JPWO2010134245A1 - 哺乳細胞由来核酸の回収方法、核酸解析方法、及び採便用キット - Google Patents
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Abstract
本発明は、定期健診等により採取された糞便にも利用可能なほど簡便に、糞便中から哺乳細胞由来の核酸を、腸内常在菌由来の核酸よりも選択的に回収するための方法を提供する。本発明の哺乳細胞由来核酸の回収方法は、(A)糞便を、高塩濃度処理溶液中に添加して糞便試料を調製し、当該糞便試料中で所定時間、糞便を高塩濃度処理溶液中に浸漬させる工程と、(B)工程(A)の後、前記糞便試料から固形成分を回収する工程と、(C)工程(B)において回収された固形成分から、核酸を回収する工程と、を有することを特徴とする。
Description
本発明は、糞便中に含まれる哺乳細胞由来の核酸を、腸内常在菌由来の核酸よりも選択的に回収するための方法、該回収方法により回収された核酸を用いた核酸解析方法、及び該回収方法に好適な採便用キットに関する。
本願は、2009年5月20日に日本国に出願された特願2009−122439号に基づき優先権を主張し、それらの内容をここに援用する。
本願は、2009年5月20日に日本国に出願された特願2009−122439号に基づき優先権を主張し、それらの内容をここに援用する。
欧米と同様に日本においても、大腸がんの患者数は年々急激に増加しており、大腸がんが、がん死亡率の上位を占めるようになってきている。これは、日本人の食生活が欧米型の肉食中心となったことに原因があると考えられている。具体的には、毎年約6万人程度が大腸がんに罹患しており、臓器別の死亡数でも、胃がん、肺がんに続く3番目の多さであり、今後更なる増加も予想されている。一方で、大腸がんは、他のがんと異なり、発症の初期に治療することにより100%近く治癒可能ながんである。したがって、大腸がんを早期がん検診の対象とすることは極めて有意義であり、大腸がんの早期発見のための検査方法の研究・開発が盛んに行われている。
大腸がんの早期発見のための検査方法として、例えば、注腸検査、大腸内視鏡検査等が行われている。注腸検査とは、大腸にバリウムを注入して、大腸の粘膜面に付着させ、X線を照射しその表面の凹凸の撮影を行い、大腸の表面を観察する検査である。一方、大腸内視鏡検査とは、内視鏡により直接大腸内部を観察する検査である。特に大腸内視鏡検査は、感度や特異性が高く、ポリープや早期がんの切除も可能であるという利点も有している。しかしながら、これらの検査方法は、コストが高い上に被験者への負担が大きく、合併症のリスクを伴うという問題がある。例えば、注腸検査には、X線被爆や腸閉塞の危険性がある。また、大腸内視鏡検査は、内視鏡を直接大腸内に投入するため侵襲的であり、かつ、内視鏡操作には熟練を要し、検査ができる施設は限られている。このため、これらの検査方法は、定期健診等の無症状の一般人を対象とした大腸がん検査に適しているとは言い難い。
近年、大腸がんの一次スクリーニング法として、非侵襲的で低コストである便潜血検査が広く実施されている。便潜血検査は、糞便中に含まれる赤血球由来のヘモグロビンの有無を調べる検査であり、間接的に大腸がんの存在を予測する方法である。便潜血検査では、便の採取や保存を常温で行うことができ、冷蔵・冷凍等の特別な保存条件も必要としないこと、及び、一般的な家庭で簡単に行うことができ、操作が非常に簡便であることも、広く利用される要因となっている。但し、便潜血検査では、感度が25%程度と低く、大腸がんを見落とす確率が高いという問題がある。さらに、陽性的中率も低く、便潜血検査陽性の被験者の中で実際に大腸がん患者である割合は10%以下であり、多くの偽陽性を含んでいる。このため、より信頼性の高い新たな検査法の開発が強く望まれている。
定期健診等にも適した、非侵襲的で簡便であり、かつ信頼性の高い新たな検査方法として、糞便中のがん細胞の有無やがん細胞由来遺伝子の有無を調べる検査が注目されている。これらの検査方法は、直接的にがん細胞やがん細胞由来遺伝子の有無を調べるため、大腸がんの罹患に伴い間接的に生じる消化管からの出血の有無を調べる便潜血検査法に比べて、より信頼性の高い検査法になり得ると考えられる。
糞便試料中のがん細胞等を精度よく検出するためには、糞便試料中のがん細胞由来核酸を効率よく回収することが重要である。特に、がん細胞由来核酸は微量であり、かつ、糞便中には、消化残留物やバクテリアが大量に含まれているため、核酸は非常に分解されやすい。このため、糞便中の核酸、特にヒト等の哺乳細胞由来の核酸の分解を防止し、検査操作時まで安定して保存し得るように糞便試料を調製することが重要である。このような糞便試料の調製方法として、例えば、採取された糞便から、大腸等の消化管から剥離したがん細胞を分離する方法がある。糞便からがん細胞を分離することにより、バクテリア等由来のプロテアーゼやDNase、RNase等の分解酵素による影響を抑えることができる。糞便からがん細胞を分離する方法として、例えば、(1)糞便から細胞を分離する方法であって、a)便をそのゲル氷点未満の温度に冷却する工程と、b)便が実質的に完全な状態を残すように、便をそのゲル氷点未満の温度に維持しながら便から細胞を採取する工程と、を含むことを特徴とする方法が開示されている(例えば特許文献1参照。)。また、(2)通常周囲温度で、プロテアーゼ阻害物質、粘液溶解剤、殺細菌剤を有する輸送培地に糞便を分散させた後、大腸剥離細胞を単離する方法が開示されている(例えば特許文献2参照。)。
その他、(3)糞便検体を特殊な緩衝液(約8.0〜約9.0のpHで約10mM〜約200mMの濃度のキレート剤、約1mM〜約20mMの濃度の塩、及び少なくとも約500mMの濃度の緩衝液を含む)中で非粒子画分を生成させ、哺乳細胞の核酸を分離する方法が開示されている(例えば特許文献3参照。)。前記緩衝液はそのpHとキレート化特性によって核酸の分解を最少にし、かつ、バクテリア細胞は溶解しないが、真核細胞は溶解させることができる。これにより、非粒子画分中に真核細胞由来の核酸を選択的に抽出させる。
一方、生体試料を核酸抽出前に安定して保存するための方法としては、(4)採取した全血試料を直ぐに安定化添加剤に接触させて試料中の生体外遺伝子誘導を阻止し、それによって生体内転写プロフィールを保護する方法であって、前記安定化添加剤として、洗剤、カオトロピック塩、リボヌクレアーゼ抑制剤、キレート剤、またはこれらの混合物、有機溶媒、又は有機還元剤を用いる方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。また、(5)RNAを含む試料を、塩、2価カチオンのキレート剤、又はpH4〜8の緩衝液を含むRNA保存液に浸潤させることにより、細胞及び組織試料中のRNAをヌクレアーゼから保護して保存する方法が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。その他、(6)試料中のヌクレアーゼの活性を抑制するために、1価カチオンの塩を有効成分として含有する試料保存用溶液に試料を添加する第1工程と、第1工程から得られた混合物の全てまたは一部を核酸増幅反応系に添加する第2工程と、核酸増幅反応を行う第3工程を含む試料核酸増幅方法が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。
上記(1)の方法においては、糞便試料を冷却しながら細胞を分離している。この分離操作を冷却せずに行うと、糞便試料の変質等により正しい検出結果を得ることができなくなってしまうためであり、糞便試料の変質を効果的に防止するためには、採便直後に冷却することが重要である。しかしながら、検診等のように家庭において採便が行われる場合には、採取後速やかに糞便試料を冷却することは非常に困難であり、現実的ではない。また、糞便試料から細胞を分離する作業は煩雑であり、検査のコストアップにつながるという問題がある。
上記(2)の方法では、殺細菌剤等を添加することにより、冷却操作を必要とせず、室温で糞便試料の調製や保存が可能であるものの、糞便から大腸剥離細胞を分離する作業を要するため、やはり作業性や経済性に劣るという問題がある。
上記(2)の方法では、殺細菌剤等を添加することにより、冷却操作を必要とせず、室温で糞便試料の調製や保存が可能であるものの、糞便から大腸剥離細胞を分離する作業を要するため、やはり作業性や経済性に劣るという問題がある。
上記(3)の方法では、糞便から哺乳細胞を分離することなく、哺乳細胞由来の核酸を回収しているものの、核酸回収操作に供されている糞便は、採取後−80℃で保存することにより、核酸の分解等を防止している。このため、信頼できる解析結果を得るためには、上記(1)の方法と同様に大掛かりな冷却設備を要し、検診等に用いることは非常に困難である。
一方、上記(4)〜(6)のいずれの方法も、試料中の核酸を安定して保存することについては記載があるものの、生体試料から、バクテリア等の哺乳細胞以外の生物由来の核酸ではなく、哺乳細胞由来の核酸を選択的に回収することについては、一切記載も示唆もされていない。また、そもそも、上記(4)及び(5)の方法に供される全血試料や組織試料は、糞便よりも夾雑物の少ない生体試料中の核酸を保存する方法であり、これらの核酸保存方法が、糞便のように夾雑物が非常に多い試料に対しても有効であるとは限らない。
本発明は、定期健診等により採取された糞便にも利用可能なほど簡便に、糞便中から哺乳細胞由来の核酸を、腸内常在菌由来の核酸よりも選択的に回収するための方法、該回収方法により回収された核酸を用いた核酸解析方法、及び該回収方法に好適な採便用キットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、核酸抽出工程に先立って、採取された糞便を、高塩濃度処理溶液に所定時間浸漬させることにより、糞便中に含まれている哺乳細胞由来の核酸を、腸内常在菌由来の核酸よりも選択的に回収し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 糞便から哺乳細胞由来の核酸を回収する方法であって、(A)糞便を、高塩濃度処理溶液中に添加して糞便試料を調製し、当該糞便試料中で所定時間、糞便を高塩濃度処理溶液中に浸漬させる工程と、(B)工程(A)の後、前記糞便試料から固形成分を回収する工程と、(C)工程(B)において回収された固形成分から、核酸を回収する工程と、を有することを特徴とする哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(2) 前記高塩濃度処理溶液が、塩化ナトリウム及び硫酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上の塩を含む溶液であることを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(3) 前記高塩濃度処理溶液が、塩化ナトリウムを、13%(wt/wt)以上からその飽和濃度以下の濃度で含むことを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(4) 前記高塩濃度処理溶液が、塩化ナトリウムを、20%(wt/wt)以上からその飽和濃度以下の濃度で含むことを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(5) 前記高塩濃度処理溶液が、硫酸アンモニウムを、30%(wt/wt)以上からその飽和濃度以下の濃度で含むことを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(6) 前記高塩濃度処理溶液の塩濃度が、飽和濃度の4/5倍の塩濃度以上飽和濃度以下の範囲であることを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(7) 前記高塩濃度処理溶液中の塩濃度が、飽和濃度であることを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(8) 前記高塩濃度処理溶液が、2種類以上の塩を含むことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(9) 前記高塩濃度処理溶液が、2価カチオンのキレート剤を含むことを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(10) 前記高塩濃度処理溶液のpHが、4〜8であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(11) 前記高塩濃度処理溶液が緩衝作用を有することを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(12) 前記工程(C)において、前記工程(B)において回収された固形成分を洗浄し、当該固形成分の塩濃度を低下させた後に、当該固形成分から核酸を回収することを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(13) 洗浄後の前記固形成分の塩濃度が100mM未満であることを特徴とする前記(12)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(14) 洗浄後の前記固形成分の塩濃度が30mM未満であることを特徴とする前記(12)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
(15) 固形成分の洗浄を、前記工程(B)において回収された固形成分を、洗浄用溶液に分散させた後、遠心分離処理を行って上清画分を除去し、固形成分を回収することにより行い、前記洗浄用溶液が、低イオン濃度の緩衝液、水溶性有機溶媒、水、及びこれらの混合液からなる群より選択される溶液であることを特徴とする前記(12)〜(14)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(16) 前記工程(A)において、少なくとも1回、前記糞便試料を攪拌することを特徴とする前記(1)〜(15)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(17) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中へ糞便を浸漬させる時間が12時間以上であることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(18) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中へ糞便を浸漬させる時間が24時間以上であることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(19) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中へ糞便を浸漬させる時間が72時間以上であることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(20) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中への糞便の浸漬が、4℃以上で行われることを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(21) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中への糞便の浸漬が、10℃以上で行われることを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(22) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中への糞便の浸漬が、16℃以上で行われることを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(23) 前記工程(A)において、前記糞便と前記高塩濃度処理溶液の混合比率が、糞便容量1に対して高塩濃度処理溶液容量が1以上であることを特徴とする前記(1)〜(22)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(24) 前記高塩濃度処理溶液が界面活性剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(23)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(25) 前記高塩濃度処理溶液が着色剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(24)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(26) 固形成分から、哺乳細胞由来の核酸と腸内常在菌由来の核酸とを同時に回収することを特徴とする前記(1)〜(25)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(27) 前記工程(C)における固形成分からの核酸回収操作が、下記工程(a)及び(b)を有することを特徴とする前記(1)〜(25)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法;(a)固形成分中のタンパク質を変性させ、当該固形成分中の腸内常在菌及び哺乳細胞から、核酸を溶出させる工程、(b)前記工程(a)において溶出させた核酸を回収する工程、
(28) 前記工程(a)の後、前記工程(b)の前に、(c)前記工程(a)により変性させたタンパク質を除去する工程と、を有することを特徴とする前記(27)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(29) 前記工程(a)におけるタンパク質の変性が、カオトロピック塩、有機溶媒、及び界面活性剤からなる群より選ばれる1以上を用いて行われることを特徴とする前記(27)又は(28)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(30) 前記カオトロピック塩がグアニジン塩であることを特徴とする前記(29)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(31) 前記工程(c)における変性させたタンパク質の除去が、クロロホルムを用いて行われることを特徴とする前記(28)〜(30)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(32) 前記工程(b)における核酸の回収が、(b1)前記工程(a)において溶出させた核酸を無機支持体に吸着させる工程と、(b2)前記工程(b1)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる工程と、を有することを特徴とする前記(27)〜(31)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(33) 前記(1)〜(32)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法を用いて糞便から回収された核酸、
(34) 前記(1)〜(32)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法を用いて糞便から回収された核酸を用いて、哺乳細胞由来の核酸を解析することを特徴とする核酸解析方法、
(35) 前記哺乳細胞が消化管細胞であることを特徴とする前記(34)記載の核酸解析方法、
(36) 前記哺乳細胞が大腸剥離細胞であることを特徴とする前記(34)記載の核酸解析方法、
(37) 前記哺乳細胞由来の核酸が、新生物性転化を示すマーカーであることを特徴とする前記(34)〜(36)のいずれか記載の核酸解析方法、
(38) 前記哺乳細胞由来の核酸が、炎症性消化器疾患を示すマーカーであることを特徴とする前記(34)〜(36)のいずれか記載の核酸解析方法、
(39) 前記哺乳細胞由来の核酸が、COX2(cyclooxygenase−2)遺伝子由来核酸であることを特徴とする前記(34)〜(36)のいずれか記載の核酸解析方法、
(40) 前記解析が、mRNAの発現解析、K−ras遺伝子の変異解析、及びDNAのメチル化の解析からなる群より選択される1以上であることを特徴とする、前記(34)〜(39)のいずれか記載の核酸解析方法、
(41) 前記mRNAの発現解析が、糞便から回収したtotal RNAを逆転写反応によりcDNA化した後、得られたcDNAを鋳型として核酸増幅反応を行い、増幅反応産物を解析することを特徴とする前記(40)記載の核酸解析方法、
(42) 高塩濃度処理溶液と、当該高塩濃度処理溶液を含有する採便容器とを有することを特徴とする採便用キット、
(43) さらに、洗浄用溶液を有することを特徴とする前記(42)記載の採便用キット、
(44) 採取された糞便を、高塩濃度処理溶液に浸漬させて所定時間保存した糞便試料から、前記高塩濃度処理溶液を除去する溶液除去機構を含むことを特徴とする、糞便試料処理装置、
を提供するものである。
(1) 糞便から哺乳細胞由来の核酸を回収する方法であって、(A)糞便を、高塩濃度処理溶液中に添加して糞便試料を調製し、当該糞便試料中で所定時間、糞便を高塩濃度処理溶液中に浸漬させる工程と、(B)工程(A)の後、前記糞便試料から固形成分を回収する工程と、(C)工程(B)において回収された固形成分から、核酸を回収する工程と、を有することを特徴とする哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(2) 前記高塩濃度処理溶液が、塩化ナトリウム及び硫酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上の塩を含む溶液であることを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(3) 前記高塩濃度処理溶液が、塩化ナトリウムを、13%(wt/wt)以上からその飽和濃度以下の濃度で含むことを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(4) 前記高塩濃度処理溶液が、塩化ナトリウムを、20%(wt/wt)以上からその飽和濃度以下の濃度で含むことを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(5) 前記高塩濃度処理溶液が、硫酸アンモニウムを、30%(wt/wt)以上からその飽和濃度以下の濃度で含むことを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(6) 前記高塩濃度処理溶液の塩濃度が、飽和濃度の4/5倍の塩濃度以上飽和濃度以下の範囲であることを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(7) 前記高塩濃度処理溶液中の塩濃度が、飽和濃度であることを特徴とする前記(1)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(8) 前記高塩濃度処理溶液が、2種類以上の塩を含むことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(9) 前記高塩濃度処理溶液が、2価カチオンのキレート剤を含むことを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(10) 前記高塩濃度処理溶液のpHが、4〜8であることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(11) 前記高塩濃度処理溶液が緩衝作用を有することを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(12) 前記工程(C)において、前記工程(B)において回収された固形成分を洗浄し、当該固形成分の塩濃度を低下させた後に、当該固形成分から核酸を回収することを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(13) 洗浄後の前記固形成分の塩濃度が100mM未満であることを特徴とする前記(12)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(14) 洗浄後の前記固形成分の塩濃度が30mM未満であることを特徴とする前記(12)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
(15) 固形成分の洗浄を、前記工程(B)において回収された固形成分を、洗浄用溶液に分散させた後、遠心分離処理を行って上清画分を除去し、固形成分を回収することにより行い、前記洗浄用溶液が、低イオン濃度の緩衝液、水溶性有機溶媒、水、及びこれらの混合液からなる群より選択される溶液であることを特徴とする前記(12)〜(14)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(16) 前記工程(A)において、少なくとも1回、前記糞便試料を攪拌することを特徴とする前記(1)〜(15)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(17) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中へ糞便を浸漬させる時間が12時間以上であることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(18) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中へ糞便を浸漬させる時間が24時間以上であることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(19) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中へ糞便を浸漬させる時間が72時間以上であることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(20) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中への糞便の浸漬が、4℃以上で行われることを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(21) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中への糞便の浸漬が、10℃以上で行われることを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(22) 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中への糞便の浸漬が、16℃以上で行われることを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(23) 前記工程(A)において、前記糞便と前記高塩濃度処理溶液の混合比率が、糞便容量1に対して高塩濃度処理溶液容量が1以上であることを特徴とする前記(1)〜(22)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(24) 前記高塩濃度処理溶液が界面活性剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(23)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(25) 前記高塩濃度処理溶液が着色剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(24)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(26) 固形成分から、哺乳細胞由来の核酸と腸内常在菌由来の核酸とを同時に回収することを特徴とする前記(1)〜(25)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(27) 前記工程(C)における固形成分からの核酸回収操作が、下記工程(a)及び(b)を有することを特徴とする前記(1)〜(25)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法;(a)固形成分中のタンパク質を変性させ、当該固形成分中の腸内常在菌及び哺乳細胞から、核酸を溶出させる工程、(b)前記工程(a)において溶出させた核酸を回収する工程、
(28) 前記工程(a)の後、前記工程(b)の前に、(c)前記工程(a)により変性させたタンパク質を除去する工程と、を有することを特徴とする前記(27)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(29) 前記工程(a)におけるタンパク質の変性が、カオトロピック塩、有機溶媒、及び界面活性剤からなる群より選ばれる1以上を用いて行われることを特徴とする前記(27)又は(28)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(30) 前記カオトロピック塩がグアニジン塩であることを特徴とする前記(29)記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(31) 前記工程(c)における変性させたタンパク質の除去が、クロロホルムを用いて行われることを特徴とする前記(28)〜(30)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(32) 前記工程(b)における核酸の回収が、(b1)前記工程(a)において溶出させた核酸を無機支持体に吸着させる工程と、(b2)前記工程(b1)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる工程と、を有することを特徴とする前記(27)〜(31)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法、
(33) 前記(1)〜(32)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法を用いて糞便から回収された核酸、
(34) 前記(1)〜(32)のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法を用いて糞便から回収された核酸を用いて、哺乳細胞由来の核酸を解析することを特徴とする核酸解析方法、
(35) 前記哺乳細胞が消化管細胞であることを特徴とする前記(34)記載の核酸解析方法、
(36) 前記哺乳細胞が大腸剥離細胞であることを特徴とする前記(34)記載の核酸解析方法、
(37) 前記哺乳細胞由来の核酸が、新生物性転化を示すマーカーであることを特徴とする前記(34)〜(36)のいずれか記載の核酸解析方法、
(38) 前記哺乳細胞由来の核酸が、炎症性消化器疾患を示すマーカーであることを特徴とする前記(34)〜(36)のいずれか記載の核酸解析方法、
(39) 前記哺乳細胞由来の核酸が、COX2(cyclooxygenase−2)遺伝子由来核酸であることを特徴とする前記(34)〜(36)のいずれか記載の核酸解析方法、
(40) 前記解析が、mRNAの発現解析、K−ras遺伝子の変異解析、及びDNAのメチル化の解析からなる群より選択される1以上であることを特徴とする、前記(34)〜(39)のいずれか記載の核酸解析方法、
(41) 前記mRNAの発現解析が、糞便から回収したtotal RNAを逆転写反応によりcDNA化した後、得られたcDNAを鋳型として核酸増幅反応を行い、増幅反応産物を解析することを特徴とする前記(40)記載の核酸解析方法、
(42) 高塩濃度処理溶液と、当該高塩濃度処理溶液を含有する採便容器とを有することを特徴とする採便用キット、
(43) さらに、洗浄用溶液を有することを特徴とする前記(42)記載の採便用キット、
(44) 採取された糞便を、高塩濃度処理溶液に浸漬させて所定時間保存した糞便試料から、前記高塩濃度処理溶液を除去する溶液除去機構を含むことを特徴とする、糞便試料処理装置、
を提供するものである。
本発明の哺乳細胞由来核酸の回収方法により、哺乳細胞とバクテリアのような細菌が混在している糞便から、哺乳細胞由来の核酸を、腸内常在菌由来の核酸よりも選択的に回収することができる。特に、糞便試料の冷蔵、冷凍といった操作や、哺乳細胞等の検出の対象である生物又はその細胞等を分離するという煩雑な操作を必要としないため、多数の検体を処理する場合であっても、労力とコストを効果的に削減することができる。すなわち、本発明の哺乳細胞由来核酸の回収方法を用いることにより、腸内常在菌由来の核酸の混入が少ない哺乳細胞由来の核酸を簡便に回収できることから、本発明の哺乳細胞由来核酸の回収方法により回収された核酸を用いることにより、糞便中の哺乳細胞由来核酸を高感度かつ高精度に解析することができる。このため、本発明は、大腸がんをはじめ、様々な症状や疾患の早期発見や診断、治療経過の観察、及び他の異常な容態の病理学的研究等に資することが期待できる。
<哺乳細胞由来核酸の回収方法>
本発明の哺乳細胞由来核酸の回収方法(以下、「本発明の回収方法」ということがある。)は、採取された糞便を、高塩濃度処理溶液に混合させた後、所定時間浸漬させることを特徴とする。糞便は、当該糞便を***する哺乳動物の細胞よりも、腸内常在菌等のバクテリアを多く含むが、高塩濃度処理溶液に混合させた状態で所定時間浸漬させた糞便から核酸を回収することにより、バクテリア由来の核酸よりも、哺乳細胞由来の核酸を選択的に回収することができる。すなわち、本発明の回収方法により、バクテリア由来の核酸の含有量が低減された高純度の哺乳細胞由来の核酸を簡便に回収することができる。
本発明の哺乳細胞由来核酸の回収方法(以下、「本発明の回収方法」ということがある。)は、採取された糞便を、高塩濃度処理溶液に混合させた後、所定時間浸漬させることを特徴とする。糞便は、当該糞便を***する哺乳動物の細胞よりも、腸内常在菌等のバクテリアを多く含むが、高塩濃度処理溶液に混合させた状態で所定時間浸漬させた糞便から核酸を回収することにより、バクテリア由来の核酸よりも、哺乳細胞由来の核酸を選択的に回収することができる。すなわち、本発明の回収方法により、バクテリア由来の核酸の含有量が低減された高純度の哺乳細胞由来の核酸を簡便に回収することができる。
本発明において、高塩濃度処理溶液に糞便を浸漬させることにより、哺乳細胞由来核酸を選択的に回収し得る効果(以下、「選択的回収効果」ということがある。)が得られる理由は明らかではないが、高塩濃度条件下では、バクテリア由来の核酸の分解反応は阻害されないが、哺乳細胞由来の核酸の分解反応が抑制されるためではないかと推察される。すなわち、糞便を高塩濃度条件下で所定期間保存することにより、哺乳細胞由来の核酸よりもバクテリア等の細菌由来の核酸のほうが迅速に分解される結果、高塩濃度処理溶液に浸漬させた後の糞便中から、哺乳細胞由来の核酸を選択的に回収できる。
本発明の回収方法は、具体的には、まず、工程(A)として、糞便を、高塩濃度処理溶液中に添加して糞便試料を調製し、当該糞便試料中で所定時間、糞便を高塩濃度処理溶液中に浸漬させる。
本発明の回収方法において用いられる高塩濃度処理溶液は、水又は水溶性有機溶媒に、有効成分として塩を含有させた溶液である。ここで、「有効成分として」とは、本発明の選択的回収効果が奏されるのに十分な濃度の塩が含有されることを意味する。糞便を浸漬させる溶液中に十分な濃度の塩が含まれていない場合には、本発明の選択的回収効果を得ることができない。
高塩濃度処理溶液に有効成分として含まれる塩としては、生体試料を調製又は解析する際に通常用いられている塩の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、塩酸塩であってもよく、硫酸塩であってもよく、酢酸塩であってもよい。また、有効成分としては、1種類の塩を用いてもよく、2種類以上の塩を組み合わせて用いてもよい。本発明において用いられる高塩濃度処理溶液としては、有効成分として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、重硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、硫酸セシウム、硫酸カドミウム、硫酸セシウム鉄(II)、硫酸クロム(III)、硫酸コバルト(II)、硫酸銅(II)、塩化リチウム、酢酸リチウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、及び硫酸亜鉛からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。中でも、入手容易性、取り扱い性、安全性等の点から、塩化ナトリウム及び/又は硫酸アンモニウムを含む溶液であることが好ましい。特に塩化ナトリウムは、最も安全性が高く、家庭内でも容易に扱うことが可能であるため、定期健診等のスクリーニング検査において特に有用である。
高塩濃度処理溶液中の有効成分として含まれる塩の濃度(以下、単に「塩濃度」ということがある。)は、本発明の選択的回収効果が奏される濃度であれば特に限定されるものではなく、用いる塩や溶媒の種類等を考慮して、適宜決定することができる。なお、各塩において、塩濃度の上限値は飽和濃度である。一方、下限値は、用いる塩の種類により異なるものの、当業者であれば予め実験的に求めることが可能である。
例えば、下限値は以下のようにして求めることができる。まず、飽和濃度以下の複数の濃度の塩溶液を調製し、これらの塩溶液に所定期間浸漬させた糞便から核酸を回収する。この回収された核酸から哺乳細胞由来核酸を検出し、検出効率が、塩溶液未処理の糞便から回収された核酸よりも良好である最低濃度値を、有効成分として含まれる塩の塩濃度の下限値とすることができる。検出効率は、特定の哺乳細胞の遺伝子を核酸増幅反応により増幅し、得られた増幅産物量から判断してもよく、回収した核酸中における28S rRNAや18S rRNA等の代表的な哺乳細胞由来核酸の量から判断してもよい。また、糞便に替えて模擬糞便試料として、哺乳細胞培養株の培養液とバクテリアの培養液との混合溶液を用いることもできる。
本発明においては、より高い選択的回収効果を得るために、高塩濃度処理溶液の塩濃度は、塩の種類に関わらず、当該高塩濃度処理溶液の有効成分とする塩の飽和濃度の1/2倍以上の濃度であることが好ましく、飽和濃度の4/5倍以上の濃度であることがより好ましく、飽和濃度に近いことがさらに好ましく、実質的に飽和濃度であることが特に好ましい。塩濃度が充分に高濃度であることにより、糞便を高塩濃度処理溶液に混合した場合、糞便に成分が迅速に浸透し、哺乳細胞由来の核酸とバクテリア由来の核酸を速やかに処理することができる。加えて、塩濃度が高い程、水分含量の多い糞便に対して少量の高塩濃度処理溶液を用いた場合であっても、充分な効果を奏することができる。なお、「飽和濃度の1/2倍以上の濃度の溶液」や「飽和濃度の4/5倍以上の濃度の溶液」は、例えば、常法により調製した飽和溶液を溶媒で適宜希釈することにより調製することができる。
例えば、有効成分として塩化ナトリウムを用いる場合には、塩濃度は13%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、26%以上であることがさらに好ましく、26%から飽和濃度までの濃度であることが特に好ましい。硫酸アンモニウムを用いる場合には、塩濃度は20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、30〜46%であることがさらに好ましい。
なお、本発明及び本願明細書中においては、特に記載がない限り、「%」は「重量%」すなわち「%(wt/wt)」を意味する。
なお、本発明及び本願明細書中においては、特に記載がない限り、「%」は「重量%」すなわち「%(wt/wt)」を意味する。
また、本発明において用いられる高塩濃度処理溶液は、水又は水溶性有機溶媒に塩を溶解させた溶液である。糞便等の生体試料は、通常多量の水分を含有しているが、水又は水溶性有機溶媒を溶媒とすることにより、本発明の高塩濃度処理溶液は糞便と速やかに混合することができ、より高い選択的回収効果を得ることができる。
なお、水溶性有機溶媒としては、水に対する溶解度が高い水溶性有機溶媒や水と任意の割合で混合可能である水溶性有機溶媒等が挙げられる。このような水溶性有機溶媒としては、水に対する溶解度が12重量%以上の水溶性有機溶媒であることが好ましく、水に対する溶解度が20重量%以上の水溶性有機溶媒であることがより好ましく、水に対する溶解度が90重量%以上の水溶性有機溶媒であることがさらに好ましく、水と任意の割合で混合可能である水溶性有機溶媒であることが特に好ましい。水と任意の割合で混合可能である水溶性有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、アセトン等がある。
本発明において高塩濃度処理溶液の溶媒としては、入手容易性、取り扱い性、安全性等の点から、水又は水溶性アルコールであることがより好ましく、水、エタノール、プロパノール、又はメタノールであることがより好ましく、水であることがさらに好ましい。なお、これらの溶媒の混合溶媒であってもよい。例えば、2種類以上の高塩濃度水溶液の混合溶液であってもよく、高塩濃度水溶液と他種類の水溶性有機溶媒との混合溶液であってもよい。
高塩濃度処理溶液のpHは、高塩濃度条件下で、バクテリア由来の核酸の分解は阻害せず、糞便中の哺乳細胞由来核酸の分解を低減し得るpHであれば特に限定されるものではないが、pH4〜8であることが好ましい。
また、高塩濃度処理溶液は、多少の酸や塩基が添加された場合、特に糞便が添加された場合であっても、pHの変動が少なく、前述のpH範囲内に維持されるような緩衝作用を有するものであることが好ましい。緩衝作用を有する高塩濃度処理溶液としては、適当な緩衝液に、有効成分である塩を添加したものであってもよいが、本発明においては、特に、有機酸と当該有機酸の共役塩基とを含有する高塩濃度処理溶液であって、当該有機酸とその共役塩基とにより緩衝作用を奏するものであることが好ましい。例えば、高塩濃度処理溶液に、有機酸と当該有機酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を添加することにより、所望のpHに調整してもよく、有機酸を添加した後に、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物を用いてpHを調整してもよい。
高塩濃度処理溶液は、本発明の選択的回収効果を損なわない限り、塩以外にも、任意の成分を含んでいてもよい。例えば、2価のキレート剤を含んでいてもよく、カオトロピック塩を含有していてもよく、界面活性剤を含有していても良い。カオトロピック塩や界面活性剤を含有することにより、糞便中の細胞活性や各種分解酵素の酵素活性をより効果的に阻害することができる。
高塩濃度処理溶液に含有させ得る2価のキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、O,O’−ビス(2−アミノフェニルエチレングリコール)エチレンジアミン四酢酸(BAPTA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、トランスー1,2−ジアミノシクロヘキサンーエチレンジアミン四酢酸(CyDTA)、1,3−ジアミノー2−ヒドロキシブロパンーエチレンジアミン四酢酸(DPTA−OH)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン二プロバン酸塩酸塩(EDDP)、エチレンジアミン二メチレンホスホン酸1水和物(EDDPO)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(EDTA−OH)、エチレンジアミン四メチレンホスホン酸(EDTPO)、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール四酢酸(EGTA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン二酢酸(HBED)、1,6−ヘキサメチレンジアミン四酢酸(HDTA)、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HIDA)、イミノ二酢酸(IDA)、1,2−ジアミノプロパン四酢酸(Methyl−EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ニトリロ三プロパン酸(NTP)、ニトリロ三メチレンホスホン酸三ナトリウム塩(NTPO)、エチレンジアミン四(2−ピリジルメチル)(TPEN)、及びトリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)等が挙げられる。中でも、EDTAであることが好ましい。キレート剤の濃度は、本発明の選択的回収効果が得られる濃度であれば、特に限定されるものではなく、糞便量やその後の工程及び解析方法等を考慮して、適宜決定することができる。
高塩濃度処理溶液に含有させ得るカオトロピック塩として、例えば、塩酸グアニジン、グアニジンイソチオシアネート、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、及びトリクロロ酢酸ナトリウム等がある。高塩濃度処理溶液に含有させ得る界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。該非イオン性界面活性剤として、例えば、Tween80、CHAPS(3−[3−コラミドプロピルジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、Triton X−100、Tween20等がある。カオトロピック塩や界面活性剤の濃度は、本発明の選択的回収効果が得られる濃度であれば、特に限定されるものではなく、糞便量やその後の工程及び解析方法等を考慮して、適宜決定することができる。
その他、高塩濃度処理溶液には、適宜着色剤を添加してもよい。高塩濃度処理溶液を着色することにより、誤飲防止、糞便の色が緩和される等の効果が得られる。該着色剤として、食品添加物として使用される着色料であることが好ましく、青色や緑色等が好ましい。例えば、ファストグリーンFCF(緑色3号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴカルミン(青色2号)等が挙げられる。また、複数の着色剤を混合して添加してもよく、単独で添加しても良い。
採取された糞便に添加される高塩濃度処理溶液の容量は、特に限定されるものではないが、糞便と高塩濃度処理溶液の混合比率は、糞便容量1に対して高塩濃度処理溶液容量が1以上であることが好ましい。高塩濃度処理溶液入り採便容器に糞便を入れる場合に、糞便と等量以上の高塩濃度処理溶液であれば、糞便の全周囲を高塩濃度処理溶液に浸漬させることができ、本発明の効果を効率よく得られるためである。例えば、糞便と高塩濃度処理溶液が等量である場合には、高塩濃度処理溶液入り採便容器の軽量化・小型化が可能となる。一方で、糞便に対して、5倍以上の容量の高塩濃度処理溶液を添加することにより、高塩濃度処理溶液中への糞便の分散を迅速かつ効果的に行うことができ、さらに、糞便に含有されている水分による塩濃度の低下の影響を抑えることもできる。高塩濃度処理溶液入り採便容器の軽量化と糞便の分散性の向上の両方の効果をバランス良く備えることが可能となるため、糞便と高塩濃度処理溶液の混合比率が、1:1〜1:20であることがより好ましく、1:3〜1:10であることがさらに好ましく1:5程度であることがより好ましい。
なお、本発明の回収方法に供される糞便は、動物のものであれば特に限定されるものではないが、哺乳動物由来のものであることが好ましく、ヒト由来のものであることがより好ましい。例えば、定期健診や診断等のために採取されたヒトの糞便であることが好ましいが、家畜や野生動物等の糞便であってもよい。また、採取後一定期間保存されたものであってもよいが、採取直後のものであることが好ましい。さらに、採取された糞便は、***直後のものであることが好ましいが、***後時間を経たものであってもよい。
本発明の回収方法に供される糞便の量は、特に限定されるものではないが、10mg〜1gであることが好ましい。糞便量があまりに多くなってしまうと、採取作業に手間がかかり、採便容器も大きくなってしまうため、取り扱い性等が低下するおそれがある。逆に糞便量があまりに少量である場合には、糞便中に含まれる大腸剥離細胞等の哺乳細胞数が少なくなりすぎるため、必要な核酸量を回収できず、目的の核酸解析の精度が低下するおそれがある。また、糞便はヘテロジニアスである、つまり、多種多様な成分が不均一に存在しているため、哺乳細胞の局在の影響を避けるために、採糞時には、糞便の広範囲から採取することが好ましい。
工程(A)における糞便試料の調製は、糞便を高塩濃度処理溶液中に浸漬させるように、糞便に高塩濃度処理溶液を添加すればよく、特段の攪拌操作を行わないものであってもよい。本発明で用いられる高塩濃度処理溶液は、水分含有量の多い糞便等の生体試料に対しても非常に馴染みやすいため、添加される糞便の量や状態によっては、単に高塩濃度処理溶液に浸漬させて特段の攪拌操作を行わない場合であっても、生体試料中に十分に浸透し、十分な選択的回収効果が奏されるためである。
糞便に高塩濃度処理溶液を添加した後、攪拌・混合操作を行うことも好ましい。攪拌することにより、糞便を十分に高塩濃度処理溶液に分散させ、懸濁させることができる。高塩濃度処理溶液を添加した糞便を攪拌する場合には、該攪拌は、工程(A)のいずれの時点で行ってもよい。すなわち、糞便に高塩濃度処理溶液を添加した直後に行ってもよく、所定期間浸漬させた後に攪拌してもよく、浸漬中に適宜行ってもよい。本発明においては、糞便に高塩濃度処理溶液を添加した後、速やかに行われることが好ましい。糞便を速やかに高塩濃度処理溶液中に分散させることにより、迅速に、糞便中の細胞に有効成分である塩を浸透させることができ、より優れた選択的回収効果が得られるためである。本発明においては、糞便に高塩濃度処理溶液を添加して糞便試料を調製した後、工程(B)において、この糞便試料から固形成分を回収するまでに、少なくとも1回、糞便試料を攪拌することが好ましい。
なお、糞便と高塩濃度処理溶液を攪拌・混合する方法は、物理的手法により混合する方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、予め高塩濃度処理溶液を入れておいた密閉可能な容器に、採取された糞便を投入して密閉した後、該容器を上下に転倒させることにより、混合してもよく、該容器をボルテックス等の振とう機にかけることにより混合してもよい。また、糞便と高塩濃度処理溶液を、混合用粒子の存在下で混合してもよい。速やかに混合させることができるため、振とう機を用いる方法や、混合用粒子を用いる方法であることが好ましい。特に、予め混合用粒子を含有させた採便用容器を用いることにより、家庭等の特殊な装置のない環境においても迅速に混合することができる。
混合用粒子としては、高塩濃度処理溶液による選択的回収効果を損なわない組成物であって、糞便にぶつかることにより、糞便を迅速かつ十分に高塩濃度処理溶液中に分散させ得る硬度や比重を有する粒子であれば、特に限定されるものではなく、1種類の材質からなる粒子であってもよく、2種類以上の材質からなる粒子であってもよい。このような混合用粒子として、例えば、ガラス、セラミックス、プラスチック、ラテックス、金属等からなる粒子がある。その他、混合用粒子は、磁性粒子であってもよく、非磁性粒子であってもよい。
糞便を高塩濃度処理溶液に添加し、糞便が高塩濃度処理溶液に浸漬させた状態にすることにより、本発明の選択的回収効果は奏される。このため、糞便を高塩濃度処理溶液に添加した直後に、糞便と高塩濃度処理溶液を混合させることは必ずしも必要ではなく、保存時に輸送される場合に、この輸送中の振動により混合されてもよい。
このように、高塩濃度処理溶液に糞便を添加して得られた糞便試料を所定時間保存し、糞便を高塩濃度処理溶液中に浸漬させる。糞便を高塩濃度処理溶液中に浸漬させる時間は、本発明の選択的回収効果を奏し得る長さであれば、特に限定されるものではなく、高塩濃度処理溶液の有効成分である塩の種類や濃度、糞便と高塩濃度処理溶液との混合比、保存温度等を考慮して適宜決定することができる。本発明の回収方法においては、糞便を1時間以上浸漬させることが好ましく、12時間以上浸漬させることがより好ましく、24時間以上浸漬させることがさらに好ましく、72時間以上浸漬させることが特に好ましい。また、168時間以上浸漬させてもよい。例えば、糞便を少なくとも1時間以上浸漬させることにより、採取された糞便の状態如何に関わらず、糞便全体に高塩濃度処理溶液が十分に浸透し、哺乳細胞由来核酸の分解は抑制される一方で、十分量のバクテリア由来の核酸が分解される結果、哺乳細胞由来核酸の高い選択的回収効果を得ることができる。
高塩濃度処理溶液による本発明の選択的回収効果は、糞便を浸漬させる温度が低温の場合よりもむしろ温度が高いほうが高い効果が得られる。具体的には、本発明においては、工程(A)において糞便を浸漬させる温度は、4℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、16℃以上であることがさらに好ましい。但し、保存温度は、50℃以下で行うことが好ましい。
本発明の回収方法においては、糞便を浸漬させる温度が4℃以上であれば、本発明の選択的回収効果を奏し得る。すなわち、工程(A)における浸漬処理は、恒温装置等を用いて温度制御された環境下で行ってもよいが、温度制御された特別な環境を必要とせず、室温で行ってもよい。また、通常糞便の採取や糞便試料の輸送等が行われる温度で行うこともできる。したがって、例えば、工程(A)においては、糞便に高塩濃度処理溶液を添加して調製された糞便試料を、温度非制御下で輸送する場合であっても、この輸送期間を、浸漬処理期間(糞便を高塩濃度処理溶液に浸漬させる時間)とすることができる。より具体的には、定期健診等の場合のように、採便者が糞便試料を調製する場所と核酸抽出操作を行う場所とが離れており、調製された糞便試料が核酸抽出操作を行う場所に輸送される場合に、輸送時の温度が4〜50℃であれば、温度制御の有無にかかわらず、この輸送時間を、工程(A)における浸漬処理期間とすることができる。
また、上述したように、糞便中の核酸は非常に分解されやすい。このため、通常は、糞便試料は調製された後、速やかに核酸回収・解析工程に供される。また、糞便試料調製時と核酸回収・解析時との時間間隔が長い場合には、核酸分解の進行を抑制するために、糞便試料は冷凍・冷蔵等の低温環境下で保存される。これに対して、本発明の回収方法においては、糞便試料を調製後、室温等の比較的温度の高い環境下で長時間保存した場合であっても、該糞便試料から、バクテリア由来の核酸の混入量が少ない高品質の哺乳細胞由来の核酸を非常に効率よく回収することができる。
その後、工程(B)として、糞便試料から固形成分を回収し、工程(C)として、この回収された固形成分から、核酸を回収する。
工程(B)における糞便試料から固形成分を回収する方法は、糞便試料中の哺乳細胞由来の核酸を損なうことなく、糞便試料の液体成分である高塩濃度処理溶液を、固形成分から分離し得る方法であれば、特に限定されるものではなく、液体成分と固体成分を分離する場合に通常用いられる分離方法の中から適宜選択して行うことができる。例えば、遠心分離処理後、上清を除去することにより、沈殿である糞便由来固形分を回収する遠心分離法により行ってもよく、糞便試料をフィルター濾過し、フィルター面上に残った糞便由来固形分を回収する濾過法により行ってもよい。
なお、工程(B)において回収された固形成分は、高塩濃度処理溶液から持ち込まれた塩が多く残留している。このため、この固形成分から直接核酸を回収した場合には、最終的に回収された核酸の塩濃度も高くなり易い。一方で、核酸解析において汎用されている逆転写反応や核酸増幅反応においては、反応溶液中の塩濃度が高い場合には、ポリメラーゼ等の酵素の活性が抑制されてしまうおそれがある。例えば、核酸増幅反応(PCR)においては、反応溶液中にマグネシウムイオンを30.0mM以上含む場合や、ナトリウムイオンを100mM以上含む場合には、ポリメラーゼの伸長反応が阻害される場合があることが報告されている(例えば、APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY、第64巻第10号、第3748〜3753ページ参照。)。このため、工程(B)において回収された固形成分は、核酸回収に供される前に、適当な洗浄液で洗浄することにより、塩含有量を低減させておくことが好ましい。
固形成分の洗浄は、具体的には、工程(B)において回収された固形成分を、洗浄用溶液に分散させた後、得られた分散液から固形成分を回収することにより行うことができる。分散液からの固形成分の回収は、工程(B)と同様にして行うことができる。本発明においては、得られた分散液に対して遠心分離処理を行い、上清画分を除去し、固形成分を回収することが好ましい。このように、核酸回収工程の前に洗浄工程をはさむことにより、固形成分から塩を効率よく除去することができるため、当該固形成分から回収された核酸を用いて、逆転写反応や核酸増幅反応を効率よく行うことができる。
ここで、洗浄用溶液としては、固形成分の塩含有量を十分に低減可能な溶液であれば特に限定されず、例えば、低イオン濃度の緩衝液、水溶性有機溶媒、水、又はこれらの混合液等が挙げられる。低イオン濃度の緩衝液の種類としては、例えば、リン酸バッファーやトリスバッファー等の当該技術分野において汎用されている緩衝液が挙げられる。これらの緩衝液のイオン濃度としては、例えば、1M未満であることが好ましく、0.3M未満であることがより好ましく、0.1M未満であることがさらに好ましい。例えば、マグネシウムイオン等の場合には、0.03M未満であることが特に好ましい。また、水溶性有機溶媒としては、高塩濃度処理溶液の溶媒として使用可能なものとして挙げられたものと同様のものを用いることができる。本発明においては、特に、低イオン濃度の酸性有機溶媒溶液を洗浄用溶液として用いることが好ましい。固形成分を酸性条件下で洗浄することにより、洗浄処理時における固形成分中の核酸の加水分解をより効果的に抑制することができるためである。
固形成分の洗浄は、固形成分の塩濃度が100mM未満となるように洗浄することが好ましい。核酸を抽出する前の固形成分の塩濃度が100mM未満にまで低下されていれば、当該固形成分から抽出・回収された核酸に持ち込まれる塩の量を十分に低減することができ、特段の脱塩処理を施すことなく直接用いた場合でも、逆転写反応や核酸増幅反応を問題なく行うことができるためである。
工程(C)における核酸を回収する方法は、特に限定されるものではなく、試料から核酸を回収する場合に通常用いられる方法であれば、いずれの方法によっても行うことができる。糞便由来の固形成分から回収する核酸は、DNAであってもよく、RNAであってもよく、DNAとRNAの両方であってもよい。本発明においては、特にRNAを回収することが好ましい。
工程(C)は、例えば、工程(a)として、工程(B)において回収された固形成分又は当該固形成分を洗浄して再度回収された固形成分(以下、「糞便由来固形分」ということがある。)中のタンパク質を変性させ、この糞便由来固形分中の哺乳細胞等及び腸内常在菌から、核酸を溶出させた後、工程(b)として、溶出させた核酸を回収することにより、糞便由来固形分から核酸を回収することができる。
工程(a)における糞便由来固形分中のタンパク質の変性は、公知の手法で行うことができる。例えば、糞便由来固形分にカオトロピック塩、有機溶媒、界面活性剤等の、通常タンパク質の変性剤として用いられている化合物を添加することにより、糞便由来固形分中のタンパク質を変性させることができる。工程(a)において糞便由来固形分に添加し得るカオトロピック塩や界面活性剤は、高塩濃度処理溶液に添加し得るカオトロピック塩及び界面活性剤として挙げたものと同様のものを用いることができる。有機溶媒としては、フェノールであることが好ましい。フェノールは中性であってもよく、酸性であってもよい。酸性のフェノールを用いた場合には、DNAよりもRNAを選択的に水層に抽出することができる。なお、工程(a)において、糞便由来固形分にカオトロピック塩、有機溶媒、界面活性剤等を添加する場合には、1種類の化合物を添加してもよく、2種類以上の化合物を添加してもよい。
糞便由来固形分に、カオトロピック塩等のタンパク質変性剤を直接添加してもよいが、一度適当な溶出用薬剤に懸濁させた後にタンパク質変性剤を添加することが好ましい。DNAを回収する場合には、該溶出用薬剤として、例えば、リン酸バッファーやトリスバッファー等を用いることができる。高圧蒸気滅菌等により、DNaseを失活させた薬剤であることが好ましく、さらにプロテイナーゼK等のタンパク質分解酵素を含有させた薬剤であることがより好ましい。一方、RNAを回収する場合には、該溶出用薬剤として、例えば、クエン酸バッファー等を用いることができるが、RNAは非常に分解されやすい物質であるため、チオシアン酸グアニジンや塩酸グアニジン等のRNase阻害剤を含有したバッファーを用いることが好ましい。
工程(a)の後工程(b)の前に、工程(c)として、工程(a)により変性させたタンパク質を除去してもよい。核酸を回収する前に、予め変性させたタンパク質を除去することにより、回収される核酸の品質を向上させることができる。工程(c)におけるタンパク質の除去は、公知の手法で行うことができる。例えば、遠心分離により、変性タンパク質を沈殿させて上清のみを回収することにより、変性タンパク質を除去することができる。また、クロロホルムを添加し、ボルテックス等により充分に攪拌混合させた後に遠心分離を行い、変性タンパク質を沈殿させて上清のみを回収することにより、単に遠心分離を行う場合よりも、より完全に変性タンパク質を除去することができる。
工程(b)における溶出させた核酸の回収は、エタノール沈殿法や塩化セシウム超遠心法等の公知の手法で行うことができる。また、工程(b1)として、工程(a)において溶出させた核酸を無機支持体に吸着させた後、工程(b2)として、工程(b1)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させることにより、核酸を回収することができる。工程(b1)において核酸を吸着させる無機支持体は、核酸を吸着することができる公知の無機支持体を用いることができる。また、該無機支持体の形状も特に限定されるものではなく、粒子状であってもよく、膜状であってもよい。該無機支持体として、例えば、シリカゲル、シリカ質オキシド、ガラス、珪藻土等のシリカ含有粒子(ビーズ)や、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ニトロセルロース等の多孔質膜等がある。工程(b2)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる溶媒は、回収する核酸の種類やその後の核酸解析方法等を考慮して、これらの公知の無機支持体から核酸を溶出するために通常用いられている溶媒を適宜用いることができる。該溶出用溶媒として、特に精製水であることが好ましい。なお、工程(b1)の後、工程(b2)の前に、核酸を吸着させた無機支持体を適当な洗浄バッファーを用いて洗浄することが好ましい。
その後の解析方法によっては、糞便由来固形分から核酸を抽出・精製せず、単に糞便由来固形分に適当な溶出用薬剤を添加して混合し、糞便由来固形分から核酸を溶出することによっても、核酸を回収することができる。その他、糞便由来固形分からの核酸の回収は、核酸抽出キット等の市販のキットを用いて行うこともできる。
また、例えば、臨床検体の検査を行なう場合、検査工程数の増加は、レイバーコストの増加に直結する。これに対して、本発明の回収方法を用いた場合には、採便者が、採便後に便をそのまま高塩濃度処理溶液に浸漬する工程(A)を行うことによって、ヒト由来核酸を選択的に濃縮する工程を、検査場における検査工程前に行うことが可能である。したがって、本発明の回収方法は、臨床検査等におけるコストの削減にも資することが期待できる。
<核酸解析方法>
一般的に、糞便から哺乳細胞を分離せずに直接核酸を回収した場合には、回収された核酸の大部分が腸内常在菌等のバクテリア由来の核酸である。これに対して、本発明の回収方法では、糞便由来の固形成分から核酸を抽出・回収する前に高塩濃度処理溶液に浸漬させることにより、バクテリア由来の核酸の分解が促進される一方で、哺乳細胞由来の核酸の分解は抑制されるため、浸漬後の固形成分から、由来する生物種を区別せずに、糞便に元々含有されていた全生物種由来の核酸を回収した場合であっても、哺乳細胞由来の核酸が選択的に回収することができる。
一般的に、糞便から哺乳細胞を分離せずに直接核酸を回収した場合には、回収された核酸の大部分が腸内常在菌等のバクテリア由来の核酸である。これに対して、本発明の回収方法では、糞便由来の固形成分から核酸を抽出・回収する前に高塩濃度処理溶液に浸漬させることにより、バクテリア由来の核酸の分解が促進される一方で、哺乳細胞由来の核酸の分解は抑制されるため、浸漬後の固形成分から、由来する生物種を区別せずに、糞便に元々含有されていた全生物種由来の核酸を回収した場合であっても、哺乳細胞由来の核酸が選択的に回収することができる。
このように、本発明の回収方法により、ヒト等の哺乳細胞由来の核酸を、腸内常在菌等のバクテリア由来の核酸の混入量が少なく、高い純度で効率よく回収することができる。したがって、本発明の回収方法を用いて回収された核酸を解析することにより、糞便中に比較的少量しか含まれていない哺乳細胞由来の核酸の解析において、信頼性の高い解析結果を得ることが期待できる。例えば、本発明の回収方法により回収された核酸を用いることにより、ヒトのがん遺伝子などの疾患関連遺伝子(疾患マーカー)を高感度かつ高精度に検出することがきる。
特に、糞便から回収される核酸であることから、本発明の回収方法により回収された核酸は、大腸、小腸、胃等の消化管細胞由来の核酸の解析に供されることが好ましく、大腸剥離細胞由来の核酸の解析に供されることがより好ましい。例えば、早期発見や正確性の要請が強いがんの発症の有無を調べるための核酸解析や、大腸炎、小腸炎、胃炎、膵炎等の炎症性疾患の発症の有無を調べるための核酸解析等に好適である。その他、ポリープ等の***性病変の検査や胃潰瘍等の大腸、小腸、胃、肝臓、胆嚢、胆管の疾患の検査に供されてもよい。
特に、核酸解析により、新生物性転化を示すマーカーや炎症性消化器疾患を示すマーカーを検出することが好ましい。該新生物性転化を示すマーカーとして、例えば、がん胎児性抗原(CEA)、シアリルTn抗原(STN)等の公知のがんマーカーや、APC遺伝子、p53遺伝子、K−ras遺伝子等の変異の有無等がある。また、p16、hMLHI、MGMT、p14、APC、E−cadherin、ESR1、SFRP2等の遺伝子のメチル化の検出も、大腸疾患の診断マーカーとして有用である(例えば、Lind et al.、「A CpG island hypermethylation profile of primary colorectal carcinomas and colon cancer cell lines」、Molecular Cancer、2004年、第3巻第28章参照。)。一方、炎症性消化器疾患を示すマーカーとして、例えば、COX2(cyclooxygenase−2)遺伝子由来核酸等がある。
本発明の回収方法により回収された核酸は、公知の核酸解析方法を用いて解析することができる。このような核酸解析方法として、例えば、核酸を定量する方法や、PCR等の核酸増幅反応を用いて増幅反応産物を解析することにより特定の塩基配列領域を検出する方法等がある。その他、RNAを回収した場合には、糞便から回収したtotal RNAを、逆転写反応によりcDNA化した後、得られたcDNAを用いて、DNAと同様にして解析に用いることができる。糞便試料から回収されたDNAを用いた場合には、例えば、DNA上のメチル化や、塩基の挿入、欠失、置換、重複、又は逆位等の変異を検出することができる。また、マイクロサテライトを含む塩基配列領域等の遺伝的変異の有無を検出することにより、がんの発症の有無を調べることができる。また、回収されたRNAを用いた場合には、例えば、RNA上の塩基の挿入、欠失、置換、重複、逆位、又はスプライシングバリアント(アイソフォーム)等の変異を検出することができる。また、RNA発現量を検出することもできる。特に、mRNAの発現解析、K−ras遺伝子の変異解析、及びDNAのメチル化の解析等を行うことが好ましい。なお、これらの解析は、当該分野において公知の方法により行うことができる。また、K−ras遺伝子変異解析キット、メチル化検出キット等の市販の解析キットを用いてもよい。
なお、本発明において、腸内常在菌とは、糞便中に比較的大量に存在するバクテリア細胞であり、通常ヒト等の動物の腸内に生息する常在菌を意味する。該腸内常在菌として、例えば、Bacteroides属、Eubacterium属、Bifidobacterium属、Clostridium属等の偏性嫌気性菌や、Escherichia属、Enterobacter属、Klebsiella属、Citrobacter属、Enterococcus属等の通性嫌気性菌等がある。
<糞便試料処理装置>
本発明の回収方法における工程(B)及び必要に応じて行われる洗浄工程は、例えば、糞便試料から液体成分である高塩濃度処理溶液を除去し得る溶液除去機構を含む処理装置を用いることにより、簡便且つ迅速に行うことができる。このような溶液除去機構は、一般的に固体成分と液体成分を分離し得る固液分離機構であれば、特に限定されるものではないが、遠心分離機構であることが好ましい。また、遠心分離機構により分離された上清を吸引除去するための溶液吸引排出機構と廃液回収部とを備える装置であれば、複数の糞便試料に対して工程(B)を自動的に行うことが可能となる。溶液吸引排出機構としては、先端のノズルから上清を吸引する溶液吸引排出ノズルであることが好ましい。このような溶液吸引排出ノズルとしては、例えば、電動ピペット等が挙げられる。
本発明の回収方法における工程(B)及び必要に応じて行われる洗浄工程は、例えば、糞便試料から液体成分である高塩濃度処理溶液を除去し得る溶液除去機構を含む処理装置を用いることにより、簡便且つ迅速に行うことができる。このような溶液除去機構は、一般的に固体成分と液体成分を分離し得る固液分離機構であれば、特に限定されるものではないが、遠心分離機構であることが好ましい。また、遠心分離機構により分離された上清を吸引除去するための溶液吸引排出機構と廃液回収部とを備える装置であれば、複数の糞便試料に対して工程(B)を自動的に行うことが可能となる。溶液吸引排出機構としては、先端のノズルから上清を吸引する溶液吸引排出ノズルであることが好ましい。このような溶液吸引排出ノズルとしては、例えば、電動ピペット等が挙げられる。
溶液吸引排出機構として溶液吸引排出ノズルを備えている装置であって、さらに溶液吸引排出ノズルを洗浄する機構を備えている場合には、複数の糞便試料から上清を吸引除去する場合に、糞便試料ごとに溶液吸引排出ノズルを洗浄することができるため、糞便試料間のコンタミネーションを回避することができる。なお、溶液吸引排出ノズルの先端部が着脱可能なチップ等である場合には、例えば、汎用されているチップ装着・除去装置を備えて、糞便試料ごとにチップ等を自動的に交換させることにより、溶液吸引排出ノズル洗浄機構を備えていない場合であっても、糞便試料間のコンタミネーションを回避し得る。
図1は、本発明の回収方法における工程(B)等を自動的に行うための糞便試料処理装置の一態様を示した図である。本態様における糞便試料処理装置101は、遠心分離機構102と、遠心分離機構102により分離された上清を吸引除去するための溶液吸引排出ノズル103と、廃液回収部104と、溶液吸引排出ノズル洗浄機構105とを備える。まず、採便容器内で採取された糞便を高塩濃度処理溶液に所定時間浸漬させた、複数の糞便試料を、採便容器の蓋を開けた状態で、該糞便試料処理装置101の遠心分離機構102にそれぞれ設置し、遠心分離を行う。その後、溶液吸引排出ノズル103の先端を、一の糞便試料の上清に接触させ、上清を吸引し、採便容器から除去する。溶液吸引排出ノズル103により吸引された上清を、廃液回収部104に廃棄した後、溶液吸引排出ノズル洗浄機構105により、溶液吸引排出ノズル中の上清に接触した部位が洗浄される。洗浄後、同様にして、別の糞便試料から上清を吸引除去する。このように、図1に示すような機構を備えた糞便試料処理装置を用いて、一度の遠心分離処理により処理された複数の糞便試料から、順次上清を吸引除去することにより、工程(B)等を自動的に行うことができる。
<採便用キット>
予め高塩濃度処理溶液を含有させた採便容器に糞便を採取することにより、より簡便かつ迅速に採取された糞便を調製することができる。また、高塩濃度処理溶液と、該高塩濃度処理溶液を含有する採便容器と、を有する採便用キットを用いることにより、より簡便に本発明の回収方法を行うことができる。なお、該採便用キットには、採便棒、洗浄用溶液等の、高塩濃度処理溶液及びそれを含有する採便容器以外の構成物を適宜有していてもよい。
予め高塩濃度処理溶液を含有させた採便容器に糞便を採取することにより、より簡便かつ迅速に採取された糞便を調製することができる。また、高塩濃度処理溶液と、該高塩濃度処理溶液を含有する採便容器と、を有する採便用キットを用いることにより、より簡便に本発明の回収方法を行うことができる。なお、該採便用キットには、採便棒、洗浄用溶液等の、高塩濃度処理溶液及びそれを含有する採便容器以外の構成物を適宜有していてもよい。
このような採便容器の形態や大きさ等は特に限定されるものではなく、溶媒を含有し得る公知の採便容器を用いることができる。取り扱いが簡便であるため、採便容器の蓋と採便棒が一体化している採便容器であることが好ましい。また、採便量をコントロールすることができるため、採便棒が一定量の糞便を採取し得るものであることがより好ましい。このような公知の採便容器として、例えば、特公平6−72837号公報に開示されている採便容器等がある。
図2及び図3は、本発明の採便用キットに用いることができる採便容器の一態様をそれぞれ示した図である。なお、本発明の採便用キットに用いることができる採便容器は、これらの採便容器に限定されるものではない。
まず図2の採便容器について説明する。採便棒3と一体化した蓋2と、容器本体1を有し、内部に高塩濃度処理溶液Sを含有する採便容器である。採便棒3の先端には糞便を一定量採取し得るカップ3aがあり、かつカップ3aには篩目がある。一方、容器本体1の底部には、カップ3aと補足的な形状となる***部1aがある。カップ3aを***部1aに勘合させることにより、カップ3aに採取された糞便は、カップ3aにある篩目からところてんのように押し出されるため、高塩濃度処理溶液Sに糞便を速やかに分散させることができる。
図3記載の採便容器は、先端が尖っている採便棒13と一体化した蓋12と、内部に高塩濃度処理溶液Sを含有する容器本体11を有する採便容器である。採便棒13には、糞便Eを一定量採取し得る穴13aが空いている。また、採便棒13上をスライドすることにより穴13aの蓋となり得る可動蓋13bも付いている。図3Aのように、まず、採便棒13を、可動蓋13bを穴13aよりも蓋12側に寄せて、穴13aが完全に開口している状態とした後に、糞便Eに押し付ける。すると図3Bに示すように、穴13aに糞便Eが充填される。この状態で、可動蓋13bをスライドさせて穴13aに蓋をすることにより、穴13aの容量の糞便を正確に採取することができる(図3C)。その後、可動蓋13bを元の位置に戻して穴13aが完全に開口している状態とした後に(図3D)、蓋12を容器本体11に収納する(図3E)。このような採便容器は、家庭でも安全に取り扱うことが出来る。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、MKN45細胞及び細菌(Enterobacter aerogenes)は、常法により培養したものを用いた。
[実施例1]
擬似糞便を用いて、本発明の回収方法を行い、哺乳細胞由来の核酸を選択的に回収できることを確認した。
健常人3名より採取された糞便を細菌培養液に懸濁し、その上清から糞便溶液を作成した。この糞便溶液に、ヒト癌細胞由来MKN45細胞を混合したものを、擬似糞便とした。
この擬似糞便を5本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。このうち1本に対しては、何も添加せず(糞便試料1A)、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。この固形成分からRNAを回収した。
一方、残る3本には、分取直後に、10mLずつ、1本には飽和食塩水(飽和塩化ナトリウム水溶液)の1/4倍希釈液を添加し(糞便試料1B)、1本には飽和食塩水の3/8倍希釈液を添加し(糞便試料1C)、1本には飽和食塩水の1/2倍希釈液を添加し(糞便試料1D)、1本には飽和食塩水を添加し(糞便試料1E)、それぞれ十分に攪拌した。これら4本の糞便試料を、室温で24時間静置した後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。回収された固形成分に、洗浄用溶液として0.1M酢酸ナトリウム緩衝液を添加し、各固形成分を十分に分散させた後、再度遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。
なお、20℃の飽和食塩水の塩濃度は26.38%であり、よって、本実施例で用いた飽和食塩水は26%、1/2倍希釈液の塩濃度は13%、3/8倍希釈液の塩濃度は9.75%、1/4倍希釈液の塩濃度は6.5%である。
擬似糞便を用いて、本発明の回収方法を行い、哺乳細胞由来の核酸を選択的に回収できることを確認した。
健常人3名より採取された糞便を細菌培養液に懸濁し、その上清から糞便溶液を作成した。この糞便溶液に、ヒト癌細胞由来MKN45細胞を混合したものを、擬似糞便とした。
この擬似糞便を5本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。このうち1本に対しては、何も添加せず(糞便試料1A)、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。この固形成分からRNAを回収した。
一方、残る3本には、分取直後に、10mLずつ、1本には飽和食塩水(飽和塩化ナトリウム水溶液)の1/4倍希釈液を添加し(糞便試料1B)、1本には飽和食塩水の3/8倍希釈液を添加し(糞便試料1C)、1本には飽和食塩水の1/2倍希釈液を添加し(糞便試料1D)、1本には飽和食塩水を添加し(糞便試料1E)、それぞれ十分に攪拌した。これら4本の糞便試料を、室温で24時間静置した後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。回収された固形成分に、洗浄用溶液として0.1M酢酸ナトリウム緩衝液を添加し、各固形成分を十分に分散させた後、再度遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。
なお、20℃の飽和食塩水の塩濃度は26.38%であり、よって、本実施例で用いた飽和食塩水は26%、1/2倍希釈液の塩濃度は13%、3/8倍希釈液の塩濃度は9.75%、1/4倍希釈液の塩濃度は6.5%である。
得られた固形成分からのRNA回収は、以下のようにして行った。まず、固形成分に対して、フェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、ボモジナイザーで十分に混合した後、クロロホルムを添加し、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)からエタノール沈殿法によりRNAを回収した。具体的には、得られた上清に酢酸ナトリウムと100%エタノールを添加して攪拌した後、遠心分離処理を行い、沈殿を得た後、これを洗浄し、風乾させた。これらの沈殿を、DEPC処理をした水に溶解させ、RNA溶液を得た。
得られたRNA溶液を電気泳動して染色し、バンドを確認した。得られた染色像を図4に示す。図中、「Ladder」はマーカーを泳動したレーンを示す。さらに表1に、この染色像のうち、16S rRNA、23S rRNA、18S rRNA、及び28S rRNAのバンドの染色強度の相対値を示す。この結果、擬似糞便に添加した食塩水の塩濃度が高い程、ヒト由来の核酸である18S rRNA及び28S rRNAのバンドが強く染色されており、逆に、細菌由来の核酸である16S rRNA及び23S rRNAのバンドが薄くなっていることが確認された。特に、飽和食塩水を添加した糞便試料(1E)では、細菌由来の核酸はバンドが確認されず、ヒト由来の核酸のみが検出された。これとは逆に、飽和食塩水の1/4倍希釈液を添加した糞便試料(1B)及び飽和食塩水の3/8倍希釈液を添加した糞便試料(1C)では、ヒト由来の核酸のバンドは検出されず、細菌由来の核酸のみが検出された。この結果から、糞便を十分な塩濃度の溶液(高塩濃度処理溶液)に所定時間浸漬させることにより、細菌由来の核酸よりもヒト由来の核酸を選択的に回収し得ることが確認された。
回収されたRNAを用いて、一反応系につき1μgになるように逆転写反応を行い、cDNAを得、これを用いて、ヒトCOX2遺伝子のmRNAを、TaqMan PCRを行って増幅し、得られた増幅産物を検出した。リアルタイムPCRのプライマーは、アプライドバイオシステム社製のCOX2プライマープローブMIX(カタログNo:Hs00153133_m1)を用いた。具体的には、0.2mLの96ウェルPCRプレートに、各cDNAを1μLずつ分取した。その後、各ウェルに8μLの超純水と10μLの核酸増幅試薬「TaqMan GeneExpression Master Mix」(アプライドバイオシステム社製)を添加し、さらに、1μLのCOX2プライマープローブMIX(アプライドバイオシステム社製)をそれぞれ添加して混合し、PCR反応溶液を調製した。該PCRプレートを、ABIリアルタイムPCR装置に設置し、50℃で2分間処理した後、95℃で10分間、95℃で15秒間、60℃で1分間の熱サイクルを40サイクル行い、経時的に蛍光強度を計測しながらPCRを行った。蛍光強度の計測結果を分析して、各試料から回収されたRNA中のCOX2遺伝子の発現量(コピー数)を算出した結果を図5に示す。この結果、擬似糞便に添加した食塩水の塩濃度が高い程、COX2遺伝子の発現量も高い状態を維持していることが明らかとなった。特に飽和食塩水を添加した糞便試料(1E)から回収されたRNAでは、24時間室温で放置した後にもかかわらず、糞便試料(1A)よりも発現量が高いという結果が得られた。これは、本発明の回収方法によって、細菌由来の核酸の混入が非常に少ない純度の高いヒト由来の核酸が回収されたためであり、本発明の回収方法により回収された核酸を用いることにより、ヒト由来核酸の解析精度を向上させられることが明らかである。
[実施例2]
実施例1と同様にして調製した擬似糞便を7本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。これら7本全てに10mLの飽和食塩水を添加し、糞便試料(2A)〜(2G)を調製した。これらの糞便試料を、37℃でそれぞれ異なる時間保存し、飽和食塩水中に擬似糞便を浸漬させた。具体的には、糞便試料(2A)は1分間静置し、糞便試料(2B)は30分間静置した。糞便試料(2C)は30分ごとに攪拌を行いながら3時間保存し、糞便試料(2D)は同じく30分ごとに攪拌を行いながら6時間保存した。糞便試料(2E)は30分ごとに攪拌を行いながら6時間保存した後、さらに静置して6時間(計12時間)保存した。糞便試料(2F)は30分ごとに攪拌を行いながら6時間保存した後、さらに静置して18時間(計24時間)保存した。そして糞便試料(2G)は30分ごとに攪拌を行いながら6時間保存した後、さらに静置して66時間(計72時間)保存した。
各糞便試料は、所定の浸漬時間経過後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分を、実施例1と同様にして酢酸ナトリウム緩衝液で洗浄した後、RNAを回収した。
実施例1と同様にして調製した擬似糞便を7本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。これら7本全てに10mLの飽和食塩水を添加し、糞便試料(2A)〜(2G)を調製した。これらの糞便試料を、37℃でそれぞれ異なる時間保存し、飽和食塩水中に擬似糞便を浸漬させた。具体的には、糞便試料(2A)は1分間静置し、糞便試料(2B)は30分間静置した。糞便試料(2C)は30分ごとに攪拌を行いながら3時間保存し、糞便試料(2D)は同じく30分ごとに攪拌を行いながら6時間保存した。糞便試料(2E)は30分ごとに攪拌を行いながら6時間保存した後、さらに静置して6時間(計12時間)保存した。糞便試料(2F)は30分ごとに攪拌を行いながら6時間保存した後、さらに静置して18時間(計24時間)保存した。そして糞便試料(2G)は30分ごとに攪拌を行いながら6時間保存した後、さらに静置して66時間(計72時間)保存した。
各糞便試料は、所定の浸漬時間経過後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分を、実施例1と同様にして酢酸ナトリウム緩衝液で洗浄した後、RNAを回収した。
得られたRNAを電気泳動して染色し、18S rRNA、28S rRNA、16S rRNA、及び23S rRNAのバンド強度を測定した。なお、16S rRNAのバンドの濃さを1としたときの相対値をバンド強度とした。図6は、測定した結果を、各糞便試料の浸漬時間ごとに示した図である。この結果、飽和食塩水で浸漬後、12時間で細菌由来のrRNAのバンドは消失し、ヒト由来のrRNAのバンドのみが残っていた。また、ヒト由来のrRNAは、約6時間後に、1分後のバンド強度の半分となったが、細菌由来のrRNAは、約3時間後には1分後のバンド強度の半分となっていた。これらの結果から、飽和食塩水に浸漬させることにより、細菌由来の核酸の分解が、ヒト由来の核酸の分解よりも促進されていることが確認された。また、今回用いたのは擬似糞便であるが、この結果から、糞便を高塩濃度処理溶液に十分な時間浸漬させることにより、純度の高いヒト由来の核酸を回収し得ることが分かった。
[実施例3]
健常人1名より採取された糞便を3本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。これら3本全てに10mLの飽和食塩水を添加し、糞便試料(3A)〜(3C)を調製した。これらの糞便試料を、室温(20℃)でそれぞれ異なる時間保存し、飽和食塩水中に糞便試料を浸漬させた。具体的には、糞便試料(3A)は、分取後攪拌せずに1分間静置した。糞便試料(3B)は、分取後十分に攪拌して糞便を分散させた後、18時間静置した。糞便試料(3C)は、分取後十分に攪拌して糞便を分散させた後、36時間静置した。
各糞便試料は、所定の浸漬時間経過後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分に、洗浄用溶液としてPBS(リン酸緩衝生理食塩水、pH7)を添加し、各固形成分を十分に分散させた後、再度遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分から、実施例1と同様にしてRNAを回収した。
健常人1名より採取された糞便を3本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。これら3本全てに10mLの飽和食塩水を添加し、糞便試料(3A)〜(3C)を調製した。これらの糞便試料を、室温(20℃)でそれぞれ異なる時間保存し、飽和食塩水中に糞便試料を浸漬させた。具体的には、糞便試料(3A)は、分取後攪拌せずに1分間静置した。糞便試料(3B)は、分取後十分に攪拌して糞便を分散させた後、18時間静置した。糞便試料(3C)は、分取後十分に攪拌して糞便を分散させた後、36時間静置した。
各糞便試料は、所定の浸漬時間経過後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分に、洗浄用溶液としてPBS(リン酸緩衝生理食塩水、pH7)を添加し、各固形成分を十分に分散させた後、再度遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分から、実施例1と同様にしてRNAを回収した。
各RNA溶液のうち、一部(5μL)から、逆転写反応用のキットであるReverTra Ace qPCR RT Kitを用いて、cDNAを合成した。このcDNAを鋳型とし、12.5μLの2×TaqMan PCR master mix (Perkin−Elmer Applied Biosystems社製)を添加し、ヒトGAPDH用フォワードプライマー(配列番号1:5’−GAAGGTGAAGGTCGGAGTC−3’)と、ヒトGAPDH用リバースプライマー(配列番号2:5’−GAAGATGGTGATGGGATTTC−3’)をそれぞれ最終濃度が900nMとなるように添加し、最終容量が25μLとなるようにPCR溶液を調製した。該PCR溶液に対して、ABI Prism 7700(Perkin−Elmer Applied Biosystems社製)によるSYBR green PCR解析を行った。PCRの熱サイクルは、95℃10分間の変性サイクルの後、95℃30秒間、55℃30秒間、72℃30秒間を45サイクルの条件で行った。定量は、濃度既知のスタンダードプラスミドによる希釈系列を鋳型として得られた蛍光強度の結果に基づいて行った。糞便試料(3A)由来のRNAを鋳型に用いた場合、糞便試料(3B)由来のRNAに比べて1/10以上の増幅効率の低下が見られた。また、糞便試料(3B)由来のRNAと糞便試料(3C)由来のRNAとの差は、約10%程度で、糞便試料(3A)と糞便試料(3B)ほどの差は見られなかった。すなわち、これらの結果から、糞便に高塩濃度処理溶液を添加し浸漬させて一定時間浸漬する本発明の回収方法を用いて得られた核酸は、ヒト由来核酸の増幅効率がよいことが明らかとなった。これは、本発明の回収方法により、糞便由来のヒト由来核酸を選択的に回収することができたためである。なお、本実施例においては、高塩濃度処理溶液によりどのように選択的に保存されるのかは確認していないが、増幅効率が良好であることから、実施例1及び2と同様に、糞便中に含まれているヒト由来核酸が選択的に保存され回収されたと推察される。
[実施例4]
健常人1名より採取された糞便を8本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。これら8本全てに6mLの26%の食塩水(以下、高塩濃度食塩水)を添加して糞便を十分に分散させて糞便試料(4A)〜(4H)を調製した。これらの糞便試料を、室温(20℃)でそれぞれ異なる時間保存し、高塩濃度食塩水中に糞便試料を浸漬させた。具体的には、糞便試料(4A)及び(4E)は1時間静置し、糞便試料(4B)及び(4F)は24時間静置し、糞便試料(4C)及び(4G)は72時間静置し、糞便試料(4D)及び(4H)は168時間静置した。
各糞便試料は、所定の浸漬時間経過後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分から、実施例1と同様にしてRNAを回収した。
得られたRNAを電気泳動して染色し、16S rRNA及び23S rRNAのバンドを確認した。得られた染色像を図7に示す。図中、「Ladder」はマーカーを泳動したレーンを示す。さらに表2に、この染色像のうち、16S rRNA及び23S rRNAのバンドの染色強度の相対値を示す。この結果、浸漬時間が長くなるほど、16S rRNAと23S rRNAのいずれも分解が進むことが確認された。なお、ヒト由来のrRNAである18S rRNA及び28S rRNAのバンドは、元々の存在量が少ないため、検出できなかった。
健常人1名より採取された糞便を8本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。これら8本全てに6mLの26%の食塩水(以下、高塩濃度食塩水)を添加して糞便を十分に分散させて糞便試料(4A)〜(4H)を調製した。これらの糞便試料を、室温(20℃)でそれぞれ異なる時間保存し、高塩濃度食塩水中に糞便試料を浸漬させた。具体的には、糞便試料(4A)及び(4E)は1時間静置し、糞便試料(4B)及び(4F)は24時間静置し、糞便試料(4C)及び(4G)は72時間静置し、糞便試料(4D)及び(4H)は168時間静置した。
各糞便試料は、所定の浸漬時間経過後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分から、実施例1と同様にしてRNAを回収した。
得られたRNAを電気泳動して染色し、16S rRNA及び23S rRNAのバンドを確認した。得られた染色像を図7に示す。図中、「Ladder」はマーカーを泳動したレーンを示す。さらに表2に、この染色像のうち、16S rRNA及び23S rRNAのバンドの染色強度の相対値を示す。この結果、浸漬時間が長くなるほど、16S rRNAと23S rRNAのいずれも分解が進むことが確認された。なお、ヒト由来のrRNAである18S rRNA及び28S rRNAのバンドは、元々の存在量が少ないため、検出できなかった。
回収されたRNAを用いて、一反応系につき1μgになるように逆転写反応を行い、cDNAを得、これを用いて、細菌の16SrRNA遺伝子用フォワードプライマー(配列番号3:5’−AGGAGGTGATCCAACCGCA−3’)と、細菌の16S rRNA遺伝子用リバースプライマー(配列番号4:5’−AACTGGAGGAAGGTGGGGAT−3’)とを用いてリアルタイムPCRを行い、大腸菌の16S rRNA遺伝子の発現量を検出した。各試料から回収されたRNA中の16S rRNA遺伝子の発現量(コピー数)を算出した結果を図8に示す。図中、糞便試料名に括弧書で記載されている時間は、各糞便試料を高塩濃度食塩水に浸漬させた時間を示す。この結果、浸漬時間が長くなるほど、16S rRNA遺伝子の発現量も減少することが確認された。
[実施例5]
図3に示すような採便容器を用いて、糞便試料を調製し、核酸を回収した。
まず、採便棒3を用いてカップ3aに約0.5gの糞便を採取し、該採便容器に入れて蓋をした。このようにして調製された糞便試料を糞便試料(5A)とした。一方、糞便試料(5A)と同様に糞便と高塩濃度処理溶液の容量比が1:10となるように、5mLの飽和食塩水を含有する15mLのポリプロピレンチューブに約0.5gの糞便を採取したものを、対照試料(5B)とした。糞便試料(5A)と対照試料(5B)を30℃で18時間保管し、RNAを回収した。また、回収したRNAを実施例3と同様にして、cDNAを作成し、ヒトGAPDH遺伝子の定量PCRを行った。サンプル(5A)由来RNAを鋳型に用いた場合とサンプル(5B)由来RNAとを比較したところ、サンプル(5B)由来RNAは、約10%の増幅効率の低下が見られた。図3に示すような採便容器を用いることにより、速やかに高塩濃度処理溶液中に糞便を浸漬させることができたため、より高純度にヒト由来核酸を回収することができたと推察される。また、このような採便容器を用いることにより、採便者が採便後、簡便かつ直ちに糞便試料の調製と浸漬を行うことができるため、検査工程オペレーターのレイバーコストの一部を削減できる。
なお、本実施例の採便容器は一様態であり、速やかに便を採取し、一定量を高塩濃度処理溶液に浸漬できれば、この形状に限らなくても良い。
図3に示すような採便容器を用いて、糞便試料を調製し、核酸を回収した。
まず、採便棒3を用いてカップ3aに約0.5gの糞便を採取し、該採便容器に入れて蓋をした。このようにして調製された糞便試料を糞便試料(5A)とした。一方、糞便試料(5A)と同様に糞便と高塩濃度処理溶液の容量比が1:10となるように、5mLの飽和食塩水を含有する15mLのポリプロピレンチューブに約0.5gの糞便を採取したものを、対照試料(5B)とした。糞便試料(5A)と対照試料(5B)を30℃で18時間保管し、RNAを回収した。また、回収したRNAを実施例3と同様にして、cDNAを作成し、ヒトGAPDH遺伝子の定量PCRを行った。サンプル(5A)由来RNAを鋳型に用いた場合とサンプル(5B)由来RNAとを比較したところ、サンプル(5B)由来RNAは、約10%の増幅効率の低下が見られた。図3に示すような採便容器を用いることにより、速やかに高塩濃度処理溶液中に糞便を浸漬させることができたため、より高純度にヒト由来核酸を回収することができたと推察される。また、このような採便容器を用いることにより、採便者が採便後、簡便かつ直ちに糞便試料の調製と浸漬を行うことができるため、検査工程オペレーターのレイバーコストの一部を削減できる。
なお、本実施例の採便容器は一様態であり、速やかに便を採取し、一定量を高塩濃度処理溶液に浸漬できれば、この形状に限らなくても良い。
[実施例6]
健常人1名より採取された糞便を3本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。これら3本全てに6mLの飽和食塩水を添加して糞便を十分に分散させて糞便試料(6A)〜(6C)を調製した。糞便試料(6A)は4℃で、糞便試料(6B)は16℃で、糞便試料(6C)は30℃で、それぞれ24時間静置し、糞便を浸漬させた。
各糞便試料は、所定の浸漬時間経過後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分から、実施例2と同様にしてRNAを回収した。回収したRNAを実施例3と同様にして、cDNAを作成し、ヒトGAPDH遺伝子の定量PCRを行った。この結果、各糞便試料由来のRNAを鋳型に用いた場合のヒトGAPDH遺伝子の発現量(コピー数)は、糞便試料(6A)では6200コピー、糞便試料(6B)では94000コピー、糞便試料(6C)では153000コピーであった。すなわち、浸漬温度は、4℃から30℃の間では、温度が高いほうが望ましいことがわかった。
健常人1名より採取された糞便を3本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。これら3本全てに6mLの飽和食塩水を添加して糞便を十分に分散させて糞便試料(6A)〜(6C)を調製した。糞便試料(6A)は4℃で、糞便試料(6B)は16℃で、糞便試料(6C)は30℃で、それぞれ24時間静置し、糞便を浸漬させた。
各糞便試料は、所定の浸漬時間経過後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分から、実施例2と同様にしてRNAを回収した。回収したRNAを実施例3と同様にして、cDNAを作成し、ヒトGAPDH遺伝子の定量PCRを行った。この結果、各糞便試料由来のRNAを鋳型に用いた場合のヒトGAPDH遺伝子の発現量(コピー数)は、糞便試料(6A)では6200コピー、糞便試料(6B)では94000コピー、糞便試料(6C)では153000コピーであった。すなわち、浸漬温度は、4℃から30℃の間では、温度が高いほうが望ましいことがわかった。
[実施例7]
糞便を種々の濃度の硫酸アンモニウム水溶液に浸漬させた後、核酸を回収した。
まず、6本の15mLのポリプロピレンチューブに、それぞれ、0%、10%、20%、30%、40%、飽和濃度の硫酸アンモニウム水溶液を10mLずつ添加した。なお、飽和硫酸アンモニウムは、温度によって硫酸アンモニウムの析出が見られた。
各チューブに、実施例1と同様にして調製した擬似糞便をそれぞれ1gずつ分取し、糞便を十分に分散させて糞便試料を調製した。これらの糞便試料を、20℃で24時間インキュベーションした後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。実施例1と同様にして、これらの固形成分からRNAを回収した後、得られたRNAを電気泳動して染色し、バンドを確認した。
この結果、硫酸アンモニウム濃度が20%以下の糞便試料(硫酸アンモニウムを含まない溶液(0%)を含む)では、16S rRNA及び23S rRNAのバンドがはっきり観察されたが、18S rRNA及び28S rRNAのバンドはいずれもスメアであった。
一方、30%硫酸アンモニウム溶液を用いた糞便試料では、18S rRNA及び28S rRNAのバンドが薄く観察され、16S rRNA及び23S rRNAのバンドは分解がみられた。40%以上の濃度の硫酸アンモニウム溶液を用いた糞便試料では、18S rRNA及び28S rRNAのバンドがさらにはっきりと観察され、16S rRNA及び23S rRNAのバンドの分解がより多く観察された。これらの結果から、本発明の選択的回収効果を得るために、高塩濃度処理溶液の有効成分として硫酸アンモニウムを用いる場合には、30〜40%の濃度の硫酸アンモニウム溶液が最小必要条件である(塩濃度の最小値が30〜40%である)ことが分かった。
なお、高塩濃度処理溶液の有効成分の塩濃度の最小値は、便の種類、便断片の大きさ、浸漬温度、浸漬期間によって変動する。より厳しい温度条件においては、より高濃度の硫酸アンモニウムが必要である。
糞便を種々の濃度の硫酸アンモニウム水溶液に浸漬させた後、核酸を回収した。
まず、6本の15mLのポリプロピレンチューブに、それぞれ、0%、10%、20%、30%、40%、飽和濃度の硫酸アンモニウム水溶液を10mLずつ添加した。なお、飽和硫酸アンモニウムは、温度によって硫酸アンモニウムの析出が見られた。
各チューブに、実施例1と同様にして調製した擬似糞便をそれぞれ1gずつ分取し、糞便を十分に分散させて糞便試料を調製した。これらの糞便試料を、20℃で24時間インキュベーションした後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。実施例1と同様にして、これらの固形成分からRNAを回収した後、得られたRNAを電気泳動して染色し、バンドを確認した。
この結果、硫酸アンモニウム濃度が20%以下の糞便試料(硫酸アンモニウムを含まない溶液(0%)を含む)では、16S rRNA及び23S rRNAのバンドがはっきり観察されたが、18S rRNA及び28S rRNAのバンドはいずれもスメアであった。
一方、30%硫酸アンモニウム溶液を用いた糞便試料では、18S rRNA及び28S rRNAのバンドが薄く観察され、16S rRNA及び23S rRNAのバンドは分解がみられた。40%以上の濃度の硫酸アンモニウム溶液を用いた糞便試料では、18S rRNA及び28S rRNAのバンドがさらにはっきりと観察され、16S rRNA及び23S rRNAのバンドの分解がより多く観察された。これらの結果から、本発明の選択的回収効果を得るために、高塩濃度処理溶液の有効成分として硫酸アンモニウムを用いる場合には、30〜40%の濃度の硫酸アンモニウム溶液が最小必要条件である(塩濃度の最小値が30〜40%である)ことが分かった。
なお、高塩濃度処理溶液の有効成分の塩濃度の最小値は、便の種類、便断片の大きさ、浸漬温度、浸漬期間によって変動する。より厳しい温度条件においては、より高濃度の硫酸アンモニウムが必要である。
[実施例8]
本発明の選択的回収効果に対する高塩濃度処理溶液のpH、温度、及び塩濃度の影響を調べた。
まず、実施例1と同様にして調製した擬似糞便を8本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。このうち2本ずつに対して、4種類の硫酸アンモニウム溶液〔30%硫酸アンモニウム溶液(pH7.0)、30%硫酸アンモニウム溶液(pH5.0)、40%硫酸アンモニウム溶液(pH7.0)、40%硫酸アンモニウム溶液(pH5.0)〕を、それぞれ10mLずつ添加して糞便を十分に分散させ、糞便試料を調製した。これらの糞便試料を、37℃又は25℃(室温)でそれぞれ1本ずつ24時間静置し、糞便を浸漬させた後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分から、実施例2と同様にしてRNAを回収した後、得られたRNAを電気泳動して染色し、バンドを確認した。
この結果、pH7.0の30%硫酸アンモニウム溶液で処理した糞便試料は、25℃で浸漬させた場合に、ヒト由来RNAを選択的に回収でき有効であったが、37℃では18S rRNA及び28S rRNAの選択的なRNA濃縮が見られなかった。低いpH(5.0)とより高濃度(40%)の硫酸アンモニウムの組み合わせは、pH7.0の40%硫酸アンモニウムよりも本発明の選択的回収効果が高く有効であり、ヒトrRNAが優先的に回収されている状況を生じた。いずれか片方(低pH又は高濃度の硫酸アンモニウム)だけを変えても、元の処方よりもヒト由来RNAの安定性及び選択的回収性を明らかに増強することはなかった。
本発明の選択的回収効果に対する高塩濃度処理溶液のpH、温度、及び塩濃度の影響を調べた。
まず、実施例1と同様にして調製した擬似糞便を8本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。このうち2本ずつに対して、4種類の硫酸アンモニウム溶液〔30%硫酸アンモニウム溶液(pH7.0)、30%硫酸アンモニウム溶液(pH5.0)、40%硫酸アンモニウム溶液(pH7.0)、40%硫酸アンモニウム溶液(pH5.0)〕を、それぞれ10mLずつ添加して糞便を十分に分散させ、糞便試料を調製した。これらの糞便試料を、37℃又は25℃(室温)でそれぞれ1本ずつ24時間静置し、糞便を浸漬させた後、直ちに遠心分離処理を行い、上清を除去して固形成分を回収した。これらの固形成分から、実施例2と同様にしてRNAを回収した後、得られたRNAを電気泳動して染色し、バンドを確認した。
この結果、pH7.0の30%硫酸アンモニウム溶液で処理した糞便試料は、25℃で浸漬させた場合に、ヒト由来RNAを選択的に回収でき有効であったが、37℃では18S rRNA及び28S rRNAの選択的なRNA濃縮が見られなかった。低いpH(5.0)とより高濃度(40%)の硫酸アンモニウムの組み合わせは、pH7.0の40%硫酸アンモニウムよりも本発明の選択的回収効果が高く有効であり、ヒトrRNAが優先的に回収されている状況を生じた。いずれか片方(低pH又は高濃度の硫酸アンモニウム)だけを変えても、元の処方よりもヒト由来RNAの安定性及び選択的回収性を明らかに増強することはなかった。
本発明の回収方法により、哺乳細胞とバクテリアのような細菌が混在している糞便から、哺乳細胞由来の核酸を選択的に回収できるため、本発明の回収方法は、特に糞便試料を用いた定期健診等の臨床検査等の分野において利用が可能である。
1…容器本体、1a…***部、2…蓋、3…採便棒、3a…カップ、11…容器本体、12…蓋、13…採便棒、13a…穴、13b…可動蓋、E…糞便、S…高塩濃度処理溶液、101…糞便試料処理装置、102…遠心分離機構、103…溶液吸引排出ノズル、104…廃液回収部、105…溶液吸引排出ノズル洗浄機構。
Claims (44)
- 糞便から哺乳細胞由来の核酸を回収する方法であって、
(A)糞便を、高塩濃度処理溶液中に添加して糞便試料を調製し、当該糞便試料中で所定時間、糞便を高塩濃度処理溶液中に浸漬させる工程と、
(B)工程(A)の後、前記糞便試料から固形成分を回収する工程と、
(C)工程(B)において回収された固形成分から、核酸を回収する工程と、
を有することを特徴とする哺乳細胞由来核酸の回収方法。 - 前記高塩濃度処理溶液が、塩化ナトリウム及び硫酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上の塩を含む溶液であることを特徴とする請求項1記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記高塩濃度処理溶液が、塩化ナトリウムを、13%(wt/wt)以上からその飽和濃度以下の濃度で含むことを特徴とする請求項1記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記高塩濃度処理溶液が、塩化ナトリウムを、20%(wt/wt)以上からその飽和濃度以下の濃度で含むことを特徴とする請求項1記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記高塩濃度処理溶液が、硫酸アンモニウムを、30%(wt/wt)以上からその飽和濃度以下の濃度で含むことを特徴とする請求項1記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記高塩濃度処理溶液の塩濃度が、飽和濃度の4/5倍の塩濃度以上飽和濃度以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記高塩濃度処理溶液の塩濃度が、飽和濃度であることを特徴とする請求項1記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記高塩濃度処理溶液が、2種類以上の塩を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記高塩濃度処理溶液が、2価カチオンのキレート剤を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記高塩濃度処理溶液のpHが、4〜8であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記高塩濃度処理溶液が緩衝作用を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記工程(C)において、前記工程(B)において回収された固形成分を洗浄し、当該固形成分の塩濃度を低下させた後に、当該固形成分から核酸を回収することを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 洗浄後の前記固形成分の塩濃度が100mM未満であることを特徴とする請求項12記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 洗浄後の前記固形成分の塩濃度が30mM未満であることを特徴とする請求項12記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 固形成分の洗浄を、前記工程(B)において回収された固形成分を、洗浄用溶液に分散させた後、遠心分離処理を行って上清画分を除去し、固形成分を回収することにより行い、
前記洗浄用溶液が、低イオン濃度の緩衝液、水溶性有機溶媒、水、及びこれらの混合液からなる群より選択される溶液であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。 - 前記工程(A)において、少なくとも1回、前記糞便試料を攪拌することを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中へ糞便を浸漬させる時間が12時間以上であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中へ糞便を浸漬させる時間が24時間以上であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中へ糞便を浸漬させる時間が72時間以上であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中への糞便の浸漬が、4℃以上で行われることを特徴とする請求項1〜19のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中への糞便の浸漬が、10℃以上で行われることを特徴とする請求項1〜19のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記工程(A)において、高塩濃度処理溶液中への糞便の浸漬が、16℃以上で行われることを特徴とする請求項1〜19のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記工程(A)において、前記糞便と前記高塩濃度処理溶液の混合比率が、糞便容量1に対して高塩濃度処理溶液容量が1以上であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記高塩濃度処理溶液が界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜23のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記高塩濃度処理溶液が着色剤を含有することを特徴とする請求項1〜24のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 固形成分から、哺乳細胞由来の核酸と腸内常在菌由来の核酸とを同時に回収することを特徴とする請求項1〜25のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記工程(C)における固形成分からの核酸回収操作が、下記工程(a)及び(b)を有することを特徴とする請求項1〜25のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
(a)固形成分中のタンパク質を変性させ、当該固形成分中の腸内常在菌及び哺乳細胞から、核酸を溶出させる工程。
(b)前記工程(a)において溶出させた核酸を回収する工程。 - 前記工程(a)の後、前記工程(b)の前に、
(c)前記工程(a)により変性させたタンパク質を除去する工程と、
を有することを特徴とする請求項27記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。 - 前記工程(a)におけるタンパク質の変性が、カオトロピック塩、有機溶媒、及び界面活性剤からなる群より選ばれる1以上を用いて行われることを特徴とする請求項27又は28記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記カオトロピック塩がグアニジン塩であることを特徴とする請求項29記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記工程(c)における変性させたタンパク質の除去が、クロロホルムを用いて行われることを特徴とする請求項28〜30のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。
- 前記工程(b)における核酸の回収が、
(b1)前記工程(a)において溶出させた核酸を無機支持体に吸着させる工程と、
(b2)前記工程(b1)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる工程と、
を有することを特徴とする請求項27〜31のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法。 - 請求項1〜32のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法を用いて糞便から回収された核酸。
- 請求項1〜32のいずれか記載の哺乳細胞由来核酸の回収方法を用いて糞便から回収された核酸を用いて、哺乳細胞由来の核酸を解析することを特徴とする核酸解析方法。
- 前記哺乳細胞が消化管細胞であることを特徴とする請求項34記載の核酸解析方法。
- 前記哺乳細胞が大腸剥離細胞であることを特徴とする請求項34記載の核酸解析方法。
- 前記哺乳細胞由来の核酸が、新生物性転化を示すマーカーであることを特徴とする請求項34〜36のいずれか記載の核酸解析方法。
- 前記哺乳細胞由来の核酸が、炎症性消化器疾患を示すマーカーであることを特徴とする請求項34〜36のいずれか記載の核酸解析方法。
- 前記哺乳細胞由来の核酸が、COX2(cyclooxygenase−2)遺伝子由来核酸であることを特徴とする請求項34〜36のいずれか記載の核酸解析方法。
- 前記解析が、mRNAの発現解析、K−ras遺伝子の変異解析、及びDNAのメチル化の解析からなる群より選択される1以上であることを特徴とする、請求項34〜39のいずれか記載の核酸解析方法。
- 前記mRNAの発現解析が、糞便から回収したtotal RNAを逆転写反応によりcDNA化した後、得られたcDNAを鋳型として核酸増幅反応を行い、増幅反応産物を解析することを特徴とする請求項40記載の核酸解析方法。
- 高塩濃度処理溶液と、当該高塩濃度処理溶液を含有する採便容器とを有することを特徴とする採便用キット。
- さらに、洗浄用溶液を有することを特徴とする請求項42記載の採便用キット。
- 採取された糞便を高塩濃度処理溶液に浸漬させて所定時間保存した糞便試料から、前記高塩濃度処理溶液を除去する溶液除去機構を含むことを特徴とする、糞便試料処理装置。
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