JPWO2011093439A1 - N,n’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの製造方法 - Google Patents

N,n’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、収率及び安全性が高く、工業的生産に適用可能な、高純度のN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの製造方法を提供することを目的としている。本発明は、1,3−ジアミノプロパンとホルムアルデヒドとを反応させ、ヘキサヒドロピリミジンを得る第1工程と、ヘキサヒドロピリミジンとハロゲン化アリルとを塩基の存在下で反応させ、N,N’−ジアルキル化反応により1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを得る第2工程と、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのN,N’−アミナール部位を分解し、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを得る第3工程と、を備える、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩の製造方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの製造方法に関する。
N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンは、高リン血症の治療薬又は予防薬として有用な架橋ポリアリルアミンの架橋剤として有用である(特許文献1)。
N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの製造方法としては、出発原料にアミン類を用い、1,3−ジクロロプロパンを反応させる方法(特許文献1)とアルキル化剤として塩化アリルを反応させる方法(特許文献2)がよく知られている。
具体的には、特許文献1の方法は、加熱条件下で、アリルアミンと1,3−ジクロロプロパンを反応させ、N−アルキル化反応によりN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを合成し、得られたN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを単離・精製した後に、リン酸水溶液を用いたリン酸塩化反応によりN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン・2リン酸塩を得るものである。
また、特許文献2の方法は、塩基存在下、加熱条件下で、1,3−ジアミノプロパンと塩化アリルとを反応させ、N,N’−ジアルキル化反応によりN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを合成し、得られたN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを単離・精製した後に、塩化水素エーテル溶液を用いた塩化反応によりN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン・2塩酸塩を得るものである。
一方、ヘキサヒドロピリミジンは、物性が不安定であり、効率的な化学合成が困難であることが知られている(非特許文献1及び2)。1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンの製造方法としては、1,3−ジアミノプロパン、過剰量のホルムアルデヒド及びベンゾトリアゾールを反応させて得られる中間体と金属試薬との求核置換反応を利用する方法が報告されている(非特許文献3)。
具体的には、非特許文献1の方法は、1,3−ジアミノプロパンとホルムアルデヒドとを反応させ、N,N’−アミナ−ル形成反応によりヘキサヒドロピリミジンを合成するものであり、非特許文献2の方法は、非特許文献1の方法に2−ヒドロキシベンズアルデヒドを添加する工程が加えられ、反応副生成物を除去する改善がなされたものである。
また、非特許文献3に記載の方法は、1,3−ジアミノプロパンと、過剰量のホルムアルデヒド及びベンゾトリアゾールとを反応させて1,3−ビス(1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−イル)メチルヘキサヒドロピリミジンを合成し、単離・精製後に金属試薬を加えて求核置換反応を行うことで1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを得るものである。
なお、ヘキサヒドロピリミジンの窒素原子に対して求電子試薬を用いてスルホニル基又はカルボニル基を導入する方法は知られているが(非特許文献1及び4)、求電子性がより低いアルキル化剤を用いたN,N’−ジアルキル化反応についての報告は一切ない。
国際公開第2009/008480号 特許第3952223号公報
Evansら、Aust. J. Chem.、1967年、第20巻、p.1643−1661 Lockeら、J. Org. Chem.、2007年、第72巻、p.4156−4162 Katritzkyら、J. Chem. Soc. Perkin Trans.1、1990年、p.541−547 Katritzkyら、J. Chem. Soc. Perkin Trans.2、1987年、p.1695−1700
しかしながら、特許文献1で開示されている方法は、有害なアリルアミンを大量に使用する必要があるため(アリルアミンは、1,3−ジクロロプロパン1モルに対して10モルの割合で使用)、人体に対する安全性に留意する必要があり、生産効率の面においても工業的生産に適用するには不十分なものであった。また、特許文献2で開示されている方法は、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン・2塩酸塩の収率が極めて低く(11.3%)、N,N’−ジアルキル化反応を実施するに際しては、反応試薬と塩基の同時添加、段階的な反応温度昇温のための温度制御、さらには反応副生成物の濾別といった煩雑な操作を必要とするものであった。
また、非特許文献1及び2で開示されている方法は、ヘキサヒドロピリミジンの収率が低く、混合物の分離及び精製には煩雑な蒸留精製操作を行う必要もあり、生産時間及び生産効率の面で工業的生産に適用するにはさらなる改善の必要があった。また、非特許文献3で開示されている方法は、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを得るために、高価なベンゾトリアゾールを使用する必要があり(ベンゾトリアゾールは、1,3−ジアミノプロパン1モルに対して2モルの割合で使用)、グリニャール試薬と反応させる前には、1,3−ビス(1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−イル)メチルヘキサヒドロピリミジンを水中から単離し、引き続き高度な乾燥操作も必要となるため、生産費用及び生産効率の面で工業的生産に適用するには不十分なものであった。
さらには、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン及びその酸付加塩を医薬品の合成原料として使用するためには高い純度が要求されるところ、特許文献1及び2にはN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの純度については開示も示唆もされていない。
そこで本発明は、収率及び安全性が高く、工業的生産に適用可能な、高純度のN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、1,3−ジアミノプロパンとホルムアルデヒドとの反応により得られるヘキサヒドロピリミジンを精製することなく、連続してハロゲン化アリルと塩基の存在下で反応させることでN,N’−ジアルキル化反応が進行し、安定な中間体である1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンがワンポット合成可能であることを見出した。さらには、酸で1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのN,N’−アミナール部位を分解すればN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩が得られることを見出し、本発明を完成させた。
また本発明者らは、粗1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを蒸留精製してからN,N’−アミナール部位を分解することにより、極めて高純度のN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩が得られることも見出した。
すなわち、本発明は、1,3−ジアミノプロパンとホルムアルデヒドとを反応させ、ヘキサヒドロピリミジンを得る第1工程と、ヘキサヒドロピリミジンとハロゲン化アリルとを塩基の存在下で反応させ、N,N’−ジアルキル化反応により1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを得る第2工程と、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのN,N’−アミナール部位を分解し、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを得る第3工程と、を備える、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩の製造方法を提供する。
上記塩基は、水酸化ナトリウムであることが好ましい。
上記ハロゲン化アリルは、塩化アリルであることが好ましい。
上記第2工程におけるヘキサヒドロピリミジンとハロゲン化アリルとの反応は、二相系混合溶媒中で行われることが好ましい。
上記第3工程は、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンと酸とを反応させてN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを得る工程であることが好ましい。
上記酸は、塩酸又はリン酸であることが好ましい。
上記第2工程は、上記第1工程で得られたヘキサヒドロピリミジンを精製することなくハロゲン化アリルと反応させて1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを得る工程であることが好ましい。
上記第2工程は、得られた1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを蒸留精製する精製工程を含むことが好ましい。
本発明の製造方法によれば、架橋ポリアリルアミンの架橋剤となる高純度のN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩を、従来法と比較して顕著に高い収率で生産できる。また、本発明によれば、安全性が高く、煩雑な製造工程を排除した、工業的生産に適用可能なN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩の製造方法を提供できる。
本明細書で使用する「ハロゲン」の用語は、特に断りがない限り、フッ素基、塩素基、臭素基、ヨウ素基を意味する。
本発明の第1工程及び第2工程、すなわち、1,3−ジアミノプロパンとホルムアルデヒドを反応させてヘキサヒドロピリミジンを得る工程及びヘキサヒドロピリミジンとハロゲン化アリルとを塩基の存在下で反応させN,N’−ジアルキル反応により1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを得る工程をスキームAに示す。上記の第1工程としては、ヘキサヒドロピリミジンを得るところで後処理操作を必要とする第1工程(A)と、後処理操作を必要としない第1工程(B)とを例示でき、第2工程としては、上記の第1工程(A)で得られた粗ヘキサヒドロピリミジンを出発原料としてN,N’−ジアルキル反応を行う第2工程(A)と、上記の第1工程(B)から連続してワンポット・N,N’−ジアルキル反応を行う第2工程(B)とを例示できる。
Figure 2011093439
スキームA中の第1工程(A)は、式(I)で表されるヘキサヒドロピリミジンの合成反応及びその反応溶液の後処理操作のみからなり、得られたヘキサヒドロピリミジンを単離・精製する操作を伴わない工程である。
上記の第1工程(A)におけるヘキサヒドロピリミジンの合成反応条件としては、公知の反応条件(非特許文献2)が適用可能である。なお、反応の終点判定は、例えば、出発原料である1,3−ジアミノプロパンの消失又はヘキサヒドロピリミジンの生成をガスクロマトグラフィー(以下、「GC」)で確認して行うことができる。
上記の第1工程(A)における、粗ヘキサヒドロピリミジンを得るための後処理操作は以下のとおりである。まず、反応溶液を氷水で冷却してから、固体状水酸化ナトリウム(1,3−ジアミノプロパン1モルに対し、0.50〜2.50モルの量が好ましい)を添加し溶解させると、反応溶液が上層及び下層に分離する。この下層を廃棄して得られた上層が、粗ヘキサヒドロピリミジンである。
スキームA中の第2工程(A)は、第1工程(A)で得られた粗ヘキサヒドロピリミジンと、ハロゲン化アリルとを塩基の存在下N,N’−ジアルキル化反応させて、式(II)で表される1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを合成する工程である。
上記の第2工程(A)で用いる塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属の炭酸塩又は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が挙げられるが、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがさらに好ましい。なお、塩基は通常、固体又は水溶液として用いられる。
上記の第2工程(A)で用いる塩基の量は、第1工程(A)の出発原料である1,3−ジアミノプロパン1モルに対して1〜10モルが好ましく、1〜6モルがより好ましい。なお、大過剰の塩基を反応溶液中に添加すると、反応溶液飽和により無機塩類が析出し、撹拌が困難となる場合があることから、塩基の量を1,3−ジアミノプロパン1モルに対して1〜5モルに抑えることがさらに好ましい。
上記の第2工程(A)で用いるハロゲン化アリルとしては、例えば、塩化アリル、臭化アリルが挙げられるが、塩化アリルが好ましい。なお、ハロゲン化アリルは、市販品をそのまま用いてもよい。
上記の第2工程(A)で用いるハロゲン化アリルの量は、第1工程(A)の出発原料である1,3−ジアミノプロパン1モルに対して2〜10モルが好ましく、2〜5モルがより好ましい。なお、未反応のハロゲン化アリルの分解物は、副生成物として残存してしまうことから、経済性及び副生成物の残存抑制を考慮すると、ハロゲン化アリルの量を1,3−ジアミノプロパン1モルに対して2〜4モルに抑えることがさらに好ましい。
上記の第2工程(A)で用いる塩基の量は、同じく第2工程(A)で用いるハロゲン化アリルの量よりも過剰であることが好ましい。
上記の第2工程(A)で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定はなく、例えば、芳香族炭化水素系有機溶媒(トルエン、キシレンなど)、アミド系極性有機溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、脂肪族エーテル系有機溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなど)、脂肪族アルコール系有機溶媒(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなど)、スルホキシド系炭化水素系有機溶媒(ジメチルスルホキシドなど)、水溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン及びヘキサヒドロピリミジンの溶解性を考慮すると、tert−ブチルメチルエーテル又は水が好ましく、副生成物の生成抑制を考慮すると、水及びtert−ブチルメチルエーテルの二相性混合溶媒がより好ましい。
上記の第2工程(A)で用いる溶媒の量は、第1工程(A)の出発原料である1,3−ジアミノプロパン1重量に対して1〜25重量倍が好ましく、経済性や副生成物の生成抑制を考慮すると、1〜5重量倍がより好ましい。
上記の第2工程(A)におけるN,N’−ジアルキル化反応には、相関移動触媒を用いてもよい。
上記の相間移動触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムサルフェートなどの4級アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムクロリドなどの4級ホスホニウム塩、ドデシルピリジニウムクロリドなどのピリジニウム化合物又はクラウンエーテルが挙げられるが、テトラブチルアンモニウムブロミド又はテトラブチルアンモニウムヨージドが好ましく、テトラブチルアンモニウムブロミドがより好ましい。
上記の相間移動触媒の使用量は、第1工程(A)の出発原料である1,3−ジアミノプロパン1モルに対して0.01〜0.10モルが好ましく、0.01〜0.02モルがより好ましい。
上記の第2工程(A)におけるN,N’−ジアルキル化反応の温度は、−10〜100℃が好ましく、10℃以上で反応が加速する傾向を考慮すると、10〜80℃がより好ましく、副生成物の生成を抑制しながら24時間以内に反応を完結することを考慮すると、20〜60℃がさらに好ましい。
上記の第2工程(A)におけるN,N’−ジアルキル化反応の反応時間は、例えば、出発原料であるヘキサヒドロピリミジンの消失又は1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンの生成をGCで確認して決めることができる。なお、通常、24時間以内で反応は完結する。
上記の第2工程(A)のN,N’−ジアルキル化反応方式において、原料及び各試薬を混合する順序に制限はなく、粗ヘキサヒドロピリミジン溶液に塩基、ハロゲン化アリルを混合して反応させてもよいし、予め粗ヘキサヒドロピリミジンとハロゲン化アリルを混合した後に、溶媒及び塩基を添加してもよい。
上記の第2工程(A)で得られた反応溶液の後処理操作は、反応に一相性混合溶媒を用いた場合は一般的な洗浄操作及び分液操作を組み合わせて行えばよい。より具体的には、反応溶液に疎水性有機溶媒を添加した後、さらに水を添加して洗浄操作を行い、塩基及び水溶媒を除去してから減圧濃縮により有機溶媒を留去すれば、粗1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを得ることができる。
上記の洗浄操作については、水に代えて塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩化物の水溶液を用いることが好ましく、その濃度が1重量%〜飽和濃度であることがより好ましい。
上記の疎水性有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒又は酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル系溶媒が挙げられるが、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒又はエステル系溶媒が好ましく、tert−ブチルメチルエーテルがより好ましい。
反応に二相性混合溶媒を用いた場合は、一般的な分液操作を行えばよい。より具体的には、水溶媒を分液操作により除去してから減圧濃縮により有機溶媒を留去すれば、粗1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを得ることができる。
上記の分液操作後には、洗浄操作を行ってもよい。具体的には、分液操作後の有機層に酸の水溶液を添加して洗浄操作を行い、水層を除去してから減圧濃縮により有機溶媒を留去すれば、粗1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを得ることができる。酸の水溶液としては、例えば、リン酸水溶液又は塩酸水溶液が好ましく、リン酸水溶液がより好ましい。
上記の後処理操作により得られた粗1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを精製する方法としては、例えば、蒸留又はカラムクロマトグラフィーが挙げられる。
スキームA中の第1工程(B)及び第2工程(B)は、上記の第1工程(A)における後処理操作を行うことなく、出発原料である1,3−ジアミノプロパンから連続して反応を進め、一気に1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを合成する経路である。
上記の第1工程(B)で用いる1,3−ジアミノプロパンは、市販品をそのまま用いてもよいが、空気との接触を避けて保存された、十分な反応活性を有するものが好ましい。
上記の第1工程(B)で用いるホルムアルデヒドは、市販のホルムアルデヒド水溶液(30〜40重量%水溶液)をそのまま用いてもよい。
上記の第1工程(B)で用いるホルムアルデヒドの量は、出発原料である1,3−ジアミノプロパン1モルに対して0.50〜1.50モルが好ましく、0.75〜1.25モルがより好ましい。なお、過剰のホルムアルデヒドを用いるとホルムアルデヒド架橋型副生成物が生じる(非特許文献1)ことから、ホルムアルデヒドの量を1,3−ジアミノプロパン1モルに対して0.95〜1.15モルに抑えることがさらに好ましい。
上記の第1工程(B)で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、1,3−ジアミノプロパン及びホルムアルデヒドの溶解性を考慮すると、水が好ましい。
上記の第1工程(B)で用いる溶媒の量は、出発原料である1,3−ジアミノプロパン1重量に対して1〜25重量倍が好ましく、反応効率や副生成物の生成抑制を考慮すると、1〜5重量倍がより好ましい。
上記の第1工程(B)における反応温度は、−10〜100℃が好ましく、0〜80℃がより好ましく、反応効率や副生成物の生成抑制を考慮すると、10〜40℃がさらに好ましい。
上記の第1工程(B)の反応の終点判定は、例えば、出発原料である1,3−ジアミノプロパンの消失又はヘキサヒドロピリミジンの生成をGCで確認して行うことができる。なお、通常、5時間以内で反応は完結する。
なお、上記の第1工程(B)においては、1,3−ジアミノプロパン溶液に対してホルムアルデヒドを添加するという手順が好ましい。
第1工程(B)の終了後、直ちに行われる上記の第2工程(B)で用いる塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属の炭酸塩又は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が挙げられるが、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。なお、塩基は通常、水溶液として用いられるが、市販の塩基水溶液(10〜50重量%水溶液)をそのまま用いてもよい。
上記の第2工程(B)で用いる、ハロゲン化アリル、溶媒、相間移動触媒及びその量、反応温度並びに反応時間は、スキームA中の第2工程(A)と同様である。
上記の第2工程(B)において各試薬を混合する順序に制限はなく、第1工程(B)で得られた反応溶液に溶媒を加えた後に、さらに塩基、ハロゲン化アリルを混合して反応させてもよいし、第1工程(B)で得られた反応溶液とハロゲン化アリルを混合した後に、溶媒及び塩基を添加してもよい。
上記の第1工程(B)及び第2工程(B)にて得られた反応溶液の後処理操作は、スキームA中の第2工程(A)と同様である。
本発明の第3工程、すなわち、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのN,N’−アミナール部位を分解してN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩を得る工程及びN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの塩化工程をスキームBに示す。
Figure 2011093439
N,N’−アミナール部位を分解する方法としては、例えば、塩酸などの無機酸、トリフルオロ酢酸などの置換カルボン酸又はトリフルオロメタンスルホン酸など置換スルホン酸化合物を用いた加水分解が挙げられる。
スキームB中の第3工程(A)は、式(II)で表される1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのN,N’−アミナール部位の酸分解反応及び生成したN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの塩化により、式(IV)で表されるN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの酸付加塩を得る工程である。
上記の第3工程(A)で用いる酸としては、例えば、塩酸、リン酸などの無機酸又は有機酸が挙げられるが、リン酸が好ましい。なお、リン酸は、市販のリン酸水溶液(80〜90重量%水溶液)をそのまま用いてもよい。
上記の第3工程(A)で用いる酸の量は、出発原料である1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン1モルに対して1〜10モルが好ましく、1〜6モルがより好ましい。なお、経済性及び副生成物の生成抑制を考慮すると、酸の量を1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン1モルに対して2〜5モルに抑えることがさらに好ましい。
上記の第3工程(A)で用いる溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定はなく、例えば、脂肪族アルコール系有機溶媒(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなど)、水溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン、その酸付加塩及び1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンの溶解性を考慮すると、メタノール又は水が好ましく、副生成物の生成抑制を考慮すると、メタノール及び水の一相性混合溶媒がより好ましい。
上記の第3工程(A)で用いる溶媒の量は、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン1重量に対して1〜25重量倍が好ましく、3日間以内に反応を完結することを考慮すると、1〜10重量倍がより好ましい。
上記の第3工程(A)におけるN,N’−アミナール部位の酸分解の反応温度は、10〜100℃が好ましく、40℃以上で反応が加速する傾向を考慮すると、40〜100℃がより好ましく、副生成物の生成を抑制しながら3日間以内に反応を完結することを考慮すると、50〜100℃がさらに好ましい。
上記の第3工程(A)におけるN,N’−アミナール部位の酸分解の反応時間は、例えば、出発原料である1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンの消失又はN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの生成をGCで確認して決めることができる。なお、通常、3日間で反応は完結する。
上記の第3工程(A)のN,N’−アミナール部位の酸分解においては、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン溶液に対して酸を滴下するという手順が好ましい。
上記の第3工程(A)で得られた反応溶液の後処理操作としては、反応溶液を冷却することにより目的の塩を晶析させるか、再結晶をすればよい。
スキームB中の第3工程(B)は、式(II)で表される1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのN,N’−アミナール部位の酸分解反応により、式(III)で表されるN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを得る工程である。
上記の第3工程(B)で用いる酸としては、例えば、塩酸、リン酸などの無機酸又は有機酸が挙げられるが、塩酸が好ましい。なお、塩酸は、市販の塩酸水溶液(水中30〜40重量%)をそのまま用いてもよい。
上記の第3工程(B)で用いる、酸の量、溶媒及びその量、反応温度並びに試薬の混合手順は、スキームB中の第3工程(A)と同様である。
上記の第3工程(B)におけるN,N’−アミナール部位の酸分解に塩酸を用いた場合は、通常、12時間で反応は完結する。
上記の第3工程(B)におけるN,N’−アミナール部位の酸分解の反応温度は、副生成物の生成を抑制しながら12時間以内に反応を完結することを考慮すると、50〜100℃が好ましい。
上記の第3工程(B)で得られた反応溶液の後処理操作は、反応溶液を塩基によりpH調整した後に、一般的な洗浄操作及び分液操作を組み合わせて行えばよい。より具体的には、塩基添加により塩基性とした反応溶液に疎水性有機溶媒を添加した後、さらに水を添加して洗浄操作を行い、塩基及び水溶媒を除去してから減圧濃縮により有機溶媒を留去すれば、粗N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを得ることができる。
上記の洗浄操作については、水に代えて塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩化物の水溶液を用いることが好ましく、その濃度が1重量%〜飽和濃度であることがより好ましい。
上記のpH調整に用いる塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が挙げられるが、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。なお、塩基は通常、水溶液として用いられる。
上記の疎水性有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒又は酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル系溶媒などが挙げられるが、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒又はエステル系溶媒が好ましく、tert−ブチルメチルエーテルがより好ましい。
上記の後処理操作により得られた、粗N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを精製する方法としては、例えば、蒸留又はカラムクロマトグラフィーが挙げられる。
スキームB中の塩化工程は、式(III)で表されるN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを塩化して、式(IV)で表されるN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの酸付加塩を得る工程である。
上記の塩化工程で用いる酸としては、例えば、塩酸、リン酸などの無機酸又は有機酸が挙げられるが、塩酸又はリン酸が好ましい。なお、塩酸及びリン酸は、それぞれ市販の塩酸水溶液(30〜40重量%水溶液)又はリン酸水溶液(80〜90重量%水溶液)をそのまま用いてよい。
上記の塩化工程で用いる酸の量は、出発原料であるN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン1モルに対して2〜5モルが好ましく、2〜4モルがより好ましい。なお、経済性及び副生成物の生成抑制を考慮すると、酸の量をN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン1モルに対して2〜3モルに抑えることがさらに好ましい。
上記の塩化工程で用いる溶媒としては、塩化を阻害しないものであれば特に限定はなく、例えば、芳香族炭化水素系有機溶媒(トルエン、キシレンなど)、脂肪族エーテル系有機溶媒(テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなど)、脂肪族アルコール系有機溶媒(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなど)、水溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン及びその酸付加塩の溶解性を考慮すると、メタノール又は水が好ましく、メタノール及び水の一相性混合溶媒がより好ましい。
上記の塩化工程で用いる溶媒の量は、出発原料であるN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン1重量に対して1〜25重量倍が好ましい。
上記の塩化工程の反応温度は、10〜100℃が好ましく、40℃以上で反応が加速する傾向を考慮すると、40〜100℃がより好ましい。
上記の塩化工程においては、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン溶液に対して酸を滴下するという手順が好ましい。
上記の塩化工程で得られた反応溶液の後処理操作としては、反応溶液を冷却することにより目的の塩を晶析させるか、再結晶をすればよい。
さらに高純度のN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩を得るには、上記の第2工程で得られる1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンの蒸留精製、上記の第3工程(B)で得られるN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの蒸留精製及び塩化工程で得られるN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの酸付加塩の再結晶精製を単独又は組み合わせて行えばよく、中でも上記の第2工程において、得られた1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを蒸留精製する精製工程を含んでいることが好ましい。
具体的には、上記の第2工程で得られる1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンの蒸留精製は、減圧及び加熱条件下で行い、出発原料として1,3−ジアミノプロパンを10g用いたスケールでは、減圧度を4.9〜6.0mmHg、オイルバスにおける加熱温度を78〜85℃として減圧蒸留すれば、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(蒸気温度:49〜52℃)を得ることができる。また、出発原料として1,3−ジアミノプロパンを444.4g用いたスケールでは、減圧度を3〜4mmHg、オイルバスにおける加熱温度を100〜125℃として減圧蒸留すれば、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(蒸気温度:69〜75℃)を得ることができる。
但し、上記の精製工程とその他の精製方法の組み合わせ方については、特に制限はなく、精製前純度又は目標とする精製後純度及び回収率などにより適宜決めればよい。
以下に、実施例を挙げて本発明のN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
H核磁気共鳴スペクトル(400MHzH−NMR)は、日本電子(株)製JNM−AL410型核磁気共鳴装置を用いて測定した。ケミカルシフトはテトラメチルシランを基準として、δ(単位:ppm)で表し、シグナルはそれぞれ、s(一重線)、d(二重線)t(三重線)、q(四重線)、m(多重線)、br.(幅広)で表した。IRスペクトルは、日本電子(株)製FT/IR−410型フーリエ変換赤外分光光度計を、MSスペクトルは、Waters社製Micro Mass ZQを用いて測定した。また、元素分析は、Elementar社製のvario EL III(Elementar Analysensysteme GmbH)を用いて行った。
各工程における工程分析は、必要に応じて、以下のGC測定条件(以下、「条件A」)にて行った。
使用機器: 島津ガスクロマトグラフ((株)島津製作所;GC−17A)
CHROMATOPAC C−R7Aplus((株)島津製作所)
使用カラム: Capillary Column(ジーエルサイエンス(株))
Inert Cap(登録商標)(For Amines)
測定条件:
Carrier Gas: He
Column Temp.: 50℃
Injection Temp.: 250℃
Detector Temp.: 260℃
Temp. program:
50℃(5 min)―10℃/min―220℃(22 min)
Pressure: 75KPa
Flow: 39mL/min Split 1:10
(第1工程(A))
蒸留水(10.0mL)へ1,3−ジアミノプロパン(10.0g,135mmol)を0℃にて滴下した反応溶液にホルムアルデヒド水溶液(35重量%水溶液、11.7mL,148mmol)を0℃にて滴下し、室温で2時間撹拌を行った。1,3−ジアミノプロパンの消失及びヘキサヒドロピリミジンの生成を確認後、反応溶液を0℃まで冷却し、反応溶液に水酸化ナトリウム(固体、2.70g,67mmol)を加えて撹拌後、有機層及び水層を分離した。得られた有機層(粗ヘキサヒドロピリミジン)は、精製することなくそのまま次反応に用いた。なお、上記の条件AにおけるGC保持時間は、1,3−ジアミノプロパンが13.332分、ヘキサヒドロピリミジンが15.599分であった。
(第2工程(A))
第1工程(A)で得られた有機層(粗ヘキサヒドロピリミジン)にtert−ブチルメチルエーテル(18.8mL)及び水酸化ナトリウム水溶液(48重量%水溶液、30.4mL,553mmol)を0℃にて滴下後、撹拌を行った。二相性反応溶液に塩化アリル(22.5mL,277mmol)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(435mg,1.35mmol)を0℃にて順次添加後、室温で15時間撹拌を行った。二相性反応溶液に水(18.8mL)を加え撹拌を行った後、有機層及び水層を分離した。得られた有機層を塩化ナトリウム水溶液(10重量%水溶液、18.8mL)で1回洗浄し、溶媒を留去した。残留物を減圧加熱蒸留(減圧度:5.3〜6.0mmHg,蒸気温度:50〜52℃)にて精製し、目的とする1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(収量10.98g、収率49.0%)を無色油状物として得た。1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンの上記の条件AにおけるGC保持時間は23.480分であり、IRスペクトル、H核磁気共鳴スペクトル及びMSスペクトル並びに元素分析結果は以下のとおりであった。
IR(film,cm−1):2940.9,2789.5,1644.0,1447.3,1338.4,1194.7,1104.0,994.1,918.0.
H−NMR(CDCl):δ1.66−1.71ppm(2H,m),2.46(4H,m),2.99−3.02(4H,m),3.11(2H,m),5.09−5.19(4H,m),5.81−5.92(2H,m).
ESI−MS:m/z=167(M+H)
Elem.Anal.:cal.;C,72.24;H,10.91;N,16.85;obs.;C,71.20;H,11.03;N,16.90.
(第1工程(B)及び第2工程(B))
蒸留水へ1,3−ジアミノプロパン(1.0当量)を0℃にて滴下した反応溶液にホルムアルデヒド水溶液(35重量%水溶液、1.1当量)を0℃にて滴下し、室温で2時間撹拌を行った。1,3−ジアミノプロパンの消失及びヘキサヒドロピリミジンの生成を確認後、反応溶液を0℃まで冷却した。反応溶液にtert−ブチルメチルエーテル及び塩基(当量)を0℃にて滴下後、撹拌を行った。二相性反応溶液にハロゲン化アリル(2.05当量)及び相関移動触媒(0.01当量)を0℃にて順次添加後、室温で撹拌を行った。工程分析はGC(条件A)を用いて行った。反応途中16時間後のGC比率(%)を式1より求めた。
GC比率(1)(%) = {P/(Q−R−S)}×100・・・・・・式1
P : 1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのGCピーク面積値
Q : GC全ピーク面積値(測定試料調製溶媒のピーク面積値を除く)
R : ハロゲン化アリルのGCピーク面積値
S : 反応に用いた溶媒のGCピーク面積値
相間移動触媒、塩基若しくはその量又はハロゲン化アリルを変化させて第1工程(B)及び第2工程(B)における上記のGC比率(%)を検討した結果を表1に示す。
Figure 2011093439
表1に示す結果より、第2工程(B)におけるN,N’−ジアルキル化反応は、相関移動触媒の存在の有無に関わらず進行することは明らかである。なお、反応速度を向上させるためにはアルカリ金属水酸化物又は塩化アリルを、副生成物の生成を抑制するためには塩化アリルを用いればよいことも明らかとなった。
反応に用いる溶媒を変化させて第1工程(B)及び第2工程(B)における上記のGC比率(1)(%)を検討した結果を表2に示す。
Figure 2011093439
表2に示す結果より、第2工程(B)におけるN,N’−ジアルキル化反応は、用いる溶媒の種類について特に限定を受けることなく進行することは明らかである。
表1中、entry4の検討について、より具体的な手順を以下に示す。蒸留水(10.0mL)へ1,3−ジアミノプロパン(10.0g,135mmol)を0℃にて滴下した反応溶液にホルムアルデヒド水溶液(35重量%水溶液、11.7mL,148mmol)を0℃にて滴下し、室温で2時間撹拌を行った。1,3−ジアミノプロパンの消失及びヘキサヒドロピリミジンの生成を確認後、反応溶液を0℃まで冷却した。反応溶液にtert−ブチルメチルエーテル(22.5mL)及び水酸化ナトリウム水溶液(48重量%水溶液、23.0mL,418mmol)を0℃にて滴下後、撹拌を行った。二相性反応溶液に塩化アリル(22.5mL,277mmol)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(435mg,1.35mmol)を0℃にて順次添加後、室温で15時間撹拌を行った。二相性反応溶液に水(22.5mL)を加え撹拌を行った後、有機層及び水層を分離した。得られた有機層を塩化ナトリウム水溶液(10重量%水溶液、22.5mL)で1回洗浄し、溶媒を留去した。残留物を減圧加熱蒸留(減圧度:4.9〜5.6mmHg,蒸気温度:49〜52℃)にて精製し、目的とする1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(収量12.90g、収率57.5%)を無色油状物として得た。
(第3工程(A))
溶媒に酸を0℃にて加え撹拌を行った後、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(5.00g,30.01mmol)を滴下後、加熱条件下で撹拌を行った。工程分析はGC(条件A)を用いて行った。反応途中である24時間後のGC比率(%)を式2より求めた。
GC比率(2)(%) = {T/(T+U)}×100・・・・・・式2
T : N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンのGCピーク面積値
U : 1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのGCピーク面積値
酸若しくはその量、反応温度、反応に用いる溶媒又は1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンと溶媒との重量比を変化させて第3工程(A)における上記のGC比率(2)(%)を検討した結果を表3に示す。
Figure 2011093439
表3に示す結果より、第3工程(A)における1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのN,N’−アミナール部位の酸分解は、種々の条件下で進行することは明らかである。
スキームB中の第3工程(A)の反応の一例について、具体的な手順を以下に示す。1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(1.00g,6.03mmol)のメタノール溶液(8.00mL)にリン酸水溶液(85重量%水溶液、1.65mL,24.1mmol)を0℃にて滴下し、60℃で3日間攪拌を行った。0℃まで冷却後、反応溶液にN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン・2リン酸塩の種結晶を添加し、0℃にて撹拌晶析を行った。生成した白色固体を濾取し、次いで恒量になるまで減圧乾燥を行うことにより、目的とするN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン・2リン酸塩(収量1.69g、収率80.0%)を得た。N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン(フリー体)の上記の条件AにおけるGC保持時間は23.081分であり、H核磁気共鳴スペクトル及びMSスペクトルは以下のとおりであった。
H−NMR(CDCl);N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン(フリー体として):δ1.45ppm(2H,br.),1.71(2H,q,J=7.0Hz),2.68(4H,t,J=7.0Hz),3.25(4H,dt,J=1.6,6.0Hz),5.08(2H,ddd,J=1.6,3.2,10.4Hz),5.17(2H,ddd,J=1.6,3.2,17.2Hz),5.90(2H,ddt,J=6.0,10.4,17.2Hz).
ESI−MS;N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン(フリー体として):m/z=155(M+H)
スキームB中の第3工程(B)の反応の一例について、具体的な手順を以下に示す。蒸留水(32.0mL)及びメタノール(32.0mL)の一相性混合溶媒に塩酸水溶液(35〜37重量%水溶液、40.0mL,481mmol)を0℃にて滴下後撹拌した。反応溶液に1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(20.0g,120mmol)を0℃にて滴下後、90〜98℃で3時間30分間撹拌した。0℃まで冷却後、反応溶液に水酸化ナトリウム水溶液(48重量%水溶液、40.1g,481mmol)及びtert−ブチルメチルエーテル(40.0g)を0℃にて滴下し、撹拌を行ってから二相性反応溶液の有機層及び水層を分離した。得られた有機層の溶媒を留去し、残留物を減圧加熱蒸留(減圧度:3.0 mmHg,蒸気温度:60−64℃)にて精製し、目的とするN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン(収量16.39g、収率88.3%)を無色油状物として得た。
スキームB中の塩化工程の反応の一例について、具体的な手順を以下に示す。N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン(14.02g,90.9mmol)のメタノール溶液(140.2mL)にリン酸水溶液(85重量%水溶液、12.40mL,182mmol)を0℃にて滴下し、0℃で1時間撹拌を行った。懸濁状反応溶液を70℃にて加熱後、懸濁状反応溶液に蒸留水(10mL)を滴下し、0℃にて撹拌晶析を行った。生成した白色固体を濾取し、次いで恒量になるまで減圧乾燥を行うことにより、目的とするN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン・2リン酸塩(収量30.48g、収率95.8%)を得た。
スキームA中の第1工程(B)及び第2工程(B)で得られた、式(II)で表される1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを単離・精製することなく、第3工程(B)に供した一連の反応の一例について、具体的な手順を以下に示す。蒸留水(49.0mL)へ1,3−ジアミノプロパン(20.0g,270mmol)を0℃にて滴下した反応溶液にホルムアルデヒド水溶液(35重量%水溶液、23.4mL,297mmol)を0℃にて滴下し、室温で3時間撹拌を行った。1,3−ジアミノプロパンの消失及びヘキサヒドロピリミジンの生成を確認後、反応溶液を0℃まで冷却した。反応溶液にtert−ブチルメチルエーテル(45.0mL)及び水酸化ナトリウム水溶液(48重量%水溶液、46.0mL,837mmol)を0℃にて滴下後、撹拌を行った。二相性反応溶液に塩化アリル(45.1mL,553mmol)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(870mg,2.70mmol)を0℃にて順次添加後、室温で20時間撹拌を行った後、二相性反応溶液の有機層及び水層を分離した。得られた有機層をメタノール(40.0mL)を用いて2回共沸留去した。残留物の蒸留水(71.9mL)及びメタノール(71.9mL)の一相性混合溶媒に塩酸水溶液(35〜37重量%水溶液、89.9mL,1.08mol)を0℃にて滴下後、90〜98℃で3時間40分間撹拌した。0℃まで冷却後、反応溶液に水酸化ナトリウム水溶液(48重量%水溶液、89.9g,1.08mol)及びtert−ブチルメチルエーテル(40.0g)を0℃にて滴下後、撹拌を行ってから二相性反応溶液の有機層及び水層を分離した。得られた有機層の溶媒を留去し、残留物を減圧加熱蒸留(減圧度:3.0mmHg,蒸気温度:42〜58℃)にて精製し、目的とするN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン(収量19.09g、収率45.9%)を無色油状物として得た。
(N−アリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩の低減)
スキームCは、得られたN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン及びその酸付加塩に高濃度で含まれ、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン及びその酸付加塩からの分離が困難である、1−アリルヘキサヒドロピリミジン(式(V))由来の副生成物、すなわち、N−アリル−1,3−ジアミノプロパン(式(VI))又はその酸付加塩(式(VII))の副生経路を示す。
Figure 2011093439
スキームC中のN−アリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩を効果的に低減することを目的とする、粗1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンの蒸留精製の一例について、具体的な手順を以下に示す。蒸留水(1087.9g)へ1,3−ジアミノプロパン(444.4g,6.00mol)を0℃にて滴下した反応溶液にホルムアルデヒド水溶液(35重量%水溶液、566.0g,6.60mol)を0℃にて滴下し、室温で3時間撹拌を行った。1,3−ジアミノプロパンの消失及びヘキサヒドロピリミジンの生成を確認後、反応溶液を0℃まで冷却した。反応溶液にtert−ブチルメチルエーテル(731.7g)及び水酸化ナトリウム水溶液(48重量%水溶液、1548.5g,18.58mol)を0℃にて滴下後、撹拌を行った。二相性反応溶液に塩化アリル(937.4g,12.25mol)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(19.0g,0.060mol)を0℃にて添加後、室温で16時間撹拌を行ってから、二相性反応溶液の有機層及び水層を分離し、得られた有機層の溶媒を留去した。残留物を減圧加熱蒸留(減圧度:3〜4mmHg,蒸気温度:69〜75℃、オイルバス温度:100〜125℃)にて精製し、目的とする1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(収量452.0g、収率45.3%)を無色油状物として得た。一方で、1−アリルヘキサヒドロピリミジンが分解及び多量化したと推測される粘性の蒸留残渣物が観察された。
スキームC中のN−アリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩を効果的に低減することを目的とする粗1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンの蒸留精製の一例について、具体的な手順を以下に示す。蒸留水(122.6g)へ1,3−ジアミノプロパン(49.9g,0.67mol)を0℃にて滴下した反応溶液に、ホルムアルデヒド水溶液(35重量%水溶液、61.9g,0.72mol)を0℃にて滴下し、室温で3時間撹拌を行った。1,3−ジアミノプロパンの消失及びヘキサヒドロピリミジンの生成を確認後、反応溶液を0℃まで冷却した。その後、反応溶液にtert−ブチルメチルエーテル(84.0g)及び水酸化ナトリウム水溶液(48重量%水溶液、176.1g,2.11mol)を0℃にて滴下し、撹拌を行った。二相性反応溶液に塩化アリル(105.1g,1.37mol)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(2.3g,0.007mol)を0℃にて添加後、室温で22時間撹拌を行い、二相性反応溶液の有機層及び水層を分離した。得られた有機層をリン酸水溶液(8重量%水溶液、86.5g)で1回洗浄し、有機層及び水層を分離した。得られた水層は、tert−ブチルメチルエーテル(71.7g)で抽出し、全ての有機層を合わせてから溶媒を留去した。残留物を減圧加熱蒸留にて精製し、目的とする1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(収量51.6g、収率46.3%)を無色油状物として得た。
以下に、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの製造方法における第2工程(B)、第3工程(A)、第3工程(B)及び塩化工程における精製の有無及び精製方法による各工程精製物である1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン・2リン酸塩及びN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン・2塩酸塩の純度、及び各工程精製物に含有される1−アリルヘキサヒドロピリミジン若しくはN−アリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩の含有比率について検討した。
この製造方法における各工程の生成物の純度分析及び含有比率は、必要に応じて、以下のGC測定条件(以下、「条件B」)にて行った。
使用機器: 島津ガスクロマトグラフ((株)島津製作所;GC−17A)
CHROMATOPAC C−R7Aplus((株)島津製作所)
使用カラム: Capillary Column(ジーエルサイエンス(株))
Inert Cap(登録商標)(For Amines)
測定条件:
Carrier Gas: He
Column Temp.: 50℃
Injection Temp.: 250℃
Detector Temp.: 260℃
Temp. program:
50℃(5 min)―10℃/min―240℃(11 min)
Pressure:75KPa
Flow: 39mL/min Split 1:10
1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのGC純度は、50mLメスフラスコに試料約50mgを量り入れ、メタノールで定容したものを上記の条件BでGC測定し、式3より算出した。
GC純度(3)(%) = (A/B)×100・・・・・・式3
A : 1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのGCピーク面積値
B : GC全ピーク面積値(測定試料調製溶媒のピーク面積値を除く)
なお、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン中に含有される1−アリルヘキサヒドロピリミジンの含有GC比率(%)は、式3aより求めた。条件Bにおける1−アリルヘキサヒドロピリミジンのGC保持時間は、20.482分であった。
含有GC比率(3a)(%) = (a/b)×100・・・・・・式3a
a : 1−アリルヘキサヒドロピリミジンのGCピーク面積値
b : 1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのGCピーク面積値
いくつかのスケールの第2工程(B)について、蒸留精製の有無によるGC純度(3)(%)及び含有GC比率(3a)(%)への影響を検討した結果を、表4に示す。
Figure 2011093439
表4に示す結果より、第2工程(B)において蒸留精製を行うことで1−アリルヘキサヒドロピリミジンの含有量が低減し、高純度の1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンが得られることは明らかである。
蒸留精製をした1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを原料とする、第3工程(B)の反応から得られたN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの蒸留精製の一例について、具体的な手順を以下に示す。1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(246.5g,1.48mol)のメタノール溶液(315.5g)へ蒸留水(398.5g)を添加後、塩酸水溶液(35〜37重量%水溶液、587.8g,5.63mol)を0℃にて滴下し、86〜102℃で3時間撹拌をした。0℃まで冷却後、反応溶液に水酸化ナトリウム水溶液(48重量%水溶液、490.3g,5.88mol)及びtert−ブチルメチルエーテル(298.8g)を0℃にて滴下し、撹拌を行ってから二相性反応溶液の有機層及び水層を分離した。得られた水層はtert−ブチルメチルエーテル(150.4g)で抽出し、全ての有機層を合わせてから溶媒を留去し、粗N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを得た(236.6g)。
N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンのGC純度は、10mLメスフラスコに試料約20mgを量り入れ、蒸留水で定容したものを上記の条件BでGC測定し、式4より算出した。上記の収量236.6gの粗N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンのGC純度(4)(%)は、89.00であった。
GC純度(4)(%) = (C/D)×100・・・・・・式4
C : N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンのGCピーク面積値
D : GC全ピーク面積値(測定試料調製溶媒のピーク面積値を除く)
なお、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン中に含有されるN−アリル−1,3−ジアミノプロパンの含有GC比率(%)は、式4aより求めた。条件BにおけるN−アリル−1,3−ジアミノプロパンのGC保持時間は、19.356分であった。
含有GC比率(4a)(%) = (c/d)×100・・・・・・式4a
c : N−アリル−1,3−ジアミノプロパンのGCピーク面積値
d : N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンのGCピーク面積値
得られた粗N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの一部(127.7g)を減圧加熱単蒸留にて精製し、目的とするN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン(収量98.7g、GC純度(4)(%):92.44)を無色油状物として得た。
さらに、得られた粗N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの一部(127.9g)をディクソンパッキン3mm、SUS304を充填した、長さ38cm、内径約2cmのガラス管を使用して減圧加熱精密蒸留にて精製し、目的とするN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン(収量53.3g、GC純度(4)(%):99.52)を無色油状物として得た。
2つのスケールの第3工程(B)について、原料の純度又は精製方法の相違によるGC純度(4)(%)及び含有GC比率(4a)(%)への影響を検討した結果を表5に示す。
Figure 2011093439
表5に示す結果より、第2工程(B)において蒸留精製を行った高純度の1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを第3工程(B)の出発原料として用いることで高純度のN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンが得られ、さらに蒸留精製を行うことでその純度をより高めることができることは明らかである。
蒸留精製をした1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを原料とする第3工程(B)の反応から得られたN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを、さらに蒸留精製したものの塩化工程の一例について、具体的な手順を以下に示す。蒸留水(32.0mL)及びメタノール(32.0mL)の一相性混合溶媒に塩酸水溶液(35〜37重量%水溶液、37.8g,362.8mmol)を0℃にて滴下後撹拌した。反応溶液に蒸留精製をした1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(20.0g,120mmol)を0℃にて滴下後、90〜99℃で3時間撹拌した。0℃まで冷却後、反応溶液に水酸化ナトリウム水溶液(48重量%水溶液、39.1g,469mmol)及びtert−ブチルメチルエーテルを0℃にて滴下後、撹拌を行ってから二相性反応溶液の有機層及び水層を分離した。得られた水層をtert−ブチルメチルエーテルで抽出し、全ての有機層を合わせてから溶媒を留去し、得られた残留物を減圧加熱蒸留(減圧度:3.5mmHg,蒸気温度:49〜58℃)にて精製し、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン(収量16.6g、収率89.2%、GC純度(4)(%):95.50)を無色油状物として得た。
得られたN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン(16.6g,107.4mmol)のメタノール溶液(9.85g)に塩酸メタノール溶液(6.65重量%メタノール溶液、117.6g,214.5mmol)を0℃にて滴下し、0℃で1時間撹拌を行った。懸濁状反応溶液を69℃のオイルバスで加熱後、0℃にて撹拌晶析を行った。生成した白色固体を濾取し、次いで恒量になるまで減圧乾燥を行うことにより、目的とするN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン・2塩酸塩(収量13.86g、収率56.8%)を得た。
一方で、表6のentry5に示されるN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン(53.0g,0.344mol)のメタノール溶液(418.2g)にリン酸水溶液(85重量%水溶液、79.5g,0.690mol)を0℃にて滴下し、0℃で1時間撹拌を行った。懸濁状反応溶液に蒸留水(40.9g)を滴下してから70℃のオイルバスで加熱後、0℃にて懸濁状反応溶液の撹拌晶析を行った。生成した白色固体を濾取し、次いで恒量になるまで減圧乾燥を行うことにより、目的とするN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン・2リン酸塩(収量115.7g、収率95.9%)を得た。
N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンのリン酸塩及び塩酸塩については、陰イオン交換樹脂により前処理を行うことでGC測定が可能となる。陰イオン交換樹脂として強塩基性アニオン交換樹脂(4級アンモニウム塩)を用いた前処理の一例について、具体的な手順を以下に示す。10mLメスフラスコに試料90mgを量り入れ、蒸留水で定容した。10mL試験管に前処理をした陰イオン交換樹脂(ダイヤイオン SANUPB)約900mgを量り入れ、ここへ試料水溶液5mLをホールピペットで加え、振とう機を用いて室温で60分間振とうしてから遠心分離し、上清を測定試料とした。
なお、陰イオン交換樹脂の前処理としては、桐山ロートにセットした濾紙上に3gの陰イオン交換樹脂をのせ、駒込ピペットで蒸留水30mLを陰イオン交換樹脂に滴下し、自然乾燥してから吸引瓶及びダイアフラムポンプを接続してさらに吸引乾燥をした。
測定試料は上記の条件BでGC測定を行い、GC純度を式4より算出した。
いくつかスケールの塩化工程ついて、原料の純度の相違によるGC純度(4)(%)及び含有GC比率(4a)(%)への影響を検討した結果を表6に示す。
Figure 2011093439
表6に示す結果より、第2工程(B)において蒸留精製を行い、さらに第3工程(B)において蒸留精製を行ったN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを出発原料として用いることで、高純度のN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンの塩酸塩及びリン酸塩が得られることは明らかである。
蒸留精製をした1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを原料とするスキームB中の第3工程(A)の反応の一例について、具体的な手順を以下に示す。蒸留水(32.0mL)及びメタノール(32.0mL)の一相性混合溶媒に塩酸水溶液(35〜37重量%水溶液、37.5g,359.8mmol)を0℃にて滴下後撹拌した。反応溶液に1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジン(19.9g,119.9mmol)を0℃にて滴下後、90〜99℃で3時間撹拌した。室温まで空冷後、濃縮、減圧乾燥し、粗結晶(27.19g)を得た。エタノール(152.6g)を加え、懸濁状反応溶液をオイルバス(バス温:90℃)にて加熱後、懸濁状反応溶液に蒸留水(13g)を滴下し、0℃にて撹拌晶析を行った。生成した白色固体を濾取し、次いで恒量になるまで減圧乾燥を行うことにより、目的とするN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン・2塩酸塩(収量21.8g、収率80.1%、GC純度(4)(%):99.98)を得た。
なお、スキームA中、式(I)で表されるヘキサヒドロピリミジンを公知の製造方法(非特許文献1)により合成し、その蒸留精製(非特許文献1)を試みたが、ヘキサヒドロピリミジンが分解及び多量化したと考えられる蒸留残渣物が生じ、ヘキサヒドロピリミジンは1,3−ジアミノプロパンとの混合物として、低収率で得られるに過ぎなかった。具体的な手順を、以下の(参考例)に示す。
(参考例)
蒸留水(40.0mL)へ1,3−ジアミノプロパン(40.0g,540mmol)を0℃にて滴下した反応溶液にホルムアルデヒド水溶液(35重量%水溶液、46.7mL,593mmol)を0℃にて滴下し、室温で2時間撹拌を行った。1,3−ジアミノプロパンの消失及びヘキサヒドロピリミジンの生成を確認後、反応溶液を0℃まで冷却した。反応溶液に水酸化ナトリウム(固体、16.19g,405mmol)を0℃にて添加後、撹拌を行った。有機層及び水層に分離した二相性反応溶液の有機層を水酸化ナトリウム(8.89g)で乾燥後、濾過により固体を分離した。濾液を減圧加熱蒸留(減圧度:2.5kPa、蒸気温度:28〜48℃)にて精製し、目的とするヘキサヒドロピリミジンを含む無色油状混合物(収量11.14g)として得た。減圧加熱蒸留後の蒸留残渣物の重量は、31.57gであり、高粘性物質であった。
本発明の製造方法は、架橋ポリアリルアミン又はその酸付加塩の架橋剤として有用なN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩の製造に利用できる。

Claims (8)

  1. 1,3−ジアミノプロパンとホルムアルデヒドとを反応させ、ヘキサヒドロピリミジンを得る第1工程と、
    ヘキサヒドロピリミジンとハロゲン化アリルとを塩基の存在下で反応させ、N,N’−ジアルキル化反応により1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを得る第2工程と、
    1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンのN,N’−アミナール部位を分解し、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを得る第3工程と、
    を備える、N,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパン又はその酸付加塩の製造方法。
  2. 前記塩基は、水酸化ナトリウムである、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記ハロゲン化アリルは、塩化アリルである、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記第2工程におけるヘキサヒドロピリミジンとハロゲン化アリルとの反応は、二相系混合溶媒中で行われる、請求項1〜3のいずれか一項記載の製造方法。
  5. 前記第3工程は、1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンと酸とを反応させてN,N’−ジアリル−1,3−ジアミノプロパンを得る工程である、請求項1〜4のいずれか一項記載の製造方法。
  6. 前記酸は、塩酸又はリン酸である、請求項5記載の製造方法。
  7. 前記第2工程は、前記第1工程で得られたヘキサヒドロピリミジンを精製することなくハロゲン化アリルと反応させて1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを得る工程である、請求項1〜6のいずれか一項記載の製造方法。
  8. 前記第2工程は、得られた1,3−ジアリルヘキサヒドロピリミジンを蒸留精製する精製工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の製造方法。
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