JPWO2008035396A1 - 電力増幅装置 - Google Patents
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Abstract
ドハティ増幅器を構成するλ/4伝送線路の個数を削減した電力増幅装置。この電力増幅装置(100)では、ドハティ増幅器を構成するキャリア増幅器(103)側の第一のλ/4伝送線路(105)の特性インピーダンスをキャリア増幅器(103)の出力インピーダンスよりも大きくする。例えば、キャリア増幅器(103)の出力インピーダンスが50Ωのとき、第一のλ/4伝送線路(105)の特性インピーダンスを50×21/2≒71Ωとする。また、ピーク増幅器(108)の出力側のピーク出力整合回路(109)は、負荷インピーダンスZよりも高いインピーダンスに整合するように調整する。例えば、ピーク増幅器出力整合回路(109)は、負荷インピーダンスZの2倍になるように整合する。
Description
本発明は、携帯端末などの移動通信端末に適用できる電力増幅装置に関し、特に、マルチキャリア信号を送受信するマルチキャリア方式の携帯端末に適用できるドハティ増幅器からなる電力増幅装置に関する。
近年、高速無線伝送を実現可能な通信方式として、マルチパスやフェージングに強いマルチキャリア方式が注目を集めている。このようなマルチキャリア方式では、複数のキャリア(搬送波)に重畳された送信信号が時間軸上で加算されるため、マルチキャリア信号に高いピーク電力が生じる。そこで、このような高いピーク電力を有するマルチキャリア信号であっても高効率に増幅を行うことが可能な電力増幅装置として、ドハティ増幅器が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
図1は、一般的に知られているドハティ増幅器からなる電力増幅装置の概略的な構成図である。図1に示すように、一般的なドハティ増幅器は、入力されるRF信号を分配する分配器1、キャリア増幅器入力整合回路2、キャリア増幅器3、キャリア増幅器出力整合回路4、90°の位相遅延を行う第一のλ/4伝送線路5、90°の位相遅延を行う第二のλ/4伝送線路6、ピーク増幅器入力整合回路7、ピーク増幅器8、ピーク増幅器出力整合回路9、及び90°の位相遅延を行う第三のλ/4伝送線路10によって構成され、負荷11に接続されている。このような構成において、第一のλ/4伝送線路5による90°の位相遅延の作用により、ピーク増幅器8の出力電流によってキャリア増幅器3の負荷インピーダンスが変調される。
上述のようなドハティ増幅器においては、入力電力が低い領域では、キャリア増幅器3のみが負荷インピーダンスの高い状態で動作するために高効率な動作を行い、入力電力が高い領域では、ピーク増幅器8の出力電流によってキャリア増幅器3の負荷インピーダンスが下がり、高効率を維持しながら飽和電力を引き上げるため、高いピーク電力を有する信号であっても高効率な増幅を行うことができる。つまり、入力電力が低い領域から入力電力が高い領域まで高効率な増幅を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
ところで、図1に示すようなドハティ増幅器からなる電力増幅装置において、約35Ωの特性インピーダンスを有する第三のλ/4伝送線路10の作用により、通常は50Ωの負荷11が25Ωに変換される。すなわち、負荷11のインピーダンスは、352÷50=24.5Ωとなり、約25Ωに変換される。このようにして、第三のλ/4伝送線路10が負荷11に対するインピーダンス変換器として機能することになる。
また、入力電力が大きいときは、キャリア増幅器3とピーク増幅器8がともに動作して負荷11へ出力電流を供給する。このとき、前述のように見かけ上25Ωに変換された負荷11を、キャリア増幅器3とピーク増幅器8で均等に駆動することにより、a点から負荷11を見たインピーダンスとB点から負荷11を見たインピーダンスは共に50Ωとなる。さらに、特性インピーダンス50Ωで構成された第一のλ/4伝送線路5により、A点から負荷を見たインピーダンスは、(502÷50=)50Ωとして見えるため、キャリア増幅器3から見た負荷11のインピーダンスは50Ωになる。
一方、入力電力が小さいときは、キャリア増幅器3のみが動作して負荷11へ出力電流を供給する。このとき、ピーク増幅器8の出力は見かけ上オープンになっているので、B点からピーク増幅器8を見たインピーダンスはHighインピーダンスとなるため、a点から負荷11を見たインピーダンスは、前述のように変換された状態のままの25Ωに見えることになる。
また、特性インピーダンス50Ωで構成された第一のλ/4伝送線路5により、A点から負荷11を見たインピーダンスは、(502÷25=)100Ωとして見えるため、キャリア増幅器3の負荷インピーダンスは100Ωになる。そこで、キャリア増幅器3のキャリア増幅器出力整合回路4を、負荷11が50Ωで高い飽和電力となるように設計し、かつ、負荷11が100Ωで高効率となるように設計することにより、バックオフを大きくとったときでも高効率に電力増幅を行うことが可能となる。
"RF Power Amplifiers for Wireless Communications", STEVE C. CRIPPS, Artech House Publishers 特開2005−3229931号公報
"RF Power Amplifiers for Wireless Communications", STEVE C. CRIPPS, Artech House Publishers
しかしながら、図1に示すような従来のドハティ増幅器からなる電力増幅装置においては、λ/4伝送線路を少なくとも3個使用する構成になっているため、ドハティ増幅器の回路規模が大きくなって電力増幅装置を小型化することが困難である。したがって、電力増幅装置の回路構成が大きくなることにより、携帯端末などの移動通信端末を小型化するという要求に対応することができない。
本発明の目的は、このような事情に鑑みてなされたもので、ドハティ増幅器を構成するλ/4伝送線路の個数を削減して小型化を図った電力増幅装置を提供することである。
本発明の電力増幅装置は、入力電力が供給されているときは常時動作する第一の増幅器と、入力電力が所定のレベルより大きいときに動作する第二の増幅器とを備えたドハティ増幅器からなる電力増幅装置であって、第一の増幅器の出力側に直列接続された第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスZ0は負荷インピーダンスZより大きい構成を採っている。また、第二の増幅器の出力整合回路は、負荷インピーダンスZより高いインピーダンスに整合するように調整されている。
本発明によれば、負荷側に直列に存在していた第三のλ/4伝送線路を削除することにより、λ/4伝送線路の使用個数を削減することができるので、ドハティ増幅器の高効率特性を損なうことなく、電力増幅器の回路規模を小さくすることが可能となる。その結果、このような電力増幅器を内蔵する携帯端末などの移動通信端末を小型化することができる。また、負荷インピーダンスが乱れた際でもキャリア増幅器の出力インピーダンスが高く見えるため、負荷インピーダンスの変動に対しても安定した電力増幅を行うことができる。その結果、負荷が変動したときでも負荷側へ安定した電力を供給することができる。
さらに、入力電力が高いときに、キャリア増幅器の出力とピーク増幅器の出力とを接続する第一のλ/4伝送線路によりピーク増幅器から見たキャリア増幅器出力側の見かけ上のインピーダンスを高くすることができるので、ピーク増幅器からキャリア増幅器へ流れる横流を低く抑えることができる。その結果、負荷インピーダンスが乱れたときでも、負荷特性に強いC級増幅器であるピーク増幅器から負荷側へ安定した電力を供給することができる。
〈発明の概要〉
本発明の電力増幅装置においては、従来のドハティ増幅器においては必要であった負荷に直列の35Ωの第三のλ/4伝送線路を削除し、キャリア増幅器の出力側にある第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、例えば50Ωから、(50×21/2=)71Ωに大きくする。さらに、ピーク増幅器の出力側にあるピーク増幅器出力整合回路を100Ωに整合するように最適化する。これによって、ドハティ増幅器の高効率特性と安定動作を維持しながら、λ/4伝送線路を1個削減して小型化を図った電力増幅装置を実現することが可能となる。
本発明の電力増幅装置においては、従来のドハティ増幅器においては必要であった負荷に直列の35Ωの第三のλ/4伝送線路を削除し、キャリア増幅器の出力側にある第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、例えば50Ωから、(50×21/2=)71Ωに大きくする。さらに、ピーク増幅器の出力側にあるピーク増幅器出力整合回路を100Ωに整合するように最適化する。これによって、ドハティ増幅器の高効率特性と安定動作を維持しながら、λ/4伝送線路を1個削減して小型化を図った電力増幅装置を実現することが可能となる。
次に、本発明の電力増幅装置の具体的な実施の形態の幾つかについて詳細に説明する。なお、以下の各実施の形態で用いる図面において、同一の構成要素は同一の符号を付し、かつ重複する説明は可能な限り省略する。
〈実施の形態1〉
図2は、本発明の実施の形態1に係る電力増幅装置の構成を示すブロック図である。図2に示す電力増幅装置100は、分配器101、キャリア増幅器入力整合回路102、キャリア増幅器103、キャリア増幅器出力整合回路104、第一のλ/4伝送線路105、第二のλ/4伝送線路106、ピーク増幅器入力整合回路107、ピーク増幅器108、及びピーク増幅器出力整合回路109によって構成され、負荷111に接続されている。
図2は、本発明の実施の形態1に係る電力増幅装置の構成を示すブロック図である。図2に示す電力増幅装置100は、分配器101、キャリア増幅器入力整合回路102、キャリア増幅器103、キャリア増幅器出力整合回路104、第一のλ/4伝送線路105、第二のλ/4伝送線路106、ピーク増幅器入力整合回路107、ピーク増幅器108、及びピーク増幅器出力整合回路109によって構成され、負荷111に接続されている。
分配器101は、RF信号の入力電力を二系統に分配する機能を有し、キャリア増幅器入力整合回路102はキャリア増幅器103の入力側インピーダンスを整合させる機能を有している。第一の増幅器であるキャリア増幅器103は、通常はAB級増幅器で構成され、分配器101によって分配された第一系統の出力電力を増幅する機能を有している。キャリア増幅器出力整合回路104は、キャリア増幅器103の出力側インピーダンスを整合させる機能を有している。第一のλ/4伝送線路105は、キャリア増幅器103の出力電力の位相を90度シフトしてピーク増幅器108の出力電力と合成する機能を有している。
第二のλ/4伝送線路106は、分配器101によって分配された第二系統の出力電力の位相を90度シフトする機能を有し、ピーク増幅器入力整合回路107は、ピーク増幅器108の入力側インピーダンスを整合させる機能を有している。第二の増幅器であるピーク増幅器108は、通常は負荷特性に強いC級増幅器で構成され、位相が90度シフトされた第二のλ/4伝送線路106の出力電力があらかじめ規定されたレベル以上のときに増幅をする機能を有している。ピーク増幅器出力整合回路109は、ピーク増幅器108の出力側インピーダンスを整合させる機能を有している。なお、キャリア増幅器103とピーク増幅器108の電力容量は同じ(つまり、両者の電力容量は1対1)である。
このような構成において、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスは、キャリア増幅器103の出力インピーダンスよりも大きくなるように設定する。つまり、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスを50Ωから71Ωに大きくし、かつ、ピーク増幅器108が100Ωで最大出力が得られるようにピーク増幅器出力整合回路109を調整する。あらかじめこのような設定を行うことにより、ドハティ増幅器においては次のような動作が行われる。
まず、入力電力が小さくてピーク増幅器108がOFFのときの動作について説明する。ピーク増幅器108側の第二系統においては、C点からB点を見たインピーダンスはHighインピーダンスであるので、a点からC点(負荷側)からみたインピーダンスは、負荷のインピーダンスと同じ50Ωとして見える。また、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスが71Ωであるので、A点から第一のλ/4伝送線路105を見たインピーダンスは、712÷50≒100Ωとなる。
次に、入力電力が大きくてピーク増幅器108がONのときの動作について説明する。このとき、キャリア増幅器103とピーク増幅器108がほぼ同じ電力を出力しているとすると、a点からC点を見たインピーダンスとB点からC点を見たインピーダンスは共に100Ωとなる。したがって、ピーク増幅器108が100Ωで最大出力を出せるようにピーク増幅器108のピーク増幅器出力整合回路109を調整する。
一方、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスは71Ωであるので、A点から第一のλ/4伝送線路105を見たインピーダンスは、712÷100≒50Ωとなる。
この結果、キャリア増幅器103の負荷インピーダンス(つまり、A点から第一のλ/4伝送線路105を見たインピーダンス)は、入力電力が小さくてピーク増幅器108がOFFのときには100Ωとなり、入力電力が大きくてピーク増幅器108がONのときには50Ωとなる。したがって、キャリア増幅器103のキャリア増幅器出力整合回路104を、100Ωの負荷で高利得・高効率となるように調整し、かつ、50Ωの負荷で高飽和電力となるように調整することにより、入力電力が小さいとき、つまり、バックオフを大きくとったときの効率を高くすることができる。
このようにして、入力電力が小さくてピーク増幅器108がOFFのときは負荷111が100Ωに見えるため、増幅利得及び増幅効率を高くすることができ、かつ、入力電力が大きくてピーク増幅器108がONのときは負荷111が50Ωに見えるため、飽和電力を高くすることができる。この結果、入力電力が小さいときから入力電力が大きいときまでドハティ増幅器の高効率特性を維持することが可能となる。
次に、図2の電力増幅装置100において、負荷が変動しても負荷111側へ安定的に電力を供給することができる理由について説明する。この場合、負荷インピーダンスが端末の動作環境などの影響で変動した場合を考える。
通常、キャリア増幅器103の動作級はAB級とし、ピーク増幅器108の動作級はC級に設定する。C級はAB級に比べ負荷インピーダンスが変動しても安定して電力を出力することが可能であるため、負荷インピーダンスが変動した場合にはキャリア増幅器103よりピーク増幅器108の方が安定して電力を出力することができる。
このとき、ピーク増幅器108の出力電力は図2のC点からa点の方向と、C点から負荷111の方向の2方向に出力される可能性がある。ところが、キャリア増幅器103の出力インピーダンスは50Ωに調整されているため、C点からa点側をみたインピーダンスは、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスが71Ωであるので、712÷50=100Ωとなる。
一方、図1の従来回路の場合は、C点からa点側をみたインピーダンスは、第一のλ/4伝送線路5の特性インピーダンスが50Ωであるので、502÷50=50Ωとなる。したがって、C点からa点側をみたインピーダンスは、従来回路の50Ωに比べて、本発明の回路では100Ωと高くなっている。このため、図2に示す本発明の回路では、ピーク増幅器108の出力電力はC点からa点の方へは横流が流れにくくなり、ピーク増幅器108から負荷111へ安定した電力を供給することが可能となる。すなわち、本発明の構成によって、負荷インピーダンスの変動に強い電力増幅装置を実現することができる。
以上説明したように、本実施の形態の電力増幅装置によれば、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスは、キャリア増幅器103の出力インピーダンスよりも大きく設定されている。これによって、従来は負荷11に直列に接続されていたλ/4伝送線路(つまり、図1の第三のλ/4伝送線路10)が不要になり、λ/4伝送線路を1個削減することができるので電力増幅装置を小型化することができる。さらに、第一系統の出力と第二系統の出力の合成点から(C点)からキャリア増幅器103を見たインピーダンスが高いインピーダンスとなるため、ピーク増幅器108からキャリア増幅器103側への横流が流れ難くなる。これによって、負荷インピーダンスが乱れて負荷111が変動してもピーク増幅器108から負荷111へ安定した電力を供給することができる。
〈実施の形態2〉
実施の形態2の電力増幅装置の構成は図2に示した実施の形態1と同じである。異なるところは、実施の形態1の電力増幅装置の場合は、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108は電力容量が同じ(つまり、1対1)であるのに対して、実施の形態2の電力増幅器の場合は、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108の電力容量が異なる点である。具体的には、キャリア増幅器103の電力容量よりピーク増幅器108の電力容量の方が大きく、その比率は、キャリア増幅器:ピーク増幅器=1:n(nは正数)である。
実施の形態2の電力増幅装置の構成は図2に示した実施の形態1と同じである。異なるところは、実施の形態1の電力増幅装置の場合は、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108は電力容量が同じ(つまり、1対1)であるのに対して、実施の形態2の電力増幅器の場合は、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108の電力容量が異なる点である。具体的には、キャリア増幅器103の電力容量よりピーク増幅器108の電力容量の方が大きく、その比率は、キャリア増幅器:ピーク増幅器=1:n(nは正数)である。
図3は、本発明の実施の形態2に係る電力増幅装置の動作を説明するためのドハティ増幅器の要部の等価回路である。まず、入力電力が大きくてピーク増幅器108がONのときの動作について説明する。なお、負荷111の負荷インピーダンスをZ、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスをZ0とする。ピーク増幅器108にはキャリア増幅器103のn倍多く電流が流れるので、キャリア増幅器103側のa点からC点を見た負荷インピーダンスは、(n+1)×Zであるのに対して、ピーク増幅器108側のB点からC点を見た負荷インピーダンスは、{(n+1)/n}×Zである。
また、キャリア増幅器103の出力側のインピーダンス、つまり、A点からC点を見たインピーダンスは、Z0 2/{(n+1)×Z}=Zである。したがって、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスZ0は、Z0=(n+1)1/2×Zである。ちなみに、負荷インピーダンスZが50Ωであって、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108の電力容量が同じ場合(つまり、n=1の場合)は、特性インピーダンスZ0は、Z0=(n+1)1/2×Z=21/2×50≒71Ωとなる。
次に、入力電力が小さくてピーク増幅器108がOFFのときの動作について説明する。このときは、ピーク増幅器108の出力がオープンになっているので、C点からB点を見たインピーダンスはHighインピーダンスであるため、a点からC点を見たインピーダンスは負荷インピーダンスZである。よって、A点からC点を見たインピーダンス(つまり、A点から負荷側を見たインピーダンス)は、Z0 2÷Z=(n+1)×Z×Z÷Z=(n+1)×Zである。
つまり、キャリア増幅器103の負荷インピーダンスは、入力電力が小さいときには、(n+1)×Zとなり、入力電力が大きいときにはZとなる。例えば、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108の電力容量が同じ(つまり、n=1)で、負荷111のインピーダンスがZ=50Ωであれば、キャリア増幅器103の負荷インピーダンスは、入力電力が小さいときには、(n+1)×Z=2×50=100Ωとなり、入力電力が大きいときにはZ=50Ωとなる。
なお、ピーク増幅器108のピーク増幅器出力整合回路109の最適負荷インピーダンスは、負荷インピーダンスZに対して{(n+1)/n}×Zである。例えば、キャリア増幅器103とピーク増幅器108の電力容量が同じ(つまり、n=1)であって、かつ負荷インピーダンスZが50Ωのときは、ピーク増幅器108のピーク増幅器出力整合回路109の最適負荷インピーダンスは、2×50=100Ωである。
したがって、図2において、キャリア増幅器103のキャリア増幅器出力整合回路104を、(n+1)×Zの負荷で高利得・高効率となるように調整し、かつ、Zの負荷で高飽和電力となるように調整することにより、入力電力が小さいとき、つまり、バックオフを大きくとったときの効率を高くすることができる。例えば、n=1の場合は100Ωの負荷で高利得・高効率となるように調整し、かつ、50Ωの負荷で高飽和電力となるように調整することにより、入力電力が小さいとき、つまり、バックオフを大きくとったときの効率を高くすることができる。この結果、電力増幅装置の小型化を図ることができると共に、広い電力範囲に亘って高効率化と安定電力の供給を維持することができる。
〈まとめ〉
以上説明したように、本発明の電力増幅装置は、ドハティ増幅器を構成するキャリア増幅器(第一の増幅器)側の第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、キャリア増幅器の出力インピーダンスよりも大きくしたことを特徴としている。例えば、キャリア増幅器の出力インピーダンスが50Ωのとき、第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスは50Ωのルート2倍(50×21/2≒71Ω)である。また、ピーク増幅器(第二の増幅器)の出力側の整合回路は、負荷インピーダンスよりも高いインピーダンスに整合するように調整されている。さらに、ピーク増幅器の出力整合回路の最適負荷インピーダンスは、負荷のインピーダンスの2倍となっている。
以上説明したように、本発明の電力増幅装置は、ドハティ増幅器を構成するキャリア増幅器(第一の増幅器)側の第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、キャリア増幅器の出力インピーダンスよりも大きくしたことを特徴としている。例えば、キャリア増幅器の出力インピーダンスが50Ωのとき、第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスは50Ωのルート2倍(50×21/2≒71Ω)である。また、ピーク増幅器(第二の増幅器)の出力側の整合回路は、負荷インピーダンスよりも高いインピーダンスに整合するように調整されている。さらに、ピーク増幅器の出力整合回路の最適負荷インピーダンスは、負荷のインピーダンスの2倍となっている。
また、負荷インピーダンスがZで、キャリア増幅器の電力容量がピーク増幅器の電力容量のn倍(但し、nは1より大きい正数)のときは、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスはZ×(n+1)1/2である。なお、負荷インピーダンスZが50Ωのときは、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスは50×(n+1)1/2である。この場合も、ピーク増幅器の出力整合回路は、負荷インピーダンスZよりも高いインピーダンスに整合するように調整されている。さらに、ピーク増幅器の出力整合回路の最適負荷インピーダンスは、負荷インピーダンスの(n+1)/n倍である。
本発明の電力増幅装置によれば、従来のドハティ増幅器に比べてλ/4伝送線路を1個削減して回路規模を小さくすることが可能であるので、ハンディタイプな携帯端末など移動通信端末に有効に利用することができる。
本発明は、携帯端末などの移動通信端末に適用できる電力増幅装置に関し、特に、マルチキャリア信号を送受信するマルチキャリア方式の携帯端末に適用できるドハティ増幅器からなる電力増幅装置に関する。
近年、高速無線伝送を実現可能な通信方式として、マルチパスやフェージングに強いマルチキャリア方式が注目を集めている。このようなマルチキャリア方式では、複数のキャリア(搬送波)に重畳された送信信号が時間軸上で加算されるため、マルチキャリア信号に高いピーク電力が生じる。そこで、このような高いピーク電力を有するマルチキャリア信号であっても高効率に増幅を行うことが可能な電力増幅装置として、ドハティ増幅器が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
図1は、一般的に知られているドハティ増幅器からなる電力増幅装置の概略的な構成図である。図1に示すように、一般的なドハティ増幅器は、入力されるRF信号を分配する分配器1、キャリア増幅器入力整合回路2、キャリア増幅器3、キャリア増幅器出力整合回路4、90°の位相遅延を行う第一のλ/4伝送線路5、90°の位相遅延を行う第二のλ/4伝送線路6、ピーク増幅器入力整合回路7、ピーク増幅器8、ピーク増幅器出力整合回路9、及び90°の位相遅延を行う第三のλ/4伝送線路10によって構成され、負荷11に接続されている。このような構成において、第一のλ/4伝送線路5による90°の位相遅延の作用により、ピーク増幅器8の出力電流によってキャリア増幅器3の負荷インピーダンスが変調される。
上述のようなドハティ増幅器においては、入力電力が低い領域では、キャリア増幅器3のみが負荷インピーダンスの高い状態で動作するために高効率な動作を行い、入力電力が高い領域では、ピーク増幅器8の出力電流によってキャリア増幅器3の負荷インピーダンスが下がり、高効率を維持しながら飽和電力を引き上げるため、高いピーク電力を有する信号であっても高効率な増幅を行うことができる。つまり、入力電力が低い領域から入力電力が高い領域まで高効率な増幅を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
ところで、図1に示すようなドハティ増幅器からなる電力増幅装置において、約35Ωの特性インピーダンスを有する第三のλ/4伝送線路10の作用により、通常は50Ωの負荷11が25Ωに変換される。すなわち、負荷11のインピーダンスは、352÷50=24.5Ωとなり、約25Ωに変換される。このようにして、第三のλ/4伝送線路10が負荷11に対するインピーダンス変換器として機能することになる。
また、入力電力が大きいときは、キャリア増幅器3とピーク増幅器8がともに動作して負荷11へ出力電流を供給する。このとき、前述のように見かけ上25Ωに変換された負荷11を、キャリア増幅器3とピーク増幅器8で均等に駆動することにより、a点から負荷11を見たインピーダンスとB点から負荷11を見たインピーダンスは共に50Ωとなる。さらに、特性インピーダンス50Ωで構成された第一のλ/4伝送線路5により、A点から負荷を見たインピーダンスは、(502÷50=)50Ωとして見えるため、キャリア増幅器3から見た負荷11のインピーダンスは50Ωになる。
一方、入力電力が小さいときは、キャリア増幅器3のみが動作して負荷11へ出力電流を供給する。このとき、ピーク増幅器8の出力は見かけ上オープンになっているので、B点からピーク増幅器8を見たインピーダンスはHighインピーダンスとなるため、a点
から負荷11を見たインピーダンスは、前述のように変換された状態のままの25Ωに見えることになる。
から負荷11を見たインピーダンスは、前述のように変換された状態のままの25Ωに見えることになる。
また、特性インピーダンス50Ωで構成された第一のλ/4伝送線路5により、A点から負荷11を見たインピーダンスは、(502÷25=)100Ωとして見えるため、キャリア増幅器3の負荷インピーダンスは100Ωになる。そこで、キャリア増幅器3のキャリア増幅器出力整合回路4を、負荷11が50Ωで高い飽和電力となるように設計し、かつ、負荷11が100Ωで高効率となるように設計することにより、バックオフを大きくとったときでも高効率に電力増幅を行うことが可能となる。
"RF Power Amplifiers for Wireless Communications", STEVE C. CRIPPS, Artech House Publishers 特開2005−3229931号公報
"RF Power Amplifiers for Wireless Communications", STEVE C. CRIPPS, Artech House Publishers
しかしながら、図1に示すような従来のドハティ増幅器からなる電力増幅装置においては、λ/4伝送線路を少なくとも3個使用する構成になっているため、ドハティ増幅器の回路規模が大きくなって電力増幅装置を小型化することが困難である。したがって、電力増幅装置の回路構成が大きくなることにより、携帯端末などの移動通信端末を小型化するという要求に対応することができない。
本発明の目的は、このような事情に鑑みてなされたもので、ドハティ増幅器を構成するλ/4伝送線路の個数を削減して小型化を図った電力増幅装置を提供することである。
本発明の電力増幅装置は、入力電力が供給されているときは常時動作する第一の増幅器と、入力電力が所定のレベルより大きいときに動作する第二の増幅器とを備えたドハティ増幅器からなる電力増幅装置であって、第一の増幅器の出力側に直列接続された第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスZ0は負荷インピーダンスZより大きい構成を採っている。また、第二の増幅器の出力整合回路は、負荷インピーダンスZより高いインピーダンスに整合するように調整されている。
本発明によれば、負荷側に直列に存在していた第三のλ/4伝送線路を削除することにより、λ/4伝送線路の使用個数を削減することができるので、ドハティ増幅器の高効率特性を損なうことなく、電力増幅器の回路規模を小さくすることが可能となる。その結果、このような電力増幅器を内蔵する携帯端末などの移動通信端末を小型化することができる。また、負荷インピーダンスが乱れた際でもキャリア増幅器の出力インピーダンスが高く見えるため、負荷インピーダンスの変動に対しても安定した電力増幅を行うことができる。その結果、負荷が変動したときでも負荷側へ安定した電力を供給することができる。
さらに、入力電力が高いときに、キャリア増幅器の出力とピーク増幅器の出力とを接続する第一のλ/4伝送線路によりピーク増幅器から見たキャリア増幅器出力側の見かけ上のインピーダンスを高くすることができるので、ピーク増幅器からキャリア増幅器へ流れる横流を低く抑えることができる。その結果、負荷インピーダンスが乱れたときでも、負荷特性に強いC級増幅器であるピーク増幅器から負荷側へ安定した電力を供給することができる。
〈発明の概要〉
本発明の電力増幅装置においては、従来のドハティ増幅器においては必要であった負荷に直列の35Ωの第三のλ/4伝送線路を削除し、キャリア増幅器の出力側にある第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、例えば50Ωから、(50×21/2=)71Ωに大きくする。さらに、ピーク増幅器の出力側にあるピーク増幅器出力整合回路を100Ωに整合するように最適化する。これによって、ドハティ増幅器の高効率特性と安定動作を維持しながら、λ/4伝送線路を1個削減して小型化を図った電力増幅装置を実現することが可能となる。
本発明の電力増幅装置においては、従来のドハティ増幅器においては必要であった負荷に直列の35Ωの第三のλ/4伝送線路を削除し、キャリア増幅器の出力側にある第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、例えば50Ωから、(50×21/2=)71Ωに大きくする。さらに、ピーク増幅器の出力側にあるピーク増幅器出力整合回路を100Ωに整合するように最適化する。これによって、ドハティ増幅器の高効率特性と安定動作を維持しながら、λ/4伝送線路を1個削減して小型化を図った電力増幅装置を実現することが可能となる。
次に、本発明の電力増幅装置の具体的な実施の形態の幾つかについて詳細に説明する。なお、以下の各実施の形態で用いる図面において、同一の構成要素は同一の符号を付し、かつ重複する説明は可能な限り省略する。
〈実施の形態1〉
図2は、本発明の実施の形態1に係る電力増幅装置の構成を示すブロック図である。図2に示す電力増幅装置100は、分配器101、キャリア増幅器入力整合回路102、キャリア増幅器103、キャリア増幅器出力整合回路104、第一のλ/4伝送線路105、第二のλ/4伝送線路106、ピーク増幅器入力整合回路107、ピーク増幅器108、及びピーク増幅器出力整合回路109によって構成され、負荷111に接続されている。
図2は、本発明の実施の形態1に係る電力増幅装置の構成を示すブロック図である。図2に示す電力増幅装置100は、分配器101、キャリア増幅器入力整合回路102、キャリア増幅器103、キャリア増幅器出力整合回路104、第一のλ/4伝送線路105、第二のλ/4伝送線路106、ピーク増幅器入力整合回路107、ピーク増幅器108、及びピーク増幅器出力整合回路109によって構成され、負荷111に接続されている。
分配器101は、RF信号の入力電力を二系統に分配する機能を有し、キャリア増幅器入力整合回路102はキャリア増幅器103の入力側インピーダンスを整合させる機能を有している。第一の増幅器であるキャリア増幅器103は、通常はAB級増幅器で構成され、分配器101によって分配された第一系統の出力電力を増幅する機能を有している。キャリア増幅器出力整合回路104は、キャリア増幅器103の出力側インピーダンスを整合させる機能を有している。第一のλ/4伝送線路105は、キャリア増幅器103の出力電力の位相を90度シフトしてピーク増幅器108の出力電力と合成する機能を有している。
第二のλ/4伝送線路106は、分配器101によって分配された第二系統の出力電力の位相を90度シフトする機能を有し、ピーク増幅器入力整合回路107は、ピーク増幅器108の入力側インピーダンスを整合させる機能を有している。第二の増幅器であるピーク増幅器108は、通常は負荷特性に強いC級増幅器で構成され、位相が90度シフトされた第二のλ/4伝送線路106の出力電力があらかじめ規定されたレベル以上のときに増幅をする機能を有している。ピーク増幅器出力整合回路109は、ピーク増幅器108の出力側インピーダンスを整合させる機能を有している。なお、キャリア増幅器103とピーク増幅器108の電力容量は同じ(つまり、両者の電力容量は1対1)である。
このような構成において、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスは、キャリア増幅器103の出力インピーダンスよりも大きくなるように設定する。つまり、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスを50Ωから71Ωに大きくし、かつ、ピーク増幅器108が100Ωで最大出力が得られるようにピーク増幅器出力整合回路109を調整する。あらかじめこのような設定を行うことにより、ドハティ増幅器においては次のような動作が行われる。
まず、入力電力が小さくてピーク増幅器108がOFFのときの動作について説明する。ピーク増幅器108側の第二系統においては、C点からB点を見たインピーダンスはHighインピーダンスであるので、a点からC点(負荷側)からみたインピーダンスは、負荷のインピーダンスと同じ50Ωとして見える。また、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスが71Ωであるので、A点から第一のλ/4伝送線路105を見たインピーダンスは、712÷50≒100Ωとなる。
次に、入力電力が大きくてピーク増幅器108がONのときの動作について説明する。このとき、キャリア増幅器103とピーク増幅器108がほぼ同じ電力を出力しているとすると、a点からC点を見たインピーダンスとB点からC点を見たインピーダンスは共に100Ωとなる。したがって、ピーク増幅器108が100Ωで最大出力を出せるようにピーク増幅器108のピーク増幅器出力整合回路109を調整する。
一方、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスは71Ωであるので、A点から第一のλ/4伝送線路105を見たインピーダンスは、712÷100≒50Ωとなる。
この結果、キャリア増幅器103の負荷インピーダンス(つまり、A点から第一のλ/4伝送線路105を見たインピーダンス)は、入力電力が小さくてピーク増幅器108がOFFのときには100Ωとなり、入力電力が大きくてピーク増幅器108がONのときには50Ωとなる。したがって、キャリア増幅器103のキャリア増幅器出力整合回路104を、100Ωの負荷で高利得・高効率となるように調整し、かつ、50Ωの負荷で高飽和電力となるように調整することにより、入力電力が小さいとき、つまり、バックオフを大きくとったときの効率を高くすることができる。
このようにして、入力電力が小さくてピーク増幅器108がOFFのときは負荷111が100Ωに見えるため、増幅利得及び増幅効率を高くすることができ、かつ、入力電力が大きくてピーク増幅器108がONのときは負荷111が50Ωに見えるため、飽和電力を高くすることができる。この結果、入力電力が小さいときから入力電力が大きいときまでドハティ増幅器の高効率特性を維持することが可能となる。
次に、図2の電力増幅装置100において、負荷が変動しても負荷111側へ安定的に電力を供給することができる理由について説明する。この場合、負荷インピーダンスが端末の動作環境などの影響で変動した場合を考える。
通常、キャリア増幅器103の動作級はAB級とし、ピーク増幅器108の動作級はC級に設定する。C級はAB級に比べ負荷インピーダンスが変動しても安定して電力を出力することが可能であるため、負荷インピーダンスが変動した場合にはキャリア増幅器103よりピーク増幅器108の方が安定して電力を出力することができる。
このとき、ピーク増幅器108の出力電力は図2のC点からa点の方向と、C点から負荷111の方向の2方向に出力される可能性がある。ところが、キャリア増幅器103の出力インピーダンスは50Ωに調整されているため、C点からa点側をみたインピーダンスは、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスが71Ωであるので、
712÷50=100Ωとなる。
712÷50=100Ωとなる。
一方、図1の従来回路の場合は、C点からa点側をみたインピーダンスは、第一のλ/4伝送線路5の特性インピーダンスが50Ωであるので、502÷50=50Ωとなる。したがって、C点からa点側をみたインピーダンスは、従来回路の50Ωに比べて、本発
明の回路では100Ωと高くなっている。このため、図2に示す本発明の回路では、ピーク増幅器108の出力電力はC点からa点の方へは横流が流れにくくなり、ピーク増幅器108から負荷111へ安定した電力を供給することが可能となる。すなわち、本発明の構成によって、負荷インピーダンスの変動に強い電力増幅装置を実現することができる。
明の回路では100Ωと高くなっている。このため、図2に示す本発明の回路では、ピーク増幅器108の出力電力はC点からa点の方へは横流が流れにくくなり、ピーク増幅器108から負荷111へ安定した電力を供給することが可能となる。すなわち、本発明の構成によって、負荷インピーダンスの変動に強い電力増幅装置を実現することができる。
以上説明したように、本実施の形態の電力増幅装置によれば、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスは、キャリア増幅器103の出力インピーダンスよりも大きく設定されている。これによって、従来は負荷11に直列に接続されていたλ/4伝送線路(つまり、図1の第三のλ/4伝送線路10)が不要になり、λ/4伝送線路を1個削減することができるので電力増幅装置を小型化することができる。さらに、第一系統の出力と第二系統の出力の合成点から(C点)からキャリア増幅器103を見たインピーダンスが高いインピーダンスとなるため、ピーク増幅器108からキャリア増幅器103側への横流が流れ難くなる。これによって、負荷インピーダンスが乱れて負荷111が変動してもピーク増幅器108から負荷111へ安定した電力を供給することができる。
〈実施の形態2〉
実施の形態2の電力増幅装置の構成は図2に示した実施の形態1と同じである。異なるところは、実施の形態1の電力増幅装置の場合は、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108は電力容量が同じ(つまり、1対1)であるのに対して、実施の形態2の電力増幅器の場合は、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108の電力容量が異なる点である。具体的には、キャリア増幅器103の電力容量よりピーク増幅器108の電力容量の方が大きく、その比率は、キャリア増幅器:ピーク増幅器=1:n(nは正数)である。
実施の形態2の電力増幅装置の構成は図2に示した実施の形態1と同じである。異なるところは、実施の形態1の電力増幅装置の場合は、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108は電力容量が同じ(つまり、1対1)であるのに対して、実施の形態2の電力増幅器の場合は、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108の電力容量が異なる点である。具体的には、キャリア増幅器103の電力容量よりピーク増幅器108の電力容量の方が大きく、その比率は、キャリア増幅器:ピーク増幅器=1:n(nは正数)である。
図3は、本発明の実施の形態2に係る電力増幅装置の動作を説明するためのドハティ増幅器の要部の等価回路である。まず、入力電力が大きくてピーク増幅器108がONのときの動作について説明する。なお、負荷111の負荷インピーダンスをZ、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスをZ0とする。ピーク増幅器108にはキャリア増幅器103のn倍多く電流が流れるので、キャリア増幅器103側のa点からC点を見た負荷インピーダンスは、(n+1)×Zであるのに対して、ピーク増幅器108側のB点からC点を見た負荷インピーダンスは、{(n+1)/n}×Zである。
また、キャリア増幅器103の出力側のインピーダンス、つまり、A点からC点を見たインピーダンスは、Z0 2/{(n+1)×Z}=Zである。したがって、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスZ0は、Z0=(n+1)1/2×Zである。ちなみに、負荷インピーダンスZが50Ωであって、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108の電力容量が同じ場合(つまり、n=1の場合)は、特性インピーダンスZ0は、Z0=(n+1)1/2×Z=21/2×50≒71Ωとなる。
次に、入力電力が小さくてピーク増幅器108がOFFのときの動作について説明する。このときは、ピーク増幅器108の出力がオープンになっているので、C点からB点を見たインピーダンスはHighインピーダンスであるため、a点からC点を見たインピーダンスは負荷インピーダンスZである。よって、A点からC点を見たインピーダンス(つまり、A点から負荷側を見たインピーダンス)は、Z0 2÷Z=(n+1)×Z×Z÷Z=(n+1)×Zである。
つまり、キャリア増幅器103の負荷インピーダンスは、入力電力が小さいときには、(n+1)×Zとなり、入力電力が大きいときにはZとなる。例えば、キャリア増幅器103の電力容量とピーク増幅器108の電力容量が同じ(つまり、n=1)で、負荷111のインピーダンスがZ=50Ωであれば、キャリア増幅器103の負荷インピーダンス
は、入力電力が小さいときには、(n+1)×Z=2×50=100Ωとなり、入力電力が大きいときにはZ=50Ωとなる。
は、入力電力が小さいときには、(n+1)×Z=2×50=100Ωとなり、入力電力が大きいときにはZ=50Ωとなる。
なお、ピーク増幅器108のピーク増幅器出力整合回路109の最適負荷インピーダンスは、負荷インピーダンスZに対して{(n+1)/n}×Zである。例えば、キャリア増幅器103とピーク増幅器108の電力容量が同じ(つまり、n=1)であって、かつ負荷インピーダンスZが50Ωのときは、ピーク増幅器108のピーク増幅器出力整合回路109の最適負荷インピーダンスは、2×50=100Ωである。
したがって、図2において、キャリア増幅器103のキャリア増幅器出力整合回路104を、(n+1)×Zの負荷で高利得・高効率となるように調整し、かつ、Zの負荷で高飽和電力となるように調整することにより、入力電力が小さいとき、つまり、バックオフを大きくとったときの効率を高くすることができる。例えば、n=1の場合は100Ωの負荷で高利得・高効率となるように調整し、かつ、50Ωの負荷で高飽和電力となるように調整することにより、入力電力が小さいとき、つまり、バックオフを大きくとったときの効率を高くすることができる。この結果、電力増幅装置の小型化を図ることができると共に、広い電力範囲に亘って高効率化と安定電力の供給を維持することができる。
〈まとめ〉
以上説明したように、本発明の電力増幅装置は、ドハティ増幅器を構成するキャリア増幅器(第一の増幅器)側の第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、キャリア増幅器の出力インピーダンスよりも大きくしたことを特徴としている。例えば、キャリア増幅器の出力インピーダンスが50Ωのとき、第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスは50Ωのルート2倍(50×21/2≒71Ω)である。また、ピーク増幅器(第二の増幅器)の出力側の整合回路は、負荷インピーダンスよりも高いインピーダンスに整合するように調整されている。さらに、ピーク増幅器の出力整合回路の最適負荷インピーダンスは、負荷のインピーダンスの2倍となっている。
以上説明したように、本発明の電力増幅装置は、ドハティ増幅器を構成するキャリア増幅器(第一の増幅器)側の第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスを、キャリア増幅器の出力インピーダンスよりも大きくしたことを特徴としている。例えば、キャリア増幅器の出力インピーダンスが50Ωのとき、第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスは50Ωのルート2倍(50×21/2≒71Ω)である。また、ピーク増幅器(第二の増幅器)の出力側の整合回路は、負荷インピーダンスよりも高いインピーダンスに整合するように調整されている。さらに、ピーク増幅器の出力整合回路の最適負荷インピーダンスは、負荷のインピーダンスの2倍となっている。
また、負荷インピーダンスがZで、キャリア増幅器の電力容量がピーク増幅器の電力容量のn倍(但し、nは1より大きい正数)のときは、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスはZ×(n+1)1/2である。なお、負荷インピーダンスZが50Ωのときは、第一のλ/4伝送線路105の特性インピーダンスは50×(n+1)1/2である。この場合も、ピーク増幅器の出力整合回路は、負荷インピーダンスZよりも高いインピーダンスに整合するように調整されている。さらに、ピーク増幅器の出力整合回路の最適負荷インピーダンスは、負荷インピーダンスの(n+1)/n倍である。
本発明の電力増幅装置によれば、従来のドハティ増幅器に比べてλ/4伝送線路を1個削減して回路規模を小さくすることが可能であるので、ハンディタイプな携帯端末など移動通信端末に有効に利用することができる。
Claims (6)
- 入力電力が供給されているときは常時動作する第一の増幅器と、前記入力電力が所定のレベルより大きいときに動作する第二の増幅器とを備えたドハティ増幅器からなる電力増幅装置であって、
前記第一の増幅器の出力側に直列接続された第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスZ0は負荷インピーダンスZより大きい電力増幅装置。 - 前記第二の増幅器の出力整合回路は、前記負荷インピーダンスZより高いインピーダンスに整合するように調整されている請求項1に記載の電力増幅装置。
- 前記第一の増幅器の電力容量と前記第二の増幅器の電力容量の比を1対n(nは正数)としたとき、前記第一のλ/4伝送線路の特性インピーダンスZ0は、Z0=Z×(n+1)1/2で表わされる請求項1に記載の電力増幅装置。
- 前記第二の増幅器の出力整合回路の最適負荷インピーダンスは、Z×{(n+1)/n}で表わされる請求項3に記載の電力増幅装置。
- 前記第一の増幅器の電力容量と前記第二の増幅器の電力容量が等しいときは、前記第二の増幅器の出力整合回路の最適負荷インピーダンスは負荷インピーダンスZの2倍である請求項4に記載の電力増幅装置。
- 前記第一の増幅器と前記第二の増幅器が動作しているとき、該第二の増幅器から該第一の増幅器を見たインピーダンスは負荷インピーダンスZの(n+1)倍となり、該第二の増幅器から該第一の増幅器へ流れる電流は1/(n+1)に抑制される請求項3に記載の電力増幅装置。
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