JPS6124754Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、トルクコンバータと遊星歯車装置
とを組合せてなる自動車の動力伝達装置に関する
ものである。

この種の動力伝達装置をエンジン横置式のパワ
ーユニツトとして設計する場合には、トルクコン
バータと遊星歯車装置との間に減速歯車装置を配
置し、トルクコンバータから伝達軸を介して遊星
歯車装置に伝達された動力を遊星歯車装置内で反
転させ、トルクコンバータ側に出力させて減速歯
車装置を介して差動歯車装置へ伝達させる構成が
とられる。

また、パワーユニツトのケースは、組付性を考
慮してトルクコンバータを収容するハウジングと
遊星歯車装置を収容するトランスミツシヨンケー
スとに２分割して構成される。

しかし、このようなパワーユニツト構造におい
ては、遊星歯車装置の出力軸及びこの出力軸にス
プライン嵌合される減速歯車の軸受構造が複雑に
なると共に出力軸はトランスミツシヨンケース側
に軸受され、他方、減速歯車はハウジング側に軸
受されるため、両軸受間に軸芯にズレが生じやす
く、組付けに支障をきたしたり、異音の発生やベ
ヤリングの寿命が低下する等種々な不具合が生じ
る。

この考案は、上記のような問題を解決すべくな
されたものであり、トルクコンバータのステータ
シヤフトの一端に大径のフランジ部を一体に成形
し、該フランジ部とトランスミツシヨンケースの
隔壁間に減速歯車装置の減速歯車を配置し、該減
速歯車をトランスミツシヨンケースの隔壁から突
出する遊星歯車装置の出力軸にスプライン嵌合す
ると共に減速歯車の側部外周をベヤリングを介し
てステータシヤフトのフランジ部に突出成形され
た軸受ハウジングに軸受支持する一方、トルクコ
ンバータを収容するハウジングにボス穴を設け、
該ボス穴にステータシヤフトのフランジ部を密接
に嵌合すると共にフランジ部の外周部をトランス
ミツシヨンケースの合せ面に直接ボルトを結合す
ることにより、トランスミツシヨンケース側に設
けられる出力軸の軸受とハウジング側に位置する
減速歯車の軸受の両軸芯を精度よく合致さると共
に軸受構造の簡素化及び軸受の寿命を向上させた
ものである。

以下、図面に示す実施例に従つて詳細に説明す
る。図において、１はハウジング、２はトランス
ミツシヨンケースであり、ハウジング１内には、
ポンプ３ａ、タービン３ｂ及びステータ３ｃから
なるトルクコンバータ３が内装されている。

該トルクコンバータ３のポンプ３ａはドライブ
プレート３ｄを介してエンジンのクランクシヤフ
ト（図示せず）に連結し、ステータ３ｃはワンウ
エイクラツチ４を介して筒状のステータシヤフト
５にスプライン嵌合しており、タービン３ｂはス
テータシヤフト５内を貫通してトランスミツシヨ
ンケース１内に横架装備した伝動軸６にスプライ
ン嵌合している。

また、前記ステータシヤフト５の一端には大径
のフランジ部５ａを一体に成形し、該フランジ部
５ａのトルクコンバータ３側にはポンプ３ａにて
駆動されるオイルポンプ７を備えると共に、フラ
ンジ部５ａの反対側には後述する減速歯車装置Ａ
を設けている。かつまた前記伝動軸６の半径方向
外方で、前記トランスミツシヨンケース２とハウ
ジング１とにより画成する室内には、減速大歯車
８その他歯車群をもつ差動歯車装置Ｂを装備し、
この差動歯車装置Ｂに前記エンジンの回転動力を
前記減速歯車装置Ａにより減速して伝達すべく構
成している。

さらに前記トランスミツシヨンケース２には前
記トルクコンバータ３との間を仕切る隔壁２ａを
一体に成形し、該隔壁２ａにて画成された室内に
遊星歯車装置Ｃを装備している。

この遊星歯車装置Ｃは、前記伝動軸６上にイン
プツトサンギヤ９を嵌合固定し、該ギヤ９と隣接
する左右両側にはローサンギヤ１０と、軸心部右
方に筒状の出力軸１１を一体状に延出形成したプ
ラネタリキヤリヤ１２とをそれぞれ遊嵌合し、該
キヤリヤ１２に前記インプツトサンギヤ９と噛合
うロングピニオン１３と、前記ローサンギヤ１０
と噛合いかつロングピニオン１３と互いに噛合す
るシヨートピニオン１４を軸杆１５，１６によ
り、支持させると共に、これら遊星歯車群の外周
囲には前記シヨートピニオン１４と噛合うリバー
スリングギヤ１７を設け、また前記プラネタリキ
ヤリヤ１２と相対向する箇所にには、パーキング
ロツクギヤ１８を前記軸杆１５，１６の突出端部
に支持させて構成している。

前記リバースリングギヤ１７の外周囲とトラン
スミツシヨンケース２の内壁面との間には、多段
摩擦板式リバースクラツチ１９を介装している。

また前記プラネタリキヤリヤ１２の右側方に
は、ピストン２０を備えて、該ピストン２０を前
記オイルポンプ７から圧力油により進退させて前
記リバースクラツチ１９を介してリバースリング
ギヤ１７を断続操作すべく構成している。

更にまた前記遊星歯車群の左側方で伝動軸６の
周囲には、クラツチドラム２１を遊嵌合し、この
ドラム２１内に前記オイルポンプ７から伝動軸６
内に貫通形成した油通路２２を介して供給される
圧力油により進退可能としたピストン２３を装入
し、このピストン２３の右側方で前記クラツチド
ラム２１の内壁面と、前記伝動軸４に嵌合固定し
たクラツチハブ２４との間に多段摩擦板式クラツ
チ２５を介装すると共に、該クラツチドラム２１
の右先端にはこのドラム２１と係合しかつ前記ロ
ーサンギヤ１０と噛合するクラツチフランジ２６
を設け、また前記クラツチドラム２１の外周には
圧力油により該ドラム２１を固定又は自由状態と
するブレーキバンド２７を設けている。

しかして前記プラネタリキヤリヤ１２と一体形
成した前記出力軸１１と差動歯車装置Ｂとの中間
で、前記トランスミツシヨンケース２とハウジン
グ１の壁部間にはアイドル軸２８を架設し、この
アイドル軸２８に第一及び第二減速歯車２９，３
０を設け、該第１減速歯車２９を前記出力軸１１
にスプライン嵌合した減速歯車３１に嵌合させ、
また第二減速歯車３０を前記差動歯車装置Ｂの減
速大歯車８に噛合させるべくなして、前述した減
速歯車装置Ａを減速歯車３１と第１減速歯車２９
とによる第１減速機構と、前記第二減速歯車３０
と減速大歯車１７とによる第２減速機構とにより
構成している。

この考案は以上のような動力伝達装置におい
て、トルクコンバータ３のステータシヤフト５の
一端に大径のフランジ部５ａを一体に形成し、こ
のフランジ部５ａとトランスミツシヨンケース２
の隔壁２ａとの間に減速歯車装置Ａの減速歯車３
１を配置すると共に遊星歯車装置Ｃの出力軸１１
を隔壁２ａに設けた軸受ボス２ｃに軸受支持し、
この出力軸１１に減速歯車３１をスプライン嵌合
する一方、ステータシヤフトのフランジ部５ａに
軸受ハウジング５ｂを突出成形し、この軸受ハウ
ジング５ｂに減速歯車３１の側部外周をベヤリン
グ３４を介して軸受支持している。さらにトルク
コンバータ３を収容するハウジング１にステータ
シヤフトのフランジ部５ａに密接に嵌合するボス
穴１ａを設け、このボス穴１ａにフランンジ部５
ａを嵌合して、フランジ部５ａの外周部をトラン
スミツシヨンケース２の合せ面２ｂにボルト３２
にて直接締付固定したものである。

なお、トランスミツシヨンケース２の合せ面２
ｂには、第２図に示すごとく減速歯車装置Ａの減
速歯車３１等を収容する凹所３５を設けると共
に、該凹所３５内に内装される減速歯車３１に近
接させて略円型の壁３６を設けて減速歯車３１の
オイル撹拌抵抗が減少するごとくなしている。

前記壁３６の外周にはボルト孔３７を等間隔に
設け、該ボルト孔３７にステータシヤフト５のフ
ランジ部５ａをオイルポンプ７と共にボルト３２
にてトランスミツシヨンケース１に締付固定して
いる。

なお、３８は隔壁１ａと減速歯車３１間に介装
したスラストニードルベヤリングである。

なお、フランジ部５ａは第３図に示すごとく、
第２減速歯車３０との干渉を避けるため外周の一
部に円月状の切欠き部５ｃを設けている。

以上の動力伝達装置は、次の作用を有する。

先ず自動車の前進時で低速走行時にはエンジン
からの動力がトルクコンバータ３を介して伝動軸
６に伝達され、この回路動力によりこの伝動軸６
上のインプツトサンギヤ９が回転され、これに伴
ない該サンギヤ９に噛合うロングピニオン１３及
び該ピニオン１３に噛合したシヨートピニオン１
４が回転する。ところでこのときオイルポンプ７
からの圧力油によりブレーキバンド２７がクラツ
チドラム２１を締付けて該ドラム２１を固定し、
これに伴ないこのドラム２１に係合したクラツチ
フランジ２６を介してローサンギヤ１０が固定さ
れるので、前記シヨートピニオン１４はローサン
ギヤ１０の周囲を周回し、またプラネタリキヤリ
ヤ１２は所定の減速比で回転する。このときリバ
ースクラツチ１９はピストン２０にて連結される
ことなく自由状態に保持されるから、前記プラネ
タリキヤリヤ１２は伝動軸４と同方向に回転する
のである。

しかして前記キヤリヤ１２の回転に伴ない、該
キヤリヤ１２から延びる前記出力軸１１上に設け
た減速歯車３１、並びにアイドル軸２８上に設け
た第一、第二減速歯車２９，３０及び差動歯車装
置Ｂを介してドライブシヤフト（図示せず）に減
速された低速の回転動力が伝達されるのである。

また前進時に高速走行するときには、ブレーキ
バンド２７が強緩されて、クラツチドラム２１は
自由状態となる。一方このときクラツチドラム２
１内に圧力油が送られてピストン２３を進出さ
せ、これに伴ないクラツチ２５を連結して、該ク
ラツチドラム２１と伝動軸６に固定したデイスク
ハブ２４とを一体化する。従つて前記ローサンギ
ヤ１０がクラツチドラム２１つまり伝動軸４上に
インプツトサンギヤ９と同一回転することゝな
り、この２個のサンギヤ９，１０にそれぞれ噛合
しているロングピニオン１３及びシヨートピニオ
ン１４は自転することなくロツク状態に保持され
て、これら全体は一体となつて回転し、伝動軸４
と出力軸１１は直結状態となる。これに伴なつて
前記ドライブシヤフトは高速回転するのである。

次に後退走行時には、ピストン２０の進出によ
りリバースクラツチ１９を連結して、リバースリ
ングギヤ１７を固定し、このときクラツチドラム
２１内のクラツチ２５は解放させる。するとロン
グピニオン１３及びシヨートピニオン１４は前記
の場合と同じく回転するが、リバースリングギヤ
１７が固定されているので、これらの両ピニオン
１３，１４は該ギヤ１７に沿つて前記の場合とは
逆方向に移動し、またこれに伴なつてプラネタリ
キヤリヤ１２を逆転させ、かつドライブシヤフト
を逆転させるのである。

また前記動力伝達装置をニユートラルするとき
には、前記各クラツチ１９及び２５を解放するの
である。更にパーキングするときには、前記のニ
ユートラル状態でパーキングロツクギヤ１８を別
途設けるロツクボールにより固定するのである。

この考案は、以上のような構成としたから次の
ような効果がある。すなわち、この考案の動力伝
達装置の加工及び組付けに際み、遊星歯車の出力
軸を支持するトランスミツシヨンケース側に設け
た軸受ボスとステータシヤフトのフランジ部に密
接に嵌合するハウジングのボス穴とは、トランス
ミツシヨンケースとハウジングとを重ね合せた状
態で同時に機械加工することにより、両ボス間の
軸芯は高精度で合致させることができ、また、ス
テータシヤフトはそのフランジ部を前記ハウジン
グのボス穴に密接に嵌合した状態でトランスミツ
シヨンケースに直接ボルト結合される。

したがつて、遊星歯車装置の出力軸を軸受支持
するトランスミツシヨンケース側の軸受ボスと、
減速歯車を軸受支持するステータシヤフトのフラ
ンジ部の軸芯、換言するとトランスミツシヨンケ
ース側に設けられた出力軸の軸受とハウジング側
に位置する減速歯車の軸受の軸芯が寸法精度よく
合致させられるため、従来のように組付けに支障
をきたしたり、異音発生やベヤリング寿命低下と
いつた不具合は解消される。

また、減速歯車をトランスミツシヨンケースの
隔壁とステータシヤフトのフランジ部との間に配
置して減速歯車の側部外周をベヤリングにてフラ
ンジ部に支持するようにしたため、減速歯車を出
力軸と同じくトランスミツシヨンケース側に軸受
支持する場合に比べて、軸受スペースを十分にと
れると共に特別な軸受部材等を必要としないの
で、全体的に軸受構造を簡素化することができ
る。

さらに、減速歯車の側部外周を軸受するように
したため、減速歯車と略同径の大きなベヤリング
を用いることが可能となり、それだけベヤリング
の寿命等も向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案に係る動力伝達装置の断面
図、第２図はトランスミツシヨンケースの右側面
図、第３図はハウジングの左側面図である。 １…ハウジング、１ａ…ボス穴、２…トランス
ミツシヨンケース、２ａ…隔壁、２ｃ…軸受ボ
ス、３…トルクコンバータ、Ａ…減速歯車装置、
Ｂ…差動歯車装置、Ｃ…遊星歯車装置、５…ステ
ータシヤフト、５ａ…フランジ部、１１…出力
軸、３１…減速歯車、３２…ボルト、３４…ベヤ
リング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. トルクコンバータ、遊星歯車装置、該遊星歯車
   装置とトルクコンバータ間に配置される減速歯車
   装置、該減速歯車装置に噛合う差動歯車装置、ト
   ルクコンバータを収容するハウジング及び遊星歯
   車装置を収容するトランスミツシヨンケースとを
   備え、該トランスミツシヨンケースに遊星歯車装
   置とトルクコンバータ間に仕切る隔壁を一体に成
   形し、該隔壁に遊星歯車装置の出力軸を軸受支持
   した動力伝達装置において、トルクコンバータの
   ステータシヤフトの一端に大径のフランジ部を一
   体に成形し、該フランジ部とトランスミツシヨン
   ケースの隔壁間に減速歯車装置の減速歯車を配置
   し、該減速歯車をトランスミツシヨンケースの隔
   壁から突出する遊星歯車装置の出力軸にスプライ
   ン嵌合すると共に減速歯車の側部外周をベヤリン
   グを介してステータシヤフトのフランジ部に突出
   成形された軸受ハウジングに軸受支持する一方、
   トルクコンバータを収容するハウジングにボス穴
   を設け、該ボス穴にステータシヤフトのフランジ
   部を密接に嵌合すると共にフランジ部の外周部を
   トランスミツシヨンケースの合せ面に直接ボルト
   結合したことを特徴とする自動車の動力伝達装
   置。