JPWO2009060836A1 - セルロース系多孔膜 - Google Patents
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Abstract
粘度平均分子量が6×104以上、平均孔径(D)が0.001〜1000μm、空孔率(P)が0.1〜98%、引張強度が0.5kPa以上、160℃における熱収縮率が5%以下であることを特徴とするフィルム状セルロース系多孔膜。
Description
本発明は、水性液体、有機液体、血液、気体等の分離膜として、物質の分離精製分野で有用なセルロース系多孔膜に関する。
物質の分離精製技術分野において、イオン、低分子物質などのナノオーダーの物質、あるいは液体中の濁質や微粒子などのミクロンオーダーの物質を分離する手段として、膜分離技術は非常に有用な技術である。膜分離技術の利点が活かせる分野として、(1)低温で濃縮、精製、回収を必要とする分野(食品、生化学工業分野)、(2)無菌、無塵を必要とする分野(医薬品および治療機関、電子工業分野)、(3)微量な高価物質の濃縮回収(原子力、重金属分野)、(4)特殊少量分離分野(医薬分野)、(5)エネルギー多消費分野(蒸留代替)などが挙げられる。
これらの分野では、水性液体中からの物質分離が主であるため、利用する膜として、親水性で、それぞれの用途に適した孔径、膜構造を有し、かつ力学特性に優れ、取り扱いが容易な多孔膜が望まれている。
親水性に富んだ素材として、セルロースが挙げられる。セルロースは地球上に最も多く存在する天然高分子であり、昔から様々な形態で用いられてきた。そして近年、エネルギー問題、地球環境問題の面からも、再生可能で、莫大な潜在的存在量を有する高分子材料として、改めて注目を集めており、我々の生活において必要不可欠な素材である。
また、セルロースは耐有機溶剤性、および耐熱性にも優れ、生体に対する毒性も少ないという特徴も有する。
よって、上記のような特性を有し、その上、それぞれの用途に適した孔径および膜構造を有するセルロース膜に対する要望は、非常に大きなものがある。
しかし、現在は、セルロース膜が、ある用途において利用されているという例は、それ程多くない。それは、セルロースが融点を持たないため、熱によって融解させ、そのポリマーの溶融状態から成型することが不可能であること、またある種の溶媒に溶解させるにも、セルロースは分子間で水素結合を形成するために、溶媒への溶解性が極めて低く、用いる溶媒種は非常に制限されるためである。
また、たとえ溶解可能であるとしても、その際には、元々のセルロース原料に何らかの前処理を施すことで、溶解可能な程度にまで、分子量(重合度)を低下させることが必要である。その結果、そのセルロース溶液から成形されたセルロース膜の強度は、分子量に依存して低下するので、用途によっては、力学強度が不足するなどの問題があった。以上のような問題が、セルロースの利用を妨げてきた原因の一つである。
上記のような状況ではあるが、フィルム状セルロース膜の実用例として、セロハン(登録商標)が挙げられる。
セロハン(登録商標)は、一般的には包装材料として用いられる例が多いが、半透膜や透析膜として、その細孔を利用した用途も知られている。ただし、半透膜に用いられるセロハン(登録商標)の孔径は数nmと極めて小さい事からもわかるように、一般に、セロハン(登録商標)の原料であるセルロースのビスコース溶液から、数十nm以上の孔径を有する多孔膜を得ることは、極めて困難であり、現在、少なくとも工業的には、セルロースのビスコース溶液から数十nm以上の孔径を有するセルロース多孔膜は作製されていない。
また、セルロースのビスコース溶液の特徴として、製膜に適したポリマー濃度範囲(5〜10wt%)では、高重合度のセルロースを溶解できない。したがって通常、ビスコース溶液に溶解しているセルロースの粘度平均分子量は、おおよそ4.5×104〜5.5×104の範囲である。このため、セルロースのビスコース溶液から得られたセロハン(登録商標)膜の乾燥状態での強度は、用途によっては不十分な場合があり、取り扱い時の破損を引き起こすという問題があった。
また、湿潤状態では、膜の強度は乾燥状態に比べて更に低下するため、取り扱い時に破損する可能性はさらに増大する。このように、セルロースのビスコース溶液から得られた膜は、種々の用途への展開に対し、所望の用途に適した孔径および膜構造を得るという点に課題があり、加えて強度の面でも十分とは言えず、取り扱い性に難点がある。
その他のフィルム状セルロース系多孔膜としては、各種セルロース誘導体多孔膜、または該セルロース誘導体多孔膜をけん化して得られる再生セルロース多孔膜がある(例えば特許文献1)。
このような方法で得られた多孔膜の平均孔径(D)は0.01〜2μmの範囲にあり、空孔率(P)も比較的高く、良好な濾過特性を示す。しかし、セルロース誘導体を出発物質とするため、再生後のセルロース膜の粘度平均分子量は4×104以下であり、乾燥状態では脆い。また、湿潤状態では、膜の強度は乾燥状態に比べて更に低下するため、取り扱い時に破損することがある。また、精密ろ過膜などとして使用する際に、ろ過特性を向上させるために、膜の空孔率を上げようとすると、更に膜の強度は低下することとなる。
このように、セルロース誘導体から得られた再生セルロース多孔膜は、強度の面で十分とは言えず、取り扱い性に難点がある。
強度の高いセルロース多孔膜を作製するには、セルロースを高重合度のまま溶解させうる溶媒が望ましく、そのような溶媒により作製されたセルロース溶液として、銅アンモニアセルロース溶液がある。この溶液は、テトラアンミン銅錯体がセルロースの水酸基に配位することで、セルロースの水酸基による水素結合を緩和し、セルロースを高度に溶解することが可能である。よって、他の溶媒系と比較して、セルロースを高重合度のまま溶解させることが可能であり、該溶液から作製されたセルロース多孔膜の粘度平均分子量は、通常6×104以上であり、強度の観点からは好ましい。
該多孔膜の実用例としては、人工腎臓用セルロース多孔膜(例えば特許文献2)や、ウイルス除去用セルロース多孔膜(例えば特許文献3)がある。
これらのセルロース多孔膜は、強度に優れ、かつそれぞれの用途に適した孔径を有するため、非常に有益な多孔膜である。
しかしながら、これらはいずれも、その形状がフィルム状ではなく中空糸状であるため、上記用途以外の分離、精製、分画、選択透過などの用途への活用を考えた場合、ある程度の制限があった。
銅アンモニアセルロース溶液からのフィルム状セルロース多孔膜としては、細胞培養担体用フィルム状セルロース多孔膜(例えば特許文献4)がある。該膜は約2μmより大きい孔が比較的均一に分布した空胞からなる構造である。よって、細胞のように数μm〜数十μmという比較的大きなものを対象として利用する場合には、非常に有効である。しかし、数十nm〜数十μmまでの種々のサイズの粒子等が混在する溶液から、粒子と液体を分離するなど、比較的小さな物質(ナノオーダーの物質)を含む分野における分離などには、適用が難しい一面がある。
このような現状から、親水性で、力学特性に優れ、取り扱い性が容易で、所望の用途に適した孔径および膜構造を有するフィルム状セルロース多孔膜が切望されている。
本発明が解決しようとする課題は、親水性で、強度、耐熱性および耐有機溶剤性に優れ、主に、水、血液等の極性溶媒に対する濾過、および分離効率に優れ、各種の用途に適した孔径および膜構造を有するフィルム状のセルロース系多孔膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フィルム状セルロース系多孔膜において、粘度平均分子量、平均孔径(D)、空孔率(P)を特定範囲とし、所望の用途に適した孔径および膜構造を有するセルロース系多孔膜が、力学特性、耐熱性、耐有機溶剤性に優れ、上記の課題を解決できる可能性があることを見出した。そして、更に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
(1)粘度平均分子量が6×104以上、平均孔径(D)が0.001〜1000μm、空孔率(P)が0.1〜98%、引張強度が0.5kPa以上、160℃における熱収縮率が5%以下であることを特徴とするフィルム状セルロース系多孔膜。
(2)前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.01〜1000μm、空孔率(P)が5〜98%、引張強度が0.5kPa以上であり、一方の面の表面平均孔径(D1)が0.01〜500μm、他方の面の表面平均孔径(D2)が0.1〜1000μm、D2/D1が1.1以上であり、該多孔膜の少なくとも一部分において、膜厚方向に形成された、複数の境界層を有することを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(3)前記多孔膜において、断面平均孔径が10μm以上である大孔径層と、断面平均孔径が5μm以下である小孔径層の、少なくとも二層から成り、大孔径層に膜厚方向に形成された境界層を有することを特徴とする上記(2)に記載のセルロース系多孔膜。
(4)前記多孔膜において、孔径が一方の面から他方の面の方向に、順次縮小する傾斜構造であることを特徴とする上記(2)に記載のセルロース系多孔膜。
(5)前記多孔膜において、D1、D2のいずれも2μm以下であることを特徴とする上記(2)に記載のセルロース系多孔膜。
(6)前記多孔膜において、膜厚が1mm以上であることを特徴とする上記(2)〜(5)のいずれかに記載のセルロース系多孔膜。
(7)前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜0.1μm、空孔率(P)が0.1〜40%、引張強度が3kPa以上であり、断面の構造が均一であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(8)前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜1μm、空孔率(P)が0.1〜50%、引張強度が2kPa以上であり、一方の面の表面平均孔径(D1)が0.001〜0.01μmであることを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(9)前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜20μm、空孔率(P)が1〜90%、引張強度が0.5kPa以上であり、透気度が5〜500秒/μm・100mlであり、一方の面に面して、空孔率(P)が50〜95%で、1μm以上の孔を含み、厚みが10μm以下の粗大層と、該粗大層以外の孔径がほぼ均一な層との少なくとも2層を含み、該粗大層内の孔径が他方の面方向に順次縮小する傾向を有する形状であり、D2/D1が1.1以上であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(10)該多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜20μm、空孔率(P)が1〜90%、引張強度が0.5kPa以上、透気度が2〜250秒/μm・100ml、曲路率が1.5以上、D2/D1が1.1以上であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(11)前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.01〜20μm、空孔率(P)が30〜90%、引張強度が0.5kPa以上であり、一方の面に面して、空孔率(P)が5%以下で厚みが10μm以下の緻密層と、該緻密層以外の空孔率(P)が40%以上の粗大層との少なくとも2層を有することを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(12)セルロース系ポリマーが、セルロースもしくはセルロースの水酸基の一部が水酸基以外の官能基で置換されたセルロース誘導体のいずれかであるか、もしくは両者を含む上記(1)〜(10)のいずれかに記載のセルロース系多孔膜。
(1)粘度平均分子量が6×104以上、平均孔径(D)が0.001〜1000μm、空孔率(P)が0.1〜98%、引張強度が0.5kPa以上、160℃における熱収縮率が5%以下であることを特徴とするフィルム状セルロース系多孔膜。
(2)前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.01〜1000μm、空孔率(P)が5〜98%、引張強度が0.5kPa以上であり、一方の面の表面平均孔径(D1)が0.01〜500μm、他方の面の表面平均孔径(D2)が0.1〜1000μm、D2/D1が1.1以上であり、該多孔膜の少なくとも一部分において、膜厚方向に形成された、複数の境界層を有することを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(3)前記多孔膜において、断面平均孔径が10μm以上である大孔径層と、断面平均孔径が5μm以下である小孔径層の、少なくとも二層から成り、大孔径層に膜厚方向に形成された境界層を有することを特徴とする上記(2)に記載のセルロース系多孔膜。
(4)前記多孔膜において、孔径が一方の面から他方の面の方向に、順次縮小する傾斜構造であることを特徴とする上記(2)に記載のセルロース系多孔膜。
(5)前記多孔膜において、D1、D2のいずれも2μm以下であることを特徴とする上記(2)に記載のセルロース系多孔膜。
(6)前記多孔膜において、膜厚が1mm以上であることを特徴とする上記(2)〜(5)のいずれかに記載のセルロース系多孔膜。
(7)前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜0.1μm、空孔率(P)が0.1〜40%、引張強度が3kPa以上であり、断面の構造が均一であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(8)前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜1μm、空孔率(P)が0.1〜50%、引張強度が2kPa以上であり、一方の面の表面平均孔径(D1)が0.001〜0.01μmであることを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(9)前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜20μm、空孔率(P)が1〜90%、引張強度が0.5kPa以上であり、透気度が5〜500秒/μm・100mlであり、一方の面に面して、空孔率(P)が50〜95%で、1μm以上の孔を含み、厚みが10μm以下の粗大層と、該粗大層以外の孔径がほぼ均一な層との少なくとも2層を含み、該粗大層内の孔径が他方の面方向に順次縮小する傾向を有する形状であり、D2/D1が1.1以上であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(10)該多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜20μm、空孔率(P)が1〜90%、引張強度が0.5kPa以上、透気度が2〜250秒/μm・100ml、曲路率が1.5以上、D2/D1が1.1以上であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(11)前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.01〜20μm、空孔率(P)が30〜90%、引張強度が0.5kPa以上であり、一方の面に面して、空孔率(P)が5%以下で厚みが10μm以下の緻密層と、該緻密層以外の空孔率(P)が40%以上の粗大層との少なくとも2層を有することを特徴とする上記(1)に記載のセルロース系多孔膜。
(12)セルロース系ポリマーが、セルロースもしくはセルロースの水酸基の一部が水酸基以外の官能基で置換されたセルロース誘導体のいずれかであるか、もしくは両者を含む上記(1)〜(10)のいずれかに記載のセルロース系多孔膜。
本発明について、以下に詳述する。
本発明のセルロース系多孔膜は、粘度平均分子量が6×104以上、平均孔径が0.001〜1000μm、空孔率が0.1〜98%、引張強度が0.5kPa以上、160℃における熱収縮率が5%以下であることを特徴とするものである。
本発明のセルロース系多孔膜を構成するポリマーの粘度平均分子量は、強度の観点から、6×104以上である。セルロース系多孔膜は乾燥状態では脆い。しかし、粘度平均分子量の増大に伴って、多孔膜の強度が上昇し、脆さが改善される。そのため多孔膜の取り扱いが容易になり、多孔膜の破損は減少する。粘度平均分子量が大きければ大きい程、同一の空孔率で比較した場合の破損率は減少するが、該粘度平均分子量の膜物性に及ぼす影響は、粘度平均分子量が大きくなるにしたがって飽和する傾向が認められる。したがって、粘度平均分子量は6×104以上であれば、実用上の取り扱い易さの観点から、十分である。また、多孔膜作製の容易さから、粘度平均分子量は3×105以下が望ましい。
本発明のセルロース系多孔膜に用いられるポリマーは、実際の分離対象物等に応じて選択され、そのポリマーがセルロースであっても、セルロースの水酸基の一部が水酸基以外の官能基で置換されたセルロース誘導体のいずれかであっても、もしくは両者を含むものであっても良い。セルロースとしては、再生セルロース、精製セルロースが好ましく用いられる。また、セルロース誘導体としては、その種類や置換度は特に限定されず、用途に応じて適切な置換基を導入すればよい。誘導体としては、例えば、セルロースのエステル化誘導体、エーテル化誘導体、ハロゲン化誘導体、酸化誘導体、グラフト化誘導体などが挙げられる。また、誘導体化の種類としては、1種類であっても、または複数の誘導体が混在していても差し支えない。
さらに、ここでセルロースのエステル化誘導体とは、セルロースの水酸基とカルボン酸等の有機酸や硫酸等の無機のオキソ酸が脱水縮合してできた化合物であれば特に制限はなく、例えば、酢酸セルロース、硝酸セルロース、亜硝酸セルロース、リン酸セルロース、キサントゲン酸セルロース、硫酸セルロース、ギ酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、絡酸セルロース、トリフルオロ酸セルロース、トシルセルロース等が挙げられる。
また、セルロースのエーテル化誘導体とは、エーテル構造を有するセルロース誘導体であれば特に制限はなく、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルセルロース、ジエチルアミノエチルエチルセルロース等が挙げられる。
但し、該セルロース誘導体多孔膜の作製において、予め、セルロース誘導体溶液を調製し、その後、後述する製造方法において作製した場合は、概して、粘度平均分子量が4×104以下となり、強度の観点から、上記の本発明における課題の解決は達成されない。よって、該課題の解決のためには、多孔膜を作製した段階における該多孔膜の粘度平均分子量が6×104以上となるようなセルロース溶液を、フィルム状に流延し、凝固液に浸漬し、膜構造を形成させる。その後、脱溶媒処理および水洗浄により、溶媒等を除去した後、各誘導体に適した条件で、セルロースの固体状態を維持したまま、セルロースの水酸基の一部を、所望の官能基に変換した後に、乾燥する製造方法が採用される。
本発明のセルロース系多孔膜の平均孔径は0.001〜1000μmの範囲である。ここで、本発明における平均孔径とは、参考文献(木村尚史、酒井清孝、白田利勝、鵜飼哲雄 編著:膜分離技術マニュアル:147ページ;株式会社アイシーピー出版、1990年8月10日発行)に記載のエアフロー法を用いて求めた平均流量孔径のことをいう。
これは、該多孔膜を、あらかじめ表面張力が既知の液体に浸し、該多孔膜の全ての細孔を液体の膜で覆った状態から、該多孔膜に圧力をかけ、液膜を破壊する圧力と液体の表面張力に関する下記の関係式を用いて算出できる。
d=C・r/P
ここで、式中のdは孔径、rは液体の表面張力、Pはその孔径の液膜を破壊する圧力、Cは定数である。
ここで、式中のdは孔径、rは液体の表面張力、Pはその孔径の液膜を破壊する圧力、Cは定数である。
上記の関係式から判るように、液に浸した該多孔膜にかける圧力を、低圧から高圧に連続的に変化させると、初期の圧力は最も大きな細孔の液膜も破壊できず、流量は0であるが、圧力を次第に上げていくと、最も大きな細孔の液膜が破壊され、ある流量が発生する(この点をバブルポイントという)。さらに圧力を上げていくと、最も小さな細孔の液膜が破壊され、液に浸していない場合の流量(Dry流量)と一致する。
ここで、本発明の平均孔径とは、該多孔膜を液に浸した場合の流量(Wet流量)が、浸していない場合の流量(Dry流量)の50%となる圧力での孔径をいう。
但し、孔径が0.05μm以下の孔を含む膜については、エアフロー法によるPMI社製測定装置では測定できないことがあった。そのような場合については、後述するガス吸着法によるユアサアイオニクス製の測定装置を利用して求めた。
平均孔径(D)は、セルロース系多孔膜の用途により要求される大きさが異なるため、一概に規定することは出来ないが、平均孔径(D)が0.001〜1000μmであれば、種々の用途に用いることができる。平均孔径(D)が0.001μm未満の場合では、イオン以外の殆ど如何なるものも透過できないため、用途としては制限され、イオン以外の物質の分離に使用することは困難である。また1000μmを越える場合では、膜の強度低下が顕著となり、脆弱な材料となる。よって、平均孔径は、用途により要求される大きさが異なるため、一概に規定することは出来ないが、上記範囲内において、各種用途に応じた好ましい範囲が設定される。その点については後述する。
本発明のセルロース系多孔膜の空孔率(P)は0.1〜98%である。ここで空孔率とは、後述する方法により求めた多孔膜の空隙の体積割合である。空孔率が98%を越えると、膜の強度が顕著に低下するという問題が生じる。空孔率の上限値の好ましい数値は95%である。空孔率の下限値については、各種用途に応じて、好ましい範囲が設定される。その点については後述する。
本発明のセルロース系多孔膜の空孔率(P)は0.1〜98%である。ここで空孔率とは、後述する方法により求めた多孔膜の空隙の体積割合である。空孔率が98%を越えると、膜の強度が顕著に低下するという問題が生じる。空孔率の上限値の好ましい数値は95%である。空孔率の下限値については、各種用途に応じて、好ましい範囲が設定される。その点については後述する。
本発明のセルロース系多孔膜の引張強度は0.5kPa以上である。引張強度は、後述する方法で求められる。0.5kPa未満では強度が不十分であり、如何なる用途においても利用上問題となる。好ましくは1.0kPa以上である。但し、上記範囲内において、各種用途に応じた、好ましい範囲が設定されてよく、その点については後述する。なお、引張強度は高いほど好ましいが、素材の特性上、自ずから限度がある。
本発明のセルロース系多孔膜は耐熱性に優れ、160℃における熱収縮率は5%以下である。ポリエチレン、ポリプロピレンなどの汎用樹脂製の多孔膜では、160℃での熱収縮が数十%に達する。このため。このような高温領域で、膜の形状が維持されるべき用途については、セルロース系多孔膜が好適である。160℃における熱収縮の好ましい範囲は3%以下である。また、200℃における熱収縮も10%以下であることが好ましい。尚、熱収縮は小さいほど好ましいので、0%であってもよい。
本発明のセルロース系多孔膜は、上述の通り、平均孔径(D)、空孔率(P)、引張強度について、各種用途に応じて、より適切な範囲が存在する。またその場合、その膜の構造も、各種用途に応じた膜構造をとることが好ましい。これらの点について、以下の詳述する。
(I)例えば、数十nm〜数百μm程度の種々の大きさの物質がある液体中に混在しており、それらの物質を分離もしくは除去するような用途の場合は、請求項2に記載された態様のセルロース系多孔膜が好ましい例として挙げられる。
このような請求項2に記載された態様のセルロース系多孔膜について説明する。
該膜は、平均孔径(D)が0.01〜1000μm、空孔率(P)が5〜98%、引張強度が0.5kPa以上であり、一方の面の表面平均孔径(D1)が0.01〜500μm、他方の面の表面平均孔径(D2)が0.1〜1000μmの範囲であり、かつD2/D1が1.1以上であり、該多孔膜の少なくとも一部分において、膜厚方向に形成された、複数の境界層を有する構造である。
平均孔径(D)が上記の範囲であると、数十nm〜数百μmの大きさの物質を効果的に分離することが可能である。濾過速度、分離性能、膜強度などを考慮すると、平均孔径(D)は、より好ましくは0.02〜800μm、さらに好ましくは0.05〜500μm、特に好ましくは0.08〜300μm、もっとも好ましくは0.1〜100μmである。
空孔率(P)が上記の範囲であると、濾過速度、強度の点で、大きな支障がなく使用することができる。空孔率(P)は、より好ましくは10〜95%、さらに好ましくは20〜95%、最も好ましくは30〜95%である。
表面平均孔径D1およびD2の好ましい範囲は上記の通りである。
表面平均孔径D1およびD2の好ましい範囲は上記の通りである。
一方の面の表面平均孔径(D1)が0.01μmより小さい場合は、他方の面の表面平均孔径(D2)の孔径がいくら大きくとも、D1面付近での目詰まりが顕著となり、濾過性能の低下は避けられない。また、D1が500μmより大きい場合は、1μm以下の大きさの粒子などを捕捉することが困難となる場合がある。D1の範囲は、より好ましくは0.02〜400μm、さらに好ましくは0.03〜300μm、最も好ましくは、0.04〜200μmの範囲である。
また、他方の面の表面平均孔径(D2)が0.1μmより小さい場合は、D2>D1の関係から、D1の孔径も0.1μmより小さい場合であり、この場合は濾過速度が小さくなる。また、D2が1000μmより大きい場合は、強度低下が避けられない。D2の範囲は、より好ましくは0.2〜800μm、さらに好ましくは0.3〜700μm、最も好ましくは0.5〜500μmである。
一般的には、上記のように、数十nm〜数百μmの種々の大きさの物質が混在している場合、それぞれの物質を分離するには、孔径の異なる複数の膜を使用し、何回かに分けて分離操作をする必要がある。しかし、上記の請求項2に記載された態様のセルロース系多孔膜は、該膜1枚による1回の操作のみで、それぞれの物質の分離を達成することができる場合もあり、極めて有用である。
(II)例えば、液体中に混在する物質の大きさが、大きなものでも1μm前後であり、それらの物質を分離もしくは除去するような用途の場合は、請求項5に記載された態様のセルロース系多孔膜が好ましい例として挙げられる。
該膜は、D1、D2いずれもが2μm以下であることが好ましい。D1、D2いずれもが2μm以下であると、粒子の捕捉効率が一層高まる。また、D2/D1は1.1以上であることが好ましい。この両表面の表面平均孔径の比(D2/D1)は、分離対象となる粒子の大きさなどにより、適切に選択されるべきである。通常、分離対象となる粒子の大きさにはある程度のバラツキがあると考えられるので、好ましくは1.5以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、特にも好ましくは10以上、極めて好ましくは15以上、最も好ましくは20以上である。
次に、上記の請求項2及び5に記載された態様のセルロース系多孔膜において、膜の構造的特徴について述べる。
該膜の少なくとも一部分において、膜厚方向に形成された、複数の境界層を有する構造であることは好ましい一例である。この境界層とは、例えば、図7に示すように、膜の断面を観察した際に、確認することが出来るもので、断面孔径が1μm以上である空隙間に存在する壁状の層のことであり、この境界層が膜厚方向に伸びる形で形成されている。
この層は、たとえていえば、住居における柱のような役割を果たし、該膜の強度発現の要因となっている。
通常、透過性に優れた膜であるためには、孔径が大きいこと、孔の数が多いことともに、空孔率が高いことが要求される。しかしながら、一般的には、空孔率が高くなるほど、膜の強度は低下し、使用する上で支障をきたすことがある。これに対し、上記の境界層を有する膜構造では、たとえ膜全体の空孔率が高い場合でも、境界層自身が非常に堅固であるため、膜全体としては非常に優れた力学特性を有する。そのため、このように膜厚方向に複数の境界層を有する構造であることは、好ましい一例である。
また、膜の強度発現に寄与するためには、境界層の厚みは0.5μm以上であることが好ましく、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上、最も好ましくは10μm以上である。また、境界層が、膜厚方向に伸びた長さとしては、1μ以上であることが好ましく、より好ましくは3μ以上、さらに好ましくは5μ以上、特に好ましくは10μm以上、最も好ましくは20μm以上である。
さらに、この境界層には、所々に、孔が存在することが好ましい。孔が存在することにより、隣接する空洞同士が連結されることで、膜全体として、極めて優れた透過性能を発現する。
この境界層の有無は、多孔膜の断面を拡大して、観察評価でき、上記のような厚さと長さであれば、300倍程度に拡大観察すれば、その存在を確認することができる。
また、このような境界層が形成される理由については、後の製造方法の部分で詳述する。
さらに、膜内部の孔径は、用途により、要求される大きさが異なるため、一概に規定することは出来ないが、請求項3に記載の通り、該膜の断面観察において、断面平均孔径が10μm以上である大孔径層と、断面平均孔径が5μm以下である小孔径層の、少なくとも二層から成り、大孔径層に該境界層を有する膜構造であることは、好ましい一例である。ここで、断面平均孔径とは、詳しくは後述するが、膜断面を走査型電子顕微鏡で拡大観察して求めた孔径である。
上記のような大孔径層と小孔径層を有する多層構造体においては、断面平均孔径が10μm以上である大孔径層においては、境界層が強度発現の要因となり、支持体としての役割を果たしつつ、大孔径であることによって透過性能が発現し、一方、断面平均孔径が5μm以下である小孔径層において、優れた精密ろ過機能が発現するため、上記のような構造は、精密ろ過性能、高強度、高透過性能を兼備した好ましい構造の一例である。
また、請求項4に記載したように、孔径が一方の面から他方の面の方向に、順次縮小する傾斜構造であることも好ましい一例である。このような傾斜構造により、処理液中に存在する種々の大きさの粒子を、効率よく補足することが可能となる。
また、セルロース系多孔膜の膜厚には、特に制限はないが、請求項6に記載したように用途によっては1mm以上も好ましい一例である。セルロース系多孔膜は元々強度に優れた多孔膜では有るが、膜厚が1mm以上となることで、膜全体としての強度はさらに向上し、その結果、膜の用途がさらに広がる。また、このように比較的厚みのある膜の特徴として吸液性能に優れ、自重の20倍もの吸液能力を有する場合もある。
また、膜厚の均一性は、使用上問題にならない範囲において、若干のバラツキがあってもよい。更には、用途により、凹凸のあるものであってもよい。
請求項7に記載の、平均孔径(D)が0.001〜0.1μm、空孔率(P)が0.1〜40%、引張強度が3kPa以上であり、膜の断面構造が均一であるセルロース系多孔膜も好ましい一例である。断面構造が均一であるとは、一方の面から他方の面に至るまで、その孔径の変化が殆どなく、一定で有るような構造のことをいう。
該膜の構造は、その断面構造が均一であり、孔径が非常に揃った膜である。そのため、例えば、自然拡散による物質分離の分野において、ある大きさの物質は透過させて、それ以上の大きさの物質は透過させないというような、高度な分画性が要求される用途において、非常に有用である。
上記の請求項7に記載の態様のセルロース系多孔膜において、平均孔径(D)は、より好ましくは0.003〜0.08μm、さらに好ましくは0.005〜0.05μmである。また空孔率(P)は、より好ましくは1〜40%、さらに好ましくは5〜40%、特に好ましくは10〜40%、最も好ましくは20〜40%である。
一般に加圧もしくは減圧ろ過を実施する場合には、膜の空孔率がろ過速度に影響し、空孔率が高いほど、高速でろ過を実施できるので都合が良いが、本発明で対象とするような自然拡散による物質分離においては、上記の範囲の空孔率で十分に物質分離が達成される。また引張強度については、より好ましくは5kPa以上である。このような特徴を有する膜の用途の一例としては、分子分画膜等が挙げられるが、これに限定されるものでは無い。
また、各種タンパク質の水溶液について、タンパク質は透過させ、タンパク質の大きさ以上の夾雑物を分離除去するような用途に、該膜を用いた場合、タンパク質の大きさに応じた孔径の膜を用いれば、夾雑物を除去することが可能である。また、該膜はタンパク質の吸着が少ない特徴を有するため、タンパク質が膜に吸着し、夾雑物と一緒に除去されるということは無く、極めて効率よくろ液中に回収することが出来るため、このような用途において好適である。
請求項8に記載の、平均孔径(D)が0.001〜1μm、空孔率(P)が0.1〜50%、引張強度が2kPa以上であり、一方の面の表面平均孔径(D1)が0.001〜0.01μmであることも、好ましい一例である。
上記のような構造は、特に、非常に小さなサイズの粒子を分離する際に好適な構造である。例えば、液体中に溶解、分散している物質のうち、イオン等の極小物質のみを透過させ、分子量が数百程度である低分子およびそれより大きなサイズの物質の透過を極力阻止するような用途に該膜を用いると、非常に好適である。よって、このような用途に用いた場合、透過を阻止したい物質の大きさにもよるが、平均孔径(D)は、より好ましくは0.001〜0.5μm、さらに好ましくは0.001〜0.3μm、特に好ましくは0.001〜0.2μm、最も好ましくは0.001〜0.1μmである。
また空孔率(P)は、より好ましくは0.1〜30%、さらに好ましくは0.1〜20%、特に好ましくは0.1〜10%、最も好ましくは0.1〜5%である。また引張強度は、より好ましくは3kPa以上であり、特に好ましくは5kPa以上である。また表面平均孔径(D1)は、より好ましくは0.001〜0.008、さらに好ましくは0.001〜0.005、特に好ましくは0.001〜0.003、最も好ましくは0.001〜0.002μmである。
請求項9に記載の、平均孔径(D)が0.001〜20μm、空孔率(P)が1〜90%で、引張強度が0.5kPa以上であり、透気度5〜500秒/μm・100mlであり、一方の面に面して、空孔率(P)が50〜95%で、1μm以上の孔を含み、厚みが10μm以下の粗大層と、該粗大層以外の孔径がほぼ均一な層との少なくとも2層を含み、該粗大層内の孔径が他方の面方向に順次縮小する傾向を有する構造であり、D2/D1が1.1以上であることも、好ましい一例である。
上記のような構造の膜は、例えば、該多孔膜内に液体を多く保持しつつ、イオン等の極小物質やある分子量以下の物質は、出来るだけスムーズに、抵抗なく透過させ、数百nm以上の粒子やゴミ等は透過させず、捕捉するような用途に好適である。なぜならば、粗大層が存在することにより、外部から膜内部への液体の移動が容易となると共に、膜内部に液体を多く保持できる。さらに、孔径がほぼ均一な層により、粒子やゴミなどの透過を防ぐことが可能となる。
また、該膜において、平均孔径(D)は、より好ましくは0.005〜10μm、さらに好ましくは0.01〜5μm、特に好ましくは0.01〜3μm、最も好ましくは0.01〜1μmである。また、空孔率(P)は、より好ましくは5〜80%、さらに好ましくは10〜70%、特に好ましくは30〜70%、最も好ましくは40〜70%である。
透気度については、より好ましくは5〜300秒/μm・100ml、さらに好ましくは5〜100秒/μm・100ml、最も好ましくは5〜80秒/μm・100mlである。引張強度については1.0kPa以上であることが、より好ましい。D2/D1は、分離対象となる粒子の大きさなどにより、適切に選択されるべきであるが、好ましくは1.5以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは10以上、極めて好ましくは15以上、最も好ましくは20以上である。
このような特徴を有する膜の用途の一例としては、各種電池のセパレータ等が挙げられるが、これに限定されるものでは無い。
請求項10に記載の平均孔径(D)が0.001〜20μm、空孔率(P)が1〜90%、引張強度が0.5kPa以上、透気度が2〜250秒/μm・100ml、曲路率が1.5以上、D2/D1が1.1以上であるような構造も好ましい一例である。
各物性値については、それぞれより好ましい範囲が存在する。平均孔径(D)は、より好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.02〜5μm、特に好ましくは0.03〜4μmである。上記のような構造であれば、例えば、数nm〜1μm程度の微粒子を捕捉、除去する用途に、好適に該膜を用いることが出来る。このような用途では、捕捉したい微粒子と孔径の大きさとの関係において、孔径が微粒子の大きさよりも小さい場合には、ろ過の初期では、効率良く捕捉可能であるが、早期に膜の表面にケーク層が発生し、逆洗などの処置が必要となる。
これに対し、孔径を微粒子サイズより若干大きくとることで、膜の表面だけでなく、膜内部でも微粒子の捕捉が可能となり、膜性能を長く維持することが可能となる。またこの微粒子の捕捉においては、膜の曲路率も重要であり、より好ましくは2以上、さらに好ましくは5以上である。微粒子が膜の平均孔径(D)より小さい場合でも、膜の曲路率が大きい程、微粒子が捕捉される可能性が高いので好ましい。膜の曲路率が大きいとは、微粒子が、膜の内部を通過する際の経路が長いことを意味する。経路が長くなると、微粒子が粒子径以下の大きさの孔と遭遇する確率が高まり、結果として、微粒子が捕捉される可能性が高まることになる。
また、空孔率(P)は透過性能と強度の観点から、より好ましくは5〜80%、さらに好ましくは10〜70%、特に好ましくは30〜70%、最も好ましくは40〜70%である。透気度は、より好ましくは5〜200秒/μm・100ml、さらに好ましくは5〜100秒/μm・100ml、最も好ましくは5〜80秒/μm・100mlである。引張強度は1.0kPa以上であることが、より好ましい。D2/D1は、分離対象となる粒子の大きさなどにより、適切に選択されるべきであるが、好ましくは1.5以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、特にも好ましくは10以上、極めて好ましくは15以上、最も好ましくは20以上である。
このような特徴を有する膜の用途の一例としては、各種分離膜が挙げられるが、これに限定されるものでは無い。
請求項11に記載の平均孔径(D)が0.01〜20μm、空孔率(P)が30〜90%、引張強度が0.5kPa以上であり、一方の面に面して、空孔率(P)が5%以下で厚みが10μm以下の緻密層と、緻密層以外に、空孔率(P)が40%以上の粗大層との少なくとも2層を有する構造であることも、好ましい一例である。このような構造のセルロース系多孔膜は、例えば、数nm〜数十nm程度の微粒子などを捕捉、除去する用途に好適である。
また、各物性値については、それぞれより好ましい範囲が存在し、ろ過性能、透過性能と強度の観点から、平均孔径(D)は、より好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.01〜5μmである。また、空孔率(P)についても同様の観点から、好ましくは40〜80%の範囲である。また、該膜には、一方の面に面して、緻密層が存在するが、より好ましくは、緻密層の空孔率(P)が3%以下、厚みが3μm以下、最も好ましくは、それぞれ、1%以下、1μm以下である。このような膜の用途の一例としては、低分子分画膜が挙げられるが、これに限定されるものでは無い。
次に、本発明のセルロース系多孔膜の製造方法について説明する。
まず、セルロース原料としては、特に制限されるものではないが、例えば、コットンリンター、パルプ、古紙、細菌産生セルロース、再生セルロース等が挙げられる。原料の重合度については、強度の観点から、多孔膜を作製した段階で、多孔膜の粘度平均分子量が6×104以上であることを達成できるものであればよい。
溶媒についても、本発明では多孔膜を作製した段階で、多孔膜の粘度平均分子量が6×104以上であれば、それ以外の点について特に制限はない。具体的な溶媒の種類としては、例えば、銅アンモニア、苛性ソーダ、硫酸、液体アンモニア/チオシアン酸アンモン、N−メチルモルホリンN−オキシド、DMAc/LiCl等、セルロースに対して溶解能を有する溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中では、セルロース溶液としての溶解安定性の観点から、銅アンモニア溶液が好ましい。
この上記のような溶媒を用いて、セルロースを溶解させて作製したドープにおけるセルロース濃度は2〜20wt%の範囲が好ましく、より好ましくは3〜15wt%、最も好ましくは4〜12wt%である。セルロース濃度が上記の範囲であると、セルロースが溶媒に均一に溶解され、後述するフィルム状への流延工程において、流延厚を制御することが容易であり、また、強度的にも優れたセルロース系多孔膜が得られる。次いで、このセルロース溶液をフィルムダイまたはドクターブレード等を用いて、フィルム状に流延する。この時、流延の方法は上記方法に限定されず、また、用いるダイ等も、その形状は特に限定されず、公知のものを適用できる。
この後の工程については、本発明において好適なセルロース溶液である、銅アンモニアセルロース溶液を例にあげて述べる。
セルロース溶液を流延した後、上記フィルム状セルロース溶液を、凝固媒体中に導入し、膜の構造を形成させる(以後、凝固工程という)。続いて、セルロースを溶解している溶媒等を抽出除去するか、その溶解能を低めて、固化されたセルロース多孔膜とする(以後、再生工程という)。
この再生工程において使用する再生液は、セルロースと錯体を形成している銅を溶出できる酸であれば良く、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、臭酸、フッ化水素酸等の無機酸およびその誘導体、酢酸、蓚酸、酒石酸等の有機酸が使用できる。好ましくは硫酸である。その濃度は、再生が完結する最低限の濃度であればよく、経済性を考慮すれば、15wt%以下が望ましい。再生する方法は、酸で満たされた槽中に浸漬するか、シャワー等の装置を用いて吹き付けるなどして行われる。
上記の凝固工程および再生工程は、最終的に得られる膜の構造に大いに影響する非常に重要な工程である。そこで、各請求項に記載の膜構造が、いかなる凝固方法および再生方法によって達成されるかという点について、以下に順に説明する。
請求項2に記載の膜厚方向に境界層を有するような構造とするためには、該溶液中の溶媒成分が凝固するような低温状態に置かれた凝固液に導入すればよい。これにより、溶媒成分が固体状へ変化し、結果として、該溶液中に溶媒成分が固化して生成した小さな粒が多数存在する状態となる。このとき、セルロース成分は固化せずに溶液状態を維持したまま、固化しなかった溶媒成分と共に存在するが、固化した溶媒成分が存在する空間から追いやられ、固化した溶媒成分間の微小な空間に存在する。この結果、セルロース成分は、膜厚方向に伸びた境界層状で、固化した溶媒成分間に存在することになり、加えて、当初の仕込み濃度に比して、高濃度に濃縮された状態で存在する。
次の再生工程で溶媒を除去すると、セルロース成分が再生、析出する。このとき、凝固工程での構造形成を維持するような再生方法、すなわち、低温の再生液を用いることで、セルロースは高濃度状態から析出するため、非常に強靭な境界層として析出することになる。このことが、この境界層が強度発現の要因となる理由である。このとき、再生液の温度は、凝固工程での構造を維持しながら再生できる温度であれば、特に制限されるものではなく、たとえば、−5℃以下であれば、構造を維持しながらの再生が可能である。
請求項3に記載の大孔径層と小孔径層の少なくとも二層からなる構造にするためには、上記と同様に、溶媒成分が凝固するような低温の凝固液へ導入した後、次の再生工程において、約5℃以上の温度である再生液により再生することで達成される。これは、たとえば、前記温度の再生液中に、凝固工程での溶媒成分の固化等により構造形成されたフィルム状セルロース溶液を浸漬すると、再生液の温度が高いために、再生液が膜の表面から該溶液に浸透していく際に、セルロース溶液の凝固時に形成された溶媒の固化成分が融解し、再度、溶媒の固化成分とセルロース成分が混和した状態となる。この状態から再生が起こるため、結果として、膜厚方向に伸びた境界層がなく、断面平均孔径が5μm以下である小孔径層が形成される。
また、この再生液は、膜内部へ浸透するにつれて、セルロース溶液によって冷却される。このため、膜内部のある部分で、溶媒の固化成分を融解しない温度となり、結果として、その部分から裏面側にかけては、凝固工程で形成された構造が維持されて再生されることになり、膜厚方向に伸びた境界層を有し、断面平均孔径が10μm以上である大孔径層の状態で析出し、上記の少なくとも二層から成る構造が形成される。
請求項4に記載の、孔径が一方の面から他方の面の方向に、順次縮小する傾斜構造にするためには、請求項2の構造の方法と同様であるが、凝固液に関しては、より低温のものを使用することにより達成される。
請求項5に記載のD1、D2がいずれも2μm以下である構造にするには、ドープ中のセルロース濃度とアンモニア濃度を高めに設定し、流延厚を薄くし、凝固液の温度をより低温にすることにより達成される。
請求項5に記載のD1、D2がいずれも2μm以下である構造にするには、ドープ中のセルロース濃度とアンモニア濃度を高めに設定し、流延厚を薄くし、凝固液の温度をより低温にすることにより達成される。
請求項7〜11の構造は、膜厚方向の伸びた境界層を有さない構造であり、これらについては、1℃以上の凝固液を用いて構造形成が達成される。
例えば、請求項7のような構造は、アルカリ性水溶液を、請求項8に記載のような構造は、高濃度のアセトン等の有機溶剤を含有する水溶液を、請求項9に記載のような構造は、水を、請求項10に記載のような構造は、アセトン等の有機溶剤を含有する水溶液を、請求項11に記載のような構造は、希硫酸などの酸性水溶液を用いることで、狙いとする構造を形成させることは可能であるが、上記に限定されるわけではない。
また、再生については、常法により、常温程度の再生液中に浸漬するなどして、溶媒成分を抽出またはその溶解能を低下させることでセルロースを析出させ、達成される。
凝固および再生工程を経て析出したセルロース多孔膜は、水または他の洗浄剤により洗浄される。
この後、セルロース膜を誘導体化する場合は、この水または他の洗浄剤による洗浄が終了した段階で、セルロースの固体状態を維持したまま、各々の反応条件において、セルロースの水酸基の一部を、所望の官能基に変換することで誘導体が得られる。このとき、セルロースの固体状態を維持したまま種々の反応を進めるために、反応溶媒としては、水系ではなく適切な有機溶媒系および有機溶媒と水の混合系を用いることが好ましい。
次いで、水洗後のセルロース多孔膜は、必要に応じて、適切な有機溶媒で多孔膜が保持する水分を置換しても良い。こうすることで、後述する乾燥工程で加熱しながら乾燥を実施する場合、乾燥により膜が収縮する度合いを低減することが出来る。
誘導体化反応後のセルロース誘導体多孔膜においても、上記と同様の目的で、膜が保持する水または有機溶媒を、別の有機溶媒に置換しても差し支えない。
最後に、上記工程を経たセルロース系多孔膜を乾燥する。この条件についても、特に制限されるものではなく、例えば、室温での自然乾燥、加熱乾燥(40〜200℃)、凍結乾燥など、膜の使用目的や用途に応じた条件が任意に選ばれて良い。
本発明のフィルム状セルロース系多孔膜は、強度、耐熱性および耐有機溶剤性に優れ、水性液体、極性有機溶媒、血液、油等の各種分離膜、分子分画膜、各種セパレータ、微生物捕捉膜、等に好適に利用できるセルロース系多孔膜を提供できる。
1 孔
2 外接円
3 内接円
2 外接円
3 内接円
以下に、実施例等を挙げて、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。なお、測定方法等は以下のとおりである。
(1)粘度平均分子量
セルロース系多孔膜をカドキセンに溶解し、希薄なセルロース系溶液を作製し、その比粘度をウベローデ型粘度計で測定し、その極限粘度数[η]から以下の粘度式(1)により算出した。同様の操作を5点のサンプルについて実施し、その算術平均値を粘度平均分子量とした。(参考文献:Eur.Polym.J.,1,1(1996))
[η]=3.85×10−2×MW 0.76 式(1)
(2)平均孔径(D)
表面張力が20.1dynes/cmの液体(PMI社製:Silwick)に、セルロース系多孔膜サンプルを浸漬し、−80kPaで脱気して該サンプル内に気泡が残らないように前処理を実施した。前処理終了後、該サンプルをパームポロメーター(PMI社製:CFP−1200AEX)を用いて測定した(サンプル測定径:20mm)。
(1)粘度平均分子量
セルロース系多孔膜をカドキセンに溶解し、希薄なセルロース系溶液を作製し、その比粘度をウベローデ型粘度計で測定し、その極限粘度数[η]から以下の粘度式(1)により算出した。同様の操作を5点のサンプルについて実施し、その算術平均値を粘度平均分子量とした。(参考文献:Eur.Polym.J.,1,1(1996))
[η]=3.85×10−2×MW 0.76 式(1)
(2)平均孔径(D)
表面張力が20.1dynes/cmの液体(PMI社製:Silwick)に、セルロース系多孔膜サンプルを浸漬し、−80kPaで脱気して該サンプル内に気泡が残らないように前処理を実施した。前処理終了後、該サンプルをパームポロメーター(PMI社製:CFP−1200AEX)を用いて測定した(サンプル測定径:20mm)。
その手順は、Silwickを含んだ該サンプルに乾燥空気を通し、その乾燥空気の圧力を段階的に増加させながら、そのときの気体流量を測定する。その流量が、該サンプルが乾燥している場合の流量(Dry流量)の50%となる時点での圧力P50(PSI)を求め、数式(2)より平均孔径を求めた。
d50(μm)=C・r/P50 (2)
ここで、d50が平均孔径(μm)である。rは液体の表面張力で20.1(dynes/cm)、Cは定数で0.451(μm・cm・PSI/dynes)とした。同様の操作を5点のサンプルについて実施し、その算術平均値を平均孔径とした。
(3)平均孔径(D)(上記(2)で測定できなかった場合)
窒素の吸脱着方式による比表面積・細孔分布測定装置(ユアサアイオニクス(株)製:NOVA4200e)を用いて、BJH法にて孔径の分布を測定し、これより平均孔径(D)を求めた。それぞれ5点のサンプルについて測定し、その算術平均値を平均孔径(D)(μm)とした。
(4)表面平均孔径(D1およびD2)
セルロース系多孔膜の両表面を走査型電子顕微鏡(SEM:日本電子(株)製:JSM−6380)で観察し、SEM写真を得た。両表面の孔は比較的円形に近い形状であった。これらの写真より、両表面それぞれについて、少なくとも100個以上の孔に対して、画像処理装置(例えば旭化成(株)製:IP1000−PC)による粒子解析を行い、円相当孔径(孔の面積と等しい真円の半径)を求めた。同様の操作を5点のサンプルについて実施し、その算術平均値を表面平均孔径とした。
(5)断面平均孔径
セルロース系多孔膜を液体窒素に浸漬し、凍結割断して、膜の横断面切片を調整したのち、SEMにより観察した。その断面写真より、比較的円形に近い形状である場合については、画像処理装置による粒子解析を行い、円相当径を求めた。また、孔が非円形状である場合は、最も短い径を孔の直径とした。ここで非円形状孔とは、図1において、孔1に2点で外接する外接円2の半径をr2、この外接円と中心を同じくする、孔1の内接円3の半径をr3とするとき、r3/r2が0.5未満である孔とする。これらの孔について、少なくとも100個以上を測定し、その平均値を求めた。同様の操作を5点のサンプルについて実施し、その算術平均値を断面平均孔径とした。
(6)膜厚(d)
セルロース系多孔膜を温度23±2℃、相対温度65±3%の恒温恒湿雰囲気に24時間静置した後、100mm角の測定サンプルを切り出し、デジマチックインジケーター((株)ミツトヨ製:543−450B)を用いて、9点の厚さを測定し、その平均値を求めた。同様の操作を5点のサンプルについて実施し、その算術平均値を厚さd(μm)とした。
(7)空孔率(P)
上記、膜厚測定後のサンプルを真空中で乾燥し、水分率を0.5%以下とする。乾燥後の重量をW(g)として、以下の式より空孔率(%)を算出した。
ここで、d50が平均孔径(μm)である。rは液体の表面張力で20.1(dynes/cm)、Cは定数で0.451(μm・cm・PSI/dynes)とした。同様の操作を5点のサンプルについて実施し、その算術平均値を平均孔径とした。
(3)平均孔径(D)(上記(2)で測定できなかった場合)
窒素の吸脱着方式による比表面積・細孔分布測定装置(ユアサアイオニクス(株)製:NOVA4200e)を用いて、BJH法にて孔径の分布を測定し、これより平均孔径(D)を求めた。それぞれ5点のサンプルについて測定し、その算術平均値を平均孔径(D)(μm)とした。
(4)表面平均孔径(D1およびD2)
セルロース系多孔膜の両表面を走査型電子顕微鏡(SEM:日本電子(株)製:JSM−6380)で観察し、SEM写真を得た。両表面の孔は比較的円形に近い形状であった。これらの写真より、両表面それぞれについて、少なくとも100個以上の孔に対して、画像処理装置(例えば旭化成(株)製:IP1000−PC)による粒子解析を行い、円相当孔径(孔の面積と等しい真円の半径)を求めた。同様の操作を5点のサンプルについて実施し、その算術平均値を表面平均孔径とした。
(5)断面平均孔径
セルロース系多孔膜を液体窒素に浸漬し、凍結割断して、膜の横断面切片を調整したのち、SEMにより観察した。その断面写真より、比較的円形に近い形状である場合については、画像処理装置による粒子解析を行い、円相当径を求めた。また、孔が非円形状である場合は、最も短い径を孔の直径とした。ここで非円形状孔とは、図1において、孔1に2点で外接する外接円2の半径をr2、この外接円と中心を同じくする、孔1の内接円3の半径をr3とするとき、r3/r2が0.5未満である孔とする。これらの孔について、少なくとも100個以上を測定し、その平均値を求めた。同様の操作を5点のサンプルについて実施し、その算術平均値を断面平均孔径とした。
(6)膜厚(d)
セルロース系多孔膜を温度23±2℃、相対温度65±3%の恒温恒湿雰囲気に24時間静置した後、100mm角の測定サンプルを切り出し、デジマチックインジケーター((株)ミツトヨ製:543−450B)を用いて、9点の厚さを測定し、その平均値を求めた。同様の操作を5点のサンプルについて実施し、その算術平均値を厚さd(μm)とした。
(7)空孔率(P)
上記、膜厚測定後のサンプルを真空中で乾燥し、水分率を0.5%以下とする。乾燥後の重量をW(g)として、以下の式より空孔率(%)を算出した。
空孔率(%)={1−W/(1.5×d×10−2)}×100
(8)引張強度
JIS−L−1013に準じて測定した。温度23±2℃、相対湿度65±3%の恒温恒湿雰囲気に24時間静置したセルロース系多孔膜より幅10mm、長さ100mmの短冊状の測定サンプルを切り出し測定した。測定には小型材料試験器((株)島津製作所製 EZ Test−50N)を用いた。直交する二方向について、それぞれ5点のサンプルについて測定を行い、その算術平均値を引張強度とした。
(8)引張強度
JIS−L−1013に準じて測定した。温度23±2℃、相対湿度65±3%の恒温恒湿雰囲気に24時間静置したセルロース系多孔膜より幅10mm、長さ100mmの短冊状の測定サンプルを切り出し測定した。測定には小型材料試験器((株)島津製作所製 EZ Test−50N)を用いた。直交する二方向について、それぞれ5点のサンプルについて測定を行い、その算術平均値を引張強度とした。
引張強度(kPa)=破断強力(N)×10−3/微多孔膜の断面積(m2)
尚、サンプルの断面積は10×d×10−9(m2)とした。
(9)160℃における熱収縮率
セルロース系多孔膜を温度23±2℃、相対湿度65±3%の恒温恒湿雰囲気に24時間静置した。該微多孔膜から100mm角の測定サンプルを切り出し、サンプルを160℃の熱風循環式オーブンの中に1時間置き、熱収縮試験を行った。試験終了後、試料を冷却し、上記恒温恒湿雰囲気に2時間置いた後に、再びサンプルの寸法S(mm2)を測定し、下記式より熱収縮率を算出した。
尚、サンプルの断面積は10×d×10−9(m2)とした。
(9)160℃における熱収縮率
セルロース系多孔膜を温度23±2℃、相対湿度65±3%の恒温恒湿雰囲気に24時間静置した。該微多孔膜から100mm角の測定サンプルを切り出し、サンプルを160℃の熱風循環式オーブンの中に1時間置き、熱収縮試験を行った。試験終了後、試料を冷却し、上記恒温恒湿雰囲気に2時間置いた後に、再びサンプルの寸法S(mm2)を測定し、下記式より熱収縮率を算出した。
熱収縮率=(10000−S)/100 (%)
(10)膜厚方向に形成された、境界層の有無
セルロース系多孔膜の断面を走査型電子顕微鏡を用いて、300倍の倍率で観察し、その範囲内における境界層の多少を評価した。
(10)膜厚方向に形成された、境界層の有無
セルロース系多孔膜の断面を走査型電子顕微鏡を用いて、300倍の倍率で観察し、その範囲内における境界層の多少を評価した。
○ 多く存在する。(個数:6個以上)
△ 少しだけ存在する。(個数:3〜5個)
× 殆ど存在しない。(個数:2個以上)
(11)透気度
セルロース系多孔膜サンプルを温度23±2℃、相対湿度65±3%の恒温恒湿雰囲気に24時間静置した後、ガーレ式デンソメーター((株)東洋精機製作所製 G−B2)を用いて、JIS P8117に基づいて測定した。同様の操作をそれぞれ5点のサンプルについて実施し、測定値を各サンプルの膜厚で割った値について、算術平均し、その値を透気度(秒/μm・100ml)とした。
(12)曲路率
セルロース系多孔膜の曲路率τは、透気度から算出した。透気度は、ある条件下で一定体積の気体が一定面積のサンプルを透過するのに要する時間と定義されるため、気体の運動速度や貫通孔の形状などに依存している。曲路率の算出には、参考文献(芳尾真幸、小沢智弥 編著:リチウムイオン二次電池:115ページ;日刊工業新聞社、2000年1月27日発行)に記載の以下の式を用いた。
△ 少しだけ存在する。(個数:3〜5個)
× 殆ど存在しない。(個数:2個以上)
(11)透気度
セルロース系多孔膜サンプルを温度23±2℃、相対湿度65±3%の恒温恒湿雰囲気に24時間静置した後、ガーレ式デンソメーター((株)東洋精機製作所製 G−B2)を用いて、JIS P8117に基づいて測定した。同様の操作をそれぞれ5点のサンプルについて実施し、測定値を各サンプルの膜厚で割った値について、算術平均し、その値を透気度(秒/μm・100ml)とした。
(12)曲路率
セルロース系多孔膜の曲路率τは、透気度から算出した。透気度は、ある条件下で一定体積の気体が一定面積のサンプルを透過するのに要する時間と定義されるため、気体の運動速度や貫通孔の形状などに依存している。曲路率の算出には、参考文献(芳尾真幸、小沢智弥 編著:リチウムイオン二次電池:115ページ;日刊工業新聞社、2000年1月27日発行)に記載の以下の式を用いた。
t=5.18×10−3(τ2d/εD)
ここで、tは透気度(秒)、dは膜厚(μm)、εは空孔率(体積比)Dは平均孔径(μm)である。
ここで、tは透気度(秒)、dは膜厚(μm)、εは空孔率(体積比)Dは平均孔径(μm)である。
それぞれ5点のサンプルについて曲路率を算出し、その算術平均値を曲路率τ(−)とした。
(13)カルボキシメチル化反応の確認
セルロース系多孔膜をカルボキシメチル化した後、膜サンプルをフーリエ変換赤外分光分析装置(日本分光社製:Spectrum100)のユニバーサルATRを用いて吸光度測定を行った。置換の程度はプロトン型カルボキシル基に由来する1730cm-1の吸光度強度を確認した。
(実施例1)
公知の方法に従って調製した銅アンモニアセルロース溶液(セルロース:8wt%、アンモニア濃度6wt%、銅濃度2.9wt%、その他は殆ど水)をドクターブレードを用いて、金属板上に500μm厚で流延した。次いで、フィルム状となった該溶液を、金属板と共に、凝固浴(液体窒素:−196℃)に1時間浸漬し、凝固した。次いで、硫酸浴(40wt%/−30℃)に30分間浸漬し、溶媒除去を行った後、水による洗浄、凍結乾燥を経て、白く失透したセルロース多孔膜を得た。
(13)カルボキシメチル化反応の確認
セルロース系多孔膜をカルボキシメチル化した後、膜サンプルをフーリエ変換赤外分光分析装置(日本分光社製:Spectrum100)のユニバーサルATRを用いて吸光度測定を行った。置換の程度はプロトン型カルボキシル基に由来する1730cm-1の吸光度強度を確認した。
(実施例1)
公知の方法に従って調製した銅アンモニアセルロース溶液(セルロース:8wt%、アンモニア濃度6wt%、銅濃度2.9wt%、その他は殆ど水)をドクターブレードを用いて、金属板上に500μm厚で流延した。次いで、フィルム状となった該溶液を、金属板と共に、凝固浴(液体窒素:−196℃)に1時間浸漬し、凝固した。次いで、硫酸浴(40wt%/−30℃)に30分間浸漬し、溶媒除去を行った後、水による洗浄、凍結乾燥を経て、白く失透したセルロース多孔膜を得た。
得られた膜の両表面および断面のSEM写真を図2〜4に示す。断面観察では、膜厚方向に形成された複数の境界層が確認できた。また、この膜は、孔の大きさが一方の表面から、他方の表面に向けて、順次縮小する特徴を有した膜であった。得られた膜の各物性の測定結果を、表1に示す。
(実施例2)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:4wt%、アンモニア:6wt%、銅:1.4wt%、その他は殆ど水」とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜は実施例1と同様に、膜厚方向に形成された複数の境界層が存在し、また、孔の大きさは、一方の表面から、他方の表面に向けて、順次縮小する特徴を有した膜であった。得られた膜各物性の測定結果を、表1に示す。
(実施例3)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:6wt%、アンモニア:6wt%、銅:2.2wt%、その他は殆ど水」とし、この銅アンモニアセルロース溶液を、ガラス板上に600μm厚で流延し、凝固浴として−40℃に冷却したオイル(松本油脂(株)製:TT―200)に1時間浸漬し、また硫酸浴の温度を18℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、凝固、洗浄、乾燥を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。
(実施例2)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:4wt%、アンモニア:6wt%、銅:1.4wt%、その他は殆ど水」とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜は実施例1と同様に、膜厚方向に形成された複数の境界層が存在し、また、孔の大きさは、一方の表面から、他方の表面に向けて、順次縮小する特徴を有した膜であった。得られた膜各物性の測定結果を、表1に示す。
(実施例3)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:6wt%、アンモニア:6wt%、銅:2.2wt%、その他は殆ど水」とし、この銅アンモニアセルロース溶液を、ガラス板上に600μm厚で流延し、凝固浴として−40℃に冷却したオイル(松本油脂(株)製:TT―200)に1時間浸漬し、また硫酸浴の温度を18℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、凝固、洗浄、乾燥を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。
得られた膜の両表面および断面のSEM写真を図5〜7に示す。断面観察では、膜厚方向に形成された複数の境界層が確認できた。また、断面平均孔径が10μm以上の大孔径層と、該孔径が5μm以下の小孔径層(断面平均孔径:2.1μm)を含む多層構造膜であった。得られた膜の各各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例4)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:10wt%、アンモニア:6wt%、銅:3.6wt%、その他は殆ど水」とした以外は、実施例3と同様の操作を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜は実施例3と同様に、膜厚方向に形成された複数の境界層が存在し、また、大孔径層と小孔径層を含む多層構造膜であった。得られた膜の各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例4と同じ組成の銅アンモニアセルロース溶液を用い、ガラス板上に500μm厚で流延し、硫酸浴の温度を−30℃としたこと以外は、実施例3と同様に操作して、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例6)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:3wt%、アンモニア:6wt%、銅:1wt%、その他は殆ど水」とした以外は、実施例5と同様の操作を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜は実施例3と同様に、膜厚方向に形成された複数の境界層が存在し、また、大孔径層と小孔径層を含む多層構造膜であった。得られた膜の各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例5において、水洗浄後の該膜を、凍結乾燥ではなく、イソプロピルアルコール(IPA:100wt%/25℃/2時間)に浸漬して、膜が保持する水分をIPAで置換した後、加熱乾燥(150℃/10分)を行った以外は、実施例5と同様の操作を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例8)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:12wt%、アンモニア:7.2wt%、銅:4.3wt%、その他は殆ど水」とし、基板を金属板、流延厚を100μm、凝固浴温度を−60℃、水洗浄後の該膜の乾燥について、凍結乾燥ではなく、加熱乾燥(105℃/30分)を行った以外は、実施例5と同様の操作を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜の各各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1と同じ組成の銅アンモニアセルロース溶液を、ポリ塩化ビニル製のスペーサーを用いて、約3.0mm厚で流延したこと以外は、実施例5と同様の操作を行い、白く失透した、厚みが約2.5mmである、厚手のセルロース多孔膜を得た。該膜は、吸水性能い優れ、水に浸すとすぐに吸水した。また、得られた膜の各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例1と同じ組成の銅アンモニアセルロース溶液をドクターブレードにより、ガラス板上に250μm厚で流延した。次いで、フィルム状となった該溶液を、ガラス板と共に、凝固浴(水酸化ナトリウム水溶液/11wt%/25℃/10分間)に浸漬した。次いで、硫酸浴(3wt%/25℃/10分間)に浸漬し、溶媒除去を行った後、水(30℃/10分間)による洗浄を行った。その後、該膜を105℃で30分間、加熱乾燥を行い、透明で強靭な膜を得た。得られた膜の両表面および断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、断面は均一な構造であることが確認された。SEM観察の結果を図8〜10に示す。また、この膜の各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例11)
本例では、実施例10で得られた膜の、有用な応用例の一つを示す。
(実施例4)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:10wt%、アンモニア:6wt%、銅:3.6wt%、その他は殆ど水」とした以外は、実施例3と同様の操作を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜は実施例3と同様に、膜厚方向に形成された複数の境界層が存在し、また、大孔径層と小孔径層を含む多層構造膜であった。得られた膜の各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例4と同じ組成の銅アンモニアセルロース溶液を用い、ガラス板上に500μm厚で流延し、硫酸浴の温度を−30℃としたこと以外は、実施例3と同様に操作して、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例6)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:3wt%、アンモニア:6wt%、銅:1wt%、その他は殆ど水」とした以外は、実施例5と同様の操作を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜は実施例3と同様に、膜厚方向に形成された複数の境界層が存在し、また、大孔径層と小孔径層を含む多層構造膜であった。得られた膜の各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例5において、水洗浄後の該膜を、凍結乾燥ではなく、イソプロピルアルコール(IPA:100wt%/25℃/2時間)に浸漬して、膜が保持する水分をIPAで置換した後、加熱乾燥(150℃/10分)を行った以外は、実施例5と同様の操作を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例8)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:12wt%、アンモニア:7.2wt%、銅:4.3wt%、その他は殆ど水」とし、基板を金属板、流延厚を100μm、凝固浴温度を−60℃、水洗浄後の該膜の乾燥について、凍結乾燥ではなく、加熱乾燥(105℃/30分)を行った以外は、実施例5と同様の操作を行い、白く失透したセルロース多孔膜を得た。得られた膜の各各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例1と同じ組成の銅アンモニアセルロース溶液を、ポリ塩化ビニル製のスペーサーを用いて、約3.0mm厚で流延したこと以外は、実施例5と同様の操作を行い、白く失透した、厚みが約2.5mmである、厚手のセルロース多孔膜を得た。該膜は、吸水性能い優れ、水に浸すとすぐに吸水した。また、得られた膜の各物性の測定結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例1と同じ組成の銅アンモニアセルロース溶液をドクターブレードにより、ガラス板上に250μm厚で流延した。次いで、フィルム状となった該溶液を、ガラス板と共に、凝固浴(水酸化ナトリウム水溶液/11wt%/25℃/10分間)に浸漬した。次いで、硫酸浴(3wt%/25℃/10分間)に浸漬し、溶媒除去を行った後、水(30℃/10分間)による洗浄を行った。その後、該膜を105℃で30分間、加熱乾燥を行い、透明で強靭な膜を得た。得られた膜の両表面および断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、断面は均一な構造であることが確認された。SEM観察の結果を図8〜10に示す。また、この膜の各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例11)
本例では、実施例10で得られた膜の、有用な応用例の一つを示す。
該膜について、分子量の異なる数種類のマーカー分子を用いて、その阻止率を測定した。その結果を分子量に対してプロットしたところ、この膜の分画分子量(阻止率が90%の分子量)は5000(推算分子径:2.6nm)であった。
(実施例12)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:4wt%、アンモニア:6wt%、銅:1.4wt%、その他は殆ど水」とし、水洗後の膜に対し、IPAで水分を置換後、加熱乾燥(150℃/10分)を行った以外は、実施例10と同様の操作を行い、僅かに白みがかったセルロース多孔膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例13)
本例では、実施例12で得られた膜の、有用な応用例の一つを示す。
(実施例12)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:4wt%、アンモニア:6wt%、銅:1.4wt%、その他は殆ど水」とし、水洗後の膜に対し、IPAで水分を置換後、加熱乾燥(150℃/10分)を行った以外は、実施例10と同様の操作を行い、僅かに白みがかったセルロース多孔膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例13)
本例では、実施例12で得られた膜の、有用な応用例の一つを示す。
該膜を用いて、数十nmから数百nmの夾雑物を含むアルブミン/リン酸緩衝水溶液(アルブミン:1wt%、リン酸緩衝水溶液:pH7.4)1Lをろ過した。その後、この膜に付着したアルブミンを、界面活性剤で抽出し、タンパクと反応するBCA溶液で発色させ、分光光度計で測定(波長562nm)し、膜に付着したアルブミンの量を定量した。その結果、アルブミンの吸着量は、セルロース1gあたり255μgと極めて僅かであった。また、同様に、タンパク質の吸着が少ないことを特長とする、市販のポリエーテルスルホン膜(ポール社製:公称孔径0.1μm)についても評価したところ、上記セルロース多孔膜の評価結果の100倍以上である、ポリエーテルスルホン1gあたり27700μgであった。
(実施例14)
凝固浴の組成を「アセトン/水=90wt%/10wt%)」とする以外は、実施例7と同様の操作を行い、透明で強靭な膜を得た。この膜の両表面および断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、一方の表面の孔径が非常に小さく、その表面を含む緻密な層を有する構造であることが確認された。SEM観察の結果を図11〜13に示す。また、この膜について、各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例15)
本例では、実施例14で得られた膜の、有用な応用例を一つ示す。
(実施例14)
凝固浴の組成を「アセトン/水=90wt%/10wt%)」とする以外は、実施例7と同様の操作を行い、透明で強靭な膜を得た。この膜の両表面および断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、一方の表面の孔径が非常に小さく、その表面を含む緻密な層を有する構造であることが確認された。SEM観察の結果を図11〜13に示す。また、この膜について、各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例15)
本例では、実施例14で得られた膜の、有用な応用例を一つ示す。
水浸漬時の膜の膨潤を抑制する目的で、実施例14で得られた膜を、さらに150℃で30分間加熱した。続いて、この膜の低分子の透過性を評価した。株式会社ビードレックス製の膜透過実験装置(KH−5P)を用い、ガラスセル間に該膜を挟み、片方のガラスセルには、0.4mol/Lのスクロース(推算分子径:1.1nm)水溶液(50ml)を、もう一方のガラスセルには純水(50ml)を入れ、25℃におけるスクロースの透過性を評価した。また、同様に市販のセロハン(登録商標)(#300)についても比較として評価した。、5時間後において、セロハン(登録商標)ではスクロースの透過量が0.04mol/Lであったのに対し、該セルロース膜は0.008mol/Lと非常に優れた、低分子透過阻止性能であった。
(実施例16)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:6wt%、アンモニア:6wt%、銅:2.2wt%、その他は殆ど水」とし、凝固浴に30℃の温水を用いた以外は、実施例12と同様の操作を行い、半透明な膜を得た。この膜の両表面および断面をSEMで観察したところ、一方の面に面した粗大層と、それ以外の孔径がほぼ均一な層からなる構造であることが確認された。SEM観察の結果を図14〜16に示す。また、この膜について、各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例17)
水分を置換する溶媒として、IPAのかわりにメタノールを用いたこと以外は実施例16と同様に操作して、実施例16と比べて、失透度合いが更に薄く、透明に近い感じの色合いの膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例18)
凝固浴の水の温度を10℃とした以外は実施例16と同様に操作して、半透明な膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表2に示す。実施例16の膜と比較して、若干白く、空孔率が高かった。
(実施例19)
凝固浴に濃度が1500ppmとなるように、アンモニアを添加したこと以外は実施例18と同様に操作し、半透明な膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表2に示す。実施例18の膜と比較して、さらに白く、空孔率が高かった。
(実施例20)
実施例10と同様の銅アンモニアセルロース溶液を用い、凝固液としてアセトン/水/アンモニア混合溶液(それぞれ順に50wt%/48wt%/2%wt%)を用いたこと以外は、実施例16と同様の操作を行い、白く失透した膜を得た。この膜の断面をSEMで観察したところ、全体的に疎な構造であることが確認された。SEM観察の結果を図17に示す。また、得られた膜について、各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例21)
流延厚を600μm、凝固液に浸漬する時間を60分とする以外は実施例20と同様に操作して、白く失透した膜を得た。得られた膜について、各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例22)
実施例21で得られた膜を用いて、実施例13と同様の操作を行い、タンパク質の吸着性を評価した。その結果、セルロース1gあたり6500μgであり、市販ポリエーテルスルホン膜(ポール社製:公称孔径0.1μm)の1/4以下であった。
(実施例23)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:8wt%、アンモニア:4.8wt%、銅:2.9wt%、アセトン4wt%、その他は殆ど水」としたこと以外は実施例20と同様に操作して、白く失透した膜を得た。得られた膜について、各物性の測定結果を表2に示す。得られた膜は実施例20で得られた膜と比較して、裏面の孔径が大きかった。
(実施例24)
凝固浴として希硫酸水溶液(3wt%/25℃/10分)を用いたこと以外は、実施例9と同様の操作を行い、白く失透した膜を得た。この膜の断面をSEMで観察したところ、一方の面に面して存在する緻密な層とそれ以外の粗な層が確認された。SEM観察の結果を図18に示す。また、得られた膜の各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例25)
セルロース系多孔膜の誘導体化反応を実施した。今回は誘導体化の一例として、カルボキシメチル化について実施した。
実施例20で得られた膜の一部(0.6g)をナス型フラスコに入れ、ここに純水、IPAを加え、IPAと水の比が85:15となり、かつ溶媒重量が90gになるように調整した。これに回転子を入れた後、ガラス製還流管を取り付け、約10℃の水道水を還流させ冷却しながら、ナス型フラスコごと50℃のウォーターバスに浸漬し、30分間加熱した。なお加熱はマグネティックスターラーを用いて緩やかに攪拌させながら行った。さらに11%の苛性ソーダ溶液を、セルロースと苛性ソーダのmol比が1:1となるようにフラスコ内に添加した。さらに30分間攪拌を継続し、アルカリセルロースを調整した。アルカリセルロースの調整後、さらに攪拌を継続しながらクロロ酢酸ナトリウムを、セルロースとクロロ酢酸ナトリウムのmol比が1:3となるように添加した。
(実施例16)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:6wt%、アンモニア:6wt%、銅:2.2wt%、その他は殆ど水」とし、凝固浴に30℃の温水を用いた以外は、実施例12と同様の操作を行い、半透明な膜を得た。この膜の両表面および断面をSEMで観察したところ、一方の面に面した粗大層と、それ以外の孔径がほぼ均一な層からなる構造であることが確認された。SEM観察の結果を図14〜16に示す。また、この膜について、各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例17)
水分を置換する溶媒として、IPAのかわりにメタノールを用いたこと以外は実施例16と同様に操作して、実施例16と比べて、失透度合いが更に薄く、透明に近い感じの色合いの膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例18)
凝固浴の水の温度を10℃とした以外は実施例16と同様に操作して、半透明な膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表2に示す。実施例16の膜と比較して、若干白く、空孔率が高かった。
(実施例19)
凝固浴に濃度が1500ppmとなるように、アンモニアを添加したこと以外は実施例18と同様に操作し、半透明な膜を得た。得られた膜の各物性の測定結果を表2に示す。実施例18の膜と比較して、さらに白く、空孔率が高かった。
(実施例20)
実施例10と同様の銅アンモニアセルロース溶液を用い、凝固液としてアセトン/水/アンモニア混合溶液(それぞれ順に50wt%/48wt%/2%wt%)を用いたこと以外は、実施例16と同様の操作を行い、白く失透した膜を得た。この膜の断面をSEMで観察したところ、全体的に疎な構造であることが確認された。SEM観察の結果を図17に示す。また、得られた膜について、各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例21)
流延厚を600μm、凝固液に浸漬する時間を60分とする以外は実施例20と同様に操作して、白く失透した膜を得た。得られた膜について、各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例22)
実施例21で得られた膜を用いて、実施例13と同様の操作を行い、タンパク質の吸着性を評価した。その結果、セルロース1gあたり6500μgであり、市販ポリエーテルスルホン膜(ポール社製:公称孔径0.1μm)の1/4以下であった。
(実施例23)
銅アンモニアセルロース溶液の組成を「セルロース:8wt%、アンモニア:4.8wt%、銅:2.9wt%、アセトン4wt%、その他は殆ど水」としたこと以外は実施例20と同様に操作して、白く失透した膜を得た。得られた膜について、各物性の測定結果を表2に示す。得られた膜は実施例20で得られた膜と比較して、裏面の孔径が大きかった。
(実施例24)
凝固浴として希硫酸水溶液(3wt%/25℃/10分)を用いたこと以外は、実施例9と同様の操作を行い、白く失透した膜を得た。この膜の断面をSEMで観察したところ、一方の面に面して存在する緻密な層とそれ以外の粗な層が確認された。SEM観察の結果を図18に示す。また、得られた膜の各物性の測定結果を表2に示す。
(実施例25)
セルロース系多孔膜の誘導体化反応を実施した。今回は誘導体化の一例として、カルボキシメチル化について実施した。
実施例20で得られた膜の一部(0.6g)をナス型フラスコに入れ、ここに純水、IPAを加え、IPAと水の比が85:15となり、かつ溶媒重量が90gになるように調整した。これに回転子を入れた後、ガラス製還流管を取り付け、約10℃の水道水を還流させ冷却しながら、ナス型フラスコごと50℃のウォーターバスに浸漬し、30分間加熱した。なお加熱はマグネティックスターラーを用いて緩やかに攪拌させながら行った。さらに11%の苛性ソーダ溶液を、セルロースと苛性ソーダのmol比が1:1となるようにフラスコ内に添加した。さらに30分間攪拌を継続し、アルカリセルロースを調整した。アルカリセルロースの調整後、さらに攪拌を継続しながらクロロ酢酸ナトリウムを、セルロースとクロロ酢酸ナトリウムのmol比が1:3となるように添加した。
その後、3時間、攪拌、および還流を継続し、セルロースのカルボキシメチル化を行った。3時間経過後、加熱を停止し、膜をナス型フラスコから取り出した。この膜を1Nの塩酸で洗浄し、その後80wt%のメタノール水、100wt%のメタノールを用いて十分に洗浄した後、市販のろ紙に挟んで一昼夜、室温にて放置し、膜を乾燥させた。得られたカルボキシメチル化セルロース膜について、フーリエ変換赤外分光分析装置を用いて、カルボキシル化が進行していることを確認した。
(実施例26)
実施例25で得られた膜について、実施例22と同様に、タンパクの吸着性について評価したところ、カルボキシメチル化セルロース1gあたり520μgであり、実施例22と比較して、1/10以下であった。
(比較例1)
公知の方法で得られた酢酸セルロース多孔膜(USP3883626)をpH13の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、25℃でけん化し、再生セルロース多孔膜を得た。この膜について、SEM観察したところ、膜厚方向に伸びる境界層は確認できなかった。この膜について、各物性の測定結果を表2に示す。出発ドープの重合度が低いため、出来た膜の粘度平均分子量は約21000であった。その他の各物性の測定結果を表3に示す。得られた膜は、強度が低く、不注意な取り扱いをすると、膜を破損することがあった。また折り曲げたりすると、容易に破れを生じた。
(比較例2)
実施例5と同じ組成の銅アンモニアセルロース溶液を、ニーダーで48時間攪拌し、セルロースの重合度を低下させた。その後、アンモニアなどを添加し、実施例1と同じ組成の溶液を得た。このドープを用いて、実施例9と同様の操作を行い、半透明な膜を得た。この膜について、各物性の測定結果を表3に示す。
(実施例26)
実施例25で得られた膜について、実施例22と同様に、タンパクの吸着性について評価したところ、カルボキシメチル化セルロース1gあたり520μgであり、実施例22と比較して、1/10以下であった。
(比較例1)
公知の方法で得られた酢酸セルロース多孔膜(USP3883626)をpH13の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、25℃でけん化し、再生セルロース多孔膜を得た。この膜について、SEM観察したところ、膜厚方向に伸びる境界層は確認できなかった。この膜について、各物性の測定結果を表2に示す。出発ドープの重合度が低いため、出来た膜の粘度平均分子量は約21000であった。その他の各物性の測定結果を表3に示す。得られた膜は、強度が低く、不注意な取り扱いをすると、膜を破損することがあった。また折り曲げたりすると、容易に破れを生じた。
(比較例2)
実施例5と同じ組成の銅アンモニアセルロース溶液を、ニーダーで48時間攪拌し、セルロースの重合度を低下させた。その後、アンモニアなどを添加し、実施例1と同じ組成の溶液を得た。このドープを用いて、実施例9と同様の操作を行い、半透明な膜を得た。この膜について、各物性の測定結果を表3に示す。
実施例9の膜と比較して、SEM観察ではその差は明確でなかったが、物性的には分子量が低く、不注意な取り扱いをすると、膜を破損することがあった。
(比較例3)
約1年間、室温下で保管した、実施例1と同じ組成の銅アンモニアセルロース溶液を用いて、実施例9と同様の操作を行い、半透明な膜を得た。この膜について、各物性の測定結果を表3に示す。
得られた膜は、実施例9の膜と比較して、分子量が低く、不注意な取り扱いをすると、膜を破損することがあった。これは、保管中に、ドープ中に溶存する酸素の影響でセルロースの分子鎖が切断され、分子量が低下した為と推察された。
(比較例4)
比較例2で調整した低重合度の銅アンモニアセルロース溶液を用いて、その組成を「セルロース:0.5wt%、アンモニア:6.1wt%、銅:0.36wt%、その他は殆ど水」とし、該溶液を予め温度が2℃である冷蔵庫内で冷却したガラス製のシャーレに厚さ1mmとなるよう注ぎ、これをシャーレごと−15℃のオイル浴に浸漬した以外は、実施例3と同様の操作を行い、白く失透した膜を得た。この膜について、各物性の測定結果を表3に示す。この膜は孔径が大きいが、膜の強度が弱く、不注意な取り扱いをすると、容易に膜が破損した。また、同様な操作を数回繰返し実施したところ、乾燥工程において、度々、膜が破損した。
(比較例5)
市販の普通セロハン(登録商標)(#300)の物性を表3に示す。粘度平均分子量が小さく、特に湿潤状態では、不注意な取り扱いをすると、膜を破損することがあった。
(比較例6)
銅アンモニア溶液の重合度が実施例1と同程度に高い(重合度:650〜700)を用いて、比較例4と同じ組成の該溶液を調整したこと以外は、比較例34と同様に操作して、白く失透した膜を得た。比較例4と同様に、膜の強度が弱く、乾燥工程での破損と、不注意な取り扱いをした場合の破損が度々発生した。
(比較例7)
市販のセルロース製不織布(旭化成せんい製:UR601)を用いて、数nm〜数百μの大きさの粒子等を含む水性液体のろ過を行った。しかし、数nm〜数百μmの大きさの粒子等は殆ど分離できなかった。該不織布には目視でも明確に確認できる大きさの孔があり、その大きさは短軸方向で1000μm程度、長軸方向では1000μmより長かった。
(比較例8)
市販の逆浸透膜を用いて、数nm〜数十nmの微粒子を含む水性液体のろ過を行った。しかし、殆ど通液せず、このような大きさの粒子が混在する液体のろ過には不向きであった。
(比較例9)
市販のポリプロピレン多孔膜(セルガード:No2500)を無菌条件下で使用することを目的として、乾熱減菌(160℃/1時間)したところ、膜が面積比で40%程度収縮し、使用できなかった。
(比較例10)
市販のニトロセルロース多孔膜(ポール社製:公称孔径0.2μm)について、比較例7と同様の操作を実施したところ、膜が面積比で60%程度収縮し、使用できなかった。
(比較例11)
市販のセルロース混合エステル多孔膜(アドバンテック社製:公称孔径0.3μm)について、比較例7と同様の操作を実施したところ、膜が面積比で50%程度収縮し、使用できなかった。
(比較例3)
約1年間、室温下で保管した、実施例1と同じ組成の銅アンモニアセルロース溶液を用いて、実施例9と同様の操作を行い、半透明な膜を得た。この膜について、各物性の測定結果を表3に示す。
得られた膜は、実施例9の膜と比較して、分子量が低く、不注意な取り扱いをすると、膜を破損することがあった。これは、保管中に、ドープ中に溶存する酸素の影響でセルロースの分子鎖が切断され、分子量が低下した為と推察された。
(比較例4)
比較例2で調整した低重合度の銅アンモニアセルロース溶液を用いて、その組成を「セルロース:0.5wt%、アンモニア:6.1wt%、銅:0.36wt%、その他は殆ど水」とし、該溶液を予め温度が2℃である冷蔵庫内で冷却したガラス製のシャーレに厚さ1mmとなるよう注ぎ、これをシャーレごと−15℃のオイル浴に浸漬した以外は、実施例3と同様の操作を行い、白く失透した膜を得た。この膜について、各物性の測定結果を表3に示す。この膜は孔径が大きいが、膜の強度が弱く、不注意な取り扱いをすると、容易に膜が破損した。また、同様な操作を数回繰返し実施したところ、乾燥工程において、度々、膜が破損した。
(比較例5)
市販の普通セロハン(登録商標)(#300)の物性を表3に示す。粘度平均分子量が小さく、特に湿潤状態では、不注意な取り扱いをすると、膜を破損することがあった。
(比較例6)
銅アンモニア溶液の重合度が実施例1と同程度に高い(重合度:650〜700)を用いて、比較例4と同じ組成の該溶液を調整したこと以外は、比較例34と同様に操作して、白く失透した膜を得た。比較例4と同様に、膜の強度が弱く、乾燥工程での破損と、不注意な取り扱いをした場合の破損が度々発生した。
(比較例7)
市販のセルロース製不織布(旭化成せんい製:UR601)を用いて、数nm〜数百μの大きさの粒子等を含む水性液体のろ過を行った。しかし、数nm〜数百μmの大きさの粒子等は殆ど分離できなかった。該不織布には目視でも明確に確認できる大きさの孔があり、その大きさは短軸方向で1000μm程度、長軸方向では1000μmより長かった。
(比較例8)
市販の逆浸透膜を用いて、数nm〜数十nmの微粒子を含む水性液体のろ過を行った。しかし、殆ど通液せず、このような大きさの粒子が混在する液体のろ過には不向きであった。
(比較例9)
市販のポリプロピレン多孔膜(セルガード:No2500)を無菌条件下で使用することを目的として、乾熱減菌(160℃/1時間)したところ、膜が面積比で40%程度収縮し、使用できなかった。
(比較例10)
市販のニトロセルロース多孔膜(ポール社製:公称孔径0.2μm)について、比較例7と同様の操作を実施したところ、膜が面積比で60%程度収縮し、使用できなかった。
(比較例11)
市販のセルロース混合エステル多孔膜(アドバンテック社製:公称孔径0.3μm)について、比較例7と同様の操作を実施したところ、膜が面積比で50%程度収縮し、使用できなかった。
本発明のセルロース系多孔膜は、強度、耐熱性および耐有機溶剤性に優れ、加えて、親水性である多孔膜である。この特性を利用して、水性液体、極性有機溶媒、血液等の分離
膜として好適に利用できる。
膜として好適に利用できる。
Claims (12)
- 粘度平均分子量が6×104以上、平均孔径(D)が0.001〜1000μm、空孔率(P)が0.1〜98%、引張強度が0.5kPa以上、160℃における熱収縮率が5%以下であることを特徴とするフィルム状セルロース系多孔膜。
- 前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.01〜1000μm、空孔率(P)が5〜98%、引張強度が0.5kPa以上であり、一方の面の表面平均孔径(D1)が0.01〜500μm、他方の面の表面平均孔径(D2)が0.1〜1000μm、D2/D1が1.1以上であり、該多孔膜の少なくとも一部分において、膜厚方向に形成された、複数の境界層を有することを特徴とする請求項1に記載のセルロース系多孔膜。
- 前記多孔膜において、断面平均孔径が10μm以上である大孔径層と、断面平均孔径が5μm以下である小孔径層の、少なくとも二層から成り、大孔径層に膜厚方向に形成された境界層を有することを特徴とする請求項2に記載のセルロース系多孔膜。
- 前記多孔膜において、孔径が一方の面から他方の面の方向に、順次縮小する傾斜構造であることを特徴とする請求項2に記載のセルロース系多孔膜。
- 前記多孔膜において、D1、D2のいずれも2μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のセルロース系多孔膜。
- 前記多孔膜において、膜厚が1mm以上であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のセルロース系多孔膜。
- 前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜0.1μm、空孔率(P)が0.1〜40%、引張強度が2kPa以上であり、断面の構造が均一であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース系多孔膜。
- 前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜1μm、空孔率(P)が0.1〜50%、引張強度が2kPa以上であり、一方の面の表面平均孔径(D1)が0.001〜0.01μmであることを特徴とする請求項1に記載のセルロース系多孔膜。
- 前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜20μm、空孔率(P)が1〜90%、引張強度が0.5kPa以上であり、透気度が5〜500秒/μm・100mlであり、一方の面に面して、空孔率(P)が50〜95%で、1μm以上の孔を含み、厚みが10μm以下の粗大層と、該粗大層以外の孔径がほぼ均一な層との少なくとも2層を含み、該粗大層内の孔径が他方の面方向に順次縮小する傾向を有する形状であり、D2/D1が1.1以上であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース系多孔膜。
- 前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.001〜20μm、空孔率(P)が1〜90%、引張強度が0.5kPa以上、透気度が2〜250秒/μm・100ml、曲路率が1.5以上、D2/D1が1.1以上であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース系多孔膜。
- 前記多孔膜において、平均孔径(D)が0.01〜20μm、空孔率(P)が30〜90%、引張強度が0.5kPa以上であり、一方の面に面して、空孔率(P)が5%以下で厚みが10μm以下の緻密層と、該緻密層以外の空孔率(P)が40%以上の粗大層との少なくとも2層を有することを特徴とする請求項1に記載のセルロース系多孔膜。
- セルロース系ポリマーが、セルロースもしくはセルロースの水酸基の一部が、水酸基以外の官能基で置換されたセルロース誘導体のいずれかであるか、もしくは両者を含む請求項1〜11のいずれかに記載のセルロース系多孔膜。
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