本発明は、三次元の任意形状の穴の内面や穴径の測定、及び任意形状の外側面の形状測定等を高精度及び低測定力にて走査測定する形状測定装置用プローブ及び形状測定装置に関する。
測定物の外側面、内側面、及び穴径等を測定可能な従来のプローブとして、特許第3075981号公報(特許文献1)に開示されるものがある。図18A,図18Bは、特許文献1に記載された従来の三次元形状測定装置用プローブ310の構成を示す図である。該プローブ310は、測定物の鉛直方向又は略鉛直方向に延在する側面を測定するためのプローブであり、水平方向又は略水平方向に延在する面を測定することはできない。
該プローブ310では以下のように測定動作が行われる。図18Aにおいて、被測定面Sに対してプローブ310がYZ方向に動くとき、被測定面SにおけるX方向への変位に従って、スタイラス301を有するアーム303は、ほぼX方向に沿って傾く。一方、半導体レーザ投光部306からレーザ光がアーム303の上面のミラー302に照射されており、ミラー302からの反射光に基づきアーム303の傾きが光位置検出手段307にて検知される。検知された傾きが一定になるように、プローブ310全体をX方向に動かし、該移動量からプローブ310全体のX座標測定値を得、さらに該X座標測定値に光位置検出手段307にて検出されたスタイラス301の変位量を加算することにより、被測定面SのX方向への変位量を示すX座標が高精度に測定される。このようにプローブ310では、その構造上、測定物のY方向の位置は測定できない。
このような問題に鑑み、出願人は、穴形状、測定物の側面形状を測定でき、かつ水平任意方向に傾斜できるプローブに関して出願した(特願2005−105915号)。図19は、上記出願に記載された形状測定プローブの構造を示す図である。
図19において、形状測定装置用プローブ351は、形状測定装置371に備わるもので、スタイラス361を有する測定面接触部材360は、取付用部材362に対して支点部363を中心に水平方向の任意方向に揺動可能に連結されている。連結部材364は、コイルバネからなり、非測定時は、測定面接触部材360の中心軸を鉛直方向に保持し、測定時はスタイラス361を測定物に押し付ける力を発生させる。そして図20に示すように測定面接触部材360の上部に固定されたミラー365のX,Y軸周りの傾きを傾斜角度検出部366により検出する。そして形状測定装置371によってプローブ351全体を測定面に対し、スタイラスの押し込み量が一定になるように動作させるとともに、プローブ351のXYZ位置を検出し、その値を前記ミラー365の傾きから換算したスタイラスの水平方向の変位を加えることにより、高精度にスタイラスの位置を検出する。この構成により、測定物を回転させることなく、測定物の任意方向の側面を測定できる。
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、スタイラス301は水平方向の1方向のみ揺動可能で、鉛直軸を中心軸とする円筒面の全周形状を測定するためには円筒面を回転させる必要があった。そのため、測定物を回転させる機構が必要となり、回転機構の中心軸の芯ぶれが測定誤差となる課題を有していた。また、測定物を回転させる方法では複雑な断面をもつ被測定面は測定できないという課題も有していた。
また、特願2005−105915号の構成では、スタイラス361は、水平の任意方向に傾斜可能であるが、連結部材364であるコイルバネ力を弱くする必要があるため、測定面接触部材360の取付用部材362に対する支点が水平方向に移動し、移動誤差が発生する場合がある。これに対しては水平移動方向のセンサを設けて、その移動誤差を補正することも可能であるが、構成が複雑になる。また、コイルバネを用いているため、測定面接触部材の重量を持ち上げる力よりも、わずかに大きい力、すなわちワークに押し付ける力、例えば30mgfだけ大きい力を発生する必要があり、その調整が困難である。
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、スタイラスが水平の任意方向に揺動可能に構成され、非測定時はスタイラスを中立位置に保持し、測定時は測定物に微小測定圧を発生させることを可能にするとともに、スタイラス揺動の支点位置がずれにくく、かつ簡単な構成で調整が容易な形状測定装置用プローブ及び形状測定装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
本発明の第1態様によれば、アームと前記アームの先端に配置され測定物の被測定面に接触するスタイラスを有する測定面接触部と、
前記測定面接触部を形状測定装置に取り付ける取付用部材と、
前記測定面接触部に設けられた支点部材と前記取付用部材に固定され前記支点部材が載置される載置台とを備え、前記支点部材を支点として揺動可能に前記測定面接触部と取付用部材とを連結させる連結機構と、
互いに鉛直方向に対向するように配置された、前記測定面接触部に設けられた可動側部材と前記取付用部材に設けられた固定側部材を有し、前記可動側部材と固定側部材が非接触の状態で磁気的吸引力を発生させるように構成され、当該磁気的吸引力により前記アームが鉛直方向に向くように前記測定面接触部を付勢させる付勢機構を備える、形状測定装置用プローブを提供する。
上記構成において、前記可動側部材と前記固定側部材は、一方が永久磁石で構成され、他方が磁性体で構成されていてもよい。
また、前記可動側部材と前記固定側部材は、双方ともに永久磁石で構成され、互いに異極が対向するように配置されていてもよい。
また、前記支点部材は針状の突起で構成され、前記載置台は前記支点部材の先端を嵌入可能な円錐溝を有し、前記円錐溝の最深部と前記支点部材の尖端との接触部を揺動中心として前記測定面接触部と前記取付用部材が揺動可能に連結されるように構成してもよい。
前記測定面接触部は、中央に横方向に延在する貫通穴が設けられた本体部を有し、前記本体部の外側下壁に前記アームが固定されるとともに、前記本体部の貫通穴内の内側上壁から前記支点部材が垂下するように構成され、
前記載置台は、前記貫通穴を貫通して延在するように構成することもできる。
前記測定面接触部は、前記支点部材に対してスタイラスと反対側に延在する延伸部と、前記延伸部の先端に設けられ前記可動側部材を保持する可動側保持部を備え、
前記取付用部材は、筒状の本体部の内側面に、前記可動側保持部に対して前記支点部材と同じ側に設けられ、前記固定側部材を保持する固定側保持部を備えるように構成してもよい。
前記可動側保持部はリング状に構成され、その下面側に複数の可動側部材を間隔をおいて保持し、
前記固定側保持部は、各可動側部材に鉛直方向に対向する位置に各可動側部材に対応させて複数の固定側部材を保持するように構成してもよい。
前記取付用部材は、筒状の本体部の内側面に、前記測定面接触部に接触することによって、前記測定面接触部の揺動幅を規制する規制部材を有するように構成してもよい。
本発明の第2態様によれば、前記形状測定装置用プローブの測定面接触部に測定用レーザ光を反射するミラーを有する第1態様の形状測定装置用プローブと、
上記形状測定装置用プローブへ照射され測定物の被測定面における測定点の位置情報を求めるための測定用レーザ光を発生するレーザ光発生部と、
上記形状測定装置用プローブに備わるミラーにて反射した反射光に基づき上記形状測定装置用プローブの測定面接触部の傾斜角度を検出して上記測定点の位置情報を求める測定点情報決定部と、
を備える形状測定装置を提供する。
上記第2態様において、上記測定点情報決定部は、上記傾斜角度を検出する傾斜角度検出部と、該傾斜角度検出部から得られた角度信号を上記形状測定装置用プローブに備わる取付用部材に対するスタイラスの変位量に変換するスタイラス位置演算部と、上記測定用レーザ光を用いて、上記取付用部材に対する上記測定点の相対位置座標値を求める位置座標測定部と、上記相対位置座標値に上記スタイラスの変位量を加算して上記測定点の位置情報を求める加算部とを有するように構成することもできる。
ここで、上記取付用部材と上記測定物との相対位置を上記被測定面に沿って2次元又は3次元に移動するステージと、
上記角度信号の大きさをほぼ一定としかつ上記スタイラスを有する測定面接触部材をいずれの方向にも傾斜させるように上記ステージの動作を制御する制御装置と、をさらに備えるように構成してもよい。
また、上記第2態様において、上記傾斜角度検出部は、上記反射光を受光する光検出器を有し、該光検出器は、それぞれ独立して光電変換を行う複数の受光領域に区画された一つの受光面を有するように構成することもできる。
ここで、上記測定用レーザ光は、発振周波数安定化レーザ光であり、上記反射光を2つに分離し分離した一方の光を上記光検出器へ照射し、他方の光を、上記ミラーに照射される測定用レーザ光の光軸に沿ったZ方向における上記スタイラスの位置を測定し上記位置座標測定部に備わる傾斜角度検出部へ照射する光分離部をさらに備えるように構成してもよい。
本発明の第3態様によれば、第1態様の形状測定装置用プローブと、
前記取付用部材の円筒状の本体部の内側面に設けられた、前記測定面接触部との距離を検出する複数の位置検出センサと、
前記複数の位置検出センサからの出力に基づき上記形状測定装置用プローブの測定面接触部の傾斜角度を検出して上記測定点の位置情報を求める測定点情報決定部と、
を備える形状測定装置を提供する。
また、前記位置検出センサは、前記取付用部材の本体部の中心位置に対して90°の角度となるように2箇所に設けるように構成してもよい。
本発明の第1態様の形状測定装置用プローブ、第2、第3態様の形状測定装置によれば、連結機構により測定面接触部と取付用部材が揺動可能に連結され、さらに、水平な任意の方向に傾斜可能な測定面接触部を、磁石による磁力を用い非接触でアームが鉛直方向になるように付勢して姿勢保持することができる。これにより、スタイラスが測定物を押圧する力、すなわち測定力を微小に発生させるため、コイルバネのように接触力による微小な力の誤差が少なく、不慮の衝撃による破損の問題も少なくなる。よって、スタイラスの軸は鉛直方向に限定されず、傾いた状態での使用も可能であり、例えば、任意形状の穴内面の表面や穴径測定、外側面の形状測定等を高精度、低測定力で走査測定可能である。
さらに、取付用部材と測定面接触部とは、支点部材が載置台の上に載置される構成の連結機構により連結されているため、重力などにより両者が脱落することがない。
また、固定側部材と可動側部材は、少なくともいずれか一方を永久磁石で構成すれば、吸引力を発揮することができ、電磁石のように電流を流すことが無いので、構成が簡単になり、電気熱による影響もない。
また、連結機構として、円錐溝と尖端で構成された支点をとすることにより、支点の位置ずれを防止することができる。さらに、延伸部の先端に可動側部材を保持するとともに、可動側保持部に対して支点側に固定側部材を保持する構成をとれば、磁石の吸引力により、連結機構における円錐溝と尖端で構成された支点を押えつける構成となる。したがって、支点の位置ずれがおこりにくくなる。
また、測定面接触部の本体部に設けられた貫通穴に棒状の載置台を貫通させて保持する構成によれば、測定面接触部と取付用部材との脱落を確実に防止することができる。
互いの間隔を空けてそれぞれ複数設けるようにし、それぞれの対となる固定側部材と可動側部材が鉛直方向に対向するようにすることよって、支点部材の時点を中心とした回転方向の位置ずれに対しても中立位置に戻すように付勢でき姿勢保持を行うことができる。
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。図1は、本発明の第1実施形態にかかる形状測定装置に用いられる形状測定装置用プローブの斜視図であり、 図2は、図1の形状測定装置用プローブを対称面で切断したときの斜視図であり、 図3は、図1の形状測定装置用プローブの揺動部材をYZ平面で切断したときの断面図であり、 図4は、図1の形状測定装置用プローブの取付用部材をYZ平面で切断したときの断面図であり、 図5は、固定側保持部材の構成を示す図であり、 図6は、図1の形状測定装置用プローブの組み立て分解斜視図であり、 図7は、図1に示すプローブを備えた形状測定装置の一例を示す図であり、 図8は、図1に示すプローブを備えた形状測定装置の他の例を示す図であり、 図9は、図7に示す形状測定装置に備わる測定点情報決定部の構成を示す図であり、 図10は、図9に示す測定点情報決定部に備わる傾斜角度検出部の平面図であり、 図11は、上記傾斜角度検出部に対してプローブからの反射光が照射される状態を説明するための図であり、 図12は、図1に示すプローブにて被測定面の測定を行うときのプローブの傾斜角度を説明するための図であり、測定物を平面図にて表した図であり、 図13は、図1に示すプローブにて被測定面の測定を行うときのプローブの傾斜角度を説明するための図であり、測定物を側面図にて表した図であり、 図14は、図1に示すプローブにて測定可能な測定物の一例の斜視図であり、 図15は、図14に示す測定物の断面図であり、 図16は、本発明の第2実施形態にかかる形状測定装置に用いられる形状測定装置用プローブを対称面で切断したときの斜視図であり、 図17は、図16に示すプローブを備えた形状測定装置に備わる測定点情報決定部の構成を示す図であり、 図18Aは、特許文献1に開示された従来の形状測定装置に備わるプローブの側面図であり、 図18Bは、特許文献1に開示された従来の形状測定装置に備わるプローブの正面図であり、 図19は、従来の他の形状測定装置の構成を示す図であり、 図20は、図19の形状測定装置の揺動部材の傾斜状態を示す図である。
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。以下、本発明の第1実施形態である形状測定装置、該形状測定装置に備わる形状測定装置用プローブ及び上記形状測定装置について、図を参照しながら以下に詳しく説明する。
上記形状測定装置は、従来、精度良く測定できなかった穴や外形、任意形状の側面形状をナノメートルオーダーの高い精度で、さらに低測定力で短時間で測定可能とする装置である。測定対象としては、例えば、極めて高精度が必要とされるモータの軸受け、インクジェットプリンタにおけるノズル、及び自動車エンジンにおける燃料噴射ノズル等における穴形状であり、また、流体軸受けに形成され潤滑剤を収容する溝部の形状、さらには、形状測定装置に備わるマイクロエアスライドの内径、円筒度等である。また、半導体回路パターンにおけるトレンチ部分も測定対象に含めることができる。
また、上記形状測定装置用プローブを備えた形状測定装置にて測定可能な被測定面は、該被測定面における接線方向と垂直方向との交差角度θにて0度から最大で約30度までの間の角度を有する面である。
まず、上記形状測定装置用プローブについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる形状測定装置に用いられる形状測定装置用プローブの斜視図である。図1に示す形状測定装置用プローブ101は、上記形状測定装置201に備わり、測定対象となる測定物60の被測定面61に接触する部分を有する。特許文献1に開示されている従来のプローブ310では、アーム303がX方向に沿う一方向にのみ傾斜可能であるのに対し、本プローブ101では、X,Y方向を問わずいずれの方向にもアーム122を傾斜可能とする構成を有する。このようなプローブ101は、取付用部材2と、測定面接触部としての機能を果たす一例に相当する揺動部材3と、連結機構4とを備える。
取付用部材2は、形状測定装置201に固定され、又は着脱可能に取り付けられるブロック部材である。取り付け用部材2は、揺動部材3が揺動するのに対し、固定された部材であり、形状測定装置201から照射される測定用レーザ光211を通過可能とするため、当該取付用部材2を貫通するレーザ光用開口111を中央部に有する。
図2は、図1における形状測定装置用プローブを対称面で切断したときの斜視図である。取付用部材2は円筒形をしており、その内部に揺動部材3が収納されるような位置関係を有する。揺動部材3と取付用部材2とは、上述のように連結機構4により連結されている。連結機構4は、ミラー123に照射される上記測定用レーザ光211の光軸211aに対して交差するいずれの方向にも、揺動部材3を傾斜させて揺動可能にして揺動部材3を取付用部材2に支持する機構である。なお、本実施形態では、上記光軸211aは、鉛直方向であるZ軸方向に一致する。
本実施形態において、連結機構4は、取付用部材2に固定された角柱の載置台41と、揺動部材3に取り付けられた支点部材42とにより構成されている。載置台41は、その上面に円錐形の溝41aが形成されており、支点部材42の尖端が当該溝41aに嵌入する。両者の嵌入時においては、載置台41の円錐溝最下点に支点部材42の尖端位置が接触するように構成される。このような構成とすることによって、揺動部材3と取付用部材2とは、当該支点部材42と円錐溝41aとの接触部分を揺動中心として、揺動可能に連結される。なお、揺動部材3は、支点部材42が載置台41の溝41aに嵌入して連結した場合、アーム122が鉛直方向を向くように、重心が支点部材42の先端の鉛直方向下側に位置するように構成されていることが好ましい。
図3は、図1の形状測定装置用プローブの揺動部材をYZ平面で切断したときの断面図である。揺動部材3は、測定物60の被測定面61に接触するスタイラス121と取付用部材2を通過した測定用レーザ光211を反射するミラー123を有し、被測定面61の形状に応じたスタイラス121の変位に対応して取付用部材2に対して揺動する部材である。ミラー123は、揺動部3の中心部に固定され、形状測定装置101から発する測定用レーザ光211を受ける。
揺動部材3は、本実施形態では、中央に図示X軸方向に貫通して設けられた貫通穴124を備える本体部125を備え、本体部125の外側下壁、すなわち、本体部125の下面125aから、先端にスタイラス121を設けたアーム122が垂下されている。又、本体部の上面には、上記ミラー123が取り付けられている。
また、本体部125の内側上壁すなわち、貫通穴124の上面124aには、針状の支点部材42が設けられている。連結機構4の載置台41は、本体部125の貫通穴124を貫通して配置される。したがって、揺動部材3と取付用部材2とが脱落することが確実に防止される。
なお、本実施形態では、スタイラス121は、例えば約0.3mm〜約2mmの直径を有する球状体であり、アーム122は、一例として、太さが約0.7mmで、アームが固定される本体部下面125からスタイラス121の中心まで約10mmの長さLである棒状の部材である。これらの値は、被測定面61の形状により適宜変更される。また、揺動部材3の構成も、支点により載置台41に揺動可能に配置される構成であれば、上述の構成に限定するものではない。
また、本体部125の上面125bの周縁部にはZ軸方向に伸びる延伸部127が4箇所に設けられている。隣り合う延伸部127は、その間に隙間127aがあくように配置され、当該隙間127aに後述する固定側部材52の突出部1332が配置される(図5参照)。
また、延伸部127の先端には、可動側保持部128が設けられている。可動側保持部128は、リング状の部材であり、延伸部127からXY軸方向に張り出している。可動側保持部128には、4箇所に可動側部材の一例である可動側磁石51が同一半径上に等間隔に設けられている。可動側磁石51は、隣り合う延伸部127の間の隙間127aに対応する位置に設けられている。
図4は、図1の形状測定装置用プローブの取付用部材をYZ平面で切断したときの断面図である。取付用部材2は、円筒形の本体部131と固定側部材の一例である固定側磁石52とを取り付ける固定側保持部材133とを備える。本体部131は、上述のように中央にレーザ光用開口111となっている。また、本体部の下端部は、載置台取付部132となっている。当該載置台取付部132は、載置台41を取付用部材に固定するためのものであり、具体的な構成は後述する。
固定側保持部材133は、図5に示すように、リング状に構成されたリング部1331と4箇所に設けられた突出部1332とを備える。突出部1332は、固定側磁石52を保持するものであり、等間隔にかつ同心円状に設けられる。固定側保持部材133は、本体部131に固定ネジ134により固定される。固定側保持部材133が取付用部材2に取り付けられる場合、隣り合う突出部1332の間136に、揺動部材3の延伸部127が位置するような向きに固定される。これにより、揺動部材3の可動側保持部128に保持される可動側磁石51と固定側磁石52との位置関係は、それぞれ鉛直方向であるZ軸方向に並んで配置されることとなる。
なお、可動側磁石51と固定側磁石52は、それぞれの対について、互いに吸引力が働く向きに固定される。本実施形態においては、全ての磁石51,52の上がN極、下がS極になるように固定されている。このように配置することにより、揺動部材3が支点を中心として回転して揺動したとしても、両磁石の吸引力により当該回転を戻す方向に修正される。なお、隣り合う可動側磁石51と固定側磁石52において、磁石の向きを異ならせるようにしてもよい。
図6は、図1に示す形状測定装置用プローブの組み立て分解斜視図である。なお、図6においては、組立構造の理解のため、複数ある部材など一部の記載を省略している場合がある。上述のように、揺動部材3と取付用部材2とは、連結機構4の載置台41が揺動部材の本体部125の貫通穴124を貫通することによって連結される。
また、載置台41は、取付用部材2の載置台取付部132に取り付けられる。載置台取付部132は、載置台41を陥入するための切り欠き137を備えており、当該切り欠き137に、揺動部材3と連結された載置台41を載置する。
載置台41は、X軸方向への位置ずれを防止するために、第1固定部材139により固定される。第1固定部材139は、板状部材であり、載置台取付部132に設けられた固定穴138に螺合する取付ネジ140により固定される。
また、載置台は、Y軸方向への位置ずれを防止するために、第2固定部材142に固定される。第2固定部材142は、板バネ状の部材であり、載置台取付部132に設けられた固定穴141に螺合する取付ネジ143より固定される。
上述のように構成される、本実施形態におけるプローブ101は、以下のように動作する。上記構成によれば、可動側磁石51と固定側磁石52の吸引力により、揺動部3は、下方向に力を受け、支点部材42の先端は、載置台41の円錐溝41a中心に接し、位置ずれなどが防止される。また、取付用部材2に揺動可能に連結されている揺動部材3は、可動側磁石51と固定側磁石52の吸引力により、アームが鉛直方向に延在する中立位置となるように付勢されている。揺動部3は揺動可能であるが、揺動部3の中心軸が、傾いた場合、前記可動側磁石51と固定側磁石52の距離が遠ざかることになり、磁石の性質により、一対の磁石を互いに近づける方向に復元力が働く。よって、揺動部3全体も傾きを戻す方向に復元力が働く。同様に揺動部が支点を中心として回転した場合も、回転を戻す方向に復元力が働く。これにより、非測定時に揺動部3は、アームの延在方向が鉛直方向に一致するように付勢及び姿勢保持される。
一方、後述するように測定物60の被測定面61の形状測定は、揺動部材3に取り付けられているスタイラス121を被測定面61に所定の押圧力にて押しつけて行われる。該押圧力は、スタイラス121を被測定面61に接触させた状態で取付用部材2を測定物60側へ僅かに移動させることで、揺動部材3は傾斜する。該傾斜により、揺動部材3には磁石の吸引力が作用する。すなわち、可動側磁石51と固定側磁石52の吸引力により、上記スタイラス121を被測定面61に押圧する押圧力を生じさせ、揺動部材3が傾斜しておらず、揺動部材3のアームが鉛直方向に延在するような初期状態の中立位置へ揺動部材3を復元させる復元力を生じさせる。その結果、スタイラス121は被測定面61に所定の押圧力つまり測定力にて押圧されることになる。すなわち、測定時は、スタイラス121先端が測定物に微小な測定力を加えた状態で接することになる。なお、一実施例として、測定力は0.3mNとすることができる。測定力は、可動側磁石51と固定側磁石52の磁力及び、両者の間隔により調整することができる。
本実施例においては、スタイラス121の先端を0.3mNで押したときに、先端の変位が10μmになるように、磁石の強さ、磁石間の距離等を選定している。先端に一定の測定力を加える方法は後述のとおりである。
次に、上述したように構成される形状測定装置用プローブ101を備えた形状測定装置について、以下に説明する。
上記形状測定装置は、一般的に、プローブを被測定物に接触させ、該接触力がほぼ一定になるように上記プローブの移動を制御しつつ、上記プローブを測定物60の被測定面61に沿って移動させて、レーザ測長器と基準平面ミラーとを利用して、上記プローブと基準面との位置関係に基づき、被測定面61の表面形状を測定、演算するものである。
このような形状測定装置として、主として例えば約400mm角の大きさを有する比較的大型の測定物の測定用であり、図7に示すように、測定物60を定盤上に固定して、プローブをX軸、Y軸、及びZ軸の全方向に移動させるタイプと、主として例えば約200mm角以下の大きさを有する中型及び小型の測定物の測定用であり、図8に示すように、測定物60を載置したステージをX軸及びY軸方向に移動させ、一方、プローブのみをZ軸方向に移動させるタイプとが存在する。上述した形状測定装置用プローブ101は、いずれのタイプの測定装置にも適用可能である。
図8に示す形状測定装置290は、上述の中、小型の測定物用の測定装置に相当する。該形状測定装置290において、291はステージであり、該ステージ291は、石定盤292上に設置され、平面上で互いに直交するX軸及びY軸方向に可動であるX−ステージ2911及びY−ステージ2912を有し、さらに測定物60を載置する。293はプローブ101をZ軸方向に可動とするZ−テーブルであり、石定盤292に立設された支柱2921にZ方向に可動として取り付けられている。また、210は、被測定面61の測定点61aの位置情報を求めるための測定用のレーザ光211としての発振周波数安定化He−Neレーザ光を発生するレーザ光発生部である。220は、レーザ光発生部210にて発生したレーザ光211を用いて被測定面61における測定点61aの位置情報を得るための光学系、並びにX軸、Y軸、Z軸方向の各基準面からのレーザ光と上記測定点61aからのレーザ光との干渉に基づき測長を行う公知のレーザ測長部を有する測定点情報決定部である。該測定点情報決定部220については追って詳しく説明する。また、294は、ステージ291を駆動するための駆動部であり、280は制御装置である。該制御装置280は、被測定面61を走査するとき、プローブ101における揺動部材3を特定方向にのみ傾斜させず、いずれの方向にも揺動させるように、駆動部294を制御しステージ291の移動方向及び移動量を制御する。
図7に示す形状測定装置201は、上述の大型測定物用の測定装置に相当する構成を有する。なお、上述の形状測定装置290と同一又は同様の機能を果たす構成部分については、同じ符号を付し、ここでの説明を省略する。295は、石定盤292上に設置されX軸及びY軸方向に可動なX−ステージ2951及びY−ステージ2952を有するステージであり、Z−テーブル293、レーザ光発生部210、及び測定点情報決定部220を載置している。よって、ステージ295は、Z−テーブル293、レーザ光発生部210、及び測定点情報決定部220をX軸及びY軸方向に移動させることができる。また、229は、Z軸方向における基準面を有する基準ミラーである。なお、本実施形態では、上述した形状測定装置用プローブ101を当該形状測定装置201に取り付けていることから、以下の説明では、当該形状測定装置201を例に採る。しかしながら、形状測定装置290においてもプローブ101を用いた被測定面61の測定動作については形状測定装置201の場合と変わるところはない。
上記測定点情報決定部220について、図9から図11を参照して詳しく説明する。測定点情報決定部220には、測定点61aの位置情報を得るための光学系221と、傾斜角度検出部222と、スタイラス位置演算部223と、位置座標測定部224と、加算部225とを有する。これらの傾斜角度検出部222、スタイラス位置演算部223、位置座標測定部224、及び加算部225は、上記レーザ測長部に相当する部分であり、光学系221に接続され実際に上記位置情報を求めるための構成部分である。
レーザ光発生部210にて発生した測定用レーザ光211は、被測定面61の測定点61aの3次元座標位置を求めるため、光学系221にて4つに分光される。よって光学系221は、X、Y、Zの座標用の第1光学系221aと、揺動部材の傾斜角度用の第2光学系221bとの計4つの光学系を有する。第1光学系221aには、ステージ295のX軸方向及びY軸方向における移動量、つまり被測定面61のX軸方向及びY軸方向における移動量を検出するため、図示を省略しているがX軸方向に直交し鏡面にてなる基準面を有するX軸基準板、及びY軸方向に直交し鏡面にてなる基準面を有するY軸基準板を有する。また、さらに、ステージ295の移動時に当該ステージ295に生じるZ軸方向におけるステージ295の、いわゆるうねり成分を検出するためのZ基準板も設けられている。各基準板の基準面は、平坦度が0.01ミクロンオーダーに構成されている。
被測定面61の形状測定方法は、例えば特開平10−170243号公報に記載されるように、上記各基準面に反射した反射レーザ光の位相の変化を、上記各基準面へ照射するレーザ光と上記反射レーザ光との干渉信号を計数することで検出する、公知のレーザ測長方法を用いる。該レーザ測長方法では、例えば特開平4−1503号公報に開示されるように、上記基準面へ照射されるレーザ光をプリズム等の分岐部材にて参照光と測定光とに分け、かつ上記参照光と測定光との位相を90度ずらす。そして測定光を上記基準面へ照射し反射させ、戻って来た反射光と上記参照光とにおける上記位相のずれによる干渉光を電気的に検出して、得られた干渉縞信号から作成するリサージュ図形に基づき基準点と上記基準面との距離が測定される。
上記位置座標測定部224は、このような測長方法を実行する部分であり、被測定面61における測定点61aにおけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値の測長を行う検出部224a〜224cを有する。本実施形態では図7に示すように、石定盤292上に載置された測定物60に対してステージ295が移動することから、上述の、測定点61aにおけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値は、Z−テーブル293に取り付けられているプローブ101における取付用部材2に対する測定点61aの相対位置座標値と換言することができる。なお、検出部224cは、形状測定装置用プローブ101のスタイラス121のZ座標値の測長を行う部分であることから、スタイラス位置測定器として機能する一例に相当する。これらの検出部224a〜224cからの検出結果と、以下に説明する上記揺動部材3の傾斜角度から求まる検出結果とに基づき被測定面61の形状が位置座標測定部224及び加算部225にて演算される。
上記第2光学系221bは、上記測定用レーザ光211の内、形状測定装置用プローブ101の揺動部材3に取り付けられているミラー123からの反射光を傾斜角度検出部222へ導く光分離部2211を有する。
上記傾斜角度検出部222及び上記スタイラス位置演算部223について説明する。図9に示すように、Z−テーブル293の下端に取り付けられている形状測定装置用プローブ101に備わる揺動部材3に取り付けられているミラー123の中心点123aへ、測定用レーザ光211の一部がフォーカスレンズを介して照射される。照射されたレーザ光211は、ミラー123にて反射し、該反射光211bは、光分離部2211に備わるミラー2211aにて傾斜角度検出部222へ照射される。傾斜角度検出部222は、反射光211bを受光し電気信号に変換する受光面2221を有する光検出器にて構成され、受光面2221は、それぞれ独立して光電変換を行う複数の受光領域に区画されている。本実施形態では図10に示すように、受光面2221を格子状、つまり十字状に4つの受光領域222a〜222dに区画している。なお、受光領域の数、及び形状は、図示の形態に限定されるものではなく、測定精度等との関係に基づいて適宜設定することができる。
被測定面61の非測定時には、プローブ101のアーム122は鉛直方向に沿って配置されている。よって非測定時には、上記反射光211bは、鉛直方向に沿ってミラー123へ照射される測定用レーザ光211の光軸211aに平行に進み、ミラー2211aにて反射して傾斜角度検出部222の受光面2221の中央部へ照射される。この場合の受光面2221における反射光211bの照射領域を、図11に点線にて示し非測定時照射領域2222とする。
一方、形状測定装置用プローブ101の説明で述べたように、被測定面61の測定は、ほぼ一定の測定力にてスタイラス121を被測定面61へ押圧して行われることから、上述したようにプローブ101の揺動部材3は、取付用部材2に対して傾斜する。よって、反射光211bは、光軸211aと交差してミラー2211aへ進み、傾斜角度検出部222の受光面2221では中央部から外れた基準照射領域2223へ照射される。また、上述したように測定時において、揺動部材3は、支点部材42の尖端を支点として、特定方向に限定されることなくいずれの方向にも揺動可能である。よって、測定対象となるような例えばナノオーダーでの微細な凹凸が被測定面61に全く存在しないとすると、基準照射領域2223は、図11に示すように、受光面2221の中心点2221aを中心とした一定半径にてなる円の円周2224に沿って位置することになる。
受光面2221への反射光211bの照射に応じて傾斜角度検出部222は、電気信号を生成するが、受光面2221が4つの受光領域222a〜222dに区画されていることから、反射光211bの照射場所から揺動部材3の傾斜角度を検出することができる。即ち、受光領域222aを「A」、受光領域222bを「B」、受光領域222cを「C」、受光領域222dを「D」とすると、各受光領域222a〜222dから得られる電気信号について、(A+B)−(C+D)を行うことでX軸方向における揺動部材3の傾斜角度を求めることができ、(A+D)−(B+C)を行うことでY軸方向における傾斜角度を求めることができる。このように傾斜角度検出部222は、各受光領域222a〜222dから得られる電気信号について、(A+B)−(C+D)、及び(A+D)−(B+C)を行い、これらを角度信号として、上記スタイラス位置演算部223へ送出する。
スタイラス位置演算部223は、上記角度信号をプローブ101に備わるスタイラス121の変位量に変換する。
一方、実際には、被測定面61には上記微細凹凸が存在することから、図11に変位照射領域2225として示すように、上記微細凹凸に対応して、円周2224から外れた位置に反射光211bが照射される。そして、上述した基準照射領域2223の場合と同様に、変位照射領域2225への反射光211bの照射により、傾斜角度検出部222は角度信号を送出し、スタイラス位置演算部223は、スタイラス121における上記微細凹凸に対応した変位量を求める。したがって、基準照射領域2223に対応する、スタイラス121の基準変位量と、変位照射領域2225に対応する凹凸変位量との差を求めることで、上記微細凹凸の大きさを求めることができる。
なお、この測定方法の前提として、支点部材42の尖端を支点として、揺動部材3がいずれの方向にも首振りして傾斜可能な構成において、上記基準変位量を一定若しくはほぼ一定とする必要がある。すなわち、揺動部材3がいずれの方向にも揺動することから、受光面2221における反射光211bの照射領域は、測定時には、例えば上記円周2224に沿って移動することになる。このような状況において、反射光211bが基本的に常に基準照射領域2223に照射される、つまりいずれの方向に揺動部材3が揺動した場合でも揺動部材3の傾斜角度αが一定若しくはほぼ一定である必要がある。したがって、測定時には、制御装置280にてステージ295の駆動部294を制御して、図12及び図13に示すように、スタイラス121の走査方向121aに垂直な方向121bに対する揺動部材3の傾きβが一定になるようにステージ295の移動量及び移動方向を制御し走査方向121aを修正する必要がある。
上述のようにしてスタイラス位置演算部223にて、被測定面61の測定点61aの上記微細凹凸の大きさを求めると同時に、上述したように上記位置座標測定部224にて、測定点61aにおけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値が求められている。よって、加算部225は、位置座標測定部224にて求まる、測定点61aにおけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値と、スタイラス位置演算部223にて求まる測定点61aの上記微細凹凸の大きさとを加算して、上記微細凹凸量を加味した測定点61aにおける測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値を求める。
すなわち、位置座標測定部224にて求まる測定点61aにおけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値をX1,Y1,Z1とし、スタイラス位置演算部223にて求まる測定点61aにおける上記微細凹凸の大きさのX座標値を(A+B)−(C+D)、及びY座標値を(A+D)−(B+C)とすると、加算部225にて求まる上記測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値は、X1+E{(A+B)−(C+D)}、Y1+F{(A+D)−(B+C)}、Z1となる。ここで、E及びFは、補正係数である。
さらにまた、スタイラス121は図示のように球状であることから、上記測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値は、スタイラス121の中心座標である。したがって、測定点61aの真の座標値は、プローブ101の走査方向に垂直な方向に、スタイラス121の半径値だけずらした値となる。
以上のように構成される形状測定装置201における動作、すなわち、測定物60の被測定面61に対する形状測定方法について、以下に説明する。なお、形状測定装置用プローブ101の説明で述べたように、プローブ101を取り付けた形状測定装置201にて測定可能な被測定面61は、被測定面61aにおける接線方向と垂直方向との交差角度θにおいて、0度から最大で約30度までの間の角度にてなる被測定面である。また、当該形状測定方法は、制御装置280の動作制御にて実行される。
上述したように、スタイラス121を被測定面61に接触させ、さらに例えば約0.3mN(=30mgf)の測定力にてスタイラス121が被測定面61を押圧するように、測定物60に対して、プローブ101を取り付けたZ−テーブル293を有するステージ295を相対的に配置する。これにて、傾斜角度検出部222の受光面2221には、反射光211bが基準照射領域2223に照射され、上述したように、スタイラス位置演算部223及び位置座標測定部224を介して、加算部225により、被測定面61の測定点61aにおける基準となるX座標値、Y座標値、及びZ座標値が求められる。
例えば、測定物60が円筒形で、その外周面を一周測定する場合を例に採ると、上述のように、図12及び図13に示す垂直方向121bに対する揺動部材3の傾きβが一定若しくはほぼ一定に維持されるように、すなわち、いずれの方向にも揺動部材3を傾斜させ、かつ鉛直方向に対する揺動部材3の傾きαが一定若しくはほぼ一定に維持されるように、制御装置280にてステージ295の駆動部294を制御して、X軸方向及びY軸方向へのステージ295の移動量及び移動方向を制御する。なお、本実施例ではスタイラス121先端の変位が10μmを保つような角度に調整することにより、測定力を30mgfに保つことができる。
このようにして被測定面61の全周について、揺動部材3がいわゆる首振り運動や味噌すり運動するようにして、被測定面61の測定を行う。これにより、反射光211bは、傾斜角度検出部222の受光面2221における各受光領域222a〜222dを、例えば上記円周2224に沿うようにして一周する。このとき、被測定面61の上記凹凸に対応して反射光211bの照射領域は、基準照射領域2223から変位照射領域2225へ移動する。
このような測定動作に基づき、上述したように、スタイラス位置演算部223及び位置座標測定部224を介して、加算部225により、被測定面61の測定点61aにおける、上記凹凸も含めて、上記測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値が求められる。
以上のように、上記構成の形状測定装置用プローブ101によれば、水平な任意の方向に傾斜可能な揺動部3を、磁石による磁力を用い非接触で中立位置に保持するとともに、スタイラス121が測定物60を押圧する力、すなわち測定力を微小に発生させるため、コイルバネのように接触力による微小な力の誤差が少なく、不慮の衝撃による破損もしづらい。かつ可動側磁石9、固定側磁石11の吸引力により、連結機構4における円錐溝41aと尖端で構成された支点部材42を押えつける構造のため、支点の位置ずれが少ない。これにより、本プローブ101はスタイラス121の軸は鉛直方向に限定されず、傾いた状態での使用も可能になる。また、電磁石のように電流を流すことが無いので、構成が簡単になり、電気熱による影響もない。
なお、本実施例の形態において、可動側磁石9と固定側磁石11による吸引力を用いたが、固定側、可動側のどちらか一方が磁石ではなく、磁性体としても同じ効果が得られる。
また、本実施形態にかかる形状測定装置201によれば、プローブ101において、スタイラス121を有する揺動部材3は、いわゆる首振り運動や味噌すり運動をすることができる。したがって、測定物60の例えば内周面の測定を行う場合、測定物60を回転させることなく、プローブ101をX軸方向及びY軸方向に移動させることで、上記内周面の測定を行うことができる。よって、測定装置において複雑な構成を採ることなく、測定物60の側面の傾斜方向を問わずに形状測定が可能となる。また、測定物60を回転させる必要がないことから、測定物60の中心軸の芯ぶれが発生するというような問題も生じず、被測定面の測定誤差の低減を図ることもできる。よって、例えばレンズの外径や穴径等が測定可能であり、また、例えば図14及び図15に示す流体軸受けのような測定物60に形成され潤滑剤を収容する溝部55の形状を測定することも可能となる。よって、形状測定装置201は、精密及び微細化に向かう産業の発展に幅広く貢献できる。
なお、形状測定装置201では、測定物60を石定盤292上に固定し、プローブ101をX、Y,Z軸方向に移動させたが、逆に、プローブ101を固定して測定物60を移動させてもよい。要するに、測定物60とプローブ101とを相対的に移動させればよい。
次に本発明にかかる第2実施形態にかかる形状測定装置に用いられる形状測定装置用プローブについて説明する。本実施形態にかかる形状測定装置用プローブ101aは、第1実施形態にかかる形状測定装置用プローブ101と大部分の構成を同じにするものであるので、構成が異なる点について主に説明する。
図16は、本発明の実施の形態2の形状測定装置用プローブを対称面で切断したときの斜視図である。図16において、揺動部材3の傾き検出として、非接触変位センサ151、152を設けている。センサの種類としては静電容量型のものが考えられる。非接触変位センサ151、152は、取付用部材2の本体部131に設けられており、揺動部材3の可動側保持部128との距離を測定する。可動側保持部128は、支点部材より離れた位置にあり、揺動部材3の傾きに対する変位量が大きく、より非接触変位センサ151,152と可動側保持部128との距離を高精度に測定することができる。
非接触変位センサ151、152は、互いに揺動部材3の中心に対して90°の角度をなすように設けられており、これにより、それぞれ、揺動部材3の支点を中心としたX方向及びY方向の傾きを検出することができる。
また、揺動部材3の傾き量は、可動側保持部128の側面が非接触変位センサ151,152の先端に接触する範囲となる。よって、非接触変位センサ151,152は、揺動部材3の揺動幅を規制する規制部材としても機能する。
図17は、図16に示すプローブを備えた形状測定装置に備わる測定点情報決定部の構成を示す図である。本実施形態にかかる形状測定装置は、図9に示す測定点情報決定部と大部分の構成を同じにするものであるが、傾斜角度検出部の構成において異なる。
本実施形態における傾斜角度検出部は、形状測定装置用プローブの構成として、非接触変位センサ151,152を備えており、当該センサ151,152によって、非光学的に揺動部材3の傾きを検出する。すなわち、非接触変位センサ151、152は、図9における傾斜角度検出部222として機能する。すなわち、第1実施形態における傾斜角度検出部のように光学的に揺動部材3の傾斜角度を測定するものではないため、反射光を導くためのミラー2211aが不要となる。
以上説明したように、本実施形態にかかる形状測定装置は、上記第1実施形態にかかる形状測定装置の効果に加えて、揺動部材3の傾斜角度を光学的に検出しないため、光学系の構成をより簡略化することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、上記実施形態においては、支点部材は、突起状に設けられた部材であり、当該突起の先端が円錐形の溝に陥入するように構成されているが、載置台に上向きに突起状の部材が設けられ、揺動部材に設けられた円錐溝を支点部材としてもよい。
本発明は、任意形状の穴の内面や穴径の測定、及び任意形状の外側面の形状測定等を高精度及び低測定力にて走査測定する形状測定装置、該形状測定装置に備わるプローブに適用可能である。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
本発明は、三次元の任意形状の穴の内面や穴径の測定、及び任意形状の外側面の形状測定等を高精度及び低測定力にて走査測定する形状測定装置用プローブ及び形状測定装置に関する。
測定物の外側面、内側面、及び穴径等を測定可能な従来のプローブとして、特許文献1に開示されるものがある。図18A,図18Bは、特許文献1に記載された従来の三次元形状測定装置用プローブ310の構成を示す図である。該プローブ310は、測定物の鉛直方向又は略鉛直方向に延在する側面を測定するためのプローブであり、水平方向又は略水平方向に延在する面を測定することはできない。
該プローブ310では以下のように測定動作が行われる。図18Aにおいて、被測定面Sに対してプローブ310がYZ方向に動くとき、被測定面SにおけるX方向への変位に従って、スタイラス301を有するアーム303は、ほぼX方向に沿って傾く。一方、半導体レーザ投光部306からレーザ光がアーム303の上面のミラー302に照射されており、ミラー302からの反射光に基づきアーム303の傾きが光位置検出手段307にて検知される。検知された傾きが一定になるように、プローブ310全体をX方向に動かし、該移動量からプローブ310全体のX座標測定値を得、さらに該X座標測定値に光位置検出手段307にて検出されたスタイラス301の変位量を加算することにより、被測定面SのX方向への変位量を示すX座標が高精度に測定される。このようにプローブ310では、その構造上、測定物のY方向の位置は測定できない。
このような問題に鑑み、出願人は、穴形状、測定物の側面形状を測定でき、かつ水平任意方向に傾斜できるプローブに関して出願した(特許文献2参照)。図19は、上記出願に記載された形状測定プローブの構造を示す図である。
図19において、形状測定装置用プローブ351は、形状測定装置371に備わるもので、スタイラス361を有する測定面接触部材360は、取付用部材362に対して支点部363を中心に水平方向の任意方向に揺動可能に連結されている。連結部材364は、コイルバネからなり、非測定時は、測定面接触部材360の中心軸を鉛直方向に保持し、測定時はスタイラス361を測定物に押し付ける力を発生させる。そして図20に示すように測定面接触部材360の上部に固定されたミラー365のX,Y軸周りの傾きを傾斜角度検出部366により検出する。そして形状測定装置371によってプローブ351全体を測定面に対し、スタイラスの押し込み量が一定になるように動作させるとともに、プローブ351のXYZ位置を検出し、その値を前記ミラー365の傾きから換算したスタイラスの水平方向の変位を加えることにより、高精度にスタイラスの位置を検出する。この構成により、測定物を回転させることなく、測定物の任意方向の側面を測定できる。
特許第3075981号公報
特願2005−105915号
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、スタイラス301は水平方向の1方向のみ揺動可能で、鉛直軸を中心軸とする円筒面の全周形状を測定するためには円筒面を回転させる必要があった。そのため、測定物を回転させる機構が必要となり、回転機構の中心軸の芯ぶれが測定誤差となる課題を有していた。また、測定物を回転させる方法では複雑な断面をもつ被測定面は測定できないという課題も有していた。
また、特許文献2の構成では、スタイラス361は、水平の任意方向に傾斜可能であるが、連結部材364であるコイルバネ力を弱くする必要があるため、測定面接触部材360の取付用部材362に対する支点が水平方向に移動し、移動誤差が発生する場合がある。これに対しては水平移動方向のセンサを設けて、その移動誤差を補正することも可能であるが、構成が複雑になる。また、コイルバネを用いているため、測定面接触部材の重量を持ち上げる力よりも、わずかに大きい力、すなわちワークに押し付ける力、例えば30mgfだけ大きい力を発生する必要があり、その調整が困難である。
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、スタイラスが水平の任意方向に揺動可能に構成され、非測定時はスタイラスを中立位置に保持し、測定時は測定物に微小測定圧を発生させることを可能にするとともに、スタイラス揺動の支点位置がずれにくく、かつ簡単な構成で調整が容易な形状測定装置用プローブ及び形状測定装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成している。
本発明の第1態様によれば、アームと前記アームの先端に配置され測定物の被測定面に接触するスタイラスを有する測定面接触部と、
前記測定面接触部を形状測定装置に取り付ける取付用部材と、
前記測定面接触部に設けられた支点部材と前記取付用部材に固定され前記支点部材が載置される載置台とを備え、前記支点部材を支点として揺動可能に前記測定面接触部と取付用部材とを連結させる連結機構と、
互いに鉛直方向に対向するように配置された、前記測定面接触部に設けられた可動側部材と前記取付用部材に設けられた固定側部材を有し、前記可動側部材と固定側部材が非接触の状態で磁気的吸引力を発生させるように構成され、当該磁気的吸引力により前記アームが鉛直方向に向くように前記測定面接触部を付勢させる付勢機構を備える、形状測定装置用プローブを提供する。
上記構成において、前記可動側部材と前記固定側部材は、一方が永久磁石で構成され、他方が磁性体で構成されていてもよい。
また、前記可動側部材と前記固定側部材は、双方ともに永久磁石で構成され、互いに異極が対向するように配置されていてもよい。
また、前記支点部材は針状の突起で構成され、前記載置台は前記支点部材の先端を嵌入可能な円錐溝を有し、前記円錐溝の最深部と前記支点部材の尖端との接触部を揺動中心として前記測定面接触部と前記取付用部材が揺動可能に連結されるように構成してもよい。
前記測定面接触部は、中央に横方向に延在する貫通穴が設けられた本体部を有し、前記本体部の外側下壁に前記アームが固定されるとともに、前記本体部の貫通穴内の内側上壁から前記支点部材が垂下するように構成され、
前記載置台は、前記貫通穴を貫通して延在するように構成することもできる。
前記測定面接触部は、前記支点部材に対してスタイラスと反対側に延在する延伸部と、前記延伸部の先端に設けられ前記可動側部材を保持する可動側保持部を備え、
前記取付用部材は、筒状の本体部の内側面に、前記可動側保持部に対して前記支点部材と同じ側に設けられ、前記固定側部材を保持する固定側保持部を備えるように構成してもよい。
前記可動側保持部はリング状に構成され、その下面側に複数の可動側部材を間隔をおいて保持し、
前記固定側保持部は、各可動側部材に鉛直方向に対向する位置に各可動側部材に対応させて複数の固定側部材を保持するように構成してもよい。
前記取付用部材は、筒状の本体部の内側面に、前記測定面接触部に接触することによって、前記測定面接触部の揺動幅を規制する規制部材を有するように構成してもよい。
本発明の第2態様によれば、前記形状測定装置用プローブの測定面接触部に測定用レーザ光を反射するミラーを有する第1態様の形状測定装置用プローブと、
上記形状測定装置用プローブへ照射され測定物の被測定面における測定点の位置情報を求めるための測定用レーザ光を発生するレーザ光発生部と、
上記形状測定装置用プローブに備わるミラーにて反射した反射光に基づき上記形状測定装置用プローブの測定面接触部の傾斜角度を検出して上記測定点の位置情報を求める測定点情報決定部と、
を備える形状測定装置を提供する。
上記第2態様において、上記測定点情報決定部は、上記傾斜角度を検出する傾斜角度検出部と、該傾斜角度検出部から得られた角度信号を上記形状測定装置用プローブに備わる取付用部材に対するスタイラスの変位量に変換するスタイラス位置演算部と、上記測定用レーザ光を用いて、上記取付用部材に対する上記測定点の相対位置座標値を求める位置座標測定部と、上記相対位置座標値に上記スタイラスの変位量を加算して上記測定点の位置情報を求める加算部とを有するように構成することもできる。
ここで、上記取付用部材と上記測定物との相対位置を上記被測定面に沿って2次元又は3次元に移動するステージと、
上記角度信号の大きさをほぼ一定としかつ上記スタイラスを有する測定面接触部材をいずれの方向にも傾斜させるように上記ステージの動作を制御する制御装置と、をさらに備えるように構成してもよい。
また、上記第2態様において、上記傾斜角度検出部は、上記反射光を受光する光検出器を有し、該光検出器は、それぞれ独立して光電変換を行う複数の受光領域に区画された一つの受光面を有するように構成することもできる。
ここで、上記測定用レーザ光は、発振周波数安定化レーザ光であり、上記反射光を2つに分離し分離した一方の光を上記光検出器へ照射し、他方の光を、上記ミラーに照射される測定用レーザ光の光軸に沿ったZ方向における上記スタイラスの位置を測定し上記位置座標測定部に備わる傾斜角度検出部へ照射する光分離部をさらに備えるように構成してもよい。
本発明の第3態様によれば、第1態様の形状測定装置用プローブと、
前記取付用部材の円筒状の本体部の内側面に設けられた、前記測定面接触部との距離を検出する複数の位置検出センサと、
前記複数の位置検出センサからの出力に基づき上記形状測定装置用プローブの測定面接触部の傾斜角度を検出して上記測定点の位置情報を求める測定点情報決定部と、
を備える形状測定装置を提供する。
また、前記位置検出センサは、前記取付用部材の本体部の中心位置に対して90゜の角度となるように2箇所に設けるように構成してもよい。
本発明の第1態様の形状測定装置用プローブ、第2、第3態様の形状測定装置によれば、連結機構により測定面接触部と取付用部材が揺動可能に連結され、さらに、水平な任意の方向に傾斜可能な測定面接触部を、磁石による磁力を用い非接触でアームが鉛直方向になるように付勢して姿勢保持することができる。これにより、スタイラスが測定物を押圧する力、すなわち測定力を微小に発生させるため、コイルバネのように接触力による微小な力の誤差が少なく、不慮の衝撃による破損の問題も少なくなる。よって、スタイラスの軸は鉛直方向に限定されず、傾いた状態での使用も可能であり、例えば、任意形状の穴内面の表面や穴径測定、外側面の形状測定等を高精度、低測定力で走査測定可能である。
さらに、取付用部材と測定面接触部とは、支点部材が載置台の上に載置される構成の連結機構により連結されているため、重力などにより両者が脱落することがない。
また、固定側部材と可動側部材は、少なくともいずれか一方を永久磁石で構成すれば、吸引力を発揮することができ、電磁石のように電流を流すことが無いので、構成が簡単になり、電気熱による影響もない。
また、連結機構として、円錐溝と尖端で構成された支点をとすることにより、支点の位置ずれを防止することができる。さらに、延伸部の先端に可動側部材を保持するとともに、可動側保持部に対して支点側に固定側部材を保持する構成をとれば、磁石の吸引力により、連結機構における円錐溝と尖端で構成された支点を押えつける構成となる。したがって、支点の位置ずれがおこりにくくなる。
また、測定面接触部の本体部に設けられた貫通穴に棒状の載置台を貫通させて保持する構成によれば、測定面接触部と取付用部材との脱落を確実に防止することができる。
互いの間隔を空けてそれぞれ複数設けるようにし、それぞれの対となる固定側部材と可動側部材が鉛直方向に対向するようにすることよって、支点部材の時点を中心とした回転方向の位置ずれに対しても中立位置に戻すように付勢でき姿勢保持を行うことができる。
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。以下、本発明の第1実施形態である形状測定装置、該形状測定装置に備わる形状測定装置用プローブ及び上記形状測定装置について、図を参照しながら以下に詳しく説明する。
上記形状測定装置は、従来、精度良く測定できなかった穴や外形、任意形状の側面形状をナノメートルオーダーの高い精度で、さらに低測定力で短時間で測定可能とする装置である。測定対象としては、例えば、極めて高精度が必要とされるモータの軸受け、インクジェットプリンタにおけるノズル、及び自動車エンジンにおける燃料噴射ノズル等における穴形状であり、また、流体軸受けに形成され潤滑剤を収容する溝部の形状、さらには、形状測定装置に備わるマイクロエアスライドの内径、円筒度等である。また、半導体回路パターンにおけるトレンチ部分も測定対象に含めることができる。
また、上記形状測定装置用プローブを備えた形状測定装置にて測定可能な被測定面は、該被測定面における接線方向と垂直方向との交差角度θにて0度から最大で約30度までの間の角度を有する面である。
まず、上記形状測定装置用プローブについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる形状測定装置に用いられる形状測定装置用プローブの斜視図である。図1に示す形状測定装置用プローブ101は、上記形状測定装置201に備わり、測定対象となる測定物60の被測定面61に接触する部分を有する。特許文献1に開示されている従来のプローブ310では、アーム303がX方向に沿う一方向にのみ傾斜可能であるのに対し、本プローブ101では、X,Y方向を問わずいずれの方向にもアーム122を傾斜可能とする構成を有する。このようなプローブ101は、取付用部材2と、測定面接触部としての機能を果たす一例に相当する揺動部材3と、連結機構4とを備える。
取付用部材2は、形状測定装置201に固定され、又は着脱可能に取り付けられるブロック部材である。取り付け用部材2は、揺動部材3が揺動するのに対し、固定された部材であり、形状測定装置201から照射される測定用レーザ光211を通過可能とするため、当該取付用部材2を貫通するレーザ光用開口111を中央部に有する。
図2は、図1における形状測定装置用プローブを対称面で切断したときの斜視図である。取付用部材2は円筒形をしており、その内部に揺動部材3が収納されるような位置関係を有する。揺動部材3と取付用部材2とは、上述のように連結機構4により連結されている。連結機構4は、ミラー123に照射される上記測定用レーザ光211の光軸211aに対して交差するいずれの方向にも、揺動部材3を傾斜させて揺動可能にして揺動部材3を取付用部材2に支持する機構である。なお、本実施形態では、上記光軸211aは、鉛直方向であるZ軸方向に一致する。
本実施形態において、連結機構4は、取付用部材2に固定された角柱の載置台41と、揺動部材3に取り付けられた支点部材42とにより構成されている。載置台41は、その上面に円錐形の溝41aが形成されており、支点部材42の尖端が当該溝41aに嵌入する。両者の嵌入時においては、載置台41の円錐溝最下点に支点部材42の尖端位置が接触するように構成される。このような構成とすることによって、揺動部材3と取付用部材2とは、当該支点部材42と円錐溝41aとの接触部分を揺動中心として、揺動可能に連結される。なお、揺動部材3は、支点部材42が載置台41の溝41aに嵌入して連結した場合、アーム122が鉛直方向を向くように、重心が支点部材42の先端の鉛直方向下側に位置するように構成されていることが好ましい。
図3は、図1の形状測定装置用プローブの揺動部材をYZ平面で切断したときの断面図である。揺動部材3は、測定物60の被測定面61に接触するスタイラス121と取付用部材2を通過した測定用レーザ光211を反射するミラー123を有し、被測定面61の形状に応じたスタイラス121の変位に対応して取付用部材2に対して揺動する部材である。ミラー123は、揺動部3の中心部に固定され、形状測定装置101から発する測定用レーザ光211を受ける。
揺動部材3は、本実施形態では、中央に図示X軸方向に貫通して設けられた貫通穴124を備える本体部125を備え、本体部125の外側下壁、すなわち、本体部125の下面125aから、先端にスタイラス121を設けたアーム122が垂下されている。又、本体部の上面には、上記ミラー123が取り付けられている。
また、本体部125の内側上壁すなわち、貫通穴124の上面124aには、針状の支点部材42が設けられている。連結機構4の載置台41は、本体部125の貫通穴124を貫通して配置される。したがって、揺動部材3と取付用部材2とが脱落することが確実に防止される。
なお、本実施形態では、スタイラス121は、例えば約0.3mm〜約2mmの直径を有する球状体であり、アーム122は、一例として、太さが約0.7mmで、アームが固定される本体部下面125からスタイラス121の中心まで約10mmの長さLである棒状の部材である。これらの値は、被測定面61の形状により適宜変更される。また、揺動部材3の構成も、支点により載置台41に揺動可能に配置される構成であれば、上述の構成に限定するものではない。
また、本体部125の上面125bの周縁部にはZ軸方向に伸びる延伸部127が4箇所に設けられている。隣り合う延伸部127は、その間に隙間127aがあくように配置され、当該隙間127aに後述する固定側部材52の突出部1332が配置される(図5参照)。
また、延伸部127の先端には、可動側保持部128が設けられている。可動側保持部128は、リング状の部材であり、延伸部127からXY軸方向に張り出している。可動側保持部128には、4箇所に可動側部材の一例である可動側磁石51が同一半径上に等間隔に設けられている。可動側磁石51は、隣り合う延伸部127の間の隙間127aに対応する位置に設けられている。
図4は、図1の形状測定装置用プローブの取付用部材をYZ平面で切断したときの断面図である。取付用部材2は、円筒形の本体部131と固定側部材の一例である固定側磁石52とを取り付ける固定側保持部材133とを備える。本体部131は、上述のように中央にレーザ光用開口111となっている。また、本体部の下端部は、載置台取付部132となっている。当該載置台取付部132は、載置台41を取付用部材に固定するためのものであり、具体的な構成は後述する。
固定側保持部材133は、図5に示すように、リング状に構成されたリング部1331と4箇所に設けられた突出部1332とを備える。突出部1332は、固定側磁石52を保持するものであり、等間隔にかつ同心円状に設けられる。固定側保持部材133は、本体部131に固定ネジ134により固定される。固定側保持部材133が取付用部材2に取り付けられる場合、隣り合う突出部1332の間136に、揺動部材3の延伸部127が位置するような向きに固定される。これにより、揺動部材3の可動側保持部128に保持される可動側磁石51と固定側磁石52との位置関係は、それぞれ鉛直方向であるZ軸方向に並んで配置されることとなる。
なお、可動側磁石51と固定側磁石52は、それぞれの対について、互いに吸引力が働く向きに固定される。本実施形態においては、全ての磁石51,52の上がN極、下がS極になるように固定されている。このように配置することにより、揺動部材3が支点を中心として回転して揺動したとしても、両磁石の吸引力により当該回転を戻す方向に修正される。なお、隣り合う可動側磁石51と固定側磁石52において、磁石の向きを異ならせるようにしてもよい。
図6は、図1に示す形状測定装置用プローブの組み立て分解斜視図である。なお、図6においては、組立構造の理解のため、複数ある部材など一部の記載を省略している場合がある。上述のように、揺動部材3と取付用部材2とは、連結機構4の載置台41が揺動部材の本体部125の貫通穴124を貫通することによって連結される。
また、載置台41は、取付用部材2の載置台取付部132に取り付けられる。載置台取付部132は、載置台41を陥入するための切り欠き137を備えており、当該切り欠き137に、揺動部材3と連結された載置台41を載置する。
載置台41は、X軸方向への位置ずれを防止するために、第1固定部材139により固定される。第1固定部材139は、板状部材であり、載置台取付部132に設けられた固定穴138に螺合する取付ネジ140により固定される。
また、載置台は、Y軸方向への位置ずれを防止するために、第2固定部材142に固定される。第2固定部材142は、板バネ状の部材であり、載置台取付部132に設けられた固定穴141に螺合する取付ネジ143より固定される。
上述のように構成される、本実施形態におけるプローブ101は、以下のように動作する。上記構成によれば、可動側磁石51と固定側磁石52の吸引力により、揺動部3は、下方向に力を受け、支点部材42の先端は、載置台41の円錐溝41a中心に接し、位置ずれなどが防止される。また、取付用部材2に揺動可能に連結されている揺動部材3は、可動側磁石51と固定側磁石52の吸引力により、アームが鉛直方向に延在する中立位置となるように付勢されている。揺動部3は揺動可能であるが、揺動部3の中心軸が、傾いた場合、前記可動側磁石51と固定側磁石52の距離が遠ざかることになり、磁石の性質により、一対の磁石を互いに近づける方向に復元力が働く。よって、揺動部3全体も傾きを戻す方向に復元力が働く。同様に揺動部が支点を中心として回転した場合も、回転を戻す方向に復元力が働く。これにより、非測定時に揺動部3は、アームの延在方向が鉛直方向に一致するように付勢及び姿勢保持される。
一方、後述するように測定物60の被測定面61の形状測定は、揺動部材3に取り付けられているスタイラス121を被測定面61に所定の押圧力にて押しつけて行われる。該押圧力は、スタイラス121を被測定面61に接触させた状態で取付用部材2を測定物60側へ僅かに移動させることで、揺動部材3は傾斜する。該傾斜により、揺動部材3には磁石の吸引力が作用する。すなわち、可動側磁石51と固定側磁石52の吸引力により、上記スタイラス121を被測定面61に押圧する押圧力を生じさせ、揺動部材3が傾斜しておらず、揺動部材3のアームが鉛直方向に延在するような初期状態の中立位置へ揺動部材3を復元させる復元力を生じさせる。その結果、スタイラス121は被測定面61に所定の押圧力つまり測定力にて押圧されることになる。すなわち、測定時は、スタイラス121先端が測定物に微小な測定力を加えた状態で接することになる。なお、一実施例として、測定力は0.3mNとすることができる。測定力は、可動側磁石51と固定側磁石52の磁力及び、両者の間隔により調整することができる。
本実施例においては、スタイラス121の先端を0.3mNで押したときに、先端の変位が10μmになるように、磁石の強さ、磁石間の距離等を選定している。先端に一定の測定力を加える方法は後述のとおりである。
次に、上述したように構成される形状測定装置用プローブ101を備えた形状測定装置について、以下に説明する。
上記形状測定装置は、一般的に、プローブを被測定物に接触させ、該接触力がほぼ一定になるように上記プローブの移動を制御しつつ、上記プローブを測定物60の被測定面61に沿って移動させて、レーザ測長器と基準平面ミラーとを利用して、上記プローブと基準面との位置関係に基づき、被測定面61の表面形状を測定、演算するものである。
このような形状測定装置として、主として例えば約400mm角の大きさを有する比較的大型の測定物の測定用であり、図7に示すように、測定物60を定盤上に固定して、プローブをX軸、Y軸、及びZ軸の全方向に移動させるタイプと、主として例えば約200mm角以下の大きさを有する中型及び小型の測定物の測定用であり、図8に示すように、測定物60を載置したステージをX軸及びY軸方向に移動させ、一方、プローブのみをZ軸方向に移動させるタイプとが存在する。上述した形状測定装置用プローブ101は、いずれのタイプの測定装置にも適用可能である。
図8に示す形状測定装置290は、上述の中、小型の測定物用の測定装置に相当する。該形状測定装置290において、291はステージであり、該ステージ291は、石定盤292上に設置され、平面上で互いに直交するX軸及びY軸方向に可動であるX−ステージ2911及びY−ステージ2912を有し、さらに測定物60を載置する。293はプローブ101をZ軸方向に可動とするZ−テーブルであり、石定盤292に立設された支柱2921にZ方向に可動として取り付けられている。また、210は、被測定面61の測定点61aの位置情報を求めるための測定用のレーザ光211としての発振周波数安定化He−Neレーザ光を発生するレーザ光発生部である。220は、レーザ光発生部210にて発生したレーザ光211を用いて被測定面61における測定点61aの位置情報を得るための光学系、並びにX軸、Y軸、Z軸方向の各基準面からのレーザ光と上記測定点61aからのレーザ光との干渉に基づき測長を行う公知のレーザ測長部を有する測定点情報決定部である。該測定点情報決定部220については追って詳しく説明する。また、294は、ステージ291を駆動するための駆動部であり、280は制御装置である。該制御装置280は、被測定面61を走査するとき、プローブ101における揺動部材3を特定方向にのみ傾斜させず、いずれの方向にも揺動させるように、駆動部294を制御しステージ291の移動方向及び移動量を制御する。
図7に示す形状測定装置201は、上述の大型測定物用の測定装置に相当する構成を有する。なお、上述の形状測定装置290と同一又は同様の機能を果たす構成部分については、同じ符号を付し、ここでの説明を省略する。295は、石定盤292上に設置されX軸及びY軸方向に可動なX−ステージ2951及びY−ステージ2952を有するステージであり、Z−テーブル293、レーザ光発生部210、及び測定点情報決定部220を載置している。よって、ステージ295は、Z−テーブル293、レーザ光発生部210、及び測定点情報決定部220をX軸及びY軸方向に移動させることができる。また、229は、Z軸方向における基準面を有する基準ミラーである。なお、本実施形態では、上述した形状測定装置用プローブ101を当該形状測定装置201に取り付けていることから、以下の説明では、当該形状測定装置201を例に採る。しかしながら、形状測定装置290においてもプローブ101を用いた被測定面61の測定動作については形状測定装置201の場合と変わるところはない。
上記測定点情報決定部220について、図9から図11を参照して詳しく説明する。測定点情報決定部220には、測定点61aの位置情報を得るための光学系221と、傾斜角度検出部222と、スタイラス位置演算部223と、位置座標測定部224と、加算部225とを有する。これらの傾斜角度検出部222、スタイラス位置演算部223、位置座標測定部224、及び加算部225は、上記レーザ測長部に相当する部分であり、光学系221に接続され実際に上記位置情報を求めるための構成部分である。
レーザ光発生部210にて発生した測定用レーザ光211は、被測定面61の測定点61aの3次元座標位置を求めるため、光学系221にて4つに分光される。よって光学系221は、X、Y、Zの座標用の第1光学系221aと、揺動部材の傾斜角度用の第2光学系221bとの計4つの光学系を有する。第1光学系221aには、ステージ295のX軸方向及びY軸方向における移動量、つまり被測定面61のX軸方向及びY軸方向における移動量を検出するため、図示を省略しているがX軸方向に直交し鏡面にてなる基準面を有するX軸基準板、及びY軸方向に直交し鏡面にてなる基準面を有するY軸基準板を有する。また、さらに、ステージ295の移動時に当該ステージ295に生じるZ軸方向におけるステージ295の、いわゆるうねり成分を検出するためのZ基準板も設けられている。各基準板の基準面は、平坦度が0.01ミクロンオーダーに構成されている。
被測定面61の形状測定方法は、例えば特開平10−170243号公報に記載されるように、上記各基準面に反射した反射レーザ光の位相の変化を、上記各基準面へ照射するレーザ光と上記反射レーザ光との干渉信号を計数することで検出する、公知のレーザ測長方法を用いる。該レーザ測長方法では、例えば特開平4−1503号公報に開示されるように、上記基準面へ照射されるレーザ光をプリズム等の分岐部材にて参照光と測定光とに分け、かつ上記参照光と測定光との位相を90度ずらす。そして測定光を上記基準面へ照射し反射させ、戻って来た反射光と上記参照光とにおける上記位相のずれによる干渉光を電気的に検出して、得られた干渉縞信号から作成するリサージュ図形に基づき基準点と上記基準面との距離が測定される。
上記位置座標測定部224は、このような測長方法を実行する部分であり、被測定面61における測定点61aにおけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値の測長を行う検出部224a〜224cを有する。本実施形態では図7に示すように、石定盤292上に載置された測定物60に対してステージ295が移動することから、上述の、測定点61aにおけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値は、Z−テーブル293に取り付けられているプローブ101における取付用部材2に対する測定点61aの相対位置座標値と換言することができる。なお、検出部224cは、形状測定装置用プローブ101のスタイラス121のZ座標値の測長を行う部分であることから、スタイラス位置測定器として機能する一例に相当する。これらの検出部224a〜224cからの検出結果と、以下に説明する上記揺動部材3の傾斜角度から求まる検出結果とに基づき被測定面61の形状が位置座標測定部224及び加算部225にて演算される。
上記第2光学系221bは、上記測定用レーザ光211の内、形状測定装置用プローブ101の揺動部材3に取り付けられているミラー123からの反射光を傾斜角度検出部222へ導く光分離部2211を有する。
上記傾斜角度検出部222及び上記スタイラス位置演算部223について説明する。図9に示すように、Z−テーブル293の下端に取り付けられている形状測定装置用プローブ101に備わる揺動部材3に取り付けられているミラー123の中心点123aへ、測定用レーザ光211の一部がフォーカスレンズを介して照射される。照射されたレーザ光211は、ミラー123にて反射し、該反射光211bは、光分離部2211に備わるミラー2211aにて傾斜角度検出部222へ照射される。傾斜角度検出部222は、反射光211bを受光し電気信号に変換する受光面2221を有する光検出器にて構成され、受光面2221は、それぞれ独立して光電変換を行う複数の受光領域に区画されている。本実施形態では図10に示すように、受光面2221を格子状、つまり十字状に4つの受光領域222a〜222dに区画している。なお、受光領域の数、及び形状は、図示の形態に限定されるものではなく、測定精度等との関係に基づいて適宜設定することができる。
被測定面61の非測定時には、プローブ101のアーム122は鉛直方向に沿って配置されている。よって非測定時には、上記反射光211bは、鉛直方向に沿ってミラー123へ照射される測定用レーザ光211の光軸211aに平行に進み、ミラー2211aにて反射して傾斜角度検出部222の受光面2221の中央部へ照射される。この場合の受光面2221における反射光211bの照射領域を、図11に点線にて示し非測定時照射領域2222とする。
一方、形状測定装置用プローブ101の説明で述べたように、被測定面61の測定は、ほぼ一定の測定力にてスタイラス121を被測定面61へ押圧して行われることから、上述したようにプローブ101の揺動部材3は、取付用部材2に対して傾斜する。よって、反射光211bは、光軸211aと交差してミラー2211aへ進み、傾斜角度検出部222の受光面2221では中央部から外れた基準照射領域2223へ照射される。また、上述したように測定時において、揺動部材3は、支点部材42の尖端を支点として、特定方向に限定されることなくいずれの方向にも揺動可能である。よって、測定対象となるような例えばナノオーダーでの微細な凹凸が被測定面61に全く存在しないとすると、基準照射領域2223は、図11に示すように、受光面2221の中心点2221aを中心とした一定半径にてなる円の円周2224に沿って位置することになる。
受光面2221への反射光211bの照射に応じて傾斜角度検出部222は、電気信号を生成するが、受光面2221が4つの受光領域222a〜222dに区画されていることから、反射光211bの照射場所から揺動部材3の傾斜角度を検出することができる。即ち、受光領域222aを「A」、受光領域222bを「B」、受光領域222cを「C」、受光領域222dを「D」とすると、各受光領域222a〜222dから得られる電気信号について、(A+B)−(C+D)を行うことでX軸方向における揺動部材3の傾斜角度を求めることができ、(A+D)−(B+C)を行うことでY軸方向における傾斜角度を求めることができる。このように傾斜角度検出部222は、各受光領域222a〜222dから得られる電気信号について、(A+B)−(C+D)、及び(A+D)−(B+C)を行い、これらを角度信号として、上記スタイラス位置演算部223へ送出する。
スタイラス位置演算部223は、上記角度信号をプローブ101に備わるスタイラス121の変位量に変換する。
一方、実際には、被測定面61には上記微細凹凸が存在することから、図11に変位照射領域2225として示すように、上記微細凹凸に対応して、円周2224から外れた位置に反射光211bが照射される。そして、上述した基準照射領域2223の場合と同様に、変位照射領域2225への反射光211bの照射により、傾斜角度検出部222は角度信号を送出し、スタイラス位置演算部223は、スタイラス121における上記微細凹凸に対応した変位量を求める。したがって、基準照射領域2223に対応する、スタイラス121の基準変位量と、変位照射領域2225に対応する凹凸変位量との差を求めることで、上記微細凹凸の大きさを求めることができる。
なお、この測定方法の前提として、支点部材42の尖端を支点として、揺動部材3がいずれの方向にも首振りして傾斜可能な構成において、上記基準変位量を一定若しくはほぼ一定とする必要がある。すなわち、揺動部材3がいずれの方向にも揺動することから、受光面2221における反射光211bの照射領域は、測定時には、例えば上記円周2224に沿って移動することになる。このような状況において、反射光211bが基本的に常に基準照射領域2223に照射される、つまりいずれの方向に揺動部材3が揺動した場合でも揺動部材3の傾斜角度αが一定若しくはほぼ一定である必要がある。したがって、測定時には、制御装置280にてステージ295の駆動部294を制御して、図12及び図13に示すように、スタイラス121の走査方向121aに垂直な方向121bに対する揺動部材3の傾きβが一定になるようにステージ295の移動量及び移動方向を制御し走査方向121aを修正する必要がある。
上述のようにしてスタイラス位置演算部223にて、被測定面61の測定点61aの上記微細凹凸の大きさを求めると同時に、上述したように上記位置座標測定部224にて、測定点61aにおけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値が求められている。よって、加算部225は、位置座標測定部224にて求まる、測定点61aにおけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値と、スタイラス位置演算部223にて求まる測定点61aの上記微細凹凸の大きさとを加算して、上記微細凹凸量を加味した測定点61aにおける測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値を求める。
すなわち、位置座標測定部224にて求まる測定点61aにおけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値をX1,Y1,Z1とし、スタイラス位置演算部223にて求まる測定点61aにおける上記微細凹凸の大きさのX座標値を(A+B)−(C+D)、及びY座標値を(A+D)−(B+C)とすると、加算部225にて求まる上記測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値は、X1+E{(A+B)−(C+D)}、Y1+F{(A+D)−(B+C)}、Z1 となる。ここで、E及びFは、補正係数である。
さらにまた、スタイラス121は図示のように球状であることから、上記測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値は、スタイラス121の中心座標である。したがって、測定点61aの真の座標値は、プローブ101の走査方向に垂直な方向に、スタイラス121の半径値だけずらした値となる。
以上のように構成される形状測定装置201における動作、すなわち、測定物60の被測定面61に対する形状測定方法について、以下に説明する。なお、形状測定装置用プローブ101の説明で述べたように、プローブ101を取り付けた形状測定装置201にて測定可能な被測定面61は、被測定面61aにおける接線方向と垂直方向との交差角度θにおいて、0度から最大で約30度までの間の角度にてなる被測定面である。また、当該形状測定方法は、制御装置280の動作制御にて実行される。
上述したように、スタイラス121を被測定面61に接触させ、さらに例えば約0.3mN(=30mgf)の測定力にてスタイラス121が被測定面61を押圧するように、測定物60に対して、プローブ101を取り付けたZ−テーブル293を有するステージ295を相対的に配置する。これにて、傾斜角度検出部222の受光面2221には、反射光211bが基準照射領域2223に照射され、上述したように、スタイラス位置演算部223及び位置座標測定部224を介して、加算部225により、被測定面61の測定点61aにおける基準となるX座標値、Y座標値、及びZ座標値が求められる。
例えば、測定物60が円筒形で、その外周面を一周測定する場合を例に採ると、上述のように、図12及び図13に示す垂直方向121bに対する揺動部材3の傾きβが一定若しくはほぼ一定に維持されるように、すなわち、いずれの方向にも揺動部材3を傾斜させ、かつ鉛直方向に対する揺動部材3の傾きαが一定若しくはほぼ一定に維持されるように、制御装置280にてステージ295の駆動部294を制御して、X軸方向及びY軸方向へのステージ295の移動量及び移動方向を制御する。なお、本実施例ではスタイラス121先端の変位が10μmを保つような角度に調整することにより、測定力を30mgfに保つことができる。
このようにして被測定面61の全周について、揺動部材3がいわゆる首振り運動や味噌すり運動するようにして、被測定面61の測定を行う。これにより、反射光211bは、傾斜角度検出部222の受光面2221における各受光領域222a〜222dを、例えば上記円周2224に沿うようにして一周する。このとき、被測定面61の上記凹凸に対応して反射光211bの照射領域は、基準照射領域2223から変位照射領域2225へ移動する。
このような測定動作に基づき、上述したように、スタイラス位置演算部223及び位置座標測定部224を介して、加算部225により、被測定面61の測定点61aにおける、上記凹凸も含めて、上記測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値が求められる。
以上のように、上記構成の形状測定装置用プローブ101によれば、水平な任意の方向に傾斜可能な揺動部3を、磁石による磁力を用い非接触で中立位置に保持するとともに、スタイラス121が測定物60を押圧する力、すなわち測定力を微小に発生させるため、コイルバネのように接触力による微小な力の誤差が少なく、不慮の衝撃による破損もしづらい。かつ可動側磁石9、固定側磁石11の吸引力により、連結機構4における円錐溝41aと尖端で構成された支点部材42を押えつける構造のため、支点の位置ずれが少ない。これにより、本プローブ101はスタイラス121の軸は鉛直方向に限定されず、傾いた状態での使用も可能になる。また、電磁石のように電流を流すことが無いので、構成が簡単になり、電気熱による影響もない。
なお、本実施例の形態において、可動側磁石9と固定側磁石11による吸引力を用いたが、固定側、可動側のどちらか一方が磁石ではなく、磁性体としても同じ効果が得られる。
また、本実施形態にかかる形状測定装置201によれば、プローブ101において、スタイラス121を有する揺動部材3は、いわゆる首振り運動や味噌すり運動をすることができる。したがって、測定物60の例えば内周面の測定を行う場合、測定物60を回転させることなく、プローブ101をX軸方向及びY軸方向に移動させることで、上記内周面の測定を行うことができる。よって、測定装置において複雑な構成を採ることなく、測定物60の側面の傾斜方向を問わずに形状測定が可能となる。また、測定物60を回転させる必要がないことから、測定物60の中心軸の芯ぶれが発生するというような問題も生じず、被測定面の測定誤差の低減を図ることもできる。よって、例えばレンズの外径や穴径等が測定可能であり、また、例えば図14及び図15に示す流体軸受けのような測定物60に形成され潤滑剤を収容する溝部55の形状を測定することも可能となる。よって、形状測定装置201は、精密及び微細化に向かう産業の発展に幅広く貢献できる。
なお、形状測定装置201では、測定物60を石定盤292上に固定し、プローブ101をX、Y,Z軸方向に移動させたが、逆に、プローブ101を固定して測定物60を移動させてもよい。要するに、測定物60とプローブ101とを相対的に移動させればよい。
次に本発明にかかる第2実施形態にかかる形状測定装置に用いられる形状測定装置用プローブについて説明する。本実施形態にかかる形状測定装置用プローブ101aは、第1実施形態にかかる形状測定装置用プローブ101と大部分の構成を同じにするものであるので、構成が異なる点について主に説明する。
図16は、本発明の実施の形態2の形状測定装置用プローブを対称面で切断したときの斜視図である。図16において、揺動部材3の傾き検出として、非接触変位センサ151、152を設けている。センサの種類としては静電容量型のものが考えられる。非接触変位センサ151、152は、取付用部材2の本体部131に設けられており、揺動部材3の可動側保持部128との距離を測定する。可動側保持部128は、支点部材より離れた位置にあり、揺動部材3の傾きに対する変位量が大きく、より非接触変位センサ151,152と可動側保持部128との距離を高精度に測定することができる。
非接触変位センサ151、152は、互いに揺動部材3の中心に対して90゜の角度をなすように設けられており、これにより、それぞれ、揺動部材3の支点を中心としたX方向及びY方向の傾きを検出することができる。
また、揺動部材3の傾き量は、可動側保持部128の側面が非接触変位センサ151,152の先端に接触する範囲となる。よって、非接触変位センサ151,152は、揺動部材3の揺動幅を規制する規制部材としても機能する。
図17は、図16に示すプローブを備えた形状測定装置に備わる測定点情報決定部の構成を示す図である。本実施形態にかかる形状測定装置は、図9に示す測定点情報決定部と大部分の構成を同じにするものであるが、傾斜角度検出部の構成において異なる。
本実施形態における傾斜角度検出部は、形状測定装置用プローブの構成として、非接触変位センサ151,152を備えており、当該センサ151,152によって、非光学的に揺動部材3の傾きを検出する。すなわち、非接触変位センサ151、152は、図9における傾斜角度検出部222として機能する。すなわち、第1実施形態における傾斜角度検出部のように光学的に揺動部材3の傾斜角度を測定するものではないため、反射光を導くためのミラー2211aが不要となる。
以上説明したように、本実施形態にかかる形状測定装置は、上記第1実施形態にかかる形状測定装置の効果に加えて、揺動部材3の傾斜角度を光学的に検出しないため、光学系の構成をより簡略化することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、上記実施形態においては、支点部材は、突起状に設けられた部材であり、当該突起の先端が円錐形の溝に陥入するように構成されているが、載置台に上向きに突起状の部材が設けられ、揺動部材に設けられた円錐溝を支点部材としてもよい。
本発明は、任意形状の穴の内面や穴径の測定、及び任意形状の外側面の形状測定等を高精度及び低測定力にて走査測定する形状測定装置、該形状測定装置に備わるプローブに適用可能である。
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる形状測定装置に用いられる形状測定装置用プローブの斜視図である。
図2は、図1の形状測定装置用プローブを対称面で切断したときの斜視図である。
図3は、図1の形状測定装置用プローブの揺動部材をYZ平面で切断したときの断面図である。
図4は、図1の形状測定装置用プローブの取付用部材をYZ平面で切断したときの断面図である。
図5は、固定側保持部材の構成を示す図である。
図6は、図1の形状測定装置用プローブの組み立て分解斜視図である。
図7は、図1に示すプローブを備えた形状測定装置の一例を示す図である。
図8は、図1に示すプローブを備えた形状測定装置の他の例を示す図である。
図9は、図7に示す形状測定装置に備わる測定点情報決定部の構成を示す図である。
図10は、図9に示す測定点情報決定部に備わる傾斜角度検出部の平面図である。
図11は、上記傾斜角度検出部に対してプローブからの反射光が照射される状態を説明するための図である。
図12は、図1に示すプローブにて被測定面の測定を行うときのプローブの傾斜角度を説明するための図であり、測定物を平面図にて表した図である。
図13は、図1に示すプローブにて被測定面の測定を行うときのプローブの傾斜角度を説明するための図であり、測定物を側面図にて表した図である。
図14は、図1に示すプローブにて測定可能な測定物の一例の斜視図である。
図15は、図14に示す測定物の断面図である。
図16は、本発明の第2実施形態にかかる形状測定装置に用いられる形状測定装置用プローブを対称面で切断したときの斜視図である。
図17は、図16に示すプローブを備えた形状測定装置に備わる測定点情報決定部の構成を示す図である。
図18Aは、特許文献1に開示された従来の形状測定装置に備わるプローブの側面図である。
図18Bは、特許文献1に開示された従来の形状測定装置に備わるプローブの正面図である。
図19は、従来の他の形状測定装置の構成を示す図である。
図20は、図19の形状測定装置の揺動部材の傾斜状態を示す図である。