JPS643859Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、強度を低下させずに他部材と接合し
得るようにした繊維強化合成樹脂製ばね板に関す
る。

従来の技術及び考案が解決しようとする問題点 近年、乗用車、小形貨物車等の自動車の車体重
量軽減の一環として懸架装置用の板ばねを鋼製か
ら繊維強化合成樹脂（以下、FRPと称する）製
に変更する動きがあるが、全体をFRPとするに
は、板端の目玉部の形成方法などに解決すべき問
題が残されており、第１段階として、目玉部を有
する親板を鋼製とし、これにFRP製の子板を重
ねあわせて結束した重ね板ばねの実用化が進めら
れている。この場合、従来の全鋼製の重ね板ばね
のように、親板と子板とに取付孔を貫設し、これ
に通したボルトで締め付けて結束すると、FRP
製ばね板内の補強繊維が取付孔の部分で切断され
て強度及び耐久性が著しく低下する結果となる。
このため、FRP製ばね板の成形時にピンを挿入
しておき、加圧成形して合成樹脂が硬化したのち
このピンを抜き取つて取付孔を形成するか、もし
くは、金属製の筒体を埋め込んで成形し、筒体の
中心孔を取付孔とすることにより補強繊維を切断
しないで取付孔を形成する方法が提案されている
が、鋼製のばね板との間に前後方向の力が作用す
ると、ボルト若しくは筒体が楔状に食い込んで
FRP製ばね板が補強繊維に沿つて亀裂を生ずる
ことがある。このような問題は、FRP製のばね
板に当て板等を接合する場合にも同様に生ずるこ
とである。

問題点を解決するための手段 このように、他部材と接合することによる強度
の低下を回避するための手段として、本考案の
FRP製ばね板は、他部材と接合する面に、その
ばね板の長手方向断面が円弧をなし、かつ、他部
材に形成された凸部と緊密に嵌合する凹部を形成
し、補強繊維を該凹部の円弧に沿う流線状に配し
た構成とした。

なお、本明細書において、繊維強化合成樹脂
（FRP）とは、熱硬化性合成樹脂を使用した狭義
のFRPの外に、熱可塑性合成樹脂を使用した
FRTPを含む広義のFRPを指称するものである。

考案の作用及び効果 本考案は上記構成になり、凹部を、そのばね板
の長手方向において円弧をなすようにして埋め込
まれた補強繊維を円弧に沿う滑らかな流線状に配
したから、補強繊維の粗密の差が小さく、角が生
ずるような形状の凹部を形成した場合のように、
補強繊維がほとんど存在しないで強度が著しく低
い部分が生ずることがなく、凹部の全体にわたつ
て耐圧強度が高く、他部材との間にばね板の長手
方向の力が作用して他部材の凸部が凹部に強く押
し付けられても容易に圧潰したり亀裂を生じたり
するおそれがなく、他部材との間に強固な位置決
めを構成することができる効果がある。

実施例 以下、本考案の一実施例を添付図面に基づいて
説明する。

第１，２図に示す本考案の第１実施例におい
て、鋼製の親板１の両端にはその板端を回曲した
目玉部２，２が一体に形成され、長さ方向及び幅
方向の中央に取付孔３が透設されており、この取
付孔３に、上面に頭部５を突出し、下端を圧潰し
て半球形の凸部６を形成したリベツト４が固着さ
れている。親板１の下面に重ね合わされるFRP
製の子板７は、ガラス繊維、炭素繊維等の長繊維
からなる補強繊維８を一定幅に整列してエポキシ
樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フエノール樹脂
等の熱硬化性合成樹脂または熱可塑性合成樹脂を
含浸させ、これを上下方向に積層して加圧成形
し、合成樹脂を硬化させたものであつて、成形用
の金型の上型の内面に前記リベツト４の凸部６に
対応する形状の凸部を形成しておき、この凸部に
よつて素材の上面を押圧することにより、この子
板７の上面に半球形の凹部９が形成される。ここ
で、子板７内の補強繊維は、上型の凸部により押
圧されて上面近くのものが凹部９にそつてわん曲
した流れとなつているが、いずれも切断されてい
ないのである。この凹部９の深さ及び直径は、大
きければ大きい程、リベツト４の凸部６との係合
が強固となつて親板１とのずれの防止に有効であ
るが、子板７の強度低下の原因となり、また、補
強繊維８を切断させずに凹成することが困難とな
るから、子板７の厚さ及び幅の夫々２分の１以
下、好ましくは、３分の１から５分の１程度とす
るのが良い。なお、凹部９の深さ若しくは直径が
大きい場合には、子板７の中央部の下面若しくは
両側面を膨出させて断面の減少及びこれに伴なう
補強繊維８の高密度化を防止するようにしてもよ
い。

このように成形されたFRP製の子板７は、上
面の凹部９をリベツト３の凸部６に緊密に緊合し
て鋼製の親板１の下面に重ね合わされ、両側の板
端近くにおいてバンド１０，１０により締め付け
られて親板１と結束される。

本考案にかかるFRP製ばね板の中央部を他部
材である鋼製の親板に接合する方法のいくつかの
例を前記第１実施例の重ね板ばねについて説明す
ると、第３，４図はＵボルトｂを用いて車軸ａへ
の固定を兼ねる構造のものであつて、第３図例は
親板１と車軸ａの間にスペーサｆを介在させ、子
板７の下面にプレートｃを当ててナツトｄで締め
付けたものであり、第４図例は親板１と子板７に
ゴム板等の緩衝板ｇと互いに当接する締め板ｈを
介して第３図例と同様にＵボルトｂ、プレートｃ
及びナツトｄで車軸ａに固定し、かつ両ばね板
１，７を結束したものである。また、第５，６図
は両ばね板１，７の結束のみを目的とするもので
あつて、第５図例は両ばね板１，７を緩衝板ｇを
介して鋼板製のバンドｉで結束し、そのバンドｉ
を両端に形成した鉤片ｊで係止したものであり、
第６図例は同じく両ばね板１，７に緩衝板ｇを介
して上面と下面に夫々鋼板製の締め板ｋ，ｍを当
て、下面側の締め板ｍを内側へ曲げて鉤部ｎで上
面側の締め板ｋと係合したものである。

【図面の簡単な説明】

添付図面は本考案の実施例を示し、第１図は第
１実施例の一部切欠側面図、第２図は同平面図、
第３〜６図は、夫々、本考案のFRP製ばね板を
他部材である鋼製の親板に接合して結束した構造
を示す断面図である。 １：鋼製の親板（他部材）、７：繊維強化合成
樹脂製の子板、８：補強繊維、６：凸部、９：凹
部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 一面に他部材が接合される繊維強化合成樹脂製
   ばね板であつて、該ばね板の前記一面に、該ばね
   板の長手方向断面が円弧をなし、前記他部材に形
   成された凸部と緊密に嵌合する凹部を形成し、補
   強繊維を該凹部の円弧に沿う流線状に配したこと
   を特徴とする繊維強化合成樹脂製ばね板。