JP4207587B2 - 環化ゴムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環化ゴムおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの非極性の重合体からなる成形体と塗料との密着性を著しく向上できる、分岐構造を有する環化ゴムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる成形体は、美粧性および耐久性などを向上させるために、その表面を塗料で塗装して使用されることが多い。しかしながら、ポリオレフィンは極性が低く、そのままでは塗料との密着性に劣るため、塗膜が剥離しやすいという問題がある。
【0003】
ポリイソプレンなどの共役ジエン重合体の環化物を含有する塗料がポリオレフィンによく密着することは知られており(特許文献1)、さらに密着性を改良するために、シス−1,4結合量70%以上の低分子量の共役ジエン重合体に無水マレイン酸を付加させた後、環化反応を行って得られる変性共役ジエン重合体環化物を用いることが提案されている(特許文献2)。
しかしながら、上記のような共役ジエン重合体環化物を使用することで、ポリオレフィン成形体への密着性をある程度改良した塗料が得られるものの、その改良度合いは不十分であった。
【0004】
【特許文献1】
特開昭51−12827号公報
【特許文献2】
特開昭57−145103号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの非極性の重合体からなる成形体と塗料との密着性を著しく向上できる、環化ゴムおよびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、3官能性以上のカップリング剤でカップリングして得られるカップリング型共役ジエン重合体を環化して得られる、分岐構造を有し、重量平均分子量が特定範囲にある環化ゴムを、原料ポリプロピレンに配合したり、ポリプロピレン成形体用プライマーの接着性成分として用いたりすれば、上記の目的を達成できることを見出し、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば、以下の発明1が提供される。
1.共役ジエン単量体、または共役ジエン単量体及び共役ジエン単量体と共重合可能な単量体を、有機活性金属触媒を用いて重合して、重合体鎖末端に活性金属を有する活性共役ジエン重合体を形成する工程と、
前記の活性共役ジエン重合体に、3官能性以上のカップリング剤を反応させて、分岐構造を有するカップリング型共役ジエン重合体を形成する工程と、
前記カップリング型共役ジエン重合体を、環化触媒を用いて環化させて、分岐構造を有する共役ジエン重合体環化物を形成する工程と、
からなる分岐構造を有する環化ゴムの製造方法であって、
分岐構造を有する共役ジエン重合体環化物を形成した後、該共役ジエン重合体環化物に極性基含有化合物を反応させて、極性基を導入する工程を設けることを特徴とする環化ゴムの製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の環化ゴムは、共役ジエン重合体環化物またはその誘導体であって、分岐構造を有し、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることを特徴とする。
本発明において、分岐構造とは、直鎖状の重合体鎖に対して、少なくともひとつの重合体鎖が分岐状に結合している構造を意味する。この分岐状に結合している重合体鎖の数は、1以上、好ましくは2以上である。この最大値は、通常、4以下である。
【0009】
本発明の環化ゴムの重量平均分子量は1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは30,000〜300,000である。この分子量が低いと塗料の密着性に劣り、逆に高いと環化ゴムの製造時や使用時に取り扱い難くなる。この重量平均分子量は、GPCによって測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0010】
本発明の環化ゴムの環化率は、特に限定されないが、通常、10%以上、好ましくは40〜95%、より好ましくは60〜90%、特に好ましくは70〜85%である。環化率が低すぎると塗料の密着性に劣り、逆に、環化率が高い環化ゴムを製造することは困難になると共に、ゲル化が進行しやすく、環化ゴム溶液の塗布工程で不具合を生じる場合がある。
なお、環化率は、1H−NMR分析により、原料として用いた共役ジエン重合体の環化反応前後における二重結合由来のプロトンのピーク面積をそれぞれ測定し、環化反応前を100としたときの環化反応後の環化物に残存する二重結合の割合を求め、計算式=(100−環化物中に残存する二重結合の割合)により表される値(%)である。
【0011】
本発明の環化ゴムのガラス転移温度は、特に限定されず用途に応じて適宜選択できるが、通常、−50〜200℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜90℃、特に好ましくは30〜70℃である。
【0012】
また、環化ゴムの環化度(n)、すなわち環のつながりは、通常、n=1〜3の範囲である。環化ゴムのゲル量は、通常、10重量%以下、好ましくは5重量%以下であるが、実質的にゲルを有しないものであることが特に好ましい。ゲル量が多いと、溶液状態での塗布工程に問題が生じる可能性がある。
【0013】
本発明の環化ゴムの製造方法は、共役ジエン単量体、または共役ジエン単量体及び共役ジエン単量体と共重合可能な単量体を、有機活性金属触媒を用いて重合して、重合体鎖末端に活性金属を有する活性共役ジエン重合体を形成する工程(1)と、
前記の活性共役ジエン重合体に、3官能性以上のカップリング剤を反応させて、分岐構造を有するカップリング型共役ジエン重合体を形成する工程(2)と、前記カップリング型共役ジエン重合体を、環化触媒を用いて環化させて、分岐構造を有する共役ジエン重合体環化物を形成する工程(3)と、
からなる。
【0014】
[工程(1)]
共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどが挙げられる。なかでも、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、イソプレンがより好ましく使用できる。これらの単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
共役ジエン単量体の使用量は、特に限定されないが、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位含有量が、通常、40モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上になる量である。この含有量が少ないと、環化率を挙げることが困難になり、所期の物性改善効果が得にくい傾向にある。
【0016】
共役ジエン単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−フェニルスチレン、p−メトキシスチレン、p−メトキシメチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、クロロメチルスチレン、2−フルオロスチレン、3−フルオロスチレン、ペンタフルオロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン単量体;などが挙げられる。これらの中でも、芳香族ビニル単量体が好ましく、スチレンおよびα−メチルスチレンがより好ましく使用できる。
【0017】
有機活性金属触媒としては、前記の単量体をリビング的に重合できる触媒であれば特に限定されない。具体例としては、例えば、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。なかでも、有機アルカリ金属化合物が好ましく使用できる。
【0018】
有機アルカリ金属化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレンなどが挙げられる。これらの中でも、有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましく使用できる。
【0019】
有機アルカリ金属化合物は、前記の有機アルカリ金属化合物に2級アミンを反応させて得られる有機アルカリ金属アミド化合物として使用することもできる。
【0020】
2級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、メチルアミルアミン、アミルヘキシルアミン、ジエチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、エチルヘキシルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、メチルシクロペンチルアミン、エチルシクロペンチルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの脂肪族2級アミン;ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、ジベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N−エチルフェネチルアミンなどの芳香族2級アミン;アジリジン、アセチジン、ピロリジン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2−エチルピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ドデカメチレンイミン、コニイン、モルホリン、オキサジン、ピロリン、ピロール、アゼピンなどの環状イミンが挙げられる。これらの2級アミンは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
2級アミンの使用量は、有機アルカリ金属化合物中の金属に対して、通常、0.5〜2当量、好ましくは0.8〜1.5当量、より好ましくは1〜1.2当量である。
【0021】
有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、特開昭51−115590号公報、特開昭52−9090号公報、特開昭52−17591号公報、特開昭52−30543号公報、特開昭52−48910号公報、特開昭52−98077号公報、特開昭56−112916号公報、特開昭57−100146号公報等報に開示されているバリウム、ストロンチウム、カルシウム等の金属を有する化合物が例示される。具体例としては、例えば、n−ブチルマグネシウムブロミド、n−ヘキシルマグネシウムブロミド、エトキシカルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、エチルバリウムなどが挙げられる。
【0022】
上記の有機活性金属触媒は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。その使用量は、上記触媒の種類または要求される生成重合体の重量平均分子量によって適宜選択されるが、単量体100g当り、通常、0.01〜100ミリモル、好ましくは0.05〜20ミリモル、より好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲である。
【0023】
上記触媒を用いた重合は、通常、重合溶媒中で行われる。重合溶媒としては、重合を阻害しないものであれば特に限定されない。
重合溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−オクタンなどの脂肪族飽和炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式飽和炭化水素;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;等が挙げられる。これらの中でも、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどが好ましい。また、必要に応じて、1−ブテン、シス−2−ブテン、2−ヘキセンなどの重合性が極めて低い不飽和炭化水素を併用することもできる。これらの重合溶媒は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合溶媒の使用量は、特に限定されないが、重合に使用する単量体の濃度が、通常、1〜50重量%、好ましくは10〜40重量%の範囲となる量である。
【0024】
重合反応に際し、共役ジエン単量体単位の結合構造を調整するために、極性化合物を用いることができる。極性化合物としては、有機活性金属触媒を用いた通常のアニオン重合で使用されるものであれば、特に限定されない。
極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなどの3級アミン;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン誘導体;などが挙げられる。これらの中でも、3級アミンおよびエーテル化合物が好ましく、3級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましく使用できる。これらの極性化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
極性化合物を使用する場合、その使用量は、有機活性金属触媒1モルに対して、通常、200モル以下、好ましくは0.1〜100モル、より好ましくは0.5〜50モル、特に好ましくは0.8〜20モルである。
【0025】
重合反応は、通常、−78〜150℃の範囲で、回分式または連続式などの重合様式で行われる。
重合時間は、特に限定されないが、重合に用いた単量体がほぼ定量的に反応するまで重合反応を行なうことが好ましい。
【0026】
以上のようにして、重合体鎖末端に活性金属を有する活性共役ジエン重合体を形成する。
【0027】
[工程(2)]
工程(1)で得られた活性共役ジエン重合体に、3官能性以上のカップリング剤を反応させる。
【0028】
3官能性以上のカップリング剤は、活性共役ジエン重合体中の重合体鎖末端の活性金属と反応して該重合体分子と結合する部位を3つ以上有する化合物である。
【0029】
3官能性カップリング剤としては、例えば、トリクロロエタン、トリクロロプロパンなどの3官能性ハロゲン化アルカン;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなどの3官能性ハロゲン化シラン;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの3官能性アルコキシシラン;などが挙げられる。
【0030】
4官能性カップリング剤としては、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、テトラクロロエタンなどの4官能性ハロゲン化アルカン;テトラクロロシラン、テトラブロモシランなどの4官能性ハロゲン化シラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性アルコキシシラン;テトラクロロスズ、テトラブロモスズなどの4官能性ハロゲン化スズ;などが挙げられる。
【0031】
5官能性以上のカップリング剤としては、例えば、1,1,1,2,2−ペンタクロロエタン,パークロロエタン、ペンタクロロベンゼン、パークロロベンゼン、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエータルなどが挙げられる。
【0032】
n官能性カップリング剤(ここで、nは3以上の整数である。)を用いた場合、直鎖状の重合体鎖に対して、分岐状に結合している重合体鎖の数がn−2であるカップリング型共役ジエン重合体が生成しうる。
【0033】
3官能性以上のカップリング剤の使用量は、重合に用いた有機活性金属触媒中の活性金属の全量に対して、該カップリング剤中の官能性基量が、通常、0.1〜1当量、好ましくは0.15〜0.7当量、より好ましくは0.2〜0.5当量の範囲となる量である。この使用量が少なすぎても多すぎても、所期の物性改善効果が得られない場合がある。
【0034】
前記の活性共役ジエン重合体と3官能性以上のカップリング剤との反応(以下、「カップリング反応」ともいう。)の際の反応温度は、通常、室温〜120℃、好ましくは40〜100℃であり、反応時間は、通常、1分間〜数時間、好ましくは10分間〜2時間である。この範囲であれば、カップリング反応が十分進行し、かつ、副反応によるゲル化などの不具合も発生しにくい。
【0035】
その後、重合停止剤を添加して、重合反応を停止する。
重合停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類;フェノール、メチルフェノール、2,6−t−ブチル−ヒドロキシトルエンなどのフェノール類;水が挙げられる。なかでも、アルコール類が好ましく、メタノールがより好ましく使用できる。その使用量は、重合に使用した有機活性金属触媒中の金属に対して、通常、0.1〜10当量、好ましくは0.2〜5当量、より好ましくは0.5〜1.5当量の範囲である。
【0036】
以上のようにして、分岐構造を有するカップリング型共役ジエン重合体を形成する。このカップリング型共役ジエン重合体は、カップリング反応前後で生成している重合体を、それぞれ、GPC測定することにより確認することができる。例えば、4官能性カップリング剤を使用した場合、カップリング反応前に生成している重合体の重量平均分子量のほぼ4倍の重量平均分子量を有するカップリング型共役ジエン重合体が生成する。この場合、4官能性カップリング剤の反応残基に、4つの重合体鎖が結合していることから、得られたカップリング型共役ジエン重合体を4分岐重合体ということもある。なお、GPC測定においては、分岐構造を有する重合体は、これとほぼ同じ絶対分子量である直鎖状の重合体に比して、低分子量の重合体として測定される傾向にある。
【0037】
工程(2)で得られる全重合体中には、直鎖状の重合体を含んでいてもよい。3官能性以上のカップリング剤の使用量とカップリング反応の条件によっては、該カップリング剤と反応しない活性共役ジエン重合体が残存したり、該カップリング剤にひとつまたは2つの活性共役ジエン重合体が反応した重合体が生成したりする場合がある。しかしながら、工程(2)で得られる全重合体中に、カップリング型共役ジエン重合体を10重量%以上、好ましくは15〜90重量%、より好ましくは20〜50重量%含むようにすることが好ましい。
【0038】
得られたカップリング型共役ジエン重合体は、常法により、重合溶媒を除去して固形状物として取得してもよいし、重合体溶液のまま、次の工程に移ってもよい。
【0039】
[工程(3)]
工程(2)で得られたカップリング型共役ジエン重合体を、環化触媒を用いて環化させて、分岐構造を有する共役ジエン重合体環化物を形成する。
【0040】
環化触媒としては、従来公知のものが使用できる。
環化触媒としては、例えば、硫酸;モノフルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機スルホン酸およびこれらの無水物またはアルキルエステルなどの有機スルホン酸化合物;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、臭化アルミニウム、五塩化アンチモン、六塩化タングステン、塩化鉄などの金属ハロゲン化物;が挙げられる。これらの環化触媒は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの環化触媒の中でも、有機スルホン酸化合物が好ましく、p−トルエンスルホン酸がより好ましく使用できる。
【0041】
環化触媒の使用量は、環化触媒の種類や要求される環化率に応じて適宜選択されるが、工程(2)で得られた共役ジエン重合体100重量部に対して、通常、0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜2重量部である。
【0042】
環化反応は、前記の共役ジエン重合体と環化触媒とを接触させれば進行するが、通常、不活性溶媒中で行なわれる。不活性溶媒としては、環化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。
不活性溶媒としては、重合溶媒として前記したものが使用できる。なかでも、沸点が70℃以上のものが好ましく使用できる。
不活性溶媒の使用量は、特に限定されないが、工程(2)で得られた共役ジエン重合体の濃度が好ましくは5〜60重量%、より好ましくは20〜40重量%となる量である。
【0043】
環化反応における反応温度は、通常、50〜150℃、好ましくは80〜110℃であり、反応時間は、通常、0.5〜10時間、好ましくは2〜5時間である。
【0044】
以上のようにして、分岐構造を有する共役ジエン重合体環化物が得られる。
得られた環化ゴムは、通常、常法により、環化触媒を不活性化した後、環化触媒残渣を除去し、不活性溶媒を除去して、固形物として取得する。
【0045】
本発明においては、前記の分岐構造を有する共役ジエン重合体環化物を、必要に応じて極性基含有化合物による変性反応に供することができる。
【0046】
変性反応に使用する極性基含有化合物は、共役ジエン重合体環化物に極性基を導入することができる化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、チオール基、エステル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、ハロゲンなどの極性基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
極性基としては、接着性の改良効果に優れる点で、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エポキシ基、アミノ基が好ましく、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基がより好ましい。
【0047】
酸無水物基またはカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などのエチレン性不飽和化合物が挙げられ、なかでも、無水マレイン酸が反応性、経済性の点で賞用される。
【0048】
水酸基を含有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル類;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどのヒドロキシル基を有する不飽和酸アミド類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)クリレートなどの不飽和酸のポリアルキレングリコールモノエステル類;グリセロールモノ(メタ)アクリレートなどの不飽和酸の多価アルコールモノエステル類;などが挙げられ、これらの中でも、不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル類が好ましく、特にアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。
【0049】
その他の極性基を含有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0050】
極性基含有化合物を共役ジエン系重合体環化物に導入する方法は特に限定されないが、エチレン性不飽和化合物を付加する場合には、一般にエン付加反応またはグラフト重合反応と呼ばれる公知の反応に従えばよい。
この付加反応は、共役ジエン系重合体環化物と極性基含有化合物とを、必要に応じてラジカル発生剤の存在下に反応させることによって行われる。ラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド,tert−ブチルパーオキシドベンゾエート,メチルエチルケトンパーオキシドのようなパーオキシド類;アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾニトリル類;などが挙げられる。
【0051】
付加反応は、固相状態で行なっても、溶液状態で行なってもよいが、反応制御がし易い点で、溶液状態で行なうことが好ましい。使用される溶媒としては、例えば、工程(1)における重合溶媒と同様のものが挙げられる。
【0052】
極性基含有化合物の使用量は、適宜選択されるが、導入された極性基の比率が、変性後の環化ゴム100gあたり、通常、0.1〜200ミリモル、好ましくは1〜100ミリモル、より好ましくは5〜50ミリモルとなるような範囲である。
【0053】
極性基を導入する反応は、加圧、減圧または大気圧いずれの圧力下でも行うことができるが、操作の簡便性の点から大気圧下で行うことが望ましく、なかでも乾燥気流下、とくに乾燥窒素や乾燥アルゴンの雰囲気下で行うと水分由来の副反応が抑えることができる。
また反応温度や反応時間は常法に従えばよく、反応温度は、通常、30〜250℃、好ましくは60〜200℃であり、反応時間は、通常、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間である。
【0054】
本発明の環化ゴムは、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤;老化防止剤、充填剤、軟化剤、ワックスなどの配合剤を添加して用いられる。配合剤は一般に使用されているものであればよい。
【0055】
老化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,2´−メチレンビス(4−メチル−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのフェノール系老化防止剤;フェニル−α−ナフチルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N´−フェニル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどのリン系老化防止剤などが挙げられる。
【0056】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、シリカ、カーボンブラック、タルク、クレー、二酸化チタン、酸化亜鉛、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0057】
配合剤の使用量は、配合の目的、配合剤の種類によって適宜選択することができる。
【0058】
環化ゴムの形状は、用途に応じて適宜選択できるが、通常はペレットまたは粉末状である。粉末状とするには、固形状の環化ゴムを、冷却下にバンタムミル、ジェットミル、ディスクミル、ボールミル、コロイドミルなどの粉砕機を用いて粉砕すればよい。
【0059】
粉末粒子の平均粒子径は、通常、1μm〜200μm、好ましくは3μm〜100μm、さらに好ましくは5μm〜50μmである。この平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって測定される、粒子径に対する個数基準積分曲線における、50%個数基準積算値に対応する粒子径である。
【0060】
上記粉末粒子中の環化ゴムの含有量は、通常、5重量%以上、好ましくは10重量%、より好ましくは20重量%以上、特に好ましくは30重量%以上である。
【0061】
粉末粒子の形状としては、特に限定されず、例えば、球状や不定形状が挙げられる。
【0062】
本発明の環化ゴムからなる粉末粒子は、例えば、樹脂や金属に対する優れた密着性を生かして、粉体塗料として用いることができる。粉体塗料とする場合には、着色剤を配合し、必要に応じて老化防止剤、充填剤、軟化剤、ワックスなどが常法に従って適宜配合される。
【0063】
顔料を着色剤として用いる場合、イエロー着色にはベンジジン系、アゾ系、イソインドリン系顔料が、マゼンタ着色にはアゾレ−キ系、ロ−ダミンレーキ系、キナクリドン系、ナフトール系、ジケトピロロピロール系顔料が、シアン着色にはフタロシアニン系顔料、インダンスレン系顔料が好ましく用いられる。黒色着色には、カ−ボンブラックが通常使用される。カ−ボンブラックとしては、サ−マルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファ−ネスブラック、ランプブラック等が挙げられる。
【0064】
染料を着色剤として用いる場合、イエロ−着色にはアゾ系、ニトロ系、キノリン系、キノフタロン系、メチン系染料が、マゼンタ着色にはアントラキノン系、アゾ系、キサンテン系染料が、シアン着色にはアントラキノン系、フタロシアニン系、インドアニリン系染料が好ましく用いられる。
【0065】
着色剤の使用量は、求める色合い、濃さなどによって適宜選択すればよく、環化ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
【0066】
粉体塗料は、通常、環化ゴムと着色剤及び必要に応じて含有される添加剤とを混合し、それを粉砕し、分級することによって得ることができる。
【0067】
混合方法は、特に限定されず、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール、一軸または二軸押出機等の混練機を用いて溶融混合する方法がある。
【0068】
粉砕方法としては、前述の方法に従えばよい。
分級の方法としては、例えば、風力分級、遠心分級、篩分級などの方法が挙げられる。
【0069】
また、本発明の環化ゴムは、ポリマー成形材料用改質剤として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーなどからなる各種ポリマー成形材料に配合することにより、ポリマー成形体と塗料との接着性を改善するのに好適である。さらに、ポリマー成形材料を構成する異種ポリマー同士の分散性やポリマー成形材料における充填剤、顔料などのごとき配合剤のポリマーへの分散性を改善するためのポリマー成形材料用改質剤としても有用である。
【0070】
改質の対象となるポリマー成形材料に用いるポリマーとしては、以下のようなものが挙げられる。
1.炭化水素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポイアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルブチラート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、フッ素系樹脂などのような熱可塑性樹脂。
2.フェノール樹脂、クレゾール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などのような熱硬化性樹脂。
【0071】
3.天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの加硫ゴム;オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのエラストマー。
【0072】
これらのなかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリペンテン−1などの鎖状オレフィン系樹脂;エチレンとノルボルネン類との付加共重合体、ノルボルネン類の開環重合体水素化物など環状オレフィン系樹脂;などの炭化水素系熱可塑性樹脂に配合すると、環化ゴムによる改質効果が大きい。
【0073】
上記のポリマーは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用することもでき、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤;老化防止剤、充填剤、軟化剤、ワックス、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤などの配合剤を適宜配合することもできる。
【0074】
改質剤としての配合量は、ポリマー成形材料の種類や要求される性能に応じて適宜選択されるが、ポリマー成形材料中のポリマー100重量部当たり、通常、0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部、特に好ましくは2〜5重量部である。
【0075】
さらに、本発明の環化ゴムは、前述のポリマー成形材料用のプライマーや塗料などのコーティング剤における、プライマー用ビヒクル成分や塗料用バインダー成分などの接着性成分として用いることにより、該ポリマー成形材料と塗料との接着性を著しく改善できる。この場合、プライマーや塗料などのコーティング剤中の全固形分に対して、環化ゴムを2重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上含有することが好ましい。
【0076】
コーティング剤として使用する場合には、環化ゴムに、必要に応じて、他の接着成分および各種の添加剤を配合して用いられる。
【0077】
他の接着成分としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、塩素化オレフィン系樹脂、シリコーン系ゴムなどが挙げられる。
他の接着成分を配合する場合の比率は、その種類や配合目的に応じて適宜選択されるが、環化ゴムと他の接着成分との重量比率で、通常、100:0〜5:95、好ましくは80:20〜30:70、より好ましくは70:30〜50:50である。
【0078】
また、添加剤としては、改質剤の項で前述したような、ポリマーに配合する場合と同様なものが例示される。
【0079】
環化ゴムを含有してなるコーティング剤は、通常、環化ゴムまたは環化ゴムとその他の成分との混合物を、溶媒に溶解または分散させることによって得られる。使用される溶媒は適宜選択すればよく、例えば脂肪族系溶媒、脂環族系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、水系溶媒などが挙げられる。溶媒の使用量は、コーティング剤の固形分濃度が、通常、5〜95重量%、好ましくは15〜60重量%となるような範囲である。
【0080】
本発明の環化ゴムを含有してなるコーティング剤を、各種の充填剤や顔料などの分散材料の表面処理剤として使用することもできる。分散材料を該コーティング剤で表面処理すると、各種のポリマーに対する分散材料の分散性が改良される。
表面処理の対象となる充填剤や顔料としては、前述のものが使用できる。環化ゴムの使用量は、分散材料の種類やそれを分散させるポリマーの種類に応じて適宜選択されるが、分散材料100重量部当たり、通常、0.1〜100重量部、好ましくは5〜20重量部の割合で用いられる。
【0081】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の記載における「部」及び「%」は、特に断りのない限り重量基準である。
【0082】
(1)重合体のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)分析重合体のGPC分析は以下の条件で行なった。なお、分子量は全て、標準ポリスチレン換算値である。
測定器 :HLC−8220(東ソー社製)
カラム :東ソー社製のG5000HXL、G4000HXLおよびG2000HXLを直列に連結したものを用いた。
検出器 :示差屈折計
溶離液 :テトラヒドロフラン(1ml/分)
カラム温度:40℃
カップリング反応前およびカップリング反応後の重合体のGPC分析を行い、カップリング反応前に生成している重合体の重量平均分子量のほぼn倍(nは、3以上の整数である。)のn分岐重合体の存在と、その重量平均分子量(Mw)および含有量を求めた。
環化ゴムのGPC分析を行い、全重合体の重量平均分子量(Mw)と、分岐構造を有する重合体の重量平均分子量(Mw)およびその含有量と、直鎖状の重合体の重量平均分子量(Mw)およびその含有量と、を求めた。
【0083】
(2)重合体のガラス転移温度
重合体のガラス転移温度を、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製:SSC5200)を用いて、開始温度−100℃、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0084】
(3)共役ジエン重合体環化物の環化率
プロトンNMR分析により、共役ジエン重合体の環化反応前後における二重結合由来プロトンのピーク面積をそれぞれ測定し、環化反応前を100としたときの環化物中に残存する二重結合の割合を求めた。そして、計算式=(100−環化物中に残存する二重結合の割合)により環化率(%)を求めた。
【0085】
(4)変性重合体中の極性基(カルボキシル基)量の測定
変性重合体の酸価を、“基準油脂分析試験法”(日本油化学協会)2,4,1−83に記載される方法に準じて測定し、重合体中のカルボキシル基量に換算した。
【0086】
(5)剥離強度
塗料が塗布された成形体表面に、カッター刃を用いて、1cmの幅で基材に刃が到達するまで切れ目を入れ、端部の塗膜を剥離させた。その剥離した塗膜の端部を50mm/minの速度で180゜の方向に引っ張り、剥離強度(単位:kgf/cm)を測定した。
【0087】
(実施例1)
攪拌機付き耐圧反応器に、トルエン6100g、n−ブチルリチウム(1.56モル/リットル濃度のヘキサン溶液)45.2ミリモルを仕込み、内温を60℃に昇温した。その後、内温が75℃を超えないように制御しながら、イソプレン2600gを、60分間に亘り、連続的に反応器に添加した。イソプレンの添加終了後、さらに、70℃にて1時間反応させて、重合転化率が100%になったことを確認した。この時点で生成している重合体の重量平均分子量は、92,000であった。
次いで、テトラメトキシシラン3.5ミリモルを添加して、70℃で120分間反応させた。その後、重合停止剤としてメタノールを32.5ミリモル添加して、重合反応を停止して、共役ジエン重合体aを得た。
得られた共役ジエン重合体aの一部をサンプリングし、GPC分析した。共役ジエン重合体aは、3分岐重合体および4分岐重合体を25%含有しており、両者全体の重量平均分子量は305,000であった。さらに、共役ジエン重合体aは、重量平均分子量が92,000である直鎖状の重合体を75%含有するものであった。
【0088】
重合反応を停止した後、80℃に昇温し、p-トルエンスルホン酸31.2gを添加し、内温を80℃に維持しながら、3時間環化反応を行った。その後、炭酸ナトリウム11.9gを含む炭酸ナトリウム25%水溶液を添加して反応を停止し、80℃で30分間攪拌後、孔径1μmのガラス繊維フィルターを用いて、反応溶液をろ過して触媒残渣を除去した。
【0089】
ろ過後の反応溶液から、160℃でトルエンを留去し、固形分濃度が80〜85重量%になった時点で、無水マレイン酸65g添加し、160℃で1時間反応させた。その後、未反応の無水マレイン酸とトルエンを留去し、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.6gを添加した後、四フッ化エチレン樹脂で被覆した金属製バットに流し込んだ。これを、75℃で減圧乾燥して変性環化ゴムAを得た。
変性環化ゴムAの分析を行い、その結果を表1に示す。
【0090】
(実施例2)
攪拌機付き耐圧反応器に、トルエン6100g、n−ブチルリチウム(1.56モル/リットル濃度のヘキサン溶液)56.3ミリモルを仕込み、内温を60℃に昇温した。その後、内温が75℃を超えないように制御しながら、イソプレン2600gを、60分間に亘り、反応器に連続的に添加した。イソプレンの添加終了後、70℃にて1時間反応させて、重合転化率が100%になったことを確認した。この時点で生成している重合体の重量平均分子量は、73,000であった。
次いで、テトラクロロシラン4.1ミリモルを添加して、120分間反応させた。反応後、停止剤としてメタノールを38.2ミリモル添加して、共役ジエン重合体bを得た。
得られた重合体bの一部をサンプリングし、GPC分析を行なった。共役ジエン重合体bは、重量平均分子量が241,000である4分岐重合体30%および重量平均分子量が73,000である直鎖状の重合体を70%からなるものであった。
【0091】
重合反応を停止した後、80℃に昇温し、p-トルエンスルホン酸31.2gを添加し、内温を80℃に維持しながら、3時間環化反応を行った。その後、炭酸ナトリウム11.9gを含む炭酸ナトリウム25%水溶液を添加して反応を停止し、80℃で30分間攪拌後、孔径1μmのガラス繊維フィルターを用いて、反応溶液をろ過して触媒残渣を除去した。
【0092】
ろ過後の反応溶液から、160℃でトルエンを留去し、固形分濃度が80〜85重量%になった時点で、無水マレイン酸65g添加し、160℃で1時間反応させた。その後、未反応の無水マレイン酸とトルエンを留去し、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.6gを添加した後、四フッ化エチレン樹脂で被覆した金属製バットに流し込んだ。これを、75℃で減圧乾燥して変性環化ゴムBを得た。変性環化ゴムBの分析を行い、その結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
(実施例3)
変性環化ゴムA20部、酸化チタン15部およびキシレン80部を高速攪拌機(ディスパー)で10分間混合した後、流動性を流下時間で13〜14秒になるようにシンナーで希釈してプライマーを調製した。なお、上記の流動性は、JIS K 5400に規定されたフォードカップNo.4法に準じて、20℃における流下時間を意味する。
【0095】
表2に示す樹脂材料を射出成形して3種類の成形板X〜Z(50mm×80mm×3mm)を作成した。なお、Yは、各配合成分をヘンシェルミキサーで混合した後、二軸押出機によって溶融混練してペレット化したものを使用した。
【0096】
【表2】
【0097】
成形板X〜Zを水でよく洗浄して乾燥した後、口径1.0mm、スプレー圧3.5〜5.0MPaのスプレーガンを用いて、成形板上に膜厚が10μmになるように、前記のプライマーをスプレー塗装した。5分間乾燥した後、二液硬化型ウレタン系メタリック塗料(日本ビーケミカル社製、商品名RB−212(ベース塗料)および商品名RB−288(クリアー塗料))を、塗膜全体の膜厚が80μmになるように上記と同じスプレーガンを用いて2コート塗装した。15分間、23℃で乾燥した後、80℃で30分間、非循環式乾燥器にて乾燥し、3日間室温で静置して、塗装試験片を得た。この塗膜の剥離強度を測定し、その結果を表3に示す。
【0098】
(実施例4)
変性環化ゴムAの代わりに、変性環化ゴムBを用いる以外は、実施例3と同様に、プライマーを調製し、塗装試験片を得た。この塗膜の剥離強度を測定し、その結果を表3に示す。
【0099】
(比較例1)
プライマーを塗布しないことを除き、実施例3と同様に、塗装試験片を得た。この塗膜の剥離強度を測定し、その結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
表3から以下のようなことがわかる。
本発明の環化ゴムをプライマーの接着性成分として用いると、プライマー表面に塗装された塗膜の密着性が著しく改善されている。
【0102】
(実施例5)
ポリプロピレン樹脂(J3050HP:出光石油化学社製)95部、変性環化ゴムA5部およびイルガノックス1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.1部を、ヘンシェルミキサーで混合後、二軸押出機を用いて、溶融温度200℃で混練して、樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを射出成形して、成形板(厚さ3mm×幅50mm×長さ80mm)を得た。
この成形板上に、口径1.0mm、スプレー圧3.5〜5.0MPaのスプレーガンを用いて、二液硬化型ウレタン系メタリック塗料(日本ビーケミカル社製、商品名RB−212(ベース塗料)および商品名RB−288(クリアー塗料))を、塗膜全体の膜厚が80μmになるように2コート塗装した。15分間、23℃で乾燥した後、80℃で30分間、非循環式乾燥器にて乾燥し、3日間室温で静置して、塗装試験片を得た。この塗膜の剥離強度を測定し、その結果を表4に示す。
【0103】
(実施例6)
変性環化ゴムAの代わりに、変性環化ゴムBを用いる以外は、実施例5と同様に、成形板を作製し、それを用いて、塗装試験片を作製した。この塗膜の剥離強度を測定し、その結果を表4に示す。
【0104】
(比較例2)
変性環化ゴムを使用せず、ポリプロピレン樹脂(J3050HP:出光石油化学社製)100部およびイルガノックス1010(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)0.1部からなる樹脂組成物を用いる以外は、実施例5と同様に、成形板を作製し、それを用いて、塗装試験片を作製した。この塗膜の剥離強度を測定し、その結果を表4に示す。
【0105】
【表4】
【0106】
表4から以下のようなことがわかる。
本発明の環化ゴムを配合したポリプロピレン樹脂からなる成形体は、塗膜との密着性が著しく改善されている。
【0107】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの非極性の重合体からなる成形体と塗料との密着性を著しく向上できる、分岐構造を有する環化ゴムおよびその製造方法が提供される。
Claims (1)
- 共役ジエン単量体、または共役ジエン単量体及び共役ジエン単量体と共重合可能な単量体を、有機活性金属触媒を用いて重合して、重合体鎖末端に活性金属を有する活性共役ジエン重合体を形成する工程と、
前記の活性共役ジエン重合体に、3官能性以上のカップリング剤を反応させて、分岐構造を有するカップリング型共役ジエン重合体を形成する工程と、
前記カップリング型共役ジエン重合体を、環化触媒を用いて環化させて、分岐構造を有する共役ジエン重合体環化物を形成する工程と、
からなる分岐構造を有する環化ゴムの製造方法であって、
分岐構造を有する共役ジエン重合体環化物を形成した後、該共役ジエン重合体環化物に極性基含有化合物を反応させて、極性基を導入する工程を設けることを特徴とする環化ゴムの製造方法。
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