近年、高精細および高輝度を実現できる画像表示デバイスとして、PDPの開発が進められている。PDPは画面の大型化が容易であり、今後のさらなる普及が期待される。
図7に、現在主流である、非特許文献1に記載の3電極面放電型PDPの一般的な構造を示す。図7に示すPDP51は、放電空間31を介して対向するように配置された一対の基板(前面板1および背面板2)を備える。前面板1における放電空間31側の主面には、維持電極11および走査電極12からなる表示電極13と、表示電極13を被覆する誘電体層14と、誘電体層14よりも放電空間31側に配置された保護層15とが形成されている。保護層15は、放電空間31と誘電体層14とを隔離するように形成されており、放電空間31内の放電から、より具体的には、放電により生じたプラズマや紫外線から、誘電体層14を保護する役割を担っている。
背面板2における放電空間31側の主面には、アドレス電極23と、アドレス電極23を被覆する誘電体層22と、アドレス電極23と平行にストライプ状に配置された隔壁21と、隣り合う隔壁21間に配置された蛍光体層26とが形成されている。蛍光体層26は、放電空間31において発生した紫外線により発光する蛍光体を含み、当該蛍光体の種類により、青色、緑色または赤色に発光する。PDP51では、これら3原色の発光時間を制御して、フルカラーの画像表示を実現している。
前面板1および背面板2は、表示電極13とアドレス電極23とが各基板の主面から見て互いに直交するように、対向して配置されており、隔壁21によって分割された放電空間31における1つの表示電極13(1組の維持電極11および走査電極12)に対応する領域が1つの放電セルとなる。1つの放電セルは1つの画素に対応し、複数の放電セル、即ち複数の画素、が、入力信号に対応するパターンで発光することにより、画像が表示される。
放電空間31には、放電ガスとして、通常、NeとXeとの混合ガスが充填されており、放電ガスにおけるXeの含有率を大きくすることにより、紫外線の発生量を増大させ、PDPの発光効率を向上できることが知られている。
PDP51における放電セルの駆動方法の一例について、図8を参照しながら説明する。図8は、放電セルの各電極へ印加する駆動電圧波形の一例を示すタイムチャートである。
PDP51を構成する全放電セル(全画素)を初期化するセットアップ期間250では、初期化パルス110として、全放電セルの走査電極12に正の電圧を徐々に印加する。初期化パルス110の印加により、放電空間31における走査電極12とアドレス電極23との間に微弱な放電が発生し、保護層15における走査電極12近傍の表面に負の電荷が、保護層15における維持電極11近傍の表面、および、蛍光体層26におけるアドレス電極23近傍の表面に正の電荷が、それぞれ蓄積される。セットアップ期間250では、PDPを構成する全放電セルに対して同一の初期化パルス110が印加されるため、上記電荷の蓄積量は、全放電セル間でほぼ同一となる。
発光させたい放電セルを選択するアドレス期間260では、データパルス100として、発光させたい放電セルAのアドレス電極23に正の電圧を順に印加する。このとき、データパルス100の印加と同時に、走査パルス120として、当該セルAの走査電極12に負の電圧を印加する。セルAへのデータパルス100および走査パルス120の印加により、走査電極12とアドレス電極23との間に微弱な放電が発生し、セルAの保護層15における走査電極12近傍の表面に正の電荷が、保護層15における維持電極11近傍の表面に負の電荷が、それぞれ蓄積される。セルA以外の放電セルでは、データパルス100および走査パルス120が印加されないため、保護層15に蓄積された電荷はセットアップ期間250の状態に保持される。
アドレス期間260において選択したセルAを所定の時間発光させる維持期間270では、維持パルス130として、全放電セルの走査電極12に正の電圧を印加する。このとき、維持パルス130として印加する電圧の大きさを、各放電セルの走査電極12と維持電極11との間に放電が発生する電圧の大きさよりもわずかに低く設定する。セルAでは、保護層15における走査電極12近傍の表面に正の電荷が、維持電極11近傍の表面に負の電荷が蓄積されているため、走査電極12と維持電極11との間には維持パルス130よりも大きい電圧が印加される。このため、セルAにおける走査電極12と維持電極11との間に放電が発生し、放電により生じた紫外線により蛍光体層26が発光する。また、この放電により、保護層15における走査電極12近傍の表面に蓄積される電荷と、維持電極11近傍の表面に蓄積される電荷との正負が逆転する。一方、セルA以外の放電セルでは、保護層15における走査電極12近傍の表面に負の電荷が、維持電極11近傍の表面に正の電荷が蓄積されているため、走査電極12と維持電極11との間には維持パルス130よりも小さい電圧が印加されることになり、放電が生じず、蛍光体層26は発光しない。
ここで、図8に示すように、維持パルス130として、維持電極11への正の電圧の印加、および、走査電極12への正の電圧の印加を交互に繰り返せば、各放電ごとに保護層15における走査電極12近傍の表面に蓄積される電荷と、維持電極11近傍の表面に蓄積される電荷との正負が逆転するため、セルAを連続的に発光させることができる。
維持期間270において発光させた放電セルAの発光を停止させるイレース期間280では、消去パルス140として、維持パルス130よりもパルス長が短い電圧を維持電極11に印加する。消去パルス140では、上記逆転が生じるほど十分な時間だけ電圧が印加されないため、セルAの発光を停止できる。
PDP51では、誘電体層14により表示電極13が被覆されているが、この被覆構造により、誘電体層14へ電荷を蓄積させて、放電セルの駆動電圧を低減できる。保護層15は、誘電体層14を保護する役割の他に、放電セル駆動時の放電現象のトリガーとしての役割も担っている。
放電セルにおける放電現象には、「放電の時間的なばらつき」が存在する。各電極にパルス電圧を印加した場合、一般に、電圧の立ち上がりから放電の発生まである程度の遅れが生じる。この遅れを、一般に「放電遅れ」と呼ぶ。放電遅れの時間は、各放電セル間で異なり、また、同一の放電セルであっても放電ごとに一定ではない。放電の時間的なばらつきとは、このように放電セルおよび放電ごとに異なる「放電遅れのばらつき」を反映していると考えられる。
放電の時間的なばらつきは、放電現象のトリガーとなる電子の量を増大させることにより低減できることが知られている。このため、保護層15には、通常、トリガーとなる電子の放出量が多い酸化マグネシウム(MgO)が用いられる。MgOにおける電子の放出は、MgO中に多数存在する結晶欠陥に基づくと考えられる。
発光効率の向上などを目的として、放電ガスにおけるXeの含有率を増大させた場合、MgOからなる保護層を用いたとしても電子の放出量が十分ではなく、放電の時間的なばらつきが増大する傾向を示すことがある。
MgOからなる保護層における電子の放出量を増大させるために、例えば、特許文献1には、MgOにおけるMgの一部を、Fe、CrおよびVから選ばれる少なくとも1種の元素により置換する技術が開示されている。また例えば、特許文献2には、3原子%以上の水素原子を含有し、かつ、Naなどの不純物元素の含有率を400ppm以下としたMgOとする技術が開示されている。しかし、これらの文献に開示されている技術では、MgO中の結晶欠陥を増大できるものの、MgO層としての構造、即ち、保護層としての構造、が脆くなり、放電に伴って生じるプラズマによる変質などの劣化が進みやすくなると考えられる。
内池平樹、御子柴茂生共著、「プラズマディスプレイのすべて」、(株)工業調査会、1997年5月1日刊行、p77−p80
特開平8−236028号公報
特開2003−31136号公報
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のPDP(第1のPDP)における、前面板1、背面板2および放電空間31近傍の構成の一例を示す模式図である。
図1に示すPDP7は、BaおよびSrから選ばれる少なくとも1種の元素と、Siと、Mgと、Oとを含む保護層5を備える。PDP7は、保護層15の代わりに保護層5を備える以外は、図7に示すPDP51と同様の構成を有する。保護層5は、誘電体層14よりも放電空間31側に配置されており、放電空間31と誘電体層14とを隔離するように、前面板1(第1の基板)における放電空間31側の主面に形成されている。保護層5は、放電空間31内の放電から、より具体的には、放電により生じたプラズマや紫外線から、誘電体層14を保護するとともに、放電現象のトリガーとなる電子を放出する役割を担っている。
PDP7では、保護層5を備えることにより、各電極へのパルス電圧の印加による放電の時間的なばらつきを低減でき、画面のちらつき、なかでも、白色を表示する際に強く認められるちらつきの発生を抑制できる。
また、保護層5が含む上記元素の組み合わせは、複合酸化物として存在しうるなど、結晶構造的に安定であると考えられ、例えば、特許文献1、2に開示されているMgO層に比べて、保護層としての構造が脆くなることを抑制でき、放電に伴って生じるプラズマによる変質などの劣化を抑制できる。
保護層5の具体的な構成は、上記少なくとも1種の元素と、Siと、Mgと、Oとを含む限り特に限定されない。例えば、上記少なくとも1種の元素と、Siと、Mgと、Oとからなる複合酸化物Aを含めばよく、これらの元素の組み合わせでは、安定した結晶構造を有する複合酸化物Aを形成できるため、放電に伴うプラズマによる変質が抑制され、かつ、MgOよりも電子の放出量が多い保護層5を実現できる。
複合酸化物Aの具体的な組成は特に限定されないが、例えば、式(BapSr1-p)3MgSi2O8、式(BapSr1-p)2MgSi2O7、または、式(BapSr1-p)MgSi2O6により示される組成を有する複合酸化物であればよい。ただし、pは、式0≦p≦1を満たす数値である。
より具体的には、複合酸化物Aが、例えば、Sr3MgSi2O8、Ba3MgSi2O8、(Sr,Ba)3MgSi2O8、Sr2MgSi2O7、SrMgSi2O6、Ba2MgSi2O7、BaMgSi2O6、(Sr,Ba)2MgSi2O7、または、(Sr,Ba)MgSi2O6であればよい。
保護層5は、複合酸化物Aを1種類あるいは2以上の種類含んでもよい。
保護層5が、上記少なくとも1種の元素、Si、MgおよびOを含むこと、あるいは、複合酸化物Aを含むことは、保護層5に対する高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)などによる組成分析により判別できる。必要に応じ、X線回折測定(XRD)などの手法に基づく結晶構造解析を組成分析に併用してもよい。
保護層5が複合酸化物Aを含む場合、保護層5は複合酸化物Aからなってもよいし、複合酸化物A以外の材料を含んでもよい。保護層5が含む複合酸化物A以外の材料としては、例えば、MgO、SrOおよびBaOから選ばれる少なくとも1種であればよく、なかでも、電子を放出する特性が高いことからMgOが好ましい。
保護層5が複合酸化物AとMgOとを含む場合、保護層5の構造は特に限定されず、例えば、複合酸化物AとMgOとを含む単一層の膜であってもよく、このような保護層5の一例として、図2に示すような、MgOからなる母材5bに、複合酸化物Aを含む領域5aが分散した構造を有する膜が挙げられる。
図2に示す保護層5では、領域5aと母材5bとの境界近傍により多くの結晶欠陥が存在すると考えられ、放電現象のトリガーとなる電子の放出量をより増大できると考えられる。即ち、図2に示す保護層5では、各電極へのパルス電圧の印加による放電の時間的なばらつきをさらに低減できる。
領域5aは、複合酸化物Aからなってもよい。
また例えば、保護層5は、複合酸化物Aを含む層と、MgO層とを含む多層膜であってもよく、このような保護層5の一例として、図3に示すような、MgO層5cと、複合酸化物Aを含む層5dとが積層された構造を有する膜が挙げられる。
図3に示す保護層5では、MgO層5cと層5dとの界面近傍により多くの結晶欠陥が存在すると考えられ、放電現象のトリガーとなる電子の放出量をより増大できると考えられる。即ち、図3に示す保護層5では、各電極へのパルス電圧の印加による放電の時間的なばらつきをさらに低減できる。
保護層5が、MgO層5cと、複合酸化物Aを含む層5dとが積層された構造を有する場合、保護層5が有するMgO層5cおよび層5dの数は特に限定されず、また、MgO層5cと層5dとの位置関係も特に限定されない。例えば、図3に示す例では、層5dがMgO層5cよりも放電空間31側に配置されているが、MgO層5cが層5dよりも放電空間31側に配置されていてもよい。
層5dは、複合酸化物Aからなってもよく、この場合、保護層5は、複合酸化物A層とMgO層とが積層された構造を有するともいえる。
また例えば、保護層5は、MgOを含む層と、当該MgOを含む層における放電空間側の表面に配置された複合酸化物Aの粒子とを含んでいてもよく、このような保護層の一例として、図4に示すような、MgO層5fと、MgO層5fにおける放電空間31側の表面に配置された複合酸化物Aの粒子5eとを含む保護層5が挙げられる。図4に示す保護層5は、作製プロセスを単純化できるため、低コストでの実現が可能である。
保護層5がこのような構造を有する場合、粒子5eの形状、ならびに、MgO層5fの表面における粒子5eの配置の形態などは特に限定されない。例えば、図4に示す例では、複数の粒子5eが、MgO層5fの表面に分散した状態で配置されているが、MgO層5fの表面における放電に強く晒される領域のみ、部分的に粒子5eを集合させてもよい。
保護層5は、PDPにおける従来の保護層と同様の方法により形成でき、例えば、電子ビーム蒸着などの真空蒸着法、イオンプレーティング法、あるいは、スパッタリング法などにより形成すればよい。
図5は、本発明のPDP(第2のPDP)における前面板1、背面板2および放電空間31近傍の構成の一例を示す模式図である。
図5に示すPDP17は、放電空間31において発生した紫外線により発光する蛍光体(青色蛍光体、緑色蛍光体または赤色蛍光体)とともに、BaおよびSrから選ばれる少なくとも1種の元素と、Siと、Mgと、Oとからなる複合酸化物Aを含む蛍光体層6を備える。PDP17は、蛍光体層26の代わりに蛍光体層6を備える以外は、図7に示すPDP51と同様の構成を有する。蛍光体層6は、背面板2(第2の基板)における放電空間31側の主面に形成されている。
PDP17では、蛍光体層6を備えることにより、初期化パルスの印加による放電の時間的なばらつきを低減でき、画像のちらつき、なかでも、黒色を表示する際に強く認められるちらつきの発生を抑制できる。また、上記元素の組み合わせでは、安定した結晶構造を有する複合酸化物Aを形成できるため、放電に伴うプラズマなどによる影響を受けにくい、ちらつき抑制効果とすることができる。
蛍光体層6の構成は複合酸化物Aを含む限り特に限定されず、例えば、図5に示すように、粒子状の複合酸化物A8とともに、PDPにおける一般的な蛍光体を含めばよい。また例えば、複合酸化物Aを含む層が表面および/または内部に形成された蛍光体層6であってもよい。
蛍光体層6における複合酸化物Aの含有率は、複合酸化物Aの組成によっても異なるが、通常、0.1重量%〜20重量%程度の範囲であればよい。
蛍光体層6は、複合酸化物Aを1種類または2以上の種類含んでもよい。
蛍光体層6が含む複合酸化物Aは、上述した保護層5が含む複合酸化物Aと同様であればよい。
蛍光体層6が複合酸化物Aを含むことは、蛍光体層6に対するICP発光分析、EDXなどによる組成分析により判別でき、必要に応じ、XRDなどの手法に基づく結晶構造解析を組成分析に併用してもよい。
蛍光体層6は、PDPにおける従来の蛍光体層と同様の方法により形成でき、例えば、5重量%〜10重量%の濃度でエチルセルロースおよび/またはニトロセルロースを含むα−ターピネオールなどのバインダー中に、複合酸化物Aおよび蛍光体を分散して得られたペーストを、スクリーン印刷またはラインジェット法によって隔壁21間に塗布し、500℃〜550℃の範囲で焼成して、形成すればよい。有機溶媒中に複合酸化物Aおよび蛍光体を分散させる際には、両者の混合物を分散させてもよいし、各々を個別に有機溶媒に投入することにより分散させてもよい。
蛍光体層6に複合酸化物Aを含む層が形成されている場合、当該層は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、あるいは、スパッタリング法などを用いて形成すればよい。
図1〜図5に示すPDP7、17において、保護層5および蛍光体層6以外の各部材の構造、構成、および、各部材に用いる材料は、一般的なPDPにおける各部材と同様であればよい。例えば、隔壁21がストライプ状ではなく、井桁状に配置されていてもよい。ここで井桁状とは、隔壁がアドレス電極23と平行な方向だけではなく、その他方向、例えばアドレス電極23に垂直な方向にも形成されており、1つの放電空間(画素)を隔壁で取り囲む形状を意味する。
保護層6および蛍光体層6以外の各部材は、一般的なPDPにおける各部材の形成方法と同様の方法により形成できる。
本発明のPDPでは、保護層5と蛍光体層6との双方が形成されていてもよい。画像のちらつきの発生をより抑制できる。
(実施例1)
実施例1では、図2に示すような保護層5を備えるPDP7を作製し、前面板1における保護層5が配置されている面からの電子放出量、ならびに、作製したPDP7におけるデータパルスの印加に対する放電の時間的なばらつきの程度、および、白色を表示した時のちらつきの有無、を評価した。
(サンプル作製)
最初に、前面板1となるガラス基板における一方の主面上に、Agからなる走査電極12および維持電極11を、スクリーン印刷により形成した。当該ガラス基板のサイズは13インチとし、走査電極12および維持電極11間の距離は、42インチサイズのハイビジョンテレビディスプレイに相当する0.1mmとした。
次に、当該主面全体に、走査電極12および維持電極11を被覆するように誘電体層14を形成した。誘電体層14は、ペースト化したガラス材料(組成:PbO 75重量%、B2O3 15重量%、SiO2 10重量%)をスクリーン印刷により当該主面に塗布した後に、全体を550℃で焼結して形成した。
次に、誘電体層14の表面に、真空蒸着法により保護層5(厚さ0.9μm)を成膜して、前面板1とした。
保護層5の成膜にあたっては、まず、SrCO3(関東化学株式会社製、製品番号:37339-08)44.29gと、MgO(関東化学株式会社製 製品番号:25018-13)12.09gと、SiO2(関東化学株式会社製 製品番号:37049-13)18.024gとを秤量し、秤量後の各酸化物を自動混合乳鉢により乾式混合した後に、得られた混合物を空気中、900℃にて1時間焼成し、焼成後に粉砕した。粉砕によって得られた粉末をペレット状(直径10mm、高さ5mmの円筒状)に成形し、空気中、1200℃にて1時間焼成して、Sr3MgSi2O8からなる複合酸化物のペレット(ペレットA−1)を作製した。
ペレットA−1の作製とは別に、MgO(関東化学株式会社製、製品番号:25018-13)の粉末をペレット状(直径3mm、高さ15mm)に成形し、空気中、1200℃において1時間焼成して、MgOペレットを作製した。
このようにして作製したペレットA−1(10g)と、MgOペレット(40g)とを、アルミナ製の容器中において手で3分間振ることにより混合し、得られた混合物を成膜材料として保護層5の成膜を行った。保護層5を成膜する際には、前面板1を300℃に加熱し、成膜雰囲気を圧力3×10-4Paの減圧雰囲気とした。
成膜後の保護層5の構造を、ICP発光分析に基づく組成分析、および、XRDに基づく結晶構造解析により評価したところ、図2に示すように、Sr3MgSi2O8の領域5aがMgOからなる母材5b中に分散した構造が形成されていることがわかった。
前面板1の形成とは別に、背面板2となるガラス基板における一方の主面上に、Agからなるアドレス電極23を、スクリーン印刷により形成した。当該ガラス基板のサイズは13インチとし、隣り合うアドレス電極23間の距離は、42インチサイズのハイビジョンテレビディスプレイに相当する0.2mmとした。当該距離は、PDPにおける画素ピッチに相当する。
次に、当該主面全体にアドレス電極23を被覆するように、誘電体層14と同様にして誘電体層22を形成した。誘電体層22の形成に用いたガラス材料は、誘電体層14と同様とした。
次に、誘電体層22上に、ガラス製の隔壁21を所定のピッチ(0.2mm)で固着した後に、隣り合う隔壁21間の誘電体層22上および隔壁21の側面上に、スクリーン印刷により蛍光体層26を形成し、背面板2とした。
蛍光体層26の形成にあたっては、エチルセルロース(関東化学製、製品番号17783-1A)5gと、α-ターピネオール(日本テルペン化学株式会社製)45gとを混合したバインダーに、蛍光体50gを混合して形成したペーストを用い、蛍光体層26を形成する部分に当該ペーストを塗布した後に、空気中、200℃にて1時間乾燥させて蛍光体層26とした。
蛍光体には、赤色蛍光体として(Y,Gd)BO3:Euを、緑色蛍光体としてZn2SiO4:Mnを、青色蛍光体としてBaMgAl10O17:Euを用いた。これらの蛍光体は、PDPに一般的に用いられている蛍光体である。
上記のようにして作製した前面板1と背面板2とを、大気中、450℃にて1時間焼成した後に、保護層5と蛍光体層26とが向かい合い、かつ、走査電極12および維持電極11とアドレス電極23とが互いに直交するように対向して配置し、両板の周縁部を、封着用ガラスにより封着した。次に、放電空間31内を圧力3×10-4Paになるまで減圧した後に、NeとXeとからなる放電ガスを67kPaの圧力で封入し、全体を密封して、PDP(サンプル1)を得た。
なお、サンプル1について、放電空間31に封入する放電ガスの組成を3通り(Xeの含有率が5体積%、10体積%および40体積%)に変化させた3種類のサンプルを作製した。上述したように、PDPでは一般に、放電ガスにおけるXeの含有率が増大するにつれて、表示される画像のちらつきが強くなる傾向がある。
サンプル1の作製とは別に、ペレットA−1の代わりに、BaCO3(関東化学株式会社製、製品番号:04015-08)59.2gと、MgO(関東化学株式会社製 製品番号:25018-13)12.09gと、SiO2(関東化学株式会社製 製品番号:37049-13)18.024gとから形成した複合酸化物のペレットA−2を用いたサンプル2を作製した。ペレットA−2はペレットA−1と同様に形成し、サンプル2の作製は、ペレットA−2を用いた以外はサンプル1と同様にして行った。ペレットA−2の複合酸化物の組成は、Ba3MgSi2O8である。なお、サンプル2についても、放電ガスにおけるXeの含有率が異なるサンプルを3種類作製した。
また、サンプル1の作製とは別に、ペレットA−1の代わりに、SrCO3(関東化学株式会社製、製品番号:37339-08)22.14gと、BaCO3(関東化学株式会社製、製品番号:04015-08)28.6gと、MgO(関東化学株式会社製 製品番号:25018-13)12.09gと、SiO2(関東化学株式会社製 製品番号:37049-13)18.024gとから形成した複合酸化物のペレットA−3と用いたサンプル3を作製した。ペレットA−3はペレットA−1と同様に形成し、サンプル3の作製は、ペレットA−3を用いた以外はサンプル1と同様にして行った。ペレットA−3の複合酸化物の組成は、(Sr,Ba)3MgSi2O8である。なお、サンプル3についても、放電ガスにおけるXeの含有率が異なるサンプルを3種類作製した。
サンプル1〜3の作製とは別に、保護層としてMgO層を備えるPDP(比較例であるサンプル4)を作製した。サンプル4は、保護層を形成する際に成膜原料として上記MgOペレットのみを用いた以外はサンプル1と同様にして、作製した。なお、サンプル4についても、放電ガスにおけるXeの含有率が異なるサンプルを3種類作製した。
(前面板からの電子放出量の評価方法)
上記のように作製したサンプル1〜4の前面板について、その保護層が配置されている面からの電子放出量を、大気中光電子分光装置(理研計器株式会社製:AC−2)を用いて以下の測定条件により評価した。評価した電子放出量が大きいほど、放電現象のトリガーとなる電子がより多く放出されるといえる。
測定条件:
雰囲気:乾燥空気中
光源:重水素ランプ
光量:350mW(光量補正あり)
測定範囲:3.4〜6.2eV
測定ステップ:0.05eV
測定時間:10秒/ステップ
光源からの光(紫外線)は、各サンプルの前面板における保護層に照射した。
図6に、代表例として、サンプル1、4の測定結果を示す。図6に示すグラフの横軸は各々のサンプルの保護層に照射した紫外線のエネルギーを、縦軸は保護層から放出された電子の放出数(任意単位)を示す。このグラフでは、サンプルの電子放出量が多くなるほど、そのプロファイルの傾きが大きくなるが、本実施例では、紫外線のエネルギーが5.5〜6.0eVの範囲におけるプロファイルの傾きを数値化することにより、各サンプルの前面板からの電子放出量とした。なお、図6に示すグラフでは、サンプル1の電子放出量が48.2eV-1、比較例であるサンプル4の電子放出量が12.8eV-1であり、従来のPDPにおいて保護層に使用されてきたMgO層(サンプル4)に比べて、電子放出量が大きい保護層(サンプル1)とすることができた。
(放電の時間的なばらつきの評価方法)
上記のように作製したサンプル1〜4について、データパルスの印加に対する放電の時間的なばらつきを評価した。評価方法を以下に示す。
各サンプルにおける任意の1画素に、図8に示す初期化パルス110を印加した後に、データパルス100および走査パルス120を繰り返し印加した。印加したデータパルスおよび走査パルスのパルス幅は、通常のPDP駆動時における5μsecよりも長い100μsecに設定した。データパルスおよび走査パルスを印加する毎に、パルスを印加してから放電が発生するまでの時間(遅れ時間)を100回測定し、測定した遅れ時間の最大値と最小値との差を算出した。遅れ時間は、放電に伴う蛍光体の発光を光センサーモジュール(浜松ホトニクス株式会社製、H6780−20)により受光し、印加したパルス波形と受光信号波形とをデジタルオシロスコープ(横河電機製、DL9140)で観測することにより測定した。このテストを同条件で20回繰り返し、上記最大値と最小値との差の平均値を、データパルスの印加に対する放電の時間的なばらつき、とした。
(ちらつきの評価方法)
上記のように作製したサンプル1〜4について、放電の時間的なばらつきの評価とは別に、白色を表示した時のちらつきの有無を評価した。
各サンプルにおける全画素に、図8に示す初期化パルス110、データパルス100、走査パルス120および維持パルス130を印加することにより、全画素を発光させ、各サンプルに白色を表示させた。その際、視認評価により、表示される画像にちらつきがみられるかどうかを評価した。
各サンプルにおける評価結果について、以下の表1に示す。なお、放電の時間的なばらつきの値は、比較例であるサンプル4の値を1とする規格化後の値である。また、ちらつきの有無は、ちらつきが確認された場合を「あり」とし、ちらつきが確認されなかった場合を「なし」とした。
表1に示すように、サンプル1〜3では、比較例であるサンプル4に対して、電子放出量が多かった。また、サンプル1〜3では、サンプル4に対してデータパルスの印加に対する放電の時間的なばらつきを低減できた他、サンプル4に対してちらつきの発生を抑制できた。特にサンプル1は、電子放出量が最も大きく、放電の時間的なばらつきが最も小さかった他、放電ガスにおけるXeの含有率が40体積%の場合においても、白色表示の際のちらつきが確認されなかった。
実施例1では、各PDPサンプルの駆動電圧として、図8に示す波形を有する駆動電圧を使用したが、サンプル1〜3で得られた効果は、保護層5がBaおよびSrから選ばれる少なくとも1種の元素と、Siと、Mgと、Oとを含むことに由来するものであるため、その他の波形を有する駆動電圧を印加した場合においても、実施例1と同様の結果が得られると考えられる。
(実施例2)
実施例2では、図3に示すような、複合酸化物Aを含む層5dとMgO層5cとの積層構造を有する保護層5を備えるPDP7を作製し、前面板1における保護層5が配置されている面からの電子放出量、ならびに、作製したPDP7におけるデータパルスの印加に対する放電の時間的なばらつきの程度、および、白色を表示した時のちらつきの有無、を評価した。
(サンプル作製)
最初に、実施例1と同様にして、前面板1となるガラス基板における一方の主面上に、Agからなる走査電極12および維持電極11と、誘電体層14とを形成した。当該ガラス基板のサイズ、走査電極12および維持電極11間の距離、および、誘電体層14の形成に用いたガラス材料は、実施例1と同様とした。
次に、誘電体層14の表面に、真空蒸着法によりMgO層(厚さ0.8μm)を成膜した後に、当該MgO層の表面に、真空蒸着法によりSr3MgSi2O8層(厚さ0.1μm)を成膜して、保護層5とした。
MgO層およびSr3MgSi2O8層の成膜条件は実施例1と同様とし、各層の成膜原料には、それぞれ、実施例1で作製したMgOペレットおよびペレットA−1を用いた。
形成した保護層5の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、MgO層とSr3MgSi2O8層とが積層された積層構造を有していた。各層の組成は、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)により同定した。
このようにして形成した前面板1と、実施例1で形成した背面板2とを用い、実施例1と同様にしてPDP(サンプル5)を作製した。なお、サンプル5について、サンプル1と同様に、放電ガスにおけるXeの含有率が異なるサンプルを3種類作製した。
サンプル5の作製とは別に、ペレットA−1の代わりに、実施例1で作製したペレットA−2を用いた以外はサンプル5と同様にして、サンプル6を作製した。サンプル6における保護層5の断面をSEMにより観察したところ、MgO層(厚さ0.8μm)とBa3MgSi2O8層(厚さ0.1μm)とが積層された積層構造を有していた。各層の組成は、EDXにより同定した。なお、サンプル6についても、放電ガスにおけるXeの含有率が異なるサンプルを3種類作製した。
サンプル5〜6の作製とは別に、MgOペレットを成膜原料とする真空蒸着法により、保護層として2層のMgO層を誘電体層14の表面に形成したPDP(比較例であるサンプル7)を作製した。サンプル7における保護層の断面をSEMにより観察したところ、保護層は、厚さ0.8μmのMgO層と、厚さ0.1μmのMgO層とが積層された積層構造を有していた。なお、サンプル7についても、放電ガスにおけるXeの含有率が異なるサンプルを3種類作製した。
上記のように作製したサンプル5〜7について、実施例1と同様にして、前面板1における保護層5が配置されている面からの電子放出量、データパルスの印加に対する放電の時間的なばらつき、および、白色を表示した時のちらつきの有無を評価した。評価結果を以下の表2に示す。なお、放電の時間的なばらつきの値は、比較例であるサンプル7の値を1とする規格化後の値である。また、ちらつきの有無は、ちらつきが確認された場合を「あり」とし、ちらつきが確認されなかった場合を「なし」とした。
表2に示すように、サンプル5〜6では、比較例であるサンプル7に対して、電子放出量が多かった。また、サンプル5〜6では、サンプル7に対してデータパルスの印加に対する放電の時間的なばらつきを低減できた他、サンプル7に対してちらつきの発生を抑制でき、放電ガスにおけるXeの含有率が40体積%の場合においても、白色表示の際のちらつきが確認されなかった。
(実施例3)
実施例3では、図4に示すような、複合酸化物Aの粒子5eをMgO層5fにおける放電空間側の表面に分散させた構造を有する保護層5を備えるPDP7を作製し、前面板1における保護層5が配置されている面からの電子放出量、ならびに、作製したPDP7におけるデータパルスの印加に対する放電の時間的なばらつきの程度、および、白色を表示した時のちらつきの有無、を評価した。
(サンプル作製)
最初に、実施例1と同様にして、前面板1となるガラス基板における一方の主面上に、Agからなる走査電極12および維持電極11と、誘電体層14とを形成した。当該ガラス基板のサイズ、走査電極12および維持電極11間の距離、および、誘電体層14の形成に用いたガラス材料は、実施例1と同様とした。
次に、誘電体層14の表面に、真空蒸着法によりMgO層(厚さ0.8μm)を成膜した後に、当該MgO層の表面に、複合酸化物Aの粒子としてSr3MgSi2O8粒子を分散させて保護膜5とした。
MgO層の成膜条件は実施例1と同様とし、MgO層の成膜原料には実施例1で作製したMgOペレットを用いた。また、MgO層の表面へのSr3MgSi2O8粒子の分散は、実施例1で作製したペレットA−1を粉砕して得た粉末をエタノールと混合した(混合比は、粉末:エタノール=1g:50g)後、混合物をMgO層に噴霧して、エタノールを揮発させることにより行った。
形成した保護層5の断面をSEMにより観察したところ、MgO層の表面にSr3MgSi2O8粒子が分散した構造を有していた。
このようにして形成した前面板1と、実施例1で形成した背面板2とを用い、実施例1と同様にしてPDP(サンプル8)を作製した。なお、サンプル8について、サンプル1と同様に、放電ガスにおけるXeの含有率が異なるサンプルを3種類作製した。
サンプル8の作製とは別に、ペレットA−1の代わりに、実施例1で作製したペレットA−2を用いた以外はサンプル8と同様にして、サンプル9を作製した。サンプル9についても、放電ガスにおけるXeの含有率が異なるサンプルを3種類作製した。
上記のように作製したサンプル8〜9について、実施例1と同様にして、前面板1における保護層5が配置されている面からの電子放出量、データパルスの印加に対する放電の時間的なばらつき、および、白色を表示した時のちらつきの有無を評価した。評価結果を、実施例1のサンプル4を比較例として、以下の表3に示す。なお、放電の時間的なばらつきの値は、比較例であるサンプル4の値を1とする規格化後の値である。また、ちらつきの有無は、ちらつきが確認された場合を「あり」とし、ちらつきが確認されなかった場合を「なし」とした。
表3に示すように、サンプル8〜9では、比較例であるサンプル4に対して、電子放出量が多かった。また、サンプル8〜9では、サンプル4に対してデータパルスの印加に対する放電の時間的なばらつきを低減できた他、サンプル4に対してちらつきの発生を抑制できた。特に、サンプル8では、放電ガスにおけるXeの含有率が40体積%の場合においても、白色表示の際のちらつきが確認されなかった。
(参照例)
本参照例では、図5に示すような、粒子状の複合酸化物A8を含む蛍光体層6を備えるPDP17を作製し、初期化パルスの印加に対する放電の時間的なばらつきの程度と、黒色を表示した時のちらつきの有無とを評価した。
(サンプル作製)
最初に、実施例1と同様にして、背面板2となるガラス基板における一方の主面上に、Agからなるアドレス電極23と、アドレス電極23を被覆する誘電体層22とを形成した。当該ガラス基板のサイズ、隣り合うアドレス電極23間の距離、および、誘電体層22の形成に用いたガラス材料は、実施例1と同様とした。
次に、誘電体層22上に、ガラス製の隔壁21を所定のピッチ(0.2mm)で固着した後に、隣り合う隔壁21間の誘電体層22上および隔壁21の側面上に、スクリーン印刷によりSr3MgSi2O8の粒子を含む蛍光体層6を形成して、背面板2とした。
蛍光体層6は、実施例1における蛍光体層26の形成に用いたバインダーに、蛍光体50gと、実施例1で作製したペレットA−1を粉砕して得たSr3MgSi2O8粉末5gとを混合して形成したペーストを用いた以外は実施例1と同様にして、形成した。蛍光体の種類は、サンプル1と同様とした。
上記のようにして作製した背面板2と、サンプル4の作製に用いた前面板1(保護層がMgO層からなる)とを用い、実施例1と同様にしてPDP(サンプル10)を作製した。なお、サンプル10について、サンプル1と同様に、放電ガスにおけるXeの含有率が異なるサンプルを3種類作製した。
サンプル10の作製とは別に、Sr3MgSi2O8粉末の代わりに、実施例1で作製したペレットA−2を粉砕して得たBa3MgSi2O8粉末を用いた以外はサンプル10と同様にして、Ba3MgSi2O8の粒子を含む蛍光体層6を備えるサンプル11を作製した。なお、サンプル11についても、放電ガスにおけるXeの含有率が異なるサンプルを3種類作製した。
(放電の時間的なばらつきの評価方法)
上記のように作製したサンプル10〜11、および、実施例1で作製した比較例サンプル4について、初期化パルスの印加に対する放電の時間的なばらつきを評価した。評価方法を以下に示す。
各サンプルにおける任意の1画素に、図8に示す初期化パルス110、走査パルス120、維持パルス130、および、消去パルス140を繰り返し印加し、初期化パルスを印加してから放電が発生するまでの時間(遅れ時間)を100回測定し、測定した遅れ時間の最大値と最小値との差を算出した。遅れ時間は、放電に伴う蛍光体の発光を光センサーモジュール(浜松ホトニクス株式会社製、H6780−20)により受光し、印加した初期化パルス波形と受光信号波形とをデジタルオシロスコープ(横河電機製、DL9140)で観測することにより測定した。このテストを同条件で20回繰り返し、上記最大値と最小値との差の平均値を、初期化パルスの印加に対する放電の時間的なばらつき、とした。
(ちらつきの評価方法)
上記のように作製したサンプル10〜11、および、実施例1で作製した比較例サンプル4について、放電の時間的なばらつきの評価とは別に、黒色を表示した時のちらつきの有無を評価した。
各サンプルにおける全画素に、図8に示すデータパルス100を印加することなく、初期化パルス110、走査パルス120および維持パルス130を印加して、各サンプルに黒色を表示させた。その際、視認評価により、表示される画像にちらつきがみられるかどうかを評価した。
各サンプルにおける評価結果について、以下の表4に示す。なお、放電の時間的なばらつきは、比較例であるサンプル4の値を1とする規格化後の値である。また、ちらつきの有無は、ちらつきが確認された場合を「あり」とし、ちらつきが確認されなかった場合を「なし」とした。
表4に示すように、サンプル10〜11では、サンプル4に対して初期化パルスの印加に対する放電の時間的なばらつきを低減できた。また、サンプル10〜11では、サンプル4に対してちらつきの発生を抑制でき、放電ガスにおけるXeの含有率が40体積%の場合においても、黒色表示の際のちらつきが確認されなかった。