JPWO2005098889A1 - ガス放電表示パネル - Google Patents
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Abstract
Description
ここで前面側のパネルガラスの保護層の材料には、放電時のイオン衝撃から誘電体層を保護しながら、低い放電開始電圧で放電を発生させる機能が要求される。この目的でPDPの保護層としては特許文献2に開示されているように、優れたスパッタ耐性を持ち、二次電子放出係数の大きな酸化マグネシウム(MgO)を主成分とする材料が広く用いられている。
第一の問題として、従来の保護層では“放電遅れ”と呼ばれる問題がある。これはアドレス期間において、アドレス放電のためのパルスが電極に印加されてから実際に放電が発生するまでの時間のずれに相当する現象であって、放電遅れが大きいとアドレスパルス印加終了時点でもアドレス放電が生じない確率が高くなり、書き込み不良が発生し易くなる。これは、高速駆動になるほど発生し易い。この放電遅れの問題は、良好なPDPの画像表示性能を得る上で解決すべき課題である。
すなわち、保護層の表面は放電空間に露出しているが、上記MgO膜等の金属酸化物膜は、水(H2O)や二酸化炭素(CO2)等のガスを吸着し、水酸化化合物や炭酸化合物を容易に形成するという性質がある。PDP製造工程における大気中でのプロセスにおいては、大気中の油性不純物やCO2、H2O等の吸着により、MgOからなる保護層は汚染されやすい傾向にある。上記吸着ガスなどがMgO表面に吸着されると保護層の特性変化が起こり、2次電子放出効率が低下する。その結果、放電開始電圧を上昇させてしまい、PDPの駆動マージンを狭めてしまうという問題がある。
そこで従来では、例えば特許文献6に示されるように、保護層を2層構造とすることによって、性能の改善と安定性を高めようとする提案がなされている。具体的には比較的放電特性の優れた(111)配向させた第1の保護膜の上に、ガスが吸着しにくく、吸湿性を小さくした膜質の第2の保護膜を設け、これにより水分子やCO2等の不純物ガスの吸着を防ぐ2層構造が開示されている。
具体的には、特許文献3の技術では、MgOにSiを添加することで、ある程度不点灯領域の発生を抑制することができるが、一方で各セルにおける放電遅れ時間のバラツキが顕著になるという新たな問題が生じることが分かっている。
さらに特許文献5の技術においては、測定実験によって放電遅れを抑制する効果が不十分であることや放電開始電圧が上昇してしまうことが分かり、優れた表示性能を得る上では十分な効果を得られるとは言いにくいことが分かっている。
さらに前記第二の問題としても、以下の課題が残されている。
さらに特許文献6の技術においても、その2層構造の保護層に係る2次電子放出効率や放電開始電圧については開示されていないが、2次電子放出係数γは、最高でも従来の1層構成のMgOからなる保護層で得られる約0.2程度と同じレベルの値と推定される。したがって、放電開始電圧も従来と同じく高い値を有しているものと推定される。
この対策としては放電ガス封入前に、付着したCO2や水等のガスを除去するために、真空排気プロセスを行うことが考えられるが、PDPはフロントパネル及びバックパネルの対向配置による薄い間隙構造を持つため、内部の排気コンダクタンスが非常に小さい。このため当該プロセスに比較的長時間の処理が必要となり、プロセスコストにかかる別の問題も生じ得る。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、第一の目的として、比較的低コストでありながら壁電荷保持力を維持しつつ、放電遅れを画像表示に最適な領域に制御し、さらに放電開始電圧を低下させることで、良好な表示性能を発揮することが可能なガス放電表示パネルを提供する。
また、前記第2の保護膜は、前記表示電極下の前記第1の保護膜の少なくとも一部表面が露出するように積層することもできる。
また前記第2の保護膜は、前記表示電極下の前記第1の保護膜に占める前記第2の保護膜の面積の割合が、10%以上90%以下の面積率とすることもできる。
さらに前記第1の保護膜に混入される前記不純物は、H、Cl、F、Si、Ge、Crのうちの少なくとも1種を含む不純物とすることができる。
また、前記第1の保護膜および前記第2の保護膜は、MgO、CaO、BaO、SrO、MgNOおよびZnOのうちの少なくとも1種の金属酸化物材料を含むように成膜することもできる。
或いは前記第1の保護膜は、BaOを含んで成膜され、前記第2の保護膜は、MgOを含んで成膜される組み合わせとすることも可能である。
また本発明は、第1の基板に、対をなして形成された表示電極を形成する工程と、前記表示電極を覆って形成された誘電体層を形成する工程と、前記誘電体層の表面に形成された保護層を形成する保護層形成工程と、前記第1の基板に間隙を介して第2の基板を対向配置する工程を有するガス放電表示パネルの製造方法であって、前記保護層形成工程は、前記誘電体層の表面に不純物を多く含んだ第1の保護膜を大気に曝すことなく成膜し、前記第1の保護膜の表面の少なくとも一部に第2の保護膜を大気に曝すことなく積層することで保護層を形成するものとした。
<実施の形態1>
1−1.PDPの構成
図1は、本発明の実施の形態1に係るAC型PDP1の主要構成を示す部分的な断面斜視図である。図中、z方向がPDP1の厚み方向、xy平面がPDP1のパネル面に平行な平面に相当する。PDP1は、ここでは一例として42インチクラスのNTSC仕様に合わせた仕様にしているが、本発明はもちろんXGAやSXGA等、この他の仕様・サイズに適用してもよい。
フロントパネル10の基板となるフロントパネルガラス11には、その一方の主面に複数対の表示電極12、13(スキャン電極12、サステイン電極13)が形成されている。各表示電極12、13は、ITOまたはSnO2等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極120、130(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン121、131(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン121、131によって透明電極120、130のシート抵抗が下げられる。
バックパネル16の基板となるバックパネルガラス17には、その一方の主面にAg厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなる幅60μmの複数のアドレス電極18が、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設され、このアドレス電極18を内包するようにバックパネルガラス17の全面にわたって厚さ30μmの誘電体膜19がコートされている。
フロントパネル10とバックパネル16は、アドレス電極18と表示電極12、13の互いの長手方向が直交するように対向させながら配置され、両パネル10、16の外周縁部をガラスフリットで封着されている。この両パネル10、16間にはHe、Xe、Ne等の不活性ガス成分からなる放電ガス(封入ガス)が所定の圧力(通常53.2kPa〜79.8kPa程度)で封入されている。
上記構成のPDP1は、不図示の駆動部によって、一対の表示電極12、13の間隙には数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加されることにより、セルSU内で放電を発生させ、励起されたXe原子からの紫外線によって蛍光体層21〜23を励起し可視光発光するように駆動される。
初期化期間とは、それ以前のセルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。当図2に示す波形例では、すべての表示電極12、13に放電開始電圧Vfを超える正極性の下りランプ波形のリセットパルスを印加する。これとともに、バックパネル16側の帯電とイオン衝撃を防ぐために、すべてのアドレス電極18に正極性パルスを印加する。印加パルスの立ち上がりと立ち下がりの差動電圧によって、すべてのセルで弱い面放電である初期化放電が生じ、すべてのセルにおいて壁電荷が蓄積され、画面全体が一様な帯電状態となる。
なお初期化期間およびアドレス期間の長さは、輝度の重みに関わらず一定であるが、放電維持期間の長さは輝度の重みが大きいほど長い。つまり、各サブフィールドの表示期間の長さは互いに異なる。
<実施の形態1の特徴および効果について>
一般にPDPでは、駆動時のアドレス期間において、放電遅れに基づく書き込み不良の問題により、適切な画像表示を得られにくい場合があるが、本発明のPDPでは、上記のように保護層を構成するMgOに対してH、またはこれに加えてSiまたはGeを適量添加することによって、この問題を効果的に解決するものである。
また本発明では、駆動時に仮に放電遅れが発生した場合においても、各セルにおける放電遅れ時間のバラツキ(放電バラツキ)が従来よりも抑えられ、当該放電バラツキの度合いが平均化されるという効果が得られる。このように放電バラツキが緩和されることで、本発明では例えばアドレス期間におけるパルス印加のタイミングをパネル全体で所定時間遅らせる等の対策を採ることによって、放電遅れによる書き込み不良の発生を飛躍的に効率よく防止することが可能になるという効果が発揮される。
<実施例と効果の確認実験>
図3は、保護層の組成と放電遅れ時間のバラツキ(放電バラツキ)の相対大きさを示すグラフである。当図では、従来のMgOのみからなる保護層(比較例1)の放電バラツキを100%とし、これ対する以下の構成の保護層に関するデータを示している。
Si+H添加保護層(実施例1);MgOに100質量ppmでSiを添加し、且つHを1000質量ppmで添加したもの
H添加保護層(実施例2);MgOにHを1000質量ppmで添加したもの
当図3のデータからは、まずMgOに対してSiのみを比較的少ない量で添加してなる保護層(比較例2)は、放電バラツキの値が114%と大きくなり、かえって性能が劣化するので望ましくないと思われる。この比較例2は前述した特許文献7に相当する構成であり、このデータから当該特許文献3の技術では、実際には良好な画像表示性能が得られにくいことが分かる。
さらに、実施の形態1とは別に、MgOに対してHのみを厳密に規定した量で添加して保護層を構成しても(実施例2)、比較例1に比べて放電バラツキを相対値で54%程度にまで低減できる効果が得られ、本発明の効果が十分得られることも確認できる。
当図4に示される実施例および比較例の中では、Siを100質量ppmで含み、且つHを1000質量ppmで含むMgOからなる保護層(実施例f)が、最も放電バラツキの抑制効果を得られる構成であって、当該実施例fを基本構造として、Siの含有量を増加させるに従い、放電バラツキが大きくなる傾向が確認できる(実施例g、h)。したがって、本発明において比較例aよりも高い性能を得るためには、MgOに対して含まれるH或いはこれに加えてSiの含有量を適切に規定しなければならない。この具体的な規定範囲については後述する。
H添加MgO(比較例2);MgOに2000質量ppmでHを添加したもの
H+Ge添加MgO(実施例1);MgOに50質量ppmでGeを添加し、且つHを2000質量ppmで添加したもの
Ge添加MgO(1)(実施例2);MgOにGeを50質量ppmで添加したもの
Ge添加MgO(2)(比較例3);MgOにGeを1000質量ppmで添加したもの
図5のデータからは、まずMgOに対してHのみを添加してなる保護層(比較例2)は、放電遅れが抑制されているが、壁電荷保持力に関しては低下していることがわかる。したがって、この構成の保護層ではかえって性能が劣化するので望ましくないと考えられる。この比較例2は前述した特許文献4に相当する構成であり、このデータから当該特許文献4の技術では、実際には良好な画像表示性能が得られにくいことが分かる。
一方、MgOに所定量のHおよびGeを添加した実施例1(実施の形態1)では、放電遅れが画像表示に対して最適な範囲内に収まっており、さらに壁電荷保持力についても実用上問題がないことがわかる。
ところが、MgOに1000質量ppmのGeのみを添加してなる保護層(比較例3)の場合では、図5から分かるように放電遅れが良好な画像を得るための許容範囲を超えている。これはアドレスパルスが印加されている間にアドレス放電が発生する確率が低下していることを意味しており、その結果書き込み不良が発生し易くなる。
次に、放電バラツキが異なる保護層15について、駆動時のカソードルミネッセンスを測定し、保護層に特有の発光スペクトルと放電バラツキの関係を検討した。カソードルミネッセンス(CL)法とは、試料に電子線を照射したときにそのエネルギー緩和過程としての発光スペクトルを検出し、これにより試料(保護層)中の欠陥の存在とその構造等の情報を得る分析法である。
試料A;(MgO+Si+H)、実施例
試料B;(MgO+400質量ppmのH)
試料C;(MgOのみ)
試料D;(MgO+1000質量ppmのSi)
なお、測定条件は以下の通りである。
フィラメント電流密度;2.4×108(A/cm2)
当該図6では試料A〜Dの順に、放電バラツキの相対値が31、74、100、184となっており、各保護層のスペクトル波形が示されている。各スペクトルには、ほぼ3つのピーク(それぞれ発光波長約410nm、約510nm、および約740nm程度)が観察される。各ピークの波長の値は保護層のバンドギャップ内に存在する欠陥準位のエネルギーと相関関係にある。この関係により、発光波長約740nmのピークが大きいほど保護層から放出される放電に寄与する電子の数が多く、且つ、放電バラツキを抑える効果が望めることが分かる。
実施例(試料A、B)の保護層では、前記発光波長のすべてにおいて、明確なピークが現れている。特に発光波長約740nmのピークが他の試料(C、D)に比べて大きいことが分かる。このことから、保護層のMgOに例えSiが含まれていても、それが適量でなければ保護層として良好な効果は得られにくいことが推測される。同様のことはHを含む保護層についても考えられる。
この図7における試料A、Bの相対面積強度からわかるように、従来構成(試料C、D)より放電バラツキを小さくするには、前記相対面積強度の値が0.6以上1.5以下であることが好ましい。相対面積強度が1.5以上になると、保護層のキャリア濃度が増加しすぎて絶縁抵抗が低下し、壁電荷の保持力が低下してしまうということが予想され、好ましくない。
次に図8にカソードルミネッセンス測定に係る保護層の放電開始電圧と、発光波長約410nmのピーク強度に対する発光波長約510nmのピークの相対面積強度との関係を示す。具体的な試料の区別は横軸の放電開始電圧の小さい値から順に以下の通りである。
試料F;(MgO+50質量ppmのGe)
試料G;(MgO+1200質量ppmのH)
試料H;(MgOのみ、従来構成)
なお、測定条件は以下の通りである。
フィラメント電流密度;6.3×105(A/cm2)
ここで図6、7で示した測定条件と電流密度が異なるのは、図8では別の装置で測定を行っており、電子線のスポット径が大きく異なることによるものである。
具体的には、10質量ppm以上300質量ppm以下のGeに対してHをMgOに分散させてなる保護層、若しくは、10質量ppm以上300質量ppm未満のGeのみをMgOに分散させてなる保護層のいずれかとすることができる。このようなMgOに適量のGeを添加する構成の実施例としては、図5の実施例2に具体的なデータが示されている。
<MgOに対するHとSiの添加量について>
次に、本願発明者らが本発明の効果を有効に得られる保護層の成分について検討した結果を示す。
一方、上記保護層15中のHの含有量については、H前方散乱法(HFS;Hydrogen Forward Scatting)によって調べることができる。
さらに、Si含有量が50質量ppm以上1000質量ppm以下の範囲であれば、特に放電バラツキを抑える効果が得られやすいことがわかった。すなわち、図4の実施例f、g、hでは、それぞれSi添加量が100質量ppm、500質量ppm、1000質量ppmであるが、放電バラツキが少ないことが分かる。これにより、Siの添加量については、50質量ppm以上1000質量ppm以下の範囲であれば、放電バラツキが小さいと思われる。
一方、HFSに基づき調査したところ、上記保護層の構成において珪素とともに添加すべき水素の添加量範囲としては、300質量ppm以上10000質量ppm以下の範囲が望ましいことが分かった。
さらに、H含有量が1000質量ppm以上2000質量ppm以下の範囲であれば、特に放電遅れの発生を抑制する効果が得られ易く、好適であることが分かった。
さらに本発明の保護層は、図4の実施例d、eのように、MgOに適量のHを添加する構成によっても上記SiとHを所定量含む保護層と同様の効果を得ることができる。
次に、本発明において必要な保護層へのHとGeの添加量について具体的に説明する。
<MgOに対するHとGeの添加量について>
次に、本願発明者らが本発明の効果を有効に得られる保護層の成分について検討した結果を示す。
一方、上記保護層15中のHの含有量については、H前方散乱法(HFS;Hydrogen Forward Scatting)によって調べることができる。
さらに、Ge含有量が20質量ppm以上100質量ppm以下の範囲であれば、特に画像表示品質が優れていることがわかった。
一方、HFSに基づき調査したところ、上記保護層の構成においてGeとともに添加すべきHの添加量範囲としては、300質量ppm以上10000質量ppm以下の範囲が望ましいことが分かった。
また、この場合において、H含有量が300質量ppmより小さくなると、Hの添加効果が非常に小さくなるので望ましくない。反対に、Hの添加量が10000質量ppmより大きくなると、保護層のキャリア濃度が増加しすぎて絶縁抵抗が低下し、壁電荷の保持力が低下してしまうので、これも望ましくない。
さらに、MgOにHのみを添加する保護層の構成においては、H原子の添加量は300質量ppm以上1500質量ppm未満の範囲に設定するのが望ましいことが別の実験データにより分かっている。
ここでは実施の形態1のPDP1の製造方法について、本願発明の保護層の形成方法も含めて一例を説明する。
(フロントパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラスの面上に、表示電極を作製する。ここでは印刷法によって表示電極を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
次に、形成した表示電極の上から、軟化点が550℃〜600℃の酸化鉛系あるいは酸化ビスマス系の誘電体ガラス粉末とブチルカルビトールアセテート等からなる有機バインダーを混合したペーストを塗布する。そして、550℃〜650℃程度で焼成し、誘電体層を形成する。
成膜に用いる蒸着源としては、例えばペレット状のMgOに対し、ペレット状または粉末状のSi化合物またはGe化合物を混合したものを用いるか、粉末状のMgOと粉末状のSi化合物またはGe化合物とを混合したもの、あるいはその混合物の焼結体を用いる。上記Si化合物およびGe化合物の濃度はそれぞれ20〜10000質量ppmおよび5〜700質量ppmとする。そして、酸素雰囲気中において、ピアス式電子ビームガンを加熱源として、上記蒸着源を加熱し所望の膜を形成する。ここで、成膜時の電子ビーム電流量、酸素分圧量、基板温度等は成膜後の保護層の組成には大きな影響を及ぼさないため、任意設定で構わない。
なお、上述した成膜方法としては電子ビーム蒸着法に限らず、スパッタ法、イオンプレーティング法などでもよい。
(バックパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラスの表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ約5μmのアドレス電極を形成する。ここで、作製するPDP1を例えば40インチクラスのNTSC規格もしくはVGA規格とするためには、隣り合う2つのアドレス電極の間隔を0.4mm程度以下に設定する。
次に、誘電体膜と同じ鉛系ガラス材料を用いて、誘電体膜の上に、隣り合うアドレス電極の間毎に高さ約60〜100μmの隔壁を形成する。この隔壁は、例えば上記ガラス材料を含むペーストを繰り返しスクリーン印刷し、その後焼成して形成できる。なお、本発明では隔壁を構成する鉛系ガラス材料にSi成分が含まれていると、保護層のインピーダンス上昇を抑制する効果が高まるので望ましい。このSi成分はガラスの化学組成に含まれていても、ガラス材料に添加してもよい。また蒸気圧の高い不純物(N、H、Cl、F等)の添加物は、MgOの成膜時に気相中にガス状に適量添加してもよい。
RGB各色蛍光の化学組成は、例えば以下の通りである。
赤色蛍光体;Y2O3;Eu3+
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn
青色蛍光体;BaMgAl10O17:Eu2+
各蛍光体材料は、平均粒径2.0μmのものが使用できる。これをサーバー内に50質量%の割合で入れるとともに、エチルセルローズ1.0質量%、溶剤(α〜ターピネオール)49質量%を投入し、サンドミルで撹拌混合して、15×10−3Pa・sの蛍光体インクを作製する。そして、これをポンプにて径60μmのノズルから隔壁20間に噴射させて塗布する。このとき、パネルを隔壁20の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。その後は500℃で10分間焼成し、蛍光体層21〜23を形成する。
なおフロントパネルガラスおよびバックパネルガラスをソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料でもよい。
(PDPの完成)
作製したフロントパネルとバックパネルを、封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間の内部を高真空(1.0×10−4Pa)程度に排気し、これに所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe−Xe系やHe−Ne−Xe系、Xe−Ar系等の放電ガスを封入する。
続いて、PDPの製造方法に関し、上記と別の保護層の成膜方法例について実施形態を説明する。
<別の成膜例1>
本成膜例1では、まずMgOを主成分とし、これに所定のSiまたはGeを含有する膜を上記実施の形態1で述べた方法を用いる。
このときの設定条件としては、例えばH原子のドープ処理チャンバ内で基板をヒーターにより100〜300℃に加熱するとともに、真空度が1×10−4〜7×10−4Paになるまでチャンバ内を排気する。
<別の成膜例2>
本成膜例2では、まずMgOからなる膜を上記実施の形態1で述べた方法で形成する。そしてチャンバー内に載置し、Hを含む雰囲気下でプラズマ処理を行うとともに、Si化合物またはGe化合物を混合した蒸着源を電子ビームガンによって加熱する。これにより、HおよびSiまたはGeを含む保護層が形成できる。
本成膜例3では、MgOからなる膜を上記実施の形態1で述べた方法で形成する。そしてチャンバー内に載置するとともに、Hボンベに連結されたイオン銃からHイオンを基板に照射しながら、Si化合物またはGe化合物を混合した蒸着源を電子ビームガンによって加熱する。この方法によっても、HおよびSiを含む保護層が形成できる。
本発明のガス放電表示パネルにおける保護層の成膜方法としては、上記各実施の形態に限定するものではなく、その他の方法、例えばスパッタ法、イオンプレーティング法等を利用してもよい。
<実施の形態2>
図9は、実施の形態2におけるPDPのフロントパネル周辺の構成を示す断面概念図である。当該PDPは、基本的な構成は前記実施の形態1と同様であるが、保護層15の構成が異なる。本実施の形態2では、保護層15として、第1の保護膜151はその膜中に、真性の第2の保護膜152より不純物(H,Cl,F等のMgOにダングリングボンド;dangling bondを形成して活性化させる能力を持つもの)を多く含んで成膜形成されており、その上に第2の保護膜152が積層形成された構成を有することを特徴とする。ここで第1の保護膜151の膜厚は約600nm、第2の保護膜152の膜厚は約30nmとすることができる。
本実施の形態2に係る別の確認実験について以下に説明する。図12は、前記保護層のMgO膜に制御して不純物を導入した構成(保護層1とする。)の大気放置での水分の吸着量を調査したXPSデータの結果である。当図12では、比較のために不純物を導入していない純度の高いMgO膜(保護層2とする。)を用い、これらの保護層を大気放置し、或いはた500℃で2時間、大気中で熱処理を行った。
このことから、本発明での効果を充分PDPの性能に反映させるためには、ここで示したガス吸着の課題を以下に示す実施例によって、より上記に述べた発明を有効にかつ安定して実現できるものと考えられる。
本実施の形態2における保護層15の製造工程例を説明する。
大まかには、スパッタリング法(本実施の形態1における方法)や電子ビーム蒸着法あるいはCVD法を用い、誘電体層14の表面全体にMgOからなる第1の保護膜151を成膜形成した後、第1の保護膜151の表面全体を覆うように、高純度なMgOの金属酸化物により第2の保護膜152が積層形成することにより構成される。
まず、フロントパネルガラス11表面に表示電極12、13を配設し、これを覆うように誘電体層14を形成する。
(b)
その後、スパッタリング装置を用い、プラズマ状態のArイオンを、MgOターゲットにスパッタリングすることで、第1の保護膜151を膜厚約600nmで誘電体層14の表面上に成膜形成する。
次に、スパッタリング装置中で、Arガスにより高純度MgOターゲットをスパッタリングし、真性のMgO膜による第2の保護膜152を膜厚約30nmで成膜形成する。この方法によれば、形成された第2の保護膜152は、プロセス中における不要な成分を含むガス吸着を低減する膜とすることができ、上記の如く形成された第1の保護膜151に吸着した不純物ガスによる炭素等の吸着不純物をも覆ってカバーすることにより、パネル間隙中に放出される不純物ガスの放出量を大幅に減少させることが可能である。
また、上記により、第1の保護膜の表面全体に、第2の保護膜を成膜形成することにより、PDP製造の封着排気工程時における排気時間を短縮して製造コストを低減し、かつ駆動電圧を下げて駆動回路コストを低減したPDPの製造方法とすることも期待できる。
また、上記において、第1の保護膜の膜厚を約600nm、第2の保護膜の膜厚を約30nmとして説明したが、第1の保護膜および第2の保護膜の膜厚を、10nm〜1μmの範囲内でそれぞれ調整しても構わない。望ましくは、PDP封止完成後、放電の初期段階において、第2の保護膜は放電によりスパッタ除去されるように、第1の保護膜に比して、第2の保護膜は10nm〜100nmの薄い膜であることが好ましい。10nm程度の薄い膜の場合、当該膜は所定領域に一面に形成することができるが、この膜厚範囲を外れると、島状の成膜状態となることがある。
図10は、実施の形態3における放電セルの模式的なフロントパネル周辺構成を示す断面図(図10(a))および平面概念図(図10(b))である。
当図に示されるように、実施の形態3では、ともにBaOをベース材料としてなる保護層15の第2の保護膜153が、第1の保護膜151の表面において、ストライプ状に形成されている点に特徴を有する。当該ストライプ状の第2の保護膜153は、表示電極12、13の幅Wに対する面積率が30%程度になるように設定されている。
ここで第1の保護膜151には、不純物としてSiが1×1018〜23/cm3の濃度範囲でドープされている。このドープ材料は、Siの他、H,Cl,F、Ge、Crのうち1種以上を用いることも可能である。
このような構成の実施の形態3及び4によれば、駆動時において高い純度を持つ第2の保護膜153、154が伝導帯付近まで電子が励起されて活性化され、高い2次電子放出効率が発揮される。そして、前記Si等がドープされた第1の保護膜151により、当該保護層中の不要なガス成分の混入が低減されており、当該ガス成分が放電空間中に放出する量の低減が実現できる。これにより保護層15全体として、高い機能が発揮されることとなる。
(製造方法について)
(a)
誘電体層14を形成した後、大気に曝すことなく、スパッタリング装置中でBaO膜を成膜する。このように大気を遮断してBaO膜を成膜することで、当該膜にCO2、H2O等の不要なガスが混入するのを防止することができる。
そして、プラズマ状態のArイオンを、Siを混入したBaOターゲットにスパッタリングする。これにより、第1の保護膜151を誘電体層14の表面上に約600nmの膜厚で成膜形成する。
続いて、前記第1の保護膜151表面において、所定のパターンで第2の保護膜153、154を形成する。これは例えば、所定のパターニングが施されたメタルマスク(図示省略)を介し、スパッタリング装置中で、Arガス中で高純度のMgOターゲットをスパッタリングして行う。
なお、第2の保護膜154については、10nm以上30nm以下の範囲の膜厚で島状に不規則に形成することもできる。
また、上記において、保護層は、スパッタリング法で形成したが、その他に電子ビーム蒸着法、CVD法、あるいはこれらを組み合わせて成膜しても構わない。少なくとも、第1の保護膜はスパッタリング法で成膜する方が好ましく、保護層の2次電子放出効率や耐スパッタ性をさらに向上させることができる。
10 フロントパネル
11 フロントパネルガラス
12 走査(スキャン)電極
13 維持(サステイン)電極
14,19 誘電体層
15 保護層
16 バックパネル
17 バックパネルガラス
18 アドレス電極
20 隔壁
23 蛍光体層
31,32 放電セル
33 表示電極
34、35、36、37 保護層
121、131 バス電極
151、152 第1の保護膜
153、154 第2の保護膜
ここで前面側のパネルガラスの保護層の材料には、放電時のイオン衝撃から誘電体層を保護しながら、低い放電開始電圧で放電を発生させる機能が要求される。この目的でPDPの保護層としては特許文献2に開示されているように、優れたスパッタ耐性を持ち、二次電子放出係数の大きな酸化マグネシウム(MgO)を主成分とする材料が広く用いられている。
第一の問題として、従来の保護層では“放電遅れ”と呼ばれる問題がある。これはアドレス期間において、アドレス放電のためのパルスが電極に印加されてから実際に放電が発生するまでの時間のずれに相当する現象であって、放電遅れが大きいとアドレスパルス印加終了時点でもアドレス放電が生じない確率が高くなり、書き込み不良が発生し易くなる。これは、高速駆動になるほど発生し易い。この放電遅れの問題は、良好なPDPの画像表示性能を得る上で解決すべき課題である。
すなわち、保護層の表面は放電空間に露出しているが、上記MgO膜等の金属酸化物膜は、水(H2O)や二酸化炭素(CO2)等のガスを吸着し、水酸化化合物や炭酸化合物を容易に形成するという性質がある。PDP製造工程における大気中でのプロセスにおいては、大気中の油性不純物やCO2、H2O等の吸着により、MgOからなる保護層は汚染されやすい傾向にある。上記吸着ガスなどがMgO表面に吸着されると保護層の特性変化が起こり、2次電子放出効率が低下する。その結果、放電開始電圧を上昇させてしまい、PDPの駆動マージンを狭めてしまうという問題がある。
そこで従来では、例えば特許文献6に示されるように、保護層を2層構造とすることによって、性能の改善と安定性を高めようとする提案がなされている。具体的には比較的放電特性の優れた(111)配向させた第1の保護膜の上に、ガスが吸着しにくく、吸湿性を小さくした膜質の第2の保護膜を設け、これにより水分子やCO2等の不純物ガスの吸着を防ぐ2層構造が開示されている。
具体的には、特許文献3の技術では、MgOにSiを添加することで、ある程度不点灯領域の発生を抑制することができるが、一方で各セルにおける放電遅れ時間のバラツキが顕著になるという新たな問題が生じることが分かっている。
さらに特許文献5の技術においては、測定実験によって放電遅れを抑制する効果が不十分であることや放電開始電圧が上昇してしまうことが分かり、優れた表示性能を得る上では十分な効果を得られるとは言いにくいことが分かっている。
さらに前記第二の問題としても、以下の課題が残されている。
さらに特許文献6の技術においても、その2層構造の保護層に係る2次電子放出効率や放電開始電圧については開示されていないが、2次電子放出係数γは、最高でも従来の1層構成のMgOからなる保護層で得られる約0.2程度と同じレベルの値と推定される。したがって、放電開始電圧も従来と同じく高い値を有しているものと推定される。
この対策としては放電ガス封入前に、付着したCO2や水等のガスを除去するために、真空排気プロセスを行うことが考えられるが、PDPはフロントパネル及びバックパネルの対向配置による薄い間隙構造を持つため、内部の排気コンダクタンスが非常に小さい。このため当該プロセスに比較的長時間の処理が必要となり、プロセスコストにかかる別の問題も生じ得る。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、第一の目的として、比較的低コストでありながら壁電荷保持力を維持しつつ、放電遅れを画像表示に最適な領域に制御し、さらに放電開始電圧を低下させることで、良好な表示性能を発揮することが可能なガス放電表示パネルを提供する。
また、前記第2の保護膜は、前記表示電極下の前記第1の保護膜の少なくとも一部表面が露出するように積層することもできる。
また前記第2の保護膜は、前記表示電極下の前記第1の保護膜に占める前記第2の保護膜の面積の割合が、10%以上90%以下の面積率とすることもできる。
さらに前記第1の保護膜に混入される前記不純物は、H、Cl、F、Si、Ge、Crのうちの少なくとも1種を含む不純物とすることができる。
また、前記第1の保護膜および前記第2の保護膜は、MgO、CaO、BaO、SrO、MgNOおよびZnOのうちの少なくとも1種の金属酸化物材料を含むように成膜することもできる。
或いは前記第1の保護膜は、BaOを含んで成膜され、前記第2の保護膜は、MgOを含んで成膜される組み合わせとすることも可能である。
また本発明は、第1の基板に、対をなして形成された表示電極を形成する工程と、前記表示電極を覆って形成された誘電体層を形成する工程と、前記誘電体層の表面に形成された保護層を形成する保護層形成工程と、前記第1の基板に間隙を介して第2の基板を対向配置する工程を有するガス放電表示パネルの製造方法であって、前記保護層形成工程は、前記誘電体層の表面に不純物を多く含んだ第1の保護膜を大気に曝すことなく成膜し、前記第1の保護膜の表面の少なくとも一部に第2の保護膜を大気に曝すことなく積層することで保護層を形成するものとした。
<実施の形態1>
1−1.PDPの構成
図1は、本発明の実施の形態1に係るAC型PDP1の主要構成を示す部分的な断面斜視図である。図中、z方向がPDP1の厚み方向、xy平面がPDP1のパネル面に平行な平面に相当する。PDP1は、ここでは一例として42インチクラスのNTSC仕様に合わせた仕様にしているが、本発明はもちろんXGAやSXGA等、この他の仕様・サイズに適用してもよい。
フロントパネル10の基板となるフロントパネルガラス11には、その一方の主面に複数対の表示電極12、13(スキャン電極12、サステイン電極13)が形成されている。各表示電極12、13は、ITOまたはSnO2等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極120、130(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン121、131(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン121、131によって透明電極120、130のシート抵抗が下げられる。
バックパネル16の基板となるバックパネルガラス17には、その一方の主面にAg厚膜(厚み2μm〜10μm)、アルミニウム(Al)薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなる幅60μmの複数のアドレス電極18が、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設され、このアドレス電極18を内包するようにバックパネルガラス17の全面にわたって厚さ30μmの誘電体膜19がコートされている。
フロントパネル10とバックパネル16は、アドレス電極18と表示電極12、13の互いの長手方向が直交するように対向させながら配置され、両パネル10、16の外周縁部をガラスフリットで封着されている。この両パネル10、16間にはHe、Xe、Ne等の不活性ガス成分からなる放電ガス(封入ガス)が所定の圧力(通常53.2kPa〜79.8kPa程度)で封入されている。
上記構成のPDP1は、不図示の駆動部によって、一対の表示電極12、13の間隙には数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加されることにより、セルSU内で放電を発生させ、励起されたXe原子からの紫外線によって蛍光体層21〜23を励起し可視光発光するように駆動される。
初期化期間とは、それ以前のセルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。当図2に示す波形例では、すべての表示電極12、13に放電開始電圧Vfを超える正極性の下りランプ波形のリセットパルスを印加する。これとともに、バックパネル16側の帯電とイオン衝撃を防ぐために、すべてのアドレス電極18に正極性パルスを印加する。印加パルスの立ち上がりと立ち下がりの差動電圧によって、すべてのセルで弱い面放電である初期化放電が生じ、すべてのセルにおいて壁電荷が蓄積され、画面全体が一様な帯電状態となる。
なお初期化期間およびアドレス期間の長さは、輝度の重みに関わらず一定であるが、放電維持期間の長さは輝度の重みが大きいほど長い。つまり、各サブフィールドの表示期間の長さは互いに異なる。
<実施の形態1の特徴および効果について>
一般にPDPでは、駆動時のアドレス期間において、放電遅れに基づく書き込み不良の問題により、適切な画像表示を得られにくい場合があるが、本発明のPDPでは、上記のように保護層を構成するMgOに対してH、またはこれに加えてSiまたはGeを適量添加することによって、この問題を効果的に解決するものである。
また本発明では、駆動時に仮に放電遅れが発生した場合においても、各セルにおける放電遅れ時間のバラツキ(放電バラツキ)が従来よりも抑えられ、当該放電バラツキの度合いが平均化されるという効果が得られる。このように放電バラツキが緩和されることで、本発明では例えばアドレス期間におけるパルス印加のタイミングをパネル全体で所定時間遅らせる等の対策を採ることによって、放電遅れによる書き込み不良の発生を飛躍的に効率よく防止することが可能になるという効果が発揮される。
<実施例と効果の確認実験>
図3は、保護層の組成と放電遅れ時間のバラツキ(放電バラツキ)の相対大きさを示すグラフである。当図では、従来のMgOのみからなる保護層(比較例1)の放電バラツキを100%とし、これ対する以下の構成の保護層に関するデータを示している。
Si+H添加保護層(実施例1);MgOに100質量ppmでSiを添加し、且つHを1000質量ppmで添加したもの
H添加保護層(実施例2);MgOにHを1000質量ppmで添加したもの
当図3のデータからは、まずMgOに対してSiのみを比較的少ない量で添加してなる保護層(比較例2)は、放電バラツキの値が114%と大きくなり、かえって性能が劣化するので望ましくないと思われる。この比較例2は前述した特許文献7に相当する構成であり、このデータから当該特許文献3の技術では、実際には良好な画像表示性能が得られにくいことが分かる。
さらに、実施の形態1とは別に、MgOに対してHのみを厳密に規定した量で添加して保護層を構成しても(実施例2)、比較例1に比べて放電バラツキを相対値で54%程度にまで低減できる効果が得られ、本発明の効果が十分得られることも確認できる。
当図4に示される実施例および比較例の中では、Siを100質量ppmで含み、且つHを1000質量ppmで含むMgOからなる保護層(実施例f)が、最も放電バラツキの抑制効果を得られる構成であって、当該実施例fを基本構造として、Siの含有量を増加させるに従い、放電バラツキが大きくなる傾向が確認できる(実施例g、h)。したがって、本発明において比較例aよりも高い性能を得るためには、MgOに対して含まれるH或いはこれに加えてSiの含有量を適切に規定しなければならない。この具体的な規定範囲については後述する。
H添加MgO(比較例2);MgOに2000質量ppmでHを添加したもの
H+Ge添加MgO(実施例1);MgOに50質量ppmでGeを添加し、且つHを2000質量ppmで添加したもの
Ge添加MgO(1)(実施例2);MgOにGeを50質量ppmで添加したもの
Ge添加MgO(2)(比較例3);MgOにGeを1000質量ppmで添加したもの
図5のデータからは、まずMgOに対してHのみを添加してなる保護層(比較例2)は、放電遅れが抑制されているが、壁電荷保持力に関しては低下していることがわかる。したがって、この構成の保護層ではかえって性能が劣化するので望ましくないと考えられる。この比較例2は前述した特許文献4に相当する構成であり、このデータから当該特許文献4の技術では、実際には良好な画像表示性能が得られにくいことが分かる。
一方、MgOに所定量のHおよびGeを添加した実施例1(実施の形態1)では、放電遅れが画像表示に対して最適な範囲内に収まっており、さらに壁電荷保持力についても実用上問題がないことがわかる。
ところが、MgOに1000質量ppmのGeのみを添加してなる保護層(比較例3)の場合では、図5から分かるように放電遅れが良好な画像を得るための許容範囲を超えている。これはアドレスパルスが印加されている間にアドレス放電が発生する確率が低下していることを意味しており、その結果書き込み不良が発生し易くなる。
次に、放電バラツキが異なる保護層15について、駆動時のカソードルミネッセンスを測定し、保護層に特有の発光スペクトルと放電バラツキの関係を検討した。カソードルミネッセンス(CL)法とは、試料に電子線を照射したときにそのエネルギー緩和過程としての発光スペクトルを検出し、これにより試料(保護層)中の欠陥の存在とその構造等の情報を得る分析法である。
試料A;(MgO+Si+H)、実施例
試料B;(MgO+400質量ppmのH)
試料C;(MgOのみ)
試料D;(MgO+1000質量ppmのSi)
なお、測定条件は以下の通りである。
フィラメント電流密度;2.4×108(A/cm2)
当該図6では試料A〜Dの順に、放電バラツキの相対値が31、74、100、184となっており、各保護層のスペクトル波形が示されている。各スペクトルには、ほぼ3つのピーク(それぞれ発光波長約410nm、約510nm、および約740nm程度)が観察される。各ピークの波長の値は保護層のバンドギャップ内に存在する欠陥準位のエネルギーと相関関係にある。この関係により、発光波長約740nmのピークが大きいほど保護層から放出される放電に寄与する電子の数が多く、且つ、放電バラツキを抑える効果が望めることが分かる。
実施例(試料A、B)の保護層では、前記発光波長のすべてにおいて、明確なピークが現れている。特に発光波長約740nmのピークが他の試料(C、D)に比べて大きいことが分かる。このことから、保護層のMgOに例えSiが含まれていても、それが適量でなければ保護層として良好な効果は得られにくいことが推測される。同様のことはHを含む保護層についても考えられる。
この図7における試料A、Bの相対面積強度からわかるように、従来構成(試料C、D)より放電バラツキを小さくするには、前記相対面積強度の値が0.6以上1.5以下であることが好ましい。相対面積強度が1.5以上になると、保護層のキャリア濃度が増加しすぎて絶縁抵抗が低下し、壁電荷の保持力が低下してしまうということが予想され、好ましくない。
次に図8にカソードルミネッセンス測定に係る保護層の放電開始電圧と、発光波長約410nmのピーク強度に対する発光波長約510nmのピークの相対面積強度との関係を示す。具体的な試料の区別は横軸の放電開始電圧の小さい値から順に以下の通りである。
試料E;(MgO+50質量ppmのGe+1200質量ppmのH)
試料F;(MgO+50質量ppmのGe)
試料G;(MgO+1200質量ppmのH)
試料H;(MgOのみ、従来構成)
なお、測定条件は以下の通りである。
フィラメント電流密度;6.3×105(A/cm2)
ここで図6、7で示した測定条件と電流密度が異なるのは、図8では別の装置で測定を行っており、電子線のスポット径が大きく異なることによるものである。
具体的には、10質量ppm以上300質量ppm以下のGeに対してHをMgOに分散させてなる保護層、若しくは、10質量ppm以上300質量ppm未満のGeのみをMgOに分散させてなる保護層のいずれかとすることができる。このようなMgOに適量のGeを添加する構成の実施例としては、図5の実施例2に具体的なデータが示されている。
<MgOに対するHとSiの添加量について>
次に、本願発明者らが本発明の効果を有効に得られる保護層の成分について検討した結果を示す。
一方、上記保護層15中のHの含有量については、H前方散乱法(HFS;Hydrogen Forward Scatting)によって調べることができる。
さらに、Si含有量が50質量ppm以上1000質量ppm以下の範囲であれば、特に放電バラツキを抑える効果が得られやすいことがわかった。すなわち、図4の実施例f、g、hでは、それぞれSi添加量が100質量ppm、500質量ppm、1000質量ppmであるが、放電バラツキが少ないことが分かる。これにより、Siの添加量については、50質量ppm以上1000質量ppm以下の範囲であれば、放電バラツキが小さいと思われる。
一方、HFSに基づき調査したところ、上記保護層の構成において珪素とともに添加すべき水素の添加量範囲としては、300質量ppm以上10000質量ppm以下の範囲が望ましいことが分かった。
さらに、H含有量が1000質量ppm以上2000質量ppm以下の範囲であれば、特に放電遅れの発生を抑制する効果が得られ易く、好適であることが分かった。
さらに本発明の保護層は、図4の実施例d、eのように、MgOに適量のHを添加する構成によっても上記SiとHを所定量含む保護層と同様の効果を得ることができる。
次に、本発明において必要な保護層へのHとGeの添加量について具体的に説明する。
<MgOに対するHとGeの添加量について>
次に、本願発明者らが本発明の効果を有効に得られる保護層の成分について検討した結果を示す。
一方、上記保護層15中のHの含有量については、H前方散乱法(HFS;Hydrogen Forward Scatting)によって調べることができる。
さらに、Ge含有量が20質量ppm以上100質量ppm以下の範囲であれば、特に画像表示品質が優れていることがわかった。
一方、HFSに基づき調査したところ、上記保護層の構成においてGeとともに添加すべきHの添加量範囲としては、300質量ppm以上10000質量ppm以下の範囲が望ましいことが分かった。
また、この場合において、H含有量が300質量ppmより小さくなると、Hの添加効果が非常に小さくなるので望ましくない。反対に、Hの添加量が10000質量ppmより大きくなると、保護層のキャリア濃度が増加しすぎて絶縁抵抗が低下し、壁電荷の保持力が低下してしまうので、これも望ましくない。
さらに、MgOにHのみを添加する保護層の構成においては、H原子の添加量は300質量ppm以上1500質量ppm未満の範囲に設定するのが望ましいことが別の実験データにより分かっている。
ここでは実施の形態1のPDP1の製造方法について、本願発明の保護層の形成方法も含めて一例を説明する。
(フロントパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラスの面上に、表示電極を作製する。ここでは印刷法によって表示電極を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
次に、形成した表示電極の上から、軟化点が550℃〜600℃の酸化鉛系あるいは酸化ビスマス系の誘電体ガラス粉末とブチルカルビトールアセテート等からなる有機バインダーを混合したペーストを塗布する。そして、550℃〜650℃程度で焼成し、誘電体層を形成する。
成膜に用いる蒸着源としては、例えばペレット状のMgOに対し、ペレット状または粉末状のSi化合物またはGe化合物を混合したものを用いるか、粉末状のMgOと粉末状のSi化合物またはGe化合物とを混合したもの、あるいはその混合物の焼結体を用いる。上記Si化合物およびGe化合物の濃度はそれぞれ20〜10000質量ppmおよび5〜700質量ppmとする。そして、酸素雰囲気中において、ピアス式電子ビームガンを加熱源として、上記蒸着源を加熱し所望の膜を形成する。ここで、成膜時の電子ビーム電流量、酸素分圧量、基板温度等は成膜後の保護層の組成には大きな影響を及ぼさないため、任意設定で構わない。
なお、上述した成膜方法としては電子ビーム蒸着法に限らず、スパッタ法、イオンプレーティング法などでもよい。
(バックパネルの作製)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラスの表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ約5μmのアドレス電極を形成する。ここで、作製するPDP1を例えば40インチクラスのNTSC規格もしくはVGA規格とするためには、隣り合う2つのアドレス電極の間隔を0.4mm程度以下に設定する。
次に、誘電体膜と同じ鉛系ガラス材料を用いて、誘電体膜の上に、隣り合うアドレス電極の間毎に高さ約60〜100μmの隔壁を形成する。この隔壁は、例えば上記ガラス材料を含むペーストを繰り返しスクリーン印刷し、その後焼成して形成できる。なお、本発明では隔壁を構成する鉛系ガラス材料にSi成分が含まれていると、保護層のインピーダンス上昇を抑制する効果が高まるので望ましい。このSi成分はガラスの化学組成に含まれていても、ガラス材料に添加してもよい。また蒸気圧の高い不純物(N、H、Cl、F等)の添加物は、MgOの成膜時に気相中にガス状に適量添加してもよい。
RGB各色蛍光の化学組成は、例えば以下の通りである。
赤色蛍光体;Y2O3;Eu3+
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn
青色蛍光体;BaMgAl10O17:Eu2+
各蛍光体材料は、平均粒径2.0μmのものが使用できる。これをサーバー内に50質量%の割合で入れるとともに、エチルセルローズ1.0質量%、溶剤(α〜ターピネオール)49質量%を投入し、サンドミルで撹拌混合して、15×10-3Pa・sの蛍光体インクを作製する。そして、これをポンプにて径60μmのノズルから隔壁20間に噴射させて塗布する。このとき、パネルを隔壁20の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。その後は500℃で10分間焼成し、蛍光体層21〜23を形成する。
なおフロントパネルガラスおよびバックパネルガラスをソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料でもよい。
(PDPの完成)
作製したフロントパネルとバックパネルを、封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間の内部を高真空(1.0×10-4Pa)程度に排気し、これに所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe−Xe系やHe−Ne−Xe系、Xe−Ar系等の放電ガスを封入する。
続いて、PDPの製造方法に関し、上記と別の保護層の成膜方法例について実施形態を説明する。
<別の成膜例1>
本成膜例1では、まずMgOを主成分とし、これに所定のSiまたはGeを含有する膜を上記実施の形態1で述べた方法を用いる。
このときの設定条件としては、例えばH原子のドープ処理チャンバ内で基板をヒーターにより100〜300℃に加熱するとともに、真空度が1×10-4〜7×10-4Paになるまでチャンバ内を排気する。
<別の成膜例2>
本成膜例2では、まずMgOからなる膜を上記実施の形態1で述べた方法で形成する。そしてチャンバー内に載置し、Hを含む雰囲気下でプラズマ処理を行うとともに、Si化合物またはGe化合物を混合した蒸着源を電子ビームガンによって加熱する。これにより、HおよびSiまたはGeを含む保護層が形成できる。
本成膜例3では、MgOからなる膜を上記実施の形態1で述べた方法で形成する。そしてチャンバー内に載置するとともに、Hボンベに連結されたイオン銃からHイオンを基板に照射しながら、Si化合物またはGe化合物を混合した蒸着源を電子ビームガンによって加熱する。この方法によっても、HおよびSiを含む保護層が形成できる。
本発明のガス放電表示パネルにおける保護層の成膜方法としては、上記各実施の形態に限定するものではなく、その他の方法、例えばスパッタ法、イオンプレーティング法等を利用してもよい。
<実施の形態2>
図9は、実施の形態2におけるPDPのフロントパネル周辺の構成を示す断面概念図である。当該PDPは、基本的な構成は前記実施の形態1と同様であるが、保護層15の構成が異なる。本実施の形態2では、保護層15として、第1の保護膜151はその膜中に、真性の第2の保護膜152より不純物(H,Cl,F等のMgOにダングリングボンド;dangling bondを形成して活性化させる能力を持つもの)を多く含んで成膜形成されており、その上に第2の保護膜152が積層形成された構成を有することを特徴とする。ここで第1の保護膜151の膜厚は約600nm、第2の保護膜152の膜厚は約30nmとすることができる。
本実施の形態2に係る別の確認実験について以下に説明する。図12は、前記保護層のMgO膜に制御して不純物を導入した構成(保護層1とする。)の大気放置での水分の吸着量を調査したXPSデータの結果である。当図12では、比較のために不純物を導入していない純度の高いMgO膜(保護層2とする。)を用い、これらの保護層を大気放置し、或いはた500℃で2時間、大気中で熱処理を行った。
このことから、本発明での効果を充分PDPの性能に反映させるためには、ここで示したガス吸着の課題を以下に示す実施例によって、より上記に述べた発明を有効にかつ安定して実現できるものと考えられる。
本実施の形態2における保護層15の製造工程例を説明する。
大まかには、スパッタリング法(本実施の形態1における方法)や電子ビーム蒸着法あるいはCVD法を用い、誘電体層14の表面全体にMgOからなる第1の保護膜151を成膜形成した後、第1の保護膜151の表面全体を覆うように、高純度なMgOの金属酸化物により第2の保護膜152が積層形成することにより構成される。
まず、フロントパネルガラス11表面に表示電極12、13を配設し、これを覆うように誘電体層14を形成する。
(b)
その後、スパッタリング装置を用い、プラズマ状態のArイオンを、MgOターゲットにスパッタリングすることで、第1の保護膜151を膜厚約600nmで誘電体層14の表面上に成膜形成する。
次に、スパッタリング装置中で、Arガスにより高純度MgOターゲットをスパッタリングし、真性のMgO膜による第2の保護膜152を膜厚約30nmで成膜形成する。この方法によれば、形成された第2の保護膜152は、プロセス中における不要な成分を含むガス吸着を低減する膜とすることができ、上記の如く形成された第1の保護膜151に吸着した不純物ガスによる炭素等の吸着不純物をも覆ってカバーすることにより、パネル間隙中に放出される不純物ガスの放出量を大幅に減少させることが可能である。
また、上記により、第1の保護膜の表面全体に、第2の保護膜を成膜形成することにより、PDP製造の封着排気工程時における排気時間を短縮して製造コストを低減し、かつ駆動電圧を下げて駆動回路コストを低減したPDPの製造方法とすることも期待できる。
また、上記において、第1の保護膜の膜厚を約600nm、第2の保護膜の膜厚を約30nmとして説明したが、第1の保護膜および第2の保護膜の膜厚を、10nm〜1μmの範囲内でそれぞれ調整しても構わない。望ましくは、PDP封止完成後、放電の初期段階において、第2の保護膜は放電によりスパッタ除去されるように、第1の保護膜に比して、第2の保護膜は10nm〜100nmの薄い膜であることが好ましい。10nm程度の薄い膜の場合、当該膜は所定領域に一面に形成することができるが、この膜厚範囲を外れると、島状の成膜状態となることがある。
図10は、実施の形態3における放電セルの模式的なフロントパネル周辺構成を示す断面図(図10(a))および平面概念図(図10(b))である。
当図に示されるように、実施の形態3では、ともにBaOをベース材料としてなる保護層15の第2の保護膜153が、第1の保護膜151の表面において、ストライプ状に形成されている点に特徴を有する。当該ストライプ状の第2の保護膜153は、表示電極12、13の幅Wに対する面積率が30%程度になるように設定されている。
ここで第1の保護膜151には、不純物としてSiが1×1018〜23/cm3の濃度範囲でドープされている。このドープ材料は、Siの他、H,Cl,F、Ge、Crのうち1種以上を用いることも可能である。
このような構成の実施の形態3及び4によれば、駆動時において高い純度を持つ第2の保護膜153、154が伝導帯付近まで電子が励起されて活性化され、高い2次電子放出効率が発揮される。そして、前記Si等がドープされた第1の保護膜151により、当該保護層中の不要なガス成分の混入が低減されており、当該ガス成分が放電空間中に放出する量の低減が実現できる。これにより保護層15全体として、高い機能が発揮されることとなる。
(製造方法について)
(a)
誘電体層14を形成した後、大気に曝すことなく、スパッタリング装置中でBaO膜を成膜する。このように大気を遮断してBaO膜を成膜することで、当該膜にCO2、H2O等の不要なガスが混入するのを防止することができる。
そして、プラズマ状態のArイオンを、Siを混入したBaOターゲットにスパッタリングする。これにより、第1の保護膜151を誘電体層14の表面上に約600nmの膜厚で成膜形成する。
続いて、前記第1の保護膜151表面において、所定のパターンで第2の保護膜153、154を形成する。これは例えば、所定のパターニングが施されたメタルマスク(図示省略)を介し、スパッタリング装置中で、Arガス中で高純度のMgOターゲットをスパッタリングして行う。
なお、第2の保護膜154については、10nm以上30nm以下の範囲の膜厚で島状に不規則に形成することもできる。
また、上記において、保護層は、スパッタリング法で形成したが、その他に電子ビーム蒸着法、CVD法、あるいはこれらを組み合わせて成膜しても構わない。少なくとも、第1の保護膜はスパッタリング法で成膜する方が好ましく、保護層の2次電子放出効率や耐スパッタ性をさらに向上させることができる。
10 フロントパネル
11 フロントパネルガラス
12 走査(スキャン)電極
13 維持(サステイン)電極
14,19 誘電体層
15 保護層
16 バックパネル
17 バックパネルガラス
18 アドレス電極
20 隔壁
23 蛍光体層
31,32 放電セル
33 表示電極
34、35、36、37 保護層
121、131 バス電極
151、152 第1の保護膜
153、154 第2の保護膜
Claims (14)
- 表面に誘電体層および保護層が順次積層されたパネルを備えるガス放電表示パネルであって、
前記保護層は、前記誘電体層の表面に形成された第1の保護膜と、前記第1の保護膜の表面の少なくとも一部領域に積層された第2の保護膜とを備え、且つ、前記第1の保護膜は前記第2の保護膜より不純物を多く含む構成であることを特徴とするガス放電表示パネル。 - 前記第2の保護膜は、前記第1の保護膜の表面全体を被覆するように積層されている
ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電表示パネル。 - 前記第2の保護膜は、前記表示電極下の前記第1の保護膜の少なくとも一部表面が露出するように積層される構成である
ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電表示パネル。 - 前記第2の保護膜は、前記表示電極下の前記第1の保護膜に占める前記第2の保護膜の面積の割合が、10%以上90%以下の面積率である
ことを特徴とする請求項3に記載のガス放電表示パネル。 - 前記第2の保護膜の膜厚は、10nm以上1μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電表示パネル。 - 前記第2の保護膜の膜厚は、10nm以上100nm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電表示パネル。 - 前記第1の保護膜に混入される前記不純物は、H、Cl、F、Si、Ge、Crのうちの少なくとも1種を含む不純物であることを特徴とする請求項1に記載のガス放電表示パネル。
- 前記第1の保護膜における前記不純物の含有量は、10ppm以上10000ppm以下の範囲にある
ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電表示パネル。 - 前記第1の保護膜および前記第2の保護膜は、MgO、CaO、BaO、SrO、MgNOおよびZnOのうちの少なくとも1種の金属酸化物材料を含むように成膜される
ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電表示パネル。 - 前記第1の保護膜および前記第2の保護膜のいずれもが、MgOを含むように成膜される
ことを特徴とする請求項9に記載のガス放電表示パネル。 - 前記第1の保護膜は、BaOを含んで成膜され、前記第2の保護膜は、MgOを含んで成膜される
ことを特徴とする請求項9に記載のガス放電表示パネル。 - 前記第2の保護膜は、前記第1の保護膜の表面上において、島状或いはストライプ状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のガス放電表示パネル。 - 第1の基板に、対をなして形成された表示電極を形成する工程と、前記表示電極を覆って形成された誘電体層を形成する工程と、前記誘電体層の表面に形成された保護層を形成する保護層形成工程と、前記第1の基板に間隙を介して第2の基板を対向配置する工程を有するガス放電表示パネルの製造方法であって、
前記保護層形成工程は、前記誘電体層の表面に不純物を多く含んだ第1の保護膜を大気に曝すことなく成膜し、前記第1の保護膜の表面の少なくとも一部に第2の保護膜を大気に曝すことなく積層することで保護層を形成する
ことを特徴とするガス放電表示パネルの製造方法。 - 前記保護層形成工程は、前記第1の保護膜および前記第2の保護膜のうち少なくとも一方をスパッタリング法で成膜する
ことを特徴とする請求項13に記載のガス放電表示パネルの製造方法。
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