JPH0115861Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は燃料を燃料噴射ノズルより燃焼室に直
接噴射する、いわゆる直接燃料噴射式（以下、直
噴式という）デイーゼル機関の燃焼室の改良に関
するものである。

［従来の技術］ 最近、デイーゼル機関、特に直噴式デイーゼル
機関においては、燃焼室回りの断熱性を向上させ
ることにより、冷却損失を減少させ、燃焼室壁面
に噴射された燃料の蒸発遅れに起因するHC、ス
モークの発生を防止することが試みられている。

その一例としては、実開昭54−45821号公報に
開示された直噴式デイーゼル機関のピストンを挙
げることができる。

ところが、このピストン、突起部を有する燃焼
室の底部のみをセラミツク製にして断熱性の向上
を図つているので、燃料噴射ノズルからの燃料が
当接する毎に冷却される側壁面部分の断熱化が全
く考慮されておらず、折角の断熱効果も半減して
しまうという問題があつた。

更に、実開昭56−54233号公報および実開昭57
−50499号公報には、機関の吸入効率を損わずに
燃焼室の断熱化を図るために、燃焼室側壁の一部
に断熱部材を設けるようにした直噴式デイーゼル
機関が開示されているが、ピストン本体に対して
前記断熱部材を直接設けるので、ピストン本体へ
の熱伝達率が大となり、断熱効果の優れた燃焼室
が得られないという問題があつた。

また、実開昭56−57926号公報には、リング状
の支持部材に中空の断熱部材を連結部材を介して
夫々溶接により予め一体化したものをピストン鋳
造時に鋳込んでなる燃焼室が開示されているが、
前記支持部材と断熱部材と連結部材を前記のよう
に予め溶接により一体化する必要があり、製造工
程が増大するという問題があつた。

更に、実開昭53−162205号公報にピストン本体
に海綿状金属を介在してピストンクラウンをボル
トにより装着する燃焼室が開示されているが、燃
焼室の全周にわたつて断熱化が図られているの
で、機関の吸入効率が損われるおそれがあり、か
つ前記ピストンクラウンをボルトにより取付るだ
けなので、ガスシールが不充分となり、ピストン
クラウンと前記海綿状金属とピストン本体の夫々
の間隙に常に燃焼ガスが侵入し断熱効果が低下す
るおそれがあつた。

本考案は、前述のような従来内燃機関の燃焼室
の欠点を克服するために考案したものであり、キ
ヤビテイ側壁部の燃料噴射領域にセラミツク製部
分断熱壁を設けることにより機関の吸入効率およ
び出力を損うことなく断熱化を図るとともに、前
記部分断熱壁の背面にステンレス製緩衝網を設け
ることにより前記部分断熱壁の断熱性能の向上と
強度増大による耐久性、信頼性の向上とを図り、
かつ前記部分断熱壁の背面に設けた突起に前記熱
緩衝網の係合凹部を係合して一体化することによ
り製造を容易にした直噴式デイーゼル機関の燃焼
室を提供することを目的とするものである。

［問題点を解決すべき手段］ 前記目的を達成するために、本考案の直噴式デ
イーゼル機関の燃焼室はセラミツク製部分断熱壁
の背面に設けた突起にステンレス製熱緩衝網の係
合凹部を係合し、アルミニウム製ピストン頂部に
形成されたキヤビテイ側壁部に前記部分断熱壁と
前記熱緩衝網を前記部分断熱壁の表面が燃料噴射
領域に位置するように鋳込みにより設けられてい
るものである。

［作用］ 前記構成を有する本考案の直噴式デイーゼル機
機関の燃焼室は、噴射ノズルからの燃料は前記燃
噴射領域に配設された前記セラミツク製部分断熱
壁により適切に蒸発し、燃焼室内の空気流と混合
して燃料し、燃料の蒸発遅れに起因するHC、ス
モークの発生が防止されるとともに、機関の高負
荷時における燃焼室温度の異常上昇が抑止され、
吸入効率の低下およびそれによる出力低下、更に
NOXの増大が防止される。

また、本考案の直噴式デイーゼル機関の熱焼室
は、セラミツク製部分断熱壁の背面に設けた突起
にステンレス製熱緩衝網の係合凹部を係合するの
で、前記熱緩衝網は前記セラミツク製部品断熱壁
に生ずる熱応力による熱変形を抑える熱緩衝作用
が得られるばかりでなく、前記セラミツク製断熱
壁に対して強度的に補強作用をなすため、燃焼室
の耐久性、信頼性が向上する。

更に、本考案の直噴式デイーゼル機関の熱焼室
は、セラミツク製部分断熱壁の背面に設けた突起
にステンレス製熱緩衝網の係合凹部を係合し、ア
ルミニウム製ピストン頂部に形成されたキヤビテ
イ側壁部に前記部分断熱壁と前記熱緩衝網を前記
部分断熱壁の表面が燃料噴射領域に位置するよう
に鋳込みにより設けられているので、前記部分断
熱壁と前記熱緩衝網の結合は前記突起と前記係合
凹部との係合により行い得るため、ピストンに鋳
込む前の製造工程において前記部分断熱壁と前記
熱緩衝網とを結合するための溶接作業が不要とな
り、製造が容易となる。

［実施例］ 以下、本考案に１実施例を図について説明す
る。１はアルミニウム製の直噴式デイーゼル機関
のピストンで、その頂部２に燃焼室となるキヤビ
テイ３が形成されている。このキヤビテイ３の断
面形状及び深さは、各機関により適宜に選択され
ることは当然である。４はキヤビテイ３の底部中
央に形成された中央突起である。このように形成
されたピストン１のキヤビテイ３の側壁部３ａの
燃料噴射ノズル５から噴射される燃料ｆが当接す
る燃料噴射領域３ｂに熱緩衝部材としてのステン
レス製熱緩衝網６を介してセラミツク材からなる
セラミツク製部分断熱壁７を設けている。

この部分断熱壁７のピストン１への組付けは、
先ず、セラミツク材により予め円弧状に形成され
た部分断熱壁７の背面にある突起７ａに、ステン
レス製熱緩衝網６の係合凹部６ａを係合し、この
後、この係合した部分断熱壁７と熱緩衝網６を前
記部分断熱壁７の表面が燃焼噴射領域３ｂに位置
するように鋳込みによつて設けられるものであ
る。

８は着火及び暖機促進のために、図示しない機
関のシリンダヘツド側に固定されて設けられたセ
ラミツク製グロープラグである。このグロープラ
グ８は、その加熱効果を大ならしめるために、そ
のヒータ部８ａを平板状となし、その平板面をキ
ヤビテイ３内の空気渦流（スワール）Ｓの方向に
対して対向するような位置に設定されている。

また、燃料噴射ノズル５は、第４図および第５
図に詳細構成を示すように、弁本体９の先端側に
セラミツク材により構成された噴孔部１０を接合
して成り、それらの外周部に形成したキー溝１
１，１１ａとの間にキー１２を差しこんで位置決
めを行なつた後に、その噴孔部１０の下部を抱く
ようにノズルナツト１３を嵌合し、そのねじ部１
３ａを弁本体９のねじ部９ａに螺合して構成し、
ノズルヘツド１３をもつて機関のシリンダヘツド
に、噴孔部１０がピストン１の上死点付近に上昇
した時にキヤビテイ３内に臨むように装着されて
いる。

更に、噴孔部１０には、キヤビテイ３の部分断
熱壁７に向けて、燃料ｆを噴射するように、断面
形状が第５図Ｂに示すように矩形をなす単一の噴
孔１４が設けられている。

また、弁本体９の下部は縮小されて弁座部９ｂ
を構成していて、この弁座部９ｂに針弁１５が着
座したり、離間したりして、燃料ｆを遮断した
り、噴射したりするように構成されている。

そして、前記針弁１５は弁本体９の弁座部９ｂ
には着座するが、セラミツク製噴孔部１０に接触
することがないように間隙１０ａが設けられてい
る。

更に、前記の本実施例における部分断熱壁７、
噴射ノズル５の噴孔部１０及びグロープラグ８の
ヒータ部８ａを構成するセラミツク材としては、
熱膨張係数が小さく、且つ耐熱衝撃性に優れる窒
化珪素（Si₂ N₃）焼結体や窒化珪素に酸化アル
ミニウム（Al₂ O₃）成分を含有させたサイアイ
ロンが最も適している。

また、第１図、第２図及び第３図における符号
Ｆは、噴射ノズル５からの燃料ｆの噴射方向を示
している。

前記のようにしてなる本考案の実施例における
直噴式デイーゼル機関の熱焼室は、燃料噴射ノズ
ル５から噴射される燃料ｆが当接するキヤビテイ
３の側壁部３ａにおける燃料噴射領域３ｂをセラ
ミツク製の部分断熱壁７により構成したので、キ
ヤビテイ３内の高負荷時の異常温度上昇が抑止さ
れ、機関の吸入効率および出力を損うことなくキ
ヤビテイ３、即ち燃焼室内の断熱効果が向上する
ものである。

従つて、燃焼室の断熱効果の向上により、冷却
損失を減少させ、燃焼室壁面における部分断熱壁
７に噴射されかつ塗布された燃料の蒸発遅れに起
因するHC、スモークの発生が防止される。

また、部分断熱壁７の背面に結合される熱緩衝
部材としてステンレス製熱緩衝網６を採用したの
で、セラミツク製の部分断熱壁７とアルミニウム
製のピストン１の本体との間で、熱応力による変
形を抑える緩衝作用がなされ、耐熱性に優れた断
熱ピストンを提供することができるとともに、ス
テンレス製熱緩衝網６はセラミツク製部分断熱壁
７に対して強度的に補強作用をなすため、キヤビ
テイ３即ち燃焼室の久性、信頼性が向上する。

更に、前記ステンレス網６は、その製造時に、
アルミニウム溶湯が網内部に浸透しないので、部
分断熱壁７の背面付近に空気層が形成されている
から、それが断熱層として機能することになり、
燃焼室の断熱効果が一段と向上する。

次に、本考案の前記実施例では、噴射ノズル５
の噴孔部１０セラミツク製としたので、燃焼室か
らの放射熱を受け、それによつて針弁１５の焼付
き、噴孔１４の詰り、弁座部９ｂの過度の摩耗等
の不具合の発生が防止される。

更に、噴孔１４の断面形状を矩形状にしたの
で、燃料ｆは第３図に示すように矩形状に断熱壁
７に向けて噴霧されるから、キヤビテイ３内の空
気渦流Ｓとの混合率が増大し、燃焼効率が向上す
る。

また、着火促進のため設けたグロープラグ８の
ヒータ部８ａをセラミツク製にすると共に平板状
にしたので、キヤビテイ３内の燃料と空気との混
合気に触れる面積が大幅に増大するから、始動促
進がより向上する。

［考案の効果］ 以上のように、本考案の直噴式デイーゼル機関
の熱焼室は、セラミツク製部分断熱壁の背面に設
けた突起にステンレス製熱緩衝網の係合凹部を係
合し、アルミニウム製ピストン頂部に形成された
キヤビテイ側壁部に前記部分断熱壁と前記熱緩衝
網を前記部分断熱壁の表面が燃料噴射領域に位置
するように鋳込みにより設けられているので、燃
料噴射ノズルからの燃料は前記燃料噴射領域に配
設されて断熱化された前記セラミツク製部分断熱
壁により適切に蒸発し、燃焼室内空気流と混合し
て燃焼し、燃料の蒸発遅れに起因するHC、スモ
ークの発生が防止されるとともに、機関の高負荷
時における燃焼室温度の異常上昇が抑止され、吸
入効率の低下およびそれに伴う出力低下、更に、
NOXの増大が防止される効果がある。

また、本考案の直噴式デイーゼル機関の熱焼室
は、セラミツク製部分断熱壁の背面に設けた突起
にステンレス製熱緩衝網の係合凹部を係合するの
で、前記熱緩衝網は前記セラミツ製部分断熱壁に
生ずる熱応力による変形を抑える熱緩衝作用が得
られるばかりでなく前記セラミツク製部分断熱壁
に対して強度的に補強作用をなすため、燃焼室の
耐久性、信頼性が向上する効果がある。

更に、本考案の直噴式デイーゼル機関の熱焼室
は、セラミツク製部分断熱壁の背面に設けた突起
にステンレス製熱緩衝網の係合凹部を係合し、ア
ルミニウム製ピストン頂部に形成されたキヤビテ
イ側壁部に前記部分断熱壁と前記熱緩衝網を前記
部分断熱壁の表面が燃料噴射領域に位置するよう
に鋳込みにより設けられているので、前記部分断
熱壁と前記熱緩衝網の結合は、前記突起と前記係
合凹部との係合により行い得るため、ピストンに
鋳込む前の製造工程において前記部分断熱壁と前
記熱緩衝網とを結合するための溶接作業が不要と
なり、製造が容易となる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例における燃焼室の縦断
面図、第２図は第１図のＡ−Ａ断面線矢視断面
図、第３図は同燃焼室の斜視図、第４図は同実施
例における燃料噴射ノズルの一部破断正面図、第
５図Ａは同燃料噴射ノズルの要部拡大断面図、第
５図Ｂは第５図Ａの噴孔のＢ矢視図である。 １……ピストン、２……頂部、３……キヤビテ
イ、３ｂ……燃料噴射領域、５……噴射ノズル、
６……ステンレス製熱緩衝網、７……セラミツク
製部分断熱壁、８……グロープラグ、６ａ……係
合凹部、７ａ……突起、８ａ……ヒータ部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. セラミツク製部分断熱壁の背面に設けた突起に
   ステンレス製熱緩衝網の係合凹部を係合し、アル
   ミニウム製ピストン頂部に形成されたキヤビテイ
   側壁部に前記部分断熱壁と前記熱緩衝網を前記部
   分断熱壁の表面が燃料噴射領域に位置するように
   鋳込みにより設けられていることを特徴とする直
   噴式デイーゼル機関の燃焼室。