JPWO2005036744A1 - 弾性境界波装置 - Google Patents
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Abstract
良好な共振特性やフィルタ特性を得ることができ、かつ周波数の製造偏差を低減し得る弾性境界波装置を提供する。 第1の媒質層としてのLiNbO3基板2と、第2の媒質層としてのSiO2膜3との境界に、インターデジタル電極4及び/または反射器5,6が配置されている弾性境界波装置において、インターデジタル電極4及び/または反射器5,6のデューティ比をdとしたときに、0.33<d<0.49とされている、弾性境界波装置。
Description
本発明は、音速の異なる第1,第2の媒質層間の境界を伝搬する弾性境界波を利用した弾性境界波装置に関し、より詳細には、電極構造が改良された弾性境界波装置に関する。
レーリー波や第1漏洩波などの弾性表面波を利用した弾性表面波装置では、小型化及び軽量化を進めることができ、かつ調整が不要である。
従って、弾性表面波装置は、携帯電話用RFフィルタもしくはIFフィルタ、VCO用共振子またはテレビ用VIFフィルタなどに広く用いられている。
もっとも、弾性表面波は、媒質表面を伝搬する性質を有するため、媒質の表面状態の変化に敏感である。従って、弾性表面波が伝搬するチップでは、弾性表面波が伝搬するチップ表面を保護しなければならない。そのため、弾性表面波チップのチップ表面が空洞に臨むように、空洞が設けられたパッケージを用いて、弾性表面波装置を気密封止する必要があった。このようなパッケージは一般にコストが高くつき、かつパッケージの寸法が弾性表面波チップの寸法よりも大幅に大きくならざるを得なかった。
上記のような空洞を有するパッケージを不要とするデバイスとして、弾性境界波装置が提案されている。
図5は、従来の弾性境界波装置の一例を示す模式的部分切欠正面断面図である。弾性境界波装置101では、音速が異なる第1,第2の媒質層102,103が積層されている。第1,第2の媒質層102,103の境界Aに、電気音響変換器としてのIDT104が配置されている。またIDT104の弾性境界波伝搬方向両側には、反射器(図示せず)が配置されている。
弾性境界波装置101では、IDT104に入力信号を印加することにより、弾性境界波が励振される。弾性境界波は、図5の矢印Bで模式的に示すように、弾性境界波装置101の境界Aを伝搬する。
下記の非特許文献1には、このような弾性境界波装置の一例が示されている。ここでは、126°回転Y板X伝搬のLiTaO3基板上にIDTが形成されており、さらにIDTを覆うようにLiTaO3基板上にSiO2膜が所定の厚みに形成されている。この構造では、ストンリー波と称されているSV+P型の弾性境界波が伝搬することが示されている。非特許文献1では、SiO2膜の厚みを1.0λ(但し、λは弾性境界波の波長)とした場合に、2%の電気機械結合係数が得られるとされている。
他方、下記の特許文献1には、126°回転Y板X伝搬のLiTaO3基板上にAlからなるIDTを構成してなる構造を有する弾性境界波装置が開示されている。ここでは、インターデジタル電極の電極指の膜厚をH、電極指の幅をL、電極指間の間隔をSとした場合、L=S=1μmとされている。そして、上記IDT上に、第2の媒質を構成する多結晶酸化珪素膜が形成されている。ここでは、インターデジタル電極のデューティ比L/(L+S)は0.5とされている。
WO98−52279号公報 「Piezoelectric Acoustic Boundary Waves Propagating Along the Interface Between SiO2 and LiTaO3」IEEE Trans.Sonics and ultrason.,VOL.SU−25,No.6,1978IEEE
弾性境界波装置においても、弾性表面波装置と同様に、周波数ばらつきが小さいことが強く求められている。しかしながら、従来の弾性境界波装置では、この要求を十分に満たすことはできず、良品率を高めることが困難であった。
本発明の目的は、従来技術の現状に鑑み、良好な共振特性やフィルタ特性を有し、かつ周波数ばらつきが小さい弾性境界波装置を提供することにある。
本発明は、第1の媒質層と、第2の媒質層と、第1,第2の媒質層間の境界に配置されたインターデジタル電極及び/または反射器とを備えた弾性境界波装置において、前記インターデジタル電極及び/または反射器のデューティ比をdとしたときに、0.33<d<0.49とされていることを特徴とする、弾性境界波装置である。
本発明に係る弾性境界波装置のある特定の局面では、上記第1の媒質層がLiNbO3を主成分とする基板を用いて構成されている。
本発明に係る弾性境界波装置の他の特定の局面では、上記第2の媒質層が、SiO2を主成分とする誘電体を用いて構成されている。
本発明に係る弾性境界波装置では、インターデジタル電極及び/または反射器のデューティ比dが、0.33より大きく0.49未満とされている。そのため、後述の具体的な実験例から明らかなように、製造に際しての周波数ばらつきの低減を図ることができる。
すなわち、本発明は、弾性境界波装置において、デューティ比を上記特定の範囲としたことにより、製造に際しての周波数ばらつきの低減を果たしたことに特徴を有する。
1…弾性境界波装置
2…LiNbO3基板(第1の媒質層)
3…SiO2膜(第2の媒質層)
4…インターデジタル電極
5,6…反射器1
2…LiNbO3基板(第1の媒質層)
3…SiO2膜(第2の媒質層)
4…インターデジタル電極
5,6…反射器1
以下、本発明の具体的な実施形態につき図面を参照しつつ説明することにより、本発明を明らかにする。
図1は、本発明の一実施形態に係る弾性境界波装置の電極構造を示す模式的断面図である。
弾性境界波装置1では、第1の媒質層として、矩形板状のLiNbO3基板2が用いられている。ここでは、LiNbO3基板2は、15°回転Y板X伝搬のLiNbO3基板を用いて構成されている。もっとも、本発明においては、他の回転角の回転Y板X伝搬LiNbO3基板を用いてもよい。
LiNbO3基板2上には、図2に模式的断面図で示すように、第2の媒質層として、SiO2膜3が積層されている。なお、図1では、SiO2膜の図示は省略されて、SiO2膜3とLiNbO3基板2との境界に配置された電極構造が示されている。すなわち、LiNbO3基板2上には、インターデジタル電極4と、反射器5,6とが形成されている。インターデジタル電極4は、複数本の互いに間挿し合う電極指4a,4bを有する。ここでは、インターデジタル電極4は、交差幅が図示のように表面波伝搬方向において変化するように、交差幅重み付けされている。
なお、インターデジタル電極4が上記のように交差幅重み付けされているのは、横モードスプリアスを抑圧するためである。
また、インターデジタル電極4の表面波伝搬方向両側に、グレーティング反射器5,6が配置されている。反射器5,6は、複数本の電極指5a,6aを両端で短絡した構造を有する。
本実施形態では、インターデジタル電極4及び反射器5,6のデューティ比が、0.33より大きく、0.49より小さくされているため、製造に際しての周波数ばらつきの低減が図られる。これを具体的な実験例に基づき説明する。本発明でのデューティ比とは、左右に隣接した電極指間のスペースの電極指中心間距離をP、電極指の幅をLとしたときに、デューティ比=L/Pで決定される値である。
インターデジタル電極4及び反射器5,6を、以下の薄膜形成法により形成した。すなわち、LiNbO3基板2上に、下地層として、蒸着法により厚さ0.001λのNiCr膜を形成した。なお、λは、上記インターデジタル電極4の電極指周期で規定される表面波の配置を示す。
上記NiCr膜上に、同じく蒸着法により厚さ0.06λのAu膜を形成した。しかる後、リフトオフ法によりパターニングを行いインターデジタル電極4及び反射器5,6を形成した。
インターデジタル電極4における波長λは、3μmとした。また、インターデジタル電極4における電極指の対数は50対、反射器の電極指の本数は50本、反射器における開口長Aは30λとした。
上記インターデジタル電極4及び反射器5,6を形成した後、SiO2膜3をRFマグネトロンスパッタ法により成膜した。成膜に際しての温度は200±50℃の範囲とし、SiO2膜の厚みは1.5λとした。
このようにして構成された弾性境界波装置1では、SH型の弾性境界波が励振され、かつ反射器5,6間で閉じ込められ、SH型の弾性境界波による共振特性を得ることができる。
上記弾性境界波装置1において、インターデジタル電極4におけるデューティ比を種々異ならせ、複数種の弾性境界波装置を作製した。
このようにして用意された複数種の弾性境界波装置各40個を取出し、共振周波数及び***振周波数の周波数製造偏差σを評価した。偏差σは、周波数ばらつきが正規分布を有すると仮定した場合の標準偏差である。
図3は、上記のようにして求められた共振周波数の周波数製造偏差とデューティ比との関係を示し、図4は、***振周波数の周波数製造偏差とデューティ比との関係を示す。
図3から明らかなように、デューティ比が0.5では、すなわち、従来の弾性境界波装置では、共振周波数の製造偏差σ2530ppmであったのに対し、デューティ比が0.49よりも小さく、0.33よりも大きい範囲では、製造偏差σは2330ppmよりも小さくなることがわかる。さらに、デューティ比が0.44より小さく、0.33より大きい範囲では、2050ppm以下と製造偏差σがより一層小さくなることがわかる。
他方、図4からデューティ比が0.5の場合には、***振周波数の製造偏差σは、2580ppmであるのに対し、デューティ比が0.5より小さく、0.31より大きい範囲では、***振周波数の製造偏差σは2410ppmよりも小さくなることがわかる。さらに、デューティ比が0.44より小さく、0.33より大きい場合には、***振周波数の製造偏差σは1970ppm以下とより一層良好となることがわかる。
従って、弾性境界波装置1において、電極のデューティ比を0.33より大きく、0.49より小さくすることにより、周波数の製造偏差を効果的に小さくすることができ、弾性境界波装置1の良品率を大幅に高め得ることがわかる。
なお、上記弾性境界波装置1を共振子として用いたラダー型フィルタを構成した場合、通過帯域下端の周波数の製造ばらつきは、弾性境界波共振子の共振周波数の製造偏差σにより決定され、通過帯域上端の周波数の製造偏差は、***振周波数の製造偏差σにより決定される。従って、上記弾性境界波装置1を、ラダー型フィルタなどを構成するための共振子として用いた場合、該フィルタの周波数ばらつきを効果的に低減することができる。
なお、本発明において、デューティ比が小さくなると、周波数の製造偏差が小さくなる理由は、以下の通りであると考えられる。
LiNbO3基板上に、境界波を励振または反射させるために、IDT電極4や反射器5,6を配置し、その上にSiO2膜を積層した構造について検討した。IDT4や反射器5,6は、前述した間隔Pで表わされる区間を隣接させて連続配置させたグレーティング構造を有する。このグレーティング構造は、電極指が存在する部分と存在しない部分を有する。そして、SiO2膜3を形成した場合、電極指間ギャップSが小さくなると、SiO2膜3のギャップへの充填状態が不安定となる。そのため、デューティ比が小さくなると、SiO2膜の充填状態が安定となり、周波数の製造偏差が小さくなると考えられる。
もっとも、デューティ比が0.9付近の場合においても、周波数の製造偏差は小さくなっている。これは、逆に、SiO2膜がギャップに充填されない状態で安定しているため、周波数の製造偏差が小さくなっていると考えられる。
なお、弾性表面波では、SiO2膜がIDT電極を覆うように形成した場合、SiO2膜の厚みが薄いため、SiO2膜表面に凹凸が生じる。そして、表面波はこの凹凸の影響を受ける。
しかしながら、弾性境界波装置では、SiO2膜の厚みが十分に厚く、SiO2膜3の表面の凹凸は小さくなる。また、もし、このような凹凸が生じていたとしても、弾性境界波の振動エネルギーは、SiO2膜表面にほとんど分布しないため、該凹凸による影響を受け難い。
なお、上記実施形態では、インターデジタル電極及び反射器5,6を構成する電極材料は、NiCrからなる下地層上に、Au膜を積層することにより構成されていた。しかしながら、電極材料は、Auを主体とするものに限定されず、Ag、Cu、Al、Fe、Ni、W、Ta、Pt、Mo、Cr、Ti、ZnO及びITOなどの金属や合金、酸化物導体を用いてもよい。また、上記NiCrなどの密着層を下地層として形成する必要も必ずしもない。すなわち、電極は単一の金属材料によってのみ構成されていてもよい。
また、第1の媒質層を構成する材料としても、LiNbO3基板2に限定されず、LiTaO3基板、水晶基板、ランガサイト系基板などの他の圧電基板により構成されてもよい。さらに、第1の媒質層は、硝子などにより構成されてもよい。
また、第2の媒質層についても、SiO2膜に限定されず、Al膜、SiN膜、多結晶Si膜などの他の材料であってもよく、さらに第2の媒質層は必ずしも薄膜状とされる必要もない。
また、第1,第2の媒質層で構成される境界部分は、インターデジタル電極4や反射器5,6の電極指間の間隔に媒質が充填される構造である限り、特に限定されるものではない。
さらに、上記実施形態では、弾性境界波装置1において、インターデジタル電極4と反射器5,6とが設けられていたが、インターデジタル電極数や反射器の数は特に限定されない。すなわち、複数のインターデジタル電極を、一対の反射器の間に配置した縦結合型の弾性境界波フィルタが構成されていてもよく、また、複数の弾性境界波装置や弾性境界波フィルタが直列、並列あるいは縦続にされていてもよい。
Claims (3)
- 第1の媒質層と、第2の媒質層と、第1,第2の媒質層間の境界に配置されたインターデジタル電極及び/または反射器とを備えた弾性境界波装置において、
前記インターデジタル電極及び/または反射器のデューティ比をdとしたときに、0.33<d<0.49とされていることを特徴とする、弾性境界波装置。 - 前記第1の媒質層がLiNbO3を主成分とする基板からなる、請求項1に記載の弾性境界波装置。
- 前記第2の媒質層が、SiO2を主成分とする誘電体からなる、請求項1または2に記載の弾性境界波装置。
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