【発明の詳細な説明】1,4−ブテンジオールの製造方法
本発明は、3,4−エポキシ−1−ブテン(EpB)からの1,4−ブテンジ
オールの製造方法に関する。更に詳しくは、本発明はEpBと水との混合物を、
触媒担体物質と正の原子価状態の銅とからなる触媒と接触させる、1,4−ブテ
ンジオールのEpBの不均一系加水分解方法に関する。
1,4−ブタンジオール(BDO)は重要な工業的化学品である。例えば、こ
れは種々のポリエステエル及びポリウレタン用のモノマーとして相当な量で使用
されている。これはまた、有用な工業的溶媒であるテトラヒドロフランを製造す
るために使用されており、そしてポリビニルピロリドン及びN−メチルピロリド
ンに転換することができるγ−ブチロラクトンに転換することができる。
商業的に製造されるBDOの大部分は、アセチレンをホルムアルデヒドと反応
させ、続いて水素化することによって製造される。この方法は、比較的高価で危
険なアセチレンを使用するという問題がある。幾らかのBDOはまた、酢酸、酸
素及びブタジエンを反応させて1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを製造し、次
いでこれを水素化し、加水分解することによって製造されている。この方法は、
含まれる工程数及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの併産という問題がある
。BDOの製造のためのその他の公知の経路には、ブタジエンを塩素化し、続い
て塩基性加水分解し、そして水素化すること(異性体と塩との混合物を生成する
)、無水マレイン酸水素化(厳しい運転条件を必要とする)及びプロピレンオキ
シドをアリルアルコールに転位させ、続いて水素及び一酸化炭素と反応させて4
−ヒドロキシブチルアルデヒドを製造し、次いで水素化してBDOにすること(
多数の工程を必要とし、工程の一つでは高価なロジウム触媒を使用する)が含ま
れる。安全で、安価且つ簡単であるBDO方法についての一般的なニーズが存在
している。
1,4−ブテンジオール(3−ブテン−1,4−ジオールとしても知られてい
る)の水素化は、BDOへの魅力的な経路であるが、安全で、効率的で且つ安価
である1,4−ブテンジオールの合成は知られていない。EpBはブタジエン及
び酸素から効率的に製造することができるが、EpBを1,4−ブテンジオール
に富んだ生成物に効率的に加水分解する方法は知られていない。3,4−エポキ
シ−1−ブテンを1,4−ブテンジオールに富んだ生成物に効率的に加水分解す
る方法についてのニーズが存在している。
J.Am.Chem.Soc.104巻、1658〜1665頁(1982年)でRoss他は、EpBの酸
触媒加水分解によって、96%の3−ブテン−1,2−ジオールと僅か4%の1,
4−ブテンジオールとを含む混合物が生成されることを教示している。関連する
シクロヘキサジエンオキシドは、他の塩の不存在下での塩基触媒加水分解によっ
て99%の1,2−ジオールを生成するので、この同じ文献によって、塩基触媒加
水分解によってより多くの3−ブテン−1,2−ジオールが生成されると予想す
る方向に導かれる。従って、酸触媒も塩基触媒も、EpBを加水分解して、有用
なレベルの望ましい1,4−ブテンジオールを含有する生成物にするために適し
ているとは思われない。
Tetrahedron 45巻、7031〜7040頁(1989年)で、Rao 他は酸性で水性の条件に
よって、望ましい1,4−ブテンジオールが望ましくない3−ブテン−1,2−
ジオールに転換し得ることを教示している。この文献では、幾つかの加水分解条
件下で酸性条件が望ましくないであろうということが示唆されている。EpBを
1,4−ブテ
ンジオールを含む混合物に加水分解する触媒として、ヨウ化水素酸又はヨウ化水
素酸プラス遷移金属化合物を使用するが方法が、特開昭54−79214 号公報(1979
年)に記載されている。報告された最適条件下で、これらの条件によって、53%
の3−ブテン−1,2−ジオール(以下、1,2−ブテンジオールと言う)及び
47%の1,4−ブテンジオール(1,2−ジオール/1,4−ジオール比=1.15
)からなるジオール混合物が、僅か58%の全ジオール収率で生成された。この方
法は収率が劣るのみならず、水性ヨウ化水素酸を使用することに伴う腐食及び分
離問題の全てを有する。
特開昭54−73710 号公報(1979年)には、EpBを1,4−ブテンジオールに
富んだ混合物に加水分解する触媒として、Cu(I)及びCu(II)塩の両方を
使用することが教示されている。CuBrによって、1,2−異性体対1,4−
異性体比=2.92を有するブテンジオールの混合物が得られた。CuBr2によっ
て、1,2−異性体対1,4−異性体比=4.71を有するブテンジオールの混合物
が得られた。これらの反応は、望ましい1,4−ブテンジオールに対する劣った
選択性を示すのみならず、反応が完結に達するために約50時間の反応時間が必要
である。反応混合物から触媒及び生成物を分離し、回収するための手段は与えら
れていない。
本発明は、生成物混合物から容易に分離して再使用することができる不均一系
触媒を使用することにより、3,4−エポキシ−1−ブテン(EpB)を1,4
−ブテンジオールに富んだ混合物に選択的に加水分解するための、簡単で効率的
な手段を提供する。本発明の方法は、水とEpBとの混合物を、触媒担持物質と
正の原子価状態の銅を含む担持銅触媒と、加水分解有効温度で接触させることを
含んでなる。先行技術の触媒とは違って、本発明で使用される触媒は、液体反応
生成物から容易に分離される。本発明の不均一系方法
の手段によるEpBの加水分解によって、望ましい1,4−ブテンジオールへの
改良された選択性になる。
本発明で有用な触媒は、触媒担体物質と正の原子価状態の銅の形態、即ち、C
u(I)(第一銅)及び/又はCu(II)(第二銅)イオンとの組合せである。
この触媒の銅〔Cu〕含有量は、触媒の全乾燥重量基準で、0.1〜10重量%、好
ましくは2〜5重量%の範囲であってよい。担体の一つの目的は、顕著な量の銅
を水性媒体中に溶解することから保護しながら、触媒的に活性の銅部位の高分散
を提供することである。この目的のために、広範囲の種々の担体物質が満足でき
る。これらには、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア(TiO2)
、炭素、マグネシア(MgO)及びゼオライト物質が含まれる。好ましい担体物
質は、シリカ、アルミナ及びゼオライト物質である。最も好ましい物質は、ある
種のゼオライト物質である。好ましいゼオライトは、フォジャス沸石型(faujas
ite-type)ゼオライト及びL−型ゼオライトである。最も好ましいフォジャス沸
石型は、銅交換の前にナトリウム又は更に好ましくはリチウムイオンを含有する
ゼオライトYである。
担持正原子価状態銅を製造するために使用される銅塩の性質は、限定的ではな
く、担体の性質及び加水分解の前に予備還元工程を使用するか否かに依存して著
しく変化させることができる。非ゼオライト担体、例えば、シリカ、アルミナ及
びシリカ−アルミナを使用するとき、水溶液中でアンモニア錯体として安定化さ
れた銅(I)塩を使用することが好ましい。アンモニア水中のCuCl又はCu
Brが満足される。この触媒は、担体をアンモニア−銅(I)水溶液で含浸させ
、次いで溶媒を蒸発させることによって製造することができる。この方法で製造
された非ゼオライト物質は一般的に、同じ担体をCu(II)塩で含浸させること
によって製造したものより
も一層選択的な触媒である。Cu(II)塩を非ゼオライト担体と組み合わせて使
用すると300 ℃で窒素中1〜2%の水素中での予備還元により、しばしば触媒の
初期性能が改良されるであろう。
担体としてゼオライト物質を使用するとき、銅を交換又は含浸によって担持さ
せることができる。交換法が好ましく、アンモニア水中のCu(I)塩又は水も
しくはアンモニア水中のCu(II)塩を使用することができる。ゼオライト中へ
の交換のためにCu(II)塩の水溶液を使用することが好ましい。ゼオライトの
中への銅塩の交換は,当業者に公知である。典型的に、溶液1リットル当たり0.
01モルの可溶性銅(II)塩を含有する水溶液を、ゼオライトの1グラム当たり10
0 mLの交換溶液を使用して、環境温度で2時間ゼオライトと接触させる。一般的
に、交換されたゼオライトは次いで水で洗浄する。上記の条件下で、ゼオライト
中の交換可能なイオン(一般的にナトリウムイオン)の約50モル%が銅イオンで
置き換えられる。銅(II)塩を使用するとき、1個の銅イオンは約2個のアルカ
リ金属イオンを置き換える。満足できる触媒は通常、銅イオンで交換されたその
交換可能なイオンの約1〜100モル%を有する。
本発明で有用な銅含有触媒はペレット形態又は粉末化形態であってよいが、粉
末化形態を使用するとき一般的により高い速度が得られる。銅含有触媒の選択性
は、この触媒をアンモニアの源と接触させることによって改良することができる
。アンモニア水溶液からの蒸気による、上記のようにして製造された銅含有触媒
の平衡化は、過剰量の塩基性アンモニア溶液と3,4−エポキシ−1−ブテンと
の反応により加水分解選択性に悪影響を与えることなく、銅触媒を促進するため
に必要な正確な少量のアンモニアを添加するための優れた方法である。得られる
触媒は、触媒担体物質、正原子価状態の銅及びアンモニアの組合せである。
この方法は、上記の担持銅触媒の一つを3,4−エポキシ−1−ブテン及び水
と接触させる不均一液相方法として実施することができる。この方法の液相回分
操作に於いて、触媒は典型的に、最初の反応混合物の全重量基準で1〜50重量%
、好ましくは5〜10重量%の濃度で存在している。液相操作が好ましいが、蒸気
相に於けるこの方法の操作は本発明の範囲内である。反応性物質(水及びEpB
)は、この方法で、100:1〜1:1、好ましくは20:1〜5:1の範囲内の水
:EpB重量比で使用することができる。EpBの過度に高い濃度は、大量のオ
リゴマー副生物が生成することになり、他方、EpBの非常に薄い濃度は、生成
物の回収及び精製を困難且つ高価にする。この方法は任意的に不活性溶媒の存在
下に実施することができるが、溶媒を使用することは普通好ましくない。このよ
うな非反応性溶媒の例には、アセトニトリルのようなニトリル類、アセトンのよ
うなケトン類及びテトラヒドロフランのようなエーテル類が含まれる。
本発明の方法は、10〜80℃の範囲内の温度で実施することができる。より低い
温度では、触媒しない又は自発的加水分解の速度が担持銅触媒加水分解の速度よ
りも速く、劣った選択性及び低い速度になる。より高い温度によって高い速度が
得られるが、より高い選択性は得られない。より高い温度でのEpBの揮発性に
よって、未反応のEpBの損失を防止するために上昇させた圧力を使用すること
が必要になる。普通、この反応は大気圧及び環境温度で実施される。この反応は
発熱であり、反応剤と触媒とを好ましい量で環境温度で混合したとき、反応物の
温度は典型的に10〜15℃ほど上昇する。環境温度からの温度上昇及び結果的な環
境温度への戻りを観察することによって、反応を回分方式で実施したとき反応を
モニターする便利な手段が与えられる。しばしば、触媒を最初から使用したとき
、特に触媒をCu(II)から製造したとき、触媒がかなり活性になる前に、数分
間から数時間までの誘導期が生じる。この方法は、反応剤を1個又はそれ以上の
触媒の固定床の上に通過させることによって、連続式又は半連続式方法として操
作することができる。この触媒は通常、ペレット化した又はその他の押し出した
若しくは造形した形状でこのような固定床で使用される。本発明の方法は、本質
的に全ての3,4−エポキシ−1−ブテンを消費する。触媒を生成物と延長させ
て接触させることによって、1,4−ブテンジオールへの選択性はかわらない。
この触媒は、単純な濾過又は遠心分離によって液体生成物から容易に分離し、回
収することができる。液体生成物は蒸留によって回収することができる。回収さ
れた触媒は水又はその他の溶媒によって洗浄して、微量の生成物の除去を容易に
することができるか又はこれは洗浄することなく再び使用することができる。触
媒を続いて使用することによって、誘導期は普通短縮されるか又は生じない。初
期の誘導期は、窒素のような不活性ガス中の1〜2%の水素中で200〜300 ℃で
触媒を予備還元することによって除くことができる。
本発明により提供される方法を、下記の例によって更に示す。加水分解反応は
、オーバヘッド撹拌機、窒素入口(窒素圧力は油バブラーを通して開放した)及
び実施例1の実験を除いてサーモカップルを取り付けた三ツ口500mL 丸底フラス
コ内で実施した。ゼオライト交換反応は、磁気撹拌を使用して4リットルのエル
レンマイヤーフラスコ内で実施した。ガスクロマトグラフィー(GC)分析は、
内部標準としてp−キシレンを使用する、30メートル長さ×0.32mm内径のDB−
5カラム(膜厚=1.0 ミクロン)を使用してヒューレット−パッカード(Hewlett
-Packard)型式5890ガスクロマトグラフで実施した。このクロマトグラフは、40
℃で3分間、10℃/分で12
0 ℃に、120 ℃で2分間、20℃/分で230 ℃に及び230 ℃で11.5分間にプログラ
ムした。実施例1
この例は、非ゼオライト担体を使用する本発明の方法、触媒と長く接触させた
後の生成物混合物の安定性及び触媒の再使用を示す。
シリカゲル(40.0g、Aldrich Merck クレード60)を、約100 mLの濃アンモニ
ア水溶液中に溶解したCuCl(2.00g)の溶液で含浸させた。溶媒をスチーム
浴上で蒸発させ、触媒をオーブン内で80℃で一夜更に乾燥させた。
この明青色触媒全体を水(100 mL)中にスラリー化し、EpB(5.0 g)を添
加した。反応混合物を静止窒素雰囲気下で撹拌した。45分間撹拌した後、反応混
合物を含有する容器は、触れてわかる程度に加温された。6.5 時間撹拌した後、
撹拌機を停止し、触媒を沈降させた。液体部分のアリコートを取り出し、GCに
よって分析した。この生成物には、EpBは含有されず、1,2−ブテンジオー
ル3.55重量%及び1,4−ブテンジオール1.79重量%が含有されていた。反応混
合物の残りを、触媒と接触させて更に24時間撹拌し、他のアリコートを取り出し
、GCによって分析した。この第二のアリコートには、EpBは含有されず、1
,2−ブテンジオール3.64重量%及び1,4−ブテンジオール1.87重量%が含有
されていた。
残りの反応混合物を濾過し(濾液のpH=7)、緑色固体触媒を水(400 mL)で
洗浄し、水及びEpBの新しい装入物を23℃で添加した。20分以内に、反応混合
物の温度は30℃であった。アリコートを全部で1時間の反応時間後に分析し、こ
れには、3,4−エポキシ−1−ブテンは含有されず、1,2−ブテンジオール
3.76重量%及び1,4−ブテンジオール1.50重量%が含有されていた。更に2時
間後に採取した第二のアリコートには、EpBは含有されず、1,2−ブテンジ
オール3.72重量%及び1,4−ブテンジオール1.50重量%が含有されていた。反
応混合物の残りを濾過した。固体触媒を水で洗浄し、活性の顕著な損失無しに、
上記の方法によって更に2回、3,4−エポキシ−1−ブテンの新しい溶液の加
水分解を触媒するために使用した。実施例2
この例は、加水分解のための銅(II)交換したYゼオライトの使用及び回収し
た触媒の再使用を示す。
硫酸銅五水和物(7.86g)及び水(4リットル)から、pH4の溶液を製造した
。この撹拌した溶液に、ゼオライトNaY粉末(40.0g)を添加した。この混合
物を2時間撹拌し、次いで濾過した。無色の濾液のpHは7であった。明青色固体
を水(200 mL)で洗浄し、オーブン内で80℃で一夜乾燥した。このゼオライトに
は、パーキン−エルマープラズマ(Perkin-Elmer Plasma)2000器械を使用する高
周波誘導結合プラズマ光学発光分光分析によって決定したとき、ナトリウム4.17
重量%及び銅4.56重量%が含有されていた。
このゼオライト触媒の一部(20.0g)を水(200 mL)中にスラリー化した。E
pB(10.0g)を添加し、混合物を実施例1に於けるようにして撹拌した。混合
物の初期温度は24.5℃であり、温度はこの値で25分間保持した。更に20分後に、
温度は26.7℃であり、更に20分後、最高温度は32.1℃に到達した。更に3時間後
に、温度は23.5℃まで低下し、混合物を濾過した。pH7の濾液には、検出可能な
EpBは含有されず、1,2−ブテンジオール3.72重量%及び1,4−ブテンジ
オール1.96重量%が含有されていた。
明緑色ゼオライト触媒を水(400 mL)で洗浄し、水及びEpBの同一の新しい
装入物を添加した。EpBを添加して直ぐ、温度上昇
があった。生成物を方法で単離し、これには検出可能なEpBは含有されず、1
,2−ブテンジオール3.52重量%及び1,4−ブテンジオール1.86重量%が含有
されていた。このゼオライト触媒をフィルター上で水(少量ずつ300 mL)で洗浄
し、環境温度でフィルター上で乾燥した。実施例3
この例は、銅(II)交換したYゼオライトによって与えられる選択性へのアン
モニアの有利な影響を示す。
硫酸銅五水和物(7.86g)、水(4リットル)及び濃アンモニア水溶液(44g
)から、溶液を製造した。この撹拌した溶液にゼオライトNaY粉末(40.0g)
を添加し、撹拌を2時間続けた。ゼオライト触媒を沈降させ、次いで液体の大部
分を傾瀉により分離した。殆ど無色の傾瀉した液体のpHは11であった。このゼオ
ライト触媒を水(4リットル)中に再スラリー化し、30分間撹拌し、沈降させ、
そしてpH10の液体の大部分を傾瀉により分離した。再スラリー化、撹拌、沈降及
び傾瀉手順をもう一回繰り返し、次いでゼオライト触媒を濾過し、フィルター上
で水(少量ずつ2リットル)で洗浄した。最終濾液のpHは9であった。次いでゼ
オライト触媒をオーブン内で80℃で一液乾燥した。この触媒には、ナトリウム3.
55重量%及び銅4.93重量%が含有されていた。
このゼオライト触媒の一部(20.0g)を水(200 mL)中にスラリー化し、Ep
B(10.0g)を添加した。反応物の熱挙動は、熱誘導期が約40分であった以外は
、実施例2のものと同様であった。EpBを添加して3時間20分後に反応混合物
を濾過した。pH8の濾液には、検出可能なEpBは含有されず、1,2−ブテン
ジオール2.78重量%及び1,4−ブテンジオール2.59重量%が含有されていた。実施例4
この例は、アンモニアによる前に使用した、銅交換したYゼオライトの平衡化
及びEpBの加水分解で、この触媒によって観察される改良された選択性を示す
。
実施例2から回収された触媒を入れた蒸発皿を、濃アンモニア水溶液を入れた
デシケータの中に入れた。この触媒を蒸気で7時間平衡化させ、次いでデシケー
タから取り出し、環境の空気を一夜接触させた。この触媒を水(200 mL)中にス
ラリー化し、EpB(10.0g)を添加した。反応を、実施例2に記載した方法に
従って進行させた。濾過した生成物溶液には、検出可能なEpBは含有されず、
1,2−ブテンジオール2.62重量%及び1,4−ブテンジオール2.44重量%が含
有されていた。実施例5
この例は、ゼオライトYの中のナトリウムイオンを、銅及びその他の金属で置
き換える影響を示す。
ゼオライトNaY粉末(100.0g)を水(4リットル)中の臭化リチウム(86.
85 g)の溶液の中に添加した。この混合物を4時間撹拌し、沈降させ、次いで
溶液の大部分を沈降したゼオライトからサイフォンで分離した。交換、沈降及び
サイフォン処理手順を、新しい臭化リチウム溶液を使用して更に2回繰り返した
。最後の臭化リチウム交換の後、ゼオライトを濾過し、水(少量ずつ1リットル
)で洗浄し、そしてオーブン内で7日間80℃で乾燥した。このゼオライトを硫酸
銅五水和物(19.65g)及び水(4リットル)から製造した溶液中にスラリー化
した。この混合物を6時間撹拌し、次いで沈降させた。この溶液をゼオライト触
媒からサイフォン分離し、次いでゼオライト触媒を濾過し、水(少量ずつ750 mL
)で洗浄した。この触媒を80℃で一夜乾燥した。
3,4−エポキシ−1−ブテン(10.0g)を水(200 mL)中の上
記のゼオライト触媒の一部(20.0g)のスラリーに添加し、実施例2に記載した
ようにして反応を進めた。濾過した生成物溶液には、検出可能なEpBが含有さ
れず、1,2−ブテンジオール3.79重量%及び1,4−ブテンジオール2.08重量
%が含有されていた。回収した触媒を水(少量ずつ400 mL)で洗浄し、フィルタ
ー上で室温で乾燥させた。実施例6
この例は、回収した銅/リチウム交換したゼオライトYをアンモニアによって
処理することから得られる選択性に於ける改良を示す。
実施例5から回収された触媒を入れた蒸発皿を、濃アンモニア水溶液を入れた
デシケータの中に入れた。このゼオライト触媒を蒸気で6時間平衡化させ、次い
でデシケータから取り出し、環境の空気を一夜接触させた。
EpB(10.0g)を、水(200 mL)中の上記ゼオライト触媒のスラリーに添加
し、反応を、実施例2の方法に従って進行させた。濾過した生成物溶液には、検
出可能なEpBは含有されず、1,2−ブテンジオール2.69重量%及び1,4−
ブテンジオール2.59重量%が含有されていた。実施例7
この例は、銅ゼオライト触媒の予備還元によって、そうでない場合に生じる誘
導期が除去されることを示す。
20メッシュ網を通過しなかった、新しい銅交換NaYゼオライト(20.0g)の
緩く凝集したサンプルを、石英チューブの中に入れた。このサンプルをチューブ
炉の中に入れ、窒素中1体積%の水素で200〜300 ℃で、触媒全体の色が青から
白に変化するまで処理した。この触媒を環境温度に冷却させ、次いで窒素流下で
、水(200 mL
)中の3,4−エポキシ−1−ブテン(10.27 g)の撹拌した混合物に移した。
触媒を水/EpB混合物と接触させたとき、温度が環境温度から35.8℃まで上昇
した。温度は、次の2〜3分間に亘って38.7℃まで上昇し続けた。反応物を、実
施例2に記載したようにして、温度が環境温度(22.2℃)に戻るまで撹拌した。
濾過した生成物溶液には、EpBが含有されず、1,2−ブテンジオール3.56重
量%及び1,4−ブテンジオール2.08重量%が含有されていた。実施例8
この例はゼオライト骨格構造を変化させる影響を示す。
ゼオライトL粉末(40.0g)を、硫酸銅五水和物(7.86g)及び水(4リット
ル)の溶液に添加し、混合物を3時間撹拌した。ゼオライト触媒を青色溶液から
沈降させ、水の大部分を触媒からサイフォンで分離した。このゼオライト触媒を
濾過し、水(少量ずつ200 mL)で洗浄し、オーブン内で80℃で週末を越えて乾燥
した。明緑色ゼオライト触媒には、銅2.67重量%、カリウム10.1重量%及びナト
リウム77ppm(100万部当たりの部)が含有されていた。
EpB(10.0g)を水(200 mL)中のこのゼオライトの一部(20.0g)のスラ
リーに添加し、実施例2に従って反応を進めた。反応発熱が生じる前の、熱誘導
期は2時間であった。濾過した生成物溶液には、EpB0.02重量%、1,2−ブ
テンジオール3.15重量%及び1,4−ブテンジオール1.88重量%が含有されてい
た。比較例
この例は、可溶性の形態で銅を使用することが、本発明の方法に対して如何に
劣っているかを示す。EpB(10.0g)を、水(200mL)中の硫酸銅五水和物(2
.4 g)の溶液に添加し、混合物を実施例2に記載した方法に従って撹拌した。
濾過しない混合物には、検出可能なEpBが含有されず、1,2−ブテンジオー
ル5.17重量%
及び1,4−ブテンジオール0.58重量%が含有されていた。