JPWO2014192321A1 - 中性子線検出装置及び中性子捕捉療法装置 - Google Patents
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Abstract
中性子線検出装置は、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、シンチレータで発生した光を伝送する光ファイバと、光ファイバによって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値Qthを超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別する弁別部を備え、弁別部は、光ファイバの劣化に応じて判定閾値を調整する。
Description
本発明は、シンチレータで発生した光を伝送する光ファイバを備えた中性子線検出装置及び中性子捕捉療法装置に関する。
中性子線とガンマ線とを弁別する技術として特許文献1に記載の技術がある。シンチレータに中性子線あるいはガンマ線が入射するとシンチレーション発光が起こる。シンチレータで発生した光は光電子増倍管で電気パルスに変換される。この電気パルスは発光の減衰時間の違いにより中性子線とガンマ線とで異なっている。特許文献1ではパルス幅の違いによって中性子線とガンマ線とを弁別する。
シンチレータで発生した光を光ファイバによって伝送することが考えられる。しかしながら、光ファイバは放射線によって劣化すると光の透過率が低下し、例えば中性子線による信号がガンマ線による信号として誤って検出されることで、中性子線の検出精度が低下するおそれがある。本発明の一側面は、中性子線の検出精度の低下を抑制することができる中性子線検出装置及び中性子捕捉療法装置を提供することを目的とする。
本発明の一側面は、中性子線を検出する中性子線検出装置であって、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、シンチレータで発生した光を伝送する光ファイバと、光ファイバによって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別する弁別部を備え、弁別部は、光ファイバの劣化に応じて判定閾値を調整する。
この中性子線検出装置では、放射線を入射したシンチレータが発光し、この発光による光が光ファイバによって伝送され弁別部に導入される。弁別部は、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別する。中性子線検出装置の弁別部は、光ファイバの劣化に応じて判定閾値を調整することができるので、放射線により光ファイバが劣化して光の透過率が低下した場合であっても、判定閾値を調整して中性子線の検出精度の低下を抑制することができる。
弁別部は、検出信号の波高分布に基づいて判定閾値を調整してもよい。この場合には、検出信号の波高分布に基づいて判定閾値を調整することができ、中性子線の検出精度の低下を抑制することができる。
弁別部は、波高分布における中性子線によるピークを検出し、このピークに基づき判定閾値を調整してもよい。光ファイバが劣化すると中性子線によるピークも透過率の低下に応じて低下するので、中性子線のピークに基づいて判定閾値を調整することで、中性子線を精度良く検出することができ、検出精度の低下を抑制することができる。波高分布における中性子線のピークは、例えば、過去のデータに基づいて設定してもよい。
弁別部は、ピークから所定値低い値を判定閾値として設定してもよい。このように、波高分布における中性子線のピークから所定値低い値を判定閾値に設定することで、光ファイバの劣化に応じて判定閾値を調整することができる。所定値は、例えば、過去のデータに基づいて設定してもよい。
また、弁別部は、波高分布にガウス関数をフィッティングして中性子線によるピークを検出し、ピークから1.5σ低い値を判定閾値としてもよい。中性子線検出装置は、ガウス関数を用いて波高分布をフィッティングすることで中性子線によるピークを検出する。弁別部は、中性子線によるピークから1.5σ低い値に判定閾値を調整することで、中性子線の検出精度の低下を一層抑制することができる。
中性子線検出装置は、光発生部を更に備え、弁別部は、光発生部からの光信号に基づいて判定閾値を調整してもよい。弁別部が、光発生部からの光信号に基づいて判定閾値を調整することで、光発生部からの光信号に基づいて中性子線の検出精度の低下を一層抑制することができる。
弁別部は、光発生部からの所定の光信号を記憶しており、記憶された所定の光信号と、光ファイバを介して検出された実測の光信号とを比較し、比較結果に基づいて判定閾値を調整してもよい。弁別部が、記憶された所定の光信号と実測の光信号とに基づいて判定閾値を調整することにより、リアルタイムで判定閾値を調整することができる。これにより、光ファイバが劣化したとしても、リアルタイムで判定閾値を調整することができる。
光発生部は、光ファイバにおけるシンチレータで発生した光が入射する側の端部に取り付けられていてもよい。これにより、光ファイバの端部に取り付けられた光発生部からの光信号に基づいて判定閾値を調整することができる。
中性子線検出装置は、光発生部からの光信号に基づいて、放射線によって光ファイバの劣化が生じていること、及び、弁別部に不具合が生じていること、のうちいずれが生じているかを判定する判定部を更に備えていてもよい。これにより、光発生部からの光信号を用いて、光ファイバの劣化及び弁別部の不具合のいずれが生じているかを判定することができる。
中性子線検出装置は、光発生部で発生した光信号を伝送する光発生部用光ファイバを更に備え、弁別部は、光発生部用光ファイバによって伝送された光信号を更に受光し、判定部は、弁別部によって受光されたシンチレータで発生した光に関する検出信号の波高と光発生部から出力された光信号に関する検出信号の波高とが、波高の増加方向又は減少方向に全体的にシフトした場合に弁別部に不具合が生じていると判定し、シンチレータで発生した光に関する検出信号の波高のみが波高の減少方向にシフトした場合に放射線によって光ファイバの劣化が生じていると判定してもよい。この場合、判定部は、シンチレータで発生した光に関する検出信号の波高と、光発生部から出力された光信号に関する検出信号の波高とに基づいて、弁別部の不具合及び光ファイバの劣化の発生を判定することができる。
本発明の他の一側面は、上記の中性子線検出装置を備えた中性子捕捉療法装置である。
この中性子捕捉療法装置では、中性子線検出装置を備え、ガンマ線又は中性子線を入射したシンチレータが発光し、この発光による光が光ファイバによって伝送されて弁別部に導入される。弁別部は、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別し、検出信号の波高が判定閾値を超えない場合に、検出信号をガンマ線に関する信号と弁別する。中性子線検出装置の弁別部は、光ファイバの劣化に応じて判定閾値を調整することができるので、放射線により光ファイバが劣化して光の透過率が低下した場合であっても、判定閾値を調整して中性子線の検出精度の低下を抑制することができる。
本発明の種々の側面によれば、光ファイバが劣化して光の透過率が低下しても、中性子線の検出精度の低下を抑制することができる中性子線検出装置及び中性子捕捉療法装置を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第一の実施形態)
先ず、第一の実施形態について説明する。図1に示される中性子捕捉療法装置1は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)を用いたがん治療を行う装置である。中性子捕捉療法装置1では、例えばホウ素(10B)が投与された患者(被照射体)50の腫瘍に中性子線Nを照射する。
先ず、第一の実施形態について説明する。図1に示される中性子捕捉療法装置1は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)を用いたがん治療を行う装置である。中性子捕捉療法装置1では、例えばホウ素(10B)が投与された患者(被照射体)50の腫瘍に中性子線Nを照射する。
中性子捕捉療法装置1は、サイクロトロン2を備えている。サイクロトロン2は、陰イオン等の荷電粒子を加速して、荷電粒子線Rを作り出す加速器である。本実施形態において、荷電粒子線Rは陰イオンから電荷を剥ぎ取って生成した陽子ビームである。陽子ビームは、加速された陰イオンがサイクロトロン2内でフォイルストリッパー等を用いて電子を剥ぎ取られることで生成され、サイクロトロン2から出射される。このサイクロトロン2は、例えば、ビーム半径40mm、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Rを生成する能力を有している。なお、加速器は、サイクロトロンに限られず、シンクロトロンやシンクロサイクロトロン、ライナックなどであってもよい。
サイクロトロン2から出射された荷電粒子線Rは、中性子線生成部Mへ送られる。中性子線生成部Mは、ターゲット7、減速材9及びコリメータ10からなる。サイクロトロン2から出射された荷電粒子線Rは、ビームダクト3を通り、ビームダクト3の端部に配置されたターゲット7へ向かって進行する。このビームダクト3に沿って複数の四極電磁石4、電流検出部5、及び走査電磁石6が設けられている。複数の四極電磁石4は、例えば電磁石を用いて荷電粒子線Rのビーム軸調整やビーム径調整を行うものである。
電流検出部5は、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの電流値(つまり、電荷,照射線量率)を、荷電粒子線Rの照射中にリアルタイムで検出するものである。電流検出部5は、荷電粒子線Rに影響を与えずに電流測定可能な非破壊型のDCCT(DC Current Transformer)が用いられている。電流検出部5は、検出結果を後述する制御部20に出力する。なお、「線量率」とは、単位時間当たりの線量を意味する。
具体的には、電流検出部5は、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの電流値を精度よく検出するため、四極電磁石4による影響を排除すべく、四極電磁石4より下流側(荷電粒子線Rの下流側)で走査電磁石6の直前に設けられている。すなわち、走査電磁石6はターゲット7に対して常時同じところに荷電粒子線Rが照射されないように走査するため、電流検出部5を走査電磁石6よりも下流側に配設するには大型の電流検出部5が必要となる。これに対し、電流検出部5を走査電磁石6よりも上流側に設けることで、電流検出部5を小型化することができる。
走査電磁石6は、荷電粒子線Rを走査し、ターゲット7に対する荷電粒子線Rの照射制御を行うものである。この走査電磁石6は、荷電粒子線Rのターゲット7に対する照射位置を制御する。
中性子捕捉療法装置1は、荷電粒子線Rをターゲット7に照射することにより中性子線Nを発生させ、患者50に向かって中性子線Nを出射する。中性子捕捉療法装置1は、ターゲット7、遮蔽体8、減速材9、コリメータ10、ガンマ線検出部11を備えている。
また、中性子捕捉療法装置1は、制御部20を備えている。制御部20は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等から構成されており、中性子捕捉療法装置1を総合的に制御する電子制御ユニットである。
ターゲット7は、荷電粒子線Rの照射を受けて中性子線Nを生成するものである。ここでのターゲット7は、例えば、ベリリウム(Be)やリチウム(Li)、タンタル(Ta)、タングステン(W)により形成され、例えば直径160mmの円板状を成している。なお、ターゲット7は、板状に限定されず、例えば、液状でもよい。
減速材9は、ターゲット7で生成された中性子線Nのエネルギーを減速させるものである。減速材9は、中性子線Nに含まれる速中性子を主に減速させる第1の減速材9Aと、中性子線Nに含まれる熱外中性子を主に減速させる第2の減速材9Bと、からなる積層構造を有している。
遮蔽体8は、発生させた中性子線N、及び当該中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等を外部へ放出されないよう遮蔽するものである。遮蔽体8は、減速材9を囲むように設けられている。遮蔽体8の上部及び下部は、減速材9より荷電粒子線Rの上流側に延在しており、これらの延在部にガンマ線検出部11が設けられている。
コリメータ10は、中性子線Nの照射野を整形するものであり、中性子線Nが通過する開口10aを有する。コリメータ10は、例えば中央に開口10aを有するブロック状の部材である。
ガンマ線検出部11は、荷電粒子線Rの照射により中性子線生成部Mから発生するガンマ線を、中性子線の生成中(すなわち、患者50への中性子線Nの照射中)にリアルタイムで検出するものである。ガンマ線検出部11としては、シンチレータや電離箱、その他様々なガンマ線検出機器を採用することができる。本実施形態において、ガンマ線検出部11は、ターゲット7の周囲で減速材9より荷電粒子線Rの上流側に設けられている。
ガンマ線検出部11は、荷電粒子線Rの上流側に延在する遮蔽体8の上部及び下部の内側にそれぞれ配置されている。なお、ガンマ線検出部11の数は特に限定されず、一つであってもよく、三つ以上であってもよい。ガンマ線検出部11を三つ以上設けるときは、ターゲット7の外周を囲むように所定間隔で設けることができる。ガンマ線検出部11は、ガンマ線の検出結果を制御部20に出力する。このガンマ線検出部11を備えていない構成でもよい。
図2に示されるように、コリメータ10には、コリメータ10の開口10aを通過する中性子線Nを、中性子線の生成中(すなわち、患者50への中性子線Nの照射中)にリアルタイムで検出するための中性子線検出器12が設けられている。中性子線検出器12は、コリメータ10に形成された貫通孔10b(開口10aと直交する方向に形成された貫通孔)中に少なくともその一部が設けられている。中性子線検出器12は、シンチレータ13、ライトガイド14、光検出器15を有している。
シンチレータ13は、入射した放射線(中性子線N、ガンマ線)を光に変換する蛍光体である。シンチレータ13は、入射した放射線の線量に応じて内部結晶が励起状態となり、シンチレーション光を発生させる。シンチレータ13は、コリメータ10の貫通孔10b内に設けられており、コリメータ10の開口10aに露出している。シンチレータ13は、開口10a内の中性子線Nまたはガンマ線がシンチレータ13に入射することで発光する。シンチレータ13には、6Liガラスシンチレータ、LiCAFシンチレータ、6LiFを塗布したプラスチックシンチレータ、6LiF/ZnSシンチレータ等を採用できる。
なお、図2では中性子線Nの進行方向を直線で示しているが、実際には中性子線Nは、拡散するように進行する。このため、貫通孔10b内に設けられたシンチレータ13にも中性子線Nが照射され、シンチレータ13によって中性子線Nを検出することができる。
ライトガイド14は、シンチレータ13で生じた光を伝達する部材である。ライトガイド14は、光ファイバによって構成されている。ライトガイド14は、例えば、フレキシブルな光ファイバの束などから構成されていてもよい。光検出器15は、ライトガイド14を通じて伝達された光を検出するものである。光検出器15としては、例えば光電子増倍管や光電管など各種の光検出機器を採用することができる。光検出器15は、光検出時に電気信号(検出信号)を制御部20に出力する。
図3に示されるように、制御部20は、線量算出部21及び照射制御部22を有している。制御部20は、電流検出部5、ガンマ線検出部11及び光検出器15(中性子線検出器12)と電気的に接続されている。
線量算出部21は、電流検出部5による荷電粒子線Rの電流値の検出結果に基づいて、ターゲット7に照射される荷電粒子線Rの線量を、荷電粒子線Rの照射中にリアルタイムで測定(算出)する。線量算出部21は、測定された荷電粒子線Rの電流値を時間に関して逐次積分し、荷電粒子線Rの線量をリアルタイムで算出する。
また、線量算出部21は、ガンマ線検出部11によるガンマ線の検出結果に基づいて、ガンマ線の線量を、中性子線Nの照射中にリアルタイムで測定(算出)する。
さらに、線量算出部21は、中性子線検出器12による中性子線Nの検出結果に基づいて、コリメータ10の開口10aを通過する中性子線Nの線量を測定(算出)する。線量算出部21は、光検出器15から検出信号を受信し、中性子線に関する信号とガンマ線に関する信号とを弁別する(詳しくは後述する)。線量算出部21は、光検出部15と合せて、弁別部を構成する。
線量算出部21は、算出した荷電粒子線Rの線量、ガンマ線の線量、及び中性子線Nの線量に基づいて、ターゲット7で発生した中性子線Nの線量を総合的に、中性子線Nの照射中にリアルタイムで算出する。中性子線Nの線量など線量算出部21による算出結果は、例えばディスプレイ(表示部)31に表示される。
照射制御部22は、線量算出部21によって算出された中性子線Nの線量に基づいて、ターゲット7に対する荷電粒子線Rの照射を制御する。照射制御部22は、サイクロトロン2及び走査電磁石6に指令信号を送信してターゲット7に対する荷電粒子線Rの照射を制御することで、ターゲット7から生成される中性子線Nの患者に対する照射制御を行う。照射制御部22は、線量算出部21の算出する中性子線Nの線量が予め設定された治療計画に沿うように中性子線Nの照射制御を行う。
線量算出部21は、光検出器15で受光した光に関する検出信号の波高(光量)が判定閾値Qthを超えているか否か判定し、中性子線Nによる検出信号と、ガンマ線による検出信号とを弁別する。シンチレータ13において、放射線として中性子線N及びガンマ線が入射するので、光量の強さに応じて中性子線Nとガンマ線とを弁別する。
図4は、検出信号の波高分布を示すグラフである。図4では、横軸に光検出器15で受光した光に関する検出信号の波高(光量)を示し、縦軸に検出信号のイベント数(Count/s)を示している。線量算出部21は、波高分布に対してフィッティングを行い、波高分布のピークを検出する。フィッティングのための関数としては、下記式(1)のガウス関数が挙げられる。
xは検出信号の光量を示し、μはピークの位置を示している。
xは検出信号の光量を示し、μはピークの位置を示している。
図4に示されるように、線量算出部21は、波高分布において2つ目のピークP2を中性子線NによるピークPNとし、この中性子線NによるピークPNから1.5σ低い値を判定閾値Qthに設定する。
ここで、線量算出部21は、所定インターバル時間ごとに判定閾値Qthを変更(調整)する。線量算出部21は、判定閾値Qthを変更するためのインターバル時間として“60秒”を設定し、このインターバル時間内に受光した光に関する検出信号の波高に基づいて波高分布を作成し、この波高分布に基づいて判定閾値Qthを変更する。なおは、インターバル時間は、60秒に限定されず、他の時間としてもよく、作業者(オペレータや医師)が適宜決定してもよい。波高分布とは、横軸に光量、縦軸にその光量の検出信号が検出された頻度(イベント数)を示したグラフを指す。
中性子捕捉療法装置1を使用することによって、ライトガイド14の光ファイバは放射線を受けて劣化し光の透過率が低下する。ライドガイド14の光の透過率が低下すると、線量算出部21で計測される光の光量が低下し、図4に示される波高分布は透過率の低下に応じて左へずれる。線量検出部21は、インターバル時間における波高分布にガウス関数をフィッティングして中性子線NによるピークPNを設定し、このピークPNから1.5σ低い値を新たな判定閾値Qthに設定する。線量検出部21は、新たな判定閾値Qthに基づいて、中性子線Nによる検出信号とガンマ線による検出信号とを弁別する。
次に、以上説明した第1の実施形態に係る中性子捕捉療法装置1の作用効果について説明する。
中性子捕捉療法装置1の中性子線検出器12は、ガンマ線又は中性子線Nを入射するとシンチレータ13が発光し、この発光による光がライトガイド14によって伝送されて光検出器15に導入される。光検出部15は、導入された光に応じて電気信号(検出信号)を制御部20に出力する。制御部20の線量算出部21は、検出信号の波高分布に基づいて判定閾値Qthを調整することができるので、放射線によってライトガイド14の光ファイバが劣化して光の透過率が低下した場合であっても判定閾値Qthを調整して中性子線Nの検出精度の低下を抑制することができる。これにより、中性子線Nを精度良く検出することができる。
この中性子捕捉療法装置1の中性子線検出装置では、波高分布にガウス関数をフィッティングして中性子線によるピークPNを検出し、ピークPNから1.5σ低い値を判定閾値Qthとして調整するので、光ファイバの劣化に応じて判定閾値Qthを変更して精度良く、中性子線Nとガンマ線とを弁別することができる。光量の低下に応じてピークPNが低下するので、ピークPNに応じて判定閾値Qthを変更することで、精度よく中性子線Nとガンマ線との弁別を行うことができる。
中性子捕捉療法装置1では、中性子線Nの線量を正確に計測して、中性子線Nの照射が計画通りに行われていることを確認することができる。
本発明は、前述した第一の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、下記のような種々の変形が可能である。
例えば、シンチレータ13が配置される場所は、コリメータ10内に限定されずその他の場所でもよい。シンチレータは例えばコリメータ10の下流に配置されていてもよく、患者の表面(被照射部の近傍)に配置されていてもよい。
また、上記第一の実施形態では、中性子線NによるピークPNから1.5σ低い値を判定閾値Qthとして調整しているが、その他の値となるように判定閾値Qthを変更してもよい。図5は、判定閾値Qthと中性子線Nの検出効率との関係を示す表である。図5に示されるように、中性子線NによるピークPNからσ低い値を判定閾値Qthとした場合には、中性子線Nの検出効率は84.1%であった。中性子線NによるピークPNから1.5σ低い値を判定閾値Qthとした場合には、中性子線Nの検出効率は93%であった。また、中性子線NによるピークPNから2σ低い値を判定閾値Qthとした場合には、中性子線Nの検出効率は99.8%であった。このように、中性子線NによるピークPNからσ低い値を判定閾値Qthとしてもよく、中性子線NによるピークPNから2σ低い値を判定閾値Qthとしてもよく、その他の値低い判定閾値Qthでもよい。
また、上記第一の実施形態では、波高分布にガウス関数をフィッティングして中性子線によるピークPNを検出しているが、その他の関数を用いて波高分布を近似して、中性子線によるピークPNを検出してもよい。
また、判定閾値Qthとしてその他の値を用いてもよい。図6は検出信号の波高分布と判定閾値Qthとの関係を示すグラフである。図6に示されるように、例えば、中性子線によるピークPNのイベント数を100%としたときに、イベント数が50%となる値(ガウス分布における低い方の値)を判定閾値Qth(Qth2)として採用してもよい。また、ピークPN(P3)に対する値を判定閾値Qthとして採用してもよく、ピークPNから所定値低い値を判定閾値Qthとして採用してもよい。この所定値は過去のデータに基づいて設定してもよい。
また、波高分布に対応するガウス関数の傾きに基づいて、判定閾値Qthを調整してもよい。例えば、図6に示されるようにガウス関数の傾きが0となる点を、判定閾値Qth(Qth3)として採用してもよい。
(第二の実施形態)
次に、第二の実施形態について説明する。本実施形態は、主に、第一の実施形態におけるライトガイド14に替えて構成の異なるライトガイド14A(図7参照)を用いたものである。また、本実施形態では、第一の実施形態の制御部20とは処理内容が異なる制御部20A(図9参照)を用いている。以下では、第一の実施形態との相違点を主に説明する。また、図面の説明において第一の実施形態と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、第二の実施形態について説明する。本実施形態は、主に、第一の実施形態におけるライトガイド14に替えて構成の異なるライトガイド14A(図7参照)を用いたものである。また、本実施形態では、第一の実施形態の制御部20とは処理内容が異なる制御部20A(図9参照)を用いている。以下では、第一の実施形態との相違点を主に説明する。また、図面の説明において第一の実施形態と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態において用いられるライトガイド14Aは、第一の実施形態におけるライトガイド14と同様に、シンチレータ13で生じた光を光検出器15へ伝送する。ライトガイド14は、光を伝送する光ファイバ部14aと、光ファイバ部14aの端部を覆うキャップ14bとを含んで構成されている。
キャップ14bは、シンチレータ13と共に光ファイバ部14aの端部を覆っている。キャップ14bの先端部には、LED(発光ダイオード、光発生部)50が取り付けられている。キャップ14bにおける光ファイバ部14aの端部と対向する部位には、開口部14cが設けられている。
LED50の発光は、パルス発生器55(図9参照)によって制御されている。LED50は、パルス発生器55によって制御され、パルス状の光信号を出力する。LED50で生じた光信号は、キャップ14bの開口部14cを介して光ファイバ部14aに入射する。光ファイバ部14aに入射した光信号は、光ファイバ部14aによって光検出器15に伝送される。
図8に、光検出器15で受光した光に関する検出信号の波高分布のグラフを示す。図8に示すように、波高分布のグラフには、LED50で生じた光信号に関する検出信号の波高分布Xと、シンチレータ13で生じた光に関する検出信号の波高分布Yとが含まれている。
図9に示すように、本実施形態で用いられる制御部20Aは、線量算出部21A及び照射制御部22を有している。線量算出部21Aは、光検出器15で受光した光に関する検出信号の波高(光量)が判定閾値Qthを超えているか否か判定し、中性子線Nによる検出信号と、ガンマ線による検出信号とを弁別する。
また、線量算出部21Aは、LED50からの光信号に関する検出信号の波高分布を予め記憶している。LED50は、安定した光源であるため、ライトガイド14Aが劣化しなければ、一定の波高分布となる。一例として、線量算出部21Aは、ライトガイド14Aが劣化していない場合における、LED50からの光信号に関する検出信号の波高分布を予め記憶している。
次に、線量算出部21Aによって、中性子線Nによる検出信号と、ガンマ線による検出信号とを弁別する際の判定閾値Qthを変更する処理について説明する。線量算出部21Aは、予め記憶しているLED50からの光信号に関する検出信号の波高分布と、光検出器15によって実際に測定されたLED50からの光信号に関する検出信号の波高分布とを比較する。
ここで、図8に示すように、ライトガイド14Aが劣化すると、波高分布のグラフには波高が減少する方向にシフトする。図8では、ライトガイド14Aの劣化によってシフトした後の波高分布を破線で示している。
このため、線量算出部21Aは、予め記憶しているLED50からの光信号に関する検出信号の波高分布と、光検出器15によって実際に測定されたLED50からの光信号に関する検出信号の波高分布とを比較することにより、ライトガイド14に劣化が生じているか否かを判断することができる。
2つの波高分布にズレが生じている場合、線量算出部21Aは、判定閾値Qthを変更する。例えば、線量算出部21Aは、光検出器15によって検出されるLED50の光量(一例として45%の光量)に対応した値に判定閾値Qthを変更することができる。LED50の光量に基づいて判定閾値Qthを変更することにより、中性子の分布の解析を行うことなく判定閾値Qthを最適な値に設定できる。このように、線量算出部21Aは、光検出部15と合せて、弁別部を構成する。
また、パルス発生器55は、LED50の発光を制御するとともに、LED51を発光させるタイミングを示すパルス信号を制御部20Aに出力している。線量算出部21Aは、光検出器15から出力された電気信号のうち、パルス発生器55から出力されたパルス信号と同期する電気信号を、LED50で発生した光信号の検出結果であると判断する。
これにより、線量算出部21Aは、光検出器15から出力された電気信号のうち、LED50で発生した光信号の検出結果と、シンチレータ13で生じた光の検出結果とを精度良く判別することができる。これにより、線量算出部21Aは、LED50で生じた光信号に関する検出信号の波高分布Xと、シンチレータ13で生じた光に関する検出信号の波高分布Yとを精度良く求めることができる。
本実施形態は以上のように構成され、線量算出部21Aが、LED50からの光信号に基づいて判定閾値Qthを変更することで、LED50からの光信号に基づいて中性子線Nの検出精度の低下を一層抑制することができる。
線量算出部21Aは、LED50からの光信号に関する検出信号の波高分布を予め記憶している。線量算出部21Aが、記憶された波高分布と、光検出器15によって実際に測定されたLED50からの光信号に関する検出信号の波高分布とを比較することにより、リアルタイムで判定閾値Qthを変更することができる。これにより、ライトガイド14が劣化したとしても、リアルタイムで判定閾値Qthを変更することができる。
記憶された波高分布と、光検出器15によって実際に測定されたLED50からの光信号に関する検出信号の波高分布とを比較することにより、ライトガイド14Aの劣化の有無を判断することができる。これにより、ライトガイド14Aの交換時期等を把握することができる。
LED50をキャップ14bに取り付けることにより、ライトガイド14A内にLED50で生じた光を容易に入射させることができる。
(第三の実施形態)
次に、第三の実施形態について説明する。本実施形態は、主に、第一の実施形態に対してLED用ライトガイド(光発生部用光ファイバ)14B及びLED51(図10参照)を追加したものである。また、本実施形態では、第一の実施形態の制御部20とは処理内容が異なる制御部20B(図11参照)を用いている。以下では、第一の実施形態との相違点を主に説明する。また、図面の説明において第一の実施形態と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、第三の実施形態について説明する。本実施形態は、主に、第一の実施形態に対してLED用ライトガイド(光発生部用光ファイバ)14B及びLED51(図10参照)を追加したものである。また、本実施形態では、第一の実施形態の制御部20とは処理内容が異なる制御部20B(図11参照)を用いている。以下では、第一の実施形態との相違点を主に説明する。また、図面の説明において第一の実施形態と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
ここで、光検出器15を用いてシンチレータ13で生じた光を検出する場合、光検出器15によって検出される光量が変化する場合がある。この変化は、光検出器15の不安定性に起因して生じる場合と、ライトガイド14が放射線によって劣化したことに起因して生じる場合とがある。
従来、光検出器15によって検出される光量の変化が、光検出器15の不安定性に起因するものであるか、ライトガイド14が放射線によって劣化したことに起因するものであるかを判定することは困難であった。そこで、本実施形態では、光検出器15によって検出される光量の変化が、光検出器15の不安定性に起因するものであるか、ライトガイド14が劣化したことに起因するものであるかを判定することを目的とする。
図10に示すように、中性子線検出器12Bは、シンチレータ13、ライトガイド14、光検出器15、LED51及びLED用ライトガイド14Bを有している。
LED51の発光は、パルス発生器55(図11参照)によって制御されている。LED51は、パルス発生器55によって制御され、パルス状の光信号を出力する。LED51で生じた光信号は、LED用ライトガイド14Bによって光検出器15に伝送される。
光検出器15は、シンチレータ13で発生した光に加え、LED51で発生した光信号を検出する。光検出器15は、シンチレータ13で発生した光、又は、LED51で発生した光信号の検出時に、電気信号(検出信号)を制御部20B(図11参照)に出力する。
図11に示すように、制御部20Bは、線量算出部21B、照射制御部22、及び、劣化判定部23を有している。劣化判定部23は、光検出器15によって検出されたシンチレータ13からの光に関する検出信号の波高分布と、光検出器15によって検出されたLED51からの光信号に関する検出信号の波高分布とに基づいて、光検出器15の不具合、及び、ライトガイド14の劣化の有無を判定する。
ここで、図12(a)に、光検出器15で受光した光に関する検出信号の波高分布のグラフを示す。図12に示すように、波高分布のグラフには、LED51で生じた光信号に関する検出信号の波高分布Xと、シンチレータ13で生じた光に関する検出信号の波高分布Yとが含まれている。
例えば、光検出器15に不具合が生じ、光検出器15の検出結果が不安定になった場合、図12(a)に示すように、LED51で生じた光信号に関する検出信号の波高分布Xと、シンチレータ13で生じた光に関する検出信号の波高分布Yとが波高の増加方向又は減少方向に全体的にシフトする。なお、図12(a)では、波高の減少方向にシフトした場合の波高分布を破線で示している。
そこで劣化判定部23は、LED51で生じた光信号に関する検出信号の波高分布Xと、シンチレータ13で生じた光に関する検出信号の波高分布Yとが全体的にシフトした場合に、光検出器15に不具合が生じていると判断する。なお、劣化判定部23は、予め記憶していた波高分布と、光検出器15によって実際に測定された結果に基づく波高分布とを比較することによって、光検出器15の不具合の有無を判定してもよい。或は、時間の経過とともに波高分布がシフトした場合に、光検出器15に不具合が生じていると判定してもよい。
また、例えば、ライトガイド14に劣化が生じた場合、図12(b)に示すように、シンチレータ13で生じた光に関する検出信号の波高分布Yのみが波高の減少方向にシフトする。なお、図12(b)では、波高の減少方向にシフトした場合の波高分布Yを破線で示している。ライトガイド14に劣化が生じても、LED51からの光信号には影響がないため、波高分布Xには変化がない。
そこで劣化判定部23は、シンチレータ13で生じた光に関する検出信号の波高分布Yのみがシフトした場合に、ライトガイド14に劣化が生じていると判定する。なお、劣化判定部23は、予め記憶していた波高分布と、光検出器15によって実際に測定された結果に基づく波高分布とを比較することによって、ライトガイド14の劣化の有無を判定してもよい。或は、時間の経過とともに波高分布Yがシフトした場合に、ライトガイド14に劣化が生じていると判定してもよい。
また、パルス発生器55は、LED51の発光を制御するとともに、LED51を発光させるタイミングを示すパルス信号を制御部20Bに出力している。線量算出部21Bは、光検出器15から出力された電気信号のうち、パルス発生器55から出力されたパルス信号と同期する電気信号を、LED51で発生した光信号の検出結果であると判断する。
これにより、線量算出部21Bは、光検出器15から出力された電気信号のうち、LED51で発生した光信号の検出結果と、シンチレータ13で生じた光の検出結果とを精度良く判別することができる。これにより、線量算出部21Bは、LED51で生じた光信号に関する検出信号の波高分布Xと、シンチレータ13で生じた光に関する検出信号の波高分布Yとを精度良く求めることができる。
本実施形態は以上のように構成され、判定部は、LED51からの光信号に関する検出信号の波高分布と、シンチレータ13からの光に関する検出信号の波高分布とに基づいて、光検出器15の不具合の有無、及び、ライトガイド14の劣化の発生の有無を判定する。これにより、光検出器15によって検出された光量に変化があった場合、光検出器15の不具合によるものであるか、ライトガイド14の劣化に起因するものであるかをリアルタイムで判定することができる。光検出器15によって検出された光量の変化の原因をリアルタイムで特定することができるため、光検出器15の不安定性を光の検出中に補正することができる。
なお、第二の実施形態で説明したライトガイド14Aの先端にLED50を取り付けて判定閾値Qthを変更する構成と、第三の実施形態で説明したように、光検出器15の不具合の有無、及び、ライトガイド14の劣化の発生の有無を判定する構成とを組み合わせて使用してもよい。
以上、本発明は、前述した第一から第三の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、下記のような種々の変形が可能である。例えば、第一から第三の実施形態では、本発明の一側面に係る中性子線検出装置を中性子捕捉療法装置1に適用しているが、中性子線検出装置の用途は限定されない。例えば、原子炉の運転状態を監視するモニタとして、本発明の一側面に係る中性子線検出装置を適用してもよい。また、物理実験で使用される加速中性子を測定する際に本発明の一側面に係る中性子線検出装置を使用してもよい。また、非破壊検査用の中性子照射装置において、本発明の一側面に係る中性子線検出装置を使用してもよい。
本発明の種々の側面によれば、光ファイバが劣化して光の透過率が低下しても、中性子線の検出精度の低下を抑制することができる中性子線検出装置及び中性子捕捉療法装置を提供することができる。
1…中性子捕捉療法装置、2…サイクロトロン(加速器)、7…ターゲット、12…中性子線検出器、13…シンチレータ、14、14A…ライトガイド(光ファイバ)、14B…LED用ライトガイド(光発光部用光ファイバ)、15…光検出器、20,20A,20B…制御部、21,21A,21B…線量算出部、23…判定部、50,51…LED(光発光部)、N…中性子線、M…中性子線生成部。
さらに、線量算出部21は、中性子線検出器12による中性子線Nの検出結果に基づいて、コリメータ10の開口10aを通過する中性子線Nの線量を測定(算出)する。線量算出部21は、光検出器15から検出信号を受信し、中性子線に関する信号とガンマ線に関する信号とを弁別する(詳しくは後述する)。線量算出部21は、光検出器15と合せて、弁別部を構成する。
中性子捕捉療法装置1を使用することによって、ライトガイド14の光ファイバは放射線を受けて劣化し光の透過率が低下する。ライトガイド14の光の透過率が低下すると、線量算出部21で計測される光の光量が低下し、図4に示される波高分布は透過率の低下に応じて左へずれる。線量算出部21は、インターバル時間における波高分布にガウス関数をフィッティングして中性子線NによるピークPNを設定し、このピークPNから1.5σ低い値を新たな判定閾値Qthに設定する。線量算出部21は、新たな判定閾値Qthに基づいて、中性子線Nによる検出信号とガンマ線による検出信号とを弁別する。
中性子捕捉療法装置1の中性子線検出器12は、ガンマ線又は中性子線Nを入射するとシンチレータ13が発光し、この発光による光がライトガイド14によって伝送されて光検出器15に導入される。光検出器15は、導入された光に応じて電気信号(検出信号)を制御部20に出力する。制御部20の線量算出部21は、検出信号の波高分布に基づいて判定閾値Qthを調整することができるので、放射線によってライトガイド14の光ファイバが劣化して光の透過率が低下した場合であっても判定閾値Qthを調整して中性子線Nの検出精度の低下を抑制することができる。これにより、中性子線Nを精度良く検出することができる。
この中性子捕捉療法装置1の中性子線検出装置では、波高分布にガウス関数をフィッティングして中性子線によるピークPNを検出し、ピークPNから1.5σ低い値を判定閾値Qthとして調整するので、光ファイバの劣化に応じて判定閾値Qthを変更して精度良く、中性子線Nとガンマ線とを弁別することができる。光量の低下に応じてピークP N が低下するので、ピークP N に応じて判定閾値Qthを変更することで、精度よく中性子線Nとガンマ線との弁別を行うことができる。
また、上記第一の実施形態では、波高分布にガウス関数をフィッティングして中性子線NによるピークPNを検出しているが、その他の関数を用いて波高分布を近似して、中性子線NによるピークPNを検出してもよい。
また、判定閾値Qthとしてその他の値を用いてもよい。図6は検出信号の波高分布と判定閾値Qthとの関係を示すグラフである。図6に示されるように、例えば、中性子線NによるピークPNのイベント数を100%としたときに、イベント数が50%となる値(ガウス分布における低い方の値)を判定閾値Qth(Qth2)として採用してもよい。また、ピークPN(P3)に対する値を判定閾値Qthとして採用してもよく、ピークPNから所定値低い値を判定閾値Qthとして採用してもよい。この所定値は過去のデータに基づいて設定してもよい。
図7に示すように、本実施形態において用いられるライトガイド14Aは、第一の実施形態におけるライトガイド14と同様に、シンチレータ13で生じた光を光検出器15へ伝送する。ライトガイド14Aは、光を伝送する光ファイバ部14aと、光ファイバ部14aの端部を覆うキャップ14bとを含んで構成されている。
このため、線量算出部21Aは、予め記憶しているLED50からの光信号に関する検出信号の波高分布と、光検出器15によって実際に測定されたLED50からの光信号に関する検出信号の波高分布とを比較することにより、ライトガイド14Aに劣化が生じているか否かを判断することができる。
2つの波高分布にズレが生じている場合、線量算出部21Aは、判定閾値Qthを変更する。例えば、線量算出部21Aは、光検出器15によって検出されるLED50の光量(一例として45%の光量)に対応した値に判定閾値Qthを変更することができる。LED50の光量に基づいて判定閾値Qthを変更することにより、中性子の分布の解析を行うことなく判定閾値Qthを最適な値に設定できる。このように、線量算出部21Aは、光検出器15と合せて、弁別部を構成する。
また、パルス発生器55は、LED50の発光を制御するとともに、LED50を発光させるタイミングを示すパルス信号を制御部20Aに出力している。線量算出部21Aは、光検出器15から出力された電気信号のうち、パルス発生器55から出力されたパルス信号と同期する電気信号を、LED50で発生した光信号の検出結果であると判断する。
線量算出部21Aは、LED50からの光信号に関する検出信号の波高分布を予め記憶している。線量算出部21Aが、記憶された波高分布と、光検出器15によって実際に測定されたLED50からの光信号に関する検出信号の波高分布とを比較することにより、リアルタイムで判定閾値Qthを変更することができる。これにより、ライトガイド14Aが劣化したとしても、リアルタイムで判定閾値Qthを変更することができる。
本発明の一側面は、中性子線を検出する中性子線検出装置であって、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、シンチレータで発生した光を伝送する光ファイバと、光ファイバによって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別する弁別部を備え、弁別部は、光ファイバの劣化に応じて判定閾値を設定するものであって、検出信号の波高分布における中性子線によるピークを検出し、ピークから所定値低い値を判定閾値として設定する。
この中性子線検出装置では、放射線を入射したシンチレータが発光し、この発光による光が光ファイバによって伝送され弁別部に導入される。弁別部は、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別する。中性子線検出装置の弁別部は、光ファイバの劣化に応じて判定閾値を調整することができるので、放射線により光ファイバが劣化して光の透過率が低下した場合であっても、判定閾値を調整して中性子線の検出精度の低下を抑制することができる。また、検出信号の波高分布に基づいて判定閾値を調整することができ、中性子線の検出精度の低下を抑制することができる。光ファイバが劣化すると中性子線によるピークも透過率の低下に応じて低下するので、中性子線のピークに基づいて判定閾値を調整することで、中性子線を精度良く検出することができ、検出精度の低下を抑制することができる。波高分布における中性子線のピークは、例えば、過去のデータに基づいて設定してもよい。波高分布における中性子線のピークから所定値低い値を判定閾値に設定することで、光ファイバの劣化に応じて判定閾値を調整することができる。所定値は、例えば、過去のデータに基づいて設定してもよい。
本発明の他の一側面は、中性子線を検出する中性子線検出装置であって、放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、シンチレータで発生した光を伝送する光ファイバと、光ファイバによって伝送された光を受光し、受光した光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、検出信号を中性子線に関する信号と弁別する弁別部と、光発生部を備え、弁別部は、光ファイバの劣化に応じて判定閾値を調整するものであって、光発生部からの光信号に基づいて判定閾値を調整する。中性子線検出装置の弁別部は、光ファイバの劣化に応じて判定閾値を調整することができるので、放射線により光ファイバが劣化して光の透過率が低下した場合であっても、判定閾値を調整して中性子線の検出精度の低下を抑制することができる。弁別部が、光発生部からの光信号に基づいて判定閾値を調整することで、光発生部からの光信号に基づいて中性子線の検出精度の低下を一層抑制することができる。
本発明のさらに他の一側面は、上記の中性子線検出装置を備えた中性子捕捉療法装置であって、荷電粒子線を出射する加速器と、荷電粒子線が照射されることにより中性子線を生成するターゲットを有する中性子線生成部と、を備え、シンチレータは、中性子線及びガンマ線を入射すると光を発生させ、弁別部は、中性子線に関する信号と、ガンマ線に関する信号とを弁別する。
Claims (11)
- 中性子線を検出する中性子線検出装置であって、
放射線が入射すると光を発生させるシンチレータと、
前記シンチレータで発生した前記光を伝送する光ファイバと、
前記光ファイバによって伝送された前記光を受光し、受光した前記光に関する検出信号の波高が判定閾値を超えた場合に、前記検出信号を前記中性子線に関する信号と弁別する弁別部を備え、
前記弁別部は、前記光ファイバの劣化に応じて前記判定閾値を調整する、中性子線検出装置。 - 前記弁別部は、前記検出信号の波高分布に基づいて前記判定閾値を調整する、請求項1に記載の中性子線検出装置。
- 前記弁別部は、前記波高分布における前記中性子線によるピークを検出し、前記ピークに基づき前記判定閾値を調整する、請求項2に記載の中性子線検出装置。
- 前記弁別部は、前記ピークから所定値低い値を前記判定閾値として設定する、請求項3に記載の中性子線検出装置。
- 前記弁別部は、前記波高分布にガウス関数をフィッティングして前記中性子線によるピークを検出し、前記ピークから1.5σ低い値を前記判定閾値とする、請求項4に記載の中性子線検出装置。
- 光発生部を更に備え、
前記弁別部は、前記光発生部からの光信号に基づいて前記判定閾値を調整する、請求項1に記載の中性子線検出装置。 - 前記弁別部は、前記光発生部からの所定の前記光信号を記憶しており、前記記憶された前記所定の光信号と、前記光ファイバを介して検出された実測の前記光信号とを比較し、比較結果に基づいて前記判定閾値を調整する、請求項6に記載の中性子線検出装置。
- 前記光発生部は、前記光ファイバにおける前記シンチレータで発生した光が入射する側の端部に取り付けられる、請求項6又は7に記載の中性子線検出装置。
- 前記光発生部からの前記光信号に基づいて、前記放射線によって前記光ファイバの劣化が生じていること、及び、前記弁別部に不具合が生じていること、のうちいずれが生じているかを判定する判定部と、
を更に備える請求項6に記載の中性子線検出装置。 - 前記光発生部で発生した前記光信号を伝送する光発生部用光ファイバを更に備え、
前記弁別部は、前記光発生部用光ファイバによって伝送された前記光信号を更に受光し、
前記判定部は、前記弁別部によって受光された前記シンチレータで発生した前記光に関する検出信号の波高と前記光発生部から出力された前記光信号に関する検出信号の波高とが、波高の増加方向又は減少方向に全体的にシフトした場合に前記弁別部に不具合が生じていると判定し、前記シンチレータで発生した前記光に関する検出信号の波高のみが波高の減少方向にシフトした場合に前記放射線によって前記光ファイバの劣化が生じていると判定する、
請求項9に記載の中性子線検出装置。 - 請求項1〜10の何れか一項に記載の中性子線検出装置を備えた中性子捕捉療法装置。
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