JPWO2004063230A1 - 環化ゴムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、環化ゴムの製造方法としては、酸触媒の存在下、比較的低濃度の共役ジエン系重合体溶液(例えば、6〜10重量%)を数時間加熱して環化反応を行った後、数回の水洗処理により酸触媒等の不純物を水層に抽出して除去する方法が知られている(例えば、特開昭57−145103号公報参照)。
しかしながら、このような方法では、溶液のゴム濃度が低いために環化ゴムの生産性に劣る。生産性を改善すべく共役ジエン重合体の濃度を上げると、反応溶液と水洗に使用する水とが乳化状態となり水洗水を除去することが困難となる。その上、得られる環化ゴムは保存中にゲル化しやすく、溶剤に溶解して用いる場合に溶液の調製が困難になったり、ポリオレフィンに配合したときに、分散不良の原因となったりする問題がある。しかも、このような不具合は、原料として用いる共役ジエン系重合体の重量平均分子量が高いほど顕著になる傾向がある。
すなわち、本発明の主な目的は、種々の用途に適用でき、保存安定性に優れた環化ゴムを提供することにあり、また他の目的は、保存安定性に優れた環化ゴムを簡便に得ることができる製造方法を提供することにある。
かかる本発明の目的は、下記1〜20の発明によって達成される。
1.共役ジエン系重合体環化物またはその誘導体であって、環化反応に用いた酸触媒の残渣の含有量が70ppm以下であり、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000であることを特徴とする環化ゴム。
2.共役ジエン系重合体環化物の誘導体が、極性基含有化合物を用いる変性反応で共役ジエン系重合体環化物に極性基が導入されたものである前記の環化ゴム。
3.極性基が、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である前記の環化ゴム。
4.極性基が、酸無水物基、カルボキシル基および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である前記の環化ゴム。
5.導入された極性基の比率が、環化ゴム100g当たり、0.1〜200ミリモルである前記の環化ゴム。
6.環化率が10%以上である前記の環化ゴム。
7.ゲル量が10重量%以下である前記の環化ゴム。
8.炭化水素系溶媒中、共役ジエン系重合体を酸触媒の存在下で環化し、次いで、アルカリを添加して該酸触媒を中和した後に反応液をろ過して酸触媒残渣を除去することを特徴とする環化ゴムの製造方法。
9.酸触媒の残渣をろ過した後の反応液に、極性基含有化合物を添加して環化した共役ジエン系重合体と反応させ、極性基を導入する工程を設ける前記の製造方法。
10.極性基含有化合物が、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を有する化合物である前記の製造方法。
11.共役ジエン系重合体がイソプレン系ゴムである前記の製造方法。
12.前記の環化ゴムを含有してなる粉末粒子。
13.平均粒子径が1〜200μmである前記の粉末粒子。
14.環化ゴムの含有量が5重量%以上である前記の粉末粒子。
15.着色剤を含有する前記の粉末粒子。
16.前記の環化ゴムを有効成分とするポリマー成形材料用改質剤。
17.ポリマー成形材料に前記のポリマー成形材料用改質剤を配合してなるポリマー組成物。
18.ポリマー成形材料用改質剤の配合量が、ポリマー成形材料中のポリマー100重量部当たり、0.1〜50重量部である前記のポリマー組成物。
19.前記の環化ゴムを含有してなるコーティング剤。
20.環化ゴムの含有量が、全固形分に対して、2重量%以上である前記のコーティング剤。
本発明によれば、粉体塗料用ビヒクル成分、成形材料用の改質剤、プライマーや塗料などの接着成分、表面処理剤などのごとき種々の用途に有用な、保存安定性に優れた環化ゴムが提供される。また、該環化ゴムを簡便に得ることができる環化ゴムの製造方法が提供される。
酸触媒残渣の含有量が70ppm以下であれば、保存安定性に優れた環化ゴムになるが、50ppm以下とすることが好ましく、30ppm以下とすることがより好ましい。
ここで、酸触媒残渣とは、環化反応に用いた酸触媒および該酸触媒と環化反応後に添加するアルカリとの反応生成物をいう。
酸触媒残渣の含有量は、例えば、酸触媒がp−トルエンスルホン酸の場合、得られた環化ゴムをトルエンに20重量%になるように再溶解し、同量の水で3回抽出し、抽出水を濃縮後、イオンクロマトグラフ装置により測定できる。酸触媒が金属ハロゲン化物の場合、得られた環化ゴムを硫酸/硝酸混液で湿式分解し、該当する金属元素を多元素同時測定型高周波誘導結合プラズマ発光分析装置にて測定して求めることができる。
本発明の環化ゴムの重量平均分子量は、10,000〜500,000であることが好ましく、50,000〜300,000であることがより好ましい。分子量が過度に大きいと、溶液粘度が上昇し、塗布やスプレー塗装の際に支障をきたす場合がある。
また、環化ゴムの分子量分布、すなわち重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は、通常、4以下である。
本発明の環化ゴムの環化率は、通常、10%以上、好ましくは40〜95%、より好ましくは60〜90%である。環化率をこの範囲にすると、非極性ポリマーや極性ポリマーとの接着性を改善する特性が良好になる。
ここで、環化率とは、プロトンNMR分析により共役ジエン系重合体の環化反応前後における二重結合由来のプロトンのピーク面積をそれぞれ測定し、環化反応前を100とした時の環化物中に残存する二重結合の割合を求め、計算式=(100−環化物中に残存する二重結合の割合)により表される値である。
また、環化ゴムの環化度(n)、すなわち環のつながりは、通常、n=1〜3の範囲である。環化ゴムのゲル量は、通常、10重量%以下、好ましくは5重量%以下であるが、実質的にゲルを有しない環化ゴムであることが特に好ましい。ゲル量が多いと、後述するプライマー層形成に際しての塗布工程に問題が生じる可能性がある。
本発明の環化ゴムの製造方法は、炭化水素系溶媒中、共役ジエン系重合体を酸触媒の存在下に環化し、次いで、アルカリを添加して該酸触媒を中和した後に反応液をろ過して酸触媒残渣の除去を行うことを特徴とする。
環化ゴムの原料として用いられる共役ジエン系重合体は、共役ジエン単量体のみの重合体であっても、共役ジエン単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。また、共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどが挙げられる。
また、他の単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、2−メチル−1,4−ジクロルスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテンなどの鎖状オレフィン単量体;シクロペンテン、2−ノルボルネンなどの環状オレフィン単量体;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
これらの共役ジエン単量体および他の単量体は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
共役ジエン系重合体における共役ジエン単量体単位の含有量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択されるが、通常、40モル%以上、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。この含有量が少ないと、環化率を上げることが困難になり、所期の物性改善効果が得にくい傾向にある。
共役ジエン系重合体の重合方法は常法に従えばよく、例えば、チタンなどを触媒成分として含むチーグラー系重合触媒、アルキルリチウム重合触媒、またはラジカル重合触媒などの適宜な触媒を用いて、溶液重合または乳化重合により行われる。
環化ゴムの原料として用いられる共役ジエン系重合体の具体例としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ブタジエン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等を挙げることができる。これらの共役ジエン系重合体は、必要に応じて素練りを行い、分子量を低下させて用いることもできる。これらの共役ジエン系重合体の中でも、非極性ポリマーに対する接着性改善効果が大きい点で、イソプレンを主成分とするイソプレン系ゴムが好ましく、特に、イソプレン単位中のシス−1,4結合量が40%以上、より好ましくは60%以上のポリイソプレンが好ましい。
共役ジエン系重合体の環化は、共役ジエン系重合体を炭化水素系溶媒中に溶解し、酸触媒の存在下で反応させることにより行われる。
酸触媒は、環化反応に通常用いられるものであればよく、例えば、硫酸;フルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、炭素数2〜16のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、これらの無水物もしくはアルキルエステルなどの有機スルホン酸化合物;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、エチルアンモニウムクロリド、臭化アルミニウム、五塩化アンチモン、六塩化タングステン、塩化鉄などの金属ハロゲン化物類;などが挙げられる。これらの酸触媒は、単独でも、2種以上を併用して用いてもよい。
なかでも、ろ過工程において酸触媒残渣の除去が容易であることから、有機スルホン酸化合物が好ましく、p−トルエンスルホン酸がより好ましい。
酸触媒の使用量は、共役ジエン系重合体100重量部当たり、通常、0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜2重量部である。
反応に用いる炭化水素系溶媒としては、環化反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などが挙げられる。これらの炭化水素系溶媒の中でも、沸点が70℃以上のものが好ましい。また、炭化水素系溶媒として、共役ジエン系重合体の重合反応に用いられる溶媒をそのまま用いることもできる。この場合は、重合が終了した重合反応液に酸触媒が加えられる。
炭化水素系溶媒の使用量は、共役ジエン系重合体の固形分濃度が、通常、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%となる範囲である。
環化反応は、加圧、減圧または大気圧いずれの圧力下でも行うことができるが、操作の簡便性の点から大気圧雰囲気下で行うことが望ましい。なかでも乾燥気流下、特に乾燥窒素や乾燥アルゴンの雰囲気下で行うと水分由来の副反応を抑えることができる。
また、反応温度や反応時間は常法に従えばよく、反応温度は、通常、50〜150℃、好ましくは80〜110℃であり、反応時間は、通常、0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間である。
本発明においては、共役ジエン系重合体と炭化水素系溶媒とを反応容器に仕込んだ後、所定の温度に加温して共役ジエン系重合体を完全に溶解し、得られた溶液中に酸触媒を加えて攪拌下に環化反応を行うことが好ましい。
本発明においては、環化反応を行った後の反応液にアルカリを添加することによって酸触媒の処理が行われる。このアルカリ処理により、環化反応に用いた酸触媒を効率よく除去することができる。
アルカリ処理に使用されるアルカリとしては、環化反応の酸触媒と中和反応して不溶物を形成するものであればよく、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩や水酸化物;水酸化アンモニウム等が挙げられ、環化反応に使用される酸触媒等に応じて適宜選択することができる。なかでも、水溶性のアルカリが好ましく、25℃において10重量%以上、特に20重量%以上の水溶液として添加できるものが好ましい。高濃度の水溶液を添加することにより、系中に存在する水の量が減少し、その結果としてろ過がし易くなる。
アルカリの使用量は適宜選択すればよいが、通常、使用した酸触媒に対して、1〜2当量、好ましくは1.1〜1.3当量である。使用量が少ないと酸触媒残渣の除去が不充分になり、逆に多いとアルカリの残渣が残留して用途によっては不具合を生じる場合がある。
本発明においては、アルカリ処理後の反応液をフィルターでろ過することにより、環化反応に用いた酸触媒の残渣が除去される。
環化反応に用いる溶媒を適宜選択し、アルカリとしてアルカリ金属の炭酸塩または水酸化物を用いると、アルカリ処理に用いたアルカリ残渣も溶媒に不溶なものとして、ろ過の際に除去することができる。アルカリ残渣は、主に、環化反応に用いた酸触媒の中和反応に寄与しない、過剰のアルカリである。アルカリ残渣の量は、目的とする環化ゴムに対して、好ましくは100ppm以下、より好ましくは70ppm以下となるように制御される。
ろ過に使用されるフィルターの材質は、特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリテトラフルオロエチレンなどのプラスチック;ステンレスや鉄などの金属;紙、布、ガラス、セラミックなどが挙げられる。なかでも、ガラス繊維、布、金属製のフィルターが好ましく使用できる。
フィルターの孔径は、反応に用いた酸触媒に応じて適宜選択すればよいが、通常、0.1〜10μm、好ましくは0.5〜3μmである。
ろ過を行う際には、必要に応じて、ラジオライト、セライトなどの珪藻土;活性炭などのろ過助剤を使用することもできる。
アルカリ処理およびろ過により酸触媒残渣を除去した後は、常法により溶媒を除去し、次いで、乾燥することによって目的とする環化ゴムが得られる。
本発明においては、酸触媒残渣の除去を行った後の反応液を、必要に応じて極性基含有化合物による変性反応に供することができる。
変性反応に使用する極性基含有化合物は、環化した共役ジエン系重合体に極性基を導入することができる化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、チオール基、エステル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、ハロゲンなどの極性基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
極性基としては、接着性の改良効果が優れる点で、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エポキシ基、アミノ基が好ましく、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基がより好ましい。
酸無水物基またはカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などのエチレン性不飽和化合物が挙げられ、なかでも、無水マレイン酸が反応性、経済性の点で賞用される。
水酸基を含有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル類;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどのヒドロキシル基を有する不飽和酸アミド類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)クリレートなどの不飽和酸のポリアルキレングリコールモノエステル類;グリセロールモノ(メタ)アクリレートなどの不飽和酸の多価アルコールモノエステル類;などが挙げられる。これらの中でも、不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル類が好ましく、特にアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。
その他の極性基を含有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
極性基含有化合物を共役ジエン系重合体環化物に導入する方法は特に限定されないが、エチレン性不飽和化合物を付加する場合には、一般にエン付加反応またはグラフト重合反応と呼ばれる公知の反応に従えばよい。
この付加反応は、共役ジエン系重合体環化物と極性基含有化合物とを、必要に応じてラジカル発生剤の存在下に反応させることによって行われる。ラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド,tert−ブチルパーオキシドベンゾエート,メチルエチルケトンパーオキシドなどのパーオキシド類;アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾニトリル類;などが挙げられる。
付加反応は、固相状態で行なっても、溶液状態で行なってもよいが、反応制御がし易い点で、溶液状態で行なうことが好ましい。使用される溶媒としては、例えば、前述したような環化反応における炭化水素系溶媒と同様のものが挙げられる。
極性基含有化合物の使用量は、適宜選択されるが、導入された極性基の比率が、変性後の環化ゴム100g当たり、通常、0.1〜200ミリモル、好ましくは1〜100ミリモル、より好ましくは5〜50ミリモルとなるような範囲である。
極性基を導入する反応は、加圧、減圧または大気圧いずれの圧力下でも行うことができるが、操作の簡便性の点から大気圧下で行うことが望ましく、なかでも乾燥気流下、特に乾燥窒素や乾燥アルゴンの雰囲気下で行うと水分由来の副反応が抑えることができる。
反応温度や反応時間は常法に従えばよく、反応温度は、通常、30〜250℃、好ましくは60〜200℃であり、反応時間は、通常、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間である。
本発明の環化ゴムは、その分子構造内に極性基を有さないものと、極性基を有するものとに大別される。極性基の有無およびその含有量は、環化ゴムの成形材料用改質剤や塗料用ビヒクル成分としての性能に影響を及ぼすので、要求される性能に応じて適宜選択される。
極性基を有さない環化ゴムとしては、極性基を含有しない単量体を重合もしくは共重合させた共役ジエン系重合体の環化物、天然ゴムの環化物などがある。
分子内に極性基を有する環化ゴムの具体例としては、極性基を有する単量体を共重合させた共役ジエン系重合体を環化させた環化ゴム、極性基含有化合物により共役ジエン系重合体環化物を変性した環化ゴムなどがある。なかでも、極性基含有化合物を用いる変性反応で共役ジエン系重合体環化物に極性基を導入すると、所望の特性を有する環化ゴムを容易に得ることができる。
極性基を有する単量体としては、クロロプレン、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミドなどが挙げられる。
極性基含有化合物を用いて、共役ジエン系重合体環化物を変性する場合には、前述したように、共役ジエン系重合体の環化反応が行われた後に変性反応が行われる。
共役ジエン系重合体環化物に導入する極性基としては、所望の極性を付与することができるものであれば特に限定されるものではないが、導入の容易性の点からは、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基が好ましい。また、変性反応は、前述のように共役ジエン系重合体環化物に極性基含有化合物を付加することによって行われるが、その他の方法を用いてもよい。
本発明の環化ゴムは、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤;老化防止剤、充填剤、軟化剤、ワックスなどの配合剤を添加して用いられる。配合剤は一般に使用されているものであればよい。
老化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのフェノール系老化防止剤;フェニル−α−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどのリン系老化防止剤などが挙げられる。
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、シリカ、カーボンブラック、タルク、クレー、二酸化チタン、酸化亜鉛、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
配合剤の使用量は、配合の目的、配合剤の種類によって適宜選択することができる。
環化ゴムの形状は、用途に応じて適宜選択できるが、通常はペレットまたは粉末状である。粉末状とするには、固形状の環化ゴムを、必要に応じて添加される上記配合剤と共に、冷却下にバンタムミル、ジェットミル、ディスクミル、ボールミル、コロイドミルなどの粉砕機を用いて粉砕すればよい。
このようにして得られる粉末粒子の平均粒子径は、通常、1μm〜200μm、好ましくは3μm〜100μm、さらに好ましくは5μm〜50μmである。この平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって測定される、粒子径に対する個数基準積分曲線における、50%個数基準積算値に対応する粒子径である。
上記粉末粒子中の環化ゴムの含有量は、通常、5重量%以上、好ましくは10重量%、より好ましくは20重量%以上、特に好ましくは30重量%以上である。
このようにして得られる本発明の環化ゴムは、長期の保存においてもゲルの発生がなく、環化ゴムの特性を生かした多くの用途に有用である。例えば、上記粉末粒子は、樹脂や金属に対する優れた密着性を生かして粉体塗料として用いることができる。粉体塗料とする場合には、着色剤を配合し、必要に応じて老化防止剤、充填剤、軟化剤、ワックスなどが常法に従って適宜配合される。
顔料を着色剤として用いる場合、イエロー着色にはベンジジン系、アゾ系、イソインドリン系顔料が、マゼンタ着色にはアゾレーキ系、ローダミンレーキ系、キナクリドン系、ナフトール系、ジケトピロロピロール系顔料が、シアン着色にはフタロシアニン系顔料、インダンスレン系顔料が好ましく用いられる。黒色着色には、カーボンブラックが通常使用される。カーボンブラックとしては、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック等が挙げられる。
染料を着色剤として用いる場合、イエロー着色にはアゾ系、ニトロ系、キノリン系、キノフタロン系、メチン系染料が、マゼンタ着色にはアントラキノン系、アゾ系、キサンテン系染料が、シアン着色にはアントラキノン系、フタロシアニン系、インドアニリン系染料が好ましく用いられる。
着色剤の使用量は、求める色合い、濃さなどによって適宜選択すればよく、環化ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
粉体塗料は、通常、環化ゴム、着色剤および必要に応じて含有される添加剤を混合し、それを粉砕し、分級することによって得ることができる。
混合方法は、特に限定されず、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール、一軸または二軸押出機等の混練機を用いて溶融混合する方法がある。
粉砕方法としては、前述の方法に従えばよい。
分級の方法としては、例えば、風力分級、遠心分級、篩分級などの方法が挙げられる。
また、本発明の環化ゴムは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーなどからなる各種ポリマー成形材料の接着性を改善したり、ポリマー成形材料を構成する異種ポリマー同士の分散性や、ポリマー成形材料におけるポリマーへの充填剤、顔料などのごとき配合剤の分散性を改善したりするためのポリマー成形材料用改質剤としても有用である。
改質の対象となるポリマー成形材料に用いるポリマーとしては、以下のようなものが挙げられる。
1.炭化水素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルブチラート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、フッ素系樹脂などの熱可塑性樹脂。
2.フェノール樹脂、クレゾール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂。
3.天然ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの加硫ゴム;オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのエラストマー。
これらのなかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリペンテン−1等の鎖状オレフィン系樹脂;エチレンとノルボルネン類との付加共重合体、ノルボルネン類の開環重合体水素化物等の環状オレフィン系樹脂;などの炭化水素系熱可塑性樹脂に配合すると、環化ゴムによる改質効果が大きい。
上記のポリマーは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤;老化防止剤、充填剤、軟化剤、ワックス、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、着色剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤などの配合剤を適宜配合することもできる。
ポリマー成形材料に上記ポリマー成形材料用改質剤を配合してなるポリマー組成物において、上記ポリマー成形材料用改質剤の配合量は、ポリマー成形材料の種類や要求される性能に応じて適宜選択されるが、ポリマー成形材料中のポリマー100重量部当たり、通常、0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部、特に好ましくは2〜5重量部である。
さらに、本発明の環化ゴムは、前述のポリマー成形材料用のプライマーや塗料などのコーティング剤における、プライマー用ビヒクル成分や塗料用バインダー成分などの接着成分として用いると、該ポリマー成形材料への接着性を改善できる。この場合、プライマーや塗料などのコーティング剤中の全固形分に対して、環化ゴムを2重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上含有することが好ましい。
コーティング剤として使用する場合には、環化ゴムに、必要に応じて、他の接着成分および各種の添加剤を配合して用いられる。
他の接着成分としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、塩素化オレフィン系樹脂、シリコーン系ゴムなどが挙げられる。
他の接着成分を配合する場合の比率は、その種類や配合目的に応じて適宜選択されるが、環化ゴムと他の接着成分との重量比率で、通常、100:0〜5:95、好ましくは80:20〜30:70、より好ましくは70:30〜50:50である。
添加剤としては、改質剤の項で例示したポリマーの配合剤と同様のものが挙げられる。
環化ゴムを含有してなるコーティング剤は、通常、環化ゴムまたは環化ゴムとその他の成分との混合物を、溶媒に溶解または分散させることによって得られる。使用される溶媒は適宜選択すればよく、例えば、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、水系溶媒などが挙げられる。溶媒の使用量は、コーティング剤の固形分濃度が、通常、5〜95重量%、好ましくは15〜60重量%となるような範囲である。
本発明の環化ゴムを含有してなるコーティング剤を、各種の充填剤や顔料などの分散材料の表面処理剤として使用することもできる。分散材料を該コーティング剤で表面処理すると、各種のポリマーに対する分散材料の分散性が改良される。
表面処理の対象となる充填剤や顔料としては、前述のものが使用できる。環化ゴムの使用量は、分散材料の種類やそれを分散させるポリマーの種類に応じて適宜選択されるが、分散材料100重量部当たり、通常、0.1〜100重量部、好ましくは5〜20重量部の割合で用いられる。
本発明の環化ゴムは、異種材料同士を強固に接着させる接着剤として使用することもできる。この場合の異種材料の組み合わせとしては、例えば、OPP(延伸ポリプロピレン)/CPP(結晶性ポリプロピレン)、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン/アルミニウムなどが挙げられ、その形状は特に限定されないが、フィルム状、シート状のものが好適である。接着方法としては、例えば、予めフィルム状に成形した環化ゴムを異種材料間に挟みこんだ後、加熱接着させる方法や、一方の材料表面に、環化ゴムを含有するコーティング剤を塗布した後、他方の材料表面と貼り合わせる方法などが採用できる。
なお、上記実施形態は例示であり、本発明の技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
評価は以下のように行なった。
(1)環化ゴムの重量平均分子量と分子量分布(Mw/Mn)
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析により、標準ポリスチレン換算値で、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求め、重量平均分子量とMw/Mnの数値を示す。
(2)環化ゴムのゲル量
2mm角に裁断した試料0.2gを、トルエン100mlに、48時間浸漬した後、80メッシュの金網上に残るゲル分の乾燥重量の割合を百分率で示す。
(3)環化ゴムの環化率
環化率は、下記(i)及び(ii)の文献に記載された方法に準じて、プロトンNMR測定により求めた。
(i) M.a.Golub and J.Heller.Can.J.Chem,41,937(1963)
(ii) Y.Tanaka and H.Sato,J.Polym.Sci:Poly.Chem.Ed.,17,3027(1979)
(4)変性環化ゴム中の極性基量
無水マレイン酸で変性した環化ゴムは、付加した無水マレイン酸に由来する酸無水物基と該酸無水物基が加水分解したカルボキシル基を有する。この環化ゴムのフーリエ変換赤外スペクトルを測定し、酸無水物基のピーク強度(1760〜1780cm−1)を測定して、検量線法により酸無水物基の含有量を求めた。同様にカルボキシル基のピーク強度(1700cm−1)を測定して、検量線法によりカルボキシル基の含有量を測定した。
水酸基含有化合物で変性した環化ゴムの水酸基価を、「基準油脂分析試験法(日本油化学協会)」2,4,9,2−83に記載される方法に準じて測定した。この水酸基価から、変性環化ゴム中の水酸基量を求めた。
(5)酸触媒残渣量
環化触媒がp−トルエンスルホン酸の場合、環化ゴム100gをトルエン400gに溶解した溶液を、500mlの水で3回抽出し、抽出水の合計1500mlを100mlになるようにエバポレーター濃縮し、この濃縮水をイオンクロマトグラフ装置(ダイオネクス社)で測定した。ここで、p−トルエンスルホン酸ナトリウム塩およびp−トルエンスルホン酸の検量線を予め作成し、環化ゴム全量に対する、それぞれの含有量を求めた。
測定条件:カラム アニオン型 イオンパック AS4A−SC
溶離液 Na2CO3/NaHCO3水溶液
流量 1.5ml/min
なお、上記の方法による測定下限界は、1ppmである。また、上記の測定後、再度同様の抽出および抽出水の濃縮を行い、その濃縮抽出水を分析したところ、酸触媒残渣は検出されなかった。
(6)ナトリウム金属分析
環化ゴムを酸素燃焼フラスコで分解後、原子吸光スペクトル(SAS7500:セイコー電子工業株式会社製)を用いて、Na含有量を測定し、環化ゴム全量に対するNa含有量を求めた。このNa含有量から、酸触媒残渣であるp−トルエンスルホン酸ナトリウム塩に由来するNa分を減じて、アルカリ残渣に由来するNa含有量を求めた。
測定波長: Na/589nm
(7)保存安定性(促進試験)
環化ゴムを2mm角に裁断し、80℃のオーブン(送風型)に入れ、経時での分子量分布及びゲル量を測定した。
(8)粉体の平均粒子径
粉体粒子を、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(LMS−300:(株)セイシン企業製)を用いて測定される、粒子径に対する個数基準積分曲線における、50%個数基準積算値に対応する粒子径を平均粒子径として示す。
(8)塗膜の密着性(碁盤目試験)
塗装した試験片の塗装面上に、カッターを用いて、2mm間隔で素地に達する切れ目を11本作り、次いで、それと直角に交わるように同様の切れ目を11本作り、2mm四方の碁盤目を100個作成した。その碁盤目上にセロファン粘着テープを密着させて手前45°方向に引き剥がし、塗装面が残存する碁盤目の個数を調べた。
この溶液に老化防止剤(イルガノックス1010:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.3部を添加した後、160℃でトルエンを除去し、溶液の固形分濃度が70〜75重量%になった時点で、フッ素樹脂をコーティングした金属製バットに流し込み、75℃にて減圧乾燥して環化ゴムAを得た。得られた環化ゴムAの評価を行い、結果を表1に示す。
(比較例1)
攪拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた耐圧反応器に、10mm角に裁断したポリイソプレン(シス−1,4単位70%、トランス−1,4単位24%、3,4−単位6%、重量平均分子量141,000)300部を、トルエン4700部とともに仕込んだ(ポリマー濃度6%)。反応器内を窒素置換した後、80℃に加温して攪拌下でポリイソプレンをトルエンに完全に溶解した後、p−トルエンスルホン酸(無水)10.8部を投入し、80℃で環化反応を行った。約4時間後、イオン交換水400部を投入して反応を停止した。30分間静置後、油層を分取し、500部のイオン交換水で洗浄を3回繰り返した。回転数300rpmで遠心分離を行い、水を除去し、さらに130℃に加熱して水分を除去した。次いで、この溶液に老化防止剤(イルガノックス1010:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.3部を添加した後、160℃でトルエンを除去し、溶液の固形分濃度が70〜75重量%になった時点で、フッ素樹脂をコーティングした金属製バットに流し込み、75℃にて減圧乾燥して、環化ゴムFを得た。この環化ゴムFの評価を行い、結果を表1に示す。
(比較例2)
p−トルエンスルホン酸(無水)の使用量を11.7部に変える以外は、比較例1と同様に、環化反応を行った後、イオン交換水400部を投入して反応を停止した。30分間静置後、油層を分取し、5000部のイオン交換水で洗浄を3回繰り返した。回転数300rpmで遠心分離を行い、水を除去し、さらに130℃に加熱して水分を除去した。次いで、溶媒の除去を行い、環化ゴムの固形分濃度が70−75重量%になった時点で無水マレイン酸9部を投入し、180℃で1時間反応させた。反応後、180℃で窒素を流しながら、未反応無水マレイン酸およびトルエンを除去した後、75℃にて減圧乾燥して、変性環化ゴムGを得た。この変性環化ゴムGの評価を行い、結果を表1に示す。
表1から次のようなことがわかる。
環化反応の後、多量の水を添加して反応を停止し、次いで、多量の水で水洗して得られる環化ゴムは、酸触媒残渣の含有量が多く、保存安定性の促進試験により、ゲル化が進行し、溶媒に溶解して使用するには不適当であることがわかる(比較例1および2)。
これらの比較例に対して、本発明の範囲内で製造して得られる環化ゴムは、酸触媒残渣の含有量が少なく、保存安定性に優れていることがわかる(実施例1〜5)。
得られた塗膜は均一であり、この塗膜の密着性を、碁盤目試験により測定したところ、100/100であり、密着性に優れていた。
(比較例3)
環化ゴムBに代えて、80℃で240時間促進試験した後の環化ゴムFを用いた以外は、実施例6と同様に、粉体塗料を得、その評価を行なった。この粉体塗料を用いて得られた塗膜は、不均一で、密着性も不十分であった。
該成形体表面に、二液硬化型ウレタン系メタリック塗料(日本ビーケミカル社製の商品名RB−212(ベース塗料)および商品名RB−288(クリヤー塗料))を、塗料全体の膜厚が40μmになるように、2コート塗装した。塗装後、15分間、23℃で乾燥した後、80℃で30分間、非循環式乾燥器にて乾燥し、その後、室温で24時間放置した。
得られた塗装試験片の塗膜の密着性を、碁盤目試験により測定したところ、100/100であり、密着性に優れていた。
(比較例4)
環化ゴムCに代えて、80℃で240時間促進試験した後の環化ゴムGを用いた以外は、実施例7と同様に塗装試験片を得た。
得られた塗装試験片の塗膜の密着性を、碁盤目試験により測定したところ、60/100であり、密着性にも劣っていた。
一方、ポリプロピレン(J−3054HP:出光石油化学社製)を射出成形して、厚さ3mm、幅50mm、長さ80mmの成形体を作製した。
水でよく洗浄した上記のポリプロピレン成形体に、口径1.0mmのスプレーガンを用い、スプレー圧3.5〜5.0MPaにて、膜厚10μmになるように上記のプライマーを塗装した。5分間乾燥した後、二液硬化型ウレタン系メタリック塗料(日本ビーケミカル社製の商品名RB−212(ベース塗料)および商品名RB−288(クリヤー塗料))を、塗料全体の膜厚が40μmになるように、2コート塗装した。塗装後、15分間、23℃で乾燥した後、80℃で30分間、非循環式乾燥器にて乾燥し、その後、室温で24時間放置した。
得られた塗装試験片の塗膜の密着性を碁盤目試験により評価したところ、100/100であり、密着性に優れていた。
(比較例5)
環化ゴムCに代えて、80℃で240時間促進試験した後の環化ゴムGを用いた以外は、実施例8と同様にプライマーを調製した。このプライマーをスプレー塗装しようとすると、スプレーガンが目詰まりして、綺麗に塗装することができず、これ以降の評価は中止した。
Claims (20)
- 共役ジエン系重合体環化物またはその誘導体であって、環化反応に用いた酸触媒の残渣の含有量が70ppm以下であり、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000であることを特徴とする環化ゴム。
- 共役ジエン系重合体環化物の誘導体が、極性基含有化合物を用いる変性反応で共役ジエン系重合体環化物に極性基が導入されたものである前記請求の範囲第1項に記載の環化ゴム。
- 極性基が、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である前記請求の範囲第2項に記載の環化ゴム。
- 極性基が、酸無水物基、カルボキシル基および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基である前記請求の範囲第2項に記載の環化ゴム。
- 導入された極性基の比率が、環化ゴム100g当たり、0.1〜200ミリモルである前記請求の範囲第2項から第4項までのいずれかに記載の環化ゴム。
- 環化率が10%以上である前記請求の範囲第1項から第5項までのいずれかに記載の環化ゴム。
- ゲル量が10重量%以下である前記請求の範囲第1項から第6項までのいずれかに記載の環化ゴム。
- 炭化水素系溶媒中、共役ジエン系重合体を酸触媒の存在下で環化し、次いで、アルカリを添加して該酸触媒を中和した後に反応液をろ過して酸触媒残渣を除去することを特徴とする環化ゴムの製造方法。
- 酸触媒の残渣をろ過した後の反応液に、極性基含有化合物を添加して環化した共役ジエン系重合体と反応させ、極性基を導入する工程を設ける前記請求の範囲第8項に記載の製造方法。
- 極性基含有化合物が、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの極性基を有する化合物である前記請求の範囲第9項に記載の製造方法。
- 共役ジエン系重合体がイソプレン系ゴムである前記請求の範囲第8項から第10項までのいずれかに記載の製造方法。
- 前記請求の範囲第1項から第7項までのいずれかに記載の環化ゴムを含有してなる粉末粒子。
- 平均粒子径が1〜200μmである前記請求の範囲第12項に記載の粉末粒子。
- 環化ゴムの含有量が5重量%以上である前記請求の範囲第12項または第13項に記載の粉末粒子。
- 着色剤を含有する前記請求の範囲第12項から第14項までのいずれかに記載の粉末粒子。
- 前記請求の範囲第1項から第7項までのいずれかに記載の環化ゴムを有効成分とするポリマー成形材料用改質剤。
- ポリマー成形材料に前記請求の範囲第16項に記載のポリマー成形材料用改質剤を配合してなるポリマー組成物。
- ポリマー成形材料用改質剤の配合量が、ポリマー成形材料中のポリマー100重量部当たり、0.1〜50重量部である前記請求の範囲第17項に記載のポリマー組成物。
- 前記請求の範囲第1項から第7項までのいずれかに記載の環化ゴムを含有してなるコーティング剤。
- 環化ゴムの含有量が、全固形分に対して、2重量%以上である前記請求の範囲第19項に記載のコーティング剤。
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