JPWO2010064628A1 - 核酸含有試料の調製方法、試料調製用溶液、及び核酸の解析方法 - Google Patents

核酸含有試料の調製方法、試料調製用溶液、及び核酸の解析方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、煩雑な操作を必要とせずに、生体試料等の核酸含有試料において、核酸を基質とする酵素反応に対する阻害物質による阻害作用を低減させた核酸含有試料の調製方法、該方法に用いられる試料調製用溶液、及び該方法により調製された試料中の核酸を解析する方法を提供する。本発明の核酸含有試料の調製方法は、核酸を含有する試料から核酸を回収するための核酸含有試料の調製方法であって、核酸含有試料を、ポリカチオン及びキレート剤からなる群より選択される1以上を有効成分とする試料調製用溶液に混合させることを特徴とする。

Description

本発明は、核酸含有試料から核酸を回収するための核酸含有試料の調製方法、試料調製用溶液、該調製方法により調製された試料、該試料からの核酸回収方法、及び該核酸回収方法により回収された核酸を用いた核酸解析方法に関する。
本願は、2008年12月5日に日本国に出願された特願2008−310989号、及び2008年12月5日に日本国に出願された特願2008−310990号に基づき優先権を主張し、それらの内容をここに援用する。
欧米と同様に日本においても、大腸がんの患者数は、年々急激に増加しており、大腸がんが、がん死亡率の上位を占めるようになってきている。これは、日本人の食生活が欧米型の肉食中心となったことに原因があると考えられている。具体的には、毎年約6万人程度が大腸がんに罹患しており、臓器別の死亡数でも、胃がん、肺がんに続く3番目の多さであり、今後更なる増加も予想されている。一方で、大腸がんは、他のがんと異なり、発症の初期に治療することにより、100%近く治癒可能ながんである。したがって、大腸がんを早期がん検診の対象とすることは極めて有意義であり、大腸がんの早期発見のための検査方法の研究・開発が盛んに行われている。
大腸がんの早期発見のための検査方法として、例えば、注腸検査、大腸内視鏡検査等が行われている。注腸検査とは、大腸にバリウムを注入し、大腸の粘膜面に付着させ、X線を照射しその表面の凹凸の撮影を行い、大腸の表面を観察する検査である。一方、大腸内視鏡検査とは、内視鏡により直接大腸内部を観察する検査である。特に大腸内視鏡検査は、感度や特異性が高く、ポリープや早期がんの切除も可能であるという利点も有している。
しかしながら、これらの検査方法は、コストが高い上に被験者への負担が大きく、合併症のリスクを伴うという問題がある。例えば、注腸検査には、X線被爆や腸閉塞の危険性がある。また、大腸内視鏡検査は、内視鏡を直接大腸内に投入するため侵襲的であり、かつ、内視鏡操作には熟練を要し、検査のできる施設が限られている。このため、これらの検査方法は、定期健診等の無症状の一般人を対象とした大腸がん検査に適しているとは言い難い。
近年、大腸がんの一次スクリーニング法として、非侵襲的で低コストである便潜血検査が広く実施されている。便潜血検査は、糞便中に含まれる赤血球由来のヘモグロビンの有無を調べる検査であり、間接的に大腸がんの存在を予測する方法である。便潜血検査では、便の採取や保存を常温で行うことができ、冷蔵・冷凍等の特別な保存条件も必要としないこと、及び、一般的な家庭で簡単に行うことができ、操作が非常に簡便であることも、広く利用される要因となっている。但し、便潜血検査では、感度が25%程度と低く、大腸がんを見落とす確率が高いという問題がある。さらに、陽性的中率も低く、便潜血検査陽性の被験者の中で実際に大腸がん患者である割合は10%以下であり、多くの偽陽性を含んでいる。このため、より信頼性の高い新たな検査法の開発が強く望まれている。
近年の遺伝子解析技術の発展により、生体試料中の核酸を解析し、疾患の診断や治療等に役立てようとする試みがなされている。糞便や血液等の生体試料中の核酸を解析に用いることにより、内視鏡検査等の他の臨床検査に比べて、より侵襲性が低く、患者への負担が小さい、という利点があり、定期健診等にも適している。また、核酸解析により、疾患に関連する遺伝子を直接検査するため、信頼性の高い結果が得られるという利点もある。例えば、糞便中や血液中のがん細胞の有無やがん細胞由来遺伝子の有無を調べることにより、大腸がんの罹患に伴い間接的に生じる消化管からの出血の有無を調べる便潜血検査法に比べて、より信頼性の高い検査法になり得ると考えられる。さらに、がんの早期発見や進行の度合いを調べることもできる。
糞便試料中のがん細胞等を精度よく検出するためには、糞便試料中のがん細胞由来核酸を効率よく回収することが重要である。特に、がん細胞由来核酸は微量であり、かつ、糞便中には、消化残留物やバクテリアが大量に含まれているため、核酸は非常に分解され易い。このため、糞便試料から核酸、特にヒト等の哺乳細胞由来の核酸を効率よく回収するためには、糞便中の核酸の分解を防止し、検査操作時まで安定して保存し得るように糞便試料を調製することが重要である。このような糞便試料の調製方法として、例えば、採取された糞便から、大腸等の消化管から剥離したがん細胞を分離する方法がある。糞便からがん細胞を分離することにより、バクテリア等由来のプロテアーゼやDNase、RNase等の分解酵素による影響を抑えることができる。糞便からがん細胞を分離する方法として、例えば、(1)糞便から細胞を分離する方法であって、a)便をそのゲル氷点未満の温度に冷却する工程と、b)便が実質的に完全な状態を残すように、便をそのゲル氷点未満の温度に維持しながら便から細胞を採取する工程と、を含むことを特徴とする方法が開示されている(例えば特許文献1参照。)。その他、(2)通常周囲温度で、プロテアーゼ阻害物質、粘液溶解剤、殺細菌剤を有する輸送培地に糞便を分散させた後、大腸剥離細胞を単離する方法が開示されている(例えば特許文献2参照。)。
一方で、細胞の形態を組織学的及び細胞学的に観察する場合に、採取された細胞の形態を観察時まで維持するために、ホルマリン固定やアルコール固定等の多くの固定方法が従来行われてきている。これらの固定方法を応用した方法であって、哺乳細胞試料の長期保存及び保存後の細胞観察を可能にするための保存溶液として、例えば、(3)哺乳細胞を定着するために充分な量の水と混和可能なアルコールと、溶液内での哺乳細胞の凝集を防ぐために充分な量のキレート剤と、細胞を保存する間、溶液のpHを4から7の範囲に保つ緩衝剤とを含む細胞溶液保存剤が開示されている(例えば特許文献3参照。)。
その他、細胞の組織学的及び細胞学的観察に加え、保存後の細胞中のタンパク質や核酸等に対する分子学的解析をも可能とする保存溶液として、例えば、(4)緩衝成分、少なくとも1つのアルコール成分、固定剤成分、並びにRNA、DNA及びタンパク質からなる群の少なくとも1つの分解を抑制する薬剤を含む普遍的収集培地(例えば特許文献4参照。)や、(5)5〜20%ポリエチレングリコール及び80〜95%メタノールを含む非水溶液(例えば特許文献5参照。)等が開示されている。また、(6)生体試料、主に全血試料中の核酸を安定して保存するために、収集した生体試料中の細胞から速やかに核酸を抽出し、この抽出液中に、少なくとも1種の遺伝子誘導阻止剤を含ませることにより、生体外遺伝子誘導を阻止して核酸を安定化させる方法も開示されている(例えば特許文献6参照。)。なお、該遺伝子誘導阻止剤として、陽イオン性化合物、洗剤、特に陽イオン性洗剤、カオトロピック塩、リボヌクレアーゼ阻害物質、キレート剤、有機溶媒、有機還元試薬等が挙げられている。
一方で、糞便や血液等の生体試料には、核酸以外にも多種多様な物質が含まれているため、生体試料から核酸を回収した場合には、これらの夾雑物のキャリーオーバー(持込)が多くなり、十分な純度の核酸を回収することが困難である場合が多い。特に、糞便等には、胆汁酸やその塩等の、PCR(Polymerase Chain Reaction)等の塩基鎖伸長反応に対して阻害作用を有する物質が含まれている(例えば、非特許文献1参照。)。生体試料中に含まれる核酸の量は微量であり、このため、一般的には、生体試料から回収された核酸はPCR等の塩基鎖伸長反応を利用して解析されるが、糞便等から回収された核酸を用いた場合には、生体試料由来の阻害物質により、検査の精度や感度が低下し、信頼できる解析結果がえられにくいという問題がある。
このため、糞便等の生体試料から核酸を抽出・精製する際に、生体試料中の阻害物質のキャリーオーバーを抑制するための方法も開示されている。例えば、(7)材料試料からの核酸の精製、固定、及び/又は単離方法であって、それにより、pH値が2〜7であり、塩濃度が少なくとも100mMであり、又は/及びフェノール中和物質を含むバッファーが、核酸を含む試料へ添加されることにより、阻害物質等の含有量が少ない純度の高い核酸を回収する方法が開示されている(例えば特許文献7参照。)。また、(8)有機溶媒で被検試料を洗浄して核酸の酵素的増幅反応を阻害する物質を除去し、該被検試料中に含まれる細胞の核酸を酵素的に増幅させることを含む、核酸の酵素的増幅方法も開示されている(例えば特許文献8参照。)。
その他、(9)試料中の目的とする核酸を増幅する核酸合成法において、試料をあらかじめポリアニオン(陰イオンを含有した繰り返し構造を持つ高分子化合物)およびその塩の不溶性高分子に接触させることを特徴とする核酸合成法(例えば特許文献9参照。)や、(10)核酸含有サンプルを少なくとも一つの凝集剤と接触させて凝集剤沈殿物を形成する工程;および、(b)前記凝集剤沈殿物から前記核酸を分離する工程、を含む、核酸含有サンプルから少なくとも一つの夾雑物を除去するための方法(例えば特許文献10参照。)も開示されている。
特表平11−511982号公報 特表2004−519202号公報 特開2003−153688号公報 特表2004−500897号公報 特表2005−532824号公報 特表2004−534731号公報 特表2003−521250号公報 国際公開第00/08136号パンフレット 特開2001−258562号公報 特表2008−500066号公報
ウィルソン(Wilson IG)、アプライド・アンド・エンバイロメンタル・マイクロバイオロジー(APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY)、1997年、第63巻、第3741〜51ページ。
上記(1)の方法においては、糞便試料を冷却しながら細胞を分離している。この分離操作を冷却せずに行うと、糞便試料の変質等により正しい検出結果を得ることができなくなってしまうためであり、糞便試料の変質を効果的に防止するためには、採便直後に冷却することが重要である。しかしながら、検診等のように家庭において採便が行われる場合には、採取後速やかに糞便試料を冷却することは非常に困難であり、現実的ではない。
また、上記(2)の方法では、殺細菌剤等を添加することにより、冷却操作を必要とせず、室温で糞便試料の調製や保存が可能であるものの、糞便から大腸剥離細胞を分離する作業は煩雑であるという問題がある。また、殺細菌剤等により破壊されたバクテリア由来の核酸分解酵素やタンパク質分解酵素により、大腸剥離細胞及び大腸剥離細胞由来の核酸等が分解されてしまう結果、大腸がん検出の精度が低下するおそれがある。
これに対して、上記(3)〜(5)の保存溶液や上記(6)の方法を用いることにより、細胞を室温で安定して保存することができるが、これらの保存溶液は、ほぼ単離された細胞に対して用いられるものであり、糞便のような多種多様な物質が含まれている生体試料に直接用いることは困難である。
加えて、上記(1)〜(6)のいずれの方法や保存溶液においても、糞便中の阻害物質の除去については考慮されていない。例えば、上記(3)の細胞溶液保存剤や上記(6)の方法においては、生体試料に添加する溶液として、アルコールとキレート剤を含む溶液が記載されてはいるものの、キレート剤による核酸保存効果については記載されているが、阻害物質の除去については、一切記載も示唆もされてはいない。
一方、上記(7)〜(10)の方法により、糞便から核酸を精製する場合に、精製された核酸に含まれる塩基鎖伸長反応における阻害物質等の量を抑えられるものの、阻害物質の除去は十分ではない、という問題がある。また、上記(10)の方法は、凝集剤を用いて、生体試料中の核酸と阻害物質等を分離しているため、操作が煩雑であるという問題もある。
本発明は、煩雑な操作を必要とせずに、生体試料等の核酸含有試料において、核酸を基質とする酵素反応に対する阻害物質による阻害作用が低減させた核酸含有試料の調製方法、該方法に用いられる試料調製用溶液、及び該方法により調製された試料中の核酸を解析する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、核酸抽出工程に先立って、核酸含有試料を、ポリカチオン及びキレート剤からなる群より選択される1以上を有効成分とする試料調製用溶液と混合することにより、核酸含有試料中に含まれている核酸を基質とする酵素反応に対する阻害物質による阻害作用が低減されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 核酸を含有する試料から核酸を回収するための核酸含有試料の調製方法であって、核酸含有試料を、ポリカチオン及びキレート剤からなる群より選択される1以上を有効成分とする試料調製用溶液に混合させることを特徴とする、核酸含有試料の調製方法、
(2) 前記試料調製用溶液が、有効成分として、さらに水溶性有機溶媒を含むことを特徴とする前記(1)記載の核酸含有試料の調製方法、
(3) 前記試料調製用溶液が、ポリカチオンとしてポリリジンを含むことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の核酸含有試料の調製方法、
(4) 前記試料調製用溶液が、キレート剤としてEDTAを含むことを特徴とする前記(1)又は(2)記載の核酸含有試料の調製方法、
(5) 前記試料調製用溶液が緩衝作用を有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(6) 前記試料調製用溶液のpHが2〜6.5であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(7) 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコール、ケトン類、及びアルデヒド類からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする前記(2)〜(6)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(8) 前記水溶性有機溶媒が水溶性アルコール及び/又はケトン類であり、当該水溶性有機溶媒の濃度が30%以上であることを特徴とする前記(2)〜(6)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(9) 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコールとして、エタノール、プロパノール、及びメタノールからなる群より選ばれる1以上を含むことを特徴とする前記(7)又は(8)記載の核酸含有試料の調製方法、
(10) 前記水溶性有機溶媒がエタノールであることを特徴とする前記(2)〜(8)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(11) 前記水溶性有機溶媒が、ケトン類として、アセトン及び/又はメチルエチルケトンを含むことを特徴とする前記(7)〜(9)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(12) 前記水溶性有機溶媒がアルデヒド類であり、当該水溶性有機溶媒の濃度が0.01〜30%であることを特徴とする前記(2)〜(6)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(13) 前記核酸含有試料と前記試料調製用溶液の混合比率が、核酸含有試料容量1に対して試料調製用溶液容量が1以上であることを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(14) 前記核酸含有試料を、前記試料調製用溶液に混合させた後、所定時間保存することを特徴とする前記(1)〜(13)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(15) 前記試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、1時間以上であることを特徴とする前記(14)記載の糞便試料の調製方法、
(16) 前記試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、12時間以上であることを特徴とする前記(14)記載の糞便試料の調製方法、
(17) 前記試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、24時間以上であることを特徴とする前記(14)記載の糞便試料の調製方法、
(18) 前記試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、72時間以上であることを特徴とする前記(14)記載の糞便試料の調製方法、
(19) 前記試料調製用溶液のpHが3〜6であることを特徴とする前記(6)〜(18)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(20) 前記試料調製用溶液のpHが4.5〜5.5であることを特徴とする前記(6)〜(18)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(21) 前記試料調製用溶液が界面活性剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(20)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(22) 前記試料調製用溶液が着色剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(21)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(23) 前記核酸含有試料が糞便、血液、又は尿であることを特徴とする前記(1)〜(22)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(24) 前記核酸含有試料が糞便であることを特徴とする前記(1)〜(22)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法、
(25) 核酸含有試料から核酸を回収するための核酸含有試料の調製に用いられる溶液であって、ポリカチオン及びキレート剤からなる群より選択される1以上を有効成分とすることを特徴とする、試料調製用溶液、
(26) 前記ポリカチオンがポリリジンであることを特徴とする前記(25)記載の試料調製用溶液、
(27) 前記キレート剤がEDTAであることを特徴とする前記(25)記載の試料調製用溶液、
(28) 前記試料調製用溶液が、有効成分として、さらに水溶性有機溶媒を含むことを特徴とする前記(25)〜(27)のいずれか記載の試料調製用溶液、
(29) 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコール、ケトン類、及びアルデヒド類からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする前記(28)記載の試料調製用溶液、
(30) 前記(25)〜(29)のいずれか記載の試料調製用溶液と、当該試料調製用溶液を含有する採便容器と、を有することを特徴とする採便用キット、
(31) 前記(1)〜(24)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法により調製された調製試料、
(32) 核酸含有試料中に含まれる核酸を解析する方法であって、核酸含有試料を、前記(25)〜(29)のいずれか記載の試料調製用溶液に混合させて、試料を調製する調製工程と、前記調製工程において調製された試料中の細胞から核酸を回収する回収工程と、前記回収工程において回収された核酸を解析する解析工程と、を有することを特徴とする、核酸の解析方法、
(33) 前記調製工程が、核酸含有試料を前記試料調製用溶液に浸漬させる工程、又は、核酸含有試料を前記試料調製用溶液に浸漬させた後に攪拌して懸濁させる工程であることを特徴とする前記(32)記載の核酸の解析方法、
(34) 核酸含有試料から回収された核酸に対して、逆転写反応又は塩基鎖伸長反応を、ポリカチオンを含有する反応溶液中で行うことを特徴とする、核酸の解析方法、
(35) 前記ポリカチオンがポリリジンであることを特徴とする前記(34)記載の核酸の解析方法、
(36) 糞便から核酸を回収する方法であって、前記核酸含有試料を糞便として前記(1)〜(24)のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法により調製された糞便試料中から、腸内常在菌由来の核酸と腸内常在菌以外の生物由来の核酸とを同時に回収することを特徴とする核酸回収方法、
(37) 前記腸内常在菌以外の生物が、哺乳細胞であることを特徴とする前記(36)記載の核酸回収方法、
(38) 核酸を回収する工程が、(a)前記糞便試料中のタンパク質を変性させ、前記糞便試料中の腸内常在菌及び腸内常在菌以外の生物から、核酸を溶出させる工程と、(b)前記工程(a)において溶出させた核酸を回収する工程と、を有することを特徴とする前記(36)又は(37)記載の核酸回収方法、
(39) 前記工程(a)の後、前記工程(b)の前に、(c)前記工程(a)により変性させたタンパク質を除去する工程と、を有することを特徴とする前記(38)記載の核酸回収方法、
(40) 前記工程(a)におけるタンパク質の変性が、カオトロピック塩、有機溶媒、及び界面活性剤からなる群より選ばれる1以上を用いて行われることを特徴とする前記(38)又は(39)記載の核酸回収方法、
(41) 前記有機溶媒がフェノールであることを特徴とする前記(40)記載の核酸回収方法、
(42) 前記工程(c)における変性させたタンパク質の除去が、クロロホルムを用いて行われることを特徴とする前記(39)〜(41)のいずれか記載の核酸回収方法、
(43) 前記工程(b)における核酸の回収が、(b1)前記工程(a)において溶出させた核酸を無機支持体に吸着させる工程と、(b2)前記工程(b1)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる工程と、を有することを特徴とする前記(38)〜(42)のいずれか記載の核酸回収方法、
(44) 前記工程(a)の前に、(d)前記糞便試料から固形成分を回収する工程と、を有することを特徴とする前記(38)〜(43)のいずれか記載の核酸回収方法、
(45) 前記(38)〜(44)のいずれか記載の核酸回収方法を用いて糞便試料から回収された核酸を解析対象として、哺乳細胞由来の核酸を解析することを特徴とする核酸解析方法、
(46) 前記哺乳細胞が消化管細胞であることを特徴とする前記(45)記載の核酸解析方法、
(47) 前記哺乳細胞が大腸剥離細胞であることを特徴とする前記(45)記載の核酸解析方法、
(48) 前記哺乳細胞由来の核酸が、新生物性転化を示すマーカーであることを特徴とする前記(45)〜(47)のいずれか記載の核酸解析方法、
(49) 前記哺乳細胞由来の核酸が、炎症性消化器疾患を示すマーカーであることを特徴とする前記(45)〜(47)のいずれか記載の核酸解析方法、
(50) 前記哺乳細胞由来の核酸が、Cox−2遺伝子由来核酸であることを特徴とする前記(45)〜(47)のいずれか記載の核酸解析方法、
(51) 前記解析が、RNA解析及び/又はDNA解析であることを特徴とする前記(45)〜(50)のいずれか記載の核酸解析方法、
(52) 前記RNA解析が、RNA上の塩基の挿入、欠失、置換、重複、逆位、又はスプライシングバリアントの解析、mRNA発現解析、及び機能性RNA解析のいずれか1以上であることを特徴とする前記(51)記載の核酸解析方法、
(53) 前記DNA解析が、変異解析及びエピジェネティック変化解析のいずれか1以上であることを特徴とする前記(51)記載の核酸解析方法、
(54) 前記変異解析が、塩基の挿入、欠失、置換、重複、又は逆位のいずれか1以上の変異の解析であることを特徴とする前記(53)記載の核酸解析方法、
(55) 前記エピジェネティック変化解析が、DNAのメチル化解析及びDNAの脱メチル化解析のいずれか1以上であることを特徴とする前記(53)記載の核酸解析方法、
(56) 前記変異解析がK−ras遺伝子の変異解析であることを特徴とする前記(53)記載の核酸解析方法、
を提供するものである。
本発明の核酸含有試料の調製方法により、核酸含有試料における、核酸を基質とする酵素反応に対する阻害作用を低減させることができる。このため、本発明の核酸含有試料の調製方法により調製された試料から核酸を回収し、この回収された核酸を解析することにより、阻害物質等の影響が低減され、より信頼性が高く、精度・感度も良好な解析結果を得ることができる。
本発明の採便用キットに用いることができる採便容器の一態様を示した図である。 本発明の採便用キットに用いることができる採便容器の一態様を示した図である。 実施例1において、糞便試料1−1〜8由来のRNA中のGAPDH遺伝子発現量を相対比較した結果を示した図である。 実施例2において、核酸試料2−1〜8中のGAPDH遺伝子発現量を相対比較した結果を示した図である。 実施例3において、核酸試料3−1〜8中のGAPDH遺伝子発現量を相対比較した結果を示した図である。 実施例5において、糞便試料5−1〜4由来のRNA中のGAPDH遺伝子発現量を相対比較した結果を示した図である。 参考例1において、各糞便試料から回収されたRNA量を示した図である。 参考例3において、各濃度のエタノール溶液を用いて調製された糞便試料から回収されたRNA量を示した図である。
本発明及び本願明細書においては、特段の記載がない限り、「%」は「体積%」を意味する。
本発明において、阻害物質とは、核酸を基質とする酵素反応に対して阻害的に作用する物質を意味する。当該酵素反応としては、核酸を基質とする酵素反応であれば特に限定されるものではなく、例えば、逆転写反応や塩基鎖伸長反応等の核酸解析において一般的に用いられる酵素反応等が挙げられる。ここで、塩基鎖伸長反応とは、ポリメラーゼ又はリガーゼによる塩基鎖の伸長反応を意味する。ポリメラーゼによる塩基鎖伸長反応としては、PCR(Polymerase Chain Reaction)、リアルタイムPCR、SDA(Standard Displacement Amplification)等が挙げられる。リガーゼによる塩基鎖伸長反応としては、LCR(Ligase Chain Reaction)等が挙げられる。中でも、PCR等のような、DNAポリメラーゼによる核酸伸長を伴う核酸増幅反応であることが好ましい。
該阻害物質としては、具体的には、胆汁酸、胆汁酸塩等が挙げられる。
<核酸含有試料の調製方法>
本発明の核酸含有試料の調製方法は、核酸を含有する試料から核酸を回収するための核酸含有試料の調製方法であって、核酸含有試料を、ポリカチオン及びキレート剤からなる群より選択される1以上を有効成分とする試料調製用溶液に混合させることを特徴とする。核酸含有試料を、ポリカチオン及び/又はキレート剤を有効成分とする試料調製用溶液に混合させることにより、核酸含有試料中に含まれている阻害物質による阻害作用を効率よく低減させることができる。
このため、本発明の核酸含有試料の調製方法により調製された試料から核酸を回収し、この回収された核酸を解析することにより、阻害物質等の影響が低減され、より信頼性の高い解析結果を得ることができる。
本発明において、核酸含有試料とは、核酸が含有されている試料であれば、特に限定されるものではなく、生体試料であってもよく、生体以外から採取された試料であってもよい。生体試料としては、例えば、糞便、尿、血液、骨髄液、リンパ液、喀痰、唾液、***、胆汁、膵液、腹水、滲出液、羊膜液、腸管洗浄液、肺洗浄液、気管支洗浄液、又は膀胱洗浄液等が挙げられる。生体試料は、生物から採取されたものであれば特に限定されるものではないが、哺乳動物由来のものであることが好ましく、ヒト由来のものであることがより好ましい。その他、培養細胞等の培養物であってもよい。また、生体以外から採取された試料としては、例えば、土壌、海、河川、湖沼等から採取された水等が挙げられる。土壌等には、微生物由来の核酸が含まれているためである。
本発明の核酸含有試料の調製方法に供される核酸含有試料としては、糞便、尿、又は血液であることが好ましく、糞便であることがより好ましい。例えば、定期健診や診断等のために採取されたヒトの糞便であることが好ましいが、家畜や野生動物等の糞便であってもよい。
本発明においては、核酸含有試料は、採取後一定期間保存されたものであってもよいが、採取直後のものであることが好ましい。また、該核酸含有試料は、生物等から採取された状態の試料であってもよく、調製した試料であってもよい。該調製の方法は、該試料中に含有されている核酸を損なわない方法であれば、特に限定されるものではなく、通常、生体試料等に対してなされている調製方法を行うことができる。該調製方法として、例えば、粘液等の洗浄除去や、生理食塩水等を用いた希釈、細胞性構成要素の分離又は濃縮等がある。
なお、本発明の核酸含有試料の調製方法に供される糞便は、動物のものであれば特に限定されるものではないが、哺乳動物由来のものであることが好ましく、ヒト由来のものであることがより好ましい。例えば、定期健診や診断等のために採取されたヒトの糞便であることが好ましいが、家畜や野生動物等の糞便であってもよい。また、採取後一定期間保存されたものであってもよいが、採取直後のものであることが好ましい。さらに、採取された糞便は、***直後のものであることが好ましいが、***後時間を経たものであってもよい。
本発明の核酸含有試料の調製方法において用いられる試料調製用溶液(以下、本発明の試料調製用溶液、ということがある。)は、ポリカチオン及びキレート剤からなる群より選択される1以上を有効成分とする。
ポリカチオンによる阻害作用低減効果の具体的な作用機序は明らかではないが、ポリカチオンが阻害物質に直接作用することにより、阻害作用が低減されるのではないかと推察される。
本発明及び本願明細書において、ポリカチオンとは、陽イオン性官能基を含有した繰り返し構造を持つ高分子化合物およびその塩を意味する。陽イオンとしては、例えば、アミノ基等がある。具体的には、下記式(1)に示されるポリリジン等の側鎖に陽イオン性官能基を有するポリペプチドや、ポリアクリルアミド等の陽イオン性官能基を側鎖に含むモノマーを重合して得られるポリマー等が挙げられる。なお、これらのポリペプチドやポリマーは、分子全体として電気的に陽性であればよく、全ての繰り返し単位(アミノ酸やモノマー)の側鎖に陽イオン性官能基を有している必要はないが、全ての繰り返し単位の側鎖に陽イオン性官能基を有していることが好ましい。このようなポリカチオンとして、具体的には、ポリリジンやポリアクリルアミドに加えて、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチルアミン、ポリメタリルアミン、ポリビニルメチルイミダゾール、ポリビニルピリジン、ポリアルギニン、キトサン、1,5−ジメチル−1,5−ジアザウンデカメチレン−ポリメトブロマイド、ポリ(2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート)、ポリ(2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート)、ポリ(2−トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレート)、ポリジメチルアミノメチルスチレン、ポリトリメチルアンモニウムメチルスチレン、ポリオルニチン、及びポリヒスチジン等が挙げられる。本発明においては、ポリカチオンとして、ポリリジン又はポリアクリルアミドであることが好ましく、ポリリジンであることがより好ましい。なお、本発明の試料調製用溶液は、1種類のポリカチオンのみを含有していてもよく、2種類以上のポリカチオンを含有するものであってもよい。
Figure 2010064628
本発明の試料調製用溶液に添加されるポリカチオンの濃度は、核酸含有試料中に含まれている阻害物質による阻害作用を低減させる効果(阻害作用低減効果)が得られるために十分な濃度であれば、特に限定されるものではなく、ポリカチオンの種類や、核酸含有試料の種類、試料調製用溶液のpH、試料調製用溶液と核酸含有試料との混合比等を考慮して適宜決定することができる。例えば、ポリカチオンとしてポリリジンを含有する場合には、試料調製用溶液のポリリジン濃度は、0.01〜1.0m重量%であることが好ましく、0.0125〜0.8m重量%であることがより好ましく、0.05〜0.4m重量%であることがさらに好ましい。なお、本願明細書中、「m重量%」は「×10−3重量%」を意味する。
一方で、糞便等の核酸含有試料を混合させる本発明の試料調製用溶液にキレート剤が含有されていることにより、当該核酸含有試料中に大量に含まれている阻害物質を、効率よく試料調製用溶液に溶出除去し得る。分解酵素等の反応を阻害し、核酸等の生体成分の分解を防止するために生体試料の調製用溶液にキレート剤を添加することは、従来から行われていたが、キレート剤を添加することにより阻害物質を効果的に除去し得ることは、本発明者らによって初めて見出された知見である。
つまり、キレート剤を有効成分として含む試料調製用溶液を用いて、本発明の核酸含有試料の調製方法を行うことにより、煩雑な操作を必要とせずに、核酸解析に対する阻害物質のキャリーオーバーが低減された純度の高い核酸を回収することができる生体試料(核酸含有試料)を、簡便に調製することができる。そして、調製された試料から核酸を回収することにより、阻害物質のキャリーオーバーを顕著に低減することができ、非常に純度の高い核酸を回収することができる。このため、この回収された核酸を用いることにより、核酸解析の信頼性を向上させることができる。
本発明において用いられるキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、O,O’−ビス(2−アミノフェニルエチレングリコール)エチレンジアミン四酢酸(BAPTA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、トランスー1,2−ジアミノシクロヘキサンーエチレンジアミン四酢酸(CyDTA)、1,3−ジアミノー2−ヒドロキシブロパンーエチレンジアミン四酢酸(DPTA−OH)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン二プロバン酸塩酸塩(EDDP)、エチレンジアミン二メチレンホスホン酸1水和物(EDDPO)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(EDTA−OH)、エチレンジアミン四メチレンホスホン酸(EDTPO)、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール四酢酸(EGTA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン二酢酸(HBED)、1,6−ヘキサメチレンジアミン四酢酸(HDTA)、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HIDA)、イミノ二酢酸(IDA)、1,2−ジアミノプロパン四酢酸(Methyl−EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ニトリロ三プロパン酸(NTP)、ニトリロ三メチレンホスホン酸三ナトリウム塩(NTPO)、エチレンジアミン四(2−ピリジルメチル)(TPEN)、及びトリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)等が挙げられる。なお、本発明の糞便試料調製用溶液は、1種類のキレート剤のみを含有していてもよく、2種類以上のキレート剤を含有するものであってもよい。
有効成分として本発明の試料調製用溶液に添加されるキレート剤の濃度は、核酸含有試料中の阻害物質を除去するために十分な濃度であれば、特に限定されるものではなく、核酸含有試料の種類やキレート剤の種類等を考慮して適宜決定することができる。好ましくは、本発明の試料調製用溶液における最終濃度が0.1mM〜1Mとなるように、各キレート剤を添加する。
糞便や血液等の生体試料には、阻害物質に加えて、分解酵素等も多く含まれているため、生体試料中の核酸は分解等により損なわれやすい。中でも、糞便中には、消化残留物やバクテリアが大量に含まれているため、核酸は非常に分解され易い。このため、核酸解析の精度や感度を向上させるためには、生体試料の調製・保存、核酸の回収操作等において、核酸の分解を防止し、核酸解析操作時まで安定して保存することが重要である。
本発明の試料調製用溶液は、有効成分として、ポリカチオンやキレート剤に加えて、水溶性有機溶媒を含んでいることが好ましい。核酸含有試料を、水溶性有機溶媒を有効成分とする試料調製用溶液に混合させることにより、核酸含有試料中に含まれる核酸の分解等による損失を最小限に抑えて、非常に安定的に核酸を保存することができ、かつ、当該核酸含有試料から、核酸を効率よく回収することができる。水溶性有機溶媒によるこのような核酸高回収効果、すなわち、核酸の分解等を防止し、核酸を安定して保持し、高回収し得る効果は、水溶性有機溶媒成分が有する脱水作用により、哺乳細胞やウィルス等の検出対象である核酸を有する腸内常在菌以外の生物の細胞活性、及び腸内常在菌の細胞活性が顕著に低下して経時的な変化が抑制されるため、及び、水溶性有機溶媒成分が有するタンパク質変性作用により、糞便中のプロテアーゼ、DNase、RNase等の各種分解酵素の活性が顕著に低下するために得られると推察される。
糞便等の生体試料は、通常多量の水分を含有している。このため、水に対する溶解度が高い溶媒や水と任意の割合で混合可能である溶媒である水溶性有機溶媒を有効成分とすることにより、本発明の試料調製用溶液は、核酸含有試料と速やかに混合することができ、より高い核酸高回収効果を得ることができる。
本発明において水溶性有機溶媒とは、アルコール類、ケトン類、又はアルデヒド類であって、直鎖構造を有し、室温付近、例えば15〜40℃において液状である溶媒を意味する。直鎖構造を有する水溶性有機溶媒を有効成分とすることにより、ベンゼン環等の環状構造を有する有機溶媒を有効成分とするよりも、核酸含有試料との混合を素早く行うことができる。
環状構造を有する有機溶媒は、一般的に水と分離しやすいため、例えば糞便等の生体試料と混合しにくく、高い核酸高回収効果を得ることは難しい。たとえ水にある程度溶解する溶媒であったとしても、糞便等の生体試料を均一に分散させるためには、激しく混合したり、加温する必要があることが多いためである。なお、核酸含有試料と環状構造を有する有機溶媒を混合しやすくするために、あらかじめ、有機溶媒と水の混合溶液を作製した後、核酸含有試料と該混合溶液を混合させることも考えられる。しかしながら、該混合溶液を作製するためには、環状構造を有する有機溶媒と水を激しく混合したり、加温する必要がある場合が多く好ましくない。
本発明の試料調製用溶液においては、水に対する溶解度が12重量%以上の水溶性有機溶媒であることが好ましく、水に対する溶解度が20重量%以上の水溶性有機溶媒であることがより好ましく、水に対する溶解度が90重量%以上の水溶性有機溶媒であることがさらに好ましく、水と任意の割合で混合可能である水溶性有機溶媒であることが特に好ましい。水と任意の割合で混合可能である水溶性有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、ホルムアルデヒド等がある。
本発明の試料調製用溶液に含まれる水溶性有機溶媒は、上記定義を充足するものであって、核酸高回収効果を奏することができる溶媒であれば特に限定されるものではない。該水溶性有機溶媒として、例えば、アルコール類としては、水溶性アルコールであるメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メルカプトエタノール等があり、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(水に対する溶解度90重量%等があり、アルデヒド類としては、アセトアルデヒド(アセチルアルデヒド)、ホルムアルデヒド(ホルマリン)、グルタールアルデヒド、パラフォルムアルデヒド、グリオキサール(glyoxal)等がある。プロパノールは、n−プロパノールであってもよく、2−プロパノールであってもよい。また、ブタノールは、1−ブタノール(水に対する溶解度20重量%)であってもよく、2−ブタノール(水に対する溶解度12.5重量%)であってもよい。本発明において用いられる水溶性有機溶媒としては、水溶性アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ホルムアルデヒドであることが好ましい。水に対する溶解度が十分に高いためである。入手容易性、取り扱い性、安全性等の点から、水溶性アルコールであることがより好ましく、エタノール、プロパノール、メタノールであることがさらに好ましい。特にエタノールは、最も安全性が高く、家庭内でも容易に扱うことが可能であるため、定期健診等のスクリーニング検査において特に有用である。
本発明の試料調製用溶液中の水溶性有機溶媒濃度は、核酸高回収効果を奏することができる濃度であれば、特に限定されるものではなく、水溶性有機溶媒の種類等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、有効成分として、水溶性アルコールやケトン類を用いる場合には、本発明の試料調製用溶液の水溶性有機溶媒濃度は30%以上であることが好ましい。水溶性有機溶媒濃度が充分に高濃度であることにより、核酸含有試料と試料調製用溶液を混合した場合に、核酸含有試料全体に水溶性有機溶媒成分が迅速に浸透し、核酸高回収効果及び阻害作用低減効果を速やかに奏することができる。
特に、有効成分として、水溶性アルコールを用いる場合には、本発明の試料調製用溶液の水溶性有機溶媒濃度は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、50〜80%であることがさらに好ましく、60〜70%であることが特に好ましい。水溶性有機溶媒濃度が高い程、水分含量の多い糞便に対しても少量の試料調製用溶液を用いることによって、充分な核酸高回収効果を得ることができる。
また、有効成分として、アセトン、メチルエチルケトンを用いる場合には、本発明の試料調製用溶液の水溶性有機溶媒濃度は30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。その他、有効成分として、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、パラフォルムアルデヒド、グリオキサールを用いる場合には、本発明の試料調製用溶液の水溶性有機溶媒濃度は0.01〜30%であることが好ましく、0.03〜10%であることがより好ましく、3〜5%であることがさらに好ましい。アルデヒド類は、アルコール類やケトン類よりも低濃度においても、核酸高回収効果を奏することができる。
その他、本発明において用いられる水溶性有機溶媒は、1種類の水溶性有機溶媒のみを含有していてもよく、2種類以上の水溶性有機溶媒の混合溶液であってもよい。例えば、2種類以上のアルコールの混合溶液であってもよく、アルコールと他種類の水溶性有機溶媒との混合溶液であってもよい。核酸高回収効果がより改善されるため、アルコールとアセトンの混合溶液であることも好ましい。
本発明の試料調製用溶液のpHは、酸性であることが好ましい。核酸の加水分解をより効果的に抑制することができるためである。本発明の試料調製用溶液としては、pHが2〜6.5であることが好ましく、3〜6であることがより好ましく、4.5〜5.5であることがさらに好ましい。
本発明の試料調製用溶液は、多少の酸や塩基が添加された場合であっても、特に糞便等の生体試料が添加された場合であっても、pHの変動が少なく、前述のpH範囲内に維持されるような緩衝作用を有するものであることが好ましい。緩衝作用を有する試料調製用溶液としては、適当な緩衝液に、有効成分であるポリカチオンやキレート剤、水溶性有機溶媒を添加したものであってもよいが、本発明においては、特に、有機酸と当該有機酸の共役塩基とを含有する試料調製用溶液であって、当該有機酸とその共役塩基とにより緩衝作用を奏するものであることが好ましい。例えば、試料調製用溶液に、有機酸と当該有機酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を添加することにより、所望のpHに調整してもよく、有機酸を添加した後に、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物を用いてpHを調整してもよい。
その他、本発明の試料調製用溶液としては、有機酸と鉱酸の双方を含む溶液であって、適当な緩衝作用を有するものであってもよい。例えば、グリシン/HCl緩衝系、カコジル酸Na/HCl緩衝系、又はフタル酸HK/HCl緩衝系等の、酸性側で緩衝作用を有する緩衝系に、水溶性有機溶媒を混合した溶液であってもよい。
なお、本発明において、試料調製用溶液のpHは、ガラス電極法を測定原理としたpHメーター(例えば東亜ディーケーケー社製)を、フタル酸塩標準液と中性リン酸塩標準液によって校正した後に、測定して得られた値である。
また、本発明の試料調製用溶液は、ポリカチオンやキレート剤による阻害作用低減効果を損なわない限り、また、有効成分として水溶性有機溶媒を用いる場合には水溶性有機溶媒成分による核酸高回収効果を損なわない限り、ポリカチオンやキレート剤、水溶性有機溶媒以外にも、任意の成分を含んでいてもよい。例えば、カオトロピック塩を含有していてもよく、界面活性剤を含有していても良い。カオトロピック塩や界面活性剤を含有することにより、核酸含有試料中の細胞活性や核酸分解酵素等の酵素活性もより効果的に阻害することができる。試料調製用溶液に含有させ得るカオトロピック塩として、例えば、塩酸グアニジン、グアニジンイソチオシアネート、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、及びトリクロロ酢酸ナトリウム等がある。試料調製用溶液に含有させ得る界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。該非イオン性界面活性剤として、例えば、Tween80、CHAPS(3−[3−コラミドプロピルジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、Triton X−100、Tween20等がある。カオトロピック塩や界面活性剤の種類や濃度は、ポリカチオンやキレート剤による効果や、水溶性有機溶媒による効果を損なわない濃度であれば、特に限定されるものではなく、核酸含有試料量やその後の核酸の回収・解析方法等を考慮して、適宜決定することができる。
その他、試料調製用溶液には、適宜着色剤を添加してもよい。試料調製用溶液を着色することにより、誤飲防止、糞便等を核酸含有試料とした場合の試料の色が緩和される等の効果が得られる。該着色剤として、食品添加物として使用される着色料であることが好ましく、青色や緑色等が好ましい。例えば、ファストグリーンFCF(緑色3号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴカルミン(青色2号)等が挙げられる。また、複数の着色剤を混合して添加してもよく、単独で添加しても良い。
本発明の核酸含有試料の調製方法において、核酸含有試料と試料調製用溶液との混合は、核酸含有試料を試料調製用溶液に浸漬させ、特段の攪拌操作を行わないものであってもよい。本発明の試料調製用溶液は、水分含有量の多い糞便等の生体試料に対しても非常に馴染みやすいため、混合する核酸含有試料の量や状態によっては、単に試料調製用溶液に浸漬させて特段の攪拌操作を行わない場合であっても、核酸含有試料中に十分に浸透し、十分なる阻害作用低減効果や核酸高回収効果が奏されるためである。
核酸含有試料と試料調製用溶液との混合は、核酸含有試料を試料調製用溶液に投入して浸漬させた後に攪拌してもよい。攪拌することにより、核酸含有試料を十分に試料調製用溶液に分散させ、懸濁させることができる。核酸含有試料を投入した試料調製用溶液を攪拌して混合する場合には、該攪拌は、速やかに行われることが好ましい。核酸含有試料を速やかに試料調製用溶液中に分散させることにより、核酸含有試料中の細胞や核酸に対する試料調製用溶液の浸透を迅速に行うことができ、阻害作用低減効果や核酸高回収効果が速やかに得られるためである。
なお、核酸含有試料と試料調製用溶液を混合する方法は、物理的手法により混合する方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、予め試料調製用溶液を入れておいた容器に、核酸含有試料を投入して浸漬させた状態で保存しておいてもよい。また、予め試料調製用溶液を入れておいた密閉可能な容器に、採取された糞便等の核酸含有試料を投入して密閉した後、該容器を上下に転倒させることにより、混合してもよく、該容器をボルテックス等の振とう機にかけることにより混合してもよい。また、核酸含有試料と試料調製用溶液を、混合用粒子の存在下で混合してもよい。速やかに混合させることができるため、振とう機を用いる方法や、混合用粒子を用いる方法であることが好ましい。特に、核酸含有試料として糞便を用いる場合には、予め混合用粒子を含有させた採便容器を用いることにより、家庭等の特殊な装置のない環境においても迅速に糞便と試料調製用溶液とを混合することができる。
混合用粒子としては、ポリカチオンやキレート剤による阻害作用低減効果や水溶性有機溶媒成分による核酸高回収効果を損なわない組成物であって、糞便等の核酸含有試料にぶつかることにより、核酸含有試料を迅速に試料調製用溶液中に分散させ得る硬度や比重を有する粒子であれば、特に限定されるものではなく、1種類の材質からなる粒子であってもよく、2種類以上の材質からなる粒子であってもよい。このような混合用粒子として、例えば、ガラス、セラミックス、プラスチック、ラテックス、金属等からなる粒子がある。その他、混合用粒子は、磁性粒子であってもよく、非磁性粒子であってもよい。
核酸含有試料と混合する試料調製用溶液の容量は、特に限定されるものではないが、核酸含有試料と試料調製用溶液の混合比率は、核酸含有試料容量1に対して試料調製用溶液容量が1以上であることが好ましい。試料調製用溶液入り容器に核酸含有試料を入れる場合に、核酸含有試料と等量以上の試料調製用溶液であれば、核酸含有試料が糞便等の固形状又は半分固形状の試料であっても、核酸含有試料の全周囲が試料調製用溶液に浸らせることができ、本発明の効果を得られるためである。このため、例えば、核酸含有試料と試料調製用溶液が等量である場合には、試料調製用溶液入り容器の軽量化・小型化が可能となる。一方で、核酸含有試料に対して、5倍以上の容量の試料調製用溶液を混合させることにより、試料調製用溶液中への核酸含有試料の分散を迅速かつ効果的に行うことができ、さらに、核酸含有試料に含有されている水分による水溶性アルコール濃度の低下の影響を抑えることもできる。試料調製用溶液入り容器の軽量化と核酸含有試料の分散性の向上の両方の効果をバランス良く備えることが可能となるため、核酸含有試料と試料調製用溶液の混合比率が、1:1〜1:20であることがより好ましく、1:3〜1:10であることがさらに好ましく1:5程度であることがより好ましい。
本発明の核酸含有試料の調製方法に供される核酸含有試料の量は、特に限定されるものではないが、10mg〜1gであることが好ましい。核酸含有試料量があまりに多くなってしまうと、採取作業に手間がかかり、試料を採取・調製するための容器も大きくなってしまうため、取り扱い性等が低下するおそれがある。逆に核酸含有試料量があまりに少量である場合には、核酸含有試料中に含まれる細胞数が少なくなりすぎ、必要な核酸量を回収できず、目的の核酸解析の精度が低下するおそれがある。核酸含有試料として糞便を用いる場合には、糞便はヘテロジニアスである、つまり、多種多様な成分が不均一に存在しているため、哺乳細胞の局在の影響を避けるために、採糞時には、糞便の広範囲から採取することが好ましい。
また、このような水溶性有機溶媒成分による核酸高回収効果は、充分な水溶性有機溶媒量が存在する限り、特に温度条件に影響を受けるものではない。したがって、本発明の核酸含有試料の調製方法は、通常核酸含有試料の採取が行われる温度において行う場合、例えば室温において行う場合であっても、核酸含有試料中の核酸の損失を抑えて保存することができる。また、調製された試料は、室温で保存又は輸送した場合であっても、該試料中の核酸を安定して保存することができる。但し、該試料の保存は、50℃以下で行うことが好ましい。高温条件下で長期間保存することにより、揮発等により、該試料中の水溶性有機溶媒の濃度が、核酸高回収効果を奏するに充分な濃度よりも低下するおそれがあるためである。
本発明の核酸含有試料の調製方法により調製された調製試料、すなわち本発明の調製試料は、糞便等の核酸含有試料と本発明の試料調製用溶液とを混合した後、速やかに核酸を回収してもよいが、所定時間保存した後に、核酸回収工程に供されることが好ましい。試料調製用溶液の有効成分としてキレート剤を用いた場合には、所定時間保存することにより、十分量の阻害物質を除去することができるためである。また、試料調製用溶液の有効成分としてポリカチオンを用いた場合にも、所定時間保存することにより、核酸含有試料中に含まれていた阻害物質に対してポリカチオンが充分に作用し得ることにより、阻害作用を効率よく低減させることができる。
なお、試料調製用溶液に対する核酸含有試料の量が少ない場合や、核酸含有試料の状態によっては、核酸含有試料と試料調製用溶液とを混合した後に速やかに核酸回収操作を行った場合であっても、十分に阻害物質が除去された、又はその阻害作用が充分に低減された、純度の高い核酸を効率よく回収することが可能である。
核酸含有試料と本発明の試料調製用溶液とを混合した後に所定時間保存する場合には、混合により得られた調製試料を保存する時間は、本発明の効果を奏し得る時間であれば、特に限定されるものではなく、核酸含有試料の種類、キレート剤やポリカチンの種類や濃度、水溶性有機溶媒の種類や濃度、核酸含有試料と試料調製用溶液との混合比、保存温度等を考慮して適宜決定することができる。本発明の核酸含有試料の調製方法において、調製された調製試料を保存する場合には、1時間以上保存することが好ましく、12時間以上保存することがより好ましく、24時間以上保存することがさらに好ましく、72時間以上保存することが特に好ましい。また、168時間以上保存してもよい。例えば、糞便と本発明の試料調製用溶液とを混合した後に、得られた調製試料(以下、糞便試料、ということがある。)を少なくとも1時間以上保存することにより、一般的なPCRの反応条件において、糞便からの阻害物質のキャリーオーバーによる影響を十分に抑制し得る程度まで、阻害物質量を除去することができる。
本発明の核酸含有試料の調製方法を用いて調製された試料(以下、本発明の調製試料、ということがある。)は、ポリカチオンやキレート剤による阻害作用低減作用や、水溶性有機溶媒による脱水作用やタンパク質変性作用、核酸分解抑制作用により、核酸含有試料中の核酸、特に哺乳細胞由来核酸のような核酸含有試料中に比較的少量しか存在していない核酸の保存性を効果的に向上させつつ、阻害物質による阻害作用を十分に低減させることができる。このため、核酸含有試料を本発明の核酸含有試料の調製方法により調製した場合には、調製直後の調製試料のみならず、長期保存後又は輸送後の調製試料を用いて核酸解析を行った場合であっても、信頼性の高い解析結果を得ることが期待できる。
さらに、一般的に、標的核酸が微量である場合には、比較的十分量含まれている核酸を解析する場合よりも、核酸を基質とする酵素反応を用いた核酸解析において阻害物質の影響を受けやすいが、本発明の調製試料から回収することにより、阻害物質による阻害作用を顕著に低減することができるため、この回収された核酸を用いることにより、核酸解析の信頼性を向上させることができる。
有効成分として水溶性有機溶媒をも含む試料調製用溶液を用いる場合には、本発明の核酸含有試料の調製方法は、特に、糞便中の核酸を解析するために、糞便から核酸を回収するための試料を調製するために用いられることが好ましい。大量の阻害物質や核酸分解酵素等の夾雑物を含む糞便に対して使用した場合にも、高純度の核酸を高効率で回収し得る効果(高純度核酸高回収効果)が得られるためである。このように、非常に優れた高純度核酸高回収効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推察される。
すなわち、糞便中には、全血試料等の他の生体試料よりも、大量の阻害物質が含まれているため、簡便な操作によって十分量の阻害物質を除去することは困難である場合が多い。例えば、阻害物質除去作用を有する溶液等を用いた洗浄操作の場合、一度の洗浄操作では除去される阻害物質の量は不十分である場合が多い。ここで、洗浄操作を複数回行うか、一度の洗浄操作時間を十分に長くすることにより、より多くの阻害物質を除去できると考えられる。しかしながら、糞便試料中には糞便由来の様々な夾雑物が存在しており、操作が長引くと、核酸が分解等により損なわれる可能性が高くなる。また、洗浄操作を複数回行う場合には、生じる廃液等の量も大量となり、多量の糞便試料を調製する臨床検査等には不適当である。
これに対して、有効成分として水溶性有機溶媒をも含む本発明の試料調製用溶液と糞便を混合して得られた糞便試料は、主に水溶性有機溶媒の作用により、室温で長期間保存しても核酸を安定的に保存し得る。このため、調製された糞便試料は、十分量の阻害物質を除去するために必要十分な時間、室温で保存した場合であっても、核酸を安定して保持することができ、十分量の核酸を回収することができる。つまり、キレート剤やポリカチオン等の阻害作用低減効果を奏する有効成分と、水溶性有機溶媒との両方を試料調製用溶液の有効成分とすることによって、高純度の核酸を高効率で回収し得る糞便試料を調製することができる。
このように、糞便と本発明の試料調製用溶液とを混合した後に得られた糞便試料は、キレート剤等による阻害物質除去作用や、水溶性有機溶媒による脱水作用やタンパク質変性作用、核酸分解抑制作用により、糞便中の核酸、特に哺乳細胞等由来の糞便中に比較的少量しか存在していない核酸の保存性を効果的に向上させつつ、十分量の阻害物質を除去することができる。このため、糞便試料を本発明の調製方法により調製した場合には、調製直後の糞便試料のみならず、長期保存後又は輸送後の糞便試料を用いて核酸解析を行った場合であっても、信頼性の高い解析結果を得ることが期待できる。
<核酸含有試料中に含まれる核酸の解析方法>
本発明の調製試料は、核酸を含有するその他の生体試料と同様に、様々な解析に供することができる。特に、早期発見の要請の強い、がんの発症や感染症の罹患の有無を調べるための核酸解析に供されることが好ましい。また、大腸炎、小腸炎、胃炎、膵炎等の炎症性疾患の発症の有無を調べるための核酸解析に供されることも好ましい。その他、ポリープ等の***性病変の検査や胃潰瘍等の大腸、小腸、胃、肝臓、胆嚢、胆管の疾患の検査に供されてもよい。
核酸含有試料中に含まれる核酸を解析する方法としては、具体的には、核酸含有試料を、本発明の試料調製用溶液に混合させて、試料を調製した後、得られた調製試料中の細胞から核酸を回収し、抽出された核酸を解析する。調製試料中の細胞からの核酸の回収方法や、その後の解析方法は、特に限定されるものではなく、公知の回収方法や解析方法の中から適宜決定して用いることができる。
<核酸含有試料が糞便である場合の核酸含有試料の調製方法>
核酸含有試料が糞便である場合には、採取された糞便を、本発明の核酸含有試料の調製方法を用いて調製することにより、糞便に含まれている大腸剥離細胞等の哺乳細胞の分子学的プロファイリングに対する経時的な変化を最小限に抑えつつ、糞便中の核酸、特に哺乳細胞由来の核酸を長期間室温で安定して保存することができる。よって、検診等のスクリーニング検査のように、糞便採取後から核酸解析時まで間がある場合や、糞便採取場所が核酸解析場所から離れているような場合であっても、核酸、特に壊れやすいRNAの分解を抑制しつつ、本発明の調製方法を用いて調製した糞便試料を保存又は輸送することが可能である。また、冷蔵や冷凍のための特別な機器や保存温度条件を設定する必要がなく、簡便かつ低コストで糞便試料を保存又は輸送することができる。
特に、腸内常在菌以外の生物由来の核酸、すなわち、糞便中に大量に含まれている腸内常在菌由来の核酸よりも少量しか含まれていない核酸を標的核酸として解析する場合には、本発明の試料調製用溶液を用いて糞便を調製することが好ましい。***後時間の経過とともに、糞便中の核酸は分解等により徐々に損なわれていく。このため、標的核酸が糞便中に少量しか存在していない核酸である場合には、核酸の分解が進行した試料を用いて解析を行うと、解析に充分な量の標的核酸を回収することができず、***直後の糞便中には該標的核酸が存在していた場合であっても陰性(糞便中に該標的核酸は存在していない)と判断されるおそれが大きい。本発明の試料調製用溶液を用いて糞便を調製することにより、糞便中の核酸を安定して保存し得る結果、糞便中に少量しか存在していない核酸であっても、効率よく回収することができ、核酸解析の精度と感度を向上させることができる。
このような腸内常在菌以外の生物由来の核酸として、例えば、がん細胞由来の核酸等の哺乳細胞由来の核酸や、肝炎ウィルス等の感染症の初期または後期における該感染症の原因菌由来の核酸等がある。その他、寄生虫由来の核酸であってもよい。
なお、本発明において、腸内常在菌とは、糞便中に比較的大量に存在するバクテリア細胞であり、通常ヒト等の動物の腸内に生息する常在菌を意味する。該腸内常在菌として、例えば、Bacteroides属、Eubacterium属、Bifidobacterium属、Clostridium属等の偏性嫌気性菌や、Escherichia属、Enterobacter属、Klebsiella属、Citrobacter属、Enterococcus属等の通性嫌気性菌等がある。
例えば、糞便試料から、がん細胞由来の核酸、すなわち、変異等が起こっている核酸を検出し解析することにより、大腸がんや膵臓がん等のがんの発症の有無を検査することができる。また、糞便試料から、感染症等の原因である病原菌由来の核酸、例えばウィルス由来の核酸や寄生虫由来の核酸等が検出されるかどうかを調べることにより、感染症の罹患の有無や寄生虫の存在の有無を調べることができる。特に、A型・E型肝炎ウィルス等の糞便中に排出される病原菌の検出に糞便試料を用いることにより、非侵襲的かつ簡便に感染症検査を行うことができる。その他、腸内常在菌以外の病原バクテリア、例えば腸管出血性大腸菌O−157等の食中毒菌や病原菌由来の核酸が検出されるかどうかを調べることにより、細菌感染症の罹患の有無を調べることもできる。
特に、核酸解析により、新生物性転化を示すマーカーや炎症性消化器疾患を示すマーカーを検出することが好ましい。該新生物性転化を示すマーカーとして、例えば、がん胎児性抗原(CEA)、シアリルTn抗原(STN)等の公知のがんマーカーや、APC遺伝子、p53遺伝子、K−ras遺伝子等の変異の有無等がある。また、p16、hMLHI、MGMT、p14、APC、E−cadherin、ESR1、SFRP2等の遺伝子のメチル化の検出も、大腸疾患の診断マーカーとして有用である(例えば、Lind et al.、「A CpG island hypermethylation profile of primary colorectal carcinomas and colon cancer cell lines」、Molecular Cancer、2004年、第3巻第28章参照。)。その他、糞便試料中のヘリコバクターピロリ菌由来のDNAが、胃がんマーカーとして用いられ得ることが既に報告されている(例えばNilsson et al.、Journal of Clinical Microbiology、2004年、第42巻第8号、第3781〜8ページ参照。)。一方、炎症性消化器疾患を示すマーカーとして、例えば、Cox−2遺伝子由来核酸等がある。なお、Cox−2遺伝子由来核酸は、新生物性転化を示すマーカーとしても用いられる。
糞便試料中には、糞便由来の多種多様な物質が存在しており、核酸解析において阻害要因となり得る物質も多数存在している。このため、糞便試料を直接解析に用いるのではなく、糞便試料から核酸を回収し、回収された核酸を用いて核酸解析を行うことにより、解析の精度をより向上させることができる。前述したように、本発明の調製方法により調製された糞便試料からは、核酸を非常に効率よく回収することができ、かつ、糞便由来の阻害物質による阻害作用を十分に低減させることができるため、糞便中に大量に存在する腸内常在菌由来の核酸のみならず、微量に存在する哺乳細胞由来の核酸の解析に非常に好適な試料である。特に糞便であることから、大腸、小腸、胃等の消化管細胞由来の核酸を解析することが好ましく、大腸剥離細胞由来の核酸を解析することが特に好ましい。
糞便試料から核酸を回収する方法は、特に限定されるものではなく、試料から核酸を回収する場合に通常用いられる方法であれば、いずれの方法によっても行うことができる。本発明の糞便試料中には、主に哺乳細胞等の腸内常在菌以外の生物(以下、哺乳細胞等ということがある。)由来の核酸と、腸内常在菌由来の核酸が含まれている。糞便試料からの核酸回収においては、哺乳細胞等由来の核酸と腸内常在菌細胞由来の核酸を別々に回収してもよいが、同時に回収することが特に好ましい。哺乳細胞等由来の核酸と腸内常在菌由来の核酸を同時に回収することにより、糞便中に大量に存在する腸内常在菌由来の核酸がキャリアーとして機能する結果、少数である哺乳細胞等由来の核酸を、哺乳細胞等を予め糞便から単離した後に核酸を回収する場合よりも、非常に効率よく核酸を回収し得る。そして、このように回収された核酸を用いて核酸解析を行うことにより、大腸がん等の特定の疾患マーカーを非常に高感度かつ高精度に検出することがきる。なお、糞便試料から回収する核酸は、DNAであってもよく、RNAであってもよく、DNAとRNAの両方であってもよい。
例えば、工程(a)として、本発明の糞便試料中のタンパク質を変性させ、前記糞便試料中の哺乳細胞等及び腸内常在菌から、核酸を溶出させた後、工程(b)として、溶出させた核酸を回収することにより、本発明の糞便試料から哺乳細胞等由来の核酸と腸内常在菌由来の核酸を同時に回収することができる。
工程(a)における糞便試料中のタンパク質の変性は、公知の手法で行うことができる。例えば、糞便試料にカオトロピック塩、有機溶媒、界面活性剤等の、通常タンパク質の変性剤として用いられている化合物を添加することにより、糞便試料中のタンパク質を変性させることができる。工程(a)において糞便試料に添加し得るカオトロピック塩や界面活性剤は、本発明の試料調製用溶液に添加し得るカオトロピック塩及び界面活性剤として挙げたものと同様のものを用いることができる。有機溶媒としては、フェノールであることが好ましい。フェノールは中性であってもよく、酸性であってもよい。酸性のフェノールを用いた場合には、DNAよりもRNAを選択的に水層に抽出することができる。なお、工程(a)において、糞便試料にカオトロピック塩、有機溶媒、界面活性剤等を添加する場合には、1種類の化合物を添加してもよく、2種類以上の化合物を添加してもよい。
工程(a)の後工程(b)の前に、工程(c)として、工程(a)により変性させたタンパク質を除去してもよい。核酸を回収する前に、予め変性させたタンパク質を除去することにより、回収される核酸の品質を向上させることができる。工程(c)におけるタンパク質の除去は、公知の手法で行うことができる。例えば、遠心分離により、変性タンパク質を沈殿させて上清のみを回収することにより、変性タンパク質を除去することができる。また、クロロホルムを添加し、ボルテックス等により充分に攪拌混合させた後に遠心分離を行い、変性タンパク質を沈殿させて上清のみを回収することにより、単に遠心分離を行う場合よりも、より完全に変性タンパク質を除去することができる。
工程(b)における溶出させた核酸の回収は、エタノール沈殿法や塩化セシウム超遠心法等の公知の手法で行うことができる。また、工程(b1)として、工程(a)において溶出させた核酸を無機支持体に吸着させた後、工程(b2)として、工程(b1)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させることにより、核酸を回収することができる。工程(b1)において核酸を吸着させる無機支持体は、核酸を吸着することができる公知の無機支持体を用いることができる。また、該無機支持体の形状も特に限定されるものではなく、粒子状であってもよく、膜状であってもよい。該無機支持体として、例えば、シリカゲル、シリカ質オキシド、ガラス、珪藻土等のシリカ含有粒子(ビーズ)や、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ニトロセルロース等の多孔質膜等がある。工程(b2)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる溶媒は、回収する核酸の種類やその後の核酸解析方法等を考慮して、これらの公知の無機支持体から核酸を溶出するために通常用いられている溶媒を適宜用いることができる。該溶出用溶媒として、特に精製水であることが好ましい。なお、工程(b1)の後、工程(b2)の前に、核酸を吸着させた無機支持体を適当な洗浄バッファーを用いて洗浄することが好ましい。
なお、糞便試料が、哺乳細胞等から核酸を溶出するために充分な濃度のカオトロピック塩や界面活性剤を含む試料調製用溶液を用いて調製されている場合には、該糞便試料からの核酸の回収において、工程(a)を省略することもできる。
糞便試料が、哺乳細胞等から核酸を溶出するために充分な濃度のカオトロピック塩や界面活性剤を含まない試料調製用溶液を用いて調製されている場合には、工程(a)の前に、工程(d)として、糞便試料から固形成分を回収することが好ましい。糞便試料は、糞便と試料調製用溶液を迅速に混合させるために、糞便中の固形成分に対する液体成分の比率が大きい。そこで、糞便試料から試料調製用溶液を除去し、哺乳細胞等や腸内常在菌を含む固形成分のみを回収することにより、核酸の回収及び解析におけるスケールを小さくすることができる。また、固形成分から水溶性有機溶媒を除去することにより、該固形成分から核酸を回収する工程における水溶性有機溶媒の影響を抑えることもできる。例えば、本発明の糞便試料を遠心分離することにより、固形成分を沈殿させ、上清を除去することにより、固形成分のみを回収することができる。その他、フィルター濾過等によっても、固形成分のみを回収することができる。さらに、回収された固形成分をPBS(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4)等の適当なバッファーを用いて洗浄することも好ましい。
なお、回収された固形成分に、カオトロピック塩等のタンパク質変性剤を直接添加してもよいが、一度適当な溶出用薬剤に懸濁させた後にタンパク質変性剤を添加することが好ましい。DNAを回収する場合には、該溶出用薬剤として、例えば、リン酸バッファーやトリスバッファー等を用いることができる。高圧蒸気滅菌等により、DNaseを失活させた薬剤であることが好ましく、さらにプロテイナーゼK等のタンパク質分解酵素を含有させた薬剤であることがより好ましい。一方、RNAを回収する場合には、該溶出用薬剤として、例えば、クエン酸バッファー等を用いることができるが、RNAは非常に分解され易い物質であるため、チオシアン酸グアニジンや塩酸グアニジン等のRNase阻害剤を含有したバッファーを用いることが好ましい。
その後の解析方法によっては、糞便試料から核酸を回収しなくてもよい。具体的には、糞便試料中の哺乳細胞等や腸内常在菌から核酸を溶出させた後、そのまま核酸解析に用いることができる。例えば、糞便試料中に病原菌等が大量に存在している場合であって、該病原菌由来の核酸を解析する場合には、糞便試料から固形成分のみを回収した後、プロテイナーゼK等のタンパク質分解酵素を含有するPBS等の溶出用薬剤を添加して混合することにより得た均一な糞便試料溶液を、そのまま核酸解析に用いることにより、病原菌由来の遺伝子等を検出することができる。その他、糞便試料からの核酸の回収は、核酸抽出キットやウィルス検出キット等の市販のキットを用いて行うこともできる。
本発明の糞便試料より回収された核酸は、公知の核酸解析方法を用いて解析することができる。該核酸解析方法として、例えば、核酸を定量する方法や、PCR等を用いて特定の塩基配列領域を検出する方法等がある。その他、RNAを回収した場合には、逆転写反応によりcDNAを合成した後、該cDNAを用いて、DNAと同様にして解析に用いることができる。例えば、がん遺伝子等がコードされている塩基配列領域や、マイクロサテライトを含む塩基配列領域等の遺伝的変異の有無を検出することにより、がんの発症の有無を調べることができる。糞便試料から回収されたDNAを用いた場合には、例えば、DNA上の変異解析やエピジェネティック変化解析を行うことができる。変異解析としては、例えば、塩基の挿入、欠失、置換、重複、又は逆位の解析等が挙げられる。また、エピジェネティック変化解析としては、例えば、メチル化や脱メチル化の解析等が挙げられる。一方、回収されたRNAを用いた場合には、例えば、RNA上の塩基の挿入、欠失、置換、重複、逆位、又はスプライシングバリアント(アイソフォーム)等の変異を検出することができる。その他、機能性RNA(ノンコーディングRNA)解析、例えば、転移RNA(transfer RNA、tRNA)、リボソームRNA(ribosomal RNA、rRNA)、microRNA(miRNA、マイクロRNA)等の解析を行うことができる。また、RNA発現量を検出し解析することもできる。特に、mRNAの発現解析、K−ras遺伝子の変異解析、及びDNAのメチル化の解析等を行うことが好ましい。なお、これらの解析は、当該分野において公知の方法により行うことができる。また、K−ras遺伝子変異解析キット、メチル化検出キット等の市販の解析キットを用いてもよい。
このように、本発明の糞便試料の調製方法、該調製方法により調製された糞便試料からの核酸回収方法、及び該核酸回収方法により回収された核酸を用いた核酸解析方法を用いることにより、糞便中の核酸を高感度かつ高精度に解析することができるため、大腸がんをはじめ、様々な症状や疾患の早期発見や診断、治療経過の観察、及び他の異常な容態の病理学的研究等に資することが期待できる。
予め本発明の試料調製用溶液を含有させた採便容器に糞便を採取することにより、より簡便かつ迅速に採取された糞便を調製することができる。また、本発明の試料調製用溶液と、該試料調製用溶液を含有する採便容器と、を有する採便用キットを用いることにより、より簡便に本発明の効果を発揮することができる。なお、該採便用キットには、採便棒等の、該試料調製用溶液及びそれを含有する採便容器以外の構成物を適宜有していてもよい。
このような採便容器の形態や大きさ等は特に限定されるものではなく、溶媒を含有し得る公知の採便容器を用いることができる。取り扱いが簡便であるため、採便容器の蓋と採便棒が一体化している採便容器であることが好ましい。また、採便量をコントロールすることができるため、採便棒が一定量の糞便を採取し得るものであることがより好ましい。このような公知の採便容器として、例えば、特公平6−72837号公報に開示されている採便容器等がある。
図1及び図2は、本発明の採便用キットに用いることができる採便容器の一態様をそれぞれ示した図である。なお、本発明の採便用キットに用いることができる採便容器は、これらの採便容器に限定されるものではない。
まず図1の採便容器について説明する。採便棒3と一体化した蓋2と、容器本体1を有し、内部に本発明の試料調製用溶液Sを含有する採便容器である。採便棒3の先端には糞便を一定量採取し得るカップ3aがあり、かつカップ3aには篩目がある。一方、容器本体1の底部には、カップ3aと補足的な形状となる***部1aがある。カップ3aを***部1aに勘合させることにより、カップ3aに採取された糞便は、カップ3aにある篩目からところてんのように押し出されるため、試料調製用溶液Sに糞便を速やかに分散させることができる。
図2記載の採便容器は、先端が尖っている採便棒13と一体化した蓋12と、容器本体11を有し、容器本体11内部に、本発明の試料調製用溶液Sを含有する密封された袋15を有する採便容器である。採便棒13には、糞便Eを一定量採取し得る穴13aが空いている。また、採便棒13上をスライドすることにより穴13aの蓋となり得る可動蓋13bも付いている。図2aのように、まず、採便棒13を、可動蓋13bを穴13aよりも蓋12側に寄せて、穴13aが完全に開口している状態とした後に、糞便Eに押し付ける。すると図2bに示すように、穴13aに糞便Eが充填される。この状態で、可動蓋13bをスライドさせて穴13aに蓋をすることにより、穴13aの容量の糞便を正確に採取することができる(図2c)。その後、可動蓋13bを元の位置に戻して穴13aが完全に開口している状態とした後に(図2d)、蓋12を容器本体11に収納する(図2e)。採便棒13が容器本体11に収納される際に、採便棒13の尖った先端が試料調製用溶液Sを含有する袋15を破ることにより、試料調製用溶液Sと糞便Eが混合される。このような採便容器は、採便棒を容器に入れて始めて溶液が容器中に満たされるため、メタノールのような人体に有害な試料調製用溶液を用いる場合であっても、溶液漏れによる事故を回避することができ、家庭でも安全に取り扱うことが出来る。
<核酸含有試料から回収された核酸の解析方法>
ポリカチオンによる阻害作用低減効果は、核酸を、逆転写反応や塩基鎖伸長反応を用いて解析する際の反応溶液に添加することによっても得ることができる。すなわち、本発明の第2の核酸の解析方法は、核酸含有試料から回収された核酸に対して、逆転写反応又は塩基鎖伸長反応を、ポリカチオンを含有する反応溶液中で行うことを特徴とする。なお、塩基鎖伸長反応は、上記で挙げられたものと同様である。
本発明の第2の核酸の解析方法に供される核酸は、本発明の核酸含有試料の調製方法により得られた調製試料から回収された核酸であってもよく、本発明の核酸含有試料の調製方法以外の方法により調製された核酸含有試料から回収された核酸であってもよい。
反応溶液中に添加するポリカチオンは、上記で挙げられたものと同様のものを用いることができる。本発明の第2の核酸の解析方法においては、ポリカチオンとして、ポリリジン又はポリアクリルアミドであることが好ましく、ポリリジンであることがより好ましい。なお、該反応溶液に含有させるポリカチオンは、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
逆転写反応や塩基鎖伸長反応の反応溶液の組成は、ポリカチオンを添加する以外は、通常逆転写反応や塩基鎖伸長反応を行う場合に用いられる試薬を、通常用いられる量で用いることができる。また、逆転写反応や塩基鎖伸長反応の反応条件は、使用する酵素の種類、プライマーのTm値等に基づいて決定される反応条件で、通常行われる方法により行うことができる。該反応条件の決定方法は、当該技術分野においてよく知られている。
次に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に記載が無い場合には、「%」は「体積%」を意味する。また、培養細胞であるCaco−2細胞は、常法により培養した。ポリリジンは、SIGMA社製のものを用いた。
[実施例1]
健常人1名より採取された糞便を、8本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ0.5gずつ分取した。分取後、各糞便に対して、試料調製用溶液として、60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料1−1)、ポリリジン(終濃度0.0125m重量%)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料1−2)、ポリリジン(終濃度0.025m重量%)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料1−3)、ポリリジン(終濃度0.05m重量%)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料1−4)、ポリリジン(終濃度0.1m重量%)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料1−5)、ポリリジン(終濃度0.2m重量%)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料1−6)、ポリリジン(終濃度0.4m重量%)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料1−7)、及びポリリジン(終濃度0.8m重量%)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料1−8)を、各10mL加えて、各溶液に糞便を分散させて、糞便試料を調製した。なお、糞便試料1−1〜8の調製に用いた前記糞便試料調製用溶液は、いずれも、最終pHが5.5となるように、0.1Mクエン酸/水酸化ナトリウム溶液を用いて予め調整した溶液である。
各糞便試料を、25℃で1日間保存した後、RNAを回収した。具体的には、各チューブを遠心処理して糞便の固形成分を回収した後、フェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、ボモジナイザーで十分に混合した後、クロロホルムを添加し、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を、RNeasy midi kit(Qiagen社製)のRNA回収用カラムに通し、添付のプロトコールに従って該RNA回収用カラムの洗浄操作及びRNA溶出操作を行うことにより、RNAを回収した。
回収されたRNA1μgに対してRT−PCRを行い、ヒトGAPDH遺伝子の検出を行った。PCRのプライマーとして、アプライドバイオシステム社製のGAPDHプライマープローブMIX(カタログNo:Hs02786624_gl)を用いた。
具体的には、0.2mLの96ウェルPCRプレートに、得られたcDNAを1μLずつそれぞれ分取した。その後、各ウェルに8μLの超純水と10μLの核酸増幅(塩基鎖伸長)試薬「TaqMan GeneExpression Master Mix」(アプライドバイオシステム社製)を添加し、さらに、1μLのGAPDHプライマープローブMIX(アプライドバイオシステム社製)をそれぞれ添加して混合し、PCR反応溶液を調製した。
該PCRプレートを、ABIリアルタイムPCR装置に設置し、95℃で10分間処理した後、95℃で1分間、56.5℃で1分間、72℃で1分間の熱サイクルを40サイクル行った後、さらに72℃で7分間処理することにより、経時的に蛍光強度を計測しながらPCRを行った。蛍光強度の計測結果を分析して、各糞便試料から回収されたRNA中のGAPDH遺伝子の発現量の相対値を算出した。算出した結果を図3に示す。
図3に示すように、試料調製用溶液として、ポリカチオン(ポリリジン)と水溶性有機溶媒(エタノール)とを両方含有する溶液を用いて調製された糞便試料から回収された核酸を用いることにより、水溶性有機溶媒のみを含有する溶液を用いた場合よりも、PCRにより検出される標的核酸(ヒトGAPDH遺伝子)の量が多く、反応効率が高いことが分かった。また、糞便試料1−6から回収された核酸が最も反応効率が高かったことから、ポリリジンによる阻害物質による阻害作用の低減作用は、至適濃度があり、ポリリジンの濃度が高いと逆に反応阻害が起こることも分かった。
これらの結果から、ポリカチオン及び水溶性有機溶媒を有効成分とする試料調製用溶液を用いることにより、糞便由来の阻害物質による阻害作用を低減させた核酸を高効率で回収し得る糞便試料を調製できることが明らかである。
[実施例2]
ポリカチオンを含有する反応溶液中で塩基鎖伸長反応を行った。
具体的には、まず、健常人1名より採取された糞便に、直接フェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、ボモジナイザーで十分に混合した後、クロロホルムを添加し、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を、RNeasy midi kit(Qiagen社製)のRNA回収用カラムに通し、添付のプロトコールに従って該RNA回収用カラムの洗浄操作及びRNA溶出操作を行うことにより、RNAを回収した。
回収されたRNA1μgに対して、ポリリジンを含有させた反応溶液中において、RT(逆転写反応)を行った。RTの反応溶液に、ポリリジンを含有させなかった場合に得られたcDNAを核酸試料2−1、ポリリジンを最終濃度が0.125m重量%、0.25m重量%。0.5m重量%、1m重量%、2m重量%、4m重量%、8m重量%となるように含有させた場合に得られたcDNAをそれぞれ核酸試料2−2〜8とした。
これらの核酸試料(cDNA)1μLに対して、実施例1と同様にして、GAPDHプライマープローブMIX(アプライドバイオシステム社製)を用いてPCRを行い、ヒトGAPDH遺伝子の検出を行った。蛍光強度の計測結果を分析して、各糞便試料から回収されたRNA中のGAPDH遺伝子の発現量の相対値を算出した。算出した結果を図4に示す。
この結果、等量のRNAが含有されていたにもかかわらず、ポリリジンを含有していない反応溶液中でRTを行った核酸試料2−1よりも、ポリリジンを最終濃度が0.125〜4m重量%含有する反応溶液中でRTを行った核酸試料2−2〜7において、GAPDH遺伝子の発現量が多い、という結果が得られた。これは、核酸試料2−1よりも核酸試料2−2〜7のほうが、RT−PCRの反応効率が高かったためと考えられる。なお、ポリリジンを最終濃度が8m重量%含有する反応溶液中でRTを行った核酸試料2−8では、核酸試料2−1よりも反応効率が低く、実施例1と同様に、ポリリジンの濃度が高いと逆に反応阻害が起こることも分かった。
これらの結果から、逆転写反応又は塩基鎖伸長反応を、ポリカチオンを含有する反応溶液中で行うことにより、核酸と共に持ち込まれた阻害物質による阻害作用を抑えられ、反応効率が向上することが明らかである。
[実施例3]
健常人1名より採取された糞便から、実施例2と同様にして、RNAを回収した。
回収されたRNA1μgに対して、ポリリジン、塩化カルシウム(和光純薬社製)、又は塩化マグネシウム6水和物(和光純薬社製)を含有させた反応溶液中において、RT(逆転写反応)を行った。RTの反応溶液に、ポリリジン、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウム6水和物の何れも含有させなかった場合に得られたcDNAを核酸試料3−1、ポリリジンを最終濃度が1m重量%となるように含有させた場合に得られたcDNAを核酸試料3−2、塩化カルシウムを最終濃度が0.1mM、1mM、10mMとなるように含有させた場合に得られたcDNAをそれぞれ核酸試料3−3〜5、塩化マグネシウム6水和物を最終濃度が0.1mM、1mM、10mMとなるように含有させた場合に得られたcDNAをそれぞれ核酸試料3−6〜8とした。
これらの核酸試料(cDNA)1μLに対して、実施例1と同様にして、GAPDHプライマープローブMIX(アプライドバイオシステム社製)を用いてPCRを行い、ヒトGAPDH遺伝子の検出を行った。蛍光強度の計測結果を分析して、各糞便試料から回収されたRNA中のGAPDH遺伝子の発現量の相対値を算出した。算出した結果を図5に示す。
この結果、ポリリジンを含有させた反応溶液中でRTを行った核酸試料3−2は、対照試料である核酸試料3−1よりも、GAPDH遺伝子の発現量が8倍以上も多い、という結果が得られた。これに対して、塩化カルシウム又は塩化マグネシウム6水和物を含有させた反応溶液中でRTを行った核酸試料3−4〜8では、反応溶液中に含有させた濃度依存的にGAPDH遺伝子の発現量が低下した。詳細には、塩化カルシウムを含有させた核酸試料では、GAPDH遺伝子の発現量は、最終濃度が0.1mMである核酸試料3−3では、核酸試料3−1とほぼ同量であったが、最終濃度が1mMである核酸試料3−4では核酸試料3−1の約半分となり、最終濃度が10mMである核酸試料3−5では検出感度以下であった。同様に、塩化マグネシウム6水和物を含有させた核酸試料でも、GAPDH遺伝子の発現量は、最終濃度が0.1mMである核酸試料3−6では、核酸試料3−1とほぼ同量であったが、最終濃度が1mMである核酸試料3−7では核酸試料3−1の約半分となり、最終濃度が10mMである核酸試料3−8では検出感度以下であった。
これらの結果から、反応溶液中にポリリジンを含有させることにより、RT−PCRの反応効率を向上させることができるが、塩化カルシウム又は塩化マグネシウム6水和物等の金属イオンを含有させた場合には、反応が阻害されることが確認された。これは、高濃度の金属イオンはPCRの反応を阻害することが報告されていることから(例えば、Applied and Environmental Microbiology、1998年、第64巻第10巻、第3748〜53ページ参照。)、RT反応溶液からPCR反応溶液へ持ち込まれる金属イオンにより、PCRの反応が阻害されたためと推察される。このため、RT反応溶液中に高濃度の金属イオンを含有させた場合には、得られたcDNAは、PCRに用いる前に、エタノール沈殿法等により精製しなければならない。これに対して、ポリリジンは、PCRの反応を阻害しないため、RT反応溶液中にポリリジンを含有させた場合であっても、得られたcDNAは精製することなく、直接PCRに用いることができ、かつ、阻害作用低減効果も非常に優れている。
[実施例4]
実施例2と同様にして、ポリカチオンを含有する反応溶液中で塩基鎖伸長反応を行った。
具体的には、まず、新生物性転化を示すマーカーであるCox−2遺伝子の発現が確認されている大腸癌患者1名より採取された糞便に、直接フェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、ボモジナイザーで十分に混合した後、クロロホルムを添加した。ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を、RNeasy midi kit(Qiagen社製)のRNA回収用カラムに通し、添付のプロトコールに従って該RNA回収用カラムの洗浄操作及びRNA溶出操作を行うことにより、RNAを回収した。
回収されたRNA1μgに対して、ポリリジンを含有させた反応溶液中において、RT(逆転写反応)を行った。RTの反応溶液に、ポリリジンを含有させなかった場合に得られたcDNAを核酸試料4−1、ポリリジンを最終濃度が0.125m重量%、0.25m重量%。0.5m重量%、1m重量%、2m重量%、4m重量%、8m重量%となるように含有させた場合に得られたcDNAをそれぞれ核酸試料4−2〜8とした。
これらの核酸試料(cDNA)1μLに対して、Cox−2プライマープローブMIX(アプライドバイオシステム社製)を用いてPCRを行い、ヒトCox−2遺伝子の検出を行った。蛍光強度の計測結果を分析して、各糞便試料から回収されたRNA中のCox−2遺伝子の発現量の相対値を算出した。
この結果、GAPDHでの結果と同様に、等量のRNAが含有されていたにもかかわらず、ポリリジンを含有していない反応溶液中でRTを行った核酸試料4−1よりも、ポリリジンを最終濃度が0.125〜4m重量%含有する反応溶液中でRTを行った核酸試料4−2〜7において、Cox−2遺伝子の発現量が多い、という結果が得られた。これは、核酸試料4−1よりも核酸試料4−2〜7のほうが、RT−PCRの反応効率が高かったためと考えられる。なお、ポリリジンを最終濃度が8m重量%含有する反応溶液中でRTを行った核酸試料4−8では、核酸試料4−1よりも反応効率が低く、実施例1と同様に、ポリリジンの濃度が高いと逆に反応阻害が起こることも分かった。
[実施例5]
健常人1名より採取された糞便を、5本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ0.5gずつ分取した。分取後、各糞便に対して、糞便試料調製用溶液として、60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料5−1)、EDTA(終濃度0.1mM)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料5−2)、EDTA(終濃度1mM)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料5−3)、EDTA(終濃度10mM)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料5−4)を、各10mL加えて、各溶液に糞便を浸漬させて、糞便試料を調製した。なお、糞便試料5−1〜4の調製に用いた前記糞便試料調製用溶液は、いずれも、最終pHが5.5となるように、0.1Mクエン酸/水酸化ナトリウム溶液を用いて予め調整した溶液である。
各糞便試料を、25℃で7日間保存した後、RNAを回収した。具体的には、各チューブを遠心処理して糞便の固形成分を回収した後、フェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、ボモジナイザーで十分に混合した後、クロロホルムを添加し、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を、RNeasy midi kit(Qiagen社製)のRNA回収用カラムに通し、添付のプロトコールに従って該RNA回収用カラムの洗浄操作及びRNA溶出操作を行うことにより、RNAを回収した。回収されたRNA量は糞便試料5−1〜4のいずれも、共に約40μgであり、RNA収量はほぼ同等であった。
回収されたRNA1μgに対してRT−PCRを行い、ヒトGAPDH遺伝子の検出を行った。PCRのプライマーとして、アプライドバイオシステム社製のGAPDHプライマープローブMIX(カタログNo:Hs02786624_gl)を用いた。
具体的には、0.2mLの96ウェルPCRプレートに、得られたcDNAを1μLずつそれぞれ分取した。その後、各ウェルに8μLの超純水と10μLの核酸増幅試薬「TaqMan GeneExpression Master Mix」(アプライドバイオシステム社製)を添加し、さらに、1μLのGAPDHプライマープローブMIX(アプライドバイオシステム社製)をそれぞれ添加して混合し、PCR反応溶液を調製した。
該PCRプレートを、ABIリアルタイムPCR装置に設置し、95℃で10分間処理した後、95℃で1分間、56.5℃で1分間、72℃で1分間の熱サイクルを40サイクル行った後、さらに72℃で7分間処理することにより、経時的に蛍光強度を計測しながらPCRを行った。蛍光強度の計測結果を分析して、各糞便試料から回収されたRNA中のGAPDH遺伝子の発現量の相対値を算出した。算出した結果を図6に示す。
図6に示すように、糞便試料調製用溶液として、キレート剤(EDTA)と水溶性有機溶媒(エタノール)とを両方含有する溶液を用いて調製された糞便試料から回収された核酸を用いることにより、水溶性有機溶媒のみを含有する溶液を用いた場合よりも、PCRにより検出される標的核酸(ヒトGAPDH遺伝子)の量が多く、反応効率が高かった。
糞便試料から回収されるRNA量は、キレート剤添加の有無に関わらずほぼ同量であったにも関わらず、糞便試料調製用溶液にキレート剤を添加した糞便試料から回収されたRNAのほうが、キレート剤無添加の糞便試料調製用溶液を用いて調製された糞便試料から回収されたRNAよりも、PCR反応効率がよいことは、キレート剤を添加した糞便試料から回収されたRNAのほうが、糞便からのPCR阻害物質のキャリーオーバーが少なく、純度が高いためである。つまり、これらの結果から、キレート剤及び水溶性有機溶媒を有効成分とする糞便試料調製用溶液を用いることにより、高純度の核酸を高効率で回収し得る糞便試料を調製できることが明らかである。
[実施例6]
EDTAを含有する反応溶液中で、塩基鎖伸長反応を行った。
具体的には、まず、新生物性転化を示すマーカーであるCox−2遺伝子の発現が確認されている大腸癌患者1名より採取された糞便を、実施例1と同様に、5本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ0.5gずつ分取した。分取後、各糞便に対して、糞便試料調製用溶液として、60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料6−1)、EDTA(終濃度0.1mM)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料6−2)、EDTA(終濃度1mM)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料6−3)、EDTA(終濃度10mM)含有60%エタノール溶液(pH5.5;糞便試料6−4)を、各10mL加えて、各溶液に糞便を浸漬させて、糞便試料を調製した。なお、糞便試料6−1〜4の調製に用いた前記糞便試料調製用溶液は、いずれも、最終pHが5.5となるように、0.1Mクエン酸/水酸化ナトリウム溶液を用いて予め調整した溶液である。
各糞便試料を、25℃で7日間保存した後、RNAを回収した。具体的には、各チューブを遠心処理して糞便の固形成分を回収した後、フェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、ボモジナイザーで十分に混合した後、クロロホルムを添加し、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を、RNeasy midi kit(Qiagen社製)のRNA回収用カラムに通し、添付のプロトコールに従って該RNA回収用カラムの洗浄操作及びRNA溶出操作を行うことにより、RNAを回収した。回収されたRNA量は糞便試料6−1〜4のいずれも、共に約40μgであり、RNA収量はほぼ同等であった。
回収されたRNA1μgに対してRT−PCRを行い、ヒトCox−2遺伝子の検出を行った。PCRのプライマーとして、アプライドバイオシステム社製のCox−2プライマープローブMIXを用いた。
具体的には、0.2mLの96ウェルPCRプレートに、得られたcDNAを1μLずつそれぞれ分取した。その後、各ウェルに8μLの超純水と10μLの核酸増幅試薬「TaqMan GeneExpression Master Mix」(アプライドバイオシステム社製)を添加し、さらに、1μLのCox−2プライマープローブMIX(アプライドバイオシステム社製)をそれぞれ添加して混合し、PCR反応溶液を調製した。
該PCRプレートを、ABIリアルタイムPCR装置に設置し、95℃で10分間処理した後、95℃で1分間、56.5℃で1分間、72℃で1分間の熱サイクルを40サイクル行った後、さらに72℃で7分間処理することにより、経時的に蛍光強度を計測しながらPCRを行った。蛍光強度の計測結果を分析して、各糞便試料から回収されたRNA中のCox−2遺伝子の発現量の相対値を算出した。
実施例5と同様に、糞便試料調製用溶液として、キレート剤(EDTA)と水溶性有機溶媒(エタノール)とを両方含有する溶液を用いて調製された糞便試料から回収された核酸を用いることにより、水溶性有機溶媒のみを含有する溶液を用いた場合よりも、PCRにより検出される標的核酸(ヒトCox−2遺伝子)の量が多く、反応効率が高かった。
糞便試料から回収されるRNA量は、キレート剤添加の有無に関わらずほぼ同量であったにも関わらず、糞便試料調製用溶液にキレート剤を添加した糞便試料から回収されたRNAのほうが、キレート剤無添加の糞便試料調製用溶液を用いて調製された糞便試料から回収されたRNAよりも、PCR反応効率がよいことは、キレート剤を添加した糞便試料から回収されたRNAのほうが、糞便からのPCR阻害物質のキャリーオーバーが少なく、純度が高いためである。つまり、これらの結果から、キレート剤及び水溶性有機溶媒を有効成分とする糞便試料調製用溶液を用いることにより、高純度の核酸を高効率で回収し得る糞便試料を調製できることが明らかである。
[参考例1]
健常人1名より採取された糞便を、3本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ1gずつ分取した。このうち1本に対して、分取直後、速やかに液体窒素を用いて凍結処理を行い、糞便試料(1A)とした。他の1本に対して、分取後、10mLの70%エタノール溶液を加えて糞便をよく分散させた後、室温で1時間静置し、糞便試料(1B)とした。残りの1本は、分取後、溶液等を添加せずに速やかに抽出工程に移行させ、これを糞便試料(1C)とした。
その後、各糞便試料からRNAを回収した。具体的には、各糞便試料に、3mLのフェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、30秒以上ボモジナイザーで十分に混合した後、3mLのクロロホルムを添加し、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を、RNeasy midi kit(Qiagen社製)のRNA回収用カラムに通し、添付のプロトコールに従って該RNA回収用カラムの洗浄操作及びRNA溶出操作を行うことにより、RNAを回収した。ナノドロップ(ナノドロップ社製)を用いて、回収したRNAの定量を行った。
図7は、各糞便試料から回収されたRNA量を示した図である。本発明の糞便試料調製用溶液であるエタノール溶液を用いて調製された糞便試料(1B)からは、採取直後に凍結処理を行った糞便試料(1A)から回収されたRNA量には若干及ばないものの、採取直後速やかに核酸抽出を行った糞便試料(1C)に比べて、非常に多くのRNAを回収することができた。これらの結果から、本発明の糞便試料調製用溶液を用いて調製することにより、室温での調製であっても、非常に効率よく核酸を回収し得る糞便試料が得られることが明らかである。検診等の場合のように、患者が自宅で採便する場合には、糞便試料の調製を室温付近で行えることが望まれるが、本発明の糞便試料調製用溶液は、このような要請に充分に応えることが可能である。
[参考例2]
健常人の糞便0.5gに対し、MDR1(multidrug resistance 1)遺伝子を高発現しているヒト大腸がん由来培養細胞Caco−2細胞を5.0×10cells混合させたものを、大腸がん患者擬似糞便とし、該糞便を本発明の糞便試料の調製方法により糞便試料を調製した。
具体的には、該大腸がん患者擬似糞便を、15mLのポリプロピレンチューブに0.5gずつ分取し、表1記載の糞便試料調製用溶液をそれぞれ添加して混合して、糞便試料を調製した。なお、表中、「普遍的収集培地」とは、特許文献4に記載の保存培地(500mLのPack食塩水G、400mgの重炭酸ナトリウム、10gのBSA、500units/Lのpenicillin G、500mg/Lの硫酸ストレプトマイシン、1.25mg/Lのamphortericin B、50mg/Lのgentamicin)である。調製した糞便試料を、室温(25℃)の恒温インキュベータにおいて、1、3、7、10日間、それぞれ保存した。
Figure 2010064628
保存後、各糞便試料からRNAを回収し、回収されたRNAに対して、MDR1遺伝子の転写産物であるmRNAの検出を試みた。糞便試料調製用溶液(2C)を用いて調製した糞便試料(以下、糞便試料(2C)という。)に対しては、まず、Caco−2細胞を含む哺乳細胞を分離した後、RNAの回収を行った。糞便試料調製用溶液(2C)以外の糞便試料調製用溶液を用いて調製した糞便試料に対しては、哺乳細胞を分離せず、哺乳細胞由来の核酸とバクテリア由来の核酸を同時に回収した。糞便試料(2C)からの哺乳細胞の分離は、具体的には、糞便試料(2C)に5mLのヒストパック1077溶液(Sigma社製)を添加して混合した後、200×g、30分間室温で遠心分離処理を行い、懸濁液とヒストパック1077溶液の間の界面を回収することにより行った。分離した哺乳細胞は、PBSで3回洗浄した。
糞便試料からのRNAの回収は、具体的には、次のようにして行った。まず、糞便試料(糞便試料(2C)のみ分離した哺乳細胞)に、3mLのフェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、30秒以上ボモジナイザーで十分に混合した後、3mLのクロロホルムを添加し、12,000×gで10分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を新しいポリプロピレンチューブに回収した。その後、RNeasy midi kit(Qiagen社製)を用いて、回収された上清からRNAを回収した。
回収されたRNAに対してRT−PCRを行った。プライマーとして、配列番号1の塩基配列を有するMDR1遺伝子増幅用のフォワードプライマーと、配列番号2の塩基配列を有するMDR1遺伝子増幅用のリバースプライマーを用いた。
具体的には、0.2mLのPCRチューブに、12μLの超純水と2μLの10×バッファーを添加し、さらにcDNA、該フォワードプライマー、該リバースプライマー、塩化マグネシウム、dNTP、及びDNAポリメラーゼをそれぞれ1μLずつ添加して混合し、PCR反応溶液を調製した。該PCRチューブを、95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で1分間を30サイクル、からなる反応条件によりPCRを行った。この結果、得られたPCR産物を、Agilent DNA1000 LabChip(登録商標)キット(アジレント社製)を用いて泳動し、得られたバンドの強度を測定し、PCR産物の増幅程度を調べた。
Figure 2010064628
表2は、各糞便試料由来のPCR産物の増幅程度を、保存期間ごとにまとめた表である。なお、表中「糞便試料(2A)」は、糞便試料調製用溶液(2A)を用いて調製した糞便試料を、「糞便試料(2B)」は、糞便試料調製用溶液(2B)を用いて調製した糞便試料を、「糞便試料(2D)」は、糞便試料調製用溶液(2D)を用いて調製した糞便試料を、それぞれ意味する。
この結果、糞便試料(2D)では、保存期間が1日の場合にはPCR産物の増幅が確認されたが、保存期間3日以降は、増幅が確認できなかった。これに対して、本発明の糞便試料調製用溶液である糞便試料調製用溶液(2A)や糞便試料調製用溶液(2B)を用いて調製された糞便試料(2A)及び(2B)では、保存期間10日においてもPCR産物の増幅を確認することができた。一方で、特許文献4記載の糞便試料調製用溶液(2C)を用いて調製された糞便試料(2C)では、保存期間1日であってもPCR産物の増幅は確認することができなかった。
以上の結果から、本発明の調製方法により調製された糞便試料からは、糞便中に含まれている核酸を効率よく回収することができることが明らかである。また、本発明の糞便試料を用いることにより、RNA解析の精度を向上し得ることも明らかである。これは、本発明の糞便試料用溶液を用いることにより、糞便中に含まれる哺乳細胞由来の核酸、特に分解され易いRNAでさえも、室温で長期間保存可能なほど安定して保持し得るためと推察される。
一方で、糞便試料(2C)由来のPCR産物では増幅が確認されなかったことから、糞便試料調製用溶液として抗生物質を含有する溶液を用いた場合には、該抗生物質により糞便中のバクテリア細胞は殺菌されるものの、死滅したバクテリア細胞からRNase等が放出される等により、却ってRNA分解が促進される可能性が示唆される。また、糞便に含まれる哺乳細胞数は少ないため、糞便から哺乳細胞を分離した場合には、バクテリア細胞由来の核酸がキャリアーとして機能し得る本発明の核酸の回収方法と比較して、充分量の核酸を回収することが困難である可能性も示唆される。
[参考例3]
超純水を用いて希釈することにより、0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%のエタノール溶液をそれぞれ調製した。これらのエタノール溶液を、各5mLずつ15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ分注した。
これらのチューブに、健常人より採取した糞便0.5gをそれぞれ分取した後、37℃で48時間静置した。その後、各チューブを遠心分離処理し、上清を除去して得られた固形成分に、3mLのフェノール混合物「Trizol」(Invitorogen社製)を添加し、30秒以上ボモジナイザーで十分に混合した後、3mLのクロロホルムを添加し、12,000×gで10分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を新しいポリプロピレンチューブに回収した。その後、RNeasy midi kit(Qiagen社製)を用いて、回収された上清からRNAを回収した。
図8は、各濃度のエタノール溶液を用いて調製された糞便試料から回収されたRNA量を示した図である。この結果、糞便試料調製用溶液の有効成分としてエタノール等のアルコールを用いる場合には、アルコール濃度は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、50〜80%であることがさらに好ましく、60〜70%であることが特に好ましいことが明らかである。
[参考例4]
健常人5名から採取した糞便をよく混合し、0.2gずつ2本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ分取した。このうち1本に対して、1mLの18%イソプロパノール含有32%変性エタノール溶液(totalアルコール濃度として50%)を加えてよく混合した後、25℃で1日静置した。該糞便試料を糞便試料(4A)とした。残りの1本は対照試料とし、分取後速やかに−80℃ディープフリーザーに回収した。
両糞便試料から、糞便からのDNA抽出キット「QIAamp DNA Stool Mini Kit」(Qiagen社製)を用いてDANを回収した。回収されたDNAの濃度を吸光度法により定量した結果、両糞便試料から、ほぼ同等量のDNAを回収することができた。
回収されたDNAを100ng用いて、K−ras遺伝子の変異解析キット「K−rasコドン12変異検出試薬」(湧永製薬社製)を用いて、付属のプロトコールに従い変異解析を行った。その結果、糞便試料(4A)から回収されたDNAの解析結果は、対照試料から回収されたDNAを用いた場合と同様に、6種類の変異遺伝子は全て陰性となった。
以上の結果から、本発明の糞便試料の調製方法、及び、本発明の核酸回収方法により回収された核酸を用いることにより、遺伝子変異等の高い正確性を要求される核酸解析であっても精度よく行えることが明らかである。また今回はイソプロパノールとエタノールを混合した変性エタノールを処理溶液として使用したが、アルコール濃度としては同じである、50%エタノール溶液を使用しても同等の結果が得られた。
[参考例5]
健常人1名より採取された糞便を、3本の15mLのポリプロピレンチューブにそれぞれ0.1gずつ分取し、このうち1本に対して、3mLの70%エタノールを加えて糞便をよく分散させ、得られた糞便試料を糞便試料(5A)とした。一方、残りの2本に対して、それぞれ2.4mLの「ISOGEN」(ニッポンジーン社製)を加えて糞便をよく分散させ、得られた糞便試料を、それぞれ比較試料(P1)、比較試料(P2)とした。なお、「ISOGEN」はフェノール(水に対する溶解度約10重量%)が40%含有されているフェノール含有物である。
このうち、比較試料(P1)に対して、糞便分散後、速やかにRNA回収を行った。具体的には、糞便試料を30秒以上ボモジナイザーで十分に混合した後、3mLのクロロホルムを添加し、12,000×gで10分間遠心分離処理を行った。該遠心分離処理により得た上清(水層)を新しいポリプロピレンチューブに回収した。その後、RNeasy midi kit(Qiagen社製)を用いて、回収された上清からRNAを回収した。
また、比較試料(P2)は、室温で5時間静置した後、比較試料(P1)と同様にして、RNA回収を行った。
一方、糞便試料(5A)は、比較試料(P2)と同様に室温で5時間静置した後、遠心分離処理を行って上清を除去した後、得られた沈殿(固形成分)に、2.4mLの「ISOGEN」を添加した後、比較試料(P1)と同様にして、RNA回収を行った。
回収されたRNAを、ナノドロップ(ナノドロップ社製)を用いて定量した。この結果、糞便試料調製直後にRNA回収を行った比較試料(P1)からは32μgのRNAを回収することができたが、5時間室温静置後に回収操作を行った比較試料(P2)からは14μgしか回収することができなかった。これに対して、糞便試料(5A)からは、5時間室温静置後に回収操作を行ったにもかかわらず、57μgという比較試料(P1)よりも大量のRNAを回収することができた。
これらの結果から、本発明の糞便試料調製用溶液を用いることにより、従来のフェノール溶液を用いた場合よりも、非常に効率よくRNAを回収し得ることが明らかである。
本発明の核酸含有試料の調製方法により、核酸含有試料における、核酸を基質とする酵素反応に対する阻害作用を低減させることができるため、特に糞便試料を用いた定期健診等の臨床検査等の分野において利用が可能である。
1…容器本体、1a…***部、2…蓋、3…採便棒、3a…カップ、S…糞便試料調製用溶液、11…容器本体、12…蓋、13…採便棒、13a…穴、13b…可動蓋、15…袋、E…糞便。

Claims (56)

  1. 核酸を含有する試料から核酸を回収するための核酸含有試料の調製方法であって、
    核酸含有試料を、ポリカチオン及びキレート剤からなる群より選択される1以上を有効成分とする試料調製用溶液に混合させることを特徴とする、核酸含有試料の調製方法。
  2. 前記試料調製用溶液が、有効成分として、さらに水溶性有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1記載の核酸含有試料の調製方法。
  3. 前記試料調製用溶液が、ポリカチオンとしてポリリジンを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の核酸含有試料の調製方法。
  4. 前記試料調製用溶液が、キレート剤としてEDTAを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の核酸含有試料の調製方法。
  5. 前記試料調製用溶液が緩衝作用を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  6. 前記試料調製用溶液のpHが2〜6.5であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  7. 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコール、ケトン類、及びアルデヒド類からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  8. 前記水溶性有機溶媒が水溶性アルコール及び/又はケトン類であり、当該水溶性有機溶媒の濃度が30%以上であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  9. 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコールとして、エタノール、プロパノール、及びメタノールからなる群より選ばれる1以上を含むことを特徴とする請求項7又は8記載の核酸含有試料の調製方法。
  10. 前記水溶性有機溶媒がエタノールであることを特徴とする請求項2〜8のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  11. 前記水溶性有機溶媒が、ケトン類として、アセトン及び/又はメチルエチルケトンを含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  12. 前記水溶性有機溶媒がアルデヒド類であり、当該水溶性有機溶媒の濃度が0.01〜30%であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  13. 前記核酸含有試料と前記試料調製用溶液の混合比率が、核酸含有試料容量1に対して試料調製用溶液容量が1以上であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  14. 前記核酸含有試料を、前記試料調製用溶液に混合させた後、所定時間保存することを特徴とする請求項1〜13のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  15. 前記試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、1時間以上であることを特徴とする請求項14記載の糞便試料の調製方法。
  16. 前記試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、12時間以上であることを特徴とする請求項14記載の糞便試料の調製方法。
  17. 前記試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、24時間以上であることを特徴とする請求項14記載の糞便試料の調製方法。
  18. 前記試料調製用溶液に混合させた後に保存する時間が、72時間以上であることを特徴とする請求項14記載の糞便試料の調製方法。
  19. 前記試料調製用溶液のpHが3〜6であることを特徴とする請求項6〜18のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  20. 前記試料調製用溶液のpHが4.5〜5.5であることを特徴とする請求項6〜18のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  21. 前記試料調製用溶液が界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜20のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  22. 前記試料調製用溶液が着色剤を含有することを特徴とする請求項1〜21のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  23. 前記核酸含有試料が糞便、血液、又は尿であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  24. 前記核酸含有試料が糞便であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法。
  25. 核酸含有試料から核酸を回収するための核酸含有試料の調製に用いられる溶液であって、ポリカチオン及びキレート剤からなる群より選択される1以上を有効成分とすることを特徴とする、試料調製用溶液。
  26. 前記ポリカチオンがポリリジンであることを特徴とする請求項25記載の試料調製用溶液。
  27. 前記キレート剤がEDTAであることを特徴とする請求項25記載の試料調製用溶液。
  28. 前記試料調製用溶液が、有効成分として、さらに水溶性有機溶媒を含むことを特徴とする請求項25〜27のいずれか記載の試料調製用溶液。
  29. 前記水溶性有機溶媒が、水溶性アルコール、ケトン類、及びアルデヒド類からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項28記載の試料調製用溶液。
  30. 請求項25〜29のいずれか記載の試料調製用溶液と、当該試料調製用溶液を含有する採便容器と、を有することを特徴とする採便用キット。
  31. 請求項1〜24のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法により調製された調製試料。
  32. 核酸含有試料中に含まれる核酸を解析する方法であって、
    核酸含有試料を、請求項25〜29のいずれか記載の試料調製用溶液に混合させて、試料を調製する調製工程と、
    前記調製工程において調製された試料中の細胞から核酸を回収する回収工程と、
    前記回収工程において回収された核酸を解析する解析工程と、
    を有することを特徴とする、核酸の解析方法。
  33. 前記調製工程が、核酸含有試料を前記試料調製用溶液に浸漬させる工程、又は、核酸含有試料を前記試料調製用溶液に浸漬させた後に攪拌して懸濁させる工程であることを特徴とする請求項32記載の核酸の解析方法。
  34. 核酸含有試料から回収された核酸に対して、逆転写反応又は塩基鎖伸長反応を、ポリカチオンを含有する反応溶液中で行うことを特徴とする、核酸の解析方法。
  35. 前記ポリカチオンがポリリジンであることを特徴とする請求項34記載の核酸の解析方法。
  36. 糞便から核酸を回収する方法であって、
    前記核酸含有試料を糞便として請求項1〜24のいずれか記載の核酸含有試料の調製方法により調製された糞便試料中から、腸内常在菌由来の核酸と腸内常在菌以外の生物由来の核酸とを同時に回収することを特徴とする核酸回収方法。
  37. 前記腸内常在菌以外の生物が、哺乳細胞であることを特徴とする請求項36記載の核酸回収方法。
  38. 核酸を回収する工程が、
    (a)前記糞便試料中のタンパク質を変性させ、前記糞便試料中の腸内常在菌及び腸内常在菌以外の生物から、核酸を溶出させる工程と、
    (b)前記工程(a)において溶出させた核酸を回収する工程と、
    を有することを特徴とする請求項36又は37記載の核酸回収方法。
  39. 前記工程(a)の後、前記工程(b)の前に、
    (c)前記工程(a)により変性させたタンパク質を除去する工程と、
    を有することを特徴とする請求項38記載の核酸回収方法。
  40. 前記工程(a)におけるタンパク質の変性が、カオトロピック塩、有機溶媒、及び界面活性剤からなる群より選ばれる1以上を用いて行われることを特徴とする請求項38又は39記載の核酸回収方法。
  41. 前記有機溶媒がフェノールであることを特徴とする請求項40記載の核酸回収方法。
  42. 前記工程(c)における変性させたタンパク質の除去が、クロロホルムを用いて行われることを特徴とする請求項39〜41のいずれか記載の核酸回収方法。
  43. 前記工程(b)における核酸の回収が、
    (b1)前記工程(a)において溶出させた核酸を無機支持体に吸着させる工程と、
    (b2)前記工程(b1)において吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる工程と、
    を有することを特徴とする請求項38〜42のいずれか記載の核酸回収方法。
  44. 前記工程(a)の前に、
    (d)前記糞便試料から固形成分を回収する工程と、
    を有することを特徴とする請求項38〜43のいずれか記載の核酸回収方法。
  45. 請求項38〜44のいずれか記載の核酸回収方法を用いて糞便試料から回収された核酸を解析対象として、哺乳細胞由来の核酸を解析することを特徴とする核酸解析方法。
  46. 前記哺乳細胞が消化管細胞であることを特徴とする請求項45記載の核酸解析方法。
  47. 前記哺乳細胞が大腸剥離細胞であることを特徴とする請求項45記載の核酸解析方法。
  48. 前記哺乳細胞由来の核酸が、新生物性転化を示すマーカーであることを特徴とする請求項45〜47のいずれか記載の核酸解析方法。
  49. 前記哺乳細胞由来の核酸が、炎症性消化器疾患を示すマーカーであることを特徴とする請求項45〜47のいずれか記載の核酸解析方法。
  50. 前記哺乳細胞由来の核酸が、Cox−2遺伝子由来核酸であることを特徴とする請求項45〜47のいずれか記載の核酸解析方法。
  51. 前記解析が、RNA解析及び/又はDNA解析であることを特徴とする請求項45〜50のいずれか記載の核酸解析方法。
  52. 前記RNA解析が、RNA上の塩基の挿入、欠失、置換、重複、逆位、又はスプライシングバリアントの解析、mRNA発現解析、及び機能性RNA解析のいずれか1以上であることを特徴とする請求項51記載の核酸解析方法。
  53. 前記DNA解析が、変異解析及びエピジェネティック変化解析のいずれか1以上であることを特徴とする請求項51記載の核酸解析方法。
  54. 前記変異解析が、塩基の挿入、欠失、置換、重複、又は逆位のいずれか1以上の変異の解析であることを特徴とする請求項53記載の核酸解析方法。
  55. 前記エピジェネティック変化解析が、DNAのメチル化解析及びDNAの脱メチル化解析のいずれか1以上であることを特徴とする請求項53記載の核酸解析方法。
  56. 前記変異解析がK−ras遺伝子の変異解析であることを特徴とする請求項53記載の核酸解析方法。

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