本願発明の検討によれば、従来の複数の撮像光学系を用いた構成では、撮像装置が大型化、高コスト化する。また、複数の撮像光学系の特性を揃え、かつ2つの撮像光学系の光軸を高精度で平行にする必要性があるため製造が難しく、さらにはカメラパラメータを求めるためのキャリブレーション工程が必要であるため、多くの工数を要すると考えられる。
特許文献1および非特許文献1に開示されるようなDFD法では、1つの撮像光学系によって被写体までの距離を算出することができる。しかしながら、特許文献1および非特許文献1の方法では、焦点が合う被写体までの距離(合焦距離)を変化させて、時分割で複数の画像を取得する必要がある。このような手法を動画に適用すると、撮影の時間差により画像間にズレが生じてしまうため、測距精度を低下させてしまうという課題が生じる。
また、特許文献1には、プリズムによって光路を分割し、バックフォーカスを異ならせた2つの撮像面によって撮像することによって、1回の撮像で被写体までの距離を測定することができる撮像装置が開示されている。しかしながら、このような方法では、撮像面が2つ必要になるため、撮像装置が大型化し、かつ大幅なコストアップとなってしまうという課題が生じる。
本願発明者はこのような課題に鑑み、新規な撮像装置を想到した。本発明の一態様の概要は以下の通りである。
本発明の一態様である撮像装置は、第1の領域、第2の領域、第3の領域を有するレンズ光学系であって、前記第1の領域が、第1の波長帯域の光を透過し、前記第2の領域が、前記第1の波長帯域の光を透過し、前記第1の領域を透過した光線による合焦特性に対して合焦特性を異ならせる光学特性を有し、前記第3の領域が、前記第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の光を透過するレンズ光学系と、前記レンズ光学系を通過した光が入射し、複数の第1、第2、第3の画素を有する撮像素子と、前記レンズ光学系と前記撮像素子との間に配置され、前記第1の領域を通過した光を前記複数の第1の画素に入射させ、前記第2の領域を通過した光を前記複数の第2の画素に入射させ、前記第3の領域を通過した光を前記複数の第3の画素に入射させるマイクロレンズアレイとを備える。
前記レンズ光学系は、前記第1、第2の波長帯域とは異なる第3の波長帯域の光を透過する第4の領域をさらに有し、前記撮像素子は、複数の第4の画素をさらに有し、前記マイクロレンズアレイは、前記第4の領域を通過した光を前記複数の第4の画素に入射させてもよい。
前記第1、第2、第3の領域は、前記レンズ光学系の光軸を中心として分割された領域であってもよい。
前記レンズ光学系において、前記第3の領域および前記第4の領域を透過した光線による合焦特性は、前記第1の領域を透過した光線による合焦特性および前記第2の領域を透過した光線による合焦特性のいずれかと等しくてもよい。
1回の撮像において、前記第1、第2、第3の領域に光線が入射してもよい。
前記第1、第2の領域は緑色帯域の光線を通過させ、前記第3の領域は青色帯域の光線を通過させ、前記第4の領域は赤色帯域の光線を通過させてもよい。
被写体距離がある所定の範囲内にある場合、前記第1の領域に入射した光によって形成される点像強度分布は略一定であり、前記第2の領域に入射した光によって形成される点像強度分布は、被写体までの距離に応じて変化してもよい。
前記第1の領域の表面および前記第2の領域の表面は、互いに異なる曲率半径を有していてもよい。
前記複数の第1および第2の画素は、1回の撮像によって、それぞれ、第1および第2の輝度情報を生成し、前記第1および第2の輝度情報を用いて、第1の画像および第2の画像を生成する第1の信号処理部をさらに備えていてもよい。
前記第1の信号処理部は、画像における所定領域毎に前記複数の第1から第4の画素の輝度情報のうち少なくとも1つ以上の画素成分の鮮鋭度を検出する鮮鋭度検出部を備え、前記それぞれの鮮鋭度のうち最も高い鮮鋭度の成分に基づいて他の画素の輝度情報の成分を鮮鋭化させてもよい。
前記第1の信号処理部は、予め記憶された点像強度分布関数を用いて、前記第1の領域に入射した光が到達する画素の輝度情報によって形成される画像の復元処理を行い、復元された鮮鋭化画像を生成してもよい。
前記第1の信号処理部は、単一の前記点像強度分布関数を用いて、前記第1の領域に入射した光が到達する画素の輝度情報によって形成される画像の全領域の復元処理を行い、復元された鮮鋭化画像を生成してもよい。
前記第1の信号処理部は、前記復元された鮮鋭化画像における所定領域毎に鮮鋭度を検出する鮮鋭度検出部を備え、前記復元された鮮鋭化画像における所定領域毎の鮮鋭度に基づいて他の画素の輝度情報の成分を鮮鋭化させてもよい。
被写体までの距離を算出する第2の信号処理部をさらに備え、前記第2の信号処理部は、前記第1の画像および前記第2の画像を用いて、被写体までの距離を算出してもよい。
被写体距離がある一定の範囲内にある場合、前記第1の画像の鮮鋭度と前記第2の画像の鮮鋭度との比の値は、前記被写体までの距離と相関関係を有し、前記第2の信号処理部は、前記相関関係と、前記第1の画像の鮮鋭度と前記第2の画像の鮮鋭度との比に基づいて、前記被写体までの距離を算出してもよい。
前記第1の信号処理部は、前記複数の第1の画素において得られた第1の画像のコントラストと前記複数の第2の画素において得られた第2の画像のコントラストを検出するコントラスト検出部を備え、被写体距離がある一定の範囲内にある場合、前記第1の画像のコントラストと前記第2の画像のコントラストとの比は前記被写体距離と相関関係を有し、前記第2の信号処理部は、前記相関関係と、前記第1の画像のコントラストと、前記第2の画像のコントラストとに基づいて、前記被写体までの距離を算出してもよい。
前記第2の信号処理部は、前記第1の画像と前記第2の画像とを加算した画像の輝度情報と、前記第1の画像または前記第2の画像の輝度情報とを用いて前記被写体までの距離を算出してもよい。
被写体距離がある一定の範囲内にある場合、前記復元された鮮鋭化画像と前記第2の領域に入射した光によって形成される画像から導出される点像強度分布関数は前記被写体距離と相関関係を有し、前記第2の信号処理部は、前記相関関係と、前記点像強度分布関数とに基づいて、前記被写体までの距離を算出してもよい。
前記第2の領域、前記第3の領域、および前記第4の領域は、互いに異なる光学パワーを有し、前記第2の領域、前記第3の領域、および前記第4の領域が透過する光の合焦位置が、前記第2の領域、前記第3の領域、および前記第4の領域が互いに等しい光学パワーを有する場合と比較して近くてもよい。
前記第1の領域と前記第2の領域との間の境界部に設けられた遮光部材をさらに備えていてもよい。
前記レンズ光学系は絞りをさらに備え、前記第1の領域および前記第2の領域は、前記絞り近傍に配置されていてもよい。
前記第2の信号処理部は、画像の所定領域ごとに被写体距離を算出し、前記第2の信号処理部において算出された前記所定領域ごとの被写体距離を用いてリフォーカスされた画像を生成する第3の信号処理部をさらに備えていてもよい。
前記第2の信号処理部は、前記所定領域ごとの被写体距離を用いて、被写体距離ごとの点広がり関数を生成してもよい。
前記点広がり関数の強度変化が極大となる被写体距離である少なくとも1つのベストフォーカス位置から被写体距離方向において離れるほど、前記点広がり関数の強度の変化は小さくなてもよい。
前記少なくとも1つのベストフォーカス位置は、外部から入力された位置または前記第2の信号処理部によって決定された位置であってもよい。
前記第3の信号処理部は、前記所定領域ごとの被写体距離と、前記点広がり関数を用いて、前記リフォーカスされた画像を生成してもよい。
前記点広がり関数はガウス関数であってもよい。
前記第3の信号処理部は、所定の領域ごとにフーリエ変換を用いて前記点広がり関数の畳み込み演算を行うことにより、前記リフォーカスされた画像を生成してもよい。
前記第3の信号処理部は、前記所定領域ごとの被写体距離に基づいて、空間フィルタ処理を行うことにより、前記リフォーカスされた画像を生成してもよい。
前記少なくとも1つのベストフォーカス位置は、断続的に複数存在してもよい。
前記レンズ光学系の近傍であって、前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域および前記第4の領域にそれぞれ配置された第1から第4のフィルタをさらに備え、前記第1フィルタは第1の波長帯域の光を透過し、前記第2フィルタは第1の波長帯域の光を透過し、前記第3フィルタは第2の波長帯域の光を透過し、前記第4フィルタは第3の波長帯域の光を透過してもよい。
前記レンズ光学系は絞りをさらに備え、前記第1から第4のフィルタは、前記絞り近傍に配置されていてもよい。
本発明の一態様である撮像システムは、上記撮像装置と、カラー画像を生成する第1の信号処理装置をさらに備え、前記第1の信号装置は、前記1回の撮像によって得られた前記複数の第1の画素、前記複数の第2の画素、前記複数の第3の画素、および前記複数の第4の画素の輝度情報を用いて前記カラー画像を生成する。
被写体までの距離を算出する第2の信号処理装置をさらに備え、前記第2の信号処理装置は、前記1回の撮像によって得られた前記複数の第1の画素、前記複数の第2の画素の輝度情報を用いて被写体までの距離を算出してもよい。
本発明の他の一態様である撮像システムは、撮像装置と、信号処理装置とを備える撮像システムであって、前記撮像装置は、第1の領域および第2の領域を有するレンズ光学系であって、前記第2の領域が、前記第1の領域を通過した光線による合焦特性に対して合焦特性を異ならせる光学特性を有するレンズ光学系と、前記レンズ光学系を通過した光が入射する複数の第1の画素と複数の第2の画素とを少なくとも有する撮像素子と、前記レンズ光学系と前記撮像素子との間に配置され、前記第1の領域を通過した光を前記複数の第1の画素に入射させ、前記第2の領域を通過した光を前記複数の第2の画素に入射させるアレイ状光学素子とを備え、前記信号処理装置は、前記複数の第1の画素において得られた第1の画像および前記複数の第2の画素において得られた第2の画像の輝度情報を用いて、撮像画像の所定領域ごとに被写体距離を算出する第1の信号処理部と、前記第1の信号処理部において算出された前記所定領域ごとの被写体距離を用いてリフォーカスされた画像を生成する第2の信号処理部を備える。
上記態様による撮像装置および撮像システムによれば、単一の光学系を用い、1回の撮像によって、カラー画像の出力及び被写体距離の測定のための輝度情報を取得することができる。このため、複数の撮像光学系を用いた撮像装置のように、複数の撮像光学系間の特性や位置を揃える必要がない。また、動画の撮影において、時間の経過とともに被写体の位置に変化が生じても、被写体までの正確な距離を測定することができる。また、任意の被写***置にフォーカスを合わせ、例えば、主要な人物・物をシャープにし、背景のみぼかしたメリハリのある画像を取得することできる。以下、本発明による撮像装置の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の撮像装置Aを示す模式図である。本実施形態の撮像装置Aは、Vを光軸とするレンズ光学系Lと、レンズ光学系Lの焦点近傍に配置されたアレイ状光学素子Kと、撮像素子Nと、第1の信号処理部C1と、第2の信号処理部C2と、記憶部Meを備える。
レンズ光学系Lは、被写体(図示せず)からの光束B1からB4が入射する光学素子L1と、光学素子L1を通過した光が入射する絞りSと、絞りSを通過した光が入射するレンズL2とから構成されている。光学素子L1は、光学領域D1と、光学領域D1を通過した光線による合焦特性に対して合焦特性を異ならせる光学特性を有する光学領域D2とを有する。光学素子L1は、絞りSの近傍に配置されていてもよい。
図2は、光学素子L1を被写体側から見た正面図である。光学領域D2は、サブ光学領域d2A、d2B、d2Cを有する。光学素子L1における光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2Bおよびd2Cは、光軸Vを境界中心として、光軸Vに垂直な面内で上下左右に4分割されている。光学領域D1は、サブ光学領域d2Bと同一の分光透過率特性を有する。光学領域D1、サブ光学領域d2A、d2Cは、それぞれ異なる分光透過率特性を有する。
例えば、光学領域D1およびサブ光学領域d2Bは第1の分光透過率特性を有し、緑色帯域の光線を主に通過させ、他の帯域の光線を吸収する。サブ光学領域d2Aは第2の分光透過率特性を有し、赤色帯域の光線を主に通過させ、他の帯域の光線を吸収する。また、サブ光学領域d1Cは第3の分光透過率特性を有し、青色帯域の光線を主に通過させ、他の帯域の光線を吸収する。
光学素子L1の一部に、例えば異なる波長帯域の光を透過させるフィルタ(例えば有機材料や誘電体多層膜から形成されているフィルタ)が設けられていることにより、光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、d2Cのそれぞれの領域が透過する光の波長帯域を異ならせることができる。また、光学素子L1の材料自体が、分光透過率特性を有していてもよい。例えば光学素子L1が樹脂からなる場合、樹脂に着色材料を添加しておくことにより、光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、d2Cのそれぞれの領域が透過する光の波長帯域を異ならせることができる。また、光学素子L1がガラスからなる場合、ガラスに金属などの微粒子を添加しておくことにより、それぞれの領域が透過する光の波長帯域を異ならせることができる。また、吸収材料を用いる代わりに、光学素子L1の表面に多層干渉膜を形成することにより、それぞれの領域が透過する光の波長帯域を異ならせることができる。この場合、光学素子L1は反射型のカラーフィルタであり、蒸着法等により形成することができる。
なお、図2に示す例では、サブ光学領域d2A、d2B、d2Cを透過した光線による合焦特性は同一である。これにより、所定の被写体距離における鮮鋭度が同じになるため、自然なカラー画像を得ることができる。ただし、必ずしも、サブ光学領域d2A、d2B、d2Cを透過した光線による合焦特性は同一でなくてもよい。
図2において、破線sは、絞りSの位置を示している。図1に示す光束B1、B2、B3、B4は、それぞれ、光学素子L1上の光学領域D1、サブ光学領域d2A、d2B、d2Cを通過する光束である。光束B1、B2、B3、B4は、光学素子L1、絞りS、レンズL2、アレイ状光学素子Kをこの順に通過し、撮像素子N上の撮像面Ni(図4等に示す)に到達する。
図3は、アレイ状光学素子Kの斜視図である。アレイ状光学素子Kにおける撮像素子N側の面には、光学要素M1が格子状に配置されている。それぞれの光学要素M1の断面(縦方向および横方向それぞれの断面)は円弧状であり、それぞれの光学要素M1は、撮像素子N側に突出している。このように、光学要素M1はマイクロレンズであり、アレイ状光学素子Kはマイクロレンズアレイである。
図1に示すように、アレイ状光学素子Kは、レンズ光学系Lの焦点近傍に配置されており、撮像面Niから所定の距離だけ離れた位置に配置されている。実際には、光学素子L1における光学特性がレンズ光学系L全体としての合焦特性に影響を与えるが、アレイ状光学素子Kが配置される位置は、例えば、レンズL2の焦点を基準にして決定すればよい。
なお、本実施形態において、「合焦特性が異なる」とは、所定の波長の光で比較した場合に、その光学系においてその光の集光に寄与する特性の少なくとも1つが異なることをいう。具体的には、所定の波長の光で比較した場合に、光学領域D1、D2を通過した光によるレンズ光学系Lの焦点距離、焦点が合う被写体までの距離、鮮鋭度が一定の値以上となる距離範囲などが異なることをいう。光学領域D1、D2の曲率半径や非球面係数や屈折率を調整することにより、レンズ光学系Lの合焦特性を異なるものとすることができる。
本実施形態では、1回の撮像によって光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、d2Cを通過した光は、レンズL2を通過した後、アレイ状光学素子Kに入射する。アレイ状光学素子Kは、光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、d2Cを通過した光を、それぞれ、撮像素子Nにおける画素に入射させる。
図4(a)は、図1に示すアレイ状光学素子Kおよび撮像素子Nを拡大して示す図であり、図4(b)は、アレイ状光学素子Kと撮像素子N上の画素との位置関係を示す図である。アレイ状光学素子Kは、光学要素M1が形成された面が撮像面Ni側に向かうように配置されている。
図4(b)に示すように、撮像面Niには、画素Pが行列状に配置されている。画素Pは画素P1、P2、P3およびP4に区別できる。
説明のため、2行2列に配置される画素P1、P2、P3およびP4の1組を、「画素群Pg」と称する。1つの画素群Pg内において、画素P1の位置を(1、1)とすると、画素P2が(2、1)、画素P3が(2、2)、画素P4が(1、2)の位置に配置されている。共に緑色帯域の光が入射する画素P1および画素P3は、撮像面Niの面内において、斜めの位置に配置されている。このように、本実施形態においては、画素P1、P2、P3およびP4に入射する光の波長帯域はベイヤー配列によって配列されていてもよい。画素P1と画素P3との位置は逆であってもよい。また、ベイヤー配列以外の配列によって配列されていてもよい。なお、光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、d2CによりR、G、Bの各波長帯域の光を得られるため、画素P1、P2、P3およびP4にはカラーフィルタを形成する必要は無く、モノクロのセンサを用いればよい。
アレイ状光学素子Kは、光学要素M1が形成された面が撮像面Ni側に向かうように配置されている。アレイ状光学素子Kは、その光学要素M1の1つが、撮像面Niにおける2行2列の画素P1〜P4(画素群Pg)の4つの画素に対応するように配置されている。撮像面Ni上には、画素P1、P2、P3およびP4の表面を覆うようにマイクロレンズMsが設けられている。
アレイ状光学素子Kは、光学素子L1上の光学領域D1(図1、図2に示す)を通過した光束B1(図1において実線で示される光束B1)(の大部分)が、撮像面Ni上の画素P3に到達し、サブ光学領域d2Aを通過した光束B2(の大部分)が、撮像面Ni上の画素P4に到達し、サブ光学領域d2Bを通過した光束B3(の大部分)が、撮像面Ni上の画素P1に到達し、サブ光学領域d2Cを通過した光束B4(の大部分)が、撮像面Ni上の画素P2に到達するように設計されている。具体的には、アレイ状光学素子Kの屈折率、撮像面Niからの距離及び光学要素M1表面の曲率半径等のパラメータを適切に設定することで、上記構成が実現する。
光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、d2Cに用いられるフィルタは、例えば、有機材料から形成されているフィルタである。なお、第1の分光透過率特性、第2の分光透過率特性および第3の分光透過率特性のそれぞれを有するフィルタは、互いに異なる波長帯域の光線を主に透過する。ただし、それぞれのフィルタが透過する光の波長帯域の一部が重複していてもよい。また、RGBの原色系のフィルタに限らず、補色系(シアン、マゼンタ、イエロー)のフィルタを用いてもよい。
絞りSは全ての画角の光束が通過する領域である。従って、絞りSの近傍に合焦特性を制御する光学特性を有する面を挿入することにより、全ての画角の光束の合焦特性を同様に制御することができる。すなわち、本実施形態では、光学素子L1は、絞りSの近傍に設けられていてもよい。光学系Lの合焦特性を互いに異ならせる光学領域D1、D2を、絞りSの近傍に配置することによって、領域の分割数に応じた合焦特性を光束に与えることができる。
図1においては、光学素子L1を通過した光が、直接(他の光学部材を介することなく)、絞りSに入射する位置に設けられている。光学素子L1は、絞りSよりも撮像素子N側に設けられていてもよい。この場合、光学素子L1は、絞りSとレンズL2との間に設けられており、絞りSを通過した光が、直接(他の光学部材を介することなく)、光学素子L1に入射してもよい。
また、アレイ状光学素子Kは、光線の入射角に応じて出射方向を振り分ける機能を有する。そのため、絞りSの近傍で分割された光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、d2Cに対応するように、撮像面Ni上の画素に光束を振り分けることができる。
第1の信号処理部C1(図1に示す)は、1回の撮像によって画素P1、P2、P3およびP4において得られた複数の輝度情報を用いてカラー画像を生成する。以下に、具体的にカラー画像を生成する方法について説明する。
図1の撮像装置Aの光学系において、光学領域D1が非球面を有し、光学領域D2(サブ光学領域d2A、d2B、およびd2C)が平面を有する。また、説明を簡略化するため、レンズL2は収差のない理想レンズであるものとして説明する。
光学領域D2は平面を有するため、光学領域D2とレンズL2を通過した光線には、図5の実線で示すグラフのように球面収差は生じない(または少ない)。球面収差がない場合、焦点からずれるに従って点像強度分布が変化する。すなわち、被写体距離の変化に伴い点像強度分布は変化する。
また、光学領域D1における非球面形状により、光学領域D1とレンズL2を通過した光線による球面収差は、図5の破線で示すグラフのようになる。光学領域D1における非球面形状を調整することで、このような球面収差を与えることができる。このような球面収差により、レンズ光学系Lの焦点近傍の所定の範囲内において、光学領域D1を通過した光線による点像強度分布を略一定にすることができる。すなわち、所定の被写体距離範囲内において点像強度分布を略一定にすることができる。
図6は、被写体距離毎の点像強度分布の概念図である。図6の向かって左端の列は、画素P3の点像強度分布のみを抽出し、画素P1、P2、P4の点像強度分布を0レベルにてマスキングしたものである。すなわち、光学領域D1を通過した光束によって形成された点像強度分布である。また、右端の列は画素P1の点像強度分布のみを抽出し、画素P2、P3、P4の点像強度分布を0レベルにてマスキングしたものである。すなわち、サブ光学領域d2Bを通過した光束によって形成された点像強度分布である。画素P3の点像強度分布は被写体距離が変化しても略一定であり、画素P1の点像強度分布は被写体距離が遠いほど、点像の大きさが小さくなっていることがわかる。
点像強度分布の変化に伴い、鮮鋭度も変化する。点像の大きさが小さくなるほど画像の鮮鋭度が増すため、被写体距離と鮮鋭度の関係をグラフで示すと、図7のような関係になる。図7のグラフにおいて、G1は画素P3(緑色の成分)で生成された画像(光学領域D1を通過した光によって生成された画像)の所定領域の鮮鋭度を示しており、G2、R、Bはそれぞれ画素P1(緑色の成分)、画素P4(赤色の成分)、P2(青色の成分)で生成された画像の所定領域の鮮鋭度を示している。
鮮鋭度は、所定の大きさの画像ブロック内において隣接する画素間の輝度値の差分に基づいて求めることができる。また、所定の大きさの画像ブロックの輝度分布をフーリエ変換した周波数スペクトルに基づいて求めることもできる。
所定の大きさのブロック内における鮮鋭度をEとし、画素P1、P2、P3、およびP4の成分毎に隣接する画素間の輝度値の差分に基づいて求める場合は、例えば(数1)を用いる。
前述の通り、画素P1、P2、P3、およびP4は、ベイヤー配列を成しているため、それぞれの成分の鮮鋭度を求めるには、画像のx方向、y方向共に1画素おきの画素情報を抽出して計算する。
(数1)においてΔxi,jは、所定の大きさの画像ブロック内の座標(i,j)における画素の輝度値と座標(i+2,j)の画素の輝度値との差分値であり、Δyi,jは、所定の大きさの画像ブロック内の座標(i,j)における画素の輝度値と座標(i,j+2)の画素の輝度値との差分値である。座標jおよび座標j+2を用いて計算されているのは、画素P3、P1のそれぞれにおいて得られる画像では、横方向(x方向)、縦方向(y方向)の輝度情報が1画素おきに形成されるためである。
(数1)の計算により、所定の大きさの画像ブロック内の輝度値の差が大きいほど、大きな鮮鋭度が得られる。
画像の鮮鋭度は前述の(数1)を用いて求めることもできるが、所定の大きさのブロック内における鮮鋭度をフーリエ変換した周波数スペクトルに基づいて求めることもできる。
図8(a)から(c)は、16×16のサイズの画像ブロックの輝度分布を示している。図8(a)、(b)、(c)の順に鮮鋭度が小さくなっている。図8(d)から(f)は、図8(a)から(c)のそれぞれに示す画像ブロックを2次元でフーリエ変換を行うことによって得られた周波数スペクトルを示す。図8(d)から(f)では、わかりやすくするために、各周波数スペクトルの強度を対数変換して表示しており、周波数スペクトルが強いほど明るく示されている。各周波数スペクトルにおいて中央の最も輝度の高い箇所が直流成分であり、周辺部に近づくほど周波数が高くなっている。
図8(d)から(f)では、画像の鮮鋭度が小さくなるほど高い周波数スペクトルが欠落していくことがわかる。従って、これらの周波数スペクトルから鮮鋭度を求めるには、例えば、周波数スペクトル全体あるいは一部を抽出することによって求めることができる。
カラー画像を生成する場合、画素P1、P2、P3、およびP4の輝度情報を元に、画素位置毎に欠落した色情報を単に補完してカラー画像を生成してもよいが、図7のようにG1の鮮鋭度は、G2、B、Rの鮮鋭度に比べて小さいので、G1の鮮鋭度を鮮鋭化した後にカラー画像を生成してもよい。
図9は、G2、B、Rの鮮鋭度に基づいてG1の鮮鋭度を鮮鋭化する方法について説明する図である。図9(a)は、被写体である白黒チャートであり、図9(b)は、(a)の被写体の輝度の断面を示す図である。図9(b)に示すように、チャートの輝度の断面はステップ状であるが、例えば、チャートを画素P1、P2、P4に到達する光線が最も合焦する被写***置から少しだけ手前にずれた所定の位置に配置して撮像すると、画像の輝度断面は、図9(c)のようになる。図9(c)のグラフにおいて、G1は画素P3(緑色の成分)で生成された画像の輝度断面であり、G2、B、Rはそれぞれ画素P1(緑色の成分)、画素P2(青色の成分)、画素P4(赤色の成分)で生成された画像の輝度断面である。このように、G2、B、Rの輝度断面の方が、G1の輝度断面より図9(b)の実際のチャートの輝度断面に近く、鮮鋭度が高いと言える。
図9(a)のような白黒チャートを撮像した場合は、G2、B、Rのそれぞれの輝度断面はほぼ同じ断面となるが、実際にはあらゆる色成分の被写体画像を撮像するため、図9(c)のG2、B、Rの輝度断面は、一致しない場合が殆どである。従って、G2、B、Rの輝度断面からそれぞれの鮮鋭度を検出し、鮮鋭度の高い色成分を選択して、G1の輝度断面を鮮鋭化させてもよい。鮮鋭度の検出は、第1の信号処理部C1内の鮮鋭度検出部において行われる。鮮鋭度の高い輝度断面を選択し、その輝度断面を2回微分すると、図9(d)の分布が得られ、鮮鋭度の高い色成分の画像のエッジを検出することができる。次に、図9(d)の分布を図9(c)のG1の輝度分布から減じることにより、図9(e)の分布が得られ、G1の輝度分布を鮮鋭化することができる。ここで、図9(d)の分布を減じる際、図9(d)の分布に所定の係数を乗じた後に、図9(c)のG1の輝度分布から減じることにより、G1の鮮鋭化の度合いを制御することができる。
本実施形態では、説明を簡単にするため、画像を鮮鋭化する説明を1次元で行っているが、画像は2次元であるため、実際は2次元で鮮鋭化処理を行う。
以上のような画像処理により、図7の実線で示したG1の鮮鋭度は、破線で示したG1’のように鮮鋭化させることができ、生成するカラー画像を鮮鋭化させることができる。
図10は、図1において光学領域D1における光学面を非球面形状から球面形状に置き換えた場合の被写体距離と鮮鋭度の関係を示すグラフである。このような場合でも図7の場合と同様に、カラー画像を鮮鋭化することができる。
図10においては、被写体距離によって鮮鋭度の高い色の成分が異なる。従って、G1、G2、R、およびBの輝度断面からそれぞれの鮮鋭度を検出し、鮮鋭度の最も高い色成分を選択して、他の色成分を鮮鋭化させる。
以上のような画像処理により、図10に実線で示したG1、G2、R、およびBの鮮鋭度は、それぞれ破線で示したG1’、G2’、R’、およびB’のように鮮鋭化させることができ、生成するカラー画像を鮮鋭化させることができる。
次に、他の画像鮮鋭化手法について説明する。図11は、G1の鮮鋭度を鮮鋭化したG1’に基づいてG2、B、Rの鮮鋭度を鮮鋭化する方法について説明する図である。光学領域D1、D2の構成は図7の場合と同じであり、光学領域D1を通過した光線によって形成された点像強度分布は、所定の被写体距離範囲内において略一定となる。従って、画素P3(G1の成分)をそれぞれ抽出して形成された点像強度分布は、所定の被写体距離範囲内において略一定となる。所定の被写体距離範囲において点像強度分布が略一定であれば、画素P3(G1の成分)を抽出して形成された画像は、被写体距離にかかわらず、所定の点像強度分布に基づいて復元することが可能である。
以下に撮影画像を、予め記憶された点像強度分布関数に基づいて復元する方法について説明する。原画像をf(x,y)とし、点像強度分布をh(x,y)とすると、撮影画像g(x,y)は、(数2)で表すことができる。
(数2)の両辺をフーリエ変換すると(数3)のようになる。
ここで、(数4)の逆フィルタHinv(u,v)を劣化画像G(u,v)に適用することによって、(数5)のように原画像の2次元フーリエ変換F(u,v)が求まる。これを逆フーリエ変換することによって、原画像f(x,y)を復元画像として得ることができる。
しかし、H(u,v)が0あるいは極めて小さい値となるとHinv(u,v)が発散するため、(数6)のようなウィーナフィルタHw(u,v)を用いて劣化画像を復元する。
(数6)においてN(u,v)はノイズである。通常はノイズと原画像F(u,v)は未知であるため、実際には定数kを用い(数7)のフィルタにて劣化画像を復元する。
このような復元フィルタにより、図11の実線で示すG1の鮮鋭度は、点線で示すG1’のように鮮鋭化させることができる。このように、本実施形態によると、点像強度分布関数を用いて、光学領域D1に入射した光が到達する画素の輝度情報によって形成される画像の全領域の復元処理を行うことができる。一般的に点像強度分布関数は光学系の撮像位置に応じて変化するため、各撮像位置に対応した点像強度分布関数を用いてもよい。但し、点像強度分布関数が撮像位置にほとんど依存しない光学系の場合には、単一の点像強度分布関数で画像の全領域の復元処理を行うことができる。点像強度分布関数は予めメモリ等に保存しておく必要があるが、単一の点像強度分布を用いることにより、メモリの使用量を低減させることができる。さらに図9で示した方法と同様にして、G1’の輝度断面(復元された鮮鋭化画像)から、所定領域ごとにそれぞれの鮮鋭度を検出し(鮮鋭度検出部)、鮮鋭度の高い色成分の輝度断面を2回微分し、G2、B、Rから減じることにより、G2、B、Rの鮮鋭度を、図11の破線で示すG2’、B’、R’のように向上させることができる。このように、鮮鋭度に基づいて他の画素の輝度情報の成分を鮮鋭化させることができる。
以上のような画像処理により、図11の実線で示したG1の鮮鋭度、およびG2、B、Rの鮮鋭度は、点線で示したG1’および破線で示したG2’、B’、R’のように向上し、生成するカラー画像を鮮鋭化させることができる。このような鮮鋭化処理によって、図7で示した鮮鋭化処理と比べて、被写界深度をさらに拡張することができる。
次に、具体的に被写体距離を求める方法について説明する。
図12は、実施の形態1における撮像装置Aを示す断面図である。図12において図1と同じ構成要素には、図1と同じ符号を付している。図12においてはアレイ状光学素子K(図1等に示す)の図示は省略しているが、図12の領域Hには、実際には、アレイ状光学素子Kが含まれている。領域Hは、図4(a)に示す構成を有する。
表1および表2は、図12に示す撮像装置Aの光学系の設計データである。表1および表2において、Riは各面の近軸曲率半径(mm)、diは各面の面中心間隔(mm)、ndはレンズもしくはフィルタのd線の屈折率、νdは各光学素子のd線のアッベ数を示している。また、非球面形状は、面頂点の接平面から光軸方向の距離をx、光軸からの高さをhとして、rを近軸曲率半径、kを円錐定数、Am(m=4,6,8,10)を第m次の非球面係数としたとき(数8)で表される。また、表3は光学領域D1、サブ光学領域d2A、d2B、d2Cの分光透過率特性を示す。光学領域D1とサブ光学領域d2Bは同一の分光透過率特性である。
図1で示した第1の信号処理部C1は、画素P3(G1の成分)からの輝度情報を抽出して得られる第1の画像I1(図1に示す)と、画素P1(G2の成分)からの輝度情報を抽出して得られる第2の画像I2とを出力する。2つの光学領域D1、D2の光学特性は互いに異なるため、第1、第2の画像I1、I2の画像の鮮鋭度(輝度を用いて算出される値)は、被写体距離によって異なる。記憶部Me(図1に示す)には、光学領域D1、D2のそれぞれを通過した光の鮮鋭度と被写体距離との相関関係が記憶されている。第2の信号処理部C2(図1に示す)において、第1、第2の画像I1、I2の鮮鋭度と上記相関関係とに基づいて、被写体までの距離を得ることができる。
ここで図7、図11におけるZの範囲は、G2が変化し、かつG1がほとんど変化しない領域を示している。Zの範囲では、このような関係を利用して被写体距離を求めることができる。例えば、Zの範囲では、被写体距離と、鮮鋭度G1とG2の比に相関があるため、予め被写体距離と、鮮鋭度G1、G2の比との相関関係を記憶部Meに記憶しておく。
撮像装置の使用時には、1回の撮像の結果得られるデータのうち、画素P3(G1の成分)のみで生成された第1の画像I1と画素P1(G2の成分)のみで生成された第2の画像I2との鮮鋭度の比を各演算ブロック毎に求める。そして、記憶部Meに記憶されている相関関係を利用して、被写体距離を求めることができる。具体的には、各演算ブロック毎に、上記相関関係における鮮鋭度の比と、第1の画像I1と第2の画像I2との鮮鋭度の比の値とを比較する。そして、両者が一致する値に対応する被写体距離を、撮影時の被写体までの距離とする。
画素P3のみで生成された第1の画像I1の鮮鋭度と画素P1のみで生成された第2の画像I2の鮮鋭度との比から被写体距離を一意的に求めるためには、鮮鋭度の比が、所定の被写体距離範囲内で全て異なっている必要がある。
図7、図10および図11においては、Zの範囲内で、鮮鋭度の比が全て異なっているため、被写体距離を一意的に求めることができる。また、鮮鋭度の値が低すぎると比を求めることができないため、鮮鋭度の値は一定値以上であってもよい。
なお、被写体距離と鮮鋭度の関係は、光学領域D1、D2における面の曲率半径や非球面係数や屈折率によって決まる。つまり、光学領域D1、D2は、第1の画像I1の鮮鋭度と第2の画像I2の鮮鋭度との比が、所定の距離範囲内で全て異なるような光学特性を有している必要がある。
なお、本実施形態では、輝度を用いて算出される値(輝度情報)であれば、鮮鋭度以外の値、例えばコントラストを用いて被写体距離を求めてもよい。コントラストは、例えば、所定の演算ブロック内における最大輝度値と最低輝度値の比から求めることができる。鮮鋭度は輝度値の差分であるのに対し、コントラストは輝度値の比である。最大輝度値である一点と最低輝度値である一点との比からコントラストを求めてもよいし、例えば輝度値の上位数点の平均値と、輝度値の下位数点の平均値との比からコントラストを求めてもよい。被写体距離がある一定の範囲内にある場合、第1の画像I1のコントラストと、第2の画像I2のコントラストとは、被写体距離と相関関係を有している。コントラストを用いて被写体距離を求める場合も、鮮鋭度の場合と同様に、予め被写体距離と、コントラストの比との相関関係を記憶部Meに記憶させておく。この場合、第1の信号処理部C1は、画素P3によって得られた第1の画像I1のコントラストと、画素P1によって得られた第2の画像I2のコントラストとを検出するコントラスト検出部を備えている。各演算ブロック毎に第1の画像I1と第2の画像I2とのコントラストの比を求めることにより、相関関係を利用して被写体距離を求めることができる(第2の信号処理部C2)。
また、本実施形態では、鮮鋭度やコントラスト以外の値、例えば点像強度分布を用いて被写体距離を求めてもよい。以下に第1の画像I1と第2の画像I2から点像強度分布を求める方法について説明する。
前述の(数7)を用いて、画素P3(G1の成分)のみで生成された第1の画像I1を復元すると、元画像f(x,y)に極めて近い復元画像i1’(x,y)が求まる。ここで、画素P1(G2の成分)のみで生成された第2の画像をi2(x,y)とし、光学領域D2を通過する光線による点像強度分布をh2(x,y)とすると、i2(x,y)は(数9)で表すことができる。
(数9)の両辺をフーリエ変換すると(数10)のようになる。
(数10)を変形すると、(数11)のように、点像強度分布h2(x,y)の周波数領域の値H2(u,v)が求められる。
これを逆フーリエ変換することによって、光学領域D2を通過する光線による点像強度分布h2(x,y)を求めることができる。
光学領域D2を通過する光線による点像強度分布h2(x,y)は、被写体距離によって変化するため、被写体距離がある一定の範囲内にある場合、点像強度分布h2(x,y)と被写体距離とは相関を有する。この相関関係を利用して被写体距離を求めることができる。
点像強度分布を代表的な数値で表す場合、例えば点像強度分布の直径を用いることができる。鮮鋭度やコントラストの場合と同様に、予め被写体距離と、点像の直径との相関関係を記憶部Meに記憶させておく。各ブロック毎に第1の画像I1と第2の画像I2から点像強度分布を求め、点像強度分布から点像の直径を求めることにより、相関関係を利用して被写体距離を求めることができる。点像の直径は、例えば、点像強度分布の半値幅から求めることができる。
本実施形態は、図10のように各領域の曲率半径を互いに異ならせた場合において、第1の画像I1および第2の画像I2を加算した画像を生成する構成を備えていてもよい。第1の画像I1および第2の画像I2の加算によって生成された画像において鮮鋭度が一定の値以上になる距離範囲は第1の画像I1および第2の画像I2よりも大きい。この場合、加算によって生成された画像の鮮鋭度と、第1の画像I1または第2の画像I2のいずれかの画像の鮮鋭度との比は、被写体距離と相関関係を有する。この相関関係をあらかじめ記憶しておくことにより、画像の所定領域毎に被写体距離を求めることができる。
なお、本実施の形態の撮像装置の光学系は、像側テレセントリック光学系であってもよい。これにより画角が変化しても、アレイ状光学素子Kの主光線入射角は、0度に近い値で入射するため、撮像領域全域にわたって、画素P1、P2、P3、およびP4に到達する光束間のクロストークを低減することができる。
また、前述の通り本実施の形態では、説明を簡略化するためにレンズL2を理想レンズとして説明したが、必ずしも理想レンズを用いなくてもよい。例えば、理想レンズでないレンズは軸上色収差を有しているが、前述の通り、鮮鋭度の高い色成分を選択して他の色成分を鮮鋭化させることができるため、理想レンズでなくても、鮮鋭度のカラー画像を生成することができる。また、被写体距離を求める場合は、単一の色成分(本実施の形態では緑色の成分)に基づいて距離を求めるので、軸上色収差を有していてもよい。
また、理想レンズでないレンズを用いる場合、軸上色収差を光学素子L1で補正する構成であってもよい。本実施の形態では、光学素子L1の光学領域D2(サブ光学領域d2A、d2B、およびd2C)は全て平面を有するとしているが、それぞれ異なる光学面を有することにより、軸上色収差を補正することができる。前述の通り、サブ光学領域d2A、d2B、およびd2Cを通過した光線はそれぞれ、画素P4、画素P1、および画素P2に到達する。画素P4、画素P1、および画素P2には、それぞれ赤色、緑色、および青色の波長成分の光が主に到達するため、レンズL2に軸上色収差を有するレンズを適用する場合、サブ光学領域d2A、d2B、およびd2Cの各光学面は、それぞれの波長帯域の光の合焦位置が等しくなるように、それぞれの光学面上の光学パワーを異ならせてもよい。このような構成により、サブ光学領域d2A、d2Bおよびd2Cが等しい光学パワーを有する場合と比較して、サブ光学領域d2A、d2Bおよびd2Cを透過した光の合焦位置を互いに近づけることができるため、レンズL2で生じる軸上色収差を光学素子L1によって補正することができる。軸上色収差を光学素子L1によって補正することにより、レンズL2を構成するレンズ枚数を削減することができ、光学系を小型化することができる。
また、本実施の形態では光学素子L1とレンズL2は分離しているが、レンズL2に光学領域D1、D2を設け、光学素子L1を除去した構成であってもよい。この場合、絞りSはレンズL2の光学領域D1、D2の近傍に配置してもよい。
また、本実施の形態1では、光学領域D1とサブ光学領域d2Bとの面積を等しくしている。このような構成により、画素P3と画素P1の露光時間を等しくすることができる。光学領域D1とサブ光学領域d2Bとの面積が異なる場合には、画素P3と画素P1との露光時間を異ならせてもよい。例えば、光学領域D1の面積のほうがサブ光学領域d2Bの面積よりも広い場合には、画素P3の露光時間を画素P1の露光時間よりも短くしもてよい。
以上のように、本実施形態では、単一の撮像系を用いた1回の撮像によって、カラー画像と被写体距離の両方を取得することができる。すなわち、本実施形態にかかる撮像装置を用いて1回撮像することにより、カラー画像出力及び被写体距離測定のための輝度情報を取得することができる。そして、当該輝度情報を用いて、カラー画像及び被写体距離の両方を取得することができる。被写体距離については、各演算ブロック毎に算出することができるため、カラー画像の任意の画像位置の被写体距離を取得することができる。従って、画像全域の被写体距離マップを取得することもできる。また、単一の撮像系により被写体までの距離を得ることができるため、複数の撮像光学系を用いた撮像装置のように、複数の撮像光学系間の特性や位置を揃える必要がない。また、1回の撮像において、光学領域D1、D2(サブ光学領域d2A、d2B、d2C)に光線が入射するため、撮影時の時間差による画像間のズレは生じない。また、本実施形態の撮像装置を用いて動画を撮影した場合、時間の経過によって被写体の位置に変化が生じても、被写体までの正確な距離を測定することができる。
本実施形態においては、撮像装置は図13に示すような構成を有していてもよい。図13は、実施の形態1の他の撮像装置を示す図である。図13に示す撮像装置においては、第1の信号処理部C1によって、画素P3によって得られた第1の画像I1と、画素P1によって得られた第2の画像I2と、画素P2、P4によってそれぞれ得られた第3、第4の画像I3、I4とが出力される。第2の信号処理部C2により、第1の画像I1と第2の画像I2とにおいて隣接する画素間の輝度値の差(鮮鋭度)によって表される輝度情報を用いて測距演算が実行される。第3の信号処理部C3により、各波長帯域の画像I1〜I4のうち波長帯域の異なる少なくとも2つ以上の画像を合成してカラー画像が生成される。
図13に示す構成においては、例えば画像I2、I3、I4を合成することによりカラー画像を形成する。なお、画像I2の代わりに画像I1を用いることもできるが、そのままでは、図7に示すように被写体距離に対する鮮鋭度G1はG2、G3、G4と異なるため不自然な画像となる。したがって、カラー画像の形成に画像I1を用いる場合には、図7に示すように画像処理により鮮明な画像に変換しておくとよい。例えば、ラプラシアンフィルタ処理による鮮鋭化処理を用いるとよい。
また、表1には、サブ光学領域d2A、d2B、d2Cの3つの領域が平面、光学領域D1が略一定の点像強度分布を生成する非球面を有するとしたが、図14に示すように、光学領域D1が平面を有し、サブ光学領域d2A、d2B、d2Cの3つの領域が略一定の点像強度分布を生成する光学面を有するとしてもよい。この場合、図2と同じように、光学領域D1とサブ光学領域d2Bとを通過した画像I1、I2を用いて被写体までの距離を測定することができる。また、それぞれの画素によって得られた画像を合成してカラー画像を生成することができる。このとき、画像処理により、鮮鋭度の低い画像を鮮鋭化させておくと鮮明なカラー画像が得られる。
また、図15に示すように、光学領域D1とサブ光学領域d2Cとが平面を有し、サブ光学領域d2A、d2Bの2つの領域が、略一定の点像強度分布を生成する光学面を有するとしてもよい。この場合、画像I4、画像I2に鮮鋭化処理を施した後カラー画像を形成するとよい。
(実施の形態2)
本実施の形態2は、マイクロレンズアレイを撮像面上に形成したという点で、実施の形態1と異なる。ここでは、本実施形態において実施の形態1と同様の内容についての詳細な説明は省略する。
図16(a)および(b)は、アレイ状光学素子Kおよび撮像素子Nを拡大して示す図である。本実施形態では、マイクロレンズアレイMdが、撮像素子Nの撮像面Ni上に形成されている。撮像面Niには、実施の形態1等と同様に、画素Pが行列状に配置されている。これら複数の画素Pに対して、1つのマイクロレンズの光学要素が対応している。本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、光学素子L1上の異なる領域を通過した光束を、それぞれ異なる画素に導くことができる。また、図16(b)は、本実施形態の変形例を示す図である。図16(b)に示す構成では、撮像面Ni上に、画素Pを覆うようにマイクロレンズMsが形成され、マイクロレンズMsの表面上にアレイ状光学素子Kが積層されている。図16(b)に示す構成では、図16(a)の構成よりも集光効率を高めることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態3は、光学素子L1の各光学領域の境界部に遮光部材を配置したという点で、実施の形態1および2と異なる。ここでは、本実施形態において実施の形態1と同様の内容についての詳細な説明は省略する。
図17(a)は、実施の形態3の光学領域D1、D2の境界部に遮光部材Qを配置した正面図である。図17(a)は、実施の形態3の光学領域D1、D2の境界部に遮光部材Qを配置した正面図である。また、図17(b)は、実施の形態3の光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、d2Cの境界部に遮光部材Qを配置した正面図である。
各領域の境界部では、形状が不連続に変化するため、境界部では段差が生じ、不要な光が発生する場合がある。したがって、各境界部に遮光部材Qを配置することにより、不要な光の発生を抑制することができる。遮光部材Qとしては、例えば、カーボンブラックを練りこんだポリエステルフィルム等を用いればよい。遮光部材Qは絞りと一体的に形成されていてもよい。
図17(b)には、線状の遮光部材Qを用いることにより、遮光部材Qによって区切られる部分の形状が扇形になる形態を示している。本実施形態においては、光を透過させる部分に円形や楕円形、または矩形などの形の開口を有する遮光部材を用いることにより、遮光部材Qによって区切られる各部分を、円形や楕円、あるいは矩形にしてもよい。
(実施の形態4)
図18は、実施の形態4の撮像装置Aを示す模式図である。本実施形態の撮像装置Aは、Vを光軸とするレンズ光学系Lと、レンズ光学系Lの焦点近傍に配置されたアレイ状光学素子Kと、撮像素子Nと、第2の信号処理部C2と、第3の信号処理部C3と、記憶部Meを備える。
レンズ光学系Lは、互いに合焦特性を異ならせる光学特性を有する2つの光学領域D1、D2を有し、被写体(図示せず)からの光束B1、B2が入射する光学素子L1と、光学素子L1を通過した光が入射する絞りSと、絞りSを通過した光が入射するレンズL2とから構成されている。光学素子L1は、絞りSの近傍に配置されていてもよい。
図19は、光学素子L1を被写体側から見た正面図である。光学素子L1における光学領域D1とD2は、光軸Vを境界中心として、光軸Vに垂直な面内で上下に2分割されている。図19において、破線sは、絞りSの位置を示している。図18において、光束B1は、光学素子L1上の光学領域D1を通過する光束であり、光束B2は、光学素子L1上の光学領域D2を通過する光束である。光束B1、B2は、光学素子L1、絞りS、レンズL2、アレイ状光学素子Kをこの順に通過し、撮像素子N上の撮像面Ni(図21等に示す)に到達する。
図20は、アレイ状光学素子Kの斜視図である。アレイ状光学素子Kにおける撮像素子N側の面には、光軸Vに垂直な面内で横方向に長細い複数の光学要素M1が縦方向に配置されている。それぞれの光学要素M1の断面(縦方向の断面)は、撮像素子N側に突出した円弧状の形状を有する。このように、アレイ状光学素子Kは、レンチキュラレンズの構成を有する。
図18に示すように、アレイ状光学素子Kは、レンズ光学系Lの焦点近傍に配置されており、撮像面Niから所定の距離だけ離れた位置に配置されている。実際には、光学素子L1における光学特性がレンズ光学系L全体としての合焦特性に影響を与えるが、アレイ状光学素子Kが配置される位置は、例えば、レンズL2の焦点を基準にして決定すればよい。なお、本実施形態において、「合焦特性が異なる」とは、その光学系において光の集光に寄与する特性の少なくとも1つが異なることをいい、具体的には、焦点距離、焦点が合う被写体までの距離、鮮鋭度が一定の値以上となる距離範囲などが異なることをいう。光学領域D1、D2における曲率半径や非球面係数や屈折率を調整することにより、レンズ光学系Lの合焦特性を異なるものとすることができる。
本実施形態では、2つの光学領域D1、D2を通過した光は、レンズL2を通過した後、アレイ状光学素子Kに入射する。アレイ状光学素子Kは、光学領域D1を通過した光を撮像素子Nにおける画素P1(図21等に示す)に、光学領域D2を通過した光を撮像素子Nにおける画素P2に入射させる。
図21(a)は、図18に示すアレイ状光学素子Kおよび撮像素子Nを拡大して示す図であり、図21(b)は、アレイ状光学素子Kと撮像素子N上の画素との位置関係を示す図である。アレイ状光学素子Kは、光学要素M1が形成された面が撮像面Ni側に向かうように配置されている。撮像面Niには、画素Pが行列状に配置されている。画素Pは画素P1およびP2に区別できる。
画素P1は、横方向(行方向)に1行に並んで配置されている。縦方向(列方向)において、画素P1は1つおきに配置されている。また、画素P2は、横方向(行方向)に1行に並んで配置されている。縦方向(列方向)において、画素P2は1つおきに配置されている。また、画素P1の行と画素P2の行は、縦方向(列方向)に交互に配置されている。
アレイ状光学素子Kは、その光学要素M1の1つが、撮像面Ni上における1行の画素P1および1行の画素P2からなる2行の画素に対応するように配置されている。撮像面Ni上には、画素P1およびP2の表面を覆うようにマイクロレンズMsが設けられている。
アレイ状光学素子Kは、光学素子L1上の光学領域D1(図18、図19に示す)を通過した光束B1(図18において実線で示される光束B1)の大部分が、撮像面Ni上の画素P1に到達し、光学領域D2を通過した光束(図18において破線で示される光束B2)の大部分が、撮像面Ni上の画素P2に到達するように設計されている。具体的には、アレイ状光学素子Kの屈折率、撮像面Niからの距離及び光学要素M1表面の曲率半径等のパラメータを適切に設定することで、上記構成が実現する。
絞りSは全ての画角の光束が通過する領域である。従って、絞りSの近傍に合焦特性を制御する光学特性を有する面を挿入することにより、全ての画角の光束の合焦特性を同様に制御することができる。すなわち、本実施形態では、光学素子L1は、絞りSの近傍に設けられていてもよい。互いに合焦特性を異ならせる光学特性を有する光学領域D1、D2を、絞りSの近傍に配置することによって、領域の分割数に応じた合焦特性を光束に与えることができる。
図18においては、光学素子L1を通過した光が、直接(他の光学部材を介することなく)、絞りSに入射する位置に設けられている。光学素子L1は、絞りSよりも撮像素子N側に設けられていてもよい。この場合、光学素子L1は、絞りSとレンズL2との間に設けられており、絞りSを通過した光が、直接(他の光学部材を介することなく)、光学素子L1に入射してもよい。
また、アレイ状光学素子Kは、光線の入射角に応じて出射方向を振り分ける機能を有する。そのため、絞りSの近傍で分割された光学領域D1、D2に対応するように、撮像面Ni上の画素に光束を振り分けることができる。
図22は、本実施形態の信号処理部の処理内容を説明するフローチャートである。信号処理部はリフォーカス画像を生成する機能を有する。ここで、リフォーカスとは、撮像装置によって得られた画像(撮像画像)を用い、所望の(任意の)被写体距離にある被写体に焦点を合わせた画像を再構成することである。なお、「被写体距離」とは、撮像装置から被写体までの距離のことを言う。リフォーカスを行うことにより、画像において、所望の被写体距離にある被写体の鮮鋭度が、その周囲の領域の鮮鋭度よりも高い状態になる。また、リフォーカス画像とは、所望の被写体距離にある被写体の鮮鋭度が、その周囲の領域の鮮鋭度よりも高い状態にある画像である。
図22に示すように、まず、ステップST1において、撮像素子Nから得られた画像の輝度情報を求め、必要に応じて画像を鮮鋭化する。ここで、「輝度情報」の具体的な例は、鮮鋭度、コントラストまたは点像強度分布である。なお、図18に示すように、撮像素子Nから得られた画像は、第1の画素P1による第1の画像I1と、第2の画素P2による第2の画像I2とに分けられる。本ステップST1においては、これら2つの画像I1、I2の輝度情報が求められる。
次に、ステップST2において、輝度情報を用い、画像の所定領域ごとに被写体までの距離を算出し、デプスマップを作成する。
次に、ステップST3において、焦点を合わせたい位置(ベストフォーカス位置)に基づいて、被写***置ごとにPSFを生成をする。ベストフォーカス位置は、ユーザーが撮像装置Aの外部から入力してもよいし、撮像装置A内の第2の信号処理部C2が決定してもよい。
最後に、ステップST4において、鮮鋭化画像にデスプマップを基に決定したPSFを畳み込み、任意の位置のリフォーカス画像を生成する。例えば、ステップST1からST3は第2の信号処理部C2で実施し、ステップST4は第3の信号処理部C3で実施する。なお、ステップST1における画像の鮮鋭化ステップと、ステップST2、ST3とは適宜入れ替えてもよい。以下、フローチャートの各項目を具体的に説明する。
まず、ステップST1について説明する。なお、以下では、「輝度情報」が鮮鋭度である場合を例として説明を行う。
図18の撮像装置Aの光学系においては、光学領域D1が平面を有し、光学領域D2が非球面形状を有する。また、説明を簡略化するため、レンズL2は収差のない理想レンズであるものとして説明する。
光学領域D1の表面は平面であるため、図23の実線で示すように、光学領域D1とレンズL2を通過した光線によって、球面収差は生じない。球面収差がない場合、焦点からずれるに従って点像強度分布が変化する。すなわち、被写体距離の変化に伴い点像強度分布は変化する。
また、光学領域D2の非球面形状により、光学領域D2とレンズL2を通過した光線による球面収差は、図23の破線で示すグラフのようになる。光学領域D2の非球面形状を調整することで、このような球面収差を与えることができる。このような球面収差により、レンズ光学系Lの焦点近傍の所定の範囲内において、光学領域D2を通過した光線による点像強度分布を略一定にすることができる。すなわち、所定の被写体距離範囲内において点像強度分布を略一定にすることができる。
点像強度分布の変化に伴い、鮮鋭度も変化する。点像の大きさが小さくなるほど画像の鮮鋭度が増すため、被写体距離と鮮鋭度の関係をグラフで示すと、図24のような関係になる。図24のグラフにおいて、G1は画素P1によって得られた画像(第1の画像I1)の所定領域の鮮鋭度を示しており、G2は画素P2によって得られた画像(第2の画像I2)の所定領域の鮮鋭度を示している。
鮮鋭度は、所定の大きさの画像ブロック内において隣接する画素間の輝度値の差分に基づいて求めることができる。また、所定の大きさの画像ブロックの輝度分布をフーリエ変換した周波数スペクトルに基づいて求めることもできる。
所定の大きさのブロック内における鮮鋭度をEとし、隣接する画素間の輝度値の差分に基づいて求める場合は、例えば(数12)を用いる。
(数12)においてΔxi,jは、所定の大きさの画像ブロック内の座標(i,j)における画素の輝度値と座標(i+1,j)の座標の画素の輝度値との差分値であり、Δyi,jは、所定の大きさの画像ブロック内の座標(i,j)における画素の輝度値と座標(i,j+2)の座標の画素の輝度値との差分値であり、kは係数である。Δyi,jのy方向の輝度値が座標jおよび座標j+2を用いて計算されているのは、画素P1、P2のそれぞれにおいて得られる画像では、縦方向(y方向)の輝度情報が1画素おきに形成されるためである。Δyi,jには所定の係数(例えばk=0.5)を乗じることが望ましい。
第1、第2の画像I1、I2のそれぞれでは、y方向の画像の輝度情報は、1画素おきに欠落している。欠落している画素の輝度情報を、y方向に隣接する画素の輝度情報によって補間して生成してもよい。例えば、画像において、座標(i,j+1)の輝度情報が欠落している場合、座標(i,j)と座標(i,j+2)の輝度情報を平均して座標(i,j+1)を補間すればよい。座標(i,j+1)の鮮鋭度Eを(数1)によって求める場合には、k=1とすればよく、Δyi,jは、所定の大きさの画像ブロック内の座標(i,j)における画素の輝度値と座標(i,j+1)の座標の画素の輝度値(座標(i,j+2)の輝度情報によって補間された値)との差分値となる。(数2)の計算により、所定の大きさの画像ブロック内の輝度値の差が大きいほど、大きな鮮鋭度が得られる。
画像の鮮鋭度は前述の(数12)を用いて求めることもできるが、所定の大きさのブロック内における鮮鋭度をフーリエ変換した周波数スペクトルに基づいて求めることもできる。
図25(a)から(c)は、16×16のサイズの画像ブロックの輝度分布を示している。図25(a)、(b)、(c)の順に鮮鋭度が小さくなっている。図25(d)から(f)は、図25(a)から(c)のそれぞれに示す画像ブロックを2次元でフーリエ変換を行うことによって得られた周波数スペクトルを示す。図25(d)から(f)では、わかりやすくするために、各周波数スペクトルの強度を対数変換して表示しており、周波数スペクトルが強いほど明るく示されている。各周波数スペクトルにおいて中央の最も輝度の高い箇所が直流成分であり、周辺部に近づくほど周波数が高くなっている。
図25(d)から(f)では、画像の鮮鋭度が小さくなるほど高い周波数スペクトルが欠落していくことがわかる。従って、これらの周波数スペクトルから鮮鋭度を求めるには、例えば、周波数スペクトル全体あるいは一部を抽出することによって求めることができる。
図26は、G1の鮮鋭度に基づいてG2の鮮鋭度を鮮鋭化する方法について説明する図である。図26(a)は、被写体である白黒チャートであり、図26(b)は、(a)の被写体の輝度の断面を示す図である。図26(b)に示すように、チャートの輝度の断面はステップ状であるが、例えば、チャートを画素P1に到達する光線が最も合焦する被写***置から少しだけ手前にずれた所定の位置に配置して撮像すると、画像の輝度断面は、図26(c)のようになる。図26(c)のグラフにおいて、G1は画素P1で生成された画像の輝度断面であり、G2は画素P2で生成された画像の輝度断面である。このように、G1の輝度断面の方がG2の輝度断面より、図26(b)の実際のチャートの輝度断面に近く、鮮鋭度が高いと言える。
鮮鋭度の高いG1の輝度断面を2回微分すると、図26(d)の分布が得られ、G1の画像のエッジを検出することができる。次に、図26(d)の分布を図26(c)のG2の輝度分布から減じることにより、図26(e)の分布が得られ、G2の輝度分布を鮮鋭化することができる。ここで、図26(d)の分布を減じる際、図26(d)の分布に所定の係数を乗じた後に、図26(c)のG2の輝度分布から減じることにより、G2の鮮鋭化の度合いを制御することができる。
本実施形態では、説明を簡単にするため、画像を鮮鋭化する説明を1次元で行っているが、画像は2次元であるため、実際は2次元で鮮鋭化処理を行う。
以上のような画像処理により、図24の実線で示したG2の鮮鋭度は、破線で示したG2’のように鮮鋭化させることができ、生成する画像を鮮鋭化させることができる。
図27は、図18において光学領域D2における表面を非球面形状から球面形状に置き換えた場合の被写体距離と鮮鋭度の関係を示すグラフである。このような場合でも図24の場合と同様に、画像を鮮鋭化することができる。
本実施形態では、図27に示すように、被写体距離によって鮮鋭度の高い成分が異なる。従って、G1およびG2の輝度断面からそれぞれの鮮鋭度を検出し、鮮鋭度の高いほうの成分を選択して、他の成分を鮮鋭化させる。
以上のような画像処理により、図27の実線で示したG1およびG2の鮮鋭度は、それぞれ破線で示したG1’およびG2’のように鮮鋭化させることができ、生成する画像を鮮鋭化させることができる。
次に、他の画像鮮鋭化手法について説明する。図28は、G2の鮮鋭度を鮮鋭化したG2’に基づいてG1の鮮鋭度を鮮鋭化する方法について説明する図である。光学領域D1、D2の構成は図24の場合と同じであり、光学領域D2を通過した光線によって形成された点像強度分布は、所定の被写体距離範囲内において略一定となる。従って、画素P2(G2の成分)を抽出して形成された点像強度分布は、所定の被写体距離範囲内において略一定となる。所定の被写体距離範囲において点像強度分布が略一定であれば、画素P2(G2の成分)を抽出して形成された画像は、被写体距離にかかわらず、所定の点像強度分布に基づいて復元することが可能である。
以下に撮影画像を点像強度分布に基づいて復元する方法について説明する。原画像をf(x,y)とし、点像強度分布をh(x,y)とすると、撮影画像g(x,y)は、(数13)で表すことができる。
(数13)の両辺をフーリエ変換すると(数3)のようになる。
ここで、(数14)の逆フィルタHinv(u,v)を劣化画像G(u,v)に適用することによって、(数15)のように原画像の2次元フーリエ変換F(u,v)が求まる。これを逆フーリエ変換することによって、原画像f(x,y)を復元画像として得ることができる。
しかし、H(u,v)が0あるいは極めて小さい値となるとHinv(u,v)が発散するため、(数16)のようなウィーナフィルタHw(u,v)を用いて劣化画像を復元する。
(数16)においてN(u,v)はノイズである。通常はノイズと原画像F(u,v)は未知であるため、実際には定数kを用い(数17)のフィルタにて劣化画像を復元する。
このような復元フィルタにより、図28の実線で示すG2の鮮鋭度は、点線で示すG2’のように鮮鋭化させることができる。さらに図26で示した方法と同様にして、G2’の輝度断面を2回微分し、G1から減じることにより、G1の鮮鋭度が鮮鋭化され、図28の破線で示すG1’のように鮮鋭化させることができる。
以上のような画像処理により、図28の実線で示したG2の鮮鋭度、およびG1の鮮鋭度は、点線で示したG2’および破線で示したG1’のように鮮鋭化させることができる。このような鮮鋭化処理によって、図24で示した鮮鋭化処理と比べて、被写界深度を拡張することができる。
次に、図22のステップST2のデプスマップ作成について具体的に説明する。デプスマップは、撮影画像の所定領域(各演算ブロック)ごとに被写体距離を求めることにより作成する。
図18で示した第2の信号処理部C2は、画素P1(G1の成分)を抽出して得られる第1の画像I1(図18に示す)と、画素P2(G2の成分)を抽出して得られる第2の画像I2とが入力される。2つの光学領域D1、D2の光学特性は互いに異なるため、第1、第2の画像I1、I2の画像の鮮鋭度(輝度を用いて算出される値)は、被写体距離によって異なる。記憶部Me(図18に示す)には、光学領域D1、D2のそれぞれを通過した光の鮮鋭度と被写体距離との相関関係が記憶されている。第3の信号処理部C3(図18に示す)において、第1、第2の画像I1、I2の鮮鋭度と上記相関関係とに基づいて、被写体までの距離を得ることができる。
ここで図24および図28におけるZの範囲は、G1が変化し、かつG2がほとんど変化しない領域を示している。Zの範囲では、このような関係を利用して被写体距離を求めることができる。例えば、Zの範囲では、被写体距離と、鮮鋭度G1とG2の比に相関があるため、予め被写体距離と、鮮鋭度G1、G2の比との相関関係を記憶部Meに記憶しておく。
撮像装置の使用時には、1回の撮像の結果得られるデータ(撮像画像)のうち、画素P1(G1の成分)のみで生成された第1の画像I1と画素P2(G2の成分)のみで生成された第2の画像I2との鮮鋭度の比を各演算ブロック毎に求める。そして、記憶部Meに記憶されている相関関係を利用して、被写体距離を求めることができる。具体的には、各演算ブロック毎に、上記相関関係における鮮鋭度の比と、第1の画像I1と第2の画像I2との鮮鋭度の比の値とを比較する。そして、両者が一致する値に対応する被写体距離を、撮影時の被写体までの距離とする。
画素P1のみで生成された第1の画像I1の鮮鋭度と画素P2のみで生成された第2の画像I2の鮮鋭度との比から被写体距離を一意的に求めるためには、鮮鋭度の比が、所定の被写体距離範囲内で全て異なっている必要がある。
図24、図27および図28においては、Zの範囲内で、鮮鋭度の比が全て異なっているため、被写体距離を一意的に求めることができる。また、鮮鋭度の値が低すぎると比を求めることができないため、鮮鋭度の値は一定値以上であってもよい。
なお、被写体距離と鮮鋭度の関係は、光学領域D1、D2の曲率半径や非球面係数や屈折率によって決まる。つまり、光学領域D1、D2は第1の画像I1の鮮鋭度と第2の画像I2の鮮鋭度との比が、所定の距離範囲内で全て異なるような光学特性を有している必要がある。
なお、本実施形態では、輝度を用いて算出される値(輝度情報)であれば、鮮鋭度以外の値、例えばコントラストを用いて被写体距離を求めてもよい。コントラストは、例えば、所定の演算ブロック内における最大輝度値と最低輝度値の比から求めることができる。鮮鋭度は輝度値の差分であるのに対し、コントラストは輝度値の比である。最大輝度値である一点と最低輝度値である一点との比からコントラストを求めてもよいし、例えば輝度値の上位数点の平均値と、輝度値の下位数点の平均値との比からコントラストを求めてもよい。コントラストを用いて被写体距離を求める場合も、鮮鋭度の場合と同様に、予め被写体距離と、コントラストの比との相関関係を記憶部Meに記憶させておく。各演算ブロック毎に第1の画像I1と第2の画像I2とのコントラストの比を求めることにより、相関関係を利用して被写体距離を求めることができる。
また、本実施形態では、鮮鋭度やコントラスト以外の値、例えば点像強度分布を用いて被写体距離を求めてもよい。以下に第1の画像I1と第2の画像I2から点像強度分布を求める方法について説明する。
前述の(数17)を用いて、画素P2(G2の成分)のみで生成された第2の画像I2を復元すると、元画像f(x,y)に極めて近い復元画像i2’(x,y)が求まる。ここで、画素P1(G1の成分)のみで生成された第1の画像をi1(x,y)とし、領域D1を通過する光線による点像強度分布をh1(x,y)とすると、I1(x,y)は(数18)で表すことができる。
(数18)の両辺をフーリエ変換すると(数19)のようになる。
(数19)を変形すると、(数20)のように、点像強度分布h1(x,y)の周波数領域の値H1(u,v)が求められる。
これを逆フーリエ変換することによって、領域D1を通過する光線による点像強度分布h1(x,y)を求めることができる。
領域D1を通過する光線による点像強度分布h1(x,y)は、被写体距離によって変化するため、点像強度分布h1(x,y)と被写体距離と相関を有する。この相関関係を利用して被写体距離を求めることができる。
点像強度分布を代表的な数値で表す場合、例えば点像強度分布の直径を用いることができる。鮮鋭度やコントラストの場合と同様に、予め被写体距離と、点像の直径との相関関係を記憶部Meに記憶させておく。各ブロック毎に第1の画像I1と第2の画像I2から点像強度分布を求め、点像強度分布から点像の直径を求めることにより、相関関係を利用して被写体距離を求めることができる。点像の直径は、例えば、点像強度分布の半値幅から求めることができる。
本実施形態は、図27のように各領域の曲率半径を互いに異ならせた場合において、第1の画像I1と第2の画像I2を加算した画像を生成する構成を備えていてもよい。第1の画像I1と第2の画像I2の加算によって生成された画像において鮮鋭度が一定の値以上になる距離範囲は第1の画像および第2の画像よりも大きい。この場合、加算によって生成された画像の鮮鋭度と、第1の画像I1または第2の画像I2のいずれかの画像の鮮鋭度との比は、被写体距離と相関関係を有する。この相関関係をあらかじめ記憶しておくことにより、画像の所定領域毎に被写体距離を求めることができる。
撮影画像の被写体距離を算出し、被写体距離をモノクロの輝度値(たとえば256階調)で表すと奥行き情報を表した画像が得られる。これがデプスマップである。図29(a)は本実施の形態の被写体画像(撮像画像)であり、図29(b)は図29(a)の被写体画像のデプスマップである。256階調で表示しており、白ほど手前、黒ほど奥に被写体が存在することを意味する。図29(b)において、チェック模様の完全な黒箇所は、測距におけるエラー箇所である。被写体画像において、広い均一な輝度値を有する箇所は、その中央付近では鮮鋭度の変化が生じず、測距できないためである。しかし、測距できない箇所であってもリフォーカス画像の生成には影響しない。なぜなら、広い均一な輝度値を有する範囲の中央付近では、リフォーカス計算の有無にかかわらず、画像の鮮鋭度は変化しないためである。デプスマップは必ずしも256階調である必要はない。16ビット(65536階調)の画像でもよいし、必ずしも画像データである必要はなく距離に応じた数値データでもよい。また、負の値を含んでいてもよく、被写体の相対的な位置関係を示せればよい。
次に、図22のステップST3のPSFの生成について具体的に説明する。PSFは、例えば被写***置(被写体距離)ごとに生成する。さらに、画角(画素または所定の領域)ごとにPSFを生成してもよい。
PSFの形状は数式で表すとよい。例えば、(数21)に示すガウス分布(ガウス関数)である。なぜなら任意の被写***置のPSFを数式に当てはめて簡単な計算によって逐次得ることができるためであり、事前に膨大な被写体PSFデータをメモリに保存しておく必要はないためである。
ここで、iはPSFの横方向の座標、jはPSFの縦方向の座標であり、(i,j)=(0,0)はPSFの中心を表す。また、Weight(i,j)はi、jにおけるPSFの強度(重み)、dは被写体距離でありベストフォーカス位置を原点(d=0)として表す。ここで、「ベストフォーカス位置」とは、PSFの強度変化が極大となる被写体の位置(被写体距離)のことを言う。「PSFの強度変化」が大きい場合、PSFのピークは鋭く、例えばピークの半値幅は小さい。一方、「PSFの強度変化」が小さい場合、PSFのピークは緩やかであり、例えばピークの半値幅は大きい。また、kはゲイン調整用の係数でありPSFの強度変化を調整する。σに“0.001"を加えているが、これは(i,j)=(0,0)時の発散防止用の定数でありk・dに対して十分小さい値を設定している。この定数は、必ずしも“0.001"である必要はなく適宜変更してよい。
図30は、(数21)のガウス分布により求めたPSF断面強度分布である。j=0、i=−5〜5、σ=1.4としてプロットした。i=0、j=0のとき、PSFの強度が最大となり、左右対称(回転対称)の分布である。PSFの強度分布は必ずしも回転対称である必要はないが、偏りのない自然なリフォーカス画像を生成するためには、回転対称であることが望ましい。
PSFの強度の変化(鋭さ)はkによって調整する。被写***置がベストフォーカス位置である場合にPSFは一番鋭く、ベストフォーカス位置から遠ざかるにつれて緩やかになるように設定する必要がある。どの被写***置をベストフォーカス位置にするかは任意に設定可能である。ベストフォーカス位置は、ユーザが外部から入力してもよいし、第2の信号処理部C2が決定してもよい。ベストフォーカス位置をユーザが決定する場合には、ユーザが、画像上の領域を選択し、第2の信号処理部C2が、ユーザが選択した領域の被写体距離を求め、それをベストフォーカス位置としてもよい。または、ユーザが、被写体距離を直接選択してもよい。ベストフォーカス位置を決定したら、その被写***置を原点とする。
図31は被写***置d2に焦点を合わせた場合のPSF断面強度分布の変化の概念図である。図31(a)において、被写***置d2からやや離れた位置である被写***置d3ではPSFの強度の傾きが被写***置d2のそれに対し緩やかになる。さらに離れた被写***置d1ではPSFの強度の傾きはさらに緩やかになる。(数21)においてdの原点(=0)をベストフォーカス位置に設定することで被写***置がベストフォーカス位置から離れるほどσの絶対値が大きくなりPSF強度の傾きを緩やかに設定できる。また、(数21)においてkの値を大きくすることで、被写***置に対するPSFの強度分布の変化の度合いを調整することができる。図31(b)は、kの値を図31(a)よりも大きくした場合である。(b)のほうが(a)よりも被写***置に対してPSFの強度分布が急激に変化し、同じ被写***置d1(またはd3)でPSFの強度分布を比較すると、(b)のほうが緩やかな傾きとなる。このようにkの値を適宜調整し、後述する画像のボケの変化を調整するとよい。また、(数21)のσの式はdに対し線形変化するが、線形関数以外に2次関数や多項式等の非線形の関数を用いてもよい。非線形の関数を用いることで、被写***置dに対するPSFの強度変化、つまり、ボケの変化を非線形に調整することができる。
図31ではPSF強度の一断面を示したが、PSFは奥行き方向にも存在する2次元データである。実際の計算には図32に示すような強度の2次元マトリクスを用いるとよい。(i,j)=(0,0)を原点として(数21)より求めることができる。マトリクスの行数と列数は同じであることが望ましく、それぞれ奇数であることが望ましい。なぜなら、原点をマトリクスの中心に1箇所設定することができ、そこを軸とした回転対称のPSFを形成できるためである。マトリクスの行数・列数は任意であるが、大きくするほどぼかし量を増やすことができる。一方、マトリクスの行数・列数を小さくするほど計算時間を短縮することができる。図32(a)は3×3マトリクス、(b)は5×5マトリクス、(c)は7×7マトリクスのPSF強度の2次元分布である。図30同様、σ=1.4として求めた。マトリクス内の値は、マトリクス全体の積算値が1になるように規格化するとよい。具体的には、(数21)で数値を算出後、マトリクス内の全成分の積算値を求め、各成分をその積算値で割ることで計算することができる。規格化する理由は、このあとのリフォーカス時の畳み込み後の画像の輝度変化を防ぐためである。PSFの強度積算値を1に規格化することで、リフォーカスの前画像と後画像で画像の明るさを一定に保つことができる。PSFデータの規格化はPSF算出時に実施してもよいし、リフォーカス処理直前に実施してもよい。また、参考に図33(a)に図32(c)の7×7マトリクスのPSF強度分布の数値データを256階調に表現して画像化したものを示す。同様に、図33(b)は図32(c)の3次元グラフである。
PSFの計算には、数式を使用せず光学系のもつ実際のPSF値を用いてもよいが、この場合、被写体距離ごとのPSFをシミュレーションにより一定間隔ずつ予め計算する必要があるため、データベースとして膨大なメモリが必要になる。一方、数式で表現したガウス分布を用いることで任意の被写***置のPSFをリフォーカス計算時に生成することができ、メモリの節約、計算時間の短縮につながる。また、ガウス分布で表現すると、被写***置がベストフォーカス位置の際のPSFは、中心が1でまわりは0となり、ベストフォーカス位置の画像を劣化させない。言い換えると、ベストフォーカス位置のPSFの強度変化は、他の被写***置のPSFの強度変化よりも大きく、ベストフォーカス位置から被写体距離方向に離れるに従って、PSFの強度変化は小さくなる。
なお、PSFを表す数式は、ガウス分布以外の式であってもよい。例えば高次の次数を含む非球面式でもよい。
次に、図22のステップST4のリフォーカス画像の生成について説明する。この処理は、ステップST2で求められた被写体距離と、ステップST3で生成されたPSFを用いて行われる。第3の信号処理部C3で実施する。図29(b)のデプスマップと対応させながら、鮮鋭化画像の各画素に対し、PSFの畳み込み処理を施す。例えば、デプスマップのある画素(i,j)=(i0,j0)における被写***置が図31のd1であったとすると、鮮鋭化画像の画素(i0,j0)を中心とするマトリクス(=PSFと同一の行列数のマトリクス)に対し、該当するd1のPSFを用いて畳み込み演算をする。この操作を鮮鋭化画像の全画素に対して実施する。この処理により、鮮鋭化画像はいずれの被写***置においても画像のボケが少ない状態である画像であるのに対し、リフォーカス画像は所望の箇所のみ焦点を良好に合わし、それ以外をぼかしたメリハリのある画像となる。
図34は、図29(b)のデプスマップをもとに図29(a)の被写体画像をリフォーカスした画像である。ベストフォーカス位置(図31のd2に相当)を手前のみかんとし、PSFのマトリクスの領域を15×15、k=1として処理した。図29(a)では一様に焦点が合った画像であるが、図34のリフォーカス画像は手前に焦点が合い、それ以外の背景が遠ざかるにつれてぼけていくのがわかる。なお、図29(b)において、測距検出エラーとなった箇所は、別途例外処理にてリフォーカス処理を省いてもよい。または、適当な被写体距離の値にてリフォーカスの生成を実施してもよい。なぜなら、輝度値が一定の領域であるため、リフォーカスの実施の有無にかかわらず、鮮鋭度は変化しないためである。
なお、本実施形態においては、ステップST1のうち、画像の鮮鋭度(輝度情報)を求める処理のみ行い、画像の鮮鋭化処理を省略してもよい。この場合、センサ(フォトダイオード)から取得された画像(撮像画像)に対し、直接リフォーカス処理を実施してもよい。ここで、センサから取得された画像は、図18に示す第1、第2の画像I1、I2であってもよいし、第1、第2の画素P1、P2からの画像を含む画像であってもよい。鮮鋭化処理を省略する場合、図28においてより鮮鋭度の高いG1の画像(第1の画像I1)を用いるのが好ましい。このような処理は、ボケている箇所をさらに強調してぼかしたい場合に特に有効である。
また、画像の特定の領域のみにリフォーカス処理を施しても良い。ぼかしたいところのみ処理することで計算時間の短縮になる。
また、必ずしもPSFを用いる必要は無く、例えばぼかしたい領域のみ平均化フィルタ等の空間フィルタ処理を実施しボケを形成してもよい。また、鮮鋭化したい領域のみ鮮鋭化フィルタ等の空間フィルタ処理を実施し、目的の被写体画像をシャープにしてもよい。これらの場合、図22に示すフローチャートのステップST3を行わずに、ステップST4において、デプスマップに基づいてぼかしたい領域(またはシャープにしたい領域)を決定し、空間フィルタ処理を行えばよい。
ここで、図22のステップST1における鮮鋭化処理を省略した場合の、リフォーカス画像生成方法の一例を説明する。
ステップST1において、画像の輝度情報を求めた後、最も鮮鋭度の高い(焦点が合っている)所定の領域を検出する。そして、ステップST2において作成されたデプスマップに基づき、最も鮮鋭度の高い領域として検出された被写体からの距離に応じて、所定領域毎にぼかし処理を行う。例えば、最も鮮鋭度の高い領域として検出された被写体からの距離が、より近い領域よりも、より遠い領域の方が、ぼかし具合が大きくなるようにぼかし処理を行う。これにより、焦点が合わずにぼけている箇所をさらに強調してぼかすことができる。また、さらに、最も鮮鋭度の高い領域として検出された領域を、復元フィルタや空間フィルタを用いて鮮鋭化してもよい。これにより、撮影画像における鮮鋭領域とボケ領域とをさらに強調することができる。なお、この方法において、復元フィルタを用いて鮮鋭化する場合、使用するPSF(点像強度分布)としては、関数によって保持されているものであってもよいし、光学系の特性から被写体距離ごとに予め求めておいたものを保持し使用してもよい。また、さらに望ましくは画角ごとのPSFを保持し使用するとよい。より高精度な鮮鋭化が実現するためである。
また、画像の端部の畳み込みは、元画像の画素が足りないため別途分岐計算処理をしてもよい。例えば、画像端部の一部のケラレに合わせPSFの一部を使用して計算するとよい。
PSFの畳み込み演算処理としては、フーリエ変換を用いてもよい。例えば、DFT(Discrete Fourier Transform)やFFT(Fast Fourier Transform)を使用するとよく、計算時間を短縮できる。これは被写体距離が一定の領域(所定の領域)が広い場合に特に有効であり、被写体距離が一定の領域を1つのブロックとして演算する。例えば、演算する画像のブロックサイズと一致したPSFマトリクスを生成し、それぞれをフーリエ変換し、周波数空間上で計算するとよい。畳み込み演算はフーリエ変換すると周波数空間上では各成分間の積で計算できるため計算量が激減する。周波数空間上で積を取ったあとは、それを逆フーリエ変換することで畳み込み演算した結果と同様の画像を取得できる。
なお、本実施の形態の撮像装置の光学系は、像側テレセントリック光学系であってもよい。これにより画角が変化しても、アレイ状光学素子Kの主光線入射角は、0度に近い値で入射するため、撮像領域全域にわたって、画素P1およびP2に到達する光束間のクロストークを低減することができる。
また、前述の通り本実施の形態では、説明を簡略化するためにレンズL2を理想レンズとして説明したが、必ずしも理想レンズを用いなくてもよい。
また、本実施の形態では光学素子L1とレンズL2は分離しているが、レンズL2に光学領域D1、D2を設け、光学素子L1を除去した構成であってもよい。この場合、絞りSはレンズL2の光学領域D1、D2の近傍に配置してもよい。
以上のように、本実施形態では、単一の撮像系を用いた(例えば1回の)撮像によって、画像と被写体距離の両方を取得することができる。各演算ブロック毎に被写体距離を算出することができるため、画像の任意の位置の被写体距離を取得することができる。従って、画像全域のデプスマップを取得することもできる。これにより、撮影を行った後に、画像における全ての被写体に焦点を合わせることが可能となる。
また、単一の撮像系により被写体までの距離を得ることができるため、複数の撮像光学系を用いた撮像装置のように、複数の撮像光学系間の特性や位置を揃える必要がない。また、本実施形態の撮像装置を用いて動画を撮影した場合、時間の経過によって被写体の位置に変化が生じても、被写体までの正確な距離を測定することができる。
(実施の形態5)
本実施の形態5は、ベストフォーカス位置を断続的に複数個所設ける点で、実施の形態4と異なっている。ここでは、本実施形態において実施の形態4と同様の内容についての詳細な説明は省略する。
本実施形態においては、図35に示すように、ベストフォーカス位置を2ヶ所もしくは任意の複数個所に設定する。位置d2に加え、位置d4もベストフォーカス位置とした。位置d5は位置d2と位置d4の間に位置するが、位置d2、d4に比べPSFの強度分布は緩やかになっている。「ベストフォーカス位置を断続的に複数箇所設ける」とは、PSFの強度変化が極大になる点(ベストフォーカス位置)が複数存在し、その複数のベストフォーカス位置の間のPSFの強度変化が、ベストフォーカス位置の強度変化よりも小さいことを言う。なお、複数のベストフォーカスのPSFの強度変化の大きさは、互いに異なっていてもよい。
ベストフォーカス位置を2ヶ所に設定するには、(数21)でσを4次関数で表現するとよい。必ずしも4次関数を用いる必要はなく、それ以上の次数、また、指数や対数表現を用いてもよい。図35に示す方法を用いれば、近傍に1人、遠方に1人の計2人の人物が撮影された画像において、近傍、遠方の両方の人物に焦点を合わし、それ以外の背景をぼかすといったことが可能となる。これは、従来の光学系では実現できない技術である。例えばFnoが非常に小さい一眼レフによるぼかし効果でさえも近傍、遠方もしくはその間のいずれか1箇所の被写***置のみでしか焦点を合わすことができない。また、任意の2ヶ所に限らず、それ以上の複数個所の物体をベストフォーカスに設定し、それ以外をぼかしてもよい。
(実施の形態6)
本実施の形態6は、画素に分光透過率特性を有するフィルタを備え付けた点で、実施の形態4と異なっている。ここでは、本実施形態において実施の形態4と同様の内容については説明を省略する。
図36は、実施の形態6の撮像装置Aを示す模式図である。本実施形態の撮像装置Aは、Vを光軸とするレンズ光学系Lと、レンズ光学系Lの焦点近傍に配置されたアレイ状光学素子Kと、撮像素子Nと、第2の信号処理部C2と、第3の信号処理部C3と、第1の信号処理部C1と、記憶部Meとを備える。
図37(a)は、図36に示すアレイ状光学素子Kおよび撮像素子Nを拡大して示す図であり、図37(b)は、アレイ状光学素子Kと撮像素子N上の画素との位置関係を示す図である。アレイ状光学素子Kは、光学要素M1が形成された面が撮像面Ni側に向かうように配置されている。撮像面Niには、画素Pが行列状に配置されている。画素Pは画素P1、P2、P3およびP4に区別できる。
画素P1およびP2には第1の分光透過率特性を有するフィルタが備えられており、緑色帯域の光線を主に通過し、他の帯域の光線を吸収する。画素P3には第2の分光透過率特性を有するフィルタが備えられており、赤色帯域の光線を主に通過し、他の帯域の光線を吸収する。また、画素P4には第3の分光透過率特性を有するフィルタが備えられており、青色帯域の光線を主に通過し、他の帯域の光線を吸収する。
画素P1および画素P3のそれぞれは、同じ行において交互に配置されている。また、画素P2および画素P4のそれぞれは、同じ行において交互に配置されている。画素P1とP3の行と画素P2とP4の行とは、縦方向(列方向)に交互に配置されている。このように、それぞれの複数の画素P1、P2、P3およびP4は、ベイヤー配列を成している。ベイヤー配列で画素P1、P2、P3およびP4が配置されている場合には、共に緑色帯域の光を透過するフィルタを有する画素P1および画素P2は、撮像面Niの面内において、斜めの位置に配置されている。画素P3と画素P4との位置は逆であってもよい。
アレイ状光学素子Kは、その光学要素M1の1つが、撮像面Ni上における1行の画素P1、P3および1行の画素P2、P4からなる2行の画素に対応するように配置されている。撮像面Ni上には、画素P1、P2、P3およびP4の表面を覆うようにマイクロレンズMsが設けられている。
アレイ状光学素子Kは、光学素子L1上の光学領域D1(図36、図19に示す)を通過した光束B1(図36において実線で示される光束B1)の大部分が、撮像面Ni上の画素P1およびP3に到達し、光学領域D2を通過した光束(図36において破線で示される光束B2)の大部分が、撮像面Ni上の画素P2およびP4に到達するように設計されている。具体的には、アレイ状光学素子Kの屈折率、撮像面Niからの距離及び光学要素M1表面の曲率半径等のパラメータを適切に設定することで、上記構成が実現する。
絞りSは全ての画角の光束が通過する領域である。従って、絞りSの近傍に合焦特性を制御する光学特性を有する面を挿入することにより、全ての画角の光束の合焦特性を同様に制御することができる。すなわち、本実施形態では、光学素子L1は、絞りSの近傍に設けられていてもよい。互いに合焦特性を異ならせる光学特性を有する光学領域D1、D2を、絞りSの近傍に配置することによって、領域の分割数に応じた合焦特性を光束に与えることができる。
図36においては、光学素子L1を通過した光が、直接(他の光学部材を介することなく)、絞りSに入射する位置に設けられている。光学素子L1は、絞りSよりも撮像素子N側に設けられていてもよい。この場合、光学素子L1は、絞りSとレンズL2との間に設けられており、絞りSを通過した光が、直接(他の光学部材を介することなく)、光学素子L1に入射してもよい。
また、アレイ状光学素子Kは、光線の入射角に応じて出射方向を振り分ける機能を有する。そのため、絞りSの近傍で分割された光学領域D1、D2に対応するように、撮像面Ni上の画素に光束を振り分けることができる。
第1の信号処理部C1(図36に示す)は、複数の画素P1、P2、P3およびP4の輝度情報を用いてカラー画像を生成する。以下に、具体的にカラー画像を生成する方法について説明する。
図36の撮像装置Aの光学系において、光学領域D1が平面を有し、光学面領域D2が非球面形状を有するとする。また、説明を簡略化するため、レンズL2は収差のない理想レンズであるものとして説明する。
光学領域D1の表面は平面であるため、図23のグラフに実線で示すように、光学領域D1とレンズL2を通過した光線による球面収差は生じない。球面収差がない場合、焦点からずれるに従って点像強度分布が変化する。すなわち、被写体距離の変化に伴い点像強度分布は変化する。
また、光学領域D2における非球面形状により、光学領域D2とレンズL2を通過した光線による球面収差は、図23の破線で示すグラフのようになる。光学領域D2の非球面形状を調整することで、このような球面収差を与えることができる。このような球面収差により、レンズ光学系Lの焦点近傍の所定の範囲内において、光学領域D2を通過した光線による点像強度分布を略一定にすることができる。すなわち、所定の被写体距離範囲内において点像強度分布を略一定にすることができる。
点像強度分布の変化に伴い、鮮鋭度も変化する。点像の大きさが小さくなるほど画像の鮮鋭度が増すため、被写体距離と鮮鋭度の関係をグラフで示すと、図38のような関係になる。図38のグラフにおいて、G1、Rはそれぞれ画素P1(緑色の成分)、P3(赤色の成分)で生成された画像の所定領域の鮮鋭度を示しており、G2、Bはそれぞれ画素P2(緑色の成分)、P4(青色の成分)で生成された画像の所定領域の鮮鋭度を示している。
鮮鋭度は、所定の大きさの画像ブロック内において隣接する画素間の輝度値の差分に基づいて求めることができる。また、所定の大きさの画像ブロックの輝度分布をフーリエ変換した周波数スペクトルに基づいて求めることもできる。
所定の大きさのブロック内における鮮鋭度をEとし、画素P1、P2、P3、およびP4の成分毎に隣接する画素間の輝度値の差分に基づいて求める場合は、例えば(数22)を用いる。
前述の通り、画素P1、P2、P3、およびP4は、ベイヤー配列を成しているため、それぞれの成分の鮮鋭度を求めるには、画像のx方向、y方向共に1画素おきの画素情報を抽出して計算する。
(数22)においてΔxi,jは、所定の大きさの画像ブロック内の座標(i,j)における画素の輝度値と座標(i+2,j)の座標の画素の輝度値との差分値であり、Δyi,jは、所定の大きさの画像ブロック内の座標(i,j)における画素の輝度値と座標(i,j+2)の座標の画素の輝度値との差分値である。
(数22)の計算により、所定の大きさの画像ブロック内の輝度値の差が大きいほど、大きな鮮鋭度が得られる。
カラー画像を生成する場合、画素P1、P2、P3、およびP4の輝度情報を元に、画素位置毎に欠落した色情報を単に補完してカラー画像を生成してもよいが、図38のようにG2、Bの鮮鋭度は、G1、Rの鮮鋭度に比べて小さいので、G1、Rの鮮鋭度を鮮鋭化した後にカラー画像を生成してもよい。
図39は、G1、Rの鮮鋭度に基づいてG2、Bの鮮鋭度を鮮鋭化する方法について説明する図である。図39(a)は、被写体である白黒チャートであり、図39(b)は、(a)の被写体の輝度の断面を示す図である。図39(b)に示すように、チャートの輝度の断面はステップ状であるが、例えば、チャートを画素P1、P3に到達する光線が最も合焦する被写***置から少しだけ手前にずれた所定の位置に配置して撮像すると、画像の輝度断面は、図39(c)のようになる。図39(c)のグラフにおいて、G1、Rはそれぞれ画素P1(緑色の成分)、P3(赤色の成分)で生成された画像の輝度断面であり、G2、Bはそれぞれ画素P2(緑色の成分)、P4(青色の成分)で生成された画像の輝度断面である。このように、G1、Rの輝度断面の方がG2、Bの輝度断面より、図39(b)の実際のチャートの輝度断面に近く、鮮鋭度が高いと言える。
図39(a)のような白黒チャートを撮像した場合は、G1の輝度断面とRの輝度断面はほぼ同じ断面となるが、実際にはあらゆる色成分の被写体画像を撮像するため、図39(c)のG1、Rの輝度断面は、一致しない場合が殆どである。従って、G1、Rの輝度断面からそれぞれの鮮鋭度を検出し、鮮鋭度の高い色成分を選択して、G2、Bの輝度断面を鮮鋭化させてもよい。鮮鋭度の高い輝度断面を選択し、その輝度断面を2回微分すると、図39(d)の分布が得られ、鮮鋭度の高い色成分の画像のエッジを検出することができる。次に、図39(d)の分布を図39(c)のG2、Bのそれぞれの輝度分布から減じることにより、図39(e)の分布が得られ、G2、Bの輝度分布を鮮鋭化することができる。ここで、図39(d)の分布を減じる際、図39(d)の分布に所定の係数を乗じた後に、図39(c)のG2、Bの輝度分布から減じることにより、G2、Bの鮮鋭化の度合いを制御することができる。
本実施形態では、説明を簡単にするため、画像を鮮鋭化する説明を1次元で行っているが、画像は2次元であるため、実際は2次元で鮮鋭化処理を行う。
以上のような画像処理により、図38の実線で示したG2、Bの鮮鋭度は、破線で示したG2’、B’のように鮮鋭化させることができ、生成するカラー画像を鮮鋭化させることができる。
図40は、図36において光学領域D2の表面を非球面形状から球面形状に置き換えた場合の被写体距離と鮮鋭度の関係を示すグラフである。このような場合でも図38の場合と同様に、カラー画像を鮮鋭化することができる。
本実施形態では、図40に示すように、被写体距離によって鮮鋭度の高い色の成分が異なる。従って、G1、G2、R、およびBの輝度断面からそれぞれの鮮鋭度を検出し、鮮鋭度の最も高い色成分を選択して、他の色成分を鮮鋭化させる。
以上のような画像処理により、図40の実線で示したG1、G2、R、およびBの鮮鋭度は、それぞれ破線で示したG1’、G2’、R’、およびB’のように鮮鋭化させることができ、生成するカラー画像を鮮鋭化させることができる。
次に、他の画像鮮鋭化手法について説明する。図41は、G2、Bの鮮鋭度を鮮鋭化したG2’、B’に基づいてG1、Rの鮮鋭度を鮮鋭化する方法について説明する図である。光学領域D1、D2の構成は図38の場合と同じであり、光学領域D2を通過した光線によって形成された点像強度分布は、所定の被写体距離範囲内において略一定となる。従って、画素P2(G2の成分)、P4(Bの成分)をそれぞれ抽出して形成された点像強度分布は、所定の被写体距離範囲内において略一定となる。所定の被写体距離範囲において点像強度分布が略一定であれば、画素P2(G2の成分)、P4(Bの成分)をそれぞれ抽出して形成された画像は、被写体距離にかかわらず、所定の点像強度分布に基づいて復元することが可能である。
以下に撮影画像を点像強度分布に基づいて復元する方法について説明する。原画像をf(x,y)とし、点像強度分布をh(x,y)とすると、撮影画像g(x,y)は、(数23)で表すことができる。
(数23)の両辺をフーリエ変換すると(数24)のようになる。
ここで、(数25)の逆フィルタHinv(u,v)を劣化画像G(u,v)に適用することによって、(数26)のように原画像の2次元フーリエ変換F(u,v)が求まる。これを逆フーリエ変換することによって、原画像f(x,y)を復元画像として得ることができる。
しかし、H(u,v)が0あるいは極めて小さい値となるとHinv(u,v)が発散するため、(数27)のようなウィーナフィルタHw(u,v)を用いて劣化画像を復元する。
(数27)においてN(u,v)はノイズである。通常はノイズと原画像F(u,v)は未知であるため、実際には定数kを用い(数28)のフィルタにて劣化画像を復元する。
このような復元フィルタにより、図41の実線で示すG2、Bの鮮鋭度は、点線で示すG2’、B’のように鮮鋭化させることができる。さらに図39で示した方法と同様にして、G2’、B’ の輝度断面からそれぞれの鮮鋭度を検出し、鮮鋭度の高い色成分の輝度断面を2回微分し、G1、Rから減じることにより、G1、Rの鮮鋭度が鮮鋭化され、図41の破線で示すG1’、R’のように鮮鋭化させることができる。
以上のような画像処理により、図41の実線で示したG2、Bの鮮鋭度、およびG1、Rの鮮鋭度は、点線で示したG2’、B’および破線で示したG1’、R’のように鮮鋭化させることができ、生成するカラー画像を鮮鋭化させることができる。このような鮮鋭化処理によって、図38で示した鮮鋭化処理と比べて、被写界深度を拡張することができる。
なお、本実施の形態の撮像装置の光学系は、像側テレセントリック光学系であってもよい。これにより画角が変化しても、アレイ状光学素子Kの主光線入射角は、0度に近い値で入射するため、撮像領域全域にわたって、画素P1、P2、P3、およびP4に到達する光束間のクロストークを低減することができる。
また、前述の通り本実施の形態では、説明を簡略化するためにレンズL2を理想レンズとして説明したが、必ずしも理想レンズを用いなくてもよい。例えば、理想レンズでないレンズは軸上色収差を有しているが、前述の通り、鮮鋭度の高い色成分を選択して他の色成分を鮮鋭化させることができるため、理想レンズでなくても、鮮鋭度のカラー画像を生成することができる。また、被写体距離を求める場合は、単一の色成分(本実施の形態では緑色の成分)に基づいて距離を求めるので、軸上色収差を有していてもよい。
また、本実施の形態では光学素子L1とレンズL2は分離しているが、レンズL2に光学領域D1、D2を設け、光学素子L1を除去した構成であってもよい。この場合、絞りSはレンズL2の光学領域D1、D2の近傍に配置してもよい。
以上のように、本実施形態では、単一の撮像系を用いた(例えば1回の)撮像によって、カラー画像と被写体距離の両方を取得することができる。被写体距離については、各演算ブロック毎に算出することができるため、カラー画像の任意の画像位置の被写体距離を取得することができる。従って、画像全域の被写体距離マップを取得することもできる。また、単一の撮像系により被写体までの距離を得ることができるため、複数の撮像光学系を用いた撮像装置のように、複数の撮像光学系間の特性や位置を揃える必要がない。また、本実施形態の撮像装置を用いて動画を撮影した場合、時間の経過によって被写体の位置に変化が生じても、被写体までの正確な距離を測定することができる。
また、リフォーカスは、R、G、B各成分において実施の形態4と同様に実施することができる。具体的には、図22に示すステップST1において、RBGそれぞれについて、輝度情報(鮮鋭度など)を求め、必要に応じて、RBGのうち鮮鋭度の低い色を鮮鋭化する。次に、ステップST2において、被写体までの距離を求める。さらに、第1の信号処理部C1において生成されたカラー画像を用い、デプスマップを生成する。次に、ステップST3において、ベストフォーカス位置に基づいて、被写***置ごとにPSFを生成する。このとき、RGBの3色につき1つのPSFを生成すればよい。ただし、軸上色収差などを考慮し、RGBそれぞれについてPSFを生成してもよい。次に、ステップST4において、任意の被写***置でのカラーでのリフォーカス画像を生成することができる。
(実施の形態7)
本実施の形態7は、光学素子L1の領域分割の面積を異ならせた点と、アレイ状光学素子をレンチキュラからマイクロレンズに置き換えた点で、実施の形態6と異なっている。ここでは、本実施形態において実施の形態4から6と同様の内容についての詳細な説明は省略する。
図42は、光学素子L1を被写体側から見た正面図であり、光学素子L1は、光学領域D1とD2に分割されている。また、光学領域D2はさらに、サブ光学領域d2A、d2Bおよびd2Cに分割されている。図42に示すように、光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2Bおよびd2Cは、光軸Vを境界中心として、光軸Vに垂直な面内で上下左右に4分割されている。光学領域D1とD2は、互いに互いに合焦特性を異ならせる光学特性を有する。
図43は、アレイ状光学素子Kの斜視図である。アレイ状光学素子Kにおける撮像素子N側の面には、光学要素M2が格子状に配置されている。それぞれの光学要素M2の断面(縦方向および横方向それぞれの断面)は円弧状であり、それぞれの光学要素M2は、撮像素子N側に突出している。このように、光学要素M2はマイクロレンズであり、アレイ状光学素子Kは、マイクロレンズアレイとなっている。
図44(a)は、アレイ状光学素子Kと撮像素子Nとを拡大して示す図であり、図44(b)は、アレイ状光学素子Kと撮像素子N上の画素との位置関係を示す図である。アレイ状光学素子Kは、実施の形態4と同様に、レンズ光学系Lの焦点近傍に配置されており、かつ撮像面Niから所定の距離だけ離れた位置に配置されている。また、撮像面Ni上には、画素P1、P2、P3、およびP4の表面を覆うようにマイクロレンズMsが設けられている。
画素P1、P2、P3、およびP4には、実施の形態6と同じ分光透過率特性を有するフィルタがそれぞれ備えられている。
また、アレイ状光学素子Kは、光学要素M2が形成された面が撮像面Ni側に向うように配置されている。アレイ状光学素子Kは、その光学要素M2の1つが、撮像面Niにおける2行2列の画素P1〜P4の4つの画素に対応するように配置されている。
このような構成により、図42に示す光学素子L1の光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、およびd2Cを通過した光束の大部分は、それぞれ撮像面Ni上の画素P1、画素P2、画素P3、および画素P4に到達する。
実施の形態6と同様に、第1の信号処理部C1により、複数の画素P1、P2、P3およびP4の輝度情報を用いてカラー画像を生成する。以下に、具体的にカラー画像を生成する方法について説明する。
図42において、光学領域D1は非球面を有し、サブ光学領域d2A、d2B、およびd2Cは、全て平面を有する。また、説明を簡略化するため、レンズL2は収差のない理想レンズであるものとして説明する。
光学領域D1の非球面形状により、実施の形態4と同様にレンズ光学系Lの焦点近傍の所定の範囲内において、光学領域D1を通過した光線による点像強度分布を略一定にすることができる。すなわち、所定の被写体距離範囲内において点像強度分布を略一定にすることができる。
また、光学領域D2は平面であるため、実施の形態6と同様に球面収差は生じない。球面収差がない場合、焦点からずれるに従って点像強度分布が変化する。すなわち、被写体距離の変化に伴い点像強度分布は変化する。
実施の形態6と同様に、被写体距離と鮮鋭度の関係をグラフで示すと、図45のような関係になる。図45のグラフにおいて、G1は画素P1(緑色の成分)で生成された画像の所定領域の鮮鋭度を示しており、G2、R、およびBは、それぞれ画素P2(緑色の成分)、P3(赤色の成分)およびP4(青色の成分)で生成された画像の所定領域の鮮鋭度を示している。
カラー画像を生成する場合、実施の形態6と同様に、画素P1、P2、P3、およびP4の輝度情報を元に、画素位置毎に欠落した色情報を単に補完してカラー画像を生成してもよいが、図45のようにG1の鮮鋭度は、G2、R、およびBの鮮鋭度に比べて小さいので、図26で説明した方法と同様に、G1の鮮鋭度を鮮鋭化した後にカラー画像を生成してもよい。
以上のような画像処理により、図45に実線で示したG1の鮮鋭度を、破線で示したG1’のように高めることができ、生成するカラー画像を鮮鋭化させることができる。
図46は、図45において光学領域D1の光学面を非球面形状から球面形状に置き換えた場合の被写体距離と鮮鋭度の関係を示すグラフである。このような場合でも図45の場合と同様に、カラー画像を鮮鋭化することができる。
本実施形態では、図46に示すように、被写体距離によって鮮鋭度の高い色の成分が異なる。従って、G1、G2、R、およびBの輝度断面からそれぞれの鮮鋭度を検出し、鮮鋭度の最も高い色成分を選択して、他の色成分を鮮鋭化させる。
以上のような画像処理により、図46の実線で示したG1、G2、R、およびBの鮮鋭度は、それぞれ破線で示したG1’、G2’、R’、およびB’のように鮮鋭化させることができ、生成するカラー画像を鮮鋭化させることができる。
次に、他の画像鮮鋭化手法について説明する。図46は、G1の鮮鋭度を鮮鋭化したG1’に基づいてG2、R、Bの鮮鋭度を鮮鋭化する方法について説明する図である。光学領域D1の構成は図45の場合と同じであり、光学領域D1を通過した光線によって形成された点像強度分布は、所定の被写体距離範囲内において略一定となる。従って、画素P1(G1の成分)を抽出して形成された点像強度分布は、所定の被写体距離範囲内において略一定となる。所定の被写体距離範囲において点像強度分布が略一定であれば、画素P1(G1の成分)を抽出して形成された画像は、被写体距離にかかわらず、所定の点像強度分布に基づいて復元することが可能である。
実施の形態6で説明した復元フィルタにより、図47の実線で示すG1の鮮鋭度は、点線で示すG1’のように鮮鋭化させることができる。さらに図26で示した方法と同様にして、G1’の輝度断面を2回微分し、G2、R、およびBから減じることにより、G2、R、およびBの鮮鋭度が鮮鋭化され、図47の破線で示すG2’、R’、およびB’のように鮮鋭化させることができる。
なお、本実施の形態では光学素子L1とレンズL2は分離しているが、レンズL2に光学領域D1、D2を設け、光学素子L1を除去した構成であってもよい。この場合、絞りSはレンズL2の光学領域D1、D2の近傍に配置してもよい。
また、前述の通り本実施の形態では、説明を簡略化するためにレンズL2を理想レンズとして説明したが、必ずしも理想レンズを用いなくてもよい。例えば、理想レンズでないレンズは軸上色収差を有しているが、軸上色収差を光学素子L1で補正する構成であってもよい。本実施の形態では、図42において、光学素子L1の光学領域d2A、d2B、およびd2Cは全て平面を有するとしているが、それぞれ異なる光学面を有することにより、軸上色収差を補正することができる。前述の通り、サブ光学領域d2A、d2B、およびd2Cを通過した光線はそれぞれ、画素P2、画素P3、および画素P4に到達する。画素P2、画素P3、および画素P4は、それぞれ緑色、赤色、および青色の波長成分を主に通過するフィルタを有しているので、レンズL2に軸上色収差を有するレンズを適用する場合、サブ光学領域d2A、d2B、およびd2Cは、各画素に設けられたフィルタの波長帯域における合焦位置が等しくなるように、それぞれの領域面上の光学パワーを異ならせてもよい。このような構成により、サブ光学領域d2A、d2Bおよびd2Cが等しい光学パワーを有する場合と比較して、サブ光学領域d2A、d2Bおよびd2Cを透過した光の合焦位置を互いに近づけることができるため、レンズL2で生じる軸上色収差を光学素子L1によって補正することができる。軸上色収差を光学素子L1によって補正することにより、レンズL2を構成するレンズ枚数を削減することができ、光学系を小型化することができる。
以上のような画像処理により、図47の実線で示したG1の鮮鋭度、およびG2、R、Bの鮮鋭度は、点線で示したG1’、および破線で示したG2’、R’、B’のように鮮鋭化させることができ、生成するカラー画像を鮮鋭化させることができる。このような鮮鋭化処理によって、図45で示した鮮鋭化処理と比べて、被写界深度を拡張することができる。
本実施の形態では、実施の形態6に対して、鮮鋭度G1と鮮鋭度G2の関係が逆転しているだけであって、被写体までの距離を測る方法は同様に実施することができる。また、リフォーカス画像を取得する方法も実施の形態6と同様に実施することができる。
以上のように、本実施形態では、実施の形態6と同様に単一の撮像系を用いた(例えば1回の)撮像によって、カラー画像と被写体距離の両方を取得することができるとともに、リフォーカス画像を生成することができる。
(実施の形態8)
本実施の形態8は、カラーフィルタを絞り近傍に設置し、撮像面上にはカラーフィルタを設置しないという点で、実施の形態7と異なる。ここでは、本実施形態において実施の形態4から7と同様の内容についての詳細な説明は省略する。
図48は、実施の形態8の撮像装置Aを示す模式図である。本実施形態の撮像装置Aは、Vを光軸とするレンズ光学系Lと、レンズ光学系Lの焦点近傍に配置されたアレイ状光学素子Kと、撮像素子Nと、第2の信号処理部C2と、第3の信号処理部C3と、第1の信号処理部C1と、記憶部Meを備える。
実施の形態8では、図42同様、光学素子L1の光学領域D1が非球面を有し、サブ光学領域d2A、d2B、およびd2Cは全て平面を有するとしている。光学素子L1の各領域はそれぞれ固有の分光透過率特性を有し、光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、およびd2Cが、それぞれ、G、G、B、およびRの光を透過する特性を有し、それぞれ画素P1、P2、P4、およびP3に集光させる。本実施の形態では、画素P1(緑色の成分)、P2(緑の成分)、P3(赤色の成分)、およびP4(青色の成分)から得られた画像を用いて鮮鋭化画像を作成するとともに、P1(緑色の成分)とP2(緑色の成分)から得られる画像を用いて被写体距離を測定し、デプスマップを作成する。PSFデータの作成、リフォーカス方法は実施の形態4から7と同様に実施することができる。
また、互いに異なる波長帯域の光を透過するフィルタと、合焦特性を異ならせる光学素子L1とを分離して配置されていてもよい。この場合、当該フィルタや光学素子L1は、いずれも絞りSの近傍に配置されていてもよい。また当該フィルタや光学素子L1を配置する順番は問わない。この場合、光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、d2Cは、光学素子L1およびフィルタの両方を含む領域である。この場合、各フィルタは各光学領域の近傍に設定するのが良く、また、絞り近傍に設置するのが良い。また、当該フィルタ及び光学素子L1のうちいずれか一方が、絞りSの近傍に配置されたレンズL2の光学面上に形成されていてもよい。
以上のように、本実施の形態では、実施の形態7と同様に単一の撮像系を用いた(例えば1回の)撮像によって、カラー画像と被写体距離の両方を取得することができるとともに、リフォーカス画像を生成することができる。
(その他の実施形態)
なお、実施の形態1から8は、光学領域における光学面が光学素子L1における被写体側の面に配置された形態であるが、光学面は光学素子L1の像側の面に配置されていてもよい。
また、レンズL2は1枚の構成としているが、複数群または複数枚の構成のレンズであってもよい。
また、複数の光学領域は、絞り近傍に配置したレンズL2に形成されていてもよい。
また、互いに異なる波長帯域の光を透過するフィルタと、合焦特性を異ならせる光学素子L1とを分離して配置されていてもよい。この場合、当該フィルタや光学素子L1は、いずれも絞りSの近傍に配置されていてもよい。また当該フィルタや光学素子L1を配置する順番は問わない。この場合、光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、d2Cは、光学素子L1およびフィルタの両方を含む領域である。また、当該フィルタ及び光学素子L1のうちいずれか一方が、絞りSの近傍に配置されたレンズL2の光学面上に形成されていてもよい。
また、光学素子L1は、絞りの位置に対して被写体側に配置されているが、絞りの位置に対して像側に配置されていてもよい。
また、前述の実施の形態1から8では、レンズ光学系Lは像側テレセントリック光学系としているが、像側非テレセントリック光学系であってもよい。図49(a)は、撮像部近傍を拡大して示す図である。図49(a)では、アレイ状光学素子Kを通過する光のうち1つの光学領域を通過する光束のみを示している。図49(a)に示すように、レンズ光学系Lが非テレセントリック光学系の場合には、隣接画素に光が漏れてクロストークが発生しやすいが、図49(b)のようにアレイ状光学素子を画素配列に対してΔだけオフセットさせることにより、クロストークを低減させることができる。前記入射角は像高によって異なるため、前記オフセット量Δは、撮像面への光束の入射角に応じて設定すればよい。
レンズ光学系Lが像側テレセントリック光学系である場合、光学素子L1の光学領域D1、D2における2つの曲率半径がそれぞれ異なるため、それぞれの領域によって得られる画像(第1の画像I1および第2の画像I2)の倍率が異なる。ここで、前述のような鮮鋭度の比を画像の領域毎に算出した場合、光軸外では互いに参照する所定領域がずれてしまい、鮮鋭度の比を正しく求めることができない。この場合、第1の画像I1および第2の画像I2の倍率が略同一になるように補正して、所定領域の鮮鋭度の比を求めてもよい。これにより、所定領域における鮮鋭度の比を正しく求めることができる。
実施の形態1から8は、第1の信号処理部C1、第2の信号処理部C2、第3の信号処理部C3および記憶部Me(図18等に示す)を備える撮像装置である。しかし、撮像装置は、これらの信号処理部および記憶部を備えていなくてもよい。その場合、撮像装置の外部のPC等を用いて、第1の信号処理部C1、第2の信号処理部C2および第3の信号処理部C3が行う処理を行えばよい。すなわち、レンズ光学系L、アレイ状光学素子Kおよび撮像素子Nを備える撮像装置と、外部の信号処理装置とを備えるシステムによっても実現することができる。この形態における撮像装置によれば、単一の撮像光学系を用いた1回の撮像によって多色画像出力及び被写体距離測定のための輝度情報を取得することができる。また、当該輝度情報を用いて外部の信号処理部が行う処理によって、多色画像及び被写体距離の双方を取得することができる。
なお、本発明の測距方法においては、必ずしも鮮鋭度と被写体距離との相関関係を用いなくてもよい。例えば、鮮鋭度、コントラスト、もしくは点像の直径と被写体距離との関係を示す式に、得られた鮮鋭度、コントラスト、もしくは点像の直径を代入することにより被写体距離を得てもよい。
また、本実施の形態3におけるマイクロレンズアレイの各光学要素(マイクロレンズ)は、各光学要素(マイクロレンズ)の光軸に対して回転対称形状であってもよい。以下、光軸に対して回転非対称な形状を有するマイクロレンズと比較して説明する。
図50(a1)は、光軸に対して回転非対称な形状を有するマイクロレンズアレイを示す斜視図である。このようなマイクロレンズアレイは、アレイの上に四角柱状のレジストを形成して熱処理を行うことによりレジストの角部を丸め、そのレジストを用いてパターニングを行うことにより形成される。図50(a1)に示すマイクロレンズの等高線を図50(a2)に示す。回転非対称な形状を有するマイクロレンズでは、縦横方向(マイクロレンズの底面の四辺と平行な方向)と斜め方向(マイクロレンズの底面の対角線方向)との曲率半径が異なる。
図50(a3)は、図50(a1)、(a2)に示すマイクロレンズを本発明のアレイ状光学素子に適用した場合の、光線追跡シミュレーションの結果を示す図である。図50(a3)では、アレイ状光学素子Kを通過する光のうち1つの光学領域を通過する光束のみを示しているが、このように回転非対称形状のマイクロレンズの場合、隣接の画素に光が漏れてクロストークが発生する。
図50(b1)は、光軸に対して回転対称な形状を有するマイクロレンズアレイを示す斜視図である。このような回転対称形状のマイクロレンズは、熱インプリントやUVインプリント製法により、ガラス板等の上に形成することができる。
図50(b2)に、回転対称形状のマイクロレンズの等高線を示す。回転対称な形状を有するマイクロレンズでは、縦横方向と斜め方向の曲率半径は等しい。
図50(b3)は、図50(b1)、(b2)に示すマイクロレンズを本発明のアレイ状光学素子に適用した場合の、光線追跡シミュレーションの結果を示す図である。図50(b3)では、アレイ状光学素子Kを通過する光のうち1つの光学領域を通過する光束のみを示しているが、図50(a3)のようなクロストークは発生していないことがわかる。このように、マイクロレンズを回転対称形状にすることにより、クロストークを低減させることができるため、測距演算における精度の劣化を抑制することができる。
また、実施の形態1から8において、画素P1と画素P3とは互いに斜め方向に隣接しているが、図51のように、画素P1と画素P3とは、上下方向に隣接していてもよい。
画素Pが、図4、21等ののいずれの配置を有していても、また、光学素子L1が、図2、図14、図15等のいずれの構成を有していても、画素P2に、光学領域D1、D2のうちのいずれか一方を通過した光が入射し、画素P4に、光学領域D1、D2のうちのいずれか一方を通過した光が入射する点は同じである。
より好ましくは、画素P2に、光学領域D1、D2のうちのいずれか一方を通過した光のみを入射させ、画素P4に、光学領域D1、D2のうちのいずれか一方を通過した光のみを入射させる。ただし、光学領域D1およびサブ光学領域d2A、d2B、およびd2Cを通過した光束の一部は、撮像面Niにおける画素以外の領域や、隣の画素などに入射する可能性がある。したがって、本明細書および請求の範囲において、例えば、「画素P2に光学領域D1を通過した光のみを入射させる」とは、画素P2に光学領域D2からの光が全く入射しないことを意味するのではなく、画素P2に入射する光の大領域(例えば80%以上)が光学領域D1からの光であることを示すものとする。