本発明は、波長変換素子を用いたコヒーレント光源およびその制御方法、並びにそれらを用いたディスプレイ装置およびレーザディスプレイに関するものである。
図11に従来のこの種のディスプレイ装置の一例として、レーザディスプレイ100の概略構成を示す。図において、RGB3色のレーザ光源101aないし101cからのコヒーレント光は光変調器106aないし106cにより入力映像信号に応じて強度変調され、ダイクロイックミラー102a、102bにて合波される。さらにポリゴンスキャナ(ポリゴンミラー)104にて水平方向に、ガルバノミラー105によって垂直方向に、それぞれ走査され、スクリーン108上に2次元の画像が表示される。
この構成のディスプレイでは、RGBそれぞれの光源の光が単色光であるため、適当な波長のレーザ光源を用いることで、NTSC信号よりも表示可能な色範囲が広がり、色純度が高く、鮮やかな画像の表示が可能となる。
図12はこの従来のレーザディスプレイに接続可能な機器を示すものである。この従来例のレーザディスプレイはRGB端子により映像信号を入力するものとしており、ノートPC等のパーソナルコンピュータ201、ビデオゲーム機202、各種DVD等の光ディスクプレーヤ203、VTRとの一体型を含む光ディスクレコーダ204、カメラ一体型VTR205、据え置き型VTR206、BS/CSチューナ207、TV208、各種光ディスクドライブとの一体型を含むハードディスクレコーダ209、インターネット放送用STB(Set Top Box)210、CATV用STB211、地上波デジタル放送用STB212、BS HDTV放送用STB213等、RGB信号の出力端子を有するものであれば、接続が可能である。
この他、レーザディスプレイと接続する機器が出力する信号のフォーマットに合わせて、D4入力端子、DVI−D入力端子、IEEE1394端子、コンポーネント端子、S端子、ビデオ端子等を設けてもよい。
この種のディスプレイ装置の小型化・省電力化を図り、持ち運びを容易にするためには、レーザ光源101aないし101cを直接変調し、光変調器106aないし106cを取り除く必要がある。前記従来の構成において、RGB光源の内、赤色(R)光源は半導体レーザを、緑色(G)および青色(B)光源はSHG光源を用いる必要がある。NTSC信号よりも表示可能な色範囲が広く、色純度が高く、鮮やかな画像の表示を可能とするには波長530nm近傍の緑色光および波長450nm近傍の青色光が必要であるが、高出力化が可能で信頼性の確保が可能な緑色用および青色用の半導体レーザが現時点で存在しないためSHG光源の利用が必要となる。ディスプレイ用の光源への利用を考えると、SHG光源の出力を高速で変調させるとともに出力の階調を行う必要がある。なお、赤色については半導体レーザを高速変調し階調を実現することが可能である。
例として800本(水平方向)×600本(垂直方向)の2次元走査を毎秒30フレーム行う場合、14.4MHzの周波数で出力変調させるとともに少なくとも256段階程度の出力階調を行う必要がある。SHG光源の出力を変化させるには(特許03329446に示されるように)分布ブラッグ反射領域や位相領域を備えた半導体レーザを用い、直流電源を用いて分布ブラッグ反射領域や位相領域へ加える電流を変化させ、各部の熱上昇により発生する屈折率変化により半導体レーザの発振波長をSHG素子の位相整合波長スペクトル内で変化させる方法がある。しかし、このような方法では屈折率変化が熱的に発生するため、変化に要する時間がmsecオーダーと長く、MHzオーダーの変調は困難である。
特開2003−98476号公報(第4頁 図1)
この発明は、上記のようなSHG光源の光出力の変調に関する問題点を解決するためになされたもので、SHG光源の出力変調の高速化を図りながら階調を実現することを目的としている。
この目的のために本発明の一態様に係るコヒーレント光源は、活性領域および分布ブラッグ反射領域を備えた半導体レーザと、非線形光学結晶からなり、当該半導体レーザから出射されたレーザ光の波長を変換する光波長変換素子と、前記光波長変換素子からの高調波出力を測定する光検出器と、前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域に個別に電流を加える電流注入手段と、前記光検出器で測定される高調波出力に基づいて前記電流注入手段を制御し、前記半導体レーザの発振波長を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定する電流制御手段と、少なくとも前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域へパルス電流を加えるパルス電流注入手段と、前記光検出器で測定される高調波出力に基づいて前記パルス電流注入手段を制御し、前記半導体レーザの発振波長を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部で所望の値に変化させるパルス電流制御手段と、を備えることを特徴とする。
この態様によれば、半導体レーザから出射され、光波長変換素子により波長が変換されたレーザ光の高調波出力は、光検出器により測定されている。この状態で、まず、電流制御手段は電流注入手段を制御し、活性領域および分布ブラッグ反射領域に加える電流を調整し、半導体レーザの発振波長を位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定する。続いて、パルス電流注入手段は、少なくとも活性領域および分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域にパルス電流を加える。これにより、当該パルス電流が加えられた領域の屈折率が瞬間的に低下し高調波の波長が低波長側にシフトするので、高調波出力は減少する。このとき、どの程度高調波出力を減少させるかはパルス電流制御手段により制御されているので、高調波出力を所望の値に高速にかつ連続的に変化させることができる。
また、本発明の一態様に係るコヒーレント光源の制御方法は、非線形光学結晶からなり、半導体レーザから出射されたレーザ光の波長を変換する光波長変換素子からの高調波出力を光検出器で検出し、当該光検出器の出力に基づいて、前記半導体レーザに備えられた活性領域および分布ブラッグ反射領域へ加える電流を制御して、前記光検出器で検出される高調波出力を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定した後、前記活性領域または前記分布ブラッグ反射領域へパルス電流を加え、前記光検出器で検出される高調波出力を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部で所望の値に変化させることを特徴とする。
この態様に係る制御方法を用いたコヒーレント光源によれば、高調波出力を所望の値に高速にかつ連続的に変化させることが可能となる。
[図1]レーザディスプレイの概略構成図
[図2]SHG光源の出力調整装置を示す図
[図3]DBR−LDにおいてIopを変化させたときの発振波長特性を示す図
[図4]DBR−LDにおいてIdbrを変化させたときの発振波長特性を示す図
[図5]光波長変換素子の位相整合波長スペクトルを示す図
[図6]DBR領域への印加パルス電流を示す図
[図7]DBR領域へパルス電流を加えた際の高調波出力特性を示す図
[図8]DBR領域にパルス電流を加え、高調波出力を制御する際の処理の流れを示すフローチャート
[図9]実施の形態2における3電極LDを用いたSHG光源の出力調整装置の概略構成を示すブロック図
[図10]3電極LDにおいてIdbrとIphaseの比率を一定にしてIdbrを変化させたときの発振波長特性を示す図
[図11]レーザディスプレイの概略構成を示す図
[図12]従来のレーザディスプレイに接続可能な機器を示す図
(実施の形態1)
図1に、レーザディスプレイの概略構成を示す。図において、RGB3色のレーザ光源1aないし1cからのコヒーレント光は入力映像信号に応じて強度変調され、ダイクロイックミラー(合波手段)2a、2bにて合波される。さらに回転多面鏡からなるポリゴンスキャナ(ポリゴンミラー、第1の走査手段)4にて水平方向に、ガルバノミラー(第2の走査手段)5によって垂直方向に、それぞれ走査され、スクリーン8上に2次元の画像が表示される。この水平方向の走査手段と垂直方向の走査手段としては、上記に限られず、ポリゴンスキャナ4とガルバノミラー5との任意の組み合わせが可能である。また、Green用の光源1bおよびBlue用の光源1cにはSHG光源を使用した。Red用の光源1aには半導体レーザを用いており、出力の変調を高速かつ直接行うことが可能である。また、本明細書においては、レーザディスプレイからスクリーンを除いた構成を持つ装置をディスプレイ装置という。
本実施の形態1におけるSHG光源は、利得を与えるための活性領域および発振波長を制御するための分布ブラッグ反射領域(DBR領域)を備えた半導体レーザ(DBR−LD)と、非線形光学結晶からなる光波長変換素子とを具備している。ここではSHG光源の出力変調制御方法について説明する。なお、DBR−LDはDBR領域へ電流を加え、DBR領域の温度を上昇させ、DBR領域の屈折率を変化させることによって半導体レーザの発振波長を変えることが可能である。
図2は、実施の形態1におけるSHG光源および当該SHG光源の出力調整装置の概略構成を示す図である。本明細書においては、SHG光源単独、並びにSHG光源および当該SHG光源の出力調整装置を合わせた全体をコヒーレント光源という。この出力調整装置は、活性領域52およびDBR領域53を有する半導体レーザ(DBR−LD)51と、光波長変換素子56と、光波長変換素子56から出射された高調波を平行光にするためのコリメートレンズ57および基本波をカットするための波長選択フィルター58と、平行光の一部を分岐するビームスプリッター54と、高調波出力をモニターするためのフォトディテクター(光検出器)59と、各部を制御する制御回路60とから構成される。この図2において、活性領域52とDBR領域53は説明のために分割して示しているが、実際には一体となっている。また、DBR−LD51と光波長変換素子56とは一体化されておりSHG光源55となっている。
上記制御回路60には、制御を行うためのマイクロコンピュータ(電流制御手段およびパルス電流制御手段)61と、半導体レーザの活性領域52へ加える電流(以下、Iopと記する)を制御するためのレーザ駆動回路(電流注入手段)63と、DBR領域53へ加える電流(以下、Idbrと記する)を制御するためのDBR駆動回路(電流注入手段)64とが組み込まれている。さらに活性領域52へパルス電流を加える活性領域用パルス回路(パルス電流注入手段)65とDBR領域へパルス電流を加えるDBR領域用パルス回路(パルス電流注入手段)66が付加されている。
本実施の形態1において、DBR−LD51は、例えばAlGaAs系半導体レーザであり、出力は定格100mW、しきい値は30mA、100mW出力時の動作電流は150mAであった。また、光波長変換素子56としては素子長10mmの分極反転型光導波路デバイスを用い、マグネシウムをドーピングしたニオブ酸リチウム基板上に、光導波路と周期的な分極反転領域を設けたものを用いた。
この光波長変換素子56から青色光を出射させる場合には、例えば、850nm帯のレーザ光を出射するDBR−LD51を用い、分極反転周期を3.2μmとすればよい。これにより、波長425nm程度の青色光を得ることができる。また、波長変換素子56から緑色光を出射させる場合には、例えば、1064nm帯のレーザ光を出射するDBR−LD51を用い、分極反転周期を6.7μmとすればよい。これにより、波長532nm程度の緑色光を得ることができる。
以下に、本実施の形態1のSHG光源において所望の出力を得ると共に、その出力を高速に変調し、出力階調を実現する制御方法について説明する。
図3に、Iopの変化に対するDBR−LDの発振波長の変化を示す。ここではIdbr=0mAとしている。図3の実線はIopを増加させた場合の波長変化を示している。図3中の点線はIopを低下させた場合の波長変化を示している。図3から、Iopの増加と共にDBR−LDの発振波長がモードホップを繰り返しながら変化するのがわかる。このようにモードホップが生じるのは、DBR領域の影響を受けているためである。
また、図3に示すように、Iopの変化に対するDBR−LDの発振波長は、ヒステリシス特性を有している。本実施の形態1のDBR−LDでは、モードホップした直後の点(E点)から±30mAの間モードホップしないことを確認できた。このことは、モードホップした点が最も安定な点であることを示している。DBR−LDの発振波長を制御する際にはモードホップ点付近で波長変化させるのが安定である。このときの波長変化は、0.004nm/mAであった。このことは、DBR−LDの発振波長を、モードホップ無しで連続的に±0.12nmだけ変化させることができることを意味している。
図4にはIop=100mAと一定にし、Idbrを変化させたときの特性を示す。図4より、Idbrを増加させると、DBR−LD51の発振波長がステップ状に増加することがわかる。本実施の形態においては、このステップの幅(横軸方向)はおよそ10mAであり、ステップの高さ(縦軸方向)はおよそ0.1nmである。また、Idbrを増加させるときと減少させるときとで発振波長が異なり、図のようにヒステリシス特性を有している。このため、Idbrをモードホップする電流値の近傍(図のB点及びC点)に固定すると、環境温度変化等によるモードホップを起こしやすく、発振波長が不安定になる。したがって、発振波長を安定化させるためには、Idbrを半導体レーザの発振波長がモードホップした直後の電流値のところ(図のA点)に固定することが好ましい。図3、4より、IopとIdbrを変化させることで限られた範囲内でDBR−LDの発振波長を連続的に変化させられることがわかる。
図5に、光波長変換素子56の位相整合波長スペクトルを示す。この図においては、ピーク出力を「1」として高調波出力を規格化してある。図5に示すように、光波長変換素子は基本波である半導体レーザの発振波長に対して、基本波から高調波への変換効率が異なる。例えば、光波長変換素子長が10mmの場合、高調波出力がピーク出力の半値となる位相整合波長許容幅(半値半幅)は0.08nmと非常に狭い。この図5からわかるように、高調波を出力させるためには半導体レーザの発振波長を光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内に合わせる必要がある。ここで、位相整合波長スペクトル内とは、ピーク波長を含み、当該ピーク波長の低波長側及び高波長側において高調波出力が極小になる波長の範囲のことである。つまり、図5のサイドローブ部は、位相整合波長スペクトル外ということになる。尚、ピーク波長とは、高調波出力が最大(ピーク出力)となる波長のことをいう。
そして、DBR−LDを用いて半導体レーザの発振波長を光波長変換素子56の位相整合波長スペクトル内に固定し、高調波出力を得る。位相整合波長スペクトル内で図3、4に示すようにIopやIdbrを変化させてDBR−LDの発振波長を変化させれば高調波の出力を変化させることができ、出力の階調が可能となる。ただし、図3に示したように、Idbrを固定してIopを変化させる場合には、限られた範囲内(本実施の形態においては、±0.12nm)でしかDBR−LDの発振波長を連続的に変化させられない。したがって、広い範囲で階調を行うためには、この変化させられる波長の値が、おおよそ位相整合波長スペクトルの半値半幅(本実施の形態においては、0.08nm)よりも大きいことが必要である。
図5に示す位相整合波長スペクトルのうち、高調波出力がピーク出力の5%以上、かつ、95%以下となる部分を傾斜部とする(スペクトルの太線部)。この傾斜部は、波長に対する出力がほぼリニアに変化するため階調しやすいという特性がある。そのため、SHG光源の出力を設定するには傾斜部を用いるのがよい。
また、この傾斜部は、ピーク波長より低波長側と高波長側とにそれぞれ1つずつある。これらのうち、SHG光源の出力を設定するにはピーク波長より低波長側の部分を用いることが好ましい。これは、図4からわかるように、ピーク波長より低波長側の部分に波長を固定する方が、高波長側の部分に波長を固定する場合に比べてIdbrを小さくできる、つまり消費電力を低く抑えることができるからである。
また、制御回路の誤差精度が±5%程度あるために、傾斜部以外の部分を使用する場合、たとえば高調波出力をピーク出力の95%を超える点に固定した場合においては、IopやIdbrを変化させても所望の値を得られない危険性があるからである。
これまで説明したIopやIdbrによるDBR−LDの発振波長の変化は熱的に発生する現象である。IopやIdbrの変化により活性領域やDBR領域の熱が変化し、それに伴い活性領域やDBR領域の屈折率が変動するために発生する現象である。よって発振波長の変化はmsecのオーダーで生じる現象であり、動画を映像として出力させるためのスピードとしては不十分である。動画を出力するには最低でもMHzオーダー、つまりnsecから数μsecオーダーの波長変化スピードが要求される。
そこで、DBR領域へパルス電流を加えるDBR領域用パルス回路66を用いてパルス電流を加えた。活性領域やDBR領域へパルス電流を加えると、例えば、半導体内部でのキャリア密度が上昇し、プラズマ効果という現象が発生し、DBR部の屈折率が瞬間的に低下する。このとき、DBR−LDの発振波長は瞬時に低波長側へシフトするため、高調波の出力が減少する。また、パルス電流であるため熱的な変化はほとんど発生しない。このようなプラズマ効果を用いた波長制御により、DBR−LDの発振波長を高速に制御することで、高調波出力をnsecオーダーで変調するとともに階調することが可能となる。
具体的に説明すると、まずDBR−LDの発振波長を制御し図5の位相整合波長スペクトル内のA点に固定した。次にDBR領域へ図6のようなパルス電流を加えプラズマ効果を発生させた。ここで、パルス電流の一例として矩形パルスをDBR領域へ加えたが、プラズマ効果に影響を与える大きな要因の一つはパルスの立ち上がり部の形状である。この立ち上がり部の傾きが急峻であるほど瞬間的にキャリア密度が上昇するので、プラズマ効果を有効に発生させることができる。したがって、例えば、三角形パルスや立ち上がり部が鈍った形状のパルス等に比較して、矩形パルスを用いることが好ましい。また、プラズマ効果にほとんど影響を与えないためパルス幅は任意で構わないが、パルス幅が広いとその分DBR領域において熱が発生する。そのため、パルス幅は、できるだけ狭い方が好ましい。
図7はA点に固定後、図6と同様のパルス電流(図の実線)を加えた際の高調波出力(図の一点鎖線)の変化を示す図である。この例では、時刻t7において目標出力値A7になるように、そこまでの任意の時刻において高調波出力が直線的に減少していくように制御するものとする。つまり、高調波の出力値A1〜A7は、それぞれ時刻t1〜t7における目標出力値であるとする。また、図8はDBR領域にパルス電流を加え、高調波出力を制御する際の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、マイクロコンピュータ61は、時刻t7において目標出力値A7になるように、時刻t1における目標出力値A1を算出する(ステップS101)。続いて、マイクロコンピュータ61は、その目標出力値A1を達成するパルス電流の高さを算出し(ステップS102)、DBR領域用パルス回路66を制御することで、算出された高さを有するパルス電流をDBR部に加える(ステップS103)。これにより、DBR−LDの発振波長が低波長側にシフトする(ステップS104)。高調波出力を変化させる要因がなければ、理想的には、パルス電流の高さは図8に点線で示したように直線的な値を取るはずである。しかしながら、実際は、DBR領域の温度変化等があるため、求められた高さのパルス電流を加えても高調波出力は目標出力値に達しないことが多い。
そこで、光波長変換素子56から出射された高調波出力をフォトディテクター59で測定する(ステップS105)。まだ、時刻t7に至っていないので、制御は終了しておらず(ステップS106でNo)、ステップS101に戻り、フォトディテクター59で測定された値をもとにフィードバック制御を行う。例えば、時刻t1でパルス電流を加えた結果、目標出力値A1よりも高調波出力が大きかったとすると、ステップS102で算出される時刻t2におけるパルス電流の高さは、点線で示した理想的な値よりも大きくする必要がある。
以下、上記の処理を順次行っていき、前の時刻で測定された高調波出力が目標出力値よりも大きければ、より出力値を下げる必要があるのでパルス電流の高さを理想的な値よりも大きく算出し、逆に前の時刻で測定された高調波出力が目標出力値よりも小さければ、より出力値を上げる必要があるのでパルス電流の高さを小さく算出すればよい。このとき、パルス電流の高さを理想的な値に対して、大きくあるいは小さくする際には、例えば、目標出力値とフォトディテクター59により測定された値との差に応じて、所定の係数を掛けるような構成であってもよい。
以上図7を用いて説明したように、高調波出力がパルス電流の振幅(パルス高さ)に応じて出力が変化(今回の場合出力が減少)するとともに瞬時に変化する。また、位相整合波長スペクトルの傾斜部を用いることで連続的な階調が可能となる。
以上のように、本実施の形態1においては、DBR−LDを用いて光波長変換素子で波長変換された高調波の出力を所望の値に高速で設定することが可能となった。これにより、レーザ光源の高速変調と階調が可能となり、ディスプレイ装置などの高速応答および出力制御が必要な装置への利用が可能となる。
次に、ディスプレイ用の光源として利用する場合には映像信号の無い場合(黒を出力する場合)への対応が必要となる。この場合、活性領域へ加える電流であるIopをゼロにするのが最も効果的である。Iop=0では半導体レーザからの基本波の出力がなくなるため高調波出力も必然的にゼロとなる。他の手段として、活性領域およびDBR領域へパルス電流を加え、DBR−LDの発振波長を大きく変動させ位相整合波長スペクトル内からスペクトル外へ波長を変動させれば高調波出力がゼロとなる。
また、レーザ光をスキャンして映像を出力させる際、画面の端は常に映像出力が無い状態であるので、この領域を利用し、光源出力の安定化を図ることが可能である。マイクロコンピュータ61は、スキャンが画面の端に差し掛かったところで活性領域へのIopの供給をストップし、その間にDBR電流の確認や再調整を行い、高調波出力の安定出力に備えるのである。
さらに、ディスプレイ用の光源として利用する場合、高出力の信号が連続して出力される場合がある。このとき、DBR−LDの温度が徐々に上昇する場合がある。パルス電流を加え、プラズマ効果による制御だけでは熱の変化を抑えきれない場合が発生するのである。この場合、マイクロコンピュータ61が、あらかじめIopやIdbrを少しずつ変化させて熱の上昇により発生する波長変化をキャンセルするように構成することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態2においては、利得を与えるための活性領域、発振波長を制御するための分布ブラッグ反射領域(DBR領域)および波長を連続的に変化させるための位相領域を備えた半導体レーザ(3電極LD)と、非線形光学結晶からなる光波長変換素子とを具備したSHG光源の制御方法について説明する。なお、3電極LDは、位相領域に電流を加え、位相領域の屈折率を変化させることにより、半導体レーザの実質的な共振器長を変えることでモードホップすることなく半導体レーザの発振波長を連続的に変化させることが可能である。
図9は、実施の形態2におけるSHG光源の出力調整装置の概略構成を示す図である。この出力調整装置は、活性領域75、DBR領域77および位相領域76を有する半導体レーザ(3電極LD)74と、光波長変換素子80と、光波長変換素子80から出射された高調波を平行光にするためのコリメートレンズ81および基本波をカットするための波長選択フィルター82と、高調波の一部を分岐するビームスプリッター79と、高調波出力をモニターするためのフォトディテクター(光検出器)83と各部を制御する制御回路84とから構成される。この図9において、活性領域75、DBR領域77および位相領域76は説明のために分割して示しているが、実際には一体となっている。また、3電極LD74と光波長変換素子80とは一体化されSHG光源78となっている。
上記制御回路84には、制御を行うためのマイクロコンピュータ(電流制御手段およびパルス電流制御手段)85と、半導体レーザの活性領域75へ加える電流(Iop)を制御するためのレーザ駆動回路88と、DBR領域77へ加える電流(Idbr)を制御するためのDBR駆動回路86と、位相領域76へ加える電流(以下、Iphaseと記する)を制御するための位相部駆動回路87とが組み込まれている。このレーザ駆動回路88、DBR駆動回路86および位相部駆動回路87は、本実施の形態における電流注入手段としての機能を有する。
さらに活性領域75へパルス電流を加える活性領域用パルス回路95とDBR領域77へパルス電流を加えるDBR領域用パルス回路97と位相領域76へパルス電流を加える位相領域用パルス回路96とが付加されている。この活性領域用パルス回路95、DBR領域用パルス回路97および位相領域用パルス回路96は、本実施の形態におけるパルス電流注入手段としての機能を有する。
本実施の形態2において、3電極LD74は図10に示すように連続波長可変特性を有している。ここで、IdbrとIphaseとは、ある一定の比率で変化させなければ連続的にチューニングできないため、本実施の形態2においてはIdbrとIphaseの比率をIphase/Idbr=1.6で変化させた。なお、この比率は1.6に限られず任意でよい。また、光波長変換素子80としては、実施の形態1と同様のものを用いた。
本実施の形態2のように3電極LDを用いた場合には、半導体レーザの発振波長を連続的に可変できるため、光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内に発振波長を固定することが非常に容易となる。また、実施の形態1と同様に光波長変換素子の位相整合波長スペクトルの傾斜部を用いることによって、高調波出力を容易に変化させ、所望の高調波出力を得ることが可能である。
ここで言う傾斜部は、実施の形態1と同様に図5に示す位相整合波長スペクトルにおいて、高調波出力がピーク出力の5%以上、かつ、95%以下となる部分であるのが好ましい。SHG光源の出力を設定するには傾斜部を用いるのがよい。高調波出力がピーク出力の5%以上かつ95%以下の傾斜部は波長に対する出力がほぼリニアに変化するため階調しやすいという特性がある。また、制御回路の誤差精度が±5%程度あるために、傾斜部以外の部分を使用する場合、たとえば高調波出力をピーク出力の95%を超える点に固定した場合においては、3電極LDの発振波長を変化させても所望の値を得られない危険性があるからである。
これまで説明したIopやIdbr、Iphaseによる3電極LDの発振波長の変化は熱的に発生する現象である。IopやIdbr、Iphaseの変化により活性領域やDBR領域や位相領域の熱が変化し、それに伴い活性領域やDBR領域や位相領域の屈折率が変動するために発生する現象である。よって発振波長の変化はmsecのオーダーで生じる現象であり、動画を映像として出力させるためのスピードとしては不十分である。動画を出力するには最低でもMHzオーダー、つまりnsecから数μsecオーダーの波長変化スピードが要求される。
そこで、活性領域へパルス電流を加える活性領域用パルス回路95と、DBR領域へパルス電流を加えるDBR領域用パルス回路97と、位相領域へパルス電流を加える位相領域用パルス回路96とを用いてパルス電流を加えた。活性領域やDBR領域、位相領域へパルス電流を加えると、例えば、半導体内部でのキャリア密度が上昇し、プラズマ効果という現象が発生し、各部の屈折率が瞬間的に低下する。このとき、3電極LDの発振波長は瞬時に低波長側へシフトする。また、パルス電流であるため熱的な変化はほとんど発生しない。このようなプラズマ効果を用いた波長制御により、3電極LDの発振波長を高速に制御することで、高調波出力をnsecオーダーで変調することが可能となる。
具体的には3電極LDの発振波長を制御し、実施の形態1と同様に図5中のA点に固定した。次に位相領域とDBR領域へパルス電流を加えプラズマ効果を発生させた。このプラズマ効果により位相部とDBR部の屈折率が瞬間的に低下し、3電極LDの発振波長が短くなったため高調波の出力が瞬時に低下した。3電極LDを用いる場合はDBR領域だけへのパルス電流印加、または位相領域のみへのパルス電流印加でも波長変化は実現される。この結果、3電極LDを用いた場合においても図7のような特性が得られ、連続的な階調が可能となった。
以上のように、本実施の形態2においては、3電極LDを用いて光波長変換素子で波長変換された高調波の出力を所望の値に高速で設定することが可能となった。これにより、レーザ光源の高速変調と階調が可能となり、ディスプレイ装置などの高速応答が必要な装置への利用が可能となる。
次に、ディスプレイ用の光源として利用する場合には映像信号の無い場合(黒を出力する場合)への対応が必要となる。この場合、活性領域へ加える電流であるIopをゼロにするのが最も効果的である。Iop=0では半導体レーザからの基本波の出力がなくなるため高調波出力も必然的にゼロとなる。他の手段として、活性領域およびDBR領域、位相領域へパルス電流を加え、3電極LDの発振波長を大きく変動させ位相整合波長スペクトル内からスペクトル外へ波長を変動させれば高調波出力がゼロとなる。
また、レーザ光をスキャンして映像を出力させる際、画面の端は常に映像出力が無い状態であるので、この領域を利用し、光源出力の安定化を図ることが可能である。マイクロコンピュータ85は、スキャンが画面の端に差し掛かったところで活性領域へのIopの供給をストップし、その間にIdbrおよびIphaseの確認や再調整を行い、高調波出力の安定出力に備えるのである。
さらに、ディスプレイ用の光源として利用する場合、高出力の信号が連続して出力される場合がある。このとき、3電極LDの温度が徐々に上昇する場合がある。パルス電流を加え、プラズマ効果による制御だけでは熱の変化を抑えきれない場合が発生するのである。この場合、マイクロコンピュータ85が、あらかじめIphaseやIdbrを少しずつ変化させて熱の上昇により発生する波長変化をキャンセルするように構成することができる。
[その他の実施の形態]
(A)上記本発明の実施の形態においては、光波長変換素子56,80の材料として、マグネシウムをドーピングしたニオブ酸リチウム(LiNbO3)を用いるとして説明を行ったが、それに限られることなく、LiNbO3(LN)、LiTaO3(LT)、KTiOPoO4(KTP)、RbTiOAsO4、RbTiOPO4などを用いることもできる。さらに、光波長変換素子56,80の材料としては、非線形有機高分子などを用いてもよい。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態の概要を以下に記載する。
(1)上記したように、本願発明に係るコヒーレント光源は、活性領域および分布ブラッグ反射領域を備えた半導体レーザと、非線形光学結晶からなり、当該半導体レーザから出射されたレーザ光の波長を変換する光波長変換素子と、前記光波長変換素子からの高調波出力を測定する光検出器と、前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域に個別に電流を加える電流注入手段と、前記光検出器で測定される高調波出力に基づいて前記電流注入手段を制御し、前記半導体レーザの発振波長を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定する電流制御手段と、少なくとも前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域へパルス電流を加えるパルス電流注入手段と、前記光検出器で測定される高調波出力に基づいて前記パルス電流注入手段を制御し、前記半導体レーザの発振波長を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部で所望の値に変化させるパルス電流制御手段と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、半導体レーザから出射され、光波長変換素子により波長が変換されたレーザ光の高調波出力は、光検出器により測定されている。この状態で、まず、電流制御手段は電流注入手段を制御し、活性領域および分布ブラッグ反射領域に加える電流を調整し、半導体レーザの発振波長を位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定する。続いて、パルス電流注入手段は、少なくとも活性領域および分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域にパルス電流を加える。これにより、当該パルス電流が加えられた領域の屈折率が瞬間的に低下し高調波の波長が低波長側にシフトするので、高調波出力は減少する。このとき、どの程度高調波出力を減少させるかはパルス電流制御手段により制御されているので、高調波出力を所望の値に高速にかつ連続的に変化させることができる。
(2)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)であって、前記電流制御手段は高調波出力を停止する際、前記電流注入手段を制御して、前記活性領域へ電流を加えることを停止することを特徴とする。
活性領域へ加える電流を停止する(ゼロにする)と、半導体レーザから出射される基本波の出力がなくなり、ゼロとなる。それに伴って、高調波出力もゼロとなる。したがって、活性領域へ加える電流を停止することで、高調波出力を確実に停止することができる。
(3)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)であって、前記パルス電流制御手段は高調波出力を停止する際、前記パルス電流注入手段を制御して、前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域へパルス電流を加えることを特徴とする。
活性領域および分布ブラッグ反射領域へパルス電流が加えられると、当該領域の屈折率が瞬間的に低下し、高調波の波長が低波長側にシフトする。これにより、高調波の波長を位相整合波長スペクトル外へ瞬間的に変動させ、高調波出力を停止させることができる。
(4)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(3)であって、前記パルス電流注入手段により加えられるパルス電流は、当該パルス電流により高調波の波長が前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル外へ変動するパルス高さを有することを特徴とする。
この構成によれば、パルス電流の高さが十分に大きいので、1度のパルスで高調波の波長を位相整合波長スペクトル外へ瞬間的に変動させ、高調波出力を停止させることができる。
(5)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)または(2)であって、高調波出力が停止させられた際、前記分布ブラッグ反射領域へ加える電流の調整を行うことを特徴とする。
この構成によれば、例えば、活性領域へ電流を加えることを停止して、高調波出力を停止したような場合に、分布ブラッグ反射領域へ加える電流の確認や再調整を行うことで、高調波出力の停止が解除されたときに安定した高周波出力を行うことができる。
(6)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)乃至(5)のいずれかであって、高調波の高出力状態が連続する場合、前記電流制御手段は前記電流注入手段を制御し、少なくとも前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域へ加える電流を調整し、高調波の波長を一定に保つことを特徴とする。
高調波の高出力状態が連続する場合には、半導体レーザの温度が上昇することが想定される。この場合、半導体レーザから出射されるレーザ光の波長が変動するので、その変動分を打ち消すように活性領域および前記分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域へ加える電流を調整する。これにより、高調波の高出力状態が連続する場合であっても、安定した高周波出力を得ることができる。
(7)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)であって、前記半導体レーザはさらに位相領域を備えて構成されており、前記電流注入手段は当該位相領域にも電流を加えるものであり、前記電流制御手段は、前記光検出器で測定される高調波出力に基づいて前記電流注入手段を制御し、前記分布ブラッグ反射領域および前記位相領域へ加える電流を一定比で変化させて、前記半導体レーザの発振波長を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定するものであり、前記パルス電流注入手段は、少なくとも前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域および前記位相領域のいずれか1つの領域へパルス電流を加えることを特徴とする。
この構成によれば、半導体レーザから出射され、光波長変換素子により波長が変換されたレーザ光の高調波出力は、光検出器により測定されている。この状態で、まず、電流制御手段は電流注入手段を制御し、活性領域、分布ブラッグ反射領域および位相領域に加える電流を調整し、半導体レーザの発振波長を位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定する。このとき、分布ブラッグ反射領域および前記位相領域へ加える電流を一定比で変化させることで、半導体レーザの発振波長を連続的に変えることができる。続いて、パルス電流注入手段は、少なくとも活性領域および分布ブラッグ反射領域および位相領域のいずれか1つの領域にパルス電流を加える。これにより、当該パルス電流が加えられた領域の屈折率が瞬間的に低下し高調波の波長が低波長側にシフトするので、高調波出力は減少する。このとき、どの程度高調波出力を減少させるかはパルス電流制御手段により制御されているので、高調波出力を所望の値に高速にかつ連続的に変化させることができる。
(8)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(7)であって、前記電流制御手段は高調波出力を停止する際、前記電流注入手段を制御して、前記活性領域へ電流を加えることを停止することを特徴とする。
活性領域へ加える電流を停止する(ゼロにする)と、半導体レーザから出射される基本波の出力がなくなり、ゼロとなる。それに伴って、高調波出力もゼロとなる。したがって、活性領域へ加える電流を停止することで、高調波出力を確実に停止することができる。
(9)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(7)であって、前記パルス電流制御手段は高調波出力を停止する際、前記パルス電流注入手段を制御して、前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域および前記位相領域のうち、複数の領域へパルス電流を加えることを特徴とする。
活性領域、分布ブラッグ反射領域および位相領域へパルス電流が加えられると、当該領域の屈折率が瞬間的に低下し、高調波の波長が低波長側にシフトする。これにより、高調波の波長を位相整合波長スペクトル外へ瞬間的に変動させ、高調波出力を停止させることができる。
(10)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(9)であって、前記パルス電流注入手段により加えられるパルス電流は、当該パルス電流により高調波の波長が前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル外へ変動するパルス高さを有することを特徴とする。
この構成によれば、パルス電流の高さが十分に大きいので、1度のパルスで高調波の波長を位相整合波長スペクトル外へ瞬間的に変動させ、高調波出力を停止させることができる。
(11)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(7)または(8)であって、高調波出力が停止させられた際、前記分布ブラッグ反射領域または前記位相領域へ加える電流の調整を行うことを特徴とする。
この構成によれば、例えば、活性領域へ電流を加えることを停止して、高調波出力を停止したような場合に、分布ブラッグ反射領域および位相領域へ加える電流の確認や再調整を行うことで、高調波出力の停止が解除されたときに安定した高周波出力を行うことができる。
(12)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(7)乃至(11)のいずれかであって、高調波の高出力状態が連続する場合、前記電流制御手段は前記電流注入手段を制御し、少なくとも前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域および前記位相領域のいずれか1つの領域へ加える電流を調整し、高調波の波長を一定に保つことを特徴とする。
高調波の高出力状態が連続する場合には、半導体レーザの温度が上昇することが想定される。この場合、半導体レーザから出射されるレーザ光の波長が変動するので、その変動分を打ち消すように活性領域および前記分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域へ加える電流を調整する。これにより、高調波の高出力状態が連続する場合であっても、安定した高周波出力を得ることができる。
(13)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)乃至(12)のいずれかであって、前記位相整合波長スペクトル内の傾斜部は、前記位相整合波長スペクトルにおいて、高調波出力がピーク出力の5%以上かつ95%以下となる部分であることを特徴とする。
位相整合波長スペクトルにおいては、高調波出力がピーク出力の5%以上かつ95%以下となる部分は、ほぼ直線的に変化している。したがって、半導体レーザの発振波長をこの傾斜部に固定することで、階調変化を連続的にかつ容易に行うことができる。
(14)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(13)であって、前記位相整合波長スペクトル内の傾斜部は、前記位相整合波長スペクトルにおいて、ピーク波長より低波長側の部分であることを特徴とする。
ピーク波長より低波長側の部分に波長を固定すると、高波長側の部分に波長を固定する場合に比べて、分布ブラッグ反射領域に加える電流を小さくできるため、消費電力を低く抑えることができる。
(15)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)乃至(14)のいずれかであって、前記電流制御手段は電流注入手段を制御し、前記分布ブラッグ反射領域へ加える電流を、前記半導体レーザの発振波長がモードホップした直後のところで固定することを特徴とする。
分布ブラッグ反射領域へ加える電流を、半導体レーザの発振波長がモードホップする近傍に固定すると、温度変化等によってもモードホップが生じやすく、発振波長が不安定となる。したがって、モードホップした直後のところに固定することで、発振波長を安定化することができる。
(16)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)乃至(15)のいずれかであって、前記パルス電流注入手段により加えられるパルス電流は矩形パルスであることを特徴とする。
矩形パルスでは、パルスの立ち上がり部の傾きが急峻であるために、当該矩形パルスが加えられた半導体中のキャリア密度を上昇させ、高調波出力を減少させることを、瞬間的に行うことができる。
(17)上記したように、本願発明に係るディスプレイ装置は、入力映像信号に応じて強度変調されたレーザ光を投影するディスプレイ装置であって、赤色のレーザ光を出射するレーザ光源と、青色のレーザ光を出射する(1)乃至(16)のいずれかに記載のコヒーレント光源と、緑色のレーザ光を出射する(1)乃至(16)のいずれかに記載のコヒーレント光源と、前記赤色、青色および緑色のレーザ光を1本のレーザ光に合波する合波手段と、前記合波手段により合波された1本のレーザ光を、所定の第1の方向に走査させる第1の走査手段と、前記第1の方向に走査されたレーザ光を、前記第1の方向に垂直な第2の方向に走査させる第2の走査手段と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、青色および緑色のレーザ光の光源として、パルス電流を加えることで半導体レーザの発振波長を瞬間的に変化させるコヒーレント光源を用いているために、出力変調を高速に行うことが可能で、かつ連続的な階調が得られるディスプレイ装置を実現することができる。
(18)ディスプレイ装置は、ディスプレイ装置(17)であって、前記第1の走査手段および前記第2の走査手段は、回転多面鏡からなるポリゴンミラーおよびガルバノミラーから選択された組み合わせであることを特徴とする。
この構成によれば、第1の走査手段としてポリゴンミラーが選択された場合およびガルバノミラーが選択された場合の2通りがあり、第2の走査手段としても、同様に、ポリゴンミラーが選択された場合およびガルバノミラーが選択された場合の2通りがある。したがって、目的とする機能に応じて、相応しい組み合わせを選択することができる。
(19)上記したように、本願発明に係るレーザディスプレイは、(17)または(18)に記載のディスプレイ装置と、前記ディスプレイ装置からのレーザ光を投影するスクリーンと、を備えたレーザディスプレイであって、前記スクリーンの端部において、前記入力映像信号がなく、前記電流制御手段が前記電流注入手段を制御して前記活性領域へ電流を加えることを停止し、前記半導体レーザからの出力が停止させられた際、前記電流制御手段は前記分布ブラッグ反射領域へ加える電流の調整を行うことを特徴とする。
通常、スクリーンの端部には入力映像信号がなく、映像出力がない領域が存在する。そこで、この領域を利用し、電流制御手段により半導体レーザからの出力が停止させられたときに、引き続き電流制御手段は分布ブラッグ反射領域へ加える電流の調整を行う。これは例えば、分布ブラッグ反射領域へ加える電流の確認や再調整などである。これにより、半導体レーザからの出力停止が解除されたときに、レーザ光を安定して出力することができる。
(20)上記したように、本願発明に係るコヒーレント光源の制御方法は、非線形光学結晶からなり、半導体レーザから出射されたレーザ光の波長を変換する光波長変換素子からの高調波出力を光検出器で検出し、当該光検出器の出力に基づいて、前記半導体レーザに備えられた活性領域および分布ブラッグ反射領域へ加える電流を制御して、前記光検出器で検出される高調波出力を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定した後、前記活性領域または前記分布ブラッグ反射領域へパルス電流を加え、前記光検出器で検出される高調波出力を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部で所望の値に変化させることを特徴とする。
この制御方法を用いたコヒーレント光源によれば、高調波出力を所望の値に高速にかつ連続的に変化させることが可能となる。
以上説明したコヒーレント光源の主な用途としては、前述したディスプレイ装置意外にも、描画装置、計測装置、光ディスク装置などが挙げられる。
本発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において、例示であって、本発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
本発明にかかる波長変換素子を用いたコヒーレント光源は、高速でSHG光源の変調が可能となり、例えばディスプレイ用の光源として有用である。
本発明は、波長変換素子を用いたコヒーレント光源およびその制御方法、並びにそれらを用いたディスプレイ装置およびレーザディスプレイに関するものである。
図11に従来のこの種のディスプレイ装置の一例として、レーザディスプレイ100の概略構成を示す。図において、RGB3色のレーザ光源101aないし101cからのコヒーレント光は光変調器106aないし106cにより入力映像信号に応じて強度変調され、ダイクロイックミラー102a、102bにて合波される。さらにポリゴンスキャナ(ポリゴンミラー)104にて水平方向に、ガルバノミラー105によって垂直方向に、それぞれ走査され、スクリーン108上に2次元の画像が表示される。
この構成のディスプレイでは、RGBそれぞれの光源の光が単色光であるため、適当な波長のレーザ光源を用いることで、NTSC信号よりも表示可能な色範囲が広がり、色純度が高く、鮮やかな画像の表示が可能となる。
図12はこの従来のレーザディスプレイに接続可能な機器を示すものである。この従来例のレーザディスプレイはRGB端子により映像信号を入力するものとしており、ノートPC等のパーソナルコンピュータ201、ビデオゲーム機202、各種DVD等の光ディスクプレーヤ203、VTRとの一体型を含む光ディスクレコーダ204、カメラ一体型VTR205、据え置き型VTR206、BS/CSチューナ207、TV208、各種光ディスクドライブとの一体型を含むハードディスクレコーダ209、インターネット放送用STB(Set Top Box)210、CATV用STB211、地上波デジタル放送用STB212、BS HDTV放送用STB213等、RGB信号の出力端子を有するものであれば、接続が可能である。
この他、レーザディスプレイと接続する機器が出力する信号のフォーマットに合わせて、D4入力端子、DVI−D入力端子、IEEE1394端子、コンポーネント端子、S端子、ビデオ端子等を設けてもよい。
この種のディスプレイ装置の小型化・省電力化を図り、持ち運びを容易にするためには、レーザ光源101aないし101cを直接変調し、光変調器106aないし106cを取り除く必要がある。前記従来の構成において、RGB光源の内、赤色(R)光源は半導体レーザを、緑色(G)および青色(B)光源はSHG光源を用いる必要がある。NTSC信号よりも表示可能な色範囲が広く、色純度が高く、鮮やかな画像の表示を可能とするには波長530nm近傍の緑色光および波長450nm近傍の青色光が必要であるが、高出力化が可能で信頼性の確保が可能な緑色用および青色用の半導体レーザが現時点で存在しないためSHG光源の利用が必要となる。ディスプレイ用の光源への利用を考えると、SHG光源の出力を高速で変調させるとともに出力の階調を行う必要がある。なお、赤色については半導体レーザを高速変調し階調を実現することが可能である。
例として800本(水平方向)×600本(垂直方向)の2次元走査を毎秒30フレーム行う場合、14.4MHzの周波数で出力変調させるとともに少なくとも256段階程度の出力階調を行う必要がある。SHG光源の出力を変化させるには(特許03329446に示されるように)分布ブラッグ反射領域や位相領域を備えた半導体レーザを用い、直流電源を用いて分布ブラッグ反射領域や位相領域へ加える電流を変化させ、各部の熱上昇により発生する屈折率変化により半導体レーザの発振波長をSHG素子の位相整合波長スペクトル内で変化させる方法がある。
特開2003−98476号公報(第4頁 図1)
しかしながら、このような方法では屈折率変化が熱的に発生するため、変化に要する時間がmsecオーダーと長く、MHzオーダーの変調は困難である。
この発明は、上記のようなSHG光源の光出力の変調に関する問題点を解決するためになされたもので、SHG光源の出力変調の高速化を図りながら階調を実現することを目的としている。
この目的のために本発明の一態様に係るコヒーレント光源は、活性領域および分布ブラッグ反射領域を備えた半導体レーザと、非線形光学結晶からなり、当該半導体レーザから出射されたレーザ光の波長を変換する光波長変換素子と、前記光波長変換素子からの高調波出力を測定する光検出器と、前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域に個別に電流を加える電流注入手段と、前記光検出器で測定される高調波出力に基づいて前記電流注入手段を制御し、前記半導体レーザの発振波長を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定する電流制御手段と、少なくとも前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域へパルス電流を加えるパルス電流注入手段と、前記光検出器で測定される高調波出力に基づいて前記パルス電流注入手段を制御し、前記半導体レーザの発振波長を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部で所望の値に変化させるパルス電流制御手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係るコヒーレント光源の制御方法は、非線形光学結晶からなり、半導体レーザから出射されたレーザ光の波長を変換する光波長変換素子からの高調波出力を光検出器で検出し、当該光検出器の出力に基づいて、前記半導体レーザに備えられた活性領域および分布ブラッグ反射領域へ加える電流を制御して、前記光検出器で検出される高調波出力を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定した後、前記活性領域または前記分布ブラッグ反射領域へパルス電流を加え、前記光検出器で検出される高調波出力を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部で所望の値に変化させることを特徴とする。
上記の態様によれば、半導体レーザから出射され、光波長変換素子により波長が変換されたレーザ光の高調波出力は、光検出器により測定されている。この状態で、まず、電流制御手段は電流注入手段を制御し、活性領域および分布ブラッグ反射領域に加える電流を調整し、半導体レーザの発振波長を位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定する。続いて、パルス電流注入手段は、少なくとも活性領域および分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域にパルス電流を加える。これにより、当該パルス電流が加えられた領域の屈折率が瞬間的に低下し高調波の波長が低波長側にシフトするので、高調波出力は減少する。このとき、どの程度高調波出力を減少させるかはパルス電流制御手段により制御されているので、高調波出力を所望の値に高速にかつ連続的に変化させることができる。
上記の態様に係る制御方法を用いたコヒーレント光源によれば、高調波出力を所望の値に高速にかつ連続的に変化させることが可能となる。
(実施の形態1)
図1に、レーザディスプレイの概略構成を示す。図において、RGB3色のレーザ光源1aないし1cからのコヒーレント光は入力映像信号に応じて強度変調され、ダイクロイックミラー(合波手段)2a、2bにて合波される。さらに回転多面鏡からなるポリゴンスキャナ(ポリゴンミラー、第1の走査手段)4にて水平方向に、ガルバノミラー(第2の走査手段)5によって垂直方向に、それぞれ走査され、スクリーン8上に2次元の画像が表示される。この水平方向の走査手段と垂直方向の走査手段としては、上記に限られず、ポリゴンスキャナ4とガルバノミラー5との任意の組み合わせが可能である。また、Green用の光源1bおよびBlue用の光源1cにはSHG光源を使用した。Red用の光源1aには半導体レーザを用いており、出力の変調を高速かつ直接行うことが可能である。また、本明細書においては、レーザディスプレイからスクリーンを除いた構成を持つ装置をディスプレイ装置という。
本実施の形態1におけるSHG光源は、利得を与えるための活性領域および発振波長を制御するための分布ブラッグ反射領域(DBR領域)を備えた半導体レーザ(DBR−LD)と、非線形光学結晶からなる光波長変換素子とを具備している。ここではSHG光源の出力変調制御方法について説明する。なお、DBR−LDはDBR領域へ電流を加え、DBR領域の温度を上昇させ、DBR領域の屈折率を変化させることによって半導体レーザの発振波長を変えることが可能である。
図2は、実施の形態1におけるSHG光源および当該SHG光源の出力調整装置の概略構成を示す図である。本明細書においては、SHG光源単独、並びにSHG光源および当該SHG光源の出力調整装置を合わせた全体をコヒーレント光源という。この出力調整装置は、活性領域52およびDBR領域53を有する半導体レーザ(DBR−LD)51と、光波長変換素子56と、光波長変換素子56から出射された高調波を平行光にするためのコリメートレンズ57および基本波をカットするための波長選択フィルター58と、平行光の一部を分岐するビームスプリッター54と、高調波出力をモニターするためのフォトディテクター(光検出器)59と、各部を制御する制御回路60とから構成される。この図2において、活性領域52とDBR領域53は説明のために分割して示しているが、実際には一体となっている。また、DBR−LD51と光波長変換素子56とは一体化されておりSHG光源55となっている。
上記制御回路60には、制御を行うためのマイクロコンピュータ(電流制御手段およびパルス電流制御手段)61と、半導体レーザの活性領域52へ加える電流(以下、Iopと記する)を制御するためのレーザ駆動回路(電流注入手段)63と、DBR領域53へ加える電流(以下、Idbrと記する)を制御するためのDBR駆動回路(電流注入手段)64とが組み込まれている。さらに活性領域52へパルス電流を加える活性領域用パルス回路(パルス電流注入手段)65とDBR領域へパルス電流を加えるDBR領域用パルス回路(パルス電流注入手段)66が付加されている。
本実施の形態1において、DBR−LD51は、例えばAlGaAs系半導体レーザであり、出力は定格100mW、しきい値は30mA、100mW出力時の動作電流は150mAであった。また、光波長変換素子56としては素子長10mmの分極反転型光導波路デバイスを用い、マグネシウムをドーピングしたニオブ酸リチウム基板上に、光導波路と周期的な分極反転領域を設けたものを用いた。
この光波長変換素子56から青色光を出射させる場合には、例えば、850nm帯のレーザ光を出射するDBR−LD51を用い、分極反転周期を3.2μmとすればよい。これにより、波長425nm程度の青色光を得ることができる。また、波長変換素子56から緑色光を出射させる場合には、例えば、1064nm帯のレーザ光を出射するDBR−LD51を用い、分極反転周期を6.7μmとすればよい。これにより、波長532nm程度の緑色光を得ることができる。
以下に、本実施の形態1のSHG光源において所望の出力を得ると共に、その出力を高速に変調し、出力階調を実現する制御方法について説明する。
図3に、Iopの変化に対するDBR−LDの発振波長の変化を示す。ここではIdbr=0mAとしている。図3の実線はIopを増加させた場合の波長変化を示している。図3中の点線はIopを低下させた場合の波長変化を示している。図3から、Iopの増加と共にDBR−LDの発振波長がモードホップを繰り返しながら変化するのがわかる。このようにモードホップが生じるのは、DBR領域の影響を受けているためである。
また、図3に示すように、Iopの変化に対するDBR−LDの発振波長は、ヒステリシス特性を有している。本実施の形態1のDBR−LDでは、モードホップした直後の点(E点)から±30mAの間モードホップしないことを確認できた。このことは、モードホップした点が最も安定な点であることを示している。DBR−LDの発振波長を制御する際にはモードホップ点付近で波長変化させるのが安定である。このときの波長変化は、0.004nm/mAであった。このことは、DBR−LDの発振波長を、モードホップ無しで連続的に±0.12nmだけ変化させることができることを意味している。
図4にはIop=100mAと一定にし、Idbrを変化させたときの特性を示す。図4より、Idbrを増加させると、DBR−LD51の発振波長がステップ状に増加することがわかる。本実施の形態においては、このステップの幅(横軸方向)はおよそ10mAであり、ステップの高さ(縦軸方向)はおよそ0.1nmである。また、Idbrを増加させるときと減少させるときとで発振波長が異なり、図のようにヒステリシス特性を有している。このため、Idbrをモードホップする電流値の近傍(図のB点及びC点)に固定すると、環境温度変化等によるモードホップを起こしやすく、発振波長が不安定になる。したがって、発振波長を安定化させるためには、Idbrを半導体レーザの発振波長がモードホップした直後の電流値のところ(図のA点)に固定することが好ましい。図3、4より、IopとIdbrを変化させることで限られた範囲内でDBR−LDの発振波長を連続的に変化させられることがわかる。
図5に、光波長変換素子56の位相整合波長スペクトルを示す。この図においては、ピーク出力を「1」として高調波出力を規格化してある。図5に示すように、光波長変換素子は基本波である半導体レーザの発振波長に対して、基本波から高調波への変換効率が異なる。例えば、光波長変換素子長が10mmの場合、高調波出力がピーク出力の半値となる位相整合波長許容幅(半値半幅)は0.08nmと非常に狭い。この図5からわかるように、高調波を出力させるためには半導体レーザの発振波長を光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内に合わせる必要がある。ここで、位相整合波長スペクトル内とは、ピーク波長を含み、当該ピーク波長の低波長側及び高波長側において高調波出力が極小になる波長の範囲のことである。つまり、図5のサイドローブ部は、位相整合波長スペクトル外ということになる。尚、ピーク波長とは、高調波出力が最大(ピーク出力)となる波長のことをいう。
そして、DBR−LDを用いて半導体レーザの発振波長を光波長変換素子56の位相整合波長スペクトル内に固定し、高調波出力を得る。位相整合波長スペクトル内で図3、4に示すようにIopやIdbrを変化させてDBR−LDの発振波長を変化させれば高調波の出力を変化させることができ、出力の階調が可能となる。ただし、図3に示したように、Idbrを固定してIopを変化させる場合には、限られた範囲内(本実施の形態においては、±0.12nm)でしかDBR−LDの発振波長を連続的に変化させられない。したがって、広い範囲で階調を行うためには、この変化させられる波長の値が、おおよそ位相整合波長スペクトルの半値半幅(本実施の形態においては、0.08nm)よりも大きいことが必要である。
図5に示す位相整合波長スペクトルのうち、高調波出力がピーク出力の5%以上、かつ、95%以下となる部分を傾斜部とする(スペクトルの太線部)。この傾斜部は、波長に対する出力がほぼリニアに変化するため階調しやすいという特性がある。そのため、SHG光源の出力を設定するには傾斜部を用いるのがよい。
また、この傾斜部は、ピーク波長より低波長側と高波長側とにそれぞれ1つずつある。これらのうち、SHG光源の出力を設定するにはピーク波長より低波長側の部分を用いることが好ましい。これは、図4からわかるように、ピーク波長より低波長側の部分に波長を固定する方が、高波長側の部分に波長を固定する場合に比べてIdbrを小さくできる、つまり消費電力を低く抑えることができるからである。
また、制御回路の誤差精度が±5%程度あるために、傾斜部以外の部分を使用する場合、たとえば高調波出力をピーク出力の95%を超える点に固定した場合においては、IopやIdbrを変化させても所望の値を得られない危険性があるからである。
これまで説明したIopやIdbrによるDBR−LDの発振波長の変化は熱的に発生する現象である。IopやIdbrの変化により活性領域やDBR領域の熱が変化し、それに伴い活性領域やDBR領域の屈折率が変動するために発生する現象である。よって発振波長の変化はmsecのオーダーで生じる現象であり、動画を映像として出力させるためのスピードとしては不十分である。動画を出力するには最低でもMHzオーダー、つまりnsecから数μsecオーダーの波長変化スピードが要求される。
そこで、DBR領域へパルス電流を加えるDBR領域用パルス回路66を用いてパルス電流を加えた。活性領域やDBR領域へパルス電流を加えると、例えば、半導体内部でのキャリア密度が上昇し、プラズマ効果という現象が発生し、DBR部の屈折率が瞬間的に低下する。このとき、DBR−LDの発振波長は瞬時に低波長側へシフトするため、高調波の出力が減少する。また、パルス電流であるため熱的な変化はほとんど発生しない。このようなプラズマ効果を用いた波長制御により、DBR−LDの発振波長を高速に制御することで、高調波出力をnsecオーダーで変調するとともに階調することが可能となる。
具体的に説明すると、まずDBR−LDの発振波長を制御し図5の位相整合波長スペクトル内のA点に固定した。次にDBR領域へ図6のようなパルス電流を加えプラズマ効果を発生させた。ここで、パルス電流の一例として矩形パルスをDBR領域へ加えたが、プラズマ効果に影響を与える大きな要因の一つはパルスの立ち上がり部の形状である。この立ち上がり部の傾きが急峻であるほど瞬間的にキャリア密度が上昇するので、プラズマ効果を有効に発生させることができる。したがって、例えば、三角形パルスや立ち上がり部が鈍った形状のパルス等に比較して、矩形パルスを用いることが好ましい。また、プラズマ効果にほとんど影響を与えないためパルス幅は任意で構わないが、パルス幅が広いとその分DBR領域において熱が発生する。そのため、パルス幅は、できるだけ狭い方が好ましい。
図7はA点に固定後、図6と同様のパルス電流(図の実線)を加えた際の高調波出力(図の一点鎖線)の変化を示す図である。この例では、時刻t7において目標出力値A7になるように、そこまでの任意の時刻において高調波出力が直線的に減少していくように制御するものとする。つまり、高調波の出力値A1〜A7は、それぞれ時刻t1〜t7における目標出力値であるとする。また、図8はDBR領域にパルス電流を加え、高調波出力を制御する際の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、マイクロコンピュータ61は、時刻t7において目標出力値A7になるように、時刻t1における目標出力値A1を算出する(ステップS101)。続いて、マイクロコンピュータ61は、その目標出力値A1を達成するパルス電流の高さを算出し(ステップS102)、DBR領域用パルス回路66を制御することで、算出された高さを有するパルス電流をDBR部に加える(ステップS103)。これにより、DBR−LDの発振波長が低波長側にシフトする(ステップS104)。高調波出力を変化させる要因がなければ、理想的には、パルス電流の高さは図8に点線で示したように直線的な値を取るはずである。しかしながら、実際は、DBR領域の温度変化等があるため、求められた高さのパルス電流を加えても高調波出力は目標出力値に達しないことが多い。
そこで、光波長変換素子56から出射された高調波出力をフォトディテクター59で測定する(ステップS105)。まだ、時刻t7に至っていないので、制御は終了しておらず(ステップS106でNo)、ステップS101に戻り、フォトディテクター59で測定された値をもとにフィードバック制御を行う。例えば、時刻t1でパルス電流を加えた結果、目標出力値A1よりも高調波出力が大きかったとすると、ステップS102で算出される時刻t2におけるパルス電流の高さは、点線で示した理想的な値よりも大きくする必要がある。
以下、上記の処理を順次行っていき、前の時刻で測定された高調波出力が目標出力値よりも大きければ、より出力値を下げる必要があるのでパルス電流の高さを理想的な値よりも大きく算出し、逆に前の時刻で測定された高調波出力が目標出力値よりも小さければ、より出力値を上げる必要があるのでパルス電流の高さを小さく算出すればよい。このとき、パルス電流の高さを理想的な値に対して、大きくあるいは小さくする際には、例えば、目標出力値とフォトディテクター59により測定された値との差に応じて、所定の係数を掛けるような構成であってもよい。
以上図7を用いて説明したように、高調波出力がパルス電流の振幅(パルス高さ)に応じて出力が変化(今回の場合出力が減少)するとともに瞬時に変化する。また、位相整合波長スペクトルの傾斜部を用いることで連続的な階調が可能となる。
以上のように、本実施の形態1においては、DBR−LDを用いて光波長変換素子で波長変換された高調波の出力を所望の値に高速で設定することが可能となった。これにより、レーザ光源の高速変調と階調が可能となり、ディスプレイ装置などの高速応答および出力制御が必要な装置への利用が可能となる。
次に、ディスプレイ用の光源として利用する場合には映像信号の無い場合(黒を出力する場合)への対応が必要となる。この場合、活性領域へ加える電流であるIopをゼロにするのが最も効果的である。Iop=0では半導体レーザからの基本波の出力がなくなるため高調波出力も必然的にゼロとなる。他の手段として、活性領域およびDBR領域へパルス電流を加え、DBR−LDの発振波長を大きく変動させ位相整合波長スペクトル内からスペクトル外へ波長を変動させれば高調波出力がゼロとなる。
また、レーザ光をスキャンして映像を出力させる際、画面の端は常に映像出力が無い状態であるので、この領域を利用し、光源出力の安定化を図ることが可能である。マイクロコンピュータ61は、スキャンが画面の端に差し掛かったところで活性領域へのIopの供給をストップし、その間にDBR電流の確認や再調整を行い、高調波出力の安定出力に備えるのである。
さらに、ディスプレイ用の光源として利用する場合、高出力の信号が連続して出力される場合がある。このとき、DBR−LDの温度が徐々に上昇する場合がある。パルス電流を加え、プラズマ効果による制御だけでは熱の変化を抑えきれない場合が発生するのである。この場合、マイクロコンピュータ61が、あらかじめIopやIdbrを少しずつ変化させて熱の上昇により発生する波長変化をキャンセルするように構成することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態2においては、利得を与えるための活性領域、発振波長を制御するための分布ブラッグ反射領域(DBR領域)および波長を連続的に変化させるための位相領域を備えた半導体レーザ(3電極LD)と、非線形光学結晶からなる光波長変換素子とを具備したSHG光源の制御方法について説明する。なお、3電極LDは、位相領域に電流を加え、位相領域の屈折率を変化させることにより、半導体レーザの実質的な共振器長を変えることでモードホップすることなく半導体レーザの発振波長を連続的に変化させることが可能である。
図9は、実施の形態2におけるSHG光源の出力調整装置の概略構成を示す図である。この出力調整装置は、活性領域75、DBR領域77および位相領域76を有する半導体レーザ(3電極LD)74と、光波長変換素子80と、光波長変換素子80から出射された高調波を平行光にするためのコリメートレンズ81および基本波をカットするための波長選択フィルター82と、高調波の一部を分岐するビームスプリッター79と、高調波出力をモニターするためのフォトディテクター(光検出器)83と各部を制御する制御回路84とから構成される。この図9において、活性領域75、DBR領域77および位相領域76は説明のために分割して示しているが、実際には一体となっている。また、3電極LD74と光波長変換素子80とは一体化されSHG光源78となっている。
上記制御回路84には、制御を行うためのマイクロコンピュータ(電流制御手段およびパルス電流制御手段)85と、半導体レーザの活性領域75へ加える電流(Iop)を制御するためのレーザ駆動回路88と、DBR領域77へ加える電流(Idbr)を制御するためのDBR駆動回路86と、位相領域76へ加える電流(以下、Iphaseと記する)を制御するための位相部駆動回路87とが組み込まれている。このレーザ駆動回路88、DBR駆動回路86および位相部駆動回路87は、本実施の形態における電流注入手段としての機能を有する。
さらに活性領域75へパルス電流を加える活性領域用パルス回路95とDBR領域77へパルス電流を加えるDBR領域用パルス回路97と位相領域76へパルス電流を加える位相領域用パルス回路96とが付加されている。この活性領域用パルス回路95、DBR領域用パルス回路97および位相領域用パルス回路96は、本実施の形態におけるパルス電流注入手段としての機能を有する。
本実施の形態2において、3電極LD74は図10に示すように連続波長可変特性を有している。ここで、IdbrとIphaseとは、ある一定の比率で変化させなければ連続的にチューニングできないため、本実施の形態2においてはIdbrとIphaseの比率をIphase/Idbr=1.6で変化させた。なお、この比率は1.6に限られず任意でよい。また、光波長変換素子80としては、実施の形態1と同様のものを用いた。
本実施の形態2のように3電極LDを用いた場合には、半導体レーザの発振波長を連続的に可変できるため、光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内に発振波長を固定することが非常に容易となる。また、実施の形態1と同様に光波長変換素子の位相整合波長スペクトルの傾斜部を用いることによって、高調波出力を容易に変化させ、所望の高調波出力を得ることが可能である。
ここで言う傾斜部は、実施の形態1と同様に図5に示す位相整合波長スペクトルにおいて、高調波出力がピーク出力の5%以上、かつ、95%以下となる部分であるのが好ましい。SHG光源の出力を設定するには傾斜部を用いるのがよい。高調波出力がピーク出力の5%以上かつ95%以下の傾斜部は波長に対する出力がほぼリニアに変化するため階調しやすいという特性がある。また、制御回路の誤差精度が±5%程度あるために、傾斜部以外の部分を使用する場合、たとえば高調波出力をピーク出力の95%を超える点に固定した場合においては、3電極LDの発振波長を変化させても所望の値を得られない危険性があるからである。
これまで説明したIopやIdbr、Iphaseによる3電極LDの発振波長の変化は熱的に発生する現象である。IopやIdbr、Iphaseの変化により活性領域やDBR領域や位相領域の熱が変化し、それに伴い活性領域やDBR領域や位相領域の屈折率が変動するために発生する現象である。よって発振波長の変化はmsecのオーダーで生じる現象であり、動画を映像として出力させるためのスピードとしては不十分である。動画を出力するには最低でもMHzオーダー、つまりnsecから数μsecオーダーの波長変化スピードが要求される。
そこで、活性領域へパルス電流を加える活性領域用パルス回路95と、DBR領域へパルス電流を加えるDBR領域用パルス回路97と、位相領域へパルス電流を加える位相領域用パルス回路96とを用いてパルス電流を加えた。活性領域やDBR領域、位相領域へパルス電流を加えると、例えば、半導体内部でのキャリア密度が上昇し、プラズマ効果という現象が発生し、各部の屈折率が瞬間的に低下する。このとき、3電極LDの発振波長は瞬時に低波長側へシフトする。また、パルス電流であるため熱的な変化はほとんど発生しない。このようなプラズマ効果を用いた波長制御により、3電極LDの発振波長を高速に制御することで、高調波出力をnsecオーダーで変調することが可能となる。
具体的には3電極LDの発振波長を制御し、実施の形態1と同様に図5中のA点に固定した。次に位相領域とDBR領域へパルス電流を加えプラズマ効果を発生させた。このプラズマ効果により位相部とDBR部の屈折率が瞬間的に低下し、3電極LDの発振波長が短くなったため高調波の出力が瞬時に低下した。3電極LDを用いる場合はDBR領域だけへのパルス電流印加、または位相領域のみへのパルス電流印加でも波長変化は実現される。この結果、3電極LDを用いた場合においても図7のような特性が得られ、連続的な階調が可能となった。
以上のように、本実施の形態2においては、3電極LDを用いて光波長変換素子で波長変換された高調波の出力を所望の値に高速で設定することが可能となった。これにより、レーザ光源の高速変調と階調が可能となり、ディスプレイ装置などの高速応答が必要な装置への利用が可能となる。
次に、ディスプレイ用の光源として利用する場合には映像信号の無い場合(黒を出力する場合)への対応が必要となる。この場合、活性領域へ加える電流であるIopをゼロにするのが最も効果的である。Iop=0では半導体レーザからの基本波の出力がなくなるため高調波出力も必然的にゼロとなる。他の手段として、活性領域およびDBR領域、位相領域へパルス電流を加え、3電極LDの発振波長を大きく変動させ位相整合波長スペクトル内からスペクトル外へ波長を変動させれば高調波出力がゼロとなる。
また、レーザ光をスキャンして映像を出力させる際、画面の端は常に映像出力が無い状態であるので、この領域を利用し、光源出力の安定化を図ることが可能である。マイクロコンピュータ85は、スキャンが画面の端に差し掛かったところで活性領域へのIopの供給をストップし、その間にIdbrおよびIphaseの確認や再調整を行い、高調波出力の安定出力に備えるのである。
さらに、ディスプレイ用の光源として利用する場合、高出力の信号が連続して出力される場合がある。このとき、3電極LDの温度が徐々に上昇する場合がある。パルス電流を加え、プラズマ効果による制御だけでは熱の変化を抑えきれない場合が発生するのである。この場合、マイクロコンピュータ85が、あらかじめIphaseやIdbrを少しずつ変化させて熱の上昇により発生する波長変化をキャンセルするように構成することができる。
(その他の実施の形態)
(A)上記本発明の実施の形態においては、光波長変換素子56,80の材料として、マグネシウムをドーピングしたニオブ酸リチウム(LiNbO3)を用いるとして説明を行ったが、それに限られることなく、LiNbO3(LN)、LiTaO3(LT)、KTiOPoO4(KTP)、RbTiOAsO4、RbTiOPO4などを用いることもできる。さらに、光波長変換素子56,80の材料としては、非線形有機高分子などを用いてもよい。
(実施の形態の概要)
本発明の実施の形態の概要を以下に記載する。
(1)上記したように、本願発明に係るコヒーレント光源は、活性領域および分布ブラッグ反射領域を備えた半導体レーザと、非線形光学結晶からなり、当該半導体レーザから出射されたレーザ光の波長を変換する光波長変換素子と、前記光波長変換素子からの高調波出力を測定する光検出器と、前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域に個別に電流を加える電流注入手段と、前記光検出器で測定される高調波出力に基づいて前記電流注入手段を制御し、前記半導体レーザの発振波長を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定する電流制御手段と、少なくとも前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域へパルス電流を加えるパルス電流注入手段と、前記光検出器で測定される高調波出力に基づいて前記パルス電流注入手段を制御し、前記半導体レーザの発振波長を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部で所望の値に変化させるパルス電流制御手段と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、半導体レーザから出射され、光波長変換素子により波長が変換されたレーザ光の高調波出力は、光検出器により測定されている。この状態で、まず、電流制御手段は電流注入手段を制御し、活性領域および分布ブラッグ反射領域に加える電流を調整し、半導体レーザの発振波長を位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定する。続いて、パルス電流注入手段は、少なくとも活性領域および分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域にパルス電流を加える。これにより、当該パルス電流が加えられた領域の屈折率が瞬間的に低下し高調波の波長が低波長側にシフトするので、高調波出力は減少する。このとき、どの程度高調波出力を減少させるかはパルス電流制御手段により制御されているので、高調波出力を所望の値に高速にかつ連続的に変化させることができる。
(2)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)であって、前記電流制御手段は高調波出力を停止する際、前記電流注入手段を制御して、前記活性領域へ電流を加えることを停止することを特徴とする。
活性領域へ加える電流を停止する(ゼロにする)と、半導体レーザから出射される基本波の出力がなくなり、ゼロとなる。それに伴って、高調波出力もゼロとなる。したがって、活性領域へ加える電流を停止することで、高調波出力を確実に停止することができる。
(3)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)であって、前記パルス電流制御手段は高調波出力を停止する際、前記パルス電流注入手段を制御して、前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域へパルス電流を加えることを特徴とする。
活性領域および分布ブラッグ反射領域へパルス電流が加えられると、当該領域の屈折率が瞬間的に低下し、高調波の波長が低波長側にシフトする。これにより、高調波の波長を位相整合波長スペクトル外へ瞬間的に変動させ、高調波出力を停止させることができる。
(4)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(3)であって、前記パルス電流注入手段により加えられるパルス電流は、当該パルス電流により高調波の波長が前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル外へ変動するパルス高さを有することを特徴とする。
この構成によれば、パルス電流の高さが十分に大きいので、1度のパルスで高調波の波長を位相整合波長スペクトル外へ瞬間的に変動させ、高調波出力を停止させることができる。
(5)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)または(2)であって、高調波出力が停止させられた際、前記分布ブラッグ反射領域へ加える電流の調整を行うことを特徴とする。
この構成によれば、例えば、活性領域へ電流を加えることを停止して、高調波出力を停止したような場合に、分布ブラッグ反射領域へ加える電流の確認や再調整を行うことで、高調波出力の停止が解除されたときに安定した高周波出力を行うことができる。
(6)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)乃至(5)のいずれかであって、高調波の高出力状態が連続する場合、前記電流制御手段は前記電流注入手段を制御し、少なくとも前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域へ加える電流を調整し、高調波の波長を一定に保つことを特徴とする。
高調波の高出力状態が連続する場合には、半導体レーザの温度が上昇することが想定される。この場合、半導体レーザから出射されるレーザ光の波長が変動するので、その変動分を打ち消すように活性領域および前記分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域へ加える電流を調整する。これにより、高調波の高出力状態が連続する場合であっても、安定した高周波出力を得ることができる。
(7)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)であって、前記半導体レーザはさらに位相領域を備えて構成されており、前記電流注入手段は当該位相領域にも電流を加えるものであり、前記電流制御手段は、前記光検出器で測定される高調波出力に基づいて前記電流注入手段を制御し、前記分布ブラッグ反射領域および前記位相領域へ加える電流を一定比で変化させて、前記半導体レーザの発振波長を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定するものであり、前記パルス電流注入手段は、少なくとも前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域および前記位相領域のいずれか1つの領域へパルス電流を加えることを特徴とする。
この構成によれば、半導体レーザから出射され、光波長変換素子により波長が変換されたレーザ光の高調波出力は、光検出器により測定されている。この状態で、まず、電流制御手段は電流注入手段を制御し、活性領域、分布ブラッグ反射領域および位相領域に加える電流を調整し、半導体レーザの発振波長を位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定する。このとき、分布ブラッグ反射領域および前記位相領域へ加える電流を一定比で変化させることで、半導体レーザの発振波長を連続的に変えることができる。続いて、パルス電流注入手段は、少なくとも活性領域および分布ブラッグ反射領域および位相領域のいずれか1つの領域にパルス電流を加える。これにより、当該パルス電流が加えられた領域の屈折率が瞬間的に低下し高調波の波長が低波長側にシフトするので、高調波出力は減少する。このとき、どの程度高調波出力を減少させるかはパルス電流制御手段により制御されているので、高調波出力を所望の値に高速にかつ連続的に変化させることができる。
(8)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(7)であって、前記電流制御手段は高調波出力を停止する際、前記電流注入手段を制御して、前記活性領域へ電流を加えることを停止することを特徴とする。
活性領域へ加える電流を停止する(ゼロにする)と、半導体レーザから出射される基本波の出力がなくなり、ゼロとなる。それに伴って、高調波出力もゼロとなる。したがって、活性領域へ加える電流を停止することで、高調波出力を確実に停止することができる。
(9)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(7)であって、前記パルス電流制御手段は高調波出力を停止する際、前記パルス電流注入手段を制御して、前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域および前記位相領域のうち、複数の領域へパルス電流を加えることを特徴とする。
活性領域、分布ブラッグ反射領域および位相領域へパルス電流が加えられると、当該領域の屈折率が瞬間的に低下し、高調波の波長が低波長側にシフトする。これにより、高調波の波長を位相整合波長スペクトル外へ瞬間的に変動させ、高調波出力を停止させることができる。
(10)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(9)であって、前記パルス電流注入手段により加えられるパルス電流は、当該パルス電流により高調波の波長が前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル外へ変動するパルス高さを有することを特徴とする。
この構成によれば、パルス電流の高さが十分に大きいので、1度のパルスで高調波の波長を位相整合波長スペクトル外へ瞬間的に変動させ、高調波出力を停止させることができる。
(11)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(7)または(8)であって、高調波出力が停止させられた際、前記分布ブラッグ反射領域または前記位相領域へ加える電流の調整を行うことを特徴とする。
この構成によれば、例えば、活性領域へ電流を加えることを停止して、高調波出力を停止したような場合に、分布ブラッグ反射領域および位相領域へ加える電流の確認や再調整を行うことで、高調波出力の停止が解除されたときに安定した高周波出力を行うことができる。
(12)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(7)乃至(11)のいずれかであって、高調波の高出力状態が連続する場合、前記電流制御手段は前記電流注入手段を制御し、少なくとも前記活性領域および前記分布ブラッグ反射領域および前記位相領域のいずれか1つの領域へ加える電流を調整し、高調波の波長を一定に保つことを特徴とする。
高調波の高出力状態が連続する場合には、半導体レーザの温度が上昇することが想定される。この場合、半導体レーザから出射されるレーザ光の波長が変動するので、その変動分を打ち消すように活性領域および前記分布ブラッグ反射領域のいずれか1つの領域へ加える電流を調整する。これにより、高調波の高出力状態が連続する場合であっても、安定した高周波出力を得ることができる。
(13)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)乃至(12)のいずれかであって、前記位相整合波長スペクトル内の傾斜部は、前記位相整合波長スペクトルにおいて、高調波出力がピーク出力の5%以上かつ95%以下となる部分であることを特徴とする。
位相整合波長スペクトルにおいては、高調波出力がピーク出力の5%以上かつ95%以下となる部分は、ほぼ直線的に変化している。したがって、半導体レーザの発振波長をこの傾斜部に固定することで、階調変化を連続的にかつ容易に行うことができる。
(14)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(13)であって、前記位相整合波長スペクトル内の傾斜部は、前記位相整合波長スペクトルにおいて、ピーク波長より低波長側の部分であることを特徴とする。
ピーク波長より低波長側の部分に波長を固定すると、高波長側の部分に波長を固定する場合に比べて、分布ブラッグ反射領域に加える電流を小さくできるため、消費電力を低く抑えることができる。
(15)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)乃至(14)のいずれかであって、前記電流制御手段は電流注入手段を制御し、前記分布ブラッグ反射領域へ加える電流を、前記半導体レーザの発振波長がモードホップした直後のところで固定することを特徴とする。
分布ブラッグ反射領域へ加える電流を、半導体レーザの発振波長がモードホップする近傍に固定すると、温度変化等によってもモードホップが生じやすく、発振波長が不安定となる。したがって、モードホップした直後のところに固定することで、発振波長を安定化することができる。
(16)コヒーレント光源は、コヒーレント光源(1)乃至(15)のいずれかであって、前記パルス電流注入手段により加えられるパルス電流は矩形パルスであることを特徴とする。
矩形パルスでは、パルスの立ち上がり部の傾きが急峻であるために、当該矩形パルスが加えられた半導体中のキャリア密度を上昇させ、高調波出力を減少させることを、瞬間的に行うことができる。
(17)上記したように、本願発明に係るディスプレイ装置は、入力映像信号に応じて強度変調されたレーザ光を投影するディスプレイ装置であって、赤色のレーザ光を出射するレーザ光源と、青色のレーザ光を出射する(1)乃至(16)のいずれかに記載のコヒーレント光源と、緑色のレーザ光を出射する(1)乃至(16)のいずれかに記載のコヒーレント光源と、前記赤色、青色および緑色のレーザ光を1本のレーザ光に合波する合波手段と、前記合波手段により合波された1本のレーザ光を、所定の第1の方向に走査させる第1の走査手段と、前記第1の方向に走査されたレーザ光を、前記第1の方向に垂直な第2の方向に走査させる第2の走査手段と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、青色および緑色のレーザ光の光源として、パルス電流を加えることで半導体レーザの発振波長を瞬間的に変化させるコヒーレント光源を用いているために、出力変調を高速に行うことが可能で、かつ連続的な階調が得られるディスプレイ装置を実現することができる。
(18)ディスプレイ装置は、ディスプレイ装置(17)であって、前記第1の走査手段および前記第2の走査手段は、回転多面鏡からなるポリゴンミラーおよびガルバノミラーから選択された組み合わせであることを特徴とする。
この構成によれば、第1の走査手段としてポリゴンミラーが選択された場合およびガルバノミラーが選択された場合の2通りがあり、第2の走査手段としても、同様に、ポリゴンミラーが選択された場合およびガルバノミラーが選択された場合の2通りがある。したがって、目的とする機能に応じて、相応しい組み合わせを選択することができる。
(19)上記したように、本願発明に係るレーザディスプレイは、(17)または(18)に記載のディスプレイ装置と、前記ディスプレイ装置からのレーザ光を投影するスクリーンと、を備えたレーザディスプレイであって、前記スクリーンの端部において、前記入力映像信号がなく、前記電流制御手段が前記電流注入手段を制御して前記活性領域へ電流を加えることを停止し、前記半導体レーザからの出力が停止させられた際、前記電流制御手段は前記分布ブラッグ反射領域へ加える電流の調整を行うことを特徴とする。
通常、スクリーンの端部には入力映像信号がなく、映像出力がない領域が存在する。そこで、この領域を利用し、電流制御手段により半導体レーザからの出力が停止させられたときに、引き続き電流制御手段は分布ブラッグ反射領域へ加える電流の調整を行う。これは例えば、分布ブラッグ反射領域へ加える電流の確認や再調整などである。これにより、半導体レーザからの出力停止が解除されたときに、レーザ光を安定して出力することができる。
(20)上記したように、本願発明に係るコヒーレント光源の制御方法は、非線形光学結晶からなり、半導体レーザから出射されたレーザ光の波長を変換する光波長変換素子からの高調波出力を光検出器で検出し、当該光検出器の出力に基づいて、前記半導体レーザに備えられた活性領域および分布ブラッグ反射領域へ加える電流を制御して、前記光検出器で検出される高調波出力を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部に固定した後、前記活性領域または前記分布ブラッグ反射領域へパルス電流を加え、前記光検出器で検出される高調波出力を前記光波長変換素子の位相整合波長スペクトル内の傾斜部で所望の値に変化させることを特徴とする。
この制御方法を用いたコヒーレント光源によれば、高調波出力を所望の値に高速にかつ連続的に変化させることが可能となる。
以上説明したコヒーレント光源の主な用途としては、前述したディスプレイ装置以外にも、描画装置、計測装置、光ディスク装置などが挙げられる。
本発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において、例示であって、本発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
本発明にかかる波長変換素子を用いたコヒーレント光源は、高速でSHG光源の変調が可能となり、例えばディスプレイ用の光源として有用である。
レーザディスプレイの概略構成図
SHG光源の出力調整装置を示す図
DBR−LDにおいてIopを変化させたときの発振波長特性を示す図
DBR−LDにおいてIdbrを変化させたときの発振波長特性を示す図
光波長変換素子の位相整合波長スペクトルを示す図
DBR領域への印加パルス電流を示す図
DBR領域へパルス電流を加えた際の高調波出力特性を示す図
DBR領域にパルス電流を加え、高調波出力を制御する際の処理の流れを示すフローチャート
実施の形態2における3電極LDを用いたSHG光源の出力調整装置の概略構成を示すブロック図
3電極LDにおいてIdbrとIphaseの比率を一定にしてIdbrを変化させたときの発振波長特性を示す図
レーザディスプレイの概略構成を示す図
従来のレーザディスプレイに接続可能な機器を示す図