JPS6242082Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、内燃機関の弁開閉用カムシヤフトに
関するものであり、特に、焼結合金と鋼等の異種
材料を組合せた複合カムシヤフトに関する。

近年、内燃機関においては、省燃費の必要性か
ら機関の軽量化の要求が高まる中で、機関の主要
部であり、且つ重量も大きいカムシヤフトの軽量
化が注目されている。このカムシヤフトは弁開閉
の中間媒体であるロツカーアームやタペツトなど
のカムフオロワと高面圧で摺接し、その摺接の仕
方も一様ではないためカムシヤフトとカムフオロ
ワには特別の耐摩耗性が考慮されねばならない。
同時にカムシヤフトに加わるカムフオロワからの
面圧が高く、さらに吸気・排気の多気筒数分の荷
重がカムシヤフトに加わるためにカムシヤフト自
体には相当な剛性が要求されるばかりでなく、機
関回転数の高速化に対応したカムシヤフトの疲労
強度の向上も必要となつている。

このように、カムシヤフトに必要とされる、耐
摩耗性と強度、さらに軽量化を達成するために
は、適切な材料により組立てられた複合カムシヤ
フトとすることが必要である。

従来、一般的な複合カムシヤフトとして軽合金
を用いるものと鋼パイプを用いるものの２種類が
あるが、小型カムシヤフト以外は鋼パイプを用い
るのが普通である。

また、カムフオロワと摺接するカムロブに耐摩
耗性に優れた焼結合金が用いられる。即ち、複合
カムシヤフトは強度に優れ且つ軽量である鋼パイ
プと耐摩耗性に優れた焼結合金の利点を生かすも
のであるが、問題となるのは、カムロブを形成す
る焼結合金と、ステムを形成する鋼パイプの接合
方法である。

従来、カムロブとステムとをロウ付けすること
や、カムロブの焼結中にカムロブとステムを焼結
合金の収縮と拡散結合によつて固着する方法がと
られている。しかしカムロブとステムとをロウ付
けすることや、焼結収縮を利用する場合には、カ
ムシヤフトにすべてのカムロブを位置決めし、組
付けた状態で行うことが必要であり、結合前の不
安定な状態で取扱うため特別な注意が必要とされ
るばかりでなく、通常ろう付けや焼結は炉中で行
われるために、限られた炉容積に対して大きな容
積を占めるカムシヤフトを処理することとなり、
量産性が落ちる欠点がある。

本考案は、上記の課題を解消するために、カム
ロブを鋼製パイプに予め固着してなるカムパイプ
と、該カムパイプ端部に嵌装させて固着する焼結
合金製以外の構成部材とでカムシヤフトを構成す
ることにより軽量化と、強度及び耐摩耗性を達成
し、更に該構成部材の端部には、該カムパイプの
内周側または外周側と嵌合する突出部または嵌合
溝を設けることにより組立てが容易であり、生産
性の高いカムシヤフトを提供することを目的とす
るものである。

以下、本考案を具体化した実施例を図面に基づ
いて説明する。第１図は、本考案のカムシヤフト
の一実施例を示したものであり、少なくとも焼結
合金製で形成されたカムロブ３１，３２を鋼パイ
プ２の外周面に固着したカムパイプ１・１・１・
を予め形成する。このカムパイプはカムシヤフト
全長に比べ数分の１と短い。このカムパイプ１に
固着されるカムロブ３１，３２は、通常は吸気側
のカムロブ３１と排気側のカムロブ３２の２つで
あつて、圧粉体の状態か、または一次焼結された
状態で鋼パイプ２に位置決め組付けられ、炉中で
焼結されることによりカムパイプ１が形成され
る。この際にカムロブ３１，３２は焼結が進むと
同時に鋼パイプへの拡散による冶金学的結合が進
み、カムロブ３１，３２と鋼パイプは強固に結合
される。

このようにして予め形成されたカムパイプ１は
ジヤーナル４、ジヤーナル部品５や、軸端部品
６、軸端ジヤーナル７に結合されるが、これらの
カムロブ以外の構成部材は鋼により形成されてお
り、それぞれカムパイプ１の内周側にまたは外周
側１１と嵌合する突出部または嵌合溝が設けられ
ている。これは、軸端部品６や軸端ジヤーナル７
を除いたカムシヤフトの中間にあつてその継ぎ手
として作用するためであり、ジヤーナル４の突起
４１・４１、またはジヤーナル部品５の突起５
１、５１は、それぞれカムパイプ１の内周側１２
と嵌合して組立てられる。この突起４１、４１や
５１、５１は、カムパイプ１との接合部をなすと
同時に結合の補強作用をなすものである。

ここでジヤーナル部品５とは、ジヤーナルとカ
ムロブ以外のカムシヤフト構成部分であるギアや
カムギアを共に形成した部品のことをいい、実施
例に示す如く、ジヤーナルを形成する部分５４と
カムギアを形成する部分５３とが一体的に形成さ
れてもさしつかえないが、別々の材料で形成した
後に結合されたものであつてもかまわない。ま
た、軸端部品６や軸端ジヤーナル７は各カムパイ
プ１と嵌合するための嵌合溝６１、７１が形成さ
れる。

このようにしてカムパイプ１・１・１・と軸端
ジヤーナル７、ジヤーナル４、ジヤーナル部品
５、軸端部品６を組付けた後に、カムパイプ１、
１、１と各ジヤーナル４、軸端ジヤーナル７、ジ
ヤーナル部品５、軸端部品６とのあわせ部１４、
１４、１５、１５、１６、１７とが、すみ肉溶接
されてカムシヤフトの結合が完了する。

この溶接は溶接歪をできるだけ少なくすべく高
密度エネルギーを有する溶接手段であるMIG、
TIG溶接が好適であるが、カムシヤフトが複雑で
あり、かつカムロブとジヤーナル間隔が短い等の
場合には肉量の少ないTIG溶接が好ましい。

第２図は、本考案のカムシヤフトの別の実施例
を示したものである。ジヤーナル４などのカムパ
イプ１・１間に介在する構成部品とカムパイプ１
とを溶接する手段としてはTIG溶接が適するが、
さらに溶接歪が少なく、溶接時間を短縮するため
には電子ビームやレーザー等の高エネルギービー
ム溶接が好ましい。この場合には、第２図に示す
ように、ジヤーナル４の突出部４１にカムパイプ
１の外周側１１と径を同じくする段部４２を設
け、溶接部４３をジヤーナル４の側面から遠ざけ
る必要がある。

第３図は本考案のカムシヤフトの更に別の実施
例を示したものである。カムパイプ１とジヤーナ
ルを組立てる場合には、第３図に示すようにカム
パイプ１及びジヤーナル４の突起４１に、それぞ
れ穴１０，４０を穿設して、テーパキー９，９を
打ち込み、ジヤーナル４とカムパイプ１の回転位
置決めと仮止めを行うことにより作業性を向上さ
せることができる。

第４図は、本考案のカムシヤフトの更にまた別
の実施例を示したものである。ジヤーナル４等の
カムパイプ１間に介在する構成部材にはカムパイ
プ１の外周１１と嵌合する嵌合溝４４を設ける。
さらに、この場合は、ジヤーナル４の位置決めの
ために、カムパイプ１の端面と当接する嵌合溝端
部４５が必要となるが、これは第５図に示すよう
にジヤーナル４の内周側にストツパリング４６を
組付けることによつても代用できる。

しかし、このようにジヤーナル４やジヤーナル
部品５の如きカムパイプ１・１間に介在する構成
部材に、カムパイプ外周側と嵌合する溝を設けて
組付けるものは、強度の点で相対的に劣るため、
比較的軽量荷の内燃機関に使用される。

これまでの実施例においては、カムロブのみが
焼結合金であり、他の構成部材はすべて鋼の場合
につき説明したが、場合によりカムギアは焼結合
金で作製されることもある。このようにカムロブ
以外にも焼結合金製部品がある場合には、カムロ
ブとこれに隣接する焼結合金製部品を鋼パイプに
予め固着してカムパイプを形成し、更にカムパイ
プ間に介在する焼結合金製以外の構成部品と結合
するものである。

以上述べたように本考案に用いられるカムパイ
プはカムシヤフト全長に比べ数分の１と短く且つ
各カムパイプは隣接するカムロブのみを固着して
形成されしかも形状が統一できるので炉中で焼結
するに際して量産性が高く、しかも多数のカムロ
ブを組付けるのではなく、少数のカムロブの位置
決めに注意するだけで良いため、作業性と組付誤
差が改善される。カムロブを鋼パイプにロウ付け
する場合にも同様の量産性と生産性の向上が達成
できる。

また、カムパイプ間に介在するジヤーナルやジ
ヤーナル部品に突起を設けることによつて、カム
パイプとジヤーナル・ジヤーナル部品との組立て
が容易となるばかりでなく、結合強度も増大す
る。

更に、溶接するに際し、MIG、TIG溶接や電子
ビーム・レーザー等の高エネルギービーム溶接が
可能であるので溶接歪が少く、溶接時間を短縮で
きる等の種々の効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案カムシヤフトの一実施例を示
す断面図であり、第２図は、本考案カムシヤフト
の別の実施例を示す要部断面図であり、第３図
は、本考案カムシヤフトの更に別の実施例を示す
要部断面図であり、第４図は、本考案カムシヤフ
トの更にまた別の実施例を示す要部断面図であ
り、第５図は、第４図に示す実施例の変形例を示
す要部断面図である。 図中、１……カムパイプ、２……鋼パイプ、
３，３１，３２……カムロブ、４……ジヤーナ
ル、５……ジヤーナル部、６……軸端部品、７…
…軸端ジヤーナル、９……テーパキー、１０，４
０……穴、１１……外周側、１２……内周側、１
４，１５，１６，１７……あわせ部、４１，５１
……突出部、４２……段部、４３……溶接部、４
４……嵌合溝、４６……ストツパリング、であ
る。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 焼結合金製のカムロブを鋼製パイプに予め固着
   してなるカムパイプと、該カムパイプ端部に嵌装
   させて固着する焼結合金製以外の構成部材とから
   なり、該構成部材の端部には、該カムパイプ内周
   側または外周側と嵌合する突出部または嵌合溝を
   設けたことを特徴とするカムシヤフト。