JPWO2011055489A1 - 補聴器 - Google Patents

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賢二 岩野
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Abstract

本発明の補聴器は、入力音信号を増幅または圧縮する利得を算出する利得算出手段と、入力信号と利得から出力音圧レベルを算出する音圧算出手段と、出力音圧レベルが発生する時間間隔を出力音圧レベル毎に積算して暴露時間を算出する計時手段と、出力音圧レベル毎の暴露時間が許容時間を超過したかどうかを検出する暴露時間判定手段と、を備えている。

Description

本発明は、補聴器に関する。
従来より、過大音による聴覚障害に対して使用者を保護するために、出力音圧制限回路を有し、最大出力音圧レベル特性の高音域を制御する補聴器がある(例えば、特許文献1参照)。
また、過大音による聴覚障害を防止するため、日本産業衛生学会では、騒音許容基準を策定している。
特開平2−58999号公報
しかしながら、上記従来の補聴器では、以下のような問題を有している。
すなわち、上記公報に開示された補聴器では、所定の閾値以上の入力音圧が与えられると、すぐに音声出力信号が抑制されてしまう。このため、逆に、会話が聞き取りにくくなるおそれがあることから使い勝手が悪かった。
本発明は、聴力障害のリスクを予め使用者等が認識することで聴覚障害を未然に防ぐことが可能であり、かつ会話等を聞き取りにくくすることを防止した使い勝手の良い補聴器を提供することを目的とする。
本発明の補聴器は、利得算出手段と、音圧算出手段と、計時手段と、暴露時間判定手段と、利得制限手段と、を備えている。利得算出手段は、入力音信号を増幅または圧縮する利得を算出する。音圧算出手段は、入力信号と利得とに基づいて出力音圧レベルを算出する。計時手段は、出力音圧レベルが発生する時間間隔を出力音圧レベル毎に積算して暴露時間を算出する。暴露時間判定手段は、計時手段において算出された出力音圧レベル毎の暴露時間が、所定の許容時間を超過したかどうかを検出する。利得制限手段は、暴露時間判定手段において設定された許容時間の長さに応じて、入力信号の周波数帯域ごとに算出された利得を調整する。
なお、暴露時間とは、聴覚障害のリスクのある所定音圧レベルにさらされる時間を意味している。
これにより、暴露時間判定手段が出力音圧レベル毎の暴露時間が許容時間を超過したかどうかを検出することで、聴覚障害のリスクがあるか否かを検出できる。また、予め設定された許容時間の長さに応じて、周波数帯域ごとに算出された利得の大きさを調整することで、例えば、周囲環境等の状況に応じて、聴覚障害のリスク低減のための制御を調整することができる。この結果、状況に応じて利得制限制御の自由度を高め、使い勝手のよい補聴器を得ることができる。
第2の発明に係る補聴器は、第1の発明に係る補聴器であって、入力信号を周波数領域信号に変換する周波数分析手段をさらに備えている。利得算出手段は、入力信号の周波数帯域毎に前記利得を算出する。音圧算出手段は、入力信号の周波数帯域毎に音圧レベルを算出する。計時手段は、入力信号の周波数帯域毎に暴露時間を算出する。暴露時間判定手段は、入力信号の周波数帯域毎に暴露時間が許容時間を超過したかどうかを検出する。
これにより、例えば、ハウリングが頻繁に起きるなどの理由から、特定の周波数帯の信号成分が著しく大きな振幅を持つ場合があるが、周波数帯域毎に音圧レベルを算出し、帯域毎に暴露時間が許容時間を超過したかどうかを検出すれば、帯域毎に許容時間を超過したことを検出した場合に聴覚障害のリスクがあることを検出できる。
第3の発明に係る補聴器は、第2の発明に係る補聴器であって、周波数分析手段は、入力信号を3以上の周波数帯域の周波数領域信号に変換する。
ここで、周波数分析手段が、単に、音声帯域と非音声帯域との2つに分割した場合には、母音音声帯域の音圧が高い状態にも関わらず、言葉の聞き取りに重要な子音音声帯域まで抑圧して、言葉が聞き取りにくくなるおそれがある。
そこで、本発明の補聴器では、少なくとも3つの周波数帯域に分割している。
これにより、聞き取りたい周波数帯域の音だけをより正確に選択して出力することで、聴覚保護と聞き取り易さとを両立させることができる。
第4の発明に係る補聴器は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る補聴器であって、暴露時間判定手段が許容時間の超過を検出すると、補聴器の使用者または調整者に通知する通知手段を、さらに備えている。
ここでは、暴露時間判定手段が許容時間の超過を検出した場合に、通知手段が通知音を再生するなどして使用者に通知する、あるいは補聴器と接続される補聴器調整装置が、暴露時間や許容時間の超過を表示することで補聴器の調整者に通知する。
これにより、聴覚障害のリスクが使用者に通知されれば、使用者は聴覚障害防止のために設定変更などを行うか、そのリスクを理解した上で継続使用することを選択できる。また、補聴器調整者に通知されれば、使用者が補聴器調整のために補聴器販売店に来店した際に、聴覚障害の危険性を認識することができ、聴覚障害防止のために設定変更などを行うか、そのリスクを理解した上で継続使用することを選択できる。
第5の発明に係る補聴器は、第1からは第4の発明のいずれか1つに係る補聴器であって、許容時間は、第1許容時間および前記第1許容時間よりも長い第2許容時間を有している。利得制限手段は、暴露時間判定手段が第1許容時間を超過したことを検出すると、利得算出手段によって算出された利得のうち音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する。
ここでは、聴覚障害のリスク判定を行うための許容時間を段階的に設定している。そして、段階的に設定された許容時間を超えた場合に、聴覚障害のリスク低減のための制御を段階的に行う。具体的には、第2許容時間よりも短い第1許容時間を超えた場合には、音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させる。
これにより、暴露時間判定手段が第1許容時間を超過したことを検出した場合に、利得算出手段によって算出された利得のうち音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力すれば、語音明瞭度の劣化を抑制しつつ、聴覚障害を抑制できる。
第6の発明に係る補聴器は、第5の発明に係る補聴器であって、利得制限手段は、暴露時間判定手段が第1許容時間を超過したことを検出すると、利得算出手段によって算出された利得のうち、200Hz以下、および6000Hz以上の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する。
ここで、200Hzから6000Hzの帯域は語音聴取に関連する音声帯域であることが想定される。
これにより、この周波数帯域の範囲外の利得を低下させて出力信号を出力することで、音声帯域の聞き取り易さは維持して語音明瞭度の劣化を抑制しつつ、聴覚障害の発生を抑制できる。
第7の発明に係る補聴器は、第5または第6の発明に係る補聴器であって、利得制限手段は、暴露時間判定手段が第2許容時間を超過したことを検出すると、利得算出手段によって算出された利得のうち子音音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する。
ここで、聴覚障害者にとって、子音は母音よりも聞き取りにくいことが想定される。
これにより、子音音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力すれば、語音明瞭度の劣化をより抑制しつつ、聴覚障害を抑制できる。
第8の発明に係る補聴器は、第7の発明に係る補聴器であって、利得制限手段は、暴露時間判定手段が第2許容時間を超過したことを検出すると、利得算出手段によって算出された利得のうち200Hz以上、800Hz以下の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する。
ここで、音声帯域(約200Hzから約6000Hzの範囲)の中で母音のピーク周波数である第1フォルマント(約200Hz〜約800Hz)を含まない音声帯域(約800Hzから約6000Hzの間)が子音音声帯域である。
これにより、第2許容時間を超過した場合に、200Hz以上で800Hz以下の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力することで、語音明瞭度の劣化を抑制しつつ、聴覚障害を抑制することができる。
第9の発明に係る補聴器は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る補聴器であって、利得制限手段は、暴露時間判定手段が許容時間を超過したことを検出すると、利得算出手段によって算出された利得を非線形に調整して出力信号を出力する。
ここで、語音情報は音声のピーク最小可聴値より40dB以上のダイナミックレンジが有ることが望ましい。
これにより、仮にその状態を満足して最大出力音圧を下げることができるのであれば、非線形に利得を調整することで、語音明瞭度を維持しながら、聴覚障害のリスクを低減することができる。
第10の発明に係る補聴器は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る補聴器であって、利得制限手段は、暴露時間判定手段が許容時間を超過したことを検出すると、入力音圧レベルに対するダイナミックレンジを維持しつつ、入出力特性を示すグラフにおける特性が切り換わる第1のニーポイントの入力音圧レベルを低下させる。
ここで、最小可聴値より40dB以上のダイナミックレンジを確保できない場合には、聴力保護を優先して最大出力音圧を下げる必要がある。
そこで、本発明では、第1のニーポイントを低下させることで、入力のダイナミックレンジを確保しつつ、語音明瞭度を可能な限り維持しつつ、聴覚障害のリスクを低減することができる。
また、本発明に係る補聴器では、音圧算出手段は、出力信号から出力音を生成する音再生手段の周波数特性を反映した鼓膜面音圧に換算することが好ましい。あるいは、音圧算出手段は、外耳道での周波数特性を反映した鼓膜面音圧に換算することが好ましい。
これにより、補聴器の信号処理部における出力音圧レベルだけでなく、レシーバでの出力周波数特性や外耳道での共鳴を含む周波数特性を加えることで、鼓膜面での音圧レベルを算出することができる。よって、正確な音圧レベルで聴覚障害を引き起こす可能性があるかどうかを判断することができる。
また、本発明に係る補聴器では、音圧算出手段は、音導チューブでの周波数特性を反映した鼓膜面音圧に換算することが好ましい。
これにより、補聴器の形状違いによる差を吸収することが可能となり、耳掛型でレシーバが補聴器本体にある機種や、外耳道レシーバの耳掛型あるいは耳穴型の補聴器であっても、正確な鼓膜面音圧に換算することができる。
本発明に係る補聴器では、計時手段として、絶対時刻で計測することが好ましい。
これにより、使用者が1日の内で電源切断を行っても、1日の中での音圧レベルの暴露時間を正確に測定することができる。
本発明に係る補聴器では、計時手段として、所定の起点時刻からの相対時刻で計測することが好ましい。
これにより、補聴器本体に絶対時刻を保持する必要がなくなり、未使用時は電源を完全に切断することができるため、低消費電力化を図ることができる。
本発明に係る補聴器では、計時手段として、所定の起点時刻からの相対時刻で計測し、外部制御装置から絶対時刻を受信して、暴露時間を算出することが好ましい。
これにより、補聴器本体に絶対時刻を保持する必要がなく、かつ絶対時刻を外部制御装置から受信して換算することで、電源断が短時間なのか長時間なのかを判断することができる。よって、補聴器本体の低消費電力化とともに、正確な暴露時間を算出による聴力保護が可能となる。
(発明の効果)
本発明の補聴器によれば、暴露時間判定手段において出力音圧レベル毎の暴露時間が許容時間を超過したかどうかを検出することができるため、許容時間を超過したことを検出した場合に聴覚障害のリスクがあることを検出できる。したがって、聴覚障害を未然に防ぐことができるとともに、会話等を聞き取りにくくなることを防止して使い勝手が良い補聴器を得ることができる。
本発明の第1の実施形態に係る補聴器の構成図。 本発明の第1の実施形態に係る補聴器における信号処理手段の構成図。 本発明の第1の実施形態に係る補聴器の音圧レベルと許容時間の一例を示す図。 本発明の第2の実施形態に係る補聴器における信号処理手段の構成図。 本発明の第2の実施形態に係る補聴器および補聴器調整装置の構成図。 本発明の第3の実施形態に係る補聴器における信号処理手段の構成図。 本発明の第3の実施形態に係る補聴器の帯域毎音圧レベルと許容時間の一例を示す図。 本発明の第4の実施形態に係る補聴器における信号処理手段の構成図。 本発明の第4の実施形態に係る補聴器の暴露時間判定手段および利得制限手段の処理の流れを示すフローチャート。 本発明の第4の実施形態に係る補聴器の入出力特性の一例を示す図。 本発明の第4の実施形態に係る補聴器の入出力特性の一例を示す図。
(実施形態1)
以下、本発明の一実施形態に係る補聴器について、図1から図3を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下で説明する10,20,30,40,・・・等の符号で表されるものは、機能ブロックにおいて送受信される各種信号を示している。
図1は、本実施形態に係る補聴器の構成図である。
本実施形態の補聴器は、図1に示すように、マイク901、A/D変換部902、信号処理手段100、D/A変換部903、レシーバ904を備えている。
マイク901は、入力音を入力アナログ信号91に変換する。A/D変換部902は、入力アナログ信号91を入力デジタル信号10に変換する。信号処理手段100は、入力デジタル音声信号10を加工して出力デジタル信号90を生成する。D/A変換部903は、生成された出力デジタル信号90を出力アナログ信号94に変換する。レシーバ904は、出力アナログ信号94を出力音に変換し、使用者に対して出力音を再生する。
図2は、本実施形態に係る補聴器の信号処理手段100の構成図である。
信号処理手段100は、利得設定記憶手段201と、利得算出手段200と、音圧算出手段300と、計時手段400と、許容時間記憶手段501と、暴露時間判定手段500と、通知音記憶手段800と、を有する。利得設定記憶手段201は、使用者の聴力レベルに応じた利得20を記憶する。利得算出手段200は、入力デジタル信号10に対する利得20を算出する。音圧算出手段300は、入力デジタル信号10と利得20とに基づいて、出力音圧レベル30を推定する。計時手段400は、各出力音圧レベル30に対する暴露時間40を計測する。許容時間記憶手段501は、聴覚保護のための出力音圧レベルの許容時間を記憶する。暴露時間判定手段500は、各出力音圧レベルに対する暴露時間40が許容時間以内かどうかを判定する。通知音記憶手段800は、判定結果を通知するための音を記憶する。
次に、信号処理手段100の各構成要素における処理の流れを説明する。
入力デジタル信号10は、信号処理手段100において処理される所定時間区間1に分割され、1つの所定時間区間に対する入力デジタル信号10が、利得算出手段200、音圧算出手段300、利得制御手段600へそれぞれ入力される。なお、所定時間区間1は、任意に設定することが可能であって、例えば、後述の周波数分析合成処理を行う数msecという時間間隔に設定される。
利得算出手段200は、初期動作として利得設定記憶手段201から使用者の聴力レベルに応じた入力デジタル信号10の音圧レベルと利得との関係を表す利得特性を読み出す。そして、利得算出手段200は、その利得特性に基づいて、入力デジタル信号10の音圧レベルから、所定時間区間1の入力デジタル信号10に対する増幅率を表す利得20を算出する。
利得制御手段600は、入力デジタル信号10に対して利得20によって増幅もしくは圧縮することにより、出力音デジタル信号70を生成する。ここでも、聴力保護の観点から、従来の最大出力制限回路(AGC)やピーククリッピング処理などを実施してもよい。
音圧算出手段300は、所定時間区間の入力デジタル信号10と利得20とに基づいて、補聴器において再生される出力音圧レベル30を推定する。
計時手段400は、所定時間区間1より長い所定時間区間2の時間内において、出力音圧レベル30が継続している時間を積算した時間、すなわち暴露時間を、出力音圧レベル毎に算出する。
ここで、各出力音圧レベルとは、出力音圧レベルを任意の大きさごとに区間で分けることであるが、ここでは3dBごとに出力音圧レベル30を区間で分けた例を挙げて説明する。また、所定時間区間2とは、任意の時間区間であり、例えば、1日でも1週間でもよいが、ここでは所定時間区間2を1日とした例を挙げて説明する。
図3は、聴力損失を起こさない出力音圧レベル30と許容時間との関係を表す。
ここで、許容時間とは、出力音圧レベル30と各出力レベルに対する暴露時間40との関係として、聴力損失が発生しない許容される時間を表す。
許容時間記憶手段501は、この出力音圧レベル30と許容時間との関係を記憶している。
ここで、聴力損失には、一過性聴覚閾値移動(TTS:Temporary Threshold Shift)と呼ばれる一時的な聴力損失であり後で回復するものと、永続性聴力閾値移動(PTS:Permanent Threshold Shift)と呼ばれる聴力損失が回復しないものとが存在する。本実施形態では、後者の意味で聴力損失という言葉を用いる。また、図3に示す許容時間は、一例であって、国や団体によって基準が異なる場合がある。基準が異なる場合には、その基準に合わせた許容時間とすることが可能である。また、ここでは、聴力損失を起こさない出力音圧レベル30と許容時間との関係として図3を示したが、聴力損失を予防するという観点で、許容時間を複数段階に分けて設けることも可能である。
通知音記憶手段800では、聴力損失が発生する可能性がある旨を、使用者に通知するための通知音を記憶している。通知音の一例としては、純音の時間的な組み合わせ、例えば、「ピーピーピー」などでもよい。ただし、補聴器では、音量設定変更の通知音やプログラム変更の通知音など、いくつかの通知音が用いられているため、使用者が他の通知音と区別できる音源にする必要がある。また、補聴器が十分な記憶容量を有している場合には、音声で通知する方法として、例えば、「現在の出力レベルでは聴力損失を起こす可能性があります」と言葉で通知する方法もある。なお、言葉で通知する場合には、使用者が理解可能な言語で通知できるように、言語の選択が可能であることが好ましい。
暴露時間判定手段500は、各音圧レベルに対する暴露時間40が、図3に示した許容時間以内かどうかの判定を行い、暴露時間判定結果50を算出する。
ここで、各音圧レベルに対する暴露時間40が許容時間以内と判定された場合には、図1に示す補聴器の通常動作として、スイッチング手段(通知手段)60(図2参照)によって、出力音デジタル信号70が出力デジタル信号90として出力されるように切り換えられる。一方、各音圧レベルに対する暴露時間40が許容時間を超過していると判定された場合には、スイッチング手段60によって、出力デジタル信号90として通知音デジタル信号80が出力されるように、切り換えられる。そして、通知音デジタル信号80の再生が完了した際には、出力デジタル信号90として出力音デジタル信号70が出力されるように、スイッチング手段60によって再度切り換えられる。
これにより、使用者は、現在の補聴状態において、聴力損失のリスクがあることを認知することができる。よって、使用者は、聴力損失のリスクを回避するために、利得算出手段200における利得20を下げる設定変更を行う、もしくは周囲音がより静かな音環境に移動する、等の対策を採ることができる。一方、使用者にとって、とても重要な語音聴取の最中で有る場合には、聴力損失のリスクは認識しつつも、補聴器の設定や周囲音環境を変えることなく、補聴器の使用を継続することも選択可能である。
さらに、ここでは、計時手段400について補足する。
ここで、出力音圧レベルの暴露時間を正確に求めるためには、絶対時刻で計測する必要がある。しかしながら、補聴器において絶対時刻を計測するためには、補聴器を使用しない時も絶対時刻計測のために電力を消費し続ける必要があり、低消費電力とのトレードオフの関係となる。
本実施形態では、その対策として、補聴器の本体では相対時刻で測定しておき、補聴器の音量設定やプログラム設定を行う外部制御装置(図示せず)もしくはリモート・コントローラーにて絶対時刻を保持させている。これにより、外部制御装置と補聴器とが通信する際に、補聴器側で絶対時刻を受信して時刻換算することができる。この結果、消費電流を低減しつつ、出力音圧レベルの暴露時間を正確に計測することが可能となる。
(実施形態2)
本発明の他の実施形態に係る補聴器について、図4および図5を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下で説明する10,20,30,40,50,54,・・・等の符号で表されるものは、機能ブロックにおいて送受信される各種信号を示している。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る補聴器に含まれる信号処理手段の構成図である。
まず、本実施形態と上述した実施形態1との違いを説明する。
図1では、聴力損失のリスクを通知音で使用者に通知していたが、図4では聴力損失のリスクを補聴器内に記憶しておき、補聴器販売店などで調整を行う際に、補聴器調整装置1000によって聴力損失のリスクを確認する点において異なっている。これにより、使用者は、補聴器調整を行う際にフィッティングと呼ばれる調整作業を初期段階で行うが、この補聴器調整作業を行う際に利得調整を行うことにより、聴力損失を防止しつつ、語音明瞭度を改善するための調整を補聴器の専門家と共に行うことができる。
図4において、図1の構成と同一箇所については、同じ符号を付してその説明を省略する。図1に対して図4が異なる箇所は、暴露時間記憶手段530および通信手段540が存在する点と、通知音記憶手段800が存在しない点である。
暴露時間判定手段500における暴露時間判定結果50は、暴露時間記憶手段530に記憶される。記憶される時間間隔は、所定時間区間2の時間間隔で記憶してもよいが、暴露時間判定手段500において、各出力音圧レベルに対する暴露時間40が許容時間を超過した時のみ暴露時間記憶手段530において記憶してもよい。これにより、記憶容量を削減できる効果がある。
通信手段540は、補聴器調整装置1000に送信するために、暴露時間判定結果50を暴露時間判定結果の通信用データ54に変換する。具体的には、通信手段540は、通信処理を行うための誤り検出符号や誤り訂正符号を付加する処理を行う。なお、ここでは、通信路の信頼性に応じて、通信手段540における処理内容を任意に決めればよい。
図5は、本実施形態に係る補聴器および補聴器調整装置の構成図である。
まず、補聴器調整装置1000の構成を説明する。
補聴器調整装置1000は、補聴器との通信を行う通信手段1010と、補聴器の設定を記憶する記憶手段1030と、補聴器の設定内容に関する情報を通信したり画像表示させたりする信号処理手段1020と、補聴器の設定内容に関する情報や補聴器の動作を、補聴器の使用者および調整者に対して画面表示する表示手段1040と、を有している。
次に、補聴器調整装置1000における処理の流れについて説明する。
補聴器調整装置1000と補聴器との通信は、通信線が接続された際、もしくは補聴器の調整者が通信開始の指示を行った際に開始される。
通信手段1010は、暴露時間判定結果の通信用データ54を補聴器から受信する。そして、通信手段1010は、付加された誤り検出符号や誤り訂正符号を復号して、暴露時間判定結果50を取り出す。
信号処理手段1020は、暴露時間判定結果50を記憶手段1030に記憶させる。そして、補聴器の調整者が、暴露時間判定結果50を表示する指示を信号処理手段1020に対して行うと、信号処理手段1020は、暴露時間判定結果50を表示手段1040に表示させる。
これにより、この表示結果を補聴器の使用者および調整者が確認することで、補聴器の利得設定記憶手段201の内容や、利得制御手段600の動作を、補聴器調整装置1000を介して調整することができる。この結果、この調整作業によって聴力損失を防止しつつ、かつ語音明瞭度を改善するように、補聴器の専門家と共に補聴器を調整することができる。
(実施形態3)
本発明のさらに他の実施形態に係る補聴器について、図6および図7を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下で説明する10,11,21,31,41,・・・等の符号で表されるものは、機能ブロックにおいて送受信される各種信号を示している。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る補聴器に含まれる信号処理手段の構成図である。まず、本実施形態と上述した実施形態1との違いを説明する。
すなわち、図1では、周波数分析合成処理を行っていなかったが、図6では、周波数分析合成処理を行い、周波数帯域ごとに聴力損失のリスクを推定できる点で異なっている。ここで、感音難聴の聴力損失は、蝸牛における外有毛細胞の損傷が最も早く現れる。そして外有毛細胞の動作は、周波数選択特性を有している。このため、本実施形態のように、周波数帯域ごとに聴力損失のリスクを推定することで、難聴を予防することができる。
図6において図1の構成と同一箇所については、同じ符号を付してその説明を省略する。図6は、周波数分析手段110と周波数合成手段710とが存在する点と、各処理を周波数帯域毎に行う点において、図1とは異なっている。
本実施形態では、周波数分析手段110が、所定時間区間1における入力デジタル信号10を、周波数帯域毎の入力信号11に分析する処理を行う。ここで、周波数分析処理の一例としては、FFT(Fast Fourier Transform)がある。
利得設定記憶手段211は、利得特性を周波数帯域毎に記憶しており、利得算出手段210も周波数帯域毎の利得21を算出する。
利得制御手段610は、周波数帯域毎の入力信号11に対して、周波数帯域毎の利得21によって増幅もしくは圧縮する処理を行う。
周波数合成手段710は、周波数帯域毎の出力信号から出力音デジタル信号70を算出する。
音圧算出手段310は、周波数帯域毎の入力信号11と周波数帯域毎の利得21とに基づいて、周波数帯域毎の出力音圧レベル31を算出する。
計時手段410は、周波数帯域毎の各出力音圧レベル31に対する暴露時間41を算出する。
許容時間記憶手段511は、周波数帯域毎の許容時間を記憶する。
図7は、本実施形態に係る補聴器の帯域毎音圧レベルと許容時間との関係の一例を示している。
ここでは、周波数帯域をオクターブバンドレベルに分割した場合の許容時間を示している。
なお、周波数帯域の分割方法としては、これに限定されるものではない。例えば、図3と同様に、国や団体によって異なる基準に合わせたり演算処理量を考慮したりして、適宜決定すればよい。ただし、少なくとも3つの周波数帯域に分割することが好ましい。
ここで、単に、音声帯域と非音声帯域との2つに分割した場合には、母音音声帯域の音圧が高い状態にも関わらず、言葉の聞き取りに重要な子音音声帯域まで抑圧して、言葉が聞き取りにくくなるおそれがある。そこで、少なくとも3つの周波数帯域に分割することで、このような問題を回避することができる。
以下で、周波数帯域の分割方法の他の例について説明する。
例えば、聴覚フィルタに合わせて臨界帯域幅ごとに分割するか、あるいはそれに近い1/3オクターブバンドレベルに分割してもよい。これにより、ラウドネスを感じる帯域幅に合わせることができるため、聴覚保護をより厳格に規定することができる。
すなわち、この周波数帯域を臨界帯域幅、もしくは1/3オクターブバンドレベルに分割したことで、利得制御手段610における周波数帯域毎の利得21を聴覚における周波数方向に細かく制御することができる。このため、聴力保護を行うことと、出力音の自然さを保つこととを両立することができる。
具体的には、例えば、補聴器でハウリングが発生した場合を考える。ハウリング発生時の入力音は、周波数帯域幅としては狭く、その周波数帯域における音圧が大きいという特徴がある。このハウリング発生時の入力音から聴力保護を行うためには、利得制御として、狭い周波数帯域の音を利得低減することが望ましい。
そこで、利得制御を行う周波数帯域を臨界帯域幅とした場合には、出力音のハウリングを抑圧しつつ、その他の周波数帯域への影響を出来るだけ少なくすることができる。
一方、例えば、周波数帯域を、約200Hz以下の音声帯域以外と、約200Hz〜約800Hzの母音音声帯域と、約800Hz〜約6000Hzの子音音声帯域との少なくとも3つの周波数帯域に分割した場合には、演算量を比較的小さくした状態で、聴力保護と言葉の聞取りを両立することができる。
暴露時間判定手段510は、周波数帯域毎の各音圧レベルに対する暴露時間41が許容時間以内か、許容時間超過かの判定を行い、暴露時間判定結果50を送出する。すなわち、暴露時間判定結果50が、許容時間以内である場合には、出力音デジタル信号70を出力デジタル信号90として出力する。一方、暴露時間判定結果50が許容時間超過である場合には、通知音デジタル信号80を出力デジタル信号90として出力する。上記以外の処理については、図1と同様のため、その説明を省略する。
ここで、音圧算出手段300について補足する。
本実施形態では、音圧算出手段300において、入力デジタル信号10と利得20とに基づいて出力音圧レベル30を算出している。しかし、聴力保護の観点では、補聴器の出力音圧だけでなく、人の鼓膜面における音圧を知ることが重要である。また、補聴器の出力信号は、レシーバ904でも周波数特性を持って変換され、また、人の外耳道の形状によっても周波数特性が変わってくる。さらに、耳掛型の補聴器の場合には、レシーバ904と外耳道とは音導チューブを介して接続されており、この接続部分における周波数特性も考慮する必要がある。
すなわち、音圧算出手段300では、出力音圧レベル30を推定するために、レシーバ904の周波数特性、および音導チューブでの周波数特性、耳栓形状(クローズ型、オープン型)、さらには使用者でも外耳道での周波数特性を考慮して、出力音圧レベル30を算出する。これにより、聴力損失のリスクをより正確に判定することができる。
(実施形態4)
本発明のさらに他の実施形態に係る補聴器について、図8から図11を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下で説明する10,11,21,31,41,52,・・・等の符号で表されるものは、機能ブロックにおいて送受信される各種信号を示している。
まず、本実施形態に係る補聴器による処理の目的を説明する。
補聴器の使用者が、工事現場やパチンコ等の遊戯施設に代表される騒音レベルの高い音環境において仕事に従事する場合、長時間の騒音暴露により聴力損失になりやすい傾向がある。また、この様な使用者は、騒音レベルが高い環境下で長時間過ごしながら、人との会話で音声コミュニケーションを取る必要がある。すなわち、長時間の騒音暴露が継続する使用者に対しては、聴力損失のリスクを通知するだけでなく、聴力損失に至らない様に補聴器での利得制限により聴力保護を行い、かつ言葉を表す音声を含む信号に対しては、補聴器の利得制限を緩めて、使用者に音声情報を通知する機能が必要となる。
図8は、本実施形態に係る補聴器における信号処理手段の構成図である。
ここではまず、本実施形態と上述した実施形態1〜3との違いを説明する。
上述した実施形態1〜3では、補聴器の使用者および調整者に聴力損失のリスクを通知することを目的としていた。しかしながら、本実施形態では、使用者が意図的に設定変更をしなくても、補聴器側で利得制限処理(利得算出手段によって算出された利得よりも低い利得に変換する)を行う。つまり、本実施形態の補聴器では、聴力損失のリスクを低減し、かつ語音明瞭度を維持できる時間を延長することを目的としている。
図8において、図6の構成と同一の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。なお、図6では、暴露時間判定結果50に応じて、出力デジタル信号90の信号を切替えていたが、図8では、利得制限手段550を追加し、暴露時間判定結果52に応じて利得制限手段550の動作を変更する点で異なっている。なお、図8では、通信手段540が有る点でも異なっているが、これは上述した実施形態2に係る補聴器で説明した図4の構成と同一であるため、ここではその説明を省略する。
さらに、本実施形態に係る補聴器では、暴露時間判定を行う許容時間として、第1許容時間と、第1許容時間より長い第2許容時間という2つの閾値を設けている。
ここで、第1許容時間と第2許容時間の2つを設けた理由は、聴覚保護を最優先させて周波数帯域全体の利得を制限する第2許容時間と、語音聴取に関連のある音声帯域は利得制限せず、音声帯域以外の周波数帯域に対して利得制限を行う第1許容時間とを設定することで、使用者の周囲環境等の状況に応じて出力レベルを抑制する程度を明確に切り分けるためである。
このように、第1許容時間と第2許容時間という2つの閾値を設けることにより、聴力保護に考慮しつつ、暴露時間が第1許容時間以内であれば、自然な状態の音環境を提供することができる。そして、第1許容時間を超過して第2許容時間を超えるまでは語音明瞭度を維持して聴覚保護を行うことができる。さらに、第2許容時間を超えた場合には、聴覚保護を最優先することができる。この結果、状況に応じて聴覚保護のリスク低減制御を調整して、使用者の利便性を高めることができる。
図9は、本実施形態に係る補聴器の利得制限手段550の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、周波数帯域毎の各音圧レベルに対する暴露時間41が、暴露時間判定手段520に入力されると、図9に示すように、対象となる周波数帯域が選択される(S551)。その後で、対象となる音圧レベルが選択される(S552)。
次に、対象となる音圧レベルの暴露時間41と第1許容時間との比較を行う(S554)。ここで、暴露時間41が第1許容時間以内である場合には、S560へ進み、利得制限処理を行わない。一方、暴露時間41が第1許容時間を超過している場合には、音声帯域以外の利得を所定値に制限する利得制限処理を行う(S555)。なお、音声帯域とは、語音聴取に関係のある周波数帯域を意味しており(例えば、小寺一興著「補聴器フィッティングの考え方 改定第2版」(診断と治療社発行、2008年10月7日)参照)、約200Hzから約6000Hzの範囲である。
次に、対象となる音圧レベルの暴露時間41と第2許容時間との比較を行う(S556)。ここで、暴露時間41が第2許容時間以内である場合には、S560へ進み、更なる利得制限処理は行わない。一方、暴露時間41が第2許容時間を超過している場合には、許容時間を超過した全ての周波数帯域に対して利得制限処理を行う(S557)。なお、第2許容時間は、聴覚低下が発生する可能性がある時間の閾値として設定されており、第1許容時間より長い時間として設定される。
次に、全ての音圧レベルについて、判定が終了したかどうかを判定する(S560)。ここで、全ての判定が終了していない場合には、次の音圧レベルを選択し(S552)、S554〜S557までの処理を繰り返し行う。
次に、全ての周波数帯域について、判定が終了したかどうかを判定する(S561)。ここで、全ての判定が終了していない場合には、次の周波数帯域を選択し(S551)、S552〜S557までの処理を繰り返し行う。
次に、各音圧レベルの許容時間は、所定時間区間2の時間間隔で決められているため、これを超過しているかどうかの判断を行う。すなわち、起点からの経過時間が所定時間区間2を超過したかどうかを判定する(S563)。ここで、経過時間が所定時間区間2を超過している場合には、利得制限制御を解除して、利得制限を初期値(例えば、制限無し)に設定する(S564)。一方、経過時間が所定時間区間2を超過していない場合には、何も処理をせずにS566へ進む。
最後に、全ての信号区間の判定が終了したかどうかを判定する(S566)。ここで、時間的に処理すべき信号がある場合、すなわち処理を継続する場合には、処理開始位置を所定時間区間1だけ増加させ(S567)、再度、S551へ戻って最初から処理を行う。
ここで、言葉の聞き取りを考察する目的で、音声信号で言葉に関わる母音と子音との違いについて説明を行う。すなわち、音声信号における母音区間と子音区間とを比較すると、子音区間は振幅、すなわち音圧レベルが小さく、かつ継続時間も短いという特徴がある。この特徴から、難聴者が聞き取り難いのは子音である場合が多い。
さらに、人の音を知覚する際のマスキングという現象について説明する。すなわち、ある音によって周波数が近い別の音がかき消されて聞こえなくなる周波数マスキングという現象が存在する。また、ある音に時間的に近い別の音がかき消されて聞こえなくなる時間マスキングという現象も存在する。
本実施形態では、暴露時間41が、第1許容時間を超過し、かつ第2許容時間以内である場合には、音声帯域以外の入力デジタル信号10に対して利得制限処理を行う。特に、本実施形態では、200Hz以下の低周波数帯域の入力デジタル信号10に対して利得制限処理を行うことにより、音声信号の子音成分に対する周波数マスキングおよび時間マスキングの影響を低減することができる。この結果、難聴者にとって聞き取り難い子音に対する語音明瞭度を維持した状態で、聴力保護ができるという効果がある。
なお、図9では、構成要素として、暴露時間判定手段520と利得制限手段550との2つを組み合わせた処理の流れについて説明した。詳細には、これらの処理の大部分が暴露時間判定手段520による処理であり、ステップS555,S557のみが利得制限手段550による処理である。
なお、上記では、暴露時間の判定を行う際に、第1許容時間と第2許容時間とを設定して閾値を2段階とした例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、暴露時間の判定を行う際に、3段階以上の許容時間を閾値として設定してもよい。この場合、母音と子音を区別して利得制限処理を実施することができる。
すなわち、例えば、3段階の許容時間を設定して暴露時間を判定する場合には、まず、第1許容時間の超過によって、音声帯域以外の入力デジタル信号10に対する利得制限処理を行う。次に、第2許容時間の超過によって、子音帯域以外の入力デジタル信号10に対する利得制限処理を行う。続いて、第3許容時間の超過によって、全周波数帯域の入力デジタル信号10に対する利得制限処理を行う。なお、各許容時間の長さは、第1許容時間<第2許容時間<第3許容時間の関係を満たすものとする。
ここで、語音明瞭度を維持する目的のために、音声信号における母音区間と子音区間との関係について説明する。
すなわち、母音は低周波数帯域に音圧レベルの高い成分を含むため、母音に継続する子音が、母音の周波数マスキングの影響によって聞き取りにくくなる。さらに、母音に継続する子音は、母音の時間マスキングの影響も受けるため、さらに聞き取りにくくなる。この様な状態でも、健聴者であれば周波数を選択的に増幅する外有毛細胞により母音に継続する子音を聞き取ることが可能であるが、加齢による難聴者の場合は、外有毛細胞が損傷を受けている場合が多く、周波数マスキングおよび時間マスキングにより母音に継続する子音が聞き取り難い。
そこで、本実施形態の補聴器では、子音よりも比較的聞き取りやすい母音に対する利得を制限する。
ここで、子音音声帯域とは、音声帯域(約200Hzから約6000Hzの範囲)中における母音のピーク周波数である第1フォルマント(約200Hz〜約800Hz)を含まない音声帯域であって、約800Hzから約6kHzの周波数帯域である。したがって、経過時間が第2許容時間を超過した場合には、約200Hz以上かつ約800Hz以下の周波数帯域に対する利得を制限(低下)することによって、子音帯域以外に対する利得制限を行う。
なお、経過時間が第2許容時間を超過した場合に利得を制限する周波数帯域の上限値としては、約800Hzではなく、第1フォルマントの領域からある程度間隔を取って、約800Hzから約2000Hzの間の値に設定されていればよい。
この理由は 、区切りとなる周波数帯域の上限は、言葉の聴き間違い(以下、異聴と称する。)の傾向や、聴力レベル、聴力型(例えば、高音漸傾型、高音急墜型、低音障害型、水平型、山型、谷型)によって、最適値に個人差があるためである。
例えば、母音の第2フォルマントが約800Hz〜約2500kHzであり、子音だけでなく母音の異聴が多い使用者に対しては、第2フォルマント周波数の聴き取りのために800Hzを帯域の上限値として設定することが望ましい。一方、母音の異聴は少なく、子音の異聴が多い使用者に対しては、周波数帯域の上限値を高くした方が、母音から子音へのマスキングによる影響が低減出できるため好ましい。すなわち、第2許容時間を超過した場合には、約200Hz以上かつ、約800Hzから約2000Hzの間の上限値以下の周波数帯域に対する利得を制限(低下)してもよい。
音声帯域以外として、200Hz以下の低周波成分の利得制限処理を行うことにより、低周波数帯域成分による高周波数帯域域成分に対する周波数マスキング、および先行母音による後続子音に対する時間マスキングの影響を低減することができる。よって、効果的に子音の聞き取りを向上させることができる。さらに、子音帯域以外として、800Hz以下の周波数帯域の利得制限処理を行うことにより、周波数マスキングおよび時間マスキングの影響を低減することができ、子音の聞き取り易さを更に向上させることができる。
図10は、本実施形態に係る補聴器の入出力特性の一例を表す。
なお、この入出力特性は、補聴器調整装置1000を用いて補聴器の調整者が設定し、利得設定記憶手段211において記憶されるが、本実施形態に係る補聴器では、利得制限手段550において入出力特性を変化させることができる場合の利得制限する方法について説明する。
図10に示す入出力特性において、実線は利得制限前、破線は利得制限後を表す。
まず、実線の特性について説明する。
非線形に特性が変わる点として、第1のニーポイント801と、第2のニーポイント802と、最大出力音圧レベルに達するポイント803とがある。第1のニーポイント801と第2のニーポイント802との間が、語音聴取に寄与するリニア領域810である。一方、第1のニーポイント801と最大出力音圧レベルに達するポイント803との間は、出力音圧を制限する圧縮領域(もしくはコンプレッション領域)である。さらに、第2のニーポイント802以下は、補聴器の装用により小さな雑音を抑圧するスケルチ領域(もしくはエクスパンジョン領域)である。
また、使用者が聞き取れる最も小さな音として、最小可聴値825も図示されている。
なお、図10に示す入出力特性は、周波数帯域毎に異なるが、ここでは、1つの周波数帯域の例を挙げて説明する。
ここで、語音明瞭度の改善を行うためには、最小可聴値825より少なくとも30dB、望ましくは40dBのダイナミックレンジ827が必要である(例えば、小寺一興著「補聴器フィッティングの考え方 改定第2版」(診断と治療社発行、2008年10月7日)参照)。すなわち、利得制限手段550において、利得制限処理を行った後もダイナミックレンジ827として少なくとも30dB、望ましくは40dB必要である。
図10では、利得制限処理後の入出力特性として、ダイナミックレンジが十分に確保できている場合を示しており、利得制限処理後の入出力特性は、破線で表されている。
図10に示す特性としては、リニア領域820が利得制限処理前のリニア領域810を並行に移動させている。これにより、利得制限処理後も語音聴取に影響を及ぼすことなく、聴力保護が可能となる。
図11は、利得制限処理後の入出力特性として、ダイナミックレンジが十分に確保できない場合を示しており、図10と同様に、利得制限処理後の入出力特性を破線で表している。
例えば、難聴が進行して、最小可聴値835が高い使用者の場合には、最小可聴値835が高いと、利得制限処理後にダイナミックレンジ837が十分に確保できないおそれがある。この場合、利得制限処理前のニーポイント801より、利得制限処理後の第1のニーポイント831の入力音圧レベルを小さくすることにより、入力音圧レベルのダイナミックレンジを確保することができる。
そして、利得制限処理後のリニア領域830を、場合によっては、圧縮領域に近い特性とする。また、第1のニーポイントを下げただけでは、語音明瞭度の低下が見られた場合には、第2のニーポイント上昇させる設定変更(図示せず)を実施してもよい。この場合でも、明瞭度改善を実現することができる。
本発明の補聴器は、暴露時間判定手段が出力音圧レベル毎の暴露時間が許容時間を超過したかどうかを検出することで、許容時間を超過したことを検出した場合に聴覚障害のリスクがあることを検出できるため、聴覚障害を未然に防ぐことができ、使い勝手が良いという効果を奏するため、補聴器やMP3プレーヤー等の音楽再生装置にも広く適用可能である
10 入力デジタル信号
11 入力信号
20 利得
21 利得
30 出力音圧レベル
31 出力音圧レベル
40 各音圧レベルに対する暴露時間
41 暴露時間
50 暴露時間判定結果
54 暴露時間判定結果の通信用データ
60 スイッチング手段(通知手段)
70 出力音デジタル信号
80 通知音デジタル信号
90 出力デジタル信号
91 入力アナログ信号
94 出力アナログ信号
100 信号処理手段
110 周波数分析手段
200 利得算出手段
201 利得設定記憶手段
210 利得算出手段
211 利得設定記憶手段
300 音圧算出手段
400 計時手段
500,510,520 暴露時間判定手段
501,511,521 許容時間記憶手段
530 暴露時間記憶手段
540 通信手段
550 利得制限手段
600,610 利得制御手段
710 周波数合成手段
800 通知音記憶手段
801 第1のニーポイント
802 第2のニーポイント
803 最大音圧利得
810 入出力特性のリニア領域
820,830 リニア領域
825,835 最小可聴値
827,837 ダイナミックレンジ
831 利得制限後の第1のニーポイント
901 マイク
902 A/D変換部
903 D/A変換部
904 レシーバ
1000 補聴器調整装置
1010 通信手段
1020 信号処理手段
1030 記憶手段
1040 表示手段

本発明は、補聴器に関する。
従来より、過大音による聴覚障害に対して使用者を保護するために、出力音圧制限回路を有し、最大出力音圧レベル特性の高音域を制御する補聴器がある(例えば、特許文献1参照)。
また、過大音による聴覚障害を防止するため、日本産業衛生学会では、騒音許容基準を策定している。
特開平2−58999号公報
しかしながら、上記従来の補聴器では、以下のような問題を有している。
すなわち、上記公報に開示された補聴器では、所定の閾値以上の入力音圧が与えられると、すぐに音声出力信号が抑制されてしまう。このため、逆に、会話が聞き取りにくくなるおそれがあることから使い勝手が悪かった。
本発明は、聴力障害のリスクを予め使用者等が認識することで聴覚障害を未然に防ぐことが可能であり、かつ会話等を聞き取りにくくすることを防止した使い勝手の良い補聴器を提供することを目的とする。
本発明の補聴器は、利得算出手段と、音圧算出手段と、計時手段と、暴露時間判定手段と、利得制限手段と、を備えている。利得算出手段は、入力音信号を増幅または圧縮する利得を算出する。音圧算出手段は、入力信号と利得とに基づいて出力音圧レベルを算出する。計時手段は、出力音圧レベルが発生する時間間隔を出力音圧レベル毎に積算して暴露時間を算出する。暴露時間判定手段は、計時手段において算出された出力音圧レベル毎の暴露時間が、所定の許容時間を超過したかどうかを検出する。利得制限手段は、暴露時間判定手段において設定された許容時間の長さに応じて、入力信号の周波数帯域ごとに算出された利得を調整する。
なお、暴露時間とは、聴覚障害のリスクのある所定音圧レベルにさらされる時間を意味している。
これにより、暴露時間判定手段が出力音圧レベル毎の暴露時間が許容時間を超過したかどうかを検出することで、聴覚障害のリスクがあるか否かを検出できる。また、予め設定された許容時間の長さに応じて、周波数帯域ごとに算出された利得の大きさを調整することで、例えば、周囲環境等の状況に応じて、聴覚障害のリスク低減のための制御を調整することができる。この結果、状況に応じて利得制限制御の自由度を高め、使い勝手のよい補聴器を得ることができる。
第2の発明に係る補聴器は、第1の発明に係る補聴器であって、入力信号を周波数領域信号に変換する周波数分析手段をさらに備えている。利得算出手段は、入力信号の周波数帯域毎に前記利得を算出する。音圧算出手段は、入力信号の周波数帯域毎に音圧レベルを算出する。計時手段は、入力信号の周波数帯域毎に暴露時間を算出する。暴露時間判定手段は、入力信号の周波数帯域毎に暴露時間が許容時間を超過したかどうかを検出する。
これにより、例えば、ハウリングが頻繁に起きるなどの理由から、特定の周波数帯の信号成分が著しく大きな振幅を持つ場合があるが、周波数帯域毎に音圧レベルを算出し、帯域毎に暴露時間が許容時間を超過したかどうかを検出すれば、帯域毎に許容時間を超過したことを検出した場合に聴覚障害のリスクがあることを検出できる。
第3の発明に係る補聴器は、第2の発明に係る補聴器であって、周波数分析手段は、入力信号を3以上の周波数帯域の周波数領域信号に変換する。
ここで、周波数分析手段が、単に、音声帯域と非音声帯域との2つに分割した場合には、母音音声帯域の音圧が高い状態にも関わらず、言葉の聞き取りに重要な子音音声帯域まで抑圧して、言葉が聞き取りにくくなるおそれがある。
そこで、本発明の補聴器では、少なくとも3つの周波数帯域に分割している。
これにより、聞き取りたい周波数帯域の音だけをより正確に選択して出力することで、聴覚保護と聞き取り易さとを両立させることができる。
第4の発明に係る補聴器は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る補聴器であって、暴露時間判定手段が許容時間の超過を検出すると、補聴器の使用者または調整者に通知する通知手段を、さらに備えている。
ここでは、暴露時間判定手段が許容時間の超過を検出した場合に、通知手段が通知音を再生するなどして使用者に通知する、あるいは補聴器と接続される補聴器調整装置が、暴露時間や許容時間の超過を表示することで補聴器の調整者に通知する。
これにより、聴覚障害のリスクが使用者に通知されれば、使用者は聴覚障害防止のために設定変更などを行うか、そのリスクを理解した上で継続使用することを選択できる。また、補聴器調整者に通知されれば、使用者が補聴器調整のために補聴器販売店に来店した際に、聴覚障害の危険性を認識することができ、聴覚障害防止のために設定変更などを行うか、そのリスクを理解した上で継続使用することを選択できる。
第5の発明に係る補聴器は、第1からは第4の発明のいずれか1つに係る補聴器であって、許容時間は、第1許容時間および前記第1許容時間よりも長い第2許容時間を有している。利得制限手段は、暴露時間判定手段が第1許容時間を超過したことを検出すると、利得算出手段によって算出された利得のうち音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する。
ここでは、聴覚障害のリスク判定を行うための許容時間を段階的に設定している。そして、段階的に設定された許容時間を超えた場合に、聴覚障害のリスク低減のための制御を段階的に行う。具体的には、第2許容時間よりも短い第1許容時間を超えた場合には、音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させる。
これにより、暴露時間判定手段が第1許容時間を超過したことを検出した場合に、利得算出手段によって算出された利得のうち音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力すれば、語音明瞭度の劣化を抑制しつつ、聴覚障害を抑制できる。
第6の発明に係る補聴器は、第5の発明に係る補聴器であって、利得制限手段は、暴露時間判定手段が第1許容時間を超過したことを検出すると、利得算出手段によって算出された利得のうち、200Hz以下、および6000Hz以上の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する。
ここで、200Hzから6000Hzの帯域は語音聴取に関連する音声帯域であることが想定される。
これにより、この周波数帯域の範囲外の利得を低下させて出力信号を出力することで、音声帯域の聞き取り易さは維持して語音明瞭度の劣化を抑制しつつ、聴覚障害の発生を抑制できる。
第7の発明に係る補聴器は、第5または第6の発明に係る補聴器であって、利得制限手段は、暴露時間判定手段が第2許容時間を超過したことを検出すると、利得算出手段によって算出された利得のうち子音音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する。
ここで、聴覚障害者にとって、子音は母音よりも聞き取りにくいことが想定される。
これにより、子音音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力すれば、語音明瞭度の劣化をより抑制しつつ、聴覚障害を抑制できる。
第8の発明に係る補聴器は、第7の発明に係る補聴器であって、利得制限手段は、暴露時間判定手段が第2許容時間を超過したことを検出すると、利得算出手段によって算出された利得のうち200Hz以上、800Hz以下の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する。
ここで、音声帯域(約200Hzから約6000Hzの範囲)の中で母音のピーク周波数である第1フォルマント(約200Hz〜約800Hz)を含まない音声帯域(約800Hzから約6000Hzの間)が子音音声帯域である。
これにより、第2許容時間を超過した場合に、200Hz以上で800Hz以下の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力することで、語音明瞭度の劣化を抑制しつつ、聴覚障害を抑制することができる。
第9の発明に係る補聴器は、第1から第8の発明のいずれか1つに係る補聴器であって、利得制限手段は、暴露時間判定手段が許容時間を超過したことを検出すると、利得算出手段によって算出された利得を非線形に調整して出力信号を出力する。
ここで、語音情報は音声のピーク最小可聴値より40dB以上のダイナミックレンジが有ることが望ましい。
これにより、仮にその状態を満足して最大出力音圧を下げることができるのであれば、非線形に利得を調整することで、語音明瞭度を維持しながら、聴覚障害のリスクを低減することができる。
第10の発明に係る補聴器は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る補聴器であって、利得制限手段は、暴露時間判定手段が許容時間を超過したことを検出すると、入力音圧レベルに対するダイナミックレンジを維持しつつ、入出力特性を示すグラフにおける特性が切り換わる第1のニーポイントの入力音圧レベルを低下させる。
ここで、最小可聴値より40dB以上のダイナミックレンジを確保できない場合には、聴力保護を優先して最大出力音圧を下げる必要がある。
そこで、本発明では、第1のニーポイントを低下させることで、入力のダイナミックレンジを確保しつつ、語音明瞭度を可能な限り維持しつつ、聴覚障害のリスクを低減することができる。
また、本発明に係る補聴器では、音圧算出手段は、出力信号から出力音を生成する音再生手段の周波数特性を反映した鼓膜面音圧に換算することが好ましい。あるいは、音圧算出手段は、外耳道での周波数特性を反映した鼓膜面音圧に換算することが好ましい。
これにより、補聴器の信号処理部における出力音圧レベルだけでなく、レシーバでの出力周波数特性や外耳道での共鳴を含む周波数特性を加えることで、鼓膜面での音圧レベルを算出することができる。よって、正確な音圧レベルで聴覚障害を引き起こす可能性があるかどうかを判断することができる。
また、本発明に係る補聴器では、音圧算出手段は、音導チューブでの周波数特性を反映した鼓膜面音圧に換算することが好ましい。
これにより、補聴器の形状違いによる差を吸収することが可能となり、耳掛型でレシーバが補聴器本体にある機種や、外耳道レシーバの耳掛型あるいは耳穴型の補聴器であっても、正確な鼓膜面音圧に換算することができる。
本発明に係る補聴器では、計時手段として、絶対時刻で計測することが好ましい。
これにより、使用者が1日の内で電源切断を行っても、1日の中での音圧レベルの暴露時間を正確に測定することができる。
本発明に係る補聴器では、計時手段として、所定の起点時刻からの相対時刻で計測することが好ましい。
これにより、補聴器本体に絶対時刻を保持する必要がなくなり、未使用時は電源を完全に切断することができるため、低消費電力化を図ることができる。
本発明に係る補聴器では、計時手段として、所定の起点時刻からの相対時刻で計測し、外部制御装置から絶対時刻を受信して、暴露時間を算出することが好ましい。
これにより、補聴器本体に絶対時刻を保持する必要がなく、かつ絶対時刻を外部制御装置から受信して換算することで、電源断が短時間なのか長時間なのかを判断することができる。よって、補聴器本体の低消費電力化とともに、正確な暴露時間を算出による聴力保護が可能となる。
(発明の効果)
本発明の補聴器によれば、暴露時間判定手段において出力音圧レベル毎の暴露時間が許容時間を超過したかどうかを検出することができるため、許容時間を超過したことを検出した場合に聴覚障害のリスクがあることを検出できる。したがって、聴覚障害を未然に防ぐことができるとともに、会話等を聞き取りにくくなることを防止して使い勝手が良い補聴器を得ることができる。
本発明の第1の実施形態に係る補聴器の構成図。 本発明の第1の実施形態に係る補聴器における信号処理手段の構成図。 本発明の第1の実施形態に係る補聴器の音圧レベルと許容時間の一例を示す図。 本発明の第2の実施形態に係る補聴器における信号処理手段の構成図。 本発明の第2の実施形態に係る補聴器および補聴器調整装置の構成図。 本発明の第3の実施形態に係る補聴器における信号処理手段の構成図。 本発明の第3の実施形態に係る補聴器の帯域毎音圧レベルと許容時間の一例を示す図。 本発明の第4の実施形態に係る補聴器における信号処理手段の構成図。 本発明の第4の実施形態に係る補聴器の暴露時間判定手段および利得制限手段の処理の流れを示すフローチャート。 本発明の第4の実施形態に係る補聴器の入出力特性の一例を示す図。 本発明の第4の実施形態に係る補聴器の入出力特性の一例を示す図。
(実施形態1)
以下、本発明の一実施形態に係る補聴器について、図1から図3を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下で説明する10,20,30,40,・・・等の符号で表されるものは、機能ブロックにおいて送受信される各種信号を示している。
図1は、本実施形態に係る補聴器の構成図である。
本実施形態の補聴器は、図1に示すように、マイク901、A/D変換部902、信号処理手段100、D/A変換部903、レシーバ904を備えている。
マイク901は、入力音を入力アナログ信号91に変換する。A/D変換部902は、入力アナログ信号91を入力デジタル信号10に変換する。信号処理手段100は、入力デジタル音声信号10を加工して出力デジタル信号90を生成する。D/A変換部903は、生成された出力デジタル信号90を出力アナログ信号94に変換する。レシーバ904は、出力アナログ信号94を出力音に変換し、使用者に対して出力音を再生する。
図2は、本実施形態に係る補聴器の信号処理手段100の構成図である。
信号処理手段100は、利得設定記憶手段201と、利得算出手段200と、音圧算出手段300と、計時手段400と、許容時間記憶手段501と、暴露時間判定手段500と、通知音記憶手段800と、を有する。利得設定記憶手段201は、使用者の聴力レベルに応じた利得を記憶している。利得算出手段200は、利得設定記憶手段201から前記利得を読み出し、入力デジタル信号10に対する利得20を算出する。音圧算出手段300は、入力デジタル信号10と利得20とに基づいて、出力音圧レベル30を推定する。計時手段400は、各出力音圧レベル30に対する暴露時間40を計測する。許容時間記憶手段501は、聴覚保護のための出力音圧レベルの許容時間を記憶する。暴露時間判定手段500は、各出力音圧レベルに対する暴露時間40が許容時間以内かどうかを判定する。通知音記憶手段800は、判定結果を通知するための音を記憶する。
次に、信号処理手段100の各構成要素における処理の流れを説明する。
入力デジタル信号10は、信号処理手段100において処理される所定時間区間1に分割され、1つの所定時間区間に対する入力デジタル信号10が、利得算出手段200、音圧算出手段300、利得制御手段600へそれぞれ入力される。なお、所定時間区間1は、任意に設定することが可能であって、例えば、後述の周波数分析合成処理を行う数msecという時間間隔に設定される。
利得算出手段200は、初期動作として利得設定記憶手段201から使用者の聴力レベルに応じた入力デジタル信号10の音圧レベルと利得との関係を表す利得特性を読み出す。そして、利得算出手段200は、その利得特性に基づいて、入力デジタル信号10の音圧レベルから、所定時間区間1の入力デジタル信号10に対する増幅率を表す利得20を算出する。
利得制御手段600は、入力デジタル信号10に対して利得20によって増幅もしくは圧縮することにより、出力音デジタル信号70を生成する。ここでも、聴力保護の観点から、従来の最大出力制限回路(AGC)やピーククリッピング処理などを実施してもよい。
音圧算出手段300は、所定時間区間の入力デジタル信号10と利得20とに基づいて、補聴器において再生される出力音圧レベル30を推定する。
計時手段400は、所定時間区間1より長い所定時間区間2の時間内において、出力音圧レベル30が継続している時間を積算した時間、すなわち暴露時間を、出力音圧レベル毎に算出する。
ここで、各出力音圧レベルとは、出力音圧レベルを任意の大きさごとに区間で分けることであるが、ここでは3dBごとに出力音圧レベル30を区間で分けた例を挙げて説明する。また、所定時間区間2とは、任意の時間区間であり、例えば、1日でも1週間でもよいが、ここでは所定時間区間2を1日とした例を挙げて説明する。
図3は、聴力損失を起こさない出力音圧レベル30と許容時間との関係を表す。
ここで、許容時間とは、出力音圧レベル30と各出力レベルに対する暴露時間40との関係として、聴力損失が発生しない許容される時間を表す。
許容時間記憶手段501は、この出力音圧レベル30と許容時間との関係を記憶している。
ここで、聴力損失には、一過性聴覚閾値移動(TTS:Temporary Threshold Shift)と呼ばれる一時的な聴力損失であり後で回復するものと、永続性聴力閾値移動(PTS:Permanent Threshold Shift)と呼ばれる聴力損失が回復しないものとが存在する。本実施形態では、後者の意味で聴力損失という言葉を用いる。また、図3に示す許容時間は、一例であって、国や団体によって基準が異なる場合がある。基準が異なる場合には、その基準に合わせた許容時間とすることが可能である。また、ここでは、聴力損失を起こさない出力音圧レベル30と許容時間との関係として図3を示したが、聴力損失を予防するという観点で、許容時間を複数段階に分けて設けることも可能である。
通知音記憶手段800では、聴力損失が発生する可能性がある旨を、使用者に通知するための通知音を記憶している。通知音の一例としては、純音の時間的な組み合わせ、例えば、「ピーピーピー」などでもよい。ただし、補聴器では、音量設定変更の通知音やプログラム変更の通知音など、いくつかの通知音が用いられているため、使用者が他の通知音と区別できる音源にする必要がある。また、補聴器が十分な記憶容量を有している場合には、音声で通知する方法として、例えば、「現在の出力レベルでは聴力損失を起こす可能性があります」と言葉で通知する方法もある。なお、言葉で通知する場合には、使用者が理解可能な言語で通知できるように、言語の選択が可能であることが好ましい。
暴露時間判定手段500は、各音圧レベルに対する暴露時間40が、図3に示した許容時間以内かどうかの判定を行い、暴露時間判定結果50を算出する。
ここで、各音圧レベルに対する暴露時間40が許容時間以内と判定された場合には、図1に示す補聴器の通常動作として、スイッチング手段(通知手段)60(図2参照)によって、出力音デジタル信号70が出力デジタル信号90として出力されるように切り換えられる。一方、各音圧レベルに対する暴露時間40が許容時間を超過していると判定された場合には、スイッチング手段60によって、出力デジタル信号90として通知音デジタル信号80が出力されるように、切り換えられる。そして、通知音デジタル信号80の再生が完了した際には、出力デジタル信号90として出力音デジタル信号70が出力されるように、スイッチング手段60によって再度切り換えられる。
これにより、使用者は、現在の補聴状態において、聴力損失のリスクがあることを認知することができる。よって、使用者は、聴力損失のリスクを回避するために、利得算出手段200における利得20を下げる設定変更を行う、もしくは周囲音がより静かな音環境に移動する、等の対策を採ることができる。一方、使用者にとって、とても重要な語音聴取の最中で有る場合には、聴力損失のリスクは認識しつつも、補聴器の設定や周囲音環境を変えることなく、補聴器の使用を継続することも選択可能である。
さらに、ここでは、計時手段400について補足する。
ここで、出力音圧レベルの暴露時間を正確に求めるためには、絶対時刻で計測する必要がある。しかしながら、補聴器において絶対時刻を計測するためには、補聴器を使用しない時も絶対時刻計測のために電力を消費し続ける必要があり、低消費電力とのトレードオフの関係となる。
本実施形態では、その対策として、補聴器の本体では相対時刻で測定しておき、補聴器の音量設定やプログラム設定を行う外部制御装置(図示せず)もしくはリモート・コントローラーにて絶対時刻を保持させている。これにより、外部制御装置と補聴器とが通信する際に、補聴器側で絶対時刻を受信して時刻換算することができる。この結果、消費電流を低減しつつ、出力音圧レベルの暴露時間を正確に計測することが可能となる。
(実施形態2)
本発明の他の実施形態に係る補聴器について、図4および図5を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下で説明する10,20,30,40,50,54,・・・等の符号で表されるものは、機能ブロックにおいて送受信される各種信号を示している。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る補聴器に含まれる信号処理手段の構成図である。
まず、本実施形態と上述した実施形態1との違いを説明する。
図1では、聴力損失のリスクを通知音で使用者に通知していたが、図4では聴力損失のリスクを補聴器内に記憶しておき、補聴器販売店などで調整を行う際に、補聴器調整装置1000によって聴力損失のリスクを確認する点において異なっている。これにより、使用者は、補聴器調整を行う際にフィッティングと呼ばれる調整作業を初期段階で行うが、この補聴器調整作業を行う際に利得調整を行うことにより、聴力損失を防止しつつ、語音明瞭度を改善するための調整を補聴器の専門家と共に行うことができる。
図4において、図1の構成と同一箇所については、同じ符号を付してその説明を省略する。図1に対して図4が異なる箇所は、暴露時間記憶手段530および通信手段540が存在する点と、通知音記憶手段800が存在しない点である。
暴露時間判定手段500における暴露時間判定結果50は、暴露時間記憶手段530に記憶される。記憶される時間間隔は、所定時間区間2の時間間隔で記憶してもよいが、暴露時間判定手段500において、各出力音圧レベルに対する暴露時間40が許容時間を超過した時のみ暴露時間記憶手段530において記憶してもよい。これにより、記憶容量を削減できる効果がある。
通信手段540は、補聴器調整装置1000に送信するために、暴露時間判定結果50を暴露時間判定結果の通信用データ54に変換する。具体的には、通信手段540は、通信処理を行うための誤り検出符号や誤り訂正符号を付加する処理を行う。なお、ここでは、通信路の信頼性に応じて、通信手段540における処理内容を任意に決めればよい。
図5は、本実施形態に係る補聴器および補聴器調整装置の構成図である。
まず、補聴器調整装置1000の構成を説明する。
補聴器調整装置1000は、補聴器との通信を行う通信手段1010と、補聴器の設定を記憶する記憶手段1030と、補聴器の設定内容に関する情報を通信したり画像表示させたりする信号処理手段1020と、補聴器の設定内容に関する情報や補聴器の動作を、補聴器の使用者および調整者に対して画面表示する表示手段1040と、を有している。
次に、補聴器調整装置1000における処理の流れについて説明する。
補聴器調整装置1000と補聴器との通信は、通信線が接続された際、もしくは補聴器の調整者が通信開始の指示を行った際に開始される。
通信手段1010は、暴露時間判定結果の通信用データ54を補聴器から受信する。そして、通信手段1010は、付加された誤り検出符号や誤り訂正符号を復号して、暴露時間判定結果50を取り出す。
信号処理手段1020は、暴露時間判定結果50を記憶手段1030に記憶させる。そして、補聴器の調整者が、暴露時間判定結果50を表示する指示を信号処理手段1020に対して行うと、信号処理手段1020は、暴露時間判定結果50を表示手段1040に表示させる。
これにより、この表示結果を補聴器の使用者および調整者が確認することで、補聴器の利得設定記憶手段201の内容や、利得制御手段600の動作を、補聴器調整装置1000を介して調整することができる。この結果、この調整作業によって聴力損失を防止しつつ、かつ語音明瞭度を改善するように、補聴器の専門家と共に補聴器を調整することができる。
(実施形態3)
本発明のさらに他の実施形態に係る補聴器について、図6および図7を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下で説明する10,11,21,31,41,・・・等の符号で表されるものは、機能ブロックにおいて送受信される各種信号を示している。
図6は、本発明の第3の実施形態に係る補聴器に含まれる信号処理手段の構成図である。まず、本実施形態と上述した実施形態1との違いを説明する。
すなわち、図1では、周波数分析合成処理を行っていなかったが、図6では、周波数分析合成処理を行い、周波数帯域ごとに聴力損失のリスクを推定できる点で異なっている。ここで、感音難聴の聴力損失は、蝸牛における外有毛細胞の損傷が最も早く現れる。そして外有毛細胞の動作は、周波数選択特性を有している。このため、本実施形態のように、周波数帯域ごとに聴力損失のリスクを推定することで、難聴を予防することができる。
図6において図1の構成と同一箇所については、同じ符号を付してその説明を省略する。図6は、周波数分析手段110と周波数合成手段710とが存在する点と、各処理を周波数帯域毎に行う点において、図1とは異なっている。
本実施形態では、周波数分析手段110が、所定時間区間1における入力デジタル信号10を、周波数帯域毎の入力信号11に分析する処理を行う。ここで、周波数分析処理の一例としては、FFT(Fast Fourier Transform)がある。
利得設定記憶手段211は、利得特性を周波数帯域毎に記憶しており、利得算出手段210も周波数帯域毎の利得21を算出する。
利得制御手段610は、周波数帯域毎の入力信号11に対して、周波数帯域毎の利得21によって増幅もしくは圧縮する処理を行う。
周波数合成手段710は、周波数帯域毎の出力信号から出力音デジタル信号70を算出する。
音圧算出手段310は、周波数帯域毎の入力信号11と周波数帯域毎の利得21とに基づいて、周波数帯域毎の出力音圧レベル31を算出する。
計時手段410は、周波数帯域毎の各出力音圧レベル31に対する暴露時間41を算出する。
許容時間記憶手段511は、周波数帯域毎の許容時間を記憶する。
図7は、本実施形態に係る補聴器の帯域毎音圧レベルと許容時間との関係の一例を示している。
ここでは、周波数帯域をオクターブバンドレベルに分割した場合の許容時間を示している。
なお、周波数帯域の分割方法としては、これに限定されるものではない。例えば、図3と同様に、国や団体によって異なる基準に合わせたり演算処理量を考慮したりして、適宜決定すればよい。ただし、少なくとも3つの周波数帯域に分割することが好ましい。
ここで、単に、音声帯域と非音声帯域との2つに分割した場合には、母音音声帯域の音圧が高い状態にも関わらず、言葉の聞き取りに重要な子音音声帯域まで抑圧して、言葉が聞き取りにくくなるおそれがある。そこで、少なくとも3つの周波数帯域に分割することで、このような問題を回避することができる。
以下で、周波数帯域の分割方法の他の例について説明する。
例えば、聴覚フィルタに合わせて臨界帯域幅ごとに分割するか、あるいはそれに近い1/3オクターブバンドレベルに分割してもよい。これにより、ラウドネスを感じる帯域幅に合わせることができるため、聴覚保護をより厳格に規定することができる。
すなわち、この周波数帯域を臨界帯域幅、もしくは1/3オクターブバンドレベルに分割したことで、利得制御手段610における周波数帯域毎の利得21を聴覚における周波数方向に細かく制御することができる。このため、聴力保護を行うことと、出力音の自然さを保つこととを両立することができる。
具体的には、例えば、補聴器でハウリングが発生した場合を考える。ハウリング発生時の入力音は、周波数帯域幅としては狭く、その周波数帯域における音圧が大きいという特徴がある。このハウリング発生時の入力音から聴力保護を行うためには、利得制御として、狭い周波数帯域の音を利得低減することが望ましい。
そこで、利得制御を行う周波数帯域を臨界帯域幅とした場合には、出力音のハウリングを抑圧しつつ、その他の周波数帯域への影響を出来るだけ少なくすることができる。
一方、例えば、周波数帯域を、約200Hz以下の音声帯域以外と、約200Hz〜約800Hzの母音音声帯域と、約800Hz〜約6000Hzの子音音声帯域との少なくとも3つの周波数帯域に分割した場合には、演算量を比較的小さくした状態で、聴力保護と言葉の聞取りを両立することができる。
暴露時間判定手段510は、周波数帯域毎の各音圧レベルに対する暴露時間41が許容時間以内か、許容時間超過かの判定を行い、暴露時間判定結果50を送出する。すなわち、暴露時間判定結果50が、許容時間以内である場合には、出力音デジタル信号70を出力デジタル信号90として出力する。一方、暴露時間判定結果50が許容時間超過である場合には、通知音デジタル信号80を出力デジタル信号90として出力する。上記以外の処理については、図1と同様のため、その説明を省略する。
ここで、音圧算出手段30について補足する。
本実施形態では、音圧算出手段30において、入力デジタル信号10と利得20とに基づいて出力音圧レベル30を算出している。しかし、聴力保護の観点では、補聴器の出力音圧だけでなく、人の鼓膜面における音圧を知ることが重要である。また、補聴器の出力信号は、レシーバ904でも周波数特性を持って変換され、また、人の外耳道の形状によっても周波数特性が変わってくる。さらに、耳掛型の補聴器の場合には、レシーバ904と外耳道とは音導チューブを介して接続されており、この接続部分における周波数特性も考慮する必要がある。
すなわち、音圧算出手段30では、出力音圧レベル30を推定するために、レシーバ904の周波数特性、および音導チューブでの周波数特性、耳栓形状(クローズ型、オープン型)、さらには使用者でも外耳道での周波数特性を考慮して、出力音圧レベル30を算出する。これにより、聴力損失のリスクをより正確に判定することができる。
(実施形態4)
本発明のさらに他の実施形態に係る補聴器について、図8から図11を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下で説明する10,11,21,31,41,52,・・・等の符号で表されるものは、機能ブロックにおいて送受信される各種信号を示している。
まず、本実施形態に係る補聴器による処理の目的を説明する。
補聴器の使用者が、工事現場やパチンコ等の遊戯施設に代表される騒音レベルの高い音環境において仕事に従事する場合、長時間の騒音暴露により聴力損失になりやすい傾向がある。また、この様な使用者は、騒音レベルが高い環境下で長時間過ごしながら、人との会話で音声コミュニケーションを取る必要がある。すなわち、長時間の騒音暴露が継続する使用者に対しては、聴力損失のリスクを通知するだけでなく、聴力損失に至らない様に補聴器での利得制限により聴力保護を行い、かつ言葉を表す音声を含む信号に対しては、補聴器の利得制限を緩めて、使用者に音声情報を通知する機能が必要となる。
図8は、本実施形態に係る補聴器における信号処理手段の構成図である。
ここではまず、本実施形態と上述した実施形態1〜3との違いを説明する。
上述した実施形態1〜3では、補聴器の使用者および調整者に聴力損失のリスクを通知することを目的としていた。しかしながら、本実施形態では、使用者が意図的に設定変更をしなくても、補聴器側で利得制限処理(利得算出手段によって算出された利得よりも低い利得に変換する)を行う。つまり、本実施形態の補聴器では、聴力損失のリスクを低減し、かつ語音明瞭度を維持できる時間を延長することを目的としている。
図8において、図6の構成と同一の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。なお、図6では、暴露時間判定結果50に応じて、出力デジタル信号90の信号を切替えていたが、図8では、利得制限手段550を追加し、暴露時間判定結果52に応じて利得制限手段550の動作を変更する点で異なっている。なお、図8では、通信手段540が有る点でも異なっているが、これは上述した実施形態2に係る補聴器で説明した図4の構成と同一であるため、ここではその説明を省略する。
さらに、本実施形態に係る補聴器では、暴露時間判定を行う許容時間として、第1許容時間と、第1許容時間より長い第2許容時間という2つの閾値を設けている。
ここで、第1許容時間と第2許容時間の2つを設けた理由は、聴覚保護を最優先させて周波数帯域全体の利得を制限する第2許容時間と、語音聴取に関連のある音声帯域は利得制限せず、音声帯域以外の周波数帯域に対して利得制限を行う第1許容時間とを設定することで、使用者の周囲環境等の状況に応じて出力レベルを抑制する程度を明確に切り分けるためである。
このように、第1許容時間と第2許容時間という2つの閾値を設けることにより、聴力保護に考慮しつつ、暴露時間が第1許容時間以内であれば、自然な状態の音環境を提供することができる。そして、第1許容時間を超過して第2許容時間を超えるまでは語音明瞭度を維持して聴覚保護を行うことができる。さらに、第2許容時間を超えた場合には、聴覚保護を最優先することができる。この結果、状況に応じて聴覚保護のリスク低減制御を調整して、使用者の利便性を高めることができる。
図9は、本実施形態に係る補聴器の利得制限手段550の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、周波数帯域毎の各音圧レベルに対する暴露時間41が、暴露時間判定手段520に入力されると、図9に示すように、対象となる周波数帯域が選択される(S551)。その後で、対象となる音圧レベルが選択される(S552)。
次に、対象となる音圧レベルの暴露時間41と第1許容時間との比較を行う(S554)。ここで、暴露時間41が第1許容時間以内である場合には、S560へ進み、利得制限処理を行わない。一方、暴露時間41が第1許容時間を超過している場合には、音声帯域以外の利得を所定値に制限する利得制限処理を行う(S555)。なお、音声帯域とは、語音聴取に関係のある周波数帯域を意味しており(例えば、小寺一興著「補聴器フィッティングの考え方 改定第2版」(診断と治療社発行、2008年10月7日)参照)、約200Hzから約6000Hzの範囲である。
次に、対象となる音圧レベルの暴露時間41と第2許容時間との比較を行う(S556)。ここで、暴露時間41が第2許容時間以内である場合には、S560へ進み、更なる利得制限処理は行わない。一方、暴露時間41が第2許容時間を超過している場合には、許容時間を超過した全ての周波数帯域に対して利得制限処理を行う(S557)。なお、第2許容時間は、聴覚低下が発生する可能性がある時間の閾値として設定されており、第1許容時間より長い時間として設定される。
次に、全ての音圧レベルについて、判定が終了したかどうかを判定する(S560)。ここで、全ての判定が終了していない場合には、次の音圧レベルを選択し(S552)、S554〜S557までの処理を繰り返し行う。
次に、全ての周波数帯域について、判定が終了したかどうかを判定する(S561)。ここで、全ての判定が終了していない場合には、次の周波数帯域を選択し(S551)、S552〜S557までの処理を繰り返し行う。
次に、各音圧レベルの許容時間は、所定時間区間2の時間間隔で決められているため、これを超過しているかどうかの判断を行う。すなわち、起点からの経過時間が所定時間区間2を超過したかどうかを判定する(S563)。ここで、経過時間が所定時間区間2を超過している場合には、利得制限制御を解除して、利得制限を初期値(例えば、制限無し)に設定する(S564)。一方、経過時間が所定時間区間2を超過していない場合には、何も処理をせずにS566へ進む。
最後に、全ての信号区間の判定が終了したかどうかを判定する(S566)。ここで、時間的に処理すべき信号がある場合、すなわち処理を継続する場合には、処理開始位置を所定時間区間1だけ増加させ(S567)、再度、S551へ戻って最初から処理を行う。
ここで、言葉の聞き取りを考察する目的で、音声信号で言葉に関わる母音と子音との違いについて説明を行う。すなわち、音声信号における母音区間と子音区間とを比較すると、子音区間は振幅、すなわち音圧レベルが小さく、かつ継続時間も短いという特徴がある。この特徴から、難聴者が聞き取り難いのは子音である場合が多い。
さらに、人の音を知覚する際のマスキングという現象について説明する。すなわち、ある音によって周波数が近い別の音がかき消されて聞こえなくなる周波数マスキングという現象が存在する。また、ある音に時間的に近い別の音がかき消されて聞こえなくなる時間マスキングという現象も存在する。
本実施形態では、暴露時間41が、第1許容時間を超過し、かつ第2許容時間以内である場合には、音声帯域以外の入力デジタル信号10に対して利得制限処理を行う。特に、本実施形態では、200Hz以下の低周波数帯域の入力デジタル信号10に対して利得制限処理を行うことにより、音声信号の子音成分に対する周波数マスキングおよび時間マスキングの影響を低減することができる。この結果、難聴者にとって聞き取り難い子音に対する語音明瞭度を維持した状態で、聴力保護ができるという効果がある。
なお、図9では、構成要素として、暴露時間判定手段520と利得制限手段550との2つを組み合わせた処理の流れについて説明した。詳細には、これらの処理の大部分が暴露時間判定手段520による処理であり、ステップS555,S557のみが利得制限手段550による処理である。
なお、上記では、暴露時間の判定を行う際に、第1許容時間と第2許容時間とを設定して閾値を2段階とした例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、暴露時間の判定を行う際に、3段階以上の許容時間を閾値として設定してもよい。この場合、母音と子音を区別して利得制限処理を実施することができる。
すなわち、例えば、3段階の許容時間を設定して暴露時間を判定する場合には、まず、第1許容時間の超過によって、音声帯域以外の入力デジタル信号10に対する利得制限処理を行う。次に、第2許容時間の超過によって、子音帯域以外の入力デジタル信号10に対する利得制限処理を行う。続いて、第3許容時間の超過によって、全周波数帯域の入力デジタル信号10に対する利得制限処理を行う。なお、各許容時間の長さは、第1許容時間<第2許容時間<第3許容時間の関係を満たすものとする。
ここで、語音明瞭度を維持する目的のために、音声信号における母音区間と子音区間との関係について説明する。
すなわち、母音は低周波数帯域に音圧レベルの高い成分を含むため、母音に継続する子音が、母音の周波数マスキングの影響によって聞き取りにくくなる。さらに、母音に継続する子音は、母音の時間マスキングの影響も受けるため、さらに聞き取りにくくなる。この様な状態でも、健聴者であれば周波数を選択的に増幅する外有毛細胞により母音に継続する子音を聞き取ることが可能であるが、加齢による難聴者の場合は、外有毛細胞が損傷を受けている場合が多く、周波数マスキングおよび時間マスキングにより母音に継続する子音が聞き取り難い。
そこで、本実施形態の補聴器では、子音よりも比較的聞き取りやすい母音に対する利得を制限する。
ここで、子音音声帯域とは、音声帯域(約200Hzから約6000Hzの範囲)中における母音のピーク周波数である第1フォルマント(約200Hz〜約800Hz)を含まない音声帯域であって、約800Hzから約6kHzの周波数帯域である。したがって、経過時間が第2許容時間を超過した場合には、約200Hz以上かつ約800Hz以下の周波数帯域に対する利得を制限(低下)することによって、子音帯域以外に対する利得制限を行う。
なお、経過時間が第2許容時間を超過した場合に利得を制限する周波数帯域の上限値としては、約800Hzではなく、第1フォルマントの領域からある程度間隔を取って、約800Hzから約2000Hzの間の値に設定されていればよい。
この理由は 、区切りとなる周波数帯域の上限は、言葉の聴き間違い(以下、異聴と称する。)の傾向や、聴力レベル、聴力型(例えば、高音漸傾型、高音急墜型、低音障害型、水平型、山型、谷型)によって、最適値に個人差があるためである。
例えば、母音の第2フォルマントが約800Hz〜約2500kHzであり、子音だけでなく母音の異聴が多い使用者に対しては、第2フォルマント周波数の聴き取りのために800Hzを帯域の上限値として設定することが望ましい。一方、母音の異聴は少なく、子音の異聴が多い使用者に対しては、周波数帯域の上限値を高くした方が、母音から子音へのマスキングによる影響が低減出できるため好ましい。すなわち、第2許容時間を超過した場合には、約200Hz以上かつ、約800Hzから約2000Hzの間の上限値以下の周波数帯域に対する利得を制限(低下)してもよい。
音声帯域以外として、200Hz以下の低周波成分の利得制限処理を行うことにより、低周波数帯域成分による高周波数帯域域成分に対する周波数マスキング、および先行母音による後続子音に対する時間マスキングの影響を低減することができる。よって、効果的に子音の聞き取りを向上させることができる。さらに、子音帯域以外として、800Hz以下の周波数帯域の利得制限処理を行うことにより、周波数マスキングおよび時間マスキングの影響を低減することができ、子音の聞き取り易さを更に向上させることができる。
図10は、本実施形態に係る補聴器の入出力特性の一例を表す。
なお、この入出力特性は、補聴器調整装置1000を用いて補聴器の調整者が設定し、利得設定記憶手段211において記憶されるが、本実施形態に係る補聴器では、利得制限手段550において入出力特性を変化させることができる場合の利得制限する方法について説明する。
図10に示す入出力特性において、実線は利得制限前、破線は利得制限後を表す。
まず、実線の特性について説明する。
非線形に特性が変わる点として、第1のニーポイント801と、第2のニーポイント802と、最大出力音圧レベルに達するポイント803とがある。第1のニーポイント801と第2のニーポイント802との間が、語音聴取に寄与するリニア領域810である。一方、第1のニーポイント801と最大出力音圧レベルに達するポイント803との間は、出力音圧を制限する圧縮領域(もしくはコンプレッション領域)である。さらに、第2のニーポイント802以下は、補聴器の装用により小さな雑音を抑圧するスケルチ領域(もしくはエクスパンジョン領域)である。
また、使用者が聞き取れる最も小さな音として、最小可聴値825も図示されている。
なお、図10に示す入出力特性は、周波数帯域毎に異なるが、ここでは、1つの周波数帯域の例を挙げて説明する。
ここで、語音明瞭度の改善を行うためには、最小可聴値825より少なくとも30dB、望ましくは40dBのダイナミックレンジ827が必要である(例えば、小寺一興著「補聴器フィッティングの考え方 改定第2版」(診断と治療社発行、2008年10月7日)参照)。すなわち、利得制限手段550において、利得制限処理を行った後もダイナミックレンジ827として少なくとも30dB、望ましくは40dB必要である。
図10では、利得制限処理後の入出力特性として、ダイナミックレンジが十分に確保できている場合を示しており、利得制限処理後の入出力特性は、破線で表されている。
図10に示す特性としては、リニア領域820が利得制限処理前のリニア領域810を並行に移動させている。これにより、利得制限処理後も語音聴取に影響を及ぼすことなく、聴力保護が可能となる。
図11は、利得制限処理後の入出力特性として、ダイナミックレンジが十分に確保できない場合を示しており、図10と同様に、利得制限処理後の入出力特性を破線で表している。
例えば、難聴が進行して、最小可聴値835が高い使用者の場合には、最小可聴値835が高いと、利得制限処理後にダイナミックレンジ837が十分に確保できないおそれがある。この場合、利得制限処理前のニーポイント801より、利得制限処理後の第1のニーポイント831の入力音圧レベルを小さくすることにより、入力音圧レベルのダイナミックレンジを確保することができる。
そして、利得制限処理後のリニア領域830を、場合によっては、圧縮領域に近い特性とする。また、第1のニーポイントを下げただけでは、語音明瞭度の低下が見られた場合には、第2のニーポイント上昇させる設定変更(図示せず)を実施してもよい。この場合でも、明瞭度改善を実現することができる。
本発明の補聴器は、暴露時間判定手段が出力音圧レベル毎の暴露時間が許容時間を超過したかどうかを検出することで、許容時間を超過したことを検出した場合に聴覚障害のリスクがあることを検出できるため、聴覚障害を未然に防ぐことができ、使い勝手が良いという効果を奏するため、補聴器やMP3プレーヤー等の音楽再生装置にも広く適用可能である
10 入力デジタル信号
11 入力信号
20 利得
21 利得
30 出力音圧レベル
31 出力音圧レベル
40 各音圧レベルに対する暴露時間
41 暴露時間
50 暴露時間判定結果
54 暴露時間判定結果の通信用データ
60 スイッチング手段(通知手段)
70 出力音デジタル信号
80 通知音デジタル信号
90 出力デジタル信号
91 入力アナログ信号
94 出力アナログ信号
100 信号処理手段
110 周波数分析手段
200 利得算出手段
201 利得設定記憶手段
210 利得算出手段
211 利得設定記憶手段
300 音圧算出手段
400 計時手段
500,510,520 暴露時間判定手段
501,511,521 許容時間記憶手段
530 暴露時間記憶手段
540 通信手段
550 利得制限手段
600,610 利得制御手段
710 周波数合成手段
800 通知音記憶手段
801 第1のニーポイント
802 第2のニーポイント
803 最大音圧利得
810 入出力特性のリニア領域
820,830 リニア領域
825,835 最小可聴値
827,837 ダイナミックレンジ
831 利得制限後の第1のニーポイント
901 マイク
902 A/D変換部
903 D/A変換部
904 レシーバ
1000 補聴器調整装置
1010 通信手段
1020 信号処理手段
1030 記憶手段
1040 表示手段

Claims (10)

  1. 入力音信号を増幅または圧縮する利得を算出する利得算出手段と、
    前記入力信号と前記利得とに基づいて、出力音圧レベルを算出する音圧算出手段と、
    前記出力音圧レベルが発生する時間間隔を前記出力音圧レベル毎に積算して暴露時間を算出する計時手段と、
    前記計時手段において算出された前記出力音圧レベル毎の前記暴露時間が、所定の許容時間を超過したかどうかを検出する暴露時間判定手段と、
    前記暴露時間判定手段において設定された前記許容時間の長さに応じて、前記入力信号の周波数帯域ごとに算出された前記利得を調整する利得制限手段と、
    を備えた補聴器。
  2. 前記入力信号を周波数領域信号に変換する周波数分析手段をさらに備え、
    前記利得算出手段は、前記入力信号の周波数帯域毎に前記利得を算出し、
    前記音圧算出手段は、前記入力信号の周波数帯域毎に前記音圧レベルを算出し、
    前記計時手段は、前記入力信号の周波数帯域毎に前記暴露時間を算出し、
    前記暴露時間判定手段は、前記入力信号の周波数帯域毎に前記暴露時間が前記許容時間を超過したかどうかを検出する、
    請求項1に記載の補聴器。
  3. 前記周波数分析手段は、前記入力信号を3以上の周波数帯域の周波数領域信号に変換する、
    請求項2に記載の補聴器。
  4. 前記暴露時間判定手段が前記許容時間の超過を検出すると、補聴器の使用者または調整者に通知する通知手段を、さらに備えている、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の補聴器。
  5. 前記許容時間は、第1許容時間および前記第1許容時間よりも長い第2許容時間を有し、
    前記利得制限手段は、前記暴露時間判定手段が前記第1許容時間を超過したことを検出すると、前記利得算出手段によって算出された前記利得のうち音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の補聴器。
  6. 前記利得制限手段は、前記暴露時間判定手段が前記第1許容時間を超過したことを検出すると、前記利得算出手段によって算出された前記利得のうち、200Hz以下、および6000Hz以上の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する、
    請求項5に記載の補聴器。
  7. 前記利得制限手段は、前記暴露時間判定手段が前記第2許容時間を超過したことを検出すると、前記利得算出手段によって算出された前記利得のうち子音音声帯域以外の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する、
    請求項5または6に記載の補聴器。
  8. 前記利得制限手段は、前記暴露時間判定手段が前記第2許容時間を超過したことを検出すると、前記利得算出手段によって算出された前記利得のうち200Hz以上、800Hz以下の周波数に対する利得を低下させて出力信号を出力する、
    請求項7に記載の補聴器。
  9. 前記利得制限手段は、前記暴露時間判定手段が前記許容時間を超過したことを検出すると、前記利得算出手段によって算出された前記利得を非線形に調整して出力信号を出力する、
    請求項1から8のいずれか1項に記載の補聴器。
  10. 前記利得制限手段は、前記暴露時間判定手段が前記許容時間を超過したことを検出すると、入力音圧レベルに対するダイナミックレンジを維持しつつ、入出力特性を示すグラフにおける特性が切り換わる第1のニーポイントの入力音圧レベルを低下させる、
    請求項1から9のいずれか1項に記載の補聴器。
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