JP2004166596A - Zaq遺伝子改変動物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ZAQ欠損に起因する各種疾病の予防・治療薬のスクリーニングに有用なモデル動物の提供。
【解決手段】ZAQ遺伝子がレポーター遺伝子で不活化されたZAQ遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物、該非ヒト哺乳動物を用いることによるZAQ欠損に起因する各種疾病の予防・治療薬のスクリーニング方法等。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ZAQ遺伝子が不活性化された非ヒト哺乳動物の胚幹細胞、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物、それらを用いるスクリーニング方法およびそのスクリーニングによって得られうる予防・治療薬などに関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子工学技術の進歩並びにその基礎となる分子生物学の知識の急激な蓄積により、遺伝子を人為的に操作し、さらに動物個体へ導入することが可能となった(非特許文献1)。例えば、元来その生物に備わっていない外来性の遺伝形質を人為的に付加したり、あるいは生物が持っている内在性の遺伝形質の発現を抑制する方法が開発され、これらの方法を利用して様々な遺伝形質が導入された動物が作出され、トランスジェニック動物として報告されている。
このようなトランスジェニック動物は、これまで株化細胞や初代培養細胞などの体外培養細胞を用いていたために得られる知見が限られていた遺伝子の機能解析について、個体レベルでの研究を可能とするので、遺伝子工学等の技術によって単離され、クローン化された様々な遺伝子の機能を明らかにする上で重要である。特に、クローン化された遺伝子の生物体内での生理学的機能の解析や遺伝子疾患のモデル系としてこのトランスジェニック動物を利用した実験や研究が盛んになってきている。
【0003】
胚幹細胞(Embryonic stem cell:以下、ES細胞と略記する)は、受精後の初期胚である胚盤胞の内部に存在する内部細胞塊から樹立され、未分化状態を保ったまま増殖、培養可能な細胞株である。この細胞は生体のあらゆる種類の細胞に分化することができる多分化能(全能性)を有しており、正常初期胚に注入すると胚体の形成に参加してキメラ動物を形成することができる。
この性質を利用して、様々な遺伝子変異動物の作出が試みられてきた。その歴史は1981年のEvans及びKaufmanによるES細胞の樹立(非特許文献2)に始まり、BradleyらによるESキメラマウスの作出(非特許文献3)により研究が本格化された。さらにThomas及びCapecchiによるES細胞の相同組換え(非特許文献4)、Kollerらのグループなど3組の研究グループによるES細胞形質のGerm line Transmissionの成功(非特許文献5)、遺伝子欠損マウスの作出などと研究が急速に進展した。
現在までに樹立が報告されているES細胞としては、Evans及びKaufmanのEK細胞(前記非特許文献2)の他に、DoetschmanのES−D3細胞(非特許文献6)、RobertsonのCCE細胞(非特許文献7)、Ledermann及びBurkiのBL/6III細胞(非特許文献8)等があるが、これらの大部分が129系のマウスより樹立されたものである。
【0004】
このようなES細胞を用いて作出された遺伝子発現不全動物としては、(1)Hooper等(非特許文献9)及びKnehn等(非特許文献10)の自然突然変異ES細胞を用いたHPRT遺伝子欠損マウス、(2)Donehower等(非特許文献11)の癌抑制遺伝子の一つであるp53を欠失したp53欠失マウス、(3)Zijlstra等(非特許文献12)のβ2ミクログロブリン遺伝子変異マウス、(4)免疫疾患モデルマウスの一つであるSinkai等(非特許文献13)のRAG−2(V(D)J recombination activation gene)変異マウス、(5)Glimcher等(非特許文献14)及びCosgrove等(非特許文献15)のMHC class II変異マウス、(6)発生・発育関連疾患モデルマウスの一つとしてMacMahon等(非特許文献16)のint−1遺伝子欠損マウス及び(7)Soriano等(非特許文献17)の大理石病様症状を呈するsrc欠損マウスがそれぞれ報告されている。
【0005】
非特許文献18には、マウス由来のGPR73(ZAQ1)が記載されている。
特許文献1には、マウス由来のmI5E(ZAQ2)が記載されている。
特許文献2には、ラット由来のZAQ1およびZAQ2が記載されている。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第98/46620号パンフレット
【特許文献2】
国際公開第02/16607号パンフレット
【非特許文献1】
ゴードン・J.W.(Gordon, J.W.)ら,プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.),米国,1980年,第77巻,p.7380−7384
【非特許文献2】
エバンス・M.J.(Evans M.J.)及びカウフマン・M.H.(Kaufman M.H.),ネイチャー(Nature),英国,1981年,第292巻,p.154−156
【非特許文献3】
ネイチャー(Nature),英国,1984年,第309巻,p.255
【非特許文献4】
セル(Cell),米国,1987年,第51巻,p.503
【非特許文献5】
プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.),米国,1989年,第86巻,p.8927
【非特許文献6】
ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー(J. Embryol. Exp. Molphol.),英国,1981年,第87巻,p.27
【非特許文献7】
ネイチャー(Nature),英国,1986年,第323巻,p.445
【非特許文献8】
エクスペリメンタル・セル・リサーチ(Exp. Cell Res.),米国,1991年,第197巻,p.254頁
【非特許文献9】
ネイチャー(Nature),英国,1987年,第326巻,p.292
【非特許文献10】
ネイチャー(Nature),英国,1987年,第326巻,p.295
【非特許文献11】
ネイチャー(Nature),英国,1992年,第356巻,p.215
【非特許文献12】
ネイチャー(Nature),英国,1990年,第344巻,p.742
【非特許文献13】
セル(Cell),米国,1992年,第68巻,p.855
【非特許文献14】
サイエンス(Science),米国,1991年,第253巻,p.1417
【非特許文献15】
セル(Cell),米国,1991年,第66巻,p.1051
【非特許文献16】
セル(Cell),米国,1990年,第62巻,p.1073
【非特許文献17】
セル(Cell),米国,1991年,第64巻,p.693
【非特許文献18】
バイオキミカ・バイオフィジカ・アクタ(Biochim. Biophys. Acta),蘭国,2000年,第1491巻,p.369−375
【0007】
しかし、ZAQの生体内における機能および作用機序については、さらに解明すべき点が数多く残されている。ZAQの生体における作用を解明していくうえで、ZAQを全く産生しない、ないしは少量しか産生しないようなZAQ遺伝子発現不全動物のモデルは必須のものとして渇望されているが、現時点において、このような動物モデルは作出されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、ZAQ遺伝子が不活性化された非ヒト動物ES細胞の作製に成功すれば、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物を作出することができる。そして、得られるZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物は、ZAQにより誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、ZAQの生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり、これらの疾病の原因究明および治療法の検討が可能となる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物を作出することに成功し、さらに研究を行なった結果、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、
[1] ZAQ遺伝子が不活性化された哺乳動物胚幹細胞、
[2] 薬剤耐性である上記[1]記載の胚幹細胞、
[3] 薬剤がネオマイシンである上記[2]記載の胚幹細胞、
[4] レポーター遺伝子の挿入によりZAQ遺伝子が不活性化された上記[1]記載の胚幹細胞、
[5] レポーター遺伝子がlacZ遺伝子である上記[4]記載の胚幹細胞、
[6] 哺乳動物がマウスである上記[1]記載の胚幹細胞、
[7] ZAQ遺伝子が配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表わされる塩基配列を含有する遺伝子である上記[1]記載の胚幹細胞、
[8] ZAQ遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物、
[9] レポーター遺伝子の挿入によりZAQ遺伝子が不活性化された上記[8]記載の動物、
[10] レポーター遺伝子がZAQ遺伝子に対するプロモーターの制御下にある上記[9]記載の動物、
[11] 非ヒト哺乳動物がマウスである上記[8]記載の動物、
[12] ZAQ遺伝子が配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表わされる塩基配列を含有する遺伝子である上記[8]記載の動物、
[13] 対応するZAQ遺伝子発現動物と比較して、
▲1▼雌動物において、過***処理によって安定的に受精卵が取得できない、および/または
▲2▼受精卵を培養した場合、初期胚の発生率が少ない、
という表現型を有する上記[8]〜[12]のいずれかに記載の動物、
[14] 上記[8]記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞を用いることを特徴とする消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法、
[15] 上記[8]記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞に試験化合物を投与することを特徴とする上記[14]記載のスクリーニング方法、
[16] 上記[14]または[15]記載のスクリーニング方法により得られる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療物質、
[17] 上記[16]記載の予防・治療物質を含有してなる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療剤、
[18] 上記[8]記載の動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物、
[19] 上記[8]記載の動物に対する薬剤誘発またはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、
[20] 上記[18]記載の動物に対する薬剤誘発またはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、
[21] 上記[18]〜[20]のいずれかに記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞を用いることを特徴とする消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法、
[22] 上記[18]〜[20]のいずれかに記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞に試験化合物を投与することを特徴とする消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法、
[23] 上記[21]または[22]記載のスクリーニング方法により得られる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療物質、
[24] 上記[23]記載の予防・治療物質を含有してなる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療剤、
[25] 上記[10]記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とするZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
[26] 上記[25]記載のスクリーニング方法で得られうるZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩、
[27] 上記[25]記載のスクリーニング方法で得られうるZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩を含有してなる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療剤、および
[28] 上記[25]記載のスクリーニング方法で得られうるZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩を含有してなる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療剤等を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
〔ZAQ遺伝子発現不活性哺乳動物ES細胞〕
ZAQとしては、ZAQ1、ZAQ2などが挙げられる。
ZAQ1遺伝子としては、例えば、
(1)配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するマウスZAQ1をコードする、配列番号:2で表わされる塩基配列を含有するマウスZAQ1遺伝子(ゲノムDNA)、
(2)配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を含有するラットZAQ1をコードする、配列番号:4で表わされる塩基配列を含有するラットZAQ1遺伝子(cDNA)(前記特許文献2)、
(3)配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するマウスGPR73(ZAQ1)をコードする、配列番号:5で表わされる塩基配列を含有するマウスGPR73(ZAQ1)遺伝子(cDNA)(前記非特許文献18)などが用いられる。
ZAQ2遺伝子としては、例えば、
(1)配列番号:6で表わされるアミノ酸配列を含有するラットZAQ2をコードする、配列番号:7で表わされる塩基配列を含有するラットZAQ2遺伝子(cDNA)(前記特許文献2)、
(2)配列番号:8で表わされるアミノ酸配列を含有するマウスmI5E(ZAQ2)をコードする、配列番号:9で表わされる塩基配列を含有するマウスmI5E(ZAQ2)遺伝子(cDNA)(前記特許文献1)などが用いられる。
【0011】
ZAQ遺伝子が不活性化された哺乳動物ES細胞とは、哺乳動物ES細胞が有するZAQ遺伝子に人為的に変異を加えることにより、遺伝子の発現能を抑制するか、もしくは該遺伝子がコードしているZAQの活性を実質的に喪失させることにより、遺伝子が実質的にZAQの発現能を有さない不活性化された(以下、本発明のノックアウト遺伝子と称することがある)哺乳動物のES細胞をいう。
本明細書中、ES細胞の材料とする哺乳動物としては、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。
また、本明細書中、非ヒト動物としては、ZAQ遺伝子を有するヒト以外の動物ならば、いかなる動物でもよいが、非ヒト哺乳動物が好ましい。非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。非ヒト哺乳動物のなかでも、病態動物モデル系の作製の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F系統,BDF系統,B6D2F系統,BALB/c系統,ICR系統など(なかでも好ましくは、純系として、C57BL/6系統など、交雑系として、BDF系統またはICR系統など))またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが特に好ましい。
【0012】
ZAQ遺伝子に人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該遺伝子配列の一部又は全部の削除、もしくは他遺伝子の挿入または置換があげられる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらすか、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウト遺伝子を作製することができる。
ZAQ遺伝子が不活性化された哺乳動物(好ましくは、非ヒト哺乳動物)ES細胞(以下、ZAQ遺伝子不活性化ES細胞またはノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、薬剤耐性遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子またはゼオシン耐性遺伝子など、好ましくは、ネオマイシン耐性遺伝子など)、あるいはレポーター遺伝子(例えば、lacZ(大腸菌β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)、GUS(β−グルクロニダーゼ遺伝子)、ルシフェラーゼ遺伝子、エクオリン遺伝子、タウマリン遺伝子、GFP(Green Fluorescent Protein)遺伝子など、好ましくは、lacZなど)等を挿入することによりZAQ遺伝子のエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なmRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNAベクター(以下、ターゲティングベクターと略記する)を作製する。レポーター遺伝子を挿入してエキソンの機能を破壊する場合、該レポーター遺伝子は、ZAQプロモーターの制御下で発現するように挿入することが好ましい。
上記「薬剤耐性遺伝子」とは、抗生物質などの薬剤耐性に関与する遺伝子を示し、導入される遺伝子が細胞において発現したか否かを選抜するマーカーとして利用される。
また、上記「レポーター遺伝子」とは、遺伝子発現の指標になる遺伝子群のことを示し、通常、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が利用されることが多く、▲1▼遺伝的背景がないもの、▲2▼遺伝子発現を定量的に行える高感度の方法があるもの、▲3▼形質転換細胞への影響が少ないもの、▲4▼発現部位の局在性が示されるものなどが好ましく用いられる(植物細胞工学、第2巻、第721頁、1990)。また、上記の「薬剤耐性遺伝子」なども同じ目的で使用されるが、「レポーター遺伝子」は、単に導入される遺伝子が細胞において発現したかどうかだけではなく、どの組織でいつ発現したかを調べることができ、しかも定量的に発現量を正確に調べることができるものである。
さらに、ターゲティングベクターを、例えば、相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞についてZAQ遺伝子上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲティングベクター上のDNA配列とターゲティングベクター作製に使用したZAQ遺伝子以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することができる。
上記のターゲティングベクターとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13など)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTB5,pC194など)、酵母由来のプラスミド(例、pSH19,pSH15など)、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウイルスなどのレトロウイルス、ワクシニアウイルスまたはアデノウイルスベクター、バキュロウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、ヘルペスウイルス群からのウイルス、またはエプスタイン・バー・ウイルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。
【0013】
また、相同組換え法等によりZAQ遺伝子を不活性化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知のEvansとKaufmanの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で、例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDFマウス(C57BL/6とDBA/2とのF)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDFマウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを遺伝的背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスと戻し交配することでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚(受精後2.5日目頃の8細胞期胚が好ましい)を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
【0014】
また第二次セレクションは、G−バンディング法による染色体数の確認等により行なうことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際、物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えばマウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られたES細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)、約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合は、その培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋など、種々の細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られるZAQ遺伝子発現不全細胞は、in vitroにおけるZAQの細胞生物学的検討において有用である。
また、ES細胞を保存する場合には、適当な凍結用培地(例えば、10%DMSO、10%牛胎児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)などを用いて、約−80℃以下で凍結保存する。
【0015】
本発明のZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物(以下、遺伝子発現不全非ヒト動物と称す場合がある)とは、例えば、前記のZAQ遺伝子が不活性化された哺乳動物ES細胞由来の細胞を用いて遺伝子工学的に作出されたものであり、例えば、生殖細胞および体細胞に胚形成初期に不活性化ZAQ遺伝子配列を導入された非ヒト動物である。
該非ヒト動物としては、前記と同様のものが用いられる。
ZAQ遺伝子をノックアウトさせるには、前記のターゲティングベクターを非ヒト動物ES細胞または非ヒト動物卵細胞に公知の方法(例えば、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、凝集法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法など)によって導入し(好ましい導入法としては、ES細胞に導入する場合にはエレクトロポレーション法、卵細胞に導入する場合にはマイクロインジェクション法などがあげられる)、ターゲティングベクターの不活性化されたZAQ遺伝子配列を相同組換えにより、非ヒト動物ES細胞または非ヒト動物卵細胞の染色体上のZAQ遺伝子と入れ換えることにより行うことができる。
ZAQ遺伝子がノックアウトされた細胞は、ZAQ遺伝子上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲティングベクター上のDNA配列と、ターゲティングベクターに使用したZAQ遺伝子近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。
非ヒト動物ES細胞を用いた場合は、相同組換えにより、ZAQ遺伝子が不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を胚形成の初期の適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト動物胚または胚盤胞に注入し(注入法)、またはZAQ遺伝子が不活性化されたES細胞塊を2個の8細胞期胚ではさみ込む(集合キメラ法)ことにより作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト動物の子宮に移植する。
作出された動物は正常なZAQ遺伝子座をもつ細胞と人為的に変異したZAQ遺伝子座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異したZAQ遺伝子座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えたZAQ遺伝子座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、ZAQヘテロ発現不全個体であり、ZAQヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔からZAQホモ発現不全個体を得ることができる。
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法で遺伝子溶液を注入することによりターゲティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト動物を比較することにより、相同組換えによりZAQ遺伝子座に変異のあるものを選択することにより得られる。
ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物は、該動物のmRNA量を公知の方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
【0016】
このようにしてZAQ遺伝子がノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該遺伝子がノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従って行うことができる。即ち、該不活化遺伝子配列を保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化遺伝子配列を相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得することができる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化遺伝子配列を有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代することができる。このようにして得られた該不活化遺伝子配列を有する動物の子孫も本発明のZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物に含まれる。
本発明のZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物は、以下のような表現型を示す。
(1)雌動物において、過***処理によって安定的に受精卵が取得できない。
(2)受精卵を培養した場合、初期胚の発生率が少ない。
このようにZAQ遺伝子が不活性化された哺乳動物ES細胞は、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物を作出する上で、非常に有用である。また、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物、該動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じるより良い病態モデル動物、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物およびZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物を用いた骨髄移植動物、もしくはそれらの組織またはそれらに由来する細胞は、ZAQの欠損に起因する疾病、例えば、ZAQにより誘導され得る種々の生物活性の欠失に基づく、ZAQの生物活性の不活性化に起因する疾病(例えば、消化器疾患(例えば、腸炎、下痢、便秘、吸収不良性症候群など)、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患)のより良いモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。ここで、他の病態モデル動物としては、例えば、血液細胞側のみの遺伝子発現の欠損あるいは上昇に限局させた骨髄移植を用いたモデルマウスも挙げられる[Linton, M. F., et al., Science 267: 1034−1037 (1995) ]。骨髄移植マウスは遺伝子機能の変化が限局されることで、より適した病態モデル動物となる可能性を秘めている。例えば、上記されたZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物から得られた病態モデル動物をドナー動物として、その骨髄を採取し、あらかじめ放射線照射で骨髄を破壊した他のレシピエント動物に移植したマウス、あるいは、他の病態モデル動物をドナー動物として、その骨髄を採取し、あらかじめ放射線照射で骨髄を破壊したZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物から得られた病態モデル動物をレシピエント動物として移植した骨髄移植マウスなども含まれる。
このように、本発明のZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物、該動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物から得られた病態モデル動物と他の病態モデル動物を用いて骨髄移植して得られた病態モデル動物、もしくはそれらの組織またはそれらに由来する細胞を、該疾病の予防・治療薬のスクリーニングに用いることができる。ここで、上記組織やそれに由来する細胞の例としては、肝臓や腎臓などのホモジネートを用いて特定の活性を測定する、あるいは、腹腔マクロファージを用いて特定産物の活性や産生量を測定することでスクリーニングに用いることができる。
【0017】
[本発明のスクリーニング方法A]
本発明のスクリーニング方法において用いられるZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物、該動物の薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物から得られた病態モデル動物と他の病態モデル動物を用いて骨髄移植して得られた病態モデル動物、もしくはそれらの組織またはそれらに由来する細胞としては、前記と同様のものが挙げられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物、該動物の薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物に対する薬剤誘発あるいはストレス負荷によって生じる病態モデル動物およびZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物から得られた病態モデル動物と他の病態モデル動物を用いて骨髄移植して得られた病態モデル動物(以下、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物等と称する場合がある)、もしくはそれらの組織またはそれらに由来する細胞を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、細胞、疾病の症状等の変化を指標として試験化合物の予防・治療効果を試験することができる。
試験動物(ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物等)を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
例えば、腸炎の予防・治療薬をスクリーニングする場合、本発明のZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物等に試験化合物を投与し、該動物の腸管収縮などを経時的に測定することによりスクリーニングすることができる。
例えば、該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該試験動物の腸管収縮が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上減少した場合、該試験化合物をZAQの生物活性の不活性化に起因する疾病(例えば、例えば、消化器疾患(例えば腸炎、下痢、便秘、吸収不良性症候群など)、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患)に対して治療・予防効果を有する物質として選択することができる。
【0018】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる予防・治療薬は、上記した試験化合物から選ばれた化合物を含有するものであり、ZAQ欠損によって引き起こされる疾患の予防・治療効果を有するので、ZAQの欠損によって引き起こされる疾病に対する安全で低毒性な治療・予防薬などの医薬として有用である。また、該化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などの薬学的に許容し得る塩などがあげられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、並びにアルミニウム塩、アンモニウム塩などがあげられる。
有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩あげられる。
無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などとの塩があげられる。
有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸などとの塩があげられる。
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルチニンなどとの塩があげられ、酸性アミノ酸との好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩があげられる。
【0019】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を上述の治療・予防薬として使用する場合、常套手段に従って実施することができ、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物またはその塩を薬学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントゴム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0020】
注射用の水溶液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)の腸炎患者においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常成人(60kgとして)の腸炎患者においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0021】
[本発明のスクリーニング方法B]
本発明は、本発明のZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明の遺伝子に対するプロモーターの活性を促進または阻害する物質のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物としては、前記した本発明のZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物の中でも、ZAQ遺伝子がレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子がZAQ遺伝子に対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
ZAQ遺伝子をレポーター遺伝子で置換された本発明のZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物では、レポーター遺伝子がZAQ遺伝子に対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、ZAQ遺伝子領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、ZAQの発現する組織で、ZAQの代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便にZAQの動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、ZAQ遺伝子欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
例えば、該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、レポータータンパク質の発現が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上増加した場合、該試験化合物をZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を促進する物質として選択でき、試験動物に試験化合物を投与した場合、レポータータンパク質の発現が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上減少した場合、該試験化合物をZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を阻害する物質として選択できる。
上記スクリーニング方法を用いて得られる物質は、上記した試験化合物から選ばれた物質であり、ZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を促進または阻害する物質である。
該スクリーニング方法で得られた物質は塩を形成していてもよく、該物質の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0022】
ZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を促進または阻害する物質は、ZAQの発現を調節し、ZAQの機能を調節することができるので、例えば、消化器疾患(腸炎、下痢、便秘、吸収不良性症候群など)、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患のなど疾患の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。
さらに、上記スクリーニングで得られた物質から誘導される物質も同様に用いることができる。
【0023】
該スクリーニング方法で得られた物質を含有する医薬は、前記したスクリーニング方法Aで得られた化合物を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該物質の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、腸炎の治療目的でZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を阻害する物質を経口投与する場合、一般的に成人患者(体重60kgとして)においては、一日につき該物質を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該物質の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、腸炎の治療目的でZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を促進する物質を注射剤の形で通常成人患者(60kgとして)に投与する場合、一日につき該物質を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0024】
このように、本発明のZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物は、ZAQ遺伝子に対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、ZAQ遺伝子発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、ZAQ遺伝子のプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々のタンパクをコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそのペプチドを合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、ZAQそのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
【0025】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commision on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
【0026】
本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
マウス由来GPR73(ZAQ1)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
マウス由来GPR73(ZAQ1)をコードするゲノムDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
ラット由来ZAQ1のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
ラット由来ZAQ1をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
マウス由来GPR73(ZAQ1)をコードするcDNAの塩基配列を示す。〔配列番号:6〕
ラット由来ZAQ2のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:7〕
ラット由来ZAQ2をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕
マウス由来mI5E(ZAQ2)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:9〕
マウス由来mI5E(ZAQ2)をコードするcDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
実施例1で使用したプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
実施例1で使用したプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕
実施例3で使用したプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
実施例3で使用したプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕
実施例3で使用したプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
実施例3で使用したプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
実施例3で使用したプライマーの塩基配列を示す。
後述の実施例1で得られた形質転換体 Escherichia coli JM109/pKS−ZBは、2002年10月17日から日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号 FERM BP−8215として寄託されている。
後述の実施例2で得られた形質転換体 Escherichia coli JM109/pZAQTgVPは、2002年10月17日から日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号 FERM BP−8216として寄託されている。
【0027】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0028】
実施例1 マウスZAQ1ゲノムDNAのクローニング
マウスGPR73のexon 1 領域よりプライマー
(32−54 ATACCACAGACACCTTCACCGAC (配列番号:10)および
458−436 TTAGTGGAGACGTAGAGGGAGAC (配列番号:11))を作製し、マウスゲノムよりPCRを用いて 430 bp のDNA 断片を得、塩基配列を確認後、DIGプローブを作製した。マウス129SvEv ゲノムライブラリー(ストラタジ−ン社)に対してプラークハイブリダイゼーションを行った結果、3つの陽性クローンが得られた。サザンハイブリダイゼーションの結果から11kbp のBam HI断片をサブクローニングし、制限酵素サイトおよび塩基配列を決定した結果、exon 1とexon 2からなる配列番号:2で表される塩基配列からなるゲノムDNAが得られた(図1参照)。このゲノムDNAは配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるマウスZAQ1をコードしていた。exon 1とexon 2を含むプラスミドpKS−ZBを大腸菌JM109に形質転換を行ってJM109/pKS−ZBを得た。
【0029】
実施例2 ターゲティングベクターの構築およびES相同組み換え体の作製
ゲノムの制限酵素地図よりプロモーター領域とexon 1 を含む2kbp Hin dIII断片を欠失させたベクターを考案し、exon 1 の上流 1.1 kb 、 exon 1 の下流 6.3 kb(イントロン、exon 2の一部)の間にネオマイシン耐性遺伝子を挿入した。またネガティブマーカーとしてジフテリア毒素遺伝子を用いた(図1参照)。ZAQターゲティングベクター25μgをエレクトロポレーション(ジーンパルサー_エレクトロポレーションシステム、バイオラッド社製)230 V, 500 μFの条件でマウス129SvEv 由来ES 細胞(AB2.2, 10 cells) に導入した。エレクトロポレーションは2回行い計6枚の10 cm シャーレでネオマイシン選択培養を行った結果、6日後に約1200 のネオマイシン耐性コロニーが現れた。ネオマイシン耐性コロニーを約400個ピックアップし、96ウェルプレートで培養後、一部を DNA 抽出用培養(24ウェルプレート,フィーダー細胞なし)、残りを凍結保存した。ネオマイシン耐性株340種についてサザン解析を行った。サザン解析はターゲティングベクターに用いた3’外側のBam HI − Xho I, 370 bp断片(exon 2の一部;図1参照)をプローブとして、Bam HI切断したゲノムにハイブリダイズさせた(野生型では10.6 kb に相同組換え体では10.6 kb と6.5 kb にバンドが見られる;図1参照)。その結果340 株中10株に相同組換え体と考えられる6.5 kbのバンドが見られた。1次スクリーニング(3’側プローブによるサザン解析)で選抜した10種のES相同組換え体を凍結保存から起こして培養を行った。10株のうち5株の生育が良好であり、それら5株(No.122, 163, 274, 287, 418)よりDNA を抽出して、サザン解析による確認を行った。その結果1次スクリーニングと同様に5株すべてに10.6, 6.5 kb 2本のバンドが認められた(図2、左パネル)。さらに5’側のプローブ(XhoI 断片600 bp;図1参照)を用いてサザン解析(ゲノムBam HI切断)を行ったところ、5株すべてに相同組換え体を示す2本のバンド(10.6, 4.1 kb)が認められた(図2、右パネル)。
ES相同組換え体3種(No.122, 287, 418)について核型分析を行った。それぞれ50個の核型分析を行ったところ、No.122, 287, 418 の正常率(2n = 40)はそれぞれ 60%, 74%, 66% であり、生殖系列移行に関して影響はないと考えられた。
ES相同組換え体No.122に含まれるプラスミドpZAQTgVPを大腸菌JM109に形質転換して、大腸菌JM109/pZAQTgVPを得た。
【0030】
実施例3 ノックアウトマウスの作製
相同組み換え体No.122 のC57BL/6J系統マウス胚盤胞へのマイクロインジェクションを実施した。第1回目のインジェクションは胚盤胞26個を用いて行い、インジェクションされた胚盤胞は別途精管結紮マウスと交配することによって得られた偽妊娠マウス卵管に移植することによって妊娠させた。産仔6個体得られ、5個体のキメラマウスが得られた。そのうち4個体はほぼ100%のキメラ率を有するマウスであった。2回目のインジェクション実験において14個の胚盤胞にそれぞれインジェクションを行った。その結果、産仔6個体得られた。1回目と同様5個体のキメラマウスが得られた。4個体はほぼ100%のキメラ率を有するマウスであった。
No.122については合計10個体のキメラマウスが得られた。キメラ率がほぼ100%を示した雄キメラマウスはC57BL/6系統雌マウスと交配し、産仔での生殖系列移行の確認およびヘテロマウスの取得を行った。
キメラとC57BL/6 系統マウスとの交配によって68匹のES細胞由来マウスが得られた。マウス尾よりゲノム DNA を精製し、まずPCR による遺伝子型判定の条件を検討した。検討の結果プライマーはターゲティングした領域の3’側 MZ1(GGAGCTCTGCTCCTCAGTGG(配列番号:12))を共通とし、また5’側は野生型検出用として、欠損させた領域内配列MZ3 (CTAGATGTTTCAGTTTGCAT(配列番号:13))、変異型検出用としてネオマイシン耐性遺伝子内配列NE−1 (CCGCTTCCATTGCTCAGCGG(配列番号:14))とし、ポリメラーゼはKOD−plus− (東洋紡株式会社製)を用いた。野生型は400 bp断片のみを検出し、ヘテロ欠損個体であれば、400 bp および 600 bp断片を検出できるように設計されたPCR による遺伝子判定の結果、ヘテロ欠損マウスを得ることができた。
次に、サザンハイブリダイゼーションによって遺伝子欠損の確認を行った。ゲノムは制限酵素 Bam HIを用いて37℃、一晩処理を行った。プローブはZAQ exon 1の5’上流域のプライマー、Z22:5’−CATTGTGTTGCTTCTGCCCTTTG−3’(配列番号:15)およびZ24: 5’−AGTGTCAGGATGCAGAATGTGTG−3’(配列番号:16)で増幅できる約0.5Kbp 断片とし、PCR DIG probe synthesis kit(Roche社)を用いてラベルした。ハイブリダイゼーションは42℃、一晩行った。洗浄は65℃の0.1xSSCに0.1%SDSを添加した溶液中にて15分、2回行った。
その結果、野生型由来の10.6Kbpの断片と同程度の濃さである相同組み換え由来の4.1Kbpの断片が確認できた。これらの個体はヘテロ欠損マウスであることがわかった。今回判定した個体の一部はホモ欠損個体の取得用の交配親に用いるため、ヘテロ欠損個体と判定できた雄ヘテロ欠損個体および雌ヘテロ欠損個体を交配した結果、ホモ欠損マウスが取得された。
【0031】
実施例4 ホモ欠損マウスの解析
次にホモ欠損マウスの離乳後、6〜18週齢の体重変化を調べた。その結果、ホモ欠損マウスにおいては雌雄ともにそれぞれ野生型マウスに比べて体重がやや低くなる傾向がみられた。雌ホモ欠損マウスの体重は15週齢以降で野生型マウスに比べて有意に低くなった。しかし、雄ホモ欠損マウスの体重については有意な差異はみられなかった。同時にホモ欠損マウスにおける16および17週齢時の摂食量を測定した。その結果、16週齢の摂食量においては野生型マウスとホモ欠損マウス間において差異はみられなかった。しかし、17週齢ホモ欠損マウスの摂食量は雌雄ともに野生型マウスに比べて有意に低くなった。
【0032】
実施例5 ホモ欠損マウスの卵巣機能の解析
11週齢雌野生型マウスおよび雌ホモ欠損マウスそれぞれに13時にPMSG(妊馬血清性性腺刺激ホルモン、帝国臓器社製)を5IU腹腔投与した。3日目11時に上記マウスにhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)を5IU腹腔投与した。投与後、雄C57BL/6J系統マウスと1対1でケージに同居させた。4日日、9時各雌マウスの膣腺を調べ、交配を確認した。交配が確認された雌マウスは頚椎脱臼による屠殺後、卵管を切り出し、常法に従って受精卵を採取した。採取した受精卵は洗浄後、受精卵用培地(Brinster’s BMOC−3 培地、GIBCO社製)に移し、37℃、COインキュベーター内で培養した。それぞれのマウスから得られた受精卵数を算定した。その結果、雌野生型マウス1個体あたりの***数は多くが20〜30個で、比較的安定していた。それに対して雌ホモ欠損マウスの1個体あたりの***数は10個以下のものから60個以上のものまで広範囲にわたった。
それぞれ得られた受精卵を常法により1日培養したところ雌野生型マウスから得られた受精卵の約76%が2細胞期胚あるいは4細胞期胚まで発生した。一方、2細胞期胚あるいは4細胞期胚まで発生した雌ホモ欠損マウスの受精卵は53%であった。培養4日目には上記の雌野生型マウス由来胚の約36%が桑実胚あるいは胚盤胞まで発生したが、雌ホモ欠損マウス由来胚から桑実胚あるいは胚盤胞まで発生したのは約15%であった。
【0033】
【発明の効果】
本発明のZAQ遺伝子が不活性化された非ヒト動物ES細胞は、ZAQ遺伝子発現不全非ヒト動物を作出する上で、非常に有用である。
本発明のZAQ発現不全非ヒト動物は、ZAQにより誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、ZAQの生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、ZAQ欠損に起因する各種疾病の予防・治療薬にスクリーニングや、ZAQ関連疾患の原因究明および治療法の検討に有用である。
本発明のZAQ遺伝子導入非ヒト動物は、高ZAQ症、ZAQ機能不全症などのZAQ関連疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行うことができる。また、上記ZAQ関連疾患に対する治療薬のスクリーニングに使用することができる。
本発明のスクリーニング方法は、ZAQ欠損に起因する各種疾病の予防・治療薬を効率良くスクリーニングすることができる。
【0034】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】野生型アレル(上図)、ZAQターゲティングベクター(中図)および相同組換え体アレル(下図)の構造を示す概略図である。
黒のボックスはZAQのコーディングエクソンを示す。白のボックスは外来遺伝子の発現カセットを示し、ボックス内の矢印は転写方向を示す。Neoはネオマイシン耐性遺伝子、DTAはジフテリア外毒素遺伝子をそれぞれ示す。
【図2】選抜されたES細胞株がZAQ遺伝子ヘテロ欠損相同組換え体であることを示すサザン解析結果を示す写真である。
ES細胞5株(No.122, 163, 274, 287, 418)および野生株(Wild)よりそれぞれゲノムDNA を抽出してBam HIで切断し、3’側プローブ(図1参照;左パネル)、および5’側プローブ(図1参照;右パネル)を用いてサザン解析を行った。前者では5株すべてに10.6および6.5 kb 2本のバンドが認められ、後者では5株すべてに10.6および 4.1 kbの2本のバンドが認められたので、No.122, 163, 274, 287および418の5個のES細胞株はZAQ遺伝子ヘテロ欠損相同組換え体であることが明らかになった。

Claims (28)

  1. ZAQ遺伝子が不活性化された哺乳動物胚幹細胞。
  2. 薬剤耐性である請求項1記載の胚幹細胞。
  3. 薬剤がネオマイシンである請求項2記載の胚幹細胞。
  4. レポーター遺伝子の挿入によりZAQ遺伝子が不活性化された請求項1記載の胚幹細胞。
  5. レポーター遺伝子がlacZ遺伝子である請求項4記載の胚幹細胞。
  6. 哺乳動物がマウスである請求項1記載の胚幹細胞。
  7. ZAQ遺伝子が配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表わされる塩基配列を含有する遺伝子である請求項1記載の胚幹細胞。
  8. ZAQ遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物。
  9. レポーター遺伝子の挿入によりZAQ遺伝子が不活性化された請求項8記載の動物。
  10. レポーター遺伝子がZAQ遺伝子に対するプロモーターの制御下にある請求項9記載の動物。
  11. 非ヒト哺乳動物がマウスである請求項8記載の動物。
  12. ZAQ遺伝子が配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:7または配列番号:9で表わされる塩基配列を含有する遺伝子である請求項8記載の動物。
  13. 対応するZAQ遺伝子発現動物と比較して、
    ▲1▼雌動物において、過***処理によって安定的に受精卵が取得できない、および/または
    ▲2▼受精卵を培養した場合、初期胚の発生率が少ない、
    という表現型を有する請求項8〜12のいずれかに記載の動物。
  14. 請求項8記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞を用いることを特徴とする消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法。
  15. 請求項8記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞に試験化合物を投与することを特徴とする請求項14記載のスクリーニング方法。
  16. 請求項14または15記載のスクリーニング方法により得られる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療物質。
  17. 請求項16記載の予防・治療物質を含有してなる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療剤。
  18. 請求項8記載の動物と他の病態モデル動物との交配によって生じる病態モデル動物。
  19. 請求項8記載の動物に対する薬剤誘発またはストレス負荷によって生じる病態モデル動物。
  20. 請求項18記載の動物に対する薬剤誘発またはストレス負荷によって生じる病態モデル動物。
  21. 請求項18〜20のいずれかに記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞を用いることを特徴とする消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法。
  22. 請求項18〜20のいずれかに記載の動物もしくはその組織またはそれらに由来する細胞に試験化合物を投与することを特徴とする消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法。
  23. 請求項21または22記載のスクリーニング方法により得られる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療物質。
  24. 請求項23記載の予防・治療物質を含有してなる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療剤。
  25. 請求項10記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とするZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  26. 請求項25記載のスクリーニング方法で得られうるZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩。
  27. 請求項25記載のスクリーニング方法で得られうるZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩を含有してなる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療剤。
  28. 請求項25記載のスクリーニング方法で得られうるZAQ遺伝子に対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩を含有してなる消化器疾患、内分泌疾患、性腺疾患、がん、免疫不全または神経疾患の予防・治療剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015002719A (ja) * 2013-06-21 2015-01-08 全国農業協同組合連合会 免疫不全ブタ

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