【発明の詳細な説明】
可逆性光情報媒体
技術分野
本発明は、レーザ光ビームによる消去可能な高速記録のための光情報媒体に関
し、該媒体は、第1誘電体層と、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、
並びにテルル(Te)から形成される合金を含む位相変化材料の記録層と、第2
誘電体層と、金属ミラー層とをこの順で備える、複数層から成るスタック(積層
)を備える基板を有する。
また、本発明はそうした光記録媒体の高記憶密度及び高データレート用途で使
用することにも関する。
背景技術
位相変化原理に基づく光情報記録或いはデータ記憶が魅力的である理由は、そ
れが直接上書き(direct overwrite:DOW)及び高記憶密度の可能性を、容易な互
換性をもって、読み出し専用システムと組み合わせられるからである。位相変化
光記録とは、サブミクロンメートル・サイズのアモルファス記録マークを合焦状
態のレーザ光ビームを用いて薄い結晶質フィルム内に形成することに係る。情報
の記録中、媒体は、記録されるべき情報に従って変調された合焦状態のレーザ光
ビームに対して移動させられる。このため、位相変化記録層内にクエンチング(q
uenching)又は急冷が生じ、非露光領域を結晶質のままに維持する記録層におけ
る露光領域内にアモルファス情報ビットを形成させる。書き込まれたアモルファ
ス・マークの消去は、同一レーザによる加熱による再結晶化によって実現される
。こうしたアモルファス・マークはデータ・ビットを表わし、これらデータ・ビ
ットは低パワーの合焦状態のレーザ光ビームによりその基板を介して再生可能で
ある。結晶質記録層に対するアモルファス・マークの反射差が、変調されたレー
ザ光ビームをもたらし、次いでこれが検出器によって、コード化されて記録され
たディジタル情報に従って変調光電流に変換される。この変調光電流は、最低の
基本周波数を有する高周波(HF)信号である。光電流のピーク・ピーク値がIII
で指定され、前記周波数に関連された高周波信号のピーク値はIpeakとして指
定されている。変調mは、m=III/Ipeakとして定義されて、M=(RH−RL
)/RHと定義される光学的コントラストに比例するものであり、ここでRH及び
RLは、それぞれ、結晶質材料及びアモルファス材料の反射である。
位相変化光記録における主な問題は、その要求される多数にわたる上書きサイ
クル(サイクラビリティ:cyclability)、即ち、繰り返し上書き(非結晶化)
及び消去(再結晶化)動作の回数と、正確な結晶化速度とである。高再結晶化速
度は、完全結晶化時間が100ns(ナノ秒)未満、より好ましくは30nsか
ら70nsと短くなければならないディスク形状DVD-RAM及び光学的テー
プ等の高密度記録及び高データレートの用途において特に要求される。もし結晶
化速度が、レーザ光ビームに対する媒体の線形速度に合致するために充分高速で
なければ、先行する記録での古いデータ(アモルファス・マーク)が直接上書き
中に完全に除去(再結晶化)され得ない。これは高いノイズ・レベルを生ずる。
位相変化記録用の公知の材料としてはGe-Sb-Teに基づくものである。し
かしながら、公知の記録媒体で位相変化光記録のための全ての要件を満足するも
のはなく、特にサイクラビリティ及び結晶化速度の要件を満足するものはない。
冒頭で述べたタイプの光情報媒体は、米国特許第5,289,453号から既
知である。この既知の位相変化媒体の形式は、連続的な、第1誘電体層と、位相
変化Ge-Sb-Te合金の記録層と、第2誘電体層と、金属反射層とから成る複
数層のスタックを備えるディスク形状基板を備える。複数層から成るスタックは
、IPIM構造と呼称されるが、ここでのMは反射層又は金属層を表わし、Iは
誘電体層を表わし、Pは位相変化記録層を表わす。この特許が開示する高速記録
用(即ち、8m/秒乃至13m/秒の相対的線形速度)の化合物GexSbyTez
は、三角形の三成分Ge-Sb-Te化合物図表における領域JKLM内に位置し
ており、該領域は角点J(Ge22.5Sb22Te55.5);K(Ge12.5Sb32Te55.5
);L(Ge14.5Sb37.5Te48);M(Ge26Sb26Te48)を有する。
この領域は、GeTe及びSb2Te3を接続する連絡線から逸れている。この特
許に従えば、高速記録用の位相変化記録層の厚みとしては、12nmから35n
mまでの範囲
、より好ましくは12nmから25nmまでの範囲にするのが望ましい。25n
mの厚みを越えれば、記録マークの形状の歪みの尺度であるジッター(jitter)は
増大する。この特許によると、ジッターは105回記録を繰返した後で初期値の
2倍にまでは増大しない。
こうした既知の記録媒体の短所は、ジッターが最初の数百のDOW(直接上書
き)サイクル中に許容できないレベルまで増大することである。この効果は以下
に示される。
発明の開示
本発明の目的は、中でも、DVD−RAM及び光学的テープ等の高速光記録に
適合する、繰り返し記録動作と消去動作とに際して、優れたサイクラビリティと
、良好なDOW特性を示す消去可能な光情報媒体を提供することである。高速記
録とは、ここでは、コンパクトディスク標準に係る速度の2倍となる少なくとも
2.4m/秒のレーザ光ビームに相対的な光情報媒体の線形速度を意味する。こ
の媒体のジッターは、少なくとも105回のDOWサイクルの間、また最初の数
百回のサイクルの間、低い一定レベルにあるべきである。
こうした目的は、本発明によると、冒頭のパラグラフに記載されたような光情
報媒体によって達成され、該光情報媒体は、前記記録層が、
Ge50xSb40-40xTe60-10x(原子百分率)、但し、0.166≦x≦0.
444の式で定義される組成の合金を含み、
前記記録層が25nm乃至35nmの厚みを有し、
前記第2誘電体層が15nm乃至50nmの厚みを有し、
前記金属ミラー層が60nm乃至160nmの厚みを有する、
ことを特徴とする。
この組成は、第1図に示されるように、三角形のGe-Sb-Te組成図表にお
ける化合物GeTeと化合物Sb2Te3と接続する線の一部上に存して、化学量
的な化合物Ge2Sb2Te5(x=0.444)、GeSb2Te4(x=0.2
86)、並びに、GeSb4Te7(x=0.166)を含む。特にこれら三成分
の化学量的化合物が好ましい理由は、結晶化中に凝離が何等要求されないのでこ
れ
らの材料が急速に結晶化するからである。
このGe-Sb-Te合金の結晶化速度は、記録層の層厚(層厚み)に強く依存
する。重要なパラメータは、結晶質環境内における書き込み済みアモルファス・
マークの完全な結晶化のための消去パルスの最少時間として定義され、統計的に
測定される完全消去時間te(ns:ナノ秒単位)である。この完全消去時間te
は、層厚みが27nmまでに増大すると急激に減少し、層厚の更なる増大に及ん
で、約50nsから約60nsの値で飽和する傾向がある。記録層が27nmよ
りも大きくなると、teは本質的にその厚みから独立する。25nm辺りからte
は100nsの値を下回るが、これは高速記録に必要とされる。teの観点から
、記録層の厚みは少なくとも25nm、より好ましくは少なくとも27nmであ
るべきである。
媒体のサクラビリティは、50000サイクルが必要とされる場合、値M5000 0
/M0によって表現され、これは5000サイクル後と0サイクル後との光学的
コントラストの相対的変化である。各サイクル毎に、書き込まれたアモルファス
・マークはレーザ光ビームによる加熱を介しての再結晶化によって消去される一
方で、新しいアモルファス・マークが書き込まれる。M50000/M0の理想値は1
.0、即ち、光学的コントラストが各サイクル後に変化せずに維持されることで
ある。実用上の理由から、この値は0.7と1.3との間とすべきであり、この
範囲外であればその記録材料はもはや使用不可能である。M50000/M0の値は、
記録層の層厚に依存することが判明されている。M50000/M0の値は、記録層の
厚みが23nm或いはそれ以上の場合に0.7より大きい。記録層の厚みが35
nm或いはそれ以下の場合に、M50000/M0の値は1.3よりも小さい。te及び
サイクラビリティに関しての組み合わせ要求の結果、記録層の厚みは25nmと
35nmとの間の範囲、より好ましくは27nmと35nmとの間の範囲とすべ
きである。以下に解説されるように、25nmと35nmとの間の厚みである記
録層を有する媒体は最初の105DOWサイクルの間、一定の低いジッターを有
する。
先に定義された組成のxの値が0.444よりも大きくなると、teは許容で
きない程に高くなる。例えば、記録層としての金属間化合物Ge39Sb9Te52
(x=0.78)を有する記録媒体は、少なくとも120nsのte値を有する
。また
、サイクラビリティは、104サイクル後に既に貧弱となり、値M50000/M0は0
.7を下回る。xが0.166よりも小さくなれば、結晶化温度は許容できない
程に低くなって、記録層の熱的安定性は低減される。
第1の誘電体層、即ち、基板と位相変化記録層との間の層の厚みは、te及び
サイクラビリティ値M50000/M0に対して、観測され得る影響はない。こうして
、この層の厚みを、そのスタックの熱的特性に影響することなく、他の例えば光
学的理由のために変更することができる。この層は、記録層を湿気から保護し、
基板を熱的損傷から保護し、そして、光学的コントラストMを最適化する。ジッ
ターの観点から、この第1誘電体層の厚みは、追って説明されるように好ましく
は少なくとも70である。例えば光学的コントラストの観点から、この層の厚み
は500nmに限定される。
第2誘電体層、即ち、記録層と金属ミラー層との間の層に対する最適な厚み範
囲は、15nmと50nmとの間、より好ましくは20nmと40nmとの間で
あることが判明されている。この層が薄過ぎると、記録層と金属ミラー層との間
の熱的絶縁が悪影響を受ける。その結果、記録層の冷却速度が増大し、これが結
晶化プロセスの遅延及び低サイクラビリティに至る。冷却速度は、第2誘電体層
の厚みを増大することによって低減されることとなる。
時間teは、20nmから200nmまでの範囲内の金属ミラー層の厚みには
敏感ではない。しかしながらがサイクラビリティは、金属ミラー層が60nmよ
りも薄くなると悪影響を受ける。それは冷却速度があまりにも緩慢であるからで
ある。金属ミラー層が160nm或いはそれよりも厚くなると、サイクラビリテ
ィが更に劣化し、その増大された熱的伝導性のために記録及び消去能力を高くし
なければならない。好ましくは、金属ミラー層の厚みは80nmと120nmと
の間である。
第1及び第2誘電体層は、例えば(ZnS)80(SiO2)20等のZnSとS
iO2との混合物で形成可能である。代替物としては、例えば、SiO2、TiO2
、ZnS、AlN、並びにTa2O5である。好ましくは、SiC、WC、Ta
C、ZrC、或いは、TiCのようなカーバイド又は炭化物が用いられる。これ
ら材料は、ZnS-SiO2混合物と比べてより高い結晶化速度や、より良好なサ
イク
ラビリティを与える。
金属ミラー層の場合、Al、Ti、Au、Ni、Cu、Ag、Cr、Mo、W
、Ta、並びに、これら金属の種々の合金が使用可能である。
こうした反射層及び誘電体層の双方は、蒸着或いはスパッタリングによって提
供される。
この情報媒体の基板は、レーザ波長に対して少なくとも透明であり(又は透過
性があり)、例えば、ポリカボネート、ポリメチルメタアクリレート(PMMA
)、アモルファス(非結晶質)ポリオレフィン、或いはガラスで形成される。典
型例での基板は、ディスク形状で、120mmの径と1.2mmの厚みを有する
。
代替的に基板は、例えばポリエステル・フィルムから成る合成樹脂の柔軟性テ
ープの形態で可能である。このようにして、光学的テープが、例えば高速スピン
・ポリゴンに基づく光学的テープ・レコーダ用に得られる。このような装置にお
いて、反射されたレーザ光ビームはそのテープ表面を横切るようにスキャンを実
現する。
記録層側のディスク形状基板の表面には、好ましくは、光学的にスキャンされ
得るサーボトラックが設けられる。このサーボトラックはしばしば渦巻き形状の
溝によって構成され、射出成形或いはプレス成形の際の型によって基板内に形成
される。この溝は、代替的には、アクリレートから成る紫外線光硬化層等の合成
樹脂層内に複製プロセスで形成可能であり、これは基板上に独立して設けられる
。そうした溝の高密度記録は、例えば0.7μmから0.8μmのピッチと、0
.5μmの幅とを有する。
任意に、スタックの最外層は、例えば紫外線光硬化ポリ(メタ)アクリレート
等の保護層によって環境から遮蔽される。
高密度記録及び消去は、例えば675nm或いはそれ以下(赤から青)の波長
の短波長レーザを用いることによって達成可能である。
位相変化記録層は、基板に対して、適切なターゲットの蒸着成いはスパッタリ
ングを為すことによって提供可能である。こうして蒸着された層は非結晶質又は
アモルファスであり、低反射を示す。高反射を有する適切な記録層を構成するた
めに、この層は先ず結晶化されなければならず、これは、通常、初期化と呼称さ
れる。この目的のため、記録層は炉内でGe-Sb-Te合金の結晶化温度、例え
ば180℃を上回る温度まで加熱され得る。代替的に、ポリカボネート等の合成
樹脂基板は充分なパワーのレーザ光ビームによって加熱可能である。これは、例
えばレーザ光ビームが移動する記録層をスキャンするようなレコーダ内において
実現可能である。次いで、アモルファス層は、基板が不都合な加熱負荷を被るこ
となく、該アモルファス層を結晶化する際、要求される温度まで局所的に加熱さ
れる。
要求に応じて、teはGeTe及びSb2Te3を接続する連絡線から、Sbを
3原子%(at.%)まで追加することによって、本発明で請求される連絡線上の
Ge-Sb-Te合金まで逸らすことによって増大される。GeSb2Te4を3原
子%追加することによって、teは60nsから100nsまで増大する。この
ような追加は、記録感度の増大、即ち、溶融解パワーPmを低下する。
所望に応じて、追加的な薄い金属層を基板と第1誘電体層との間に挿入するこ
とができ、これにより、いわゆるMIPIM構造を形成する。この構造はより複
雑となるが、その追加的な金属層は、光学的コントラストMと共に記録層の冷却
速度を増大する。
図面の簡単な説明
第1図は、Ge-Sb-Teの原子百分率での三成分組成図表と、本発明に従え
ば0.166≦x≦0.444の下、原子百分率でのGe50xSb40-40xTe60- 10x
の式に適用した線とを示す。
第2図は、本発明による光情報媒体の概略断面図を示す。
第3図は、GeSb2Te4材料の場合における、記録層の完全消去時間te(
ns単位)と厚みd3(nm単位)との間の関係を示す。
第4図は、GeSb2Te4材料の場合における、記録層の50000サイクル
後及び0サイクル後の光学的コントラストの相対的変化(M50000/M0)と厚み
d3(nm単位)との間の関係を示す。
第5図は、Ge2Sb2Te5材料の場合における、記録層の完全消去時間te(
n
s単位)と厚みd3(nm単位)との間の関係を示す。
第6図は、Ge2Sb2Te5材料の場合における、記録層の50000サイク
ル後及び0サイクル後の光学的コントラストの相対的変化(M50000/M0)と厚
みd3(nm単位)との間の関係を示す。
第7図は、GeSb4Te7材料の場合における、記録層の完全消去時間te(
ns単位)と厚みd3(nm単位)との間の関係を示す。
第8図は、GeSb4Te7材料の場合における、記録層の50000サイクル
後及び0サイクル後の光学的コントラストの相対的変化(M50000/M0)と厚み
d3(nm単位)との間の関係を示す。
第9図は、本発明に従わないGe39Sb9Te52材料の場合における、記録層
の完全消去時間te(ns単位)と厚みd3(nm単位)との間の関係を示す。
第10図は、本発明によらないGe39Sb9Te52材料の場合における、記録
層の10000サイクル後及び0サイクル後の光学的コントラストの相対的変化
(M10000/M0)と厚みd3(nm単位)との間の関係を示す。
第11図は、完全消去時間te(ns単位)と記録層内の化合物GeSb2Te4
に対する余分なSb(y原子%)の追加との間の関係を示す。
第12図は、本発明に従わないディスク形状情報媒体Aと、本発明に従った媒
体Bとの、7.2m/sの線形ディスク速度で、DOWサイクルの回数nの関数
としてのジッターJ(クロックタイムTcの%単位)を示す。
第13図は、平均ジッターがクロックタイムの12%に達した際、第1誘電体
層の厚みd2(nm単位)の関数としてのサイクルnの最大数を示す。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、以下に図面を参照してより詳細に説明されるであろう。実施例
第2図は、本発明に従った光学的情報ディスクの断面における一部を示してい
る。符号1は、120mmの径と1.2mmの厚みとを有するガラス製ディスク
形状基板を示す。基板1は、
−厚みd2=20nmを具備する(ZnS)80(SiO2)20から成る誘電体層2
、
−厚みd3を具備するGe-Sb-Teから成る記録層3、
−厚みd4=20nmを具備する(ZnS)80(SiO2)20から成る誘電体層4
、並びに、
−厚みd5=100nmを具備するAlから成る金属ミラー層5から成る構造の
IPIMスタックが設けられている。
これら層全てはスパッタリングによって提供される。記録層3の初期結晶化状
態は、蒸着されたままのアモルファス合金をオーブン内で180℃までの温度で
アニーリング処理(annealing)することによって得られる。
情報の記録、再生、並びに消去のためのレーザ光ビームは、基板1を介して記
録層3に入る。このビームは概略的に矢印6で表わされている。アモルファス・
マークはパワーPw=1.25Pm(Pm=溶融解パワー)と時間100nsの単
一レーザ・パルスによって書き込まれる。消去パワーはPw/2である。
第1図に見られるように(Ge14.3Sb28.6Te57.1の原子百分率を与えるx
=0.286の場合の)、化合物GeSb2Te4の場合において、ナノ秒単位(
ns)でのte(即ち、書き込まれたアモルファス・マークの結晶化が完了する
時間)の位相変化層のナノメートル単位(nm)での厚みd3に対する依存性は
、第3図に示されている。この第3図から、teはd3を約27nmまで増大する
ことによって急激に減少し、そしてd3の更なる増大に及んで、約60nsの低
い値で飽和する傾向があることは明らかである。
50000サイクル後及び0サイクル後の光学的コントラストの相対的変化(
M50000/M0)のd3依存性は、第4図に表示されている。d3が25nmと35
nmとの間である際、M50000/M0は1.0±0.1、即ち光学的コントラスト
は実際上不変のままである。
第3図及び第4図の組み合わせは、d3が25nmと35nmとの間にある際
、高結晶化速度が得られ、それは高速光記録と少なくとも50000サイクルの
良好なサイクラビリティとにとって本質的である。実施例2
実施例1は、第1図に見られるように(Ge22.2Sb22.2Te55.6の原子百分
率を与えるx=0.444の場合の)、組成Ge2Sb2Te5を有する記録層3
を用いて繰り返されている。第5図は、teの記録層の厚みd3に対する依存性を
示す。この第5図から、厚みd3=25nmの際にteが100nsを下回り、d3
を約27nmまで増大すると更に減少することは明らかであり、teはd3の更
なる増大に及んで約50nsの低い値で飽和する傾向がある。
50000サイクル後及び0サイクル後の光学的コントラストの相対的変化(
M50000/M0)のd3依存性は、第6図に表示されている。d3が20nmと35
nmとの間である際、M50000/M0は1.0±0.3であり、この範囲内におい
て記録媒体を実用上使用し得る。
第5図及び第6図の組み合わせは、d3が25nmと35nmとの間にある際
、高結晶化速度が得られ、それは高速光記録と少なくとも50000サイクルの
良好なサイクラビリティとにとって本質的である。実施例3
実施例1が、第1図に見られるように(Ge8.3Sb33.3Te58.4の原子百分
率を与えるx=0.166の場合の)、組成GeSb4Te7を有する記録層3を
用いて繰り返されている。第7図は、teの記録層の厚みd3に対する依存性を示
す。この第7図から、厚みd3=24nmの際にteが100nsを下回り、d3
を約27nmまで増大すると更に減少することは明らかであり、teはd3の更な
る増大に及んで約70nsの低い値で飽和する傾向がある。
50000サイクル後及び0サイクル後の光学的コントラストの相対的変化(
M50000/M0)のd3依存性は、第8図に表示されている。d3が25nmよりも
大きい際、M50000/M0は0.8よりも大きい。しかしながら、結晶質と非結晶
質(アモルファス)との間の光学的コントラストは、記録層が35nmよりも厚
くなると、許容できない程に低くなる。この観点から、記録層厚みd3は35n
mを越えるべきではない。比較例(本発明にはよらない)
実施例1が、GeTe−Sb2Te3接続の連絡線上でありかつ、本発明の請求
範囲外であるが、第1図に見られるように(x=0.78の場合の)原子組成G
e39Sb9Te52を有する記録層3を用いて繰り返されている。第9図は、teの
記録層の厚みd3に対する依存性を示す。この完全消去時間teは、記録層の厚み
d3が増大するにつれて増大し、d3≧45nmである値の場合、高レベルで一定
になる傾向がある。teが100nsを下回って、高速記録に要求されるd3の値
はない。また、サイクラビリティは貧弱である。最良の厚み範囲は、25nmと
47nmとの間であり、そこでのたった10000サイクル後のMl0000/M0が
0.7±0.1である(第10図参照)。これが示すことは、この場合の記録材
料は対応的に制限されたサイクル数の後に劣化されることである。実施例4から9
これらの実施例において、第2誘電体層4の厚みd4(ナノ秒単位)の、完全
消去時間te及びサイクラビリティM50000/M0に対する影響が調査されている。
その結果が表1に要約されている。これら実験において、IPIMスタックにお
ける他の層の厚みd2,d3,d5は一定に保たれた。層2、4、並びに5のためには
、実施例1と同一材料が用いられている。記録層3には、化合物GeSb2Te4
を用いている。
表1が示すことは、te及びM50000/M0の双方は、d4が15nm或いはそれ
以上厚いときに最適であることである。記録層3の冷却速度は第2誘電体層の厚
みd4が増大するにつれて減少するので、厚みd4を50nm或いはそれ以下に限
定することが好ましい。それ故に、第2誘電体層4のための最良の厚み範囲は、
15nmと50nmとの間で有り、より好ましくは20nmと40nmとの間で
ある。実施例10から15
これらの実施例において、第1誘電体層2の厚みd2(nm単位)の、完全消
去時間te及びサイクラビリティM50000/M0に対する影響が調査されている。そ
の結果が表2に要約されている。これら実験において、IPIMスタックにおけ
る他
の層の厚みd3,d4,d5は一定に保たれた。層2、4、並びに5のためには、
実施例1と同一材料が用いられている。記録層3には、化合物GeSb2Te4を
用いている。
表2が示すことは、第1誘電体層2の厚みd2の結晶化速度te及びサクラビリ
ティM50000/M0に対する観測され得る影響は何等見出されないことである。し
かしながら、この誘電体層2は記録層3を湿気から保護し、基板1を熱的損傷か
ら保護して、光学的コントラストMを最適化している。こうして、他の理由、例
えば光学的理由のために、IPIMスタックの熱的特性に影響することなく厚み
d2を変更することが可能である。他の理由、即ちジッターのために、d2は例2
7に例示されるように好ましくは少なくとも70nmである。実施例16から24
これらの実施例において、第金属ミラー層5の厚みd5(nm単位)の、完全
消去時間te及びサイクラビリティM50000/M0に対する影響が調査されている。
その結果が表3に要約されている。これら実験において、IPIMスタックにお
ける他の層の厚みd2,d3,d4は一定に保たれた。層2、4、並びに5のため
には、実施例1と同一材料が用いられている。記録層3には、化合物GeSb2
Te4を用いている。
表3が示すことは、完全消去時間teが、20nmから200nmまでの金属
ミラー層厚みd5に対して感度がないように見える。しかし、サイクラビリティ
は、金属層5が60nmより薄くなると、より悪化する。金属層5が160nm
よりも厚くなると、サイクラビリティが再度より悪化し、レーザ光ビームの書き
込み及び消去パワーを、その増大された熱的伝導性の故に高くしなければならな
い。
それ故に、金属ミラー層5の厚み範囲は、60nmと160nmとの間、より好
ましくは80nmと120nmとの間とすべきである。実施例25
実施例1に従った光情報媒体において、25nmの厚みd3を有する記録層3
が用いられている。その記録層における化合物GeSb2Te4に対して、Sbの
追加量が付加される。第11図が示すことは、完全消去時間teが、その追加S
b含有量y(原子%)が増大されると増大されることである。完全消去時間te
は、追加Sbが付加されなければ(y=0)、80nsである一方で、化合物G
eSb2Te4に対してSbが%で3の追加(y=3)では、teを100nsま
で増大することになる。前記化合物に対して余分なSbを追加すると、3成分組
成図表(第1図)におけるGeSb2Te4とSbとを接続する連絡線が追従され
る。この実験から、記録層における化合物Ge-Sb-Teの組成は、好ましくは
、GeTeとSb2Te3とを接続する連絡線から逸脱すべきではないことが分る
。せいぜい余分に3原子%のSbをその化合物に対して追加できる。実施例26
この実験において、ジッターが判定された。EFM変調コード(CDコード)
が用いられて、ランダム・データを生成する。記録されたマークのエッジと回復
されたデータのクロックタイムに対応する位置との間の差としての標準偏差であ
るジッターJは、ディスクのサイクラビリティを判定するために用いられる標準
パラメータである。ジッターはクロックタイムTcの12%を下回る、即ち、C
D速度で30ns(1.2m/s;クロックタイム230ns)を下回る必要が
ある。こうして光ディスクの寿命は、ジッターJがクロックタイムTcの12%
に到達するまでの時間である。マークの立ち上がりエッジ及び立ち下がり立ち下
がりエッジの双方が測定される。
2つの記録ディスクA及びBが、実施例1に従った記録層用の材料を用いて表
4に従い準備される。これら両ディスクは基板の片面上に溝形態の渦巻き形状サ
ーボトラックが設けられ、レコーダ内で初期化される。この溝は、複製プロセス
によって、アクリレートから成る紫外線光硬化層内に設けられる。これら2つの
ディスクは、記録層の厚みd3が異なるが、熱的及び光学的特性が、第1誘電体
層2、即ち基板1と記録層3との間の層の厚みd2を調和又は一致することによ
って殆ど同一とされるように設計されている。
ディスクAは本発明に従っておらず、記録層の厚みd3が本発明の請求範囲外
である。
第12図において、7.2m/s(CD速度の6倍)の線形ディスク速度で、
DOW(上書き)サイクル回数nの関数としてのジッターJ(Tcの%で)が、
両ディスク用に示されている。DOW実験中、新しいアモルファス・マークが書
き込まれると同時に、そうした新しいアモルファス・マークの間の領域が同一レ
ーザのスポット通過中に再結晶化される。第12図から明らかなことは、ディス
ク
Aの場合に大きなジッター突起が最初の1000DOWサイクルにおいて観察さ
れることである。Jのピーク値は4DOWサイクル後に12%を上回る。これが
意味することは、このディスクは2回のDOW後にそれ以上使用不可能であるこ
とである。この大きなジッター突起は、主に、大きな立ち下がりジッター、即ち
効果の後方側のせいである。これは、残余データ、即ち、先行する記録から残存
するアモルファス残余に起因する。これが意味することは、先行する記録からの
アモルファス・マークがDOW中に完全には結晶化されていないことである。1
000DOWサイクル後、ジッターは第1サイクルに近付く。本発明の請求範囲
内の厚みd3を有するディスクBにおいては、そうしたジッター突起は生じない
。ジッターJは低く、一定値を有し、DOWサイクルの全回数は、12%の上限
ジッターの到達前に、2×105を上回る。実施例27
この実験において、第1誘電体層2の厚みd2(nm単位)のジッターに対す
る影響が調査されている。各種層の材料と、層2以外の各種層の厚みとは実施例
10から15までのものと同一である。波長780nmによっての、レコーダ内
での記録実験による結果が第13図に表わされている。この図は、d2の関数と
してのDOWサイクルnの最大数を示している。n値は、平均ジッター[(立ち
上がりジッター+立ち下がりジッター)/2]がクロックタイムTcの12%に
達するまでの上書き数として定義される。サイクルnの最大数は増大するd2に
伴って増大し、d2が70nm或いはそれ以上の厚くなると、105を上回る値に
達するものと理解されたい。
実施例10から15において実証されたことは、te及びM50000/M0はd2に
対して鈍感であることである。しかし、ジッターが寿命の測定値として用いられ
たならば、サイクラビリティは、d2が70nmよりも小さいときに驚くほどd2
に対して鋭敏である
本発明に従えば、消去可能な光情報媒体が提供され、それが、7.2m/sの
線形速度で少なくとも2×105DOWサイクルのサイクラビリティを有して、
DVD-RAM及び光学的テープ等の直上書き及び高速記録に適合している。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
G11B 7/24 538 G11B 7/24 572B
572 B41M 5/26 X
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),JP,KR
(72)発明者 ドゥチャテアウ ヨハン フィリッペ ウ
ィリアム ベアトリス
オランダ国 5656 アーアー アインドー
フェン プロフ ホルストラーン 6