JPWO2008001778A1 - 遺伝子改変動物およびその用途 - Google Patents

遺伝子改変動物およびその用途 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2008001778A1
JPWO2008001778A1 JP2008522592A JP2008522592A JPWO2008001778A1 JP WO2008001778 A1 JPWO2008001778 A1 JP WO2008001778A1 JP 2008522592 A JP2008522592 A JP 2008522592A JP 2008522592 A JP2008522592 A JP 2008522592A JP WO2008001778 A1 JPWO2008001778 A1 JP WO2008001778A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
slc
mice
gene
human mammal
mouse
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2008522592A
Other languages
English (en)
Inventor
武冨 滋久
滋久 武冨
西田 真由美
真由美 西田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Takeda Pharmaceutical Co Ltd filed Critical Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Publication of JPWO2008001778A1 publication Critical patent/JPWO2008001778A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K67/00Rearing or breeding animals, not otherwise provided for; New or modified breeds of animals
    • A01K67/027New or modified breeds of vertebrates
    • A01K67/0275Genetically modified vertebrates, e.g. transgenic
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P3/00Drugs for disorders of the metabolism
    • A61P3/04Anorexiants; Antiobesity agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P3/00Drugs for disorders of the metabolism
    • A61P3/06Antihyperlipidemics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P3/00Drugs for disorders of the metabolism
    • A61P3/08Drugs for disorders of the metabolism for glucose homeostasis
    • A61P3/10Drugs for disorders of the metabolism for glucose homeostasis for hyperglycaemia, e.g. antidiabetics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P9/00Drugs for disorders of the cardiovascular system
    • A61P9/10Drugs for disorders of the cardiovascular system for treating ischaemic or atherosclerotic diseases, e.g. antianginal drugs, coronary vasodilators, drugs for myocardial infarction, retinopathy, cerebrovascula insufficiency, renal arteriosclerosis
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K2217/00Genetically modified animals
    • A01K2217/05Animals comprising random inserted nucleic acids (transgenic)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K2267/00Animals characterised by purpose
    • A01K2267/03Animal model, e.g. for test or diseases

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Diabetes (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • Obesity (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Biodiversity & Conservation Biology (AREA)
  • Animal Husbandry (AREA)
  • Endocrinology (AREA)
  • Child & Adolescent Psychology (AREA)
  • Heart & Thoracic Surgery (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Cardiology (AREA)
  • Vascular Medicine (AREA)
  • Emergency Medicine (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Fodder In General (AREA)

Abstract

本発明は、SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物であって、対応する野生型動物と比較して、(1)耐糖能試験において血中インスリンレベルが低い、(2)インスリン感受性が増大している、(3)高脂肪食下でも抗肥満である、(4)白色脂肪細胞が小型化している、および(5)脂肪分解が亢進していることを特徴とする動物またはその生体の一部を提供する。さらに、SLC-1遺伝子発現不全である肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物であって、該遺伝子発現が正常な対応する肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物と比較して、(1)アディポネクチン発現が上昇している、(2)高血糖の発症が遅れる、(3)血中糖化ヘモグロビン値が低い、および(4)エネルギー消費が亢進していることを特徴とする動物またはその生体の一部も提供される。

Description

本発明は、SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物、SLC-1遺伝子発現不全である肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物に関する。また、本発明は、SLC-1拮抗作用のアディポネクチン産生促進用途に関する。
(発明の背景)
現在、最も有望な抗肥満薬のターゲットとして世界的に注目を浴びているのはメラニン凝集ホルモン(melanin-concentrating hormone: MCH)である。MCHは当初サケ下垂体から見出された体色素の凝集に関わる環状ペプチドであるが、哺乳類では視床下部外側野に著しく局在し、MCH陽性ニューロンは脳内に広く投射されている。MCH遺伝子欠損マウスが摂餌量の減少と痩せを呈し、また、MCH遺伝子の過剰発現マウスで摂餌量の亢進とエネルギー消費の減少により肥満の表現型を認めたことから、MCHの過食・肥満への関与が強く示唆された。しかし、MCH遺伝子を操作したマウスでは、MCHと同一遺伝子上にコードされている神経ペプチドGEや神経ペプチドEIなども同時に欠損されていたので、MCHの作用を明らかにするにはその受容体の欠損マウスを作出、解析する必要があった。
MCH受容体は、ヒトではGタンパク質共役型受容体(GPCR)であるsomatostatin-like receptor 1: SLC-1(MCHR1)とSLT(MCHR2)の2種類が報告されているが、齧歯動物ではSLTは存在せず、SLC-1のみが発現している。これら2種類の受容体の発現は、主として脳で認められるが、ヒトでは、SLC-1はSLTに比べて、視床下部での発現が高く、大脳皮質や海馬などでの発現が低いとされている。従って、摂食、記憶、生殖、行動など多岐に渡るMCHの作用に関し、SLC-1は摂食、SLTは感情や記憶等に関わっている可能性が示唆される。
SLC-1欠損マウスは、これまでにMarshら(非特許文献1)およびChenら(非特許文献2)の各グループにより作製され、自発運動量や酸素消費量の増加に伴うエネルギー消費の亢進により、過食にもかかわらず体重増加抑制、体脂肪量減少の表現型を示すことが報告されている。さらに、SLC-1欠損マウスと肥満・糖尿病モデルであるob/obマウス(レプチン欠損)との交配により得られた二重欠損マウスは、ob/obマウスに比べて、体重・摂餌量・エネルギー消費には差がないが、経口糖負荷試験において血糖上昇が抑制され、インスリンレベルが低下し、体脂肪の減少、運動量増加、体温調節の変化が認められたことが報告されている(非特許文献3)
Marsh, D.J.ら, プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユー・エス・エー (Proc. Natl. Acad. Sci. USA), (米国), 2002年, 第99巻, p. 3240-3245 Chen, Y.ら, エンドクリノロジー(Endocrinol.), (米国), 2002年, 第143巻, p. 2469-2477 Bjursell, M.ら, ダイアビーティス (Diabetes), (米国), 2006年, 第55巻, p. 725-733
本発明の目的は、SLC-1遺伝子発現不全動物を作製し、解析することにより、SLC-1の生体内での機能を解明することであり、さらに、そこで得られた知見を創薬研究に反映させることにより、新規かつ有効な抗肥満薬、抗糖尿病薬などを提供することである。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、マウスのSLC-1遺伝子の7回膜貫通領域を欠損させることにより受容体機能を破壊したSLC-1ノックアウト(KO)マウスを作出し、その表現型を解析した。その結果、該KOマウスは、野生型マウスに比べて耐糖能改善、インスリン感受性上昇、および脂肪細胞の小型化や脂肪分解亢進などの特性を示した。
さらに、本発明者らは、該KOマウスと肥満・II型糖尿病モデルマウスであるKKAyマウスとを交配して得られたマウスにつき表現型解析を行った結果、該マウスでは、KKAyマウスに比べて血漿アディポネクチン値が上昇していることを見出した。このことは、SLC-1拮抗薬が肥満(特に内臓脂肪型肥満)を有するヒトに対するアディポネクチン産生促進に有効であることを強く示唆する。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
[1]SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物であって、対応する野生型動物と比較して、
(1)耐糖能試験において血中インスリンレベルが低い、
(2)インスリン感受性が増大している、
(3)高脂肪食下でも抗肥満である、
(4)白色脂肪細胞が小型化している、および
(5)脂肪分解が亢進している
ことを特徴とする動物またはその生体の一部;
[2]対応する野生型動物と比較して、
(i)自発運動量および酸素消費量が亢進している、
(ii)体脂肪が減少している、および
(iii)血漿レプチン値が低下している
ことをさらなる特徴とする、上記[1]記載の動物またはその生体の一部;
[3]非ヒト哺乳動物がマウスまたはラットである上記[1]記載の動物またはその生体の一部;
[4]SLC-1遺伝子発現不全である肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物であって、該遺伝子発現が正常な対応する肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物と比較して、
(1)アディポネクチン発現が上昇している、
(2)高血糖の発症が遅れる、
(3)血中糖化ヘモグロビン値が低い、および
(4)エネルギー消費が亢進している
ことを特徴とする動物またはその生体の一部;
[5]SLC-1遺伝子発現が正常な対応する肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物と比較して、
(i)酸素消費量が増加している、および
(ii)血中コルチコステロン値が低下している
ことをさらなる特徴とする、上記[4]記載の動物またはその生体の一部;
[6]非ヒト哺乳動物がマウスまたはラットである上記[4]記載の動物またはその生体の一部;
[7]肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物がKKAyマウスである、上記[6]記載の動物またはその生体の一部;
[8]SLC-1拮抗薬を含有してなるアディポネクチン産生促進剤;
[9]アディポネクチンレベルの低下を伴うメタボリックシンドロームまたは動脈硬化性疾患の患者に投与することを特徴とする、上記[8]記載の剤;
[10]SLC-1を拮抗阻害することを含む、アディポネクチン産生促進方法;
[11]アディポネクチン産生促進剤の製造のためのSLC-1拮抗薬の使用。
本発明のSLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物は、脂肪分解の亢進、脂肪細胞の小型化、インスリン感受性上昇、耐糖能改善等の表現型を示すので、SLC-1の生体内での機能の解明に有用である。また、該マウスとの交配により、肥満・糖尿病モデルマウスにおいてSLC-1遺伝子を欠損させることができ、それによってSLC-1拮抗薬の抗肥満薬・抗糖尿病薬としての有効性を検証することができる。
さらに、本発明によれば、肥満・糖尿病マウスにおけるSLC-1欠損はアディポネクチン値の上昇をもたらすことから、SLC-1拮抗薬は、メタボリックシンドロームの重要な上流因子と考えられる内臓脂肪蓄積に伴うアディポネクチン量の減少を改善するのに有用である。
(A)SLC-1遺伝子欠損(-/-)マウス作製に用いたターゲッティングベクターと相同組換え様式を示す図である。SLC-1遺伝子のエキソン2をネオマイシン耐性遺伝子で置換し、機能を破壊している。(B)SLC-1ホモ欠損(-/-)、ヘテロ欠損(+/-)、およびワイルド(+/+)マウスの全脳におけるSLC-1遺伝子発現を示す図である。SLC-1(-/-)マウスではSLC-1遺伝子の発現が消失している。 (A)SLC-1(-/-)マウスの成長曲線を示す。動物は5週齢より通常食、あるいは高脂肪食を15週間与えて飼育した。(B)8週齢時に測定した体重当りの一日の摂餌量である。図は、平均±標準偏差で示す。 SLC-1(-/-)マウスの自発運動量(A)と酸素消費量(B)を示す。動物は5週齢より通常食、あるいは高脂肪食を与えて飼育した。自発運動量は、12週齢の個体(n=16)の平均値±標準偏差で示した。酸素消費量は、12〜13週齢の個体(n=20)の平均値±標準偏差で示した。 SLC-1(-/-)マウスの耐糖能試験(A)とインスリン感受性試験(B)、および末梢組織におけるインスリン抵抗性試験(C)を示す。SLC-1(+/+)、あるいは(-/-)マウスに5週齢より各試験実施週齢時まで、通常食、あるいは高脂肪食負荷後に、20時間絶食を行い、耐糖能、インスリン感受性、あるいはインスリン抵抗性試験を行なった。図は平均値±標準偏差で表示する。 SLC-1(-/-)マウスの脂肪分解を示す。5週齢より通常食で飼育したマウスの生殖器周囲白色脂肪組織を用いて実施した。図は、平均値±標準偏差で示す。 KKAマウス、およびKKマウス交雑群の成長曲線(A)、体重当りの一日の摂餌量(B)を示す。体重は2週齢より16週間測定し、摂餌量は6週齢時に測定した。図は、平均値±標準偏差で示す。 KKAマウス、およびKKマウス交雑群の血漿パラメーターを示す。血漿グルコース値(A)、血漿トリグリセライド値(B)、血漿インスリン値(C)、血漿アディポネクチン値(D)、血漿レプチン値(E)、ヘモグロビン(Hb)A1c値(F)、血漿遊離脂肪酸(NEFA)値(G)、血漿コルチコステロン値(H)、および血漿トータルT4値(I)を測定した。図は、平均値±標準偏差で示す。 KKAマウス、およびKKマウス交雑群の体脂肪率を測定した。測定を17週齢で実施した。図は、平均値±標準偏差で示す。 KKAマウス、およびKKマウス交雑群の13〜14週齢時の酸素消費量(A)、呼吸商(B)、および7〜9週齢時の累積自発運動量(C)を示す。図は、平均値±標準偏差で示す。 KKAマウス、およびKKマウス交雑群の16週齢時における耐糖能試験の血漿グルコース値(A)、および血漿インスリン値(B)を示す。図は、平均値±標準偏差で示す。 KKAマウス、およびKKマウス交雑群の9週齢時における遺伝子発現量を示す。間脳(A)、生殖器周囲白色脂肪(B)、肝臓(C)、および骨格筋(D)での変動を調べた。
(発明の詳細な説明)
本発明は、SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物とは、内在性SLC-1の発現が不活性化された非ヒト哺乳動物を意味し、SLC-1遺伝子がノックアウト(KO)されたES細胞から、作製されるSLC-1 KO動物の他、アンチセンスもしくはRNAi技術によりSLC-1遺伝子の発現が不活性化されたノックダウン(KD)動物なども含まれる。ここで「ノックアウト(KO)」とは、内在性遺伝子を破壊したり、除去したりすることにより完全なmRNAを産生不能にすることを意味し、他方、「ノックダウン(KD)」とは、mRNAから蛋白質への翻訳を阻害することにより、結果的に内在性遺伝子の発現を不活性化することを意味する。以下、本発明のSLC-1遺伝子KO/KD動物を、単に「本発明のKO/KD動物」という場合がある。
本発明で対象とし得る「非ヒト哺乳動物」は、トランスジェニック系が確立されたヒト以外の哺乳動物であれば特に制限はなく、例えば、マウス、ラット、ウシ、サル、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなどが挙げられる。好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター等であり、なかでも疾患モデル動物作製の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、繁殖が容易な齧歯動物がより好ましく、とりわけマウス(例えば、純系としてC57BL/6系統、BALB/c系統、DBA2系統など、交雑系としてB6C3F1系統、BDF1系統、B6D2F1系統、ICR系統など)およびラット(例えば、Wistar、SDなど)が好ましい。
また、哺乳動物以外にもニワトリなどの鳥類を、本発明で対象とする「非ヒト哺乳動物」と同様の目的に用いることができる。
SLC-1遺伝子をノックアウトする具体的な手段としては、対象非ヒト哺乳動物由来のSLC-1遺伝子(ゲノムDNA)を常法に従って単離し、例えば、(1)そのエキソン部分やプロモーター領域に他のDNA断片(例えば、薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子等)を挿入することによりエキソンもしくはプロモーターの機能を破壊するか、(2)Cre-loxP系やFlp-frt系を用いてSLC-1遺伝子の全部または一部を切り出して該遺伝子を欠失させるか、(3)蛋白質コード領域内へ終止コドンを挿入して完全な蛋白質の翻訳を不能にするか、あるいは(4)転写領域内部へ遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入して、完全なmRNAの合成を不能にすることによって、結果的に遺伝子を不活性化するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、相同組換えにより対象非ヒト哺乳動物のSLC-1遺伝子座に組み込ませる方法などが好ましく用いられ得る。
該相同組換え体は、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)への上記ターゲッティングベクターの導入により取得することができる。
ES細胞は胚盤胞期の受精卵の内部細胞塊(ICM)に由来し、インビトロで未分化状態を保ったまま培養維持できる細胞をいう。ICMの細胞は将来、胚本体を形成する細胞であり、生殖細胞を含むすべての組織の基になる幹細胞である。ES細胞としては、既に樹立された細胞株を用いてもよく、また、EvansとKaufmanの方法(ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年)に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスES細胞の場合、現在、一般的には129系マウス由来のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で、例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)から樹立されるES細胞なども良好に用いることができる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これ由来のES細胞は疾患モデルマウスを作製したとき、C57BL/6マウスと戻し交雑することでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
ES細胞の調製は、例えば以下のようにして行うことができる。交配後の雌非ヒト哺乳動物[例えばマウス(好ましくはC57BL/6J(B6)などの近交系マウス、B6と他の近交系とのF1など)を用いる場合は、約2ヶ月齢以上の雄マウスと交配させた約8〜約10週齢程度の雌マウス(妊娠約3.5日)が好ましく用いられる]の子宮から胚盤胞期胚を採取して(あるいは桑実胚期以前の初期胚を卵管から採取した後、胚培養用培地中で上記と同様にして胚盤胞期まで培養してもよい)、適当なフィーダー細胞(例えばマウスの場合、マウス胎仔から調製される初代線維芽細胞や公知のSTO線維芽細胞株等)層上で培養すると、胚盤胞の一部の細胞が集合して将来胚に分化するICMを形成する。この内部細胞塊をトリプシン処理して単細胞を解離させ、適切な細胞密度を保ち、培地交換を行いながら、解離と継代を繰り返すことによりES細胞が得られる。
ES細胞は雌雄いずれを用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作製するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行うことが望ましい。ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例として挙げられる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションは、例えば、G-バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましい。
このようにして得られるES細胞株は、未分化幹細胞の性質を維持するために注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO線維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上で、分化抑制因子として知られるLIF(1〜10,000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス/95%空気または5%酸素/5%炭酸ガス/90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001〜0.5%トリプシン/0.1〜5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1〜3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin, プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschmanら, ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のターゲッティングベクターを導入されたES細胞を分化させて得られるSLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物細胞は、インビトロにおけるSLC-1の細胞生物学的検討において有用である。
例えば、ターゲッティングベクターが、SLC-1遺伝子のエキソン部分やプロモーター領域に他のDNA断片を挿入することにより、該エキソンもしくはプロモーターの機能を破壊すべく設計されたものである場合、当該ベクターは、例えば、以下のような構成をとることができる。
まず、相同組換えにより、SLC-1遺伝子のエキソンもしくはプロモーター部分に他のDNA断片が挿入されるために、ターゲッティングベクターは、当該他のDNA断片の5’上流および3’下流に、それぞれ標的部位と相同な配列(5’アームおよび3’アーム)を含む必要がある(例えば、後記実施例においては、エクソン2を破壊するように、ターゲッティングベクターは、挿入される他のDNA断片の5’上流側にSLC-1遺伝子の5’調節領域〜イントロン1にわたる領域と相同な配列を含み、3’下流側にはエクソン2の一部〜イントロン2の一部にわたる領域と相同な配列を含む。
挿入される他のDNA断片は特に制限はないが、薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子を用いると、ターゲッティングベクターが染色体へ組み込まれたES細胞を、薬剤耐性もしくはレポーター活性を指標として選択することができる。ここで薬剤耐性遺伝子としては、例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpt)遺伝子などが、レポーター遺伝子としては、例えば、β-ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子などがそれぞれ挙げられるが、それらに限定されない。
薬剤耐性もしくはレポーター遺伝子は、哺乳動物細胞内で機能し得る任意のプロモーターの制御下にあることが好ましい。例えば、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)ロングターミナルリピート(LTR)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、マウス白血病ウイルス(MoMuLV)LTR、アデノウイルス(AdV)由来初期プロモーター等のウイルスプロモーター、並びにβ-アクチン遺伝子プロモーター、PGK遺伝子プロモーター、トランスフェリン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成蛋白質遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。しかしながら、薬剤耐性もしくはレポーター遺伝子がSLC-1遺伝子の内在性プロモーターの制御下におかれるようにSLC-1遺伝子内に挿入される場合は、ターゲッティングベクター中に該遺伝子の転写を制御するプロモーターは必要でない。
また、ターゲッティングベクターは、薬剤耐性もしくはレポーター遺伝子の下流に、該遺伝子からのmRNAの転写を終結させる配列(ポリアデニレーション(polyA)シグナル、ターミネーターとも呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス遺伝子由来、あるいは各種哺乳動物または鳥類の遺伝子由来のターミネーター配列を用いることができる。好ましくは、SV40由来のターミネーターなどが用いられる。
通常、哺乳動物における遺伝子組換えは大部分が非相同的であり、導入されたDNAは染色体の任意の位置にランダムに挿入される。したがって、薬剤耐性やレポーター遺伝子の発現を検出するなどの選択(ポジティブ選択)によっては相同組換えにより標的となる内在性SLC-1遺伝子にターゲッティングされたクローンのみを効率よく選択することができず、選択されたすべてのクローンについてサザンハイブリダイゼーション法もしくはPCR法による組込み部位の確認が必要となる。そこで、ターゲッティングベクターの標的配列に相同な領域の外側に、例えば、ガンシクロビル感受性を付与する単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子を連結しておけば、該ベクターがランダムに挿入された細胞はHSV-tk遺伝子を有するため、ガンシクロビル含有培地では生育できないが、相同組換えにより内在性SLC-1遺伝子座にターゲッティングされた細胞はHSV-tk遺伝子を有しないので、ガンシクロビル耐性となり選択される(ネガティブ選択)。あるいは、HSV-tk遺伝子の代わりに、例えばジフテリア毒素遺伝子を連結すれば、該ベクターがランダムに挿入された細胞は自身の産生する該毒素によって死滅するので、薬剤非存在下で相同組換え体を選択することもできる。
ES細胞へのターゲッティングベクターの導入には、リン酸カルシウム共沈殿法、電気穿孔(エレクトロポレーション)法、リポフェクション法、レトロウイルス感染法、凝集法、顕微注入(マイクロインジェクション)法、遺伝子銃(パーティクルガン)法、DEAE-デキストラン法などのいずれも用いることができるが、上述のように、哺乳動物における遺伝子組換えは大部分が非相同的であり、相同組換え体が得られる頻度は低いので、簡便に多数の細胞を処理できること等の点からエレクトロポレーション法が一般的に選択される。エレクトロポレーションには通常の動物細胞への遺伝子導入に使用されている条件をそのまま用いればよく、例えば、対数増殖期にあるES細胞をトリプシン処理して単一細胞に分散させた後、106〜108細胞/mlとなるように培地に懸濁してキュベットに移し、ターゲッティングベクターを10〜100μg添加し、200〜600V/cmの電気パルスを印加することにより行なうことができる。
ターゲッティングベクターが組み込まれたES細胞は、単一細胞をフィーダー細胞上で培養して得られるコロニーから分離抽出した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーションまたはPCR法によりスクリーニングすることによっても検定することができるが、他のDNA断片として薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子を使用した場合は、それらの発現を指標として細胞段階で形質転換体を選択することができる。例えば、ポジティブ選択用マーカー遺伝子としてnptII遺伝子を含むベクターを用いた場合、遺伝子導入処理後のES細胞をG418などのネオマイシン系抗生物質を含有する培地中で培養し、出現した耐性コロニーをトランスフォーマントの候補として選択する。また、ネガティブ選択用マーカー遺伝子として、HSV-tk遺伝子を含むベクターを用いた場合、ガンシクロビルを含有する培地中で培養し、出現した耐性コロニーを相同組換え体の候補として選択する。得られたコロニーをそれぞれ培養プレートに移してトリプシン処理、培地交換を繰り返した後、一部を培養用として残し、残りをPCRもしくはサザンハイブリダイゼーションにかけて導入DNAの存在を確認する。
導入DNAの組込みが確認されたES細胞を同種の非ヒト哺乳動物由来の胚内に戻すと、宿主胚のICMに組み込まれてキメラ胚が形成される。これを仮親(受胚用雌)に移植してさらに発生を続けさせることにより、キメラKO動物が得られる。キメラ動物の中でES細胞が将来卵や***に分化する始原生殖細胞の形成に寄与した場合には、生殖系列キメラが得られることとなり、これを交配することによりSLC-1遺伝子不全が遺伝的に固定されたKO動物を作製することができる。
キメラ胚の作製方法としては、桑実胚期までの初期胚同士を接着させて集合させる方法(集合キメラ法)と、胚盤胞の割腔内に細胞を顕微注入する方法(注入キメラ法)とがある。ES細胞によるキメラ胚の作製においては従来より後者が広く行なわれているが、最近では、8細胞期胚の透明帯内へのES細胞の注入により集合キメラを作る方法や、マイクロマニピュレーターが不要で操作が容易な方法として、ES細胞塊と透明帯を除去した8細胞期胚とを共培養して凝集させることによって集合キメラを作製する方法も行われている。
いずれの場合も、宿主胚は、後述する受精卵への遺伝子導入において、採卵用雌として使用され得る非ヒト哺乳動物から同様にして採取することができるが、例えばマウスの場合、キメラマウス形成へのES細胞の寄与率を毛色(コートカラー)で判定し得るように、ES細胞の由来する系統とは毛色の異なる系統のマウスから宿主胚を採取することが好ましい。例えば、ES細胞が129系マウス(毛色:アグーチ)由来であれば、採卵用雌としてC57BL/6マウス(毛色:ブラック)やICRマウス(毛色:アルビノ)を用い、ES細胞がC57BL/6もしくはDBF1マウス(毛色:ブラック)由来のものやTT2細胞(C57BL/6とCBAとのF1(毛色:アグーチ)由来)であれば、採卵用雌としてICRマウスやBALB/cマウス(毛色:アルビノ)を用いることができる。
また、生殖系列キメラ形成能はES細胞と宿主胚との組み合わせに大きく依存するので、生殖系列キメラ形成能の高い組み合わせを選択することがより好ましい。例えばマウスの場合、129系統由来のES細胞に対してはC57BL/6系統由来の宿主胚等を用いることが好ましく、C57BL/6系統由来のES細胞に対してはBALB/c系統由来の宿主胚等が好ましい。
採卵用雌マウスは約4〜約6週齢程度が好ましく、交配用の雄マウスとしては約2〜約8ヶ月齢程度の同系統のものが好ましい。交配は自然交配によってもよいが、好ましくは性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン、次いで黄体形成ホルモン)を投与して過剰***を誘起した後に行なわれる。
胚盤注入法による場合は、胚盤胞期胚(例えばマウスの場合、交配後約3.5日)を採卵用雌の子宮から採取し(あるいは桑実胚期以前の初期胚を卵管から採取した後、胚培養用培地(後述)中で胚盤胞期まで培養してもよい)、マイクロマニピュレーターを用いて胚盤胞の割腔内にターゲッティングベクターが導入されたES細胞(約10〜約15個)を注入した後、偽妊娠させた受胚用雌非ヒト哺乳動物の子宮内に移植する。受胚用雌非ヒト哺乳動物は受精卵への遺伝子導入における受胚用雌として使用され得る非ヒト哺乳動物を同様に用いることができる。
共培養法による場合は、8細胞期胚および桑実胚(例えばマウスの場合、交配後約2.5日)を採卵用雌の卵管および子宮から採取して(あるいは8細胞期以前の初期胚を卵管から採取した後、胚培養用培地(後述)中で8細胞期または桑実胚期まで培養してもよい)酸性タイロード液中で透明帯を溶解した後、ミネラルオイルを重層した胚培養用培地の微小滴中にターゲッティングベクターが導入されたES細胞塊(細胞数約10〜約15個)を入れ、さらに上記8細胞期胚または桑実胚(好ましくは2個)を入れて一晩共培養する。得られた桑実胚または胚盤胞を上記と同様にして受胚用雌非ヒト哺乳動物の子宮内に移植する。
移植胚が首尾よく着床し受胚雌が妊娠すれば、自然分娩もしくは帝王切開によりキメラ非ヒト哺乳動物が得られる。自然分娩した受胚雌にはそのまま哺乳を継続させればよく、帝王切開により出産した場合は、産仔は別途用意した哺乳用雌(通常に交配・分娩した雌非ヒト哺乳動物)に哺乳させることができる。
生殖系列キメラの選択は、まずES細胞の雌雄が予め判別されている場合はES細胞と同じ性別のキメラマウスを選択し(通常は雄性ES細胞が使用されるので、雄キメラマウスが選択される)、次いで毛色等の表現型からES細胞の寄与率が高いキメラマウス(例えば、50%以上)を選択する。例えば、129系マウス由来の雄性ES細胞であるD3細胞とC57BL/6マウス由来の宿主胚とのキメラ胚から得られるキメラマウスの場合、アグーチの毛色の占める割合の高い雄マウスを選択するのが好ましい。選択されたキメラ非ヒト哺乳動物が生殖系列キメラであるか否かの確認は、適当な系統の同種動物との交雑により得られるF1動物の表現型に基づいて行なうことができる。例えば、上記キメラマウスの場合、アグーチはブラックに対して優性であるので、雌C57BL/6マウスと交雑すると、選択された雄マウスが生殖系列キメラであれば得られるF1の毛色はアグーチとなる。
上記のようにして得られるターゲッティングベクターが導入された生殖系列キメラ非ヒト哺乳動物(ファウンダー)は、通常、相同染色体の一方のSLC-1遺伝子のみがKOされたヘテロ接合体として得られる。相同染色体の両方のSLC-1遺伝子がKOされたホモ接合体を得るためには、上記のようにして得られるF1動物のうちヘテロ接合体の兄妹同士を交雑すればよい。ヘテロ接合体の選択は、例えばF1動物の尾部より分離抽出した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーションまたはPCR法によりスクリーニングすることにより検定することができる。得られるF2動物の1/4がホモ接合体となる。
ターゲッティングベクターとしてウイルスを用いる場合の別の好ましい一実施態様として、ポジティブ選択用マーカー遺伝子が5’および3’アームの間に挿入され、該アームの外側にネガティブ選択用マーカー遺伝子を含むDNAを含むウイルスで、非ヒト哺乳動物のES細胞を感染させる方法が挙げられる(例えば、プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)第99巻, 第4号, 第2140-2145頁, 2002年参照)。例えば、レトロウイルスやレンチウイルスを用いる場合、ディッシュなどの適当な培養器に細胞を播き、培養液にウイルスベクターを加えて(所望によりポリブレンを共存させてもよい)、1〜2日間培養後、上述のように選択薬剤を添加して培養を続け、ベクターが組み込まれた細胞を選択する。
SLC-1遺伝子をノックダウンする具体的な手段としては、SLC-1のアンチセンスRNAもしくはsiRNA(shRNAを含む)をコードするDNAを、自体公知のトランスジェニック作製技術を用いて導入し、対象非ヒト哺乳動物細胞内で発現させる方法などが挙げられる。
目的のポリヌクレオチドの標的領域と相補的な塩基配列を含むDNA、即ち、目的のポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるDNAは、該目的のポリヌクレオチドに対して「アンチセンス」であるということができる。
SLC-1をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に、相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスDNAとしては、SLC-1をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有し、該ポリヌクレオチドの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスDNAであってもよい。
SLC-1をコードするポリヌクレオチドに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、該ポリヌクレオチドの相補鎖の塩基配列と、オーバーラップする領域に関して、約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列である。本明細書における塩基配列の相同性は、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。
特に、SLC-1をコードするポリヌクレオチドの相補鎖の全塩基配列のうち、(a)翻訳阻害を指向したアンチセンスDNAの場合は、SLC-1蛋白質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスDNAが、(b)RNaseHによるRNA分解を指向するアンチセンスDNAの場合は、イントロンを含むSLC-1をコードするポリヌクレオチドの全塩基配列の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスDNAがそれぞれ好適である。
具体的には、対象非ヒト哺乳動物がマウスの場合、GenBank accession No. NM_145132(VERSION: NM_145132.1, GI:21553072)として登録されている塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列、またはその一部を含むアンチセンスDNA、好ましくは、該塩基配列に相補的な塩基配列またはその一部を含むアンチセンスDNAなどが挙げられる。また、対象非ヒト哺乳動物がラットの場合、GenBank accession No. NM_031758(VERSION: NM_031758.1, GI: 13929067)で表される塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列、またはその一部を含むアンチセンスDNA、好ましくは、該塩基配列に相補的な塩基配列またはその一部を含むアンチセンスDNAなどが挙げられる。
SLC-1をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有するアンチセンスDNA(以下、「本発明のアンチセンスDNA」ともいう)は、クローン化した、あるいは決定されたSLC-1をコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。かかるアンチセンスDNAは、SLC-1遺伝子の複製または発現を阻害することができる。即ち、本発明のアンチセンスDNAは、SLC-1遺伝子から転写されるRNA(mRNAまたは初期転写産物)とハイブリダイズすることができ、mRNAの合成(プロセッシング)または機能(蛋白質への翻訳)を阻害することができる。
本発明のアンチセンスDNAの標的領域は、アンチセンスDNAがハイブリダイズすることにより、結果としてSLC-1蛋白質への翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、該蛋白質をコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約10塩基程度、長いものでmRNAまたは初期転写産物の全配列が挙げられる。具体的には、SLC-1遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6-ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどが、アンチセンスDNAの好ましい標的領域として選択しうるが、SLC-1遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。例えば、該遺伝子のイントロン部分を標的領域とすることもできる。
さらに、本発明のアンチセンスDNAは、SLC-1のmRNAもしくは初期転写産物とハイブリダイズして蛋白質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるSLC-1遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAの転写を阻害し得るものであってもよい。あるいはDNA:RNAハイブリッドを形成してRNaseHによる分解を誘導するものであってもよい。
SLC-1をコードするmRNAもしくは初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るリボザイムをコードするDNAもまた、本発明のアンチセンスDNAに包含され得る。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。SLC-1 mRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
本明細書においては、SLC-1のmRNAもしくは初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相同なオリゴRNAとその相補鎖とからなる二本鎖RNA、いわゆる短鎖干渉RNA(siRNA)もまた、本発明のKD動物作製のために用いることができる。siRNAを細胞内に導入するとそのRNAに相同なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、この現象が動物細胞でも広く起こることが確認されて以来[Nature, 411(6836): 494-498(2001)]、リボザイムの代替技術として汎用されている。siRNAは標的となるmRNAの塩基配列情報に基づいて、市販のソフトウェア(例:RNAi Designer; Invitrogen)を用いて適宜設計することができる。
本発明のアンチセンスオリゴDNA及びリボザイムは、SLC-1のcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。合成されたアンチセンスオリゴDNAまたはリボザイムは、必要に応じて適当なリンカー(アダプター)配列を介して発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、アンチセンスオリゴRNAまたはリボザイムをコードするDNA発現ベクターを調製することができる。ここで用いられ得る発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウイルスなどのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルスまたはバキュロウイルスなどの動物もしくは昆虫ウイルスなどが用いられる。なかでも、プラスミド(好ましくは大腸菌由来、枯草菌由来または酵母由来、特に大腸菌由来のプラスミド)や、動物ウイルス(好ましくはレトロウイルス、レンチウイルス)が好ましく例示される。また、プロモーターとしては、例えば、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)ロングターミナルリピート(LTR)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、マウス白血病ウイルス(MoMuLV)LTR、アデノウイルス(AdV)由来初期プロモーター等のウイルスプロモーター、並びにβ-アクチン遺伝子プロモーター、PGK遺伝子プロモーター、トランスフェリン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成蛋白質遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。
より長いアンチセンスRNA(例えば、SLC-1 mRNAの相補鎖全長など)をコードするDNA発現ベクターは、常法によりクローニングしたSLC-1 cDNAを、必要に応じて適当なリンカー(アダプター)配列を介して発現ベクターのプロモーターの下流に逆方向に挿入することにより調製することができる。
一方、siRNAをコードするDNAは、センス鎖またはアンチセンス鎖をコードするDNAとして別個に合成し、それぞれを適当な発現ベクター中に挿入することにより調製することができる。siRNAの発現ベクターとしては、U6やH1などのPol III系プロモーターを有するものが用いられ得る。この場合、該ベクターが導入された動物細胞内で、センス鎖とアンチセンス鎖がそれぞれ転写されてアニーリングすることにより、siRNAが形成される。shRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖との間に、適当なループ構造を形成しうる長さの塩基(例えば15から25塩基程度)を挿入したユニットを、適当な発現ベクター中に挿入することにより調製することができる。shRNAの発現ベクターとしてはU6やH1などのPol III系プロモーターを有するものが用いられ得る。この場合、該発現ベクターを導入された動物細胞内で転写されたshRNAは、自身でループを形成した後に、内在の酵素ダイサー(dicer)などによってプロセシングされることにより成熟siRNAが形成される。あるいは、Pol II系プロモーターで、ターゲットのsiRNA配列を含むマイクロRNA(miRNA)を発現させてRNAiによりノックダウンを達成することも可能である。この場合には組織特異的発現を示すプロモーターにより、組織特異的ノックダウンも可能となる。
SLC-1のアンチセンスRNA、siRNA、shRNA、もしくはmiRNAをコードするDNAを含む発現ベクターを細胞に導入する方法としては、標的細胞に応じて自体公知の方法が適宜用いられる。例えば、受精卵などの初期胚への導入については、マイクロインジェクション法が用いられる。また、ES細胞への導入については、リン酸カルシウム共沈殿法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、レトロウイルス感染法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE-デキストラン法などが用いられ得る。あるいは、ベクターとしてレトロウイルスやレンチウイルスなどを用いる場合には、初期胚やES細胞にウイルスを添加して1〜2日培養し、該細胞を該ウイルスに感染させることにより、簡便に遺伝子導入を達成し得る場合がある。ES細胞からの個体再生(ファウンダーの樹立)、継代(ホモ接合体の作製)等は、本発明のKO動物において上記したと同様の方法により行うことができる。
好ましい一実施態様においては、SLC-1のアンチセンスRNA、siRNA、shRNA、もしくはmiRNAをコードするDNAを含む発現ベクターは、マイクロインジェクション法により対象となる非ヒト哺乳動物の初期胚に導入される。
対象非ヒト哺乳動物の初期胚は、同種の非ヒト哺乳動物の雌雄を交配させて得られる体内受精卵を採取するか、あるいは同種の非ヒト哺乳動物の雌雄からそれぞれ採取した卵と***を体外受精させることにより得ることができる。
用いる非ヒト哺乳動物の齢や飼育条件等は動物種によってそれぞれ異なるが、例えばマウス(好ましくはC57BL/6J(B6)などの近交系マウス、B6と他の近交系とのF1など)を用いる場合は、雌が約4〜約6週齢、雄が約2〜約8ヶ月齢程度のものが好ましく、また、約12時間明期条件(例えば7:00-19:00)で約1週間飼育したものが好ましい。
体内受精は自然交配によってもよいが、性周期の調節と1個体から多数の初期胚を得ることを目的として、雌非ヒト哺乳動物に性腺刺激ホルモンを投与して過剰***を誘起した後、雄非ヒト哺乳動物と交配させる方法が好ましい。雌非ヒト哺乳動物の***誘発法としては、例えば初めに卵胞刺激ホルモン(妊馬血清性性腺刺激ホルモン、一般にPMSGと略する)、次いで黄体形成ホルモン(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、一般にhCGと略する)を、例えば腹腔内注射などにより投与する方法が好ましいが、好ましいホルモンの投与量、投与間隔は非ヒト哺乳動物の種類によりそれぞれ異なる。例えば、非ヒト哺乳動物がマウス(好ましくはC57BL/6J(B6)などの近交系マウス、B6と他の近交系とのF1など)の場合は、通常、卵胞刺激ホルモン投与後、約48時間後に黄体形成ホルモンを投与し、直ちに雄マウスと交配させることにより受精卵を得る方法が好ましく、卵胞刺激ホルモンの投与量は約20〜約50IU/個体、好ましくは約30IU/個体、黄体形成ホルモンの投与量は約0〜約10IU/個体、好ましくは約5IU/個体である。
一定時間経過後、膣栓の検査等により交配を確認した雌非ヒト哺乳動物の腹腔を開き、卵管から受精卵を取り出して胚培養用培地(例:M16培地、修正Whitten培地、BWW培地、M2培地、WM-HEPES培地、BWW-HEPES培地等)中で洗って卵丘細胞を除き、微小滴培養法等により5%炭酸ガス/95%大気下でDNA顕微注入まで培養する。直ちに顕微注入を行わない場合、採取した受精卵を緩慢法または超急速法等で凍結保存することも可能である。
一方、体外受精の場合は、採卵用雌非ヒト哺乳動物(体内受精の場合と同様のものが好ましく用いられる)に上記と同様に卵胞刺激ホルモンおよび黄体形成ホルモンを投与して***を誘発させた後、卵子を採取して受精用培地(例:TYH培地)中で体外受精時まで微小滴培養法等により5%炭酸ガス/95%大気下で培養する。他方、同種の雄非ヒト哺乳動物(体内受精の場合と同様のものが好ましく用いられる)から精巣上体尾部を取り出し、***塊を採取して受精用培地中で前培養する。前培養終了後の***を卵子を含む受精用培地に添加し、微小滴培養法等により5%炭酸ガス/95%大気下で培養した後、2個の前核を有する受精卵を顕微鏡下で選抜する。直ちにDNAの顕微注入を行わない場合は、得られた受精卵を緩慢法または超急速法等で凍結保存することも可能である。
受精卵へのDNAの顕微注入は、マイクロマニピュレーター等の公知の装置を用いて常法に従って実施することができる。簡潔に言えば、胚培養用培地の微小滴中に入れた受精卵をホールディングピペットで吸引して固定し、インジェクションピペットを用いてDNA溶液を雄性もしくは雌性前核、好ましくは雄性前核内に直接注入する。導入DNAはCsCl密度勾配超遠心または陰イオン交換樹脂カラム等で高度に精製したものを用いることが好ましい。また、導入DNAは制限酵素を用いてベクター部分を切断し、直鎖状にしておくことが好ましい。
DNA導入後の受精卵は胚培養用培地中で微小滴培養法等により5%炭酸ガス/95%大気下で1細胞期〜胚盤胞期まで培養した後、偽妊娠させた受胚用雌非ヒト哺乳動物の卵管または子宮内に移植される。受胚用雌非ヒト哺乳動物は移植される初期胚が由来する動物と同種のものであればよく、例えば、マウス初期胚を移植する場合は、ICR系の雌マウス(好ましくは約8〜約10週齢)などが好ましく用いられる。受胚用雌非ヒト哺乳動物を偽妊娠状態にする方法としては、例えば、同種の精管切除(結紮)雄非ヒト哺乳動物(例えば、マウスの場合、ICR系の雄マウス(好ましくは約2ヶ月齢以上))と交配させて、膣栓の存在が確認されたものを選択する方法が知られている。
受胚用雌は自然***のものを用いてもよいし、あるいは精管切除(結紮)雄との交配に先立って、黄体形成ホルモン放出ホルモン(一般にLHRHと略する)もしくはその類縁体を投与し、受精能を誘起させたものを用いてもよい。LHRH類縁体としては、例えば、[3,5-DiI-Tyr5]-LH-RH、[Gln8]-LH-RH、[D-Ala6]-LH-RH、[des-Gly10]-LH-RH、[D-His(Bzl)6]-LH-RHおよびそれらのEthylamideなどが挙げられる。LHRHもしくはその類縁体の投与量、ならびにその投与後に雄非ヒト哺乳動物と交配させる時期は、非ヒト哺乳動物の種類によりそれぞれ異なる。例えば、非ヒト哺乳動物がマウス(好ましくはICR系のマウスなど)の場合には、通常、LHRHもしくはその類縁体を投与した後、約4日目に雄マウスと交配させることが好ましく、LHRHあるいはその類縁体の投与量は、通常、約10〜60μg/個体、好ましくは約40μg/個体である。
通常、移植される初期胚が桑実胚期以後の場合は受胚用雌の子宮に、それより前(例えば、1細胞期〜8細胞期胚)であれば卵管に胚移植される。受胚用雌は、移植胚の発生段階に応じて偽妊娠からある日数が経過したものが適宜使用される。例えばマウスの場合、2細胞期胚を移植するには偽妊娠後約0.5日の雌マウスが、胚盤胞期胚を移植するには偽妊娠後約2.5日の雌マウスが好ましい。受胚用雌を麻酔(好ましくはAvertin、ネンブタール等が使用される)後、切開して卵巣を引き出し、胚培養用培地に懸濁した初期胚(約5〜約10個)を胚移植用ピペットを用いて、卵管腹腔口もしくは子宮角の卵管接合部付近に注入する。
移植胚が首尾よく着床し受胚雌が妊娠すれば、自然分娩もしくは帝王切開により仔非ヒト哺乳動物が得られる。自然分娩した受胚雌にはそのまま哺乳を継続させればよく、帝王切開により出産した場合は、産仔は別途用意した哺乳用雌(例えばマウスの場合、通常に交配・分娩した雌マウス(好ましくはICR系の雌マウス等))に哺乳させることができる。
受精卵細胞段階におけるSLC-1のアンチセンスRNA、siRNA、shRNA、もしくはmiRNAをコードするDNAの導入は、導入DNAが対象非ヒト哺乳動物の生殖系列細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。導入DNAが染色体DNAに組み込まれているか否かは、例えば、産仔の尾部より分離抽出した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーションまたはPCR法によりスクリーニングすることにより検定することができる。上記のようにして得られる仔非ヒト哺乳動物(F0)の生殖系列細胞においてターゲッティングベクターが存在することは、その後代(F1)の動物全てが、その生殖系列細胞および体細胞のすべてにターゲッティングベクターが存在することを意味する。
通常、F0動物は相同染色体の一方にのみ導入DNAを有するヘテロ接合体として得られる。また、個々のF0個体は相同組換えによらない限り異なる染色体上にランダムに挿入される。相同染色体の両方にターゲッティングベクターを有するホモ接合体を得るためには、F0動物と非トランスジェニック動物とを交雑してF1動物を作製し、相同染色体の一方にのみ導入DNAを有するヘテロ接合体の兄妹同士を交雑すればよい。1遺伝子座にのみ導入DNAが組み込まれていれば、得られるF2動物の1/4がホモ接合体となる。
ベクターとしてウイルスを用いる場合の別の好ましい一実施態様として、上記KO動物の場合と同様に、SLC-1のアンチセンスRNA、siRNA、shRNA、もしくはmiRNAをコードするDNAを含むウイルスで、非ヒト哺乳動物の初期胚もしくはES細胞を感染させる方法が挙げられる。細胞として受精卵を用いる場合は、感染に先立って透明帯を除いておくことが好ましい。ウイルスベクターを感染させて1〜2日間培養後、初期胚であれば、上述のように偽妊娠させた受胚用雌非ヒト哺乳動物の卵管または子宮内に移植し、ES細胞であれば、上述のように選択薬剤を添加して培養を続け、ベクターが組み込まれた細胞を選択する。
さらに、プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)第98巻, 第13090-13095頁, 2001年に記載されるように、雄非ヒト哺乳動物から採取した精原細胞をSTOフィーダー細胞と共培養する間にウイルスベクターに感染させた後、雄性不妊非ヒト哺乳動物の精細管に注入して雌非ヒト哺乳動物と交配させることにより、効率よくSLC-1のアンチセンスRNA、siRNA、shRNA、もしくはmiRNAをコードするDNAのへテロTg(+/-)産仔を得ることができる。
本発明のSLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物は、対応する野生型動物と比較して、以下の特性:
(1)耐糖能試験において血中インスリンレベルが低い、
(2)インスリン感受性が増大している、
(3)高脂肪食下でも抗肥満である、
(4)白色脂肪細胞が小型化している、および
(5)脂肪分解が亢進している
を有する。これらの表現型は、従来公知のSLC-1 KOマウスにおいては、少なくとも報告されていない(プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユー・エス・エー (Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 2002年, 第99巻, p. 3240-3245およびエンドクリノロジー (Endocrinol.), 2002年, 第143巻, p. 2469-2477参照)。
さらに、本発明のSLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物は、対応する野生型動物と比較して、以下の特性:
(i)自発運動量および酸素消費量が亢進している、
(ii)体脂肪が減少している、および
(iii)血漿レプチン値が低下している
を有する。これらの表現型は従来公知のSLC-1 KOマウスと一致する。
これらの知見に基づけば、SLC-1は、摂食促進を通じて肥満、糖尿病の発症・進展に関与するだけでなく、耐糖能・インスリン感受性の悪化にも深く関与していることが強く示唆される。したがって、本発明の発現不全動物は、例えば、各種疾患モデル動物(特に肥満および/またはII型糖尿病モデル動物、あるいはそれらを共通の基盤とする動脈硬化性疾患のモデル動物)と交配して、該疾患モデル動物をSLC-1欠損とすることにより、該疾患の病態に及ぼすSLC-1欠損の効果を調べる等、SLC-1の生理機能の解明およびSLC-1拮抗薬のそれら疾患の予防・治療薬としての有効性の検証などに利用することができる。
また、上記のようにして作製された発現不全動物の生体の一部(例えば、(1)SLC-1遺伝子発現不全である細胞、組織、臓器など、(2)これらに由来する細胞または組織を培養し、必要に応じて継代したものなど)も、本発明の発現不全動物と同様な目的に用いることができる。本発明の発現不全動物の生体の一部としては、膵臓、肝臓、脂肪組織、骨格筋、腎臓、副腎、血管、心臓、消化管、脳などの臓器や、当該臓器由来の組織片および細胞などが好ましく例示される。
本発明のSLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物は、内在性SLC-1遺伝子の発現が不活性化されていることに加えて、SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせるような、1以上の他の遺伝子改変を有していてもよい。
「SLC-1の活性調節が関与する疾患」とは、SLC-1活性の異常に起因するかもしくは結果的にSLC-1活性の異常を生じる疾患だけでなく、SLC-1活性を調節することにより予防および/または治療効果が得られ得る疾患をも含めた概念として把握されるべきである。
例えば、SLC-1活性を阻害することにより予防・治療可能な疾患として、肥満症、高脂血症、II型糖尿病およびその合併症(例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)、インスリノーマ、メタボリックシンドローム(上記各種疾患の1以上が重積した病態を含む)、動脈硬化性疾患(例えば、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳出血、脳血栓、脳塞栓、大動脈瘤、大動脈解離、腎硬化症、腎不全、閉塞性動脈硬化症、PCI後再狭窄、急性冠症候群、冠動脈疾患、末梢動脈閉塞症等)、神経症(例えば、鬱、不安等)などがそれぞれ挙げられる。
「他の遺伝子改変」としては、自然突然変異により内在性遺伝子に異常を有する自然発症疾患モデル動物、他の遺伝子をさらに導入されたTg動物、SLC-1遺伝子以外の内在性遺伝子を不活化されたKO/KD動物(挿入突然変異等による遺伝子破壊のほか、アンチセンスDNAや中和抗体をコードするDNAの導入により遺伝子発現が検出不可能もしくは無視し得る程度にまで低下したTg動物を含む)、変異内在性遺伝子が導入されたドミナントネガティブ変異Tg動物などが含まれる。
「SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を有する疾患モデル」としては、例えば、糖尿病モデルとしてNODマウス(Makino S.ら、エクスペリメンタル・アニマル(Exp. Anim.)、第29巻、第1頁、1980年)、BBラット(Crisa L.ら、ダイアビーティス・メタボリズム・レヴュー(Diabetes Metab. Rev.)、第8巻、第4頁、1992年)、ob/obマウス、db/dbマウス(Hummel L.ら、サイエンス(Science)、第153巻、第1127頁、1966年)、KKマウス、KKAマウス、GKラット(Goto Y.ら、トウホク・ジャーナル・オヴ・エクスペリメンタル・メディシン(Tohoku J. Exp. Med.)、第119巻、第85頁、1976年)、Zucker fattyラット(Zucker L.M.ら、アニュアル・オヴ・ニューヨーク・アカデミー・オヴ・サイエンス(Ann. NY Acad. Sci.)、第131巻、第447頁、1965年)、ZDFラット、OLETFラット(Kawano K.ら、ダイアビーティス(Diabetes)、第41巻、第1422頁、1992年)等が、肥満モデルとしてob/obマウス、db/dbマウス、KKマウス、KKAマウス、Zucker fattyラット、ZDFラット、OLETFラット等が、高脂血症もしくは動脈硬化症モデルとしてWHHLウサギ(低比重リポ蛋白レセプター(LDLR)に変異を有する;Watanabe Y.、アテロスクレローシス(Atherosclerosis)、第36巻、第261頁、1980年)、SHLM(apoE欠損変異を有する自然発症マウス;Matsushima Y.ら、マンマリアン・ジーノウム(Mamm. Genome)、第10巻、第352頁、1999年)、LDLR KOマウス(Ishibashi S.ら、ジャーナル・オヴ・クリニカル・インヴェスティゲーション(J. Clin. Invest.)、第92巻、第883頁、1993年)、apoE KOマウス(Piedrahita J.A.ら、プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第89巻、第4471頁、1992年)、ヒトapo A・ヒトapoB ダブルTgマウス(Callow M.J.ら、プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)、第91巻、第2130頁、1994年)等が、脂肪肝モデルとしてob/obマウス(Herberg L.及びColeman D.L.、メタボリズム(Metabolism)、第26巻、第59頁、1977年)、KKマウス(Nakamura M.及びYamada K.、ダイアベトロジア(Diabetologia)、第3巻、第212頁、1967頁)、FLSマウス(Soga M.ら、ラボラトリー・オヴ・アニマル・サイエンス(Lab. Anim. Sci.)、第49巻、第269頁、1999年)、虚血性心疾患モデルとしてCD55 CD59 ダブルTgマウス(Cowan P.J.ら、ゼノトランスプランテイション(Xenotransplantation)、第5巻、第184-90頁、1998年)等が知られている。
これらの「他の遺伝子改変を有する疾患モデル」は、例えば、米国のJackson研究所などから購入可能であるか、あるいは周知の遺伝子改変技術を用いて容易に作製することができる。
本発明の発現不全動物に、SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を導入する方法は特に制限はなく、例えば、(1)本発明の発現不全動物と、SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を有する同種の非ヒト哺乳動物とを交雑する方法;(2) SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を有する非ヒト哺乳動物の初期胚やES細胞を上述の方法により処理し、内在性SLC-1遺伝子の発現を不活性化してKO/KD動物を得る方法;(3)内在性SLC-1遺伝子が不活性化された非ヒト哺乳動物の初期胚やES細胞に、上述の方法により、SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を導入する方法等が挙げられる。また、SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変が、外来遺伝子やドミナント変異遺伝子の導入による場合、野生型非ヒト哺乳動物の初期胚やES細胞に、該外来遺伝子等とターゲッティングベクター/アンチセンスRNAもしくはsiRNAをコードするDNAとを同時にもしくは順次導入してKO/KD動物を得てもよい。
本発明の発現不全動物と、SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を有する同種の疾患モデル非ヒト哺乳動物とを交雑する場合、ホモ接合体同士を交雑することが望ましい。例えば、SLC-1遺伝子発現不全ホモ接合体マウスと、KKAyマウス(肥満・II型糖尿病モデル)とを交雑して得られるF1は、1/2の確率でSLC-1(+/-)×KKAyもしくはSLC-1(+/-)×KKである。このF1個体のSLC-1(+/-)×KKAyとSLC-1(+/-)×KKとを交雑することにより、1/8の確率でSLC-1(-/-)×KKAyが得られる。F3個体以降のホモ個体の取得は、SLC-1(-/-)×KKAyとSLC-1(-/-)×KKを交雑することにより行うことができる(1/2の確率でホモ個体が取得される)。
本発明の発現不全動物は、SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の非遺伝的処理を施されていてもよい。「非遺伝的処理」とは対象非ヒト哺乳動物における遺伝子改変を生じさせない処理を意味する。このような処理としては、例えば、STZなどの薬剤誘発処理、高脂肪食負荷、糖負荷、絶食等の食餌的ストレス負荷、UV、活性酸素、熱、血管結紮/再灌流等の外的ストレス負荷などが挙げられるが、これらに限定されない。
好ましくは、「SLC-1の活性調節が関与する疾患と同一もしくは類似の病態を生じさせる1以上の他の遺伝子改変を有する疾患モデル」として、肥満および/またはII型糖尿病モデル、特に好ましくはKKAマウスが挙げられる。従って、本発明はまた、SLC-1遺伝子発現不全である肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物(好ましくはKKAマウス)を提供する。
本発明のSLC-1遺伝子発現不全である肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物は、該遺伝子発現が正常な対応する肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物と比較して、以下の特性:
(1)アディポネクチン発現が上昇している、
(2)高血糖の発症が遅れる、
(3)血中糖化ヘモグロビン値が低い、および
(4)エネルギー消費が亢進している
を有する。これらの表現型は、従来公知のSLC-1欠損/肥満・II型糖尿病モデルマウスでは、少なくとも報告されていない(ダイアビーティス (Diabetes), 2006年, 第55巻, p. 725-733を参照)。
さらに、本発明のSLC-1遺伝子発現不全である肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物は、SLC-1遺伝子発現が正常な対応する肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物と比較して、以下の特性:
(i)酸素消費量が増加している、および
(ii)血中コルチコステロン値が低下している
を有する。これらの表現型は、従来公知のSLC-1欠損/肥満・II型糖尿病モデルマウスと一致する。
上述のように、本発明のSLC-1遺伝子発現不全である肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物では、該遺伝子発現が正常な対応する肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物と比較して、アディポネクチン発現が上昇している。このことは、SLC-1拮抗薬が、肥満、特に脂肪細胞の肥大を伴う内臓脂肪型肥満を有する動物個体において、脂肪細胞におけるアディポネクチンの産生を促進する作用を有することを強く示唆する。
したがって、本発明はまた、SLC-1拮抗薬を含む、アディポネクチン産生促進剤を提供する。ここで「拮抗薬」とは、「アンタゴニスト活性を有する物質」のことであり、「アンタゴニスト活性」とは、SLC-1のリガンド結合部位に拮抗的に結合するが、活性型と不活性型の平衡状態にほとんど又は全く影響を及ぼさない性質、あるいはSLC-1の任意の部位に結合して、SLC-1の活性型と不活性型の平衡状態をより不活性側にシフトさせる性質をいう。従って、本明細書において「拮抗薬」とは、いわゆるニュートラルアンタゴニストとインバースアゴニストの両方を包含する概念として定義されるものとする。
SLC-1拮抗薬を含む、本発明のアディポネクチン産生促進剤は、例えば、肥満を伴う哺乳動物における、高脂血症、II型糖尿病およびその合併症(例えば、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症等)、インスリン抵抗性症候群、高血圧、インスリノーマを含む癌、メタボリックシンドローム(上記各種疾患の1以上が重積した病態を含む)、動脈硬化性疾患(例えば、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳出血、脳血栓、脳塞栓、大動脈瘤、大動脈解離、腎硬化症、腎不全、閉塞性動脈硬化症、PCI後再狭窄、急性冠症候群、冠動脈疾患、末梢動脈閉塞症等)などの予防および/または治療に使用することができる。
SLC-1拮抗薬としては、例えば、WO 01/21577、WO 01/82925、WO 01/87834、WO 03/35624、WO 2004/072018等に記載される化合物等が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、WO 00/40725等に記載されるスクリーニング法によって選択されるSLC-1拮抗薬も、同様に好ましく用いられ得る。
SLC-1拮抗薬は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。該拮抗薬は、生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。これら製剤における有効成分量は後述する投与量を考慮して適宜選択される。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO-50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。上述のように、SLC-1欠損は、肥満を有する場合にアディポネクチン値の上昇効果を奏する。即ち、肥満、特に脂肪細胞の肥大を伴う内臓脂肪型肥満を有する動物個体においては、脂肪細胞におけるアディポネクチンの産生・分泌が抑制されているが、SLC-1活性が阻害されると血漿中のアディポネクチン値が回復傾向を示す。他方、肥満を伴わない動物個体では、もともとアディポネクチンの産生・分泌の有意な低下は認められず、SLC-1を欠損することによってもアディポネクチンレベルの上昇は見られない。従って、SLC-1拮抗薬を有効成分とする、本発明のアディポネクチン産生促進剤は、好ましくは、肥満、特に脂肪細胞の肥大を伴う内臓脂肪型肥満などにより、アディポネクチンレベルが低下している上記哺乳動物に対して投与される。
SLC-1拮抗薬の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより異なるが、例えば、アディポネクチンレベルの低下を伴う糖尿病の治療目的で経口投与する場合、一般的に成人(体重60kg)においては、一日につき約0.1mg〜約100mg、好ましくは約1.0〜約50mg、より好ましくは約1.0〜約20mgである。非経口投与の場合、当該拮抗薬の投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、アディポネクチンレベルの低下を伴う糖尿病の治療目的で注射剤として成人(体重60kg)に投与する場合、一日につき約0.01〜約30mg程度、好ましくは約0.1〜約20mg程度、より好ましくは約0.1〜約10mg程度である。投与対象がヒト以外の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本願明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を次に挙げる。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
以下に実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1 SLC-1遺伝子欠損マウスの作製
ターゲッティングベクター(図1A)を含むプラスミドpSLCTA-2は、マウスSLC-1ゲノムDNAのエキソン1を含むXbaI断片7.7kbpとエキソン2のSacIから3’非翻訳領域のEcoRIまでの0.87kbpをそれぞれ5’アーム、3’アームとしてクローニング後、pKOScrambler(レキシコン ジェネティクス社製)に導入し、エキソン2の7回膜貫通領域をネオマイシン耐性遺伝子で置換することにより作製した。ターゲッティングベクターをNotI切断で直線化し、ジーンパルサー(バイオラッド社製)を用いて129SvEvマウス由来のES細胞AB2.2(レキシコン ジェネティクス社製)にエレクトロポーレーション後、ネオマイシンアナログのG418(レキシコン ジェネティクス社製)で選択培養した。G418耐性株480個よりゲノムDNAを抽出し、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)配列中のNE5プライマー(5’-CTAAAGCGCATGCTCCAGAC-3’:配列番号1)と3’アームの外側の配列のMC18プライマー(5’-ATATCAGGTATTAGAGTGAC-3’:配列番号2)を用いてPCRスクリーニングし、14個の相同組換え株を選抜した。さらに相同組換え株より抽出したゲノムDNAをHindIIIで切断し、3’アームの外側のプローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行い、野生型由来の断片3.5kbpと相同組換え株由来の断片1.5kbpを確認した。相同組換え株をC57BL/6Jマウスの胚盤胞にマイクロインジェクションし、生殖系列雄性キメラマウスを取得した。生殖系列雄性キメラマウスと雌性C57BL/6Jマウスとの交配により産仔を取得し、その遺伝子型は尾から抽出したDNAを鋳型に用いて、neo遺伝子配列中のNE1プライマー(5’-CCGCTTCCATTGCTCAGCGG-3’:配列番号3)、欠損したエキソン2領域中のMC19プライマー(5’-GCTTGGTGCTGTCGGTGAAG-3’:配列番号4)と3’アーム中のMC14プライマー(5’-TATTCTGTCAAGGGGATC-3’:配列番号5)でPCRを行い判定した。産仔におけるSLC-1遺伝子発現の有無は、ISOGEN(ニッポンジーン社製)で抽出した全脳のトータルRNAの逆転写産物を鋳型とし、欠失したエキソン2領域中に設定したMC26プライマー(5’-CCTCGCACAAGGAGTGTCTC-3’:配列番号6)とMC29プライマー(5’-TAATGAACGAGAGAGCCCAC-3’:配列番号7)を用いてreverse transcription-PCRを行い、SLC-1 mRNA由来の0.43kbpのバンドの増幅の可否で確認した(図1B)。
ES細胞由来の129SvEv系統と、交配に用いたC57BL/6J系統との交雑個体から、非コンジェニック系を作製した。一方で、スピードコンジェニック法により、非コンジェニック系をC57BL/6Jマウスに4世代戻し交配を行った後、兄妹交配によりコンジェニック系を作製した。
実施例2 KKAマウス、あるいはKKマウスとSLC-1ホモ欠損(-/-)マウスとの交雑個体の作製
コンジェニック化したSLC-1(-/-)マウスとKKAyマウスとの交雑により、KKAマウス、あるいはKKマウスの遺伝背景が50%導入されたSLC-1ヘテロ欠損(+/-)マウスを取得した。それぞれをインタークロスすることにより、SLC-1ワイルド(+/+)マウス系[KKAy/SLC-1(+/+)、KK/SLC-1(+/+)]とSLC-1(-/-)マウス系[KKAy/SLC-1(-/-)、KK/SLC-1(-/-)]を取得した。
実施例3 SLC-1(-/-)マウスの一般性状
SLC-1(+/+)マウス、およびSLC-1(-/-)マウスを12時間の明暗周期、室温24±1℃、湿度55±5%の条件下で5週齢から個別に飼育した。飼料は通常食(CE-2、11.6% kcal from fat、346.8kcal/100g、日本クレア社製)、あるいは無塩バター含有高脂肪食(40.7% kcal from fat、464.6kcal/100g、日本クレア社製)を使用した。体重は、毎週指定日の午前8時より測定した。摂餌量は、1週間分の摂餌量を測定し、一週間の摂餌量(g)x餌のカロリー(kcal/100g)/体重(g)/7(day)の計算式により、一日の体重100g当りのカロリー摂取量に換算した。血液パラメーターは、12週齢、および21週齢時に飽食下で午前8時よりヘパリン採血管(ドラモンドサイエンティフィックカンパニー社製)を用いて眼窩採血し、血漿中のグルコース(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)、トリグリセライド(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)、総コレステロール(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)、インスリン(レビスインスリンキット、シバヤギ社製)、レプチン(マウスレプチンキット、ゲンザイムテクネ社製)、遊離脂肪酸(nonestified fatty acid: NEFA、NEFA C-テストワコー、和光純薬工業社製)を測定した。
体重について、SLC-1(-/-)マウスはSLC-1(+/+)マウスと比べて通常食群では実験期間(5〜20週齢)を通じて有意差を示さなかったが、高脂肪食群では6週齢以降において小さかった(P<0.01、8週齢時)(図2A)。一日当りの摂餌量(kcal/day)は通常食群のSLC-1(-/-)マウスに増加が見られたが、高脂肪食群では両マウス間に差は認められなかった(データ未掲載)。体重補正した摂餌量は、通常食、および高脂肪食の両群ともにSLC-1(-/-)マウスにおいて多かった(図2B)。血漿パラメーターについては、通常食群ではグルコース、トリグリセライド、総コレステロール、および遊離脂肪酸はSLC-1(+/+)マウスとSLC-1(-/-)マウスの間で差が認められなかったが、レプチン、およびインスリン値はSLC-1(-/-)マウスで有意に低値を示した。高脂肪食群においても、通常食群同様の傾向が認められた(表1)。
実施例4 SLC-1(-/-)マウスの脂肪組織
12〜14週齢時に体脂肪率、脂肪組織重量、および白色脂肪細胞サイズを測定した。体脂肪率はネンブタール麻酔下においてdouble-energy X-ray absorptiometry (DEXA, QDR-4500a Rat Whole Body V8.26a、ホロジック社製)で測定した。脂肪組織重量は、白色脂肪組織については、後腹膜、生殖器周囲、腸間膜、腎周囲、および皮下鼠径部を、褐色脂肪組織については、肩甲骨間を測定した。白色脂肪細胞サイズは以下の方法で測定した。脂肪細胞の調製はRodbellの方法に準じた(Rodbell, M. (1964) Metabolism of isolated fat cells. I. Effects of hormones on glucose metabolism and lipolysis. J. Biol. Chem. 239:375-380)。マウス生殖器周囲白色脂肪組織を摘出後、硫酸紙上で細切し、3% BSA(Albumin, bovine serum, fraction V, fatty acid-free、和光純薬工業社製)と0.075% コラゲナーゼ タイプI(ワーシントン バイオケミカル社製)を含むクレブスリンガー重炭酸塩緩衝液中に加えた後、気相に95% O2 - 5% CO2ガスを吹き込み、37℃、120ストローク/分で35分間振盪した。浮遊した脂肪細胞をメッシュ布でろ過し、組織片を取り除いた。静置後、液層を取り除き、脂肪細胞層を1% BSAを含むクレブスリンガー重炭酸塩緩衝液(15〜20ml)で3回洗浄した。脂肪細胞浮遊液を懸濁後、シリコナイズしたスライドガラス上にマウントし、倒立顕微鏡下において200倍で写真撮影し、細胞の直径を計測した(細胞数≧180)。
SLC-1(-/-)マウスは通常食群、高脂肪食群ともにDEXA法により測定した体脂肪率が有意な低値を示した(表2)。脂肪組織重量も通常食群で後腹膜脂肪組織、生殖器周囲脂肪組織、腸間膜白色脂肪組織、および肩甲骨間褐色脂肪組織において減少傾向、あるいは有意な減少が見られたが、この差は高脂肪食負荷による肥満誘発条件下でさらに明確になり、腎周囲と皮下脂肪組織を含めた測定全部位の脂肪組織の重量に有意な減少が認められた(表2)。生殖器周囲白色脂肪組織の脂肪細胞サイズは、SLC-1(+/+)マウスに比べ、SLC-1(-/-)マウスでは通常食、および高脂肪食を負荷したいずれの群においても有意に小さかった(表2)。
実施例5 SLC-1(-/-)マウスのエネルギー消費
自発運動量は、12週齢時に赤外線行動解析装置(ABsystem3.04、ニューロサイエンス)を用いて測定した。飽食下で馴化後、2日間測定した。計測は、0.5秒以上の移動変化をカウントし、結果は2日間の明期、あるいは暗期の計測平均値で表示した。酸素消費の測定には小動物代謝計測システム(model MK-5000RQ/06、室町機械)を用いた。マウスを個別にエアタイトチャンバー〔150W x 150D x150H (mm)〕に入れ、エアー流量0.5-0.8L/minの条件下で、24時間測定した。餌と水は自由摂取させた。チャンバー内外のエアーは5分15秒毎に採取し、サンプル中の酸素濃度(%)、あるいは二酸化炭素濃度(%)を測定した。酸素消費量(VO2: ml/min/100g BW)、あるいは二酸化炭素排出量(VCO2: ml/min/100g BW)は、チャンバー内外の各濃度の差にエアー流量をかけて算出し、マウスの体重100g当たりに補正した。呼吸商(Respiratory quotient: RQ)は、二酸化炭素排出量(VCO2)/酸素消費量(VO2)の計算式で算出した。結果は、明期、あるいは暗期の計測平均値で表示した。
SLC-1(-/-)マウスでは、自発運動量は暗期に37%亢進、また一日量についても36%亢進が認められた(図3A)。酸素消費量も明期、暗期のいずれにおいても有意に増加していた(図3B)。三大栄養素(糖質、タンパク質、および脂質)の代謝割合を反映する呼吸商に差は認められなかった(データ未掲載)。
実施例6 SLC-1(-/-)マウスの耐糖能試験、およびインスリン感受性試験
耐糖能試験は、以下の方法で実施した。即ち、通常食、あるいは高脂肪食負荷下で飼育したマウスを用い、20時間絶食した後に、グルコース(1g/kg)を経口投与し、0、5、15、30、60、および120分経過時にヘパリン採血管(ドラモンドサイエンティフィックカンパニー社製)を用いて眼窩採血した。血漿中のグルコース値(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)とインスリン値(マウスインスリンキット、シバヤギ社製)を測定した。
インスリン感受性試験は、以下の方法で実施した。即ち、通常食、あるいは高脂肪食負荷下で飼育したマウスを用い、20時間絶食した後に、インスリン(0.75U/kg、ノボノルディスク ファーマ社製)を腹腔内注射した。0、15、30、60、および120分経過時にヘパリン採血管(ドラモンドサイエンティフィックカンパニー社製)を用いて眼窩採血を行い、血漿中のグルコース値(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)を測定した。
インスリン抵抗性試験(steady state plasma glucose: SSPG法)は、以下の方法で実施した。即ち、高脂肪食負荷下で飼育したマウスを用い、20時間絶食した後に、インスリン(1U/kg、ノボノルディスク ファーマ社製)、グルコース(3g/kg、和光純薬工業社製)、エピネフリン(100μg/kg 、シグマ アルドリッチ社製)、プロプラノロール(5mg/kg 、シグマ アルドリッチ社製)の混合液を皮下投与した。血中グルコース値とインスリン値が定常状態に達した50、および75分後に眼窩採血し、血漿中のグルコース値(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)とインスリン値(マウスインスリンキット、シバヤギ社製)を測定した。結果は50分と75分の平均値で表示した。
16週齢時の耐糖能試験では、糖負荷前後の血漿グルコース値は通常食群、高脂肪食群ともにSLC-1(-/-)マウスではSLC-1(+/+)マウスと比べて差が認められないが、血漿インスリン値は低く保たれ(図4A)、SLC-1(-/-)マウスではインスリン感受性が高い成績が得られた。
21週齢時のインスリン感受性試験では、SLC-1(-/-)マウスはSLC-1(+/+)マウスに比べ、インスリン投与後の血漿グルコースは低値を示した(図4B)。さらに高脂肪食負荷時の変化を明らかにするために29週齢時に末梢組織におけるインスリン抵抗性を評価する試験(SSPG法)を行なった。SLC-1(-/-)マウスではSLC-1(+/+)マウスに比べ、steady state plasma insulin(SSPI)値に差が見られない条件下において、SSPG値が有意に低値を示した(図4C)。
実施例7 SLC-1(-/-)マウスの脂肪分解
左右の生殖器周囲白色脂肪組織を摘出後、2% BSA(Albumin, bovine serum, fraction V, fatty acid-free、和光純薬工業社製)を含むクレブスリンガー重炭酸塩緩衝液で洗浄し、それぞれ二分割した。組織片は余剰水分を除去後、秤量し、種々の濃度のエピネフリン(0、0.01、0.03、0.1、0.3μg/ml、シグマ アルドリッチ社製)と2% BSAを含むクレブスリンガー重炭酸塩緩衝液1ml中に浸漬した。気相に95% O2 - 5% CO2ガスを吹き込み、37℃、80ストローク/分で3時間振盪した。振盪後、反応液中の遊離脂肪酸(NEFA C-テストワコー、和光純薬工業社製)を測定した。
SLC-1(-/-)マウスではSLC-1(+/+)マウスに比べ、亢進していた(P<0.01)が、脂肪分解を亢進させるエピネフリンを添加した時の反応性は両群間で差は認められなかった(図5)。
実施例8 KKAマウス、およびKKマウス交雑群の一般性状
SLC-1ワイルド(+/+)マウス系[KKAy/SLC-1(+/+)、KK/SLC-1(+/+)]とSLC-1(-/-)マウス系[KKAy/SLC-1(-/-)、KK/SLC-1(-/-)]を12時間の明暗周期、室温24±1℃、湿度55±5%の条件下で個別に飼育した。飼料は通常食(CE-2、11.6% kcal from fat、346.8kcal/100g、日本クレア社製)を与えた。体重は、毎週指定日の午前8時より測定した。摂餌量は、1週間分の摂餌量を測定し、一週間の摂餌量(g)x餌のカロリー(kcal/100g)/体重(g)/7(day)の計算式により、一日の体重100g当りのカロリー摂取量に換算した。血液パラメーターは、飽食下で午前8時よりヘパリン採血管(ドラモンドサイエンティフィックカンパニー社製)を用いて眼窩採血し、血漿中のグルコース(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)、トリグリセライド(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)、総コレステロール(ドライケムシステム、富士写真フィルム社製)、インスリン(レビスインスリンキット、シバヤギ社製)、レプチン(マウスレプチンキット、ゲンザイムテクネ社製)、アディポネクチン(マウスアディポネクチンRIAキット、リンコリサーチ社製)、遊離脂肪酸(nonestified fatty acid: NEFA、NEFA C-テストワコー、和光純薬工業社製)と全血中のヘモグロビンA1c(HbA1c: 糖化ヘモグロビン、自動グリコヘモグロビン分析計HLC-723GHbV A1c2.2、東ソー社製)を測定した。また、飽食下で頚動脈より採血後、2% EDTA溶液を1/100容量添加して調製した血漿中のコルチコステロン(コルチコステロン125I RIAキット、アイシーエヌバイオメディカルズ社製)、トータルT4(DPC・トータルT4、三菱化学ヤトロン社製)を測定した。
KKA/SLC-1(+/+)マウスとKKA/SLC-1(-/-)マウス間では体重に差は認められなかったが、KK/SLC-1(+/+)マウスとKK/SLC-1(-/-)マウス間では6週齢以降、KK/SLC-1(-/-)マウスが有意に低い体重増加を示した(P<0.05、6週齢時)(図6A)。一日当たりのマウスの摂餌量(kcal/day)は、KKA/SLC-1(+/+)マウスとKKA/SLC-1(-/-)マウス、およびKK/SLC-1(+/+)マウスとKK/SLC-1(-/-)マウスの間で差は認められなかった(データ未掲載)。しかし、一日当たりの摂餌量を体重補正すると、KKA/SLC-1(+/+)マウスとKKA/SLC-1(-/-)マウス間では差が認められなかったが、KK/SLC-1(-/-)マウスはKK/SLC-1(+/+)マウスに比べ有意に過食を示した(図6B)。
血漿グルコース値は、5週齢ではKKA/SLC-1(+/+)マウスとKKA/SLC-1(-/-)マウスとの間に差がなかった(図7A)。9週齢以降になるとKKA/SLC-1(+/+)マウスは高血糖を示したが、KKA/SLC-1(-/-)マウスでは血漿グルコース値の上昇が抑制された(P<0.05、16週齢時)(図7A)。一方、KK/SLC-1(+/+)マウスとKK/SLC-1(-/-)マウスでは加齢による血漿グルコース値の上昇は認められず、両マウス間にも差はなかった(図7A)。
血漿トリグリセライド値は、KKAマウスとKKマウスのいずれにおいてもSLC-1欠損により有意に低値を示した(P<0.05、16週齢時)(図7B)。
血漿インスリン値は、KKAマウスとKKマウスのいずれにおいてもSLC-1欠損により減少する傾向を示した(図7C)。
血漿アディポネクチン値について、5週齢のKKA/SLC-1(-/-)マウスはKKA/SLC-1(+/+)マウスに比べて低値であった(P<0.05)(図7D)。9週齢以降ではKKA/SLC-1(+/+)マウスでは低下したが、KKA/SLC-1(-/-)マウスは上昇した (P<0.01、16週齢時)(図7D)。一方、KK/SLC-1(+/+)マウスとKK/SLC-1(-/-)マウスでは加齢と共に上昇を示し、両群間に差は認められなかった(図7D)。
血漿レプチン値は、KKA/SLC-1(+/+)マウスでは加齢に伴い上昇した。KKA/SLC-1(-/-)マウスでは、9週齢まではKKA/SLC-1(+/+)マウスに比べて有意に低値を示した(P<0.05、9週齢時)が、その後、加齢に伴い差は認められなくなった(図7E)。一方、KK/SLC-1(+/+)マウスでは加齢に伴い上昇したが、KK/SLC-1(-/-)マウスでは低値を維持していた(P<0.01、16週齢時)(図7E)。
HbA1c値は、糖尿病状態を反映して高値を示したKKA/SLC-1(+/+)マウスに比べ、KKA/SLC-1(-/-)マウスでは有意に低かった(図7F)。KK/SLC-1(+/+)マウス、およびKK/SLC-1(-/-)マウスでは正常値を示した(図7F)。
18週齢時の血漿NEFA値は、KKA/SLC-1(+/+)マウスに比べKKA/SLC-1(-/-)マウスでは有意に低く、KK/SLC-1(+/+)マウスとKK/SLC-1(-/-)マウスでも同様の傾向であった(図7G)。
21週齢時の血漿コルチコステロン値は、KKA/SLC-1(+/+)マウスでは高値を示し、KKA/SLC-1(-/-)マウスではKKA/SLC-1(+/+)マウスに比べて有意に低値であった (図7H) 。KK/SLC-1(+/+)マウスとKK/SLC-1(-/-)マウス間では差を認めなかった。
血漿トータルT4値は、4群間に差を認めなかった(図7I)。
実施例9 KKAマウス、およびKKマウス交雑群の体脂肪率
17週齢のマウスの体脂肪率を実施例4と同様に測定した。その結果、KKA/SLC-1(-/-)マウスの体脂肪率は、KKA/SLC-1(+/+)マウスに比べ、差が認められなかったが、KK/SLC-1(-/-)マウスの体脂肪率はKK/SLC-1(+/+)マウスより有意に低かった(図8)。
実施例10 KKAマウス、およびKKマウス交雑群のエネルギー消費
酸素消費量、および自発運動量の測定は実施例5と同様に実施した。
成熟期(13〜14週齢)の酸素消費量は、明期、および暗期を通じ、KKAマウス、およびKKマウスのいずれにおいてもSLC-1欠損により各々の対照マウスより有意な増加を認めた(図9A)。この現象は若齢期(5〜6週齢)でも認められた(データ未掲載)。呼吸商は、成熟期のKKA/SLC-1(-/-)マウスでは対照マウスに比べ、暗期で高くなり、糖質の消費が亢進していることが示唆された(図9B)。また7〜9週齢時の自発運動量は、各々の対照マウスと比較してKKA/SLC-1(-/-)マウス、KK/SLC-1(-/-)マウスに増加が認められた(図9C)。
実施例11 KKAマウス、およびKKマウス交雑群の耐糖能試験
16週齢のマウスを用い、実施例6と同様に耐糖能試験を実施した。
KKA群の耐糖能試験実施前の飽食時における血液パラメーターについて、KKA/SLC-1(-/-)マウスはKKA/SLC-1(+/+)マウスに比べ、体重、および血漿レプチン値に変化は見られないが、血漿グルコース値の有意な低下(32.5%)を示していた(図6A、7A、7E)。耐糖能試験時の血漿グルコース値は、絶食時(糖負荷前0分)に両マウス間には差を認めなかったが、糖負荷後30分以後はKKA/SLC-1(-/-)マウスが低値を示した(図10A)。AUC(グルコ−ス曲線下面積、0〜120分)を求めると、KKA/SLC-1(-/-)マウスではKKA/SLC-1(+/+)マウスに比べ、24.0 %減少していた。KKA/SLC-1(-/-)マウスの血漿インスリン値は絶食時(糖負荷前0分)、および糖負荷後30分で有意な低値を示した(図10B)。
KK群では飽食時の体重、血漿グルコース値はKK/SLC-1(+/+)マウスとKK/SLC-1(-/-)マウス間に差が認められなかったが、KK/SLC-1(-/-)マウスの血漿レプチン値は76.6%有意に低下(P<0.01)し、血漿インスリン値も91.1%の低下を示した(図6A、7A、7C、7E)。耐糖能試験では糖負荷後、30、60、および120分時の血漿グルコース値がKK/SLC-1(-/-)マウスで有意に低く(図10A)、AUC(0〜120分)も26.2%有意に低下(P<0.01)し、血漿インスリン値も絶食時、および糖負荷後15分以後で有意に低値を示した(図10B)。KKA群、およびKK群におけるこれらの結果は肥満、糖尿病発症前の6週齢時でも同様であった(データ未掲載)。
実施例12 KKAマウス、およびKKマウス交雑群の組織における遺伝子発現
KKAマウス、およびKKマウス交雑群について、糖尿病発症初期の摂食関連遺伝子、および代謝関連遺伝子の発現変動をreal time PCRで調べた。
9週齢のマウス各5匹より、間脳、生殖器周囲白色脂肪組織、肝臓、および骨格筋を採取し、ISOGEN(ニッポンジーン社製)でトータルRNAを抽出後、RNeasy mini kit(キアゲン社製)で精製した。トータルRNA はTaqMan Reverse Transcription Reagents(アプライドバイオシステムズジャパン社製)で逆転写し、real time PCR(ABI7700、アプライドバイオシステムズジャパン社製)による発現量解析の鋳型にした。測定値はβ-actin遺伝子の値で補正した。
間脳において、KKA/SLC-1(+/+)マウスではKK/SLC-1(+/+)マウスに比べ、内因性リガンドであるmelanin-concentrating hormone(MCH)遺伝子の発現増加(31.3%、P<0.05)が見られたが、SLC-1欠損によりKKマウスと同程度まで抑制された(図11A)。KK/SLC-1(+/+)マウスとKK/SLC-1(-/-)マウス間に差は見られなかった。KKマウスに比べてKKAyマウスではneuropeptide Y(NPY)遺伝子の発現減少、およびproopiomelanocortine(POMC)遺伝子の発現増加が認められたが、いずれのマウスの遺伝子発現にもSLC-1欠損の影響は見られなかった(図11A)。agouti-related peptide(AgRP)遺伝子、ghrelin遺伝子、corticotropin-releasing hormone(CRH)遺伝子の発現については4群間で差が認められなかった(データ未掲載)。
生殖器周囲白色脂肪組織において、KKA/SLC-1(-/-)マウスはKKA/SLC-1(+/+)マウスに比べ、脂肪細胞から分泌され、摂食調節やエネルギー消費に負に作用するレプチンの遺伝子発現の有意な減少、また、肥満、糖尿病、動脈硬化抑制に関与するアディポネクチン遺伝子発現の有意な増加を示した(図11B)。インスリン抵抗性に関与するtumor necrosis factor alpha(TNF-α)遺伝子の発現は41.1%の減少が認められたが、有意な差ではなかった(データ未掲載)。KKマウスにおいてもKKAマウスの場合と同様のSLC-1欠損の影響が見られたが(図11B)、さらに脂質代謝や糖代謝に関与するperoxisome proliferator-activated receptor-gamma(PPARγ)遺伝子発現量はSLC-1遺伝子欠損により124.2%(P<0.05)増加していた(データ未掲載)。
肝臓において、KKAマウスではKKマウスに比べ、脂質代謝に関与するsterol regulatory element binding protein-1c(SREBP-1c)遺伝子、acetyl-CoA carboxylase 1(ACC1)遺伝子、fatty acid synthase (FAS) 遺伝子の発現が増加傾向にあった。KKA/SLC-1(-/-)マウスではKKA/SLC-1(+/+)マウスに比べ、SREBP-1c遺伝子、ACC1遺伝子、FAS遺伝子、およびstearoyl CoA desaturase 1(SCD-1)遺伝子の発現が減少していた(図11C)。KK/SLC-1(-/-)マウスにおいてもKKA群と同様の傾向が見られた。
骨格筋において、KKA/SLC-1(-/-)マウスではKKA/SLC-1(+/+)マウスに比べ、uncoupling protein 3(UCP3)遺伝子、および糖代謝に関与するAktキナーゼ遺伝子の発現が増加し、ACC1遺伝子の発現が減少した(図11D)。
本発明のSLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物は、SLC-1の機能の解析などに有用である。本発明のSLC-1遺伝子発現不全である肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物は、肥満および/またはII型糖尿病の予防・治療薬の開発などに有用である。本発明によれば、SLC-1拮抗薬はアディポネクチン産生促進をもたらし得ることから、肥満を伴う糖尿病に対する医薬などとして有用であることが示唆される。
本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得ることは当業者にとって自明であろう。本発明は、本発明が本明細書に詳細に記載された以外の方法で実施され得ることを意図する。したがって、本発明は添付の「請求の範囲」の精神および範囲に包含されるすべての変更を含むものである。
本出願は、日本で出願された特願2006-176978(出願日:平成18年6月27日)を基礎としており、そこに開示される内容は本明細書にすべて包含されるものである。また、ここで述べられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。

Claims (11)

  1. SLC-1遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物であって、対応する野生型動物と比較して、
    (1)耐糖能試験において血中インスリンレベルが低い、
    (2)インスリン感受性が増大している、
    (3)高脂肪食下でも抗肥満である、
    (4)白色脂肪細胞が小型化している、および
    (5)脂肪分解が亢進している
    ことを特徴とする動物またはその生体の一部。
  2. 対応する野生型動物と比較して、
    (i)自発運動量および酸素消費量が亢進している、
    (ii)体脂肪が減少している、および
    (iii)血漿レプチン値が低下している
    ことをさらなる特徴とする、請求項1記載の動物またはその生体の一部。
  3. 非ヒト哺乳動物がマウスまたはラットである請求項1記載の動物またはその生体の一部。
  4. SLC-1遺伝子発現不全である肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物であって、該遺伝子発現が正常な対応する肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物と比較して、
    (1)アディポネクチン発現が上昇している、
    (2)高血糖の発症が遅れる、
    (3)血中糖化ヘモグロビン値が低い、および
    (4)エネルギー消費が亢進している
    ことを特徴とする動物またはその生体の一部。
  5. SLC-1遺伝子発現が正常な対応する肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物と比較して、
    (i)酸素消費量が増加している、および
    (ii)血中コルチコステロン値が低下している
    ことをさらなる特徴とする、請求項4記載の動物またはその生体の一部。
  6. 非ヒト哺乳動物がマウスまたはラットである請求項4記載の動物またはその生体の一部。
  7. 肥満および/またはII型糖尿病モデル非ヒト哺乳動物がKKAyマウスである、請求項6記載の動物またはその生体の一部。
  8. SLC-1拮抗薬を含有してなるアディポネクチン産生促進剤。
  9. アディポネクチンレベルの低下を伴うメタボリックシンドロームまたは動脈硬化性疾患の患者に投与することを特徴とする、請求項8記載の剤。
  10. SLC-1を拮抗阻害することを含む、アディポネクチン産生促進方法。
  11. アディポネクチン産生促進剤の製造のためのSLC-1拮抗薬の使用。
JP2008522592A 2006-06-27 2007-06-26 遺伝子改変動物およびその用途 Pending JPWO2008001778A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006176978 2006-06-27
JP2006176978 2006-06-27
PCT/JP2007/062815 WO2008001778A1 (fr) 2006-06-27 2007-06-26 Animal génétiquement modifié et son utilisation

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2008001778A1 true JPWO2008001778A1 (ja) 2009-11-26

Family

ID=38845542

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008522592A Pending JPWO2008001778A1 (ja) 2006-06-27 2007-06-26 遺伝子改変動物およびその用途

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20090186946A1 (ja)
EP (1) EP2034018A4 (ja)
JP (1) JPWO2008001778A1 (ja)
WO (1) WO2008001778A1 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB201410693D0 (en) 2014-06-16 2014-07-30 Univ Southampton Splicing modulation
KR102620328B1 (ko) * 2014-10-03 2024-01-02 콜드스프링하버러보러토리 핵 유전자 산출량의 표적화 증강
CN108603230A (zh) 2015-10-09 2018-09-28 南安普敦大学 基因表达的调节与蛋白质表达失调的筛选
EP3390636B1 (en) 2015-12-14 2021-05-19 Cold Spring Harbor Laboratory Antisense oligomers for treatment of dravet syndrome
US11096956B2 (en) 2015-12-14 2021-08-24 Stoke Therapeutics, Inc. Antisense oligomers and uses thereof
PT3673080T (pt) 2017-08-25 2023-12-06 Stoke Therapeutics Inc Oligómeros anti-sentido para o tratamento de estados patológicos e outras doenças
KR20230022409A (ko) 2020-05-11 2023-02-15 스톡 테라퓨틱스, 인크. 병태 및 질환의 치료를 위한 opa1 안티센스 올리고머

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006118320A1 (ja) * 2005-04-28 2006-11-09 Takeda Pharmaceutical Company Limited チエノピリミドン化合物

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ATE354098T1 (de) 1998-12-28 2007-03-15 Takeda Pharmaceutical Screening-verfahren
EP1218336A2 (en) 1999-09-20 2002-07-03 Takeda Chemical Industries, Ltd. Melanin concentrating hormone antagonist
US6930185B2 (en) 2000-04-28 2005-08-16 Takeda Chemical Industries, Ltd. Melanin-concentrating hormone antagonist
WO2001087834A1 (fr) 2000-05-16 2001-11-22 Takeda Chemical Industries, Ltd. Antagoniste de l'hormone de concentration de la melanine
CN1585751A (zh) 2001-10-25 2005-02-23 武田药品工业株式会社 喹啉化合物
EP1593667A4 (en) 2003-02-12 2009-03-04 Takeda Pharmaceutical AMINE DERIVATIVE
JP2006176978A (ja) 2004-12-21 2006-07-06 Takenaka Komuten Co Ltd 集合住宅

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006118320A1 (ja) * 2005-04-28 2006-11-09 Takeda Pharmaceutical Company Limited チエノピリミドン化合物

Also Published As

Publication number Publication date
EP2034018A1 (en) 2009-03-11
EP2034018A4 (en) 2010-02-10
WO2008001778A1 (fr) 2008-01-03
US20090186946A1 (en) 2009-07-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Cohen et al. Selective deletion of leptin receptor in neurons leads to obesity
Yun et al. Generation and phenotype of mice harboring a nonsense mutation in the V2 vasopressin receptor gene
JP6143015B2 (ja) 肝疾患の予防または治療剤
JPWO2008001778A1 (ja) 遺伝子改変動物およびその用途
EP1871163A2 (en) Transgenic models for different genes and their use for gene characterization
EP1988768A2 (en) Gene disruptions, compositions and methods relating thereto
US20190218540A1 (en) Method for establishing a non-human mammalian animal model suffering from obesity or related disease and use thereof
US6180849B1 (en) Trangenic mice with a disruption in the tiar gene
EP1980148B1 (en) Genetically modified animal and use thereof
JP7233039B2 (ja) ヒト非アルコール性脂肪性肝炎モデル
WO2005098008A1 (en) Lipid-diet inducible heart attack murine model
EP2992759B1 (en) Atopic dermatitis model animal and use thereof
JP2000509606A (ja) Lif過剰発現および/またはgh発現低下に伴う下垂体障害のトランスジェニック非ヒト動物モデルおよび該状態の治療薬の試験を目的とするその使用
JP5979629B2 (ja) 神経変性疾患モデル非ヒト哺乳動物
Pravtcheva et al. Igf2r improves the survival and transmission ratio of Igf2 transgenic mice
JP2013046597A (ja) 神経系疾患モデル動物及び細胞並びにそれらの用途
WO2004006662A1 (ja) 異種PPARα遺伝子導入疾患モデル動物およびその用途
JP2004041211A (ja) 異種PPARα遺伝子導入疾患モデル動物およびその用途
US20060174354A1 (en) Hcv gene transgenic animal
JP2005130748A (ja) Clca遺伝子導入動物
JP2015021853A (ja) 精神症状モデル動物を用いた医薬品のスクリーニング
JP2004121241A (ja) ヒトslt遺伝子導入動物
WO2004023870A1 (ja) ヒトslt遺伝子導入動物
JP2004049083A (ja) パピローマウイルスベクターを用いたRNAi表現型を有する非ヒト哺乳動物の作製方法
JP2004166596A (ja) Zaq遺伝子改変動物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100203

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111227

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20120424