JPWO2003038087A1 - DR5遺伝子のプロモーターおよびSiah−1遺伝子のプロモーター - Google Patents

DR5遺伝子のプロモーターおよびSiah−1遺伝子のプロモーター Download PDF

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Abstract

本発明者は、ヒトDR5遺伝子のプロモーター塩基配列及びヒトSiah−1遺伝子のプロモーター塩基配列並びにそのコアプロモーターと考えられる領域を初めて見出した。本発明は、さらに、これらのDNAとこのDNAに発現可能に連結されたレポーター遺伝子とを含むベクターを保持する細胞に被験物質を接触させる工程と、被験物質の接触によるレポーター遺伝子の発現量の変化を検出する工程とを含む、プロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法を提供する。このスクリーニング方法は、抗ガン剤などを極めて効率よく選択できる方法である。

Description

技術分野
本発明は、がん細胞にアポトーシスを誘導する遺伝子(癌抑制関連遺伝子)であるDR5遺伝子およびSiah−1遺伝子の各プロモーター、これらのプロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法、及び、このスクリーニング方法により得られるプロモーター活性を調節する物質に関する。
背景技術
p53遺伝子は、ヒトがんにおいて高頻度に変異が報告されている代表的ながん抑制遺伝子である。p53蛋白は、転写因子として標的遺伝子を転写レベルで活性化することによりがんの発症および進行を抑制できることが知られている。詳述すれば、p53タンパク質は、正常細胞の遺伝子に突然変異が生じてがん化に進み出すときに、G1後期で細胞周期を停止させて、その間にDNA修復を行い、さらに修復できない場合にはアポトーシスにより初期のがん細胞を死滅させると考えられている(交通医学53(5/6),178−180,1999)。
ここで、p53タンパク質により転写誘導され、p53依存性のアポトーシスに関わる蛋白の一つとしてDR5(デスレセプター;Death receptor5)が知られている。DR5は、腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)が結合することによりアポトーシスを引き起こす。TRAILのレセプターとしては、この他にDR4、DcR1およびDcR2が知られている。DcR1およびDcR2は、TRAIL結合領域は有するが活性を持つ細胞内デス領域を有さないためにアポトーシスを誘導しない。一方、DR4およびDR5は、TRAIL結合領域と細胞内デス領域とを含み、細胞内デス領域を介してアポトーシスを誘導する(Science 277,815−818(1997))。
TRAILは、in vitro及びin vivoで、正常細胞に比してがん細胞に選択毒性を示す(J.Biol.Chem.271,12687−12690)。これは、正常細胞においてはがん細胞に比して、TRAILレセプター遺伝子のうちDcRが優性に発現していることによると考えられる。
また、p53により転写誘導される他のタンパク質として、Siah−1(seven in absentia homologue−1)が知られている(EMBO J.17,2736−2747(1998).)。Siah−1は、p53タンパク質により活性化されてアポトーシスおよび細胞周期停止を引き起こす。
詳述すれば、Siah−1によるアポトーシスおよび細胞周期停止には、蛋白分解酵素複合体であるプロテアソームが関与している。プロテアソームはユビキチン化された標的蛋白を、そのユビキチンを認識して標的蛋白を分解する酵素である。Siah−1は、その一部で標的タンパク質にユビキチンを結合させる酵素と結合することによりユビキチン結合酵素を活性化し、その結果プロテアソームによる標的タンパク質の分解を促進する。プロテアソームの標的タンパク質の1つにβ−カテニンタンパク質があるが、β−カテニンタンパク質が分解されることにより、CyclinD1、Myc等の遺伝子の発現が抑制され、アポトーシス、細胞周期停止が起こる。(Genes Dev.11,2701−2714(1997)、Genes Dev.12,1775−1780(1998)、Mol.Cell 7,915−926(2001))
以上のように、DR5遺伝子及びSiah−1遺伝子は、転写レベルで活性化されることにより、アポトーシスや細胞周期停止を誘導し、その結果、がん抑制に重要な役割を果たしていることから、これらの遺伝子の転写を活性化できる物質を見出すことができれば、がん治療に非常に有用である。
発明の開示
本発明は、ヒトDR5遺伝子及びSiah−1遺伝子の各プロモーター、これらのプロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法、並びに、これらのスクリーニング方法により得られるプロモーター活性を調節する物質を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために本発明者は研究を重ね、DR5遺伝子の部分断片及びSiah−1遺伝子の部分断片を調製し、これらをプローブとしてヒト白血球ゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、ヒトDR5遺伝子のプロモーター領域及びヒトSiah−1遺伝子のプロモーター領域を単離することに成功した。また、これらのプロモーター領域の一連の欠失変異体を作製することにより、プロモーター活性に主に寄与する領域を見出した。
さらに、本発明者は、これらのプロモーター領域を挿入したレポータープラスミドを用いることにより、DR5遺伝子またはSiah−1遺伝子の発現を調節できる物質を迅速かつ確実にスクリーニングできることを見出した。
本発明は、前記知見に基づき完成されたものであり、以下のDR5遺伝子及びSiah−1遺伝子の各プロモーター領域、これらのプロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法、並びに、このスクリーニング方法により得られるプロモーター活性を調節する物質を提供する。
項1. 以下の(a)若しくは(b)のDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
(a)配列表の配列番号1における塩基番号1029〜1034の塩基配列若しくは塩基番号1075〜1080の塩基配列を含むDNA、又は、
(b)配列表の配列番号1における塩基番号1029〜1034の塩基配列若しくは塩基番号1075〜1080の塩基配列と、これに隣接した上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接した下流側の最大6塩基の塩基配列とを含むDNA
項2. 以下の(c)若しくは(d)のDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
(c)配列表の配列番号1における以下のいずれかの塩基配列を含むDNA、又は、
(d)配列表の配列番号1における以下のいずれかの塩基配列と、これに隣接した上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接した下流側の最大6塩基の塩基配列とを含むDNA:
塩基番号102〜108、133〜143、149〜162、174〜183、196〜210、208〜221、211〜220、212〜226、222〜231、263〜269、265〜278、296〜302、377〜383、370〜376、409〜420、430〜440、431〜436、457〜470、458〜470、482〜492、498〜507、499〜503、500〜505、528〜534、536〜541、537〜542、542〜547、549〜561、555〜567、553〜560、559〜566、575〜587、593〜598、598〜610、601〜610、614〜619、618〜623、642〜648、650〜656、657〜662、683〜697、700〜707、742〜747、774〜779、785〜798、788〜792、792〜799、795〜801、809〜813、814〜825、815〜825、861〜867、867〜872、867〜873、901〜913、901〜904、902〜911、915〜923、919〜924、924〜939、921〜928、926〜933、930〜936、948〜957、971〜977、972〜978、989〜994、1026〜1035、1029〜1034、1048〜1057、1075〜1080、1097〜1103、1106〜1113、1125〜1133、1169〜1175、1200〜1209、1153〜1162、1160〜1169、1160〜1168、1206〜1305、1209〜1220、1230〜1238、1297〜1304、1324〜1331、1366〜1377、1373〜1380、1373〜1382、1391〜1398、1421〜1430、1430〜1342、1334〜1341、1521〜1530、1583〜1589、1591〜1600、1590〜1596、1591〜1600、1593〜1604、1607〜1614、1608〜1615、1626〜1636、1626〜1638、1628〜1637、1629〜1638、1629〜1641、1630〜1641の塩基配列
項3. 配列表の配列番号1における塩基番号619〜776の塩基配列、塩基番号777〜1025の塩基配列および塩基番号1026〜1108の塩基配列のうち少なくとも1の塩基配列を含むDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
項4. 配列表の配列番号1における塩基番号1〜1108の塩基配列を含むDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
項5. 配列表の配列番号1の塩基配列を含むDNA、又は、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
項6. 以下の(e)若しくは(f)のDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
(e)配列表の配列番号2における塩基番号2219〜2224の塩基配列(CCCGCC)を含むDNA、又は、
(f)配列表の配列番号2における塩基番号2219〜2224の塩基配列と、これに隣接した上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接した下流側の最大6塩基の塩基配列とを含むDNA
項7. 以下の(g)若しくは(h)のDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
(g)配列表の配列番号2における以下のいずれかの塩基配列を含むDNA、又は、
(h)配列表の配列番号2における以下のいずれかの塩基配列と、これに隣接した上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接した下流側の最大6塩基の塩基配列とを含むDNA:
塩基番号95〜104、158〜170、272〜278、320〜326、362〜368、438〜444、568〜575、753〜762、1383〜1391、1438〜1447、1509〜1515、1613〜1619、1649〜1660、1715〜1724、1728〜1737、1789〜1797、1826〜1832、1889〜1895、2058〜2069、2074〜2078、2103〜2107、2209〜2216、2219〜2224、2302〜2307、2317〜2324の塩基配列
項8. 配列表の配列番号2における塩基番号2035〜2382の塩基配列を含むDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
項9. 配列表の配列番号2の塩基配列を含むDNA、又は、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともに、プロモーターとして機能するDNA。
項10. 項1〜9のいずれかに記載のDNAとこのDNAに発現可能に連結されたレポーター遺伝子とを含むベクターを保持する細胞に被験物質を接触させる工程と、被験物質の接触によるレポーター遺伝子の発現量の変化を検出する工程とを含むプロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法。
項11. 項1〜9のいずれかに記載のDNAとこのDNAに発現可能に連結されたレポーター遺伝子とを含むベクターを保持する細胞に被験物質を導入する工程と、被験物質の導入によるレポーター遺伝子の発現量の変化を検出する工程とを含むプロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法。
項12. 項1〜9のいずれかに記載のDNAに被験物質を接触させる工程と、このDNAと結合した物質を検出する工程とを含むプロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法。
項13. 項1〜9のいずれかに記載のDNAに、被験物質の存在下および非存在下で、DNA結合蛋白質を接触させる工程と、被験物質の存在による前記DNAへのDNA結合蛋白質の結合量の変化を検出する工程とを含むプロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法。
項14. 項10〜13のいずれかに記載のスクリーニング方法により得られるプロモーター活性を調節する物質。
項15. 項1〜9のいずれかに記載のDNAとこのDNAに発現可能に連結されたレポーター遺伝子とを含むベクター。
項16. 項15のベクターを保持する細胞。
発明の詳細な記述
ヒトDR5遺伝子のプロモーター
<プロモーター領域の単離>
本発明者は、ヒトDR5遺伝子のプロモーターDNAを得るために、ヒトDR5塩基配列(Science 277,815−818(1997))に基づき、二つのオリゴヌクレオチド5’CCGCAATCTCTGCGCCCACAAAATACACCG3’(配列番号3)および5’GTTTCAGCCCTTAAAGTAGATCGGGCATCG3’(配列番号4)を合成し、これらのオリゴヌクレオチドをT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて[γ−32P]で標識した。さらに、標識オリゴヌクレオチドをプローブとして用いてヒト白血球ゲノムλPSライブラリー(Mol.Bio.Tec.,Gottinngen,Germany)をスクリーニングし、DR5プロモーターDNAと考えられる約10kbのDNA断片を得た。さらに、このDNA断片から約2.5kbpのSacI−NcoI断片をpGVB2(Nippon Gene Code No.306−04831)にサブクローニングし、その塩基配列を、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(ABI PRISM,PE APPLIED Biosystems)を用いてABI PRISM 310 Genetic Analyzerで決定した。
このSacI−NcoI断片のうちNcoIサイトを含む3’末端側の一部分の塩基配列を配列表の配列番号1に示す。この断片には、ヒトDR5遺伝子のエクソン1のコーディング領域(配列番号1において塩基番号1225〜1368)およびイントロン1の一部(配列番号1において塩基番号1369〜1654)が含まれており、これらの配列は、報告されているヒトDR5遺伝子の塩基配列(Science 277,815−818(1997))と一致していた。
さらに、単離したDNAがDR5プロモーターとしての活性を示すことを確認するために、得られたDNAの約2.5kbのNcoI−SacI断片をルシフェラーゼレポータープラスミドpGVB2(Nippon Gene Code No.306−04831)にサブクローニングし、DR5遺伝子が恒常的に発現しているMCF−7細胞(国立医薬品食品衛生研究所、細胞バンク、JCRB0134)に遺伝子導入し、所定時間培養後のMCF−7細胞溶解物のルシフェラーゼ活性を測定した。この結果、前記プラスミドが導入されたMCF−7細胞の溶解物はルシフェラーゼ活性を示し、前記NcoI−SacI断片は、プロモーター活性を有することが確認された。
すなわち、本発明のDR5遺伝子のプロモーターとして最も好ましいのは、配列表の配列番号1の塩基配列を含むDNA、又は、該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともに、プロモーターとして機能するDNAである。
配列表の配列番号1の塩基配列からなるDNA、又は、該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともに、プロモーターとして機能するDNAが特に好ましい。
なお、配列番号1の塩基配列を含むDNAにおいて、1または2以上の塩基が置換、欠失、もしくは付加したDNAは、例えば、制限酵素あるいはDNAエキソヌクレアーゼによる欠失導入、部位特異的変異誘発法による変異導入、変異プライマーを用いたPCR法によるプロモーター配列の改変、合成変異DNAの直接導入などの公知の方法により作製できる。
本発明のプロモーターは、ヒトDR5遺伝子の塩基配列に基づき公知の方法で作製することができる。例えば、前述したように、ヒトDR5遺伝子の塩基配列に基づき合成したオリゴヌクレオチドをプローブとして用いて、ヒトゲノムライブラリーをハイブリダイゼーションによりスクリーニングする方法の他、ヒトゲノムライブラリーをPCRの鋳型として用いて、ベクターDNAに対応するセンスプライマーとDR5DNAの一部に対応するアンチセンスプライマーのオリゴヌクレオチドを合成し、これらを組み合わせてPCRを行うことによっても得ることができる。
<プロモーター活性に主に寄与する領域>
本発明のヒトDR5遺伝子のプロモーターは、少なくとも以下の▲1▼又は▲2▼の塩基配列を含むか、又は、この塩基配列のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーター活性を有する塩基配列を含むものであってもよい。特に、少なくとも以下の▲1▼又は▲2▼の塩基配列からなるか、又は、この塩基配列のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーター活性を有する塩基配列が好ましい。
▲1▼ 配列表の配列番号1において、塩基番号619〜776の塩基配列、塩基番号777〜1025の塩基配列、又は、塩基番号1026〜1108の塩基配列
これらの領域は、以下のようにして、プロモーター活性に寄与する領域であると結論付けられた。すなわち、DR5遺伝子のプロモーター領域であるSacI−NcoI断片が連結されたルシフェラーゼレポータープラスミドpGVB2について、市販のキットを用いて、プロモーター領域の一連の5’末端変異体を作製した。これらの変異体をMCF−7細胞に一時的に遺伝子導入し、所定時間培養後のMCF−7細胞溶解物のルシフェラーゼ活性を測定した。この結果、配列番号1における塩基番号619〜776の領域、塩基番号777〜1025の領域および塩基番号1026〜1108の領域の欠失によりルシフェラーゼ活性が有意に減少した。このことから、これらの領域に、プロモーター活性に必須な転写因子結合部位またはエンハンサー部位が存在すると考えられる。
▲2▼配列表の配列番号1における以下のいずれかの塩基配列、又は、配列表の配列番号1における以下のいずれかの塩基配列と、これに隣接する上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接する下流側の最大6塩基の塩基配列とからなる塩基配列:
塩基番号102〜108、133〜143、149〜162、174〜183、196〜210、208〜221、211〜220、212〜226、222〜231、263〜269、265〜278、296〜302、377〜383、370〜376、409〜420、430〜440、431〜436、457〜470、458〜470、482〜492、498〜507、499〜503、500〜505、528〜534、536〜541、537〜542、542〜547、549〜561、555〜567、553〜560、559〜566、575〜587、593〜598、598〜610、601〜610、614〜619、618〜623、642〜648、650〜656、657〜662、683〜697、700〜707、742〜747、774〜779、785〜798、788〜792、792〜799、795〜801、809〜813、814〜825、815〜825、861〜867、867〜872、867〜873、901〜913、901〜904、902〜911、915〜923、919〜924、924〜939、921〜928、926〜933、930〜936、948〜957、971〜977、972〜978、989〜994、1026〜1035、1029〜1034、1048〜1057、1075〜1080、1097〜1103、1106〜1113、1125〜1133、1169〜1175、1200〜1209、1153〜1162、1160〜1169、1160〜1168、1206〜1305、1209〜1220、1230〜1238、1297〜1304、1324〜1331、1366〜1377、1373〜1380、1373〜1382、1391〜1398、1421〜1430、1430〜1342、1334〜1341、1521〜1530、1583〜1589、1591〜1600、1590〜1596、1591〜1600、1593〜1604、1607〜1614、1608〜1615、1626〜1636、1626〜1638、1628〜1637、1629〜1638、1629〜1641、1630〜1641の各塩基配列
これらの領域は、以下のようにして、プロモーター活性に必須な転写因子結合部位を含むと結論付けられた。すなわち、配列番号1の塩基配列について、TFSEARCHを用いて、公知の転写因子との結合可能性をコンピューター検索により調べた。使用した公知の転写因子は、GATA−1、AML−1a、c−Ets2、ADR1、c−Myb、SRY、Sp1、MZF1、CdxA、NFkB、p300、HSF2、Tst−1、Sox−5、Oct−1、GATA−1、Tst−1、Nkx−2、C/EBP β、deltaE、Ik−2、Elk−1、IRF−2、E47、SPY、STAT、USF、GATA−3、TATA、c−Relなどである。検索の結果、上記の各DNA領域がこれらのいずれかの転写因子と結合し得る領域であることが判明した。
また、これらのDNA領域に隣接する前後6塩基程度までのDNA領域も、転写因子との結合性に関与すると考えられる。すなわち、これらの塩基配列とこれに隣接する上流側の最大6塩基までの塩基配列とを含むDNA(特にこれらの塩基配列とこれに隣接する上流側の最大6塩基までの塩基配列からなるDNA)、これらの塩基配列とこれに隣接する下流側の最大6塩基までの塩基配列とを含むDNA(特にこれらの塩基配列とこれに隣接する下流側の最大6塩基までの塩基配列からなるDNA)、又は、これらの塩基配列とこれに隣接する上流側および下流側の最大6塩基までの塩基配列とを含むDNA(特にこれらの塩基配列とこれに隣接する上流側および下流側の最大6塩基までの塩基配列からなるDNA)も、転写因子との結合性可能性がある。「最大6塩基」には、6塩基、5塩基、4塩基、3塩基、2塩基または1塩基のいずれの場合も含まれる。
前記の転写因子との結合可能領域のうち、塩基番号1029〜1034で示されるDNA領域及び塩基番号1075〜1080で示されるDNA領域は、コアプロモーター領域と考えられる。これは、この二つの転写因子結合可能部位がDR5遺伝子の開始コドンに最も近い転写因子結合可能部位であること、及び、この二つの転写因子結合可能部位を含むプロモーターDNAを連結したルシフェラーゼレポータープラスミドにおいて、この二つの部位に位置指定突然変異を導入した場合には、ルシフェラーゼの発現量が有意に減少することから導かれる。
従って、本発明のDR5遺伝子のプロモーターとして前記▲2▼に列記したDNAのうちでは、塩基番号1029〜1034の塩基配列若しくは塩基番号1075〜1080の塩基配列を含むDNA、又は、これらの塩基配列と、これに隣接する上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接する下流側の最大6塩基の塩基配列とを含むDNAが、特に好ましい。塩基番号1029〜1034の塩基配列若しくは塩基番号1075〜1080の塩基配列からなるDNA、又は、これらの塩基配列と、これに隣接する上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接する下流側の最大6塩基の塩基配列からなるDNAが、さらに特に好ましい。
ヒトSiah−1遺伝子のプロモーター
<Siah−1プロモーター領域の単離>
本発明者は、ヒトSiah−遺伝子のプロモーターDNAを得るために、ヒトSiah−1遺伝子の塩基配列(Genomics 46,103−111(1997))に基づき、ヒトSiah−1遺伝子のエクソン1のDNA配列を含む二つのオリゴヌクレオチド5’GACGGAGCGCGTTGGTGCCAGGACCGGGGT3’(配列番号5)および5’TTCCCGGCGCCGAGACCGACGGGACACCCT3’(配列番号6)を合成し、これらのオリゴヌクレオチドをT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて[γ−32P]で標識した。さらに、標識オリゴヌクレオチドをプローブとして用いてヒト白血球ゲノムλPSライブラリー(Mol.Bio.Tec.,Gottinngen,Germany)をスクリーニングし、ヒトSiah−1遺伝子のエクソン1およびその5’末端隣接領域を含む約16.5kbのSacI−SacI断片を得た。さらに、このSacI断片から2515bpのKpn−1−NcoI断片(NcoI siteはPCRにより導入した)をpGVB2(Nippon Gene Code No.306−04831)にサブクローニングし、その塩基配列を、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(ABI PRISM,PE APPLIED Biosystems)を用いてABI PRISM 310 Genetic Analyzerで決定した。
このKpn−1−NcoI断片の塩基配列を配列表の配列番号2に示す。この断片には、ヒトSiah−1遺伝子の5’隣接領域(エクソン1の一部)(配列番号2において塩基番号2388〜2515)が含まれており、これらの配列は、報告されているヒトSiah−1遺伝子の5’隣接領域の塩基配列(Genomics 46,103−111(1997))と一致していた。
さらに、単離したDNAがSiah−1プロモーターとしての活性を示すことを確認するために、前記の2515bpのKpn−1−NcoI断片を含むルシフェラーゼレポータープラスミドpGVB2(Nippon Gene Code No.306−04831)を、Siah−1遺伝子が恒常的に発現しているMCF−7細胞(国立医薬品食品衛生研究所、細胞バンク、JCRB0134)に遺伝子導入し、所定時間培養後のMCF−7細胞溶解物のルシフェラーゼ活性を測定した。この結果、前記プラスミドが導入されたMCF−7細胞の溶解物はルシフェラーゼ活性を示し、前記Kpn−1−NcoI断片は、プロモーター活性を有することが確認された。
すなわち、本発明のSiah−1遺伝子のプロモーターとしては、配列表の配列番号2の塩基配列を含むDNA、又は、該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともに、プロモーターとして機能するDNAが最も好ましい。配列表の配列番号2の塩基配列からなるDNA、又は、該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともに、プロモーターとして機能するDNAが特に好ましい。
<プロモーター活性に主に寄与する領域>
本発明のプロモーターは、少なくとも以下の▲3▼又は▲4▼の塩基配列を含むか、又は、この塩基配列のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともに、プロモーター活性を有する塩基配列を含むものであってよい。少なくとも以下の▲3▼又は▲4▼の塩基配列からなるか、又は、この塩基配列のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともに、プロモーター活性を有する塩基配列からなるものが好ましい。
▲3▼ 配列表の配列番号2において、塩基番号2035〜2382の塩基配列
この領域は、以下のようにして、プロモーター活性に寄与する領域であると結論付けられた。すなわち、Siah−1遺伝子のプロモーター領域であるKpnI−NcoI断片が連結されたルシフェラーゼレポータープラスミドpGVB2について、プロモーター領域の一連の5’末端変異体を作製した。これらの変異体をMCF−7細胞に一時的に遺伝子導入し、所定時間培養後のMCF−7細胞溶解物のルシフェラーゼ活性を測定した。この結果、配列番号2において、塩基番号2035〜2382の領域の欠失によりルシフェラーゼ活性が有意に減少した。このことから、この領域に、プロモーター活性に必須な転写因子結合部位またはエンハンサー部位が存在すると考えられる。
▲4▼ 配列表の配列番号2における以下のいずれかの塩基配列、又は、配列表の配列番号2における以下のいずれかの塩基配列と、これに隣接する上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接する下流側の最大6塩基の塩基配列とからなる塩基配列:
塩基番号95〜104、158〜170、272〜278、320〜326、362〜368、438〜444、568〜575、753〜762、1383〜1391、1438〜1447、1509〜1515、1613〜1619、1649〜1660、1715〜1724、1728〜1737、1789〜1797、1826〜1832、1889〜1895、2058〜2069、2074〜2078、2103〜2107、2209〜2216、2219〜2224、2302〜2307、2317〜2324の各塩基配列
これらの領域は、以下のようにして、プロモーター活性に必須な転写因子結合部位を含むと結論付けられた。すなわち、配列番号2の塩基配列について、TFSEARCHを用いて、公知の転写因子との結合可能性をコンピューター検索により調べた。使用した公知の転写因子は、GATA−1、C/EBP、SRY、cdxA、CREB、GATA2、GATA3、NFκB、Spl、N−myc、v−Myb、E2Fなどである。検索の結果、これらの転写因子との結合可能性が見出されたのは、上記の各DNA領域である。
また、これらのDNA領域に隣接する前後6塩基程度までのDNA領域も、転写因子との結合性に関与すると考えられる。すなわち、これらの塩基配列とこれに隣接する上流側の最大6塩基までの塩基配列とを含むDNA(特にこれらの塩基配列とこれに隣接する上流側の最大6塩基までの塩基配列からなるDNA)、これらの塩基配列とこれに隣接する下流側の最大6塩基までの塩基配列とを含むDNA(特にこれらの塩基配列とこれに隣接する下流側の最大6塩基までの塩基配列とを含むDNA)、又は、これらの塩基配列とこれに隣接する上流側および下流側の最大6塩基までの塩基配列とを含むDNA(特にこれらの塩基配列とこれに隣接する上流側および下流側の最大6塩基までの塩基配列からなるDNA)も、転写因子との結合性可能性がある。
前記の転写因子との結合可能領域のうち、塩基番号2219〜2224で示されるDNA領域は、コアプロモーター領域と考えられる。これは、このDNA領域を含むプロモーターDNAを連結したルシフェラーゼレポータープラスミドにおいて、塩基番号2219〜2224で示されるDNA領域に位置指定突然変異を導入した場合には、ルシフェラーゼの発現量が有意に減少することから導かれる。
従って、本発明のSiah−1遺伝子のプロモーターとして前記▲4▼に列記したDNAのうちでは、配列番号1における塩基番号2219〜2224の塩基配列を含むDNA、又は、この塩基配列と、これに隣接する上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接する下流側の最大6塩基の塩基配列とを含むDNAが、特に好ましい。配列番号1における塩基番号2219〜2224の塩基配列からなるDNA、又は、この塩基配列と、これに隣接する上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接する下流側の最大6塩基の塩基配列からなるDNAがさらに特に好ましい。
ヒトDR5遺伝子のプロモーター及びヒトSiah−1遺伝子のプロモーターの有用性
本発明のプロモーターDNAは、例えば、その生体内における変異によるDR5又はSiah−1タンパク質の欠損あるいは発現異常症などの治療や予防に利用することができる。即ち、本発明のDR5プロモーターDNAを有するDR5遺伝子または本発明のSiah−1プロモーターを有するSiah−1遺伝子を、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどのベクターに挿入し、あるいはリポソームなどに封入して体細胞に導入することにより、正常な制御の下にDR5タンパク質又はSiah−1タンパク質を発現させることができ、これによりDR5タンパク質又はSiah−1タンパク質の欠損あるいは発現異常症などの改善を図ることができる。
また、本発明のプロモーターDNAがある特異的な刺激により活性化または抑制されることが判明した場合、所望の遺伝子の上流に本発明のDNAを挿入したベクターなどを作製して体細胞に導入し、その刺激を付加することにより、その所望の遺伝子を誘導的に発現誘導または発現抑制させることができる。例えば、所望の遺伝子として殺細胞遺伝子を用いれば、その該特異的な刺激により、本発明のプロモーターDNAが導入された細胞を選択的に死滅させることが可能である。このような本発明のプロモーターDNAの利用は、殺傷したい細胞が存在する幅広い疾患(例えば、がん等)に適用可能である。
また、本発明のプロモーターDNAと同じ塩基配列を有するDNAは、細胞に存在するDR5プロモーターDNA又はSiah−1プロモーターDNAとこれらに結合しうる蛍白質(例えば、転写因子)との結合を拮抗阻害しうる。このためそのDNAが、DR5又はSiah−1プロモーターDNAのプロモーター活性を阻害するタンパク質とDR5又はSiah−1プロモーターとの結合を拮抗阻害する場合には、この方法によりDR5又はSiah−1プロモーター活性を促進することができ、逆にプロモーター活性を促進するタンパク質とDR5又はSiah−1プロモーターとの結合を拮抗阻害する場合には、この方法によりDR5又はSiah−1プロモーター活性を阻害することができる。
前述したように、DR5又はSiah−1蛋白質はアポトーシス又は細胞周期停止を引き起こす作用を有することから、DR5又はSiah−1プロモーターの活性の促進は、悪性腫瘍、動脈硬化またはバルーン冠動脈拡張手術後の血管内皮細胞増殖による再狭窄のような細胞増殖性疾患の治療等に有用である。一方、DR5又はSiah−1プロモーターDNAの活性の阻害は、再生不良性貧血、肝硬変、心筋梗塞、脳梗塞、創傷治癒等の細胞増殖を必要とする疾患の治療等に有効である。
また、本発明プロモーターDNAは、後述するように、このDNAに発現可能に連結されたレポーター遺伝子を用いることにより、このプロモーターの活性を調節する物質のスクリーニングに利用できる。すなわち、本発明のプロモーターDNAは、このプロモーターDNAに直接結合することにより、または細胞膜受容体や細胞内蛋白質に結合し間接的にこのプロモーターDNAに作用することにより、DR5又はSiah−1遺伝子を転写レベルで調節できる物質をスクリーニングすることに使用できる。
DR5又はSiah−1遺伝子を転写レベルで活性化できる化合物は、悪性腫瘍、動脈硬化、あるいはバルーン冠動脈拡張手術後の血管内皮細胞増殖による再狭窄などの細胞増殖性疾患の治療等に有用である。一方、DR5又はSiah−1遺伝子を転写レベルで抑制できる物質は、再生不良性貧血、肝硬変、心筋梗塞、脳梗塞、創傷治癒等の細胞増殖を必要とする疾患の治療などに有効である。
ヒトDR5又はSiah−1遺伝子のプロモーターの活性を調節する物質のスクリーニング方法
<被験物質>
本発明のスクリーニング方法において、被験物質は特に制限されず、蛋白質、オリゴペプチド、これらをコードするDNA、多糖類、低分子化合物等が広く含まれる。これらは自然界から単離されたものであってもよく、人工的に合成されたものであってもよい。これらの物質の種類および分子量は特に制限されないが、細胞内への移行性を考慮すれば、低分子化合物であるのが最も好ましい。
オリゴペプチドないしはタンパク質が、細胞内に移行して本発明のプロモーターに作用するものである場合には、治療薬として使用する際は、例えば、膜透過蛋白質との融合蛋白質として用い、この膜透過タンパク質の細胞膜透過機構を利用することにより細胞内に移行させることができる。
<レポーター遺伝子>
以下に述べるスクリーニング方法において使用するレポーター遺伝子としては、公知のレポーター遺伝子を広く使用できる。このような公知のレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)、ヒト成長ホルモン(hGH)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、緑色蛍光蛋白(GFP)等が挙げられる。これらのうち、ルシフェラーゼ遺伝子は、高感度であること、活性の測定が容易であること等により好ましい。
これらは、内在性のプロモーター領域が欠損したレポータープラスミドまたは内在性のエンハンサーが欠損したレポータープラスミドとして市販されている。ルシフェラーゼプラスミドとしては、pT811uc、pSluc2、pXP1/pXP2(いずれも、Nordeen,1988)等が市販されている。
レポーター遺伝子は、市販のレポータープラスミドを使用してもよいが、公知のベクターに挿入して用いることもできる。ベクターは、プラスミドベクター、ウィルスベクター等のいずれも用いることができる。また、ベクターは、動物細胞用のものであることが好ましい。
動物細胞用ベクターとしては、例えばpUC18、pUC19、M13mp18、pBluescript、pBR322等を使用できる。
レポーター遺伝子の発現量を測定するにあたっては、前記のレポータータンパク質のうち、SEAPおよびhGHは分泌型タンパク質であるため細胞の培養上清のタンパク質発現量を定量すればよく、その他のレポータータンパク質は界面活性剤等を用いて溶解した細胞溶解物中のタンパク質発現量をこれらのタンパク質に応じた方法で測定すればよい。
ルシフェラーゼ遺伝子の発現量は、細胞溶解物について、ルシフェラーゼにより触媒されるルシフェリンの分解による蛍光をルミノメーターを用いて検出することにより定量することができる。また、細胞が発する蛍光をルミノメーターを用いて検出することもできる。
これらのレポーターアッセイは、マニュアル作業でも行えるが、機械を用いて自動で行ういわゆるハイスループットスクリーニング(組織培養工学、Vol23,No.13,521−524,米国特許第5,670,113号)を用いることにより迅速かつ簡便に行うことができる。
<本発明の第1のスクリーニング方法>
本発明の第1のスクリーニング方法は、本発明のヒトDR5またはSiah−1遺伝子のプロモーター領域(プロモーター活性に必須の最小限の領域を含むものであってもよい。以下、同じ。)を含むDNAとこのDNAに発現可能に連結されたレポーター遺伝子とを含むベクターを保持する細胞に被験物質を接触させる工程と、被験物質の接触によるレポーター遺伝子の発現量の変化を検出する工程とを含む方法である。
細胞としては、DR5プロモーターを活性化する物質をスクリーニングする場合には、DR5遺伝子自体は正常であるが、DR5タンパク質の活性が低下している細胞を用いることができる。また、Siah−1プロモーターを活性化する物質をスクリーニングする場合には、Siah−1タンパク質の活性が低下している細胞を用いることができる。具体的には、p53の変異が認められる、ヒト骨肉腫細胞株Saos−2(ATCC、HTB85)、大腸癌細胞株のDLD−1、ヒト乳癌細胞株MCF−7(国立医薬品食品衛生研究所 細胞バンク、JCRB0134)、ヒト腎上皮細胞株293(ATCC、CRL1573)、赤白血球病細胞株K562(ATCC、CCL243)等のがん細胞を使用することができる。
また、これらのプロモーターの活性を抑制する物質をスクリーニングする場合には、例えばベロ細胞、ヒーラ細胞、CV1細胞、ナマルバ細胞、COS1細胞、CHO細胞等の公知の細胞を広い範囲から選択して用いることができる。
また、本発明のプロモーター領域とこのプロモーターにより発現できるように連結されたレポーター遺伝子とを含むベクターについては、前記説明した通りである。このベクターは、細胞に恒常的に導入することが好ましい。
細胞と被験物質との接触は、例えば以下のようにして行うことができる。すなわち、ベクターを保持する細胞は、その細胞に適した培地を用いて継代し、対数増殖期の状態になるように培養しておく。被験物質を接触させる際には、細胞を20〜30%程度コンフルエントになるように播き、24時間程度培養する。次いで、被験物質を5nM〜50μM程度の濃度になるように細胞培養に添加する。次いで、37℃程度で、12〜48時間程度、より好ましくは24時間程度インキュベートする。なお、被験物質によりプロモーターが活性化され、アポトーシスが誘導されてしまうのを防ぐために、caspase阻害剤を添加してもよい。
この後、レポーター遺伝子の発現量をレポーター遺伝子の種類に応じた方法で測定すればよい。例えば、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いる場合には、細胞を界面活性剤入り溶解剤で溶解し、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を、ルシフェリンの分解による発光をルミノメーターを用いて検出すればよい。
被験物質を用いることにより、ルシフェラーゼ活性が対照の50%程度以下になる場合には、プロモーターが抑制されたと判定する。また、ルシフェラーゼ活性が対照の200%程度以上になる場合には、プロモーターが活性化されたと判定する。
この方法の被験物質は特に制限されず、タンパク質、オリゴペプチド、多糖類、低分子化合物等を広く対象にすることができる。
この方法によると、細胞膜受容体などを介して間接的に本発明のプロモーターDNAの活性に影響を与える物質の他、細胞内に取り込まれて直接本発明のプロモーターに結合する低分子化合物、細胞内に取り込まれて他の細胞内タンパク質に作用することにより間接的に本発明のプロモーターに作用する低分子化合物が選択される。
<本発明の第2のスクリーニング方法>
本発明の第2のスクリーニング方法は、本発明のヒトDR5またはSiah−1遺伝子のプロモーター領域を含むDNAとこのDNAに発現可能に連結されたレポーター遺伝子とを含むベクターを保持する細胞に被験物質を導入する工程と、被験物質の接触によるレポーター遺伝子の発現量の変化を検出する工程とを含む方法である。
第2のスクリーニング方法において、使用できる細胞、ベクターおよびレポーター遺伝子の発現量の測定方法は、第1のスクリーニング方法の場合と同様である。
この方法の1例として、遺伝子導入に通常用いられるリン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーション法、リポソーム法などにより、前記の細胞に被験物質を一時的に導入した後、レポーター遺伝子の発現量の変化を検出する方法を例示できる。
また、被験物質がタンパク質である場合には、膜透過タンパク質との融合タンパク質とすることにより細胞内に導入することができる。
この方法により、直接本発明のプロモーターDNAと結合する物質の他に、細胞内の内在性タンパク質等に作用して間接的に本発明のプロモーターDNAの活性を調節する物質を得ることができる。この方法の対照となる被験物質は、DNAの他、タンパク質ないしはオリゴペプチド、多糖類、低分子化合物等のいずれであってもよい。
また、この方法の他の例としては、one−hybrid法を例示できる。具体的には、本発明のプロモーターDNAを挿入したレポータープラスミドを細胞に安定に導入し、次いでこれに遺伝子ライブラリーを導入して、レポーター遺伝子の発現促進あるいは発現阻害を示すようなクローンを選択することにより、本発明のプロモーターDNAに結合するタンパク質等を選択する。この方法により、直接本発明のプロモーターDNAと結合するタンパク質等の他に、細胞内の内在性タンパク質等に作用して間接的に本発明のプロモーターDNAの活性を調節するタンパク質等を得ることができる。one−hybrid法(Li J.J.and Herskowitz I.(1993)Science 262:1870−1873、Wang M.M.and Reed R.R.(1993)Nature 364:121−126)は、例えば「Matchmaker system」(CLONTECH)等の市販のキットを用いて行うことができる。
<本発明の第3のスクリーニング方法>
本発明の第3のスクリーニング方法は、本発明のヒトDR5又はSiah−1遺伝子のプロモーター領域を含むDNA断片に被検物質を接触させる工程と、このDNAと結合した物質を検出する工程とを含む方法である。
第3のスクリーニング方法では、通常6bp以上、より好ましくは18bp以上のプロモーターDNA断片を用いることができる。
この方法の1例としては、アフィニティー精製を例示できる。具体的には、本発明のプロモーターDNAをビオチン化し、ストレプトアビジンを結合した磁気ビーズに結合させてDNAアフィニティービーズを作製する。次いで、これを被験物質とインキュベートして本発明のプロモーターDNAと特異的に結合する被験物質を精製し、この構造を決定する。
この方法において被験物質は特に制限されず、タンパク質ないしはオリゴペプチド、多糖類、低分子化合物等を広く対象にできる。天然のタンパク質ないしはオリゴペプチド(以下、「タンパク質等」という。)の混合物としては、例えば、細胞の核抽出液や微生物の培養上清等を用いることができる。核抽出液は、通常、転写因子等のDNA結合タンパク質が含まれていることから好ましい。タンパク質等の混合物を用いる場合には、直接本発明のプロモーターDNAと結合する被験物質の他、DNA結合活性は持たないがDNA結合タンパク質等と複合体を形成することにより本発明のプロモーターDNAに間接的に結合するタンパク質等を得ることができる
また、この方法の他の例としては、被験物質がタンパク質等である場合には、サウスウェスタンブロットを例示できる。具体的には、タンパク質等の混合物をSDS−PAGEで分離したものをフィルター膜に転写した後、本発明のプロモーターDNAをプローブとして直接ブロットし、このDNAプローブと結合するタンパク質等を選択する。
サウスウェスタンブロットの他の具体例としては、遺伝子ライブラリーを導入した大腸菌でタンパク質等を発現させ、これらをフィルター膜に転写した後、本発明のプロモーターDNAをプローブとして直接ブロットし、該DNAプローブと結合するタンパク質等を発現するクローンを選択して、これをコードする遺伝子を単離する方法を例示できる。この方法によると、本発明のDNAに結合する活性を有するタンパク質等とともに、これをコードする遺伝子を得ることができる。
この方法のさらに他の例としては、被験物質がタンパク質等である場合には、ゲルシフト法を例示できる。具体的には、タンパク質等の混合物を、アイソトープなどにより標識した本発明のプロモーターDNAプローブと混合し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、タンパク質等と本発明のプロモーターDNAとの複合体のバンドをゲルシフト法により検出する。この方法によると、本発明のプロモーターDNAに直接結合するタンパク質等およびこのタンパク質等に結合することにより間接的に本発明のプロモーターDNAに結合するタンパク質等の双方が得られる。
<本発明の第4のスクリーニング方法>
本発明の第4のスクリーニング方法は、本発明のヒトDR5又はSiah−1遺伝子のプロモーター領域を含むDNA断片に、被験物質の存在下および非存在下で、DNA結合タンパク質を接触させる工程と、被験物質の存在による前記DNAへのDNA結合蛋白質の結合量の変化を検出する工程とを含む方法である。
この方法の対象となる被験物質は、特に制限されず、タンパク質ないしはオリゴペプチド、多糖類、低分子化合物等を広く用いることができる。
DNA結合タンパク質としては、コンピューターを用いた検索によりスクリーニングに使用するプロモーターDNA断片に結合することが予想されている転写因子等のタンパク質を用いることができる。
この方法の具体例としては、前記説明したゲルシフト法を例示できる。具体的には、被検物質の存在下または非存在下で、DNA結合タンパク質と標識されたプロモーターDNAプローブとを結合させ、DNA結合タンパク質と本発明のプロモーターDNAとの複合体のバンドの形成を促進または阻害する物質を選択する。これにより、本発明のプロモーターに直接結合はしないが、DNA結合タンパク質のプロモーターDNAへの結合を促進または抑制する物質を選択することができる。例えば、本発明のプロモーターDNAに結合するタンパク質等が生体内で本発明のプロモーターDNAの活性を阻害するような場合、このタンパク質等と本発明のプロモーターDNAとの結合を阻害するような物質は、本発明のプロモーターDNAの活性を促進できると考えられる。
また、この方法の他の例としては、以下の方法を例示できる。すなわち、本発明のプロモーターDNAに結合することが予想されているDNA結合タンパク質にグルタチオンS−トランスフェラーゼを融合したタンパク質を精製して、この融合タンパク質を抗グルタチオンS−トランスフェラーゼ抗体で覆ったマイクロプレートに結合させた後、ビチオン化した本発明のプロモーターDNAを融合タンパク質と接触させ、融合タンパク質と本発明プロモーターDNAとの結合をストレプトアビジン化アルカリフォスファターゼで検出する。本発明のプロモーターDNA添加の際、被験物質も添加し、融合タンパク質と本発明のプロモーターDNAとの結合を促進あるいは阻害する物質を選択する。
この方法によると、直接本発明のプロモーターDNAに作用する物質およびDNA結合タンパク質に作用する物質の双方が得られる。例えば、本発明のプロモーターDNAに結合するタンパク質が生体内で本発明のプロモーターDNAの活性を阻害する場合、このタンパク質と本発明のプロモーターDNAとの結合を阻害するような化合物は本発明のプロモーターDNAの活性を促進できると考えられる。
スクリーニング方法により得られた物質
上記本発明のスクリーニング方法により得られた物質は、以下の形態で医薬として使用できる。
すなわち、そのまま又は薬学的に許容される担体(賦形剤、増量剤、結合剤、潤沢剤等が含まれる)や慣用の添加剤などと混合して医薬組成物として調製できる。この医薬組成物は、調製する形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、外用剤、座剤等の非経口投与剤)等に応じて経口投与又は非経口投与することができる。また投与量は、有効成分の種類、投与経路、投与対象又は患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、当業者であれば容易に決定できる。
また、得られた物質がオリゴペプチド又はタンパク質である場合には、膜透過性タンパク質との融合タンパク質として投与することができる。これにより当該オリゴペプチド又はタンパク質を、膜透過性タンパク質の細胞膜透過機構を利用することにより細胞内に移行させることができる。また、当該オリゴペプチド又はタンパク質ををコードするDNAを、遺伝子治療用のウィルスベクターに組み込んで、目的細胞に導入することもできる。これらの場合も、投与量、投与方法は、患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、当業者であれば適宜選択することができる。
また、得られた物質がポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドである場合には、前述した医薬組成物の形態で医薬として投与できる他、例えばリポソーム内に封入して送達するリポソームデリバリーシステム、マイクロインジェクション、直接注射法、遺伝子銃等を利用して細胞内に導入することもできる。これらの場合も、投与量、投与方法は、患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、当業者であれば適宜選択することができる。さらに、遺伝子治療用のウィルスベクター等に組み込んで、目的細胞に導入することもできる。
得られた物質がDR5遺伝子又はSiah−1遺伝子の発現量を増大させるものである場合には、当該物質を有効成分とする医薬は、悪性腫瘍、動脈硬化またはバルーン冠動脈拡張手術後の血管内皮細胞増殖による再狭窄のような細胞増殖性疾患の治療又は予防薬として有用である。一方、得られた物質がDR5遺伝子又はSiah−1遺伝子の発現量を低下させるものである場合には、当該物質を有効成分とする医薬は、再生不良性貧血、肝硬変、心筋梗塞、脳梗塞、創傷治癒等の細胞増殖を必要とする疾患の治療又は予防薬として有用である。
本発明の効果
本発明によりがん抑制遺伝子であるヒトDR5遺伝子及びヒトSiah−1遺伝子の各プロモーターが提供された。これにより、これらのプロモーターの活性を調節し、DR5遺伝子またはSiah−1遺伝子の発現を制御する化合物のスクリーニングが可能となった。
前述したように、DR5遺伝子およびSiah−1遺伝子は、p53タンパク質により転写誘導され、アポトーシスや細胞周期停止を引き起こすことによりがん抑制に関与している。がん細胞において、DR5およびSiah−1は、タンパク質自体が失活している場合より、発現量が低下している場合が多いと考えられるため、本発明のプロモーターに直接または間接的に作用することによりDR5又はSiah−1遺伝子を転写レベルで活性化できる物質は、がん等の治療に非常に有効である。
また、DR5およびSiah−1遺伝子の各プロモーターに作用する物質は、がん細胞に選択毒性を示す可能性が高い。すなわち、正常細胞ではDR5およびSiah−1のようながん抑制関連遺伝子のプロモーター活性が正常であるために、該プロモーターを活性化させるような物質を投与しても、それ以上にプロモーター活性は向上し難いが、がん細胞では、これらのがん抑制遺伝子のプロモーター活性が抑制されているために、物質投与によりプロモーター活性を正常レベルにまで向上させることができる。その結果、DR5プロモーターおよびSiah−1プロモーターを活性化させる物質は、がん細胞に選択毒性を示す可能性が高い。
また、従来の遺伝子導入によるがん治療等では、細胞への遺伝子導入効率が悪い、局所投与しなければならない、ウィルスベクターによる副作用が生じる可能性がある、生殖細胞に導入された場合には遺伝病を生む可能性がある等の難点があったが、プロモーター活性を調節することにより、目的遺伝子を転写レベルで調節できる物質を用いれば、これらの難点を解消することができる。特に、遠隔投与できること及び細胞への導入効率がよいことが大きなメリットである。
実施例
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
先ず、本発明のDR5遺伝子のプロモーターおよびそのプロモーター活性に必須な領域について詳細に説明し、次いで、Siah−1遺伝子のプロモーターの塩基配列およびそのプロモーターの活性に必須な領域について詳細に説明する。
実施例1(使用細胞)
ヒト乳癌細胞株MCF−7(国立医薬品食品衛生研究所細胞バンク、JCRB0134)、ヒト腎上皮細胞株293(ATCC、CRL1573)、ヒト骨肉腫細胞株Saos−2(ATCC、HTB85)を10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、日本、東京、ニッスイ、Code No.05919)に維持し、5%のCO2を含む湿潤大気中で37℃でインキュベートした。また、赤白血球病細胞株K562(ATCC、CCL243)を10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地(日本、東京、ニッスイ、Code No.05918)に維持し、同様にしてインキュベートした。
実施例2(ヒトDR5遺伝子プロモーターDNAのクローニング)
ヒトDR5塩基配列(Science 277,815−818(1997))に基づき、二つのオリゴヌクレオチド(CCGCAATCTCTGCGCCCACAAAATACACCGおよびGTTTCAGCCCTTAAAGTAGATCGGGCATCG)を合成し、ヒト白血球ゲノムライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして用いた。このプローブは、[γ−32P]ATP(Amersham Pharmacia Biotech,UK,Certificate No.945784)及びT4 polynucleotide kinase(日本、大阪、東洋紡、PNK−103)を用いて標識した。標識条件は、T4 polynucleotide kinaseの添付マニュアルに従った。ヒトDR5遺伝子の5’末端側領域を含むゲノミックDNA断片を得るために、このプローブを用いて、ヒト白血球ゲノム由来のλPSライブラリー(Mol.Biol.Tec.、Germany、商品番号:0B−4901−00、フナコシカタログ)中のおよそ3.8×106ファージプラークをスクリーニングした。なお、スクリーニングはλPSライブラリーの添付マニュアルに従って行った。ハイブリダイゼーションは5×SSC、0.1%SDS、5×デンハールト溶液と熱変性した魚の***DNA 0.1μg/μlを含む緩衝溶液中で50℃で16時間以上行った。一つの陽性ファージプラークをλPSゲノムライブラリー(Mol.Biol.Tec.、Germany、商品番号:0B−4910−10、フナコシカタログ)の添付マニュアルに従って、プラスミドに転換後、DNAを増殖、精製した。具体的には、単一のコロニーをLBブロスの中で一晩増殖後、プラスミドDNAをQIAGENのキット(QIAGEN plasmid maxi kit(25),Cat.No.12163,Germany)を使って抽出、精製した。
ゲノミックDNA断片はSacI、NcoI(日本、東洋紡)などの制限酵素で処理し、サザンブロッティングにより分析した(ラボマニュアル遺伝子工学、第3版、松村正實編、p73−76)。
実施例3(ヒトDR5プロモーターDNAの塩基配列)
実施例2で取得した陽性ファージDNA由来のほぼ2.5kbのSacI−NcoI断片をpGVB2にサブクーロニングし、その配列をBig Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(ABI PRISM,PE APPLIED Biosystems,Lot No.9805010,Part No.4303152)を用いて、ABI PRISM 310 Genetic Analyzerで塩基配列を決定した。
この2.5kbのSacI−NcoI断片の3’末端側を含む1654塩基の配列を配列表の配列番号1に示す。この配列にはエクソン1の一部及びDR5遺伝子の5’末端側の隣接領域が含まれており、エクソン1の一部の塩基配列は報告されているヒトDR5遺伝子の配列(Science 277,815−818(1997))と同一であった。
実施例4(ヒトDR5プロモーターの転写開始部位)
転写開始部位を決定するために、pBluescriptにサブクローニングしたDR5ゲノムDNAのエクソン1を含む断片(SmaI−ApaI断片)を鋳型として用いて、T7−RNAポリメラーゼ(MAXI script,Ambion)により、RNAプローブを作製した。また、培養細胞MCF−7からセパゾールRNA I(日本、京都、ナカライテスクCode No.30655−36)を用いて全RNAを調製した。RNA保護アッセイは、RPA IIIキット(Ambion)を用い、このキットの添付マニュアルに従って行った。得られた産物の塩基配列は、T7シークエンシングキット(AmershamPharmacia Biotech)を用いて決定した。
この結果、配列表の配列番号1における塩基番号1076のC残基および塩基番号1102のA残基が転写開始部位であることが判明した。
実施例4(転写因子結合部位の候補の検索)
DR5遺伝子の5’隣接領域(配列表に示す塩基配列)について、TFSEARCHを用いて、公知の転写因子との結合可能性をコンピューターを用いて検索した。検索に供した転写因子は、GATA−1、AML−1a、c−Ets2、ADR1、c−Myb、SRY、Sp1、MZF1、CdxA、NFkB、p300、HSF2、Tst−1、Sox−5、Oct−1、GATA−1、Tst−1、Nkx−2、C/EBP β、deltaE、Ik−2、Elk−1、IRF−2、E47、SPY、STAT、USF、GATA−3、TATA、c−Relである。
この結果、公知の転写因子との結合可能性がある塩基配列が多数見出された。これらの塩基配列は、配列表の配列番号1における塩基番号102〜108、133〜143、149〜162、174〜183、196〜210、208〜221、211〜220、212〜226、222〜231、263〜269、265〜278、296〜302、377〜383、370〜376、409〜420、430〜440、431〜436、457〜470、458〜470、482〜492、498〜507、499〜503、500〜505、528〜534、536〜541、537〜542、542〜547、549〜561、555〜567、553〜560、559〜566、575〜587、593〜598、598〜610、601〜610、614〜619、618〜623、642〜648、650〜656、657〜662、683〜697、700〜707、742〜747、774〜779、785〜798、788〜792、792〜799、795〜801、809〜813、814〜825、815〜825、861〜867、867〜872、867〜873、901〜913、901〜904、902〜911、915〜923、919〜924、924〜939、921〜928、926〜933、930〜936、948〜957、971〜977、972〜978、989〜994、1026〜1035、1029〜1034、1048〜1057、1075〜1080、1097〜1103、1106〜1113、1125〜1133、1169〜1175、1200〜1209、1153〜1162、1160〜1169、1160〜1168、1206〜1305、1209〜1220、1230〜1238、1297〜1304、1324〜1331、1366〜1377、1373〜1380、1373〜1382、1391〜1398、1421〜1430、1430〜1342、1334〜1341、1521〜1530、1583〜1589、1591〜1600、1590〜1596、1591〜1600、1593〜1604、1607〜1614、1608〜1615、1626〜1636、1626〜1638、1628〜1637、1629〜1638、1629〜1641、1630〜1641で示される塩基配列である。
これらの領域は、所定の物質が結合することにより、DR5の転写を活性化または阻害することが予想される領域である。
実施例5(プロモーター活性の確認およびプロモーター活性に主に寄与する領域の決定)
実施例5−1
実施例2で得られたヒトDR5プロモーター領域を含む約2.5kbのSacI−NcoI断片をルシフェラーゼレポータープラスミドpGVB2(日本,東京,Nippon Gene)内のSacI−NcoIサイトにサブクローニングした。このプラスミドをpDR5/SacIと命名した。
また、pDR5/SacIについて、本発明のプロモーター領域の一連の5’末端欠失変異体を「Kilo−sequence Deletion Kit」(日本、東京、Takara)を用いて作製した。これらの変異体は、配列表の塩基番号37〜1223を含むpDR5/37、塩基番号619〜1223を含むpDR5/619、塩基番号777〜1223を含むpDR5/777、塩基番号1026〜1223を含むpDR5/1026、塩基番号1109〜1223を含むpDR5/1109、塩基番号1186〜1223を含むpDR5/1186である。
これらのプラスミドをMCF−7細胞へと一時的に遺伝子導入した。
具体的には、MCF−7細胞(3×10個)を12穴組織培養プレートに播種し、24時間後、0.5μgの上記プラスミドおよびアクチンプロモーターによって調節されているβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を含む0.4μgのpActβ−galを遺伝子導入効率を標準化するために併用し、Cell Phect Transfection kit(Amersham Pharmacia Biotech,27−9268−01)を用いて細胞にともに遺伝子導入した。48時間後の細胞溶解物のルシフェラーゼ活性をPica Gene発光kit(東洋インキ、東京、日本、Code No.309−04321)のプロトコールに従って測定し、細胞溶解物中のβ−ガラクトシダーゼ活性によって標準化した(Molecular Cloning 16.66:Assay for β−galactosidase in extracts for mammalian cells(1986))。各実験は、3回づつ行い、ルシフェラーゼアッセイは、3回ずつ行った。また、スチューデンツT検定で有意差検定を行い、p<0.05未満の場合に有意差ありとした。
結果を図1に示す。図1に示すように、全長DR5プロモーターを有するプラスミドpDR5/SacIを導入した細胞は、極めて強いルシフェラーゼ活性を示し、配列表の配列番号1に示すDNAがDR5遺伝子のプロモーター領域であることが確認された。
また、ルシフェラーゼ活性について、全長DR5プロモーターを有するプラスミドpDR5/SacIとpDR5/37との間、pDR5/37とpDR5/619との間には有意差が認められなかったが、pDR5/619とpDR5/777との間、pDR5/777とpDR5/1026との間、pDR5/1026とpDR5/1109との間には有意差が認められた。また、pDR5/1109およびpDR5/1186を保持した細胞のルシフェラーゼ活性は、プロモーター領域を挿入していないpGVB2を保持した細胞のルシフェラーゼ活性とほぼ同様であった。
これらのことから、配列番号1の塩基番号619〜776の間、塩基番号番号777〜1025の間、塩基番号1026〜1108の間に、DR5遺伝子のプロモーター活性に必須な転写因子結合部位またはエンハンサー部位が含まれていると考えられる。
実施例5−2
次いで、実施例4で転写因子結合部位になり得ることが判明した部位のうち、開始コドンの上流域にあって開始コドンに最も近い二つの部位(配列表の塩基番号1029〜1034および塩基番号1075〜1080の領域(Sp1サイト))に部位特異的突然変異導入を行った。
具体的には、配列番号1の塩基番号1026〜1223を挿入したルシフェラーゼレポータープラスミドpDR5/1026に、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)を用い、このキットの添付マニュアルに従って、塩基番号1029〜1034の領域に置換変異が導入されたpDR5mSp1−1および塩基番号1075〜1080の領域に置換変異が導入されたpDR5mSp1−2を作製した。なお、同様にして、配列表の塩基番号1097〜1103のTATA様配列に置換変異が導入されたpDR5mTATAも作製した。実施例5−2と同様にして、各変異レポータープラスミドをMCF−7細胞へと一時的に遺伝子導入し、細胞溶解物のルシフェラーゼ活性を測定した。
各変異体の塩基配列およびルシフェラーゼ活性を図2の(A)および(B)に示す。図2(B)の結果、配列番号1の塩基配列において、プロモーター活性に寄与する領域である塩基番号1026〜1223(pDR5/1027に含まれるプロモーター領域)の中でも両Sp1領域は、特にプロモーター活性に主に寄与する領域であり、転写因子結合部位またはエンハンサー部位が存在することが分かる。
なお、配列表の塩基番号1097〜1103のTATA様配列は、プロモーター活性に寄与していないことが分かる。
実施例6(ヒトSiah−1遺伝子プロモーターDNAのクローニング)
ヒトSiah−1塩基配列(Genomics 46.103−111(1997))に基づき、二つのオリゴヌクレオチド(5’GACGGAGCGCGTTGGTGCCAGGACCGGGGT3’および5’TTCCCGGCGCCGAGACCGACGGGACACCCT3’)を合成し、ヒト白血球ゲノムライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして用いた。このプローブは、[γ−32P]ATP(Amersham Pharmacia Biotech,UK,Certificate No.945784)及びT4 polynucleotide kinase(日本、大阪、東洋紡、PNK−103)を用いて標識した。標識条件は、T4 polynucleotide kinaseの添付マニュアルに従った。ヒトSiah−1遺伝子の5’末端側領域を含むゲノミックDNA断片を得るために、このプローブを用いて、ヒト白血球ゲノム由来のλPSライブラリー(Mol.Biol.Tec.、Germany、商品番号:(0B−4901−00)、フナコシカタログ)中のおよそ3.8×10ファージプラークをスクリーニングした。なお、スクリーニングはλPSファージゲノムライブラリーの添付マニュアルに従って行った。ハイブリダイゼーションは5×SSC、0.1%SDS、5×デンハールト溶液と熱変性した魚の***DNA0.1μg/μlを含む緩衝溶液中で50℃で終夜行った。一つの陽性ファージプラークをλPSゲノムライブラリーの添付マニュアルに従って、プラスミドに転換後、DNAを増殖、精製した。具体的には、単一のコロニーをLBブロスの中で一晩増殖後、プラスミドDNAをQIAGENのキット(QIAGEN plasmid maxi kit(25),Cat.No.12163,Germany)を使って抽出、精製した。
ゲノミックDNA断片はKpnIやSacI(日本、東洋紡)などの制限酵素で処理し、Siah−a及びSiah−bの各オリゴヌクレオチドを用いて、サザンブロッティングにより分析した(ラボマニュアル遺伝子工学、第3版、松村正實編、p73−76)。
実施例7(ヒトSiah−1プロモーターDNAの塩基配列)
実施例6で取得した陽性ファージDNA由来のほぼ2515bのKpnI−NcoI断片をpGVB2にサブクーロニングし、その配列をBig Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(ABI PRISM,PE APPLIED Biosystems,Lot No.9805010,Part No.4303152)を用いて、ABI PRISM 310 Genetic Analyzerで塩基配列を決定した。塩基配列を配列表の配列番号2に示す。
この断片には、ヒトSiah−1遺伝子の5’隣接領域(エクソン1の一部)(配列番号2において塩基番号2388〜2515)が含まれており、これらの配列は、報告されているヒトSiah−1遺伝子の5’隣接領域の塩基配列(Genomics 46.103−111(1997))と一致していた。
実施例8(転写因子結合部位の候補の検索)
Siah−1遺伝子の5’隣接領域(配列表に示す塩基配列)について、TFSEARCHを用いて、公知の転写因子との結合可能性をコンピューターを用いて検索した。検索に供した転写因子は、GATA−1、C/EBP、SRY、cdxA、CREB、GATA2、GATA3、NFκB、Sp1、N−myc、v−Myb、E2Fである。
この結果、公知の転写因子との結合可能性がある塩基配列が多数検出された。これらの塩基配列は、配列表の配列番号2における塩基番号95〜104、158〜170、272〜278、320〜326、362〜368、438〜444、568〜575、753〜762、1383〜1391、1438〜1447、1509〜1515、1613〜1619、1649〜1660、1715〜1724、1728〜1737、1789〜1797、1826〜1832、1889〜1895、2058〜2069、2074〜2078、2103〜2107、2209〜2216、2219〜2224、2302〜2307、2317〜2324で示される塩基配列である。
これらの領域は、所定の物質が結合することにより、Siah−1の転写を活性化または阻害できる領域である。
実施例9(プロモーター活性の確認およびプロモーター活性に主に寄与する領域の決定)
実施例9−1
実施例6で得られたヒトSiah−1プロモーター領域を含む2515bpのKpnI−NcoI断片(配列番号2における塩基番号1〜2515)をルシフェラーゼレポータープラスミドpGVB2(日本,東京,Nippon Gene)内のKpnI−NcoIサイトにサブクローニングした。このプラスミドをdelKpnIと命名した。
また、delKpnIについて、本発明のプロモーター領域の一連の5’末端欠失変異体を「Kilo−sequence Deletion Kit」(日本、東京、Takara)を用いて作製した。これらの変異体は、配列表の塩基番号643〜2515を含むdelPstI、塩基番号1290〜2515を含むdelSmaI、塩基番号1410〜2515を含むdelBalI塩基番号1683〜2515を含むdelMulI、塩基番号2035〜2515を含むdelNheI、塩基番号2383〜2515を含むdelXhoIである。
これらのプラスミドをMCF−7細胞へと一時的に遺伝子導入した。
具体的には、MCF−7細胞(1×10個)を直径3.5cmの組織培養皿に播種し、1日間培養後、2μgの上記プラスミドを、DEAE/デキストラン法で細胞に遺伝子導入した。(CellPhect Transfection Kit、Amercham Pharmacia、Code No.27−9268−01)48時間後の細胞溶解物のルシフェラーゼ活性をPica Gene発光kit(東洋インキ、東京、日本、Code No.309−04321)のプロトコールに従って測定し、細胞溶解物のタンパク質濃度によって標準化した。各実験は、3回づつ行い、ルシフェラーゼアッセイは、3回ずつ行った。また、スチューデンツT検定で有意差検定を行い、p<0.05未満の場合に有意差ありとした。
結果を図3に示す。図3に示すように、全長Siah−1プロモーター(配列番号2における塩基番号1〜2517)を有するプラスミドdelKpnIを導入した細胞は、極めて強いルシフェラーゼ活性を示し、配列表の配列番号2に示すDNAがSiah−1遺伝子のプロモーター領域であることが確認された。
また、ルシフェラーゼ活性について、全長Siah−1プロモーターを有するdelKpnI、delPstI、、delSmaI、、delBalI、delMulI、delNheIの間には有意差が認められなかったが、delNheIとdelXhoIの間には有意差が認められた。また、delXhoIを保持した細胞のルシフェラーゼ活性は、プロモーター領域を挿入していないpGVB2を保持した細胞のルシフェラーゼ活性とほぼ同様であった。
これらのことから、配列番号2の塩基番号2035〜2382の間に、Siah−1遺伝子のプロモーター活性に必須な転写因子結合部位またはエンハンサー部位が含まれていると考えられる。
実施例9−2
次いで、実施例9−2でプロモーター活性に寄与することが判明した塩基番号2035〜2384の領域にあって、実施例8で転写因子結合部位になり得ることが判明した二つのSp1部位(配列番号2の塩基番号2221〜2224(CCCGCC)および塩基番号2302〜2307(GGCGGG)の領域)に部位特異的突然変異を導入した。
具体的には、配列番号2の塩基番号2035〜2515を挿入したルシフェラーゼレポータープラスミドdelNheIから、QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)を用い、このキットの添付マニュアルに従って、塩基番号2219〜2224の領域に置換変異が導入されたプラスミドmSp1、塩基番号2302〜2307の領域に置換変異が導入されたプラスミドmSp2、この両領域に置換変異が導入されたプラスミドmSp12を作製した。また、ルシフェラーゼレポータープラスミドdelNheIの5’末端側の欠失変異体del−Sp1(塩基番号2269〜2515を有し、5’側のSp1部位が欠失している。)及びdel−Sp12(塩基番号2311〜2515を有し、両方のSp1部位が欠失している。)を、「Kilo Sequence Deletion Kit」(Takara)を用いて作製した。
実施例9−1と同様にして、各変異レポータープラスミドをMCF−7細胞へと一時的に遺伝子導入し、細胞溶解物のルシフェラーゼ活性を測定した。
各変異体の塩基配列およびルシフェラーゼ活性を図4に示す。図4の結果、配列番号2の塩基配列において、塩基番号2219〜2224の領域の置換又は欠失によりルシフェラーゼ活性が有意に減少している。このことから、塩基番号2219〜2224の領域がSiah−1プロモーター領域の中で基本プロモーター活性に関与する領域であると考えられる。
実施例10(p53タンパク質によるSiah−1遺伝子の制御)
p53タンパク質による内在性Siah−1の発現誘導を以下の方法で調べた。
p53が全欠失(null)変異しているヒト骨肉腫細胞Saos2を、10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、ニッスイNo.05919)に、1×106個播種し、37℃で24時間培養した。次いで、プラスミドベクターpCMV−neoBam(Dr.B.Vogelsteinから分与された)にp53cDNAを挿入したp53発現プラスミドp53pCMV−neoBam10μgを、LIPOFECTAMINE PLUS(GIBCO)(リポフェクトアミン試薬15μl、プラス試薬10μlを含む。)を用いてSaos2細胞にトランスフェクションした。
トランスフェクション後、12、24、32時間後にSaos2細胞をサンプリングし、トータルRNAをセパゾール(ナカライ)試薬を用いて抽出した。抽出したトータルRNAを10μgずつアガロースゲル電気泳動し、フィルターに移した後、アイソトープで標識したSiah−1のcDNAをハイブリダイズさせた。
また、p53が変異している赤白血病細胞株K562、p53が不活化(inactivated)しているヒト腎上皮細胞株293でも同様の実験を行った。
この結果、p53cDNAのトランスフェクション後、Siah−1のmRNA量が経時的に増加していた。このことから、p53タンパク質によりSiah−1の発現が誘導されることが分かった。
実施例11(p53タンパク質によるSiah−1遺伝子の制御)
p53が全欠失(null)変異しているヒト骨肉腫細胞Saos2を、10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、ニッスイNo.05919)に、1×105個播種し、37℃で24時間培養した。次いで、p53cDNAを挿入したp53発現プラスミドp53pCMV−neoBam(プラスミドpCMV−neoBamは、Dr.Vogelsteinから分与された。)20、25、250ngと、Siah−1プロモーター領域(配列番号2の塩基番号1〜2515と、さらに約1kb上流を含み、2箇所のp53結合配列を含む。)を挿入したルシフェラーゼレポータープラスミドpGVB2の0.5μgとを、LIPOFECTAMINE PLUS(GIBCO)(リポフェクタミン試薬1.5μl、プラス試薬2.25μlを含む。)を用いてSaos2細胞にトランスフェクションした。
トランスフェクション後、24時間後にSaos2細胞をサンプリングし、細胞溶解物のルシフェラーゼ活性を実施例6と同様にして測定した。この結果、p53によりルシフェラーゼ活性は有意に増加しなかった。従って、p53は、本発明のSiah−1プロモーター領域のうちp53結合部位とは異なる部位を介してSiah−1を発現誘導している可能性がある。
このことから、Siah−1プロモーター領域に作用することによりSiah−1の発現を誘導する物質は、がん等によりp53タンパク質が失活している場合に、p53パスウェイを正常に進行させる有効な物質であると考えられる。
産業上の利用可能性
DR5遺伝子およびSiah−1遺伝子は、p53タンパク質により転写誘導され、アポトーシスや細胞周期停止を引き起こすことによりがん抑制に関与している。従って、本発明のDR5遺伝子プロモーターおよびSiah−1遺伝子プロモーターは、それに直接または間接的に作用することによりDR5又はSiah−1遺伝子を転写レベルで活性化できる物質をスクリーニングするのに好適に使用できる。本発明のスクリーニング方法により選択される物質は、がん等の治療に非常に有効である。
【配列表】
Figure 2003038087
Figure 2003038087
Figure 2003038087

【図面の簡単な説明】
図1は、DR5プロモーター領域の欠失変異によるルシフェラーゼの発現量の変化を示す図である。
図2は、DR5プロモーターのSp1部位の変異によるルシフェラーゼの発現量の変化を示す図である。(A)は、各変異体の塩基配列を示す図であり、(B)はルシフェラーゼ発現量を示すグラフである。
図3は、Siah−1プロモーター領域の欠失変異によるルシフェラーゼの発現量の変化を示す図である。
図4は、Siah−1プロモーターのSp1部位の変異によるルシフェラーゼの発現量の変化を示すグラフである。

Claims (19)

  1. 以下の(a)若しくは(b)のDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
    (a)配列表の配列番号1における塩基番号1029〜1034の塩基配列若しくは塩基番号1075〜1080の塩基配列を含むDNA、又は、
    (b)配列表の配列番号1における塩基番号1029〜1034の塩基配列若しくは塩基番号1075〜1080の塩基配列と、これに隣接した上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接した下流側の最大6塩基の塩基配列とを含むDNA
  2. 以下の(c)若しくは(d)のDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
    (c)配列表の配列番号1における以下のいずれかの塩基配列を含むDNA、又は、
    (d)配列表の配列番号1における以下のいずれかの塩基配列と、これに隣接した上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接した下流側の最大6塩基の塩基配列とを含むDNA:
    塩基番号102〜108、133〜143、149〜162、174〜183、196〜210、208〜221、211〜220、212〜226、222〜231、263〜269、265〜278、296〜302、377〜383、370〜376、409〜420、430〜440、431〜436、457〜470、458〜470、482〜492、498〜507、499〜503、500〜505、528〜534、536〜541、537〜542、542〜547、549〜561、555〜567、553〜560、559〜566、575〜587、593〜598、598〜610、601〜610、614〜619、618〜623、642〜648、650〜656、657〜662、683〜697、700〜707、742〜747、774〜779、785〜798、788〜792、792〜799、795〜801、809〜813、814〜825、815〜825、861〜867、867〜872、867〜873、901〜913、901〜904、902〜911、915〜923、919〜924、924〜939、921〜928、926〜933、930〜936、948〜957、971〜977、972〜978、989〜994、1026〜1035、1029〜1034、1048〜1057、1075〜1080、1097〜1103、1106〜1113、1125〜1133、1169〜1175、1200〜1209、1153〜1162、1160〜1169、1160〜1168、1206〜1305、1209〜1220、1230〜1238、1297〜1304、1324〜1331、1366〜1377、1373〜1380、1373〜1382、1391〜1398、1421〜1430、1430〜1342、1334〜1341、1521〜1530、1583〜1589、1591〜1600、1590〜1596、1591〜1600、1593〜1604、1607〜1614、1608〜1615、1626〜1636、1626〜1638、1628〜1637、1629〜1638、1629〜1641、1630〜1641の塩基配列
  3. 配列表の配列番号1における塩基番号619〜776の塩基配列、塩基番号777〜1025の塩基配列および塩基番号1026〜1108の塩基配列のうち少なくとも1の塩基配列を含むDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
  4. 配列表の配列番号1における塩基番号1〜1108の塩基配列を含むDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
  5. 配列表の配列番号1の塩基配列を含むDNA、又は、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
  6. 以下の(e)若しくは(f)のDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
    (e)配列表の配列番号2における塩基番号2219〜2224の塩基配列(CCCGCC)を含むDNA、又は、
    (f)配列表の配列番号2における塩基番号2219〜2224の塩基配列と、これに隣接した上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接した下流側の最大6塩基の塩基配列とを含むDNA
  7. 以下の(g)若しくは(h)のDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
    (g)配列表の配列番号2における以下のいずれかの塩基配列を含むDNA、又は、
    (h)配列表の配列番号2における以下のいずれかの塩基配列と、これに隣接した上流側の最大6塩基若しくは/及びこれに隣接した下流側の最大6塩基の塩基配列とを含むDNA:
    塩基番号95〜104、158〜170、272〜278、320〜326、362〜368、438〜444、568〜575、753〜762、1383〜1391、1438〜1447、1509〜1515、1613〜1619、1649〜1660、1715〜1724、1728〜1737、1789〜1797、1826〜1832、1889〜1895、2058〜2069、2074〜2078、2103〜2107、2209〜2216、2219〜2224、2302〜2307、2317〜2324の塩基配列
  8. 配列表の配列番号2における塩基番号2035〜2382の塩基配列を含むDNA、または、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともにプロモーターとして機能するDNA。
  9. 配列表の配列番号2の塩基配列を含むDNA、又は、このDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとともに、プロモーターとして機能するDNA。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のDNAとこのDNAに発現可能に連結されたレポーター遺伝子とを含むベクターを保持する細胞に被験物質を接触させる工程と、被験物質の接触によるレポーター遺伝子の発現量の変化を検出する工程とを含むプロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法。
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載のDNAとこのDNAに発現可能に連結されたレポーター遺伝子とを含むベクターを保持する細胞に被験物質を導入する工程と、被験物質の導入によるレポーター遺伝子の発現量の変化を検出する工程とを含むプロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法。
  12. 請求項1〜9のいずれかに記載のDNAに被験物質を接触させる工程と、このDNAと結合した物質を検出する工程とを含むプロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法。
  13. 請求項1〜9のいずれかに記載のDNAに、被験物質の存在下および非存在下で、DNA結合蛋白質を接触させる工程と、被験物質の存在による前記DNAへのDNA結合蛋白質の結合量の変化を検出する工程とを含むプロモーター活性を調節する物質のスクリーニング方法。
  14. 請求項10に記載のスクリーニング方法により得られるプロモーター活性を調節する物質。
  15. 請求項11に記載のスクリーニング方法により得られるプロモーター活性を調節する物質。
  16. 請求項12に記載のスクリーニング方法により得られるプロモーター活性を調節する物質。
  17. 請求項13に記載のスクリーニング方法により得られるプロモーター活性を調節する物質。
  18. 請求項1〜9のいずれかに記載のDNAとこのDNAに発現可能に連結されたレポーター遺伝子とを含むベクター。
  19. 請求項18のベクターを保持する細胞。
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