されるものではない。例えば、数字を連続して提示して、最後に提示した数字からn個前の数字を回答させる問題であってもよい。また、図16に示すように、知能タスクは位置記憶問題であってもよい。
図16は、デュアルタスク遂行能力評価システム1dが被験者2に提示するタスクの他の例を示す図である。具体的には、図16は、運動タスク(シングルタスク)に続けてデュアルタスクを被験者2に課す場合に第1タスク提示部7a(表示部)が提示(表示)する知能タスクの他の例を示している。
図16に示すように、まず、第1タスク提示部7aは、被験者2が遂行すべき運動タスク(足踏み)を提示する。そして、所定の時間(シングルタスク遂行期間)が経過した後、第1タスク提示部7aは、被験者2が回答すべき問題(位置記憶問題)を提示する。第1タスク提示部7aは、所定のタイミングで問題の提示を終了する。
その後、第1タスク提示部7aは、複数の回答の候補(図16では、「はい」及び「いいえ」の2つの候補)を提示する。被験者2は、両方の手にそれぞれ持っている第3回答検出部4c(回答用スイッチ)を用いて、回答を選択する。あるいは、被験者2は、視線によって回答を選択する。
被験者2が回答を選択すると、次の問題として、今回回答した位置とは異なる位置に図形を配置した問題が第1タスク提示部7aによって提示される。以降、所定のデュアルタスク遂行時間が経過するまで、被験者2が回答すべき問題の提示が繰り返される。
図16を参照して説明した位置記憶問題の場合、知能タスクの難易度は、例えば、図形を配置可能な位置数の増減によって調整することができる。即ち、図16には、図形を配置可能な位置が「4か所」である場合を例示している。図16に示す知能タスクよりも難易度の高い知能タスクを提示する場合には、図形を配置可能な位置を5か所以上にすればよい。
あるいは、知能タスクの難易度は、図形の数の増減によって調整することができる。即ち、図16には、図形の数が「1つ」である場合を例示している。つまり、図16に示す知能タスクでは、一度に記憶すべき図形の位置の数は「1つ」である。よって、図16に示す知能タスクよりも難易度の高い知能タスクを提示する場合には、図形の数(一度に記憶すべき図形の位置の数)を2つ以上にする。また、図形の数の増加に合せて、図形を配置可能な位置の数も増加させる。
また、デュアルタスク遂行能力評価システム1dが、第1回答検出部4a、第2回答検出部4b、第3回答検出部4c、第1動作検出部5a、第2動作検出部5b、第1タスク提示部7a、第2タスク提示部7b、及びシステム制御部8を備える形態について説明したが、デュアルタスク遂行能力評価システム1dの構成はこれに限定されない。例えば、デュアルタスク遂行能力評価システム1dは、第1回答検出部4a、第2回答検出部4b、第3回答検出部4c、第1動作検出部5a、及び第2動作検出部5bのうちの1つを備える構成であってもよい。また、デュアルタスク遂行能力評価システム1dは、第1タスク提示部7aは、及び第2タスク提示部7bのうちの1つを備える構成であってもよい。
また、デュアルタスク遂行能力評価システム1dは、ノート型パーソナルコンピューターや、スマートフォン、タブレット端末のような情報の処理が可能な1台の機器によって構成され得る。例えば、デュアルタスク遂行能力評価システム1dをスマートフォンによって構成する場合、デュアルタスク遂行能力評価システム1dは、第1タスク提示部7aと、第3回答検出部4cと、システム制御部8とを含む。具体的には、スマートフォンの表示部が、第1タスク提示部7aとして機能する。また、スマートフォンのタッチパネルセンサーが、第3回答検出部4cとして機能する。即ち、タッチパネルセンサーが、回答用スイッチとして機能する。また、スマートフォンの処理部が、システム制御部8として機能する。
[第8実施形態]
続いて図17〜図19を参照して第8実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価システム1eについて説明する。但し、第1実施形態〜第7実施形態とは異なる事項を説明し、第1実施形態〜第7実施形態と同じ事項についての説明は割愛する。第8実施形態は、評価工程において生成される評価データ(評価結果)が示す内容が、第1実施形態〜第7実施形態と異なる。
まず、図17を参照して、第8実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法について説明する。図17は、第8実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法のフローを示す図である。図17に示すように、第8実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク工程S207、解析工程S407、及び評価工程S607を含む。
デュアルタスク工程S207では、被験者が、所定の時間、デュアルタスクを遂行する。デュアルタスク工程S207では更に、デュアルタスクを遂行している被験者による動作及び回答のうちの少なくとも一方が検出される。
解析工程S407では、デュアルタスク工程S207の遂行時における被験者による動作及び回答のうちの少なくとも一方が解析される。例えば、デュアルタスクに含まれる運動タスクが、被験者に足踏みをさせるタスクである場合、被験者による動作の特徴量として、1歩時間の平均値、又は1歩時間の標準偏差が測定される。また、被験者による回答の特徴量として、正答率、又は回答時間間隔の平均値が測定される。
評価工程S607では、解析工程S407において得られた解析の結果(被験者による動作の特徴量、又は被験者による回答の特徴量)に基づいて、被験者のデュアルタスク遂行能力が評価される。評価工程S607では更に、被験者のデュアルタスク遂行能力を示す評価データが生成される。
具体的には、第8実施形態では、被験者の実年齢に基づいて、解析の結果が、年齢ごとの標準値と比較される。その比較の結果に基づき、被験者の現在の認知能力、又は脳の健康度が判定される。あるいは、解析の結果が年齢ごとの標準値と比較されて、被験者の現在の脳年齢が判定される。被験者の実年齢が15歳以下である場合、判定された認知能力、脳の健康度、又は脳年齢は、就学度のような知能の成長度を示す。
続いて、図18を参照して、第8実施形態に係るデュアルタスク遂行能力評価システム1eについて説明する。図18は、デュアルタスク遂行能力評価システム1eの構成を示すブロック図である。図17に示すデュアルタスク遂行能力評価方法は、デュアルタスク遂行能力評価システム1eを利用して実行される。図18に示すように、デュアルタスク遂行能力評価システム1eは、情報処理装置3と、回答検出部4と、動作検出部5とを備える。
回答検出部4は、デュアルタスクを遂行している被験者2による回答を検出する。回答検出部4は、例えば、マイクロフォン、視線方向検出装置、及び回答用スイッチのうちの少なくとも1種を含み得る。
動作検出部5は、デュアルタスクを遂行している被験者2による動作を検出する。動作検出部5は、例えば、モーションキャプチャ装置、撮像装置、振動検出センサ、及びマット状の感圧スイッチのうちの少なくとも1種を含み得る。なお、知能タスクが動作による回答を被験者2に課す場合、動作検出部5は、回答検出部4を兼ね得る。この場合、回答検出部4は省略され得る。
第8実施形態において、記憶部32は、所定のデュアルタスクに応じた動作の特徴量の標準値データ及び回答の特徴量の標準値データを記憶している。以下、動作の特徴量の標準値データを、動作の標準値データと記載し、回答の特徴量の標準値データを、回答の標準値データと記載する場合がある。同様に、動作の特徴量の標準値を、動作の標準値と記載し、回答の特徴量の標準値を、回答の標準値と記載する場合がある。例えば、運動タスクとして「足踏み動作」を被験者2に課し、知能タスクとして「連続引き算」を被験者2に課すデュアルタスクに応じた動作の標準値データとして、記憶部32は、年齢ごとの1歩時間の平均値を記憶し得る。更に、記憶部32は、回答の標準値データとして、年齢ごとの平均回答時間間隔を記憶し得る。
処理部31には、デュアルタスクを遂行している被験者2による動作の特徴量又は回答の特徴量を示すデータ(解析結果を示すデータ)が、入力部34を介して入力される。例えば、回答検出部4が、被験者2が発声した声(回答)を検出し、処理部31が、音声出力部33を用いて、被験者2が発声した声(音声)を再生する場合、ユーザーは、再生された音声に基づいて、被験者2による回答のタイミングを測定することができる。ユーザーは、この測定の結果を基に、例えば被験者2による回答時間間隔の平均値を算出し、その平均値を示すデータを、入力部34を介して入力する。
あるいは、処理部31が解析部として機能して、デュアルタスクを遂行している被験者2による動作の特徴量又は回答の特徴量を測定してもよい。この場合、ユーザーは解析結果を示すデータを入力する必要はなく、処理部31は自身が測定したデータを基に、評価データを生成する。例えば、回答検出部4が、被験者2が発声した声(回答)を検出する場合、処理部31は、音声認識処理によって回答のタイミングを計測し、その測定の結果を基に、例えば被験者2による回答時間間隔の平均値を算出することができる。
処理部31は、デュアルタスクを遂行している被験者2による動作の特徴量又は回答の特徴量を示すデータに基づいて、被験者のデュアルタスク遂行能力を示す評価データを生成する。即ち、処理部31は評価データ生成部として機能する。
具体的には、処理部31は、被験者2の実年齢に基づいて、被験者2による動作の特徴量と、被験者2の実年齢における動作の標準値との差を算出する。又は、被験者2による回答の特徴量と、被験者2の実年齢における回答の標準値との差を算出する。あるいは、処理部31は、動作の標準値データ又は回答の標準値データを参照して、被験者2による動作の特徴量又は回答の特徴量から、被験者2の脳年齢を判定する。なお、被験者2の実年齢を示すデータは、入力部34を介して入力されて、記憶部32に記憶される。
このように、第8実施形態では、被験者2のデュアルタスク遂行能力を示す評価データとして、被験者2による動作の特徴量と、被験者2の実年齢における動作の標準値との差を示すデータが生成される。又は、評価データとして、被験者2による回答の特徴量と、被験者2の実年齢における回答の標準値との差を示すデータが生成される。あるいは、評価データとして、被験者2の脳年齢を示すデータが生成される。
処理部31は、評価データに対応する評価結果画像を生成して、表示部35に表示させる。なお、評価データが、被験者2による動作の特徴量と、被験者2の実年齢における動作の標準値との差を示すデータである場合、評価結果画像はその差の大きさに応じた所定の画像であり得る。同様に、評価データが、被験者2による回答の特徴量と、被験者2の実年齢における回答の標準値との差を示すデータである場合、評価結果画像はその差の大きさに応じた所定の画像であり得る。所定の画像は、例えばフェイスマークであり得る。フェイスマークは、測定された特徴量と、その特徴量に対応する標準値との差の大きさによって異なる表情を有する。
続いて図19を参照して標準値データについて説明する。図19は、標準値データの一例を示す図である。具体的には、図19の標準値データは、年齢ごとの平均回答時間間隔の標準値を示している。図19において、横軸は年齢を示し、縦軸は平均回答時間間隔を示す。
図19に示すように、年齢が6歳以上15歳以下の間では、年齢が高くなるにつれて、平均回答時間間隔の標準値は、より小さな値へと変化する。一方、年齢が15歳を超えると、平均回答時間間隔の標準値は、ほとんど変化しない。
第8実施形態によれば、例えば、測定された被験者2の平均回答時間間隔と、図19に示す平均回答時間間隔の標準値とが比較されることにより、被験者2のデュアルタスク遂行能力を評価することができる。具体的には、測定された被験者2の平均回答時間間隔と、被験者2の実年齢における標準値との差から、被験者の現在の認知能力、又は脳の健康度を判定することができる。又は、測定された被験者2の平均回答時間間隔に該当する標準値を検出することにより、その検出された標準値に対応する年齢を判定できる。判定された年齢は、被験者2の現在の脳年齢を示す。
なお、デュアルタスク遂行能力評価システム1eが、回答検出部4と動作検出部5とを備える形態について説明したが、デュアルタスク遂行能力評価システム1eは、回答検出部4と動作検出部5とのうちの一方を備えてもよい。この場合、記憶部32は、動作の特徴量の標準値データと回答の特徴量の標準値データとのうちの一方を記憶する。
また、デュアルタスク工程の前又は後に、運動タスクのみを含むシングルタスク工程が実行されてもよい。この場合、シングルタスク工程において被験者の動作が検出される。また、シングルタスク工程とデュアルタスク工程とにおいて、被験者は、同じ運動タスクを遂行する。例えば、運動タスクが、被験者に足踏みをさせるタスクである場合、被験者の動作の特徴量として、シングルタスクを遂行している被験者の1歩時間の平均値と、デュアルタスクを遂行している被験者の1歩時間の平均値との差又は比が算出され得る。あるいは、被験者の動作の特徴量として、シングルタスクを遂行している被験者の1歩時間の標準偏差と、デュアルタスクを遂行している被験者の1歩時間の標準偏差との差又は比が算出され得る。
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
例えば、本発明による実施形態では、正面から見た人体骨格モデルが画面35aに表示される形態を例示したが、側面から見た人体骨格モデルを画面35aに表示してもよい。又は、正面から見た人体骨格モデルと、側面から見た人体骨格モデルとを同時に画面35aに表示してもよい。
また、本発明による実施形態で説明された各事項は適宜組み合わせることが可能である。例えば、第1実施形態において説明したデュアルタスク遂行能力評価方法によって、被験者のMMSEスコアが27以上であることが判定された後に、第3実施形態において説明したデュアルタスク遂行能力評価方法によって、被験者のMMSEスコアが27であるのか、28以上であるのかを判定してもよい。また例えば、第7実施形態において説明したように、各デュアルタスク遂行能力評価システム1a〜1eは、ノート型パーソナルコンピューターや、スマートフォン、タブレット端末のような情報の処理が可能な1台の機器によって構成され得る。
続いて本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下で説明する実施例に限定されるものではない。
[第1実施例]
各被験者に対してMMSEを実施して、各人のMMSEスコアを取得した。その後、1分間の歩行中に100から1ずつ引いていく連続引き算の問題に答えるデュアルタスクを、各被験者が遂行した。そして、連続引き算の問題に対して各被験者が回答した回答数(誤答を含む)を計数した。結果を図20に示す。
図20は、MMSEスコアと全回答数との関係を示す図であり、各被験者の全回答数をMMSEスコアごとにプロットしている。図20において、横軸はMMSEスコアを示し、縦軸は全回答数を示す。
図20に示すように、MMSEスコアが27以下の範囲では、MMSEスコアが高い程、全回答数が多くなった。また、本発明者らは、各プロットを基に、線形回帰法によって上記した式(4)を得た。図20は、式(4)のグラフを示している。但し、図20に示すグラフは、27未満のMMSEスコアに対応している。
[第2実施例]
各被験者に対してMMSEを実施して、各人のMMSEスコアを取得した。その後、1分間の足踏み(運動タスク)を各被験者が遂行した。続いて、1分間の足踏み中に「か」から始まる言葉を挙げていくデュアルタスクを、各被験者が遂行した。そして、足踏みの速さが、運動タスクの遂行時とデュアルタスクの遂行時とで一致するか否かの判定を、被験者ごとに行った。また、足踏み中の歩隔が、運動タスクの遂行時とデュアルタスクの遂行時とで一致するか否かの判定を、被験者ごとに行った。結果を、以下の表1に示す。
表1に示すように、MMSEスコアが27以上30以下の範囲では、運動タスクの遂行時とデュアルタスクの遂行時とで足踏みの速さが一致する被験者の割合が、43%となった。一方、MMSEスコアが22以上26以下の範囲では、運動タスクの遂行時とデュアルタスクの遂行時とで足踏みの速さが一致する被験者の割合は、0%となった。したがって、足踏みの速さが、運動タスクの遂行時とデュアルタスクの遂行時とで一致する場合、MMSEスコアは27以上であるという結果を得た。
また、MMSEスコアが24以上30以下の範囲では、運動タスクの遂行時とデュアルタスクの遂行時とで足踏み中の歩隔が一致する被験者の割合が、70%以上となった。一方、MMSEスコアが22以上23以下の範囲では、運動タスクの遂行時とデュアルタスクの遂行時とで足踏み中の歩隔が一致する被験者の割合は、25%となった。したがって、足踏み中の歩隔が、運動タスクの遂行時とデュアルタスクの遂行時とで一致する場合、MMSEスコアは24以上の可能性が高いという結果を得た。
[第3実施例]
各被験者に対してMMSEを実施して、各人のMMSEスコアを取得した。その後、1分間の足踏みを(運動タスク)を各被験者が遂行した。続いて、1分間の足踏み中に100から1ずつ引いていく連続引き算の問題に答える第1デュアルタスクを、各被験者が遂行した。続いて、1分間の足踏み中に「か」から始まる言葉を挙げていく第2デュアルタスクを、各被験者が遂行した。そして、足上げの大きさ、腕の振りの大きさ、足踏みの速さ、歩隔の狭さ、及び上半身のブレの少なさにおいて、運動タスク、第1デュアルタスク、第2デュアルタスクの順序で評価が小さくなる評価項目が2つ以上あるか否かの判定を、被験者ごとに行った。結果を、以下の表2に示す。
表2に示すように、MMSEスコアが26又は27である場合、運動タスク、第1デュアルタスク、第2デュアルタスクの順序で評価が小さくなる評価項目が2つ以上ある被験者の割合は、80%となった。一方、MMSEスコアが22以上24以下の範囲と、MMSEスコアが28以上30以下の範囲とでは、運動タスク、第1デュアルタスク、第2デュアルタスクの順序で評価が小さくなる評価項目が2つ以上ある被験者の割合は、27%以下となった。したがって、運動タスク、第1デュアルタスク、第2デュアルタスクの順序で評価が小さくなる評価項目が2つ以上ある場合、MMSEスコアは27又は26である可能性が高いという結果を得た。
[第4実施例]
各被験者に対してMMSEを実施して、各人のMMSEスコアを取得した。その後、1分間の足踏み中に100から1ずつ引いていく連続引き算の問題に答える第1デュアルタスクを、各被験者が遂行した。続いて、1分間の足踏み中に「か」から始まる言葉を挙げていく第2デュアルタスクを、各被験者が遂行した。そして、足踏みを中断したか否かの判定を、被験者ごとに行った。結果を、以下の表3に示す。
表3に示すように、MMSEスコアが25以上の範囲では、足踏みを途中で中断した被験者はいなかった。したがって、足踏みを途中で中断した場合、MMSEスコアは24以下であるという結果を得た。
[第5実施例]
各被験者に対してMMSEを実施して、各人のMMSEスコアを取得した。その後、1分間の直線歩行中に「か」から始まる言葉を挙げていくデュアルタスクを、各被験者が遂行した。そして、デュアルタスクの遂行中に、歩行を中断し、且つ、1分経過前に回答を終了したか否かの判定を、被験者ごとに行った。
図21(a)〜図27は、デュアルタスクを遂行する被験者の動作タイミングと回答タイミングとを示す図である。詳しくは、図21(a)〜図27は、被験者の足が地面に着くタイミングと、被験者による回答のタイミングとを示す。図21(a)〜図27において、横軸は時間を示す。また、図21(a)〜図27において、高さの高い細線は、被験者の足が地面に着くタイミングを示し、高さの低い太線は、「か」から始まる言葉を挙げていく問題に対する被験者の回答のタイミングを示す。
図21(a)〜図21(c)は、MMSEスコアが30の被験者の動作タイミングと回答タイミングとを示している。図22(a)〜図22(c)は、MMSEスコアが28の被験者の動作タイミングと回答タイミングとを示している。図23(a)〜図23(c)は、MMSEスコアが27の被験者の動作タイミングと回答タイミングとを示している。図24(a)〜図24(c)は、MMSEスコアが26の被験者の動作タイミングと回答タイミングとを示している。図25(a)及び図25(b)は、MMSEスコアが24の被験者の動作タイミングと回答タイミングとを示している。図26(a)及び図26(b)は、MMSEスコアが23の被験者の動作タイミングと回答タイミングとを示している。図27は、MMSEスコアが22の被験者の動作タイミングと回答タイミングとを示している。
図21(a)〜図27に示すように、デュアルタスクの遂行中に、被験者が、歩行を中断し、且つ、1分経過前に回答を終了した場合、MMSEスコアは23以下である可能性が高いという結果を得た。
[第6実施例]
各被験者に対してMMSEを実施して、各人のMMSEスコアを取得した。その後、1分間の足踏み中に100から1ずつ引いていく連続引き算の問題に答えるデュアルタスクを、各被験者が遂行した。そして、連続引き算の問題に対する各被験者の回答の時間間隔の標準偏差を算出した。更に、MMSEスコアが同じ被験者間で、回答の時間間隔の標準偏差の平均値を算出した。結果を図28に示す。
図28は、回答の時間間隔の標準偏差とMMSEスコアとの関係を示す図であり、回答の時間間隔の標準偏差の平均値をMMSEスコアごとにプロットしている。図28において、横軸はMMSEスコアを示し、縦軸は回答の時間間隔の標準偏差の平均値を示す。
図28に示すように、MMSEスコアが23以下の範囲では、MMSEスコアが低い程、回答の時間間隔の標準偏差の平均値が大きくなった。また、MMSEスコアが23以下の範囲では、回答の時間間隔の標準偏差の平均値が1秒以上となった。したがって、回答の時間間隔の標準偏差の値が1秒以上である場合、MMSEスコアは23以下であるという結果を得た。
[第7実施例]
各被験者に対してMMSEを実施して、各人のMMSEスコアを取得した。結果を図29に示す。図29は、第7実施例に係る被験者のデータを示す図である。図29において、横軸はMMSEスコアを示し、縦軸は被験者数を示す。即ち、図29は、MMSEスコアごとの人数を示している。
その後、45秒間の足踏み中に「1ケタの数と2ケタの数とを用いた計算問題」に答えるデュアルタスクを、各被験者が遂行した。そして、計算問題に対する各被験者の正答率及び全回答数を算出した。また、正答率及び全回答数のMMSEスコアごとの平均値をそれぞれ算出した。結果を図30及び図31に示す。
図30は、正答率のMMSEスコアごとの平均値を示す。図30において、横軸はMMSEスコアを示し、縦軸は正答率の平均値を示す。図30に示すように、MMSEスコアが高くなるほど正答率が高くった。したがって、デュアルタスクを遂行している被験者の正答率を測定することにより、被験者のMMSEスコアを判定できる可能性が高いという結果を得た。
図31は、全回答数のMMSEスコアごとの平均値を示す。図31において、横軸はMMSEスコアを示し、縦軸は全回答数の平均値を示す。図31に示すように、MMSEスコアが高くなるほど全回答数が多くなった。したがって、デュアルタスクを遂行している被験者の全回答数を測定することにより、被験者のMMSEスコアを判定できる可能性が高いという結果を得た。
[第8実施例]
およそ10万人の被験者に対して、45秒間の足踏み中に「1ケタの数と2ケタの数とを用いた計算問題」に答えるデュアルタスクを課した。図32は、第8実施例に係る被験者のデータを示す図である。図32において、横軸は年齢を示し、縦軸は被験者数を示す。即ち、図32は、年齢ごとの人数を示している。
第8実施例では、計算問題に対する各被験者の正答率及び平均回答時間間隔を算出した。また、正答率及び平均回答時間間隔の年齢ごとの平均値を算出した。結果を図33及び図34に示す。
図33は、正答率の年齢ごとの平均値を示す。図33において、横軸は年齢を示し、縦軸は正答率の平均値を示す。図33に示すように、年齢が6歳以上15歳以下の間では、年齢が高くなるにつれて、正答率がより大きな値へと変化した。一方、年齢が15歳を超えると、正答率は、ほとんど変化しなかった。したがって、図33に示すデータを標準値データとして採用することにより、被験者のデュアルタスク遂行能力(認知能力、脳の健康度、及び脳年齢など)を評価できる可能が高いという結果を得た。
図34は、平均回答時間間隔の年齢ごとの平均値を示す。図34において、横軸は年齢を示し、縦軸は平均回答時間間隔の平均値を示す。図34に示すように、年齢が6歳以上15歳以下の間では、年齢が高くなるにつれて、平均回答時間間隔がより小さい値へと変化した。一方、年齢が15歳を超えると、平均回答時間間隔は、ほとんど変化しなかった。したがって、図34に示すデータを標準値データとして採用することにより、被験者のデュアルタスク遂行能力(認知能力、脳の健康度、及び脳年齢など)を評価できる可能性が高いという結果を得た。
第8実施例では、更に、各被験者による足踏みの平均1歩時間及び1歩時間の標準偏差を算出した。また、平均1歩時間及び1歩時間の標準偏差の年齢ごとの平均値を算出した。結果を図35及び図36に示す。
図35は、平均1歩時間の年齢ごとの平均値を示す。図35において、横軸は年齢を示し、縦軸は平均1歩時間の平均値を示す。図35に示すように、年齢が6歳以上15歳以下の間では、年齢が高くなるにつれて、平均1歩時間がより小さい値へと変化した。一方、年齢が15歳以上51歳以下の間では、平均1歩時間は、ほとんど変化しなかった。したがって、図35に示すデータを標準値データとして採用することにより、被験者のデュアルタスク遂行能力(認知能力、脳の健康度、及び脳年齢など)を評価できる可能性が高いという結果を得た。
図36は、1歩時間の標準偏差の年齢ごとの平均値を示す。図36において、横軸は年齢を示し、縦軸は1歩時間の標準偏差の平均値を示す。図36に示すように、年齢が6歳以上15歳以下の間では、年齢が高くなるにつれて、1歩時間の標準偏差がより小さい値へと変化した。一方、年齢が15歳を超えると、1歩時間の標準偏差は、ほとんど変化しなかった。したがって、図36に示すデータを標準値データとして採用することにより、被験者のデュアルタスク遂行能力(認知能力、脳の健康度、及び脳年齢など)を評価できる可能性が高いという結果を得た。